JP6051421B2 - 浄軟水器 - Google Patents
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また水道水中に含まれる塩素と有機物質との反応によって、発ガン性を有するトリハロメタンが水道水中に生成することも報告されている。
そこで従来、水道水からなる原水を内部に導き入れて活性炭層に通し、これを浄水となして流出させる浄水器が家庭のキッチン等に設置されて広く使用されている。
またお茶を入れて飲むときや、かつおや昆布のだしを取るときには軟水の方がお茶やだしの出が良く、軟水が適しているとされている。
こうした場合、水道水を軟水化して使用できれば好都合である。
水道水を軟水化する一般的な方法は、原水(水道水)をイオン交換樹脂層に通して、原水中に溶存しているカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の硬度成分をイオン交換樹脂のナトリウムイオンとイオン交換する方法である。
例えば下記特許文献1にこの種の浄軟水器が開示されている。
しかしこの特許文献1に開示の浄軟水器では、原水をイオン交換樹脂層に対して軸線方向に流し、通過させるものであることから、通水抵抗が大きいことによって十分な流量を確保することが難しく、従ってまた浄軟水器をコンパクト化することが難しい問題がある。
このようなイオン交換繊維にては、水道水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の硬度成分を除去し、水道水を軟水化することは難しい。
詳しくは、容器内のイオン交換樹脂層は水分が一定以下に少なかったり乾いた状態、即ち水分不足状態に保持されると、炭素鎖の分断を伴ってイオン交換樹脂が分解し劣化してしまう。
イオン交換樹脂が分解して劣化すると、分解した有機成分を含んだ水がイオン交換樹脂層から活性炭層に移行したとき、活性炭層がその有機成分を多量に吸着してしまう。そしてそのことによって活性炭の吸着性能が低下してしまう。
また図4において、その保持体には水浄化媒質とは反対側に活性炭を主成分とした別の保持体を設けた点が開示されている。
但しこの特許文献4に開示のものは原水を軟水化する機能を有するものではなく、本発明とは異なる。
更に加えて、容器内の軟水化材の劣化や浄水化材の性能の低下を抑制でき、使用寿命の長い浄軟水器を提供することを目的としている。
従って本発明によれば、通水抵抗を小さく抑えて大流量で原水を流すことができる。また浄軟水器をコンパクト化することができる。
粒状のイオン交換樹脂層は、イオン交換繊維に比べて容器内に多く詰めることができる。これにより鉛イオン等に比べて多量に水道水中に含まれているカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の硬度成分を十分にイオン交換にて捕捉し、除去することができる。
この問題を解決することを狙いとして、本発明ではイオン交換樹脂層と活性炭層との間に、透水係数が5×10−7〜1×10−4m/s(秒)(望ましくは5×10−7〜3×10−5m/s)の範囲の通水膜層を介在させる。
但しその働きのために通水膜層の透水係数を1×10−4m/s以下としておく。
これを防ぐため、通水膜層の透水係数を5×10−7m/s以上としておく。
透水係数を5×10−7m/s以上としておくことで、イオン交換樹脂層から活性炭層への原水の流れが過剰に抑制されてしまうことで、流量不足となるのを防ぐことができる。
このようにした場合、不織布を、活性炭層の外周を保護する層として機能させることができる。しかも活性炭層に不織布を巻くだけで、容易に通水膜層を形成することができる。
図1において、10は本実施形態の浄軟水器で、円筒形状をなす非透水性の容器12と、容器12の内周面に沿ってその径方向内側に配置されたイオン交換樹脂層16と、更にその内周面に沿って径方向の内側に配置された活性炭層18と、更にその内周面に沿って径方向内側且つ容器12の中心部に配置されたセラミックフィルタ20とを有している。
尚、図1では浄軟水器10をその中心軸線が上下向きとなる状態で表しているが、実際の設置に際してはその軸線を鉛直向き,水平向き,斜めの向きその他様々な向きで設置することが可能である。
蓋体26は、平面視形状が円形の閉鎖部28と、閉鎖部28の外周端から図中下向きに立ち下る円筒形状の周壁部30とを有している。
周壁部30の内周面には雌ねじ部32が設けられ、その雌ねじ部32と容器本体24の図中上端部外周面の雄ねじ部34とにおいて、蓋体26が容器本体24にねじ結合されている。
尚、容器本体24の図中上端側には、外周面から径方向外方に突出する環状の突出部15が設けられており、蓋体26を容器本体24にねじ込む際のねじ込み量が、この突出部15にて規定される。
またその中心から偏心した位置において、上向きに筒状(円筒状)に突出した原水の流入口38が一体に設けられている。
更に蓋体26の閉鎖部28には、上記の流出口36と同じ中心部において、下向きに突出する筒状(円筒状)の雌嵌合部39が一体に設けられている。
下段の弾性押え40は、その外径が、通水路形成部材14を介して容器本体24の内周面にほぼ嵌合する大きさとされている。
一方上段の弾性押え42は、外径が下段の弾性押え40よりも小径とされており、その外周側に原水の通水空間44を形成している。
尚これら弾性押え40,42には、中心部に円形の貫通孔が設けられている。これら円形の貫通孔は、後述のエンドキャップ64から図中上向きに立ち上る雄嵌合部68を挿通させ、また蓋体26の雌嵌合部39を下向きに挿入させるべく設けられている。
押え板46は、蓋体26の閉鎖部28から下向きに突出する円環状のリブ48に内嵌する状態で、蓋体26の側に設けられている。
この押え板46には外周部、詳しくは上記の通水空間44に対応する位置に、貫通の通孔49が複数設けられている。
蓋体26の閉鎖部28は、この押え板46との間に原水の流入室50を形成している。
縦線材14Aと横線材14Bとの交点は、図3(B)に示しているように、熱融着によりシートの両面外方向に盛り上って突出部52を形成している。
ここで縦線材14Aと横線材14Bの太さは0.5〜1.5mm程度であり、また縦,横のピッチは2〜7mmである。
図4(A)に示しているように、この通水路形成部材14を円筒状に丸めた状態で容器本体24内部に挿入し、加えていた力を除くと、自身の弾性で通水路形成部材14が拡がって、交点の突出部52を容器本体24の内周面に接触させる。
このように通水路形成部材14を容器本体24の内周面に接触状態で配置することによって、容器本体24の内周面に沿った通水路54が形成される。
ここで通水路54は、容器本体24の全高及び全周に亘って形成される。
そしてこの袋56の内部に粒状のイオン交換樹脂が詰められ、袋56を介し通水路形成部材14の内周面に沿って上記のイオン交換樹脂層16が形成されている。
イオン交換樹脂層16は、原水中に溶存しているカルシウムイオン,マグネシウムイオン等の硬度成分をイオン交換により捕捉し、除去する働きを有するもので、ここではイオン交換樹脂として可動イオンがNa+イオンであるNa型のものが用いられている。
ここでは活性炭層18を構成する活性炭として、粒状のものが用いられている。
この活性炭層18もまた、容器本体24のほぼ全高に亘って且つ全周に亘って円筒状に形成されている。
尚ここでは粒状活性炭から成る活性炭層18は、予め円筒状に成形された形のものが用いられている。
セラミックフィルタ20は、肉厚が1.0〜2.2mm程度の多孔質の焼結体から成る円筒形状のもので、その多孔質構造に基づいて微細孔を多数有しており、その微細孔を通じ上記イオン交換樹脂層16,活性炭層18を通過した水を外周側から内側に通過させる。
このセラミックフィルタ20の内側には、通水路58が縦向き(上下向き)に形成されている。
尚このセラミックフィルタ20の外周面には、珪藻土の層60が積層形成されている。
この珪藻土の層60は、微細な活性炭屑がセラミックフィルタ20に流入するのを防ぐ働きを有する。
尚、珪藻土の層60,活性炭層18の上端には、平面視形状が円形で非透水性を有する別のエンドキャップ64が固定され、それらの上端が、かかるエンドキャップ64にて閉鎖されている。
一方上位置のエンドキャップ64は、上向きに突出する筒状(円筒状)の雄嵌合部68を有しており、その雄嵌合部68が、蓋体26における上記の下向きの雌嵌合部39内に内嵌状態に嵌合されている。
これによりセラミックフィルタ20の内側の通水路58が、雄嵌合部68を介し蓋体26の流出口36の内部空間に連通せしめられている。
ここで通水膜層70は、イオン交換樹脂層16と活性炭層18との界面全体に亘ってそれらの間に介在せしめられている。
詳しくは、イオン交換樹脂層16及び活性炭層18の全高に亘って、且つイオン交換樹脂層16の内周面及び活性炭層18の外周面の全周に亘って介在せしめられている。
そのためにここでは通水膜層70として、透水係数が5×10−7〜1×10−4m/sの範囲内のものが用いられている。
この実施形態では、かかる通水膜層70として不織布が用いられている。その厚みはここでは0.1mm程度の薄いものである。
即ち、先ず図4(A)に示しているように、蓋体26を取り外した状態の容器本体24の内部に通水路形成部材14を挿入し、これを容器本体24の内周面に接触させる状態にセットする。
一方、図4(B)に示しているようにセラミックフィルタ20,珪藻土の層60,活性炭層18,その外周面に巻き付けられた不織布から成る通水膜層70及び一対のエンドキャップ62,64にて構成されるユニット75を、袋56の内部に挿入しておき、そしてそのユニット75を袋56ごと容器本体24の内部且つ通水路形成部材14の内側に挿入する。
そしてユニット75の下端のエンドキャップ62を、容器本体24の底部22から突出した嵌込部66内に嵌め込んで位置決めする。
その後袋56の内部且つユニット75周りの空間に粒状のイオン交換樹脂を充填して、円筒状のイオン交換樹脂層16を形成する。
このときエンドキャップ64の雄嵌合部68が、蓋体26の雌嵌合部39に内嵌状態に嵌合し、セラミックフィルタ20内側の通水路58が、流出口36の内部空間に連通した状態となる。
そして原水がイオン交換樹脂層16を径方向に通過する過程で、原水中に含まれているカルシウムイオン,マグネシウムイオン等の硬度成分がイオン交換により除去され、軟水化される。
そして活性炭層18を通過する過程で、原水中に溶存している臭いの元となる成分その他化学成分が吸着され除去される。また併せてこのとき原水中の比較的粗大な固形分が濾過作用により除去される。
そしてそのようにして軟水化され浄化された水が、通水路58を通じ流出口36から外部に流出する。
従って本実施形態によれば、通水抵抗を小さく抑えて大流量で原水を流すことができる。また浄軟水器10をコンパクト化することができる。
イオン交換樹脂層16と活性炭層18とを、容器12の内部に接触状態で収容しておくと、イオン交換樹脂層16が、活性炭層18による水分吸収により、水分不足状態に陥る。
そうするとイオン交換樹脂が分解して劣化し、イオン交換樹脂層16の軟水化能力が低下する。
また、軟水化能力の低下のみならず、分解により生じた有機成分が、イオン交換樹脂層16から水分とともに活性炭層18に移行したとき、活性炭が有機成分を吸着してしまい、そのことによって活性炭による吸着能力も低下してしまう。
結果として活性炭層における表層部分の吸着能力が大きく低下してしまい、そのことによって活性炭層18の径方向の有効距離(有効厚み)が減少してしまう。
即ち原水浄化のための有効な通水距離が短くなってしまい、原水の浄化能力が大きく低下してしまう。
これによりイオン交換樹脂層16の軟水化能力と活性炭層18の浄水化能力とが高く維持される。
また通水膜層70は透水係数が5×10−7m/s以上とされることで、イオン交換樹脂層16から活性炭層18への水の移動が過剰に抑制されてしまうことがなく、十分な通水流量を確保することができる。
その結果が比較例についての結果とともに表1に示してある。
図5は、比較例1として用いた浄軟水器10Aを示している。
図に示しているように比較例の浄軟水器10Aは、イオン交換樹脂層16A,活性炭層18Aを、それらの間に非透水性の円盤状の樹脂板80を介して図中縦方向(軸線方向)に積層してある。
また図1に示す非透水性の弾性押え40,42に代えて、透水性の弾性を有する円盤状のスポンジから成る弾性押え40A,42Aを上下2段に重ねて用いている。但しこれら上,下の各段の弾性押え40A,42Aとして、何れも容器本体24Aの内面に嵌合する同じ外径のものを用いている。
また活性炭層18Aの外周には、不織布から成る通水膜層70Aが巻き付けてある。
イオン交換樹脂層16Aを通過した水は、続いて通水膜層70Aを経て活性炭層18Aにその外周側から流入し、これを径方向に通過する。
そして活性炭層18Aを通過した水がセラミックフィルタ20Aを径方向に通過し、通水路58Aを流通して流出口36Aから外部に流出する。
尚実施例,比較例の具体的な構成は以下とした。
また濾過水量,クロロホルム除去能力低下率,軟水化能力低下率等の各特性の測定は以下の方法にて行った。
(a) イオン交換樹脂層(16)
・外径:φ82mm,内径:φ40mmで、径方向の厚み:21mm,軸線方向高さ:
185mm
・用いたイオン交換樹脂
母体がスチレン系ゲル型で、スルホン酸基(−SO3 −)を官能基とし、可動側
イオンがNa+であるNa型のものを用いた。具体的にはここではオルガノ(株)
社製のアンバージェット1220(品番)を用いた。粒度分布は0.54〜0.
65mmで、充填量は700ccとした。
(b) 通水膜層(70)
・厚みが0.1mmで材質がPP,PEの不織布を用いた。
具体的にはシンワ社製の65408HST(透水係数7×10−6)
ユニチカ社製のエスベル(透水係数2.0×10−5)
シンワ社製の9540FOF(透水係数8.5×10−6)
ユニチカ社製のエスベルを2枚重ねたもの(透水係数5×10−7)
シンワ社製の9540−F(透水係数2×10−4)を用いた。
・外径:φ39mm,内径:12mmで、径方向の厚みが13.5mm,軸線方向高さ
:185mm
・用いた活性炭
粒度分布が20〜100μmのものを予め円筒状に成形したものを用いた。充
填量は200ccとした。具体的には活性炭としてクラレケミカル社製のPGW
20MD,PGW100MDを用いた。
(a) イオン交換樹脂層(16A)
・外径:φ78mm,内径:φ12mmで、径方向厚みが33mm,軸線方向高さ14
0mm
・用いたイオン交換樹脂
実施例1〜4及び比較例2と同様のものを用いた。
(b) 通水膜層
・厚みが0.1mmで材質がPP,PEの不織布を用いた。
具体的にはシンワ社製の9540FOF(透水係数7×10−6)
(c) 活性炭層(18A)
・外径と内径はイオン交換樹脂層16Aと同様で、軸線方向高さが45mm
・用いた活性炭
実施例1〜4及び比較例2と同様のものを用いた。
尚劣化促進試験は、浄軟水器10,10Aを流入口38,流出口36に蓋をした状態で70℃の恒温槽に入れて10日間放置することで行った。
尚浄軟水器に蓋をした状態で劣化促進試験を行っているのは、蓋をしない状態で劣化促進試験を行うと、イオン交換樹脂が過度に乾燥し、劣化してしまうことによる。
以下に各特性の測定方法を記す。
JIS A 1218「擁壁用透水マット技術マニュアル」の付録「擁壁用透水マットの試験方法」の第1章(面に垂直方向の透水性能試験)の1−1A法に準拠し、測定を行った。
JIS S 3201 6.1「濾過流量試験」に準拠し、測定を行った。
JIS S 3201に準拠し、クロロホルムの除去能力を測定した。
浄水器協会規格 JWPAS−Y 2104「硬度低減能力試験方法」に準拠し、測定を行った。
濾過水量の基準を上記とした理由は、実施例1〜4及び比較例2に示すように、原水がイオン交換樹脂層を外周側から内部に向けて径方向に流れる構成の浄軟水器では、濾過水量(通水量)がこれ以上ないと、径方向の抵抗が小さくなり、流入口から流入した原水は、カートリッジ下部のイオン交換樹脂まで十分に行き渡らずに活性炭層に流入し易くなるため、結果として軟水能力が低下してしまうことによる。
また浄水化能力,軟水化能力については、能力低下率10%を基準とし、その範囲内であれば○,その範囲を超えている場合には×として評価を行っている。
表1の結果から、透水係数1×10−4m/s以下の下で浄水化能力の低下,軟水化能力の低下を良好に抑制できること、また透水係数5×10−7以上の下で良好な濾過水量が得られることが見て取れる。
12 容器
14 通水路形成部材
16 イオン交換樹脂層
18 活性炭層
38 流入口
70 通水膜層
Claims (2)
- (a)筒状の容器と、
(b)該容器の内周面に沿って配置され、該容器の軸線方向及び周方向に延在し、原水の通水路を形成する通水路形成部材と、
(c)該通水路形成部材の内周面に沿って配置され、原水中の硬度成分をイオン交換にて除去する粒状のイオン交換樹脂層と、
(d)該イオン交換樹脂層の内周面に沿って前記容器の中心側に配置された活性炭層と、
を備え、流入口から流入し前記通水路形成部材にて形成される前記通水路に到った原水を、前記イオン交換樹脂層,前記活性炭層の順に前記軸線と直交方向の外周側から中心側に通過させて原水を軟水化及び浄水化するとともに、
前記イオン交換樹脂層と前記活性炭層との間には、透水係数が5×10−7〜1×10−4m/sの通水膜層が介在させてあることを特徴とする浄軟水器。 - 請求項1において、前記通水膜層が不織布であることを特徴とする浄軟水器。
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