JP6352227B2 - 2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを含有する乳化組成物および粉末組成物 - Google Patents

2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを含有する乳化組成物および粉末組成物 Download PDF

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Description

本発明は特異な香気と旨味を有する、香味変調剤として有用な、ピリジル基置換ベンジルプロピルエーテルである2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを含有する乳化組成物および粉末組成物に関する。さらに詳しくは、該化合物を含有する乳化または粉末組成物を飲食品に含有させることによる旨味付与方法、旨味増強方法、甘味増強方法、塩味増強方法および乳のコク増強方法、および、該化合物を有効成分として含有する乳化または粉末組成物を飲食品または香粧品に含有させることによる香気付与乃至増強方法、ならびに、これらの乳化または粉末組成物を配合した飲食品および香粧品に関する。
近年、飲食品および香粧品用香料において、消費者の嗜好性の多様化とともに、従来にない新しいタイプの香気・香味を有する香料に対するニーズが高まり、マイルドで新鮮な香質を有し、持続性に優れたユニークな香料素材の開発が望まれている。このような背景にあって、香料素材を適宜に、またその配合量を変えて組合せ、できるだけ天然らしさを有するように調合する研究等が行われているが、未だ充分とはいえない。そこで、新たな香料素材として様々な有機化合物の探索が行われている。
香料化合物は嗅覚を刺激する化合物であるが、その種類は数万あるとされる。一方、食の風味は嗅覚刺激と味覚刺激が脳で統合された感覚と考えられている。すなわち、嗅覚刺激は味覚を刺激する化合物(食塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウムなど)と組み合され、食全体の風味が形成されている。そこで、近年、香気を有する化合物の中から、嗅覚と同時に味覚を刺激する化合物について探索が盛んとなり、飲食品の総合的な風味の向上に用いられている。
嗅覚と同時に味覚を刺激する化合物として、例えば、4−ヒドロキシ−2(5)−エチル−5(2)−メチル−3(2H)−フラノンは醤油に添加すると塩味を増強する効果があることが見出されている(特許文献1)。また、1,3,5−ウンデカトリエンは炭酸飲料に使用することで食感刺激に類似した炭酸感増強効果を併せ持つことが見出されている(特許文献2)。一般に、香料化合物は味覚に対しては苦味として作用するものが多い。なかでも代表的な香料化合物であるメントールは嗅覚刺激作用として清涼香を有するが、嗅覚刺激作用以外にも、痛覚刺激作用として皮膚や口腔内の冷涼感を生じ、味覚刺激作用として苦味を有することが知られている。
基本味である旨味についても、香料化合物のなかに嗅覚と同時に旨味に関する味覚を刺激する化合物が見出され、これらの化合物を食品香料として応用し、飲食品の機能性を広げ、消費者の求める新たな風味を提供している。例えば、2−アルキルピリジンは旨味を持つことが開示されている(特許文献3)。また、ピリジン環を含む置換基を有する芳香族ケトン化合物(特許文献4)、芳香族アミド化合物(特許文献5)についても旨味物質として開示されている。
また、ピリジル基置換ベンジルエチルエーテルである2−(2−ベンジルオキシエチル)ピリジンはニトリル化合物とアセチレンによるピリジン環合成反応研究(非特許文献1)および有機金属を利用したカップリング反応研究の生成物(非特許文献2)として報告されており、また、旨味増強剤としての用途も開示されている(特許文献6)。
特開2012−70636号公報 特許第5500664号公報 特表2011−516059号公報 特表2012−532848号公報 特表2014−531448号公報 WO2015/000900国際公開公報
Izvestiya Akademii Nauk SSSR, Seriya Khimicheskaya (1986), (7), 1628−34 Journal of Organic Chemistry (2012), 77(22), 10399−10408
本発明の目的は、飲食品や香粧品に添加した場合に好ましい香気を付与乃至増強し、また飲食品に添加した場合には香気に加え、呈味として旨味の付与、および、旨味、甘味、塩味および乳のコクを増強する香料化合物、ならびに、その化合物を有効成分として含有する香料組成物、ならびに、その化合物を有効成分として含有する飲食品および香粧品を提供することにある。
本発明者らは、数多くの有機化合物について鋭意探索した結果、2−(2−ベンジルオキシエチル)ピリジンのエーテル結合のピリジン側の側鎖の炭素数を1個増やした、下記式(1)の化合物である2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンは、ややハーバル、グリーン、ナッティーで天然感あふれる香気を有し、また、味に関しては、飲食品に高濃度で配合した場合にはやや苦味を伴った野菜、スパイス様の呈味を有するが、低濃度で配合した場合には飲食品の旨味、甘味、塩味、乳のコクを増強する効果を有し、その旨味などの増強効果が2−(2−ベンジルオキシエチル)ピリジンの10倍程度強いことを見出し、この化合物について先に、特願2015−083656を出願し、特許査定を受けた。
式(1)2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンは、有機化学反応研究において報告されている化合物であるが(Asian Journal of Organic Chemistry (2013), 2(12), 1061−1065;Journal of the American Chemical Society (2005), 127(25), 8966−8967;ドイツ登録特許公報第842995号)、その生理的な作用、特に香気や味に関しての報告は全く見当たらず、飲食品用または香粧品用の香料素材として用いることや、飲食品の旨味乃至甘味増強剤として用いることは知られていない。
今回、本発明者らは、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンについて、さらに鋭意研究した結果、本化合物を含有する乳化組成物または乳化組成物とした後乾燥して粉末組成物の形態とすることにより、各種飲食品や香粧品にも配合しやすく、また、香味変調効果の高い素材とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明は以下のものを提供する。
[1]下記(A)〜(D)を含有する乳化組成物。
(A)下記式(1)の2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン
Figure 0006352227
(B)水
(C)糖類、1価アルコールまたは多価アルコールから選ばれる1種以上
(D)乳化剤
[2][1]の乳化組成物を乾燥してなる粉末組成物。
[3][1]または[2]の組成物を飲食品または香粧品に添加する、飲食品または香粧品の香味変調方法。
[4]香味変調が香気の飲食品または香粧品に対する香気の付与乃至増強である、[3]の香味変調方法。
[5]香味変調が飲食品に対する旨味の付与である、[3]の香味変調方法。
[6]香味変調が飲食品に対する旨味の増強である、[3]の香味変調方法。
[7]香味変調が飲食品に対する甘味の増強である、[3]の香味変調方法。
[8]香味変調が飲食品に対する塩味の増強である、[3]の香味変調方法。
[9]香味変調が、乳、乳製品、乳若しくは乳製品を含有する飲食物、または乳製品代用品に対する乳のコクの増強である、[3]の香味変調方法。
[10][1]または[2]の乳化組成物を含有させた飲食品。
[11][1]または[2]の乳化組成物を含有させた香粧品。
本発明の2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを含有する乳化組成物は、飲食品または香料品に添加した場合にややハーバル、グリーン、ナッティーな天然感あふれる香気を付与し、特に、飲食品に添加した場合には天然感あふれる香気を付与すると共に、旨味を付与乃至増強する作用、および、甘味、塩味を増強する作用、および、特に乳、乳製品、乳若しくは乳製品を含有する飲食物、または乳製品代用品に添加した場合には、乳のコクを増強する作用を有する。
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
本発明は、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを含有する乳化組成物および粉末組成物である。2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンは乳化等せずに、そのもの自体、香味変調剤、旨味付与剤、旨味増強剤、甘味増強剤、塩味増強剤および乳のコク増強剤としての効果を示しており、有用性がある。しかしながら、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを含有する乳化組成物または粉末組成物とすることにより、水への分散性を向上させ、飲食品や香粧品に配合しやすくするとともに、香味発現のタイミングを変えることができる。例えば、ラーメンスープなどに旨味の増強目的で2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを配合する場合に、油溶性香料中に配合して添加した場合、油溶性香料が油浮きし、油中に含まれる2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンが口腔内に作用することになる。一方、乳化組成物とした場合には、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンの微細な粒子が均一に口腔内に作用することにより、旨味の呈味が強く、均一なものとなる。
本発明の2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを含有する乳化組成物は、特に限定はなく2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを公知の方法で乳化したものを採用することができ、例えば、(A)として本発明の香味変調化合物成分である2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンの他に、(B)水、(C)糖類、1価アルコールまたは多価アルコールから選ばれる1種以上、(D)乳化剤を含み、これらを混合・撹拌・乳化して得ることができる。
前記乳化の際、例えば、(A)2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを油相部に配合し、(B)水および(C)糖類、1価アルコールまたは多価アルコールから選ばれる1種以上を水相として、水中油型乳化物として調製することができる。
本発明に係る、(A)成分である、式(1)の化合物2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンは前述の通り、物質としては公知化合物であり、前記文献公知の方法により合成可能であるが、より簡便な方法として下記式に示した合成反応を利用して容易に調製可能である。
Figure 0006352227
上記反応式では式(2)で示される2−ピリジンプロパノールと式(3)で示される塩化ベンジルを適切な溶媒中で水酸化ナトリウムまたは水素化ナトリウムなどの塩基の存在下にエーテル化反応を行うことにより効率よく得られる。得られた式(1)化合物は減圧蒸留などの手段を用いることで高純度化することも可能である。
なお、前記油相部には、(A)2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンの他、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを溶解するための溶剤としての食用油脂類や、比重調整剤としてSAIB(シュークロース・ジアセテート・ヘキサイソブチレート)および2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン以外の香味成分として一般的な各種香料を含有させることもできる。
使用することのできる食用油脂類としては、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンと容易に混和するものが好ましく、例えば、大豆油、ごま油、コーン油、菜種油、米糠油、綿実油、ひまし油、落花生油、オリーブ油、パーム油、サフラワー油、小麦胚芽油、椰子油、ヒマワリ油、つばき油、ココア脂、イワシ油、サケ油、サバ油、サメ油、マグロ油、鯨油、イルカ油、イカ油、サンマ油、にしん油、たら油、牛脂、鶏油、豚脂、バターなどの動植物油脂類及びそれらの硬化油類、中鎖飽和脂肪酸トリグリセリド(以下、MCTと称する)などを挙げることができる。殊にMCTが好適である。かかるMCTとしては、例えば、カプロン酸トリグリセリド、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、ラウリン酸トリグリセリド、及びこれらの任意の混合物の如き炭素原子数6〜12の中鎖飽和脂肪酸のトリグリセリドを挙げることができ、これらの中、特にカプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド及びこれらの任意の混合物が好ましい。これらのMCT混合物は市場で安価に且つ容易に入手することができる。本発明の乳化組成物における、動植物油脂の含有量は、特に限定されるものではないが、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン1重量部に対し、通常0.01〜100000重量部、好ましくは0.1〜10000重量部、より好ましくは1〜1000質量部の範囲内であることができる。
SAIB(シュークロース・ジアセテート・ヘキサイソブチレート)は本発明の乳化組成物中の油相部の比重調整のために配合されるものであり、本発明の乳化組成物が配合される最終製品(飲食品、香粧品)が水性組成物である場合に、乳化組成物が比重差により分離することを防止するために配合することができる。
使用し得るSAIBとしては、例えば、その比重が約1.13〜約1.19、好ましくは約1.14〜約1.15の範囲内にあるSAIBを挙げることができる。本発明の乳化組成物におけるSAIBの含有量は、使用するSAIBの比重、乳化組成物が配合される飲料の比重等に応じて変えることができるが、一般的には、本発明の乳化組成物中の油相部全体の比重と、本発明の乳化組成物が配合される最終製品である水性組成物との比重差が0.05以下、特に0.03以下となるような量であることが望ましい。この比重差が0.05を越えると、本発明の乳化組成物が配合された水性組成物を長期にわたり保存した場合に、リングや油浮きが発生しやすくなる。油相中のSAIBの混合割合は、SAIBを含めた油相全体を1重量部とした場合に、通常約0.2重量部〜約0.6重量部、好ましくは約0.3重量部〜約0.5重量部の範囲内を例示することができる。しかしながら、最終的には、本発明の乳化組成物が配合される水性組成物の比重および該乳化組成物中の油相部の比重を測定しながら比重差が0.05以下となるSAIBの含有量を経験的に見出すことが望ましい。
また、前記油相には、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン以外にもさらに、任意に、各種香料を配合することができる。各種香料成分としては、各種の合成香料、天然香料、天然精油、動植物エキスなどを挙げることができる。他の香料成分としては「特許庁、周知慣用技術集(香料)第II部食品香料、頁8−87、平成12年1月14日発行」に記載されている合成香料、天然精油、天然香料、動植物エキス等を挙げることができる。
これらの成分として、食品用香料(香料組成物および旨味増強香料組成物)の素材として、例えば、炭化水素化合物としてα−ピネン、β−ピネン、ミルセン、カンフェン、リモネンなどのモノテルペン、バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン、1,3,5−ウンデカトリエンなど;アルコール化合物としてブタノール、ペンタノール、プレノール、ヘキサノールなどの直鎖・飽和アルカノール類、(Z)−3−ヘキセン−1−オール、2,6−ノナジエノールなどの直鎖・不飽和アルコール類、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、テトラヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロールなどのテルペンアルコール類、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フルフリルアルコールなどの芳香族アルコール類;アルデヒド化合物としてアセトアルデヒド、ヘキサナール、デカナールなどの直鎖・飽和アルデヒド、(E)−2−ヘキセナール、2,4−オクタジエナールなどの直鎖・不飽和アルデヒド類、シトロネラール、シトラールなどのテルペンアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、フルフラール、ヘリオトロピンなどの芳香族アルデヒド類、ケトン化合物として2−ヘプタノン、2−ウンデカノン、1−オクテン−3−オンなどの直鎖・飽和および不飽和ケトン類、アセトイン、ジアセチル、2,3−ペンタジオン、マルトール、エチルマルトール、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノンなどの直鎖および環状ジケトン類、ヒドロキシケトン類、カルボン、メントン、ヌートカトンなどのテルペンケトン類、α−イオノン、β−イオノン、β−ダマセノンなどのテルペン分解物に由来するケトン類、ラズベリーケトンなどの芳香族ケトン類;フラン・エーテル化合物としてローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピランなどの環状エーテル類;エステル化合物として酢酸エチル、酢酸イソアミルなどの脂肪族アルコールの酢酸エステル類、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ラバンジュリルなどのテルペンアルコール酢酸エステル類、酪酸エチル、カプロン酸エチルなどの脂肪酸と低級アルコールエステル類、酢酸ベンジル、サリチル酸メチルなどの芳香族エステル類;ラクトン化合物としてγ−デカラクトン、γ−ドデカラクトン、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトンなどの飽和ラクトン類、7−デセン−4−オリド、2−デセン−5−オリドなどの不飽和ラクトン類;酸化合物として酪酸、オクタン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの飽和・不飽和脂肪酸類;含窒素化合物としてインドール、スカトール、ピリジン、アルキル置換ピラジン、アントラニル酸メチルなど;含硫化合物としてメタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、アリルイソチオシアネートなどが挙げられる。
また、香粧品用香料の素材としては、前記食品用香料の素材に加え、合成香料としてα−アミルシンナミルアルデヒド、ジヒドロジャスモン、メチルイオノン、α−ダマスコン、アセチルセドレン、ジヒドロジャスモン酸メチル、シクロペンタデカノリドなど;天然精油としてはスイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、ベルガモット、マンダリン、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、スギ、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどが挙げられる。
本発明で使用する(B)成分である水は(C)成分である糖類、1価アルコールまたは多価アルコールと共に前記水相を構成するが、水相中の含水率は、通常50%以下、特に約0〜25%の範囲内の含水状態で使用することが好ましく、含水率が50%を越えると防腐性が失われる可能性がある。
本発明の(C)成分である糖類、1価アルコールまたは多価アルコールは、乳化の安定のために配合する。糖類としては、例えば、グルコース、フラクトース、シュークロース、トレハロース、セロビオース、マルトトリオース、ラムノース、ラクトース、マルトース、リボース、キシロース、アラビノースおよび水飴などが挙げられ、1価アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノールなどが挙げられ、多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、マルチトールおよび澱粉分解還元物などが挙げられ、これらの2種以上の混合物を挙げることができる。
本発明の乳化組成物における前記水相の使用量は、油相部1重量部に対し、通常約1重量部〜約10重量部、特に約1.5重量部〜約5重量部の範囲内が好適である。また、前記水相には、所望により、保存性を向上させる目的で、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの有機酸を添加することもできる。
なお、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンおよび前記各種香料は低濃度であれば(C)成分である糖類、1価アルコールまたは多価アルコールにも溶解するため、前記水相部に配合することも可能である。
本発明で使用する(D)成分である乳化剤としては、特に制限されるものではなく、従来から飲食品等に用いられる各種の乳化剤が使用可能であり、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、化工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸及びその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼインなどを例示することができる。
これらの乳化剤のうち特に、HLBが8以上の親水性界面活性剤が好ましく、この場合は、水相部に乳化剤を混合する。具体的にはポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等を挙げることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、平均重合度3以上のポリグリセリンと炭素数8以上の脂肪酸とのエステル、例えば、デカグリセリンモノオレエート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノパルミテート、デカグリセリンモノミリステートなどで且つ、HLBが約8以上、好ましくは約8〜約14の範囲内のものを挙げることができる。HLBが8を下回るポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合には、一般に、均一で粒子径の小さな乳化粒子を調製することが困難であり、また、乳化物が不安定で飲料に添加すると、沈殿、油分離などの分離現象を起こす傾向が強い。
ポリグリセリン脂肪酸エステル類の含有量は、油相部1重量部に対し、通常約0.05重量部〜約0.5重量部、好ましくは約0.15重量部〜約0.3重量部の範囲内であることができる。
本発明の乳化組成物の調製法の一実施態様を例示すれば以下のとおりである。まず、前記の油相部に使用する原料を混合して、油相部1質量部を調製する。これとは別に、(B)水、(C)糖類、1価アルコールまたは多価アルコールから選ばれる1種以上、および、(D)乳化剤を混合溶解した溶液(水相)約2〜約50重量部(水分含有量約0.5〜約10重量%)を調製し、油相部と水相部を混合し、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー等を用いて乳化処理することにより、粒子径約0.2〜約2μmの極めて微細で安定性に優れた乳化液を得ることができる。
該乳化組成物中には、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを該乳化組成物の質量を基準として、一般に0.1ppm〜2%、好ましくは1ppm〜0.5%、より好ましくは10ppm〜0.1%の濃度で含有させことができる。
本発明の粉末組成物は前記乳化組成物を乾燥することにより得ることができる。乾燥方法としては真空乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥等の乾燥手段が例示できる。乾燥に際しては、前記乳化物にさらに賦形剤として、デキストリン類、デンプン類、天然ガム類、糖類その他の賦形剤を添加することもできる。
2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを含有する乳化または粉末組成物を香気付与目的で使用する場合は、飲食品または香粧品に対し、質量基準で、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンとして、一般に0.1ppb〜200ppm、好ましくは1ppb〜20ppm、より好ましくは10ppb〜2ppmの範囲で添加することができる。この濃度範囲で添加することにより、飲食品にまたは香粧品にややハーバル、グリーン、ナッティーな天然感あふれる香気を付与することができる。
2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを含有する乳化または粉末組成物を水に希釈した場合にその水溶液は旨味を呈し、その濃度は、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンの質量を基準として、0.01ppm〜200ppmの範囲内で旨味が感じられるが、好ましくは0.1ppm〜20ppmを例示できる。
また、食塩やグルタミン酸ナトリウムなどの旨味成分と併用した場合や、2,4,7−トリデカトリエナール、4,7−トリデカジエナール、トリメチルアミンまたは2−メチルフラン−3−チオールなどの揮発性の旨味増強物質と併用した場合には、相乗的に旨味および塩味の増強作用を有し、その相乗効果が発揮される濃度は、飲食品の質量を基準として、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンが0.1ppb〜50ppm、好ましくは1ppb〜10ppm、より好ましくは10ppb〜2ppmの範囲である。
さらにまた、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを含有する乳化または粉末組成物を、ショ糖などの甘味物質と併用した場合には、甘味増強作用を有し、その相乗効果が発揮される濃度は、飲食品の質量を基準として、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンとして0.1ppb〜40ppm、好ましくは1ppb〜10ppm、より好ましくは5ppb〜2ppmの範囲である。
本発明の2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを含有する乳化組成物は、特に、乳、乳製品、乳若しくは乳製品を含有する飲食物、または乳製品代用品に添加した場合に、その旨味増強、塩味増強および甘味増強効果がよく発揮され、乳のコクが増強される感覚特性が感じられる。その効果が発揮される濃度は、乳、乳製品、乳若しくは乳製品を含有する飲食物、または乳製品代用品の質量を基準として、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンが0.1ppb〜50ppm、好ましくは1ppb〜10ppm、より好ましくは10ppb〜2ppmの範囲である。
本発明の2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを含有する乳化または粉末組成物が相乗効果により旨みが増強される旨味素材としては、塩味物質である食塩、塩化カリウムなどの無機塩類、旨味素材としてグルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸、セリン、テアニン、アルギニンなどのアミノ酸類、ジペプチド、オリゴペプチドなどのペプチド類;イノシン酸、グアニル酸などの核酸類、コハク酸などの有機酸類、およびこれらの任意の混合物などが例示できる。
また、本発明の2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを含有する乳化または粉末組成物が相乗効果により甘味が増強される呈味素材としては、シュークロース、グルコース、フラクトース、マルトース、ラクトース、ガラクトース、マルチトース、トレハロースなどの糖類;アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム、ネオテーム、グリチルリチン酸二ナトリウム、ソーマチン、サッカリンおよびその塩、羅漢果抽出物、甘草抽出物、レバウディオサイドA、ステビア抽出物、酵素処理ステビア抽出物、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンなどの高甘味度甘味料類;キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、パラチニット、還元水あめなどの糖アルコール類、およびこれらの任意の混合物などが例示できる。
また、本発明の2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを含有する乳化組成物により、特にコクが増強される乳、乳製品、乳若しくは乳製品を含有する飲食物、または乳製品代用品としては、次のものが例示できる。乳としては、例えば、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(昭和26年12月27日厚生省令第52号)に規定された生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、加工乳等;乳製品としては、例えば、前記省令に規定されたクリーム、バター、バターオイル、ヨーグルト等の発酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料、チーズ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、練乳、全粉乳、脱脂粉乳、加糖粉乳、濃縮ホエイ、ホエイパウダー等;乳若しくは乳製品を含有する飲食品としては、例えば、牛乳、クリーム類、バター、チーズ、練乳、粉乳等を添加したコーヒー飲料、茶飲料、果汁飲料、炭酸飲料、冷菓類、和洋菓子類、パン類、スープ類、お吸い物、中華風スープ、和風スープ、洋風スープ、ラーメンスープ、カレー、シチュー、各種インスタント飲食品、各種スナック食品、ドレッシング等の調味料等;乳製品代用品としては、例えば、油脂を乳化して製造されるマーガリンやファットスプレッド等のバター代用品、コーヒーや紅茶等に添加するコーヒーホワイトナー等のクリーム類代用品等を挙げることができる。
本発明の2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを含有する乳化または粉末組成物によって、ややハーバル、グリーン、ナッティーで天然感あふれる香気の増強、旨味の付与、ならびに、旨味の増強、甘味の増強、塩味の増強および乳のコクを増強することができる飲食品の具体例としては、コーラ飲料、果汁入り炭酸飲料、乳類入り炭酸飲料などの炭酸飲料類;果汁飲料、野菜飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、豆乳、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料、乳飲料などのソフト飲料類;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティー、ミルクティー、コーヒー飲料などの嗜好飲料類;チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒などのアルコール飲料類;バター、チーズ、ミルク、ヨーグルトなどの乳製品;アイスクリーム、ラクトアイス、シャーベット、ヨーグルト、プリン、ゼリー、デイリーデザートなどのデザート類及びそれらを製造するためのミックス類;キャラメル、キャンディー、錠菓、クラッカー、ビスケット、クッキー、パイ、チョコレート、スナックなどの菓子類及びそれらを製造するためのケーキミックスなどのミックス類;パン、スープ、各種インスタント食品などの一般食品類、歯磨きなどの口腔用組成物を挙げることができる。
また、本発明の乳化または粉末組成物によって、ややハーバル、グリーン、ナッティーで天然感あふれる香気を増強することができる香粧品の具体例としては、例えば、香水;シャンプー、リンス、ヘアクリーム、ポマードなどのヘアケア製品;オシロイ、口紅などの化粧品類;フェイス用石鹸、ボデイ用石鹸、洗濯用石鹸、洗濯用洗剤、消毒用洗剤、防臭洗剤などの保健・衛生用洗剤類;歯みがき、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの保健・衛生材料類;室内芳香剤、カーコロンなどの芳香製品;を挙げることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
実施例において反応粗製物、精製物の測定は次の分析機器を用いて行なった。
GC測定:GC−2014(島津製作所社製)およびクロマトパックC−R8A(島津製作所社製)
GC測定用GCカラム:ジーエルサイエンス社製TC−1(長さ30m、内径0.53mm、液層膜厚1.50マイクロメータ)、ジーエルサイエンス社製TC−1701(長さ30m、内径0.53mm、液層膜厚1.00マイクロメータ)
GC/MS測定:5973N(Agilent社製)
GC/MS測定用GCカラム:ジーエルサイエンス社製TC−1701(長さ30m、内径0.25mm、液層膜厚0.25マイクロメータ)
NMR測定:ECX−400A(JEOL RESONANCE社製)。
参考例1:2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンの調製
200mLフラスコに25重量%水酸化ナトリウム水溶液(44.24g,277mmol)、2−ピリジンプロパノール(5.00g,36.4mmol)、塩化ベンジル(5.53g,43.7mmol)、臭化テトラn−ブチルアンモニウム(0.59g,1.8mmol)を加え、45℃で3時間撹拌した。反応液を室温に冷却し、ヘキサン50mLを加えて抽出し、有機層を分離した。この有機層に2mol/L塩酸(50mL)を加え、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを塩酸塩として水層に抽出した。続いて水層に25重量%水酸化ナトリウム水溶液をpH9になるまで加えて塩酸塩を中和し、酢酸エチル(50mL)で抽出した。この有機層を20%食塩水(50mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、ロータリーエヴァポレーターで溶媒を減圧下に留去して濃縮物(6.09g)を得た。これを減圧蒸留により精製することで2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン(収量4.34g、収率52.5%,純度99.6%)を得た(参考品1)。
2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン物性データ
沸点 152〜155℃/0.13kPa
1H NMR(CDCl3,400MHz) δ 2.07(tt,2H,J=7.8,6.0Hz)2.89(t,2H,J=7.8Hz),3.53(t,2H,J=6.0Hz),4.51(s,2H),7.10(ddd,1H,J=7.6,5.2,1.2Hz),7.14(d,1H,J=7.6Hz),7.26−7.35(m,5H),7.57(dt,1H,J=2.0,7.6Hz),8.52(dd,1H,J=4.8,0.8Hz).

13C NMR(CDCl3,100MHz) δ 29.65,34.87,69.56,72.81,120.95,122.83,127.46,127.59(2C),128.31(2C),136.22,138.54、149.24,161.68.

MS(EI,70eV) m/z 65(8),78(5),91(30),92(12),93(100),94(8),106(13),118(6),120(15),121(10),136(86),137(8).
参考例2:2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンの香気評価
参考例1で合成した参考品1(2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン)の0.1%エタノール溶液を評価液として調製した。評価液をサンプル瓶に用意し、瓶口からの香気評価および評価液を含浸させたにおい紙により、よく訓練された5名のパネラーにより香気評価をおこなった。その平均的な評価は以下の通りであった。
香気評価(5名のパネラーの平均的評価):ややハーバル、グリーン、ナッティーな天然感あふれる香気
参考例3:2−(2−ベンジルオキシエチル)ピリジンの調製
300mLフラスコに25重量%水酸化ナトリウム水溶液(120.0g、750mmol)、2−ピリジンエタノール(12.34g、100mmol)、塩化ベンジル(15.51g、123mmol)および臭化テトラn−ブチルアンモニウム(1.61g、4.99mmol)を入れ、45℃で3時間撹拌し、反応液をヘキサン(100mL)で抽出した。有機層を20%食塩水(100mL)で洗浄後、2mol/L塩酸(100mL)で目的物を塩酸塩にすることで水層に抽出し、ついで水層に飽和炭酸ナトリウム水溶液(150mL)を加えてアルカリ性とし、目的物を含む水層から酢酸エチル(100mL×1回、50mL×1回)で抽出した。得られた有機層を合わせ、20%食塩水(100mL)で洗浄後、有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水乾燥、減圧下に酢酸エチルを回収し濃縮物(22.75g)を得た。この濃縮物を減圧蒸留で精製することで2−(2−ベンジルオキシエチル)ピリジン(16.51g、収率77.4%、純度99.9%)を得た(参考品2)。
2−(2−ベンジルオキシエチル)ピリジン(参考品2)物性データ
沸点: 139℃/0.13kPa
1H NMR(400MHz,CDCl3) δ 3.11(t,2H,J=6.8Hz),3.86(t,2H,J=6.8Hz),4.53(s,2H),7.12(dd,1H,J=7.6,5.2Hz),7.22(d,1H,J=7.6Hz),7.24−7.33(m,5H),7.60(dt,1H,J=1.2,7.6Hz),8.53(dm,1H,J=5.2Hz).

13C NMR(100MHz,CDCl3) δ 38.71,69.59,72.95,121.31,123.59,127.50,127.58(2C),128.31(2C),136.23,138.35,149.26,159.20.

MS(EI,70eV) m/z 39(10),51(12),65(27),78(12),79(13),91(75),92(10),93(24),106(61),107(100),122(71),168(2),182(6).。
参考例4:旨味の確認
参考品1および2をそれぞれ適当濃度にエタノールに希釈した後、それをさらに水に希釈して表1に示す濃度の2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンおよび2−(2−ベンジルオキシエチル)ピリジン水溶液を調製した。それぞれの濃度の溶液および無添加の水をよく訓練された5名のパネラーにより味わうことにより、呈味および香気についての官能評価を行った。
5名のパネラーの結果平均的な評価結果を表1に示す。
Figure 0006352227
表1に示した通り、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン(参考品1)の水溶液は呈味があり、その呈味は旨味であった。また、その濃度としては、質量を基準として、0.01ppm〜200ppmの範囲内で旨味が感じられ、特に0.1ppm〜20ppm程度で良好な旨味が感じられることが分かった。
一方、2−(2−ベンジルオキシエチル)ピリジン(参考品2)の水溶液も呈味があり、その呈味は旨味であった。また、その濃度としては、質量を基準として、0.1ppm〜200ppmの範囲内で旨味が感じられ、特に1ppm〜200ppm程度で良好な旨味が感じられることが分かった。
すなわち、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンは2−(2−ベンジルオキシエチル)ピリジンの10倍程度旨味付与作用が強いことが認められ、同程度の旨味強度を得るための濃度は、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンは2−(2−ベンジルオキシエチル)ピリジンの1/10程度であった。
実施例1:2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを含有する乳化組成物の調製
油相として2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン(1.0g)、SAIB9.0gおよびMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)9.0gを混合溶解し、水相としてグリセリン66g、イオン交換水11gおよびデカグリセリンモノオレエート(4.0g)を混合溶解し、両液をTK−ホモゲナイザー(特殊機化工業社製)により、8000rpmで撹拌混合し、10分間の乳化を行った。イオン交換水で2000倍希釈時の波長680nmにおける吸光度が0.2AbsとなるようなO/W型エマルジョンとした(本発明品1:2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン濃度1.0%)。
比較例1:2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンのエタノール溶液
2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン(1.0g)を99.5%エタノール99.0gに溶解した溶液を調製した(比較品1:2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン濃度1.0%)。
実施例2:旨味の確認
本発明品1および比較品1を水に溶解し、表2に示す濃度の2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン溶液を調製した。それぞれの溶液をよく訓練された5名のパネラーにより味わうことにより、呈味および香気についての官能評価を行った。
5名のパネラーの結果平均的な評価結果を表2に示す。
Figure 0006352227
表2に示した通り、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンのエタノール希釈品(比較品1)を水に希釈した場合も、乳化品(本発明品1)を水に希釈した場合も、いずれも旨味が感じられたが、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンの濃度が同一の場合において、エタノール希釈液と比較して、乳化品はよりマイルドで持続性があるという結果であった。
実施例3:旨味付与および塩味増強効果の確認
0.3質量%の塩化ナトリウム水溶液(コントロール)、および、0.3質量%塩化ナトリウムに本発明品1または比較品1を、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンとして表3に示す濃度に溶解した溶液を調製した。それぞれの溶液をよく訓練された5名のパネラーにより味わうことにより、旨味の付与および塩味の増強についての官能評価を行った。その平均的な評価結果を表3に示す。
Figure 0006352227
表3に示した通り、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを0.3質量%の塩化ナトリウム水溶液に希釈した場合には旨味および塩味が感じられ、その旨味は水に希釈した場合よりも、1/10程度、低濃度でも感じられた。したがって、食塩と併用することで旨味の付与および塩味増強を感じる2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンの濃度としては、質量を基準として、0.1ppb〜50ppm、好ましくは1ppb〜10ppm、より好ましくは10ppb〜2ppmの範囲と考えられた。
また、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを乳化品の形態で添加した場合は、エタノール希釈品で添加した場合と比較して、旨味および塩味がマイルドで持続性があった。特に高濃度(0.5ppm以上)での添加の場合に、エタノール希釈品で添加した場合と比較して、旨味のくどさが低減し、よりマイルドで持続性があることが認められた。
実施例4:旨味および塩味増強の確認
0.3質量%の食塩および0.03質量%のグルタミン酸ナトリウム(MSG)の水溶液と、これに、本発明品1または比較品1を、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンとして10ppb加えた水溶液を、よく訓練された5名のパネラーにより味わうことにより、旨味および塩味の増強についての官能評価を行った。その結果、5名全員が、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを10ppb加えた方が旨味および塩味が強く、また本発明品1(乳化品)を加えた方が、比較品1(エタノール希釈品)と比較して、旨味および塩味がマイルドで持続性があるという評価であった。
実施例5:旨味増強効果の確認
(1)0.3質量%の食塩および0.05質量%のグルタミン酸ナトリウム(MSG)の水溶液と、(2)0.3質量%の食塩および本発明品1を2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンとして10ppb加えた水溶液をよく訓練された5名のパネラーにより味わうことにより、旨味について官能的に比較を行った。その結果、5名全員が、両者[(1)と(2)]はほぼ同等の旨味の強さであるという評価であった。
実施例6:旨味増強効果の確認
(1)0.1質量%のイノシン酸ナトリウム(5’−IMP・2Na)と、(2)0.1質量%のイノシン酸ナトリウムに本発明品1を2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンとして5ppb加えた水溶液をよく訓練された5名のパネラーにより味わうことにより、旨味についての官能評価を行った。その結果、5名全員が、(2)の2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを5ppb加えた方が旨味が強いという評価であった。
実施例7:甘味増強効果の確認
(1)3質量%ショ糖水溶液と、(2)3質量%ショ糖水溶液に本発明品1を2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンとして5ppb加えた水溶液をよく訓練された5名のパネラーにより味わうことにより、呈味についての官能評価を行った。その結果、5名全員が、(2)の2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを5ppb加えた方が甘味が強いという評価であった。
実施例8:うどんつゆへの添加
市販のうどんつゆ(3倍濃縮)に本発明品1を2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンとして0.05ppm添加したものを調製した。調製したうどんつゆおよび無添加のうどんつゆそれぞれ100mlに熱湯200mlを加え、よく訓練された5名のパネラーにより味わうことにより、旨味についての官能評価を行った。その結果、5名全員が、2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジンを0.05ppm加えたうどんつゆの方が旨味、塩味および甘みが強いという評価であった。
実施例9:カツオブシ様乳化香料組成物
下記表4の処方により、カツオブシ様の調合香料組成物(参考品3)を調合した。
Figure 0006352227
油相として表4のカツオブシ様の調合香料組成物(参考品3:2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン濃度1.0質量%)100g、水相としてグリセリン312.5g、イオン交換水65gにデカグリセリンモノステアレート22.5g溶解したものを調製し、両液をTK−ホモゲナイザー(特殊機化工業社製)により、8000rpmで撹拌混合し、10分間の乳化を行った。イオン交換水で2000倍希釈時の波長680nmにおける吸光度が0.2AbsとなるようなO/W型エマルジョンとしたカツオブシ様乳化香料組成物を得た(本発明品2:2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン濃度0.2質量%)。
実施例10:カツオブシ様乳化香料組成物のめんつゆへの添加
下記表5の処方によりめんつゆを調製し、これに本発明品2のカツオブシ様乳化香料組成物を0.01%添加したものを調製した(2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン濃度0.2ppm)。
Figure 0006352227
カツオブシ様乳化香料組成物無添加のめんつゆつゆと、添加しためんつゆを、よく訓練された5名のパネラーにより味わうことにより、官能評価を行った。その結果、5名全員が、本発明のカツオブシ様乳化香料組成物を添加した方が、カツオブシ様の香気が付与されており好ましく、その呈味は旨味、塩味および甘味が増強されており、非常に美味であり良好であるという評価であった。
実施例11:カツオブシ様粉末香料組成物
水相として水150gにアラビアガム70g及びトレハロース20gを加えて溶解し、85〜90℃で15分間加熱殺菌し、40℃に冷却した。これに油相として参考品3を10gを添加混合した後、TK−ホモミキサーで乳化し、O/W型の乳化組成物を得た。この乳化組成物をニロ社のモービルマイナー型スプレードライヤーを使用して、入口温度140℃、出口温度75℃にて噴霧乾燥し、カツオブシ様粉末香料組成物95gを得た(本発明品3:2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン濃度0.1質量%)。
実施例12:カツオブシ様粉末香料組成物の粉末ラーメンスープへの添加
表6の処方により粉末ラーメンスープを調製した。これにさらに本発明品3を1質量%添加したものを調製した。
Figure 0006352227
本発明品3添加および無添加の粉末ラーメンスープをそれぞれ10gずつ用意し、それぞれ熱水(70℃)を600mlずつ加えて希釈し、訓練されたパネラー5名により官能評価を行った。その結果、5名全員が、本発明のカツオブシ様粉末香料組成物を添加した方が、カツオブシ様の香気が付与されており好ましく、その呈味は旨味、塩味および甘味が増強されており、非常に美味であり良好であるという評価であった。
実施例13:ミルク様乳化香料組成物
下記表7の処方により、ミルク様調合香料組成物(参考品4および参考品5)を調合した。
Figure 0006352227
油相として表7のミルク様調合香料組成物(参考品4:2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン濃度1.0質量%、または、参考品5:2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン不使用)100g、水相としてグリセリン312.5g、イオン交換水65gにデカグリセリンモノパルミテート22.5g溶解したものを調製し、両液をTK−ホモゲナイザー(特殊機化工業社製)により、8000rpmで撹拌混合し、10分間の乳化を行った。イオン交換水で2000倍希釈時の波長680nmにおける吸光度が0.2AbsとなるようなO/W型エマルジョンとしたミルク様乳化香料組成物を得た(本発明品4:2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン濃度0.2質量%、比較品2:2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン不使用)。
実施例14:ミルク様乳化香料組成物のラクトアイスへの添加
下記表8の処方により、ラクトアイスを調製し、これに本発明品4または比較品2のミルク様調合香料組成物をそれぞれ0.01%添加したものを調製した(本発明品4を使用したラクトアイス中の2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン濃度0.2ppm)。ラクトアイスの調製は、全原料を加熱溶解してホモジナイザー150kg/cm2 で乳化後、10°Cで一夜エージングを行った。フリーザーにてフリージング後−40°Cにて1時間硬化してラクトアイスを得た。
Figure 0006352227
比較品2または本発明品4のミルク様乳化香料組成物添加のラクトアイスと、香料無添加のラクトアイスを、よく訓練された5名のパネラーにより味わうことにより、官能評価を行った。その結果、5名全員が、まず、香料無添加のラクトアイスと比べ、比較品2を添加したラクトアイスの方がミルク様の香気が良好であるとの評価であった。さらにまた、5名全員が、比較品2を添加したラクトアイスよりも本発明品4を添加したラクトアイスの方が、ミルク様の香気が良好で、かつ、呈味においては旨味、甘味および乳のコクが増強されており、非常に美味であり良好であるという評価であった。
実施例15:ミルク様粉末香料組成物
水相として水150gにアラビアガム70g及びトレハロース20gを加えて溶解し、85〜90℃で15分間加熱殺菌し、40℃に冷却した。これに油相として参考品4を10gを添加混合した後、TK−ホモミキサーで乳化し、O/W型の乳化組成物を得た。この乳化組成物をニロ社のモービルマイナー型スプレードライヤーを使用して、入口温度140℃、出口温度75℃にて噴霧乾燥し、ミルク様粉末香料組成物95gを得た(本発明品5:2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン濃度0.1質量%)。
実施例16:脱脂粉乳水溶液への添加
脱脂粉乳(スキムミルク)、および脱脂粉乳(スキムミルク)99質量部に本発明品5(1質量部)をよく混合したものを調製した。それぞれの10質量部と水90質量部の混合溶液(脱脂粉乳水溶液)を調製し、これをよく訓練された5名のパネラーにより味わうことにより、官能評価を行った。その結果、5名全員が、無添加の脱脂粉乳水溶液よりも本発明品5を添加した脱脂粉乳水溶液の方が、ミルクの香気が強く、また、旨味および甘味が強く、さらに、乳特有のコクが強く、極めて良好なミルク風味であるという評価であった。
実施例17:パイナップル様乳化香料組成物
下記表9の処方により、パイナップル様調合香料組成物を調合した(参考品6)。
Figure 0006352227
油相として表9のパイナップル様調合香料組成物(参考品6:2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン濃度0.02質量%)100g、水相としてグリセリン312.5g、イオン交換水65gにデカグリセリンモノオレエート22.5g溶解したものを調製し、両液をTK−ホモゲナイザー(特殊機化工業社製)により、8000rpmで撹拌混合し、10分間の乳化を行った。イオン交換水で2000倍希釈時の波長680nmにおける吸光度が0.2AbsとなるようなO/W型エマルジョンとしたパイナップル様乳化香料組成物を得た(本発明品6:2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン濃度40ppm)。
実施例18:パイナップル様の調合香料組成物のシャーベットへの配合
下記表10の処方により、シャーベットを調製し、これに本発明品6のパイナップル様乳化香料組成物を0.2%添加したものを調製した(2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン濃度80ppb)。
これらのシャーベットを、パネラー5人により官能評価を行った。その結果、パネラー5人全員が、本発明品6を添加したシャーベットは無添加のシャーベットに比べて、フレッシュで天然感あふれるパイナップル香気の特徴が強調されており、呈味についても旨味および甘味が強いと評価した。
Figure 0006352227

Claims (11)

  1. 下記(A)〜(D)を含有する乳化組成物。
    (A)下記式(1)の2−(3−ベンジルオキシプロピル)ピリジン
    Figure 0006352227
    (B)水
    (C)糖類、1価アルコールまたは多価アルコールから選ばれる1種以上
    (D)乳化剤
  2. 請求項1に記載の乳化組成物を乾燥してなる粉末組成物。
  3. 請求項1または2に記載の組成物を飲食品または香粧品に添加する、飲食品または香粧品の香味変調方法。
  4. 香味変調が香気の飲食品または香粧品に対する香気の付与乃至増強である、請求項3に記載の香味変調方法。
  5. 香味変調が飲食品に対する旨味の付与である、請求項3に記載の香味変調方法。
  6. 香味変調が飲食品に対する旨味の増強である、請求項3に記載の香味変調方法。
  7. 香味変調が飲食品に対する甘味の増強である、請求項3に記載の香味変調方法。
  8. 香味変調が飲食品に対する塩味の増強である、請求項3に記載の香味変調方法。
  9. 香味変調が、乳、乳製品、乳若しくは乳製品を含有する飲食物、または乳製品代用品に対する乳のコクの増強である、請求項3に記載の香味変調方法。
  10. 請求項1または2に記載の組成物を含有させた飲食品。
  11. 請求項1または2に記載の組成物を含有させた香粧品。
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