以降、諸図面を参照しながら、本発明の実施態様を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器1の機能ブロックを示す図である。電子機器1は、例えば携帯電話(スマートフォン)であって、パネル10と、表示部20と、振動発生部30と、入力部40と、制御部50と、を備える。
パネル10は、接触を検出するタッチパネル、または表示部20を保護するカバーパネル等である。例えば、ガラス、アクリル等の合成樹脂、サファイア等により形成される。ここで、サファイアとは、酸化アルミニウム(Al2O3)の結晶からなり、工業的に製造されたものをいう。パネル10は、平板形状であっても良いし、曲面形状を有していても良い。曲面形状を有するパネルとしては、例えば、電子機器1の外部側を構成する面においては、中央部が凹んだ凹形状を有する一方で、電子機器1の内部側を構成する面は平面であるものも含まれる。このようなパネルは、使用者が通話を行うために電子機器1を側頭部に当てる際、パネル10の凹面が使用者の側頭部に填まり易く、使い勝手が良くなる一方で、パネル10における、電子機器1の内部側の面は平面であるため、例えば、柔軟性に乏しい平板形状の表示部20であっても容易に取り付けることができる。また、パネル10がタッチパネルである場合、使用者の指、ペン、またはスタイラスペン等の接触を検出する。タッチパネルの検出方法は、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式(または超音波方式)、赤外線方式、電磁誘導方式、および、荷重検出方式等の任意の方式を用いることができる。
表示部20は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、または無機ELディスプレイ等の表示デバイスである。さらには、可撓性を有したフレキシブルディスプレイであってもよい。好適なフレキシブルディスプレイの特性としては、例えば、厚さ0.1mm程度、曲率半径4mm程度であり、これには有機ELディスプレイが最も適している。表示部20は、パネル10の背面に設けられる。表示部20は、接合部材(例えば接着剤)によりパネル10の背面に配設される。表示部20は、パネル10と離間して配設され、電子機器1の筐体により支持されてもよい。あるいは、好適な態様では、表示部20は、接合部材(例えば接着剤)によりパネル10の背面に接合されてもよい。接合部材は、例えば、透過させる光の屈折率を制御した、光学弾性樹脂などの弾性樹脂である。表示部20は、接合部材とパネル10を透過して種々の情報を表示する。
振動発生部30は、電気信号(電圧)が印加されることにより、機械振動(変位)を生じる。このとき、振動発生部30が取り付けられたパネル10は、振動発生部30の変位にあわせて変形(振動)する。これにより、パネル10は、気導音を発生させる。また、パネル10は、該パネル10に接触する対象物に人体振動音を伝える。より詳細には、パネル10の振動が、人体の軟組織(例えば外耳の軟骨)を経由して、中耳または内耳に伝わり、中耳または内耳を振動させることにより音を伝える。振動発生部30は、例えば、磁歪素子及びコイルから構成されているものや、或いは、圧電素子から構成されているものである。
磁歪素子は、磁界中においてその磁界の方向に伸張する性質を有する磁歪材料から成る素子である。中でも、希土類元素と鉄との合金に代表され、変化量が1000ppmを超える磁歪材料は、超磁歪材料と呼ばれる。磁歪素子の周囲にコイルが配置され、外部から供給される電気信号(電圧)に応じて、コイルにより磁界が発生した場合に、磁歪素子は、変位し、磁歪素子に当接されたパネル10を叩打する(或いは、磁歪素子とパネル10との間に、例えば、ロッド状の部材が介在し、ロッド状の部材を介して、パネル10が叩打される)。パネル10は、磁歪素子により叩打されることによって振動し、該パネル10に接触する対象物に人体振動音を伝える。磁歪素子は、上述したように、金属合金から成るため、後述する圧電素子に特有の脆性を有さず、圧電素子と比較して、外部からの衝撃による破損が起こりにくい。
圧電素子は、電気信号を印加することで、構成材料の電気機械結合係数に従い伸縮または屈曲する素子である。これらの素子は、例えばセラミックや水晶からなるものが用いられる。圧電素子は、ユニモルフ、バイモルフまたは積層型圧電素子であってよい。積層型圧電素子には、バイモルフを積層した(例えば16層または24層積層した)積層型バイモルフ素子が含まれる。積層型の圧電素子は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる複数の誘電体層と、該複数の誘電体層間に配設された電極層との積層構造体から構成される。積層型圧電素子は、電気信号が印加されると、各層の積層方向、即ち、厚み方向に撓みの変位を起こす。圧電素子が取り付けられたパネル10は、圧電素子の変位に併せて振動し、該パネル10に接触する対象物に人体振動音を伝える。圧電素子は、磁歪素子が変位を起こすために該磁歪素子の周囲にコイルを配置する必要があるのに対して、そのような部材の配置を必要としないため、磁歪素子と比較して、振動発生部の構造をより簡略化できる。
入力部40は、使用者からの操作入力を受け付けるものであり、例えば、操作ボタン(操作キー)から構成される。なお、パネル10がタッチパネルである場合には、パネル10も使用者からの接触を検出することにより、使用者からの操作入力を受け付けることができる。
制御部50は、電子機器1を制御するプロセッサである。制御部50は、振動発生部30に所定の電気信号(音声信号に応じた電圧)を印加する。例えば、制御部50は、通話相手の音声に係る音声信号に応じた電気信号を振動発生部30に印加させ、その音声信号に対応する気導音及び人体振動音を発生させることができる。音声信号は、着信メロディ、または音楽を含む楽曲等に係るものであってもよい。なお、電気信号にかかる音声信号は、電子機器1の内部メモリに記憶された音楽データに基づくものでもよいし、外部サーバ等に記憶されている音楽データがネットワークを介して再生されるものであってもよい。振動発生部30が圧電素子である場合、制御部50が該圧電素子に対して印加する電圧は、例えば、人体振動音ではなく気導音による音の伝導を目的とした所謂パネルスピーカの印加電圧である±5Vよりも高い、±15Vであってよい。これにより、使用者が例えば3N以上の力(5N〜10Nの力)で自身の体にパネル10を押し付けた場合であっても、パネル10に十分な振動を発生させ、使用者の体の一部を介する人体振動音を発生させることができる。尚、どの程度の印加電圧を用いるかは、パネル10の筐体または電子機器1を構成する部材等に対する固定強度もしくは振動発生部30の性能に応じて適宜調整可能である。
パネル10は、振動発生部30が取り付けられた取付領域だけでなく、取付領域から離れた領域も振動する。パネル10は、振動する領域において、該パネル10の主面と交差する方向に振動する箇所を複数有し、該複数の箇所の各々において、振動の振幅の値が、時間とともにプラスからマイナスに、あるいはその逆に変化する。パネル10は、ある瞬間において、振動の振幅が相対的に大きい部分と振動の振幅が相対的に小さい部分とが一見パネル10の略全体にランダムにあるいは周期的に分布した振動をする。即ち、パネル10全域にわたって、複数の波の振動が検出される。振動発生部30が圧電素子である場合、使用者が例えば5N〜10Nの力で自身の体にパネル10を押し付けた場合であっても、パネル10の上述したような振動が減衰しないためには、制御部50が圧電素子に対して印加する電圧は、±15Vであってよい。そのため、使用者は、上述したパネル10の取付領域から離れた領域に耳を接触させて音を聞くことができる。
ここで、パネル10は、使用者の耳とほぼ同じ大きさであってよい。また、パネル10は、図2に示すように、使用者の耳よりも大きいものであってもよい。この場合、使用者が音を聞く際、電子機器1のパネル10により耳全体が覆われやすいことから、周囲音(ノイズ)を外耳道に入りにくくできる。パネル10は、対耳輪下脚(下対輪脚)から対耳珠までの間の距離に相当する長さと、耳珠から対耳輪までの間の距離に相当する幅とを有する領域よりも広い領域が振動すればよい。パネル10は、好ましくは、耳輪における対耳輪上脚(上対輪脚)近傍の部位から耳垂までの間の距離に相当する長さと、耳珠から耳輪における対耳輪近傍の部位までの間の距離に相当する幅を有する領域が振動すればよい。長さ方向は、この例ではパネル10が延在する長手方向2aであり、その中心から一方の端部寄りに振動発生部30が配設される。また、幅方向は、長手方向と直交する方向2bである。かかる長さおよび幅を有する領域は、長方形状の領域であってもよいし、上記の長さを長径、上記の幅を短径とする楕円形状であってもよい。日本人の耳の平均的な大きさは、社団法人 人間生活工学研究センター(HQL)作成の日本人の人体寸法データベース(1992−1994)等を参照すれば知ることができる。尚、パネル10が日本人の耳の平均的な大きさ以上の大きさであれば、パネル10は概ね外国人の耳全体を覆うことができる大きさであると考えられる。
上記のような寸法や形状を有することで、パネル10は、ユーザーの耳を覆うことができ、耳に当てたときの位置ずれに対して寛容になる。
上記の電子機器1は、パネル10の振動により、気導音と、使用者の体の一部(例えば外耳の軟骨)を介する振動音とを使用者に伝えることができる。従って、単に気導音のみを使用者に伝える従来の場合と比較して、電子機器1の外部への音漏れをより低減することができるため、例えば、録音されたメッセージを電車内等で聞く場合等に適している。
また、上記の電子機器1は、パネル10の振動によって振動音を伝えるため、例えば使用者がイヤホンまたはヘッドホンを身につけていても、それらに電子機器1を接触させることで、使用者はイヤホンまたはヘッドホンおよび体の一部を介して音を聞くことができる。
上記の電子機器1は、パネル10の振動により使用者に音を伝える。そのため、電子機器1が別途ダイナミックレシーバを備えない場合、音声伝達のための開口部(放音口)を筐体に形成する必要がなく、電子機器1の防水構造が簡略化できる。なお、電子機器1がダイナミックレシーバを備える場合、放音口は、気体は通すが液体は通さない部材によって閉塞されるとよい。気体は通すが液体は通さない部材は、例えばゴアテックス(登録商標)である。
図3は、本発明の実施形態に係る電子機器1の概略構造を示す図である。以後、電子機器1には、振動発生部30として圧電素子が使用されているものとして本実施形態を説明する。図3(a)は正面図、図3(b)は図3(a)におけるb−b線に沿った断面図である。図3に示す電子機器1はパネル10としてガラス板であるタッチパネルが筐体60(例えば金属や樹脂のケース)の前面に配されたスマートフォンである。パネル10は、接合部材70により筐体60に接合されることで、該筐体60に取り付けられている。ここで、接合部材70は、例えば、接着剤や両面テープである。また、表示部20及び振動発生部30は、接合部材70によりパネル10に接合されて、取り付けられている。パネル10への表示部20の取り付けに好適な接合部材70としては、例えば、無色透明のアクリル系紫外線硬化型接着剤である光学弾性樹脂がある。また、例えば、パネル10への振動発生部30の取り付けに好適な接合部材70としては、防水性を有した両面テープや熱硬化性あるいは紫外線硬化性等を有する接着剤がある。入力部40は、パネル10と同様にして、筐体60に取り付けられている。ここで、パネル10、表示部20および振動発生部30は、それぞれ略長方形状である。
表示部20は、パネル10の短手方向におけるほぼ中央に配設される。振動発生部30は、パネル10の長手方向の端部から所定の距離だけ離間して、該端部の近傍に、振動発生部30の長手方向がパネル10の短辺に沿うように設けられる。表示部20と振動発生部30とは、パネル10の内部側の面に平行な方向において並んで設けられる。
本実施形態に係る電子機器1は、上記の構成を有することにより、パネル10の背面に取り付けられた振動発生部30の変形に起因してパネル10が変形し、該変形するパネル10に接触する対象物に対して気導音と振動音とを伝えることができる。
図4は、本発明の実施形態に係る電子機器1のパネル10の振動の一例を示す図である。本実施形態に係る電子機器1では、図に示すように、パネル10の上部に振動発生部30が取り付けられ、該上部よりも下側において表示部20が取り付けられている。パネル10は、振動発生部30の長辺方向2aにおいて該振動発生部30の直上がその周囲と比較して最も高く隆起するように、振動発生部30によって曲げられる。一方、パネル10の下部は、表示部20が取り付けられていることにより、振動発生部30が取り付けられたパネル10の上部に比して振動しにくくなる。そのため、パネル10の下部において、パネル10の下部が振動することによる音漏れが低減できる。
電子機器1は、パネル10の振動により音を伝える。ここで、振動発生部30が筐体60に取り付けられ、筐体60を振動させる場合と比較すると、使用者が電子機器を手に取って通話する際に、筐体60の振動により電子機器を落としてしまう可能性がある(通常、使用者は電子機器の筐体部分を持って通話を行う)。一方、パネル10を振動させる電子機器1ではこのような問題が起き難い。尚、それ程振動が大きくない場合は、勿論、振動発生部30が筐体60に取り付けられていても良い。
ところで、上述した電子機器には、更なる音圧特性の向上が望まれている。そこで本出願人は、更なる音圧特性の向上を可能とするような該電子機器の構造を検討した。以後、検討がなされた電子機器の構造について詳述する。
図5は、本発明の実施形態に係る電子機器1の詳細な構成を示す図である。図5(a)は正面図、図5(b)は図5(a)におけるb−b線に沿った断面図、図5(c)は図5(a)におけるc−c線に沿った断面図である。図5(b)、(c)に示すように、振動発生部30は、接合部材70によりパネル10の上端部の近傍に接合されて、取り付けられている。また、パネル10は、該パネル10の下端部が、接合部材70により筐体60に接合されている。さらに、図示していないが、パネル10における左右の両端部の其々も接合部材70により筐体60に接合されている。しかしながら、パネル10の上端部は、筐体60に接合されていない。即ち、パネル10の上端部は自由端となっている。
本発明に係る電子機器1は、パネル10における、振動発生部30が取り付けられている側の端部が自由端となる構成を有している。従って、本発明に係る電子機器1は、振動発生部30の変位に起因する、パネル10の振動を阻害し難く、結果として、より高い音圧特性を実現することができる。
本発明に係る電子機器1は、図5(b)、(c)に示すように、パネル10の長手方向における、該パネル10に表示部20が取り付けられた領域と振動発生部30が取り付けられた領域との間の領域において、パネル10は、接合部材70により、筐体60に接合されて取り付けられている。このとき、パネル10と筺体60とは、パネル10の短手方向と平行な方向に沿って接合している。図5(b)において、パネル10は、接合部材70及び後述するFPC(フレキシブルプリント基板)80を介して筺体60に取り付けられている。図5(c)において、パネル10は、接合部材70を介して筺体60に取り付けられている。振動発生部30は、パネル10と筺体60とが接合された領域とパネル10の上端部との間に配置される。即ち、振動発生部30は、パネル10における、筐体60に取り付けられた面において、該パネル10と筐体60とが接合された領域よりも外側の領域に取り付けられる。
ここで、本発明に係る電子機器1の構成における、「パネル10における、振動発生部30が取り付けられている側の端部が自由端である」こととは、パネル10における、振動発生部30が取り付けられた側の端部と振動発生部30との間に、パネル10と筺体60との接合領域が配されていないことと定義される。以下に、「パネル10における、振動発生部30が取り付けられている側の端部が自由端である」ことの例を示す。
図6は、本発明に係る電子機器1において、パネル10と筺体60との接合領域(パネル10が接合部材70により筐体60に接合された領域)を説明するための複数の実施例を示す図である。図6は電子機器1の正面図を示している。本来、表示部20及び振動発生部30は、パネル10における電子機器1の内部側の面に取り付けられる(パネル10よりも、紙面の奥方向に配置される)ため、実線で示されるべきではないが、ここでは、図の理解を容易にするため、実線で示しており、パネル10と筺体60との接合領域のみを破線で示している(パネル10と筺体60との接合領域は、破線で囲まれた領域に相当する)。また、入力部40及びFPC80の図示を省略している。図6(a)〜(d)に示すように、本発明に係る電子機器1において、振動発生部30は、パネル10における、筐体60に取り付けられた面において、該パネル10と筐体60との接合領域よりも外側の領域に取り付けられる。図6(a)では、パネル10と筺体60との接合領域が、パネル10の上端部(パネル10における振動発生部30が取り付けられた側の端部)における、振動発生部30に対向した領域以外の領域に配されている。図6(a)では、パネル10と筺体60との接合領域は、パネル10の短手方向における、振動発生部30の両隣に配されている。図6(b)では、パネル10と筺体60との接合領域が、パネル10の上端部に配されず、左右の両側端に沿って配されている。しかし、厳密には、パネル10の左右の両側端に配された接合領域は、パネル10の短手方向において所定の幅を有していることから、該幅の分だけパネル10の上端部に接合領域が配されている。図6(b)に示す構成は、図6(a)に示す構成と比較して、振動発生部30の周囲における、パネル10と筐体60との接合領域が小さいため、パネル10の振動の阻害をより低減できる。図6(c)では、パネル10に振動発生部30が取り付けられた領域における、パネル10の上端部とは反対側の端辺、及び該短辺を含む仮想線よりも外側には、パネル10と筺体60との接合領域が配されていない。図6(c)に示す構成は、即ち、パネル10に振動発生部30が取り付けられた領域における、パネル10の上端部から最も離れた位置よりも、内側にてパネル10と筐体60との接合領域(パネル10と筐体60とが接合部材70により取り付けられた領域)を有する。図6(c)に示す構成は、図6(a)、(b)に示す構成と比較して、振動発生部30の周囲における、パネル10と筐体60との接合領域が小さいため、パネル10の振動の阻害をより低減できる。なお、本発明では、表示部20と振動発生部30との間において、該パネル10の短手方向に沿って、パネル10と筐体60とを接合させる必要は必ずしもない。図6(d)に示すような、パネル10の下端部及び左右の両端部のみが筐体60に接合された構成であっても良い。しかしながら、表示部20と振動発生部30との間において、該パネル10の短手方向に沿って、パネル10と筐体60とを接合させることにより、パネル10は、表示部40の四辺の周囲において筐体60に支持されるため、より強固に筐体60から支持される。このような構成により、例えば、パネル10が、接触を検出するタッチパネルである場合、使用者がパネル10を押圧したときに、該パネル10が撓む恐れを軽減し、結果として使い勝手が良くなる。
再度、図5を参照すると、本発明に係る電子機器1において、振動発生部30には、FPC80が電気的に接続されている。FPC80は、例えば、ポリイミド等の樹脂からなるフィルム状の絶縁体(ベースフィルム)の上に導体層(信号線)を形成し、さらに、導体層における、端子部に該当する領域を除いて、絶縁体が被覆された構成を有している。FPC80は、振動発生部30(本実施例では略平板状の圧電素子とする)におけるパネル10に取り付けられる面とは反対側の面に取り付けられる。FPC80の端子部と圧電素子に備えられた電極端子部とは、例えば、ACP(Anisotropic Conductive Paste)接続又はACF(Anisotropic Conductive Film)接続と呼ばれる手法によって接着される。このとき、FPC80は、圧電素子における、パネル10に取り付けられた面とは反対側の面の略全体を覆っている。FPC80は、前述したように、ポリイミド等の樹脂を基材としているため、圧電素子の面を覆った場合に、外部からの衝撃を吸収する緩和部材としての役割も果たし、圧電素子の破損を防止することができる。なお、必ずしも圧電素子の面の全体を覆う必要はなく、面の一部を覆っている構成であっても良い。
図5(b)に示すように、FPC80は、振動発生部30(圧電素子)に取り付けられた領域から延設して、例えば、図示していない制御部50に電気的に接続され、制御部50から印加される電気信号を振動発生部30に伝達する。FPC80における、振動発生部30(圧電素子)に取り付けられた領域から延設された領域(延設部)は、該延設部の一部の領域が接合部材70によりパネル10に接合され、該接合された領域とは反対側の領域が接合部材70により筐体60に接合されている。また、ここで使用される接合部材70は、例えば、防水性を有した両面テープあるいは接着剤である。
本発明に係る電子機器1では、パネル10の上端部が筐体60に接合していないため、図5(b)、(c)に示すように、パネル10の上端部と筐体60との間には隙間が生じている。ここで、電子機器1に防水構造を付与したい場合には、この隙間、即ち、パネル10における、表示部20が取り付けられた領域と振動発生部30が取り付けられた領域との間の領域を、防水性を有した接合部材70を介して、筐体60と接合させることで、更なる内部への水の浸入を防止することができる。即ち、本発明に係る電子機器1では、パネル10と筐体60とを接合部材70によって接合させることにより、パネル10と筐体60との接合領域よりも外側に配置される振動発生部30を除き、電子機器1の内部に配置された部材に対する防水構造の付与が可能となる。しかしながら、図5(b)に示すように、接合部材70の間には、前述したFPC80の延設部が介在した部分がある。この部分において、FPC80の延設部は、第1接合部材によりパネル10に接合され、一方で、第2接合部材により筐体60に接合されている。このとき、FPC80の延設部、第1接合部材、及び第2接合部材は、互いに密着し、隙間を生じないことが、防水構造を付与する上で重要となる。即ち、FPC80の延設部は、第1接合部材及び第2接合部材により密着されて覆われている構成としても良い。このような構成を実現するための手段として、第1接合部材もしくは第2接合部材の少なくとも一方に、変形自在なシリコーンゲルからなるシートを用い、延設部、第1接合部材、及び第2の接合部材を隙間なく、互いに密着させ、パネル10及び筐体60に接合させる方法がある。
また、FPC80の延設部を、第1接合部材及び第2接合部材により密着されて覆われている構成とするための別の方法として、FPC80の延設部と第1又は第2の接合部材との間に生じる隙間に、流動性を有した接着剤を充填することで、該隙間を無くす方法と採っても良い。
また、電子機器1の防水構造(振動発生部30への防水は除く)を付与する上記方法以外の方法として、例えば、FPC80の延設部をリング状の部材の中空部分に挿通し、該挿通した状態でリング状の部材を挟み、リング状の部材を介して、パネル10及び筐体60に接合させる方法がある。より具体的には、リング状のゴム部材(グロメット)の中空部分にFPC80の延設部を挿通した状態で、グロメットと延設部とが密着するように、グロメットを挟み、パネル10と筺体60との隙間にグロメットを圧入する。このような方法により、パネル10、筐体60、及びFPC80との間に隙間を生じることなく、即ち、電子機器1の内部と外部とを連通させる隙間を生じることなく、パネル10と筐体60とを接合させることが可能であるため、防水構造を付与することができる。
上述の方法により、振動発生部30を除き、電子機器1に防水構造を付与することができる。しかしながら、振動発生部30とFPC80とが接続された領域、即ち、振動発生部30の電極端子部及びFPC80の端子部が外部に露出しているため、該露出した領域は防水構造を有しない。従って、振動発生部30とFPC80とが接続された領域に水等の導電性の液体が付着した場合には、該領域が短絡する恐れがある。そのため、振動発生部30とFPC80とが接続された領域においても防水構造を付与する(或いは露出した領域を絶縁性物質で覆う)必要がある。そこで、例えば、振動発生部30の電極端子部及びFPC80の端子部に対して、シリコーン、ウレタン、フッ素等の絶縁物質がコーティングされた、即ち、FPC80における、振動発生部30に接続された領域を、絶縁性の樹脂部材によって覆われた構成とすることが好ましい。
本発明に係る電子機器1の構成において、FPC80は、該FPC80の一端が振動発生部30に接合され、一方で、FPC80の延設部の一部が接合部材70を介して、パネル10及び筐体60に接合されている。FPC80における、振動発生部30に接合された領域と、パネル10及び筐体60に接合された領域との間の領域が撓むことなく、張った状態であると、振動発生部30の変位によるパネル10の振動が生じた場合に、パネル10の振動によりFPC80が破断する、或いは、FPC80によってパネル10の振動を阻害される恐れがある。従って、FPC80における、振動発生部30に接合された領域と、パネル10及び筐体60に接合された領域との間の領域を予め、十分に撓ませた状態で、該FPC80を振動発生部30、パネル10及び筐体60に接合させた構成とすることが好ましい。
図7は、本発明の構成の第1の変形例を示した図である。図7(a)は正面図、図7(b)は図7(a)におけるb−b線に沿った断面図、図7(c)は図7(a)におけるc−c線に沿った断面図、である。本変形例は、図5に示した構成と比較して、パネル10の形状が異なる。本変形例におけるパネル10は、図7に示すように、電子機器1の背面と平行に配置され、表示部20が取り付けられる略板状の板状部101と該板状部101の一端から延設された湾曲部102とを有している。パネル10は、板状部101の上端から湾曲部102が延設され、電子機器1の上側面の一部を構成している。振動発生部30は、接合部材70によりパネル10の湾曲部102に接合されて、取り付けられている。また、パネル10は、板状部101の下端部が、接合部材70により筐体60に接合されている。さらに、図示していないが、板状部101における左右の両端部の其々も接合部材70により筐体60に接合されている。しかしながら、パネル10の上端部、即ち、湾曲部102の端部は、筐体60に接合されていない。即ち、パネル10の湾曲部102の端部は自由端となっている。
第1の変形例における電子機器1は、パネル10における、振動発生部30が取り付けられている側の端部が自由端となる構成を有している。従って、本発明に係る電子機器1は、パネル10の振動を阻害し難く、結果として、より高い音圧特性を実現することができる。
パネル10は、パネル10の長手方向において、該パネル10に表示部20が取り付けられた領域と振動発生部30が取り付けられた領域との間の領域において、筐体60と接合されている。図7に示すように、パネル10の板状部101と筺体60とが接合部材70により接合されている。図7(b)において、パネル10は、接合部材70及びFPC80を介して筺体60に取り付けられている。図7(c)において、パネル10は、接合部材70を介して筺体60に取り付けられている。このとき、パネル10と筺体60とは、パネル10の短手方向と平行な方向に沿って接合されている。このような構成により、パネル10は、表示部40の四辺の周囲において筐体60に支持されるため、強固に筐体60から支持される。このような構成により、例えば、パネル10が、接触を検出するタッチパネルである場合、使用者がパネル10を押圧したときに、パネル10に掛る圧力によって該パネル10が撓む恐れを軽減し、結果として使い勝手が良くなる。なお、表示部20と振動発生部30との間において、該パネル10の短手方向に沿って、パネル10と筐体60とを接合させる必要は必ずしもなく、パネル10の下端部及び左右の両端部のみが筐体60に接合された構成であっても良い。
図8は、本発明の構成の第2の変形例を示した電子機器1の断面図である。本変形例は、第1の変形例に示した構成と比較して、パネルの形状が異なる。本変形例におけるパネル10は、電子機器1の背面と平行に配置され、表示部20が取り付けられる第1の面103と、パネル10の一端が屈曲し、第1の面と一体となって形成される第2の面104と、を有している。振動発生部30は、接合部材70により、パネル10の第2の面104に接合されて、取り付けられている。また、パネル10における第1の面103の下端部は、接合部材70により筐体60に接合されている。さらに、図示していないが、第1の面103における左右の両端部の其々も接合部材70により筐体60に接合されている。しかしながら、パネル10の上端部、即ち、第2の面の端部は、筐体60に接合されていない。即ち、パネル10の第2の面104は自由端となっている。
第2の変形例における電子機器1は、パネル10における、振動発生部30が取り付けられている側の端部が自由端となる構成を有している。このような構成により、本発明に係る電子機器1は、第2の面の端部が筐体60に接合されている場合と比較して、パネル10の振動を阻害し難く、結果として、より高い音圧特性を実現することができる。
図9は、本発明の構成の第3の変形例を示した電子機器1の断面図である。本変形例における電子機器1は、第1ケース部材61と第2ケース部材62とにより筐体が構成される。電子機器1は、パネル10と第1ケース部材61と第2ケース部材62とが、電子機器1の厚み方向において、積み重なって接合している。パネル10は、第1の変形例と同様にして、板状部101と湾曲部102とから成っており、湾曲部102には、振動発生部30が取り付けられている。また、湾曲部102の端部は筐体に接合していない、即ち、自由端となっているため、パネル10の振動を阻害し難い構成となっている。尚、本変形例におけるパネル10の形状はこれに限定されず、これまでに開示してきた種々の形状の内の何れかの形状を有していても良い。
振動発生部30における、パネル10に取り付けられた面とは反対の面にはFPC80が取り付けられている。FPC80は、振動発生部30に取り付けられた領域から延設して制御部50に接続されており、制御部50から印加される電気信号を振動発生部30に伝える。ここで、FPC80における、振動発生部30に取り付けられた領域から延設した領域(延設部)において、該領域の一部が第1ケース部材61に接合され、該接合された領域とは反対側の領域が第2ケース部材62に接合されている。このとき、FPC80は、接合部材70により第1ケース部材61及び第2ケース部材62に接合され、FPC80と接合部材70とは密着している。FPC80と接合部材70との密着構造は、前述した方法と同様にして達成される。
本発明を諸図面や実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、パネル10と筺体60とを接合させるための接合部材70として、両面テープあるいは接着剤を例示したが、これらを単独で用いるのではなく、併用しても良い。この場合、例えば、筐体60に対して両面テープを貼り、その上に、両面テープよりも接着力が高い接着剤を塗布し、パネル10を接合させても良い。両面テープ及び接着剤は互いに強固に接着し、ひいては、パネル10と筐体60とを強固に接合することができる。また、両面テープ上に接着剤を塗布するのではなく、両面テープを一部繰り抜いて、形成された空間に接着剤を充填させて、パネル10と筐体60とを接合させる構成としても良い。ここで使用される接着剤としては、例えば、非加熱型硬化性の接着剤であり、また、空気中の水分(湿気)と反応して硬化する湿気硬化型弾性接着剤である。湿気硬化型弾性接着剤は、例えば、シリル基を含む特殊ポリマーを主成分としている。
また、本発明の構成の第1の変形例において、表示部20がパネル10の板状部101に取り付けられる構成を示したが、これに限定されず、表示部20の一部または全体がパネル10の湾曲部102に取り付けられていても良い。さらには、本発明の構成の第2の変形例において、表示部20がパネル10の第1の面103に取り付けられる構成を示したが、これに限定されず、表示部20の一部または全体がパネル10の第2の面104に取り付けられていても良い。
また、振動部材30は、接合部材70によりパネル10に取り付けられる構成を示したが、これに限定されず、パネル10と振動部材30との間に中間部材を設けても良い。中間部材は、例えば、振動部材30として圧電素子を用いた場合に、該圧電素子の変形が過剰になることを低減する部材であり、また、例えば、外力が圧電素子に伝達されることを緩和する部材である。中間部材は、例えば、ゴムまたはシリコーン等の弾性素材、ポリアミド系樹脂から成る。ポリアミド系樹脂には、例えば、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とから得られる結晶性の熱可塑性樹脂から成り、強度および弾性に富むレニー(登録商標)がある。このようなポリアミド系樹脂は、それ自体をベースポリマーとして、ガラス繊維、金属繊維または炭素繊維等により強化された強化樹脂であってもよい。ポリアミド系樹脂に対するガラス繊維、金属繊維または炭素繊維等の付加量に応じて、強度および弾性が適宜調整される。上記のような強化樹脂は、例えば、ガラス繊維、金属繊維または炭素繊維等を編みこんで形成された基材に樹脂を含浸させ、硬化させて形成される。強化樹脂は、液状の樹脂に細かく切断された繊維片を混入させた後に硬化させて形成されるものであってもよい。強化樹脂は、繊維を編みこんだ基材と樹脂層とを積層したものであってもよい。
また、振動部材30におけるパネル10に取り付けられた面とは反対側の面をFPC80で覆う構成とすることにより、振動部材30に対する外部からの外力の伝搬をFPC80が緩和することを説明したが、本発明においては、FPC80とは別に、外部からの衝撃を緩和可能な緩和部材を設けても良い。緩和部材は、例えば、上述した中間部材と同様な材質を有し、板形状に加工され、振動部材30或いはFPC80上に取り付けられる。また、振動部材30の上に紫外線硬化性樹脂等を滴下し、固化させることによって緩和部材を設けても良い。
また、本発明に係る電子機器1は、パネル10に振動発生部30が取り付けられ、振動発生部30の変位によって、音を発生させるものとして説明したが、音を発生させる部材はパネル10に限定されない。電子機器1を構成し、略平板形状を一部に有する部材であれば、音を発生させることができる。このような部材として、例えば、電子機器1の筐体を構成するケース部材や、或いは、ポリカーボネートから成り、ケース部材に着脱自在に取り付けられるバッテリーカバー等が挙げられる。例えば、略矩形状の底面と、底面の4辺の端部から垂直に延設された側面部とからなる箱形状のケース部材において、振動発生部30は、ケース部材の底面に取り付けられる。このとき、振動発生部30の変位によりケース部材の底面が振動し、音を発生させる。ケース部材の底面における、振動発生部30が取り付けられている側の端部を自由端にするためには、該底面の端部と側面部との間に切り欠きを設ければ良い(底面の端部と、側面部とが一体となっていない構成とすれば良い)。尚、切り欠きは、ケース部材の底面における、振動発生部30が取り付けられている側の端辺と側面部との間にのみ設けられても良いし、加えて、底面における、振動発生部30が取り付けられている側の端辺と直交する2つの端辺の其々と側面部との間の一部(または全部)に設けられていても良い。また、ケース部材の底面における、振動発生部30が取り付けられている側の端辺の一部に切り欠きが設けられる構成であっても良い。これらの構成により、振動発生部30の変位に起因する、ケース部材の振動を阻害し難く、より高い音圧特性を実現することができる。
また、本発明の実施例は、スマートフォンを例にとって説明してきたが、これに限られない。操作部側筐体と表示部側筐体とが、折り畳み可能に連結された携帯電話機であっても良い。また、操作部側筐体と表示部側筐体とが重ね合った状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式や、操作部側筐体と表示部側筐体との重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転(ターン)式や、操作部側筐体と表示部側筐体とが一つの筐体に配置され連結部を有さない型式(ストレートタイプ)でもよい。また、携帯電話機は、開閉及び回転可能ないわゆる2軸ヒンジタイプであってもよい。