JP6367617B2 - 往復動式作業工具 - Google Patents

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Description

本発明は、所定の加工作業を行う往復動式作業工具に関する。
特開2004−255542号公報には、ビットにより打撃作業を行う電動ハンマが記載されている。この電動ハンマは、モータとピストンを備えており、モータの回転がピストンの往復動に変換される。そして、ピストンに収容された打撃子によって中間子を介してツールホルダに保持されたビットが打撃されるように構成されている。
特開2004−255542号公報
上記の電動ハンマにおいては、ツールホルダ内にビットを押し込むことで中間子がビットを打撃するように構成されている。そして、ビットがツールホルダ内に押し込まれた状態(負荷状態とも称する)においては、ビットが押し込まれていない状態(無負荷状態とも称する)に比べて、モータが高速で回転される。ビットが打撃される際には、モータに作用する負荷によってモータの回転数が低下するため、負荷状態におけるモータの回転数と無負荷状態におけるモータの回転数が略同じ回転数を維持する。しかしながら、ピストン、駆動子、あるいは中間子の往復移動においては、往動時のモータの負荷と復動時のモータの負荷が異なるため、モータの駆動制御に関して、より詳細な制御が望まれる。そこで、本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、往復動式作業工具において、モータの駆動制御に関する改良技術を提供することを目的とする。
上記課題は、本発明によって解決される。本発明に係る打撃工具の好ましい形態によれば、先端工具が駆動されて被加工材に対して加工作業を行う打撃工具が構成される。打撃工具としては、例えば、電動ハンマや電動ハンマドリル等を好適に包含する。当該打撃工具は、モータと、モータに駆動されて、後端位置と前端位置との間で前後方向に往復移動するピストンを含む運動変換機構と、空気室を介して前記ピストンの前方に配置され、ピストンの往復移動に応じて空気室の空気バネの作用で前後方向に往復移動する打撃子を含み、先端工具に長軸方向の衝撃力を発生させる打撃要素と、モータの駆動を制御する制御装置と、モータの回転数を検出する回転数検出装置と、を有する。
この打撃工具においては、ピストンの駆動サイクルは、ピストンが後端位置に位置する時に開始され、ピストンが後端位置から前端位置へ移動する往動工程と、ピストンが前端位置から後端位置へ移動する復動工程とによって規定される。そして、打撃工具は、駆動サイクルにおける往動工程に対応して先端工具が駆動されて先端工具が被加工材に対して加工作業を行う。
また、制御装置においては、モータの駆動する制御因子としてモータに印加される電圧および前記モータを駆動する駆動パルスのデューティ比が設定されている。そして制御装置は、往動工程における制御因子の値を、復動工程における制御因子の値よりも相対的に大きくなるように、制御因子を設定してモータの駆動を制御する。すなわち、制御装置は、先端工具が加工作業を行うべく駆動される駆動サイクルの往動工程における制御因子の値が、先端工具が加工作業を行わない復動工程における制御因子の値より相対的に大きくなるように、往動工程における制御因子と復動工程における制御因子を設定する。典型的には、往動工程においてモータに印加される電圧を高くする、あるいは、モータに入力される駆動パルスのデューティ比を大きくする。なお、基準電圧あるいは基準デューティ比が設定されており、往動工程においては、当該基準電圧および基準デューティ比より大きな電圧値および/またはデューティ比を設定し、復動工程においては、当該基準電圧および基準デューティ比より小さな電圧値および/またはデューティ比を設定してもよい。なお、ピストンの位置を検出する位置検出装置を有しており、位置検出装置によってピストンの往動工程および復動工程が検出されることが好ましい。なお、基準電圧、および基準デューティ比は、一定値であることには限られない。
更に、制御装置は、駆動サイクルにおいて、回転数検出装置によって検出されたモータの回転数が最大となるときの当該駆動サイクル開始からの第1経過時間と、モータの回転数が最小となるときの当該駆動サイクル開始からの第2経過時間を計測するとともに、当該駆動サイクルに続く駆動サイクルにおいて、第1経過時間および第2経過時間に基づいて、制御因子の値を相対的に大きくする期間を設定する。なお、制御装置は、当該駆動サイクルに続く駆動サイクルの開始から第1経過時間が経過した後、第2経過時間が経過するまでの間、前記制御因子の値を相対的に大きくすることが好ましい。
本発明によれば、往復移動するピストンの往動時の動きに対応して、先端工具が駆動されて、被加工材に対して加工作業が行われる。すなわち、ピストンの往動時に対応した先端工具の動作によって加工作業が行われる場合には、ピストンの復動時に対応した先端工具の動作によっては加工作業が行われない。加工作業が行われる際には、ピストンを駆動するモータの負荷が高くなる。そのため、制御装置が駆動部材の往動工程における制御因子の値を復動工程における制御因子の値よりも相対的に大きくなるように設定してモータの駆動を制御することで、加工作業を行うべく設定された往動工程において、モータの負荷が大きくなることに起因するモータの回転数の低下が抑制される。なお、このような制御装置によるモータの駆動制御は、回転数変動抑制制御とも称呼される。したがって、1つの駆動サイクル内における往動工程と復動工程においてモータの駆動制御を変更することで、1つの駆動サイクル内におけるモータの回転数が変動する変動幅が小さくなる。すなわち、駆動サイクル内でモータの駆動を詳細に制御することで、駆動サイクル内でモータの回転数が大きく変動することなく、モータが安定的に駆動される。また、駆動部材の往動時の加工作業に対応する駆動時にモータの出力が高くなるように制御する場合には、モータの負荷に起因するモータの回転数の低下が抑制される。これにより、加工作業の作業効率の低下が抑制される。
また、本発明によれば、制御装置は、第1経過時間および第2経過時間に基づいて、制御因子の値を相対的に大きくする期間を設定する。これにより、制御装置は、所定の駆動サイクルにおけるモータの回転数変動に基づいて、当該駆動サイクルの次の駆動サイクルにおけるモータの回転数変動を抑制する。すなわち、制御装置は、モータの回転数変動の履歴に基づいて将来的なモータの回転数変動を予測して、モータの駆動を制御することで、モータの回転数変動がより効果的に低減される。
本発明の打撃工具の更なる形態によれば、制御装置は、複数の駆動サイクルにおける第1経過時間の平均である第1平均時間と、当該複数の駆動サイクルにおける第2経過時間の平均である第2平均時間を算出する。そして、制御装置は、当該複数の駆動サイクルに続く駆動サイクルにおいて、第1平均時間および第2平均時間に基づいて、制御因子の値を相対的に大きくする期間を設定する。なお、典型的には、制御装置は、第1平均時間および第2平均時間を算出するための複数の駆動サイクルに続く複数の駆動サイクルにおいて、第1平均時間および第2平均時間に基づいて、制御因子の値を相対的に大きくする期間を設定する。これにより、制御装置は、複数の駆動サイクルにおけるモータの回転数変動の履歴に基づいて、将来的なモータの回転数変動を効果的に抑制することができる。
本発明の打撃工具の更なる形態によれば、制御装置が往動工程における制御因子の値を復動工程における制御因子の値よりも相対的に大きくなるように設定してモータの駆動を制御する駆動制御の有効化と無効化を切り替える切替装置を有する。すなわち、制御装置による回転数変動抑制制御の有効化と無効化が切り替えられる。
本発明の打撃工具の更なる形態によれば、作業モードとして、先端工具が長軸周りに回転駆動されるドリルモードと、先端工具が少なくとも長軸方向に直線状に駆動されるハンマモードと、を備えた電動ハンマドリルとして構成される。当該ハンマドリルは、作業モードを切り替える作業モード切替装置を有している。そして、作業モード切替装置によって作業モードがドリルモードに切り替えられたときに、制御装置が往動工程における制御因子の値を復動工程における制御因子の値よりも相対的に大きくなるように設定してモータの駆動を制御する駆動制御が無効化される。一方、作業モード切替装置によって作業モードがハンマモードに切り替えられたときに、制御装置が往動工程における制御因子の値を復動工程における制御因子の値よりも相対的に大きくなるように設定してモータの駆動を制御する駆動制御が有効化される。典型的には、作業モード切替装置と制御装置が連動しており、作業モード切替装置による作業モードの切替によって自動的に制御装置による回転数変動抑制制御の有効化および無効化が切り替えられる。なお、ハンマモードにおいては、先端工具が直線状に駆動されるハンマ作業と先端工具が長軸周りに回転駆動されるドリル作業が行われるように構成されていてもよい。すなわち、ハンマモードにおいては、ハンマ作業を行うだけでなく、ハンマドリル作業がおこなわれてもよい。ハンマ作業が行われるハンマモードにおいては、モータによってピストンが周期的に往復駆動されて、先端工具が周期的に駆動される。すなわち、モータの負荷が周期的に変化する。そのため、モータの負荷の周期が明確であり、回転数変動抑制制御が効果的に行われる。
本発明に係る往復動式作業工具の好ましい形態によれば、先端工具が駆動されて被加工材に対して加工作業を行う往復動式作業工具が提供される。往復動式作業工具としては、例えば、電動ハンマや電動ハンマドリル等の打撃工具や、ジグソーやレシプロソー等の切断工具を好適に包含する。当該往復動式作業工具は、モータと、モータに駆動されて往復移動することで、先端工具を駆動する駆動部材と、モータの駆動を制御する制御装置と、モータの回転数を検出する回転数検出装置と、を有する。この往復動式作業工具においては、駆動部材の往復移動によって、駆動部材の往動工程と復動工程が規定される。したがって、駆動部材の往動工程と復動工程によって駆動サイクルが規定される。そして、往復動式作業工具は、駆動サイクルにおける往動工程と復動工程のうちの一方の工程に対応して先端工具が駆動されて先端工具が被加工材に対して加工作業を行う。
また、制御装置においては、モータの駆動する制御因子としてモータに印加される電圧および前記モータを駆動する駆動パルスのデューティ比が設定されている。そして制御装置は、往動工程と復動工程のうちの一方の工程における制御因子の値を、往動工程と復動工程のうちの他方の工程における制御因子の値よりも相対的に大きくなるように、制御因子を設定してモータの駆動を制御する。すなわち、制御装置は、先端工具が加工作業を行うべく駆動される駆動サイクルの一方の工程における制御因子の値が、先端工具が加工作業を行わない他方の工程における制御因子の値より相対的に大きくなるように、往動工程における制御因子と復動工程における制御因子を設定する。典型的には、一方の工程においてモータに印加される電圧を高くする、あるいは、モータに入力される駆動パルスのデューティ比を大きくする。なお、基準電圧あるいは基準デューティ比が設定されており、一方の工程においては、当該基準電圧および基準デューティ比より大きな電圧値および/またはデューティ比を設定し、他方の工程においては、当該基準電圧および基準デューティ比より小さな電圧値および/またはデューティ比を設定してもよい。更に、制御装置は、駆動サイクルにおける回転数検出装置によって検出されたモータの回転数の変動に基づいて、当該駆動サイクルに続く駆動サイクルにおける前記制御因子の値を設定する。これにより、制御装置は、当該駆動サイクルの次の駆動サイクルにおけるモータの回転数変動を抑制する。すなわち、制御装置は、モータの回転数変動の履歴に基づいて将来的なモータの回転数変動を予測して、モータの駆動を制御することで、モータの回転数変動がより効果的に低減される。
本発明によれば、往復動式作業工具において、モータの駆動制御に関する改良技術を提供される。
本発明の代表的な実施形態に係るハンマドリルの側面図である。 ハンマドリルのモード切替機構を示す断面図である。 ハンマドリルのモード切替機構を示す断面図である。 ピストンの駆動を示す模式図であり、ピストンが前端位置に位置する状態を示す。 ピストンの駆動を示す模式図であり、ピストンが中間位置に位置する状態を示す。 ピストンの駆動を示す模式図であり、ピストンが後端位置に位置する状態を示す。 従来のハンマドリルにおいて、ハンマ作業が行われていない状態のモータの回転数変動を示す図である。 従来のハンマドリルにおいて、ハンマ作業が行われている状態のモータの回転数変動を示す図である。 ハンマドリルの制御系を示すブロック図である。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。第1実施形態は、往復動式作業工具の一例として手持ち式の電動ハンマドリルを用いて説明する。図1に示すように、ハンマドリル100は、本体ハウジング101の先端領域にハンマビット119を装着し、装着されたハンマビット119を長軸方向に打撃動作および長軸方向周りに回転動作させて、被加工材(例えば、コンクリート)に対してハツリ作業や穴あけ作業を行う打撃工具である。このハンマビット119が、本発明における「先端工具」に対応する実施構成例である。
図1に示すように、ハンマドリル100は、ハンマドリル100の外郭を形成する本体ハウジング101を主体として構成される。本体ハウジング101の先端領域には、ハンマビット119が筒状のツールホルダ130を介して取り外し可能に取り付けられる。ハンマビット119は、ツールホルダ130のビット挿入孔130a内に挿入され、ツールホルダ130に対して、長軸方向への相対的な往復動が可能であり、長軸方向周りの周方向への相対的な回動が規制された状態で保持される。
本体ハウジング101は、電動モータ110を収容するモータハウジング103、運動変換機構120、打撃要素140および回転伝達機構150を収容するギアハウジング105を主体として構成されている。ハンマビット119の長軸方向に関して、本体ハウジング101のハンマビット119とは反対側には、ハンドグリップ109が連接されている。ハンドグリップ109には、作業者が把持する把持部109Aが形成されている。この把持部109Aは、ハンマビット119の長軸方向に交差する方向(図1の上下方向)に延在する。把持部109Aの一端側(ハンマビット119の長軸線に近接した側)は、ギアハウジング105に連接されている。一方、把持部109Aの他端部(ハンマビット119の長軸方向から離間した側)は、モータハウジング103に連接されている。なお、把持部109Aの一部は、ハンマビット119の長軸線の延長線上に設けられている。説明の便宜上、ハンマビット119の長軸方向(本体ハウジング101の長軸方向)に関して、ハンマビット119側を前側と規定し、ハンドグリップ109側を後側と規定する。また、把持部109Aが延在する方向(ハンマビット119の長軸方向に直交する方向)に関して、ハンドグリップ109とギアハウジング105との連接部側を上側と規定し、ハンドグリップ109とモータハウジング103との連接部側を下側と規定する。
本体ハウジング101は、ハンマビット119の長軸方向に関して、前方側にギアハウジング105が配置され、ギアハウジングの105の下方側にモータハウジング103が配置されている。そして、ギアハウジング105の後方にハンドグリップ109が連結されている。モータハウジング103に収容された電動モータ110は、ブラシレスモータとして構成されている。特に、手持ち式のハンマドリル100においては、ハンマドリル100の低重量化のために、電動モータ110は小型のブラシレスモータが用いられる。電動モータ110は、当該電動モータ110の出力軸111(回転軸)がハンマビット119の長軸方向に延在する打撃軸線に交差するように配置されている。すなわち、出力軸111は、ハンマドリル100の上下方向に延在する。電動モータ110の下方には、当該電動モータ110の駆動を制御するコントローラ199が配置されている。この電動モータ110およびコントローラ199がそれぞれ、本発明における「モータ」および「制御装置」に対応する実施構成例である。
電動モータ110の出力軸111の回転は、運動変換機構120によって直線運動に変換された上で打撃要素140に伝達され、当該打撃要素140によってハンマビット119の長軸方向の衝撃力が発生される。また、電動モータ110の出力軸111の回転は、回転伝達機構150によって減速された上でハンマビット119に伝達され、当該ハンマビット119が長軸方向周りの周方向に回転駆動される。なお、電動モータ110は、ハンドグリップ109に配置されたトリガ109aの引き操作に基づいて駆動される。
図1に示すように、運動変換機構120は、電動モータ110の出力軸111の上方に配置されている。運動変換機構120は、出力軸111によって回転駆動される中間軸121と、中間軸121に取り付けられた回転体123と、中間軸121(回転体123)の回転に伴いハンマドリル100の前後方向に揺動される揺動部材125と、揺動部材125の揺動に伴ってハンマドリル100の前後方向に往復移動する筒状のピストン127と、ピストン127を収容するシリンダ129を主体として構成されている。中間軸121は出力軸111に直交するように配置される。ピストン127は有底筒状部材であり、内部にストライカ143を摺動可能に収容している。シリンダ129は、ツールホルダ130の後方領域を形成しており、ツールホルダ130と一体に形成されている。
図1に示すように、打撃要素140は、運動変換機構120の前方であって、ツールホルダ130の後方に配置されている。打撃要素140は、ピストン127内に摺動可能に配置された打撃子としてのストライカ143と、ストライカ143の前方に配置され、ストライカ143が衝突するインパクトボルト145を主体として構成されている。なお、ストライカ143の後方のピストン127内部の空間は、空気バネとして機能する空気室127aを形成している。したがって、ハンマドリル100の前後方向に関する揺動部材125の揺動によって、ピストン127が前後方向に往復移動され、これにより、ストライカ143が駆動される。すなわち、ピストン127が前方に向かって移動することで、空気バネの作用によりストライカ143が前方に移動されて、インパクトボルト145に衝突する。これにより、インパクトボルト145が前方に移動され、ハンマビット119に衝突する。その結果、ハンマビット119が被加工材を打撃する。また、ピストン127が後方に向かって移動することで、空気室127a内の空気の圧力が大気圧より負圧となり、ストライカ143が後方に移動される。また、ハンマビット119が被加工材を打撃した時の反力によっても、ストライカ143およびインパクトボルト145が後方に移動される。これにより、ストライカ143およびインパクトボルト145が、ハンマドリル100の前後方向に往復移動する。なお、ストライカ143およびインパクトボルト145は、空気室127aの空気バネの作用によって駆動されるため、ピストン127の前後方向の動きに対して遅れるように前後方向に動く。
図1に示すように、回転伝達機構150は、運動変換機構120の前方であって、打撃要素140の下方に配置されている。回転伝達機構150は、中間軸121と共に回転する第1ギア151と、第1ギア151と係合する第2ギア153等の複数のギアからなるギア減速機構を主体として構成されている。第2ギア153は、ツールホルダ130(シリンダ129)と一体に取り付けられており、第1ギア151の回転をツールホルダ130に伝達する。これにより、ツールホルダ130に保持されたハンマビット119が回転される。
図1に示すように、ハンドグリップ109の下方のモータハウジング103には、バッテリ161が取り外し可能に装着されるバッテリ装着部160が設けられている。バッテリ装着部160は、コントローラ199に電気的に接続されている。したがって、トリガ109aの操作に基づいて、バッテリ装着部160に装着されたバッテリ161からコントローラ199に電流が供給され、コントローラ199が電動モータ110の駆動を制御する。
以上のハンマドリル100は、駆動モードとしてハンマドリルモードおよびドリルモードを備えている。ハンマドリルモードにおいては、ハンマビット119が長軸方向の打撃動作と、長軸方向周りの回転動作を行う。これにより、被加工材に対してハンマドリル作業が行われる。ドリルモードにおいては、ハンマビット119は打撃動作を行わず、長軸方向周りの回転動作のみを行う。これにより、被加工材に対してドリル作業が行われる。
図2および図3に示すように、駆動モードは、モード切替機構155によって切り替えられる。このモード切替機構155は、回転伝達部材157と、切替ダイアル159を主体として構成されている。回転伝達部材157は、略円筒状部材であり、中間軸121に対して中間軸121の軸方向に移動可能である。この回転伝達部材157は、中間軸121とスプライン結合しており、中間軸121と一体に回転する。さらに、回転伝達部材157には、回転体123の前側に形成された係合溝部123aと係合可能な第1係合部157aと、切替ダイアル159と係合可能な第2係合部157bが形成されている。第1係合部157aは、回転伝達部材157の内周面において、係合溝部123aとスプライン結合するスプライン溝として形成されている。第2係合部157bは、回転伝達部材157の外周面において、回転伝達部材157の周方向に延在するカム溝として形成されている。
切替ダイアル159は、ギアハウジング105の側面から突出するように水平に設けられている。この切替ダイアル159は、ハンマビット119の長軸方向(図2の左右方向)に直交するハンマドリル100の左右方向(図2の上下方向)に延在する軸線回りに回動可能に構成されている。この切替ダイアル159は、作業者によって手動操作されるつまみ部159aと、回転伝達部材157の第2係合部157bと係合する係合凸部159bを有している。係合凸部159bは、切替ダイアル159の回動軸線からオフセットした(偏心した)軸線を中心とした略円錐形状に形成されている。したがって、つまみ部159aが操作されて、切替ダイアル159が回動されることで、ハンマドリル100の前後方向に係合凸部159bが移動される。これにより、係合凸部159bに係合する回転伝達部材157がハンマドリル110の前後方向に移動される。すなわち、回転伝達位置157は、切替ダイアル159の回動によって前方位置と後方位置の間で移動される。このモード切替機構155が、本発明における「モード切替装置」に対応する実施構成例である。
図2に示すように、回転伝達部材157が後方位置に位置する場合には、回転伝達部材157の第1係合部157aが回転体123の係合溝部123aと係合する。したがって、中間軸121の回転が回転伝達部材157を介して回転体123に伝達される。これにより、運動変換機構120が駆動される。その結果、打撃要素140が駆動され、ハンマビット119が打撃動作を行う。また、中間軸121の回転は、第1ギア151を介して第2ギア153に伝達され、シリンダ129を介してツールホルダ130が回転駆動される。これにより、ハンマビット119が回転動作を行う。したがって、回転伝達部材157が後方位置に位置する場合には、ハンマドリルモードとして、ハンマビット119が回転動作と打撃動作を行うハンマドリル作業が行われる。
一方、図3に示すように、回転伝達部材157が前方位置に位置する場合には、回転伝達部材157の第1係合部157aと回転体123の係合溝部123aは係合しない。すなわち、中間軸121の回転は、回転体123に伝達されない。したがって、運動変換機構120は駆動されず、回転伝達機構150のみが駆動される。これにより、ハンマビット119が回転動作のみを行う。すなわち、回転伝達部材157が前方位置に位置する場合には、ドリルモードとして、ハンマビット119が回転動作のみを行うドリル作業が行われる。
ハンマドリルモードにおいては、電動モータ110が駆動されることで、揺動部材125を介してピストン127が駆動される。すなわち、図4〜図6に示すように、ピストン127は、後端位置と前端位置の間を往復移動する。なお、図4〜図6の右側がハンマドリル100の前側に対応し、図4〜図6の左側がハンマドリル100の後側に対応する。図4は、揺動部材125およびピストン127の前端位置を示す。図6は、揺動部材125およびピストン127の後端位置を示す。図5は、揺動部材125およびピストン127の前端位置と後端位置の中間の中間位置を示す。そして、ピストン127の駆動によって空気室127aの容積が変動することで空気室127a内の空気が空気バネとしてストライカ143に作用する。なお、図4〜図6においては、ストライカ143が省略されている。
ピストン127が後端位置からハンマビット119に近接する前端位置に向かって移動することで、空気室127a内の空気が圧縮される。このピストン127の後端位置から前端位置への移動が、本発明における「往動工程」に対応する実施構成例である。なお、往動工程は、圧縮工程あるいは駆動工程とも称する。一方、ピストン127が前端位置から後端位置に向かって移動することで、空気室127a内の空気が膨張する。このピストン127の前端位置から後端位置への移動が、本発明における「復動工程」に対応する実施構成例である。なお、復動工程は、膨張行程あるいは非駆動工程とも称する。したがって、ピストン127の往動工程および復動工程によって、駆動サイクルが構成される。このピストン127が、本発明における「駆動部材」に対応する実施構成例である。
往動工程においては、空気室127a内の空気が圧縮されることで、ストライカ143が前方に移動されて、インパクトボルト145に衝突する。これにより、ハンマビット119がインパクトボルト145に打撃されて、被加工材に対してハンマ作業を行う。すなわち、往動工程に対応して、ハンマビット119によってハンマドリル作業が行われる。一方、復動工程においては、空気室127a内の空気の膨張に伴って、空気室127a内の空気の圧力が大気圧より低い負圧になり、ストライカ143が後方に向かって移動される復帰動作が行われる。
上記の通り、ピストン127の往復移動によって空気室127a内の空気の圧力変動が生じることで、ピストン127を駆動する電動モータ110の負荷が変動する。すなわち、電動モータ110の回転数が変動する。往動工程においては、空気室127aの空気の圧縮率が徐々に高くなり所定の圧縮率に達した時点でストライカ143が駆動される。そのため、往動工程においては、空気の圧縮率に応じて、電動モータ110の負荷が徐々に大きくなる。すなわち、電動モータ110の回転数が低下する傾向にある。一方、復動工程においては、ストライカ143は、インパクトボルト145に衝突した際にインパクトボルト145から反力を受けるとともに、空気室127a内の空気の負圧により、ストライカ143が後方に戻されるため、往動工程に比べて電動モータ110の負荷が小さくなる。すなわち、電動モータ110の回転数が上昇する傾向にある。この電動モータ110の回転数の変動に対応して、コントローラ199は、電動モータ110が所定範囲の回転数で駆動されるように、電動モータ110の駆動を制御する。すなわち、電動モータ110の回転数変動が所定の範囲内となるように、コントローラ199が電動モータ110の回転数を制御する。このようなコントローラ199の制御は、電動モータ110の定回転制御とも称する。
一般的に、電動モータの定回転制御においては、駆動している電動モータの回転数と設定された回転数(設定回転数とも称する)を比較し、電動モータの回転数が上限値(しきい値)を上回る場合に、電動モータの回転数を下げるようにコントローラが電動モータを制御する。同様に、駆動している電動モータの回転数と設定回転数を比較し、電動モータの回転数が下限値(しきい値)を下回る場合に、電動モータの回転数を上げるようにコントローラが電動モータを制御する。このコントローラは、電動モータに対して駆動パルスを出力して電動モータを駆動する。すなわち、電動モータは、コントローラによってPWM(Pulse Width Modulation)制御される。そして、電動モータの回転数を上げる場合には、電動モータに対して出力される駆動パルスのデューティ比を増加させる。一方、電動モータの回転数を下げる場合には、電動モータに対して出力される駆動パルスのデューティ比を低下させる。なお、電動モータが無負荷状態において設定回転数で回転される際に使用される駆動パルスのデューティ比を基準デューティ比と規定する。
特に、ハンマドリル作業時には、ハンマビット119が被加工材(例えば、コンクリート)に押圧される。そのため、ハンマビット119の打撃力に対して被加工材から反力を受けることで、インパクトボルト145を介してストライカ143が後方に移動される。すなわち、ハンマドリル作業を行っていない場合に比べて、ストライカ143がより後方に移動される。換言すると、ストライカ143の後方位置は、ハンマドリル作業時のハンマビット119の押圧力の大きさ、あるいは有無によって異なる。 一方、ピストン127は、ハンマドリル作業を行うか否かに関らず、後端位置と前端位置の間を移動する。そのため、ハンマドリル作業時には、ハンマドリル作業を行っていない場合に比べて、ピストン127が後端位置に位置する場合のピストン127とストライカ143の距離が短くなり、空気室127a内の空気の圧縮率が高くなる。したがって、ハンマドリル作業時の往動工程においては、空気室127a内の空気の圧縮率がより高くなり、ピストン127を駆動する電動モータ110の負荷がより大きくなる。その結果、ピストン127の往動工程において、ハンマドリル作業を行っていない場合に比べて、ハンマドリル作業時の電動モータ110の負荷が大きくなるため、電動モータ110の回転数の低下率が大きくなる。一方、ハンマドリル作業時の復動工程においては、インパクトボルト145を介して被加工材から大きな反力がストライカ143に作用するため、ピストン127を駆動する電動モータ110の負荷がより小さくなる。その結果、ピストン127の復動工程においては、ハンマドリル作業を行っていない場合に比べて、ハンマドリル作業時の電動モータ110の負荷が小さくなるため、電動モータ110の回転数の上昇率が大きくなる。すなわち、ハンマドリル作業時には、電動モータ110の回転数がより急激に変動することになる。
具体的には、図7に示すように、ハンマドリル作業を行っていない場合においては、電動モータ110の回転数は、コントローラ199による定回転制御によって、所定の設定回転数300を中心として、大凡回転数上限値310と回転数下限値320の間で、ピストン127の往復移動に応じて周期的に変動する。一方、ハンマドリル作業時において、ハンマドリル作業を行っていない場合におけるコントローラ199の定回転制御と同じ制御が行われる場合には、図8に示すように、電動モータ110の回転数の変動率が大きいため、電動モータ110の回転数が回転数上限値310を大幅に上回り、また回転数下限値320を大幅に下回ることがある。電動モータ110の回転数が回転数下限値320より低下すると、電動モータ110の出力(トルク×回転数)が小さくなり、ハンマドリル作業の効率が低下してしまう。また、電動モータ110の回転数が回転数上限値310よりも上昇すると、不必要に電動モータ110の出力が大きくなってしまう。なお、図7および図8の横軸が時間(s)であり、図7の縦軸が電動モータ110の回転数(rpm)である。また、図7および図8において、電動モータ110の回転数の変動は、回転数変動波形210,220として示されている。
小型の電動モータ110においては、ロータの慣性モーメントが小さく、電動モータ110の負荷によって大きな回転数変動が生じやすい。そのため、本実施形態においては、電動モータ110の回転数が定回転制御において設定された設定回転数の範囲から外れて大きく変動する可能性があるハンマドリル作業を行うハンマドリルモードにおいて、電動モータ110が所定の範囲の回転数で駆動されるように、コントローラ199は、電動モータ110の負荷に基づいて、駆動パルスのデューティ比を基準デューティ比に対して変更して電動モータ110を駆動(制御)する。この電動モータ110の負荷に起因する電動モータ110の回転数が定回転制御における設定回転数の範囲を外れることを抑制するように、電動モータ110を制御することを回転数変動抑制制御とも称する。なお、ドリル作業によっても電動モータ110の負荷に応じて電動モータ110の回転数は変動するものの、回転数変動が周期的に変動するわけではないため、ドリルモードにおいては、コントローラ199は駆動パルスのデューティ比を基準デューティ比に対して変更しない。すなわち、ドリルモードにおいては、従来の定回転制御を行うものの、回転数変動抑制制御は行われない。したがって、モード切替機構155によってハンマドリルモードが選択されると、コントローラ199による回転数変動抑制制御が有効化され、ドリルモードが選択されると、コントローラ199による電動モータ110の回転数変動抑制制御が無効化される。
より詳細には、図9に示すように、ピストン127の駆動サイクルにおける往動工程および復動工程を検出するために、ピストン127の位置を検出する位置センサ170が設けられている。すなわち、コントローラ199は、位置センサ170の検出結果に基づいて、ピストン127の往動工程および復動工程を検出する。また、電動モータ110の負荷を検出するために、電動モータ110の出力軸111の回転数を検出する回転数検出センサ171が設けられている。すなわち、コントローラ199は、回転数検出センサ171の検出結果に基づいて、電動モータ110の負荷を検出する。さらに、コントローラ199は、電動モータ110の回転数変動とピストン127の駆動サイクルにおける往動工程および復動工程を関連付ける。なお、位置センサ170および回転数検出センサ171としては、磁気センサや光学センサ等が利用可能である。
また、図9に示すように、コントローラ199は、モード切替機構155のスイッチ155aに接続されている。スイッチ155aは、モード切替機構155によって選択された駆動モードに基づいて、ON/OFFが切り替えられる。すなわち、ハンマドリルモードが選択されるとスイッチ155aがON状態となり、ドリルモードが選択されるとスイッチ155aがOFF状態となる。さらに、コントローラ199には、電動モータ110を駆動するための駆動パルスを生成する駆動パルス生成部198を有する。
ハンマドリルモードが選択されて、コントローラ199がスイッチ155aのON状態を検知すると、電動モータ110の負荷が大きくなるピストン127の往動工程時には、駆動パルス生成部198は、駆動パルスのデューティ比を基準デューティ比より大きくし、電動モータ110の負荷が小さくなるピストン127の復動工程時には、駆動パルス生成部198は、駆動パルスのデューティ比を基準デューティ比より小さくする。そして、コントローラ199は、ピストン127の所定の駆動サイクルにおける電動モータ110の回転数変動に基づいて、当該所定の駆動サイクルに続く駆動サイクルにおける電動モータ110の回転数を制御する。換言すると、コントローラ199は、電動モータ110の回転数変動の履歴に基づいて、将来的な電動モータ110の制御方法を決定する。なお、デューティ比は、所定の駆動サイクルにおける電動モータ110の回転数の最大値および最小値に基づいて変更される。
具体的には、コントローラ199は、所定の駆動サイクル(第1駆動サイクルとも称する)において、回転数検知センサ171による電動モータ110の回転数変動に基づいて、当該駆動サイクルの開始時間から、電動モータ110の回転数が最大になるまでの経過時間としての第1時間と、回転数が最小になるまでの経過時間としての第2時間を計測する。なお、ピストン127が後端位置に位置する時が、駆動サイクルの開始時として規定される。したがって、駆動サイクルにおいては、往動工程の後に復動工程が行われるため、第1時間は、第2時間よりも短い時間として計測される。往動工程においては電動モータ110の負荷が大きくなるため、電動モータ110の回転数が低下する。すなわち、主として第1時間から第2時間の間に往動工程が行われる。一方、主として第2時間から次の駆動サイクルの第1時間の間に復動工程が行われる。
そして、第1駆動サイクルにおいて計測された第1時間および第2時間を利用して、コントローラ199は、第1駆動サイクルの次の駆動サイクル(第2駆動サイクルとも称する)において、第2駆動サイクルの開始時間から第1時間経過後、第2時間までの間の駆動パルスのデューティ比を基準デューティ比よりも大きくする。なお、第2駆動サイクル以降の駆動サイクルにおいても、第2駆動サイクルと同様に、第1駆動サイクルにおいて計測された第1時間および第2時間を利用して、第1時間から第2時間の間の駆動パルスのデューティ比を基準デューティ比よりも大きくする。これにより、電動モータ110の負荷が大きい往動工程における電動モータ110の回転数の低下を抑制する。
さらに、第1駆動サイクルにおいて計測された第1時間および第2時間を利用して、コントローラ199は、第2駆動サイクルの開始時間から第2時間経過後の駆動パルスのデューティ比を基準デューティ比よりも小さくする。すなわち、第2駆動サイクルの第2時間から第2駆動サイクルの次の駆動サイクル(第3駆動サイクルとも称する)における第1時間までの間の駆動パルスのデューティ比を基準デューティ比よりも小さくする。なお、第2駆動サイクル以降の駆動サイクルにおいても、第2駆動サイクルと同様に、第1駆動サイクルにおいて計測された第1時間および第2時間を利用して、第2時間経過後の駆動パルスのデューティ比を基準デューティ比よりも小さくする。これにより、電動モータ110の負荷が小さい復動工程における電動モータ110の回転数の上昇を抑制する。
なお、駆動パルス生成部198は、往動工程において駆動パルスのデューティ比を基準デューティ比よりも大きくするとともに、復動工程において駆動パルスのデューティ比を基準デューティ比よりも小さくするように駆動パルスを生成しているが、これには限られない。例えば、往動工程の駆動パルスのデューティ比のみを基準デューティ比よりも大きくしてもよい。また一方で、復動工程の駆動パルスのデューティ比のみを基準デューティ比よりも小さくしてもよい。すなわち、往動工程における駆動パルスのデューティ比が復動工程における駆動パルスのデューティ比よりも大きくなるように設定される。
また、第1駆動サイクルにおける電動モータ110の回転数変動に基づいて、第2駆動サイクル以降の全ての駆動サイクルにおける駆動パルスのデューディ比を基準デューディ比に対して一律に変更しているが、これには限られない。例えば、第1駆動サイクルの電動モータ110の回転数変動に基づいて、第2駆動サイクルの駆動パルスのデューティ比のみを決定してもよい。すなわち、第3駆動サイクルの駆動パルスのデューティ比は、第2駆動サイクルにおける電動モータ110の回転数変動に基づいて決定される。換言すると、所定の駆動サイクルにおける電動モータ110の負荷に基づいて、次の駆動サイクルの駆動パルスのデューティ比が決定される。
(第2実施形態)
第1実施形態においては、ハンマドリルモードが選択されると、所定の1つの駆動サイクルにおける電動モータ110の回転数変動に基づいて、当該1つの駆動サイクルに続く駆動サイクルにおける駆動パルスのデューディ比を基準デューディ比に対して変更している。一方、第2実施形態においては、ハンマドリルモードが選択されると、所定の複数の駆動サイクルの電動モータ110の回転数変動に基づいて、その後の駆動サイクルにおける駆動パルスのデューディ比を基準デューディ比に対して変更する。なお、第2実施形態におけるコントローラ199による電動モータ110の回転数変動抑制制御以外のハンマドリル100の構成は、第1実施形態と同様であり、説明を省略する。
第2実施形態においては、コントローラ199は、各駆動サイクルにおいて、各駆動サイクルの開始時間から電動モータ110の回転数が最大になるまでの経過時間としての各第1時間と、回転数が最小になるまでの経過時間としての各第2時間を計測するとともに、それら複数の駆動サイクル(例えば、3つの駆動サイクル)の第1時間の平均値(第1平均時間)および第2時間の平均値(第2平均時間)を算出する。そして、コントローラ199は、複数の駆動サイクルに続く駆動サイクル(後の駆動サイクルとも称する)における駆動パルスのデューディ比を基準デューディ比に対して変更する。
コントローラ199は、後の駆動サイクルにおいて、当該駆動サイクルの開始時間から第1平均時間経過後、第2平均時間経過するまでの間の駆動パルスのデューティ比を基準デューティ比よりも大きくする。一方、当該後の駆動サイクルにおいて、第2時間以降の駆動パルスのデューティ比を基準デューティ比よりも小さくする。すなわち、第2実施形態においては、それぞれの駆動サイクル(後の駆動サイクル)において、当該駆動サイクルより前の複数の駆動サイクルの第1平均時間および第2平均時間に基づいて、駆動パルスのデューティ比を基準デューティ比に対して変更する。
以上の各実施形態によれば、ピストン127の往動工程時に電動モータ110の駆動パルスのデューティ比が基準デューティ比より大きくなるように設定されるため、ハンマ作業時に電動モータ110の負荷が大きくなることによって電動モータ110の回転数が低下することが抑制される。一方、ピストン127の復動工程時に電動モータ110の駆動パルスのデューティ比が基準デューティ比よりも小さくなるように設定されるため、電動モータ110の負荷が小さくなることによって電動モータ110の回転数が不要に上昇することが抑制される。これのより、電動モータ110の回転数変動の変動幅が小さくなり、電動モータ110が安定的に回転駆動される。
また、コントローラ199は、所定の駆動サイクルにおける電動モータ110の回転数変動に基づいて、その後の駆動サイクルにおける電動モータ110の駆動制御における駆動パルスのデューティ比を設定する。すなわち、周期的に変動する電動モータ110の回転数変動の履歴に基づいて、将来的な電動モータ110の駆動パルスのデューティ比を設定する。したがって、電動モータ110の回転数の周期的な変動が効率的に抑制される。また、複数の駆動サイクルにおける電動モータ110の回転数変動に関する指標の平均値を用いることで、その後の電動モータ110の回転数変動がより効果的に抑制される。
また、ハンマドリルモードにおいてコントローラ199による回転数変動抑制制御が行われるため、周期的に行われるハンマ作業(打撃)によって生じる電動モータ110の周期的な付加に基づく電動モータ110の回転数の周期的な変動が効果的に抑制される。
以上の各実施形態においては、電動モータ110の駆動を制御する制御因子として、デューティ比を基準デューティ比に対して変更したが、これには限られない。例えば、制御因子として、電動モータ110を駆動する駆動パルスの電圧値および/または電流値を基準電圧値および基準電流値に対して変更してもよい。
また、以上の各実施形態においては、モード切替機構155による駆動モードの切り替えに基づいて、コントローラ199による電動モータ110の回転数変動抑制制御の有効化および無効化が切り替えられるように構成されているが、これには限られない。例えば、回転数変動抑制制御の有効化および無効化を切り替えるための、作業者によって手動操作可能な切替スイッチが設けられていてもよい。
また、以上の実施形態におけるハンマドリル100は種々の変更が適用可能である。例えば、電動モータ110の出力軸111は、ハンマビット119の長軸線と平行になるように電動モータ110が配置されていてもよい。また、ハンドグリップ109は、把持部109Aが延在する方向(ハンマドリル100の上下方向)に関するハンドグリップ109の一端側のみが本体ハウジング101に連結されていてもよい。すなわち、ハンドグリップ109は、一端が本体ハウジング101に連結された片持ち梁状に形成されていてもよい。また、バッテリ装着部160の代わりに電源ケーブルが設けられていてもよい。すなわち、ハンマドリル100は、バッテリ161ではなく外部電源から供給される電流によって駆動されるように構成される。また、電動モータ110は、ブラシレスモータの代わりにブラシ付きモータとして構成されていてもよい。また、運動変換機構120は、揺動部材125の代わりに、クランク軸および偏心軸を備えたクランク機構を備えていてもよい。
また、以上の各実施形態においては、往復動式作業工具としてハンマドリル100に本発明を適用したが、これには限られない。例えば、往復動式作業工具としてジグソーやレシプロソーなどの切断工具に本発明を適用してもよい。ブレードが往復移動する切断工具において片刃のブレードが用いられる場合には、ブレードの往動と復動のいずれかの移動において、被加工材に対して切断作業が行われる。この切断作業時に電動モータの負荷が大きくなる。例えば、ブレードの復動時に切断作業が行われる場合には、ブレードの復動が行われる際に電動モータに出力される駆動パルスのデューティ比が、基準デューティ比より大きくなるように設定され、ブレードの往動が行われる際に電動モータに出力される駆動パルスのデューティ比が、基準デューティ比より小さくなるように設定される。すなわち、ブレードの往復移動に関する駆動サイクルに関して、ブレードによる切断作業が行われる際の駆動パルスのデューティ比が、切断作業が行われない際の駆動パルスのデューティ比より大きくなるように設定される。なお、このような切断工具においては、ブレードを保持するブレード保持部材が、本発明における「駆動部材」に対応する。一方、切断工具において両刃のブレードが用いられる場合には、ブレードの往動および復動の両方向の移動において、被加工材に対して切断作業が行われる。この場合には、回転数変動抑制制御が無効化され、電動モータは基準デューティ比を有する駆動パルスによって駆動される。
以上の発明の趣旨に鑑み、本発明に係る往復動式作業工具は、下記の態様が構成可能である。なお、各態様は、単独で、あるいは互いに組み合わされて用いられるだけでなく、請求項に記載された発明と組み合わされて用いられる。
(態様1)
先端工具が駆動されて被加工材に対して加工作業を行う往復動式作業工具であって、
モータと、
前記モータに駆動されて往復移動することで、前記先端工具を直線状に駆動する駆動部材と、
前記モータの駆動を制御する制御装置と、を有し、
前記駆動部材の往復移動の往動工程と復動工程により規定される駆動サイクルにおいて、前記往動工程と前記復動工程のうちの一方の工程に対応して前記先端工具が被加工材に対して加工作業を行うように構成されており、
前記制御装置は、
前記一方の工程において、前記モータの駆動を制御する制御因子として、前記モータに印加される電圧および前記モータを駆動する駆動パルスのデューティ比のうち少なくとも一つを、前記往動工程と前記復動工程のうちの他方の工程における前記制御因子の値よりも相対的に大きくなるように、当該制御因子を設定して前記モータの駆動を制御することで、前記一方の工程において前記モータの負荷によって、前記モータの回転数が所定のしきい値以下に低下すること回転数低下抑制制御を行うように構成されていること特徴とする往復動式作業工具。
(態様2)
前記制御装置は、
前記一方の工程における駆動パルスのデューティ比は、所定の基準デューティ比を上回るように設定し、
前記他方の工程における駆動パルスのデューティ比は、前記基準デューティ比を下回るように設定する。
(態様3)
前記制御装置は、
前記一方の工程における駆動パルスのデューティ比の平均値が、前記他方の工程における駆動パルスのデューティ比の平均値を上回るように設定する。
(態様4)
往復動式作業工具は、作業モードとして、先端工具が長軸周りに回転駆動するドリルモードと、先端工具が少なくとも長軸方向に直線状に駆動するハンマモードと、を備えたハンマドリルとして構成されており、
前記作業モードを切り替える作業モード切替装置を有しており、
前記作業モード切替装置によって前記作業モードが前記ドリルモードに切り替えられたときに、前記切替装置は、前記制御装置による回転数低下抑制制御を無効化し、
前記モード切替装置によって前記作業モードが前記ハンマモードに切り替えられたときに、前記切替装置は、前記制御装置による回転数低下抑制制御を有効化するように構成されていることを特徴とする往復動式作業工具。
(態様5)
駆動部材は、モータに駆動されて所定の軸線上を往復移動するピストンとして構成されている。
(本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係)
本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下の通りである。なお、本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものであり、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。
ハンマドリル100が、本発明の「往復動式作業工具」に対応する構成の一例である。
ハンマビット119が、本発明の「先端工具」に対応する構成の一例である。
電動モータ110が、本発明の「モータ」に対応する構成の一例である。
ピストン127が、本発明の「駆動部材」に対応する構成の一例である。
ストライカ143が、本発明の「駆動部材」に対応する構成の一例である。
コントローラ199が、本発明の「制御装置」に対応する構成の一例である。
モード切替機構155が、本発明の「作業モード切替装置」に対応する構成の一例である。
位置センサ170が、本発明の「位置検出装置」に対応する構成の一例である。
回転数検出センサ171が、本発明の「回転数検出装置」に対応する構成の一例である。
100 ハンマドリル
101 本体ハウジング
103 モータハウジング
105 ギアハウジング
109 ハンドグリップ
109A 把持部
109a トリガ
110 電動モータ
111 出力軸
119 ハンマビット
120 運動変換機構
121 中間軸
123 回転体
123a 係合溝部
125 揺動部材
127 ピストン
127a 空気室
129 シリンダ
130 ツールホルダ
140 打撃要素
143 ストライカ
145 インパクトボルト
150 回転伝達機構
151 第1ギア
153 第2ギア
155 モード切替機構
155a スイッチ
157 回転伝達部材
157a 第1係合部
157b 第2係合部
159 切替ダイアル
159a つまみ部
159b 係合凸部
170 位置センサ
171 回転数検出センサ
160 バッテリ装着部
161 バッテリ
198 駆動パルス生成部
199 コントローラ
210 回転数変動波形
220 回転数変動波形
300 設定回転数
310 回転数上限値
320 回転数下限値

Claims (8)

  1. 先端工具が駆動されて被加工材に対して加工作業を行う打撃工具であって、
    モータと、
    前記モータに駆動されて、後端位置と前端位置との間で前後方向に往復移動するピストンを含む運動変換機構と、
    空気室を介して前記ピストンの前方に配置され、前記ピストンの往復移動に応じて前記空気室の空気バネの作用で前記前後方向に往復移動する打撃子を含み、前記先端工具に長軸方向の衝撃力を発生させる打撃要素と、
    前記モータの駆動を制御する制御装置と、
    前記モータの回転数を検出する回転数検出装置と、を有し、
    前記ピストンの駆動サイクルは、前記ピストンが前記後端位置に位置する時に開始され、前記ピストンが前記後端位置から前記前端位置へ移動する往動工程と、前記ピストンが前記前端位置から前記後端位置へ移動する復動工程とによって規定されており、
    前記往動工程に対応して前記先端工具が被加工材に対して加工作業を行うように構成されており、
    前記制御装置は、
    前記往動工程において、前記モータの駆動を制御する制御因子として、前記モータに印加される電圧および前記モータを駆動する駆動パルスのデューティ比のうち少なくとも一つを、前記復動工程における前記制御因子の値よりも相対的に大きくなるように、当該制御因子を設定して前記モータの駆動を制御するように構成され
    前記制御装置は、前記駆動サイクルにおいて、前記回転数検出装置によって検出された前記モータの回転数が最大となるときの当該駆動サイクル開始からの第1経過時間と、前記モータの回転数が最小となるときの当該駆動サイクル開始からの第2経過時間を計測するとともに、
    当該駆動サイクルに続く駆動サイクルにおいて、前記第1経過時間および前記第2経過時間に基づいて、前記制御因子の値を相対的に大きくする期間を設定すること特徴とする打撃工具。
  2. 請求項1に記載の打撃工具であって、
    前記ピストンの位置を検出する位置検出装置を有することを特徴とする打撃工具。
  3. 請求項1または2に記載の打撃工具であって、
    前記制御装置は、当該駆動サイクルに続く駆動サイクルの開始から前記第1経過時間が経過した後、前記第2経過時間が経過するまでの間、前記制御因子の値を相対的に大きくすることを特徴とする打撃工具。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の打撃工具であって、
    前記制御装置は、複数の前記駆動サイクルにおける前記第1経過時間の平均である第1平均時間と、当該複数の駆動サイクルにおける前記第2経過時間の平均である第2平均時間を算出し、
    当該複数の駆動サイクルに続く駆動サイクルにおいて、前記第1平均時間および前記第2平均時間に基づいて、前記制御因子の値を相対的に大きくする期間を設定するように構成されていることを特徴とする打撃工具。
  5. 請求項4に記載の打撃工具であって、
    前記制御装置は、前記第1平均時間および前記第2平均時間を算出するための複数の駆動サイクルに続く複数の駆動サイクルにおいて、前記第1平均時間および前記第2平均時間に基づいて、前記制御因子の値を相対的に大きくする期間を設定するように構成されていることを特徴とする打撃工具。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の打撃工具であって、
    前記制御装置が前記往動工程における前記制御因子の値を前記復動工程における前記制御因子の値よりも相対的に大きくなるように設定して前記モータの駆動を制御する駆動制御の有効化と無効化を切り替える切替装置を有することを特徴とする打撃工具。
  7. 請求項6に記載の打撃工具であって、
    当該打撃工具は、作業モードとして、先端工具が長軸周りに回転駆動されるドリルモードと、先端工具が少なくとも長軸方向に直線状に駆動されるハンマモードと、を備えた電動ハンマドリルとして構成されており、
    前記作業モードを切り替える作業モード切替装置を有しており、
    前記作業モード切替装置によって前記作業モードが前記ドリルモードに切り替えられたときに、前記制御装置が前記往動工程における前記制御因子の値を前記復動工程における前記制御因子の値よりも相対的に大きくなるように設定して前記モータの駆動を制御する駆動制御が無効化され、
    前記作業モード切替装置によって前記作業モードが前記ハンマモードに切り替えられたときに、前記制御装置が前記往動工程における前記制御因子の値を前記復動工程における前記制御因子の値よりも相対的に大きくなるように設定して前記モータの駆動を制御する駆動制御が有効化されるように構成されていることを特徴とする打撃工具。
  8. 先端工具が駆動されて被加工材に対して加工作業を行う往復動式作業工具であって、
    モータと、
    前記モータに駆動されて往復移動することで、前記先端工具を駆動する駆動部材と、
    前記モータの駆動を制御する制御装置と、
    前記モータの回転数を検出する回転数検出装置と、を有し、
    前記駆動部材の往復移動の往動工程と復動工程により規定される駆動サイクルにおいて、前記往動工程と前記復動工程のうちの一方の工程に対応して前記先端工具が被加工材に対して加工作業を行うように構成されており、
    前記制御装置は、
    前記一方の工程において、前記モータの駆動を制御する制御因子として、前記モータに印加される電圧および前記モータを駆動する駆動パルスのデューティ比のうち少なくとも一つを、前記往動工程と前記復動工程のうちの他方の工程における前記制御因子の値よりも相対的に大きくなるように、当該制御因子を設定して前記モータの駆動を制御するように構成され、
    前記制御装置は、前記駆動サイクルにおける前記回転数検出装置によって検出された前記モータの前記回転数の変動に基づいて、当該駆動サイクルに続く駆動サイクルにおける前記制御因子の値を設定すること特徴とする往復動式作業工具。
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