以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の液晶配向膜の製造方法は、上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体及び上記式[1]で示される繰り返し単位を有しイミド化率が50%未満であるポリイミドから選択される少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤を、基板に塗布した後、焼成することにより、イミド化率が50〜70%の液晶配向膜を得るものである。
本発明の液晶配向膜の製造に使用する液晶配向剤は、上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体や、上記式[1]で示される繰り返し単位を有し且つイミド化率が50%未満のポリイミドを含有する。勿論、上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体、及び、上記式[1]で示される繰り返し単位を有しイミド化率が50%未満のポリイミドの両方を含有していてもよい。また、複数種の上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体や、複数種の上記式[1]で示される繰り返し単位を有しイミド化率が50%未満のポリイミドを含有していてもよい。なお、ポリイミド前駆体とは、ポリアミック酸やポリアミック酸エステルである。
上記式[1]で示される繰り返し単位有するポリイミド前駆体や上記式[1]で示される繰り返し単位を有しイミド化率が50%未満のポリイミド(以下「式[1]で示される繰り返し単位を有する重合体」とも記載する)は、上記式[2]で示される側鎖を有することが好ましい。上記式[2]で示される側鎖を有すると、液晶を垂直に配向させることができる液晶配向膜を製造することができる。例えば、式[1]で示される繰り返し単位が、式[2]で示される側鎖を有する場合は、A1やA2が式[2]で示される構造を有する。また、詳しくは後述するポリイミド前駆体やポリイミドの繰り返し単位が上記式[2]で示される側鎖を有していてもよい。
式[2]中、Y1は単結合、−(CH2)a−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CH2O−、−COO−又は−OCO−を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、単結合、−(CH2)a−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CH2O−又は−COO−が好ましい。より好ましいのは、単結合、−(CH2)a−(aは1〜10の整数である)、−O−、−CH2O−又は−COO−である。
式[2]中、Y2は単結合又は−(CH2)b−(bは1〜15の整数である)を示す。なかでも、単結合又は−(CH2)b−(bは1〜10の整数である)が好ましい。
式[2]中、Y3は単結合、−(CH2)c−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CH2O−、−COO−又は−OCO−を示す。なかでも、合成の容易さの点から、単結合、−(CH2)c−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CH2O−又は−COO−が好ましい。より好ましいのは、単結合、−(CH2)c−(cは1〜10の整数である)、−O−、−CH2O−又は−COO−である。
式[2]中、Y4はベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる2価の環状基、又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の2価の有機基を示し、環状基上の任意の水素原子が、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていてもよい。なかでも、合成の容易さの点から、ベンゼン環、シクロへキサン環又はステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基が好ましい。
式[2]中、Y5はベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる2価の環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子が、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていてもよい。なかでも、ベンゼン環又はシクロへキサン環が好ましい。
式[2]中、nは0〜4の整数である。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、0〜3が好ましい。より好ましいのは、0〜2である。
式[2]中、Y6は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基又は炭素数1〜18のフッ素含有アルコキシル基である。なかでも、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜10のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基又は炭素数1〜10のフッ素含有アルコキシル基が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシル基である。特に好ましくは、炭素数1〜9のアルキル基又は炭素数1〜9のアルコキシル基である。
式[2]中、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6及びnの好ましい組み合わせとしては、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の13項〜34項の表6〜表47に掲載される(2−1)〜(2−629)と同じ組み合わせが挙げられる。なお、国際公開公報の各表では、本発明におけるY1〜Y6が、Y1〜Y6として示されているが、Y1〜Y6は、Y1〜Y6と読み替えるものとする。
上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体は、例えば、分子内にイソシアネート基を2個含有する化合物である(a)成分と、分子内に1級又は2級のアミノ基を2個含有する化合物である(b)成分と、テトラカルボン酸誘導体である(c)成分を反応させることにより、製造することができる。
(a)成分は、O=C=N−A1−N=C=O(A1は、式[1]におけるA1と同じである)で示される化合物である。A1としては、水素原子が炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよい2価のベンゼン環、アルキレン、脂肪族環又はそれらの組み合わせからなる置換基等が挙げられる。(a)成分の具体例としては、芳香族ジイソシアネートとして、o−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p − フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート類(例えば、2,4−ジイソシアン酸トリレン)、1,4−ジイソシアン酸−2−メトキシベンゼン、2,5−ジイソシアン酸キシレン類、2,2’−ビス(4−ジイソシアン酸フェニル)プロパン、4,4’−ジイソシアン酸ジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアン酸ジフェニルエーテル、4,4’−ジイソシアン酸ジフェニルスルホン、3,3’−ジイソシアン酸ジフェニルスルホン、2,2’−ジイソシアン酸ベンゾフェノンなど、脂肪族ジイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルエチレンジイソシアネート等が挙げられる。なかでも、2,4−ジイソシアン酸トリレンが、入手性、重合反応性、電圧保持率の観点から好ましい。
(b)成分は、下記式[b]で示される化合物である。
(式[b]中、C
1、C
2、A
2は式[1]におけるC
1、C
2、A
2と同じである)
A
2としては、(b)成分の化合物に由来する2価の有機基が挙げられる。(b)成分の具体例としては、上記式[2a]で示される化合物が挙げられる。
上記式[2a]における2つのアミノ基(−NH2)の結合位置は限定されない。具体的には、側鎖の結合基(−(Y1−Y2−Y3−Y4−(Y5)n−Y6)m)に対して、ベンゼン環上の2,3の位置、2,4の位置、2,5の位置、2,6の位置、3,4の位置又は3,5の位置が挙げられる。なかでも、式[1]で示される繰り返し単位を有する重合体を合成する際の反応性の観点から、2,4の位置、2,5の位置又は3,5の位置が好ましい。式[2a]で示される化合物を合成する際の容易性も加味すると、2,4の位置又は2,5の位置がより好ましい。
より具体的には、式[2a]は、下記式[2b−1]〜式[2b−29]で示される構造である。
(式[2b−19]〜式[2b−21]中、R
1は−O−、−OCH
2−、−CH
2O−、−COOCH
2−又は−CH
2OCO−を示し、R
2は炭素数1〜18のアルキル基、アルコキシ基、フッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルコキシ基を示す)。
(式[2b−22]〜式[2b−24]中、R
3は−COO−、−OCO−、−COOCH
2−、−CH
2OCO−、−CH
2O−、−OCH
2−又は−CH
2−を示し、R
4は炭素数1〜18のアルキル基、アルコキシ基、フッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルコキシ基を示す)。
(式[2b−25]及び式[2b−26]中、R
7は炭素数3〜12のアルキル基を示す。なお、1,4-シクロヘキシレンのシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体が好ましい)。
(式[2b−27]及び式[2b−28]中、R
8は炭素数3〜12のアルキル基を示す。なお、1,4-シクロヘキシレンのシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体が好ましい)。
(式[2b−29]中、B
4はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数3〜18のアルキル基を示し、B
3は1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基を示し、B
2は酸素原子又は−COO−*(但し、「*」を付した結合手がB
3と結合する)を示し、B
1は酸素原子又は−COO−*(但し、「*」を付した結合手が(CH
2)a
2と結合する)を示す。また、a
1は2〜10の整数を示し、a
3は0又は1の整数を示す)。
式[2a]で示される化合物を用いると、上述したように、液晶を垂直に配向させることができる。式[2a]で示される化合物は、(b)成分全体の5モル%以上80モル%以下であることが好ましい。より好ましくは、液晶配向性の観点から、式[2a]で示される化合物は、(b)成分全体の5モル%以上60モル%である。特に好ましくは、(b)成分全体の10モル%以上60モル%以下である。
式[2a]で示される化合物以外の(b)成分としては、m−フェニレンジアミン、2,4−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノベンジルアルコール、2,4−ジアミノベンジルアルコール、4,6−ジアミノレゾルシノールの他に、下記の式[2b−30]〜[2b−41]で示される構造のジアミン化合物を挙げることができる。
([2b−30]及び式[2b−31]中、R
5は−COO−、−OCO−、−COOCH
2−、−CH
2OCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CH
2−又は−O−であり、R
6はフッ素基、シアノ基、トリフルオロメタン基、ニトロ基、アゾ基、ホルミル基、アセチル基、アセトキシ基又は水酸基である)。
(式[2b−32]〜式[2b−35]中、A
1は、炭素数1〜22のアルキル基又はフッ素含有アルキル基を示す)。
尚、式[2b−36]は、光反応性の側鎖を有している。このような光反応性の側鎖とは、光を照射することにより重合を生じさせる部分であり、例えば、アクリル基、メタクリル基、ラクトン基、マレイミド基、ビニル基、アリル基や、スチリル基を有する側鎖が挙げられる。ただし、これに限定されるものではない。
また、式[2a]で示される化合物以外の(b)成分としては、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ビフェニル、3,3’−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジアミノビフェニル、2,3’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン、2,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジアミノジフェニルエーテル、2,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−スルホニルジアニリン、3,3’−スルホニルジアニリン、ビス(4−アミノフェニル)シラン、ビス(3−アミノフェニル)シラン、ジメチル−ビス(4−アミノフェニル)シラン、ジメチル−ビス(3−アミノフェニル)シラン、4,4’−チオジアニリン、3,3’−チオジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルアミン、3,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2’−ジアミノジフェニルアミン、2,3’−ジアミノジフェニルアミン、N−メチル(4,4’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(3,3’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(3,4’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(2,2’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(2,3’−ジアミノジフェニル)アミン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,4−ジアミノナフタレン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、2,3’−ジアミノベンゾフェノン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,8−ジアミノナフタレン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,2−ビス(3−アミノフェニル)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ブタン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ブタン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、1,4−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4-アミノベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、1,4−フェニレンビス[(4−アミノフェニル)メタノン]、1,4−フェニレンビス[(3−アミノフェニル)メタノン]、1,3−フェニレンビス[(4−アミノフェニル)メタノン]、1,3−フェニレンビス[(3−アミノフェニル)メタノン]、1,4−フェニレンビス(4−アミノベンゾエート)、1,4−フェニレンビス(3−アミノベンゾエート)、1,3−フェニレンビス(4−アミノベンゾエート)、1,3−フェニレンビス(3−アミノベンゾエート)、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(3−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4−アミノフェニル)イソフタレート、ビス(3−アミノフェニル)イソフタレート、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(4−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(4−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(3−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(3−アミノベンズアミド)、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(3−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(3−アミノフェニル)イソフタルアミド、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,5−ビス(3−アミノフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェノキシ)へキサン、1,6−ビス(3−アミノフェノキシ)へキサン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,7−(3−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン、1,8−ビス(3−アミノフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェノキシ)ノナン、1,9−ビス(3−アミノフェノキシ)ノナン、1,10−ビス(4−アミノフェノキシ)デカン、1,10−ビス(3−アミノフェノキシ)デカン、1,11−ビス(4−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,11−ビス(3−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,12−ビス(4−アミノフェノキシ)ドデカン、1,12−ビス(3−アミノフェノキシ)ドデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノへキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン又は1,12−ジアミノドデカンなども挙げられる。
また、(b)成分として、ジアミン側鎖にアルキル基、フッ素含有アルキル基、芳香環、脂肪族環又は複素環を有するもの、さらに、これらからなる大環状置換体を有するものなどを挙げることもできる。具体的には、下記の式[DA1]〜[DA13]で示されるジアミン化合物を例示することができる。
(式[DA1]〜式[DA6]中、A
1は−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CH
2−、−O−、−CO−又は−NH−を示し、A
2は炭素数1〜22の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基又は炭素数1〜22の直鎖状もしくは分岐状のフッ素含有アルキル基を示す)。
また、(b)成分として、下記の式[DA8]〜式[DA13]で示されるジアミン化合物を用いることもできる。
(式[DA10]中、mは0〜3の整数を示し、式[DA13]中、nは1〜5の整数を示す)。
さらに、本発明の効果を損なわない限りにおいて、下記の式[DA14]〜式[DA17]で示されるジアミン化合物を用いることもできる。
(式[DA14]中、A
1は単結合、−CH
2−、−C
2H
4−、−C(CH
3)
2−、−CF
2−、−C(CF
3)
2−、−O−、−CO−、−NH−、−N(CH
3)−、−CONH−、−NHCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、−OCO−、−CON(CH
3)−又は−N(CH
3)CO−を示し、m
1およびm
2はそれぞれ0〜4の整数を示し、かつm
1+m
2は1〜4の整数を示し、式[DA15]中、m
3及びm
4はそれぞれ1〜5の整数を示し、式[DA16]中、A
2は炭素数1〜5の直鎖又は分岐アルキル基を示し、m
5は1〜5の整数を示し、式[DA17]中、A
3は単結合、−CH
2−、−C
2H
4−、−C(CH
3)
2−、−CF
2−、−C(CF
3)
2−、−O−、−CO−、−NH−、−N(CH
3)−、−CONH−、−NHCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、−OCO−、−CON(CH
3)−又は−N(CH
3)CO−を示し、m
6は1〜4の整数を示す。)
また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、下記の式[DA18]で示されるジアミン化合物を用いることもできる。
(式[DA18]中、A
1は−O−、−NH−、−N(CH
3)−、−CONH−、−NHCO−、−CH
2O−、−OCO−、−CON(CH
3)−又は−N(CH
3)CO−より選ばれる2価の有機基であり、A
2は単結合、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、非芳香族環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基であり、A
3は単結合、−O−、−NH−、−N(CH
3)−、−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−、−CON(CH
3)−、−N(CH
3)CO−又は−O(CH
2)
m−(mは1〜5の整数である)より選ばれ、A
4は窒素含有芳香族複素環であり、nは1〜4の整数である。)
加えて、その他ジアミン化合物として、下記の式[DA19]及び式[DA20]で示されるジアミン化合物を用いることもできる。
上記の(b)成分は、式[1]で示される繰り返し単位を有する重合体の溶媒への溶解性や液晶配向剤の塗布性、液晶配向膜とした場合における液晶の配向性、電圧保持率、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
(c)成分は、テトラカルボン酸誘導体であり、例えば、上記式[3]で示されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。式[3]中、Z1は、合成の容易さやポリマーを製造する際の重合反応性のし易さの点から、式[3a]、式[3c]、式[3d]、式[3e]、式[3f]又は式[3g]で示される構造が好ましい。より好ましいのは、式[3a]、式[3e]、式[3f]又は式[3g]で示される構造であり、特に好ましいのは、式[3a]、式[3e]、式[3f]又は式[3g]である。
式[3]で示されるテトラカルボン酸二無水物は、(c)成分全体の1モル%以上であることが好ましい。より好ましいのは、5モル%以上であり、特に好ましいのは、10モル%以上である。
また、Z1が式[3e]、式[3f]又は式[3g]の構造である式[3]で示されるテトラカルボン酸二無水物を用いる場合、その使用量は、(c)成分全体の20モル%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは、30モル%以上である。さらに、(c)成分のすべてをZ1が式[3e]、式[3f]又は式[3g]の構造である式[3]で示されるテトラカルボン酸二無水物であってもよい。
式[3]で示されるテトラカルボン酸二無水物以外の(c)成分として、以下に示すテトラカルボン酸化合物、テトラカルボン酸二無水物又はテトラカルボン酸ジハライド化合物が挙げられる。すなわち、式[3]で示されるテトラカルボン酸二無水物以外の(c)成分としては、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ピリジン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸又は1,3−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸が挙げられる。
(c)成分は、式[1]で示される繰り返し単位を有する重合体の溶媒への溶解性や液晶配向剤の塗布性、液晶配向膜とした場合における液晶の配向性、電圧保持率、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
このような(a)成分、(b)成分及び(c)成分を重合反応させることにより、式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体を製造することができる。例えば(c)成分として、テトラカルボン酸二無水物を用いると、式[1]で示される繰り返し単位を有するポリアミック酸を製造することができる。そして、得られた式[1]で示される繰り返し単位を有するポリアミック酸のカルボキシル基をエステルに変換すると、式[1]で示される繰り返し単位を有するポリアミック酸エステルを製造することができる。なお、これら式[1]で示される繰り返し単位を有するポリアミック酸や、式[1]で示される繰り返し単位を有するポリアミック酸エステルを閉環(イミド化)することにより、式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミドが得られる。
ここで、(a)成分と(b)成分とで、上記式[1]で示される繰り返し単位が構成される。また、(b)成分と(c)成分とで、ポリイミド前駆体やポリイミドの繰り返し単位が構成される。(b)成分と(c)成分とで構成されるポリイミド前駆体やポリイミドの繰り返し単位は、例えば、下記式[8]で示すことができる。上記式[1]において、A1は原料である(a)成分に由来する基であり、C1、C2、A2は原料である(b)成分に由来する基である。また、上記式[8]において、C1、C2、A2は原料である(b)成分に由来する基であり、Z1は原料である(c)成分に由来する基である。
(式[8]中、A
2、C
1、C
2は式[b]と同じであり、Z
1は式[3]のZ
1と同じであり、R
41及びR
42は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基でありそれぞれ同じであっても異なってもよく、jは正の整数を示す。)
式[1]で示される繰り返し単位を有する重合体が有する式[1]で示される繰り返し単位は、C1、C2、A1及びA2がそれぞれ1種類であり同一の式[1]で示される繰り返し単位のみでもよく、また、C1、C2、A1及びA2が複数種であり、複数種の式[1]で示される繰り返し単位でもよい。
また、式[1]で示される繰り返し単位を有する重合体が有する式[8]で示される繰り返し単位は、C1、C2、A2、R41及びR42がそれぞれ1種類であり同一の式[8]で示される繰り返し単位のみでもよく、また、C1、C2、A2、R41及びR42が複数種であり複数種の式[8]で示される繰り返し単位でもよい。
(a)成分、(b)成分及び(c)成分の反応は、通常有機溶媒中で行う。その際に用いる有機溶媒としては、生成したポリイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム又は4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、有機溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
(a)成分、(b)成分及び(c)成分を反応させる順番としては、例えば(a)成分と(b)成分を反応させた後、(c)成分を添加して反応させる方法が挙げられる。このように反応させることにより、得られる式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体は、式[1]で示される繰り返し単位と式[8]で示される繰り返し単位がランダムに結合したランダム共重合体となるため好ましい。
一方、(a)成分と(b)成分を反応させて式[1]で示される繰り返し単位からなるウレア系重合体を得る工程と、(b)成分と(c)成分を反応させて式[8]で示される繰り返し単位からなるポリイミド前駆体を得る工程を有し、その後、得られた式[1]で示される繰り返し単位からなるウレア系重合体と式[8]で示される繰り返し単位からなるポリイミド前駆体とを反応させる方法では、得られる式[1]で示される繰り返し単位を有する重合体が、ポリウレアとポリイミド前駆体とのブロック共重合体のような構造、すなわち、上記ランダム共重合体と比較して、それぞれ重合度がより大きいウレア系重合体とポリイミド前駆体とから成るポリマー構造になる。この場合、溶解性の低下や、液晶配向剤としたときの塗布性の悪化等の問題が生じることがある。
(a)成分、(b)成分及び(c)成分を反応させる温度は、−20℃〜150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは−5℃〜100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となる。そのため、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の総量の濃度は、反応液中で好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することもできる。
反応させる(a)成分、(b)成分及び(c)成分の割合は、例えば、モル比で、(a)成分と(c)成分との合計量:(b)成分=0.8:1〜1.2:1であることが好ましい。(a)成分と(c)成分との合計量に占める(a)成分の割合は、20モル%〜60モル%であることが、電圧保持率と残留DCとの両立のためには好ましい。(a)成分の割合が過小であると、低温焼成時に電圧保持率が低くなる場合があり、過大であると、残留DCがたまりやすくなるためである。
また、ポリイミド前駆体である上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリアミック酸や上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリアミック酸エステルを閉環(イミド化)させることにより、式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミドを得ることができる。但し、本発明の液晶配向膜の製造方法において使用する液晶配向剤が含有する式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミドにおいては、アミド酸基の閉環率(イミド化率ともいう)が50%未満である必要がある。なお、本明細書でいうイミド化率とは、テトラカルボン酸二無水物由来のイミド基とカルボキシル基との合計量に占めるイミド基の割合のことである。
ポリイミド前駆体をイミド化させる方法としては、ポリイミド前駆体の溶液をそのまま加熱する熱イミド化又はポリイミド前駆体の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。
ポリイミド前駆体を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100℃〜400℃、好ましくは120℃〜250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
ポリイミド前駆体の触媒イミド化は、ポリイミド前駆体の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、−20〜250℃、好ましくは0〜180℃で攪拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1〜50モル倍、好ましくは3〜30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン又はトリオクチルアミンなどを挙げることができ、中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸又は無水ピロメリット酸などを挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
ポリイミド前駆体又はポリイミドの反応溶液から、生成したポリイミド前駆体又はポリイミドを回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させた重合体は濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2〜10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類又は炭化水素などが挙げられ、これらの内から選ばれる3種類以上の溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
本発明で使用する上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体や、上記式[1]で示される繰り返し単位を有しイミド化率が50%未満のポリイミドの分子量は、そこから得られる液晶配向膜の強度、膜形成時の作業性及び塗膜性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量で5,000〜1,000,000とするのが好ましく、より好ましくは、10,000〜150,000である。
本発明の液晶配向膜の製造方法で使用する液晶配向剤が含有する上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体や、上記式[1]で示される繰り返し単位を有しイミド化率が50%未満のポリイミドの配合割合は特に限定されないが、例えば、上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体及び上記式[1]で示される繰り返し単位を有しイミド化率が50%未満のポリイミドの総量が、0.1〜30質量%、好ましくは、3〜10質量%である。
また、液晶配向膜の製造に使用する液晶配向剤は、重合体成分が、上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体や、上記式[1]で示される繰り返し単位を有しイミド化率が50%未満のポリイミドのみであってもよく、また、これら以外の他の重合体が混合されていても良い。その際、他の重合体の含有量は、重合体成分全量の0.5質量%〜15質量%、好ましくは1質量%〜10質量%である。それ以外の他の重合体としては、上記式[1]で示される繰り返し単位を有さないポリイミド前駆体やポリイミドが挙げられる。さらには、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリスチレン、ポリアミド又はポリシロキサンなどが挙げられる。
液晶配向剤が含有する溶媒は、上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体や、上記式[1]で示される繰り返し単位を有しイミド化率が50%未満のポリイミドを溶解することができるものであれば、特に限定はされず、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム及び4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどの有機溶媒が挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
液晶配向剤が含有する溶媒は、塗布により均一な液晶配向膜を形成するという観点から、溶媒の含有量が70〜99.9質量%であることが好ましい。この含有量は、目的とする液晶配向膜の膜厚によって適宜変更することができる。
液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない限り、液晶配向剤を塗布した際の液晶配向膜の塗膜性や表面平滑性を向上させる有機溶媒、すなわち貧溶媒を用いることができる。
塗膜性や表面平滑性を向上させる貧溶媒の具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2−ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、3−エトキシブチルアセタート、1−メチルペンチルアセタート、2−エチルブチルアセタート、2−エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、2−(メトキシメトキシ)エタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルエーテル又はジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1−(ブトキシエトキシ)プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル又は乳酸イソアミルエステルなどの溶媒の表面張力が低い有機溶媒が挙げられる。
これらの貧溶媒は1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。上記のような貧溶媒を用いる場合は、液晶配向剤に含まれる有機溶媒全体の5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜60質量%である。
液晶配向剤には、本発明の効果を損なわない限り、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基又はシクロカーボネート基を有する架橋性化合物、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物、又は重合性不飽和結合を有する架橋性化合物を添加することもできる。これら置換基や重合性不飽和結合は、架橋性化合物中に2個以上有する必要がある。
エポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物としては、例えば、ビスフェノールアセトングリシジルエーテル、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルアミノジフェニレン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビス(アミノエチル)シクロヘキサン、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン、ビスフェノールヘキサフルオロアセトジグリシジルエーテル、1,3−ビス(1−(2,3−エポキシプロポキシ)−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロメチル)ベンゼン、4,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)オクタフルオロビフェニル、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、2−(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)−2−(4−(1,1−ビス(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)エチル)フェニル)プロパン又は1,3−ビス(4−(1−(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)−1−(4−(1−(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチル)フェノキシ)−2−プロパノールなどが挙げられる。
オキセタン基を有する架橋性化合物は、下記の式[4]で示すオキセタン基を少なくとも2個有する架橋性化合物である。
具体的には、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の58頁〜59頁に掲載される式[4a]〜式[4k]で示される架橋性化合物が挙げられる。
シクロカーボネート基を有する架橋性化合物としては、下記の式[5]で示されるシクロカーボネート基を少なくとも2個有する架橋性化合物である。
具体的には、国際公開公報WO2012/01132751(2012.2.2公開)の76頁〜82頁に掲載される式[5−1]〜式[5−42]で示される架橋性化合物が挙げられる。
ヒドロキシル基及びアルコキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物としては、例えば、ヒドロキシル基又はアルコキシル基を有するアミノ樹脂、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂、グリコールウリル−ホルムアルデヒド樹脂、スクシニルアミド−ホルムアルデヒド樹脂又はエチレン尿素−ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。具体的には、アミノ基の水素原子がメチロール基又はアルコキシメチル基又はその両方で置換されたメラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体、又はグリコールウリルを用いることができる。このメラミン誘導体又はベンゾグアナミン誘導体は、2量体又は3量体として存在することも可能である。これらはトリアジン環1個当たり、メチロール基又はアルコキシメチル基を平均3個以上6個以下有するものが好ましい。
このようなメラミン誘導体又はベンゾグアナミン誘導体の例としては、市販品のトリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均3.7個置換されているMX−750、トリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均5.8個置換されているMW−30(以上、三和ケミカル社製)やサイメル300、301、303、350、370、771、325、327、703、712などのメトキシメチル化メラミン、サイメル235、236、238、212、253、254などのメトキシメチル化ブトキシメチル化メラミン、サイメル506、508などのブトキシメチル化メラミン、サイメル1141のようなカルボキシル基含有メトキシメチル化イソブトキシメチル化メラミン、サイメル1123のようなメトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1123−10のようなメトキシメチル化ブトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1128のようなブトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1125−80のようなカルボキシル基含有メトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン(以上、三井サイアナミド社製)が挙げられる。また、グリコールウリルの例として、サイメル1170のようなブトキシメチル化グリコールウリル、サイメル1172のようなメチロール化グリコールウリル等、パウダーリンク1174のようなメトキシメチロール化グリコールウリル等が挙げられる。
ヒドロキシル基又はアルコキシル基を有するベンゼン又はフェノール性化合物としては、例えば、1,3,5−トリス(メトキシメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(イソプロポキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(sec−ブトキシメチル)ベンゼン又は2,6−ジヒドロキシメチル−p−tert−ブチルフェノール等が挙げられる。
より具体的には、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の62頁〜66頁に掲載される、式[6−1]〜式[6−48]で示される架橋性化合物が挙げられる。
重合性不飽和結合を有する架橋性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン又はグリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を分子内に3個有する架橋性化合物、さらに、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイドビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート又はヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和基を分子内に2個有する架橋性化合物、加えて、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸エステル又はN−メチロール(メタ)アクリルアミド等の重合性不飽和基を分子内に1個有する架橋性化合物が挙げられる。
加えて、下記の式[7]で示される化合物を用いることもできる。
(式[7]中、E
1はシクロヘキサン環、ビシクロヘキサン環、ベンゼン環、ビフェニル環、ターフェニル環、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環又はフェナントレン環からなる群から選ばれる基を示し、E
2は下記の式[7a]又は式[7b]から選ばれる基を示し、nは1〜4の整数を示す。)
上記化合物は架橋性化合物の一例であり、これらに限定されるものではない。また、液晶配向剤に用いる架橋性化合物は、1種類であってもよく、2種類以上組み合わせてもよい。
液晶配向剤における、架橋性化合物の含有量は、すべての重合体成分100質量部に対して、0.1〜150質量部であることが好ましい。架橋反応が進行し目的の効果を発現させるためには、すべての重合体成分100質量部に対して0.1〜100質量部がより好ましく、特に、1〜50質量部が最も好ましい。
本発明の組成物を用いた液晶配向処理剤を用いて液晶配向膜とした際、液晶配向膜中の電荷移動を促進し、該液晶配向膜を用いた液晶セルの電荷抜けを促進させる化合物として、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の69頁〜73頁に掲載される、式[M1]〜式[M156]で示される窒素含有複素環アミン化合物を添加することが好ましい。このアミン化合物は、組成物に直接添加しても構わないが、適当な溶媒で濃度0.1質量%〜10質量%、好ましくは1質量%〜7質量%の溶液にしてから添加することが好ましい。この溶媒としては、上述した特定ポリイミド系重合体を溶解させる有機溶媒であれば特に限定されない。
液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない限り、液晶配向剤を塗布した際の液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物を含有することができる。さらに、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物などを含有してもよい。
液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。
より具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(以上、トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、F173、R−30(以上、大日本インキ社製)、フロラードFC430、FC431(以上、住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(以上、旭硝子社製)などが挙げられる。これらの界面活性剤の使用割合は、液晶配向剤に含有されるすべての重合体成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、以下に示す官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物が挙げられる。
例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン又はN,N,N’,N’,−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
これら基板との密着させる化合物を使用する場合は、液晶配向剤に含有されるすべての重合体成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量部である。0.1質量部未満であると密着性向上の効果は期待できず、30質量部よりも多くなると液晶配向剤の保存安定性が悪くなる場合がある。
液晶配向剤には、上記の貧溶媒、架橋性化合物、液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物及び基板との密着させる化合物の他に、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体や導電物質を添加してもよい。
本発明においては、このような液晶配向剤を、基板上に塗布した後、焼成することにより、イミド化率が50〜70%の液晶配向膜を得る。
基板としては、目的とするデバイスに応じて、ガラス基板、シリコンウェハ、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板などを用いることができる。プロセスの簡素化の観点からは、液晶駆動のためのITO(Indium Tin Oxide)電極などが形成された基板を用いることが好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならばシリコンウェハなどの不透明な基板も使用でき、この場合の電極としてはアルミなどの光を反射する材料も使用できる。本発明においては、焼成温度を低くすることができるため、耐熱性が低い基板であるプラスチック基板等も用いることができる。
液晶配向剤を基板へ塗布する方法は特に限定されないが、工業的には、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法、スプレー法、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷又はインクジェット法などで行う方法が一般的である。目的に応じてこれらを用いてもよい。
液晶配向剤を基板上に塗布した後、焼成する。焼成条件は、焼成後に得られる液晶配向膜のイミド化率が50〜70%になる条件とする。例えば、焼成温度は210℃以下、好ましくは120〜200℃である。また、焼成時間は例えば5分〜2時間、好ましくは10分〜30分である。このように、低い温度で焼成することができるため、耐熱性が低いプラスチック基板を用いることができる。また、高温での焼成に伴う液晶表示素子のカラーフィルターの色特性の劣化の抑制や、液晶表示素子の製造におけるエネルギーコストを削減することができる。
焼成を行う加熱手段としては、熱循環型オーブン又はIR(赤外線)型オーブンなどが挙げられる。焼成して得られる液晶配向膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5〜300nm、より好ましくは10〜100nmである。
液晶を水平配向や傾斜配向させる場合は、焼成して得られた液晶配向膜をラビング又は偏光紫外線照射などで処理する。また、垂直配向用途などの場合では配向処理なしでも液晶配向膜として用いることができる。
このように、上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体や、上記式[1]で示される繰り返し単位を有しイミド化率が50%未満であるポリイミドを含有する液晶配向剤を、基板に塗布した後焼成することによって得たイミド化率が50〜60%の液晶配向膜は、イミド化率が低くカルボキシル基が多く存在し且つ式[1]で示される繰り返し単位を有するためか、後述する実施例に示すように、残留DCが低く且つ電圧保持率が高い。一方、例えば、特許文献1のようにポリ尿素の繰り返し単位(特許文献1の一般式(I))とポリイミドの繰り返し単位(特許文献1の一般式(II))からなる液晶配向膜の場合は、本発明と比較して残留DCが非常に高い。なお、特許文献1では液晶配向剤を塗布した後に低温で焼成しているが、焼成する前の液晶配向剤の段階でポリイミドにしているため、特許文献1で得られる液晶配向膜のイミド化率は、本発明とは異なり、非常に高い。
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により液晶配向剤を塗布及び焼成して液晶配向膜付き基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製して液晶表示素子としたものである。一例を挙げるならば、対向するように配置された2枚の基板と、基板間に設けられた液晶層と、基板と液晶層との間に設けられ本発明の上記液晶配向膜の製造方法により形成された液晶配向膜とを有する液晶セルを具備する液晶表示素子である。このような本発明の液晶表示素子としては、ツイストネマティック(TN:Twisted Nematic)方式、垂直配向(VA:Vertical Alignment)方式や、水平配向(IPS:In−Plane Switching)方式、OCB配向(OCB:Optically Compensated Bend)等、種々のものが挙げられる。
液晶セルの作製方法としては、液晶配向膜の形成された一対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、又は、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などが例示できる。
液晶には、正の誘電異方性を有するポジ型液晶や負の誘電異方性を有するネガ型液晶、具体的には、例えば、メルク社製のMLC−2003、MLC−6608、MLC−6609などを用いることができる。
また、本発明の液晶配向膜は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、電極間に電圧を印加しつつ、活性エネルギー線の照射及び加熱の少なくとも一方により重合性化合物を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子にも好ましく用いられる。ここで、活性エネルギー線としては、紫外線が好適である。紫外線は、波長が300〜400nm、好ましくは310〜360nmである。加熱による重合の場合、加熱温度は40〜120℃、好ましくは60〜80℃である。また、紫外線と加熱を同時に行ってもよい。
上記の液晶表示素子は、PSA(Polymer Sustained Alignment)方式により、液晶分子のプレチルトを制御するものである。例えば活性エネルギー線を用いるPSA方式では、液晶材料中に少量の光重合性化合物、例えば光重合性モノマーを混入しておき、液晶セルを組み立てた後、液晶層に所定の電圧を印加した状態で光重合性化合物に紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより重合させ、この生成した重合体によって液晶分子のプレチルトを制御する。この重合体が生成するときの液晶分子の配向状態が、電圧を取り去った後においても記憶されるので、液晶層に形成される電界などを制御することにより、液晶分子のプレチルトを調整することができる。また、PSA方式では、ラビング処理を必要としないので、ラビング処理によってプレチルトを制御することが難しい垂直配向型の液晶層の形成に適している。
PSA方式の液晶セル作製は、上記と同様であり、液晶配向膜の形成された一対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、又は、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などが挙げられる。
そして、PSA方式の場合、液晶には、熱や活性エネルギー線照射により重合する重合性化合物が混合される。重合性化合物としては、アクリレート基やメタクリレート基等の重合性不飽和基を分子内に1個以上有する化合物が挙げられる。その際、重合性化合物は、液晶成分の100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部である。重合性化合物が0.01質量部未満であると、重合性化合物が重合せずに液晶の配向を制御できなくなり、10質量部よりも多くなると、未反応の重合性化合物が多くなって液晶表示素子の焼き付き特性が低下する。
液晶セルを作製した後は、液晶セルに交流又は直流の電圧を印加しながら、熱や活性エネルギー線を照射して重合性化合物を重合する。これにより、液晶分子の配向を制御することができる。
加えて、本発明の液晶配向膜は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性基を含む液晶配向膜を配置し、電極間に電圧を印加しつつ重合性基を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子にも用いることができる(SC−PVA)。ここで、活性エネルギー線としては、紫外線が好適である。紫外線は、波長が300〜400nm、好ましくは310〜360nmである。加熱による重合の場合、加熱温度は40〜120℃、好ましくは60〜80℃である。また、紫外線と加熱を同時に行ってもよい。
活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方より重合する重合性基を含む液晶配向膜を得るためには、この重合性基を含む化合物を上記液晶配向剤中に添加する方法が挙げられる。また、(a)成分、(b)成分や(c)成分として重合性基を含む化合物を用いる等して、液晶配向剤に含有される上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体や、上記式[1]で示される繰り返し単位を有し且つイミド化率が50%未満のポリイミドが、重合性基を含むようにする方法が挙げられる。
そして、このような活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方より重合する重合性基を含む液晶配向膜の形成された一対の基板を用意した後は、上記と同様に、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、又は、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などにより、液晶セルを製造することができる。
そして、液晶セルを作製した後は、液晶セルに交流又は直流の電圧を印加しながら、熱や活性エネルギー線を照射することで、液晶分子の配向を制御することができる。
以上のようにして、本発明の液晶配向膜を用いて作製された液晶表示素子は、残留DCが低く且つ電圧保持率が高いため、信頼性に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビなどに好適に利用できる。また、焼成温度が低いため、軽量であるプラスチック等を基板として用いることができ、液晶表示素子の軽量化を図ることができる。
以下に実施例を挙げて説明する。なお、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。下記で用いた略号は以下の通りである。
(ジイソシアネート)
A−1:2,4−ジイソシアン酸トリレン
(テトラカルボン酸二無水物)
B−1:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
(ジアミン化合物)
C−1:1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン
C−2:N−(3−ピコリル)−3,5−ジアミノベンズアミド
C−3:1,3−ジアミノ−4−{4−(4−n−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシ}ベンゼン
(有機溶媒)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BCS:ブチルセロソルブ
以下に、本実施例で行った測定方法について示す。
(ポリマーの分子量測定)
ポリアミック酸及びポリイミドの分子量は、該ポリアミック酸やポリイミドをGPC(常温ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド換算値として数平均分子量と重量平均分子量を算出した。
GPC装置:昭和電工社製 GPC−101、
カラム:Shodex社製カラム(KD−803、KD−805の直列)
カラム温度:50℃
溶離液:N,N’−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・H2O)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量 約900,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(分子量 約12,000、4,000、1,000)
(ポリイミドのイミド化率の測定)
ポリイミドのイミド化率は次のようにして測定した。
ポリイミド粉末20mgをNMRサンプル管に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6、0.05%TMS(テトラメチルシラン)混合品)0.53mlを添加し、完全に溶解させた。この溶液を日本電子データム社製NMR測定器(JNM−ECA500)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5ppm〜10.0ppm付近に現れるアミック酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い次式によって求めた。
イミド化率(%)=(1−α・x/y)×100
上記式において、xはアミック酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミック酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミック酸のNH基プロトン一個に対する基準プロトンの個数割合である。
<合成例1>
A−1(1.56g,9.00mmol)、C−1(1.53g、8,98mmol)、C−2(1.30g、5.36mmol)、C−3(1.37g、3.59mmol)をNMP(23g)中で混合し40℃で15時間反応させた後、B−1(1.65g,8.46mmol)、NMP(19g)を添加し、さらに6時間反応させポリマー溶液A(上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリアミック酸の溶液)(ポリマー濃度15質量%)を得た。このポリマーの数平均分子量は16,020、重量平均分子量は49,319であった。
<合成例2>
A−1(0.783g,4.50mmol)、C−1(1.53g、8,98mmol)、C−2(1.30g、5.36mmol)、C−3(1.37g、3.59mmol)をNMP(19g)中で混合し40℃で15時間反応させた後、B−1(2.63g,13.4mmol)、NMP(23g)を添加し、さらに6時間反応させポリマー溶液B(上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリアミック酸の溶液)(ポリマー濃度15質量%)を得た。このポリマーの数平均分子量は11,555、重量平均分子量は37,656であった。
<比較合成例1>
A−1(3.82g,21.9mmol)、C−1(1.87g、10.9mmol)、C−2(1.59g、6.59mmol)、C−3(1.67g、4.38mmol)をNMP(50g)中で混合した後、40℃で15時間反応させポリマー溶液C(ポリウレアの溶液)(ポリマー濃度15質量%)を得た。このポリマーの数平均分子量は12,731、重量平均分子量は32,967であった。
<比較合成例2>
B−1(3.35g,17.0mmol)、C−1(1.53g、8,98mmol)、C−2(1.30g、5.36mmol)、C−3(1.37g、3.59mmol)をNMP(42g)中で混合した後、40℃で15時間反応させ、ポリマー溶液D(ポリアミック酸の溶液)(ポリマー濃度15質量%)を得た。このポリマーの数平均分子量は14,833、重量平均分子量は38,984であった。
<比較合成例3>
合成例1に記載のポリマー溶液A(20g)にNMPを加え濃度が6質量%になるように希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(3.65g)、ピリジン(1.70g)を加え、50℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(200g)に注ぎ、生成した沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥し白色粉末を得た。このポリイミドのイミド化率は100%であり、数平均分子量は13,084、重量平均分子量は40,857であった。
この粉末1.99gにNMP 11.3gを加えて、50℃にて30hr攪拌して溶解させた後、ポリマー溶液E(上記式[1]で示される繰り返し単位を有し且つイミド化率100%のポリイミドの溶液)(ポリマー濃度15質量%)を得た。
<実施例1>液晶配向剤の調製及び液晶セルの作製
合成例1で得られたポリマー溶液Aに、NMP、BCSを加えて攪拌し、ポリマーが6質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%になるよう調製した。この溶液を細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶配向剤を得た。
得られた液晶配向剤をITO電極付きガラス基板にスピンコートし、80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、180℃のIR式オーブンで15分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜(液晶配向膜)を形成させて液晶配向膜付き基板を得た。この液晶配向膜付き基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜面上に4μmのスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷し、もう1枚の基板を液晶配向膜面が向き合うようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC−6608(メルク・ジャパン社製)を注入し、注入口を封止して、液晶セルを得た。
<実施例2及び比較例1〜3>
合成例1で得られたポリマー溶液Aのかわりに、合成例2及び比較合成例1〜3で得られたポリマー溶液B〜Eをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶セルを得た。
<実施例3>
焼成温度を200℃とした以外は、実施例1と同様にして、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶セルを得た。
<比較例4>
焼成温度を230℃とした以外は、実施例1と同様にして、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶セルを得た。
<実施例4>
合成例1で得られたポリマー溶液Aに、NMP、BCSを加えて攪拌し、ポリマーが3.5質量%、NMPが66.5質量%、BCSが30質量%になるよう調製した。この溶液を細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、−15℃にて48時間保管した後、インクジェット塗布性の評価を行った。インクジェット塗布機には、HIS−200(日立プラントテクノロジー社製)を用いた。塗布は、純水及びIPAにて洗浄を行ったITO(酸化インジウムスズ)蒸着基板上に、ノズルピッチ0.423mm、スキャンピッチ0.5mm、塗布速度40mm/秒にて行なった。その後60秒放置し、80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、180℃のIR式オーブンで15分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜(液晶配向膜)を形成させて液晶配向膜付き基板を得、実施例1と同様にして、液晶セルを得た。
<電圧保持率の測定>
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた液晶セルに、80℃の温度下で1Vの電圧を60μs印加し、50ms後の電圧を測定して、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率として評価した。結果を表1に示す。
<残留DCの測定>
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた液晶セルに、30Hz、6Vppの交流電圧、及び1Vの直流電圧を印加し、23℃の温度下で24時間駆動させた。その後フリッカを評価し、その強度が最小となる印加電圧を残留DCとした(フリッカ消去法)。結果を表1に示す。
<液晶セルの作製及び液晶配向性の評価(PSAセル)>
実施例1で得られたポリマー溶液A、実施例2で得られたポリマー溶液Bを細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、−15℃にて48時間保管した溶液を用いて、液晶セルの作製及び液晶配向性の評価(PSAセル)を行った。この溶液を、純水及びIPAにて洗浄した中心に10×10mmのパターン間隔20μmのITO電極付き基板(縦40mm×横30mm、厚さ0.7mm)と中心に10×40mmのITO電極付き基板(縦40mm×横30mm、厚さ0.7mm)のITO面にスピンコートし、80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、180℃のIR式オーブンで15分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜(液晶配向膜)を形成させて液晶配向膜付き基板を得た。塗膜面を純水にて洗浄した後、熱循環型クリーンオーブン中にて100℃で15分間加熱処理をして、液晶配向膜付き基板を得た。
この液晶配向膜付き基板を、液晶配向膜面を内側にして、6μmのスペーサーを挟んで組み合わせ、シール剤で周囲を接着して空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、ネマティック液晶(MLC−6608)(メルク・ジャパン社製)に、下記の式[9]で示される重合性化合物を、ネマティック液晶(MLC−6608)の100質量%に対して下記の式[9]で示される重合性化合物を0.3質量%混合した液晶を注入し、注入口を封止して、液晶セルを得た。
得られた液晶セルに、交流5Vの電圧を印加しながら、照度60mWのメタルハライドランプを用いて、350nm以下の波長をカットし、365nm換算で20J/cm2の紫外線照射を行い、液晶の配向方向が制御された液晶セル(PSAセル)を得た。液晶セルに紫外線を照射している際の照射装置内の温度は、50℃であった。
この液晶セルの紫外線照射前と紫外線照射後の液晶の応答速度を測定した。応答速度は、透過率90%から透過率10%までのT90→T10を測定した。
実施例で得られたPSAセルは、紫外線照射前の液晶セルに比べて、紫外線照射後の液晶セルの応答速度が速くなったことから、液晶の配向方向が制御されたことを確認した。また、いずれの液晶セルとも、偏光顕微鏡(ECLIPSE E600WPOL)(ニコン社製)での観察により、液晶は均一に配向していることを確認した。
<液晶配向膜のイミド化率の測定>
実施例1〜4及び比較例1〜4において、液晶配向膜付き基板を得た段階で、液晶配向膜のイミド化率を測定した。液晶配向膜のイミド化率の測定方法は以下である。液晶配向剤をITO電極付きガラス基板にスピンコートし、80℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、IR式オーブンで焼成を行い、膜厚100nmの塗膜(液晶配向膜)を形成させて液晶配向膜付き基板を得た。この液晶配向膜をカッターナイフで削り取り、FT-IRにてKBr法によりイミド化率の測定を行なった。
この結果、表1に示すように、上記式[1]で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体を含有する実施例1〜実施例4の液晶配向剤を用いイミド化率が50〜70%の液晶配向膜を有する液晶セルでは、電圧保持率が高く、残留DCが小さかった。一方、ポリウレアのみからなる液晶配向膜を有する比較例1の液晶セルでは、電圧保持率は高いが、残留DCが高かった。また、比較例2の式[1]で表される繰り返し単位を有さずポリアミック酸のみからなる液晶配向膜を有する液晶セルでは残留DCは小さいが、電圧保持率が低かった。また、イミド化率が高い液晶配向膜を有する比較例3及び比較例4の液晶セルでは、電圧保持率は高いが、残留DCが大きかった。なお、残留DC及び電圧保持率という電気特性が測定できているため、測定された液晶配向膜は液晶配向性も良好であると言える。