JP6349435B2 - 7−{(3s、4s)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸の結晶 - Google Patents

7−{(3s、4s)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸の結晶 Download PDF

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Description

本発明は、式(1)で表される7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸(以下、化合物(1)ともいう)の塩の結晶、およびそれらの製造方法に関する。
通常、医薬品には、疾患に対する治療効果の他に、安全性や品質などが求められる。そのため、医薬品の有効成分となる化合物には、種々の条件下(光、温度、湿度などが化合物に影響を与える)における保存安定性が優れていることなどが求められる。また、医薬品が経口投与用製剤や注射剤などの剤形である場合には、含まれる有効成分の水への溶解性も高いことが好ましい。
化合物(1)は、安全で、強力な抗菌作用を示すだけではなく、従来の抗菌剤が効力を示しにくいグラム陽性菌、特にMRSA、PRSP、VREといった耐性菌に対し、強い抗菌活性を示すことが知られている(例えば特許文献1)。
国際公開第2005/026147号パンフレット
特許文献1には、化合物(1)の物理化学的特徴としては淡褐色の遊離型の結晶であることが示されているだけである。また、特許文献1には、化合物(1)の水への溶解性、安定性、結晶の特徴などについての情報も一切開示されていない。
本発明は、化合物(1)の水への溶解性および保存安定性を改善できる技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、抗菌剤として有用である化合物(1)の製造方法について研究・開発を進めたところ、特許文献1に記載の方法で得られた遊離型の化合物(1)の結晶(以下、単にフリー体結晶とも称す)は、水への溶解度が低く、光に対する保存安定性が悪いことを明らかとした。そのため、特許文献1の方法によっては水への溶解性に優れ、かつ、保存安定性に優れた結晶を得ることが困難であると考えられた。
本発明者らは、上述の課題を解決するため、化合物(1)およびその製造方法について鋭意検討した。その結果、溶解性に優れ、かつ、保存安定性に優れた化合物(1)の塩酸塩結晶およびメタンスルホン酸塩結晶を見出した。さらに、本発明者は、化合物(1)の塩酸塩結晶および化合物(1)のメタンスルホン酸塩結晶を工業的スケールで均質に製造する方法をも見出した。
具体的に説明すると、本発明者らは、特許文献1の方法により得られた化合物(1)のフリー体について塩酸塩化を試み、粗塩酸塩を得た。次いで、得られた粗塩酸塩について晶析処理(再結晶)を行い、塩酸塩の結晶を得た。
得られた塩酸塩の結晶の物性を評価したところ、今まで知られていなかった3種類の塩酸塩結晶(結晶A、結晶Bおよび結晶Cとする)および複数の擬似結晶形が存在することが判明した。
得られた結晶の中で結晶Aおよび結晶Bは、結晶Cおよび複数の擬似結晶形に比べ温度および湿度の影響による純度低下(分解)が抑制されており、温度や湿度に対する保存安定性が非常に高いことが確認された。
光に対する保存安定性についても、結晶Aは、フリー体結晶に比べ安定であった。
結晶Aおよび結晶Bについて詳しく検討を行ったところ、結晶Aは化合物(1)の塩酸塩無水物であり、結晶Bは化合物(1)の塩酸塩水和物であることが判明した。
また、本発明者らは、塩酸塩結晶の製造法についても検討を行った。その結果、精製された結晶を得るための晶析処理において使用される溶媒(晶析溶媒)、特に晶析溶媒中の含水量を調整することで、結晶Aおよび結晶Bの結晶をそれぞれ選択的に効率良く製造することができた。
また、特許文献1の方法により得られた化合物(1)のフリー体についてメタンスルホン酸による塩化を試み、粗メタンスルホン酸塩を得た。次いで、得られた粗メタンスルホン酸塩について晶析処理(再結晶)を行い、メタンスルホン酸塩の結晶を得た。
得られたメタンスルホン酸塩の結晶は、結晶Aおよび結晶Bと同様に、結晶Cに比べ温度および湿度の影響による純度低下(分解)が抑制されており、温度や湿度に対する保存安定性が非常に高いことが確認された。また、光に対する保存安定性についてもメタンスルホン酸塩の結晶は、フリー体結晶に比べ安定であった。
また、これらの結晶A、結晶B、メタンスルホン酸塩結晶は、フリー体結晶に比べ、水への溶解性にも優れていた。
すなわち本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 粉末X線回折において、回折角2θとして、10.8度、12.9度、および24.7度(それぞれ±0.2度)にピークを有する、7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩の結晶。
[2] 粉末X線回折において、回折角2θとして、4.9度、10.8度、12.9度、18.2度、21.7度、24.7度および26.4度(それぞれ±0.2度)にピークを有する[1]に記載の結晶。
[3] 図1に示される粉末X線回折パターンと同じ粉末X線回折パターンを有する[1]又は[2]に記載の結晶。
[4] 示差熱分析(DTA)において発熱ピークが210℃付近だけに現れ、熱重量測定法(TG)において100℃までに重量減少を示さない[1]から[3]のいずれか1つに記載の結晶。
[5] 粉末X線回折において、回折角2θとして、9.4度、および17.7度(それぞれ±0.2度)にピークを有する、7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩の水和物の結晶。
[6] 粉末X線回折において、回折角2θとして、4.8度、9.4度、17.7度、22.8度、25.8度および27.0度(それぞれ±0.2度)にピークを有する[5]に記載の結晶。
[7] 図2に示される粉末X線回折パターンと同じ粉末X線回折パターンを有する[5]又は[6]に記載の結晶。
[8] 示差熱分析(DTA)において、室温から100℃の間に吸熱ピーク、140℃付近に発熱ピークを示し、熱重量測定(TG)において100℃までに約7%の重量減少を示す[5]から[7]のいずれか1つに記載の結晶。
[9] カールフィシャー水分測定において約7%の水分値を示す[5]から[8]のいずれか1つに記載の結晶。
[10] 粉末X線回折において、回折角2θとして、9.9度、14.1度、および28.0度(それぞれ±0.2度)にピークを有する、7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸メタンスルホン酸塩の結晶。
[11] 粉末X線回折において、回折角2θとして、9.9度、14.1度、16.6度、19.8度、22.3度および28.0度(それぞれ±0.2度)にピークを有する[10]に記載の結晶。
[12] 図3に示される粉末X線回折パターンと同じ粉末X線回折パターンを有する[10]又は[11]に記載の結晶。
[13] 示差熱分析(DTA)において213℃付近における吸熱ピークを示すとともに発熱ピークが220℃付近にのみ現れ、熱重量測定(TG)において100℃までに重量減少を示さない[10]から[12]のいずれか1つに記載の結晶。
[14] [1]〜[13]のいずれか一つに記載の結晶を含有する医薬。
[15] [1]〜[13]のいずれか一つに記載の結晶を含有する、または当該結晶が原薬として配合される抗菌剤。
[16] 経口投与用製剤である[15]に記載の抗菌剤。
[17] 注射剤である[15]に記載の抗菌剤。
[18] [1]〜[4]のいずれか一つに記載の結晶を製造する方法であって、
7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸の2−プロパノール溶液に塩酸を加えて粗塩酸塩を得、
得られた粗塩酸塩を水分活性0.5未満の含水エタノールまたは含水2−プロパノールで晶析することを含む前記結晶を製造する方法。
[19] 7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸の2−プロパノール溶液に塩酸を加えて粗塩酸塩を得、得られた粗塩酸塩を水分活性0.5未満の含水エタノールまたは含水2−プロパノールで晶析させることにより得られる結晶。
[20] [5]〜[9]のいずれか一つに記載の結晶を製造する方法であって、
7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸の2−プロパノール溶液に塩酸を加えて粗塩酸塩を得、
得られた粗塩酸塩を水分活性0.5以上の含水エタノールまたは含水2−プロパノールで晶析することを含む前記結晶を製造する方法。
[21] 7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸の2−プロパノール溶液に塩酸を加えて粗塩酸塩を得、得られた粗塩酸塩を水分活性0.5以上の含水エタノールまたは含水2−プロパノールで晶析することにより得られる結晶。
[22] [10]〜[13]のいずれか一つに記載の結晶を製造する方法であって、
7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸のアセトン溶液にメタンスルホン酸を加えて粗メタンスルホン酸塩を得、
得られた粗メタンスルホン酸塩を含水アセトンで晶析することを含む前記結晶を製造する方法。
[23] 7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸のアセトン溶液にメタンスルホン酸を加えて粗メタンスルホン酸塩を得、得られた粗メタンスルホン酸塩を含水アセトンで晶析することにより得られる結晶。
本発明によれば、化合物(1)の水への溶解性および保存安定性を改善できる技術を提供することができる。
図1は、化合物(1)の塩酸塩(結晶A)の粉末X線回折図形である。 図2は、化合物(1)の塩酸塩水和物(結晶B)の粉末X線回折図形である。 図3は、化合物(1)のメタンスルホン酸塩の粉末X線回折図形である。 図4は、化合物(1)の塩酸塩(結晶A)の熱分析(TG/DTA)図形である。 図5は、化合物(1)の塩酸塩水和物(結晶B)の熱分析(TG/DTA)図形である。 図6は、化合物(1)のメタンスルホン酸塩の熱分析(TG/DTA)図形である。
本実施形態における化合物(1)の塩酸塩の結晶(結晶A)は、例えば以下の方法により製造することができる。
具体的には、化合物(1)のフリー体を2−プロパノールを溶媒として溶解し、得られた化合物(1)の2−プロパノール溶液に塩酸を加えて塩酸塩化を行い、粗塩酸塩を生成する。化合物(1)の粗塩酸塩は、例えばろ過により溶媒と分離することができる。
次に、得られた粗塩酸塩を水分活性0.5未満の含水エタノールまたは含水2−プロパノールを晶析溶媒として晶析処理(再結晶)を行なうことにより、結晶Aを選択的に得ることができる。晶析溶媒は、好ましくは水分活性0.3以上0.5未満の含水エタノールまたは含水2−プロパノールであり、更に好ましくは水分活性0.3以上0.5未満の含水エタノールである。より好ましくは、水分活性0.3以上0.43以下の含水エタノールである。
本明細書において、含水エタノールとは、水とエタノールとの混合溶媒をいう。また、本明細書において、含水2−プロパノールとは、水と2−プロパノールとの混合溶媒をいう。
また、本明細書において、水分活性(aw)とは、密閉容器内の水蒸気圧(P)とその温度における純水の蒸気圧(PO)の比で定義され、以下の式(i)によって求められる。

aw = P/PO・・・(i)

気相内、すなわち空気中では、水分活性は、相対湿度(%)を100で割った数値に相当する。例えば、75%の相対湿度は0.75の水分活性に相当する。有機溶媒と水との混合液中の水分活性は、水の濃度および溶媒と水との混和性に左右され、一般には非線形であることが周知である。有機溶媒と水との混合液の水分活性の値は、公知の化学的および物理的参照データベースから得ることができる。
また、化合物(1)のフリー体は、例えば特許文献1に記載の方法により製造することができる。
粉末X線回折において、回折角2θとして、結晶Aは、10.8度、12.9度、および24.7度(それぞれ±0.2度)にピークを有する粉末X線回折パターンを示し、具体的には、4.9度、10.8度、12.9度、18.2度、21.7度、24.7度および26.4度(それぞれ±0.2度)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。より具体的には、結晶Aは、例えば、図1に示す粉末X線回折パターンと同一の粉末X線回折パターンを示す。
また、結晶Aは、示差熱分析(DTA)において分解による発熱ピークが210℃付近だけに現れ、熱重量測定(TG)において100℃までに重量減少を示さない。
ここで粉末X線回折は、例えば、理学電機製RINT2200を使用して行なうことができる。銅放射線を放射線として用い、測定条件は、管電流36mA、管電圧40kV、発散スリット1度、散乱スリット1度、受光スリット0.15mm、走査範囲1〜40度(2θ)、走査速度毎分2度(2θ)とすることができる。
また、示差熱分析(DTA)及び熱重量測定(TG)は、例えば、セイコーインスツル製TG/DTA6200を使用して行なうことができる。測定は、例えば、乾燥窒素雰囲気下30°Cから250°Cまで、毎分5°Cで昇温する測定条件で行なうことができる。また、示差熱分析(DTA)及び熱重量測定(TG)を、熱分析(TG/DTA)ともいう。
本実施形態における化合物(1)の塩酸塩水和物の結晶(結晶B)は、例えば、以下の方法により製造することができる。
具体的には化合物(1)のフリー体を2−プロパノールを溶媒として溶解し、得られた化合物(1)の2−プロパノール溶液に塩酸を加えて塩酸塩化を行い粗塩酸塩を生成する。化合物(1)の粗塩酸塩は、例えばろ過により溶媒と分離することができる。
次に、得られた化合物(1)の粗塩酸塩を水分活性0.5以上の含水エタノールまたは含水2−プロパノールを晶析溶媒として晶析処理を行なうことにより、結晶Bを選択的に得ることができる。晶析溶媒は、好ましくは水分活性0.5以上0.8以下の含水エタノールまたは含水2−プロパノールであり、更に好ましくは水分活性0.5以上0.8以下である含水2−プロパノールである。より好ましくは、水分活性0.52以上0.77以下の含水2−プロパノールである。
粉末X線回折において、回折角2θとして、結晶Bは、9.4度、および17.7度(それぞれ±0.2度)にピークを有する粉末X線回折パターンを示し、具体的には、4.8度、9.4度、17.7度、22.8度、25.8度および27.0度(それぞれ±0.2度)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。より具体的には、結晶Bは、例えば、図2に示す粉末X線回折パターンと同一の粉末X線回折パターンを示す。
結晶Bは、示差熱分析(DTA)において、室温から100℃に上昇するまでの間に脱水に伴う吸熱ピーク、および140℃付近に発熱ピークを示し、熱重量測定(TG)において100℃までに約7%の重量減少を示す。また、結晶Bは、カールフィッシャー水分測定において約7%の水分値を示す。
カールフィッシャー水分測定は、例えば、京都電子工業製MKS−510Nを使用して行なうことができる。測定は、滴定法に基づき行なうことができる。
結晶Bは、30℃以上の温度、および100hPa以下の減圧度で乾燥することにより、化合物(1)の塩酸塩無水物の結晶である結晶Aに転位させることもできる。
本実施形態における化合物(1)のメタンスルホン酸塩結晶は、例えば、以下の方法により製造することができる。
具体的には、化合物(1)のフリー体をアセトンを溶媒として溶解し、得られた化合物(1)のアセトン溶液にメタンスルホン酸を加えてメタンスルホン酸塩化を行い粗メタンスルホン酸塩を生成する。粗メタンスルホン酸塩は、例えばろ過により溶媒と分離することができる。
次に、得られた化合物(1)の粗メタンスルホン酸塩を含水アセトンを晶析溶媒として晶析処理を行なうことにより、化合物(1)のメタンスルホン酸塩結晶を選択的に得ることができる。なお、本明細書において、含水アセトンとは、水とアセトンの混合溶媒をいう。アセトンと水の容量比は4:1〜6:1が好ましく、より好ましくは5:1である。
粉末X線回折において、回折角2θとして、化合物(1)のメタンスルホン酸塩結晶は、9.9度、14.1度、および28.0度(それぞれ±0.2度)にピークを有する粉末X線回折パターンを示し、具体的には、9.9度、14.1度、16.6度、19.8度、22.3度および28.0度(それぞれ±0.2度)にピークを有する粉末X線回折パターンを示す。より具体的には、化合物(1)のメタンスルホン酸塩は、例えば、図3に示す粉末X線回折パターンと同一の粉末X線回折パターンを示す。
また、化合物(1)のメタンスルホン酸塩結晶は、示差熱分析(DTA)において213℃付近に融解による吸熱ピークを示すとともに分解による発熱ピークが220℃付近にのみ現れ、熱重量測定法(TG)において100℃までに重量減少を示さない。
1つの態様として、結晶A、結晶B、または化合物(1)のメタンスルホン酸塩結晶を含む医薬を構成することができる。本実施形態の医薬は、例えば結晶A、結晶B、または化合物(1)のメタンスルホン酸塩結晶を有効成分として含むとともに、薬学上許容される担体、溶剤、または希釈剤などの他の成分を含んで構成される医薬組成物の形態とすることができる。
本実施形態の結晶は、グラム陽性菌、特にMRSA,PRSP,VREといった耐性菌に対し、強い抗菌活性を示しかつ安全性に優れている。1つの態様として、本実施形態の化合物(1)の結晶を有効成分として含む、または当該結晶が原薬として配合される抗菌剤を構成することができる。具体的には、当該抗菌剤は、例えば結晶A、結晶B、または化合物(1)のメタンスルホン酸塩結晶を有効成分として含むとともに、薬学上許容される担体、溶剤、または希釈剤などの他の成分を含む。また、当該抗菌剤は、例えば、例えば結晶A、結晶B、または化合物(1)のメタンスルホン酸塩結晶が原薬として、薬学上許容される担体、溶剤、または希釈剤などの他の成分と配合される。
当該抗菌剤は、その形態は特に限定されず、例えば、散剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、水剤などの経口投与用製剤、注射剤、軟膏、点眼剤、座薬等が挙げられるが、経口投与用製剤又は注射剤の形態であることが好ましい。経口投与用製剤又は注射剤の形態とする場合、特に限定されないが、化合物(1)の結晶が0.001〜98%の割合で配合され、経口投与用製剤とする場合は好ましくは50〜90%であり、注射剤の形態とする場合は好ましくは0.01〜1%の割合で配合される。
本実施形態に係る結晶は、いずれも光の影響に対する分解が化合物(1)のフリー体結晶と比較して抑制されており、優れた保存安定性を示す。また、本実施形態に係る結晶は、いずれも化合物(1)のフリー体結晶と比較して高い水への溶解性を示す。したがって、本実施形態によれば、医薬品原薬として有用である化合物(1)の塩の結晶を提供することができる。
また、本実施形態において例示した結晶Aの製法および結晶Bの製法によれば、結晶Aと結晶Bとを、選択的に効率よく製造することができる。したがって、当該製法によれば、医薬品原薬としての有用である化合物(1)の塩の結晶の提供にさらに寄与できる。
以下に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、これら実施例によって本発明は限定されない。
融点は、柳本微量融点測定装置MP-500D型を用いて測定した。IRスペクトルは、サーモフィッシャーサイエンティフィックNicolet6700型赤外分光光度計を用いて測定した。NMRスペクトルは、日本電子JNM-EX400型核磁気共鳴装置を使用し、内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)を使用して測定した。MSスペクトルは、日本電子JMS-T100LP型及びJMS-SX102A型質量分析計を用いて測定した。元素分析は、ヤナコ分析CHN CORDER MT-6元素分析装置を用いて行った。比旋光度は、日本分光 DIP-370型を用いて測定した。
粉末X線回折は、理学電機製RINT2200を使用して行なった。銅放射線を放射線として用い、測定条件は、管電流36mA、管電圧40kV、発散スリット1度、散乱スリット1度、受光スリット0.15mm、走査範囲1〜40度(2θ)、走査速度毎分2度(2θ)とした。
また、熱分析(TG/DTA)は、セイコーインスツル製TG/DTA6200を使用して行なった。測定は、乾燥窒素雰囲気下において30°Cから250°Cまで、毎分5°Cで昇温する測定条件で行なった。
カールフィッシャー水分測定は、京都電子工業製MKS−510Nを使用し、滴定法に基づき行なった。
(参考例1)
7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩
窒素雰囲気下、(3R、4S)−3−シクロプロピルアミノメチル−4−フルオロピロリジン3.56kg(15.4mol)、トリエチルアミン 11.7 L(84.2mol) およびジメチルスルホキシド 30.0Lの混液(反応液とも称す)を、23.0〜26.3°Cで15分撹拌した。23.0〜26.3°Cでビス(アセタト−O)[6、7−ジフルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボキシラト−O,O]ボロン6.00kg(14.0mol)を反応液に加え、23.7〜26.3°Cで2時間撹拌した。反応液に酢酸エチル120Lを加え、さらに反応液に常水120Lを加えた後、水酸化ナトリウム960g(2mol/Lとする量)及び常水12.0Lの溶液を反応液に加え、5分間撹拌後、水層を分取した。水層に、酢酸エチル120Lを加え、5分間撹拌後、酢酸エチル層を分取した。
酢酸エチル層を合わせて、常水120Lを加え、5分間撹拌後、静置し、水層を廃棄した。酢酸エチル層を減圧留去した。得られた残留物を、2−プロパノール60.0Lに溶解させ、室温で一夜放置した。塩酸5.24L(62.9mol)及び常水26.2L(2mol/Lとする量)の溶液を加え、28.2〜30.0°Cで30分撹拌した。外温55.0°Cで加熱し、溶解後(47.1°Cで溶解確認)、冷却し晶析させた。39.9〜41.0°Cで30分撹拌し、冷却後(目安:20.0°Cまでは設定温度7.0°C、それ以下は−10.0°C)、2.2〜10.0°Cで1時間撹拌した。析出した結晶をろ取、2−プロパノール60Lで洗浄し、7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩の湿潤粗結晶を9.57kg得た。
(参考例2)
7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩水和物(結晶C)
参考例1で得られた7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩0.02g(0.04mmol)を70℃の熱水を0.3mL加え溶解した後、室温まで成り行きで冷却し、その後5℃に一晩放置した。析出した結晶をろ過した後、減圧乾燥し、白色粉末の7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩水和物(結晶C)を得た。
(参考例3)
7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸 (3R、4S)−3−シクロプロピルアミノメチル−4−フルオロピロリジン142g(615mmol)、トリエチルアミン 274mL(1960mmol)およびアセトニトリル2.40Lの混液(反応液とも称す)を、内温30〜35°Cで0.5時間撹拌した。内温33.8〜34.1°Cでビス(アセタト−O)[6、7−ジフルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボキシラト−O,O]ボロン240g(559mmol)を反応液に加え、内温35°C付近の温度で4時間撹拌した。反応液にメタンスルホン酸240gと氷水2.40L混液を加え、内温35℃付近の温度で1時間撹拌した。酢酸エチル4.32Lを反応液に加え、10分間撹拌した後、水層を分取した。有機層にメタンスルホン酸120gと氷水1.20L混液を加え、10分間撹拌した後、水層を分取した。
水層を合一し、冷却した後、内温15℃以下の温度で2mol/L水酸化ナトリウム溶液を加えてpH7.3の混合液とした。得られた混合液に酢酸エチル/アセトン(5:1)混合溶媒5.76Lを加え、10分間撹拌した後、有機層を分取した。水層に酢酸エチル/アセトン(5:1) 混合溶媒4.80Lを加え、10分間撹拌した後、有機層を分取した。有機層を合一し、氷水2.40Lで洗浄した後、減圧濃縮し、黄色粉末の7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸粗結晶を177g得た。
(参考例4)
ビス(アセタト−O)−〔6,7−ジフルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキシラト−O,O〕ボロン
窒素雰囲気下、無水酢酸 17.9 L(190mol)にホウ酸(触媒作成用) 86.4 g(1.40mol)を加え、70.0〜77.7℃で30分間加熱撹拌した。その後、当該混合液を内温24.7℃まで冷却した(温水設定温度23.0℃)。続いて、当該混合液にホウ酸を4回に分けて加えた。具体的には、ホウ酸(1回目)842g(13.6mol)を混合液に加え、24.7〜27.4℃で30分撹拌した。ホウ酸(2回目)842g(13.6mol)を混合液に加え、24.3〜26.3℃で30分撹拌した。ホウ酸(3回目)842g(13.6mol)を混合液に加え、24.3〜26.8℃で30分撹拌した。ホウ酸(4回目)842g(13.6mol)を混合液に加え、25.1〜28.3℃で30分撹拌した。混合液を50.0〜54.9℃で30分撹拌し、ホウ酸トリアセテート調整液とした。
そのホウ酸トリアセテート調整液に、6,7−ジフルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸エチルエステル4.60kg(14.0mol)を加えて反応準備液とし、53.7〜56.9℃で3時間撹拌した。反応準備液を30.0℃まで冷却し、室温で一夜放置した。反応準備液を55.0℃まで加熱し析出物を溶解させ、アセトン13.8Lを加え、反応液(1)とした。
これとは別に、窒素雰囲気下、常水161L及びアンモニア水(28%)28.2L(464mol)を混合し、当該混合液を1.6℃まで冷却した。当該混合液に、前述の反応液(1)を添加して、アセトン9.20Lで洗い込んで粗結晶取得用溶液とした。粗結晶取得用溶液を15.0℃まで冷却後、6.2〜15.0℃で1時間撹拌した。析出した結晶をろ取、常水46.0Lで洗浄し、湿潤粗結晶を9.07kg得た。設定温度65.0℃で約16時間減圧乾燥し,粗結晶を 5.89kg得た。
窒素雰囲気下、アセトン29.5L及び粗結晶を混合し、得られた混合液を加熱溶解した(溶解温度52.6℃)。加熱時、混合液にジイソプロピルエーテル58.9Lを晶析するまで滴下した(滴下量10.0L;52.8→48.7℃;晶析温度49.0℃)。晶析確認後、49.0〜50.1℃で混合液を15分撹拌し、残りのジイソプロピルエーテルを混合液に滴下し(50.1→46.4℃)、46.7〜51.7℃で15分混合液を撹拌した。混合液を15℃まで冷却後、8.1〜15.0℃で30分撹拌した。析出した結晶をろ取、アセトン 5.89L及びジイソプロピルエーテル11.8Lで洗浄し、湿潤結晶を6.19kg得た。温水設定温度65.0℃で約20時間減圧乾燥し、ビス(アセタト−O)−〔6,7−ジフルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキシラト−O,O〕ボロンを5.42kg得た(収率90.4%)。
融点:183〜185℃(dec).
元素分析(%):C1715BFNOとして
計算値:C、47.58;H、3.52;N、3.26.
実測値:C、47.91;H、3.44;N、3.04.
H−NMR(CDCl、400 MHz)δ:2.04(6H、s)、4.22(3H、 d、J=2.4Hz)、4.88(2H、dt、J=47.0、4.4Hz)、5.21(2H、dt、J=24.9、4.4Hz)、8.17(1H、t、J=8.8Hz)、9.11(1H、s).
ESI MS(positive) m/z:430(M+H)
IR(KBr)cm−1:3080、1703.
(参考例5)
7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩
窒素雰囲気下、ジメチルスルホキシド25.0L、トリエチルアミン9.72L(69.9mol)、及び(3R,4S)−3−シクロプロピルアミノメチル−4−フルオロピロリジン2.96kg(12.8mol)を混合して反応液とし、23.3〜27.5℃で15分撹拌した。26.4〜28.1℃でビス(アセタト−O)−〔6,7−ジフルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボキシラト−O,O〕ボロン5.00kg(11.7mol)を反応液に加え、23.7〜28.3℃で2時間撹拌した。反応液に酢酸エチル100Lを加え、さらに常水100Lを加えた後、水酸化ナトリウム800g(2mol/Lとする量)及び常水10.0Lの溶液を反応液に加え、5分間撹拌後、水層を分取した。水層に、酢酸エチル100Lを加え、5分間撹拌後、酢酸エチル層を分取した。
酢酸エチル層を合わせて、常水100Lを加え、5分間撹拌後、静置し、水層を廃棄した。酢酸エチル層を減圧留去した。得られた残留物を、2−プロパノール50.0Lに溶解させ、室温で一夜放置した。塩酸4.37L(52.4mol)及び常水21.8L(2mol/Lとする量)の溶液を加え、23.6〜26.4°Cで30分撹拌した。外温55.0°Cで加熱し、溶解後(48.3°Cで溶解確認)、冷却し晶析させた。39.8〜41.4°Cで30分撹拌し、冷却後(目安:20.0°Cまでは設定温度7.0°C、それ以下は−10.0°C)、4.4〜10.0°Cで1時間撹拌した。析出した結晶をろ取、2−プロパノール50Lで洗浄し、7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩の湿潤粗結晶を7.07kg得た。
(実施例1)
7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩(結晶A)
参考例1で得られた7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸の粗塩酸塩9.57kgをエタノール60L、精製水10.8Lの混合溶媒に添加し、加熱溶解した。この溶解液を、フィルターを通しろ過し、エタノール24.0L及び精製水1.20Lの混合溶媒で洗い込んだ。溶解を確認し、加熱したエタノール(99.5)96.0Lを71.2〜72.6°Cで溶解液に添加した。その溶解液を冷却し(温水設定温度60.0°C)、晶析確認後(晶析温度61.5°C)、59.4〜61.5°Cで30分撹拌した。段階的に冷却させ(50.0°Cまで温水設定温度40.0°C、40.0°Cまで温水設定温度30.0°C、30.0°Cまで温水設定温度20.0°C、20.0°Cまで設定温度7.0°C、15.0°Cまで設定温度−10.0°C、これ以降溜置き)、4.8〜10.0°Cで1時間撹拌した。析出した結晶をろ取、エタノール30.0Lで洗浄し、7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩の湿潤結晶を5.25kg得た。
この際、析出した結晶はろ過速度に優れており、工業スケールにおいても容易にろ過できた。得られた結晶を設定温度50.0°Cで約13時間減圧乾燥し、7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩(結晶A)として4.83kg得た(収率72.6%)。
粉末X線回折の結果を図1に示す。図1から理解できるように4.9度、10.8度、12.9度、18.2度、21.7度、24.7度および26.4度にピークが見られ、10.8度、12.9度、および24.7度に特徴的なピークが確認できる。
また、熱分析(TG/DTA)の結果を図4に示す。図4から理解されるように示差熱分析(DTA)において210℃に分解による発熱ピークが見られるのみでそれ以外には吸熱ピーク又は発熱ピークが見られず、熱重量測定(TG)においては150℃まで、少なくとも100℃までに重量減少を示さない。
元素分析値(%):C2124?HClとして
計算値:C、53.00;H、5.30;N、8.83.
実測値:C、53.04;H、5.18;N、8.83.
H NMR(DMSO−d、400MHz)δ(ppm):0.77−0.81(2
H、m)、0.95−1.06(2H、m)、2.80−2.90(2H、m)、3.21−3.24(1H、m)、3.35−3.39(1H、m)、3.57(3H、s)、
3.65−3.78(3H、m)、4.13(1H、dd、J = 41.8、13.1 Hz)、4.64−4.97(3H、m)、5.14(1H、dd、J = 32.7、15.6 Hz)、5.50(1H、d、J = 53.7 Hz)、7.80(1H、d、J = 13.7 Hz)、8.86(1H、s)、9.44(2H、br s)、15.11(1H、br s).
ESI MS(positive) m/z:440(M+H)
(実施例2)
7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩水和物(結晶B)
参考例1で得られた7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩30.0 g(63.0 mmol)を2−プロパノール600 mL及び常水90.0 mLの混合溶媒に添加し、加熱溶解(内温72℃)した。溶解液を冷却し、晶析を確認(内温49℃)後、晶析温度付近で5分間撹拌した(内温48〜49℃)。晶析温度から内温が10℃程度上昇するまで溶解液を加熱し、その温度で30分間撹拌した(内温48〜60℃)。溶解液を徐々に冷却(毎分約1℃冷却)し、10℃以下で1時間撹拌した(内温2〜10℃)。析出した結晶をろ過し、2−プロパノール143mL及び常水7.5mLの混合溶媒で洗浄すると白色粉末の7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩水和物(結晶B)を34.5g得た。
粉末X線回折の結果を図2に示す。図2から理解できるように4.8度、9.4度、17.7度、22.8度、25.8度および27.0度にピークが見られ、9.4度および17.7度に特徴的なピークが確認できる。
また、熱分析(TG/DTA)の結果を図5に示す。図5から理解されるように示差熱分析(DTA)では、室温から100℃に上昇するまでの間において脱水に伴う吸熱ピーク(図5では75.9℃)が見られ、142.3℃と210℃に発熱ピークが見られた。熱重量測定(TG)においては100℃までに7.01%の重量減少が確認できた。
また、カールフィッシャー水分測定の測定値は7%であった。
なお、カールフィッシャー水分測定の測定値に基づき算出される化合物と水のモル比は1:2であった。また、熱重量測定(TG)における加熱による室温から100度付近までの質量減少がカールフィッシャー水分測定の水分値と一致し、示差熱分析(DTA)において室温から100度付近までの間に吸熱ピークが明確に確認できた。すなわち、室温から100℃付近までの加熱により結晶格子に組み込まれた結晶水の離脱が起こっていると考えられ、結晶Bは水和物と同定された。
H NMR(DMSO−d、400MHz)δ(ppm):0.77−0.81(2H、m)、0.98−1.00(2H、m)、2.79−2.93(2H、m)、3.22(1H、dd、J = 8.4、12.2 Hz)、3.58(3H、s)、3.65−3.81(3H、m)、4.13(1H、dd、J = 13.2、42.1 Hz)、4.81−4.97(2H、m)、5.15(1H、dd、J = 15.7、32.8 Hz)、5.55(1H、d、J = 53.8 Hz)、7.79(1H、dd、J = 2.4、13.2 Hz)、8.85(s、1H)、9.56(2H、brs)、15.07(1H、brs).
(実施例3〜7)
表1に示す溶媒比率、溶媒量の条件以外は、実施例2と同様に実施し、化合物(1)の塩酸塩を得た。表1には、水分活性値と得られた結晶の分類を示した。
(実施例8)
7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩水和物(結晶B)
7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩(結晶A)1gをシャーレに広げ、硫酸カリウムの飽和塩溶液を入れたデシケーターに入れた。当該結晶Aを25℃で1週間保存し、7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩水和物(結晶B)を得た。
(実施例9)
7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸メタンスルホン酸塩
参考例3に従い合成した7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸178gにアセトン 3.36Lを加え、加温して溶解した。内温40℃付近の温度でメタンスルホン酸59.1gのアセトン溶液0.48Lを滴下した(得られた溶液を以下、混合液という)。混合液を内温40℃付近の温度で0.5時間撹拌した。混合液を冷却し、内温10℃以下の温度で0.5時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、アセトン1.44Lで洗浄した後、50℃で2時間減圧乾燥して粗精製の7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸メタンスルホン酸塩を198g得た。
この粗精製品198gにアセトンと水(5:1)の混合溶媒1.98Lを加え、加温して溶解させた。溶解液をフィルターを通しろ過し、容器をアセトン2.96Lで洗浄した。ろ液と洗液を合わせ、室温で撹拌した。結晶晶析後、15分間撹拌し、その後加温して内温35〜41℃で0.5時間撹拌した。冷却し、内温10℃以下の温度で0.5時間撹拌した。析出した結晶をろ取し、アセトン0.99Lで洗浄した後、湿潤結晶(136g)を40℃で19時間、続いて50℃で約4時間減圧乾燥し、7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸メタンスルホン酸塩の結晶を133g得た。
粉末X線回折の結果を図3に示す。図3から理解できるように9.9度、14.1度、16.6度、19.8度、22.3度および28.0度にピークが見られ、9.9度、14.1度、および28.0度に特徴的なピークが確認できる。
また、熱分析(TG/DTA)の結果を図6に示す。図6から理解されるように示差熱分析(DTA)では213.1℃に融解による吸熱ピーク、および220.2℃に分解による発熱ピークが見られるのみでそれ以外には吸熱ピーク又は発熱ピークが見られなかった。熱重量測定(TG)においては、200℃まで、少なくとも100℃までは重量減少を示さなかった。
融点(熱板法):207〜210℃(分解)
[α] 28 −176(c 1.0、HO)
IR(KBr法);1727,1626,1466,1227,1059 cm−1
元素分析値(%):C2124?CHSとして
計算値:C、49.34;H、5.27;N、7.85.
実測値:C、49.49;H、5.15;N、7.62.
H NMR(DMSO−d、400MHz)δ(ppm):0.78−0.92(4H、m)、2.35(3H、d、J = 1.7 Hz)、2.73−2.87(2H、m)、3.28(1H、dd、J = 12.8、7.0Hz)、3.42(1H、dd、J = 13.0、6.6Hz)、3.58(3H、 s)、3.65−3.76(3H、 m)、4.13(1H、ddt、J = 42.1、12.9、2.8 Hz)、4.66−4.97(3H、 m)、5.08−5.22(1H、m)、5.46(1H、d、J = 53.6 Hz)、7.80(1H、d、J = 13.6 Hz)、8.78−8.93(3H、m)、15.07(1H、brs).
ESI MS(positive) m/z:440(M+H)
(実施例10)
7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩(結晶A)
参考例5で得られた7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸の粗塩酸塩7.07kgをエタノール50L、精製水9.0Lの混合溶媒に添加し、加熱溶解した。この溶解液を、フィルターを通しろ過し、エタノール20.0L及び精製水1.0Lの混合溶媒で洗い込んだ。溶解を確認し、加熱したエタノール(99.5)80.0Lを70.6〜71.4°Cで溶解液に添加した。その溶解液を冷却し(温水設定温度60.0°C)、晶析確認後(晶析温度61.4°C)、60.0〜61.4°Cで30分撹拌した。段階的に冷却させ(50.0°Cまで温水設定温度40.0°Cで冷却、40.0°Cまで温水設定温度30.0°Cで冷却、30.0°Cまで温水設定温度20.0°Cで冷却、20.0°Cまで設定温度7.0°Cで冷却、15.0°Cまで設定温度−10.0°Cで冷却、これ以降溜置き)、1.2〜10.0°Cで1時間撹拌した。析出した結晶をろ取、エタノール25.0Lで洗浄し、7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩の湿潤結晶を4.52kg得た。設定温度50.0°Cで約14時間減圧乾燥し、7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸塩酸塩(結晶A)として4.07kg得た(収率73.4%)。
元素分析値(%):C2124?HClとして計算値:C、53.00;H、5.30;N、8.83.
実測値:C、52.80;H、5.35;N、8.82.
H NMR(DMSO−d、400MHz)δ(ppm):0.71−0.86(2H、m)、0.90−1.07(2H、m)、2.73−2.98(2H、m)、3.15−3.29(1H、m)、3.30−3.45(1H,m)、3.58(3H、s)、
3.63−3.83(3H、 m)、4.13(1H、dd、J = 42.1、13.2 Hz)、4.64−5.00(3H、m)、5.15(1H、dd、J = 32.8、15.7 Hz)、5.52(1H、dt、J = 53.8、2.9 Hz)、7.80(1H、d、J = 13.7 Hz)、8.86(1H、s)、9.55(2H、brs)、15.11(1H、brs).
ESI MS(positive) m/z:440(M+H)
(試験例1)
塩酸塩(結晶A)、塩酸塩水和物(結晶B)、塩酸塩(結晶C)、メタンスルホン酸塩の保存安定性試験
化合物(1)の塩酸塩(結晶A)、塩酸塩水和物(結晶B)、塩酸塩(結晶C)、メタンスルホン酸塩について40℃75%相対湿度の条件下に、遮光された容器を用いて密栓および開放で保存した後、各結晶の含量をHPLCにより測定した。
HPLC条件:ジーエルサイエンス製、Inertsil ODS−3V、内径4.6mm×長さ15cm、粒径5μmのカラムを使用した。移動相として、移動相Aと移動相Bを混合して用いた。移動相Aとして、薄めたリン酸(1→1000)を、移動相Bに液体クロマトグラフィー用メタノールを用いた。移動相Aの割合を0〜10分で65%から70%、10〜20分で70%から65%、20〜40分で65%から20%、40分〜45分は20%と濃度勾配制御して、流量毎分1mLで送液した。測定波長は294nmを用いた。
表2に塩酸塩(結晶A)、塩酸塩水和物(結晶B)、塩酸塩(結晶C)、メタンスルホン酸塩、フリー体結晶の40℃75%相対湿度の条件下に保存した時の、経時的な未変化体の残存量を分析した結果を記載した。
表2に示すように、結晶Cにおいては、2週間後において、既に未変化体の含量低下が見られ保存安定性が高くないことが明らかであるが、結晶A、結晶B、メタンスルホン酸塩結晶は、4週間後においても全く変化は見られずフリー体結晶と同様に安定であった。
(試験例2)
塩酸塩結晶(結晶A)、メタンスルホン酸塩結晶、フリー体結晶の光に対する保存安定性試験
表3に結晶A、メタンスルホン酸塩結晶、フリー体結晶のD65蛍光ランプ照射条件下に保存した時の、経時的な未変化体の残存量を分析した結果を記載した。
フリー体結晶は、11万lx・hrsから既に未変化体の大幅な含量低下が見られているが、結晶A、メタンスルホン酸塩結晶には、その総量での変化はほとんど見られない。128万lx・hrsにおいても結晶A、メタンスルホン酸塩結晶も含量低下はみられるものの、フリー体結晶の50%以上の含量低下が観測されるのに比べ大幅な安定性の向上が観察された。
(試験例3)
塩酸塩結晶(結晶A)、塩酸塩水和物結晶(結晶B)、メタンスルホン酸塩結晶、フリー体結晶の水への溶解度試験
表4に塩酸塩結晶(結晶A)、塩酸塩水和物結晶(結晶B)、メタンスルホン酸塩結晶、フリー体結晶の水への溶解性を記載した。
フリー体結晶の溶解度が1mg/mL以下であるのに比べ、結晶A、結晶B、メタンスルホン酸塩結晶は、10mg/mL以上と明らかに水への溶解性が向上している。
本発明は、安全で、強力な抗菌作用を示すだけではなく、従来の抗菌剤が効力を示しにくい耐性菌に対して有効である7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸の水への溶解性に優れ、かつ、保存安定性に優れた塩酸塩、塩酸塩水和物およびメタンスルホン酸塩の結晶を提供することができる。また、本発明の方法によれば、これら塩酸塩、塩酸塩水和物およびメタンスルホン酸塩の結晶を、各々別々に安定して供給することができる。これら塩酸塩、塩酸塩水和物およびメタンスルホン酸塩を、医薬品として各々を取捨選択し使用することができる。

Claims (1)

  1. 7−{(3S、4S)−3−[(シクロプロピルアミノ)メチル]−4−フルオロピロリジン−1−イル}−6−フルオロ−1−(2−フルオロエチル)−8−メトキシ−4−オキソ−1、4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸を塩酸塩結晶にすることにより、光の影響による分解物の生成を抑制する方法。
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