JP4455019B2 - 医療透析用中空糸膜及びその製造方法 - Google Patents

医療透析用中空糸膜及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は血液人工透析の際に用いられる中空糸膜に関する。
従来、血液浄化用の中空糸膜として、セルロース系、セルロースアセテート系、ポリアミド系、ポリアクリロニトリル系などのポリマーを主体とする膜素材が使用されてきたが、近年では、生体適合性にすぐれ、分子量分画性にも優れたポリスルホン系の中空糸膜が急速に普及してきた。そして、血液浄化用のポリスルホン系中空糸膜の製造方法については数多くの技術が知られており、例えば、特許文献1〜3にその製造方法が記載されている。
特許文献1には、膜内表面近傍の緻密層に親水性高分子を集中させ、膜の透過のバランスを改善し、高い透水性を有するにもかかわらず蛋白のリークが少ない膜を開示している。しかし、段落番号0062にアルブミンを透過しないとはアルブミンの透過率が5%以下であると定義してある通り、アルブミンのリークに対し、満足のいくものではない。また、透水性に対し、アルブミンのリ−クが少ないという孔径が小さければ達成できる範囲の記述に留まり、本願の様に低分子蛋白が十分除去できる程孔径が大きく、且つアルブミンがリークしないという優れた分画性の膜とは領域が異なり、これらに対する記述も示唆もない。
特許文献2には、ポリスルホン、ポリビニルピロリドンからなる非対称微孔性中空繊維とその製法に関する記述がされているが、一般的な性能の記述に終始し、本願のような低分子蛋白が十分除去できる程孔径が大きく、且つアルブミンがリークしないという優れた分画性については記述も示唆もない。
特許文献3には、ポリスルホン、ポリビニルピロリドン、溶剤からなる紡糸原液にポリグリコール類を添加して、高血栓性に優れた中空糸膜を開示しているが、一般的な性能の記述に終始し、本願のような低分子蛋白が十分除去できる程孔径が大きく、且つアルブミンがリークしないという優れた分画性については記述も示唆もない。
近年、長期合併症の原因として、β2マイクログロブリン、α1マイクログロブリン等の低分子蛋白が挙げられ、これらを血液から効率よく除去できる高性能な血液処理器が望まれている。一方、アルブミンなどの有用蛋白のリークを極力抑えるような膜が望まれているが、従来の技術では分画性が十分でなく、低分子蛋白を除去するため膜の孔径を大きくすると、アルブミンのリークを十分なレベルまで抑える事ができなかった。
特開平4−300636号公報 特公平5−54373号公報 特開平6−165926号公報
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑みて、低分子蛋白の透過性能が高く、アルブミンリークが極めて少ない分子量分画性に優れる医療透析用中空糸膜を提供する事、及びそのような中空糸膜の製造方法を提供する事を課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、非常に分画性の優れた医療透析用中空糸膜を提供できる事を見出した。すなわち本発明は、次の発明に関するものである。
(1)ポリスルホンとポリビニルピロリドンおよび溶剤を含む紡糸原液を中空内液とともに紡糸口金から吐出する工程、吐出した原液を凝固させる工程、凝固した中空糸膜を乾燥する工程を含む医療透析用中空糸膜の製造方法において、紡速を30m/分〜45m/分、凝固浴の温度を80℃以上、紡口から吐出された中空糸膜が落下する落下部の溶剤濃度を150ppm以上1000ppm以下、落下部の温度を30℃〜80℃、落下部の湿度を40%〜60%、落下長を30cm以上90cm以下とすることにより、乾燥前の中空糸膜の重量平均分子量4万のポリビニルピロリドンの篩係数を95%以下、乾燥後の中空糸膜のアルブミン篩係数を0.09〜1.50%、乾燥後の中空糸膜の重量平均分子量4万のポリビニルピロリドンの篩係数をX、乾燥後の中空糸膜のアルブミン篩係数をYとした時のYの値を2×10−15×X8.04以下、かつ乾燥後の中空糸膜のアルブミン篩係数を乾燥後の中空糸膜のα1マイクログロブリン篩係数で除した値をZとした時のZの値を0.058Ln(X)−0.20以下とした事を特徴とする医療透析用中空糸膜。
(2)乾燥後の中空糸膜の重量平均分子量4万のポリビニルピロリドンの篩係数の値が25%以上である上記(1)記載の医療透析用中空糸膜。
(3)溶剤がジメチルアセトアミドである上記(1)または(2)記載の医療透析用中空糸膜。
(4)ポリスルホンとポリビニルピロリドンおよび溶剤を含む紡糸原液を中空内液とともに紡糸口金から吐出する工程、吐出した原液を凝固させる工程、凝固した中空糸膜を乾燥する工程を含む医療透析用中空糸膜の製造方法において、紡速を30m/分〜45m/分、凝固浴の温度を80℃以上、紡口から吐出された中空糸膜が落下する落下部の溶剤濃度を150ppm以上1000ppm以下、落下部の温度を30℃〜80℃、落下部の湿度を40%〜60%、落下長を30cm以上90cm以下とする事を特徴とする医療透析用中空糸膜の製造方法。
(5)溶剤がジメチルアセトアミドである上記(4)記載の医療透析用中空糸膜の製造方法。
本発明により、従来技術では達成できていなかった、低分子蛋白の透過性能が高く、且つ、アルブミンリークが極めて少ないという分子量分画性に優れる医療透析用中空糸膜を提供する事ができるようになった。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法は、疎水性高分子と親水性高分子および溶剤を含む紡糸原液を中空内液とともに紡糸口金から吐出する工程、吐出した原液を凝固させる工程、凝固した中空糸膜を乾燥する工程を少なくとも含む。
本発明で言う疎水性高分子は、ポリスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステルポリマーアロイなど殆どのエンジニアリングプラスチックを用いる事ができるが、生体適合性、耐久性、等の観点でポリスルホンを用いるのが好ましい。
ポリスルホン(以下、PSf)とは、スルホン結合を有する高分子結合物の総称であり特に規定するものでないが、例を挙げると
または
に示される繰り返し単位をもつポリスルホン系ポリマー樹脂が広く市販されており、入手も容易なため好ましく用いられる。前者の構造を持つポリスルホン系ポリマーはソルベイ社より「ユーデル」の商標名で、またビー・エー・エス・エフ社より「ウルトラゾーン」の商標名で市販されており、重合度等によっていくつかの種類が存在する。
また、本発明の親水性高分子は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリグリコールモノエステル、デンプン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロースなどの水溶性セルロース誘導体で使用でき、これらを組み合わせて使用することも可能だが、紡糸の安定性やPSfとの親和性の観点から、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールが好ましく用いられ、なかでもポリビニルピロリドンの使用が最も好ましい。ポリビニルピロリドン(以下、PVP)は、N−ビニルピロリドンをビニル重合させた水溶性の高分子化合物であり、アイ・エス・ピー社より「プラスドン」の商標名で、また、ビー・エー・エス・エフ社より「コリドン」の商標名で市販されており、それぞれいくつかの分子量のものがある。
本発明の製造方法は、従来一般的に知られている技術である乾湿式製膜技術を応用する。すなわち、まず、PSfとPVPを両方に共通溶媒に溶解し、均一な紡糸原液を調整する。このようなPSf及びPVPを共に溶解する共通溶媒としては、例えば、ジメチルアセトアミド(以下、DMAC)、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、スルホラン、ジオキサン等の溶媒、あるいは上記2種以上の混合液からなる溶媒が挙げられる。なお、孔径制御のため、紡糸原液には水などの添加物を加えても良い。
次に、チューブインオリフィス型の紡糸口金を用い、該紡糸口金のオリフィスから紡糸原液を、チューブから該紡糸原液を凝固させる為の中空内液を同時に空中に吐出させる。中空内液は水、または水を主体とした凝固液が使用でき、一般的には紡糸原液に使った溶剤と水との混合溶液が好適に使用される。例えば、0〜60重量%のDMAC水溶液などが用いられる。紡糸口金から中空内液とともに吐出された紡糸原液は、空走部を走行させ、紡糸口金下部に設置した水を主体とする凝固浴中へ導入、浸漬して凝固を完了させる。
本発明の低分子蛋白の透過性能が高く、アルブミンリークが極めて少ない分子量分画性に優れる医療透析用中空糸膜を提供する為には、まず、乾燥前の中空糸膜の孔径が小さくなくてはならない。湿潤状態の中空糸は、乾燥により、構造変化をうけるが、この構造変化が不適切な場合、アルブミンのリークに繋がるからである。乾燥前の中空糸膜のPVP篩係数は95%以下であることが必要で、90%以下が好ましい。
尚、本発明で言う低分子蛋白とは、長期透析合併症の原因物質とされる、β2マイクログロブリン、α1マイクログロブリンをさす。
また、本発明でいうPVP篩係数とは、中空糸をサンプリングして有効長18cmのミニモジュールを作成し、これに1/15(mol(モル)/L(リットル))の燐酸緩衝溶液に溶解した重量平均分子量約4万のPVP(K−30;ISP社製)3重量%水溶液を37℃に温調しながら通液し、膜間圧力差200mmHg、線速1cm/秒にてフロー法で濾過を行った際の元液と濾液から次の式(1)で求められる値と定義する。
PVP篩係数=(濾液濃度/元液濃度)×100(%) (1)
尚、ここで濾液は通液後20分から25分の5分間サンプリングする事とする。
PVP−篩係数は、β2マイクログロブリンの篩係数、α1マイクログロブリンの篩係数と正の相関を有しており、膜の孔径を測定する指標として有効である。また、水系評価の為、常に安定した数値を出す事ができる。一方、β2マイクログロブリン及びα1マイクログロブリンの血漿系の篩係数、若しくは血清系の篩係数を直接測定する場合、操作が煩雑になるだけではなく、血漿ロットにより、蛋白吸着量等が変化する為、測定毎にばらつき、実用的でない。本発明では上記理由により、膜の孔径を測定する方法としてPVP−篩係数を採用した。
分子量分画性の指標としては、まず、孔径を表すPVP篩係数Xとアルブミンのリーク量を表すアルブミン篩係数Yの関係を求める事で従来技術と本願技術範囲を明確化した(図1参照)。図1には、本発明の実施例により製造した中空糸膜と従来品である中空糸膜(比較例)とのPVP篩係数Xとアルブミン篩係数Yとの関係をプロットした。累乗近似法により、臨界線を求めたところ、Y=2×10−15×X8.04となった。よって、本発明によって得られる、低分子蛋白の透過性能が高く且つアルブミンリークが極めて少ない分子量分画性に優れる中空糸膜は、Yの値が2×10−15×X8.04以下であることを指標とすることができることになる。このような領域の分画性能を有する中空糸膜は従来なかったものである。
本発明の分画性能は、このようにY=2×10−15×X8.04を指標に示されるものであるが、PVP篩係数Xとアルブミン篩係数Yの数値で近似しようとすれば、略、PVP篩係数Xが53%以上でアルブミン篩係数Yが0.60%以下の領域、及びPVP篩係数Xが70%以上と大きい値のとき(つまり孔径が大きいとき)にはアルブミン篩係数Yが2.0以下の領域であるといえる。
次に、PVP篩係数Xに対するα1マイクログロブリンの篩係数とアルブミンの篩係数の比(Z)を図示する事で孔径が大きくなる事に対して、低分子蛋白の除去性能とアルブミンのリーク量の関係を従来技術と対比した(図2参照)。図2には、本発明の実施例により製造した中空糸膜と従来品である中空糸膜(比較例)とのXとZとの関係をプロットした。対数近似法により、臨界線を求めたところ、Z=0.058Ln(X)−0.20Yとなった。よって、本発明によって得られる、低分子蛋白の透過性能が高く且つアルブミンリークが極めて少ない分子量分画性に優れる中空糸膜は、Zの値が0.058Ln(X)−0.20以下であることを指標とすることができる。このような領域の分画性能を有する中空糸膜は従来なかったものである。なお、本発明で、α1マイクログロブリンの篩係数とアルブミンの篩係数の比(Z)を指標にしたのは次の理由による。すなわち、α1マイクログロブリンは分子量が大きめの低分子蛋白で、除去することを目的とするが、通常α1マイクログロブリンを除去しようとして膜の孔径を大きくするとアルブミンのリークが急に大きくなってしまう。そこで、α1マイクログロブリンの透過割合に対し、アルブミンがリークしないことを示す指標として、α1マイクログロブリンの篩係数とアルブミンの篩係数の比(Z)を導入したのである。
XとZとの関係は、前記のようにZ=0.058Ln(X)−0.20Yを指標として示されるものであるが、略、PVP篩係数Xが50%以上で、α1マイクログロブリンの篩係数とアルブミンの篩係数の比(Z)が0.040以下であると表すこともできる。
ここで、低分子蛋白の透過性能の高い中空糸膜にするには、PVP篩係数25%以上が必要で、好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上である。篩係数の値があまり大きくなるとアルブミンのリークが多くなる為、いずれの場合も95%以下にしなくてはならない。
乾燥前の中空糸膜のPVP篩係数を95%以下にするためには、中空糸乾燥前後の構造変化、言い換えれば、湿潤状態から乾燥状態への構造収縮を小さく押さえる必要がある。構造収縮を小さく押さえるためには、まず、紡速を遅くして、中空糸膜の強伸度を高くする事、紡糸原液のポリマー濃度を高くして中空糸膜の強伸度を高くすることがあげられる。しかし、これらの方法を採用した場合、ポリマー密度が高くなりすぎて、低分子蛋白の物質移動係数が低下してしまう。β2マイクログロブリンまでの分子量範囲は濾過のみならず、拡散で除去する寄与が高いため、低分子蛋白の物質移動係数が余り低下してしまうと実用的でない。低分子蛋白の物質移動係数の直接的測定は血漿、血清ロット等の測定因の影響を強く受けるため、ばらつきが大きく、データの信頼性に問題がある。本発明ではβ2マイクログロブリンと分子量が近いチトクロームCの水系での物質移動係数を低分子蛋白の物質移動係数測定の代用とした。チトクロームCの物質移動係数は8.0×10-5cm/秒以上が必要で8.5×10-5cm/秒以上が好ましい。チトクロームCの物質移動係数を上げるためには、特に紡速の適度な設定が必要で、乾燥時の中空糸膜の構造変化を勘案すると、好ましい紡速範囲は30m/分〜45m/分である。
構造収縮を小さく押さえる次の方法は、凝固浴の温度を高くすることであり、80℃以上、好ましくは85℃以上、さらに好ましくは90℃以上である。凝固浴を高温にして紡糸した場合、中空糸膜の孔径が大きくなるため、孔径を制御するために、中空剤中の溶剤濃度を落とす必要がある。そうすると、中空剤の凝固力が強くなり、空走部でより強固な緻密層が形成される。その為、構造収縮が抑えられると推測される。
構造収縮を小さく押さえるもう一つの重要な要素は、落下部のDMACガス濃度である。紡口から吐出された中空糸膜は落下部走行中にミクロ相分離により、構造形成されるが、落下部の温度、湿度のみならず溶剤ガス濃度が構造形成に及ぼす影響が大きい事を新たに見出した。本発明において落下部とは、紡口から凝固浴までの中空糸膜が移送される全ての領域をいう。
落下部の溶剤濃度が低い場合、構造収縮が大きくなる方向にあり、エアプロセッサー等で温湿度をコントロールした風を落下部に導入する時に顕著である。この理由は定かではないが、落下部での糸外表面からの溶剤の蒸発が顕著になり、外表面のポリマー濃度が上昇した状態で凝固浴に入る為、より大きな収縮力が働くものと考えられる。一方、落下部に溶剤ガスを導入した場合、構造収縮が少なくなる。これは、糸外表面近傍のガスの拡散層が厚くなる影響で糸からのガスの蒸発が少なくなり、凝固浴での収縮を抑えるためと推測される。落下部での最適な溶剤濃度は150ppm以上1000ppm以下である。150ppm以下では構造収縮を抑える事が困難であり、1000ppm以上では作業環境の悪化や糸外表面側の未凝固が問題となる。
ガス濃度の測定方法はガス検知管、ガス検知器、ガスクロマトグラフィー等で測定可能だが、ガス検知管での測定が容易で好ましい。落下部での溶剤濃度をこの範囲にするためには、落下部を密閉し、その中に溶剤ガスを導入する、凝固浴の溶剤濃度を上げる、落下部フード内に溶剤を供給する等の方法があるが、いずれの方法を用いても、また、組み合わせて使用しても構わない。また、外表面の開孔の観点から落下部の温度は30℃〜80℃、湿度は40%〜60%を同時に達成するのが好ましい。さらに、落下部での相分離を進行させる為、落下長は30cm以上90cm以下にするのがよい。また、ここで言う落下長とは紡口から凝固浴までの距離の事を言い、落下部とは、紡口から凝固浴までの雰囲気をいい、落下部フードとは落下部の囲いの事を言う。
凝固浴への浸漬の後、中空糸膜は精錬工程を経た後、乾燥機に導入され、乾燥後、巻き取られ、中空糸膜を得る。尚、ここでは湿潤状態の中空糸を切断後、束状とした後、乾燥しても構わない。
得られた中空糸膜は上記の方法でPVP篩係数の測定を行う。また、乾燥前の中空糸膜のPVP篩係数の測定は、乾燥機前に巻き取り機を設置し、湿潤状態の中空糸膜を巻き取り、ミニモジュールを作成しておこなった。
また、本発明において、幾つかのサンプルにおいて、ミニモジュールで人血清を用いてβ2マイクログロブリン(以下β2−mg)、α1マイクログロブリン(以下α1−mg)アルブミン(以下alb)の篩係数を測定した。篩係数の測定にあたっては、生理食塩水を加えて総タンパク濃度を6.5g/dlに調整した人血清にβ2−mg、α1−mg を添加したものを元液とし、これを線速0.4cm/秒でミニモジュールに通液し、膜間圧力差25mmHgの圧力をかけて濾液を採取した。続いて、β2−mg、α1−mgおよびalbの濃度をEIA(enzyme immunoassay法)法、BCG(ブロムクレゾールグリーン発色法)法によって求め、次式(2)から篩係数を算出した。尚、篩係数は60分間通液後の値を使用した。
篩係数=(濾液の濃度/元液の濃度)×100(%) ・・・(2)
次に本発明におけるチトクロームCの物質移動係数の測定方法を説明する。
有効長16cm、100フィラメントからなるミニモジュールを作成し、接着部を外に出して、生理食塩水を入れたビーカーに浸漬(D側)し密閉する。また、ビーカー内はスターラーで攪拌しておく。次に、チトクロームCを200ppmになるように生理食塩水で10ml調整し、元液とする。これをミニモジュールの内側に3cc/分の流速になるように調整して循環し、60分後にサンプリングし、下記に示す式に従い算出する。尚、循環は37℃に恒温した槽内で行う。
物質移動係数=(2×CDT×VD)/{A×(CBO+CBT−CDO−CDT)×Δt}
CBO:測定開始前の元液吸光度
CBT:測定終了後の元液吸光度
CDO:測定開始前のD側吸光度
CDT:測定終了後のD側吸光度
A:膜面積(cm2)
△t:時間(sec)
VD:D側の体積
吸光度は分光光度計にて409nm波長での吸光度を使用した。
実施例
以下に実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
PSf(ソルベイ社製、P−1700)17重量部、PVP(アイ・エス・ピー社製、K−90)4重量部、ジメチルアセトアミド(以下、DMAC)79重量部からなる均一な紡糸原液を作成した。中空内液にはDMAC42%水溶液を用い、スリット幅50μmの紡糸口金から吐出させた。この時、落下部はフードで覆い、DMACのガスを導入し、落下部のDMACガス濃度を500ppmになるように調整した。次に50cm下方に設けた水よりなる90℃の凝固浴に浸漬し、30m/分の速度で凝固、精錬を行った後、乾燥機に導入し、160℃で乾燥後、中空糸膜を巻き取った。尚、乾燥後の膜厚を45μm、内径を200μmに合わせるように紡糸原液、中空内液の吐出量を調製した。得られた中空糸膜で、ミニモジュールを作成して、PVP−篩係数の測定および、人血清を用いた篩係数の測定ならびにチトクロームCの物質移動係数の測定を行った。尚、使用したPVPのK値は30.5だった。測定結果を表1に示す。得られた膜は、低分子蛋白の透過性が高く、且つアルブミンのリークが極めて少ない、分子量分画性に優れる性能であった。
中空内液濃度を43.5%にした以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。得られた中空糸膜の評価結果を表1に示す。得られた膜は、低分子蛋白の透過性が高く、且つアルブミンのリークが極めて少ない、分子量分画性に優れる性能であった。
中空内液濃度を45%にした以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。得られた中空糸膜の評価結果を表1に示す。得られた膜は、低分子蛋白の透過性が高く、且つアルブミンのリークが極めて少ない、分子量分画性に優れる性能であった。
落下部のDMACガス濃度を900ppmになるようにDMACガスの導入量を調整した以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。得られた中空糸膜の評価結果を表1に示す。得られた膜は、低分子蛋白の透過性が高く、且つアルブミンのリークが極めて少ない、分子量分画性に優れる性能であった。
紡速を40m/分にした以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。得られた中空糸膜の評価結果を表1に示す。得られた膜は、低分子蛋白の透過性が高く、且つアルブミンのリークが極めて少ない、分子量分画性に優れる性能であった。
凝固浴温度を95℃にした以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。得られた中空糸膜の評価結果を表1に示す。得られた膜は、低分子蛋白の透過性が高く、且つアルブミンのリークが極めて少ない、分子量分画性に優れる性能であった。
紡速を20m/分 にした以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。得られた中空糸膜の評価結果を表1にしめす。得られた膜は、低分子蛋白の透過性が高く、且つアルブミンのリークが極めて少ない、分子量分画性に優れる性能であった。
比較例1
旭メディカル社製人工腎臓APS−150U(ロット番号L37L7U−T)を解体し、ミニモジュールを作成し、PVP−篩係数の測定および、人血清を用いた篩係数の測定ならびにチトクロームCの物質移動係数の測定を行った。尚、使用したPVPのK値は30.5だった。測定結果を表1に示す。
比較例2
旭メディカル社製人工腎臓APS−150MD(ロット番号022H2Q−M)を解体し、ミニモジュールを作成し、比較例1と同様の評価をおこなった。表1に結果を示す。
比較例3
旭メディカル社製人工腎臓APS−130S(ロット番号01777E−A)を解体し、ミニモジュールを作成し、比較例1と同様の評価をおこなった。表1に結果を示す。
比較例4
旭メディカル社製人工腎臓APS−180E(ロット番号018H8R−M)を解体し、ミニモジュールを作成し、比較例1と同様の評価をおこなった。表1に結果を示す。
比較例5
フレゼニウス社製人工腎臓FPX140(ロット番号CLU291)を解体し、ミニモジュールを作成し、比較例1と同様の評価をおこなった。表1に結果を示す。
比較例6
東レ社製人工腎臓BS−16U(ロット番号90510314)を解体し、ミニモジュールを作成し、比較例1と同様の評価をおこなった。表1に結果を示す。
比較例7
東レ社製人工腎臓BS−1.6UL(ロット番号00940110)を解体し、ミニモジュールを作成し、比較例1と同様の評価をおこなった。表1に結果を示す。
比較例8
フレゼニウス-川澄社製人工腎臓PS−1.6UW(ロット番号093355)を解体し、ミニモジュールを作成し、比較例1と同様の評価をおこなった。表1に結果を示す。
比較例9
落下部フード内を密閉し、DMACガスを導入しなかった以外は実施例2と同様の方法で中空糸膜を得た。落下部フード内のDMAC濃度は110ppmだった。得られた中空糸膜の評価結果を表1に示す。
比較例10
エアプロセッサーで湿度60%、温度50℃の温風を落下部に導入し、DMACのガスを導入しなかった以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。得られた中空糸膜の評価結果を表1にしめす。尚、落下部フード内のDMAC濃度は検出限界以下だった。
比較例11
落下部フード内を密閉し、落下部フード内でDMACをガラス容器に入れて炊き上げ、落下部内DMAC濃度を3000ppmになるようにDMAC量を調整した。中空糸は直接凝固浴に浸漬するようにガラス容器の位置を調整し、それ以外は実施例1と同様の方法で中空糸膜を得た。得られた中空糸膜は固着気味で、約50%位の確率で乾燥時、中空潰れが発生したため、性能測定を省略した。糸外表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、孔が小さく、数も少なかった。中空糸外表面のDMAC濃度が高すぎた影響と思われる。
本発明の医療透析用中空糸膜は人工透析の際用いられ、不要物質である低分子蛋白を効率よく除去する一方、有用蛋白のアルブミンの漏出を極力抑えることができる分子量分画性の極めて良好な膜なので、より効果的な透析医療に用いられる。
本発明の実施例、比較例におけるPVP篩係数Xとアルブミン篩係数Yの関係を示す図 本発明の実施例、比較例におけるPVP篩係数Xに対するα1マイクログロブリンの篩係数とアルブミンの篩係数の比(Z)を示す図

Claims (5)

  1. ポリスルホンとポリビニルピロリドンおよび溶剤を含む紡糸原液を中空内液とともに紡糸口金から吐出する工程、吐出した原液を凝固させる工程、凝固した中空糸膜を乾燥する工程を含み、紡速を30m/分〜45m/分、凝固浴の温度を80℃以上、紡口から吐出された中空糸膜が落下する落下部の溶剤濃度を150ppm以上1000ppm以下、落下部の温度を30℃〜80℃、落下部の湿度を40%〜60%、落下長を30cm以上90cm以下とすることにより得られる、乾燥前の中空糸膜の重量平均分子量4万のポリビニルピロリドンの篩係数が95%以下、乾燥後の中空糸膜のアルブミン篩係数が0.09〜1.50%、乾燥後の中空糸膜の重量平均分子量4万のポリビニルピロリドンの篩係数をX、乾燥後の中空糸膜のアルブミン篩係数をYとした時のYの値が2×10−15×X8.04以下、かつ乾燥後の中空糸膜のアルブミン篩係数を乾燥後の中空糸膜のα1マイクログロブリン篩係数で除した値をZとした時のZの値が0.058Ln(X)−0.20以下である事を特徴とする医療透析用中空糸膜。
  2. 乾燥後の中空糸膜の重量平均分子量4万のポリビニルピロリドンの篩係数の値が25%以上である請求項1記載の医療透析用中空糸膜。
  3. 溶剤がジメチルアセトアミドである請求項1または2記載の医療透析用中空糸膜。
  4. ポリスルホンとポリビニルピロリドンおよび溶剤を含む紡糸原液を中空内液とともに紡糸口金から吐出する工程、吐出した原液を凝固させる工程、凝固した中空糸膜を乾燥する工程を含む医療透析用中空糸膜の製造方法において、紡速を30m/分〜45m/分、凝固浴の温度を80℃以上、紡口から吐出された中空糸膜が落下する落下部の溶剤濃度を150ppm以上1000ppm以下、落下部の温度を30℃〜80℃、落下部の湿度を40%〜60%、落下長を30cm以上90cm以下とする事を特徴とする請求項1記載の医療透析用中空糸膜の製造方法。
  5. 溶剤がジメチルアセトアミドである請求項4記載の医療透析用中空糸膜の製造方法。
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