JP6362494B2 - 表面に導電層と絶縁層との双方が形成されたセラミック基板の複数枚が積層された積層セラミック基板の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明における表面に導電層と絶縁層との双方が形成されたセラミック基板の複数枚が積層された積層セラミック基板を製造する方法は、従来のフォトリソグラフィー技術を用いた方法とは全く異なり、真空含浸という簡単な処理であるため、安価にセラミック基板が積層された部品が製造できる。
なお、導電層を有するセラミック基板が積層され、異なるセラミック基板間の導通が貫通孔を介して行われる部品に、積層チップインダクタ(積層チップコイルともいう)や積層誘電体フィルターなどのチップ部品や、多層プリント基板がある。この貫通孔の機能から、貫通孔をビアホールと呼ぶ(ビア、バイアホールとも呼ばれる)。本発明は、こうしたビアホールを有する積層されたセラミック基板からなる積層セラミック基板の製造に係わる技術である。
いっぽう、積層チップインダクタや積層誘電体フィルターなどのチップ部品や多層プリント基板においては、導電層を有するセラミック基板が積層され、積層された基板間の導通が貫通孔を介して行われる。このため、貫通孔をビアホールと呼ぶ。これら部品のさらなる小型化と多層化とに伴い、ビアホールの直径は15μmに近い微細化が要求され、微細加工が可能なフォトリソグラフィー技術を用いて、ビアホールに導電層と絶縁層とが形成されている。しかし、ビアホールの微細化の要求に伴い、フォトリソグラフィーの各工程における加工精度の向上が要求され、なかんずく、マスキングの工程における加工精度向上は困難を伴い、加工精度を向上するには新たな課題が発生する。
また、ビアホールの微細化に伴い、ビアホール用のパッドの微細化と、パッドに繋がる導電パターンの薄層化と線幅の狭幅化とが要求される。いっぽう、セラミック基板の導電層の形成には導電性ペーストを用い、ビアホールの導電層の形成には感光性導電性ペーストないしは感光性絶縁性ペーストを用い、これらペーストをスクリーン印刷する。導電性ペーストないしは絶縁性ペーストは、金属粉ないしは金属酸化物粉が有機化合物のビヒクル中に分散した構成からなるため、導電パターンないしは絶縁パターンの薄層化と狭幅化とが進むほど、連続した導電経路ないしは絶縁経路が形成しにくくなり、金属粉ないしは金属酸化物粉の大きさの制約で薄層化と狭幅化とに限界がある。さらに、金属粉が燒結する際とセラミックの粉体が燒結する際に空隙が形成され、導電層の薄層化と狭幅化が進むほど、空隙によって導電層が剥離しやすくなる。また、セラミック基板の薄層化が進むほど、空隙によって脆性の性質を持つセラミック基板にクラックが入りやすくなる。
しかし、ビアホールを有する絶縁層を導体層上に作製する場合、基材の上に配置された導体層および感光性絶縁性ペーストに対して、遮光部を有するフォトマスクを介して光線を照射した際に、光線が導体層で反射・散乱し、散乱光が遮光部に入り込み、遮光部の一部まで硬化反応が進んでしまう。露光後、現像液を噴射することにより遮光部の感光性絶縁性ペーストを除去するが、もともと深部にいくほど除去が困難であることに加え、遮光部の一部で硬化反応が進んでいることからさらに除去が困難になり、下穴径が上穴径に比べて小さくなり、先細りのビアホールが形成される。このように現在のフォトリソグラフィー技術の解像度では、導体層上に、微細なビアホールを有する絶縁層を形成する場合、導体層による光線の反射・散乱の影響により、ビアホールが貫通せずにオープン不良となるなど不具合が生じる。
この技術は、マスキングに関わる問題を解決する手段として反射防止膜を追加した。しかし、フォトリソグラフィー技術を用いたビアホールの形成には、前記したように、非常に多くの複雑な処理が必要になり、さらに、マスキングに関わる問題を解決するために、反射防止膜の形成する複数の処理と、その後、反射防止膜を除去する処理が必要となる。この結果、ビアホールの形成だけでも多大な加工費用がかかる。
すなわち、最初に、基板の表面に感光性絶縁性ペーストを印刷し、乾燥させ、この後、露光させ、薄い絶縁層を形成し、これを複数回繰り返して所定の厚みの絶縁層を得る。次に、絶縁層の上に反射防止膜を、ビアホールに求められる加工精度に応じた厚み精度で塗布する。さらに、ビアホールに要求される形状精度で加工されたフォトマスクを載せ、フォトマスクに光を照射させる。この後、現像液に浸漬し、遮光された未硬化の絶縁性ペーストを除去する。さらに洗浄を繰り返して乾燥させ、ようやくビアホールを有する絶縁層ができる。この後、ビアホールを充填するとともに、絶縁層の上に導電層を形成するために、感光性導電性ペーストを印刷し、その後乾燥させる。その後、フォトマスクを載せ、露光する。さらに、現像液に浸漬し、遮光された未硬化の導電性ペーストを除去する。さらに、洗浄を繰り返して乾燥させ、ようやくビアホールが導体で埋められた導電層ができる。1枚の基板に複数個のビアホールを形成するためには、前記した反射防止膜の形成、絶縁層の形成、導体層の形成を繰り返す。最後に、基板の表面に感光性絶縁性ペーストを印刷し、乾燥させ、この後に露光させ、薄い絶縁層を形成し、これを複数回繰り返して所定の厚みの絶縁層を得る。こうしてようやく、未焼成の積層体が出来上がる。この後、加熱して反射防止膜を除去させ、さらに、セラミック粉体を焼結することで、ビアホールを有する積層セラミック電子部品が出来上がる。
しかしながら、セラミックの焼結温度が、硫黄で処理したニッケル粉末の焼結開始温度よりさらに200℃以上は高く、この温度に一定時間保持してセラミック粉体の焼結を行う。このため、ニッケル粉末の焼結によってニッケル粉末が占有していた体積が収縮し、また、セラミック粉体が焼結する際に体積が収縮し、導電層とセラミックの多結晶体との間に空隙が形成される。この空隙よって、導電層が多結晶体から剥離し、脆性の性質を持つセラミック多結晶体にクラックが入る。さらに、硫化ニッケルないしは硫酸ニッケルの熱分解によって生成された硫化物が残留し、この積層セラミック電子部品を実装した電子回路を長期間使用した際に、残留物が電子回路を腐食する要因となる。
しかしながら、扁平形状のニッケル微粒子であっても、セラミックの焼結時にニッケルの焼結が進行し、ニッケル粒子が占有していた体積が収縮する。また、セラミックが焼結する際にも体積が収縮する。これによって、導電層と多結晶体との間に空隙が形成され、導電層の剥離現象とセラミック多結晶体のクラック現象とをもたらす。また、ニッケル微粒子を扁平方向に揃えてペーストに分散させることは困難で、印刷膜においては、ニッケル微粒子は扁平方向に揃って配向せず、ランダムに配向する。このため、導電性ペーストをグリーンシートに印刷し、焼結によって導電層を形成する製法においては、扁平形状の金属微粒子を用いることによる導電層の薄層化と狭幅化の効果は得られない。
つまり、セラミック粉体を焼結する温度が、金属粉の焼結開始温度より著しく高く、この温度に一定時間保持することで、セラミック粉体の焼結が進むため、金属粉の焼結が進んで体積が確実に収縮する。また、セラミック粉体を焼結する際にも体積が収縮し、導電層とセラミック基板との間に空隙が形成される。いっぽう、気体の体積は、圧力に反比例し、絶対温度に比例するとのボイルシャルルの法則が成り立つ。例えば温度が100℃上昇すると、気体の体積は1.4倍にまで増大する。従って、空隙は温度変化に応じて体積変化を繰り返し、導電層とセラミック基板とに、圧縮応力ないしは引張応力が繰り返し加えられる。この結果、導電層がセラミック基板から剥離する、あるいは、脆性の性質を持つセラミック基板にクラックが入るという問題を引き起こす。
従って、金属粉を原料とする導電性ペーストで導電層を形成する際に、金属粉の焼結に伴う体積の収縮が起こらなければよいが、体積の収縮は金属の固相拡散に基づく金属固有の現象であり、金属粉の焼結に依って導電層を形成する上では避けられない。このため、金属粉が焼結する際に収縮した体積を埋める微細な物質が現れれば、導電層とセラミック基板との間に空隙が形成されない。このため、第一の課題は、金属粉が焼結する際に収縮した体積を埋める微細な物質が現れる、つまり、導電性ペーストが導電層を形成する際に微細な物質が現れる、画期的な導電性ペーストを実現することで解決できる。
また、セラミック粉体を焼結する際にも体積が収縮して空隙が生成される。この体積の収縮も、セラミック粉末粒子間の界面拡散反応に基づく現象で、セラミック粉体を焼結する上では避けられない。このため、セラミック粉体を焼結する際にも、収縮した体積を埋める微細な物質が現れれば、導電層とセラミック基板との間に空隙が形成されない。従って、第二の課題は、セラミック粉体が焼結する際に、収縮した体積を埋める微細な物質が現れる、画期的な導電性ペーストを新たに実現することで解決できる。
さらに、セラミックグリーンシートの表面は、焼成前と焼成後の双方において、ミクロンレベルの凹凸をもつ。この表面の凹凸によって、セラミック基板と導電層との間に空隙が形成される。導電層の薄層化と狭幅化が進むほど、この空隙によって導電層の剥離が引き起こしやすくなる。また、セラミック基板の薄層化が進むほど、セラミック基板にクラックが発生し易くなる。このため、導電性ペーストの一部と、導電性ペーストが導電層を形成する際に収縮した体積を埋める微細な物質との双方が、セラミックグリーンシートの表面の凹部を埋めればよい。従って、第三の課題は、導電性ペーストの一部と、導電性ペーストが導電層を形成する際に収縮した体積を埋める微細な物質との双方が、セラミックグリーンシートの表面の凹部を埋める、画期的な導電性ペーストを新たに実現することで解決できる。
また、セラミックグリーンシートの焼成後において、セラミック基板の表面の凹部に、導電層の一部と、導電性ペーストが導電層を形成する際に収縮した体積を埋める微細な物質との双方が入り込めば、セラミック基板の表面の凹部に空隙が形成されない。このため第四の課題は、導電層の一部と、導電性ペーストが導電層を形成する際に収縮した体積を埋める微細な物質との双方が、セラミックグリーンシートの焼成後のセラミック基板の表面の凹部を埋める、画期的な導電性ペーストを新たに実現することで解決できる。
これら4つの課題が同時に解決できれば、導電層の材料は焼結時の固相拡散速度が遅いニッケルに制約されず、ニッケルより自己拡散定数が大きいが、導電性がニッケルより優れた銅や銀によって、さらには、導電性と耐酸化性と耐食性に優れた合金によって導電層が形成できるという付随する効果も得られる。
以上に説明したように、フォトリソグラフィーとは異なる全く新たな方法でビアホールの導電層が形成でき、従来の導電性ペーストとは異なる全く新たな材料構成からなる導電性ペーストで導電層が形成できれば、前記した課題の全てが根本的に解決でき、ビアホールを有する積層されたセラミック基板からなる部品の小型化と多層化が加速できる。
また、第二の課題は、金属粉を有機化合物のビヒクル中に分散した導電性ペーストを用いることで起きた。このため、従来の導電性ペーストと全く異なる材料構成からなるペースト材料で導電層を形成しない限り、この課題は解決できない。さらに、導電性ペーストが導電層を形成する際と、セラミック粉体が焼結する際に、収縮した体積を埋める微細な物質が現れ、さらに、セラミックグリーンシートの焼成前において、導電性ペーストの一部と微細な物質との双方が表面の凹部を埋め、焼成後においては、導電層の一部と微細な物質との双方が表面の凹部を埋めれば、導電層の剥離とセラミック基板のクラックが根本的に防げる。このような全く新規な材料構成からなる導電性ペースト材料で導電層を形成する技術が強く求められている。
さらに、セラミックグリーンシートの表面に、金属酸化物粉を有機化合物のビヒクル中に分散した従来の絶縁性ペーストを用いて、導電パターンを除く表面に絶縁層を形成する場合は、絶縁性ペーストからの有機化合物の気化によって第一の空隙が形成され、セラミックグリーンシートの表面の凹部によって第二の空隙が形成され、セラミック粉体の焼結によって第三の空隙が形成される。従って、第三の課題は、このような空隙を埋める微細な物質が、絶縁層を形成する前後に現れることである。このため、前記した導電性ペーストと同様に、全く新規な材料構成からなる絶縁性ペースト材料で絶縁層を形成する技術が強く求められている。いっぽう、セラミック基板の導電層の幅が狭いほど、積層チップインダクタや積層誘電体フィルターなどのチップ部品が小さくなり、多層プリント基板においては、電子部品の高密度実装が可能になる。このため導電層の幅は狭いほど望ましい。従って、セラミック基板の表面に絶縁層を形成する場合は、表面の大部分は絶縁層で占められるため、空隙を埋める微細な物質が絶縁層を形成する前後に現れることが、積層されたセラミック基板のクラックの発生を防止する上で重要になる。
以上に説明したように、本発明が解決しようとする課題は、全く新規な技術によってビアホールと導電パターンが導通する導電層を形成し、また、全く新規な技術によって導電層と絶縁層を形成するペースト材料を新たに実現することにある。
複数枚からなるセラミックグリーンシートの各々に、導電パターンが形成される部位を除く表面を絶縁性ペーストでスクリーン印刷する第一の処理と、前記導電パターンの開始部と終端部とに相当する部位に貫通孔を設ける第二の処理と、前記セラミックグリーンシートの導電パターンの開始部に相当する部位に設ける貫通孔は、該セラミックグリーンシートの上に積層するセラミックグリーンシートの導電パターンの終端部に相当する部位に設ける貫通孔と互いに重なり合う位置に設け、前記セラミックグリーンシートの導電パターンの終端部に相当する部位に設ける貫通孔は、該セラミックグリーンシートの下に積層するセラミックグリーンシートの導電パターンの開始部に相当する部位に設ける貫通孔と互いに重なり合う位置に設ける第三の処理とからなるこれら3つの処理を、前記複数枚からなるセラミックグリーンシートの各々に第一工程の処理として行ない、
さらに、前記第一工程の処理がなされた複数枚のセラミックグリーンシートの各々について、セラミックグリーンシートの表面に形成された導電パターンが、該セラミックグリーンシートの上および下に重ね合わせられるセラミックグリーンシートの表面に形成された双方の導電パターンと、各々のセラミックグリーンシートに設けられた貫通孔に形成される導電層を介して互いに電気的に繋がる位置に、前記セラミックグリーンシート同士を上下に重ね合わせ、該重ね合わされたセラミックグリーンシートに圧縮荷重を加え、該セラミックグリーンシート同士を積層するこれらの処理を、第二工程の処理として連続して行ない、
さらに、前記積層したセラミックグリーンシートを真空含浸装置に配置し、この後、該真空含浸装置を真空排気し、前記積層したセラミックグリーンシートの最上層部の表面を除いた部位まで導電性ペーストが充填されるように、前記真空含浸装置に前記導電性ペーストを充填し、この後、該真空含浸装置を再度真空排気し、この後、該真空含浸装置を大気圧に戻す、ないしは、該真空含浸装置に圧縮空気を供給するこれらの処理を、第三工程の処理として連続して行ない、
さらに、前記積層したセラミックグリーンシートを前記真空含浸装置から取り出し、圧縮荷重を加えて前記セラミックグリーンシートを構成するセラミック粉体同士が燒結する温度まで昇温する第四工程の処理を行う、
これによって、前記積層したセラミックグリーンシートが積層されたセラミック基板になり、前記導電性ペーストが熱処理され、前記積層されたセラミック基板の各々の基板の表面に導電パターンからなる導電層を形成するとともに、前記積層されたセラミック基板の各々の基板の貫通孔に導電層を形成し、前記各々のセラミック基板の表面に形成された導電層が、前記各々のセラミック基板の貫通孔に形成された導電層を介して互いに電気的に導通し、前記絶縁性ペーストが熱処理され、前記各々のセラミック基板の表面に、前記導電パターンを除く部位に絶縁層を形成し、前記導電層と前記絶縁層との双方が表面に形成されたセラミック基板の複数枚が積層された積層セラミック基板が製造される、積層セラミック基板の製造方法である。
すなわち、第三工程の処理において、積層したセラミックグリーンシートを真空含浸装置に配置し、この後、真空含浸装置を真空排気する。さらに、積層したセラミックグリーンシートの最上層部の表面を除いた部位まで導電性ペーストを充填し、再度、真空含浸装置を真空排気し、導電性ペーストから気化した低沸点の有機化合物を排気する。これによって、導電パターンが形成される全ての空隙と貫通孔とは、真空に近い状態になる。この後、真空含浸装置を大気圧に戻すと、大気圧に近い差圧が空隙と貫通孔とに作用する。この差圧によって、高沸点の有機化合物と金属粉とになった導電性ペーストが最下部の貫通孔から浸透し、全ての空隙と全ての貫通孔とに浸透する。いっぽう、真空含浸される導電性ペーストの粘度が高い場合は、圧縮空気を真空含浸装置に供給すれば、大気圧より大きい差圧が空隙と貫通孔とに作用し、粘度の高い導電性ペーストが、全ての空隙と全ての貫通孔とに浸透する。なお、積層したセラミックグリーンシートの最上部のセラミックグリーンシートの表面に、導電性ペーストが付着して導電パターンが乱されることを回避するため、積層したセラミックグリーンシートの最上層部の表面を除いた部位まで導電性ペーストを真空含浸装置に充填した。
いっぽう、セラミックグリーンシートの表面にスクリーン印刷された絶縁性ペーストも真空排気の際に、低沸点の有機化合物が気化し、高沸点の有機化合物と金属酸化物粉とが残る。これによって、導電性ペーストが、積層したセラミックグリーンシートの繋ぎ目からセラミックグリーンシートの間隙に浸透できない。また、積層したセラミックグリーンシートの側面に導電性ペーストが付着するが、セラミックグリーンシートの表面に絶縁性ペーストが残存するため、異なる基板間における絶縁性が絶縁性ペーストで確保される。
この後、第四工程の処理において、圧縮荷重を加えて積層したセラミックグリーンシートを、セラミックグリーンシートを構成するセラミック粉体同士が燒結する温度まで昇温する。この際、最初に、導電性ペーストの高沸点の有機化合物が気化し、この後、セラミックグリーンシートの表面に形成された全ての空隙と全ての貫通孔とに充填された金属粉が燒結し、表面に形成された導電パターンからなる導電層同士が貫通孔の導電層を介して導通する。また、絶縁性ペーストの高沸点の有機化合物が気化し、この後、導電パターンが形成された以外の表面に、金属酸化物粉の集まりからなる絶縁層が形成され、セラミックグリーンシート同士の絶縁性が確保される。こうして積層されたセラミックグリーンシートの微細な間隙に、導電層と絶縁層の双方が形成され、導電層と絶縁層との厚みを同じ厚みにすれば、不要な空隙が形成されず、セラミック基板は脆性破壊されず、導電層は剥離しない。
さらに、昇温して、圧縮荷重を加えた状態でセラミック粉体を焼結する。この際、積層されたセラミック基板の微小な間隙に金属酸化物粉からなる絶縁層が隙間なく形成され、金属酸化物粉の集まりは脱落しない。いっぽう、最上部と最下部のセラミック基板に形成された金属酸化物粉の集まりは脱落するが、セラミック基板が絶縁体であるため、金属酸化物粉が脱落してもセラミック基板の絶縁性と導電パターンの導電性とが確保される。また、導電パターンからなる導電層を形成する焼結金属を介して、セラミック基板同士が互いに接合される。最後に、積層したセラミック基板を室温に戻し、加えた圧縮荷重を解除する。
なお、導電性ペーストが、金属粉の集まりを高沸点の有機化合物のバインダーと粘度を調整する低沸点の有機化合物とに分散させたペーストから構成され、絶縁性ペーストが、金属酸化物粉の集まりを高沸点の有機化合物のバインダーと粘度を調整する低沸点の有機化合物とに分散させたペーストから構成されても、前記したように真空含浸によって導電パターンからなる導電層と貫通孔の導電層とが同時に形成されるため、従来のペースト材料が使用できる。
以上に説明したように、本積層セラミック基板の製造方法によれば、真空含浸という極めて簡単な手段で、積層されたセラミック基板の表面の導電パターンからなる導電層と貫通孔の導電層が同時に形成され、導電パターン以外の表面に絶縁層が形成される。これによって、異なるセラミック基板同士の導電層の導通が貫通孔の導電層を介して行われ、つまり、ビアホールが形成され、絶縁層で基板間の絶縁性が確保される。さらに、セラミック基板同士の微細な間隙は、導電層と絶縁層とで充填され、不要な空隙が形成されず、セラミック基板は脆性破壊せず、また、導電層は剥離しない。また、従来のフォトリソグラフィーに比べると、極めて簡単な真空含浸の方法で、ビアホールに導電層が形成できる。また、直径が15μmの微細な貫通孔でもペースト材料が真空充填できる。このため、本積層セラミック基板の製造方法によって9段落と12段落で説明した第一の課題が解決できる。
また、本積層セラミック基板の製造方法に依れば、極めて簡単な6つの処理を連続して実施することで、表面に導電層と絶縁層とが形成されたセラミック基板が積層された積層セラミック基板が安価な費用で製造できる。
すなわち、第一の処理は、複数枚のセラミックグリーンシートの表面に、導電パターンが形成される部位を除く表面を絶縁性ペーストでスクリーン印刷し、また、導電パターンが形成される開始部と終端部とに相当する部位に貫通孔を設けるだけの処理である。第二の処理は、複数枚のセラミックグリーンシートの導電パターンの終端部に相当する貫通孔が、下に積層される複数枚のセラミックグリーンシートの導電パターンの開始部に相当する貫通孔に重なり、セラミックグリーンシートの導電パターンの開始部に相当する貫通孔が、上に積層されるセラミックグリーンシートの導電パターンの終端部に相当する貫通孔に重なるように、セラミックグリーンシート同士を重ね合わせ、圧縮荷重を加えて積層するだけの処理である。第三の処理は、第二の処理で製造した積層したセラミックグリーンシートを真空含浸装置内に配置するだけである。第四の処理は、真空含浸装置を真空排気し、積層したセラミックグリーンシートの最上層部の表面を除いた部位まで導電性ペーストが充填するように、真空含浸装置に導電性ペーストを充填するだけの処理である。第五の処理は、真空含浸装置を再度真空排気し、この後、真空含浸装置を大気圧に戻す、ないしは、真空含浸装置に圧縮空気を供給するだけの処理である。第六の処理は、積層したセラミックグリーンシートを真空含浸装置から取り出し、圧縮荷重を加えて熱処理するだけの処理である。このように、いずれの処理も極めて簡単な処理であり、セラミック基板間の導通が貫通孔を介して行われる積層されたセラミック基板からなる積層セラミック基板は安価な費用で製造できる。
前記した複数枚のセラミックグリーンシートの各々に実施する前記第一工程の処理が、同一形状からなる導電パターンの複数個が形成される部位を除く表面を、絶縁性ペーストでスクリーン印刷する第一の処理と、前記複数個の導電パターンの各々の導電パターンの開始部と終端部とに相当する部位に貫通孔を設ける第二の処理と、前記セラミックグリーンシートの複数の導電パターンの各々の導電パターンの開始部に相当する部位に設ける貫通孔が、該セラミックグリーンシートの上に積層するセラミックグリーンシートの複数の導電パターンの各々の導電パターンの終端部に相当する部位に設ける貫通孔と互いに重なり合う位置に設け、前記セラミックグリーンシートの複数の導電パターンの各々の導電パターンの終端部に相当する部位に設ける貫通孔が、該セラミックグリーンシートの下に積層するセラミックグリーンシートの複数の導電パターンの各々の導電パターンの開始部に相当する部位に設ける貫通孔と互いに重なり合う位置に設ける第三の処理とからなる第一工程の処理であり、
該第一工程の処理がなされた複数枚のセラミックグリーンシートの各々について、前記した第二工程の処理と第三工程の処理とを実施する、この後、積層したセラミックグリーンシートを、同一形状からなる導電パターンが各々のセラミックグリーンシートに形成されたセラミックグリーンシートが積層されたセラミックグリーンシートとして細断し、該細断された積層されたセラミックグリーンシートの集まりについて、前記した第四工程の処理を実施する、
これによって、同一形状からなる導電パターンが各々のセラミック基板に形成されたセラミック基板が積層された積層セラミック基板の複数個が同時に製造される積層セラミック基板の製造方法である。
つまり、絶縁性ペーストのスクリーン印刷で形成される導電パターンの幅は、10μm程度まで細線化できるため、1枚のセラミックグリーンシートに形成できる導電パターンの数は莫大な数になり、この導電パターンの数からなる莫大な数の積層セラミック基板が同時に製造でき、積層セラミック基板の製造単価は製造できる積層セラミック基板の数に応じて激減する。例えば、10cm×10cm程度のセラミックグリーンシートに、幅方向に100個の導電パターンを、長さ方向に100個の導電パターンを形成すれば、一万個の積層セラミック基板が同時に製造できる。また、10cm×100cm程度のセラミックグリーンシートに、幅方向に100個の導電パターンを、長さ方向に10,000個の導電パターンを形成すれば、百万個の積層セラミック基板が同時に製造できる。
すなわち、絶縁性ペーストのスクリーン印刷によって、10μm程度の細線を残して導電パターンを形成することが可能であり、1枚のセラミックグリーンシートに形成される導電パターンの数を莫大な数に増やすことが容易で、導電パターンの数が増えても、安価な絶縁性ペーストの使用量が増えるだけで、スクリーン印刷の費用は殆ど変わらない。また、セラミックグリーンシートを切断する専用の切断機を用いれば、積層したセラミックグリーンシートを、微細な積層したセラミックグリーンシートに細断することは容易である。さらに、セラミックグリーンシートの面積が大きくなっても、ドクターブレード法に基づいて製造するセラミックグリーンシートの製造費用はさほど増大せず、真空含浸の費用も殆ど変わらない。このため、同時に製造する積層セラミック基板の数が増えるほど、積層セラミック基板の製造単価が減る。
また、本積層セラミック基板の製造方法に依れば、極めて簡単な7つの処理を連続して実施することで、表面に導電層と絶縁層とが形成されたセラミック基板が積層された積層セラミック基板が、絶縁性ペーストのスクリーン印刷で形成される複数の導電パターンの数に応じて製造できるため、莫大な数の積層セラミック基板が同時に製造でき、積層セラミック基板の製造単価は複数の導電パターンの数に応じて激減する。
すなわち、複数枚のセラミックグリーンシートの各々に、セラミックグリーンシートの表面に形成される同一形状からなる複数の導電パターンの各々の導電パターンが、上および下に重ね合わせるセラミックグリーンシートの表面に形成される双方の同一形状からなる複数の導電パターンの各々の導電パターンと、貫通孔を介して互いに繋がる同一形状からなる複数の導電パターンが形成されるように、セラミックグリーンシートの表面に形成される前記した導電パターンの部位を除く表面を、絶縁性ペーストでスクリーン印刷し、また、前記した複数の導電パターンの各々の導電パターンの開始部と終端部とに相当する部位に貫通孔を設ける第一の処理と、セラミックグリーンシートの表面に形成される複数の導電パターンの各々の導電パターンが、上および下に重ね合わせるセラミックグリーンシートの双方の同一形状からなる複数の導電パターンの各々の導電パターンと、貫通孔を介して互いに繋がるように、セラミックグリーンシート同士を重ね合わせ、圧縮荷重を加えて積層する第二の処理と、積層されたセラミックグリーンシートを真空含浸装置に配置する第三の処理と、真空含浸装置を真空排気し、積層されたセラミックグリーンシートの最上層部の表面を除いた部位まで導電性ペーストが充填されるように、真空含浸装置に導電性ペーストを充填する第四の処理と、真空含浸装置を再度真空排気し、この後、真空含浸装置を大気圧に戻す、ないしは、真空含浸装置に圧縮空気を供給する第五の処理と、積層されたセラミックグリーンシートを真空含浸装置から取り出し、積層されたセラミックグリーンシートを、一つの導電パターンが一枚のセラミックグリーンシートの表面に形成され、同一形状の導電パターンが形成されたセラミックグリーンシートが積層されたセラミックグリーンシートとして細断する第六の処理と、細断された積層されたセラミックグリーンシートの集まりに圧縮荷重を加えて熱処理する第七の処理とからなり、これら7つの処理を連続して実施することで、表面に導電層と絶縁層とが形成された積層セラミック基板の複数個が同時に製造される製造方法である。
以上に説明したように、本積層セラミック基板の製造方法に依れば、積層セラミック基板が大量に製造できるため、積層セラミック基板の製造単価が激減できる。
すなわち、導電性ペーストを真空含浸する際に、2種類の有機金属化合物がアルコールに分子状態で分散された分散液から、沸点が低いアルコールが気化して脱気され、2種類の有機金属化合物の結晶が、微細な粉体として沸点が高い有機化合物中に析出し、懸濁液となる。この懸濁液に大気圧に近い差圧、ないしは、大気圧より大きい圧力差が作用し、これによって、懸濁液は導電パターンが形成される全ての空隙と全ての貫通孔とに隙間なく浸透する。
この後、積層したセラミックグリーンシートを真空含浸装置から取り出し、圧縮荷重を加えてセラミックグリーンシートを構成するセラミック粉体同士が燒結する温度まで昇温する。最初に、高沸点の有機化合物が気化し、セラミックグリーンシートからバインダーが気化する。有機化合物が気化すると体積が縮小するが、セラミックグリーシートには圧縮荷重が加えられているため、セラミックグリーンシート同士の表面の凸部がさらに接近し、表面の凹部と微細な間隙は、より微細な2種類の有機金属化合物の粉体の集まりで充填される。また、貫通孔においても、高沸点の有機化合物が気化して体積が縮小するが、ビアホール用のパッドが形成されるセラミックグリーンシート同士の狭い間隙から、2種類の有機金属化合物の粉体の一部が押し出され、貫通孔と積層したセラミックグリーンシートの微細な間隙とは、2種類の有機金属化合物の粉体の集まりで隙間なく充填される。
さらに温度を上げると、熱分解温度が相対的に低い有機金属化合物の熱分解が始まる。つまり、有機金属化合物を構成する有機酸の沸点を超えると、有機金属化合物は有機酸と金属ないしは金属酸化物に分解する。さらに昇温して有機酸を短時間で気化させると、10―100nmの大きさに入る金属微粒子の集まりないしは金属酸化物微粒子の集まりが析出する。
さらに温度を上げると、熱分解温度が相対的に高い有機金属化合物の熱分解が始まる。つまり、有機金属化合物を構成する有機酸の沸点を超えると、有機金属化合物は有機酸と金属酸化物ないしは金属に分解する。さらに昇温して有機酸を短時間で気化させると、10―100nmの大きさに入る金属酸化物微粒子の集まりないしは金属微粒子の集まりが析出する。
つまり、第一の有機金属化合物の熱分解が始まると、有機酸と金属(分子クラスターの状態にある)ないしは金属酸化物(分子クラスターの状態にある)とに分離し、比重が大きい金属ないしは金属酸化物は留まり、比重が小さい有機酸は金属ないしは金属酸化物の上に移動する。さらに温度が上がると、気化熱を奪って有機酸が気化し、第二の有機金属化合物の粉体の集まりを貫通して蒸発する。有機酸の気化が完了すると、金属ないしは金属酸化物は熱エネルギーを得て粒状の微粒子を形成して安定化し熱分解を終える。さらに温度が上がると、第二の有機金属化合物の熱分解が始まり、有機酸と金属酸化物ないしは金属とに分離し、有機酸が気化熱を奪って気化し、有機酸の気化が完了すると、金属酸化物ないしは金属は熱エネルギーを得て粒状の微粒子を形成して安定化し熱分解を終える。このように、2種類の有機金属化合物の熱分解温度が異なるため、金属微粒子と金属酸化物微粒子とは混在せず、分離した状態で析出する。この結果、積層したセラミックグリーンシート表面の凹部とセラミックグリーシート同士の微細な間隙に、微粒子の集まりの2重構造が形成される。なお、有機酸の気化によって体積が縮小するが、セラミックグリーシートには圧縮荷重が加えられているため、セラミックグリーンシートの表面の凸部がさらに接近し、表面の凹部と微細な間隙は、より微細な微粒子の2重構造で充填される。
いっぽう、熱分解で析出する金属微粒子は、不純物を持たない活性状態にあるため、粒状の微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりを形成する。これに対し、金属酸化物の微粒子同士は、金属結合ないしは共有結合しないため、金属酸化物の微粒子同士は結合しない。このため、応力が加わると金属酸化物微粒子が優先して移動する。従って、セラミックグリーンシートには常時圧縮荷重が加えられているため、積層したセラミックグリーンシート表面の凹部と微細な間隙とに空隙が形成されると、この空隙を埋めるように、10―100nmの大きさの金属酸化物微粒子が移動する。この結果、表面の凹部と微細な間隙は、2種類の微粒子からなる2重構造で充填される。
なお、貫通孔とビアホール用のパッドが形成されるセラミックグリーンシートの狭い間隙とは、微細な2種類の有機金属化合物の粉体の集まりで隙間なく充填されていた。この2種類の有機金属化合物が熱分解すると、セラミックグリーンシート同士の狭い間隙と貫通孔にも、微粒子の集まりの2重構造が同時に形成される。この際、析出する金属微粒子が金属酸化物より過多とすれば、貫通孔とセラミックグリーンシートの狭い間隙には、金属結合した金属微粒子の集まりが連続して形成され、貫通孔とビアホール用のパッドとが導通する。
なお、金属酸化物微粒子の集まりは、セラミックグリーンシート表面の凹部と微細な間隙とに発生する微細な空隙を埋める役割を担う。従って、金属酸化物微粒子は空隙を埋めるのに十分な量であればよく、金属微粒子の量に比べれば過小になる。このため、導電性ペーストにおける金属が析出する第一の有機金属化合物の量を、金属酸化物が析出する第二の有機金属化合物の量より過多とする。なお、金属酸化物微粒子の集まりが一定の体積を占有しても、金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとは、析出温度が異なるため分離して析出し、両者は混在しない。さらに、金属微粒子の集まりは金属結合して導電層を形成するため、金属酸化物微粒子が析出しても、導電層の形成の障害にならない。
さらに昇温して、一定の時間この高い温度に保持し、セラミック粉体を焼結する。つまり、セラミックグリーンシートを構成するセラミックの粉末粒子間の界面拡散反応が始まる温度に昇温すると、界面拡散が始まり、粉末粒子間の気孔が減少する。さらに、この温度に保持すると、粉末粒子間の気孔が消滅し、結晶粒が成長してセラミックの多結晶体が生成される。この後、室温まで徐冷して、圧縮荷重を解除する。
セラミックの多結晶体が生成される昇温過程において、金属微粒子は熱エネルギーを得て粒子の粗大化を進める。これに対し、金属酸化物は安定な物質であるため、いったん金属酸化物微粒子が析出した後は、金属酸化物微粒子は昇温によって変化しない。金属粒子の粗大化が進むと、金属結合で結合された金属微粒子の集まりに微小な空隙が形成されるが、この際、圧縮応力によって空隙が縮小され、応力を受けた金属酸化物微粒子が移動して縮小した空隙を埋める。さらに昇温すると、金属の拡散現象が起こり、粗大化された金属粒子同士が焼結して導電層を形成する。この際も、金属粒子間の気孔の減少と消滅とによって、空隙が形成されるが、圧縮応力によって空隙が縮小され、応力を受けた金属酸化物微粒子が移動して縮小した空隙を埋める。さらに、セラミック粉体の焼結が進むと、粉末粒子間の気孔の減少と消滅とによって、空隙が形成されるが、この際も圧縮応力によって空隙が縮小され、応力を受けた金属酸化物微粒子が移動して縮小した空隙を埋める。この結果、積層されたセラミック基板同士の間隙と表面の凹部とは、導電層と金属酸化物微粒子の集まりで埋め尽くされる。
いっぽう、貫通孔とビアホール用のパッドが形成されるセラミックグリーンシート同士の狭い間隙とを、連続して金属結合した金属微粒子の集まりが埋めたが、金属粒子の粗大化と焼結とによって体積が縮小するが、金属粒子の焼結によって金属の結晶粒同士が金属結合するため、貫通孔とビアホール用のパッドとの導通は、焼結した金属で保たれる。
なお、金属微粒子が粗大化し、金属の固相拡散で粗大化した金属粒子同士が焼結して導電層を形成するため、導電層の形状は平板状の単純な形状ではなく、析出した際の金属微粒子の集まりの形状が反映され、一部がセラミック多結晶体の凹部に入り込んだ3次元的な複雑な形状になるが、金属粒子同士の焼結によって連続した導電経路を形成する。
いっぽう、金属酸化物微粒子が形成された後においては、空隙が形成されると、圧縮応力によって空隙が縮小され、応力を受けた金属酸化物微粒子が移動して縮小した空隙を埋めるため、導電層は金属酸化物微粒子の集まりで常時囲まれ、これによって、雰囲気ガスの供給が制限されるため、導電層の酸化が進行しない。このため、大気雰囲気での焼成であっても、導電層の酸化は進行しない。また、金属酸化物微粒子が狭い間隙に隙間なく充填されるため、狭い間隙から金属酸化物微粒子が抜け落ちることはない。
以上に説明したように、本手段に依れば、導電層の形成とセラミック粉体の焼結に際して空隙が形成されるが、圧縮応力が常時加わっているため空隙が縮小され、空隙より微細な金属酸化物微粒子が移動して縮小した空隙を常に埋める。同様に、セラミック基板同士の間隙と表面の凹部に間隙が形成されると、より微細な金属酸化物微粒子が移動して空隙を埋める。このため、導電層がセラミック基板から剥離せず、脆性のセラミック基板にクラックが入ることはない。従って、導電層は焼結時の固相拡散速度が遅いニッケルに制限されず、ニッケルより自己拡散定数が大きいが導電性に優れた銅や銀で構成できる。また貫通孔と積層されたセラミック基板の表面の導電層とを連続して金属結合した焼結金属が形成され、積層されたセラミック基板間の導通が、貫通孔を介して行われる。さらに、導電層が金属酸化物微粒子で囲まれるため、雰囲気ガスの供給が制限され、大気雰囲気での焼成でも導電層の酸化は進行しない。また、金属酸化物は化学的にも安定な物質で、また金属酸化物微粒子が導電層に混在せず、導電層と分離した状態で存在するため、金属酸化物微粒子が導電層の剥離や腐食をもたらさない。
以上に説明したように、本手段に依れば、貫通孔の導電層とセラミック基板の表面の導電層とを導通させる導電層が同時に形成でき、さらに、全く新たな材料構成からなる画期的な導電性ペーストを用いることで、10段落で説明した4つの課題と12段落で説明した第二の課題が解決できる。
すなわち、カルボン酸金属化合物を構成するイオンの中で、金属イオンが最も大きい。従って、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンと共有結合するカルボン酸金属化合物においては、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断されて、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の沸点に応じた290−400℃の温度で全てのカルボン酸が気化して金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などの飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物がある。なお、窒素雰囲気での熱分解は、大気雰囲気に比べて40℃程度高温側で熱分解が完了する。
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物が析出する。例えばオレイン酸銅は、酸化銅Cu 2 Oと酸化銅CuOとが同時に析出し、銅に還元するための処理費用を要する。中でも酸化銅Cu 2 Oは、大気雰囲気より酸素ガスがリッチな雰囲気で一度酸化銅CuOに酸化させた後に、再度、還元雰囲気で銅に還元させる必要があるため、還元処理の費用がかさむ。
さらに、カルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、汎用的なカルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。また、原料となるカルボン酸は、有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であり、カルボン酸の沸点に応じた大気雰囲気の290−400℃の温度領域で金属が析出する。
従って、このようなカルボン酸金属化合物を、導電性ペーストの第一の有機金属化合物として用い、この導電性ペーストを積層したセラミックグリーンシートに真空含浸して熱処理すると、大きさが10−100nmの範囲に入る粒状の金属微粒子の集まりが析出して金属結合し、金属微粒子の集まりからなる導電層を形成する。
以上に説明したように、本手段におけるカルボン酸金属化合物は、17段落と18段落とに記載した導電性ペーストを構成する安価な第一の有機金属化合物である。
すなわち、同一のカルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を熱処理すると、カルボン酸の沸点において、複数種類のカルボン酸金属化合物は同時にカルボン酸と複数種類の金属とに分離され、更に昇温すると、カルボン酸の気化が完了した後に、カルボン酸金属化合物のモル濃度に応じて複数種類の金属が析出し、これらの金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため、析出した複数種類の金属から構成されるとともに、カルボン酸金属化合物のモル濃度に応じた組成割合からなる合金が生成される。
このような性質を持つ複数種類のカルボン酸金属化合物を、導電性ペーストの原料に用いると、20段落で説明した金属微粒子に代わって合金微粒子が析出し、この合金微粒子の集まりが金属結合した導電層が形成される。従って、本手段に依れば、金属に近い導電性を持ち、金属より酸化しにくく腐食しにくい合金によって導電層が形成でき、導電層の性能が著しく向上する。
すなわち、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって、金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、最も大きいイオンである金属イオンに酸素イオンが近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。これによって、金属イオンに配位結合する酸素イオンが、金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物は、カルボン酸金属化合物を構成するカルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、金属イオンと酸素イオンとの化合物である金属酸化物とカルボン酸とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に金属酸化物が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などがある。
カルボン酸金属化合物を、導電性ペーストの第二の有機金属化合物として用い、この導電性ペーストを積層したセラミックグリーンシートに真空含浸して熱処理すると、大きさが10−100nmの範囲に入る粒状の金属酸化物微粒子の集まりが析出する。
さらに、前記したカルボン酸金属化合物は、いずれも容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、汎用的なカルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させることで、カルボン酸金属化合物が合成される。また、原料となるカルボン酸は、有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であるため、大気雰囲気においては400℃程度の熱処理で金属酸化物が析出する。なお、窒素雰囲気での熱分解は、大気雰囲気に比べて40℃程度高温側で熱分解が完了する。
以上に説明したように、本手段におけるカルボン酸金属化合物は、17段落と18段落とに記載した導電性ペーストを構成する安価な第二の有機金属化合物になる。
従って、2種類の有機金属化合物のアルコール分散液に、前記したいずれかの有機化合物を混合すると、アルコール分散液より高い粘度を有する液状物質となって導電性ペーストが製造できる。この導電性ペーストを積層したセラミックグリーンシートに真空含浸して熱処理する。最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、さらに昇温すると、2種類の有機金属化合物が熱分解して金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりを析出し、積層されたセラミックグリーンシート同士の間隙と表面の凹部とが、微粒子の集まりの2重構造で埋め尽くされる。このため、本手段における有機化合物は、17段落と18段落とに記載した導電性ペーストの原料になる。
すなわち、有機金属化合物のアルコール分散液に、有機化合物を溶解ないしは混和させると、有機金属化合物のアルコール分散液より粘度が高まり、セラミックグリーンシートへのスクリーン印刷が可能になる。いっぽう、従来は、有機化合物のビヒクル中に密度が大きい金属酸化物粉を分散した絶縁性ペーストをスクリーン印刷するため、金属酸化物粉末がビヒクルと一体となって印刷されるための粘度が必要になる。さらに、ビヒクルが気化した後に、金属酸化物粉が互いに近接することで絶縁層が形成されるため、ビヒクル中の金属酸化物粉の分散割合が高く、絶縁性ペーストの粘度が高まる。このため、従来の絶縁性ペーストをスクリーン印刷しても、セラミックグリーンシートの表面の凹部に絶縁性ペーストは入り込めない。これに対し、本手段の絶縁性ペーストは、金属酸化物粉を含まない液状物質で構成されるため、従来における絶縁性ペーストより粘度は著しく低く、セラミックグリーンシート表面の微細な凹部にも絶縁性ペーストが入り込む。
次に、絶縁性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを重ね合わせ、圧縮荷重を加えて積層すると、セラミックグリーンシートの表面の凸部が互いに接近して重なり合う。この際、絶縁性ペーストの薄い膜状体にも荷重が加わり、膜状体はさらに表面の凹部に入り込み、表面の凹凸とグリーンシートの微細な間隙は絶縁性ペーストで充填される。
さらに、積層したセラミックグリーンシートを真空含浸装置に入れて導電性ペーストを真空含浸する。この際、絶縁性ペーストからアルコールが気化して脱気し、高沸点の有機化合物と有機金属化合物とが残る。いっぽうアルコールが気化すると体積が縮小するが、積層したセラミックグリーンシートには圧縮荷重が加えられているため、セラミックグリーンシートの表面の凸部がさらに接近し、表面の凹部とセラミックグリーンシートの微細な間隙に、高沸点の有機化合物と有機金属化合物とが残留する。この残留物が存在することで、真空含浸の際に、アルコールが気化した導電性ペーストは、積層したセラミックグリーンシートの繋ぎ目から、セラミックグリーンシート同士の狭い間隙に浸透できず、スクリーン印刷された絶縁層は乱されない。この結果、積層したセラミックグリーンシート同士の微細な間隙は、18段落で説明した導電層を形成するアルコールが気化した導電性ペーストと、絶縁層を形成するアルコールが気化した絶縁性ペーストとからなる2種類の液状ペーストで充填される。
この後、積層したセラミックグリーンシートを真空含浸装置から取り出し、圧縮荷重を加えて熱処理する。最初に、絶縁性ペーストの薄い膜から高沸点の有機化合物が気化し、セラミックグリーンシートからバインダーが気化する。有機化合物とバインダーとが気化すると、絶縁性ペーストの薄い膜状体の体積が縮小するが、圧縮荷重によってセラミックグリーンシートの表面の凸部が接近し、表面の凹部と微細な間隙に、より微細な有機金属化合物の粉体が残る。この結果、積層したセラミックグリーンシートの微細な間隙は、18段落で説明した導電層を形成する2種類の有機金属化合物の微細粉と、絶縁層を形成する有機金属化合物の微細粉とによって隙間なく充填される。
さらに温度を上げると、有機金属化合物の熱分解が始まる。つまり、有機金属化合物を構成する有機酸の沸点を超えると、有機金属化合物は有機酸と金属酸化物に分解する。さらに昇温して有機酸を短時間で気化させると、10−100nmの大きさに入る金属酸化物微粒子の集まりが析出する。こうして、積層されたセラミックグリーンシートの表面の凹部と微細な間隙には、18段落で説明した導電層を形成する2種類の微粒子の2重構造と、絶縁層を形成する金属酸化物微粒子の集まりで隙間なく充填される。
なお、絶縁層を形成する有機金属化合物は有機酸の沸点で熱分解が始まり、同様に、導電層を形成する2種類の有機金属化合物も、有機酸の沸点で熱分解が始まる。従って、本手段における有機金属化合物が、18段落で説明したいずれか一方の有機金属化合物と同一の有機金属化合物である場合は、導電層の金属酸化物微粒子が析出すると、同時に、同一の金属酸化物微粒子が析出して絶縁層を形成する。
いっぽう、金属酸化物の微粒子同士は互いに金属結合ないしは共有結合しない。このため、金属酸化物微粒子に応力が加わると、金属酸化物微粒子は容易に移動する。従って、積層したセラミックグリーンシートには常時圧縮荷重が加えられているため、セラミックグリーンシート表面の凹部と微細な間隙とに空隙が形成されると、圧縮応力によって空隙が縮小され、縮小された空隙を、より微細な金属酸化物微粒子が移動して埋める。このため、絶縁層を形成する絶縁性ペーストにおける有機金属化合物の量を、導電層を形成する導電性ペーストにおける2種類の有機金属化合物の量と同程度にすれば、積層したセラミックグリーンシートの表面の凹部と微細な間隙は、導電層を形成する2種類の微粒子の2重構造と、絶縁層を形成する金属酸化物微粒子の集まりで隙間なく充填され空隙が発生しない。
さらに昇温して、一定時間この高い温度に保持し、セラミック粉体を焼結する。この後室温まで徐冷し、圧縮荷重を解除する。セラミック粉体の焼結が進むと、粉末粒子間の気孔の減少と消滅とによって空隙が形成されるが、この際、導電層と同様に、圧縮応力によって空隙が縮小され、金属酸化物微粒子が移動して縮小した空隙を埋める。この結果、積層されたセラミック基板の狭い間隙と表面の凹部とは、導電層を形成する2種類の微粒子の2重構造と絶縁層を形成する金属酸化物微粒子の集まりで隙間なく充填される。このため、セラミック基板の厚みが薄くても、セラミック基板は脆性破壊しない。また、金属酸化物微粒子がセラミック基板同士の狭い間隙を隙間なく充填するため、金属酸化物微粒子は狭い間隙から脱落せず、セラミック基板間の絶縁性が確保される。
以上に説明したように、本特徴手段に依れば、有機金属化合物の熱分解後においては、空隙が形成されると、圧縮応力によって空隙が縮小され、より微細な金属酸化物微粒子が移動して縮小した空隙を埋めるため、積層したセラミックグリーンシートの表面の凹部と微細な間隙は、導電層を形成する2種類の微粒子の2重構造と、絶縁層を形成する金属酸化物微粒子の集まりで隙間なく充填される。同様に、セラミック粉体の焼結時に空隙が形成されるが、圧縮応力によって空隙が縮小され、より微細な金属酸化物微粒子が移動して縮小した空隙を埋めるため、セラミック粉体の焼結後も、積層されたセラミック基板の狭い間隙と表面の凹部は、導電層を形成する2種類の微粒子の2重構造と絶縁層を形成する金属酸化物微粒子の集まりで隙間なく充填される。従って、本手段によれば、12段落で説明した第三の課題が解決できる。
このようなカルボン酸金属化合物を、絶縁層を形成する絶縁性ペーストの原料として用い、導電パターンが形成される部位を除くセラミックグリーンシートの表面に絶縁性ペーストをスクリーン印刷する。このセラミックグリーンシートを重ね合わせ、圧縮荷重を加えて積層し、積層したセラミックグリーンシートに導電性ペーストを真空含浸し、さらに圧縮荷重を加えて熱処理すると、セラミック基板同士の狭い間隙は、微粒子の集まりの2重構造からなる導電層と、金属酸化物微粒子の集まりからなる絶縁層で埋め尽くされる。
絶縁層を形成するカルボン酸金属化合物はカルボン酸の沸点で熱分解が始まり、同様に導電層を形成するカルボン酸金属化合物も、カルボン酸の沸点で熱分解が始まる。このため、本特徴手段におけるカルボン酸金属化合物が、24段落で説明したカルボン酸金属化合物と同一のカルボン酸金属化合物である場合は、24段落で説明した導電性ペーストが熱分解して金属酸化物微粒子を析出すると同時に、本手段における絶縁性ペーストが熱分解して同一の金属酸化物微粒子を析出して絶縁層を形成する。
以上に説明したように、本手段のカルボン酸金属化合物は、27段落と28段落とに記載した絶縁性ペーストの原料になる。
すなわち、熱分解で金属酸化物を析出する有機金属化合物のアルコール分散液に、本手段におけるいずれかの有機化合物を混合すると、アルコール分散液より高い粘度を有する絶縁性ペーストが製造できる。この絶縁性ペーストを用いて、セラミックグリーンシートの表面の導電パターンが形成される部位を除く表面をスクリーン印刷する。このセラミックグリーンシートを互いに重ね合わせ、圧縮荷重を加えて積層し、積層したセラミックグリーンシートに導電性ペーストを真空含浸し、さらに、圧縮荷重を加えて熱処理する。最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、さらに昇温すると、有機金属化合物が熱分解する。この結果、セラミックグリーンシート同士の間隙と表面の凹部とが、微粒子の集まりの2重構造からなる導電層と、金属酸化物微粒子の集まりからなる絶縁層とで埋め尽くされる。
以上に説明したように、本特徴手段における有機化合物は、27段落と28段落とに記載した絶縁性ペーストの原料になる。
なお、金属微粒子の集まりは、互いに複数の接触点における金属結合で結合され、この結合力より大きな圧力を受けると、金属微粒子の集まりが変形する。いっぽう、金属酸化物微粒子同士は互いに結合していないため、金属酸化物微粒子は応力を受けると容易に移動する。従って、セラミックグリーンシート同士の狭い間隙と表面の凹部に空隙が形成されると、金属酸化物微粒子が優先して移動して空隙を埋める。いっぽう、金属粒子の焼結が始まると、金属粒子の集まりは変形しにくくなるが、金属酸化物微粒子同士は互いに結合せず、金属酸化物微粒子が容易に移動する。また、セラミック粉体の焼結が進むと、微小な間隙が形成されるが、この際にも金属酸化物微粒子同士は互いに結合せず、金属酸化物微粒子が容易に移動する。こうして、金属酸化物微粒子の移動によって、セラミック基板同士の間隙と表面の凹部とは、導電層と金属酸化物微粒子の集まりで埋め尽くされる。
以上に説明したように、本手段に依れば、セラミック基板同士の間隙と表面の凹部とは、導電層と金属酸化物微粒子の集まりで埋められるため、導電層がセラミック基板から剥離せず、脆性のセラミック多結晶体にクラックが入らない。このため、本特徴手段は、10段落で説明した4つの課題と12段落で説明した第二の課題を解決する手段になる。
また、絶縁性ペーストについても、絶縁性ペーストを構成する有機金属化合物が熱分解される前に加える圧縮荷重に比べ、熱分解された後に加える圧縮荷重の大きさが大きいため、熱分解で生成された金属酸化物微粒子の集まりにより大きな応力が加わり、金属酸化物微粒子が移動しやすくなる。これによって、導電層の形成時とセラミック粉体の焼結時に空隙が形成されるが、絶縁層が形成される部位においては、より微細な金属酸化物微粒子が移動して空隙を常に埋める。この結果、セラミック基板同士の狭い間隙と表面の凹部とは、微粒子の集まりの2重構造からなる導電層と、金属酸化物微粒子の集まりからなる絶縁層で埋め尽くされ、空隙が形成されない。このため、脆性のセラミック基板にクラックが入らない。また、セラミックグリーンシートに加わる圧縮荷重が小さいため、セラミックグリーンシートが圧縮応力で変形しない。
以上に説明したように、本特徴手段に依れば、セラミック基板同士の狭い間隙と表面の凹部とは、微粒子の集まりの2重構造からなる導電層と、金属酸化物微粒子の集まりからなる絶縁層で埋め尽くされ、空隙が形成されない。このため、セラミック基板に応力が加わっても、脆性のセラミック基板にクラックが入ることはない。従って、本特徴手段は、12段落で説明した第三の課題を解決する手段になる。
本実施形態は、熱処理で金属を析出する金属化合物に関わる実施形態である。本発明における導電層を形成する導電性ペーストの原料となる第一の有機金属化合物は、第一にアルコールに分散する性質と、第二にセラミックグリーンシートの表面にスクリーン印刷された有機金属化合物が熱分解された際に、積層されたセラミックグリーンシートの表面で、金属微粒子集まりを析出する性質とからなる、これら2つの性質を兼備しなければならない。
最初に、金属微粒子の原料となる金属化合物について、アルコールに分散する金属化合物を説明する。ここでは金属をニッケルとし、ニッケル化合物を例として説明する。硫酸ニッケルと塩化ニッケルは水に溶け、ニッケルイオンが溶出し、多くのニッケルイオンがニッケルの析出に参加できなくなる。また、水酸化ニッケルと酸化ニッケルはアルコールに分散しない。このため、無機ニッケル化合物は、導電性ペーストの原料として適切でない。従って、導電性ペーストの原料として有機ニッケル化合物が望ましい。
有機ニッケル化合物は、積層されたセラミックグリーンシートの表面で、ニッケル微粒子の集まりを析出する性質を持たなければならない。つまり、有機ニッケル化合物からニッケル微粒子が生成される化学反応が、積層されたセラミックグリーンシートの表面で起こる。有機ニッケル化合物からニッケルが生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。つまり、有機ニッケル化合物を昇温するだけで、熱分解によってニッケルが析出する。さらに、有機ニッケル化合物の合成が容易でれば、有機ニッケル化合物が安価に製造できる。これら2つの性質を兼備する有機ニッケル化合物にカルボン酸ニッケル化合物がある。
カルボン酸ニッケル化合物の組成式は、RCOO−Ni−COORで表わせられる。Rは炭化水素で、この組成式はCmHnである(ここでmとnは整数)。カルボン酸ニッケル化合物を構成する物質の中で、組成式の中央に位置するニッケルイオンNi2+が最も大きい物質になる。従って、ニッケルイオンNi2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンO―とが共有結合する場合は、ニッケルイオンNi2+と酸素イオンO―との距離が最大になる。この理由は、ニッケルの共有結合半径は110pmであり、酸素の単結合の共有結合半径は63pmであり、炭素の二重結合の共有結合半径は67pmであることによる。このため、ニッケルイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとが共有結合するカルボン酸ニッケル化合物は、カルボン酸の沸点において、結合距離が最も長いニッケルイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に分断され、ニッケルとカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後にニッケルが析出する。こうしたカルボン酸ニッケル化合物として、オクチル酸ニッケル、ラウリン酸ニッケル、ステアリン酸ニッケルなどがある。
なお、窒素雰囲気でのカルボン酸ニッケル化合物の熱分解は、大気雰囲気での熱分解より40℃程度高温側で進む。また、カルボン酸が不飽和脂肪酸であれば、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって、ニッケルの酸化物が析出する。
また、カルボン酸ニッケル化合物は合成が容易で、安価な有機ニッケル化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させると、カルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、このカルボン酸アルカリ金属化合物を、硫酸ニッケルなどの無機ニッケル化合物と反応させると、カルボン酸ニッケル化合物が生成される。
従って、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、ニッケルイオンに共有結合する特徴と、飽和脂肪酸からなるカルボン酸で構成される特徴とからなる、2つの特徴を兼備するカルボン酸ニッケル化合物は、熱分解でニッケルを析出する安価な工業用薬品である。
なお、同一のカルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を熱処理すると、カルボン酸の沸点において、複数種類のカルボン酸金属化合物は同時にカルボン酸と金属とに分離され、更に昇温すると、カルボン酸の気化が完了した後に、カルボン酸金属化合物のモル濃度に応じて複数種類の金属が析出し、これらの金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため、析出した複数種類の金属から構成されるとともに、カルボン酸金属化合物のモル濃度に応じた組成割合からなる合金が生成される。このため、同一のカルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物は、熱分解で合金を析出する安価な工業用薬品である。
本実施形態は、熱処理で金属酸化物を析出する原料に係わる実施形態である。導電性ペーストの第二の有機金属化合物と、絶縁性ペーストの有機金属化合物とは、第一にアルコールに分散する性質と、第二に積層されたグリーンシートの表面で、金属酸化物微粒子の集まりを析出する性質とからなる、これら2つの性質を兼備しなければならない。以下の説明では、酸化ニッケルNiOを析出する原料を例として説明する。
酸化ニッケルを析出する原料も、42段落で説明したニッケルの原料と同様に、アルコールに分散する有機ニッケル化合物が望ましい。
さらに、有機ニッケル化合物は、熱分解によって酸化ニッケルを析出する性質をもたなければならない。有機ニッケル化合物から酸化ニッケルが生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。つまり、有機ニッケル化合物を昇温するだけで、熱分解によって酸化ニッケルが析出する。さらに、有機ニッケル化合物の合成が容易でれば、有機ニッケル化合物が安価に製造できる。これら2つの性質を兼備する有機ニッケル化合物に、42段落のカルボン酸ニッケル化合物とは分子構造が異なるカルボン酸ニッケル化合物がある。
42段落で説明したように、カルボン酸ニッケル化合物を構成する物質の中で、最も大きい共有結合半径を持つ物質はニッケルイオンNi2+である。いっぽう、ニッケルイオンNi2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンO―とが共有結合するカルボン酸ニッケル化合物は、42段落で説明したように熱分解でニッケルを析出する。従って、熱分解で酸化ニッケルNiOを析出するカルボン酸ニッケル化合物は、ニッケルイオンNi2+と結合する酸素イオンO―との距離が短く、酸素イオンO―がニッケルイオンNi2+の反対側で結合するイオンと結合する距離が長い分子構造上の特徴を持つ必要がある。これによって、酸素イオンO―がニッケルイオンNi2+の反対側で結合するイオンと結合する部位が最初に切れ、酸化ニッケルNiOと有機酸とに分解する。このような分子構造上の特徴を持つカルボン酸ニッケル化合物として、カルボキシル基を構成する酸素イオンO―が配位子になってニッケルイオンNi2+に近づいて配位結合するカルボン酸ニッケル化合物がある。
また、カルボン酸ニッケル化合物は42段落で説明したように合成が容易で、有機酸の沸点が低いため熱分解温度が相対的に低い。このため、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、配位子となって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸ニッケルも、安価な化学薬品であり、熱処理費用も安価で済む。こうしたカルボン酸ニッケルとして、酢酸ニッケル、カプリル酸ニッケル、安息香酸ニッケル、ナフテン酸ニッケルなどが挙げられる。
従って、カルボキシル基を構成する酸素イオンがニッケルイオンに配位結合したカルボン酸ニッケル化合物は、熱分解で酸化ニッケルを析出する安価な工業用薬品である。
本実施形態は、第一にアルコールに溶解ないしは混和し、第二にアルコール溶解液ないしはアルコール混和液が、アルコールより高い粘度を有し、第三にカルボン酸金属化合物の熱分解温度より沸点が低い、これら3つの特徴を兼備する有機化合物に関する実施形態である。このような有機化合物は、導電性ペーストと絶縁性ペーストとの原料になる。
このような有機化合物として、カルボン酸ビニルエステル類とメタクリル酸エステル類からなるいずれかのエステル類、ないしはグリコールエーテル類、ないしはグリコール類に属する有機化合物に、前記した3つの性質を兼備する有機化合物がある。
カルボン酸ビニルエステル類には、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、アジピン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニルなど様々な高沸点のカルボン酸ビニルがある。
例えば、ラウリン酸ビニルは化学式がCH3(CH2)10COO−CH=CH2で示され、n−ブタノールに溶解し、溶解液はn−ブタノールより高い粘度を持ち、沸点が288℃のカルボン酸ビニルである。従って、熱分解で金属と金属酸化物とを析出する2種類のカルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、これにラウリン酸ビニルを混合すると、混合したラウリン酸ビニルの量に応じて粘度が増大し、導電性ペーストが作成される。また、熱分解で金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、これにラウリン酸ビニルを混合すると、混合したラウリン酸ビニルの量に応じて粘度が増大し、絶縁性ペーストが作成される。なお、ラウリン酸ビニルは、ラウリン酸とビニルアルコールとを反応させたエステルで、常温でも流動性がある内部可塑化された合成樹脂を製造する際に添加剤として用いられる汎用的な有機化合物である。
メタクリル酸エステル類には、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸Sラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなど様々な高沸点のメタクリル酸エステルがある。
例えば、メタクリル酸ラウリルは、化学式がCH3(CH2)10COO−CH=CH2CH3で示され、n−ブタノールに溶解し、沸点が274℃のメタクリル酸エステルである。従って、熱分解で金属と金属酸化物とを析出する2種類のカルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、これにメタクリル酸ラウリルを混合すると、混合したメタクリル酸ラウリルの量に応じて粘度が増大し、導電性ペーストが作成される。また、熱分解で金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、これにメタクリル酸ラウリルを混合すると、混合したメタクリル酸ラウリルの量に応じて粘度が増大し、絶縁性ペーストが作成される。また、メタクリル酸ラウリルは、塗料、繊維処理剤、紙加工、潤滑油、高分子可塑剤などの原料として用いられている汎用的な有機化合物である。
さらに、グリコールエーテル類には、ジエチレングリコールn−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなど様々な高沸点のグリコールエーテル類がある。
例えば、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(以下ではBTGと記す)は、化学式がCH3(CH2)3((CH2)2O)3CH2OHで示され、n−ブタノールに溶解し、沸点が271℃のグリコールエーテルである。従って、熱分解で金属と金属酸化物とを析出する2種類のカルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、BTGを混合すると、混合したBTGの量に応じて粘度が増大し、導電性ペーストが作成される。また熱分解で金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、これにBTGを混合すると、混合したBTGの量に応じて粘度が増大し、絶縁性ペーストが作成される。なお、BTGは、塗料、インキ、染料、写真複写液、洗浄剤、電解液、ソリュブルオイル、作動油、ブレーキ液、冷媒、凍結防止剤などの原料として用いられる汎用的な有機化合物である。
また、グリコール類には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなど様々な高沸点のグリコールがある。
例えば、ジエチレングリコールは、化学式がO(CH2CH2OH)2で示され、n−ブタノールに混和し、沸点が244℃のグリコールである。従って、熱分解で金属と金属酸化物とを析出する2種類のカルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、これにジエチレングリコールを混合すると、混合したジエチレングリコールの量に応じて粘度が増大し、導電性ペーストが作成される。また、熱分解で金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、これにジエチレングリコールを混合すると、混合したジエチレングリコールの量に応じて粘度が増大し、絶縁性ペーストが作成される。なおジエチレングリコールは、不凍液のほか、ブレーキ液、潤滑剤、インキ、たばこの添加物(保湿剤)、織物の柔軟剤、コルクの可塑剤、接着剤、紙、包装材料、塗料などに使用され、さらに、引火点が高く、有毒な蒸気を発生せず、皮膚吸収されないため、優れた溶媒として用いられている汎用的な有機化合物である。
導電性ペーストの製造に係わる実施例で、本ペーストを熱処理すると、最初に酸化マグネシウム微粒子の集まりが析出し、この後、ニッケル微粒子の集まりが、酸化マグネシウムの5倍の量として析出する。なお、酸化マグネシウムは熱伝導度が60W/mKで、体積抵抗率が1014Ωcm以上であり、金属に近い熱伝導性と優れた電気絶縁性との性質を兼備する。いっぽうニッケルの熱伝導度は91W/mKである。なお、導電性ペーストは本実施例に限定されない。つまり、42段落で説明したように、様々なカルボン酸金属化合物が金属微粒子の原料となり、また、43段落で説明したように、様々なカルボン酸金属化合物が金属酸化物微粒子の原料となり、さらに、これら2種類のカルボン酸金属化合物の熱分解温度より沸点が低い有機化合物は、44段落で説明したように様々な有機化合物が存在する。このため、様々な2種類のカルボン酸金属化合物をアルコールに分散し、これに様々な有機化合物を混合すると、様々な金属微粒子の集まりと様々な金属酸化物微粒子の集まりとからなる導電層を形成する導電性ペーストが容易に製造できる。
酸化マグネシウムの原料として、安息香酸マグネシウム・四水和物Mg(C6H5COO)2・4H2O(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。また、ニッケルの原料としてステアリン酸ニッケルNi(C17H35COO)2(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。なお、安息香酸の沸点は249℃で、ステアリン酸の沸点は383℃である。また、有機化合物は、沸点が245℃のジエチレングリコール(CH2CH2OH)2O(例えば、三菱化学株式会社の製品)を用いた。アルコールは試薬1級のn−ブタノールを用いた。
本実施例における液状ペーストの製造は、最初に、ステアリン酸ニッケルの0.013モルを1リットルのn−ブラノールに分散する。次に、安息香酸マグネシウム・四水和物の0.013モルを1リットルのn−ブタノールに分散する。さらに、1リットルのステアリン酸ニッケルのn−ブタノール分散液に、0.2リットルの安息香酸マグネシウム・四水和物のn−ブタノール分散液を混合し、この混合液に、ジエチレングリコールの0.09モルを混合して導電性ペーストを製造した。
絶縁性ペーストの製造に係わる実施例で、本ペーストを熱処理すると酸化マグネシウム微粒子の集まりが析出する。なお、酸化マグネシウムの原料は、実施例1で用いた安息香酸マグネシウム・四水和物であり、有機化合物は実施例1で用いたジエチレングリコールである。アルコールは試薬1級のn−ブタノールを用いた。なお、絶縁性ペーストは本実施例に限定されない。つまり、43段落で説明したように、様々なカルボン酸金属化合物が金属酸化物微粒子の原料となり、カルボン酸金属化合物の熱分解温度より沸点が低い有機化合物は、44段落で説明した様々な有機化合物が存在する。このため、様々なカルボン酸金属化合物をアルコールに分散し、様々な有機化合物を混合すると、様々な金属酸化物の微粒子の集まりが絶縁層を形成する絶縁性ペーストが容易に製造できる。
本実施例における絶縁性ペーストは、最初に安息香酸マグネシウム・四水和物の0.016モルを1リットルのn−ブラノールに分散し、さらに、ジエチレングリコールの0.09モルを混合して絶縁性ペーストを製造した。
導電層を合金微粒子で形成する導電性ペーストの製造に係わる実施例で、本ペーストを熱処理すると、最初に銀−銅合金の微粒子の集まりが析出し、この後、酸化マグネシウム微粒子の集まりが、銀−銅合金微粒子の1/5の量として析出する。なお、本実施例における銀−銅合金は、銀と銅とが9対1からなる組成割合の銀−銅合金である。このような組成割合からなる銀−銅合金は、金属の中で最も導電率が高い銀の導電率を25%程度低下させるが、引張強度を60%近く増大させ、銀のマイグレーションが起こりにくい。いっぽう、使用するカルボン酸銀化合物とカルボン酸銅化合物とのモル濃度比に応じて、銀−銅合金における組成比率が決まるため、銀−銅合金の組成比率は9対1に限定されない。また、同一のカルボン酸からなる複数種類のカルボン酸金属化合物は、42段落で説明したように、様々なカルボン酸金属化合物によって構成でき、これによって、様々な合金の微粒子の集まりが導電層を形成する導電性ペーストが容易に製造できる。
銀の原料としてオクチル酸銀(東栄化工株式会社の試作品で、化学式がC 7 H 15 COOAgで示される)を用い、銅の原料としてオクチル酸銅(東栄化工株式会社の試作品で化学式がCu(C 7 H 15 COO)2で示される)を用いた。また、酸化マグネシウムの原料は、実施例1で用いた安息香酸マグネシウム・四水和物である。有機化合物は、実施例1と同様にジエチレングリコールを用いた。またアルコールは、試薬1級のn−ブタノールを用いた。
本実施例における導電性ペーストは、最初に、オクチル酸銀の0.012モルとオクチル酸銅の0.001モルとを1リットルのn−ブラノールに分散する。次に、安息香酸マグネシウム・四水和物の0.013モルを1リットルのn−ブラノールに分散する。さらに、オクチル酸銀とオクチル酸銅とのn−ブタノール分散液の1リットルに、0.2リットルの安息香酸マグネシウム・四水和物のn−ブタノール分散液を混合し、この混合液にジエチレングリコールの0.09モルを混合して、導電性ペーストを製造した。
本実施例は、積層されたセラミック基板の表面に、導電層と絶縁層とを形成する実施例である。導電性ペーストとして実施例1の導電性ペーストを用い、絶縁性ペーストとして実施例2の絶縁性ペーストを用いた。セラミックグリーンシートとして、戸田工業株式会社が製造するNi−Zn系フェライトのフェライトグリーンシートTFG−955を用いた。Ni−Zn系フェライトは、体積抵抗率が108Ωcmの絶縁体であるため渦電流損失が小さい。また、40MHz以下の周波数領域では、複素透磁率の虚数部に対する実数部の比率に該当するコイルの品質を表すQ値が高い。従って、Ni−Zn系フェライトからなるグリーンシートは、40MHz以下の周波数領域で用いる積層チップインダクタのグリーンシートに適している。
なお、100MHz以上の高周波数領域で使用する積層チップインダクタとして、誘電率が相対的に小さい誘電体セラミックからなるグリーンシートを用いるのが適している。このようなセラミックグリーンシートとして、例えば、双信電機株式会社が製造する900℃程度の低温で焼結するLTCC(Low Temperature Co−fired Ceramics)用の誘電体セラミックがある。例えば、品番MD7は組成がBaO−Al2O3−SiO2−Bi2O3系からなり、比誘電率が7と小さく、3GHzにおけるQ値が3000以上の値を持つ。また、品番MD25は組成がBaO−TiO2−ZnO系からなり、比誘電率が27と小さく、3GHzにおけるQ値が6000以上の値を持つ。さらに、品番MD80は組成がBaO−Nd2O3−Bi2O3−TiO2系からなり、比誘電率が81で、3GHzにおけるQ値が1000以上の値を持つ。このように、RF回路の共振用インダクタやインピーダンスマッチング、高調波トラップなどの高周波数特性の優れたインダクタとして用いる場合は、積層チップインダクタを構成するセラミック基板に要求されるQ−周波数特性に応じて、セラミックグリーンシートの材質を用いればよい。
いっぽう、積層されたセラミック基板を積層誘電体フィルターとして用いる場合は、微弱な電磁波に敏感に応答する誘電損失の少ない高周波誘電体セラミックス材料と呼ばれるセラミックグリーンシート、例えばコランダム(Al2O3)やペリクレイス(MgO)やフォルステライト(Mg2SiO4)やステアタイト(MgO・SiO2)などの材質からなるセラミックグリーンシートが適している。積層されたセラミック基板を多層プリント基板として用いる場合は、信号の高速伝搬を可能にするために誘電率が小さく、シリコンに近い熱膨張率を持つセラミックグリーンシート、例えばムライト(3Al2O3・2SiO2)やシリカ(SiO2)やコージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)などの材質からなるセラミックグリーンシートが適している。このように、積層されたセラミック基板からなる部品に要求される特性を有するセラミックグリーンシートを用いて、積層されたセラミック基板を構成すればよい。
本実施例では、前記したフェライトグリーンシートを、厚みが50μmで幅が80mmで長さが42.5mmからなるシート20枚を用意した。このフェライトグリーンシートに、同一形状のパターンを多数印刷する。例えば、図1の(a)から(d)の4つの模式図に示すように、1.6mm×0.85mmの大きさからなるフェライトグリーンシートの表面に、線幅が50μmの長方形の一辺がない4種類のパターンとビアホール用のパッドとを除く表面を、絶縁性ペーストでスクリーン印刷する。つまり、1.6mm×0.85mmの大きさからなるグリーンシートに、一つの導電パターンが形成される空隙を絶縁性ペーストで形成し、80mm×42.5mmの大きさのフェライトグリーンシートに、幅方向に50個、長さ方向に50個の合計2,500個をスクリーン印刷で形成する(スクリーン印刷機は、例えばマイクロテック株式会社のスクリーン印刷機MTVC−320を用いる)。こうした多数の導電パターンの空隙が形成されるフェライトグリーンシートを、4種類の導電パターンについて各々5枚ずつを製作する。この絶縁性ペーストのスクリーン印刷に先立って、図1の4つの模式図に示した4種類の形状からなる2,500個の導電パターンの開始部(図の1、3、5、7に該当する)と終端部(図の2、4、6、8に該当する)とに相当する部位に、直径が40μmの貫通孔を形成する(貫通孔の加工は、例えば、日機装株式会社のHi−Puncherを用いる)。
この後、2,500個の導電パターンの空隙が形成されたフェライトグリーンシートの20枚を重ね合わせる。すなわち、図1の(a)に模式的に示した導電パターンが形成されるフェライトグリーンシートの下に、図1の(b)に模式的に示した導電パターンが形成されるフェライトグリーンシートを重ね、さらにその下に図1の(c)に模式的に示した導電パターンが形成されるフェライトグリーンシートを重ね、さらにその下に図1の(d)に模式的に示した導電パターンが形成されるフェライトグリーンシートを重ね、さらにその下に図1の(a)に模式的に示した導電パターンが形成されるフェライトグリーンシートを重ね、このような順番で20枚のフェライトグリーンシートを重ね合わせる。これによって、フェライトグリーンシートの2,500個の導電パターンの各々の導電パターンの終端部に相当する貫通孔が、下に重ねるフェライトグリーンシートの2,500個の導電パターンの各々の導電パターンの開始部に相当する貫通孔に重なり、いっぽう、フェライトグリーンシートの2,500個の導電パターンの各々の導電パターンの開始部に相当する貫通孔は、上に重ねるフェライトグリーンシートの2,500個の導電パターンの各々の導電パターンの終端部に相当する貫通孔に重なる。この結果、2,500個の導電パターンが形成される空隙の各々が、20枚のフェライトグリーンシートにおいて、貫通孔を介して連続して繋がる。さらに、積層したフェライトグリーンシートに15MPaの圧縮荷重を加える。
この後、積層したフェライトグリーンシートに、真空含浸装置(例えば、ミカドテクノス株式会社の真空高圧含浸装置を用いる)によって導電性ペーストを真空含浸する。最初に、実施例1で製作した導電性ペーストを容器に充填する。さらに、積層したフェライトグリーンシートを真空含浸装置のかごに入れる。次に、容器とかごとを真空含浸装置内に入れ、かごを昇降機にセットする。さらに、真空含浸装置内を真空排気する。次に、昇降機を動作させてかごを下ろし、積層したグリーンシートの最上層部の表面を除いて、容器内の導電性ペーストに浸漬する。さらに、真空含浸装置に2気圧の圧縮空気を供給する。その後、真空含浸装置を大気に開放し、容器とかごを真空含浸装置から取り出す。
この後、積層したフェライトグリーンシートに15MPaの圧縮荷重を加え、大気雰囲気で熱処理する。最初に、100℃/時間の昇温速度でジエチレングリコールの沸点である245℃まで昇温した。この後、40℃/分の昇温速度で310℃まで昇温して30秒間保持し、安息香酸マグネシウムを熱分解した。さらに、20℃/分の昇温速度でステアリン酸の沸点である383℃まで昇温し、40℃/分の昇温速度で440℃まで昇温して30秒間保持し、ステアリン酸ニッケルを熱分解した。その後、室温まで徐冷した。
この後、積層したフェライトグリーンシートを焼成炉から取り出し、1.6mm×0.85mmの大きさとして切断した(例えば、UHT株式会社のセラミックグリーンシート積層体切断機G−CUT AS8を用いる)。次に、圧縮荷重を25MPaに変え、切断された積層グリーンシートの集まりを再度焼成炉に入れて焼成する。最初に、20℃/分の昇温速度で500℃に昇温し、500℃に5時間放置し、フェライトグリーンシートからバインダーを気化させた。この後、60℃/時間の昇温速度で900℃まで昇温し、900℃に2時間放置し、フェライトグリーンシートを焼結した後、室温まで徐冷し試料を作成した。
最初に反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の断面を観察した。40−60nmの大きさの粒状微粒子の集まりが、2枚のフェライト基板の間隙とフェライト基板の表面の凹部を満遍なく埋め、空隙は認められなかった。
次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたため、異なる原子から構成されていることが分かった。また、微粒子の集まりは平均で40個に近い微粒子の集まりで厚みを形成していた。
さらに特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。微粒子はマグネシウム原子と酸素原子の双方が均等に存在し、特段に偏在する箇所が見られなかったため、酸化マグネシウムの粒状微粒子である。
次に、前記した条件で製作した試料について、貫通孔を含む導電性ペーストが真空含浸された箇所を切断し、切断面を電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の断面を観察した。
40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが、絶縁性ペーストが印刷された切断面と同様に、下側のフェライト基板の表面の凹部を埋めように析出していた。しかし2枚のフェライト基板の間隙の多くと、上側のフェライト基板の表面の凹部は、はっきりした粒子の境界が消えていた。なお、はっきりした粒子の境界が消えていた層の厚みは、微粒子の集まりの5倍に近い厚みであり、下側のフェライト基板の表面の凹部を埋める微粒子の集まりは平均で6個程度であった。また、貫通孔は、微粒子の存在がわずかに認められたが、大部分ははっきりした粒子の境界が消えていた。なお、2枚のフェライト基板の間隙は、前記した絶縁性ペーストが印刷された切断面と同程度の間隙であった。さらに2枚のフェライト基板の間隙と貫通孔に、空隙は認められなかった。
次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。2枚のフェライト基板の間隙の多くの領域と、上側のフェライト基板の表面の凹部とは、濃淡が認められなかったので同一の原子から構成されている。下側のフェライト基板の表面の凹部は濃淡が認められたため、異なる原子から構成されている。また、貫通孔は、濃淡が認められる箇所がわずかに存在したが、大部分は上側のフェライト基板の表面の凹部と同様、濃淡が認められなかった。
さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。下側のフェライト基板の表面の凹部を埋める微粒子は、マグネシウム原子と酸素原子の双方が均等に存在し、特段に偏在する箇所が見られなかったため、酸化マグネシウムの粒状微粒子である。2枚のフェライト基板の間隙の多くの領域と、上側のフェライト基板の表面の凹部は、ニッケル原子のみからなるニッケル相であった。また、貫通孔は、マグネシウム原子と酸素原子の双方が均等に存在する箇所がわずかに認められたが、殆どはニッケル原子のみからなるニッケル相であった。また、2枚のフェライト基板の間隙が貫通孔に繋がる部位は、ニッケル原子のみからなるニッケル相で構成され、貫通孔のニッケル原子のみからなるニッケル相に連続していた。
以上の観察結果から、絶縁層は40−60nmの大きさからなる酸化マグネシウム微粒子の集まりから構成され、フェライト基板の間隙とフェライト基板の表面の凹部を満遍なく埋め、空隙が形成されなかった。また、導電層は、先行して析出した酸化マグネシウムの微粒子の集まりが、下側のフェライト基板の表面の凹部を埋めるとともに、一部がフェライト基板の間隙に析出した。遅れて析出したニッケル微粒子の集まりが、2枚のフェライト基板の間隙の多くの領域と、上側のフェライト基板の表面の凹部を埋め、この後、ニッケル粒子が燒結し導電層を形成した。この結果、2枚のフェライト基板の間隙と、上側のフェライト基板の表面の凹部には空隙が形成されなかった。また、貫通孔に繋がる導電層は、貫通孔の導電層と連続したため、貫通孔にビアホールが形成された。
この結果、本実施例で製造した積層されたセラミック基板は、絶縁層においては、応力を受けた酸化マグネシウムの微粒子が移動して空隙を埋め、導電層においても、応力を受けた酸化マグネシウムの微粒子が移動して空隙を埋め、また、析出したニッケル微粒子の一部が上側のフェライト基板の凹部を埋め、フェライト基板の間隙と表面の凹部に空隙が形成されなかった。また、貫通孔にビアホールが形成された。従って、本実施例で製造した積層されたフェライト基板は、40MHz以下の周波数領域で用いる積層チップインダクタに用いることができる。なお、本実施例で製造した積層されたフェライト基板を積層チップインダクタに適応する際は、最上部と最下部とに積層されるセラミック基板については、その導電パターンの端部が、セラミック基板の表面の端部に延長された形状とすることで、積層されたセラミック基板の外側に端子電極を形成すると、端子電極と最上部と最下部との導電層とが導通し、積層チップインダクタが製造される。
以上に、積層されたセラミック基板が積層チップインダクタとして用いる場合の一例について、積層されたフェライト基板の表面に導電層と絶縁層とを形成する実施例を説明したが、積層されたセラミック基板を適応するチップ部品は、積層チップインダクタに限定されず、積層誘電体フィルターや多層プリント基板にも適応できる。この際、前記したように、適応する電子部品に応じて、セラミックグリーンシート材質を変える。また、導電パターンの形状も、適応する電子部品に応じて変えればよい。
2 導電パターンの終端部に相当する位置に設けられる貫通孔とビアホール用のパッド
3 導電パターンの開始部に相当する位置に設けられる貫通孔とビアホール用のパッド
4 導電パターンの終端部に相当する位置に設けられる貫通孔とビアホール用のパッド
5 導電パターンの開始部に相当する位置に設けられる貫通孔とビアホール用パッド
6 導電パターンの終端部に相当する位置に設けられる貫通孔とビアホール用のパッド
7 導電パターンの開始部に相当する位置に設けられる貫通孔とビアホール用のパッド
8 導電パターンの終端部に相当する位置に設けられる貫通孔とビアホール用のパッド
9 導電パターンの開始部に相当する位置に設けられる貫通孔とビアホール用のパッド
10 導電パターンの終端部に相当する位置に設けられる貫通孔とビアホール用のパッド
11 導電パターンの開始部に相当する位置に設けられる貫通孔とビアホール用のパッド
12 導電パターンの終端部に相当する位置に設けられる貫通孔とビアホール用のパッド
Claims (11)
- 表面に導電層と絶縁層との双方が形成されたセラミック基板の複数枚が積層された積層セラミック基板の製造方法は、
複数枚からなるセラミックグリーンシートの各々に、導電パターンが形成される部位を除く表面を絶縁性ペーストでスクリーン印刷する第一の処理と、前記導電パターンの開始部と終端部とに相当する部位に貫通孔を設ける第二の処理と、前記セラミックグリーンシートの導電パターンの開始部に相当する部位に設ける貫通孔は、該セラミックグリーンシートの上に積層するセラミックグリーンシートの導電パターンの終端部に相当する部位に設ける貫通孔と互いに重なり合う位置に設け、前記セラミックグリーンシートの導電パターンの終端部に相当する部位に設ける貫通孔は、該セラミックグリーンシートの下に積層するセラミックグリーンシートの導電パターンの開始部に相当する部位に設ける貫通孔と互いに重なり合う位置に設ける第三の処理とからなるこれら3つの処理を、前記複数枚からなるセラミックグリーンシートの各々に第一工程の処理として行ない、
さらに、前記第一工程の処理がなされた複数枚のセラミックグリーンシートの各々について、セラミックグリーンシートの表面に形成された導電パターンが、該セラミックグリーンシートの上および下に重ね合わせられるセラミックグリーンシートの表面に形成された双方の導電パターンと、各々のセラミックグリーンシートに設けられた貫通孔に形成される導電層を介して互いに電気的に繋がる位置に、前記セラミックグリーンシート同士を上下に重ね合わせ、該重ね合わされたセラミックグリーンシートに圧縮荷重を加え、該セラミックグリーンシート同士を積層するこれらの処理を、第二工程の処理として連続して行ない、
さらに、前記積層したセラミックグリーンシートを真空含浸装置に配置し、この後、該真空含浸装置を真空排気し、前記積層したセラミックグリーンシートの最上層部の表面を除いた部位まで導電性ペーストが充填されるように、前記真空含浸装置に前記導電性ペーストを充填し、この後、該真空含浸装置を再度真空排気し、この後、該真空含浸装置を大気圧に戻す、ないしは、該真空含浸装置に圧縮空気を供給するこれらの処理を、第三工程の処理として連続して行ない、
さらに、前記積層したセラミックグリーンシートを前記真空含浸装置から取り出し、圧縮荷重を加えて前記セラミックグリーンシートを構成するセラミック粉体同士が燒結する温度まで昇温する第四工程の処理を行う、
これによって、前記積層したセラミックグリーンシートが積層されたセラミック基板になり、前記導電性ペーストが、前記積層されたセラミック基板の各々の基板の表面に、前記導電パターンからなる導電層を形成するとともに、前記積層されたセラミック基板の各々の基板の貫通孔に導電層を形成し、前記各々のセラミック基板の表面に形成された導電層が、前記各々のセラミック基板の貫通孔に形成された導電層を介して互いに電気的に導通し、前記絶縁性ペーストが、前記各々のセラミック基板の表面に、前記導電パターンを除く部位に絶縁層を形成し、前記導電層と前記絶縁層との双方が表面に形成されたセラミック基板の複数枚が積層された積層セラミック基板が製造されることを特徴とする、積層セラミック基板の製造方法。 - 請求項1における複数枚からなるセラミックグリーンシートの各々に実施する第一工程の処理が、同一形状からなる導電パターンの複数個が形成される部位を除く表面を、絶縁性ペーストでスクリーン印刷する第一の処理と、前記複数個の導電パターンの各々の導電パターンの開始部と終端部とに相当する部位に貫通孔を設ける第二の処理と、前記セラミックグリーンシートの複数の導電パターンの各々の導電パターンの開始部に相当する部位に設ける貫通孔が、該セラミックグリーンシートの上に積層するセラミックグリーンシートの複数の導電パターンの各々の導電パターンの終端部に相当する部位に設ける貫通孔と互いに重なり合う位置に設け、前記セラミックグリーンシートの複数の導電パターンの各々の導電パターンの終端部に相当する部位に設ける貫通孔が、該セラミックグリーンシートの下に積層するセラミックグリーンシートの複数の導電パターンの各々の導電パターンの開始部に相当する部位に設ける貫通孔と互いに重なり合う位置に設ける第三の処理とからなる第一工程の処理であり、
該第一工程の処理がなされた複数枚のセラミックグリーンシートの各々について、請求項1に記載した第二工程の処理と第三工程の処理とを実施する、この後、積層したセラミックグリーンシートを、前記同一形状からなる導電パターンが各々のセラミックグリーンシートに形成されたセラミックグリーンシートが積層されたセラミックグリーンシートとして細断し、該細断された積層されたセラミックグリーンシートの集まりについて、請求項1に記載した第四工程の処理を実施する、
これによって、同一形状からなる導電パターンが各々のセラミック基板に形成されたセラミック基板が積層された積層セラミック基板の複数個が同時に製造されることを特徴とする、請求項1に記載した積層セラミック基板の製造方法。 - 請求項1及び請求項2のいずれの請求項における導電層を形成する導電性ペーストは、熱分解で金属を析出する第一の有機金属化合物をアルコールに分散した分散液と、熱分解で金属酸化物を析出する第一の性質と、熱分解温度が前記第一の有機金属化合物の熱分解温度と異なる第二の性質とからなる、これら2つの性質を兼備する第二の有機金属化合物を、熱分解で析出する金属酸化物の量が、前記第一の有機金属化合物の熱分解で析出する金属の量より少ない量としてアルコールに分散した分散液と、前記2種類の有機金属化合物の双方の熱分解温度より沸点が低い有機化合物からなり、これら3種類の液状物質を混合して前記導電性ペーストを作成し、該導電性ペーストを用いて請求項1及び請求項2のいずれの請求項における導電層を形成することを特徴とする、請求項1及び請求項2のいずれの請求項に記載した積層セラミック基板の製造方法。
- 請求項3における第一の有機金属化合物は、カルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸で構成される第二の特徴とからなる、これら2つの特徴を兼備するカルボン酸金属化合物であり、該カルボン酸金属化合物を請求項3における第一の有機金属化合物として用いて請求項3に準じて導電性ペーストを作成し、該導電性ペーストを用いて請求項3における導電層を形成することを特徴とする、請求項3に記載した積層セラミック基板の製造方法。
- 請求項4におけるカルボン酸金属化合物が複数種類のカルボン酸金属化合物であり、該複数種類のカルボン酸金属化合物は、同一のカルボン酸で構成され、該同一のカルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物であり、該複数種類のカルボン酸金属化合物を請求項4におけるカルボン酸金属化合物として用いて請求項4に準じて導電性ペーストを作成し、該導電性ペーストを用いて請求項4における導電層を形成することを特徴とする、請求項4に記載し積層セラミック基板の製造方法。
- 請求項3における第二の有機金属化合物は、カルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに配位結合したカルボン酸金属化合物であり、該カルボン酸金属化合物を請求項3における第二の有機金属化合物として用いて請求項3に準じて導電性ペーストを作成し、該導電性ペーストを用いて請求項3における導電層を形成することを特徴とする、請求項3に記載した積層セラミック基板の製造方法。
- 請求項3における有機化合物は、カルボン酸ビニルエステル類とメタクリル酸エステル類とからなるいずれかのエステル類、ないしはグリコール類、ないしはグリコールエーテル類からなるいずれかの有機化合物であって、該有機化合物は、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、アルコールに溶解した溶解液、ないしは、アルコールに混和した混和液は、前記アルコールより高い粘度を有する第二の性質と、請求項3における2種類の有機金属化合物の双方の熱分解温度より沸点が低い第三の性質とからなる、これら3つの性質を兼備する有機化合物であり、該有機化合物を請求項3における有機化合物として用いて請求項3に準じて導電性ペーストを作成し、該導電性ペーストを用いて請求項3における導電層を形成することを特徴とする、請求項3に記載した積層セラミック基板の製造方法。
- 請求項1及び請求項2のいずれの請求項における絶縁層を形成する絶縁性ペーストは、熱分解で金属酸化物を析出する有機金属化合物をアルコールに分散した分散液と、前記有機金属化合物の熱分解温度より沸点が低い有機化合物とからなり、これら2種類の液状物質を混合して絶縁性ペーストを作成し、該絶縁性ペーストを用いて請求項1及び請求項2のいずれの請求項における絶縁層を形成することを特徴とする、請求項1及び請求項2のいずれの請求項に記載した積層セラミック基板の製造方法。
- 請求項8における有機金属化合物は、カルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに配位結合したカルボン酸金属化合物であり、該カルボン酸金属化合物を請求項8における有機金属化合物として用いて請求項8に準じて絶縁性ペーストを作成し、該絶縁性ペーストを用いて請求項8における絶縁層を形成することを特徴とする、請求項8に記載した積層セラミック基板の製造方法。
- 請求項8における有機化合物は、カルボン酸ビニルエステル類とメタクリル酸エステル類とからなるいずれかのエステル類、ないしはグリコール類、ないしはグリコールエーテル類からなるいずれかの有機化合物であり、該有機化合物は、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、アルコールに溶解した溶解液、ないしは、アルコールに混和した混和液は、前記アルコールより高い粘度を有する第二の性質と、請求項8における有機金属化合物の熱分解温度より沸点が低い第三の性質とからなる、これら3つの性質を兼備する有機化合物であり、該有機化合物を請求項8における有機化合物として用いて請求項8に準じて絶縁性ペーストを作成し、該絶縁性ペーストを用いて請求項8における絶縁層を形成することを特徴とする、請求項8に記載した積層セラミック基板の製造方法。
- 請求項1及び請求項2のいずれの請求項における第四工程の処理における積層されたセラミックグリーンシートに加える圧縮荷重を、請求項1及び請求項2のいずれの請求項における第二工程の処理及び第三工程の処理における積層されたセラミックグリーンシートに加える圧縮荷重より大きな圧縮荷重として加え、請求項1及び請求項2のいずれの請求項に準じてセラミック基板の複数枚が積層された積層セラミック基板を製造することを特徴とする、請求項1及び請求項2のいずれの請求項に記載した積層セラミック基板の製造方法。
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