以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
図1は、本発明に係る実施形態に従った現金管理システム1の構成例を示すブロック図である。現金管理システム1は、店員が顧客から受け取った現金、および、店員が顧客へ支払う現金を処理および管理するシステムである。
現金管理システム1は、店舗内のチェックアウトエリアに設けられており、店員が顧客との間でやりとりした現金を入出金するチェックアウトカウンター10と、チェックアウトカウンター10の現金および商品を管理するバックオフィス20と、チェックアウトカウンター10とバックオフィス20との間において現金を搬送する現金搬送カセット30とから構成されている。
チェックアウトカウンター10には、現金を入金および出金することにより顧客との精算処理を行う単数または複数の現金精算装置11が設けられている。図1では、チェックアウトカウンター10には、3つの現金精算装置11が設けられている。現金精算装置11は、店員または顧客自らによって操作され、店員と顧客との間の精算処理に用いられる。例えば、現金精算装置11は、顧客が支払った代金を入金し、あるいは、顧客へ支払う釣銭を出金する。
現金精算装置11は、例えば、店員によって操作されるPOSレジスタまたは顧客によって操作されるセルフチェックアウト用レジスタと通信可能に接続されている。現金精算装置11は、POSレジスタまたはセルフチェックアウト用レジスタと一体に構成されていてもよい。
バックオフィス20には、現金出納装置21と、現金管理装置25と、POS管理装置26が設けられている。現金出納装置21は、現金精算装置11と通信可能に接続されており、例えば、現金精算装置11へ装填するための釣銭準備金を出金し、あるいは、現金精算装置11から回収した売上金を入金する。現金管理装置25は、LAN(Local Area Network)等を介して現金精算装置11および現金出納装置21と通信可能に接続されている。現金管理装置25は、現金精算装置11および現金出納装置21に収納されている現金を管理する。例えば、現金管理装置25は、現金精算装置11のそれぞれにおいて精算処理された現金、並びに、現金精算装置11と現金出納装置21との間で授受された現金を管理する。また、現金管理装置25は、現金精算装置11または現金出納装置21に現金搬送カセット30が装着されているか否かを監視してもよい。POS管理装置26は商品の流れを管理する。尚、商品の流れについては本発明と直接関連しないので、ここではPOS管理装置26に関する詳細な説明を省略する。
現金搬送カセット30は、現金精算装置11および現金出納装置21に着脱可能に構成されており、現金精算装置11または現金出納装置21に装着されているときには現金精算装置11または現金出納装置21との間で現金を授受することができる。一方、現金搬送カセット30は、現金精算装置11および現金出納装置21から離脱しているときには内部の現金を取出せないように収納している。店員は、現金搬送カセット30を用いて現金精算装置11と現金出納装置21との間における現金の搬送を行う。例えば、釣銭準備金の装填時あるいは売上金の回収時には、店員は、現金搬送カセット30を用いて現金を現金精算装置11と現金出納装置21との間で搬送する。店員は、現金の搬送時に現金搬送カセット30内の現金に触れることができないので、セキュリティ上安全な状態で現金を搬送することができる。
現金搬送カセット30は、紙幣および硬貨のいずれか一方を搬送するように構成されていてもよく、両方を搬送できるように構成されていてもよい。紙幣用の現金搬送カセット30は、紙幣を積み重ねて収納するスタック式カセットであってもよく、あるいは、紙幣を一枚ずつ複数のテープ間に挟み込んだ状態で該テープを紙幣とともに巻き取るテープリール式カセットであってもよい。硬貨用の現金搬送カセット30は、金種混合の状態で硬貨を収納するカセットでよい。
[現金精算装置11の構成]
各現金精算装置11は、硬貨を入金および出金することにより精算処理を行う硬貨精算装置13と、紙幣を入金および出金することにより精算処理を行う紙幣精算装置12とを含む。
以下、紙幣精算装置12の構成要素と硬貨精算装置13の構成要素とを区別するために、紙幣精算装置12の構成要素の参照番号に“a”を付し、硬貨精算装置13の構成要素の参照番号に“b”を付す。尚、硬貨精算装置13および紙幣精算装置12は、取り扱う対象が硬貨と紙幣とでそれぞれ異なるので具体的構成については相違するものの、図3に示す基本的なブロック構成については同様でよい。
図2は、各現金精算装置11の一例を示す外観を示す図である。現金精算装置11は、紙幣精算装置12および硬貨精算装置13を備える。紙幣精算装置12は、筐体100aと、入金部110aと、出金部120aとを備えている。入金部110aは、顧客から受け取った紙幣を投入するために設けられている。出金部120aは、釣銭紙幣を投出するために設けられている。筐体100aの前カバー101aを開けると、現金搬送カセット30を装着するためのカセット装着部(図4の160a参照)が設けられている。
硬貨精算装置13は、筐体100bと、入金部110bと、出金部120bとを備えている。入金部110bは、顧客から受け取った硬貨を投入するために設けられている。出金部120bは、釣銭硬貨を投出するために設けられている。筐体100bの前カバー101bを開けると、現金搬送カセット30を装着するためのカセット装着部(図5の160b参照)が設けられている。
図3は、現金精算装置11の構成例を示すブロック図である。現金精算装置11は、入金部110および出金部120のほか、搬送部130と、識別部140と、収納部150と、リード・ライト部157と、カセット装着部160と、メモリ170と、通信部180と、制御部190とをさらに備えている。
搬送部130は、入金部110に投入された現金を収納部150へ搬送し、あるいは、出金部120から投出する現金を収納部150から搬送する。また、搬送部130は、現金を収納部150へ装填するためにカセット装着部160に装着された現金搬送カセット30内の現金を収納部150へ搬送し、あるいは、現金を収納部150から回収するために収納部150に収納された現金を現金搬送カセット30へ搬送できるように構成されている。
識別部140は、搬送部130によって搬送されている現金の金種、真偽、正損、新旧、数量等を検知するように構成されている。例えば、識別部140は、イメージセンサまたは磁気センサ等のセンサを備えている。
収納部150は、識別部140において識別された現金を金種ごとに収納することができるように構成されている。収納部150は、紙幣を収納する場合、各紙幣を金種ごとに積み重ねて収納するスタック式収納部でもよく、あるいは、各紙幣を金種ごとに複数のテープ間に挟み込んだ状態で該テープを紙幣とともに巻き取る複数のテープリール式収納部であってもよい。
カセット装着部160は、現金搬送カセット30を着脱可能に構成されている。カセット装着部160は、現金搬送カセット30から現金を入金し、あるいは、現金搬送カセット30へ現金を出金することができるように構成されている。
リード・ライト部157は、後述する現金搬送カセット30に設けられた記憶部35に格納された情報を読み取り、あるいは、記憶部35へ情報を書き込むことができるように構成されている。
メモリ170は、現金精算装置11を制御する各種プログラムおよびデータを格納するROM(Read Only Memory)またはHDD(Hard Disk Drive)、および、プログラムのロード領域やプログラム実行時における作業領域となるRAM(Random Access Memory)等を含む。メモリ170は、収納部150および現金搬送カセット30に収納されている現金の情報(金種、数量等)も記憶している。さらに、メモリ170は、識別部140で識別された現金の数量を金種ごとに記憶してもよい。
通信部180は、現金処理システム1を構成する他の装置(現金出納装置21、現金管理装置25、POS管理装置26)と通信可能に接続されている。
制御部190は、メモリ170内のプログラムを実行して現金精算装置11の全体を制御するように構成された演算処理装置である。
図4は、現金精算装置11のうち紙幣精算装置12の内部構成の一例を示す断面図である。紙幣精算装置12は入金部カバー111aを備えており、店員は入金時に入金部カバー111aを開けて紙幣を入金部110aへ投入する。入金部110aは投入された紙幣を一枚ずつ搬送部130aへ繰り出すように構成されている。搬送部130aは、繰り出された紙幣を識別部140aに通過させた後、収納部150a、現金搬送カセット30または出金部120aへ搬送するように構成されている。識別部140aは、搬送されている紙幣の金種、真偽、正損、新旧、数量等を識別する。搬送部130aは、識別部140aによる識別結果に基づいて紙幣を金種ごとに収納部150aに収納する。
尚、搬送部130aは、収納部150aがフルの場合等、必要に応じて、現金搬送カセット30に紙幣を搬送してよい。また、搬送部130aは、識別部140aにおいて紙幣が識別することができなかったり、偽紙幣が識別された場合、それを出金部120aへ投出するようになっている。
一方、紙幣を出金するために、収納部150aは、紙幣を一枚ずつ搬送部130aへ繰り出すように構成されている。搬送部130aは、繰り出された紙幣を出金部120aへ搬送する。紙幣精算装置12は、出金部シャッタ121aを備えており、出金時に出金部シャッタ121aを開け、紙幣を投出する。
このように、紙幣精算装置12は、入金部110aに投入された紙幣を収納部150aへ収納し、逆に、収納部150aに収納された紙幣を出金部120aへ投出することができる。即ち、紙幣精算装置12は、入金された紙幣を出金に再利用することができるように構成されている。
現金搬送カセット30がカセット装着部160aに装着されている場合、紙幣精算装置12は、現金搬送カセット30から収納部150aへ紙幣を装填し、あるいは、収納部150aから現金搬送カセット30aへ紙幣を回収することができる。紙幣を装填する場合、現金搬送カセット30が紙幣を一枚ずつ搬送部130aへ繰り出す。搬送部130aは繰り出された紙幣を収納部150aへ装填する。紙幣を回収する場合、収納部150aが紙幣を一枚ずつ搬送部130aへ繰り出す。搬送部130aは繰り出された紙幣を現金搬送カセット30へ回収する。
このように、紙幣精算装置12は、現金搬送カセット30を用いて紙幣の装填および回収を行うことができるように構成されている。
図5(A)および図5(B)は、現金精算装置11のうち硬貨精算装置13の内部構成の一例を示す断面図である。図5(A)は硬貨精算装置13を側方から見た断面図であり、図5(B)は硬貨精算装置13を正面から見た断面図である。尚、図5(B)では、現金搬送カセット30および繰出部137bの図示を省略しており、収納部150bを図示している。
硬貨精算装置13は、図5(B)に示すように入金部110bを備えており、店員は入金時に硬貨を入金部110bへ投入する。このとき、複数の金種の硬貨は、混合された状態で投入されてよい。円盤型の繰出部133bは、入金部110bに投入された硬貨を一枚ずつ搬送部130bへ繰り出すように構成されている。搬送部130bは、繰り出された硬貨を識別部140bに通過させた後、収納部150b、現金搬送カセット30または出金部120bへ搬送する。識別部140bは、搬送されている硬貨の金種、真偽、正損、新旧、数量等を識別する。搬送部130bは、識別部140bによる識別結果に基づいて硬貨を金種ごとに選別し、硬貨を対応する金種の収納部150bに収納する。
尚、搬送部130bは、収納部150bがフルの場合等、必要に応じて、硬貨を現金搬送カセット30または回収ボックス135bに搬送してよい。また、搬送部130bは、識別部140bにおいて硬貨がリジェクト硬貨であると識別された場合、そのリジェクト硬貨を出金部120bへ投出する。
一方、硬貨を出金するために、収納部150bは、硬貨を一枚ずつ搬送部131bへ繰り出すように構成されている。複数の収納部150bは、各金種ごとに貨幣を収納しており、それぞれ円盤型の繰出部153bを備えている。繰出部153bは、硬貨を一枚ずつ搬送部130bへ繰り出すように構成されている。搬送部130bは、繰り出された硬貨を出金部120bへ搬送する。これにより、硬貨精算装置13は、硬貨を出金部120bへ投出する。
このように、硬貨精算装置13は、入金部110bに投入された硬貨を収納部150bへ収納し、逆に、収納部150bに収納された硬貨を出金部120bへ投出することができる。即ち、硬貨精算装置13は、入金された硬貨を出金に再利用することができるように構成されている。
現金搬送カセット30がカセット装着部160bに装着されている場合、硬貨精算装置13は、現金搬送カセット30から収納部150bへ硬貨を装填し、あるいは、収納部150bから現金搬送カセット30bへ硬貨を回収することができる。硬貨を装填する場合、現金搬送カセット30は、図5(A)に示す繰出部137bに硬貨を投出する。このとき、現金搬送カセット30は、金種の混合された状態で硬貨を繰出部137bに投出してよい。繰出部137bは硬貨を搬送部131bに繰り出す。搬送部131bは繰り出された硬貨を繰出部133bへ搬送し、繰出部133bは、硬貨を一枚ずつ搬送部130bへ繰り出す。搬送部130bは、繰り出された硬貨を識別部140bに通過させた後、収納部150bまたは出金部120bへ搬送するように構成されている。識別部140bは、搬送されている硬貨の金種を識別する。搬送部130bは、識別部140bによる識別結果に基づいて硬貨を金種ごとに収納部150bに収納する。
硬貨を回収する場合、硬貨精算装置13は、収納部150bから硬貨を一枚ずつ搬送部131bへ繰り出す。搬送部131bは繰り出された硬貨を現金搬送カセット30へ回収する。
このように、硬貨精算装置13は、現金搬送カセット30を用いて硬貨の装填および回収を行うことができるように構成されている。
[現金出納装置21の構成]
現金出納装置21は、硬貨精算装置13へ装填する硬貨を出金し、硬貨精算装置13から回収した硬貨を入金する硬貨出納装置23と、紙幣精算装置12へ装填する紙幣を出金し、紙幣精算装置12から回収した紙幣を入金する紙幣出納装置22とを含む。紙幣出納装置22および硬貨出納装置23は、一組の現金出納装置21として構成される。
以下、紙幣出納装置22の構成要素と硬貨出納装置23の構成要素とを区別するために、紙幣出納装置22の構成要素の参照番号に“a”を付し、硬貨出納装置23の構成要素の参照番号に“b”を付す。紙幣出納装置22および硬貨出納装置23は、取り扱う対象が硬貨と紙幣とでそれぞれ異なるため具体的な構成については相違するものの、図7に示す基本的なブロック構成については同様でよい。操作表示部295は、ただし、紙幣出納装置22または硬貨出納装置23のいずれか一方に設けられ、それらの両方の情報を表示するために共通に用いられる。
図6は、現金出納装置21の一例を示す外観を示す図である。現金出納装置21は、紙幣出納装置22および硬貨出納装置23を備える。紙幣出納装置22は、筐体200aと、入金部210aと、出金部220aと、操作表示部295aとを備えている。入金部210aは、紙幣を投入するために設けられている。出金部220aは、紙幣を投出するために設けられている。入金部210aは、バラ紙幣を繰り出すバラ貨幣繰出部211aまたは現金搬送カセット30を選択的に装着できるように構成されている。従って、入金部210aは、現金搬送カセット30を用いることなくバラ紙幣を入金することができ、現金搬送カセット30から紙幣を入金することもできる。出金部220aは、現金搬送カセット30を用いることなくバラ紙を出金することができる。前カバー201aを開くと、図8に示す回収部255aおよび収納部250aが設けられている。
操作表示部295は、現金出納装置21、現金精算装置11および現金搬送カセット30の状態等を表示し、かつ、店員がデータを入力することができるように構成されている。操作表示部295は、例えば、タッチパネル式ディスプレイ等でよい。
硬貨出納装置23は、筐体200bと、入金部210bと、出金部220bとして機能するドロワ装着部260とを備えている。入金部210bは、硬貨を投入するために設けられている。ドロワ装填部260は、硬貨を投出するために設けられている。入金部210bは、バラ硬貨をそのまま投入するか、または現金搬送カセット30を装着できるように構成されている。従って、入金部210bは、現金搬送カセット30を用いることなくバラ硬貨を入金することができ、現金搬送カセット30から硬貨を入金することもできる。ドロワ装着部260は、硬貨を金種ごとに収納する収納ドロワ258bまたは現金搬送カセット30を選択的に装着できるように構成されている。従って、ドロワ装着部260は、現金搬送カセット30を用いることなく硬貨を出金することができ、現金搬送カセット30へ硬貨を出金することもできる。前カバー201bを開くと、図9に示す収納部250bが設けられている。
図7は、現金出納装置21の構成例を示すブロック図である。現金出納装置21は、入金部210、出金部220および操作表示部295のほか、搬送部230と、識別部240と、収納部250と、回収部255と、リード・ライト部257と、機外リジェクト部222と、機内リジェクト部224と、メモリ270と、通信部280と、制御部290とをさらに備えている。
現金出納装置21の入金部210は、バラ貨幣繰出部201または現金搬送カセット30を選択的に装着することができるように構成されている。例えば、店員が現金出納装置21へバラ貨幣を入金する場合には、バラ貨幣繰出部201が入金部210に装着される。店員が現金出納装置21へ現金搬送カセット30を用いて現金を入金する場合には、バラ貨幣繰出部201に代えて、現金搬送カセット30が入金部210に装着される。即ち、現金出納装置21は、バラ貨幣繰出部201に代えて、入金部210に現金搬送カセット30を着脱することができるように構成されている。
搬送部230は、入金部210に投入された現金を収納部250へ搬送し、あるいは、出金部220から投出する現金を収納部250から搬送する。また、搬送部230は、収納部250から現金搬送カセット30へ現金を搬送し、あるいは、現金搬送カセット30から収納部250へ現金を搬送できるように構成されている。
識別部240は、搬送部230によって搬送されている現金の金種、真偽、正損、新旧、数量等を検知するように構成されている。例えば、識別部240は、磁気センサ、蛍光センサ、金属スレッドセンサ、厚みセンサ、イメージセンサ等のセンサを備えている。また、識別部240は、現金の数量を金種別にカウントする。
収納部250は、識別部240において識別された現金を金種ごとに収納することができるように構成されている。収納部250は、紙幣を収納する場合、スタック式収納部でもよく、あるいは、テープリール式収納部であってもよい。
リード・ライト部257は、後述する現金搬送カセット30に設けられた記憶部35に格納された情報を読み取り、あるいは、記憶部35へ情報を書き込むことができるように構成されている。
メモリ270は、現金出納装置21を制御する各種プログラムおよびデータを格納するROMまたはHDD、および、プログラムのロード領域やプログラム実行時における作業領域となるRAM等を含む。メモリ270は、収納部250および現金搬送カセット30に収納されている現金の情報(金種、数量等)も記憶している。さらに、メモリ270は、識別部240で識別された現金の数量を金種ごとに記憶してもよい。
通信部280は、現金処理システム1を構成する他の装置(現金精算装置11、現金管理装置25、POS管理装置26)と通信可能に接続されている。
制御部290は、メモリ270内のプログラムを実行して現金出納装置21の全体を制御するように構成された演算処理装置である。
図8(A)および図8(B)は、現金出納装置21のうち紙幣出納装置22の内部構成の一例を示す断面図である。図8(A)は、入金部210aにバラ紙幣繰出部211aを装着した状態を示し、図8(B)は、入金部210aに現金搬送カセット30を装着した状態を示す。尚、操作表示部295については、図8においてその図示を省略している。
店員がバラ紙幣を入金する場合、図8(A)に示すように、店員は、入金部210aにバラ紙幣繰出部211aを装着する。店員が紙幣をバラ紙幣繰出部211aへ投入すると、バラ紙幣繰出部211aは投入された紙幣を一枚ずつ搬送部230aへ繰り出す。搬送部230aは、繰り出された紙幣を識別部240aに通過させた後、収納部250a、回収集積部254aまたは機外リジェクト部222aへ搬送するように構成されている。識別部240aは、搬送されている紙幣の金種、真偽、正損、新旧、数量等を識別する。搬送部230aは、識別部240aによる識別結果に基づいて紙幣を金種ごとに収納部250aに収納する。
搬送部230aは、収納部250aがフルの場合等、必要に応じて、回収集積部254aに紙幣を搬送してよい。回収集積部254aに集積された紙幣が所定数を超えた場合には、紙幣は回収部255aへ収納される。また、搬送部230aは、識別部240aにおいて紙幣を識別することができなかったり、偽紙幣が識別された場合、それを機外リジェクト部222aへ投出する。
一方、紙幣を出金する場合には、収納部250aは、紙幣を一枚ずつ搬送部230aへ繰り出すように構成されている。搬送部230aは、繰り出された紙幣を出金部220aへ搬送し、その紙幣を投出する。紙幣の搬送の途中でセンサ242aが重送、連鎖、斜行等の搬送異常を検出した場合、搬送部230aは、その紙幣を機内リジェクト部224aへ搬送する。
このように、紙幣出納装置22は、入金部210aに投入された紙幣を収納部250aへ収納し、逆に、収納部250aに収納された紙幣を出金部220aへ投出することができる。即ち、紙幣出納装置22は、入金された紙幣を出金に再利用することができるように構成されている。
図8(B)に示すように、バラ紙幣繰出部211aが上方へ回動されて退避され、現金搬送カセット30がバラ紙幣繰出部201aの代わりに入金部210aに装着されていた場合、紙幣出納装置22は、現金搬送カセット30から収納部250aへ紙幣を入金し、あるいは、収納部250aから現金搬送カセット30aへ紙幣を出金することができる。紙幣を現金精算装置11へ装填する場合、紙幣を現金搬送カセット30へ搬送するために、収納部250aが紙幣を一枚ずつ搬送部230aへ繰り出す。搬送部230aは、繰り出された紙幣を現金搬送カセット30へ出金する。これにより、紙幣出納装置22は、現金精算装置11へ装填する紙幣を現金搬送カセット30へ出金することができる。
現金精算装置11から紙幣を回収する場合、現金搬送カセット30内には現金精算装置11から回収された紙幣がすでに入っている。従って、現金搬送カセット30がその中にある紙幣を一枚ずつ搬送部230aへ繰り出し、搬送部230aは、繰り出された紙幣を収納部250aへ収納する。紙幣の搬送の途中でセンサ242aが重送、連鎖、斜行等の搬送異常を検出した場合、搬送部230aは、その紙幣を機内リジェクト部224aへ収納する。
このように、紙幣出納装置22は、現金精算装置11へ装填される紙幣を現金搬送カセット30へ出金することができ、また、現金精算装置11から回収された紙幣を現金搬送カセット30から入金することができるように構成されている。
図9(A)および図9(B)は、現金出納装置21のうち硬貨出納装置23の内部構成の一例を示す断面図である。図9(A)は硬貨出納装置23を側方から見た断面図であり、図9(B)は硬貨出納装置23を正面から見た断面図である。
硬貨出納装置23は、入金部210bを備えており、現金精算装置11から回収した硬貨を現金搬送カセット30から入金することができるように構成されている。また、硬貨出納装置23は、回収部255bおよび現金搬送カセット30を装着可能なドロア装着部260を備えている。ドロア装着部260に現金搬送カセット30を装着することによって、現金精算装置11へ装填する硬貨を現金搬送カセット30へ金種別に区分けして出金することができる。
バラ硬貨を入金する場合、店員は入金時に硬貨を入金部210bへ投入する。このとき、複数の金種の硬貨は、混合された状態で投入されてよい。円盤型の繰出部233bは、入金部210bに投入された硬貨を一枚ずつ搬送部230bへ繰り出すように構成されている。搬送部230bは、繰り出された硬貨を識別部240bに通過させた後、一時保留部235bへ搬送するように構成されている。一時保留部235bは、金種ごとに設けられており、硬貨を一時的に保留するように構成されている。
識別部240bは、搬送されている硬貨の金種、真偽、正損、新旧、数量等を識別する。搬送部230bは、識別部240bによる識別結果に基づいて硬貨を金種ごとに選別し、硬貨を対応する金種の一時保留部235bに入れる。
各一時保留部235bは、対応する金種の収納部250bにシュート236bを介して連通しており、投入された硬貨が全て一時保留部235bに保留された後、硬貨を対応する金種の収納部250bへ収納する。
搬送部230bは、収納部250bがフルの場合等、必要に応じて、オーバーフローボックス259bに硬貨を搬送してよい。搬送部230bは、一時保留部235bがフルの場合には、オーバーフローボックス259bに硬貨を搬送してよい。また、搬送部230bは、識別部240bにおいて硬貨がリジェクト硬貨であると識別された場合にも、そのリジェクト硬貨をリジェクト部234bへ搬送してよい。
一方、バラ硬貨を出金する場合、収納部250bは、硬貨を一枚ずつ搬送部231bへ繰り出すように構成されている。複数の収納部250bは、各金種ごとに硬貨を収納しており、それぞれ円盤型の繰出部253bを備えている。繰出部253bは、硬貨を一枚ずつ繰り出し、シュート256bを介してドロア258bへ搬送する。硬貨出金部としてのドロア258bは、金種ごとに貨幣を収容するように構成されており、シュート256bも、金種ごとに貨幣を投出するように構成されている。これにより、硬貨出納装置23は、硬貨を金種ごとにドロア258bへ出金することができる。尚、回収部255bへ回収される硬貨は、金種が混合された状態でよい。
このように、硬貨出納装置23は、入金部210bに投入された硬貨を収納部250bへ収納し、逆に、収納部250bに収納された硬貨をドロア258bへ投出することができる。即ち、硬貨出納装置23は、入金された硬貨を出金に再利用することができるように構成されている。
尚、POSレジスタは、精算処理時に授受される現金を手作業により収納するドロワを備えている場合がある。このような場合、収納ドロア258bは、チェックアウトカウンター10のPOSレジスタのドロアに硬貨を装填するときに用いられる。店員は、硬貨出納装置21の収納ドロア258bに出金された硬貨をPOSレジスタのドロアへ装填する。POSレジスタのドロアから硬貨を回収する場合には、店員は、入金部210bへ硬貨を投入すればよい。POSレジスタのドロアは、硬貨出納装置21の収納ドロア258bと同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
POSレジスタのドロアが硬貨出納装置21の収納ドロア258bと同じものである場合、収納ドロア258bは、装填処理時に硬貨出納装置21に装着され、精算処理時にPOSレジスタへ装着される。この場合、店員は、硬貨を硬貨出納装置21の収納ドロア258bからPOSレジスタのドロアへ移し替える必要がない。また、硬貨出納装置21は、硬貨を金種別に区分けして収納ドロア258bへ出金するので、店員は、硬貨出納装置21に収納ドロア258bを装着後、直ちに精算処理を実行することができる。
POSレジスタのドロアが硬貨出納装置21の収納ドロア258bと異なるものである場合、収納ドロア258bは、装填処理時に硬貨出納装置21に装着される。店員は、収納ドロア258bに出金された現金を精算処理時にPOSレジスタへ移し替える。この場合、硬貨出納装置21の収納ドロア258bの構成は、POSレジスタのドロアの構成と異なってよい。
現金搬送カセット30が入金部210bに装着されている場合、硬貨出納装置23は、現金精算装置11から回収した硬貨を現金搬送カセット30から入金することができる。店員が現金搬送カセット30を入金部210bに装着すると、現金搬送カセット30は、繰出部233bへ硬貨を投入する。このとき、貨幣は、金種混合の状態で投入されてよい。その後の動作は、バラ硬貨が投入されたときと同様である。これにより、硬貨は、金種ごとに収納部250bへ収納される。
現金搬送カセット30が回収部255bに代わって装着されている場合、硬貨出納装置23は、現金精算装置11へ装填する硬貨を現金搬送カセット30へ出金することができる。この場合、バラ硬貨を出金する場合と同様に、硬貨は、収納部250bからシュート256bを介して現金搬送カセット30へ投出される。このとき、現金搬送カセット30へ投出された硬貨は、金種混合の状態であってもよい。
このように、硬貨出納装置23は、現金搬送カセット30からの硬貨を収納部250bへ収納し、逆に、収納部250bに収納された硬貨を現金搬送カセット30へ投出することができる。
図10(A)および図10(B)は、硬貨を搬送する現金搬送カセット30の構成例を示す外観図である。硬貨を搬送する現金搬送カセット30は、上部開口部31と、下部開口部32とを備えている。
例えば、図5(A)に示す硬貨精算装置13から硬貨を回収する場合、現金搬送カセット30がカセット装着部160bに装着されたときに、硬貨精算装置13に設けられたアクチュエータ(図示せず)が、現金搬送カセット30の上部開口部31を開ける。このとき、下部開口部32は閉じた状態を維持している。これにより、硬貨精算装置13は、回収される硬貨を、上部開口部31を介して現金搬送カセット30へ投入することができる。
硬貨精算装置13へ硬貨を装填する場合、現金搬送カセット30がカセット装着部160bに装着されたときに、硬貨精算装置13に設けられたアクチュエータは、現金搬送カセット30の下部開口部32を開ける。これにより、現金搬送カセット30内の硬貨は、下部開口部32から繰出部137bへ投出される。
また、図9(A)に示す硬貨出納装置23から装填用の硬貨を現金搬送カセット30へ投入する場合、現金搬送カセット30がドロワ258bの代わりに装着される。このとき、硬貨出納装置23に設けられたアクチュエータが、現金搬送カセット30の上部開口部31を開ける。下部開口部32は閉じた状態を維持している。これにより、硬貨出納装置23は、硬貨を上部開口部31から投入することができる。
硬貨出納装置13から現金搬送カセット30を用いて回収された硬貨を硬貨出納装置23へ回収する場合、現金搬送カセット30が入金部210bに装着される。このとき、硬貨出納装置23に設けられたアクチュエータは、現金搬送カセット30の下部開口部32を開ける。上部開口部31は閉じた状態を維持している。これにより、現金搬送カセット30内の硬貨は、下部開口部32から繰出部233bへ投出される。
現金搬送カセット30は、該現金搬送カセット30を特定するためのカセットID情報を少なくとも記憶する記憶部35を備えている。現金処理システム1内に複数の現金搬送カセット30がある場合、各現金搬送カセット30は、互いに異なるカセットID情報を有する。これにより、現金精算装置11および現金出納装置21が、現金搬送カセット30を特定することができる。カセットID情報は、例えば、複数の現金搬送カセット30のそれぞれに対して設定された固有の番号でよい。また、記憶部35は、必要に応じて現金搬送カセット30に収容されている現金の金種や数量等の情報を格納してもよい。
現金精算装置11は、現金出納装置21および現金管理装置25と通信接続されていない場合も考えられる。このような場合、現金搬送カセット30の記憶部35は、自己のカセットID情報だけでなく、装填または回収する現金の金種情報および数量情報、並びに、現金の装填対象または回収対象である現金精算装置11のID情報を格納してもよい。これにより、現金精算装置11は、自身が装填処理の対象であることを知ることができ、かつ、装填される現金の金種および数量を知ることができる。また、現金出納装置21は、現金搬送カセット30内の現金がいずれの現金精算装置11から回収された現金かを知ることができ、かつ、回収された現金の金種および数量を知ることができる。従って、現金精算装置11が現金出納装置21および現金管理装置25と通信接続されていなくとも、現金搬送カセット30の記憶部35が、装填または回収する現金の金種情報および数量情報、並びに、現金の装填対象または回収対象である現金精算装置11のID情報を格納していれば、現金の装填処理および回収処理を実行することができる。
(現金処理システム1の動作)
次に、現金処理システム1の具体的な動作を説明する。各現金精算装置11の現金在高、現金出納装置21の現金在高、各現金精算装置11において入金または出金された現金の金額、現金出納装置21と各現金精算装置11との間で装填または回収された現金の金額は、すべて現金管理装置25において管理されている。また、複数の現金精算装置11は、互いに区別することができるようにそれぞれ固有のID情報を有し、複数の現金精算装置11の各メモリ170がそのID情報を格納している。また、現金管理装置25も各現金精算装置11のID情報を把握している。以下の各処理において、現金精算装置11と現金出納装置21との間の通信は現金管理装置25を介して行われる。しかし、現金精算装置11と現金出納装置21とは互いに直接通信してもよいことは言うまでもない。
また、図11〜図12に示す精算処理、装填処理、回収処理において、現金処理システム1は、紙幣および硬貨のいずれにも適用できる。例えば、紙幣を処理する場合、現金精算装置11のうち紙幣精算装置12を使用し、現金出納装置21のうち紙幣出納装置22を使用すればよい。また、現金搬送カセット30は、紙幣用の現金搬送カセット(スタック式またはテープリール式のいずれでもよい)を使用すればよい。
一方、硬貨を処理する場合、現金精算装置11のうち硬貨精算装置13を使用し、現金出納装置21のうち硬貨出納装置23を使用すればよい。また、現金搬送カセット30は、図10(A)および図10(B)に示す硬貨用の現金搬送カセットを使用すればよい。以下、便宜的に紙幣と硬貨とをまとめて「現金」と表現するが、「現金」は、「紙幣」または「硬貨」のいずれに置き換えてもよい。
[精算処理]
図11は、本実施形態による現金処理システム1における精算処理の動作を示すフロー図である。まず、精算時には、チェックアウトカウンター10において店員が、顧客から受け取った現金を現金精算装置11の入金部110へ投入する(S10)。チェックアウトカウンター10がセルフチェックアウト方式を採用している場合には、顧客が現金を現金精算装置11の入金部110へ投入する。
識別部140は、投入された現金の搬送中に該現金の金種、正損、真偽等を識別し、識別された現金の数量をカウントする(S20)。現金精算装置11は、投入された現金を金種ごとに対応する収納部150に収納する(S30)。尚、偽券あるいは識別できないものは、出金部120へ投出し、店員または顧客へ返却する。
識別部140で識別および計数された現金の入金情報(金種、数量、正損、真偽等の情報)は、メモリ170に格納される。制御部190は、メモリ170内の入金情報に基づいて実際に投入された金額を算出する(S40)。例えば、制御部190は、投入された現金の金種の価額と数量とを各金種について乗算する。そして、制御部190は、各金種の乗算結果を足し算することによって、投入された現金の総額を算出することができる。次に、制御部190は、実際に投入された現金の金額から商品の価格を引き算し、釣銭金額を算出する(S50)。この釣銭情報(金種、数量)も、メモリ170に格納されてよい。
現金精算装置11は、制御部190で算出された釣銭金額に従って釣銭を出金部120へ投出する(S60)。このとき、投出される現金は、価額の大きな金種の順から優先的に選択され投出される。ただし、価額の大きな金種が不足している場合には、現金精算装置11は、その金種よりも価額の小さな金種で代用してよい。例えば、5千円札が不足している場合には、現金精算装置11は、5千円札1枚に代えて千円札を5枚投出すればよい。釣銭として投出される現金の金種は、制御部190または現金管理装置25によって決定される。
現金精算装置11は、メモリ170に格納された入金情報および釣銭情報を自己のID情報とともに現金管理装置25へ送信する(S70)。現金管理装置25は、入金情報、釣銭情報および現金精算装置11のID情報を受信すると、精算処理を実行した現金精算装置11を特定し、入金情報および釣銭情報に基づいて該現金精算装置11の在高を金種ごとに更新する(S80)。
例えば、5200円の商品を購入するために、顧客が店員に1万円札を渡したと仮定する。この場合、投入される現金の金種は1万円札であり、その数量は1枚である。投入金額は、1万円(1万円札×1枚)である。これに対し、釣銭金額は、4800円である。従って、現金精算装置11のうち紙幣精算装置12が、収納部150aから千円札を4枚繰り出し、出金部120aへ投出する。硬貨精算装置13が、収納部150bから500円硬貨を1枚および100円硬貨を3枚繰り出し、出金部120bへ投出する。
従って、現金精算装置11は、自己のID情報、投入された現金の金種(1万円札)および数量(1枚)(入金情報)、並びに、釣銭の金種および数量(千円札:4枚、500円硬貨:1枚、100円硬貨:3枚)(釣銭情報)を現金管理装置25へ送信する。
現金管理装置25は、ID情報によって特定された現金精算装置11の在高情報に、入金情報から得られる入金額(金種×数量)を加算する。上記例では、紙幣精算装置12の各金種の在高情報のうち1万円札の在高を1万円だけ加算する。代替的に、現金管理装置25が現金精算装置11の在高を各金種の数量で管理している場合には、現金管理装置25は、現金精算装置11の数量情報に、入金情報の数量を加算すればよい。例えば、現金管理装置25は、紙幣精算装置11の数量情報のうち1万円札の数量を1だけ加算すればよい。
また、現金管理装置25は、ID情報によって特定された現金精算装置11の在高情報から、釣銭情報によって得られる釣銭金額(金種×数量)を減算する。上記例では、紙幣精算装置12の在高情報のうち千円札の在高を4千円減算し、硬貨精算装置13の在高情報のうち500円硬貨の在高情報を500円減算し、並びに、100円硬貨の在高情報を300円減算する。代替的に、現金管理装置25が現金精算装置11の在高を各金種の数量で管理している場合には、現金管理装置25は、現金精算装置11の数量情報から、釣銭情報の数量を減算すればよい。上記例では、紙幣精算装置12の数量情報のうち千円札の数量を4だけ減算し、硬貨精算装置13の数量情報のうち500円硬貨の数量を5だけ減算し、並びに、100円硬貨の数量を3だけ減算すればよい。
このように、現金精算装置11は、店舗のチェックアウトカウンター10において精算処理を実行し、現金管理装置25は、入金情報および釣銭情報に従って現金管理装置11の在高を更新する。これにより、一連の精算処理が完了する。
[装填処理]
図12は、本実施形態による現金処理システム1における装填処理の動作を示すフロー図である。
店舗の開店前において、店員は各現金精算装置11に釣銭準備金を装填する必要がある。本実施形態では、店員は、現金搬送カセット30を用いて釣銭準備金を現金出納装置21から現金精算装置11へ搬送する。
現金管理装置25は、各現金精算装置11の在高を各金種ごとに管理しているので、現金の装填を必要とする現金精算装置11および装填される金種を予め決定することができる。現金(例えば、釣銭準備金)の装填を必要とする現金精算装置11および装填される金種は、現金出納装置21の操作表示部295に表示される。これにより、店員は、装填処理を必要とする現金精算装置11および装填の必要な金種を知ることができる。
まず、店員は、現金出納装置21または現金管理装置25において装填処理の開始を選択し、現金の入っていない現金搬送カセット30を現金出納装置21へ装着する(S100)。紙幣を搬送する場合には、店員は、紙幣搬送用の現金搬送カセット30を紙幣出納装置22へ装着する。硬貨を搬送する場合には、店員は、硬貨搬送用の現金搬送カセット30を硬貨出納装置23へ装着する。現金搬送カセット30が装着されると、現金出納装置30は、現金管理装置25へ現金搬送カセット30が装着されたことを通知する(S102)。
さらに、現金管理装置25は、現金搬送カセット30の装着通知を受信すると、現金の装填を必要とする現金精算装置11のID情報、並びに、装填される金種情報および数量情報を現金出納装置21へ送信する(S105)。
また、現金搬送カセット30が現金出納装置21に装着されると、現金出納装置21のリード・ライト部257は、現金搬送カセット30の記憶部35からカセットID情報を読み取る(S110)。現金出納装置21は、釣銭準備金を装填すべき現金精算装置11(以下、選択現金精算装置11sという)に装填する現金を、収納部250から現金搬送カセット30へ出金する(S120)。
現金出納装置21は、現金管理装置25から受信した選択現金精算装置11sのID情報、釣銭準備金を入れた現金搬送カセット30のカセットID情報、釣銭準備金の金種情報および数量情報を関連付けて、チェックアウトカウンター10に設置された現金精算装置11および現金管理装置25へ送信する(S130)。現金出納装置21のリード・ライト部257は、選択現金精算装置11sのID情報、釣銭準備金を入れた現金搬送カセット30のカセットID情報、並びに、釣銭準備金の金種情報および数量情報を現金搬送カセット30の記憶部35に書き込んでもよい。例えば、現金精算装置11が現金出納装置21および現金管理装置25と通信接続されていない場合には、現金搬送カセット30の記憶部35は、選択現金精算装置11sのID情報、釣銭準備金を入れた現金搬送カセット30のカセットID情報、並びに、釣銭準備金の金種情報および数量情報を格納する必要がある。
以下、選択現金精算装置11sのID情報、釣銭準備金を入れた現金搬送カセット30のカセットID情報、並びに、釣銭準備金の金種情報および数量情報を「装填関連情報」と呼ぶ。
現金管理装置25および現金精算装置11は、装填関連情報を受信し、この装填関連情報を記憶する(S133)。
尚、現金搬送カセット30がテープリール式カセットである場合、記憶部35は、収容した紙幣の金種を巻取り順に記憶してもよい。この場合、選択現金精算装置11sへ紙幣を装填するときに、紙幣は、巻取り順とは逆の順番で繰り出される。従って、選択現金精算装置11sは、識別部140において紙幣を識別することなく、繰り出される紙幣の金種を特定することができる。よって、選択現金精算装置11sは、記憶部35に記憶された巻取り順に従って現金搬送カセット30からの紙幣を金種別に収納することができる。これにより、選択現金精算装置11sへの現金の装填が高速化され得る。紙幣の巻取り順の情報は、通信部280を介して現金精算装置11および現金管理装置25へ送信してもよい。勿論、現金搬送カセット30がテープリール式カセットであっても、選択現金精算装置11sの識別部140は、装填される紙幣を識別してよい。これより、選択現金精算装置11sは、装填される紙幣の金種および数量を確認することができる。
次に、現金出納装置21は、操作表示部295に装填関連情報を表示する(S140)。これにより、店員は、釣銭準備金を装填すべき選択現金精算装置11sを特定することができ、選択現金精算装置11sへ現金搬送カセット30を搬送することができる。
次に、店員は、現金搬送カセット30を現金出納装置21から離脱させる(S150)。そして、店員は、釣銭準備金を装填するために選択現金精算装置11sへ現金搬送カセット30を搬送する。
チェックアウトカウンター10に設置された複数の現金精算装置11の制御部190は、それぞれ、メモリ170に格納された自己のID情報と受信した選択現金精算装置11sのID情報とを比較する(S170)。そして、自己のID情報と選択現金精算装置11sのID情報とが一致した場合(S170のYES)、その現金精算装置11は、選択現金精算装置11sであることを認識し、装填処理を可能にする(S180)。自己のID情報と選択現金精算装置11sのID情報とが一致しない場合(S170のNO)、その現金精算装置11は、装填処理の対象として選択されていないことを認識し、現金の装填処理を不可とする(S181)。 店員が現金搬送カセット30を現金精算装置11に装着すると(S182)、現金精算装置11は、装填処理可能か否かを判断する(S183)。
もし、非選択の現金精算装置11に現金搬送カセット30が装着されようとした場合、非選択の現金精算装置11は、装填処理を開始せず、エラーを店員に通知する(S184)。エラーの通知は、例えば、モニタ表示、警告ランプの点灯、警告音出力等で行えばよい。この場合、店員は、現金搬送カセット30を選択現金精算装置11sへ装着し直す必要がある。
現金搬送カセット30が選択現金精算装置11sに装着されている場合(S183のYES)、その選択現金精算装置11のリード・ライト部157は、現金搬送カセット30の記憶部35に記憶されている情報を読み取る(S185)。
そして、選択現金精算装置11sの制御部190は、記憶部35から読み取ったカセットID情報と、現金出納装置21または現金管理装置25から送信されたカセットID情報とを比較する(S187)。
例えば、複数の現金精算装置11に対して同時期に釣銭準備金を装填する場合、複数の現金精算装置11が選択現金精算装置11sとなっている場合がある。このような場合、選択現金精算装置11sの数と同数の現金搬送カセット30が同時期に現金を搬送していることになる。従って、ステップS187に示すように、記憶部35から読み取ったカセットID情報と現金出納装置21から送信されたカセットID情報とを比較することによって、現金搬送カセット30が誤った選択現金精算装置11sへ装着されることを防止することができる。ステップS187における比較の結果、両者のカセットID情報が一致する場合(S187のYES)、現金搬送カセット30が現金を装填すべき正しい選択現金精算装置11sに装着されていることがわかる。従って、選択現金精算装置11sは、現金搬送カセット30から現金を入金し、その現金を収納部150へ収納する(S190)。
両者のカセットID情報が一致しない場合(S187のNO)、その現金搬送カセット30が装着されている選択現金精算装置11sは、該現金搬送カセット30が現金を装填すべき選択現金精算装置11sではないことを意味する。つまり、現金搬送カセット30は、別の選択現金精算装置11sに装着されていることを意味する。従って、選択現金精算装置11sは、装填処理を開始せず、エラーを店員に通知する(S193、S194))。エラー通知を受けた店員は、現金搬送カセット30を、対応する選択現金精算装置11sに装着し直す(S181)。
現金搬送カセット30が現金を装填すべき現金搬送カセット30に装着されると(S187のYES)、エラーは解消する。
ステップS190において現金搬送カセット30から現金を入金するとき、識別部140が装填される現金の数量を金種ごとに計数してもよい。この場合、制御部190は、実際に装填された釣銭準備金の各金種の数量と、現金出納装置21または現金管理装置25から受信した釣銭準備金の金種ごとの数量情報とを比較する。現金の搬送時において店員は、現金搬送カセット30内の現金に触れることができないので、通常、実際に装填された釣銭準備金の各金種の数量と、現金出納装置21から受信した釣銭準備金の金種ごとの数量情報とは一致する。両者が一致する場合には、現金精算装置11は、釣銭準備金を収納部150に収納する。しかし、万一、両者が一致しない場合、装填処理を中断し、現金精算装置11、現金出納装置21または現金管理装置25がエラーを通知する。この場合、管理者による調査が必要となるので、管理者によりエラーが解除されるまで、エラー通知は継続される。必要に応じて、釣銭準備金は、現金搬送カセット30へ戻される。
現金の装填が終了すると、選択現金精算装置11sは、装填完了通知を現金管理装置25へ送信する(S195)。その後、現金精算装置11は、精算処理を開始することができる。精算処理中において、現金搬送カセット30は、現金精算装置11に装着された状態でよい。これにより、現金搬送カセット30は、収納部150がフルになったときに現金を回収することができる。
現金管理装置25は、装填完了通知を受信すると、現金出納装置21および当該選択現金精算装置11sの在高を更新する(S197)。現金管理装置25は、現金出納装置21から受信した釣銭準備金の金種情報および数量情報に基づいて現金出納装置21の在高を更新することができる。また、現金管理装置25は、現金出納装置21から受信した選択現金精算装置11sのID情報、釣銭準備金の金種情報および数量情報に基づいて当該選択現金精算装置11sの在高を更新することができる。これにより、一連の装填処理が完了する。
尚、現金精算装置11が現金出納装置21および現金管理装置25と通信接続されていない場合には、ステップS185において選択現金精算装置11のリード・ライト部157が、現金搬送カセット30の記憶部35から装填関連情報を読み取る。その後、ステップS170以降の動作を実行すれば、現金処理システムは、上記装填処理を実行することができる。
[回収処理]
図13は、本実施形態による現金処理システム1における回収処理の動作を示すフロー図である。
店舗の閉店時(締め時)または、所定の途中段階において、店員は各現金精算装置11に収納された売上金を現金出納装置21へ回収する必要がある。本実施形態では、店員は、現金搬送カセット30を用いて売上金を現金精算装置11から現金出納装置21へ回収する。
まず、店員が現金精算装置11、現金出納装置21または現金管理装置25において回収処理の開始を選択すると、現金精算装置11は、収納部150に収納された現金を繰り出し、現金搬送カセット30へ出金する(S200)。このとき、現金精算装置11は、各金種の収納部150のそれぞれにおいて釣銭準備金として必要な所定数量の現金を残し、余剰の現金を現金搬送カセット30へ出金する。或る金種の収納部150に収納されている現金の数量が釣銭準備金として必要な所定数量以下である場合、現金精算装置11は、その金種の現金を回収しなくてよい。これにより、装填処理時に搬送する現金の数量を低減させることができる。現金精算装置11の在高は、現金管理装置25によって管理されているので、現金管理装置25が現金精算装置11から回収する現金の金種を設定してもよい。
現金精算装置11は、自己のID情報、回収される現金(以下、回収金という)を収容した現金搬送カセット30のカセットID情報、回収金の金種情報および数量情報を関連付けて、バックオフィス20の現金出納装置21および現金管理装置25へ送信する(S210)。以下、現金精算装置11のID情報、回収金を収容した現金搬送カセット30のカセットID情報、回収金の金種情報および数量情報を「回収関連情報」と呼ぶ。
バックオフィス20に設置された現金出納装置21および現金管理装置25は、現金精算装置11からの回収関連情報を受信し、この回収関連情報を記憶する(S220)。現金精算装置11のリード・ライト部157は、回収関連情報を現金搬送カセット30の記憶部35に書き込んでもよい。
尚、現金搬送カセット30がテープリール式カセットである場合、記憶部35は、収容した紙幣の金種を巻取り順に記憶してもよい。この場合、現金出納装置21へ紙幣を回収するときに、紙幣は、巻取り順とは逆の順番で繰り出される。従って、現金出納装置21は、識別部240において紙幣を識別することなく、繰り出される紙幣の金種を特定し、記憶部35に記憶された巻取り順に従って現金搬送カセット30からの紙幣を金種別に収納することができる。これにより、現金精算装置11からの現金の回収が高速化され得る。紙幣の巻取り順の情報は、通信部180を介して現金出納装置21および現金管理装置25へ送信してもよい。
次に、店員は、現金搬送カセット30を現金精算装置11から離脱させる(S240)。そして、店員は、現金出納装置21へ現金搬送カセット30を搬送する。尚、通常、現金出納装置21は、現金処理システム1において1つ設けられているため、店員は、迷うことなくその現金出納装置21へ現金搬送カセット30を搬送すればよい。しかし、現金処理システム1に複数の現金出納装置21が設けられている場合、現金管理装置25が全ての現金出納装置21の各在高を管理している限り、店員は、現金搬送カセット30をいずれの現金出納装置21へ搬送しても構わない。
店員が現金搬送カセット30を現金出納装置21に装着すると(S245)、現金出納装置21のリード・ライト部257は、現金搬送カセット30の記憶部35に記憶されている情報(カセットIDおよび回収関連情報)を読み取る(S250)。
現金出納装置21の制御部290は、現金精算装置11または現金管理装置25から受信したカセットID情報の中から、装着された現金搬送カセット30のカセットID情報を検索する(S260)。例えば、現金出納装置21が複数のカセットID情報を受信している場合、装着されている現金搬送カセット30がいずれの現金搬送カセット30であるかを特定する必要があるからである。従って、現金出納装置21は、装着された現金搬送カセット30のカセットID情報を、受信した全てのカセットID情報と比較することによって、装着された現金搬送カセット30を特定する。
尚、ステップS260において、カセットID情報とともに、あるいは、それに代えて、現金精算装置11のID情報を用いて現金搬送カセット30を特定してもよい。現金精算装置11のID情報を用いて現金搬送カセット30を特定する場合、現金搬送カセット30の記憶部35に格納された現金精算装置11のID情報とステップS220で受信した現金精算装置11のID情報とを比較すればよい。これにより、現金搬送カセット30内の回収金が、いずれの現金精算装置11からの回収金であるかを判断することができる。
現金搬送カセット30が特定された場合(S265のYES)、装着された現金搬送カセット30のカセットID情報に関連付けられた回収金の金種情報および数量情報が判明する。また、現金出納装置21は、現金搬送カセット30に収容された現金を回収する(S270)。回収された現金は、現金出納装置21の収納部250へ収納される。
検索の結果、記憶部35から読み取ったカセットID情報が現金精算装置11または現金管理装置25から送信されたいずれのカセットID情報とも一致しない場合(S265のNO)、現金出納装置21は、現金搬送カセット30の現金を回収せず、エラーを店員に通知する(S275)。エラーは、操作表示部295に表示すればよい。エラー通知を受けた店員は、正しい現金搬送カセット30を装着する等の適切な対応をとることによってエラーを解消する。
ステップS270において現金搬送カセット30から現金を入金するとき、識別部240が回収される現金の数量を金種ごとに計数してよい。この場合、制御部290は、実際に回収された現金の各金種の数量と、現金精算装置11または現金管理装置25から受信した回収金の各金種の数量情報とを比較する。現金の搬送時において店員は、現金搬送カセット30内の現金に触れることができないので、通常、実際に回収された現金の数量と、現金精算装置11または現金管理装置25から受信した回収金の数量情報とは一致する。両者が一致する場合には、現金出納装置21は、回収金を収納部250へ収納する。しかし、万一、両者が一致しない場合、現金出納装置21は回収処理を中断し、現金出納装置21または現金管理装置25がエラーを通知する。この場合、管理者による調査が必要となるので、管理者によりエラーが解除されるまで、エラー通知は継続される。必要に応じて、回収金は、現金搬送カセット30へ戻される。
現金の回収が終了すると、現金出納装置21は、回収完了通知を現金管理装置25へ送信する(S280)。
現金管理装置25は、回収完了通知を受信すると、現金出納装置21および現金精算装置11の在高を更新する(S285)。現金管理装置25は、現金精算装置11から受信した現金精算装置11のID情報、回収金の金種情報および数量情報に基づいて当該現金精算装置11および現金出納装置21の各在高を更新する。これにより、一連の回収処理が完了する。
尚、現金精算装置11が現金出納装置21および現金管理装置25と通信接続されていない場合には、ステップS250において現金出納装置21のリード・ライト部257が、現金搬送カセット30の記憶部35から回収関連情報を読み取る。その後、ステップS260以降の動作を実行すれば、現金処理システムは、上記装填処理を実行することができる。
回収処理に用いられている現金搬送カセット30が複数ある場合には、複数の現金搬送カセット30を連続して現金出納装置21に装着してよい。現金出納装置21は、上記ステップS200〜S285を繰り返すことによって複数の現金搬送カセット30から現金を連続的に回収することができる。
以上のように、本実施形態による現金処理システム1は、現金出納装置21から現金精算装置11への装填処理、および、現金精算装置11から現金出納装置21への回収処理を、現金搬送カセット30を介して行う。現金搬送カセット30は、現金精算装置11または現金出納装置21に装着されているときには、現金精算装置11または現金出納装置21との間で現金をやりとりすることができる。しかし、現金精算装置11または現金出納装置21から離脱しているときには、現金搬送カセット30は、内部の現金に触れることができないように現金を収容する。従って、店員のみが装填処理および回収処理を行っても、セキュリティ上安全な状態で装填処理および回収処理を行うことができる。つまり、装填処理および回収処理において管理者の管理や許可を省略することができ、ユーザの手間がかからない。
現金搬送カセット30は、固有のカセットID情報で管理されている。従って、正確に釣銭の装填処理または回収処理を行うことができる。
(変形例)
図14(A)および図14(B)は、本実施形態の変形例に従った硬貨精算装置13の内部構成の一例を示す断面図である。図14(A)は硬貨精算装置13を側方から見た断面図であり、図14(B)は硬貨精算装置13を正面から見た断面図である。
本変形例では、現金搬送カセット30が入金部110bに装着可能に構成されている。装填処理時には、現金搬送カセット30は、入金部110bに装着される。回収処理時には、現金搬送カセット30は、カセット装着部160bに装着される。
装填処理時には、現金搬送カセット30の下部開口部32が開口し、硬貨が入金部110bに投入される。その後、店員によってバラ硬貨が投入されたときと同様に、投入された硬貨は、収納部150bへ金種ごとに収納される。
回収処理時には、現金搬送カセット30の上部開口部31が開口し、硬貨が現金搬送カセット30へ投入される。
このように、装填処理時に、現金搬送カセット30が入金部110bに装着されても本発明の効果は失われない。