JP6358717B2 - 浄水カートリッジ及び浄水器 - Google Patents

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Description

本発明は、浄水カートリッジ及び浄水器に関する。
本願は、2014年6月6日に、日本に出願された特願2014−117882号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
例えば、家庭等において、1〜2リットル程度の原水を一度に浄化することができるとともに、そのまま冷蔵庫等に保管できるピッチャー型浄水器が知られている。ピッチャー型浄水器としては、例えば、外容器と、該外容器に着脱自在に取り付けられ、該外容器内を上下に仕切る内容器と、該内容器に取り付けられる浄水カートリッジと、を有するものが挙げられる。該ピッチャー型浄水器では、外容器内における内容器よりも下側の領域が浄水貯留部となり、内容器よりも上側が原水貯留部となる。
該ピッチャー型浄水器の原水貯留部に原水を入れることで、原水が自重によって浄水カートリッジを徐々に通過しつつ浄化され、浄水貯留部に貯留される。
浄水カートリッジとしては、ろ過材として活性炭や中空糸膜束を備えるものが知られている。例えば、ろ過材を収容する略筒状のケース内の底部に中空糸膜束が固定され、該中空糸膜束上に仕切り部材を介さずに活性炭が充填された浄水カートリッジが挙げられる(特許文献1)。
該浄水カートリッジでは、原水が活性炭と接触した後に中空糸膜でろ過されるため、活性炭層に細菌が繁殖していたとしても細菌が浄水に混入しない。また、仕切り部材がないことで、ろ過流量が高く原水をスムーズに浄化できる。
特開2004−230335号公報
しかし、従来の活性炭を備える浄水カートリッジでは、活性炭によるろ過流量やろ過能力(浄化性能)の変動が発生するという問題がある。例えば、大量生産時におけるロット毎の活性炭量の変動により、活性炭量が少なくなった際にろ過流量が増加し、ろ過能力(浄化性能)が低下することがある。また、破砕炭を用いた際に、篩によって粒度を揃えたとしても、活性炭の形状によりろ過流量やろ過能力が低下することがある。
本発明は、活性炭によるろ過流量及びろ過能力の変動が小さく、大量生産時でも性能が安定している浄水カートリッジ、及び該浄水カートリッジを有する浄水器を提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成を有する。
[1]ろ過材を収容するケースに粒状活性炭が充填された浄水カートリッジであって、活性炭の総質量に対する粒径0.3〜4.0mmの粒状活性炭の合計質量の割合が97質量%以上であり、活性炭の粒径に対する質量比の関係を示す粒度分布において、粒径0.3〜4.0mmの範囲に質量比が31質量%以上となるピークがない浄水カートリッジ。
[2]前記活性炭が、前記粒度分布における粒径0.3mm以上0.71mm未満の領域と粒径0.71mm以上4.0mm以下の領域のそれぞれに、1つ以上のピークがある活性炭である、[1]に記載の浄水カートリッジ。
[3]前記活性炭が、前記粒度分布における粒径0.3mm以上0.71mm未満の領域と粒径0.71mm以上4.0mm以下の領域に、それぞれ1つずつピークがある活性炭である、[2]に記載の浄水カートリッジ。
[4]自重濾過用の浄水カートリッジである、[1]〜[3]のいずれかに記載の浄水カートリッジ。
[5]ろ過材としてさらに中空糸膜束が充填され、かつ該中空糸膜束上に前記活性炭が充填されている、[1]〜[4]のいずれかに記載の浄水カートリッジ。
[6]前記中空糸膜束上に仕切り部材を介さずに前記活性炭が充填されている、[5]に記載の浄水カートリッジ。
[7]前記活性炭を中空糸膜上に充填し、JIS S3201に準拠して所定の空間速度(SV)[hr−1]になるように濃度60ppbのクロロホルムを含む水を通水し、クロロホルムが80%除去された時点を破過点としてクロロホルムろ過能力[L/mL]を測定し、空間速度(SV)をx軸、クロロホルムろ過能力をy軸としてプロットして直線(y=ax+b)に近似したときの該直線の傾きaが−0.03〜0である、[1]〜[6]のいずれかに記載の浄水カートリッジ。
[8]前記活性炭を所定の積層高に充填してJIS S3201に準拠してろ過流量を測定し、前記活性炭の積層高[mm]をx軸、ろ過流量[L/分]をy軸としてプロットして直線(y=cx+d)に近似したときの該直線の傾きcが−25〜0である、[1]〜[7]のいずれかに記載の浄水カートリッジ。
[9]前記[1]〜[8]のいずれかに記載の浄水カートリッジを有する浄水器。
本発明の浄水カートリッジは、活性炭によるろ過流量及びろ過能力の変動が小さく、大量生産された場合でも性能が安定している。
また、本発明の浄水器は、活性炭によるろ過流量及びろ過能力の変動が小さい浄水カートリッジを有しており、大量生産された場合でも性能が安定している。
本発明の浄水カートリッジの一例を示した断面図である。 図1の浄水カートリッジの中空糸膜束の概略構成を示す斜視図である。 図1の浄水カートリッジの中空糸膜束の概略構成を示す平面図である。 図1の浄水カートリッジを有する浄水器を示した斜視図である。 図3の浄水器の断面である。 実施例で使用した活性炭A〜Eの粒度分布を示したグラフである。 例1における通水の空間速度に対するクロロホルムのろ過能力の関係を示したグラフである。 例2における活性炭の積層高に対するろ過流量の関係を示したグラフである。
[浄水カートリッジ]
以下、本発明の浄水カートリッジの一例について図1及び図2A及び図2Bに基づいて説明する。
本実施形態の浄水カートリッジ10は、自重濾過用の浄水カートリッジであり、図1に示すように、内部にろ過材を収容する略円柱状のケース12を有し、その内部に中空糸膜束14と活性炭16が充填されている。
ケース12の上部には開口が形成されており、該開口が蓋体22によって閉じられている。蓋体22の中央には、浄水カートリッジ10の内外を連通する空気排出孔22aが形成されている。また、ケース12の外周面には、後述の浄水器における仕切部に密嵌させるためのOリング29が周方向に設けられている。
ケース12の周壁部における上部領域には原水が流入する上下2列の流入口18、下部には浄水が流出する流出口20が形成されている。浄水カートリッジ10の流入口18には、水中のゴミ等を取り除く網体が取り付けられている。
浄水カートリッジ10のケース12内の底部側には、中空糸膜束14が固定用樹脂24で固定され、その上に活性炭16が充填されている。この例では、中空糸膜束14上に仕切り部材を介さずに活性炭16が充填されている。
浄水カートリッジ10における活性炭16は、上側の流入口18と下側の流入口18の間あたりの高さまで充填され、充填された活性炭16の上方には、空気溜まり部28が形成されている。空気溜まり部28と、蓋体22の中央に形成された空気排出孔22aとの作用により、原水が流入口18から浄水カートリッジ10内に、より円滑に取り込まれるようになっている。
この浄水カートリッジ10では、流入口18からケース12の内部に原水が流入すると、自重によって原水が活性炭16及び中空糸膜束14によりろ過され、流出口20から浄水が流出する。活性炭16により、水中の残留塩素やカビ臭、トリハロメタン等の有機化合物が吸着されて取り除かれる。また、中空糸膜束14により、細菌や微粒子がろ過されて除去される。
(活性炭)
活性炭16は粒状活性炭の集合体である。
粒状活性炭の種類としては、例えば、植物質(木材、セルロース、のこくず、木炭、椰子殻炭、素灰等)、石炭質(泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、タール等)、石油質(石油残渣、硫酸スラッジ、オイルカーボン等)、パルプ廃液、合成樹脂等を炭化したもの等が挙げられる。活性炭16としては、必要に応じてガス賦活(水蒸気、二酸化炭素、空気等)したもの、薬品賦活(塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、リン酸、硫酸、カセイソーダ、水酸化カリウム等)したもの等を使用してもよい。
粒状活性炭には、銀が付着しているか、又は混合されていることが好ましい。これにより、活性炭16における細菌の繁殖が抑制されやすい。
活性炭16の総質量に対する粒径0.3〜4.0mmの粒状活性炭の合計質量の割合は、97質量%以上であり、98質量%以上が好ましい。前記割合が下限値以上であれば、充分なろ過流量と良好なろ過能力が得られる。前記割合の上限値は100質量%である。
また、活性炭16は、粒径に対する質量比の関係を示す粒度分布において、粒径0.3〜4.0mmの範囲に質量比が31質量%以上となるピークがないことを特徴とする。活性炭16がこのような粒度分布を有していることで、浄水カートリッジ10におけるケース12内に充填される活性炭16の量が変動しても、それによるろ過流量やろ過能力の変動が小さくなる。その結果、大量生産時にロット毎に活性炭量が変動したとしても、充分なろ過流量と良好なろ過能力を有する浄水カートリッジを安定して製造できる。
また、この例のように中空糸膜束上に仕切り材を介さずに活性炭を充填する場合、使用中に粒径の小さい活性炭が中空糸膜間に落ち込んで中空糸膜束上の活性炭の粒度分布が変化したり、活性炭の積層高が変化したりするため、ろ過流量及びろ過能力が変動することがある。しかし、粒径0.3〜4.0mmの範囲に質量比が31質量%以上となるピークがない幅広い粒度分布を有する活性炭であれば、粒径の小さい活性炭が中空糸膜間に落ち込んでも粒度分布の変化がより小さいため、ろ過流量及びろ過能力の変動が小さく抑えられる。また、積層高の変化によるろ過流量やろ過能力の変動を小さく抑えることができる。なお、中空糸膜上に仕切り材を介さずに活性炭を充填する場合において積層高とは、中空糸膜の上に充填されている活性炭の下端から上端までの高さを指し、仕切り材を介したり、下流にろ過材を備えたりしていない場合は、充填されている活性炭の下端から上端までの高さを指す。
本発明では、活性炭は、粒径に対する質量比の関係を示す粒度分布において、粒径0.3〜4.0mmの範囲に質量比が30質量%以上となるピークがないことが好ましく、28質量%以上となるピークがないことがより好ましい。これにより、活性炭量の変動によるろ過流量やろ過能力の変動がさらに小さくなる。
活性炭16の粒径に対する質量比の関係を示す粒度分布におけるピークの数は、1つであってもよく、2つであってもよく、3つ以上であってもよい。
活性炭16としては、前記粒度分布における粒径0.3mm以上0.71mm未満の領域と、粒径0.71mm以上4.0mm以下の領域のそれぞれに1以上のピークがある活性炭であることが好ましい。これにより、活性炭16の充填量の変動によるろ過流量やろ過能力の変動が小さく抑えられる効果が得られやすくなる。また、前記効果がより得られやすい点から、粒径0.3mm以上0.71mm未満の領域と粒径0.71mm以上4.0mm以下の領域にあるピークは、それぞれの領域において最も高いピークが当該領域の中央近傍に位置していることが好ましい。
また、活性炭16としては、前記粒度分布における粒径0.3mm以上0.71mm未満の領域と、粒径0.71mm以上4.0mm以下の領域に、それぞれ1つずつピークがある活性炭であることが好ましい。これにより、活性炭16の充填量の変動によるろ過流量やろ過能力の変動が小さく抑えられる効果がさらに得られやすくなる。また、前記効果がより得られやすい点から、粒径0.3mm以上0.71mm未満の領域にあるピークと、粒径0.71mm以上4.0mm以下の領域にあるピークは、それぞれの領域の中央近傍に位置していることが好ましい。
活性炭の粒度分布は、JIS K1474に準拠し、以下の方法で求められる。
4.7メッシュ(目開き4.0mm)、10メッシュ(目開き1.7mm)、14メッシュ(目開き1.18mm)、18メッシュ(目開き0.85mm)、22メッシュ(目開き0.71mm)、26メッシュ(目開き0.6mm)、30メッシュ(目開き0.5mm)、36メッシュ(目開き0.425mm)、42メッシュ(目開き0.355mm)の篩を目開きが順次小さくなる順番で用いて分級操作を行う。10メッシュ、14メッシュ、18メッシュ、22メッシュ、26メッシュ、30メッシュ、36メッシュ、42メッシュの各篩と受け皿の上に溜まった活性炭の総質量を100質量%として、それら各々の篩上の活性炭の質量の割合を粒径(メッシュ)に対してプロットして粒度分布を得る
ケースに充填される活性炭の質量としては、10〜200gが好ましい。前記活性炭の質量が前記範囲であると、好適に浄化を行うことができる。
(中空糸膜束)
この例の中空糸膜束14は、図2A及び図2Bに示すように多数本の中空糸膜14aがU字状に曲げられた状態で、略円柱状(略円筒状)に束ねられたものである。すなわち、多数本の中空糸膜14aが、ケース12の軸方向に垂直な平面の中央部(中心部)から内壁部に向けてU字状に曲げられ、それら中空糸膜14aがケース12の中央部から放射状に配置されたことにより、略円柱状(略円筒状)の中空糸膜束14が形成されている。
このような中空糸膜束14を用いることで、中空糸膜の充填効率をより高くすることができるため、ろ過能力をより高くすることができる。
中空糸膜14aがU字状に曲げられたことで形成された中空糸膜束14の曲げ部14bは、ケース12における流入口18側に向いている。
各々の中空糸膜14aは、ケース12の底部に固定用樹脂24によって固定されている。すなわち、ケース12の底部側の中空糸膜14a間が固定用樹脂24によって埋められて液密に固定されている。そして、このように固定用樹脂24によって固定された状態で、中空糸膜14aの底部側の端面は開口している。
中空糸膜束14の略中央部には、中心軸方向に沿って空隙部14cが形成されており、空隙部14cには、センターチューブ(チューブ)26が挿通されている。
中空糸膜14aとしては、浄水カートリッジのろ過材として通常用いられるものが使用できる。具体的には、例えばセルロース系、ポリオレフィン系(ポリエチレン系)、ポリビニルアルコール系、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)系、ポリスルフォン系等、種々の材科のものが使用される。本実施形態では、特に透水性に優れ、製造も容易である等の理由により、ポリスルフォン系の中空糸膜が好適に用いられる。
なお、ポリエチレン系の中空糸膜は特に強伸度が高く、例えばU字状に曲げる際、屈曲半径rを小さくして曲率を大きくすることができるため、特に曲率を大きくしたい場合には有効である。ただし、本実施形態では、前述したように中空糸膜14aをケース12の中央部から内壁部に向けてU字状に曲げており、したがって曲率を比較的小さくする(屈曲半径rを比較的大きくする)ことができるため、透水性等に優れたポリスルフォン系の中空糸膜14aが好適である。
中空糸膜束14を形成する中空糸膜14aの孔径、空孔率、膜厚、外径等は、中空糸膜14aを濾過膜として使用可能な寸法であれば特に限定されないものの、例えば、外径は20〜4000μm程度、孔径は0.01〜1μm程度、空孔率は20〜90%程度、膜厚は5〜300μm程度であるのが好ましい。
センターチューブ26は、円管状の部材であり、一端側、すなわち中空糸膜束14の曲げ部14b側に円環状のフランジ部26aが形成されている。センターチューブ26の長さは、中空糸膜束14の高さと略等しく形成されている。また、センターチューブ26の他端側の面、すなわちフランジ部26aと反対の側の面は開口している。他端側の面は開口していればよいが、センターチューブ26の軸線に対して所定の鋭角角度、例えば30°〜70°の角度で傾斜した傾斜面が形成されていると好ましい。
固定用樹脂24としては、中空糸膜の固定に通常用いられる樹脂が使用でき、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂等からなる固定用樹脂が挙げられる。
中空糸膜束14は、例えば、以下の方法で製造できる。
芯棒を中心にして多数本の中空糸膜14aを束ねた後、円筒体内において、曲げ方向が一定方向に揃えられることなく異なる方向を向くように、すなわち各々の中空糸膜14aの上端が前記芯棒から放射状に遠ざかって前記円筒体の内壁面に沿うようにU字状に曲げ、その状態で集束する。このとき、各々の中空糸膜14aが芯棒を中心にして全方位(360°)に放射状にほぼ均等に向くように調整する。その後、それら複数本の中空糸膜14aを円筒体から抜き取り、中空糸膜束14とする。これにより、曲げ部14bが上を向いた中空糸膜束14が形成される。
また、多数本の中空糸膜14aを円筒体から抜き取る前、あるいは抜き取った後に、芯棒を外し、形成された空隙部14cにセンターチューブ26を挿通する。その後、これら中空糸膜束14及びセンターチューブ26を、ケース12の底部において、底部側(流出口20側)に固定用樹脂24によって液密に固定する。
中空糸膜束14の充填密度は、25〜60%が好ましい。充填密度を前記範囲内とすることにより、ピッチャー型浄水器として使用可能な程度まで、浄水カートリッジにおける原水の通水速度を高めることが容易になる。そのため、比較的多量の原水をより短時間で浄化処理することが可能となる。なお、中空糸膜の充填密度は特許文献1に記載の方法によって求めることができる。
本発明の浄水カートリッジは、本発明の効果が得られやすい点から、下記の方法で算出した傾きaが−0.03〜0であることが好ましい。
(傾きaの算出方法)
活性炭を中空糸膜上に充填し、JIS S3201に準拠して所定の空間速度(SV)[hr−1]で濃度60ppbのクロロホルムを含む水を通水し、クロロホルムが80%除去された時点を破過点として活性炭mL当たりのクロロホルムろ過能力[L/mL]を測定する。空間速度(SV)をx軸、クロロホルムろ過能力をy軸としてプロットし、直線(y=ax+b)に近似して該直線の傾きaを求める。
前記算出方法で算出される傾きaは理想は0であるが、実用上は負の値となることから、−0.03≦a<0であってもよい。
前記算出方法で算出される傾きaの上限値は、−0.005がより好ましい。
また、前記算出方法で算出される傾きaの下限値は、−0.02が好ましく、−0.013がより好ましい。
本発明の浄水カートリッジは、本発明の効果が得られやすい点から、下記の方法で算出した傾きcが−25〜0であることが好ましい。
(傾きcの算出方法)
活性炭を所定の積層高に充填してJIS S3201に準拠してろ過流量を測定する。活性炭の積層高[mm]をx軸、ろ過流量[L/分]をy軸としてプロットして直線(y=cx+d)に近似したときの該直線の傾きcを求める。
前記算出方法で算出される傾きcは理想は0であるが、実用上は負の値となることから、−25≦c<0であってもよい。
前記算出方法で算出される傾きcの上限値は、−5であることがより好ましく、さらに好ましくは−10である。
また、前記算出方法で算出される傾きcの下限値は、−20であることがより好ましい。
以上説明した本発明の浄水カートリッジによれば、ケース内に特定の粒度分布を有する活性炭を充填しているため、大量生産時等に活性炭の充填量に変動が生じても、それによるろ過流量及びろ過能力の変動が小さい。そのため、ろ過材の設計が容易で大量生産時でも性能が安定した浄水カートリッジを製造することが容易である。特に、本発明の浄水カートリッジは、中空糸膜束上に仕切り材を介さずに活性炭を充填する場合に、活性炭の一部が中空糸膜間に落ち込んでもろ過流量及びろ過能力の変動が小さく抑えられる点で有用である。また、特に中空糸膜が放射状に遠ざかって円筒体の内壁面に沿うようにU字状に曲げられた場合は、中空糸膜間が一定になりにくいため、活性炭の一部が中空糸膜間に落ち込む浄水カートリッジと、落ち込まない浄水カートリッジが製造されてしまい、製品間にばらつきができてしまう。しかし、本発明のように活性炭を充填することにより、このような場合でもろ過流量及びろ過能力が安定した浄水カートリッジを製造することができる。
なお、本発明の浄水カートリッジは、前記した浄水カートリッジ10には限定されない。例えば、中空糸膜を用いない浄水カートリッジであってもよい。
また、中空糸膜束を用いる場合、中空糸膜束の形態は前記した中空糸膜束14のような形態には限定されず、例えば、単にU字状に曲げたバンドル形態であってもよく、ラッセル編みした形態であってもよい。
また、本発明の浄水カートリッジは、中空糸膜束上に、仕切り部材を介して活性炭を充填した浄水カートリッジであってもよい。
また、本発明の浄水カートリッジは、自重濾過用には限定されず、例えば、水道等に装着されるタイプの浄水カートリッジであってもよい。
[浄水器]
本発明の浄水器は、本発明の浄水カートリッジを有する以外は、公知の態様を採用できる。以下、本発明の浄水器の一例として、前記した浄水カートリッジ10を有する浄水器1について図3及び図4に基づいて説明する。
浄水器1は、自重濾過式(回分式)のピッチャー型浄水器である。
浄水器1は、図3及び図4に示すように、ピッチャー本体30と、ピッチャー本体30の開口した上端部31を塞ぐピッチャー蓋体32と、ピッチャー本体30内に着脱自在に取り付けられた浄水カートリッジ10とを備えている。ピッチャー蓋体32は、ピッチャー本体30の上端部31を液密に閉塞できるため、原水の浄化後に浄水器1を冷蔵庫内などに横置きすることができる。
ピッチャー本体30は、ケーシング33と、ケーシング33に取り付けられ、ケーシング33内を上下方向に仕切る仕切部34と、を備えている。ケーシング33内は、仕切部34により、上側の原水貯留部30aと下側の浄水貯留部30bの2段に仕切られている。
ケーシング33は、一端が開口し他端が閉塞した有底筒状であり、閉塞した側の端部(下端部)は、浄水器1を縦置きした際に底部35となる部分である。
ケーシング33の開口した側の端部(上端部31)からは、水道水などの原水を原水貯留部30aに供給できるとともに、浄水貯留部30bに貯水された浄水を注ぎ出せるようになっている。
この例のケーシング33は、周壁部40と底部35とが別体で形成されている。底部35の上面の周縁部には溝が形成され、該溝に周壁部40の下端が嵌入された状態で、この部分に超音波発信器により超音波が照射されて、周壁部40と底部35とは一体化されている。また、この例の周壁部40は、上端部31と、上端部31よりも下方の上端部以外の部分41とが別体で形成され、これらが超音波溶着により溶着されて、一体化されている。
ケーシング33の底部35の四辺のうち1つの短辺には、側方に突出した2つの足部35a、35aが形成され、また、上端部31にも、側方に突出した1つの足部31aが形成されている。これらの足部31a、35aを下方に向けることにより、浄水器1を冷蔵庫内などで安定に横置きすることができる。
仕切部34は、太径部36とその下方に連続形成された細径の装着部37とを備えた円筒体からなる。仕切部34は、太径部36の上部外周に周方向に沿って形成された係止爪部(図示略)と、ケーシング33の上端部31の内周に周方向に沿って形成された係止受け部(図示略)とを係止することにより、ケーシング33内に着脱自在に取り付けられている。
また、前記係止受け部と係止爪部とは、互いに対応する箇所に切り欠き部を有しており、該切り欠き部で形成される連通口38により、ケーシング33の上端部31と浄水貯留部30bとが連通している。そして、連通口38に対応する位置において、ケーシング33の上端部31が外方に膨出し、浄水を注ぐための浄水出口39となっている。
仕切部34の装着部37は筒状で底部が開口されており、この装着部37に浄水カートリッジ10が着脱自在に装着されている。この例では、浄水カートリッジ10にOリング29が設けられているため、装着部37に浄水カートリッジ10が密嵌されている。
仕切部34の装着部37に浄水カートリッジ10を着脱自在に取り付ける形態は、特に限定されず、仕切部34の装着部37の内面に螺旋状のネジ部が設けられ、浄水カートリッジ10を螺合できるようにする形態等であってもよい。また、他の形態としては、例えば、浄水カートリッジ10の胴部に、外側に張り出したフランジ部を設け、該フランジ部が装着部37の上縁部で係止されることで浄水カートリッジ10が取り付けられる形態等が挙げられる。これらの浄水カートリッジ10の取り付けでは、仕切部34の装着部37にOリング、ガスケット等を嵌着する溝部を設けて、Oリング、ガスケット等で浄水カートリッジ10を密嵌させるシール構造を採用してもよい。
ピッチャー蓋体32は、ピッチャー本体30の上部の開口を閉塞できるものであればよく、その縁部にパッキンを配するなどし、浄水器1の原水貯留部30aを密閉できるものが好ましい。これにより、浄水器1の浄水出口39から浄水を注ぐ際に、浄水器1の原水貯留部30aから原水が漏れることを抑制することが容易になる。
この例のピッチャー蓋体32は、円板状の蓋部42、及びピッチャー本体30の上端部に形成されたネジ部(図示略)に螺合するネジ部43を有する蓋本体44と、蓋本体44の上面に着脱自在に取り付けられ、周方向に回動自在な円板状のダイヤル盤45と、を有している。蓋本体44により、ピッチャー本体30の開口した上端部31が液密に閉塞される。具体的には、蓋本体44を締めることにより、ネジ部43の下端外周に装着されたOリング46からなるシール材と、仕切部34の上端外周に装着されたOリング47からなるシール材との作用により、上端部31が液密に閉塞される。この状態では、ネジ部43とOリング46からなるシール材とにより、連通口38と浄水出口39とがシールされ、浄水を注げないようになっている。
また、ピッチャー蓋体32の上面に形成された三角形のマーキング部Mに対応する部分のネジ部43には、ネジ山が設けられておらず、マーキング部Mを浄水出口39に一致させることにより、浄水を注ぎ出すことができる。
ダイヤル盤45は、蓋本体44に立設された爪部48に、ダイヤル盤45の環状突起45cを嵌合させることで、蓋本体44に着脱自在に取り付けられている。ダイヤル盤45は、使用者がその表面に形成された指置き凹部45bに指を配置して回すことにより回動するようになっている。
ダイヤル盤45にはその表面から裏面に貫通する窓部45aが形成されている。また、蓋本体44のダイヤル盤45が取り付けられた部分における窓部45aに対応する位置に、1〜12月までの各月を示す1〜12までの数字が環状に表示されている。これにより、使用者がダイヤル盤45を適宜回動させることで、1〜12までの数字の一部を窓部45aから選択的に表示させることができるようになっている。例えば、窓部45aに浄水カートリッジ10の寿命を考慮した使用可能な月を示す数字を表示させておくことで、その表示された数字に基づいて浄水カートリッジ10の交換を行うことができる。
以下、浄水器1の作用について説明する。
浄水器1のピッチャー蓋体32を取り外し、浄水器1におけるピッチャー本体30内の原水貯留部30aに原水を供給する。原水貯留部30aに供給された原水は、自重により流入口18から浄水カートリッジ10内に流入する。そして、原水中の残留塩素やカビ臭、トリハロメタン等の有機化合物が活性炭16に吸着されて取り除かれ、さらに中空糸膜束14によって細菌や微粒子が濾過されて取り除かれて浄化される。浄化された浄水は、流出口20から流出し、浄水貯留部30b内に貯留される。原水の処理中は、ピッチャー蓋体32を緩め、ピッチャー本体30の上端部31から原水貯留部30aに空気が取り込まれるようにする。これにより、原水の浄化処理が効率良く行える。
原水貯留部30a内の原水がすべて浄水カートリッジ10で処理され、浄水貯留部30bに貯留された後には、ピッチャー蓋体32を締め、ピッチャー本体30の上端部31を液密に閉塞する。この状態の浄水器1は、冷蔵庫内などで横置きすることもできる。足部31a、35aを下方にして横置きした場合には、浄水出口39が上方に位置する。
浄水貯留部30b内に貯留されている浄水は、ピッチャー蓋体32を緩め、三角形のマーキングMを浄水出口39に一致させた後、浄水器1のネック部40aを把持して浄水器1を傾けることで、浄水出口39からカップ等に注ぐことができる。
以上説明した本発明の浄水器は、活性炭量の変動によるろ過流量及びろ過能力の変動が小さい本発明の浄水カートリッジを有しているため、該浄水カートリッジが大量生産された場合にであってもろ充分な過流量及び良好なろ過能力が安定して得られる。
また、中空糸膜束上に仕切り材を介さずに活性炭を充填した浄水カートリッジを有する場合においても、使用中に活性炭の一部が中空糸膜間に落ち込んでもろ過流量及びろ過能力の変動が小さく抑えられる点で有用である。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[活性炭]
本実施例及び比較例に使用した活性炭A〜Eの粒度分布を表1及び図5に示す。表1における「4.7〜10」とは、4.7メッシュの篩は通過し、10メッシュの篩の上に溜まった活性炭を指す。「10〜14」等についても同様である。また、表1における「4.7〜10」の行の質量比は、活性炭の総質量に対する、4.7メッシュの篩を通過して10メッシュの篩上に溜まった活性炭の質量比を意味する。「10〜14」の行等についても同様である。
活性炭A〜Cは、クラレコールGW10/32(クラレケミカル株式会社製)とクラレコールGW20/40(クラレケミカル株式会社製)を等量で混合した後、10メッシュ、14メッシュ、18メッシュ、22メッシュ、26メッシュ、30メッシュ、36メッシュ、42メッシュの篩で篩い分け、各メッシュの篩上と受け皿に溜まった活性炭を、表1に示した粒度分布になるように混合して得た。
また、活性炭DにクラレコールGW10/32、活性炭EにクラレコールGW20/40を用いた。
Figure 0006358717
[例1(ろ過能力試験)]
<実施例1>
図1に示した本発明に係る実施の一例に基づいて、外径600μm、膜厚100μmであり、0.2μmサイズの粒子を90%以上除去できるポリスルフォン製の中空糸膜の上に活性炭Aを充填し、所望の空間速度になるように中空糸膜の充填密度と活性炭Aの充填量を変えた浄水カートリッジを作製した。
JIS S3201の回分式に準拠し、濃度60ppbのクロロホルムを含む水を、空間速度を変化させつつ通水し、クロロホルムが80%除去された時点を破過点とし、ろ過能力としてクロロホルムのろ過能力を評価した。その結果を図6に示す。
<実施例2>
活性炭Aの代わりに活性炭Bを用いた以外は実施例1と同様の浄水カートリッジを作製し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を図6に示す。
<実施例3>
活性炭Aの代わりに活性炭Cを用いた以外は実施例1と同様の浄水カートリッジを作製し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を図6に示す。
<比較例1>
活性炭Aの代わりに活性炭Dを用いた以外は実施例1と同様の浄水カートリッジを作製し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を図6に示す。
<比較例2>
活性炭Aの代わりに活性炭Eを用いた以外は実施例1と同様の浄水カートリッジを作製し、実施例1と同様の試験を行った。その結果を図6に示す。
図6に示された実施例1〜3、比較例1、2のそれぞれの直線(y=ax+b)を示す数式は、以下の通りであった。なお、これらの数式は縦軸にとったクロロホルムろ過能力[L/mL]をy軸、横軸にとった空間速度(SV)[hr−1]をx軸として示した。
実施例1:y=−0.0178x+8.8889、
実施例2:y=−0.0111x+6.2778、
実施例3:y=−0.015x+6.6、
比較例1:y=−0.0708x+8.2936、
比較例2:y=−0.0407x+17.258。
活性炭A〜Cの粒度分布を有する活性炭を用いた場合では、活性炭D,Eの粒度分布を有する活性炭、すなわち、粒径0.3〜4.0mmの範囲に質量比が31質量%以上となるピークが存在する活性炭を用いた場合に比べて、通水の空間速度の上昇に対するクロロホルムのろ過能力の低下の度合いが小さく、ろ過能力が安定していた。この結果から、活性炭A〜Cでは、活性炭の中空糸膜間へ落ち込みや、破砕炭による変動によって通水の空間速度が変動しても、ろ過能力への影響が小さいと考えられる。
[例2(ろ過流量試験)]
<実施例4>
図1に示した本発明に係る実施の一例に基づいて、ケース12を透明部材で作製し、中空糸膜束14は充填せずに、底部にメッシュ材を敷き、活性炭Bを所定の積層高になるように充填した。JIS S3201に準拠し、ろ過流量を測定した。活性炭の積層高に対するろ過流量の結果を図7に示す。
<比較例3>
活性炭Bの代わりに活性炭Dを用いた以外は実施例4と同様の浄水カートリッジを作製し、実施例4と同様の試験を行った。その結果を図7に示す。
<比較例4>
活性炭Bの代わりに活性炭Eを用いた以外は実施例4と同様の浄水カートリッジを作製し、実施例4と同様の試験を行った。その結果を図7に示す。
図7に示された実施例4、比較例3、4のそれぞれの直線(y=cx+d)を示す数式は、以下の通りであった。なお、これらの数式は縦軸にとったろ過流量[L/分]をy軸、横軸にとった積層高[mm]をx軸として示した。
実施例4:y=−18.317x+1422.5、
比較例3:y=−31.2x+2526、
比較例4:y=−28.75x+1534.8。
活性炭Bの粒度分布を有する活性炭を用いた場合、活性炭D,Eの粒度分布を有する活性炭、すなわち、粒径0.3〜4.0mmの範囲に質量比が31質量%以上となるピークが存在する活性炭を用いた場合に比べて、活性炭の積層高に対するろ過流量の低下の度合いが小さかった。この結果から、活性炭Bでは、活性炭が中空糸膜間へ落ち込んだり、破砕炭によって積層高が変動したりしても、ろ過流量への影響が小さいと考えられる。
1 浄水器 10 浄水カートリッジ 12 ケース 14 中空糸膜束 16 活性炭

Claims (6)

  1. ろ過材を収容するケースに粒状活性炭が充填された自重濾過用の浄水カートリッジであって、
    ろ過材としてさらに中空糸膜束が充填され、かつ該中空糸膜束上に仕切り部材を介さずに前記活性炭が充填されており、
    活性炭の総質量に対する粒径0.3〜4.0mmの粒状活性炭の合計質量の割合が97質量%以上であり、
    活性炭の粒径に対する質量比の関係を示す粒度分布において、粒径0.3〜4.0mmの範囲に質量比が31質量%以上となるピークがない浄水カートリッジ。
  2. 前記活性炭が、前記粒度分布における粒径0.3mm以上0.71mm未満の領域と粒径0.71mm以上4.0mm以下の領域のそれぞれに、1つ以上のピークがある活性炭である、請求項1に記載の浄水カートリッジ。
  3. 前記活性炭が、前記粒度分布における粒径0.3mm以上0.71mm未満の領域と粒径0.71mm以上4.0mm以下の領域に、それぞれ1つずつピークがある活性炭である、請求項2に記載の浄水カートリッジ。
  4. 前記活性炭を中空糸膜上に充填し、JIS S3201に準拠して所定の空間速度(SV)[hr−1]になるように濃度60ppbのクロロホルムを含む水を通水し、クロロホルムが80%除去された時点を破過点としてクロロホルムろ過能力[L/mL]を測定し、空間速度(SV)をx軸、クロロホルムろ過能力をy軸としてプロットして直線(y=ax+b)に近似したときの該直線の傾きaが−0.03〜0である、請求項1〜のいずれか一項に記載の浄水カートリッジ。
  5. 前記活性炭を所定の積層高に充填してJIS S3201に準拠してろ過流量を測定し、前記活性炭の積層高[mm]をx軸、ろ過流量[L/分]をy軸としてプロットして直線(y=cx+d)に近似したときの該直線の傾きcが−25〜0である、請求項1〜のいずれか一項に記載の浄水カートリッジ。
  6. 請求項1〜のいずれか一項に記載の浄水カートリッジを有する浄水器。
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