JP2005000768A - 浄水カートリッジ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】活性炭部31と中空糸膜部32とを備え、流入した水を活性炭部31内にある活性炭等の吸着材38とこれに続く中空糸膜部32内にある中空糸膜47とでろ過する、水栓本体に内蔵した浄水カートリッジ30であって、吸着材38は、重量比率で50%以上の繊維状活性炭を含み、更に中空糸膜部32のカートリッジ全体に対する容積比率を45%以上とした。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、水道の水栓本体内に取付けて、水道水を浄化するための取替え可能な浄水カートリッジであって、特に、内部に活性炭部と中空糸膜部を備えた浄水カートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、台所等では図4に示すように、水道水又はこれを加温した水を給水可能な湯水混合型の水栓10が設けられている。この水栓10の吐水管11の途中位置には、通過する水に含まれる残留塩素(カルキ臭)、2−MIB(かび臭)、一般細菌、溶解性鉛等を除去するための浄水カートリッジ12が設けられている。
なお、図4において、13は水道水供給管を、14は温水供給管を、15は流量調整レバーを、16は放水口をそれぞれ示す。流量調整レバー15は流量の調整だけでなく温度調整、吐水、止水の機能も備えている。また、放水口16には、手動による切替えレバー17が設けられ、供給される原水(水道水及び温水を含む)を、浄水カートリッジ12を通過する清水と、浄水カートリッジ12を通過しない原水と、更にこの原水をシャワー状にして放水するシャワー水に切替えることができる構造となっている。
【0003】
そして、吐水管11を途中位置で分離して内部の浄水カートリッジ12の交換が可能となっている。この水栓10に使用されている浄水カートリッジ12の詳細を図5(A)、(B)に示すが、上流側に活性炭部18が、下流側に中空糸膜部19が設けられ、これらが円筒状のケース体20に収納されている。ケース体20は活性炭を収納する活性炭ケース部21と、活性炭ケース部21と一体となって中空糸膜22を収納する中空糸膜ケース部23とからなっている。多数の中空糸膜22の端部側はポッティング樹脂24によって固められている。切替えレバー17を清水側に切り換えると、活性炭ケース部21の周囲に設けられた複数の開口25から原水が活性炭部18内に入って異物が吸着ろ過され、中央の中空部26から中空糸膜部19内に侵入し、放水口16から浄水として吐水する構造となっている。なお、図5において27はこの浄水カートリッジ12を装着したとき原水と清水を分離するためのシール用のOリングを示す。
一方、特許文献1には、活性炭部を配置した構造の浄水カートリッジが提案され、活性炭部に繊維状の活性炭を使用することも記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−17342号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図5に示す浄水カートリッジ12においては、活性炭部18に粉粒状又は低重量比率の繊維状活性炭を使用し、更には、中空糸膜部19においては、ポリプロピレン(PP)製の中空糸膜22を使用している。そして、実際にこの浄水カートリッジ12を水栓10に組み込むに当たっては、以下の点を考慮することが必要である。それは、吐水管11は使用者が握って吐水する場合があるので、使用者が握ることができる外径とする必要がある。また、このタイプの水栓10は台所で使用されるので、使い勝手の面から吐水管11の長さにも配慮する必要がある。
つまり、水栓に浄水カートリッジを組み込むに当たっては、限られた寸法の中にこの浄水カートリッジを組み込むことになる。更にカートリッジは活性炭ケース部と中空糸膜ケース部からなるので、一定の寿命を想定し、活性炭ケース部に収納する吸着材の量と、中空糸膜ケース部に含有する中空糸膜の量を決めることになる。
【0006】
前述した通り、水道水中には残留塩素やかび臭物質である2−MIBの他に、汚濁物質として鉄さびや一般細菌が存在しており、そして、浄水カートリッジにおいて上記残留塩素やかび臭物質を活性炭の吸着力又は酸化還元作用により除去し、更に鉄さびや一般細菌及びその他の微小な粒子を中空糸膜で捕捉するようにしている。
そして、JIS試験方法において、濁り、残留塩素、2−MIBなどの除去性能を同程度にバランスが取れるようにしている。
具体的には、残留塩素、2−MIBなどに関しては所定濃度の各物質を流し、所定除去率以上でほぼ同程度の総ろ過水量を維持できるよう、また、濁りに関しては所定濃度で所定粒径分布のカオリンを流し、所定除去率以上で残留塩素、2−MIBなどとほぼ同程度の総ろ過水量だけ維持でき、かつ、表示流量の1/2の流量に達するまでの総ろ過水量も上記とほぼ同程度の総ろ過水量を維持できるよう、ろ材を構成したものである。
ところが、水道水にもいろいろな水質があり、JISの濁りろ過能力試験で使用するカオリンより微小な汚濁物質を多数含む水道水では、所定の寿命を達成することができない場合があることが判明した。
このような水道水に使用した浄水カートリッジを詳細に調査した結果、活性炭部はまだ十分に使用できるが、中空糸膜の通水孔の大部分が多数の微小の汚濁物質によって閉塞し、予定した寿命よりかなり短い期間で寿命に達したことが判明した。
また、ポリプロピレン製の中空糸膜では膜剛性が低いため、水圧の高い現場では膜がつぶれて流量が低下し、高温通水の場合や目詰まりが進行した場合は更につぶれやすくなることも判明した。
次に、特許文献1においては、吐水管に浄水カートリッジを埋め込むタイプであり、しかも浄水カートリッジには活性炭のみを包含している。そのため、水道水中の一般細菌を除去できないという不都合がある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、寸法上の制約がある水栓内部に設けた小型の浄水カートリッジにおいて、活性炭と中空糸膜を用いた構成とし、残留塩素、2−MIB、溶解性鉛などの吸着材によるJIS試験での除去性能を維持しながら、濁度計では検出できない急速な目詰まりを発生させる汚濁物質を多く含んだ水道水でも目詰まりしにくい浄水カートリッジを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う第1の発明に係る浄水カートリッジは、活性炭部と中空糸膜部とを備え、流入した水を前記活性炭部内にある活性炭等の吸着材とこれに続く前記中空糸膜部内にある中空糸膜とでろ過する、水栓本体に内蔵した浄水カートリッジであって、前記吸着材は、重量比率で50%以上の繊維状活性炭を含み、更に前記中空糸膜部のカートリッジ全体に対する容積比率を45%以上としたことを特徴とする。
【0008】
粒状活性炭に比べ、外表面積が大きく、吸着速度が速いため、短時間で破過に至るような流速の高い条件でも残留塩素、2−MIBを除去できる範囲を広く維持する繊維状活性炭の割合を増やし、更に中空糸膜の容積を増加させているので、活性炭容量が減少し充填容量に対する相対的な流速(SV値)が増しても、活性炭部で残留塩素、2−MIBを所定の総ろ過水量分除去することができ、中空糸膜での濁りろ過性能を高めることができる。
特に、急速な目詰まりを発生させる汚濁物質を多く含んだ水道水でも、濁りろ過容量を大きくして目詰まりしにくくし汚濁物質の除去寿命(総ろ過水量)を改善することができる。
更に、活性炭部を粒状活性炭と繊維状活性炭で構成した場合には粒状活性炭より繊維状活性炭の方がふるいの目が大きいため、繊維状活性炭の重量比率が大きいほど圧力損失は小さくなる。
活性炭部に濁りを含む水を通した場合、活性炭本来の吸着機能だけでなく、このふるいの目の大きさに応じた大きさの濁り粒子を除去する機能を発揮する。
従って、活性炭部で適度な大きさと量の濁り粒子を除去すれば、中空糸膜部での濁り除去量の負担を減らして、製品全体(中空糸膜部と活性炭部)としての汚濁物質の除去寿命(総ろ過水量)を増すことができる。
【0009】
また、第2の発明に係る浄水カートリッジは、第1の発明に係る浄水カートリッジにおいて、前記中空糸膜の材質をポリスルホン樹脂としている。
これによって、従来のポリプロピレン樹脂の膜に比べて、剛性が高いため、高水圧の現場でも膜がつぶれて流量が低下することがなくなる。更に、耐熱性が改善されるため、高温通水を行っても膜がつぶれず流量の低下もなくなった。更に、高温度のもとでも剛性が高いため、目詰まりが進行しても膜がつぶれることがなくなった。また、ポリスルホン樹脂の中空糸膜はポリエチレン樹脂の中空糸膜に比べて膜の厚さを厚くできるため、更にこれらの効果が高まる。
【0010】
第3の発明に係る浄水カートリッジは、第1及び第2の発明に係る浄水カートリッジにおいて、前記吸着材に鉛除去材を添加すると共に、前記繊維状活性炭の重量比率を60%以上としている。
これによって、中空糸膜部での濁りろ過容量を増すために活性炭部の容積比率を小さくしても、繊維状活性炭の特性を生かして、鉛除去材による圧力損失の増加を繊維状活性炭の重量比率増加による圧力損失減少で補えるため、流量を低下させず、使い勝手を維持できる。
また、繊維状活性炭の重量比率増加により、鉛以外の残留塩素や2−MIB除去性能も同等以上に維持できる。
なお、JIS規格に準じた日本水道協会規格S102では濁質と残留塩素除去が「浄水器」としての基本性能であることが規定されている。
【0011】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は本発明の一実施の形態に係る浄水カートリッジの断面図、図2は同浄水カートリッジの外観図、図3は本発明の実施例に係る浄水カートリッジを使用した場合と改良前の浄水カートリッジを使用した場合の性能比較図である。
【0012】
図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る浄水カートリッジ30は、活性炭部31とこれに直列に連接される中空糸膜部32とを有している。以下、これらについて詳しく説明する。
活性炭部31は、対向するキャップ部33、34と、これらを連結する細径の中空部35を有し、中空部35の周囲に活性炭収納部36が形成され、この活性炭収納部36は比較的強度を有する不織布(筒状ろ過膜の一例)37からなって、内部に鉛除去材の一例であるゼオライトと活性炭との混合物からなる複合吸着材38が収納されている。複合吸着材38中の活性炭(吸着材の一例)は繊維状活性炭が重量比で60〜75%となっている。外側の不織布37は原水中の大きなゴミや異物を除去する作用を有すると共に、複合吸着材38自体を円筒状に保持する容器としての役目もする。従って、浄水カートリッジ30においては、図5(A)に示すように、プラスチック製の活性炭ケース部21は不用のため、この分だけ複合吸着材38の直径を大きくした。更に、繊維状活性炭の割合を増したことにより、後述するように、浄水カートリッジ中での複合吸着材の寸法割合を小さくしても同等の性能を発揮できるようになった。
【0013】
このように、複合吸着材38中に粉粒状のゼオライトを入れることによって、原水中に含まれている鉛(鉛イオンが主体)が吸着され、代わりにカルシウム(微量)、カリウム、ナトリウムのイオンが原水中に溶出し、浄化された水のうま味が増す。また、繊維状活性炭を使用することによって、活性炭の吸着性能が増加する。複合吸着材38中に入れるゼオライトの量は、重量比で全体(複合吸着材38)の15〜20%程度が好ましい。ゼオライトの量をこれより増やしても効果に変わりはなく、ゼオライトの量をこれより減らすと、原水が複合吸着材38中を通過時にゼオライトに触れる確率が減って、全体的な鉛吸着性能が低下する。
【0014】
ここで、繊維状活性炭は粒状活性炭に比べて一桁小さな線径を持っているので圧力損失が少ない、粒状活性炭に比べて外表面のミクロポアで直接吸着力及び酸化還元作用が得られるため吸着速度が大きい、等のメリットがある。
従って、繊維状活性炭の重量比率が大きいほど、ふるいの目が大きいので目詰まりも起こしにくく、更に残留塩素を効果的に除去できる。
【0015】
上流側のキャップ部34は複合吸着材38及び不織布37の端面を覆うと共に、その中央にある補強リブ34aで中空部35内においてろ過された水通水面積を確保しながら活性炭部31の圧縮方向の外力に対する補強を行っている。
下流側のキャップ部33は容器状となってその底板39の中央には、中空部35を通過するろ過水を中空糸膜部32側に流す通水孔40が設けられている。そして、下流側に開口する容器状となったキャップ部33の円筒状の側板41には対向する位置に先部が内側に突出するフック42、43となった掛止片44、45が設けられている。なお、この掛止片は3個以上の複数であってもよい。
【0016】
一方、この活性炭部31に連接する中空糸膜部32は、全体がプラスチック製で円筒状の中空糸膜ケース(中空糸膜カートリッジケース)46と、この中空糸膜ケース46に収納された中空糸膜47とを有している。中空糸膜ケース46の上流側には、キャップ部33に設けられた通水孔40に対向する通水口47aが設けられ、更には、円周側周囲には、キャップ部33の掛止片44、45の先部に設けられたフック42、43が嵌入する環状溝48が設けられ、環状溝48の上流側で前記キャップ部33の側板41が嵌入する部分には、シール用のOリング溝49が設けられている。このOリング溝49には所定のOリングが設けられ、活性炭部31と中空糸膜部32を連結した場合の水シールを行っている。
このような構造となって、中空糸膜部32と活性炭部31は掛止片44、45を介して連結、そして分離できる構造となっている。
【0017】
また、中空糸膜ケース46の下流側は開放となって、この部分に中空糸膜47を形成するU字状に折り曲げられた多数本の中空糸が、その端部を露出させるようにして束ねられてポッティング樹脂50によって固められている。これによって、通水口47aから中空糸膜ケース46内に入ったろ過水は、中空糸膜47を通過する。中空糸膜47を構成する各中空糸は、ポリスルホン樹脂(PSF)からなって、この実施の形態では、例えば線径0.42mm、公称孔径0.04μm、長さ69mmのものが、約1800本程度使用されているが、中空糸膜の材料としては、例えば、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)やポリエチレン樹脂(PE)であってもよい。また、これらの2以上の組合せであってもよい。
なお、中空糸膜47は、いずれも細菌捕捉性能をM、流入水の生菌数をA、ろ過水中の生菌数をBとし、M=log10A/Bとしたとき、Mが4以上であるものを使用している。これによって、ろ過された水中の一般細菌類が実用上差し支えない範囲で減少する。
【0018】
この浄水カートリッジ30は、図4に示すように水栓本体の吐水管11内に配置されるので、中空糸膜ケース46にはOリング溝51が設けられ、このOリング溝51に装着されているOリングによって、浄水カートリッジ装着部とのシールを図っている。
なお、52は環状ストッパーを示す。
【0019】
また、浄水カートリッジ30は、実質的な直径が約32mmで、長さが約120mm程度の筒状となっており、この実施の形態では中空糸膜部32の容積比率はカートリッジ全体容積の約50%となっている。この理由は、活性炭充填容量に対する相対的な流量(SV値)が高くなっても残留塩素、2−MIBなどを安定して除去できる繊維状活性炭の重量比率を高め吸着材の性能を向上させると、活性炭部31の容積を小さくしても活性炭部31の性能を維持でき、これによって、中空糸膜部32の容積を更に増加させることができるので、濁り除去においてより寿命の長い浄水カートリッジ30とすることができるからである。また、活性炭部31では主に残留塩素及び(カルキ臭)、2−MIB(かび臭)などを除去するが、活性炭の中の繊維状成分と粒状成分並びに鉛除去材との重量比率により、中空糸膜47が除去する粒子より比較的大きな粒子の濁りも除去できる。このため、水中の濁りを構成する粒子の粒度分布のうち、比較的大きな粒子の濁りを活性炭部31で、比較的小さな粒子の濁りを中空糸膜47で除去し、濁り除去寿命における活性炭部31と中空糸膜部32とのバランスを適正に保ち、中空糸膜部32の寿命をより長くし、双方をより同じ寿命に近づけることができる。
【0020】
中空糸膜部の容積比率は以下のように計算する。
中空糸膜の容積比率=中空糸膜カートリッジケースの内部容積÷(中空糸膜カートリッジケースの内部容積+活性炭部の外部容積)
また、中空糸膜部の容積比率を大きくするということは膜面積を大きくすることになるが、膜面積を更に大きくする方法として次の式から導き出される方法がある。ここで、中空糸膜外径をd、カートリッジケース内径をD、中空糸膜本数をnとする。
充填率J=(π/4・d2 n)/(π/4・D2 )=(d/D)2 ・n
この式を変形して
n=J/(d/D)2
次に、中空糸膜の片道長さをlとすると、膜面積は以下の式であるので、
膜面積 A=πdln
ここで、上記充填率を変形した式を代入すると、
A=πlJD2 /d
となり、これ以上中空糸膜長さl、カートリッジケース内径D、中空糸膜外径dを大きくできない場合、中空糸膜の本数を増し、充填率Jを大きくすると膜面積を大きくして、濁り除去寿命を長くすることができる。
【0021】
以上の浄水カートリッジ30を水栓10の吐水管11内に装着して、切替えレバー17を清水(浄水)側にして流量調整レバー15を操作すると、原水が活性炭部31から中空糸膜部32を通じて蛇口(放水口16)から放水される。この場合、活性炭部31は不織布37によって覆われているので、原水中の濁りを構成する比較的大きなゴミ粒子は、不織布37によって除去される。活性炭部31では内部により表面積の多い繊維質活性炭を主体とする活性炭とゼオライトが収納されているので、溶解性鉛は当然として、残留塩素(カルキ臭)、2−MIB(かび臭)等が除去される。また、不織布37を通過したゴミのうち、ある程度大きなゴミは活性炭部31で除去される。そして、中空糸膜部32では更に小さい異物や一般細菌等が除去され、清水として放出される。この浄水カートリッジ30においては、中空糸膜部32の中空糸にポリスルホン樹脂を使用し、更にその全体ろ過面積を増加していると共に、活性炭部31の活性炭の素材の品質を向上させているので、活性炭部31の実質的な容積を小さくしているにも関わらず、残留塩素、2−MIB等の除去性能を維持しながら原水中の比較的大きな濁り成分を不織布37及び活性炭で、比較的小さな濁り成分を中空糸膜47で除去し、その除去量のバランスを中空糸膜47と活性炭部31の容積の比率で調節するため、目的とする物質の除去寿命をバランスよく設定できる(例えば、10リットル/日の使用量を想定して4ヶ月分即ち1200リットル以上の総ろ過水量をいずれの目的物質においても除去できる)。
【0022】
【実施例】
続いて、本発明に係る浄水カートリッジの作用、効果を確認するために行った実施例について説明する。
表1には、本発明に係る浄水カートリッジA、B及びC(図1、図2に示す)、並びに比較例としての改良前の浄水カートリッジD(図5に示す)及び浄水カートリッジDを元にして改良した浄水カートリッジE、についての主要諸元及び性能を示す。なお、浄水カートリッジA〜Eの全長は約120mm、外径は32mmであった。
また、浄水カートリッジA、B及びCにおいて、活性炭部の外径(32mm、32mm、30.5mm)が浄水カートリッジD及びEの外径(28mm)より大きいのは、浄水カートリッジA、B及びCが外側のプラスチックケースを省略して不織布のみとしたからである。
更に、中空糸膜の材質を浄水カートリッジA〜Cではポリスルホン樹脂(PSF)、浄水カートリッジD及びEではポリプロピレン樹脂(PP)とした。
【0023】
【表1】
【0024】
この表1において、JIS試験とはJIS S 3201「家庭用浄水器試験方法」6.3.2 濁りろ過能力試験をいい、不具合現場とは一般に原水濁度が0.1度以下でJIS試験のカオリンより小さい粒子をもつ微粒子(特定成分)が通常より多く含まれる場所をいう。寿命とは動水圧0.1MPaにて連続通水したときの通水流量が、このカートリッジの表示流量2リットル毎分の1/2の流量である1リットル毎分を下回ったときの総ろ過水量をいう。更に不具合現場寿命とは、不具合現場と同一条件の原水を用意し、JIS試験と同じ試験方法を用いたときの寿命をいう。
【0025】
濁り成分除去に関しては、不織布、活性炭では比較的粒度の大きな濁り成分を除去し、中空糸膜では比較的小さな粒度の濁り成分まで除去するので、特定成分が多い不具合現場でのJIS濁度ろ過試験では寿命が長いにも関わらず、中空糸膜が早期に目詰まりを起こすため、寿命が短くなる。
【0026】
まずは、濁り物質の除去性能について見てみる。
浄水カートリッジA、B、Cの活性炭部分を比較すると、繊維状活性炭の重量比率が各々50%、60%、75%と順に高くなっているため、ふるいの目もこの順に大きくなる。従って、水中に濁り成分があると活性炭部分での目詰まり量はこの順に少なくなる。JIS濁度ろ過試験での粒子分布と特定成分の多い場所での粒子分布に差があってもこの傾向は同じである。
これは粒状活性炭と鉛除去材はいずれも繊維状活性炭の枝の中にからまる状態で存在しており、繊維状活性炭はこれらより一桁小さな線径であるため、繊維状活性炭の重量比率が増すほど、ふるいの目は大きくなるためである。
一方、浄水カートリッジD、Eの場合、両者とも同一材料の活性炭を用い、その容積が異なっている。更に、浄水カートリッジDとEは共にふるいの目の大きさが同じでカートリッジの長さが異なるため、JIS試験寿命は側面積が小さい浄水カートリッジEの方が浄水カートリッジDに比べて活性炭部分で目詰まりしやすく、寿命も短くなるが、不具合現場では活性炭部分をすり抜ける小さな粒子成分が多くなり中空糸膜面積の大きな浄水カートリッジEの方がDに比べて寿命が長くなる。
次に、浄水カートリッジEとAを比較すると、繊維状活性炭の重量比率が各々38%、50%となっており、前述の説明の通り、活性炭部分のふるいの目が浄水カートリッジEよりAのほうが大きいため、活性炭部分での目詰まり量が少なく、寿命は長くなる。
ここで、浄水カートリッジEとAでは中空糸膜面積はほぼ同じで材料が異なっているが浄水カートリッジEの材料ポリプロピレン樹脂(PP)より長寿命の材料ポリスルホン樹脂(PSF)を浄水カートリッジAに用いているため、中空糸膜部は目詰まりによる流量低下の要因とはなっていない。
【0027】
次に、活性炭部分を除去し、中空糸膜部だけでJIS試験寿命を測定すると同一仕様の浄水カートリッジA、B、Cはいずれも3000リットルである。
濁度除去性能においてJIS試験寿命、不具合現場寿命のいずれもA、B、Cの順に寿命が長くなるのは活性炭での目詰まりによる流量低下がこの順で起こりにくくなるためである。
前記した浄水カートリッジCでのJIS試験寿命において、中空糸膜単体での寿命より長くなったのは、この効果がうまく発揮された結果と云える。
ところが、不具合現場では濁り成分の粒度分布に粒径の小さいものが多く含まれているため、不織布と活性炭で除去される濁り成分が少なく、大部分は中空糸膜で除去されることになり、急激な流量低下が発生して濁りに対する寿命が低下する。
【0028】
次に残留塩素除去性能について考えてみる。
活性炭部の容積がほぼ同じで浄水カートリッジA、B、Cにおいては、A、B、Cの順に残留塩素除去寿命が長くなっている。
浄水カートリッジD、Eの場合、両者とも同一材料の活性炭でその容積が異なっているため、容積の小さな浄水カートリッジEは当然のことながら残留塩素除去寿命が小さくなっている。
浄水カートリッジEとAを比較する。浄水カートリッジAは浄水カートリッジEに比べて外側のプラスチックケースを省略し、活性炭部分の外径を大きくすると共に、活性炭部分の長さを長くし、かつ粒状活性炭に比べて残留塩素除去能力の高い繊維状活性炭の重量比率を高めて、残留塩素除去の目標性能である1200リットルを達成した。
以上のことから、表1の浄水カートリッジA、B、Cは浄水カートリッジDに比べて活性炭部分の容積比率を減らしているが、繊維状活性炭の重量比率を増す(これらの例では50〜75%)ことで残留塩素や溶解性鉛を目標とする1200L以上除去することができた。
【0029】
図3は、比較的小さな粒子を多く含んだ水質の不具合現場の水道水(濁度0.000)にて、浄水カートリッジA〜Eを実際に連続通水したときの、標準圧力時(0.1MPa)での流量(リットル/分)と総ろ過水量(リットル)の関係を示すグラフである。図3においても、1リットル/分になったときを浄水カートリッジの寿命としている。
【0030】
浄水カートリッジA〜Cは、前記寿命を示す1リットル毎分に達したときの連続通水での総ろ過水量が340〜690リットルであるので、単純に1日の想定使用量を10リットルとして計算しても、1〜2ヶ月(34日〜69日)の寿命は持つことになる。
ここで、カートリッジEは表1において、残留塩素の除去性能が1050リットルであり、濁り除去、残留塩素除去の両面において1200リットルに至っていないので、カートリッジDと同様に実使用に耐えないことになる。
【0031】
そこで、1回の通水量を10リットルに抑え、1日数回に分けて通水を繰り返す(「間欠吐水」)場合、上記連続通水の場合に比べ寿命が2.5倍から4.5倍となり、平均すると3.6倍程度長くなることが確認されている。この場合、浄水カートリッジA〜Cは前記寿命を示す1リットル毎分に達したときの総ろ過水量が約1200〜2400リットル程度の寿命を持つことになり、1日の想定使用量10リットルでこれらの浄水カートリッジが目標とする濁りろ過能力である4カ月分以上の実使用に耐え得ることになる。
【0032】
本発明は、前記した実施の形態や実施例の記述範囲に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲での変更技術は本発明の権利範囲に含まれる。例えば、前記実施の形態や実施例においては、浄水カートリッジの寸法を特定して説明したが、本発明はこれらの寸法に限定されない。
また、キッチンのシンク下に設置するようなカートリッジの容量が限定されない場合でも、中空糸膜部の前記容積比率、繊維状活性炭の前記重量比率は応用できる。
更に、活性炭部に混入する鉛除去材としてゼオライトを用いたが、他の物質(例えば、シリカチタネート)であってもよい。
【0033】
【発明の効果】
請求項1〜3では、活性炭部と中空糸膜部とを備え、流入した水を活性炭部内にある活性炭等の吸着材とこれに続く中空糸膜部内にある中空糸膜とを有する浄水カートリッジを水栓本体に内蔵し、吸着材に、重量比率で50%以上の繊維状活性炭を含み、中空糸膜部のカートリッジ全体に対する容積比率を45%以上とした。これにより、活性炭部に汚濁物質を含む水を通した場合、活性炭本来の吸着機能だけでなく、このふるいの目の大きさに応じた大きさの濁り粒子を除去する機能を発揮する。
従って、活性炭部で適度な大きさと量の濁り粒子を除去することにより、中空糸膜部での汚濁物質の除去量の負担を減らして、製品全体(中空糸膜部と活性炭部)としての汚濁物質の除去寿命(総ろ過水量)を増すことができる。
【0034】
特に、請求項2記載の浄水カートリッジにおいては、中空糸膜の材質をポリスルホン樹脂としているので、高水圧の現場においても流量低下を生じることなく、また高温での吐水を行っても性能が低下することがない。
【0035】
請求項3記載の浄水カートリッジは、吸着材に鉛除去材を添加すると共に、繊維状活性炭の重量比率を60%以上としているので、残留塩素の除去能力を低下させることがなく、使い勝手を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る浄水カートリッジの断面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】本発明の実施例に係る浄水カートリッジを使用した場合と改良前の浄水カートリッジを使用した場合の性能比較図である。
【図4】一般的な水栓の斜視図である。
【図5】(A)は改良前の浄水カートリッジの断面図、(B)は同側面図である。
【符号の説明】
10:水栓、11:吐水管、12:浄水カートリッジ、13:水道水供給管、14:温水供給管、15:流水調整レバー、16:放水口、17:切替えレバー、18:活性炭部、19:中空糸膜部、20:ケース体、21:活性炭ケース部、22:中空糸膜、23:中空糸膜ケース部、24:ポッティング樹脂、25:開口、26:中空部、27:Oリング、30:浄水カートリッジ、31:活性炭部、32:中空糸膜部、33、34:キャップ部、34a:補強リブ、35:中空部、36:活性炭収納部、37:不織布、38:複合吸着材、39:底板、40:通水孔、41:側板、42、43:フック、44、45:掛止片、46:中空糸膜ケース、47:中空糸膜、47a:通水口、48:環状溝、49:Oリング溝、50:ポッティング樹脂、51:Oリング溝、52:環状ストッパー
Claims (3)
- 活性炭部と中空糸膜部とを備え、流入した水を前記活性炭部内にある活性炭等の吸着材とこれに続く前記中空糸膜部内にある中空糸膜とでろ過する、水栓本体に内蔵した浄水カートリッジであって、前記吸着材は、重量比率で50%以上の繊維状活性炭を含み、更に前記中空糸膜部のカートリッジ全体に対する容積比率を45%以上としたことを特徴とする浄水カートリッジ。
- 請求項1記載の浄水カートリッジにおいて、前記中空糸膜の材質をポリスルホン樹脂としたことを特徴とする浄水カートリッジ。
- 請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の浄水カートリッジにおいて、前記吸着材に鉛除去材を添加すると共に、前記繊維状活性炭の重量比率を60%以上としたことを特徴とする浄水カートリッジ。
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