JP6373789B2 - エラストマー組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、エラストマー組成物及びその製造方法に関する。
エラストマー組成物は、タイヤ、ベルト、ホース等の工業用品、手袋、マスク等の医療関連用品、玩具等の家庭用品といった多くの分野で利用されている。代表的なエラストマー組成物は、加硫ゴムである。加硫ゴムは、基材ゴム、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、補強剤等を含むゴム組成物が、加熱及び加圧されることにより形成される。安価で機械的特性に優れた基材ゴムとして、天然ゴムが多用されている。
加硫ゴムに関し、植物から採取される天然ゴムラテックス中のタンパク質成分が、急性アレルギーを誘発することが知られている。また、加硫促進剤や老化防止剤の種類によっては、遅延型アレルギーが誘発される場合がある。加硫促進助剤である亜鉛華(酸化亜鉛)からの亜鉛イオンの溶出といった環境問題も指摘されている。
医療関連用品や家庭用品といった用途では、安全性の高いエラストマー組成物が求められている。また、乳幼児や高齢者等を対象とする用途では、従来の加硫ゴム製品よりもさらに柔軟で、伸縮性の高いエラストマー組成物が要望されている。
また、加硫ゴムの場合、製造工程だけではなく、リサイクル工程においても高温・高圧処理が必要である。省エネルギー及び省資源の観点から、加工及びリサイクルが容易な熱可塑性エラストマーが、加硫ゴムの代替として検討されているが、その機械的特性は十分に満足できるものではない。
特開2009−114250号公報、特開平6−166771号公報及び特開平8−12814号公報には、種々の検討がなされたゴム組成物が開示されている。
特開2009−114250号公報は、ジエン系ゴムとグルテンとを含むゴム組成物に関する。このゴム組成物には、加硫促進剤等が配合されている。このゴム組成物からなる加硫ゴムでは、グルテンとジエン系ゴムとが化学的に結合している。この加硫ゴムの破断強度(引張強度)及びモジュラスは大きい。破断強度及びモジュラスの大きな加硫ゴムは、柔軟性及び伸縮性が要求される用途での使用に適さない。
特開平6−166771号公報及び特開平8−12814号公報では、加硫剤等を含まないゴム組成物及びゴム製品が提案されている。
特開2009−114250号公報 特開平6−166771号公報 特開平8−12814号公報
特開平6−166771号公報及び特開平8−12814号公報に開示されたゴム組成物には、モジュラス向上のために、タンパク質が配合されている。これらのゴム組成物からなるゴム製品の伸縮性及び柔軟性は、十分に満足できるものではない。
特開平6−166771号公報及び特開平8−12814号公報では、タンパク質中のチオール基(−SH)が、ゴム分子との化学結合の形成に寄与している。タンパク質に含まれるチオール基は、通常、空気中で酸化されて、シスチン結合(−S−S−)を形成する。チオール基を有するタンパク質を工業的に製造し、安定して利用することは、容易ではない。一方、シスチン結合を有するタンパク質を含み、かつ柔軟性及び伸縮性に優れたエラストマー組成物は、未だ検討されていない。
本発明の目的は、柔軟性及び伸縮性に優れ、かつ製造容易なエラストマー組成物及びその製造方法の提供である。
本発明に係るエラストマー組成物は、4.0質量%以上30質量%以下のシスチンを含むペプチドと、ハロゲン基、スルホン基、カルボニル基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、アミド基及びニトリル基からなる群から選択される少なくとも1種の極性基を有する高分子とを主成分として含んでいる。このエラストマー組成物は、ペプチドと高分子との静電相互作用及び疎水効果に基づいて形成される架橋構造を有している。このエラストマー組成物の300%モジュラスME300は、主成分である高分子の300%モジュラスMP300よりも小さい。
好ましくは、このエラストマー組成物の300%モジュラスME300は、0.1MPa以上1.0MPa以下である。好ましくは、このエラストマー組成物の破断強度Tbは、0.1MPa以上6.5MPa以下である。
好ましくは、この高分子のゼータ電位の絶対値は、30mV以上である。好ましくは、この高分子は、脱タンパク質処理をしていない天然ゴムである。
好ましくは、この高分子100質量部に対するこのペプチドの量は、1.0質量部以上20質量部以下である。
好ましくは、このエラストマー組成物は、実質的に加硫剤、加硫促進剤及び加硫促進助剤を含まない。
好ましくは、このペプチドは、5.0質量%以上15質量%以下のシスチン結合を含んでいる。好ましくは、このペプチド中に含まれるチオール基の量は、1.0質量%以下である。
好ましくは、このペプチドは水に不溶の微粒子である。好ましくは、この微粒子の平均粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下である。
本発明に係るエラストマー組成物の製造方法は、
(1)4.0質量%以上30質量%以下のシスチンを含むペプチドと、ハロゲン基、スルホン基、カルボニル基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、アミド基及びニトリル基からなる群から選択される少なくとも1種の極性基を有する高分子とを、水性媒体中で混合して混合液を得る第一工程と、
(2)この混合液を乾燥させて、高分子とペプチドとの間に、静電相互作用及び疎水効果に基づく架橋構造を形成させることにより、その300%モジュラスME300が、この高分子の300%モジュラスMP300よりも小さいエラストマー組成物を得る第二工程とを含んでいる。
本発明に係るエラストマー組成物は、主成分であるペプチドと高分子との静電相互作用及び疎水効果に基づいて形成される架橋構造を有している。このエラストマー組成物は、柔軟性及び伸縮性に優れる。このエラストマー組成物からなる成形品は、使用者に、適正な使用感を与える。さらに、このエラストマー組成物の製造には、加硫剤等の配合や、高温・高圧操作を要しない。このエラストマー組成物は、容易かつ安価に製造されうる。
以下、本発明の好ましい実施形態に基づいて詳細に説明されるが、本発明の範囲がこの実施形態に限定して解釈されるものではない。以下の実施形態を含め、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、種々の変更が可能である。なお、本願明細書において使用される用語は、特に言及されない限り、JIS K6200「ゴム−用語」に準拠して定義される。
(エラストマー組成物)
本発明に係るエラストマー組成物の主成分は、4.0質量%以上30質量%以下のシスチンを含むペプチドと、ハロゲン基、スルホン基、カルボニル基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、アミド基及びニトリル基からなる群から選択される少なくとも1種の極性基を有する高分子である。このエラストマー組成物は、ペプチドと高分子とを主成分として形成される架橋構造を有している。
この架橋構造では、高分子の分子鎖が、ペプチドと高分子との静電相互作用及び疎水効果に基づいて形成される架橋点によって、拘束されていると推測される。静電相互作用及び疎水効果に基づいて形成される架橋点による高分子鎖の拘束力は、共有結合によって形成される化学的架橋点による拘束力よりも小さい。静電相互作用及び疎水効果に基づいて形成された架橋構造を有するエラストマー組成物では、優れた柔軟性と伸縮性とが達成される。
さらに、本発明に係るエラストマー組成物は、共有結合に基づく化学的架橋構造を有していないにも関わらず、成形品として十分な耐熱性を備えている。本発明における架橋構造に関して、詳細なメカニズムは明確には解明されていないが、本発明者等による推測は以下の通りである。
例えば、ハロゲン基のような極性基を有する高分子は、水性媒体中で、負の表面電荷を有している。この高分子と、シスチンを含むペプチドとを混合すると、静電相互作用により、高分子鎖とペプチド分子とが凝集して集合体を形成すると考えられる。その後、室温下で自然乾燥をおこなって、水性媒体を除去すると、集合体内部で、高分子鎖とペプチド分子とがさらに接近する。分子鎖の接近によって、高分子鎖中の極性基近傍に形成された電子雲と、ペプチド中のシスチン結合近傍の電子雲とが接近して重なり合いが生じることにより、架橋点が形成されると推測される。この電子雲の重なり合いは、集合体内部のみならず、集合体間でも生じると考えられる。集合体内部及び集合体間による複数の電子雲の重なり合いが協同的に作用することにより、高分子及びペプチド中の共有結合の開裂と再結合とをともなわないにも関わらず、化学的架橋構造に近似した強固な架橋構造が形成されると考えられる。さらに、このメカニズムによれば、ペプチドのアミノ酸配列、特にシスチン結合の形成部位とその量が、架橋構造の形成に影響すると推測される。
本発明の目的が阻害されない限り、本発明に係るエラストマー組成物は、化学的架橋構造を含みうる。このエラストマー組成物において、ペプチドと高分子との他の分子間相互作用に基づいて架橋構造が形成されてもよい。
前述した通り、ペプチドと高分子との静電相互作用及び疎水効果に基づいて形成された架橋構造を有するエラストマー組成物は、柔軟性及び伸縮性に優れる。本願明細書において、エラストマー組成物の柔軟性及び伸縮性は、JIS K6251記載の方法に準拠して測定される300%モジュラスを指標として示される。さらに、本発明に係るエラストマー組成物の300%モジュラスME300は、ペプチド及び高分子のみを含み、実質的に他の添加物を含まないエラストマー組成物からなる試験片の測定値として定義される。
本発明に係るエラストマー組成物の300%モジュラスME300は、その成分として含まれる高分子の300%モジュラスMP300よりも小さい。換言すれば、本発明に係るエラストマー組成物の300%モジュラスME300と、高分子の300%モジュラスMP300との比(ME300/MP300)は、1未満である。柔軟性及び伸縮性の観点から、比(ME300/MP300)は、0.95以下が好ましく、0.90以下がより好ましい。耐久性の観点から好ましい比(ME300/MP300)は、0.50以上である。
本発明に係るエラストマー組成物の300%モジュラスME300は、1.0MPa以下が好ましい。ME300が1.0MPa以下のエラストマー組成物は柔軟であり、小さな力で容易に引き延ばされる。この観点から、エラストマー組成物のME300は0.9MPa以下がより好ましく、0.80MPa以下がさらに好ましい。耐久性の観点から好ましいME300は、0.1MPa以上である。
本発明に係るエラストマー組成物の破断強度Tbは、0.1MPa以上6.5MPa以下が好ましい。耐久性の観点からより好ましい破断強度Tbは、0.5MPa以上である。柔軟性及び伸縮性の観点から、より好ましい破断強度Tbは、6.3MPa以下である。本発明に係るエラストマー組成物の破断強度Tbは、ペプチド及び高分子のみを含み、実質的に他の添加物を含まないエラストマー組成物からなる試験片を用いて、JIS K6251記載の方法に準拠して測定される測定値である。
好ましくは、このエラストマー組成物は、高分子100質量部に対して、1.0質量部以上20質量部以下のペプチドを含む。架橋構造形成の観点から、ペプチドの量は、1.5質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましい。コスト上の観点から、より好ましいペプチドの量は10質量部以下である。
(高分子)
本発明に係るエラストマー組成物に用いられる高分子は、ハロゲン基、スルホン基、カルボニル基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、アミド基及びニトリル基からなる群から選択される少なくとも1種の極性基を有している。高分子の極性基は、水性媒体中で大きな表面電荷を付与することにより、架橋構造の形成に寄与すると推測される。この観点から、より好ましい極性基は、ハロゲン基、カルボキシル基、スルフィド基、ジスルフィド基及びニトリル基である。シスチンを含むペプチドとの親和性の観点から、特に好ましい極性基は、スルフィド基及びジスルフィド基である。本発明の目的が達成される限り、高分子が他の極性基を含んでもよく、非極性の官能基を含んでもよい。異なる極性基を有する2種以上の高分子が混合されて用いられてもよい。
静電相互作用及び疎水効果に基づく架橋構造を形成しうる限り、極性基を有する高分子の構造は、特に限定されない。上記極性基が、高分子の主鎖に含まれるものでもよく、高分子の側鎖又は末端に結合されたものでもよい。上記極性基が側鎖又は末端に結合される場合、主鎖となる高分子の種類は特に限定されない。機械的物性の観点から、ゴム系高分子及び熱可塑性エラストマーが好適に用いられ得る。
極性基を有するゴム系高分子の具体例として、天然ゴム(NR)、塩素化天然ゴム、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−イソプレンゴム(NIR)、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレンゴム(NBIR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、アクリルゴム(ACM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、カルボキシル化ブタジエンゴム(XBR)、カルボキシル化クロロプレンゴム(XCR)、カルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(XNBR)、臭素化ブチルゴム(BIIR)、塩素化ブチルゴム(CIIR)、ビニルピリジン−ブタジエンゴム(PBR)、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴム(PSBR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム等が挙げられる。
さらに、主鎖として用いられうるゴム系高分子として、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1、2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)、ポリエチレンゴム等が例示される。
熱可塑性エラストマーの例として、スチレンブロック含有エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。熱可塑性エラストマーとゴム系高分子とが混合されて用いられてもよい。本発明の目的が達成される限り、ゴム系高分子及び熱可塑性エラストマー以外の他の樹脂が混合されてもよい。
ハロゲン基、スルホン基、カルボニル基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、アミド基及びニトリル基からなる群から選択される少なくとも1種の極性基を有する高分子が、さらに二重結合を含む場合、この二重結合と極性基との電子雲の重なり合いによって、より強固な架橋構造が形成されると考えられる。この観点から、好ましい高分子は、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等のジエン系ゴム及び天然ゴムである。
天然ゴムは、タンパク質に結合したω末端と、2個のtrans−1、4イソプレン単位と、約1000個のcis−1、4イソプレン単位と、脂質に結合したα末端とから構成される。天然ゴムの場合、主鎖中の二重結合と、タンパク質の構成アミノ酸中の極性基とが、ペプチド分子と相互作用すると考えられる。本発明において、天然ゴムを高分子として用いる場合、脱タンパク質処理をしていない天然ゴムが好ましい。
本発明に係るエラストマー組成物に用いられる高分子の製造方法は、特に限定されない。所定の極性基を有する単量体の重合反応による方法、主鎖となる高分子と特定の化合物との化学反応による方法等が例示される。例えば、二重結合を含むジエン系ゴムと、カルボン酸無水物とを反応させて、カルボキシル基含有ジエン系ゴムを製造する方法が挙げられる。
本発明の一実施形態に係るエラストマー組成物には、高分子からなる微粒子が水性媒体中にコロイド状に分散したラテックスが製造されて用いられる。極性基を有する高分子からなる微粒子の表面は、水性媒体中で、正又は負に帯電する。ペプチドとの静電相互作用が促進されるとの観点から、大きな表面電荷を有する高分子が好ましい。
本願明細書において、高分子微粒子の表面電荷は、ゼータ電位を指標として示される。ゼータ電位とは、水性媒体に分散された微粒子表面上の静止流体層と、水性媒体との間の電位差として定義される。
ゼータ電位の絶対値が30mV以上である高分子が好ましい。ペプチドと高分子との親和性の観点から、ゼータ電位の絶対値が40mV以上の高分子がより好ましく、45mV以上の高分子がさらに好ましく、50mV以上の高分子が特に好ましい。ゼータ電位の絶対値の上限値は、特に限定されないが、製造コスト等の観点から、200mV以下が好ましい。本願明細書において、高分子のゼータ電位は、約0.05質量%の高分子を含む分散液(pH7、25℃)を、ゼータ電位測定装置(大塚電子社製のELSZ−1000Z)で測定したときの測定値として定義される。
(ペプチド)
本願明細書において、「ペプチド」とは、2分子以上のアミノ酸がペプチド結合により結合された化合物の総称として定義される。通常、2〜10分子のアミノ酸からなるペプチドが、オリゴペプチドと称される。10〜100分子のアミノ酸からなるペプチドが、ポリペプチドと称される。100分子を超えるアミノ酸が結合した化合物が、タンパク質と称される。特に言及されない限り、本願明細書における「ペプチド」の概念には、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド及びタンパク質が含まれる。
本発明に係るエラストマー組成物に用いられるペプチドは、構成アミノ酸として、シスチンを含む。このペプチドの全構成アミノ酸に対するシスチン含量[Cys]は、4.0質量%以上30質量%以下である。高分子との静電相互作用が促進されるとの観点から、シスチン含量[Cys]は5.0質量%以上が好ましく、6.0質量%以上がより好ましい。製造及び入手容易との観点から、好ましいシスチン含量[Cys]は20質量%以下である。本願明細書において、ペプチド中のシスチン含量[Cys]は、アミノ酸自動分析計(日本電子社製の全自動アミノ酸分析機「JLC−500/V」、カラム:強酸性陽イオン交換樹脂LCR−6)を用いて測定される。
シスチン含量の異なる2以上のペプチドを含む混合ペプチドが用いられてもよい。この混合ペプチドは、シスチン含量が4.0質量%未満のペプチドを含みうる。この混合ペプチドでは、ペプチド中の全構成アミノ酸に対するシスチン含量の平均値が、4.0質量%以上30質量%以下となるように調製される。ペプチド中の他の構成アミノ酸の種類及び比率は、本発明の目的が阻害されない範囲内で、適宜選択される。
構成アミノ酸として、システインを含むペプチドが存在する。システインは、チオール基(−SH)を有する。チオール基は、空気中で容易に酸化される。酸化によって、2分子のシステインから、シスチン結合(−S−S−)を有するシスチンが形成される。ペプチド中のシステインのほとんどは、シスチンとして含まれている。
本発明に係るエラストマー組成物では、ペプチド中のシスチン結合(−S−S−)が、高分子鎖と相互作用することにより、架橋構造の形成に寄与すると推測される。得られるエラストマー組成物の柔軟性及び伸縮性の観点から、ペプチド中のシスチン結合の量は、5.0質量%以上が好ましく、6.0質量%以上がより好ましく、7.0質量%がさらに好ましい。製造及び入手が容易との観点から、好ましいシスチン結合の量は15質量%以下である。
本発明に係るエラストマー組成物に用いられるペプチドは、実質的にチオール基(−SH)を含まないが、本発明の目的が達成される限り、ペプチドがチオール基を含んでもよい。ペプチド中のチオール基含量は、1.0質量%以下が好ましく、0.9質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下がさらに好ましい。
本発明の目的が達成される限り、4.0質量%以上30質量%以下のシスチンを含むペプチドを得る方法は、特に限定されない。例えば、天然物からの抽出、天然物由来タンパク質の加水分解、遺伝子工学、液相法又は固相法による合成等が挙げられる。天然物由来タンパク質を、酸、アルカリ又は酵素によって加水分解する方法が、好適に用いられる。加水分解条件は、天然物由来タンパク質の種類に応じて、適宜選択される。システインを含む天然物由来タンパク質を加水分解した後、さらに酸化処理することにより、シスチンを含むペプチドが得られてもよい。
シスチン又はシステインを含む天然物由来タンパク質として、獣毛、羽毛、卵殻膜、爪、角、甲羅、絹糸等に含まれるケラチン及びクチクル、乳清に含まれるα−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン、ウシ血清アルブミン等、卵白に含まれるオボアルブミン、オボトランスフェリン等の動物由来タンパク質が例示される。小麦、米、大豆等に含まれる植物由来タンパク質が用いられてもよい。シスチン及びシステイン含量が多いケラチン、クチクル、グルテニン及びオリゼニンが好ましい。安全性の観点から、より好ましいタンパク質は、ケラチン、クチクル及びオリゼニンである。
天然物由来タンパク質が加水分解されることにより、ペプチド結合が切断され、分子量数千〜数万のペプチドが生成される。得られるペプチドの分子量は、原料であるタンパク質の種類や加水分解条件に依存する。本発明の目的が達成される限り、ペプチドの分子量は特に限定されない。高分子との混合性の観点から好ましいペプチドの分子量は、10,000以下であり、より好ましくは、8,000以下であり、更に好ましくは、5,000以下である。分子量の異なる2以上ペプチドが混合されて用いられてもよい。
本願明細書において、ペプチドの分子量は、高速液体クロマトグラフを用いて、排除限界クロマトグラフィー(SEC)により、以下の測定条件で測定される数平均分子量として定義される。
装置:HPC−8220GPC(東ソー社製)
カラム:TSK−gel GMPW−XL(東ソー社製)
溶離液:ジメチルホルムアミド(DMF)
カラム温度:40℃
流速:1.0(ml/min.)
検出器:示差屈折率計RI−8022
標準物質:6−メルカプトプリンモノハイドレート
本発明において用いられるペプチドは、水溶性であっても良く、水不溶性であってもよい。ペプチドが水不溶性の場合、高分子との混合性の観点から、平均粒子径1.0μm以下の微粒子とされることが好ましい。ペプチド微粒子の平均粒子径の下限値は特に限定されないが、製造容易との観点から、好ましくは0.1μm以上である。ペプチド微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により測定される。水溶性のペプチドと、水不溶性のペプチド微粒子とを混合して用いてもよい。
(エラストマー組成物の製造方法)
本発明の一実施形態に係るエラストマー組成物は、以下の工程に従って製造される。
この実施形態では、初めに、高分子からなる微粒子が水性媒体中にコロイド状に分散されたラテックスが準備される。この高分子は、ハロゲン基、スルホン基、カルボニル基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、アミド基及びニトリル基からなる群から選択される少なくとも1種の極性基を有している。
本発明において、ラテックス中の高分子含有量は、特に限定されない。ペプチドとの混合性の観点から、固形分として、30質量%以上70質量%以下の高分子を含むラテックスが好ましい。より好ましい高分子含有量は、40質量%以上60質量%以下である。
ラテックスの分散安定性の観点から、高分子からなる微粒子の平均粒子径は、0.5μm以下が好ましく、0.4μm以下がより好ましい。製造容易との観点から、好ましい平均粒子径は、0.01μm以上である。高分子微粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、動的光散乱法により測定される。
ラテックスに含まれる代表的な水性媒体は水である。本発明の目的が達成される限り、水性媒体は、有機溶媒を含みうる。水との均一な混合が可能な親水性有機溶媒が好ましい。親水性有機溶媒の具体例として、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類が挙げられる。ペプチドとの相互作用が阻害されない限り、水性媒体に、分散安定剤、乳化剤、界面活性剤等の添加剤が配合されてもよい。
本発明において、ラテックスを得る方法は、特に限定されない。例えば、ハロゲン基、スルホン基、カルボニル基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、アミド基及びニトリル基からなる群から選択される少なくとも1種の極性基を有するモノマーを、界面活性剤存在下で乳化重合する方法が挙げられる。
本発明の他の実施形態では、ラテックスとして、植物から採集された天然ゴムラテックスが用いられる。天然ゴムラテックスは、平均粒子径約1μmのゴム粒子が水に分散した分散液である。脱タンパク質処理されていない天然ゴムラテックスが、好ましい。本発明に係るエラストマー組成物では、天然ゴムラテックス中のタンパク質が、架橋構造の形成に寄与すると推測される。本発明の目的が達成される限り、脱タンパク質処理された天然ゴムラテックスが用いられてもよい。
続いて、準備されたラテックスにペプチドが添加されることにより、高分子及びペプチドを含む混合液が形成される。このペプチドは、構成アミノ酸として、4.0質量%以上30質量%以下のシスチンを含んでいる。
好ましくは、ラテックス中の高分子固形分100質量部に対して、1.0質量部以上20質量部以下のペプチドが添加される。架橋構造形成の観点から、ペプチドの量は、1.5質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましい。コスト上の観点から、より好ましいペプチドの量は10質量部以下である。
本発明において、ペプチドは、水溶液としてラテックスに添加されてもよく、ペプチド微粒子の分散液としてラテックスに添加されてもよい。水溶性ペプチドから調製された水溶液と、水不溶性のペプチド微粒子の分散液とが併用されてもよい。この製造方法では、ペプチドが水溶性であるか否かにかかわらず、ラテックス中の高分子微粒子との間で、静電相互作用及び疎水効果による疎水性相互作用が生じ得る。
次の工程として、高分子及びペプチドを含む混合液が、所定の乾燥容器に投入されて、乾燥されることにより、本発明に係るエラストマー組成物が製造される。
高分子及びペプチドを含む混合液の乾燥条件は、混合液の量及び乾燥容器の形状によって、適宜選択される。ペプチド中のシスチン基の開裂及び高分子との共有結合の形成が抑制されるとの観点から、乾燥温度は、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。乾燥効率の観点から、好ましい乾燥温度は、15℃以上である。理想的な乾燥条件は、室温での自然乾燥である。本願明細書において、室温とは25℃以上30℃以下を意味する。
乾燥時間は、混合液中の水性媒体の減少量を指標として調整される。乾燥前の混合液に含まれる水性媒体の90質量%以上が除去される乾燥時間が好ましい。より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上の水性媒体が除去されるように、乾燥時間が調整される。
この実施形態では、エラストマー組成物は、実質的に、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤を含まない。このエラストマー組成物は、高分子鎖が加硫剤等によって架橋された架橋構造を含まない。このエラストマー組成物では、従来の加硫ゴム製品よりも小さな300%モジュラスが達成される。このエラストマー組成物からなる成形品は、小さな力で容易に変形される。この成形品が人体に適用されたとき、使用者に快適な使用感を与える。このエラストマー組成物が、乳幼児向けの玩具や高齢者向けの手袋等に適用された場合、特に優れた使用感が達成される。
他の実施形態では、用途に応じて必要な機械的物性を向上させるため、エラストマー組成物に、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、補強剤、着色剤、老化防止剤等の添加剤が配合され、加硫工程に付される。このエラストマー組成物は、静電相互作用及び疎水効果に基づく架橋構造と、加硫剤等によって得られる架橋構造とを含む。このエラストマー組成物では、柔軟性及び伸縮性が阻害されることなく、強度、耐久性、耐熱性等の物性が改善される。このエラストマー組成物は、種々の用途分野に適用されうる。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
(ペプチド液の調製)
[製造例1]
沸騰させて脱気した2Lの水に、水酸化カリウム(和光純薬製、試薬1級)30g、アルキルスルホン酸界面活性剤(ライオン社製チャーミークリスタ)100mL、非イオン系界面活性剤(花王社製、エマルゲン)20mL及びチオ硫酸ナトリウム(和光純薬製、試薬1級)20gを配合して、処理液を得た。この処理液に、約1cmの長さに切断した市販の毛糸(羊毛)150gを添加した後、60℃で120時間攪拌することにより、製造例1のペプチド液を得た。このペプチド液は、微量の微細粒子を含む茶褐色の溶液である。このペプチド液に含まれるペプチドP1の物性は、以下の通りである。
数平均分子量(Mn):8,000
シスチン含量:8.0質量%
シスチン結合の量:8.0質量%
チオール基の量:0質量%
[製造例2]
尿素80g、2−メルカプトエタノール20g及びドデシル硫酸ナトリウム10gを、純水100mLに配合して、処理液を得た。この処理液に、羊毛20gを添加して、60℃で24時間攪拌した後、残存する不溶粒子を透析により除去することにより、製造例2のペプチド液を得た。このペプチド液に含まれるペプチドP2の物性は、以下の通りである。
数平均分子量(Mn):400,000
シスチン含量:8.0質量%
シスチン結合の量:0質量%
チオール基の量:8.0質量%
(塩化天然ゴムラテックス(CL−NRL)の調製)
市販の高アンモニア天然ゴムラテックス(ゴム固形分濃度62質量%)1000mLに、500mLの洗浄剤(東京硝子機械社製のFineクリーンCL、次亜塩素酸ソーダ及び水酸化カリウムを各3質量%含有)と、40mLの非イオン性界面活性剤(花王社製のエマルゲン106、濃度25質量%)と、400mLの純水とを添加して混合した。得られた混合液のpHが弱酸性(pH6−7)になるように、10質量%の硫酸を添加した後、一部固形化した浮遊物を除去することにより、塩化天然ゴムラテックス(CL−NRL)を製造した。
[実施例1]
固形分濃度50%に調製した市販の高アンモニア天然ゴムラテックス(ゼータ電位:−58.36mV)5mLに、製造例1のペプチド液2mLを配合して攪拌した後、室温(約30℃)で12時間静置した。次いで、得られた配合液の全量を、底面積24cmのトレイに流し入れ、室温(約30℃)で自然乾燥することにより、シート状の組成物を得た。得られたシート状の組成物を水で洗浄した後、さらに7日間、自然乾燥することにより、実施例1のエラストマー組成物を得た。ラテックス中の高分子(固形分)100質量部に対するペプチドP1の添加量は10質量部である。
[実施例2]
グルテン(ユウテック社製、糖質制限食材GOPAN用)0.25gを水2.5mLに分散させた後、この分散液の全量を、実施例1で前述した天然ゴムラテックス5mLに添加した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のエラストマー組成物を得た。ラテックス中の高分子(固形分)100質量部に対するグルテンの添加量は10質量部である。
[比較例1]
大豆タンパク0.25gを水2.5mLに分散させた後、この分散液の全量を、実施例1で前述した天然ゴムラテックス5mLに添加した以外は、実施例1と同様にして、比較例1のエラストマー組成物を得た。ラテックス中の高分子(固形分)100質量部に対する大豆タンパクの添加量は10質量部である。
[実施例3、5、7及び比較例5]
表1−3に示された高分子を使用した他は、実施例1と同様にして、実施例3、5及び比較例5のエラストマー組成物を得た。実施例7では、製造例1のペプチド液のpHが弱酸性(pH6−7)になるように、希硫酸を添加した後、表2に示された高分子のラテックスに配合した。
[実施例4、6、8及び比較例6]
表1−3に示された高分子を使用した他は、実施例2と同様にして、実施例4、6及び比較例6のエラストマー組成物を得た。実施例8では、グルテン分散液のpHが弱酸性(pH6−7)になるように、希硫酸を添加した後、表2に示された高分子のラテックスに配合した。
[比較例2−4及び7]
表1−3に示された高分子を使用した他は、比較例1と同様にして、比較例2、3及び7のエラストマー組成物を得た。比較例4では、大豆タンパク分散液のpHが弱酸性(pH6−7)になるように、希硫酸を添加した後、表2に示された高分子のラテックスに配合した。
[実施例9]
固形分濃度50%に調製したクロロプレンゴムラテックス(昭和電工社製のCR650、ゼータ電位:32.72mV)100mLに、製造例1のペプチド液40mLを配合して攪拌した後、室温(約30℃)で12時間静置した。次いで、得られた配合液の全量を底面積200cmのトレイに流し入れ、室温(約30℃)で自然乾燥することにより、シート状の組成物を得た。得られたシート状の組成物を水で洗浄した後、さらに7日間、自然乾燥することにより、実施例9のエラストマー組成物を得た。ラテックス中の高分子(固形分)100質量部に対するペプチドP1の量は10質量部である。
[比較例8]
製造例1のペプチド液に代えて、純水を使用した以外は実施例9と同様にして、比較例8のエラストマー組成物を得た。
[実施例10]
前述の高アンモニア天然ゴムラテックス1500mLと、塩化天然ゴムラテックス(CL−NRL)500mLとを混合し、固形分濃度50質量%になるように調製して、混合ラテックスを得た。この混合ラテックス2000mLに、製造例1のペプチド液200g、10質量%のグルテンを含む分散液200g及びワックス(アイピックス社のHE−40、濃度40質量%)22.5gを配合して攪拌した後、室温(約30℃)で12時間静置した。得られた配合液100mlを、底面積200cmのトレイに流し入れ、室温(約30℃)で自然乾燥することにより、シート状の組成物を得た。得られたシート状の組成物を水で洗浄した後、さらに室温(約30℃)で自然乾燥することにより、実施例10のエラストマー組成物を得た。ラテックス中の高分子(固形分)100質量部に対するペプチドP1の量は10質量部である。
[比較例9]
製造例1のペプチド液に代えて、純水を使用した以外は実施例10と同様にして、比較例9のエラストマー組成物を得た。
[実施例11−12及び比較例10]
高分子とペプチドとの配合を表5に示されたものとした以外は、実施例1と同様にして、実施例11−12及び比較例10のエラストマー組成物を得た。
(ゴム風船の製造)
[実施例13]
実施例10と同様にして、配合液を調製した。次いで、表面に凝固液(濃度30質量%の硝酸カルシウム水溶液)を付着させた風船型を準備し、前述の配合液を投入した浸漬槽に、この風船型を浸漬させた。浸漬槽から引き上げた風船型を、室温(約30℃)で1時間静置した後、風船型を取り除くことにより、実施例13のエラストマー組成物からなるゴム風船を作成した。
[実施例14]
前述の高アンモニア天然ゴムラテックス3000mLと、塩化天然ゴムラテックス(CL−NRL)1000mLとを混合し、固形分濃度50質量%になるように調製して混合ラテックスを得た。この混合ラテックス4000mLに、製造例1のペプチド液200g、10質量%のグルテンを含む分散液200g及び前述のワックス22.5gを配合して攪拌した後、さらにブルー系着色コンパウンド(大日精化社製、青色顔料及び酸化チタン含有)6gを添加した。その後、室温(約30℃)で12時間静置して得られた配合液を用いて、実施例13と同様にして、実施例14のエラストマー組成物からなるゴム風船を作成した。ラテックス中の高分子(固形分)100質量部に対するペプチドP1の量は10質量部である。
[比較例11]
天然ゴムを基材ゴムとして含むゴム組成物が加硫されてなる市販のゴム風船を、比較例11のエラストマー組成物からなるゴム風船とした。
[耐熱性]
厚み約1mmのエラストマー組成物から、各2枚の試験片を採取した。交差するように重ねた2枚の試験片を、アルミホイルで覆い、ヘアアイロン(コイズミ社製のTiny)で加熱した。160℃で3分間加熱後の試験片の状態を観察し、以下の基準に従って判定した。実施例及び比較例のエラストマー組成物について得られた結果が、下記表1−5に示されている。
G:試験片の変形及び融着なし。
NG:試験片が変形又は融着した。
[引張試験]
JIS K6250「ゴム−物理試験方法通則」に規定の打ち抜き刃を使用して、エラストマー組成物、ゴム風船及び高分子のダンベル状3号型試験片を作成した。得られた試験片を用いて、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に記載の試験方法に準拠して引張試験をおこなった。実施例及び比較例のエラストマー組成物について得られた300%モジュラス(MPa)、破断強度(%)及び破断伸度(MPa)が、それぞれ、ME300、Tb及びEbとして下記表1−5に示されている。高分子について得られた300%モジュラス(MPa)が、MP300として、下記表1−5に示されている。ゴム風船から採取された試験片について得られた結果が、下記表6に示されている。
[硬さ測定]
JIS K6253「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−硬さの求め方」の規定に準拠して、実施例9−10及び比較例8−9のエラストマー組成物から、厚さ1.5mmの試験片各4枚を採取した。4枚の試験片を重ね合わせた後、アスカーデュロメータA型(高分子計器社)を押しつけることにより、エラストマー組成物の硬さを測定した。測定位置を変えて得られた7の測定値から、最大値と最小値を除いて、5点の平均値を計算した結果が、下記表4に記載されている。
[使用感]
実施例13及び14並びに比較例11のゴム風船を、10名の試験者に使用させ、使用感を聞き取った。「柔らかい」又は「膨らませやすい」と答えた使用者の数に基づいて、下記の格付けをおこなった結果が、下記表6に示されている。
A:9人以上
B:6−8人
C:5人以下
Figure 0006373789
Figure 0006373789
Figure 0006373789
Figure 0006373789
Figure 0006373789
表1−5に示された化合物の詳細は以下の通りである。
HA−NRL:市販の高アンモニア天然ゴムラテックス(ゼータ電位:−58.36mV)
CRL(1):クロロプレンゴムラテックス(昭和電工社製のCR350、ゼータ電位:32.72mV)
CRL(2):クロロプレンゴムラテックス(昭和電工社製のCR650、ゼータ電位:32.72mV)
CL−NRL:塩化天然ゴムラテックス(ゼータ電位:50.36mV)
NBRL:カルボキシル化変性アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス(日本ゼオン社製のLX550、ゼータ電位:47.31mV)
IRL:イソプレンゴムラテックス(Cariflex IR0401、ゼータ電位:19.47mV)
P1:製造例1のペプチド
P2:製造例2のペプチド
GT:グルテン
SB:大豆タンパク
Figure 0006373789
表1−5に示されるように、実施例のエラストマー組成物は、比較例のエラストマー組成物と比較して、耐熱性、伸縮性及び柔軟性に優れる。さらに、表6に示されるように、実施例では、使用感について、比較例よりも高い評価が得られている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明されたエラストマー組成物は、医療用品、衛生用品、化粧用品等の種々の分野に利用されうる。

Claims (9)

  1. 4.0質量%以上30質量%以下のシスチンを含むペプチド(但し、グルテンを除く)と、ハロゲン基、スルホン基、カルボニル基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、アミド基及びニトリル基からなる群から選択される少なくとも1種の極性基を有する高分子とを主成分として含み、
    上記高分子が、ゴム系高分子又は熱可塑性エラストマーであり、
    上記ペプチド(但し、グルテンを除く)に含まれるチオール基の量が1.0質量%以下であり、このペプチド(但し、グルテンを除く)の数平均分子量が10,000以下であり、
    上記高分子100質量部に対する上記ペプチド(但し、グルテンを除く)の量が、1.0質量部以上20質量部以下であり、
    上記ペプチド(但し、グルテンを除く)と上記高分子との静電相互作用及び疎水効果に基づいて形成される架橋構造を有しており、
    その300%モジュラスME300が、上記高分子の300%モジュラスMP300よりも小さいエラストマー組成物。
  2. 上記エラストマー組成物の300%モジュラスME300が、0.1MPa以上1.0MPa以下である請求項1に記載のエラストマー組成物。
  3. 上記エラストマー組成物の破断強度Tbが、0.1MPa以上6.5MPa以下である請求項1又は2に記載のエラストマー組成物。
  4. 上記高分子のゼータ電位の絶対値が30mV以上である請求項1から3のいずれかに記載のエラストマー組成物。
  5. 上記高分子が、脱タンパク質処理をしていない天然ゴムである請求項1から4のいずれかに記載のエラストマー組成物。
  6. 実質的に加硫剤、加硫促進剤及び加硫促進助剤を含まない請求項1から5のいずれかに記載のエラストマー組成物。
  7. 上記ペプチドが、5.0質量%以上15質量%以下のシスチン結合を含む請求項1から6のいずれかに記載のエラストマー組成物。
  8. 上記ペプチドが水に不溶の微粒子であり、この微粒子の平均粒子径が、0.1μm以上1.0μm以下である請求項1から7のいずれかに記載のエラストマー組成物。
  9. 4.0質量%以上30質量%以下のシスチンを含むペプチド(但し、グルテンを除く)と、ハロゲン基、スルホン基、カルボニル基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、アミド基及びニトリル基からなる群から選択される少なくとも1種の極性基を有する高分子とを、水性媒体中で混合して混合液を得る第一工程と、
    上記混合液を乾燥させて、上記高分子と上記ペプチド(但し、グルテンを除く)との間に、静電相互作用及び疎水効果に基づく架橋構造を形成させることにより、その300%モジュラスME300が、上記高分子の300%モジュラスMP300よりも小さいエラストマー組成物を得る第二工程とを含んでおり、
    上記高分子が、ゴム系高分子又は熱可塑性エラストマーであり、
    上記ペプチド(但し、グルテンを除く)に含まれるチオール基の量が1.0質量%以下であり、このペプチド(但し、グルテンを除く)の数平均分子量が10,000以下であり、
    上記高分子100質量部に対する上記ペプチド(但し、グルテンを除く)の量が、1.0質量部以上20質量部以下であるエラストマー組成物の製造方法。
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