JP2006341087A - 人工腎臓 - Google Patents

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Abstract

【課題】酸化LDL除去率、エンドトキシン流入阻止能ともに優れた、高性能の人工腎臓を提供することにある。
【解決手段】中空糸膜内表面のゼータ電位が15mV〜100mVで、かつ膜全体の総荷電量が30μeq/g以下であり、β−ミクログロブリンクリアランスが30ml/min以上有することを特徴とする中空糸膜型人工腎臓である。
【選択図】図1

Description

本発明は高性能な中空糸膜を用いてなり、血液中の酸化低密度リポ蛋白などの過酸化脂質を除去し、エンドトキシンの血液への流入が少ない中空糸膜型人工腎臓に関する。
従来、血液体外循環の分野、とくに血液透析や血漿分離等には中空糸膜を用いた中空糸膜型血液処理器が広く使用され、特に透析膜、血液成分分離膜等の分野においては、高分子製中空糸膜が広く利用されている。近年、β−ミクログロブリンなどの中・高分子量の病因タンパク質を多く除去できる、孔径が大きな高性能タイプの中空糸膜が主流を占めるようになってきている。このような高性能タイプの中空糸膜の普及とともに、エンドトキシンが透析液から血液へ流入することが懸念されている。エンドトキシンが血液に流入すると、発熱、白血球減少、血圧低下、ショックなどの症状を引き起こす。また、検出限界以下の微量であっても、継続的に血液に流入することで、透析合併症の一因になっている可能性も指摘されている。
また、長期的に血液透析を行っている患者の中には、血中抗酸化作用の低下や過酸化脂質が高値であるなどの知見が確認されており、これに起因すると思われる長期透析患者の動脈硬化性疾患等が増加している。実際に、これまで市販されているセルロース膜、ポリメチルメタクリレート膜、エチレンービニルアルコール膜、ポリスルホン/ポリビニルピロリドンブレンド膜などに代表される透析膜では過酸化脂質を除去することはできない。むしろ、透析後に透析膜による刺激のため、血中の過酸化脂質の値が増加する傾向にある(非特許文献1)。
動脈硬化巣の形成に重要な役割を担っている泡沫細胞は、酸化的変質を受けた脂質特に低密度リポ蛋白(以下、LDLという)がマクロファージに取り込まれた結果、そのマクロファージが泡沫化したものである。 従って、血中から過酸化脂質、特に酸化LDLを除去することが望まれている。
このような問題を解決するために、酸化LDLが陰性電荷を帯びていることに着目し、カチオン性物質を中空糸膜に導入することで、吸着除去する方法が特許文献1や特許文献2に開示されている。また、このような、カチオン性物質の膜への効率的な導入方法として、特許文献3には、カチオン性物質を中空糸膜に付着した状態で放射線照射することが開示されている。
しかしながら、これらの方法は、血液中の酸化LDLなどの過酸化脂質を除去することのみを目的としており、透析液に存在するエンドトキシンに関しては、考慮されていなかった。エンドトキシンは陰性荷電を有しているので、膜全体が過度に陽性荷電を帯びている膜では、エンドトキシンの吸着がおこり、膜近傍のエンドトキシン濃度が高くなる。そのため血液へ流入する可能性が大きい。特に、高いβ−ミクログロブリン除去性能をもつ高性能な膜が、過度に陽性電荷を帯びることに対しては、大きな問題となる可能性が考えられる。
すなわち、高性能な中空糸膜で、血液中の酸化LDLなどの過酸化脂質を除去し、エンドトキシンの血液への流入が少ない中空糸膜型人工腎臓はこれまでに存在していなかった。
特開2002−028461号公報 特開2003−250885号公報 特開2002−102692号公報 腎と透析別冊、38:125(1995)
本発明の目的は、高性能な中空糸膜を用いてなり、血液中の酸化LDLなどの過酸化脂質を除去し、エンドトキシンの血液への流入が少ない中空糸膜型人工腎臓を提供することである。
本発明は上記課題を達成するため、以下の構成を有する。
(1)中空糸膜内表面のゼータ電位が15mV〜100mVで、かつ膜全体の総荷電量が30μeq/g以下であり、β−ミクログロブリンクリアランスが30ml/min以上であることを特徴とする中空糸膜型人工腎臓。
(2)ET透過率が0.006%以下であることを特徴とする(1)に記載の中空糸膜型人工腎臓。
(3)酸化低密度リポ蛋白除去率が30%以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の中空糸膜型人工腎臓
(4)中空糸膜内表面にカチオン性物質が含まれていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の中空糸膜型人工腎臓。
(5)中空糸膜外表面にアニオン性物質が含まれていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の中空糸膜型人工腎臓。
(6)前記カチオン性物質が、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アミノ基、ピロール基、ピラゾール基、イミダゾール基、インドール基、ピリジン基、ピリダジン基、キノリン基、ピペリジン基、ピロリジン基、チアゾール基、プリン基、のうちのいずれか1つ以上を含有していることを特徴とする(4)または(5)に記載の中空糸膜型人工腎臓。
(7)前記アニオン性物質が、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、チオカルボキシル基のうちいずれか1つ以上を含有していることを特徴とする(5)または(6)に記載の中空糸膜型人工腎臓。
(8)前記カチオン性物質およびアニオン性物質が高分子であることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれかに記載の中空糸膜型人工腎臓。
(9)前記中空糸膜が内表面に緻密層を有する非対称膜構造であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の中空糸膜型人工腎臓。
(10)人工腎臓に内蔵される中空糸膜がポリスルホン系ポリマーを含有していることを特徴とする、(1)〜(9)のいずれかに記載の中空糸膜型人工腎臓。
本発明により、高性能な中空糸膜を用いてなり、血液中の酸化LDLなどの過酸化脂質を除去し、エンドトキシンの血液への流入が少ない中空糸膜型人工腎臓を提供することができる。
本発明は中空糸膜内表面のゼータ電位が15mV〜100mVで、かつ膜全体の総荷電量が30μeq/g以下であり、β−ミクログロブリンクリアランスが30ml/min以上有することを特徴とする中空糸膜型人工腎臓である。
本発明でいうところの中空糸膜型人工腎臓とは、中空糸膜を内蔵したモジュールであり、血液透析等に用いられる。血液透析とは、腎疾患の患者に対して行う治療である。患者から血液を抜き出し、モジュールを通して、再び患者の体へ血液を戻す。その際モジュールで吸着や濾過、拡散によって血中の老廃物や有害物質の除去と除水を行う。長期的に血液透析を行っている患者の血液においては、酸化LDLなどの過酸化脂質が高値であることが確認されているが、いったん生成した酸化LDLを透析によって除去することはできない。そのため、膜への吸着によって除去することになる。このとき、酸化LDLなどの過酸化脂質は陰性電荷を帯びているため、中空糸膜の電荷を陽性にすることが必要である。しかしながら、中空糸膜全体が陽性であった場合に、エンドトキシンの血液側への流入という問題が生じる。
エンドトキシンは陰性荷電を有しているため、陽性荷電膜に吸着する。そのため、陽性荷電膜ではエンドトキシンの吸着によって膜近傍のエンドトキシン濃度が高くなり、血液側への透過量が多くなることが指摘されている。
すなわち、中空糸膜は酸化LDL吸着除去の面では陽性荷電膜が好ましく、エンドトキシンの透過抑制という面では陰性荷電膜が好ましい。ここで、酸化LDLの吸着は中空糸膜内表面で起きる現象であり、エンドトキシンの吸着は中空糸膜外表面で起きる現象であることに着目した。そこで、本発明においては、血液と接触する中空糸膜内表面が陽性荷電を有し、かつ膜へのエンドトキシンの吸着をおこさないために膜全体では陽性電荷が低い中空糸膜を用いた。その結果、高性能な中空糸膜においても、酸化LDLの吸着除去とエンドトキシンの透過抑制を両立した中空糸膜型人工腎臓を得ることができた。
中空糸膜内表面の電荷は、ゼータ電位測定によって知ることができる。ゼータ電位測定装置を用いて、セルに測定液を流したときのセル両端の圧力差と電位差を測定し、その値と測定液の比導電率によって、計算よりゼータ電位が求められる。このゼータ電位は、測定されるセルのうち、測定液が接する表面についての測定結果となる。ここで、測定液が中空糸膜内表面と接するようなセルを用いることで、中空糸膜内表面のゼータ電位を測定できる。測定方法の詳細は後述する。酸化LDLを有意に吸着するためには、内表面のゼータ電位は15mV以上が必要であり、好ましくは20mV以上である。また、陽性荷電が強すぎると、血小板の活性化などを引き起こし、血液適合性が低下するため、内表面のゼータ電位は100mV以下、好ましくは50mV以下であることが必要である。以上のことから、中空糸膜内表面のゼータ電位は、15mV以上、100mV以下、好ましくは20mV以上、50mV以下である。
膜全体の総荷電量は、酸・塩基滴定法によって求められる値である。測定方法は、実施例にて詳細を後述する方法またはこれに準じた方法によって行うことができる。膜全体が、過度に陽性を帯びていると、エンドトキシンの吸着が起こりやすい。そのため、総荷電量が30μeq/g以下、好ましくは0μeq/g以下であることが求められる。なお、膜全体が強い陰性を帯びると、血液中のリンなどの陰性電解質が、膜で静電的に反発するため、血液からの除去率が低下する傾向を示す。そのため、特に限定されるわけではないが、総荷電量が−50μeq/g以上であることが好ましい。
酸化LDL除去率の測定方法は実施例にて詳細を後述する方法またはこれに準じた方法によって行うことができるが、LDLを人工的に酸化して健常者の血液に添加し、それをミニモジュールで環流した時の環流前後の濃度から、(1)式で求めることが出来る。
r=100×(Ci−Co)/Ci (1)
(1)式において、r=酸化LDL除去率(%)、Co=環流後の酸化LDL濃度(μg/ml)、Ci=環流前の酸化LDL濃度(μg/ml)である。
酸化LDLの除去率は高いほうが好ましい。1回の透析治療によって、血中の酸化LDL濃度は、数十%以上増加すると言われている。したがって、ミニモジュールのin vitro試験において、30%以上の除去率、さらには40%以上の除去率を有していることが好ましいと考えられる。
エンドトキシン透過率の測定方法は実施例にて詳細を後述する方法またはこれに準じた方法によって行うことができるが、濃度既知のエンドトキシン水を人工腎臓の透析液側から血液側に濾過をかけて通水し、血液側から流出した液体に含まれるエンドトキシンの濃度から、(2)式で求めることが出来る。
T=Eo÷Ei×100 (2)
(2)式において、T=エンドトキシン透過率(%)、Eo=血液側から流出した液体のエンドトキシン濃度(EU/ml)、Ei=エンドトキシン水のエンドトキシン濃度(EU/ml)である。
エンドトキシンが血液中に混入すると、高濃度では発熱などの急性反応を引き起こし、低濃度でも慢性的な暴露により、動脈硬化や貧血など種々の合併症を引き起こす。したがって、エンドトキシンの血液側への流入は少ないほうが好ましい。具体的にはエンドトキシン透過率は0.006%以下が好ましく、さらには、0.002%以下がより好ましい。
中空糸膜内表面を陽性荷電にし、中空糸膜全体を陰性荷電にするには、陰性荷電を有する中空糸膜の内表面にカチオン性物質を適度に存在させることによって、達成することができる。陽性荷電を有する中空糸膜の外表面にアニオン性物質を適度に存在させることによっても、達成することができる。または、内表面にカチオン性物質、外表面にアニオン性物質をそれぞれ適度に存在させてもよい。
ここで、中空糸膜表面のカチオン性物質およびアニオン性物質の量は、中空糸膜内表面および、中空糸膜外表面の電荷に影響を与える。そのため、該物質の量が過剰もしくは不足すると、前述したように、酸化LDL吸着除去能の低下、血小板の活性化、エンドトキシン透過量の増大、およびリンなどの陰性荷電物質の除去量の低下といった問題が懸念される。そのため、カチオン性物質およびアニオン性物質は適切な量を存在させることが好ましい。特に限定しないが、カチオン性物質およびアニオン性物質を適度な量存在させるには、例えばこれらの物質が官能基を1つだけ有している場合、中空糸膜内表面積1mあたり0.0003〜1.5mol導入するのが好ましい、さらに、中空糸膜内表面積1mあたり0.00075〜0.015mol導入するのがより好ましい。カチオン性物質およびアニオン性物質が官能基を複数有している場合は、官能基の種類や個数に応じて導入量を加減するとよい。すなわち、同様の官能基を2つ有している場合は、官能基が1つの場合に比べて半分の量が好適な値となる。なお、カチオン性物質およびアニオン性物質は、その種類によって導入効率や荷電が異なるため、適切なモジュールへの導入量は大きく異なる場合がある。また、導入する中空糸膜の種類によっても、膜本来の荷電が違うことから、適切な導入量が異なる場合がある。
中空糸膜を陽性荷電にするには、カチオン性物質を適度に存在させることによって、達成することができる。カチオン性物質が存在するとは、中空糸膜にカチオン性物質が化学結合や吸着をおこしていることを指す。ここでいうところのカチオン性物質とは、pH4.5において、電荷が1meq/g以上の物質のことを指す。なかでも、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アミノ基、ピロール基、ピラゾール基、イミダゾール基、インドール基、ピリジン基、ピリダジン基、キノリン基、ピペリジン基、ピロリジン基、チアゾール基、プリン基、などの官能基を有している物質が好適に用いられる。入手のしやすさから、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ジエチルアミノエチルデキストラン、ポリリジン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ビニルイミダゾリウムメトクロライドとビニルピロリドンとの共重合体などが好適に用いられる。また、2種類以上のカチオン性物質を併用して用いてもよい。
アニオン性物質が存在するとは、中空糸膜にアニオン性物質が化学結合や吸着をおこしていることを指す。ここでいうところのアニオン性物質とは、pH9.5において、電荷が1meq/g以上の物質のことを指す。なかでも、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、チオカルボキシル基、硫酸基などの官能基を有している物質が好適に用いられる。入手のしやすさから、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリリン酸、デキストラン硫酸などが好適に用いられる。また、2種類以上のアニオン性物質を併用して用いてもよい。
中空糸膜内表面が陽性荷電を有し、膜全体では陽性電荷が低い中空糸膜を得るためには、上記のようなカチオン性物質を、中空糸膜内表面に多く存在させることによって達成できる。また、アニオン性物質を中空糸膜外表面に多く存在させることによっても達成できる。特に限定されるわけではないが、外表層に比べて内表層のカチオン性物質の密度が2倍以上であることが好ましい。または、外表層に比べて内表層のアニオン性物質の密度が1/2以下であることが好ましい。ここでいうところの内表層とは、中空糸膜内側の表面から深さ3μmまでの領域を指し、外表層とは、中空糸膜外側の表面から深さ3μmまでの領域を指す。
内表層および外表層に導入された物質の密度は、例えば、中空糸膜の断面をTOF−SIMSにて測定し、導入された物質の相対量から求められる。
膜表面にカチオン性物質またはアニオン性物質を多く存在させるには、中空糸膜成型時に導入する方法と、中空糸膜成形後に導入する方法が挙げられる。
中空糸膜の成型は、中空糸膜原液を二重環状口金から吐出する際に内側に注入液を流し、乾式部を走行させた後、凝固浴へ導くことで得られる。このとき注入液中にカチオン性物質を添加することで、中空糸膜内表面にカチオン性物質を付与することができる。また、凝固浴にアニオン性物質を添加することで、中空糸膜外表面にアニオン性物質を付与することができる。

さらに、中空糸膜を人工腎臓モジュールに組み込んだ後、カチオン性物質またはアニオン性物質を付与することもできる。すなわち、中空糸膜内表面側にカチオン性物質溶液を通液するか、中空糸膜外表面側にアニオン性物質溶液を通液すればよい。すると、カチオン性物質またはアニオン性物質と中空糸膜表面の間に、静電相互作用、疎水性相互作用、親水性相互作用などの分子間力による吸着、または化学結合がおこる。
カチオン性物質溶液を通液する際に、血液側から透析液側に濾過をかけると、膜の中空糸膜内表面に効率的に導入できるので、好ましい。また、アニオン性物質溶液を通液する際に、透析液側から血液側に濾過をかけると、膜の中空糸外表面に効率的に導入できるので、好ましい。ここでいう濾過とは、膜を通して、物質が濾されることをいう。濾過がかかった状態とは、濾される溶液の通液流量の1%以上好ましくは10%以上、さらに好ましくは50%以上が濾液として出てきている状態をいう。中空糸膜の場合は、血液側、透析液側のそれぞれの流量から計算すればよい。このとき、使用するカチオン性物質およびアニオン性物質としては、その大部分が膜を透過してしまうような、分子量の小さい物質は不適であり、高分子であることが好ましい。つまり、中空糸内表面の陽性荷電を強くしようとすると、中空糸膜内孔部にも多くのカチオン性物質が導入されるため、膜全体が過度に陽性荷電を帯びてしまう。同様に、中空糸膜外表面の陰性荷電を強くしようとする場合も、中空糸膜内表面側にも多くのアニオン性物質が導入されるため、中空糸膜内表面の陽性荷電を弱めてしまう。このため、カチオン性物質およびアニオン性物質は、重量平均分子量が5万以上、好ましくは50万以上の高分子が好適に用いられる。
また、カチオン性物質溶液またはアニオン性物質溶液を通液した後に、カチオン性物質およびアニオン性物質を含まない液によって同一方向に濾過をかけると、カチオン性物質またはアニオン性物質が効率的に導入されるので好ましい。充填液中に残留しているカチオン性物質またはアニオン性物質が中空糸膜表面に導入されるためである。
なお、カチオン性物質溶液およびアニオン性物質溶液の溶媒としては、中空糸膜が変形しないものであれば、特に限定しないが、安全性の面から考えて水もしくはアルコールなどが好適に用いられる。カチオン性物質およびアニオン性物質の濃度としては、該物質の種類にもよるが、一般的には、1重量ppmから50wt%、好ましくは10重量ppmから10wt%の範囲である。50wt%を超えると、コストに見合った膜への導入量が得られない。また、10重量ppm未満になると、カチオン性物質の量が少ないため、導入効率が悪くなる。
また、人工腎臓などの医療用具は滅菌することが必要であり、近年は残留毒性の少なさや簡便さの点から、放射線滅菌法が多用されており、特に、γ線や電子線が好適に用いられている。例えば、血液浄化用モジュールをγ線で滅菌するには15kGy以上の線量照射が好ましいとされている。また、放射線照射によってラジカルが発生し、導入された物質と中空糸膜の間に化学結合が形成されることがある。したがって、このような場合、導入された物質の溶出量が低下するので好ましい方法である。
また、γ線滅菌によって変性しやすいポリマーが存在する場合には、充填液にピロ亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、エタノール、メタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、グリセリン、グルコース、エチレングリコールなどのラジカルスカベンジャーを添加することが好ましい。
中空糸膜は、医療用に用いられている素材が好ましく、例えば、セルロース系ポリマー、ポリメチルメタクレート、ポリアクリルニトリル、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系ポリマーなどが挙げられる。この中でも特にポリスルホン系ポリマーを用いることで、β−ミクログロブリンのクリアランスが高い中空糸膜を得ることができるため、好適に用いられる。
β−ミクログロブリンは、分子量11500のタンパク質であり、その蓄積により、透析アミロイド症などの長期合併症を引き起こす。現在では、市販の人工腎臓のほとんどが、β−ミクログロブリンのクリアランスが10ml/min以上であるII型透析器である。しかしながら、近年では、ポリスルホン系の中空糸膜の普及によってβ−ミクログロブリンのクリアランスが30ml/min以上の高性能タイプの人工腎臓が主流になっている。
中空糸膜の構造が内表面に緻密層を有する非対称膜構造であれば、β−ミクログロブリンクリアランスを高くすることが可能であるために、本発明においては、特に好適に用いられる。ここで、内表面に緻密層を有する非対称膜構造とは、内表面から膜厚方向に200nm以内の領域の空隙率が60%以下、外表面から膜厚方向に200nm以内の領域の空隙率が70%以上の構造をもつ中空糸膜のことを言う。空隙率の算出方法としては、中空糸膜の長手方向に100nm以下の長さを有する中空糸膜断面の超薄膜切片を作成し、透過型電子顕微鏡で切片を5万倍に拡大した画像を撮る。画像のコントラストを上げるために、適宜、染色を行っても良い。また、透過型電子顕微鏡による画像はサンプルの投影像であるから、観察する切片が厚くなるほど、空隙率は低く算出される。したがって、切片厚みは極力薄くすることが好ましい。得られた電子顕微鏡の画像から表面近傍の空隙率を算出する。空隙率を算出する領域は、表面を0点として、厚み方向に0〜200nm、表面と平行方向に幅3μmの長方形領域とする。
空隙率は、画像処理装置により求められる空隙部分の総面積から、(3)式で求めることができる。
空隙率=(S1/S2)×100(%) (3)
(3)式において、S1=空隙部分の総面積、S2=画像処理を行う部分の総面積である。
なお、表面が湾曲していたり、凹凸がある場合は、最も凹んでいる部分を0nmとする。また、表面が不明瞭な場合、膜中のコントラストのもっとも高い部分と、膜ではない箇所のコントラストがもっとも低い部分の中間値を表面とする。
本発明で用いられるポリスルホン系ポリマーは、主鎖に芳香環、スルフォニル基およびエーテル基をもつもので、例えば、次式(1)、(2)の化学式で示されるポリスルホンが好適に使用されるが、本発明ではこれらに限定されない。式中のnは、例えば50〜80の如き整数である。
Figure 2006341087
ポリスルホンの具体例としては、ユーデル(登録商標)ポリスルホンP−1700、P−3500(ソルベイ社製)、ウルトラゾーン(登録商標)S3010、S6010(BASF社製)、ビクトレックス(登録商標)(住友化学)、レーデル(登録商標)A(ソルベイ社製)、ウルトラゾーン(登録商標)E(BASF社製)等のポリスルホンが挙げられる。又、本発明で用いられるポリスルホンは上記式(1)及び/又は(2)で表される繰り返し単位のみからなるポリマーが好適ではあるが、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーと共重合していても良い。特に限定するものではないが、他の共重合モノマーは10重量%以下であることが好ましい。
人工腎臓の製造方法についての一例を示す。人工腎臓に内蔵される中空糸膜の製造方法としては、つぎのような方法がある。すなわち、ポリスルホンおよびポリビニルピロリドンを良溶媒または良溶媒を含む混合溶媒に溶解させたものを原液とする。ポリマー濃度は、10〜30wt%が好ましく、15〜25重量%がより好ましい。ポリスルホンおよびポリビニルピロリドンの重量比率は、20:1〜1:5が好ましく、5:1〜1:1がより好ましい。良溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサンなどが好ましい。該原液を二重環状口金の外側の管から吐出し、乾式部を走行させた後凝固浴へ導く。二重環状口金の内側の管からは、中空部を形成するための注入液もしくは気体を吐出する。この際、乾式部の湿度が影響を与えるために、乾式部走行中に膜外表面からの水分補給によって、外表面近傍での相分離挙動を速め、孔径拡大し、結果として透析の際の透過/拡散抵抗を減らすことも可能である。ただし、相対湿度が高すぎると外表面での原液凝固が支配的になり、かえって孔径が小さくなり、結果として透析の際の透過/拡散抵抗を増大する傾向がある。そのため、相対湿度としては60〜90%が好適である。また、注入液組成としては、プロセス適性から、原液に用いた溶媒を基本とする組成からなるものを用いることが好ましい。注入液濃度としては、例えばジメチルアセトアミドを用いたときは、45〜80重量%、さらには60〜75重量%の水溶液が好適に用いられる。
中空糸膜をモジュールに内蔵する方法としては、特に限定されないが、一例を示すと次の通りである。まず、中空糸膜を必要な長さに切断し、必要本数を束ねた後、筒状ケースに入れる。その後両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング剤を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング剤を入れる方法は、ポッティング剤が均一に充填されるために好ましい方法である。ポッティング剤が固化した後、中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断し、ヘッダーを取り付けることで中空糸膜モジュールを得る。
上記のようにして得られた中空糸膜型人工腎臓の基本構造の一例を図1に示す。図1中、1は動脈側ヘッダー、2は静脈側ヘッダー、3は血液側入口、4は血液側出口、5は中空糸膜、6は血液、7はモジュールケース、8は透析液側入口、9は透析液側出口、10はポッティング部、11は血液回路を示す。
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
1.人工腎臓の作製方法
ポリスルホン(ソルベイ社製ユーデルポリスルホン(登録商標)P−3500)18重量部およびポリビニルピロリドン(BASF社製K30)8重量部をN,N’−ジメチルアセトアミド73重量部および水1重量部の混合溶媒に加え、80℃で15時間加熱して溶解し、製膜原液を得た。この製膜原液を外側の内径0.3mm、内側の内径0.2mmのオリフィス型二重円筒型口金の外側の管より吐出した。芯液としてN,N’−ジメチルアセトアミド60重量部および水40重量部からなる溶液を内側の管より吐出した。吐出された製膜原液は、乾式長350mmを通過した後、水100%の凝固浴に導かれ、中空糸膜が得られた。
得られた中空糸膜を10000本、図1に示すような、透析液入口および透析液出口を有する円筒状のプラスチックケースに挿入し、両端部を樹脂で封止した。中空糸が開口するように封糸部を切断し、ヘッダーを取り付けた。以上のようにして、中空糸膜内表面積1.6mの人工腎臓を作成した。
2.測定方法
2.1.膜全体の総荷電量測定
中空糸膜の乾燥重量を測定した。このとき、0.05gをはかりとった。荷電量が多く、滴定できない場合は適宜、重量を軽くすればよい。秤量した中空糸膜を0.1Nの水酸化ナトリウム20mlで洗浄した後、蒸留水で洗浄した。洗浄後の蒸留水に1%フェノールフタレイン溶液を滴下して着色しなくなるまで蒸留水での洗浄をくりかえした。洗浄後の中空糸膜を恒量になるまで乾燥した。乾燥による熱変性を防ぐために凍結乾燥が好ましいが、凍結乾燥が困難な場合はこれに限らない。凍結乾燥後の中空糸膜を、50ml遠沈管に入れた。0.001Nの塩酸20mlを、中空糸膜が塩酸に浸かりきるように加えた。30℃、1分間に150回の速度で24時間振盪した。振盪後の液の上清10mlを0.001Nの水酸化ナトリウムで滴定した。なお、指示薬として1%フェノールフタレイン溶液を2滴添加した。この滴定結果より陽性荷電量を求めた。また、水酸化ナトリウムの滴下量が2μmol未満で滴定が完了した場合は、中空糸膜の測定量を減量し、再度測定を行った。
総荷電量は、(4)式より算出した。
E=(V×N−V×N)÷m (4)
ここで、E=陽性荷電量(μeq/g)、V=塩酸量(ml)、N=塩酸の規定度(μeq/ml)、V=滴定値(ml)、N水酸化ナトリウムの規定度(μeq/ml)、m=中空糸乾燥重量(g)である。
2.2.中空糸膜内表面のゼータ電位
中空糸膜100本を束ねて内径15mmの円筒状のセルに充填し、ポット材で筒の端部に固定した。このときのポット材は日本ポリウレタン工業製ポリウレタン:KC256,KN503を用いた。ポット材で固定した後、1日後に端面をカットして、筒の高さ方向の長さ4.5cmから5cmのセルとした。ゼータ電位の測定はAnton Peer社製のゼータ電位測定装置EKA型で測定した。本測定では、測定液の比導電率と、セルに測定液を流したときのセル両端の圧力差と電位差を測定することによって、計算よりゼータ電位を算出している。そのときの測定液は0.001Nの塩化カリウム、測定液容量は500ml、測定pHは2.5とした。測定前に、0.001Nの塩化カリウムで一晩浸漬してから測定した。
2.3.酸化LDL除去率測定
2.3.1.抗酸化LDL抗体の作製
板部らが作製したものを用いた(H.Itabe et al.,J.Biol.chem.269:15274、1994)。すなわち、ヒト粥状硬化病巣ホモジェネートをマウスに注射して免疫、そのマウスの脾臓からハイブリドーマを作製し、硫酸銅処理LDLと反応するものを選別した。抗体クラスはマウスIgMで、未処理LDL、アセチルLDL、マロンジアルデヒドLDLとは反応しない。フォスファチジルコリンのアルデヒド誘導体やヒドロペルオキシドを含めていくつかのフォスファチジルコリン過酸化反応生成物と反応する。150mMの塩化ナトリウムを含む10mMほう酸緩衝液(pH8.5)に溶解したものを用いた(蛋白濃度0.60mg/ml)。
2.3.2.酸化LDLの調製
市販のLDL(フナコシ製)を脱塩した後、0.2mg/mlとなるようにリン酸緩衝液(以下PBSという)で希釈後、0.5mM硫酸銅水溶液を1wt%添加し、37℃で16時間反応させた。25mMのエチレンジアミン四酢酸(以下EDTAという)を1wt%、10wt%アジ化ナトリウムを0.02wt%となるように添加したものを酸化LDL標品とした。
2.3.3.吸着操作
健常者血漿(日本人、30代)に上記酸化LDLを2μg/mlとなるように添加した。
中空糸膜で長さ12cm、本数50本のミニモジュールを作成し、内径7mm(外径10mm)、長さ2cmのシリコーンチューブ(製品名ARAM)と異形コネクターを介して、内径0.8mm(外径1mm)のシリコーンチューブ(製品名ARAM、37cmのものを両端に2本)でつなぎ、上記血漿1.5mlを0.5ml/minの流量で25℃、4時間中空糸内に環流した。
さらにミニモジュールをつけずにシリコーンチューブのみでも環流操作を行った。
2.3.4.酸化LDL濃度の測定
抗酸化LDL抗体をPBSで5μg/mlに希釈し、96穴のプレートに100μl/ウェルずつ分注し、室温で2時間振盪した後、4℃にて一晩以上壁に吸着させた。
ウェル中の抗体溶液を捨て、1wt%Bovine Serum Albmin(BSA。“フラクションV”、生化学工業)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を200μl/ウェルずつ分注し、室温で2時間浸透して壁をブロッキングした後、ウェル中のBSAを捨て、酸化LDLを含んだ血漿および検量線作成用のスタンダード(0〜2μg/mlの酸化LDLを含むPBS緩衝液)を100μl/ウェルずつ分流した。その後、室温で30分浸透した後、4℃で一晩放置した。
室温に戻し、ウェル中の溶液を捨て、0.05wt%“トゥイーン−20”(片山化学)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)でウェルを3回洗浄した。洗浄したウェルにPBSで2000倍に希釈したヒツジ抗アポB抗体(THEBINDING SITE)を100μl/ウェルずつ分注し、室温で2時間浸透した後、ウェル中の抗アポB抗体を捨て、0.05wt%“トゥイーン−20”(片山化学)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)でウェルを3回洗浄した。洗浄したウェルに2wt%“ブロックエース”(大日本製薬)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で2000倍に希釈したアルカリ性フォスファターゼ標識ロバ抗ヒツジIgG抗体(CHEMICON)を100μl/ウェルを3回洗浄し、さらにトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で2回洗浄した。続いて、p−ニトロフェニルリン酸(Boehringer Mannheim GmbH)の1mg/ml溶液(0.0005M 塩化マグネシウム、1Mジエタノールアミン緩衝液、pH9.8)を100μl/ウェルずつ分注し、適当な時間室温で反応させた後、415nmの吸光度をプレートリーダーで測定した。スタンダードの結果から検量線を引き、酸化LDL濃度を決定した。
環流前後の血漿中の酸化LDLを定量することにより、酸化LDL除去率を上記(1)式より算出した。シリコーンチューブのみでの酸化LDL除去率を算出し、差し引いた。
2.4.エンドトキシン透過率測定
透析液側から血液側へのエンドトキシンの流入は、エンドトキシン透過率で示す。ここでいうエンドトキシン透過率とは、透析液側に流したエンドトキシンと血液側に流入したエンドトキシンの百分率の値である。エンドトキシン透過率が低いほうが、血液側へのエンドトキシンの流入が少ないので、優れた人工腎臓だといえる。エンドトキシン透過率試験の方法を以下に示す。エンドトキシンフリー水(日本薬局方注射用水:大塚製薬)1L(流速500ml/min)を、血液導出口4から入れ、血液導入口3から出し、モジュールを洗浄した。このとき、透析液の導出入口ともに栓をした。次に、エンドトキシンフリー水1L(流速500ml/min)を、血液導出口4から入れ、透析液導出口9から出し、モジュールを洗浄した。このとき、血液導入口3および透析液導入口8に栓をした。
洗浄したモジュールに、15EU/mLのエンドトキシン水を透析液導入口8から入れ、血液導入口3から出した。このとき、血液導出口4および透析液導出口9には栓をした。流速500ml/minで15Lを流し、最後の1mLを採取してエンドトキシン濃度を測定した。通液は室温で行い、エンドトキシン水の液温は25℃とした。採取管には、ポリスチレン製テストチューブ(ファルコン社製)を用いた。採取したサンプルは、エンドトキシン濃度が低いため、吸着や失活が起こりやすい。このため、エンドトキシンを吸着しにくい素材であるポリスチレンを用いることが必要であり、また、採取後速やかにエンドトキシン測定を行うことが必要である。採取後10分以内に測定を行うことが望ましい。
モジュール通過前のエンドトキシン水のエンドトキシン濃度、通過後の濃度を除して100を乗じてエンドトキシン透過率とする。エンドトキシン濃度の測定法を以下に示す。透析液用リムルス試薬(透析液用リムルス試薬0.2ml用:和光純薬)にサンプルを200μL入れ、3秒間ボルテックスした。トキシノメーター(ET―301:和光純薬社製)でリムルス試薬のゲル化時間を測定した。このときの設定温度は37℃、測定時間は200minとする。同様の操作でエンドトキシン標準品(和研薬E.coliUKT−B由来)を測定し、検量線とした。
エンドトキシン透過率は上記(2)式より算出した。
2.5.β−ミクログロブリンクリアランス測定法
β−ミクログロブリンを、5mg/lになるように37℃で調整した牛血清に加えた。その溶液を37℃の水浴中でガラス管モジュール(ガラス管に36本の中空糸を通して両端を接着剤で固定した有効長100mmのモジュール)の血液側に1ml/minで流した。同時に、透析液側から37℃のPBS(−)(日水製薬社 ダルベッコPBS(−))粉末を1Lの蒸留水中に9.6g溶解した溶液)を20ml/minの流量で流した。2時間循環させた後、血液側の血清を全量回収して、−20℃以上の冷凍庫で凍らせた。各液のβ−ミクログロブリンの濃度からクリアランスを(5)式から算出した。
Co=(CBi−CBo)×Q/CBi (5)
ここで、C=β−ミクログロブリンクリアランス(ml/min)、CBi=モジュール入口側濃度(mg/l)、CBo=モジュール出口側濃度(mg/l)、Q=モジュール供給液量(ml/min)である。
(実施例1)
カチオン性物質としてポリエチレンイミンを使用した。ポリエチレンイミン(シグマ社 Mw75万)100重量ppm水溶液を前記で得られた人工腎臓の血液導出口4から入れ、透析液の導出口9から出して、ポリエチレンイミンを中空糸膜に濾過をかけて導入した。このとき、血液導入口3および透析液の導入口8には栓をした。流速は500mL/minで、通液量は1Lとした。つづいて、水を血液導出口4から入れ、透析液の導出口9から出して、ポリエチレンイミンの全量について中空糸膜に濾過をかけて導入した。このとき、血液導入口3および透析液の導入口8には栓をした。流速は500mL/minで、通液量は2Lとした。充填は室温で行い、ポリエチレンイミン水溶液は20±5℃の液温で行った。ポリエチレンイミン水溶液、水ともに血液側から透析液側に濾過をかけている。この後、該モジュールにγ線を照射した。γ線照射量は27kGyであった。この後、エンドトキシン透過率試験を行った。また、同様にモジュールを作成し、該モジュールの中空糸膜を切り出し、β−ミクログロブリンクリアランスの測定と、酸化LDL除去率の測定と、膜全体の総荷電量の測定と中空糸膜内表面のpH2.5でのゼータ電位の測定を行った。その結果、表1に示される通りであった。すなわち、膜全体の総荷電量が負の値で中空糸膜内表面のpH2.5でのゼータ電位が高い中空糸膜にすることによって、β−ミクログロブリンクリアランスが高い膜でも、酸化LDL除去率に優れ、かつエンドトキシンの透過率も低い中空糸膜を得ることができた。
比較例1
カチオン性物質としてポリエチレンイミンを使用した。ポリエチレンイミン(シグマ社 Mw1万)1wt%水溶液を血液導出口4から入れ、血液導入口3と透析液導入口8を接続し、透析液の導出口9から出して、ポリエチレンイミンを中空糸膜の内側および外側に導入した。流速は200mL/minで、20分循環した。充填は室温で行い、ポリエチレンイミン水溶液は20±5℃の液温で行った。この後、該モジュールにγ線を照射した。γ線照射量は27kGyであった。この後、エンドトキシン透過率試験を行った。また、同様にモジュールを作成し、該モジュールの中空糸膜を切り出し、β−ミクログロブリンクリアランスの測定と、酸化LDL除去率の測定と、膜全体の総荷電量の測定と中空糸膜内表面のpH2.5でのゼータ電位の測定を行った。その結果、表1に示される通りであった。すなわち、中空糸膜内表面のpH2.5でのゼータ電位が高い中空糸膜にすることによって、酸化LDL除去率に優れているが、膜全体の総荷電量が強い陽性のため、エンドトキシン透過率が高い中空糸膜になってしまっている。
(比較例2)
AN69ST(ポリアクリロニトリル製、ホスパル社製)
で、エンドトキシン透過率試験を行った。また、AN69ST(ホスパル社製)の中空糸膜を切り出し、β−ミクログロブリンクリアランスの測定と、酸化LDL除去率の測定と、膜全体の総荷電量の測定と中空糸膜内表面のpH2.5でのゼータ電位の測定を行った。その結果、表1に示される通りであった。中空糸膜内表面のゼータ電位が高く、酸化LDL除去率に優れている。しかいながら、膜全体の総荷電量が強い陽性のため、β−ミクログロブリンクリアランスの低い膜であるにもかかわらず、エンドトキシン透過率が高い中空糸膜になってしまっている。
(比較例3)
人工腎臓に水を血液導出口4から入れ、透析液の導出口9から出した。流速は500mL/minで、通液量は0.5Lとした。またこのとき、血液導入口3および透析液の導入口8には栓をした。充填は室温で行い、水は20±5℃の液温で行った。この後、該モジュールにγ線を照射した。γ線照射量は27kGyであった。この後、エンドトキシン透過率試験を行った。また、同様にモジュールを作成し、該モジュールの中空糸膜を切り出し、β−ミクログロブリンクリアランスの測定と、酸化LDL除去率の測定と、膜全体の総荷電量の測定と中空糸膜内表面のpH2.5でのゼータ電位の測定を行った。その結果、表1に示される通りであった。中空糸膜内表面のゼータ電位が低く、酸化LDL除去率が悪い。しかしながら、膜全体の総荷電量が低いので、エンドトキシン透過率は低い中空糸膜になっている。
Figure 2006341087
本発明に用いられる人工腎臓の一態様を示す。
符号の説明
1.動脈側ヘッダー
2.静脈側ヘッダー
3.血液側入口
4.血液側出口
5.中空糸膜
6.血液
7.モジュールケース
8.透析液側入口
9.透析液側出口
10.ポッティング部
11.血液回路

Claims (10)

  1. 中空糸膜内表面のゼータ電位が15mV〜100mVで、かつ膜全体の総荷電量が30μeq/g以下であり、β−ミクログロブリンクリアランスが30ml/min以上であることを特徴とする中空糸膜型人工腎臓。
  2. エンドトキシン透過率が0.006%以下であることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜型人工腎臓。
  3. 酸化低密度リポ蛋白除去率が30%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の中空糸膜型人工腎臓。
  4. 中空糸膜内表面にカチオン性物質が含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中空糸膜型人工腎臓。
  5. 中空糸膜外表面にアニオン性物質が含まれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の中空糸膜型人工腎臓。
  6. 前記カチオン性物質が、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アミノ基、ピロール基、ピラゾール基、イミダゾール基、インドール基、ピリジン基、ピリダジン基、キノリン基、ピペリジン基、ピロリジン基、チアゾール基、プリン基、のうちのいずれか1つ以上を含有していることを特徴とする請求項4または5に記載の中空糸膜型人工腎臓。
  7. 前記アニオン性物質が、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、チオカルボキシル基のうちいずれか1つ以上を含有していることを特徴とする請求項5または6に記載の中空糸膜型人工腎臓。
  8. 前記カチオン性物質および/またはアニオン性物質が高分子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の中空糸膜型人工腎臓。
  9. 前記中空糸膜の構造が内表面に緻密層を有する非対称膜構造であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の中空糸膜型人工腎臓。
  10. 人工腎臓に内蔵される中空糸膜がポリスルホン系ポリマーを含有していることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の中空糸膜型人工腎臓。
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