[トルクコンバータの全体構成]
図1は、本発明の一実施形態としてのトルクコンバータ1の縦断面概略図を示している。図1の右側にエンジン(図示せず)が配置され、図1の左側にトランスミッション(図示せず)が配置されている。図1に記載のO−Oがトルクコンバータ1の回転軸線である。
トルクコンバータ1は、トルクコンバータ本体2と、ロックアップ装置6とを、有している。図1では、トルクコンバータ本体2は、主に、フロントカバー3と、3種の羽根車(インペラ2、タービン5、及びステータ)等から構成されている。ここでは、ステータについては、図示を省略している。
トルクコンバータ本体2の構成は、従来と同様であるので、簡単に説明する。フロントカバー3は、エンジンのクランクシャフトに連結される円板状の部材である。フロントカバー3は、インペラ2とともに、トルクコンバータ1の作動油室を、構成している。タービン5は、作動油室内に配置されインペラ2に対して、軸方向に対向して配置されている。タービン5の内周部5aは、タービンハブ11に連結されている。タービンハブ11は円筒状の部材であり、トランスミッションのメインドライブシャフト(図示せず)に連結されている。タービンハブ11の内周面には、スプラインが形成されている。スプラインは、トランスミッション側のメインドライブシャフトとスプライン係合している。
[ロックアップ装置の構成]
ここでは、図1から図8を用いて、ロックアップ装置6について説明する。ロックアップ装置6は、フロントカバー3からトルクを機械的にタービン5に伝達しつつ、トルク変動を吸収・減衰するための装置である。すなわち、ロックアップ装置6は、クラッチ機能とダンパー機能とを有している。ロックアップ装置6は、図1に示すように、フロントカバー3とタービン5との間の空間に、配置されている。
図1に示すように、ロックアップ装置6は、主に、ピストン8(入力部材の一例)と、ダンパー機構13と、抵抗可変機構50とを、備える。図2に示すように、ダンパー機構13は、ピストン8に対して回転可能に配置される第1ドリブンプレート10(第1出力部材の一例)を、有する。ピストン8と第1ドリブンプレート10との相対回転によって、後述するトーションスプリング12が伸縮する。また、トーションスプリング12によって、トルク変動が吸収・減衰される。
図1から図3に示すように、ピストン8は、ダンパー機構13と、エンジン側のカバー部材すなわちフロントカバー3との軸方向間に、配置されている。ピストン8は、環状かつ円板状の部材であり、トルクコンバータ1内の油圧の変化によって軸方向に移動可能な部材である。
図2に示すように、ピストン8は、摩擦連結部15と、動力伝達部17とを、有している。摩擦連結部15は、ピストン8の外周側に設けられている。摩擦連結部15は、環状かつ平坦な形状に形成されている。摩擦連結部15は、フロントカバー3の環状かつ平坦な摩擦面3aに、対向している。また、摩擦連結部15のエンジン側には、摩擦フェーシング16が、装着されている。
動力伝達部17は、ダンパー機構13及び抵抗可変機構50に、トルクを伝達する。動力伝達部17は、摩擦連結部15の外周側に形成されている。具体的には、動力伝達部17は、摩擦連結部15の外周部から軸方向に延びる部分である。
図2及び図3に示すように、動力伝達部17は、第1切欠部17aと、第2切欠部17bとを、有している。第1切欠部17a及び第2切欠部17bには、ダンパー機構13及び抵抗可変機構50が、軸方向に移動自在且つ周方向に移動不能に係合している。
ここで、動力伝達部17には、複数の第1切欠部17a及び複数の第2切欠部17bが、形成されている。複数の第1切欠部17aそれぞれは、周方向に所定の間隔を隔てて、設けられている。一対の第2切欠部17bは、隣接する第1切欠部17aの間に、設けられている。また、一対の第2切欠部17bは、周方向に所定の間隔を隔てて設けられている。
第1切欠部17a及び第2切欠部17bには、後述するダンパー機構13のドライブプレート9と、後述する抵抗可変機構50の位置決め部材55とが、係合する。
図1及び図2に示すように、ダンパー機構13は、主に、一対のドライブプレート9と、第1ドリブンプレート10(第1出力部材の一例)と、複数のトーションスプリング12(弾性部材の一例)とから、構成されている。
一対のドライブプレート9は、ピストン8と係合し、且つトーションスプリング12を保持する。これにより、ドライブプレート9にピストン8からトルクが入力されると、このトルクが、トーションスプリング12に入力される。
一対のドライブプレート9は、互いに対向して配置され、固定部材例えばリベット9dによって互いに固定される。一対のドライブプレート9それぞれは、環状のプレート部材である。各ドライブプレート9は、主に、本体部9aと、第1ばね支持部9bと、第1係合部9cとを、有している。
本体部9aは、実質的に環状に形成されている。第1ばね支持部9bは、本体部9aに形成された窓部である。ここでは、複数の第1ばね支持部9b(窓部)が、周方向に所定の間隔を隔てて、本体部9aに配置されている。第1ばね支持部9bには、トーションスプリング12が配置される。第1ばね支持部9bの円周方向端部において、本体部9aは、トーションスプリング12に当接し押圧する。
第1係合部9cは、本体部9aの外周部に形成されている。具体的には、第1係合部9cは、突出部であり、周方向に間隔を隔てて設けられている。第1係合部9cは、ピストン8に対して、軸方向に移動自在且つ周方向に移動不能に係合する。詳細には、第1係合部9cは、ピストン8の動力伝達部17の第1切欠部17a及び第2切欠部17bに対して、軸方向に移動自在且つ周方向に移動不能に係合する。第1係合部9cは、第1切欠部17a及び第2切欠部17bに配置される。第1係合部9cは、第1切欠部17a及び第2切欠部17bにおいて、軸方向に移動自在である。第1係合部9cは、第1切欠部17aにおいて、周方向に互いに対向する壁部に当接する。また、第1係合部9cは、第2切欠部17bにおいて、第1切欠部17a側の壁部に当接する。
第1ドリブンプレート10は、ピストン8からドライブプレート9に入力されたトルクを、トーションスプリング12を介して、出力する部材である。詳細には、第1ドリブンプレート10は、トーションスプリング12においてトルク変動が吸収・減衰された後に、トルクを出力する。第1ドリブンプレート10は、ドライブプレート9に対して、相対回転可能に配置される。また、第1ドリブンプレート10は、内周側において、タービンハブ11に固定されている。
具体的には、第1ドリブンプレート10は、環状かつ円板状の部材である。第1ドリブンプレート10は、主に、本体部10aと、第2ばね支持部10bと、固定部10cとを、有している。本体部10aは、実質的に環状に形成されている。第2ばね支持部10bは、本体部10aに形成された孔部である。第2ばね支持部10bは、軸方向において、第1ばね支持部9bと対向して配置される。この第2ばね支持部10bには、トーションスプリング12が配置される。ここでは、複数の第2ばね支持部10bが、周方向に所定の間隔を隔てて、本体部10aに配置されている。
固定部10cは、トルクコンバータ本体2に固定される部分である。具体的には、固定部は、環状に形成されている。固定部は、固定部材例えばリベット10dを介して、タービンハブ11に固定される。
複数のトーションスプリング12は、ドライブプレート9と第1ドリブンプレート10との相対回転によって、伸縮する。複数のトーションスプリング12それぞれは、周方向に所定の間隔を隔てて、ドライブプレート9の第1ばね支持部9bと、第1ドリブンプレート10の第2ばね支持部10bとに、配置されている。この状態で、ドライブプレート9がピストン8によって回転させられると、複数のトーションスプリング12が、ドライブプレート9と第1ドリブンプレート10との間で、圧縮される。これにより、トルク変動が吸収される。
また、トーションスプリング12は、ドライブプレート9の第1ばね支持部9bと、第1ドリブンプレート10の第2ばね支持部とに、摺動する。この摺動によって、第1摺動抵抗(第1ヒステリシストルク)が発生する。この第1摺動抵抗によって、トルク変動が吸収・減衰される。すなわち、第1摺動抵抗は、ダンパー機構13におけるトルク変動の吸収・減衰に寄与している。
抵抗可変機構50は、ピストン8と後述する第2ドリブンプレート51(第2出力部材の一例)との相対回転によって、ピストン8と第2ドリブンプレート51との間において、抵抗を発生する。また、抵抗可変機構50は、ピストン8と第2ドリブンプレート51との相対回転量に応じて、抵抗を変更可能である。この抵抗によって、トルク変動が吸収・減衰される。
図1及び図2に示すように、抵抗可変機構50は、第2ドリブンプレート51と、ハウジング部材52と、抵抗発生部材53と、押圧機構54と、位置決め部材55とを、有している。
第2ドリブンプレート51は、抵抗発生部材53の抵抗に応じて、トルクを出力する部材である。第2ドリブンプレート51は、ピストン8に対して相対回転可能に配置される。また、第2ドリブンプレート51は、内周側において、タービンハブ11に固定されている。
具体的には、図4A及び図4Bに示すように、第2ドリブンプレート51は、実質的に環状かつ円板状の部材である。第2ドリブンプレート51は、固定部51aと、第1装着部51bと、第1収容部51cと、傾斜部51dとを、有している。固定部51aは、タービンハブ11に固定される部分である。具体的には、固定部51aは、環状に形成されている。固定部51aは、固定部材例えばリベット10dを介して、タービンハブ11に固定される。
第1装着部51bには、ハウジング部材52が装着される。第1装着部51bには、ハウジング部材52を装着するための複数の雌ねじ部が、形成されている。第1収容部51cには、ハウジング部材52が対向配置される。第1収容部51cとハウジング部材52との軸方向間には、抵抗発生部材53と、押圧機構54と、位置決め部材55とが、配置される。
第1収容部51cの内周側には、押圧機構54を支持するための第1支持部51eが、形成されている。第1支持部51eには、複数の第1凹部151fと、複数の第2凹部251fとが、形成されている。複数の第1凹部151fは、周方向に間隔を隔てて設けられている。第1凹部151fには、後述する押圧機構54のスライダ54a(第3係合部254a)が係合する。複数の第2凹部251fは、周方向に間隔を隔てて設けられている。第2凹部251fには、後述する押圧機構54の押圧部材54b(第4係合部254b)が係合する。また、第1凹部151fと第2凹部251fとは、周方向に、互いに隣接して配置されている。
図4Aから図4Cに示すように、傾斜部51dは、第2ドリブンプレート51の外周部において周方向に傾斜する部分である。詳細には、傾斜部51dは、第1収容部51cに形成されている。ここでは、複数の(例えば3個の)傾斜部51dが、周方向に間隔を隔てて、第1収容部51cに形成されている。各傾斜部51dは、ハウジング部材52と対向して配置されている。各傾斜部51dは、周方向における所定の範囲αに、形成されている。各傾斜部51dは、第2ドリブンプレート51を半径方向外側から見て、実質的にV字状に形成されている。具体的には、各傾斜部51dは、中央部151aから両端部151b,151cに向けて、底部が浅くなるように、傾斜している。各傾斜部51dには、後述する位置決め部材55の当接部55cが、当接する。なお、周方向に隣接する傾斜部51dの間は、平面状に形成されている。
図2に示すように、ハウジング部材52は、第2ドリブンプレート51に回転不能に設けられる。詳細には、ハウジング部材52は、固定部材例えばボルト52cを介して、第2ドリブンプレート51に固定される。
具体的には、図2に示すように、ハウジング部材52は、第2装着部52aと、第2収容部52bとを、有する。第2装着部52aは、実質的に、環状に形成されている。第2装着部52aには、複数の孔部が形成されている。各孔部にはボルト52cの軸部が挿通され、ボルト52cの軸部の雄ねじ部が、第2ドリブンプレート51(第1装着部51b)の雌ねじ部に螺合される。これにより、ハウジング部材52は、第2ドリブンプレート51に一体回転可能に固定される。
第2収容部52bは、第2装着部52aと一体に形成されている。詳細には、第2収容部52bは、第2装着部52aの外周側において、第2装着部52aと一体に形成されている。第2収容部52bの断面は、実質的に、C字状に形成されている。この断面形状を有する第2収容部52bは、環状に形成されている。第2収容部52bの内周側には、押圧機構54を支持するための第2支持部152aが、形成されている。
第2収容部52bと上述した第1収容部51cとの軸方向間には、押圧機構54と、位置決め部材55とが、配置される。第2支持部152a及び上述した第1支持部51eによって、押圧機構54が支持される。
抵抗発生部材53は、抵抗を発生させる部材である。抵抗発生部材53は、後述する位置決め部材55に対して、周方向に移動不能且つ軸方向に移動可能に装着される。
図2及び図5に示すように、抵抗発生部材53は、摩擦プレート153と、摩擦フェーシング154とを、有する。摩擦プレート153は、取付部153a(図2を参照)と、第2係合部153bとを、有する。取付部153aには、摩擦フェーシング154が取り付けられる。詳細には、取付部153aの両面それぞれには、摩擦フェーシング154が取り付けられる。摩擦フェーシング154は、ハウジング部材52と押圧機構54(後述する押圧部材54b)とに当接可能である。摩擦フェーシング154が、ハウジング部材52と押圧機構54(後述する押圧部材54b)とに摺動することによって、第2摺動抵抗(第2ヒステリシストルク)が発生する。すなわち、第2摺動抵抗が、抵抗発生機構におけるトルク変動の吸収・減衰に寄与する。
第2係合部153bは、位置決め部材55に係合する。詳細には、第2係合部153bは、位置決め部材55に対して、周方向に移動不能且つ軸方向に移動可能に、係合する。具体的には、第2係合部153bは、軸方向に延びる突出部である。複数の第2係合部153bそれぞれは、周方向に間隔を隔てて設けられている。第2係合部153bは、半径方向において、動力伝達部17と第2ドリブンプレート51との間に配置される。
また、第2係合部153bは、後述する位置決め部材55の第3切欠部55d(図8を参照)に、配置される。第2係合部153bは、第3切欠部55dにおいて、軸方向に移動自在である。また、第2係合部153bは、第3切欠部55dにおいて周方向に対向する壁部(後述する位置決め部材55の第5係合部55b)に、当接する。
図2に示すように、押圧機構54は、抵抗発生部材53をハウジング部材52に押圧可能である。押圧機構54は、抵抗発生部材53と位置決め部材55との間に配置される。
押圧機構54は、スライダ54aと、押圧部材54bと、付勢部材54cとを、有している。スライダ54aは、軸方向に移動自在に、第2ドリブンプレート51に係合する。
また、スライダ54aは、第2ドリブンプレート51に対して、周方向に回転不能に係合する。また、スライダ54aは、位置決め部材55によって、位置決めされる。詳細には、スライダ54aは、位置決め部材55に当接している。このため、位置決め部材55の軸方向への移動量に応じて、スライダ54aの軸方向位置が、位置決め部材55によって、位置決めされる。
図2及び図6に示すように、スライダ54aは、本体部154aと、第3係合部254aを、有している。本体部154aは、実質的に、円環状に形成されている。本体部154aは、位置決め部材55及び付勢部材54cに当接している。具体的には、第2ドリブンプレート51に対向する本体部154aの一面が、位置決め部材55に当接している。また、ハウジング部材52に対向する本体部154aの他面が、付勢部材54cに当接している。
第3係合部254aは、本体部154aから内周側に突出する突出部である。ここでは、複数の第3係合部254aが、周方向に間隔を隔てて設けられている。第3係合部254aを第2ドリブンプレート51の第1凹部151fに係合させることによって、スライダ54aは、第2ドリブンプレート51に対して、軸方向に移動自在且つ周方向に回転不能に、係合する。
図2に示すように、押圧部材54bは、抵抗発生部材53をハウジング部材52に押圧可能である。言い換えると、押圧部材54bとハウジング部材52とは、抵抗発生部材53を挟持可能である。また、押圧部材54bは、軸方向に移動自在に、第2ドリブンプレート51に係合する。さらに、押圧部材54bは、第2ドリブンプレート51に対して、周方向に回転不能に係合する。
具体的には、図2及び図7に示すように、押圧部材54bは、本体部154bと、第4係合部254bとを、有している。本体部154bの断面は、C字状に形成されている。この断面形状を有する本体部154bは、環状に形成されている。本体部154bの内周部は、ハウジング部材52に支持される。具体的には、本体部154bの内周部は、ハウジング部材52の第2支持部152aに支持される。
第4係合部254bは、本体部154bから軸方向に突出する突出部である。ここでは、複数の第4係合部254bが、周方向に間隔を隔てて設けられている。第4係合部254bを第2ドリブンプレート51の第2凹部251fに係合させることによって、押圧部材54bは、第2ドリブンプレート51に対して、軸方向に移動自在且つ周方向に回転不能に、係合する。
図2に示すように、付勢部材54cは、押圧部材54bとスライダ54aとの軸方向間に配置され、押圧部材54bを抵抗発生部材53に向けて付勢する。付勢部材54cは、例えば、環状のコーンスプリングである。
位置決め部材55は、押圧機構54を位置決めする。位置決め部材55は、ピストン8に対して、周方向に移動不能且つ軸方向に移動可能に装着される。また、位置決め部材55は、傾斜部51dに当接する。詳細には、位置決め部材55は、傾斜部51dへの当接状態に応じて、押圧機構54を位置決めする。
具体的には、図2及び図8に示すように、位置決め部材55は、本体部55aと、第5係合部55bと、当接部55c(突出部の一例)とを、有している。本体部55aは、実質的に環状に形成されている。第5係合部55bは、本体部55aから外周側に突出する突出部である。ここでは、複数の第5係合部55bが、周方向に間隔を隔てて設けられている。第5係合部55bは、ピストン8に係合する。
詳細には、第5係合部55bは、ピストン8の動力伝達部17に対して、周方向に移動不能且つ軸方向に移動可能に、係合する。具体的には、第5係合部55bは、ピストン8の動力伝達部17の第1切欠部17a及び第2切欠部17bに配置される。第5係合部55bは、第1切欠部17a及び第2切欠部17bにおいて、軸方向に移動自在である。また、第5係合部55bは、第1切欠部17a及び第2切欠部17bそれぞれにおいて周方向に互いに対向する壁部に、当接する。
なお、周方向に隣接する第5係合部55bの間には、第3切欠部33dが形成されている。この第3切欠部55dには、抵抗発生部材53の第2係合部153bが係合する。詳細には、第2係合部153bは、第3切欠部55dにおいて、軸方向に移動自在である。また、第2係合部153bは、第3切欠部55dにおいて周方向に対向する壁部に、当接する。
図2、図4C、及び図8に示すように、当接部55cは、本体部55aに設けられている。詳細には、当接部55cは、本体部55aから第2ドリブンプレート51側に向けて、突出している。ここでは、複数の(例えば3個の)当接部55cが、周方向に間隔を隔てて設けられている。各当接部55cは、周方向における所定の範囲βに、形成されている。例えば、当接部55cの所定の範囲βは、傾斜部51dの所定の範囲αより小さい。各当接部55cは、第2ドリブンプレート51の傾斜部51dに当接する。
具体的には、当接部55cが第2ドリブンプレート51に当接する当接面は、位置決め部材55を半径方向外側から見て、実質的にV字状に突出している(図4Cを参照)。すなわち、当接部55cの当接面は、ピストン8と第2ドリブンプレート51とが相対回転していない状態、すなわち中立状態において、傾斜部51dに全体的に当接している。
また、当接部55cは、傾斜部51dに当接した状態で、傾斜部51dに沿って移動可能である。言い換えると、位置決め部材55がピストン8とともに回転すると、当接部55cは、傾斜部51dに当接した状態で、傾斜部51dに沿って周方向(図3のA方向及びB方向)に移動可能である。この場合、当接部55cの当接面の頂部を基準として、周方向の一方側の面、又は周方向の他方側の面が、傾斜部51dに部分的に当接した状態で、当接部55cは、傾斜部51dに沿って周方向に移動する。
なお、ピストン8と第2ドリブンプレート51とが相対回転していない状態、すなわち中立状態では、当接部55cの頂部は、傾斜部51dの中央部151aに当接している。
[トルクコンバータの動作]
ここでは、トルクコンバータ1の動作について説明する。図示しない油圧作動機構によってフロントカバー3とピストン8の内周部に作動油が供給されると、フロントカバー3とピストン8との間の空間を作動油が外周側に流れていく。作動油は、フロントカバー3と摩擦フェーシング16との間を通ってさらに外周側に流れ、トルクコンバータ1の本体内に流れ込む。この状態では、ピストン8が、軸方向トランスミッション側に移動しており、摩擦連結部15におけるクラッチ連結は、解除されている。
続いて、図示しない油圧作動機構によってフロントカバー3とピストン8との間の空間から作動油が排出されると、ピストン機構全体が軸方向エンジン側に移動する。これにより、摩擦フェーシング16がフロントカバー3に押し付けられ、クラッチが連結される。すると、フロントカバー3からのトルクが、ピストン8を介して、ダンパー機構13及び抵抗可変機構50に伝達される。
トルクが、ピストン8からダンパー機構13に入力されると、トルクは、トーションスプリング12を介して、ドライブプレート9から第1ドリブンプレート10へと伝達される。ここで、トーションスプリング12は、トルク変動によって伸縮する。また、トーションスプリング12の第1摺動抵抗によって、トルク変動を吸収・減衰する。その後、トルクは、タービンハブ11を介して、第1ドリブンプレート10から、図示しないシャフトへと出力される。
一方で、トルクが、ピストン8から抵抗可変機構50に入力されると、トルクは、位置決め部材55、押圧機構54、抵抗発生部材53、ハウジング部材52、第2ドリブンプレート51の順に伝達される。このトルク伝達の過程において、抵抗発生部材53の第2摺動抵抗が変更され、この第2摺動抵抗に応じて、トルク変動が吸収・減衰される。
詳細には、トルクが、ピストン8から抵抗可変機構50に入力されると、位置決め部材55が、ピストン8とともに回転する。このときには、位置決め部材55は、第2ドリブンプレート51に対して相対回転する。すると、位置決め部材55の当接部55cが、第2ドリブンプレート51の傾斜部51dに沿って周方向に移動する。
例えば、図4Cに示すように、位置決め部材55の当接部55cが、第2ドリブンプレート51の傾斜部51dの中央部151aに当接している場合、当接部55cが、傾斜部51dの中央部151aから傾斜部51dの一端部151b(又は他端部151c)に向けて(A方向又はB方向に向けて)、傾斜部51dに沿って移動する。すなわち、この状態は、当接部55cが傾斜部51dを登る状態である。この場合、位置決め部材55が、第2ドリブンプレート51から離れる方向に、移動する。
一方で、位置決め部材55の当接部55cが、第2ドリブンプレート51の傾斜部51dの中央部151aと傾斜部51dの一端部151b(又は他端部151c)との間で傾斜部51dに当接している状態では、当接部55cは、この位置から、傾斜部51dの中央部151a、又は傾斜部51dの一端部151b(又は他端部151c)に向けて(A方向又はB方向に向けて)、傾斜部51dに沿って移動する。ここで、当接部55cが傾斜部51dの一端部151b(又は他端部151c)に向けて移動する場合、位置決め部材55は、第2ドリブンプレート51から離れる方向に、移動する。すなわち、この状態は、当接部55cが傾斜部51dを登る状態である。また、当接部55cが傾斜部51dの中央部151aに向けて移動する場合、位置決め部材55は、第2ドリブンプレート51に近づく方向に、移動する。すなわち、この状態は、当接部55cが傾斜部51dを下る状態である。
このようにして、位置決め部材55と第2ドリブンプレート51との相対回転量に応じて、位置決め部材55は、第2ドリブンプレート51から離れる方向、又は第2ドリブンプレート51に近づく方向、すなわちA方向又はB方向に、移動する。すなわち、位置決め部材55と第2ドリブンプレート51との相対回転量に応じて、位置決め部材55は軸方向に移動する。
すると、位置決め部材55の移動量に応じて、位置決め部材55に当接するスライダ54aが、軸方向に移動する。すると、スライダ54aによって付勢部材54cが押圧され、この付勢部材54cによって押圧部材54bが軸方向に移動する。すると、抵抗発生部材53が、押圧部材54bによって、ハウジングに押圧される。ここでは、抵抗発生部材53が、押圧部材54bとハウジングとの間で挟持される。これにより、抵抗発生部材53は、押圧部材54bとハウジングとの間で周方向に摺動し、第2摺動抵抗を発生する。
ここで、上述したように、位置決め部材55の当接部55cが第2ドリブンプレート51の傾斜部51dを登る場合、当接部55cが傾斜部51dを登るにつれて、抵抗発生部材53が押圧部材54bとハウジング部材52との間で挟持される挟持力(押圧力)は、徐々に大きくなる。すなわち、第2摺動抵抗が大きくなる。一方で、位置決め部材55の当接部55cが第2ドリブンプレート51の傾斜部51dを下る場合、当接部55cが傾斜部51dを下るにつれて、抵抗発生部材53が押圧部材54bとハウジング部材52との間で挟持される挟持力は、徐々に小さくなる。すなわち、第2摺動抵抗が小さくなる。このように、抵抗可変機構50では、位置決め部材55と第2ドリブンプレート51との相対回転量に応じて、第2摺動抵抗が変化する。
[特徴]
(1)本トルクコンバータ1のロックアップ装置6は、トルクを伝達するとともにトルク変動を吸収・減衰するためのものである。本トルクコンバータ1のロックアップ装置6は、ピストン8と、ダンパー機構13と、抵抗可変機構50とを、備える。ダンパー機構13は、第1ドリブンプレート10と、トーションスプリング12とを、有する。第1ドリブンプレート10は、ピストン8に対して、回転可能に配置される。トーションスプリング12は、ピストン8と第1ドリブンプレート10との相対回転によって、伸縮する。また、ダンパー機構13では、トーションスプリング12によって、トルク変動が吸収・減衰される。
抵抗可変機構50は、ピストン8に対して回転可能に配置される第2ドリブンプレート51を、有する。抵抗可変機構50は、ピストン8と第2ドリブンプレート51との相対回転によって、ピストン8と第2ドリブンプレート51との間で第2摺動抵抗を発生し、且つピストン8と第2ドリブンプレート51との相対回転量に応じて第2摺動抵抗を変更可能である。この第2摺動抵抗によって、トルク変動が吸収・減衰される。
この場合、ダンパー機構13及び抵抗可変機構50において、トルク変動が吸収・減衰される。特に、抵抗可変機構50は、ピストン8と第2ドリブンプレート51との相対回転量に応じて、第2摺動抵抗を変更可能である。このように、抵抗可変機構50において、トルク変動の大きさに応じて第2摺動抵抗を変更することによって、トルク変動を速やかに吸収・減衰することができる。
(2)本トルクコンバータ1のロックアップ装置6では、第2ドリブンプレート51が、周方向に傾斜する傾斜部51dを、有している。抵抗可変機構50は、ハウジング部材52と、抵抗発生部材53と、押圧機構54と、位置決め部材55とを、有している。ハウジング部材52は、第2ドリブンプレート51に回転不能に設けられる。抵抗発生部材53は、第2摺動抵抗を発生させる部材である。押圧機構54は、抵抗発生部材53をハウジング部材52に押圧可能である。位置決め部材55は、傾斜部51dに当接する。位置決め部材55は、傾斜部51dへの当接状態に応じて、押圧機構54を位置決めする。
この場合、第2ドリブンプレート51の傾斜部51dに対する位置決め部材55の当接状態に応じて、押圧機構54が位置決めされる。ここで位置決めされた押圧機構54は、抵抗発生部材53をハウジング部材52に押圧する。このときの押圧力に応じて、第2摺動抵抗が変化する。
例えば、位置決め部材55が傾斜部51dを登るにつれて、押圧機構54が抵抗発生部材53をハウジング部材52に押圧する押圧力は、大きくなる。一方で、位置決め部材55が傾斜部51dを下るにつれて、押圧機構54が抵抗発生部材53をハウジング部材52に押圧する押圧力は、小さくなる。このように、第2摺動抵抗をスムーズに変更することができる。
(3)本トルクコンバータ1のロックアップ装置6では、位置決め部材55が、当接部55cを有している。当接部55cは、傾斜部51dに当接した状態で、傾斜部51dに沿って移動可能である。
この場合、位置決め部材55の当接部55cが、傾斜部51dに当接した状態で、傾斜部51dに沿って移動可能である。このように、位置決め部材55に当接部55cを設けるだけで、位置決め部材55を容易に移動させ、押圧部材54bを位置決めすることができる。例えば、位置決め部材55の当接部55cが傾斜部51dを登るにつれて、押圧機構54が抵抗発生部材53をハウジング部材52に押圧する押圧力を、大きくできる。また、位置決め部材55の当接部55cが傾斜部51dを下るにつれて、押圧機構54が抵抗発生部材53をハウジング部材52に押圧する押圧力を、小さくできる。すなわち、第2摺動抵抗をスムーズに変更することができる。
(4)本トルクコンバータ1のロックアップ装置6では、位置決め部材55は、ピストン8に対して、周方向に移動不能且つ軸方向に移動可能に装着される。抵抗発生部材53は、位置決め部材55に対して、周方向に移動不能且つ軸方向に移動可能に装着される。押圧機構54は、抵抗発生部材53と位置決め部材55との間に配置される。
この場合、ピストン8が回転すると、位置決め部材55及び抵抗発生部材53も、同時に回転する。すると、位置決め部材55が第2ドリブンプレート51に対して軸方向に移動し、押圧機構54が抵抗発生部材53を押圧する。このように構成することによって、第2摺動抵抗をスムーズに変更することができる。
(5)本トルクコンバータ1のロックアップ装置6では、押圧機構54は、スライダ54aと、押圧部材54bと、付勢部材54cとを、有している。スライダ54aは、軸方向に移動自在に配置され、位置決め部材55に位置決めされる。押圧部材54bは、抵抗発生部材53をハウジング部材52に押圧可能である。付勢部材54cは、押圧部材54bとスライダ54aとの間に配置され、押圧部材54bを抵抗発生部材53に向けて付勢する。
この場合、スライダ54aが位置決め部材55によって軸方向に移動すると、スライダ54aによって付勢部材54cが押圧される。すると、押圧部材54bが、付勢部材54cによって、抵抗発生部材53に向けて付勢される。そして、抵抗発生部材53が押圧部材54bによって押圧されると、抵抗発生部材53が、ハウジング部材52に当接し、第2摺動抵抗を発生する。このように構成することによって、抵抗可変機構50をコンパクトに構成し、且つ第2摺動抵抗をスムーズに変更することができる。
(6)本トルクコンバータ1のロックアップ装置6では、スライダ54a及び押圧部材54bが、第2ドリブンプレート51に対して、軸方向に移動自在に配置される。
この場合、上記の(1)から(5)の構成を実現し、且つスライダ54a及び押圧部材54bを、第2ドリブンプレート51に対して、軸方向に移動自在に配置することによって、抵抗可変機構50を1つのユニットとして構成することができる。すなわち、抵抗可変機構50を、コンパクトに構成することができ、且つロックアップ装置6に容易に組み込むことができる。
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
(A)前記実施形態のダンパー機構13は一例であり、トーションスプリング12によってトルク変動を吸収・減衰できれば、どのような構成であってもよい。