JP4196570B2 - 血漿分離膜用または人工腎臓用の中空糸膜およびそれを用いたモジュール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、過酸化脂質吸着用中空糸膜およびそれを用いたモジュールに関する。特に、血漿分離膜または人工腎臓として好適に用いられ、血中の過酸化脂質を吸着除去できる中空糸膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、体外血液循環の分野、とくに血液透析や血漿分離等には中空糸膜を用いた中空糸膜型血液処理器が広く使用され、近年、特に透析膜、血液成分分離膜等の分野においては、高分子製中空糸膜が広く利用されている。しかしながら、長期的に血液透析を行っている患者の中には、血中抗酸化作用の低下や過酸化脂質が高値であることが報告されており、これに起因すると思われる長期透析患者の動脈硬化性疾患等が増加している。
【0003】
粥状動脈硬化巣の形成に重要な役割を演じている泡沫細胞は、酸化的変質を受けた脂質特に低密度リポ蛋白がマクロファージに取り込まれた結果、そのマクロファージが泡沫化したものである。
【0004】
これらの問題を解決するため、生体内抗酸化作用、生体膜安定化作用、血小板凝集抑制作用などの種々の生理作用を有するビタミンEの被膜を透析膜の表面に被覆する膜型血液浄化器が提案されている(特公昭62−41738号公報)が、いったん生成した患者の血中の過酸化脂質を除去することはできない。
【0005】
過酸化脂質の中でも、特に酸化低密度リポ蛋白は様々な生物作用をもっており、内皮細胞から一酸化窒素(NO)産生を抑制するなどの作用以外にも、単球を内皮下に遊送、集積させ、そのものをマクロファージとさせ、酸化低密度リポ蛋白それ自身を取り込み泡沫細胞とさせ、動脈壁のプラーク形成を促進するほか、内皮細胞や平滑筋細胞傷害を促進するなど、動脈硬化の発症、進展に重要な役割を果たしている。従って、血中から過酸化脂質、特に酸化低密度リポ蛋白を除去することが望ましい。
【0006】
高脂血症の患者の場合には血中の低密度リポ蛋白量が多いため、低密度リポ蛋白を除去することは動脈硬化の進展予防などに有効である。そこで現在、低密度リポ蛋白の吸着ビーズカラムとして鐘淵化学のリポソーバ(商標)が使用されている。この吸着材の使用により酸化低密度リポ蛋白も同時に除去されると考えられるが、透析患者の場合は、血中の低密度リポ蛋白濃度は透析患者も健常者と同レベルであり、本カラムを使用すれば、栄養不足などの状態に陥る可能性があるので、透析患者に対しては使用することはできない。
【0007】
また、高密度リポ蛋白質は動脈硬化防御因子としての機能を有するため、透析患者の血中の高密度リポ蛋白濃度を下げてはいけない。
【0008】
これまで市販されているセルロース膜、ポリメチルメタクリレート膜、エチレンービニルアルコール膜、ポリスルホン/ポリビニルピロリドンブレンド膜などに代表される透析膜では過酸化脂質を除去することはできない。むしろ、透析後に透析膜による刺激のため、血中の過酸化脂質の値が増加する傾向にある(腎と透析別冊、38:125(1995))。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を改良し、特に、過酸化脂質を選択的に吸着除去できる中空糸膜およびそれを用いたモジュールを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は次の構成を有する。
【0011】
(1) 中空糸膜素材にビニルピロリドンとアミンとを重合成分として含むカチオン性ポリビニルピロリドンが含有されていることを特徴とする血漿分離膜用または人工腎臓用の中空糸膜。
【0012】
(2) (1)に記載の中空糸膜が過酸化脂質を吸着することを特徴とする中空糸膜。
【0013】
(3) 素材表面積1m2あたりの血漿量が2.8×102ml/m2である条件で灌流操作を施したときに、該血漿中に含まれている初期濃度2μg/mlの酸化低密度リポ蛋白の吸着除去率が20%以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の中空糸膜。
【0014】
(4) 低密度リポ蛋白の吸着除去率が5%未満であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の中空糸膜。
【0015】
(5) 高密度リポ蛋白の吸着除去率が5%未満であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の中空糸膜。
【0016】
(6) 前記中空糸膜がポリスルホンを含むことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の中空糸膜。
【0021】
(7) (1)〜(6)のいずれかに記載の中空糸膜を内蔵してなることを特徴とするモジュール。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の中空糸膜は、中空糸膜素材にカチオン性ポリビニルピロリドンを含有することを特徴とする。
【0023】
本発明でいうカチオン性ポリビニルピロリドンとは、ビニルピロリドンとアミンを含む化合物をいう。特に限定されるものではないが、pH4.5のときの電荷が1meq/g以上あることが望ましい。また、アミンとしては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、ピロール基、ピラゾール基、イミダゾール基、インドール基、ピリジン基、ピリダジン基、キノリン基、ピペリジンン基、ピロリジン基、チアゾール基、プリン基および、それらの誘導体などが挙げられる。ビニルピロリドンとビニルイミダゾールの共重合ポリマーや、ビニルピロリドンと3−メチル−1−ビニルイミダゾールメチルスルホン酸塩の共重合ポリマーがBASF社などから市販されているので、好適に用いられる。また、カチオン性ポリビニルピロリドンや支持体となる素材(例えば、ポリスルホン)以外に、ポリビニルピロリドンなど他のポリマーが、本発明の効果を妨げない範囲で混合されていても良い。特に限定されるわけではないが、そのようなその他の素材は、中空糸膜全重量中、10重量%以下であることが好ましい。なお、前記分子量は原料段階での分子量であり、最終製品においては、放射線架橋などにより分子量は前記値よりの遙かに大きなものとなっている場合もある。
【0024】
本発明でいう過酸化脂質とは、過酸化した脂質のことをいい、過酸化した構造としては、過酸、過酸エステル、ヒドロペルオキシド、エンドペルオキシド、ペルオキシラジカル、およびこれらの分解物も含めた構造体のことをいう。また低密度リポ蛋白(以下LDLという)とは血漿中リポタンパク質の一つで、比重1.063の食塩水中での浮上係数Sfが0〜20で、密度(g/ml)が1.006〜1.063の画分に存在するリポタンパク質のことをいい、高密度リポ蛋白(以下HDLという)とは血漿中リポタンパク質の一つで、密度(g/ml)が1.063〜1.210の画分に存在するリポタンパク質のことをいう。また酸化低密度リポ蛋白(以下、酸化LDLという)とは過酸化した脂質もしくはタンパク質が含まれている低密度リポタンパク質のことをいう。
【0025】
カチオン性ポリビニルピロリドンを含有する中空糸膜は、LDLやHDLをあまり吸着せずに、酸化LDLなどの過酸化脂質を選択的に吸着するという特徴を有する。
【0026】
血中のLDL濃度が健常者と同レベルである場合は、LDLを除去すると栄養不足などの状態に陥る可能性があるので、LDLが取り除かれることは好ましくない。また、HDLは動脈硬化防御因子としての機能を有するため、血中のHDL濃度を下げてはいけない。HDLもしくはLDLの吸着除去率は5%未満であることが好ましい。
【0027】
酸化LDLはLDLに比べ、陰性荷電を帯びており、生体内でもコラーゲンやスカベンジャーレセプターなどカチオン性の部位によく吸着する。したがって、カチオン性ポリビニルピロリドンを含有する中空糸膜が、酸化LDLを吸着するための重要な因子のひとつに、静電相互作用が関与していると考えられる。また、糖化最終生成物(AGE)も陰性荷電を帯びていることから、AGEの吸着除去も期待できる。
【0028】
本発明においては、カチオン性ポリビニルピロリドンと支持体となる素材との構成・複合方法は特に限定されるものではなく、支持体となる素材とカチオン性ポリビニルピロリドンが積層されていても良いし、混合乃至は相溶されていても良い。
【0029】
カチオン性ポリビニルピロリドンを素材に含有させる方法には、素材の成形前の原液にカチオン性ポリビニルピロリドンを混和しておいて、成形する方法や、反応性を有する官能基を導入した素材を混和しておいて、素材を成形後、カチオン性ポリビニルピロリドンを官能基に対して表面反応により固定化する方法、通常の素材をカチオン性ポリビニルピロリドンの溶液に浸漬し、放射線照射、熱処理などによりカチオン性ポリビニルピロリドンを不溶化、固定化する方法、素材をカチオン性ポリビニルピロリドンの溶液に浸漬させ、溶液を除去し、湿潤状態にする方法(これは、多孔質膜の場合は空気や窒素などの気体で表面をブローすることにより得られる。)、さらには、素材をカチオン性ポリビニルピロリドンの溶液に浸漬させ、溶液を水洗除去し、カチオン性ポリビニルピロリドンを素材に吸着させた状態にする方法などが挙げられ、さらに湿潤状態や吸着状態で、放射線照射、熱処理などにより不溶化、固定化することも可能である。放射線照射を行う場合には、PVPの架橋をコントロールするために公知の抗酸化剤を用いても良い。
【0030】
本発明の支持体となる素材は、特に限定しないが、医療用に用いられている素材が好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル、セルロース系ポリマー、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリウレタンなどが挙げられる。この中でも特にポリスルホンは成形が容易で、膜に成形したときの膜性能に優れているため、好適に用いられる。
【0031】
本発明で用いられるポリスルホンは、主鎖に芳香環、スルフォニル基およびエーテル基をもつもので、例えば、次式(1)、(2)の化学式で示されるポリスルホンが好適に使用されるが、本発明ではこれらに限定されない。式中のnは、例えば50〜80の如き整数である。
【0032】
【化1】
【0033】
ポリスルホンの具体例としては、ユーデルポリスルホンP−1700、P−3500(テイジンアモコ社製)、ウルトラソンS3010、S6010(BASF社製)、ビクトレックス(住友化学)、レーデルA(テイジンアモコ社製)、ウルトラソンE(BASF社製)等のポリスルホンが挙げられる。又、本発明で用いられるポリスルホンは上記式(1)及び/又は(2)で表される繰り返し単位のみからなるポリマーが好適ではあるが、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーと共重合していても良い。特に限定するものではないが、他の共重合モノマーは10重量%以下であることが好ましい。
【0034】
また、ポリスルホンは疎水性の高分子であるため、血液と接触するような場合は、その接触面を親水化することが好ましい。親水化の方法としては、ポリビニルピロリドンやカチオン性ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどのポリスルホン系高分子との相溶性に優れる親水性高分子を分離膜の製膜原液に添加したり、血液との接触面を親水性の化合物でコーティングすることにより達成できる。
【0035】
本発明の中空糸膜は、体外循環用モジュールとして、血漿分離、人工腎臓等に好適に用いられる。
【0036】
血漿分離膜に用いる場合には、酸化LDL、LDL、HDLなどは濾過されるが、膜全体に過酸化脂質と選択的に相互作用できるようにカチオン性ポリビニルピロリドンを含有させてやれば、膜全体の面積を有効に使えるため過酸化脂質を効率よく除去するには有効である。ただし、濾過されたLDLやHDLは体内に戻すか、新たに新鮮血漿を補充することが好ましい。
【0037】
人工腎臓に用いるような場合は、酸化LDL、LDL、HDLのような大分子は透析・濾過されない。従って、膜内表面に過酸化脂質と選択的に相互作用するようなリガンドを含有させてやれば、過酸化脂質は吸着除去され、LDL、HDLは吸着されず、患者の体内に戻される。ここで、人工腎臓としての機能を有するというのは人工腎臓の機能分類でいうところのI型またはII型に属するものであることをいう(透析会誌、32(12):1465〜1469,1999)。本発明においては、孔の大きさが大きいほうが好ましく、II型に属するものは孔の大きさも大きく、好ましい。
【0038】
本発明の中空糸膜は、従来知られている中空糸膜の製造方法などにおいて、前記したカチオンポリマーを導入する方法を適宜用いることにより製造される。中空糸膜の製法の一例として次のような方法がある。
【0039】
ポリスルホンとカチオン性ポリビニルピロリドン(重量比率20:1〜1:5が好ましく、5:1〜1:1がより好ましい)を良溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサンなどが好ましい)および良溶媒の混合溶液に溶解させた原液(濃度は、10〜30重量%が好ましく、15〜25重量%がより好ましい)を二重環状口金から吐出する際に内側に注入液を流し、乾式部を走行させた後凝固浴へ導く。この際、乾式部の湿度が影響を与えるために、乾式部走行中に膜外表面からの水分補給によって、外表面近傍での相分離挙動を速め、孔径拡大し、結果として透析の際の透過・拡散抵抗を減らすことも可能である。ただし、相対湿度が高すぎると外表面での原液凝固が支配的になり、かえって孔径が小さくなり、結果として透析の際の透過・拡散抵抗を増大する傾向がある。そのため、相対湿度としては60〜90%が好適である。また、注入液組成としてはプロセス適性から原液に用いた溶媒を基本とする組成からなるものを用いることが好ましい。注入液濃度としては、例えばジメチルアセトアミドを用いたときは、45〜80重量%、さらには60〜75重量%の水溶液が好適に用いられる。
【0040】
モジュールの製造方法としては、特に限定されないが、一例を示すと次の通りである。まず、中空糸膜を必要な長さに切断し、必要本数を束ねた後、筒状ケースに入れる。その後両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング剤を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング剤を入れる方法は、ポッティング剤が均一に充填されるために好ましい方法である。ポッティング剤が固化した後、中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断し、中空糸膜モジュールを得る。
【0041】
以下、本発明の性能測定条件を記載する。
(1)抗酸化LDL抗体の作製
板部らが作製したものを用いた(H.Itabe et al.,J.Biol.Chem.269:15274、1994)。すなわち、ヒト粥状硬化病巣ホモジェネートをマウスに注射して免疫、そのマウスの脾臓からハイブリドーマを作製し、硫酸銅処理LDLと反応するものを選別した。抗体クラスは、マウスIgMで、未処理LDL、アセチルLDL、マロンジアルデヒドLDLとは反応しない。フォスファチジルコリンのアルデヒド誘導体やヒドロペルオキシドを含めていくつかのフォスファチジルコリン過酸化反応生成物と反応する。150mMのNaClを含む10mMほう酸緩衝液(pH8.5)に溶解したものを用いた(蛋白濃度0.60mg/ml)。
(2)酸化LDLの調製
市販のLDL(フナコシ製)を脱塩した後、0.2mg/mlとなるようにリン酸緩衝液(PBS)で希釈後、0.5mM硫酸銅水溶液を1wt%添加し、37℃で16時間反応させた。25mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を1wt%、10wt%アジ化ナトリウムを0.02wt%となるように添加したものを酸化LDL標品とした。
(3)灌流操作
健常者血漿(日本人、30歳、LDL(βリポ蛋白)濃度275mg/dl,HDL−コレステロール濃度70mg/dl)に上記酸化LDLを2μg/mlとなるように添加した。
【0042】
内径200μm、膜厚40μmの中空糸膜から、長さ12cm、本数70本のミニモジュール(内表面積53cm2)を作成し、内径7mm(外径10mm)、長さ2cmのシリコーンチューブ(製品名ARAM)と異形コネクターを介して、内径0.8mm(外径1mm)のシリコーンチューブ(製品名ARAM、37cmのものを両端に2本)でつなぎ、上記血漿1.5mlを0.5ml/分の流量で25℃、4時間中空糸内に灌流した(素材表面積1m2あたりの血漿量は2.8×102ml/m2)。
【0043】
さらにミニモジュールをつけずに内径0.8mm(外径1mm)のシリコーンチューブ(長さ74cm)のみで灌流操作も行った。
【0044】
灌流前後の血漿中の酸化LDL、LDL、HDL濃度を定量することにより、それぞれの吸着除去率を下記式により算出した。
【0045】
吸着除去率(%)=100×(灌流前の濃度−灌流後の濃度)/灌流前の濃度酸化LDL、LDL、HDLの吸着除去率(%)=ミニモジュールでの吸着除去率(%)−シリコーンチューブのみでの吸着除去率(%)
(4)酸化LDL、LDL、HDL濃度の測定
抗酸化LDL抗体をPBSで5μg/mlに希釈し、96穴のプレートに100μl/ウェルずつ分注し、室温で2時間震盪した後、4℃にて一晩以上壁に吸着させた。
【0046】
ウェル中の抗体溶液を捨て、1wt%Bovine Serum Albmin(BSA、フラクションV、生化学工業、ケミカルグレード)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を200μl/ウェルずつ分注し、室温で2時間震盪して壁をブロッキングした後、ウェル中のBSA溶液を捨て、酸化LDLを含んだ血漿および検量線作成用のスタンダード(0〜2μg/mlの酸化LDLを含むPBS緩衝液)100μl/ウェルずつ分注した。その後、室温で30分震盪した後、4℃で一晩放置した。
【0047】
室温に戻し、ウェル中の溶液を捨て、0.05wt%トゥイーン−20(片山化学)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)でウェルを3回洗浄した。洗浄したウェルにPBSで2000倍に希釈したヒツジ抗アポB抗体(THE BINDING SITE)100μl/ウェルずつ分注し、室温で2時間震盪した後、ウェル中の抗アポB抗体を捨て、0.05wt%トゥイーン−20を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)でウェルを3回洗浄した。洗浄したウェルに2wt%ブロックエース(大日本製薬)を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で2000倍に希釈したアルカリ性フォスファターゼ標識ロバ抗ヒツジIgG抗体(CHEMICON)を100μl/ウェルずつ分注し、室温で2時間震盪した。その後、ウェル中の標識抗体を捨て、0.05wt%トゥイーン−20を含むトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)でウェルを3回洗浄し、さらにトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で2回洗浄した。続いて、p−ニトロフェニルリン酸(Boehringer Mannheim GmbH)の1mg/ml溶液(0.0005M MgCl2、1Mジエタノールアミン緩衝液、pH9.8)を100μl/ウェルずつ分注し、適当な時間室温で反応させた後、415nmの吸光度をプレートリーダーで測定した。スタンダードの結果から検量線を引き、酸化LDL濃度を決定した。
【0048】
LDLの定量はβ−リポ測定キット(和光純薬)を用いて行った。
【0049】
HDLの定量はHDL−C測定キット(和光純薬)を用いて行った。
【0050】
【実施例】
(実施例1)
ポリスルホン(テイジンアモコ社製ユーデルP−3500)18重量部、カチオン性ポリビニルピロリドン(BASF社製“ルビカット”FC905)9重量部をN,N−ジメチルアセトアミド72重量部、水1重量部に加え、90℃14時間加熱溶解した。この製膜原液を外径0.3mm、内径0.2mmのオリフィス型二重円筒型口金より吐出し芯液としてジメチルアセトアミド58重量部、水42重量部からなる溶液を吐出させ、乾式長350mmを通過した後、水100%の凝固浴に導き中空糸を得た。本中空糸膜を用いて、有効長さ19cm、膜面積1.6m2の人工腎臓を作成し、人工腎臓のモジュール内を水で満たし、γ線照射を行ったところ、限外濾過量は50ml/mmHg/hr、尿素クリアランス188ml/min、クレアチニンクリアランス186ml/min、β2ミクログロブリンクリアランスは55ml/minであった。ポリスルホン中空糸分離膜を70本束ね、中空糸中空部を閉塞しないようにエポキシ系ポッティング剤で両末端をガラス管モジュールケースに固定し、ミニモジュールを作成し、水を充填して、25kGyにてγ線照射した。該ミニモジュールの直径は約7mm、長さは12cmであった。放射線処理した膜は、再度蒸留水で37℃、30分間洗浄した後、吸着実験に供した。
【0051】
実験結果は、表1に示した。
(実施例2)
ポリスルホン(テイジンアモコ社製ユーデルP−3500)18重量部、ポリビニルピロリドン(BASF社製“Kollidon 30”)9重量部をN,N−ジメチルアセトアミド72重量部、水1重量部に加え、90℃14時間加熱溶解した。その後、実施例1と同様にして中空糸分離膜を得た後、ミニモジュールを作成した。ミニモジュール内を、カチオン性ポリビニルピロリドン(BASF社製“ルビカット”FC905)1重量%水溶液で充填し、25kGyにてγ線照射したものを作成した。
(比較例1)
実施例2と同様にしてミニモジュールを作成し、1重量%のカチオン性ポリビニルピロリドン水溶液の代わりに水を充填して、25kGyにてγ線照射したものを作成した。
(比較例2)
市販のポリメチルメタクリレート透析膜(東レ社製“フィルトライザー”、BG)を用いてミニモジュールを作成した。
(比較例3)
市販のビタミンEコーティングセルロース膜(テルモ社製“エクセブレン”、CL−E15N)を用いてミニモジュールを作成した。
【0052】
実施例および比較例1〜3における酸化LDL、LDL、HDLの吸着除去率の結果を表1に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
【発明の効果】
本発明により、膜型血液浄化器などの用途に用いられ、特に透析患者において動脈硬化の進展を予防したり、その発症を未然に防ぐような場合に好適に用いられる過酸化等質吸着用中空糸膜を提供することができる。
Claims (7)
- 中空糸膜素材にビニルピロリドンとアミンとを重合成分として含むカチオン性ポリビニルピロリドンが含有されていることを特徴とする血漿分離膜用または人工腎臓用の中空糸膜。
- 請求項1に記載の中空糸膜が過酸化脂質を吸着することを特徴とする血漿分離膜用または人工腎臓用の中空糸膜。
- 素材表面積1m2あたりの血漿量が2.8×102ml/m2である条件で灌流操作を施したときに、該血漿中に含まれている初期濃度2μg/mlの酸化低密度リポ蛋白の吸着除去率が20%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の血漿分離膜用または人工腎臓用の中空糸膜。
- 低密度リポ蛋白の吸着除去率が5%未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の血漿分離膜用または人工腎臓用の中空糸膜。
- 高密度リポ蛋白の吸着除去率が5%未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の血漿分離膜用または人工腎臓用の中空糸膜。
- 前記中空糸膜がポリスルホンを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の血漿分離膜用または人工腎臓用の中空糸膜。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の血漿分離膜用または人工腎臓用の中空糸膜を内蔵してなることを特徴とするモジュール。
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