JP6362916B2 - 単結晶育成方法及び単結晶育成装置 - Google Patents

単結晶育成方法及び単結晶育成装置 Download PDF

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Description

本発明は、単結晶育成方法及び単結晶育成装置に関する。
従来、EFG(Edge-defined film-fed growth)法により、ルツボ内で原料を溶融して得られる融液から単結晶を成長させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によれば、ダイのスリットを通して毛細管現象により融液をダイの上面に供給し、種結晶と接触させ、その後、種結晶を引き上げて単結晶を育成する。
また、FZ(Floating Zone)法により原料棒を加熱することにより得られる溶融帯から単結晶を成長させる技術が知られている。さらに、特殊な例として、1個以上の穴の開いた薄い金属板又は金属網であるメルト支持板を用いたFZ法も知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2によれば、メルト支持板を介して溶融帯を原料棒側から種結晶側に供給し、種結晶を回転させながら引き下げることにより単結晶を育成する。メルト支持板を用いることにより、融液帯を安定に保持すると同時に、メルト量を安定に制御することが可能になり、FZ法へネッキング工程を導入することができる。
特開2006−312571号公報 特開平6−211599号公報
しかし、特許文献1に記載されるようなEFG法によれば、毛細管現象を利用して融液をダイのスリット内を上昇させているため、ダイの高さが融液の上昇可能な高さに制限され、それに伴ってルツボの深さも制限される。このため、大型の単結晶を育成する場合には、大量の融液を収容するためにルツボの面積を広げざるを得ず、単結晶育成装置が大型化してしまう。
また、育成する単結晶の種類によっては、融液とルツボの反応を抑えるために、イリジウムや白金等の原価及び加工費の高い材料がルツボの材料として求められるため、ルツボの大型化による費用の増加が大きい。
また、特許文献2に記載されるようなメルト支持板を用いるFZ法によれば、ルツボが用いられないため、ルツボのサイズやコストに起因する問題は生じないものの、FZ法の性質やメルト支持板の構造から、大型の結晶の育成は困難である。特許文献2によれば、メルト支持板を加熱することにより融液を広げ、単結晶の口径を大きくしているが、メルト支持板の厚さは最大でも0.3mmと薄い。このため、育成中にメルト支持板が変形するような大型の結晶(例えば口径が2インチ以上)を育成することはできない。特許文献2に開示された単結晶のうちの最大の単結晶の径は12.5mmである。
また、特許文献2には、融液の温度が高くなると融液の表面張力が下がり、メルト支持板には融液を広げる働きがあるので、メルト支持板に相当する結晶が得られるようになることが記載されているが、融液が広がると高さ方向の中間部がくびれるため、結晶径の増加には限界があり、大型の結晶を育成することはできない。
また、特許文献2に記載された方法によれば、種結晶と焼結体原料の距離が小さいため、融液の原料側の領域の温度と種結晶側の領域の温度に差を設けることができない。このため、単結晶の育成速度に対する融液の生成速度を上げることができず、融液の供給を途切れさせないためには、低速で単結晶を育成しなければならない。
したがって、本発明の目的は、大型の単結晶を安価に育成することのできる単結晶育成方法及び単結晶育成装置を提供することにある。
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、[1]〜[6]の単結晶育成方法を提供する。
[1]貫通孔を有し、前記貫通孔の第1の開口部及び第2の開口部がそれぞれ第1の面と第2の面に設けられたダイを加熱する工程と、焼結体原料と前記ダイを第1の方向に沿って相対的に近づけて、加熱された前記ダイの前記第1の面に接触させて溶融させ、生成された融液を前記貫通孔の前記第1の開口部から前記第2の開口部まで毛細管現象により移動させる工程と、前記第2の開口部に達した前記融液に種結晶を接触させ、前記種結晶と前記ダイを第2の方向に沿って相対的に離すことにより単結晶を育成する工程と、を含む、単結晶育成方法。
[2]前記第1の面側の部分の温度が前記第2の面側の部分の温度よりも高くなるように前記ダイを加熱する、前記[1]に記載の単結晶育成方法。
[3]前記第1の面は、前記第1の開口部を底部に含む凹型形状を有する、前記[1]又は[2]に記載の単結晶育成方法。
[4]前記貫通孔はスリットである、前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の単結晶育成方法。
[5]前記第2の方向は、鉛直方向よりも水平方向に近い、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の単結晶育成方法。
[6]前記第1の方向と第2の方向が異なる、前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の単結晶育成方法。
また、本発明の他の態様は、上記目的を達成するために、下記[7]〜[12]の単結晶育成装置を提供する。
[7]貫通孔を有し、前記貫通孔の第1の開口部及び第2の開口部がそれぞれ第1の面と第2の面に設けられたダイと、前記ダイを加熱する加熱部と、単結晶の原料である焼結体原料を保持した状態で、前記焼結体原料を前記第1の面に近づける方向と離す方向に移動することができる原料保持部と、前記単結晶の種結晶を保持した状態で、前記種結晶を前記第2の面に近づける方向と離す方向に移動することができる種結晶保持部と、を有する単結晶育成装置。
[8]前記加熱部は、前記第1の面側の部分の温度が前記第2の面側の部分の温度よりも高くなるように前記ダイを加熱することができる、前記[7]に記載の単結晶育成装置。
[9]前記第1の面は、前記第1の開口部を底部に含む凹型形状を有する、前記[7]又は[8]に記載の単結晶育成装置。
[10]前記貫通孔はスリットである、前記[7]〜[9]のいずれか1項に記載の単結晶育成装置。
[11]前記種結晶保持部の移動できる方向は、鉛直方向よりも水平方向に近い、前記[7]〜[10]のいずれか1項に記載の単結晶育成装置。
[12]前記第1の開口部の開口面に垂直な方向と前記第2の開口部の開口面に垂直な方向が異なる、前記[7]〜[11]のいずれか1項に記載の単結晶育成装置。
本発明によれば、大型の単結晶を安価に育成することのできる単結晶育成方法及び単結晶育成装置を提供することができる。
図1は、第1の実施の形態に係る単結晶育成装置の垂直断面図である。 図2は、第1の実施の形態に係る単結晶の育成工程を表す概念図である。 図3は、第1の実施の形態に係る第1の面の面積が第2の面の面積より大きいダイの形状の一例を表す垂直断面図である。 図4は、第1の実施の形態に係る第1の面が凹型形状を有するダイの形状の一例を表す垂直断面図である。 図5(a)、(b)は、第2の実施の形態に係る単結晶を水平方向に育成する様子を表す概念図である。 図6(a)は、焼結体原料が移動する方向と単結晶の育成時に種結晶が移動する方向とが直交する場合の、単結晶を育成する様子を表す概念図である。図6(b)は、2つの第1の開口部が対向して設けられている場合の、単結晶を育成する様子を表す概念図である。 図7は、第3の実施の形態に係る単結晶の育成工程を表す概念図である。
〔第1の実施の形態〕
(単結晶育成装置の構成)
図1は、第1の実施の形態に係る単結晶育成装置1の垂直断面図である。この単結晶育成装置1は、貫通孔11を有するダイ10と、ダイ10を加熱する加熱部12と、育成する単結晶20の原料である焼結体原料21を保持する原料保持部13と、単結晶20の種結晶22を保持する種結晶保持部14と、これらの周囲に設置された断熱材15とを有する。
ダイ10において、貫通孔11の第1の開口部11a及び第2の開口部11bが設けられる面をそれぞれ第1の面10a及び第2の面10bとする。図1に示される例においては、第1の面10a及び第2の面10bは、それぞれダイ10の下面及び上面である。
貫通孔11は、例えば、スリットや、単数又は複数の小径の穴である。貫通孔11がいずれの形状をとる場合であっても、融液23を毛細管現象により内部を移動させることのできるような幅や径を有する。図1に示される例においては、貫通孔11はスリットである。
ダイ10の材料には、耐熱性に優れ、融液23と反応しにくい材料が用いられる。例えば、Gaの単結晶を単結晶20として育成する場合は、ダイ10の材料として、Irやサファイアが用いられる。また、LiNbOの単結晶を単結晶20として育成する場合は、ダイ10の材料として、Ptが用いられる。また、サファイアの単結晶を単結晶20として育成する場合は、ダイ10の材料として、Ir、W、又はMoが用いられる。また、ルチル型のTiOの単結晶を単結晶20として育成する場合は、ダイ10の材料として、Irが用いられる。また、Li又はBaBの単結晶を単結晶20として育成する場合は、ダイ10の材料として、グラファイトが用いられる。
加熱部12は、例えば、抵抗加熱式のヒーター、誘導加熱式のコイル、レーザー加熱式のレーザー発信器、又はランプ加熱式のランプである。加熱部12は、第1の面10a側の部分の温度が第2の面10b側の部分の温度よりも高くなるようにダイ10を加熱することができるものであることが好ましい。
原料保持部13は、焼結体原料21を保持した状態で、焼結体原料21をダイ10の第1の面10aに近づける方向と離す方向に移動することができる。図1に示される例においては、原料保持部13は鉛直上下方向に移動することができる。
焼結体原料21は、例えば、前駆体粉末を圧縮成形したものを焼結させることにより得られる。以下に、一例として、酸化ガリウムからなる焼結体原料21を作製する場合の具体例を示す。
まず、粉末の酸化ガリウムを金型内に充填し、プレス機を用いて10kgf/mm程度の圧力を掛けて圧縮成形する。金型は、例えば、6インチ×310mm×18mmの焼結体原料21が得られるような寸法を有する。次に、圧縮成形した酸化ガリウム粉末を1450℃、6時間の条件で焼成する。その後、得られた焼結体原料21の体積と質量から、比重を計算する。焼結体原料21の比重は、例えば、4.24である。
なお、複数の小型の焼結体原料を並べて焼結体原料21として用いてもよい。このため、例えば、大型の前駆体を圧縮成形することが困難な場合であっても、焼結体原料21を得ることができる。
また、焼結体原料21に導電型不純物等の不純物を添加する場合、焼結体原料21の長さ方向に不純物濃度の勾配を設けてもよい。これにより、不純物の種類により、不純物濃度が均一な焼結体原料21を用いると単結晶20中の不純物濃度に育成方向の勾配が生じる場合に、単結晶20中の不純物濃度を均一化することができる。例えば、単結晶20中の不純物濃度が種結晶から離れるほど高くなる場合、焼結体原料21の不純物濃度の高い方の端部からダイ10の第1の面10aに接触させて溶融させることにより、単結晶20中の不純物濃度を均一化することができる。
なお、不純物濃度の異なる複数の焼結体原料を並べて、長さ方向に不純物濃度の勾配を有する焼結体原料21として用いてもよい。
種結晶保持部14は、種結晶22を保持した状態で、種結晶22をダイ10の第2の面10bに近づける方向と離す方向に移動することができる。図1に示される例においては、種結晶保持部14は鉛直上下方向に移動することができる。
(単結晶の育成工程)
図2は、第1の実施の形態に係る単結晶20の育成工程を表す概念図である。なお、図2においては、単結晶育成装置1の加熱部12、原料保持部13、種結晶保持部14、及び断熱材15の図示を省略する。
まず、図2(a)に示されるように、加熱部12を用いてダイ10を加熱し、ダイ10の温度を、焼結体原料21が溶融する温度まで2deg/minで上昇させる。
ここで、結晶の育成雰囲気は、ダイ10の材質や、加熱部12による加熱方式等により適宜選択される。例えば、ダイ10がイリジウム又はサファイアからなり、加熱方式がカーボンを発熱体とする抵抗加熱方式である場合は、Ar等の不活性ガス雰囲気、又は微量のCOを含む不活性ガスの雰囲気が用いられる。
また、例えば、ダイ10がイリジウムからなり、加熱方式が二ケイ化モリブデン若しくはランタンクロマイトを発熱体とする抵抗加熱方式、ランプ加熱方式、又はレーザー加熱方式である場合は、Ar、N等の不活性ガス雰囲気、又は微量のCOを含む不活性ガスの雰囲気が用いられる。
また、例えば、ダイ10がサファイアからなり、加熱方式が二ケイ化モリブデン若しくはランタンクロマイトを発熱体とする抵抗加熱方式、ランプ加熱方式、又はレーザー加熱方式である場合は、大気、酸素雰囲気、Ar、N等の不活性ガス雰囲気、又は微量のO若しくはCOを含む不活性ガスの雰囲気が用いられる。
次に、図2(b)に示されるように、焼結体原料21をダイ10に向かう方向D1に移動させて、加熱されたダイ10の第1の面10aに接触させて溶融させ、生成された融液23を貫通孔11の第1の開口部11aから第2の開口部11bまで毛細管現象により移動させる。図2(b)に示される例では、焼結体原料21の移動する方向D1は鉛直上方向である。なお、焼結体原料21をダイ10に接触させた後にダイ10を加熱してもよい。また、ダイ10を焼結体原料21に近づけてもよい。すなわち、焼結体原料21とダイ10を方向D1に平行な方向に沿って相対的に近づければよい。
次に、図2(c)に示されるように、第2の開口部11bに達した融液23に種結晶22を接触させ、種結晶22をダイ10から離れる方向D2に移動させることにより単結晶20を育成する。図2(c)に示される例では、種結晶22の育成時の種結晶22の移動する方向D2は、鉛直上方向である。なお、ダイ10を種結晶22から離してもよい。すなわち、種結晶22とダイ10を方向D2に平行な方向に沿って相対的に離せばよい。
具体的には、例えば、種結晶22を速度10mm/minで下降させて融液23に接触させ、速度20mm/hで種結晶22を引き上げて、単結晶20の育成を開始する。育成開始後、単結晶20中の転位の発生を防ぐために、ネッキングを行ってもよい。融液23の供給速度は、単結晶20の育成開始直後は1mm/hとして、その後、単結晶20のネッキングの状況に合わせて調整する。ただし、ネッキングを行う場合、その後の肩広げ工程において単結晶20が双晶化するおそれがある。
ネッキングが終了した後、0.5deg/minでダイ10の温度を下げ、単結晶20の肩広げを行う。この時、ダイ10側の融液23の厚さが0.5mmになるように種結晶22の引き上げ速度を調整する。肩広げが終了した後、融液23の供給速度を27.8mm/hにする。このとき、ダイ10側の融液23の厚さが増加する場合は、供給速度を調整して増加を抑える。なお、例えば、焼結体原料21の比重が4.24である場合、酸化ガリウムの固体の比重が5.9であるため、融液23の供給速度を“育成速度×5.9/4.24”以上にしなければ、供給が間に合わなくなる。
定型部(肩広げ部の下の幅が一定の部分)の長さが150mmになるまで単結晶20を育成した後、融液23から切り離す(テールカットする)。その後、2deg/minでダイ10を冷却する。
上記の単結晶20を育成する工程においては、焼結体原料21が融解して融液23が生成される(固体から液体への相転移が生じる)際に吸熱が起こるために、ダイ10の第1の面10a側の部分の温度が低下し、反対に、融液23が結晶化して単結晶20が育成される(液体から固体への相転移が生じる)際に発熱が起きるために、ダイ10の第2の面10b側の部分の温度が増加する。
ダイ10の第2の面10b側の部分の温度に対する第1の面10a側の部分の温度が小さすぎると、単結晶20の育成速度に対する焼結体原料21からの融液23の生成速度が小さくなり、第2の開口部11bへの融液23の供給が途切れるおそれがある。
このため、本実施の形態において、融液23を第2の開口部11bへ安定して供給するため、単結晶20の育成速度に対する焼結体原料21からの融液23の生成速度を適正な大きさに設定するための手段を用いることが好ましい。
このような手段の1つとして、第1の面10a側の部分の温度が第2の面10b側の部分の温度よりも高くなるようにダイ10を加熱する手段を用いることができる。
第1の面10a側の部分の温度が第2の面10b側の部分の温度よりも高くなるようにダイ10を加熱することにより、上述のような吸熱反応と発熱反応によるダイ10の温度の変化を相殺し、単結晶20の育成速度に対する焼結体原料21からの融液23の生成速度を適正な大きさに設定することができる。これにより、融液23の供給を途切れさせることなく単結晶20を高速成長させることもできる。
また、焼結体原料21の密度(単位体積あたりの質量)を大きくする手段を用いてもよい。焼結体原料21の密度を大きくすることにより、融液23の生成速度を大きくし、単結晶20の育成速度に対する焼結体原料21からの融液23の生成速度を適正な大きさに設定することができる。例えば、焼結体原料21の前駆体粉末を圧縮成形する際の圧縮率を大きくすることにより、焼結体原料21の密度を大きくすることができる。
さらに、ダイ10の第1の面10aの面積を第2の面10bの面積より大きくする手段を用いてもよい。ダイ10の第1の面10aの面積を第2の面10bの面積より大きくすることにより、単結晶20の育成速度に対する焼結体原料21からの融液23の生成速度を大きくし、単結晶20の育成速度に対する焼結体原料21からの融液23の生成速度を適正な大きさに設定することができる。また、第1の面10aの面積を大きくすることにより、焼結体原料21の面積も大きくすることができるため、焼結体原料21の長さを短くすることができる。このため、単結晶育成装置1の焼結体原料21の長さ方向の大きさを小さくすることができる。
図3は、第1の面10aの面積が第2の面10bの面積より大きいダイ10の形状の一例を表す垂直断面図である。図3に示される例では、貫通孔11はスリットであり、第1の開口部11aの長手方向に直交するダイ10の断面が、凸形状を有する。
上述の単結晶20の育成速度に対する焼結体原料21からの融液23の生成速度を適正な大きさに設定するための手段については、複数の異なる手段を併用してもよい。
なお、ダイ10の第1の面10aは、第1の開口部11aを底部に含む凹型形状を有してもよい。第1の面10aがこのような形状を有することにより、焼結体原料21と第1の面10aとの間の融液23が保持される空間が大きくなるため、融液23の第2の開口部11bへの供給が途切れにくくなる。
図4は、第1の面10aが凹型形状を有するダイ10の形状の一例を表す垂直断面図である。図4に示される例では、貫通孔11はスリットであり、第1の開口部11aの長手方向に直交するダイ10の断面における第1の面10aの形状が、底部に第1の開口部11aを有するV字形状である。
また、第2の面10bが円形であってもよい。この場合、種結晶22を移動方向を軸として回転させながらダイ10から離れる方向に移動させることにより、円柱状の単結晶20を育成することができる。なお、この場合に用いられる種結晶保持部14は、種結晶22を保持した状態で、移動方向を軸として回転することができる。
(単結晶基板の製造工程)
次に、育成した単結晶20から単結晶基板を製造する方法の一例について述べる。
まず、例えば、厚さが18mmの単結晶20を育成した後、単結晶育成時の熱歪緩和と電気特性の向上を目的とするアニールを行う。雰囲気は窒素雰囲気が好ましいが、アルゴンやヘリウム等の他の不活性雰囲気でもよい。アニール保持温度は1400〜1600℃の温度が好ましい。保持温度でのアニール時間は6〜10時間程度が好ましい。
次に、種結晶22と単結晶20の分離を行うため、ダイヤモンドブレードを用いて切断を行う。まず、カーボン系のステージに熱ワックスを介して単結晶20を固定する。カーボン系ステージに固定された単結晶20を切断機にセッティングし、切断を行う。ブレードの粒度は#200〜#600(JISB4131による規定)程度であることが好ましく、切断速度は毎分6〜10mmくらいが好ましい。切断後は、熱をかけてカーボン系ステージから単結晶20を取外す。
次に、超音波加工機やワイヤー放電加工機を用いて単結晶20の縁を丸形に加工する。また、縁の所望の場所にオリエンテーションフラットを形成することも可能である。
次に、マルチワイヤーソーにより、丸形に加工された単結晶20を1mm程度の厚さにスライスし、単結晶基板を得る。この工程において、所望のオフセット角にてスライスを行うことができる。ワイヤーソーは固定砥粒方式のものを用いることが好ましい。スライス速度は毎分0.125〜0.3mm程度が好ましい。
次に、加工歪緩和、及び電気特性向上、透過性向上を目的とするアニールを単結晶基板に施す。昇温時には酸素雰囲気でのアニールを行い、昇温後に温度を保持する間は窒素雰囲気に切替えてアニールを行う。温度を保持する間の雰囲気はアルゴンやヘリウム等の他の不活性雰囲気でも良い。保持温度は1400〜1600℃が好ましい。
次に、単結晶基板のエッジに所望の角度にて面取り(べベル)加工を施す。
次に、ダイヤモンドの研削砥石を用いて、所望の厚さになるまで単結晶基板を研削する。砥石の粒度は#800〜1000(JISB4131による規定)程度であることが好ましい。
次に、研磨定盤とダイヤモンドスラリーを用いて、所望の厚さになるまで単結晶基板を研磨する。研磨定盤は金属系やガラス系の材質のものが好ましい。ダイヤモンドスラリーの粒径は0.5μm程度が好ましい。
次に、ポリシングクロスとCMP(Chemical Mechanical Polishing)用のスラリーを用いて、原子レベルの平坦性が得られるまで単結晶基板を研磨する。ポリッシングクロスはナイロン、絹繊維、ウレタン等の材質のものが好ましい。スラリーにはコロイダルシリカを用いることが好ましい。CMP工程後の単結晶基板の主面の平均粗さはRa0.05〜0.1nm程度である。
なお、単結晶基板に厚みが必要ない場合は、単結晶20を厚さ方向に肩を広げずに育成し、単結晶基板を切り出してもよい。
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、単結晶20の育成方向や、ダイ10の構成において第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略又は簡略化する。
本発明においては、単結晶20の原料である焼結体原料21が固体であるため、ダイ10との位置関係が限定されない。これにより、単結晶20を任意の方向に成長させることができる。例えば、種結晶保持部14を種結晶22を保持した状態で鉛直方向よりも水平方向に近い方向に移動させ、単結晶20を育成することができる。
図5(a)、(b)は、単結晶20を水平方向に育成する様子を表す概念図である。この場合、水平方向を向いたダイ10の第1の面10aに焼結体原料21を接触させて融液23を生成し、第2の開口部11bに達した融液23に種結晶22を接触させ、種結晶22を水平方向にダイ10から離すことにより単結晶20を育成する。なお、ダイ10を種結晶22から離してもよい。すなわち、種結晶22とダイ10を方向D2に平行な方向に沿って相対的に離せばよい。図5(a)、(b)に示される例では、焼結体原料21の移動方向D1及び単結晶20の育成時の種結晶22の移動方向(単結晶20の育成方向)D2が水平方向である。
なお、例えば、Li、BaB等の単結晶は、水平ブリッジマン法等の水平方向の育成方法により、結晶品質の高いものを育成できることが知られている。
また、焼結体原料21の移動方向D1と単結晶20の育成時の種結晶22の移動方向(単結晶20の育成方向)D2が異なっていてもよい。すなわち、貫通孔11の第1の開口部11aの開口面と第2の開口部11bの開口面が平行でなくてもよい。言い換えると、第1の開口部11aの開口面に垂直な方向と第2の開口部11bの開口面に垂直な方向が異なる。
図6(a)は、焼結体原料21が移動する方向D1と単結晶20の育成時に種結晶22が移動する方向D2とが直交する場合の、単結晶20を育成する様子を表す概念図である。図6(a)に示される例では、第1の面10aと第2の面10bが隣り合う直方体のダイ30が用いられる。ダイ30においては、第1の開口部11aの開口面と第2の開口部11bの開口面が直交する。
この場合、水平方向を向いたダイ30の第1の面10aに焼結体原料21を接触させて融液23を生成し、鉛直上方向に向いた第2の開口部11bに達した融液23に種結晶22を接触させ、種結晶22を鉛直上方向に引き上げることにより単結晶20を育成する。焼結体原料21が移動する方向D1は水平方向であり、単結晶20の育成時に種結晶22が移動する方向D2は鉛直上方向である。なお、ダイ30を鉛直下方向に引き下げてもよい。すなわち、種結晶22とダイ10を方向D2に平行な方向に沿って相対的に離せばよい。
さらに、ダイ30は、複数の第1の開口部11aを有してもよい。この場合、複数の焼結体原料21から融液23を生成することができる。この場合、単数の焼結体原料21を用いる場合と比較して、個々の焼結体原料21のサイズを小さくすることができる。
図6(b)は、2つの第1の開口部11aが対向して設けられている場合の、単結晶20を育成する様子を表す概念図である。この場合、水平方向を向いた2つの第1の面10aにそれぞれ焼結体原料21を接触させて融液23を生成し、鉛直上方向に向いた第2の開口部11bに達した融液23に種結晶22を接触させ、種結晶22を鉛直上方向に引き上げることにより単結晶20を育成する。なお、ダイ30を鉛直下方向に引き下げてもよい。すなわち、種結晶22とダイ10を方向D2に平行な方向に沿って相対的に離せばよい。
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態は、単結晶20の育成時にネッキング及び肩広げを行わない点において第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略又は簡略化する。
(単結晶の育成工程)
図7は、第3の実施の形態に係る単結晶20の育成工程を表す概念図である。なお、図7においては、単結晶育成装置1の加熱部12、原料保持部13、種結晶保持部14、及び断熱材15の図示を省略する。
本実施の形態において用いる種結晶22は、融液23と接触させる面の面積がダイ10の第2の面10bの面積とほぼ等しい。育成時に肩広げを行うことなく、幅の広い単結晶20を得ることができる。
まず、図7(a)に示されるように、加熱部12を用いてダイ10を加熱し、ダイ10の温度を、焼結体原料21が溶融する温度まで2deg/minで上昇させる。
次に、図7(b)に示されるように、焼結体原料21をダイ10に向かう方向D1に移動させて、加熱されたダイ10の第1の面10aに接触させて溶融させ、生成された融液23を貫通孔11の第1の開口部11aから第2の開口部11bまで毛細管現象により移動させる。なお、焼結体原料21をダイ10に接触させた後にダイ10を加熱してもよい。また、ダイ10を焼結体原料21に近づけてもよい。すなわち、焼結体原料21とダイ10を方向D1に平行な方向に沿って相対的に近づければよい。
図7(a)〜(c)に示される例では、焼結体原料21を鉛直上方向に移動させて、加熱されたダイ10の第1の面10aに接触させる。
次に、図7(c)に示されるように、第2の開口部11bに達した融液23に種結晶22を接触させ、種結晶22をダイ10から離れる方向D2に移動させることにより単結晶20を育成する。なお、ダイ10を種結晶22から離してもよい。すなわち、種結晶22とダイ10を方向D2に平行な方向に沿って相対的に離せばよい。
図7(a)〜(c)に示される例では、種結晶22を鉛直下方向に移動させて、第2の開口部11bに達した融液23に接触させ、その後、種結晶22を鉛直上方向に移動させて、単結晶20を育成する。
具体的には、例えば、種結晶22を速度10mm/minで下降させて融液23に接触させ、速度20mm/hで種結晶22を引き上げて、単結晶20の育成を開始する。本実施の形態では、単結晶20のネッキング及び肩広げを行わない。
融液23の供給速度は、単結晶20の育成開始直後から27.8mm/hとする。ダイ10側の融液23の厚さが増加する場合は、供給速度を調整して増加を抑える。なお、例えば、焼結体原料21の比重が4.24である場合、酸化ガリウムの固体の比重が5.9であるため、融液23の供給速度を“育成速度×5.9/4.24”以上にしなければ、供給が間に合わなくなる。
定型部の長さが150mmになるまで単結晶20を育成した後、融液23から切り離す。その後、2deg/minでダイ10を冷却する。
本実施の形態によれば、ネッキングや肩広げを行わずに単結晶20を成長させることにより、単結晶20の双晶化を効果的に抑えることができる。なお、本実施の形態の単結晶育成に、第2の実施の形態のダイ30を用いてもよい。
(実施の形態の効果)
上記の実施の形態によれば、貫通孔11を有するダイ10、30を用いて、ルツボを用いずに固体原料である焼結体原料21から単結晶20を育成するため、大型の単結晶20を安価に得ることができる。また、第2の実施の形態において示したように、単結晶20の育成方向、ダイ10における第1の開口部11aと第2の開口部11bの配置、第1の開口部11aの数等が自由であるため、単結晶育成装置1の設計の自由度が大きい。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
また、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
1…単結晶育成装置、10、30…ダイ、10a…第1の面、10b…第2の面、11…貫通孔、11a…第1の開口部、11b…第2の開口部、12…加熱部、13…原料保持部、14…種結晶保持部、20…単結晶、21…焼結体原料、22…種結晶

Claims (12)

  1. 貫通孔を有し、前記貫通孔の第1の開口部及び第2の開口部がそれぞれ第1の面と第2の面に設けられたダイを加熱する工程と、
    焼結体原料と前記ダイを第1の方向に沿って相対的に近づけて、加熱された前記ダイの前記第1の面に接触させて溶融させ、生成された融液を前記貫通孔の前記第1の開口部から前記第2の開口部まで毛細管現象により移動させる工程と、
    前記第2の開口部に達した前記融液に種結晶を接触させ、前記種結晶と前記ダイを第2の方向に沿って相対的に離すことにより単結晶を育成する工程と、
    を含む、単結晶育成方法。
  2. 前記第1の面側の部分の温度が前記第2の面側の部分の温度よりも高くなるように前記ダイを加熱する、
    請求項1に記載の単結晶育成方法。
  3. 前記第1の面は、前記第1の開口部を底部に含む凹型形状を有する、
    請求項1又は2に記載の単結晶育成方法。
  4. 前記貫通孔はスリットである、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の単結晶育成方法。
  5. 前記第2の方向は、鉛直方向よりも水平方向に近い、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の単結晶育成方法。
  6. 前記第1の方向と第2の方向が異なる、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の単結晶育成方法。
  7. 貫通孔を有し、前記貫通孔の第1の開口部及び第2の開口部がそれぞれ第1の面と第2の面に設けられたダイと、
    前記ダイを加熱する加熱部と、
    単結晶の原料である焼結体原料を保持した状態で、前記焼結体原料を前記第1の面に近づける方向と離す方向に移動することができる原料保持部と、
    前記単結晶の種結晶を保持した状態で、前記種結晶を前記第2の面に近づける方向と離す方向に移動することができる種結晶保持部と、
    を有する単結晶育成装置。
  8. 前記加熱部は、前記第1の面側の部分の温度が前記第2の面側の部分の温度よりも高くなるように前記ダイを加熱することができる、
    請求項7に記載の単結晶育成装置。
  9. 前記第1の面は、前記第1の開口部を底部に含む凹型形状を有する、
    請求項7又は8に記載の単結晶育成装置。
  10. 前記貫通孔はスリットである、
    請求項7〜9のいずれか1項に記載の単結晶育成装置。
  11. 前記種結晶保持部の移動できる方向は、鉛直方向よりも水平方向に近い、
    請求項7〜10のいずれか1項に記載の単結晶育成装置。
  12. 前記第1の開口部の開口面に垂直な方向と前記第2の開口部の開口面に垂直な方向が異なる、
    請求項7〜11のいずれか1項に記載の単結晶育成装置。
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