JP6358944B2 - 電鋳部品の製造方法、電鋳部品、時計用電鋳部品及びベアリング - Google Patents
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電鋳法によれば、精密に加工された電鋳型を用いて、高い転写性を有する部品を製造することができる。また、近年は、シリコンプロセスのように感光材料を用いたフォトリソグラフィによって電鋳型を製造するLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)技術を用いた電鋳法によって、精密微細部品を製造することも提案されている。
また、特許文献2に開示された製造方法によれば、異なる材料の部材を密着接合した部品を製造できるが、シリコン基板上に埋め込み酸化膜を介してシリコンデバイス形成層を有するSOI基板を使用する必要がある。このような普通のシリコン基板とは違う特殊な基板を用いることで製造工程が複雑になりコストも上昇してしまうという問題がある。また、段差を有する部品を製造できず、最初に形成される部分の高さはシリコンデバイス形成層の厚さに規制されるという制約もある。
も提供できるようにすることを目的とする。
(a)シリコン基板の表面に第1のフォトレジスト層を形成し、その第1のフォトレジスト層を、電鋳する領域を開口させ、且つその開口内に第1のフォトレジスト層が島状に残るようにパターニングする工程
(b)上記第1のフォトレジスト層をマスクとして、上記シリコン基板をエッチングして所望の深さの溝を形成した後、上記第1のフォトレジスト層を除去する工程、
(c)上記シリコン基板の上記溝内を含む表面に導電膜を形成する工程
(d)上記導電膜上に第2のフォトレジスト層を形成し、その第2のフォトレジスト層をパターニングして、上記溝上を含む電鋳部品の平面形状に相当する開口を形成する工程
(e)上記導電膜を一方の電極とする電鋳によって、上記第2のフォトレジスト層の上記開口内の上記導電層上に電鋳部材を堆積させる工程
(f)上記電鋳部材の上面を、上記第2のフォトレジスト層と共に、シリコン基板の溝内に島状に残った部分が露出しないように研削及び研磨して平坦化する工程
(g)上記シリコン基板を、上記電鋳部材を形成した面と反対側の面から少なくとも上記溝の底面まで研削及び研磨して除去する工程
(h)上記第2のフォトレジスト層を除去して、上記電鋳部材に、上記シリコン基板の上記溝内に島状に残った部分が埋め込まれた電鋳部品を取り出す工程
上記シリコン基板を研削及び研磨して除去する工程において、そのシリコン基板に対する研削レートを上記電鋳部材に対する研削レートより大きくして、上記シリコン基板の上記島状に残った部分が上記電鋳部材の表面から引き込んだ状態で埋め込まれるようにしてもよい。
また、この発明による電鋳部品は、電鋳可能な金属からなる金属部とシリコン部とによって構成され、シリコン部は、金属部に埋め込まれるように配置され、シリコン部の先端は、金属部の表面から露出しており、シリコン部の他端は、金属部の表面から露出していないことを特徴とする。
上記電鋳部品は時計の部品であってもよい。
さらに、上記電鋳部品は、ベアリングであって、金属部は、肉厚円板状であり、シリコン部は、金属部の中心の周囲に複数設けられ、シリコン部の先端は、金属部の端面から引き込まれていてもよい。
〔製造方法の実施形態〕
この発明による電鋳部品の製造方法の一実施形態を図1〜図3によって説明する。図1はその製造工程を説明するための各工程における断面図であり、図2はその電鋳工程における電鋳槽内の配置状態を示す模式的な断面図である。図3は、図1の(h)に示す電鋳部品の下面図であり、図1の(h)は図3のA−A線に沿う断面図に相当する。
この発明による電鋳部品の製造方法はLIGA法を応用した製造方法である。
そして、その第1のフォトレジスト層2上に、開口2cに対応する部分以外の部分を遮光するフォトマスクをセットし、紫外線やX線などを照射して露光した後、アルカリ溶液等で現像して、感光した部分を除去することによってパターニングして、開口2c及び島状のフォトレジスト部2a,2bを形成する。
フォトレジストとしてネガ型のフォトレジストを使用してもよい。その場合は、開口2cに対応する部分だけを遮光するフォトマスクを使用する。
この工程ではまず、導電層2上に、製造しようとする電鋳部品の本体部の厚さより厚く、数100μm〜500μm程度の均一な厚さに、ポジ型のフォトレジストをスピンコーティング等によって塗布して第2のフォトレジスト層4を形成する。
フォトレジストとしてネガ型のフォトレジストを使用する場合は、開口4aに対応する部分だけを遮光するフォトマスクを使用する。
この工程では、図2に示すような電鋳槽15内の電解液16の浴中に、前述した(e)の工程で作成した電鋳型5を、第2のフォトレジスト層4側を対向電極17と対向させて浸漬する。そして、電鋳型5の導電膜3と対向電極17との間に、電源18によって直流電圧を印加する。この場合、対向電極17が正電極(陽極)となり、導電膜3が負電極(陰極)となる。
このとき、この実施形態ではその電鋳部材6が、溝1c内に堆積した部分と溝1c外に堆積した部分とによって厚さが異なる段付き形状になり、溝1c内に堆積した部分に、シリコン基板1の一部であるシリコン部1a,1bが入り込んでいる。
そして、シリコン基板1を、電鋳部材6′を形成した面と反対側の面から研削及び研磨して、少なくとも溝1cの底面に達するまで除去する工程を実行する。その際、平坦化した第2のフォトレジスト層4及び電鋳部品6′の上面に、必要に応じて補強支持板又は保護シール等を貼り付けて支持すれば、研削及び研磨によるシリコン基板1の除去を容易に行うことができる。
また、シリコン基板1に対するエッチング加工の回数を増やせば、電鋳部品10の段数を増やし、その各段部ごとにシリコン部を埋め込むこともできる。
シリコンに対する研削レートを金属に対する研削レートより大きくすれば、電鋳部材6′よりもシリコン部1a,1bが余分に研削されて、図4に示すように、シリコン部1a′,1b′が、電鋳部材6′の下面より幾分引き込んで埋め込まれた状態の電鋳部品10Aになる。そのシリコン部1a′,1b′が、電鋳部材6′の下面より幾分引き込んだ凹部は、潤滑油の油溜り等に利用できる。
例えば、金属がニッケルの場合、酸化剤を除いたスラリーを用いた上で、通常の研磨と比較して柔らかいソフトパッドを用いて、通常研磨よりも回転数を上げることによりシリコンの研磨レートをニッケルよりも上昇させることができる。
この発明の製造方法によれば、機械式時計やアナログ式水晶時計などの時計の精密部品をはじめ、カメラや計測器、その他種々の精密機器の電鋳部品を、強度を保ちながら軽量化することができる。
例えば、金属がニッケルの場合、通常の研磨と比較して柔らかいソフトパッドを用いて、通常の研磨よりも高圧・低速回転させて研磨することでニッケルの研磨レートをシリコンよりも上昇させることができる。
次に、上述したようなこの発明による電鋳部品の製造方法によって製造した電鋳部品の種々の実施形態について説明する。
まず、その電鋳部品が歯車である実施形態を図6及び図7によって説明する。図6はその歯車の平面図、図7は図6のB−B線に沿う断面図である。
この歯車(ギア)20は電鋳による金属製の平歯車であり、外周に多数の歯を所定のピッチで形成した歯部21とそれより肉厚のボス部22からなり、中心に回転軸を貫通させ
る軸孔23が形成されている。
この歯車20は、ボス部22の金属の一部がシリコンに置き換わっているので、全て金属の場合より軽量であり、しかも充分な強度を有する。また、歯部21とボス部22とは段差を有している。
平歯車に限らず、小歯車(カナ)や、プーリ、ローラ、回転円板などの部品も、同様にボス部などにシリコン部を埋め込んだものにすることができる。
この文字板30は電鋳による金属製の円形の文字板であり、その表(おもて)面30aは塗装され、円周方向に沿って30°間隔で1時間ごとの目盛マークと時を示す1〜12の数字が形成されている。中心には指針軸を貫通させる軸孔31が設けられている。
この文字板30も、肉厚部33の金属の一部がシリコンに置き換わっているので、全て金属の場合より軽量であり、しかも充分な強度を有する。また、肉薄部32と肉厚部33とで段差を有している。この形状は、この文字板が組み込まれる腕時計等の内部構造に対応した形状の例であって、自由に変更が可能である。もちろん、全体を均一な厚さに形成することもできる。
また、腕時計の文字板に限らず、懐中時計や置時計あるいは計測器などの文字板にも適用できる。
図10はその電鋳部品がラックである実施形態の移動方向に沿う縦断面図である。
このラック40は、電鋳による金属製の直線状に延びるラックであり、本体部41の下面に一定のピッチで平行に複数の歯42が形成されている。そして、動作時にはその歯42が図示していないピニオンの歯と噛み合って、矢示D方向へ往復移動する。
したがって、このラック40も、歯42の金属の一部がシリコンに置き換わっているので、全て金属の場合より軽量であり、しかも充分な強度を有する。また、本体部41と歯42とで段差を有している。さらに、シリコン部43の内蔵によって歯42の緩衝性が高まることと、歯先に形成された僅かな凹部42bが潤滑油の油溜まりの役目を果すので、歯の磨耗を防止し、長期間に亘ってスムーズに動作する。
なお、このようにラックや歯車の歯内にシリコン部を埋め込むことによって、軽量化と
歯の緩衝性を高める効果が得られるので、シリコン部の先端面を歯先面より引き込めず、歯先面と同一面にしてもよい。
回転体50の回転中心部にベアリング(軸受け)60を固着しており、回転体50はベアリング60と共に矢示E方向に往復回動又は回転する。
そのベアリング60は、電鋳による金属製の肉厚円板状のベアリングであり、中心に回転軸を貫通させる軸孔61が設けられている。また、その中心に対して対称に且つ等角度間隔で、複数(図示の例では4個)の円柱状のシリコン部62が、図示していない回転軸支持部材(図11におけるベアリング60の手前側にある)と対向する端面側から埋め込まれている。
したがって、このベアリング60も、その金属の一部がシリコンに置き換わっているので、全て金属の場合より軽量であり、しかも充分な強度を有する。さらに、回転軸支持部材と対向する端面の凹部が潤滑油の油溜まりの役目を果すので、その油が回転軸支持部材及び回転軸との間を潤滑して摩擦を低減し、長期間に亘ってスムーズに回動又は回転する。
回転体50は、レバー、プーリ、ローラ、歯車などの何れでもよい。
また、この発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に記載された技術的特徴を有する以外は、何ら限定されるものではないことは言うまでもない。
さらに、以上説明してきた実施形態の構成例、動作例及び変形例等は、適宜変更又は追加したり一部を削除してもよく、相互に矛盾しない限り任意に組み合わせて実施することも可能であることは勿論である。
2c:第1のフォトレジスト層の開口 3:導電膜 4:第2のフォトレジスト層 4a:第2のフォトレジスト層の開口 5:電鋳型 6,6′,6″:電鋳部材 10,10A,10B:電鋳部品 15:電鋳槽 16:電解液 17:対向電極18:電源 20:歯車(ギア) 21:歯部 22:ボス部 23:軸孔
24:シリコン部 30:文字板 30a:表(おもて)面 31:軸孔
32:肉薄部 33:肉厚部 34:シリコン部 10:ラック 41:本体部42:歯 42a:歯先面 43:シリコン部 50:回転体
60:ベアリング(軸受け) 61:軸孔 62:シリコン部
Claims (8)
- シリコン基板の表面に第1のフォトレジスト層を形成し、該第1のフォトレジスト層を、電鋳する領域を開口させ、且つその開口内に該第1のフォトレジスト層が島状に残るようにパターニングする工程と、
前記第1のフォトレジスト層をマスクとして、前記シリコン基板をエッチングして所望の深さの溝を形成した後、前記第1のフォトレジスト層を除去する工程と、
前記シリコン基板の前記溝内を含む表面に導電膜を形成する工程と、
前記導電膜上に第2のフォトレジスト層を形成し、該第2のフォトレジスト層をパターニングして、前記溝上を含む電鋳部品の平面形状に相当する開口を形成する工程と、
前記導電膜を一方の電極とする電鋳によって、前記第2のフォトレジスト層の前記開口内の前記導電層上に電鋳部材を堆積させる工程と、
前記電鋳部材の上面を、前記第2のフォトレジスト層と共に、前記シリコン基板の前記溝内に島状に残った部分が露出しないように研削及び研磨して平坦化する工程と、
前記シリコン基板を、前記電鋳部材を形成した面と反対側の面から少なくとも前記溝の底面まで研削及び研磨して除去する工程と、
前記第2のフォトレジスト層を除去して、前記電鋳部材に、前記シリコン基板の前記溝内に島状に残った部分が埋め込まれた電鋳部品を取り出す工程と、
を有することを特徴とする電鋳部品の製造方法。 - 前記電鋳部品の前記電鋳部材を、前記溝内に堆積する部分と前記溝外に堆積する部分とによって厚さが異なる段付き形状に形成することを特徴とする請求項1に記載の電鋳部品の製造方法。
- 前記シリコン基板を研削及び研磨して除去する工程において、該シリコン基板に対する研削レートを前記電鋳部材に対する研削レートより大きくして、前記シリコン基板の前記島状に残った部分が前記電鋳部材の表面から引き込んだ状態で埋め込まれるようにすることを特徴とする請求項1又は2に記載の電鋳部品の製造方法。
- 前記シリコン基板を研削及び研磨して除去する工程において、該シリコン基板に対する
研削レートを前記電鋳部材に対する研削レートより小さくして、前記シリコン基板の前記島状に残った部分が前記電鋳部材の表面から突出した状態で埋め込まれるようにすることを特徴とする請求項1又は2に記載の電鋳部品の製造方法。 - 前記電鋳部品が時計の部品であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電鋳部品の製造方法。
- 電鋳可能な金属からなる金属部とシリコン部とによって構成される電鋳部品であって、
前記シリコン部は、前記金属部に埋め込まれるように配置され、
前記シリコン部の先端は、前記金属部の表面から露出しており、
前記シリコン部の他端は、前記金属部の表面から露出していないことを特徴とする電鋳部品。 - 請求項6に記載の電鋳部品において、
前記電鋳部品は、時計の部品であることを特徴とする時計用電鋳部品。 - 請求項6又は7に記載の電鋳部品において、
前記電鋳部品は、ベアリングであって、
前記金属部は、肉厚円板状であり、
前記シリコン部は、前記金属部の中心の周囲に複数設けられ、
前記シリコン部の先端は、前記金属部の端面から引き込まれていることを特徴とするベアリング。
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