JP6353665B2 - マニピュレータの初期化方法、マニピュレータ、およびマニピュレータシステム - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、人手によって把持および操作される操作司令部と、この操作司令部と着脱可能に設けられ、硬質のシャフトの先端に関節を介して可動に保持されたグリッパを有する作業部とを備えるマニピュレータが記載されている。
操作司令部には駆動モータを有するアクチュエータブロックが設けられ、アクチュエータブロックと作業部のプーリは、アライメントピンを介して着脱可能に連結されている。
各プーリには、プーリの位置を作業部の原点位置に設定するロッキングプレートが装着可能である。
このようなマニピュレータによって処置を行うには、操作司令部を取り外した作業部のプーリにロッキングプレートを装着して作業部を原点位置、例えば、可動部が真直状態に延びた状態に設定する。アクチュエータブロックでは、駆動モータをモータの原点位置に設定しておく。そして、作業部から、ロッキングプレートを外して、アクチュエータブロックを装着する。これにより、マニピュレータにおいて、駆動モータの原点位置と、作業部の原点位置が一致した状態に初期化されるため、操作司令部の操作に応じて、作業部の原点位置から駆動を開始する動作を行うことができる。
特許文献1に記載の技術では、ロッキングプレートを装着することで、作業部の原点位置を保持しているため、例えば、体内への挿入の都合上、先端を湾曲させる場合などは、ロッキングプレートを取り外して、原点位置を解除する必要がある。
このように原点位置を解除してしまうと、ロッキングプレートを再度装着するためには、駆動モータを用いることなく、専用治具などにより手作業で各プーリを動かして原点位置に戻さねばならず、煩雑な作業が必要になるという問題がある。
また、可撓性を有する長尺の軟性処置具などのマニピュレータの場合、一般に体内に挿入されると、複雑に湾曲した状態になる。このような軟性処置具の駆動に用いる駆動ワイヤは、例えば、シースに挿通されることで、経路長が変化しにくくなっているが、シースと駆動ワイヤとの間にはわずかな隙間がある。このため、シースが湾曲していると、駆動ワイヤの湾曲経路がシースの中心軸線の湾曲形状とずれて、駆動ワイヤの経路長が変化する。また、シースと駆動ワイヤ間の経路長変化に加えて、アウターチューブとシース間の経路長変化も生じる。
すなわち、ほとんどの湾曲状態では、駆動ワイヤの経路長は原点姿勢を決めた際の経路長とは異なる。
したがって、駆動部をモータの原点位置で装着するようにしても、必ずしも処置具の関節が原点姿勢にはならないという問題がある。
また、湾曲による駆動ワイヤの経路長の影響を除去するため、軟性処置具が湾曲した状態で関節の位置や姿勢を専用治具によって規定し、この状態で、駆動モータと連結して初期化することも考えられる。しかし、このような専用治具は、体内に挿入したり、体内で取り外して、体外に回収することは困難である。したがって、体内で用いるマニピュレータには適用できないという問題がある。
前記基準角度保持部が前記関節部の回転角度を前記基準角度に設定し、前記駆動力中継部が前記駆動力解除状態に切り替えられた状態において前記基準角度保持部が前記基準角度を保持する基準角度保持工程と、
該基準角度保持工程の実行後に、前記関節部が初期化動作を行う位置に配置された状態かつ前記駆動力中継部が前記駆動力中継状態に切り替えられた状態において、前記駆動制御部が、前記関節部を前記基準角度から前記基準角度における姿勢とは異なる予め決められた原点姿勢となるまで回転させ、回転後の前記駆動部の回転位置を前記駆動部の駆動原点に設定する原点設定工程と、を備える方法とする。
本発明の第1の実施形態のマニピュレータおよびマニピュレータシステムについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータシステムの全体構成を示す模式的な斜視図である。図2(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータの主要部を示す模式的な斜視図である。図3は、図2(a)におけるA視図である。図4は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータの駆動時の整列状態の主要部の模式的な正面図である。図5(a)は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータの基準角度設定時の主要部の模式的な正面図である。図5(b)は、図5(a)におけるB視図である。図5(c)は、図5(b)におけるC視図である。図6は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータの先端部の構成を示す模式的な正面図である。図7は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータの基準角度保持部の構成を示す模式的な斜視図である。図8(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータの駆動部および駆動力中継部の構成を示す模式的な断面図である。図9は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータの駆動力中継部の駆動力解除状態を示す模式的な断面図である。図10は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータの制御部の機能ブロック図である。
なお、各図面は、模式図のため、寸法や形状は誇張されている(以下の図面も同様)。
マスタマニピュレータ2は、操作者Opが操作入力を行うマスタアーム3と、処置用内視鏡装置10を用いて撮影した映像等を表示する表示部4と、マスタアーム3の動作に基づいて、スレーブマニピュレータ6を動作させるための操作指令を生成する制御部5とを備える。
マスタアーム3は、後述する処置用内視鏡装置10の湾曲部11Bや保持アーム部20のように1以上の関節部を有するマニピュレータを動作させるために関節構造を有している。
また、マスタアーム3において操作者Op側に位置する端部には、保持アーム部20の把持部29(後述)を動作させるための把持操作部(図示略)が設けられている。
多関節ロボット8、処置用内視鏡装置10は、マスタマニピュレータ2から発せられた操作指令に従って動作する。
ただし、本発明のマニピュレータシステムにおいて、多関節ロボットは必須ではなく、例えば処置用内視鏡装置10を図示しない補助者が保持する構成としてもよい。
湾曲部11Bは、マスタアーム3への操作入力によって、湾曲させることにより先端部11Aの向きを変更することができる。湾曲部11Bを湾曲させる機構としては、例えば、節輪や湾曲コマの内周面に挿通され、先端部11Aに固定された駆動ワイヤを挿入部11C内に挿通させて、近位端側の駆動モータなどで牽引する周知の構成を採用することができる。
外套管11の内部には、処置具を供給する管状の経路を形成する処置具チャンネル16が設けられている。
処置具チャンネル16の先端部16bは、先端部11Aを軸方向に貫通して、図3に示すように、先端部11Aの先端面11aに開口している。
処置具チャンネル16は、湾曲部11Bおよび挿入部11Cの内部では可撓性を有する管状部材によって構成されている。
観察部15は、処置対象部位を観察するための装置であり、周知の撮像機構13と照明機構14とを備える。
撮像機構13および照明機構14は、先端部11Aの内部に配置され、図示略の電気配線や光ファイバが、湾曲部11Bおよび挿入部11Cの内部に挿通され、後述する制御部5における電気回路や光源に連結されている。
撮像機構13および照明機構14は、先端部11Aの先端面11aにおいて、それぞれ光学的な開口窓を有しており、この開口窓を通して、先端部11Aの前方の外光を受光したり、照明光を前方に出射したりすることができる。
例えば、外套管11の処置具チャンネル16に、先端に観察部を有する観察用の内視鏡を挿通して、観察部を外套管11から突出させ、挿通した内視鏡の進退操作や湾曲操作によって、観察部15の位置や姿勢を変更できるようにすることができる。
保持アーム部20は、本実施形態のように外套管11とともに駆動ユニット30(図1参照)と接続されることにより、マニピュレータとして用いることができる。
本実施形態では、保持アーム部20は、全体として、細長い軸状に形成されており、エンドエフェクタとしては、把持部29を有している。
ただし、図面では、記載を簡潔にするため、対応関係が容易に分かる場合には、一部の部材では、R、Lの添字を省略している。
以下、簡単のため、第1回転関節部21、第1屈曲関節部23、第2屈曲関節部25、および第2回転関節部27を総称する場合、誤解のおそれがなければ、単に保持アーム部20の関節部と称する場合がある。同様に、第1軸状部22、第2軸状部24、第3軸状部26、および第4軸状部28を総称する場合、単に保持アーム部20の軸状部と称する場合がある。
なお、保持アーム部20は、各関節部によって多自由度を有するため、これらの各部材の相対位置は、駆動状態によって変わる。
以下に、各部の構成や配置を説明する場合、特に断らない場合には、図4(a)に示すように、先端部11Aの先端面11aの法線Nに沿って、真直に延びた駆動状態(整列状態と称する)にあるものとして、相対的な位置関係を説明する。
なお、このような整列状態は、本実施形態では、後述する原点設定工程の実行によって得られる保持アーム部20の原点姿勢になっている。
第1回転関節部21は、第1軸状部22の基端部の外周部に巻き回した、図示略の駆動ワイヤを、駆動ユニット30で牽引することにより回転駆動される周知の構成を有している。
図5(b)に示すように、回動部23bには、駆動ワイヤW23(線状の駆動力伝達部材)の端部が接合されたプーリ23dが固定されている。
この駆動ワイヤW23は、シースC23に挿通された状態で、外套管11の内部に挿通されて、駆動ユニット30まで延ばされている。
このため、第1屈曲関節部23は、この駆動ワイヤW23を、駆動ユニット30で牽引することにより回動軸23cの中心軸線である回転軸線O23回りに回動することができる。
駆動プーリ25Eには、駆動ワイヤW25(線状の駆動力伝達部材)が掛け回されている。この駆動ワイヤW25は、シースC25に挿通された状態で、第2軸状部24および外套管11の内部に挿通されて、駆動ユニット30まで延ばされている。
これにより、保持アーム部20の基端側で駆動ワイヤW25が牽引されると、駆動プーリ25Eが回転軸25c回りに回転し、回動支持板25Gも駆動プーリ25Eとともに回動するようになっている。
このとき、回動支持板25gは、回転軸25c、25dが挿通されている回動支持板25Gと同様に移動する。
なお、駆動ワイヤW25の配回しの詳細については後述する。
回動支持板25gが近接する回動部25bには、図5(a)に示すように、ガイドギヤ25eと同一のピッチ円半径を有する連結ギヤ25fが固定されている。
連結ギヤ25fは、ガイドギヤ25eと径方向に対向して配置され、ガイドギヤ25eと噛み合った状態で固定されている。
このとき、回動部25bは、ガイドギヤ25eのピッチ円上を滑りなく転動する連結ギヤ25fとともに回動するため、回転軸線Oに対する回動支持板25g、25Gの回転角度の2倍の角度だけ回転することになる。
筒状部27aには、外周面上のワイヤ接合部27bに、駆動ワイヤW27(線状の駆動力伝達部材、図4、図5(a)、(b)では図示略)の端部が固定されている。駆動ワイヤW27は、筒状部27aの外周面を周回するように螺旋状に巻き回されて、第3軸状部26を軸方向に貫通する孔部26c、26dに挿通されている。
この駆動ワイヤW27は、図示略のシースに挿通された状態で、第2屈曲関節部25、第2軸状部24、および外套管11の内部に挿通されて、駆動ユニット30まで延ばされている。
このため、第2回転関節部27は、駆動ワイヤW27が牽引されると、筒状部27aが第3軸状部26の中心軸線回りに回転する。また、駆動ワイヤW27の牽引方向を変えることにより、回転方向を変えることができる。
第1回転関節部21の回転可能範囲は、±90°である。
ここで、回転の限界を表す回転角度は、図3に示すように、先端部11Aの先端面11aに平行な面内で、第1回転関節部21R、21Lが互いに対向する方向をX方向、これと直交する方向をY方向とするとき、第1屈曲関節部23の回転軸線O23が、Y方向に沿う状態の回転角度が0°(図3参照)、X方向に沿う状態の回転角度が90°である。
回転角度の正負は、0°を基準として、図3の図示において、第1回転関節部21Rでは反時計回りが正、第1回転関節部21Lでは時計回りが正とする。
ここで、0°は、図4に示すように、第2軸状部24R(24L)の中心軸線が、回転軸線OR(OL)に整列する場合の第1屈曲関節部23R(23L)の回転角度である。
90°は、第2軸状部24R(24L)の中心軸線が、回転軸線OR(OL)に直交する場合の第1屈曲関節部23R(23L)の回転角度である。
第1屈曲関節部23の回転角度の正負は、例えば、図2の湾曲矢印で示すように、第1回転関節部21が0°の位置にあるときに、第1屈曲関節部23が上記の0°の状態から、第2軸状部24R、24Lが互いに離れる方向を正として測るものとする。
ここで、角度の正方向は、第1屈曲関節部23の角度の正方向と同一である。
なお、「第2屈曲関節部25全体」の回転角度とは、支持部25aの中心軸線と回動部25bの中心軸線とのなす角度を意味する。
ここで、図4に示すように、第4軸状部28に固定された把持部29の回動軸29cが、第2屈曲関節部25の回転軸線O25c、O25dと平行となる位置関係が0°、回転軸線O25c、O25dと直交するねじれの位置が90°である。
回転角度の正負は、特に限定されないが、例えば、第1回転関節部21と同様の方向とすることが可能である。
把持部29の構成は、被把持物を把持するための一対の把持部材29a、29bと、把持部材29a、29bを回動可能に支持する回動軸29cとを有している。
把持部材29a、29bは、マスタアーム3の図示略の把持操作部を操作することにより回動軸29cを中心として回動され、図6の矢印のように動いて開閉動作する。
把持部29の駆動力の伝達手段は、特に限定されず、例えば、図示略の操作ワイヤによって把持部材29a、29bに連結した図示略のリンクを駆動するなどの手段が可能である。
筐体部31の内部には、図7に示す駆動連結部53(駆動力中継部)、基準角度保持部60、および駆動モータ部34(駆動部)を備える。
なお、駆動連結部53、基準角度保持部60、および駆動モータ部34は、各関節部に応じて、それぞれ1組ずつ設けられているが、いずれも同じ構成を有する。以下では、第2屈曲関節部25を駆動する場合の例で説明する。
他の関節部については、ガイドギヤ25e、連結ギヤ25fを有しない点が異なるが、駆動プーリと駆動ワイヤの動作は同様である。例えば、以下の説明における駆動プーリ25Eおよび駆動ワイヤW25を、第1屈曲関節部23の場合にはプーリ23dおよび駆動ワイヤW23に、第2回転関節部27の場合には筒状部27aおよび駆動ワイヤW27に、それぞれ読み替えればよい。このため、他の関節部の動作の説明は省略する。
第1内歯車50(第2内歯車51)は、駆動ワイヤW25を巻き回すための外周面50a(51a)と有しており、筐体部31(図1参照)に固定されたギアケース52に収容されている。
なお、本実施形態では、第1内歯車50(第2内歯車51)の回転が駆動ワイヤW25に確実に伝達されるように、駆動ワイヤW25の端部が、外周面50a(51a)上の図示略の位置で固定されている。これにより、駆動ワイヤW25に大きなたるみが生じた場合でもスリップなどを起こすことなく確実に牽引することが可能となる。
ただし、例えば、摩擦係合のみでもスリップを起こさない場合には、外周面50a(51a)固定しない構成も可能である。
駆動ワイヤW25における関節部22B側の両端部は、第2屈曲関節部25の駆動プーリ25Eに巻き回されてから、接合部25Hにおいて駆動プーリ25Eに固定されている。
駆動ワイヤW25の中間部は、駆動連結部53の第1内歯車50の外周面50a、基準角度保持部60の後述するプーリ55、および第2内歯車51の外周面51aに、この順に巻き回されている。
同様に、プーリ55に対しても、図示と異なる巻き回しが可能である。特に、プーリ55は、後述するぜんまいバネ70によって付勢力を受ける。一方、駆動ワイヤW25は摩擦係合しているだけであるため、スリップしにくいようにより巻き付け角が大きくなるように巻き回すことが好ましい。また、1周以上巻き回すことがより好ましい。
軸受52aとしては、例えば、ボールベアリングを採用することができる。
第1内歯車50および第2内歯車51の中心部には、後述する駆動モータ部34のピニオン32が軸方向に挿入可能、かつ周方向に係合可能な内歯部50b、51bが回転中心軸O3と同軸に形成されている。
駆動モータ34Aの種類は、駆動指令値に基づいて、出力軸34aを所定の回転量だけ回転できれば、特に限定されない。例えば、サーボモータ、ステッピングモータ、DCモータなどを採用することができる。
本実施形態では、駆動モータ34Aは、出力軸34aの回転量を検出するエンコーダ34bを有しており、マスタアーム3の操作に基づいて駆動モータ34Aの駆動制御を行う制御部5と通信可能に接続されている。
固定部46の構成は、このような着脱が可能であれば、特に限定されない。例えば、弾性力が付勢された突起部を設け、駆動モータ34Aの外周部に形成された凹部に着脱可能に係合するような構成や、駆動モータ34Aの位置を固定するクランプ部材とこのクランプ部材の位置をねじや凹凸嵌合機構によって固定する構成などの例を挙げることができる。
以下の説明では、駆動連結部53に対する駆動モータ部34の位置関係を説明する場合には、特に断らない限りは、駆動モータ部34の装着状態における位置関係を説明する。
このように、駆動モータ部34を駆動連結部53から引き抜いて取り外した状態では、駆動力が遮断された駆動力解除状態が形成される。
また、駆動モータ部34は、逆に回転中心軸O3に沿って押し込んで、固定部46に装着することができる。駆動モータ部34が固定部46に装着されると、駆動モータ部34の軸方向の位置が位置決めされ、図8に示すように、ピニオン32が、内歯部50b、51bと略同幅ずつ噛み合う。
このように、駆動モータ部34を駆動連結部53に装着した状態では、駆動力が第1内歯車50および第2内歯車51に中継される駆動力中継状態が形成される。
このため、駆動連結部53は、駆動力中継状態と駆動力解除状態とが切り替え可能な駆動力中継部を構成している。
制御部5は、図10に示すように、駆動制御部として、駆動量算出部100、および原点設定部101を備える。
原点設定部101によるこのような原点設定が行われるのは、本実施形態では、図示略の通知手段によって、駆動力中継状態になったことが原点設定部101に通知されたときである。
このような通知手段としては、例えば、駆動モータ部34の着脱に連動して装着状態を検知する検知センサなどの手段や、操作者Opが装着を済ませてから押しボタンスイッチによって、手動で通知するといった手段を挙げることができる。検知センサの種類としては、例えば、光センサ、押し込みスイッチなどの機械的センサ、電界や磁界を用いた検知センサなどの例を挙げることができる。
本実施形態では、図示は省略するが、駆動モータ部34を固定部46に装着する動作に連動した検知センサが設けられ、この検知センサの出力によって原点設定部101に駆動力中継状態になったことが通知される。
本実施形態では、原点設定部101は原点を設定すると、保持アーム部20の各関節部に対する駆動リミットを設定する。
この駆動リミットは、予め、保持アーム部20の各関節部に対して決められており、原点設定部101は、それぞれの駆動リミットを、通信可能に接続された駆動量算出部100にソフト設定する。
一方、駆動量算出部100は、駆動指令値を駆動モータ34Aに送出する前に、駆動指令値が駆動リミットを越えていないかどうか判定する動作を行う。
駆動リミットを越えていると判定された場合には、駆動量算出部100は、駆動モータ34Aの駆動を停止し、駆動リミットを越えていることが分かる情報を表示部4に表示させる。
図11(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータの模式的な動作説明図である。
図11(a)、(b)に、保持アーム部20における第2屈曲関節部25を駆動する主要構成を模式的に示す。簡単のため、駆動ワイヤW25の配回しは平面に展開して表しているため、第1内歯車50、第2内歯車51の位置はずらして描いている。図11(a)は駆動モータ部34の取り外し状態を示し、図11(b)は駆動モータ部34の装着状態を示している。
また、ガイドギヤ25e、連結ギヤ25fは、簡単のため円形で模式的に示している。
このとき、図11(a)に示すように、駆動ワイヤW25は、第2屈曲関節部25の駆動プーリ25E、第1内歯車50、基準角度保持部60のプーリ55、および第2内歯車51に順次巻き回されている。また、駆動ワイヤW25は、図示略の位置で、第1内歯車50および第2内歯車51の外周面で位置が固定され、駆動プーリ25E上では、接合部25Hを介して駆動プーリ25Eと固定され、ループを形成している。
なお、図11(a)、(b)は、模式図であり簡略化している。このため、駆動ワイヤW25の配回しや巻き付け角や巻き付け回数などを正確に表すものではない。
本実施形態では、ぜんまいバネ70は、プーリ55に対して、図示時計回りに回転力を付勢している。このため、プーリ55が図示時計回りに回転して、駆動ワイヤW25を図示反時計回りに牽引する。すなわち、第2屈曲関節部25とプーリ55との間の第2ワイヤ部W25bの経路長が短縮し、第1ワイヤ部W25aの経路長が伸張するように駆動ワイヤW25が牽引される。
第2屈曲関節部25では、ガイドギヤ25eの回転可能範囲が、±90°である。例えば、ガイドギヤ25eの回転角度が0°のとき、連結ギヤ25fは、図11(a)における二点鎖線で示すように、回転軸線Oに整列している。ガイドギヤ25eの回転角度が+90°のとき、連結ギヤ25fは、図11(a)における実線で示すように、回転軸25cと回転軸25dとを結ぶ線分が、回転軸線Oと直交する位置に移動し、これ以上図示反時計回りには回動することはできない。
このため、駆動力解除状態では、ぜんまいバネ70の付勢力により、連結ギヤ25fは、回転角度が+90°の位置に移動される。このとき、連結ギヤ25fに固定された回動部25bは、連結ギヤ25fの転動による90°の回転と、連結ギヤ25fの回転軸25d回りの自転とによって回転角が2倍になり、+180°回転した状態になる。
このとき、図5(a)に示すように、第2屈曲関節部25を介して連結される第2軸状部24と第3軸状部26とは、+180°に屈曲されて、保持アーム部20の基端側に向けて折りたたまれた状態になる。
例えば、第1回転関節部21、第1屈曲関節部23、および第2回転関節部27の基準角度は、それぞれ0°である。
第2屈曲関節部25の基準角度は、+180°である。
このように各関節部が基準角度に保持された状態(以下、基準状態と称する)では、保持アーム部20R、20Lは、先端部11Aの外周面を延長した円筒状領域の内側に収容されている。また、基準状態の各保持アーム部20の軸方向の長さは、第2屈曲関節部25よりも先端側が折りたたまれることにより、整列状態よりも短くなっている。
このように基準状態では、各保持アーム部20は先端部11Aの先端面11a上において、コンパクトに折りたたまれている。このため、体内で、湾曲部11Bを湾曲させたり、先端部11Aを軸方向に進退させたりして、保持アーム部20の配置位置を決める場合に、処置対象部位や他の処置具などとの干渉が起こりにくく、作業性を向上することができる。
また、処置用内視鏡装置10をオーバーチューブなどの管状部材を通して体内に挿入する場合に、円滑に挿入することができる。
例えば、図8のように、駆動モータ部34を駆動連結部53に装着すると、ピニオン32が第1内歯車50および第2内歯車51の内歯部50b、51bに噛み合う。このため、ピニオン32から第1内歯車50および第2内歯車51に駆動力を伝達することが可能となる。
すなわち、制御部5の駆動量算出部100から駆動指令値が送出されると、駆動モータ34Aが駆動され、ピニオン32が回転し、第1内歯車50および第2内歯車51に駆動力が伝達される。
図12は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータの初期化方法のフローを示すフローチャートである。
まず、ステップS1を行う。本ステップは、各関節部の回転角度を基準角度に設定し、駆動力中継部が駆動力解除状態に切り替えられた状態で基準角度を保持するステップであり、基準角度保持工程を構成している。
処置用内視鏡装置10では、駆動ユニット30において、駆動モータ部34を取り外し状態とすることで、駆動力中継部である駆動連結部53が駆動力解除状態に切り替えられ、上記に説明したように、各関節部が基準角度に設定される(基準状態)。
この基準状態では、各関節部を駆動する駆動ワイヤにぜんまいバネ70による付勢力が作用し、これを上回る外力が作用するまでは維持される。また、一時的に外力が作用して基準状態から逸脱したとしても、外力が消失すると、ぜんまいバネ70の弾性復元力によって、基準状態が再現される。
すなわち、駆動モータ部34を取り外し状態とすることで、駆動力解除状態になっている各保持アーム部20を先端部11Aから患者Pの体内に挿入する。このため、各保持アーム部20は、基準状態で体内に挿入される。
以上で、ステップS2が終了する。
なお、ステップS1が患者Pの体内で行われる場合には、本ステップは省略される。
本実施形態では、具体的には上記ステップS2を実行して、各保持アーム部20を含む先端部11Aを患者Pの体内に挿入した後、先端部11Aを適宜の処置領域に位置づけ、駆動モータ部34を装着する。なお、ステップS1において先端部11Aが体内に挿入済みで、ステップS2を省略した場合には、本ステップでは、必要に応じて先端部11Aを適宜の処置領域に移動して、駆動モータ部34を装着する。
このように、駆動モータ部34を装着すると、各駆動連結部53が駆動力中継状態となる。
以上で、ステップS3が終了する。
駆動モータ部34が装着されると、駆動連結部53が駆動量中継状態となり、駆動量算出部100が算出する駆動指令値に基づいて、各関節部を駆動することが可能となる。
予め決められた角度は、保持アーム部20の原点における姿勢を実現する各関節部の回転角度と基準角度との差である。
本実施形態では、一例として、整列状態を原点姿勢として採用している。このため、第1回転関節部21、第1屈曲関節部23、および第2回転関節部27に対して予め決められた角度は0°である。一方、第2屈曲関節部25は、基準角度+180°に対して、−90°の角度が予め決められている。
これにより、第2屈曲関節部25が−90°回転し、第2屈曲関節部25の回転角度が0°になる。この結果、各保持アーム部20は、図4に示すような整列状態になる。
以上で、ステップS4が終了する。
原点設定部101は上記ステップS4で駆動指令値の原点を設定すると、予め、各関節部に対して決められた駆動リミットに対応する駆動指令値を、駆動量算出部100に送出し、駆動量算出部100に記憶させる。
例えば、特定の関節部の可動範囲が、駆動指令値で原点から±x0の場合であっても、保持アーム部20の操作上必要な駆動範囲は、±x(ただし、x<x0)に過ぎないことが多い。これを越えて移動できるようにしておくと、操作を誤って過剰に動作させた場合に、患者Pの体内の他の処置具や器具と干渉する可能性がある。また駆動ワイヤにかかる負荷が過大になり、駆動ワイヤやマニピュレータが破損したりする可能性がある。
このため、本実施形態では、駆動リミットとして、例えば、上記駆動指令値xを駆動量算出部100に記憶させる。
以上で、ステップS5が終了し、各保持アーム部20に対する本実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法が終了する。
操作者Opは、表示部4による術野の映像を見ながら、処置動作の必要に応じて、マスタアーム3を操作して、保持アーム部20を湾曲させたり、処置部位等を把持部29で把持させたりするための所定の操作入力を行う。
例えば、保持アーム部20を湾曲させる操作入力が行われると、制御部5の駆動量算出部100は、マスタアーム3の操作入力を解析して、操作入力された湾曲状態を実現する各関節部の関節角度を求め、各関節角度に応じて、各関節部に駆動力を伝達する各駆動モータ34Aに対する駆動指令値を算出する。
駆動量算出部100は、各駆動指令値が、駆動リミットを越えていないかどうか判定し、すべての駆動指令値が駆動リミットの範囲内である場合には、各駆動指令値を、各駆動モータ部34に送出する。
駆動リミットを越えた駆動指令値が存在する場合には、駆動量算出部100は、各駆動指令値の送出を停止し、表示部4に駆動リミットを越えていることを警告するメッセージを表示部4に表示させる。操作者Opは、表示部4のメッセージを見て、マスタアーム3の操作入力を変更する。
しかし、本実施形態では、体内で基準状態から一定量駆動した状態を、駆動モータ部34の駆動原点と対応付けるため、シースおよび駆動ワイヤの湾曲状態の影響を受けることなく原点位置を初期化できる。このため、体内において正確な駆動を行うことができる。
これに対して、保持アーム部20の原点姿勢を専用治具などで規定して駆動原点との対応付けを行うことも考えられるが、本実施形態では、このような専用治具を用いることなく、保持アーム部20の基準状態を形成することができるため、体内であっても容易に初期化動作を行うことができる。
次に、上記第1の実施形態の変形例(第1〜第3変形例)のマニピュレータについて説明する。第1〜第3変形例は、いずれも基準角度保持部の配置位置に関する変形例である。
図13(a)、(b)、(c)は、本発明の第1の実施形態の変形例(第1〜第3変形例)のマニピュレータの主要部の駆動力解除状態の構成を示す模式図である。
処置用内視鏡装置10Aは、図13(a)に示すように、上記第1の実施形態における保持アーム部20、駆動ユニット30に代えて、保持アーム部20A(医療用器具)、駆動ユニット30Aを備える。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
基準角度保持部60Aは、例えば、上記第1の実施形態と同様なぜんまいバネ70を用いた構成が可能である。ただし、基準角度保持部60Aは、駆動プーリ25Eまたは回動支持板25Gを一方向に回転させる付勢力を発生できれば、ぜんまいバネ70には限定されない。例えば、引っ張りバネ、定荷重バネ、空気バネ、磁力を用いて付勢力を発生させる機構も可能である。
なお、図13(a)は、模式図のため概念的な構成を示している(後述の図13(b)、(c)も同様)。このため、駆動プーリ25Eを引っ張りバネで直接的に引っ張っているかのような図示になっているが、このような形態に限定されない。
例えば、駆動プーリ25Eに引っ張り用のワイヤ部材を適宜の量だけ巻き付け、このワイヤ部材を引っ張りバネ等に接続して駆動プーリ25Eを回転させる付勢力を発生させる構成が可能である。
このような処置用内視鏡装置10Aによれば、上記第1の実施形態と同様にして初期化動作を行うことができる。
処置用内視鏡装置10Bは、図13(b)に示すように、上記第1の実施形態における駆動ユニット30に代えて、駆動ユニット30Bを備える。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
例えば、第2屈曲関節部25に対応する駆動ユニット30Bの場合、第1内歯車50を図示反時計回りに回転させる付勢力を発生させる基準角度保持部60Bを備える。
基準角度保持部60Bは、例えば、上記第1の実施形態と同様なぜんまいバネ70を用いた構成が可能である。ただし、基準角度保持部60Bは、第1内歯車50を一方向に回転させる付勢力を発生できれば、ぜんまいバネ70には限定されず、例えば、引っ張りバネ、定荷重バネ、空気バネ、磁力を用いて付勢力を発生させる機構も可能である。
このような処置用内視鏡装置10Bによれば、上記第1の実施形態と同様にして初期化動作を行うことができる。
処置用内視鏡装置10Cは、図13(c)に示すように、上記第1の実施形態における駆動ユニット30に代えて、駆動ユニット30Cを備える。
以下、上記第1の実施形態および第2変形例と異なる点を中心に説明する。
次に、本発明の第2の実施形態のマニピュレータについて説明する。
図14は、本発明の第2の実施形態のマニピュレータの基準角度保持部および初期張力付与部の構成を示す模式的な斜視図である。
処置用内視鏡装置10Dは、図14に示すように、上記第1の実施形態における駆動ユニット30に代えて、駆動ユニット30Dを備える。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
初期張力付与部61は、遠位端(図14の図示左側)と近位端(図14の図示右側)とを結ぶ方向に基準角度保持部60のプーリ保持部56をスライド可能に保持するガイド57と、プーリ保持部56の遠位側に配されプーリ保持部56を遠位端側に向かって牽引するためのバネ58と、バネ58の遠位端を支持する支持部59とを備える。
このため、バネ58は、プーリ保持部56およびこれに固定されたぜんまいバネ70を、ガイド57に沿って遠位端側に引っ張っている。これにより、駆動ワイヤW25は、バネ58の弾性復元力に対応する初期張力が付加されている。この場合、プーリ保持部56は、バネ58に牽引されて直線上を移動するため、ガイド57を削除した構成も可能である。
ただし、バネ58は、プーリ保持部56を遠位端側に向かって押圧するように配置してもよい。この場合には、バネ58が伸縮方向の側方に座屈するおそれがあるため、ガイド57とは異なる構成でもよいが、プーリ保持部56の移動方向を規定する何らかの移動ガイド部を設けることが好ましい。
特に基準角度保持部60の付勢力は、ぜんまいバネ70による付勢力と反対方向に駆動する場合に、駆動抵抗になる。このため、必要な駆動力が駆動方向によって変化してしまうため、ぜんまいバネ70の付勢力は、なるべく小さいことが好ましい。したがって、ぜんまいバネ70によって付勢される力による駆動ワイヤW25の張力成分は、バネ58によって付加される初期張力成分よりも十分小さくなるように、ぜんまいバネ70およびバネ58のバネ特性を設定することが好ましい。
図15(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態のマニピュレータの模式的な動作説明図である。図16は、本発明の第2の実施形態のマニピュレータの初期化方法のフローを示すフローチャートである。
これにより、駆動ワイヤW25はたるみが生じることなく張架されている。
プーリ55はガイド57に沿って移動できるため、プーリ55は、バネ58およびぜんまいバネ70から作用する弾性復元力と、駆動ワイヤW25の張力と、駆動ワイヤW25からの摩擦力とが釣り合う位置に静止する。すなわち、駆動ワイヤW25がたるむと、バネ58が縮んで常にたるみが除去され、駆動ワイヤW25の張力が均一になる。
このように、駆動力解除状態では、ぜんまいバネ70と連結されたプーリ55は、駆動ワイヤW25を駆動するための回転体を構成している。
本実施形態のマニピュレータの初期化方法は、図16に示すステップS11〜S16を図16のフローにしたがって実行する方法である。
処置用内視鏡装置10Dでは、駆動ユニット30Dが、初期張力付与部61を有するため、線状の駆動力伝達部材である駆動ワイヤ、例えば、駆動ワイヤW25等に、常時、初期張力Tが付加されている。
このため、本ステップは、操作者Opや制御部5が特に何らかの操作を行う必要があるステップではない。
ただし、本実施形態では、処置用内視鏡装置10Dが基準角度保持部60を有することにより、駆動力解除状態では常に基準角度が保持されているため、ステップS11とステップS12とは、明確に前後関係があるわけではなく、駆動力解除状態とした時にステップS11、S12は同時に行われている。
特に、シースおよび駆動ワイヤの湾曲状態によって発生する経路長の変化によるたるみも確実に除去されるため、原点位置の初期化精度を向上することができる。このため、体内においてより正確な駆動を行うことができる。
次に、本発明の第3の実施形態のマニピュレータについて説明する。
図17は、本発明の第3の実施形態のマニピュレータの初期張力付与部の構成を示す模式的な斜視図である。
処置用内視鏡装置10Eは、図17に示すように、上記第1の実施形態における駆動ユニット30に代えて、駆動ユニット30Eを備える。
駆動ユニット30Eは、上記第2の実施形態に駆動ユニット30Dにおいて、基準角度保持部60のぜんまいバネ70を削除したものである。このため、プーリ保持部56は基準角度保持部としての機能を有しておらず、初期張力付与部61の一部の機能のみを有している。このため、本実施形態は、上記第2の実施形態から基準角度保持部を削除した場合の例になっている。
以下、上記第1および第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
本実施形態のステップS11は、処置用内視鏡装置10Eを用いて行う点を除いて、上記第2の実施形態のステップS11と同様の工程である。
本実施形態では、このような駆動力解除状態において、保持アーム部20の各関節部は、外力を作用させると容易に動かすことができる。そこで、本ステップでは、保持アーム部20に外力を作用させて基準状態を形成する。
具体的には、手動で回転の限界まで各関節を回転させて折りたたむことが可能である。
また、手動で折りたたみつつ、基準状態で嵌合可能な穴部を有する治具に嵌め込むことで、基準状態の位置決めを行うことが可能である。ただし、基準状態が形成されたら、治具は取り外しておく。
このように基準状態が形成されると、駆動ワイヤと駆動ワイヤが巻き回された回転体との摩擦力によって基準状態が保持される。初期張力を付与しておくと、初期張力の大きさに応じて摩擦力も大きくなるため、基準状態を保持しやすい。
以上で、本実施形態のステップS12が終了する。
ただし、ステップS13では、基準状態を変化させるような外力が作用しないように、注意して体内に挿入する。
このようにして、処置用内視鏡装置10Eの各保持アーム部20が初期化される。
すなわち、関節部による被回転体は、軸状部には、限定されず、複数の節輪や湾曲コマのような円環状部材でもよいし、明確な軸線を有しない形態の被回転体も使用可能である。
この場合には、原点設定工程において、駆動中継部が駆動力中継状態に切り替えられるまでの間に、位置センサの検出出力に基づいて、駆動部の原点出しを行う原点出し工程を実行することが好ましい。
本工程では、例えば、駆動部の回転角度を、位置センサによる許容限度となる位置の中心位置に変更するような原点出しを行う。
この場合、位置センサによる駆動限界が優先される場合に、実質的な駆動範囲が制限されてしまうことを防止することができる。また、ソフト設定の駆動リミットが優先される場合に、位置検出センサによる駆動限界を越えて駆動リミットが設定されてしまうことを防止することができる。
例えば、エンドエフェクタを多関節構造によって移動することができる軸状の医療用器具を、内視鏡の処置具チャンネル、ガイドチューブ、トロッカなどに挿通して体内に挿入する構成も可能である。
例えば、駆動部と駆動力伝達部とを、クラッチで連結する構成が可能である。この場合、クラッチによって、駆動部と駆動力伝達部とを連動させることにより駆動力中継状態が形成され、クラッチによって、駆動部と駆動力伝達部との連動を解除することにより駆動力を遮断することで駆動力解除状態が形成される。
例えば、上記第1の実施形態の駆動ワイヤW25を駆動する駆動部と駆動力伝達部の場合、駆動力中継状態では第1内歯車50、第2内歯車51に相当する2つの駆動力伝達部が、駆動モータ部34に相当する駆動部と一体に回転し、駆動力解除状態では、駆動部による駆動力が遮断される必要がある。さらに駆動力解除状態においては、たるみを解消するため、2つの駆動部が互いに独立に回転できるようにする必要がある。
このような構成の一例について簡単に説明する。
また、駆動部としては、駆動モータ部34のピニオン32に代えて、これらプーリを回転軸線に沿って押圧可能であって押圧時に、プーリと一体に回転するかみ合い板を備えた駆動モータ部を採用する。
そして、クラッチとしては、回転軸線方向に沿って、この駆動モータ部を、かみ合い板がプーリから離間する第1の位置と、2つのプーリ同士が一体になるまでかみ合い板をプーリに向けて押圧する第2の位置との間で、進退させる機構を採用する。
クラッチによって、駆動モータ部を第2の位置に移動させると、かみ合い板が2つのプーリを押圧し、かみ合い板、および2つのプーリが回転軸線方向において連結される。
このため、駆動モータ部が回転すると、駆動モータ部からの駆動力が中継され、2つのプーリが同期して回転する。すなわち、駆動力中継状態が形成される。
例えば、関節部による被回転体を回転方向に押圧して、基準角度を設定する構成や、第3の実施形態で説明した被回転体の位置規制を行って基準角度に設定する機構や部材を採用することができる。
例えば、体内で溶解する部材によって、被回転体を押圧したり、位置規制をしたりして、体内で、これらの押圧や位置規制が解除できるようにした構成が可能である。
また、形状記憶合金によって、温度に応じて、被回転体を押圧したり、位置規制をしたりする状態と、これらの押圧や位置規制が解除する状態とを切り替える構成を採用することができる。この場合、体外の温度では、基準状態を形成し、体内の温度では、基準状態の規制を解除することが可能である。
例えば、上記第1の実施形態の第1〜第3変形例は、すべて、第2の実施形態の処置用内視鏡装置10Dや、第3の実施形態の処置用内視鏡装置10Eにも適用することが可能である。
3 マスタアーム
4 表示部
5 制御部(駆動制御部)
6 スレーブマニピュレータ(マニピュレータ)
10、10A、10B、10C、10D、10E 処置用内視鏡装置(マニピュレータ)
11 外套管
11A 先端部
11B 湾曲部
11C 挿入部
20、20A、20B、20C、20L、20R 保持アーム部(医療用器具)
21、21L、21R 第1回転関節部(関節部)
22 第1軸状部(軸状部、被回転体)
23、23L、23R 第1屈曲関節部(関節部、屈曲用関節)
24、24L、24R 第2軸状部(軸状部、被回転体)
25 第2屈曲関節部
25E 駆動プーリ(関節部を駆動する回転体)
25e ガイドギヤ
25f 連結ギヤ
25g、25G 回動支持板
26 第3軸状部(軸状部、被回転体)
27 第2回転関節部
28 第4軸状部(軸状部、被回転体)
30、30A、30B、30C、30D、30E 駆動ユニット
34 駆動モータ部(駆動部)
50 第1内歯車(駆動力伝達部、関節部を駆動する回転体)
51 第2内歯車(駆動力伝達部、関節部を駆動する回転体)
53 駆動連結部(駆動力中継部)
55 プーリ(駆動力伝達部、関節部を駆動する回転体)
60、60A、60B 基準角度保持部
61 初期張力付与部
70 ぜんまいバネ
75 進退機構
100 駆動量算出部
101 原点設定部
102 進退機構制御部
O、O23、O25c、O25d、OL、OR 回転軸線
O3 回転中心軸
Op 操作者
P 患者
T 初期張力
W23、W25、W27 駆動ワイヤ(駆動力伝達部、線状の駆動力伝達部材)
W25a 第1ワイヤ部
W25b 第2ワイヤ部
Claims (15)
- 被回転体を回転させる関節部を有する医療用器具と、湾曲可能な管部材に挿通された駆動力伝達部材を含み前記関節部に駆動力を伝達する駆動力伝達部と、該駆動力伝達部に前記駆動力を供給する駆動部と、前記駆動力が中継される駆動力中継状態と前記駆動力が遮断された駆動力解除状態とが切り替え可能な駆動力中継部と、前記関節部の回転角度を予め決めておいた基準角度に設定し、前記駆動力中継部が前記駆動力解除状態に切り替えられた状態で前記基準角度を保持する基準角度保持部と、前記駆動力中継部が前記駆動力解除状態から前記駆動力中継状態に切り替えられた後、前記関節部を前記基準角度から前記基準角度における姿勢とは異なる予め決められた原点姿勢となるまで回転させ、回転後の前記駆動部の回転位置を前記駆動部の駆動原点に設定する駆動制御部と、を有するマニピュレータの初期化方法であって、
前記基準角度保持部が前記関節部の回転角度を前記基準角度に設定し、前記駆動力中継部が前記駆動力解除状態に切り替えられた状態において前記基準角度保持部が前記基準角度を保持する基準角度保持工程と、
該基準角度保持工程の実行後に、前記関節部が初期化動作を行う位置に配置された状態かつ前記駆動力中継部が前記駆動力中継状態に切り替えられた状態において、前記駆動制御部が、前記関節部を前記基準角度から前記基準角度における姿勢とは異なる予め決められた原点姿勢となるまで回転させ、回転後の前記駆動部の回転位置を前記駆動部の駆動原点に設定する原点設定工程と、
を備える、マニピュレータの初期化方法。 - 前記基準角度は、
前記関節部の回転角度を回転可能な限界角度とする
ことを特徴とする、請求項1に記載のマニピュレータの初期化方法。 - 前記駆動制御部は、前記原点設定工程を行う前に、前記関節部を前記基準角度から予め定めておいた角度まで回転させる回転角度調整工程を行う
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のマニピュレータの初期化方法。 - 前記駆動制御部は、
前記原点設定工程を実行してから、前記駆動部に対して、前記関節部を駆動する際の前記駆動原点からの駆動リミットを設定する駆動リミット設定工程を実行する
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマニピュレータの初期化方法。 - 前記駆動力伝達部材は、線状であり、
前記マニピュレータは、前記駆動力解除状態において、前記駆動力伝達部材のたるみを除去するため、前記駆動力伝達部材に初期張力を付与する初期張力付与部をさらに備えており、
前記初期張力付与部は、
前記駆動制御部が前記原点設定工程を実行する前に、前記駆動力伝達部材に前記初期張力を付与する
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマニピュレータの初期化方法。 - 前記関節部は、屈曲用関節を有しており、
前記基準角度保持工程では、
前記基準角度保持部が、前記屈曲用関節を含む前記関節部の前記基準角度を、前記関節部に連結された前記被回転体を折りたたむ動作をさせる回転角度に設定する
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のマニピュレータの初期化方法。 - 被回転体を回転させる関節部を有する医療用器具と、
湾曲可能な管部材に挿通された駆動力伝達部材を含み前記関節部に駆動力を伝達する駆
動力伝達部と、
該駆動力伝達部に前記駆動力を供給する駆動部と、
前記駆動力が中継される駆動力中継状態と前記駆動力が遮断される駆動力解除状態とが
切り替え可能な駆動力中継部と、
前記関節部の回転角度を予め決めておいた基準角度に設定し、前記駆動力中継部が前記
駆動力解除状態に切り替えられた状態で前記基準角度を保持する基準角度保持部と、
前記駆動力中継部が前記駆動力解除状態から前記駆動力中継状態に切り替えられた後、
前記関節部を前記基準角度から前記基準角度における姿勢とは異なる予め決められた原点
姿勢となるまで回転させ、回転後の前記駆動部の回転位置を前記駆動部の駆動原点に設定
する駆動制御部と、
を備える、マニピュレータ。 - 前記基準角度は、
前記関節部の回転角度を回転可能な限界角度とする
ことを特徴とする、請求項7に記載のマニピュレータ。 - 前記駆動制御部は、
前記駆動部の駆動原点の対応付けを行う前に、前記関節部を前記基準角度から予め定め
ておいた角度まで回転させる回転角度調整を行う
ことを特徴とする、請求項7または8に記載のマニピュレータ。 - 前記駆動制御部は、
前記駆動部に対して、前記関節部を駆動する際の前記駆動原点からの駆動リミットを設
定する
ことを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載のマニピュレータ。 - 前記基準角度保持部は、
前記関節部を駆動する回転体に付勢力を加えて前記関節部の回転角度を前記基準角度に
保持する
ことを特徴とする、請求項7〜10のいずれか1項に記載のマニピュレータ。 - 前記基準角度保持部は、
前記駆動力伝達部を介して、前記関節部に前記付勢力を加える
ことを特徴とする、請求項11に記載のマニピュレータ。 - 前記駆動力伝達部材は、
線状であり、
前記駆動力解除状態において、前記駆動力伝達部材のたるみを除去するため、前記駆動
力伝達部材に初期張力を付与する初期張力付与部をさらに備える
ことを特徴とする、請求項7〜12のいずれか1項に記載のマニピュレータ。 - 前記関節部は、屈曲用関節を有しており、
前記基準角度保持部は、
前記屈曲用関節を含む前記関節部の前記基準角度を、前記関節部に連結された前記被回
転体を折りたたむ動作をさせる側の回転の限界となる回転角度に設定する
ことを特徴とする、請求項7〜13のいずれか1項に記載のマニピュレータ。 - 請求項7〜14のいずれか1項に記載のマニピュレータを備える、マニピュレータシス
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