JP6375668B2 - 浄化カラムおよび浄化カラムの製造方法 - Google Patents

浄化カラムおよび浄化カラムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、血液浄化等に使用する中実糸をケーシング内に内蔵した浄化カラムに係り、好ましくは、被処理液中の除去対象物質を効率的に吸着させることが可能な浄化カラムに関する。
従来、被処理液中の除去対象物質を吸着により除去せんとする浄化カラムに用いる吸着材の形態としては、ビーズを用いることが多かった。この理由としては、ビーズ形状の吸着担体は、吸着カラム内に均一に充填できるため、血液流れの偏りが少なく、カラム設計をしやすい利点を有することが挙げられる。一方で、吸着性能向上のための手段としては、吸着担体の体積あたりの表面積を増やすことが挙げられる。吸着担体がビーズ状である場合は、ビーズ径を小さくすると、各ビーズ間の隙間が狭くなり、流路抵抗が高くなって圧力損失の増加により、被処理液を流すことが困難になる。また、ビーズは球形であるために、体積あたりの表面積が小さいというデメリットがある。すなわち、表面に被処理液成分が堆積し、細孔を塞ぐと、ビーズ内部に吸着余力があっても、有効に吸着サイトが活用できなくなる。
ビーズ以外の吸着材の形態としては編み地が挙げられるが、繊維に吸着孔を設けるための多孔質化が製造上容易でない。また、被処理液が多くの溶質を含み粘性が高い場合には、カラムの圧力上昇などを招き易い。
これらビーズや編み地に対し、カラムケースの長手方向に対して平行に挿入することができるストレート形状を有する中実糸や中空糸といった長繊維は、被処理液の流路が吸着材とは別に確保できるため、流路抵抗の抑制や被処理液中の溶質の付着などに対して有利である。中実糸や中空糸といったストレート形状の長繊維を充填したカラムの端部封止方法としては、メッシュや樹脂を用いて固定するものが挙げられる。
中空糸を内蔵した浄化カラムの両端をメッシュで封止した例(特許文献1,2,3)では、中空糸の内外に被処理液を同時に導入することが可能であるが、中空糸内部と中空糸外部の流量比のコントロールが困難であることや、吸着体が固定されていないためにカラム内の流れがケーシングの一部に偏ることが懸念されることから、効率の面やカラムの安定性の面で問題がある。また、中空糸端部を固定していない状態で端部カットを行うと、微粒子などが発生し、これらが溶出物となる可能性がある。
一方で、カラム端部を樹脂で固定するとは、例えば人工腎臓のように筒型ケーシング内に糸を充填し、この糸の両端を樹脂組成物でケーシング内面に固定して隔壁となし、ケーシングの両端に被処理液の供給口または排出口となる接続口を備えるキャップ部材をそれぞれ装着し、ケーシングの外周部両端近傍に処理液の流入口及び流出口となる接続口を設けるものである。この糸束の両端部を樹脂組成物で固定して隔壁となす工程はポッティング工程といい、例えば、糸束を装填したケーシングの両端開口にキャップを被せて閉塞し、この状態でケーシング内に、当該ケーシングの外周部両端近傍に突設した処理液の流入口及び流出口からポリウレタンなどの樹脂液を注入し、この樹脂液を遠心力によりケーシングの端部に流動させて硬化させ、その後、キャップを外して不要部分を切除することにより中空糸束の端部をケーシング内の端部に固定するとともに中空糸膜の両端を開口している。このように端部を樹脂固定することで、糸状の吸着体をカラム内に固定することができる。
実際にケーシング内に中空糸膜を充填して端部をポッティングで固定し、カラムとした例は存在する。例えば、中空糸の表面に被吸着物質と相互作用を成すリガンドを実質上均一に固定させることで除去対象物質を吸着する方法が知られている(特許文献4)。しかしこの場合、中空糸の内側のみに被処理液を通液するために、外側が吸着除去に寄与しにくいという欠点があり、目標とする吸着性能を有しない場合がある。また、ケーシングの両端のポッティング部において、板厚方向にポッティング部を貫通する孔を付与し、中空糸の内側と外側の両側に被処理液を均一に分散させようとする例も存在する(特許文献5,6,7,8)。しかし、これらの発明では、中空糸の一端が閉口されているため、カラム内はデッドエンドとなり、圧力損失が非常に大きくなる。また、吸着体として中空糸を充填したモジュールの場合には、血液透析の終了後、中空糸モジュールに生理食塩水を用いて血液を体内に戻す作業(「返血」と称されることもある)を行うが、モジュールの設計を誤ると、返血の際に血液が中空糸内側に多数残存する、残血と呼ばれる現象の発生が懸念される。
一方で、吸着繊維を束形状に保ち、両端を接着剤で固定するという例も存在する(特許文献9)。詳細な記述がないため不明だが、接着剤固定面とは別面に被処理液の入出口を設けることとしており、部材コスト増加、製造工程の煩雑化、回路の延長、圧力損失、ファウリングの増大につながることが予想される。
特開2009−254695号公報 特開2011−156022号公報 国際公開第2009/128564号 特開平2−29260号公報 特開平5−161831号公報 特開平5−161832号公報 特開平6−343836号公報 特開2007−90309号公報 特開平06−296860号公報
以上の従来技術が有する課題に対し、本発明が解決しようとする課題は被浄化物質除去性能が非常に優れた浄化カラムおよび上記浄化カラムの製造方法を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明は、両側端部に隔壁が形成された筒状ケーシングを有し、前記ケーシング内に中実糸が内蔵された浄化カラムにおいて、前記ケーシングの両端部の隔壁に、隔壁を貫通しケーシング内外を連通する貫通孔を有する浄化カラムの構成を採る。
吸着材の形態を中実糸とし、カラム両端部ポッティング部に貫通孔を配することによって、被浄化物質除去性能の非常に優れた浄化カラムを提供することができる。
隔壁部端面において外周部付近領域と中心部付近領域を示す模式図である。 隔壁部端面(領域A)を、重心Oを通り中心角が90°となる任意の2本の直線で4領域に分けた模式図である。 図2で用いた2本の直線を、重心Oを中心として45°回転させた2本の直線で領域Aを4領域に分けた模式図である。 隔壁部端面における外周部付近領域に貫通孔が配された模式図である。 図4の模式図を45°回転させた模式図である。 隔壁部端面における外周部付近領域に貫通孔が配された模式図である。 隔壁部端面における外周部付近領域に貫通孔が配された模式図である。 隔壁部端面における外周部付近領域に貫通孔が配された模式図である。 樹脂注入口が設けられた筒状ケーシングの模式図(側面図)である。 内周面に貫通孔形成用の凸部を有する隔壁部形成用治具の模式図(斜視図)である。 浄化カラムの模式図(側面図)である。 β−マイクログロブリンのクリアランスの測定に用いられる回路図である。
本発明の浄化カラムは、筒状ケーシングおよび中実糸を有する。また、本発明の浄化カラムは、筒状ケーシングの両側端部に隔壁が形成され、筒状ケーシング内には中実糸が内蔵されている。また、本発明の浄化カラムの前記ケーシングの両端部の隔壁には、隔壁を貫通しケーシング内外を連通する貫通孔を有するものである。
ここで、貫通孔とは隔壁部の中実糸長手方向に貫通している開口部のことである。すなわち、本発明でいう貫通孔とは、隔壁部に存在してこれを貫通するものであり、ケーシングの内部と外部を連通する孔のことである。
また、本発明においては、ケーシング内外を連通する貫通孔を設けることにより、被処理液をストレート形状の中実糸の束に沿う形で、最短距離で浄化カラム内に導入することができる。これにより、カラム構成部材を最小限にできるため、部材コストの削減や製造工程の簡略化ができる。
本発明のように貫通孔を設けることなく被処理液をカラム内に導入する別の方法として、例えば、透析用の分離膜モジュール等の両端部付近にそれぞれ1つずつ設けられている「透析用のポート」と呼ばれるような、当該ケーシングにおける外周部両端近傍かつ隔壁部より内側において突設した流入口や流出口から被処理液を導入する方法が有るが、この場合には、カラム入口付近に被処理液を分配することが難しく、また、ケーシングの被処理液の流入から流出までの流れが本発明のような一直線状にならず乱流になりやすく、圧力損失の上昇を招くことがあり、また被処理液が血液である場合には血球細胞の活性化を招く。ただし、透析用のポートから被処理液とは異なる薬剤や希釈液等を導入することは可能である。また、隔壁用形成用の樹脂などを筒状ケーシング内に導入するために、筒状ケーシングの端部に樹脂注入口として使用してもよい。
隔壁部断面の貫通孔の形状としてはとくに限られないが、被処理液の目詰まりのし難さという観点から、円形もしくは楕円形であることが好ましい。また、側面側(被処理液の流れ方向)から見た場合の形態としては、圧力損失を考慮すると、流路が平滑な筒状であることが好ましいが、この場合、被処理液の導入側と排出側で断面積が同じでもよく、異なっても構わない。本発明におけるケーシング端部の形状(断面形状)としては、例えば円形または楕円形が挙げられる。また、隔壁部において、隔壁部によって封止されるケーシングの内部に接している側の表面を「隔壁部内壁面」とし、隔壁部によって封止されるケーシングの外部に接している側の表面を「隔壁部外壁面」とすると、カラム内に充填された中実糸は隔壁部外表面に露出していても良いし、露出していなくてもよいが、中実糸と被処理液の接触面積を確保できるという観点からは露出しているほうが好ましい。
ケーシング端面における貫通孔の位置、または複数の貫通孔の配置は被処理液の流れを最適化するために重要である。被処理液の導入側の隔壁に設けられた貫通孔と排出側の隔壁に設けられた貫通孔が、ケーシング内の軸方向における最短距離を結ぶような位置関係にある場合には、貫通孔を通過する被処理液はカラム内をショートパスする可能性が高い。カラム内においてショートパスを起こした場合には、被処理液と中実糸の接触が一部の中実糸に偏るため、十分な吸着除去性能が得られないことがある。
そのため、貫通孔は、被処理液の導入側と排出側とで、隔壁内壁面上の異なる位置にあることが好ましい。つまり、被処理液の導入側の隔壁の内壁面上にある貫通孔を、被処理液の排出側の隔壁の内壁面上に投影した時に、被処理液の排出側の隔壁の内壁面上にある貫通孔上に被処理液の導入側の隔壁の内壁面の貫通孔の投影像が重ならないことが好ましい。なお、この場合、ケーシングの両側端部の形状は同一であることを前提としている。
次に、貫通孔の配置について、好ましい態様の例を2つ挙げつつ、説明する。
一つ目の例は、被処理液の導入される側では貫通孔を隔壁部端面の外周部付近に配し、被処理液の排出される側では貫通孔を隔壁部端面の中心部付近に配するものである。貫通孔の位置をこのように配することで、カラム内の中実糸全体への接触効率が高くなる。
具体例を端部概略断面図である図1に基づき説明する。図1に示すように、ケーシング端部における一方の隔壁の内壁面において、その全体領域をAとし、Aの重心をOとした際に、Aと同様に重心をOとするAの1/2の相似な形状で囲まれる領域をA、AからAを除いた領域をAとした場合に、次の項目(a)または(b)が満たされることが好ましい。特に好ましくは、(a)および(b)の両方が満たされることである。なお、ここで、「重心をOとする1/2の相似な形状」とは、任意に、重心から隔壁表面の外周部までを半径方向に直線で結んだ際、該直線を長さ方向に1/2にする中心の点で囲まれる形状のことである。
(a)被処理液が導入される側の隔壁部の内壁面において、貫通孔の面積の総和の70%以上がAに存在すること。
(b)被処理液が排出される側の隔壁部の内壁面において、貫通孔の面積の総和の70%以上がAに存在すること。
すなわち、この例では、隔壁部内壁面における、貫通孔の面積の総和のうち、被処理液が導入される側ではAに70%以上、さらに好ましくは90%以上存在し、被処理液が排出される側ではAに70%以上、さらに好ましくは90%以上存在することとなる。
ここで、かかる壁面の一例を、図4,図6に示す。また、図6は、浄化カラムの隔壁部内壁面において、貫通孔の面積の総和の70%以上がAに存在する場合の一例を示す概略図であり、図4は、浄化カラムの隔壁部外壁面において、貫通孔の面積の総和の70%以上がAに存在する場合の一例を示す概略図である。
本発明のもう一つの好ましい例は、被処理液の導入される側では貫通孔を隔壁部端面の中心部付近に配し、被処理液の排出される側では貫通孔を隔壁部端面の外周部付近に配するものである。
具体的には、次の項目(c)または(d)が満たされることが好ましく、特に好ましくは、(c)および(d)の両方が満たされることである。
(c)被処理液が導入される側の隔壁部の内壁面において、貫通孔の面積の総和の70%以上がAに存在する。
(d)被処理液が排出される側の隔壁部の内壁面において、貫通孔の面積の総和の70%以上がAに存在する。
すなわち、この例では、隔壁部内壁面における、貫通孔の面積の総和のうち、被処理液が導入される側ではAに70%以上、さらに好ましくは90%以上存在し、被処理液が排出される側ではAに70%以上、さらに好ましくは90%以上存在することとなる。
貫通孔の位置を上記2通りの態様に示すように配することで、カラム内における圧力損失の低減や、被処理液が滞留する可能性を低減できる。
次に、本発明における貫通孔の大きさについて、好ましい例を挙げながら、説明する。
一つひとつの貫通孔(つまり、個々の貫通孔)の面積が大き過ぎる場合にはカラム全体における被処理液の流れが偏ることがあり、小さ過ぎる場合には被処理液が通過する際の圧力損失が大きくなる傾向がある。そのため、隔壁部のうち、隔壁部によって封止されるケーシングの内部に接している側の表面を「隔壁部内壁面」とすると、一つひとつの貫通孔(個々の貫通孔)の隔壁内壁面における面積sの上限は、前記領域Aの面積の1/8以下であることが好ましく、より好ましくは1/20以下である。また下限としては、領域Aの面積の1/5000以上であることが好ましく、さらに好ましくは1/2000以上であり、特に好ましくは1/500以上である。
さらに、端面あたりの貫通孔の占有面積が大き過ぎる場合には、隔壁部の強度が弱くなり、輸送中や操作中の衝撃によるカラムの破損や被処理液のリークの懸念が増す傾向にある。一方で、占有面積が小さ過ぎる場合には被処理液導入中の圧上昇、被処理液の分配不良等を招く恐れがある。これらのことから、貫通孔の隔壁内壁面における面積の総和S1の下限は、領域Aの面積の1/1000以上が好ましく、より好ましくは1/200以上、さらに好ましくは1/50以上となる。一方で、上限としては、領域Aの面積の1/2以下が好ましく、より好ましくは1/4以下である。ここで、上記S1は、一方の隔壁内壁面における貫通孔の面積の総和である。
なお、上記は、カラムの両方の隔壁内壁面において上記sとA1の面積の関係、S1とA1の面積の関係を満たすことを意図するものである。
なお、本発明において、ケーシング断面や貫通孔の断面が真円でない場合など、上記した部分の面積を求めることが困難な場合が有るが、少なくとも断面が楕円の場合は、カラムにおける方向を予め設定しておき、その方向における径およびその方向と垂直の関係をなす方向における径を測定して、その平均を断面の径と近似し、面積を求めればよい。
このように、本発明では、ケーシング端部における隔壁部の内壁面において、貫通孔の個々の面積が前記領域Aの面積の1/8以下であり、かつ前記貫通孔の面積の総和が前記領域Aの面積の1/1000以上、1/2以下であることが特に好ましい。
また、端面における貫通孔の位置としては、カラム内に被処理液をムラなく分配するという観点から適度に分散していることが望ましい。具体例を端部概略断面図である図2、3に基づき説明する。領域Aの重心Oについて、重心Oを通り中心角が90°となる2本の直線で領域AをA〜Aの4つの領域に分ける。尚、上記2本の直線は、A〜Aの4つの領域における互いの面積比ができるだけ小さくなるように、言い換えれば4つの領域の面積間の差が少ないように配するものとする。前記A〜Aに関する一例を図2に示す。また、A〜Aのそれぞれの領域に存在する貫通孔の面積の総和をS〜Sとする。また、前記2本の直線を、重心Oを中心として45°回転させた2本の直線で分けられる4つの領域をA〜A11とし、A〜A11のそれぞれの領域に存在する貫通孔の面積の総和をS〜S11とする。前記A〜A11に関する一例を図3に示す。被処理液をカラム内にムラなく分配するためには、以上のように規定されるA〜A11およびS〜S11に関して、以下の2つの項目(i)および(ii)を満たすことが好ましい。すなわち、
(a)Smax1/Smin1およびSmax2/Smin2がいずれも3.0以下
(b)A〜Aの4領域およびA〜A11の4領域のそれぞれに、少なくとも1つは他の領域と重ならない独立した貫通孔を持つ。
ここで、
max1:S〜Sにおいて最も大きいもの
min1:S〜Sにおいて最も小さいもの
max2:S〜S11において最も大きいもの
min2:S〜S11において最も小さいもの
また、Smax1/Smin1およびSmax2/Smin2はいずれも2.0以下であることがより好ましい。
浄化カラムのケーシング長としては、長すぎる場合、カラム内への中実糸の挿入性が悪化することや、圧力損失が増大すること、また浄化カラムとして実使用する際の取扱いが難しくなることが考えられる。また、短すぎる場合には、隔壁部の形成が難しくなる。そのため、浄化カラムのケーシング長は3cm以上、1500cm以下であり、更に好ましくは5cm以上、50cm以下である。ここで、ケーシング長とは、隔壁が設けられたり、キャップが装着される前の、筒状ケーシングの軸方向の長さのことである。
また、両端隔壁部の間のケーシングの形状は問わないが、本発明の効果を発揮するためには、ケーシング内径は、同一のカラムにおいて、最大のケーシング内径に対する最小のケーシング内径の比率が0.7以上であることが好ましく、より好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.9以上である。
本発明においては、被吸着物質が中実糸内部に入り込んで吸着されるようにすることを目的としている。そこで、中実糸の内部までタンパク質が移動しやすいような中実糸形状および多孔質構造が必要である。さらには、カラムの圧力損失を大きくすることで、中実糸内部にタンパク質が移動しやすくなることを見出している。一方で、圧力損失が大きすぎると、血液が溶血したり、活性化することもある。すなわち、カラムにウシ血漿を流速200mL/分で流したときの圧力損失は0.5〜10kPa以下が好ましく、さらには0.7〜7kPa以下が好ましく、より好ましくは1〜5kPa以下である。圧力損失はカラムへの中実糸の充填率、ケーシング内径、ケーシング長、中実糸径、中実糸本数などによって制御することができる。本発明においては、ケーシングに対する糸の充填率の上限としては70%以下が好ましく、より好ましくは65%、特に好ましくは62%以下である。充填率の下限としては、40%以上、より好ましくは45%以上、特に好ましくは52%以上である。充填率は、高すぎるとケースへの挿入性が悪く、低すぎるとケース内の糸が偏ってしまい、カラム内の流れにムラができる。
また、ケーシング内径の上限としては15cm以下が好ましく、より好ましくは12cm、特に好ましくは10cm以下である。ケーシング内径の下限としては、2cm以上、より好ましくは2.5cm以上、特に好ましくは3cm以上である。ケーシング内径が大きすぎると、カラムの半径方向に被処理液が均一に流れにくくなり、ケーシング内径が小さすぎると、カラム容積の低下や、圧力損失の増大を招くためである。
本発明でいう中実糸とは、長手方向に連続した空洞、いわゆる中空部を持たない繊維のことをいう。吸着体として中空糸を充填したカラムの場合には、中空部の被処理液の流量と貫通孔の流量を均一にすることが難しく、流れが偏りやすい。また、例えば、被処理液として血液を流した後に、カラム残った血液を生理食塩水を用いて体内に戻す作業(「返血」と称されることもある)を行うが、特に中空糸内径が小さい場合、返血の際に血液が中空糸内側に多数残存する、残血と呼ばれる現象の発生が懸念されるため好ましくない。
被処理液中に含まれる除去対象物質を吸着除去する機能を備えている糸体が好ましく、除去対象物質としては、例えば、血液浄化用途で用いられる場合には、タンパク質、細菌、ウイルスなどが挙げられ、水処理用途で用いられる場合にはフミン質、金属腐食物などである。
好ましい態様としては、後述の実施例に示すように、複数本の中実糸からなる中実糸束が長手方向に引き揃えられてケーシングの軸方向に配設されているものであり、糸本数としては約1000本〜100000本程度が好ましい。
本発明における中実糸の素材としては、有機物、無機物等特に限定されるものではないが、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAという)、ポリアクリロニトリル(以下、PANという)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、セルロース、セルローストリアセテート等が用いられる。中でも、タンパク質を吸着できる特性を有する素材を含むことが好ましく、例えば、PMMA、PAN等が挙げられる。
また、中実糸はストレート形状であることが好ましい。カラムケースの長手方向に対して平行に挿入することができるストレート形状の中実糸は、被処理液の流路が吸着材とは別に確保できるため、カラム内に被処理液を均等に分配しやすく、また、流路抵抗の抑制ができ、被処理液中の溶質の付着などによる圧力損失の増大に対しても有利である。そのため、粘性の高い血液を被処理液とした場合においても、ケーシング内での凝固などのリスクを小さく抑えられる。本発明で言うところのストレート形状の糸とは、その両端をケーシング両端のそれぞれの隔壁部によって固定され、ケーシング長手方向に並行して配置された糸のことであり、糸にクリンプ等の捲縮がかけられていてもよい。糸の長さの測定方法としては、クリンプ等の捲縮がかかった糸の場合、糸両端を伸ばしたストレートな形状の状態で糸長さを測定する。その測定方法としては、カラムから取り出した糸の一片をテープ等で固定し、垂直に下げ、もう一片には、3g程度のおもりを付与し、糸が直線状になった際の全長を速やかに測定する。この測定をカラム内で任意に選んだ30本の糸について行い、30本の平均値を算出する。本発明においては、カラム内に収容される、両端部を有する糸を任意に50本抽出した場合に、その糸の両端部が隔壁部によって固定されている糸の割合が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
また、本発明では、中実糸の内部に細孔を有することが好ましい。内部の平均細孔径としては、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、さらに好ましくは3nm以上、特に好ましくは6nm以上であり、一方、好ましくは100nm以下、より好ましくは60nm以下、さらに好ましくは40nm以下、特に好ましくは半径30nm以下である。内部が細孔を有する場合、平均細孔径が小さいと、被吸着物質が孔に入らないため、吸着効率が低下することがある。一方で細孔径が大きすぎても、空隙部分に被吸着物質が吸着されないため、逆に吸着効率が低下することがある。すなわち、除去対象とする被吸着物質の大きさに応じて最適な孔径が存在し、孔径の選択を誤ると十分な被吸着物質の吸着が出来ないことがある。中実糸膜の平均細孔半径は、示差走査熱量(DSC)測定により、細孔内の水の毛管凝集による氷点降下度を測ることで求められる。
測定方法としては、中実糸の平均細孔半径は示差走査熱量(DSC)測定によって求める。ナノサイズの細孔に閉じ込められた氷の融点は、通常のバルク氷(融点:0に比べて低下する。この現象を利用して、DSC曲線の融点の分布からLaplaceの式とGibbs-Duhemの式を組み合わせることで、細孔半径分布が算出され、平均細孔半径を求めることができる。
具体的には、融点低下度ΔT は細孔半径 R が小さいほど大きく、ΔT とRは以下の式で表される。
Figure 0006375668
ここでαは温度の関数としての定数(nmK)で、凍結過程に対して 56.36ΔT-0.90、融解過程に対して33.30ΔT-0.32である。式の第1項α/ΔTは凍結可能な細孔水の径を示す。第2項βは、細孔表面に吸着する凍結しない細孔水の厚さを示す。
また、DSC 曲線の形状は多孔質体の細孔分布曲線を反映し、DSC 曲線(dq/dt)から細孔分布曲線(dV/dR)を算出することができる。
Figure 0006375668
ここで、V:累積細孔容積、m:多孔質体の重量、ΔH(T):温度 T での融解熱量、ρ(T):温度 T での細孔水の温度、z:細孔の形状因子(球状 3.0)である。
測定方法としては、水中に浸漬してあった中実糸試料の表面の付着水を除いた後、約5mmの長さにしたもの数十本を密閉パンにつめて秤量し、DSCにかける。試料は−55℃に冷却してから、0.3℃/minの昇温速度で加温して測定した。DSCの装置としては例えばTA Instruments 社製 DSC Q100がある。
本発明における浄化カラムを血液浄化用途に用いる場合、前述の通り吸着対象物質としてタンパク質があるが、代表的なタンパク質のひとつにβ−マイクログロブリン(以下、β2−MGという)がある。β−MGは分子量11,800であるため、分子量約67,000のアルブミンに比較して、小さい孔に侵入し得る。しかしながら、β−MGを吸着によって除去する場合、内表面の開孔率を大きくして分子量11,800のβ−MGの吸着サイト、すなわち、β−MG分子が十分に入り込むスペースの孔を増加させる必要がある。従って、より高分子量のアルブミンが漏出する可能性が生じるのであるが、このとき、中実糸の構造の均一性が高い程、アルブミンの漏出を抑えやすい。
本発明に用いる中実糸は、糸の断面が不均一な構造であっても、均一な構造であっても良いが、特に、均一構造をもつ膜では膜の厚み方向に均一な膜構造を有することで吸着面積をより確保できるため好ましい。ただし、糸中心部への拡散抵抗を軽減させるために、糸外周部の孔を大きくし、糸中心部へ向けて除々に孔が縮小するようなややグラジエントな構造を有しても良い。このような構造は、糸の外表面近傍領域における平均孔径に対する中心部領域における平均孔径(外表面近傍領域における平均孔径/中心部領域における平均孔径)が0.50倍以上3.00倍以下、より好ましくは0.75倍以上2.00倍以下、更に好ましくは0.90倍以上1.50倍以下となる。
本発明における均一構造の測定方法としては、長軸方向に対して垂直に切断し、糸断面を露出させて、該断面を走査型電子顕微鏡(たとえば日立社製、S−5500)にて観察した際に、以下の要件を満たす構造のことである。ここで、糸断面中心部から糸外周部方向に5分割し、最も中心に近い領域を中心部領域とし、最も外周部に近い側を外表面近傍領域とする。
中心部領域、外表面近傍領域、それぞれについて孔の円相当径を求め、外表面近傍領域における平均孔径を得る。それぞれの領域における平均孔径の算出に際しては、走査型電子顕微鏡(5万倍)で2μm×2μmの範囲を任意に20箇所撮影した写真の中に孔全体が含まれるものについて測定し、平均の孔径を算出するものとする。そして、糸の外表面近傍領域における平均孔径に対する中心部領域における平均孔径(外表面近傍領域における平均孔径/中心部領域における平均孔径)が0.50倍以上3.00倍以下、より好ましくは0.75倍以上2.00倍以下、更に好ましくは0.90倍以上1.50倍以下である場合、当該中実糸は対称構造を持つものとする。
さらに、中実糸の素材の少なくとも一部に、陰性荷電を有している素材を用いると、中実糸の空隙率をより高くすることが可能となるため、開孔率が大きくなり、吸着面積を増大させることができるために好ましい。一般的にイオン性基を含むと親水性が増し、疎水性溶媒中で素材が微分散(すなわち、細かな孔が数多く形成される)する傾向にある。陰性荷電を有する官能基としては、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、亜リン酸基、エステル基、亜硫酸基、次亜硫酸基、スルフィド基、フェノール基、ヒドロキシシリル基等の置換基を有する素材が挙げられる。中でもスルホ基、カルボキシル基、エステル基から選ばれる少なくとも1種が好ましい。スルホ基を有するものとしてはビニルスルホン酸、アクリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸パラスチレンスルホン酸、3−メタクリロキシプロパンスルホン酸、3−アクリロキシプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、ピリジン塩、キノリン塩、テトラメチルアンモニウム塩などがあげられる。陰性荷電量としては、乾燥した中実糸1gあたり5μeq以上、30μeq以下のものが好ましい。陰性荷電量は、例えば、滴定法を用いて測定することが出来る。
本発明において、中実糸の糸径が小さすぎると中実糸の強度が弱くなることが懸念される。また、中実糸が多孔質構造をもつ場合、糸中心部の吸着サイトが容易に飽和してしまい、吸着効率が低下することが考えられる。一方で、糸径が大きすぎると比表面積が低下し、糸中心部への除去対象物質の拡散距離が長くなり吸着に十分利用されない。また、カラム当たりの中実糸の充填本数が低下すること、製造する際に相分離の進行速度が内表面と外表面で大きく異なり不利となることなども懸念される。したがって、中実糸の糸径の下限としては10μm以上、さらに好ましくは40μm以上、特に好ましくは70μmとなる。一方で上限としては1000μm以下であり、より好ましくは500μm以下、特に好ましくは300μm以下である。なお、糸径は、以下の方法で求められる。まず、カラム内に充填された中実糸のうち、任意に20本を抽出し、純水で洗浄して糸内部を純水で置換する。その後中実糸をスライドグラスとカバーガラスの間に挟み、投影機(たとえばNikon社製V-10A)を用いて測定する。1本の中実糸について上記2箇所における膜厚値を求め、総計40個の糸径値を得る。得られた糸径値を平均して、最終的な糸径の値を得る。尚、ケーシング内に内蔵された中実糸本数が20本未満である場合には、その全ての糸について測定する。
また、本発明に係る隔壁部の貫通孔の形成方法として、次のような「隔壁部形成用治具」を用いる方法を挙げることができる。
まず、中実糸を筒状ケーシングとなるプラスチックケースなどに内蔵する。次に、ケーシングの両端部に隔壁部形成用治具を仮装着(仮キャップ)する。ここで、用いる隔壁部形成用治具とは、図10に示すように、その内周面に貫通孔形成用の凸部を有するものである。貫通孔形成用治具の凸部によって隔壁に貫通孔を形成することができる。
次いで、中実糸両端部に中実糸をケーシングに固定するための樹脂を筒状ケーシングに入れる。ここで、筒状ケーシングに樹脂を導入するために、貫通孔形成用治具に樹脂注入用の孔が設けられていても良い。
必要に応じて、樹脂注入用の孔を封じた後に、隔壁部形成用治具が仮装着された筒状ケーシングを遠心機で回転させることによって、筒状ケーシングの両端部に樹脂を均一に充填する。ただし、貫通孔形成用治具の凸部が存在している空間には樹脂が充填されない。
そして、樹脂が固化して隔壁が形成された後に、貫通孔形成用治具を外して、両端部に樹脂が充填された筒状ケーシングを得る。ここで、貫通孔形成用治具の凸部が存在していた空間には樹脂が充填されないので、隔壁に貫通孔が形成される。
次いで、隔壁部において、樹脂によって中実糸の中実部が閉塞している部分をカッター等で切断して取り除いてもよい。これにより、カット面は凹凸やエッジが少ない平滑面とすることができる。これにより、カット時の微粒子等混入物の発生を抑制できるほか、被処理液が例えば血液である場合には血球成分の活性化を抑制することができる。またカット面としては、フラットな平面以外にも、凸状のドーム型、凹状のドーム型であってもよい。
中実糸の有効長とは、ケーシング長から隔壁の長さを減じた長さを指すものであるが、この長さは5cm以上が好ましく、50cm以下が好ましい。5cm未満であれば被浄化物質の除去性能に劣る可能性が有り、50cmを超えると被処理液のカラム通過時の圧力損失が増大するおそれが有る。
以上の方法によって、中実糸の両端部が前記隔壁外部に開口した状態で前記隔壁に接着固定され、かつ隔壁に貫通孔を有する浄化カラムを得ることができる。
また、隔壁部における貫通孔の数や位置、形状などは、この隔壁部形成用治具の凸部の数や位置、形状によって自由に変更することができる。なお、当該治具をカラム端部(筒状ケーシングの端部)に配置する際、治具の凸部は、中実糸の束の隙間への挿入を容易にするため、凸部の先端は鋭利な針状であることが好ましい。
また、隔壁部形成用治具は、プラスチックや金属により構成されることが好ましい。前者の場合には、金型による射出成形や、素材を切削加工することにより製作され、後者の場合には、素材を切削加工することにより製作される。また、貫通孔の作成は、従来通りに隔壁部を形成した後、ドリルやキリといった先端が鋭利に突き出た工具で形成することも可能であるが、この場合、削りかすの発生や糸束の損傷が懸念されるため、好ましくない。
また、隔壁部のそれぞれの貫通孔は、内壁面と外壁面を結ぶ孔の形状がカラム内の被処理液流れ方向に並行でも良いし、斜めであっても良い。また、隔壁部の材質としては、通常、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などの公知の熱硬化性樹脂が用いられるが、場合により熱可塑性樹脂を用いることもできる。
本発明の使用用途は多種多様であり、血液浄化器としても用いることができる。処理方法には全血を直接灌流する方法と血液から血漿を分離した後血漿をカラムに通す方法とがあるが、本発明の浄化カラムはいずれの方法にも用いることができる。
また、血液浄化器として用いる場合、1回の処理量や操作の簡便性などの観点から体外循環回路に組み込みオンラインで吸着除去を行う手法が好ましい。この場合、本発明の浄化カラムを単独で用いても良いし、透析時などに人工腎臓と直列に繋いで用いることもできる。このような手法を用いることで、透析と同時に人工腎臓のみでは除去が不十分である物質を除去することができる。特に人工腎臓では除去が困難である大分子量物質を浄化カラムを用いて吸着除去することで人工腎臓の機能を補完できる。
また、人工腎臓と同時に用いる場合には、回路内において、人工腎臓の前に接続しても良いし人工腎臓の後に接続しても良い。人工腎臓の前に接続するメリットとしては、人工腎臓による透析の影響を受けにくいため、浄化カラムの本来の性能を発揮し易いことがある。一方で人工腎臓の後に接続するメリットとしては、人工腎臓で除水を行った後の血液を処理するため、溶質濃度が高く、吸着除去効率の増加が期待できる。
また、吸着材が樹脂を素材とする場合には、数ヶ月から数年の長期保管や保管温度、湿度の変化、樹脂の水分量の変化などによって、カラム内に充填されている中実糸の収縮が起きやすい。これにより中実糸そのものの形態・サイズが変化したり、特に多孔質構造をもつ場合には、その孔サイズが大きく変化する可能性がある。このようにして多孔構造が変化した場合には、タンパク質等の除去対象物質の吸着が大きく変化する可能性があり好ましくない。本発明においては、吸着材を中実糸のストレート形状とし、両端を隔壁により固定することでこのような変化を軽減することが出きる。
以下に本発明に係る浄化カラムの作成例について説明する。
[中実糸の作成]
ポリマーを溶媒に溶かした紡糸原液を調整する。このとき原液濃度(原液中の溶媒を除いた物質の濃度)が低い程、中実糸の空隙率を高くすることが出来るため、陰性荷電基および原液濃度を適宜設定することにより、空隙率をコントロールすることが可能である。かかる観点から、本発明において好ましい原液濃度は30重量%以下であり、より好ましくは27重量%以下、さらに好ましくは24重量%以下である。中実糸は、紡糸原液を流すことができる直径0.3mmの円形単孔口金を用い、原液を一定距離の乾式空中部分を通した後に凝固浴に吐出する事により得られる。また、吐出糸が空中での温度変化によってゲル化したり、凝固によって速やかに強固な構造を形成する場合には、乾式部分において冷風を吹き付け、ゲル化を促進させることができる。また、詳細なメカニズムは定かではないが冷風速度を上げて冷却効率を上げることで、糸表面の開孔率や糸外周部近傍の孔径を拡大させることができる。中実糸の糸径は紡糸原液の吐出量によりコントロールする方法が一般的である。
直径0.3mmの円形単孔口金から吐出された紡糸原液は凝固浴にて凝固される。凝固浴は通常、水やアルコールなどの凝固剤、または紡糸原液を構成している溶媒との混合物からなる。通常は水を用いることができる。本発明においては、凝固浴中に先述の陰性荷電を有する官能基をもつ溶液を添加することができる。また、凝固浴の温度をコントロールすることにより、空隙率を変化させることができる。空隙率は紡糸原液の種類等によって影響を受け得るために、凝固浴の温度も適宜選択されるものであるが、一般に凝固浴温度を高くすることにより、空隙率を高くすることが出来る。この機序は正確には明らかではないが、原液からの脱溶媒と凝固収縮との競争反応で、高温浴では脱溶媒が速く、収縮する前に凝固固定されるからではないかと考えられる。しかしながら、凝固浴温度が高くなりすぎると、膜孔径が過大になるため、例えば、中実糸がPMMAを含む膜で、かつ内管に気体を入れる場合の凝固浴温度は39℃以上が好ましく、42℃以上がより好ましい。一方で、55℃以下が好ましく、より好ましくは47℃以下である。このとき、上記した如く、凝固浴に、陰性荷電を有する官能基をもつ溶液を添加することで血液適合性を向上させることが可能である。
次いで、凝固した中実糸に付着している溶媒を洗浄する工程を通過させる。中実糸を洗浄する手段は特に限定されないが、多段の水を張った浴(水洗浴という)中に中実糸を通過させる方法が好んで用いられる。水洗浴中の水の温度は、膜を構成する重合体の性質に応じて決めればよい。例えばPMMAを含む膜である場合、30〜50℃が用いられる。
また、中実糸は水洗浴の後に孔径を保持するために、保湿成分を付与する工程を入れても良い。ここでいう保湿成分とは、中実糸の湿度を保つことが可能な成分、または、空気中にて、中実糸の湿度低下を防止することが可能な成分をいう。保湿成分の代表例としてはグリセリンやその水溶液などがある。
水洗や保湿成分付与の終わった後、収縮性の高い中実糸の寸法安定性を高めるため、加熱した保湿成分の水溶液が満たされた浴(熱処理浴という)の工程を通過させることも可能である。熱処理浴には加熱した保湿成分の水溶液が満たされており、中実糸がこの熱処理浴を通過することで、熱的な作用を受けて、収縮し、以後の工程で収縮しにくくなり、膜構造を安定させることが出来る。このときの熱処理温度は、膜素材によって異なるが、PMMAを含む膜の場合には50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。また、95℃以下が好ましく、87℃以下がより好ましい温度として設定される。
[浄化カラムの作成]
得られた中実糸を用いて浄化カラムとする手段の一例を示すと次の通りである。
まず、中実糸を必要な長さに切断し、必要本数を束ねた後、血液浄化器用モジュールの筒部分(浄化カラムの筒状ケーシング)となるプラスチックケースに入れる。その後、内周面に貫通孔形成用の凸部を有する隔壁部形成用治具をプラスチックケースの両端に仮キャップし、中実糸両端部に中実糸をケースに固定するための樹脂を入れてポッティング工程を行う。浄化カラムが医療用途に供せられる場合、医療用ポッティング樹脂としては、ポリウレタン系樹脂が好ましく用いられる。このとき遠心機でカラムを回転させながら、隔壁形成用治具に突設させたポッティング樹脂注入口、もしくは、カラムのケーシング側面に突設させた注入口(透析液用のポートや樹脂注入口)から樹脂を入れてポッティングする方法は、樹脂が均一に充填されるために好ましい方法である。樹脂が固化して隔壁が形成された後、隔壁部形成用治具を外して、樹脂の両端をカッター等で切断して端面を形成する。この際、隔壁部形成用治具の凸部が貫通孔となる。以上の方法によって、本発明の浄化カラムを作成することができる。
なお、得られた浄化カラムに、ヘッダーキャップと呼ばれる被処理液の入り口、出口ポートを取り付けても良い。
また、医療用具等に用いる際には滅菌を行う必要がある。殺菌、滅菌方法としては、種々の殺菌・滅菌方法、例えば、高圧蒸気滅菌、ガンマ線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、薬剤殺菌、紫外線殺菌などが例示できる。これらの方法のうち、ガンマ線滅菌は滅菌効率が高い一方で材料に与える影響が少なく好ましい。
実施例1
重量平均分子量が40万のsyn−PMMAを31.7重量部、重量平均分子量が140万のsyn−PMMAを31.7重量部、重量平均分子量が50万のiso−PMMAを16.7重量部、パラスチレンスルホン酸ソーダを1.5mol%含む分子量30万のPMMA共重合体20重量部をジメチルスルホキシド376重量部と混合し、110℃で8時間撹拌し紡糸原液を調製した。得られた紡糸原液を、96℃に保温された直径0.3mmの吐出単孔をもつ中実糸用口金から1.1g/minの速度で、空気中に吐出した。糸は、空中部分を38cm走行させた後、凝固浴に導いた。凝固浴に用いた水温(凝固浴温度)を43℃として中実糸を得た。それぞれの中実糸を水洗後、保湿剤としてグリセリンを70重量%水溶液として付与した後、熱処理浴温度を84℃とし、余分のグリセリンを除去した後にスペーサー糸を巻き付けて43m/minで巻き取った。得られた中実糸の糸径は120μmであった。
得られた中実糸をおよそ55000本束ね、中実糸の有効膜面積が4.1mとなるように、胴部内径40mm、両端が拡径され、当該部分の内径が50mmの円形断面を有する筒状のプラスチックケース(両端の近傍に樹脂注入口を有する筒状ケーシング)に有効長(ここで、有効長とは、ケーシング長から隔壁の長さを減じた長さを指す)19.5cmとなるように装填し、モジュールを得た。その後両端にポッティング部形成用治具(隔壁部形成用治具)をセットした。この際、被処理液導入側の端面(隔壁の内壁面)の貫通孔が図4に示す配置で、被処理液排出側の端面(隔壁の内壁面)の貫通孔が図6に示す配置で形成されるように、ポッティング部形成用治具として治具中のモジュール端面(ケーシングの両端部に位置する隔壁の外壁面)との接触面に、凸部を持つものを使用した。図4および6に示す通り貫通孔はそれぞれ8個であるが、被処理液導入側の端面の貫通孔は、図4(および図4を45°回転させた図面である図5)に示すように中心からの距離が7mmのものが4個と、中心からの距離が15mmのものが4個の2種類の貫通孔から成立しているが、被処理液排出側の端面の貫通孔は8個全てが中心から等距離に位置している。A2に存在する貫通孔の面積の総和の割合は、被処理液導入側の隔壁部内壁面では100%、被処理液排出側の隔壁部内壁面では0%であった。遠心機でモジュールを回転させながら樹脂注入口から中実糸両端部に樹脂を入れ、樹脂が固化した後、両端を切断し、中実糸が樹脂で閉塞している部分をカッターで取り除き、ヘッダーと呼ばれる血液入り口、出口ポートを取り付けて図11に示すような浄化カラムを作成した。その結果、被処理液導入側が図4、被処理液排出側が図6のような端面をもつ浄化カラムを得た。得られた浄化カラムの隔壁端面の直径は、被処理液導入側、被処理液排出側のいずれも50mmであり、貫通孔は全て円形であり、一つ当たりの貫通孔の直径は3mmであった。次いで純水でカラム内部を洗浄した後、各ポートをキャップでシールし、フィルムで包装し、γ線照射を行った。
得られた浄化カラムについて、以下に示す方法でβ−MGのクリアランス測定、カラムの圧力損失測定、返血試験を行った。結果を表1に示す。
(1)β−MGのクリアランスの測定方法
吸着カラムの性能評価として、β−MGのクリアランスを測定した。β−MGは、長期透析合併症である透析アミロイドーシスの原因タンパク質であることが知られている。
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを添加した牛血液について、ヘマトクリットが30±3%、総タンパク量が6.5±0.5g/dLとなるように調整した。採血後、5日以内の牛血液を用いた。
次に、β−MG濃度が1mg/lになるように加え、撹拌した。かかる牛血液について、その2Lを循環用に、1.5Lをクリアランス測定用として分けた。
回路を図12のようにセットした。
Bi回路入口部を上記で調整した牛血液2L(37℃)の入った循環用ビーカー内に入れ、流速を200mL/minとしてBiポンプをスタートし、Bo回路出口部から排出される液体90秒間分を廃棄後、ただちにBo回路出口部を循環用ビーカー内に入れて循環状態とした。
循環を1時間行った後ポンプを停止した。
次に、Bi回路入口部を上記で調整したクリアランス測定用の牛血液内に入れ、Bo回路出口部を廃棄用ビーカー内に入れた。
流速は200mL/minとして、ポンプをスタートしてから2分経過後、クリアランス測定用の牛血液(37℃)からサンプルを10ml採取し、Bi液とした。スタートから4分30秒経過後に、Bo回路出口部から流れたサンプルを10ml採取し、Bo液とした。これらのサンプルは−20℃以下の冷凍庫で保存した。
各液のβ−MGの濃度からクリアランスを下記I式によって算出した。牛血液のロットによって測定値が異なる場合があるので、実施例、比較例には全て同一ロットの牛血液を使用した。
Co(ml/min)=(CBi−CBo)×Q/CBi (I)
I式において、C=β−MGクリアランス(ml/min)、CBi=Bi液におけるβ−MG濃度、CB=Bo液におけるβ−MG濃度、Q=Biポンプ流量(ml/min)である。
また、サンプル採取直前に、Bi回路入口部とBo回路出口部それぞれの回路の圧力を測定し、Bi回路入口部の圧力からBo回路出口部の圧力を引いたものをカラムの圧力損失とした。
(2)返血試験
残血評価に用いた牛血は、凝固しないように6.5体積%のACD−A液(テルモ社 コード番号TP−A05ACD)を添加した牛血をヘマトクリット(Ht)値=30(%)、全タンパク質量(TP)=6.0(g/dL)となるように、赤血球および生理食塩水を用いて調整したものを使用した。また、調整牛血および使用する生理食塩水は37℃に加温した状態のものを使用した。血液ポンプを用いて調整牛血1Lを流量100mL/minでBi回路入口部からBo回路出口部方向に5分間流した(導血)。次に、血液ポンプを用いてBi回路入口部からBo回路出口部方向に生理食塩水を流量100mL/minで4分間流した(返血)。4分後のカラム内の残存血液を目視にて評価した。
実施例2
被処理液導入側の端面の貫通孔が図6、被処理液排出側の端面の貫通孔が図4にそれぞれ示す配置で形成されるように、ポッティング部形成用治具として治具中のモジュール端面との接触面に凸部を持つものを使用する以外は実施例1と同一の条件で作成し、被処理液導入側が図6、被処理液排出側が図4のような端面をもつ浄化カラムを得た。得られた浄化カラムの隔壁端面の直径は被処理液導入側、被処理液排出側のいずれも50mmであり、貫通孔は全て円形であり、一つ当たりの貫通孔の直径は3mmであった。A2に存在する貫通孔の面積の総和の割合は、被処理液導入側の隔壁部内壁面では0%、被処理液排出側の隔壁部内壁面では100%であった。その後の工程やその他の条件は実施例1に従った。
得られた浄化カラムについて、実施例1と同様の方法でβ−MGのクリアランス測定、カラムの圧力損失測定、返血試験を行った。結果を表1に示す。
実施例3
実施例1で得られた中実糸をおよそ55000本束ね、中実糸の有効膜面積が4.1mとなるように、実施例1と同じプラスチックケースに有効長19.5cmとなるように装填し、モジュールを得た。その後両端にポッティング部形成用治具をセットした。この際、被処理液導入側、排出側いずれの端面においても貫通孔が図4に示す配置で形成されるように、ポッティング部形成用治具として治具中のモジュール端面との接触面に凸部を持つものを使用した。A2に存在する貫通孔の面積の総和の割合は、被処理液導入側の隔壁部内壁面では100%、被処理液排出側の隔壁部内壁面では0%であった。遠心機でモジュールを回転させながら樹脂注入口から中実糸両端部に樹脂を入れ、樹脂が固化した後、両端を切断し、中実糸が樹脂で閉塞している部分をカッターで取り除き、ヘッダーと呼ばれる血液入り口、出口ポートを取り付けて図11に示すような浄化カラムを作成した。その結果、被処理液導入側、排出側いずれも図4のような端面をもつ浄化カラムを得た。その後の工程やその他の条件は実施例1に従った。
得られた浄化カラムについて、実施例1と同様の方法でβ−MGのクリアランス測定、カラムの圧力損失測定、返血試験を行った。
実施例4
実施例1で得られた中実糸をおよそ55000本束ね、中実糸の有効膜面積が4.1mとなるように、実施例1と同じプラスチックケースに有効長19.5cmとなるように装填し、モジュールを得た。その後両端にポッティング部形成用治具をセットした。この際、被処理液導入側の貫通孔を図4、排出側の貫通孔が図7に示す配置で形成されるように、ポッティング部形成用治具として、治具中のモジュール端面との接触面に凸部を持つものを使用した。A2に存在する貫通孔の面積の総和の割合は、被処理液導入側の隔壁部内壁面では100%、被処理液排出側の隔壁部内壁面では0%であった。遠心機でモジュールを回転させながら樹脂注入口から中実糸両端部に樹脂を入れ、樹脂が固化した後、両端を切断し、中実糸が樹脂で閉塞している部分をカッターで取り除き、ヘッダーと呼ばれる血液入り口、出口ポートを取り付けて図11に示すような浄化カラムを作成した。その結果、被処理液導入側、排出側がそれぞれ図4,図7のような端面をもつ浄化カラムを得た。その後の工程やその他の条件は実施例1に従った。
得られた浄化カラムについて、実施例1と同様の方法でβ−MGのクリアランス測定、カラムの圧力損失測定、返血試験を行った。
実施例5
実施例1で得られた中実糸をおよそ55000本束ね、中実糸の有効膜面積が4.1mとなるように、実施例1と同じプラスチックケースに有効長19.5cmとなるように装填し、モジュールを得た。その後両端にポッティング部形成用治具をセットした。この際、被処理液導入側の貫通孔を図4、排出側の貫通孔が図8に示す配置で形成されるように、ポッティング部形成用治具として、治具中のモジュール端面との接触面に凸部を持つものを使用した。得られた浄化カラムの隔壁端面の直径は被処理液導入側、被処理液排出側のいずれも50mmであり、貫通孔は全て円形であり、一つ当たりの貫通孔の直径は被処理液導入側が3mm、被処理液排出側が0.8mmであった。A2に存在する貫通孔の面積の総和の割合は、被処理液導入側の隔壁部内壁面では100%、被処理液排出側の隔壁部内壁面では0%であった。その後の工程やその他の条件は実施例1に従った。
得られた浄化カラムについて、実施例1と同様の方法でβ−MGのクリアランス測定、カラムの圧力損失測定、返血試験を行った。結果を表1に示す。
比較例1
実施例1で得られた中実糸をおよそ55000本束ね、中実糸の有効膜面積が4.1mとなるように、実施例1と同じプラスチックケースに有効長19.5cmとなるように装填し、モジュールを得た。その後中実糸をカラムの両端で切断し、ポッティングによる固定の代わりに、両端部を直径40mm、厚さ0.5mmのポリエチレンテレフタラート製のメッシュ(繊維径:200μm、目開:435μm)で固定した。次いで純水でカラム内部を洗浄した後、各ポートをキャップでシールし、フィルムで包装し、γ線照射を行った。なお、その他の条件は実施例1に従った。
得られた浄化カラムについて、実施例1と同様の方法でβ−MGのクリアランス測定、カラムの圧力損失測定、返血試験を行った。
比較例2
実施例1で得られた中実糸をおよそ55000本束ね、中実糸の有効膜面積が4.1mとなるように、実施例1と同じプラスチックケースに有効長19.5cmとなるように装填し、モジュールを得た。この際、被処理液導入側の端面(隔壁の内壁面)の貫通孔が図4に示す配置で形成されるように、ポッティング部形成用治具として治具中のモジュール端面(ケーシングの両端部に位置する隔壁の外壁面)との接触面に、凸部を持つものを使用した。図4に示す通り貫通孔はそれぞれ8個であるが、被処理液導入側の端面の貫通孔は、図4(および図4を45°回転させた図面である図5)に示すように中心からの距離が7mmのものが4個と、中心からの距離が15mmのものが4個の2種類の貫通孔から成立している。被処理液導入側のみにポッティング部形成用治具をセットした。一方で、被処理液導出側では隔壁を形成しなかった。得られた浄化カラムの、被処理液導入側隔壁端面の直径は、50mmであり、被処理液導入側が図4のような端面をもつ浄化カラムを得た。その後の工程やその他の条件は実施例1に従った。
得られた浄化カラムについて、実施例1と同様の方法でβ−MGのクリアランス測定、カラムの圧力損失測定、返血試験を行った。
比較例3
重量平均分子量が40万のsyn−PMMAを31.7重量部、重量平均分子量が140万のsyn−PMMAを31.7重量部、重量平均分子量が50万のiso−PMMAを16.7重量部、パラスチレンスルホン酸ソーダを1.5mol%含む分子量30万のPMMA共重合体20重量部をジメチルスルホキシド376重量部と混合し、110℃で8時間撹拌し紡糸原液を調製した。得られた紡糸原液の110℃での粘度は1240poiseであった。得られた紡糸原液を93℃に保温された環状スリット部分の外径/内径=2.1/1.95mmφの2重管中空糸膜用口金から、2.5g/minの速度で、空気中に吐出した。ここで、同時に2重管の内管部分には窒素ガスを注入し、空中部分を50cm走行させた後、凝固浴に導いた。凝固浴に用いた水温(凝固浴温度)を42℃として中空糸膜を得た。それぞれの中空糸膜を水洗後、保湿剤としてグリセリンを63重量%水溶液として付与した後、熱処理浴温度を86℃とし、余分のグリセリンを除去した後にスペーサー糸を巻き付けて60m/minで巻き取った。得られた中空糸膜の内径/膜厚は200/30μmであった。
得られた中空糸膜およそ13000本を公知の方法を用いて束ね、中空糸内側部の有効膜面積が1.6m、中空糸外側部の有効膜面積が2.0mとなるように、部内径40mm、両端が拡径され、当該部分の内径が50mmの円形断面を有する筒状のプラスチックケース(両端の近傍に樹脂注入口を有する筒状ケーシング)に有効長(ここで、有効長とは、ケーシング長から隔壁の長さを減じた長さを指す)19.5cmとなるように装填し、モジュールを得た。その後両端にポッティング部形成用治具(隔壁部形成用治具)をセットした。この際、被処理液導入側の端面(隔壁の内壁面)の貫通孔が図4に示す配置で、被処理液排出側の端面(隔壁の内壁面)の貫通孔が図6に示す配置で形成されるように、ポッティング部形成用治具として治具中のモジュール端面(ケーシングの両端部に位置する隔壁の外壁面)との接触面に、凸部を持つものを使用した。図4および6に示す通り貫通孔はそれぞれ8個であるが、被処理液導入側の端面の貫通孔は、図4(および図4を45°回転させた図面である図5)に示すように中心からの距離が7mmのものが4個と、中心からの距離が15mmのものが4個の2種類の貫通孔から成立しているが、被処理液排出側の端面の貫通孔は8個全てが中心から等距離に位置している。すなわち、A2に存在する貫通孔の面積の総和の割合は、被処理液導入側の隔壁部内壁面では100%、被処理液排出側の隔壁部内壁面では0%であった。遠心機でモジュールを回転させながら樹脂注入口から中空糸両端部に樹脂を入れ、樹脂が固化した後、両端を切断し、中空糸が樹脂で閉塞している部分をカッターで取り除き、ヘッダーと呼ばれる血液入り口、出口ポートを取り付けて図11に示すような浄化カラムを作成した。その結果、被処理液導入側が図4、被処理液排出側が図6のような端面をもつ浄化カラムを得た。得られた浄化カラムの隔壁端面の直径は、被処理液導入側、被処理液排出側のいずれも50mmであり、貫通孔は全て円形であり、一つ当たりの貫通孔の直径は3mmであった。
得られた浄化カラムについて、以下に示す方法でβ−MGのクリアランス測定、カラムの圧力損失測定、返血試験を行った。結果を表1に示す。
Figure 0006375668
以上の結果から、実施例1、2、3、4に係る態様において、比較例1、2の態様に比べてβ−MGクリアランスが高い値を示すことが分かった。
比較例1では、両端をメッシュで封止して、中実糸を隔壁で固定しなかったため、中実糸の内側、外側への被処理液の分配が適切にできなかったと考えられる。また、比較例2は被処理液の導出側に隔壁がないため、カラム内で糸が偏ってしまったことや、出口側の貫通孔がないために被処理液がショートパスしやすくβ−MGクリアランスが低下したと思われる。
また、実施例1〜4を比べると、特に実施例2、3に比べて実施例1ではβ−MGクリアランスが高かったことから、実施例1のように、被処理液の入口側の貫通孔を端面の外周部付近に、出口側の貫通孔を端面の中心部付近に配置することでカラム内の中実糸を最大限有効に使えるものと思われる。一方で、実施例3のように、被処理液の入口側、出口側のいずれの貫通孔も中心部に近い場所に配した場合には、外周部の中実糸の外側を流れる被処理液が少ないために性能が低かったと思われる。また、実施例4については、貫通孔の数および貫通孔の面積が小さい分、外周部への流量が低下したため実施例1に比べてβ−MGクリアランスが低下したと思われる。また、中空糸を充填した比較例3では、返血後も中空部に血液が残存する傾向がみられたが、それ以外の中実糸を充填したカラムについては血液残存はなかった。また、実施例5は、実施例4に比べて圧力損失が大きい。これは、排出側の貫通孔の総面積が、実施例5は、実施例4の1/36と小さいことが原因である。
ケーシング端部における隔壁の内壁面における全体領域
Aの重心Oを重心とする、Aの1/2の相似な形状で囲まれる領域
AからAを除いた領域
O Aの重心
〜A該端面の面積を4等分するような重心Oを通り中心角が90°となる任意の2本の直線で分けられるAの4つの領域
1 隔壁部端面
2 貫通孔
3 浄化カラム
4 Biポンプ
5 廃棄用容器
6 循環用血液
7 クリアランス測定用血液
8 Bi回路
9 Bo回路
10 37℃湯浴
11 筒状ケーシング
12 樹脂注入口
13 隔壁部形成用治具
14 貫通孔形成用の凸部
15 中空糸
16 隔壁
17 ヘッダー

Claims (14)

  1. 両側端部に隔壁が形成された筒状ケーシングを有し、前記ケーシング内に中実糸が収納され、前記中実糸の両端部が前記隔壁部に接着固定された浄化カラムにおいて、前記両端部の隔壁に、隔壁を貫通しケーシング内外を連通する貫通孔を有し、
    前記ケーシング端部における両側隔壁部の内壁面において、各内壁面の全体領域をA とした際に、
    隔壁面における前記貫通孔の個々の面積sが前記領域A の面積の1/8以下であり、
    かつ前記貫通孔の面積の総和S が前記領域A の面積の1/1000以上、1/2以下である、浄化カラム。
  2. 前記ケーシング端部における内壁面において、全体領域をA、Aの重心をOとした際に、
    Aと同様に重心をOとするAの1/2の相似な形状で囲まれる領域をA2
    AからAを除いた領域をA
    とした場合に、次の項目を満足する請求項1に記載の浄化カラム。
    (a)被処理液が導入される側の隔壁部内壁面において、貫通孔の面積の総和の70%以上がAに存在す
    (b)被処理液が排出される側の隔壁部内壁面において、貫通孔の面積の総和の70%以上がAに存在す
  3. 前記ケーシング端部における内壁面において、全体領域をA、Aの重心をOとした際に、
    Aと同様に重心をOとするAの1/2の相似な形状で囲まれる領域をA2
    AからAを除いた領域をA
    とした場合に、次の項目を満足する請求項1に記載の浄化カラム。
    (a)被処理液が導入される側の隔壁部内壁面において、貫通孔の面積の総和の70%以上がAに存在す
    (b)被処理液が排出される側の隔壁部内壁面において、貫通孔の面積の総和の70%以上がAに存在す
  4. 前記ケーシング端部における内壁面において、
    重心Oを通り中心角が90°となる任意の2本の直線で面内をA〜Aの4つの領域に分け、それぞれの領域に存在する貫通孔の面積の総和をそれぞれS〜S
    また、前記2本の直線を、重心Oを中心として45°回転させた2本の直線で面内をA〜A11の4つの領域に分け、それぞれの領域に存在する貫通孔の面積の総和をそれぞれS〜S11
    とした場合に、次の項目を満足する請求項1〜のいずれかに記載の浄化カラム。
    (a)Smax1/Smin1およびSmax2/Smin2がいずれも3.0以下
    (b)A〜Aの4領域およびA〜A11の4領域のそれぞれに、少なくとも1つは他の領域と重ならない独立した貫通孔を持
    ここで、
    max1:S〜Sにおいて最も大きいもの
    min1:S〜Sにおいて最も小さいもの
    max2:S〜S11において最も大きいもの
    min2:S〜S11において最も小さいもの
  5. 前記中実糸の糸径が10μm以上、1000μm以下である請求項1〜のいずれかに記載の浄化カラム。
  6. 前記中実糸が内部に1nm以上、100nm以下の細孔径を持つ請求項1〜のいずれかに記載の浄化カラム。
  7. 前記中実糸の有効長が5〜50cmである請求項1〜のいずれかに記載の浄化カラム。
  8. 被処理液が血液もしくは血漿であり、ウシ血漿を流速200mL/分で流したときの圧力損失が0.5〜10kPaである請求項1〜のいずれかに記載の浄化カラム。
  9. 人工腎臓と直列に接続して用いる請求項1〜のいずれかに記載の浄化カラム。
  10. 中実糸が収納された筒状ケーシングの両端部に隔壁部形成用治具を装着して、前記中実糸の両端部が前記隔壁外部に開口した状態で前記中実糸が前記隔壁に接着固定するように前記ケーシングの両側端部に隔壁部を形成して得られる浄化カラムの製造方法であって、前記隔壁部形成用治具はその内周面に貫通孔形成用の凸部を有する浄化カラムの製造方法。
  11. 前記ケーシング端部における内壁面において、全体領域をA、Aの重心をOとした際に、
    Aと同様に重心をOとするAの1/2の相似な形状で囲まれる領域をA2
    AからAを除いた領域をA
    とした場合に、次の項目を満足する請求項10に記載の浄化カラムの製造方法。
    (a)被処理液が導入される側の隔壁部内壁面において、貫通孔の面積の総和の70%以上がAに存在す
    (b)被処理液が排出される側の隔壁部内壁面において、貫通孔の面積の総和の70%以上がAに存在す
  12. 前記ケーシング端部における内壁面において、全体領域をA、Aの重心をOとした際に、
    Aと同様に重心をOとするAの1/2の相似な形状で囲まれる領域をA2
    AからAを除いた領域をA
    とした場合に、次の項目を満足する請求項10に記載の浄化カラムの製造方法。
    (a)被処理液が導入される側の隔壁部内壁面において、貫通孔の面積の総和の70%以上がAに存在す
    (b)被処理液が排出される側の隔壁部内壁面において、貫通孔の面積の総和の70%以上がAに存在す
  13. 前記ケーシング端部における両側隔壁部の内壁面において、各内壁面の全体領域をA1とした際に、
    隔壁面における前記貫通孔の個々の面積sが前記ケーシング端部領域Aの面積の1/8以下であり、
    かつ前記貫通孔の面積の総和S1が、前記領域Aの面積の1/1000以上、1/2以下である、請求項1012のいずれかに記載の浄化カラムの製造方法。
  14. 前記ケーシング端部における内壁面において、
    重心Oを通り中心角が90°となる任意の2本の直線で面内をA〜Aの4つの領域に分け、それぞれの領域に存在する貫通孔の面積の総和をそれぞれS〜S
    また、前記2本の直線を、重心Oを中心として45°回転させた2本の直線で面内をA〜A11の4つの領域に分けそれぞれの領域に存在する貫通孔の面積の総和をそれぞれS〜S11
    とした場合に、次の項目を満足する請求項1013のいずれかに記載の浄化カラムの製造方法。
    (a)Smax1/Smin1およびSmax2/Smin2がいずれも3.0以下
    (b)A〜Aの4領域およびA〜A11の4領域のそれぞれに、少なくとも1つは他の領域と重ならない独立した貫通孔を持
    ここで、
    max1:S〜Sにおいて最も大きいもの
    min1:S〜Sにおいて最も小さいもの
    max2:S〜S11において最も大きいもの
    min2:S〜S11において最も小さいもの
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