JP2008259802A - 中空糸膜およびこれを内蔵してなる血液浄化器 - Google Patents
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Abstract
本発明の目的は、均一膜構造を有する中空糸膜において、アルブミン漏出を極力抑えつつ、優れたβ2−MG除去性能を有する中空糸膜、およびこれを内蔵した血液浄化器を提供することにある。
【解決手段】
均一膜構造を有する中空糸膜であって、抱液率が170%以上、かつアルブミンふるい係数が5%未満であり、優れたβ2−マイクログロブリン除去性能を有する血液浄化器。
【選択図】 図4
Description
上式によって上記中空糸膜3サンプルについての測定および算出を行い、平均値を抱液率とする。なお、中空糸膜の周りにスペーサーヤーンを導入している場合は、スペーサーヤーンの重量を除いて、A,Bを測定する。
ここで、有効膜面積は次式によって求められる。
有効膜面積(m2)=π×d×L×n/108
d:湿潤時の中空糸膜内径平均値(μm)
L:有効長(ポッティング樹脂で覆われていない中空糸膜部分の平均長さ)(cm)
n:中空糸膜本数
上記最低β2−MGクリアランス値は、各面積品への換算式である、日本医療器材工業会の定める方法(ダイアライザー機能分類実施マニュアル、日本医療器材工業会 平成15年7月25日)における以下に示す換算式に従い、有効膜面積1.6m2に換算したときのβ2−MGクリアランスが50mL/minになるような、他の有効膜面積の値である。なお、実際に測定する際は、中空糸膜内から膜外への濾過が生じている状態(濾過液流量10mL/min/m2)において行うが、この換算式においては、濾過量を0として、クリアランスCL、物質総括係数Ko、面積Aを関係付けている。しかしながら、我々は、濾過量を0としたこの換算式が、後述の実施例に示すように、本発明における中空糸膜のβ2−MGクリアランスと従来のものとの境界線を実に精度よく表すことを見出した。
β2−MGクリアランス=(QBin×CBin−QBout×CBout)/CBin
CBin : 血液入口側のβ2−MGの濃度(mg/L)
CBout: 血液出口側のβ2−MGの濃度(mg/L)
QBin : 血液側入口流量(mL/min)
QBout: 血液側出口流量(mL/min)
ここで、血液側には生物学的製剤基準血液保存液A液(以下ACD−A液とする)を用いて抗凝固したタンパク濃度6〜7g/dLの牛血漿溶液を用い、β2−MGの牛血漿中濃度が1mg/Lとなるように濃度を調整し、予め60分間閉鎖循環したモジュールを使用する。血液側入口の牛血漿を未循環のものに交換し、シングルパス回路に切り替え、5分後の溶液を採取し、それぞれの溶液の濃度を測定する。濃度の測定は、ELISA法やラテックス凝集免疫測定法(参考文献として医療と検査機器・試薬26(2)127−134、2003がある)を用いて測定することが出来る。β2−MGのクリアランスの単位はmL/minとなり、血液側溶液中、溶液からどれくらいのβ2−MGが除去されたのかを示し、数値が大きいほど血液透析器等の血液中β2−MGの除去性能が高いことを示す。
アルブミンふるい係数およびβ2−MGのクリアランスは次のようにして測定した。
1.ACD−A液を用いて抗凝固した牛血液を遠心分離して得た牛血漿に、β2−MGを1mg/Lとなるように添加し、タンパク濃度6.5g/dLの牛血漿溶液を調整する。
2.透析会誌29(8)1231−1245、1996記載の閉鎖循環回路を用いて、血液側(中空糸膜内側)流量(QBin)200mL/min、濾過液流量10mL/min/m2の条件で2Lの牛血漿溶液を個人用透析装置(TR3000S、東レ製)を用いて循環する。
3.循環開始59〜60分の間に血液入口側液、血液出口側液および濾液を採取し、アルブミンふるい係数測定用サンプルとする。
4.循環を停止し、血液側供給液を新しい牛血漿溶液に交換し、透析会誌29(8)1231−1245、1996記載のシングルパス回路を用いて血液側(中空糸膜内側)流量(QBin)200mL/min 、透析液側(中空糸膜外側)流量(QDin )500mL/min、濾過液流量10mL/min/m2で個人用透析装置を用いて流す。透析液側には、人工腎臓様透析液キンダリー(登録商標)液(AF−2号、扶桑薬品工業製)を用いる。
5.シングルパス送液開始後4〜5分の間に血液入口側液および血液出口側液を採取し、β2−MGのクリアランス測定用サンプルとする。
6.3.のサンプル中のアルブミン濃度をアルブミン・グロブリン比測定用キット(A/G B−テストワコー、Code274−24301、和光純薬製)を用いたBCG法で測定する。
アルブミンふるい係数は以下の式により算出される。
アルブミンふるい係数(%)=2CF/(CBin+CBout)×100
CBin : 血液入口側のアルブミンの濃度(g/dL)
CBout: 血液出口側のアルブミンの濃度(g/dL)
CF : 濾液のアルブミンの濃度(g/dL)
7.5.のサンプル中のβ2−MG濃度をラテックス凝集免疫測定法を用いて測定する(参考文献として医療と検査機器・試薬26(2)127−134、2003がある)。
β2−MGクリアランスは以下の式により算出される。
β2−MGクリアランス=(QBin×CBin−QBout×CBout)/CBin
CBin : 血液入口側のβ2−MGの濃度(mg/L)
CBout: 血液出口側のβ2−MGの濃度(mg/L)
QBin : 血液側入口流量(mL/min)
QBout: 血液側出口流量(mL/min)
(抱液率の測定)
抱液率は、次のようにして測定した。
1.人工腎臓の血液側および透析液側に、減圧ポンプで20分間脱気した蒸留水を100mL/minで10分間流し、中空糸膜内の空気を追い出す。
2.63重量%のグリセリン水溶液(20℃における屈折率1.417)を流速40mL/minにて血液側入口側→血液出口側→透析液出口側→透析液入口側の順に30分間流す。
3.透析液入口側液の屈折率を手持屈折計(R−5000、ATAGO製)を用いて測定し、1.417となったことを確認する。
4.3.の人工腎臓の両端をケースごと切断し、中空糸膜束を取り出す。
5.糸束、中心部付近の中空糸膜480本を取り出し、両側を切断して、長手方向における中央部付近の5cmの長さの部分を残し、1サンプルとして、1本の人工腎臓から合計3サンプル準備する。
6.5.のサンプルを遠心分離器(CF9RX形、T3S51ローター、日立工機製)を用いて2150×gの遠心加速度(3000rpm)にて30分間遠心脱液する。
7.6.にて遠心脱液した中空糸膜の重量を秤量し、グリセリン水溶液が付着した中空糸膜束の重量Aとする(秤量した重量から各実施例、比較例において中空糸膜周りに巻くスペーサー糸の重量を減じて重量Aとする)。
8.6.を40℃に加温した蒸留水100mL中で60分振盪する操作を3回繰り返す。
9.蒸留水を切り、40℃にて24時間以上減圧乾燥を行った後、中空糸膜の重量を測定し、7.と同様にスペーサー糸の重量を減じて中空糸膜のみの重量Bとする。
10.再度数時間減圧乾燥を行い、直ちに重量を再度測定し、その後の重量変化が無いことを確認する。
11.抱液率は次式によって計算する。抱液率=(A−B)/B×100(%)
12.1本の人工腎臓から得た3サンプルの平均値を算出しその人工腎臓に内蔵される中空糸膜の抱液率とする。
(膜の陰性荷電量の測定)
陰性荷電量は次のようにして測定した。
(実施例1−31)
重量平均分子量が51万のアイソタクチックポリメチルメタクリレート(iso−PMMA)3.5重量部と、重量平均分子量が89万のシンジオタクチックポリメチルメタクリレート(syn−PMMA)13.3重量部と、パラスチレンスルホン酸ソーダを1.5mol%含む分子量30万の共重合シンジオタクチックポリメチルメタクリレート(syn−PMMA)4.2重量部をジメチルスルホキシド79重量部と混合し、110℃で8時間撹拌し紡糸原液を調製した。
(比較例1−5)
実施例1におけるパラスチレンスルホン酸ソーダを1.5mol%含む分子量30万の共重合シンジオタクチックポリメチルメタクリレート(syn−PMMA)以外の化合物を混合し、同様にして中空糸膜を得た。それぞれの中空糸膜の内径/膜厚は200/30μmであった。それぞれ中空糸膜を束ねて有効膜面積1.6m2の人工腎臓を作成し、β2−MGクリアランス、抱液率、アルブミンふるい係数を測定した。結果を表2に示す。陰性荷電基を含有しないポリメチルメタクリレートのみから得られた人工腎臓の抱液率は何れも160%を超えることはなく、アルブミンふるい係数が1%を超えるものであってもβ2−MGクリアランスは50mL/min以上となることはなかった。
(比較例6)
実施例1の方法と同様の方法を用い、凝固浴温度を38℃に変更して中空糸膜を得た。それぞれの中空糸膜の内径/膜厚は200/30μmであった。この中空糸膜を束ねて有効膜面積1.6m2の人工腎臓を作成し、β2−MGクリアランス、抱液率、アルブミンふるい係数を測定した。結果を表2に示す。抱液率が170%を超えるものであってもアルブミンふるい係数が低いものはβ2−MGクリアランスは50mL/minに満たなかった。
(比較例7)
重量平均分子量が51万のアイソタクチックポリメチルメタクリレート(iso−PMMA)4.5重量部と、パラスチレンスルホン酸ソーダを1.5mol%含む重量平均分子量が89万のシンジオタクチックポリメチルメタクリレート(syn−PMMA)14.9重量部と、パラスチレンスルホン酸ソーダを1.5mol%含む分子量30万の共重合シンジオタクチックポリメチルメタクリレート(syn−PMMA)7.9重量部をジメチルスルホキシド73重量部と混合し、110℃で8時間撹拌し紡糸原液を調製した。原液調整以外は実施例1の方法と同様の方法を用いて得た中空糸膜を束ねて有効膜面積1.3m2の人工腎臓を作成し、β2−MGクリアランス、抱液率、アルブミンふるい係数を測定した。結果を表2に示す。原液ポリマ濃度が高いと陰性荷電を帯びていても抱液率は低く、β2−MGクリアランスも低かった。
2:中空糸膜
3:ポッティング材
4a:血液導入用ヘッダーキャップ
4b:血液導出用ヘッダーキャップ
5a、b:開口面
6a、b:処理液導出用ノズル
7:人工腎臓
8:黒四角マーク:膜面積1.6m2の実施例1〜11
9:白菱形マーク:膜面積1.6m2の比較例1〜6
10:黒四角マーク:実施例1〜31
11:白菱形マーク:比較例1〜7
Claims (11)
- 均一膜構造を有し、抱液率が170%以上、アルブミンふるい係数が5%未満、かつ有効膜面積が2.1m2の血液浄化器モジュールのβ2−マイクログロブリンクリアランスが62mL/min以上であることを特徴とする中空糸膜。
- 均一膜構造を有し、抱液率が170%以上、アルブミンふるい係数が5%未満、かつ有効膜面積が1.8m2の血液浄化器モジュールのβ2−マイクログロブリンクリアランスが55mL/min以上であることを特徴とする中空糸膜。
- 均一膜構造を有し、抱液率が170%以上、アルブミンふるい係数が5%未満、かつ有効膜面積が1.6m2の血液浄化器モジュールのβ2−マイクログロブリンクリアランスが50mL/min以上であることを特徴とする中空糸膜。
- 均一膜構造を有し、抱液率が170%以上、アルブミンふるい係数が5%未満、かつ有効膜面積が1.3m2の血液浄化器モジュールのβ2−マイクログロブリンクリアランスが42mL/min以上であることを特徴とする中空糸膜。
- 均一膜構造を有し、抱液率が170%以上、アルブミンふるい係数が5%未満、かつ有効膜面積が1.0m2の血液浄化器モジュールでのβ2−マイクログロブリンクリアランスが34mL/min以上であることを特徴とする中空糸膜。
- 均一膜構造を有し、抱液率が170%以上、アルブミンふるい係数が5%未満、かつ有効膜面積をAm2としたときのβ2−マイクログロブリンクリアランスが25.574A+8.7049mL/min以上であることを特徴とする中空糸膜。
- 前記膜がβ2−マイクログロブリン吸着特性を有する素材を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の中空糸膜。
- 前記膜が陰性荷電を有する素材を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の中空糸膜。
- 前記膜がポリメチルメタクリレートを含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の中空糸膜。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の中空糸膜が内蔵されたことを特徴とする血液浄化器。
- 人工腎臓であることを特徴とする請求項10に記載の血液浄化器。
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