[透明樹脂層]
本発明の透明積層フィルムは透明樹脂層(又は基材層)を含む。透明樹脂層としては、可撓性が高く、ガラスよりも耐割れ性に優れる透明樹脂で形成されたプラスチックフィルム又はシート(未延伸又は延伸プラスチックフィルム)を利用できる。透明樹脂としては、前記AWM層で例示された熱可塑性樹脂と同様の樹脂を使用できる。好ましい透明樹脂としては、例えば、セルロース誘導体[セルローストリアセテート(TAC)、セルロースジアセテートなどのセルロースアセテートなど]、ポリエステル系樹脂[PET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアリレート系樹脂など]、ポリスルホン系樹脂[ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど]、ポリエーテルケトン系樹脂[ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなど]、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、環状ポリオレフィン系樹脂[トパス(TOPAS)(登録商標)、アートン(ARTON)(登録商標)、ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)など]、ハロゲン含有樹脂(ポリ塩化ビニリデンなど)、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル系樹脂など)、スチレン系樹脂(ポリスチレンなど)、酢酸ビニル又はビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコールなど)などが挙げられる。これらの透明樹脂で形成されたプラスチックフィルムは1軸又は2軸延伸されていてもよい。
光学的に等方性の透明プラスチックフィルムには、例えば、ポリエステル、セルロース誘導体類などが含まれ、特に、耐熱性や透明性などのバランスに優れる点から、PETやPENなどのポリC2−4アルキレンアリレートで形成されたフィルムが好ましい。さらに、透明樹脂層は、二軸延伸したフィルムであってもよい。
透明樹脂層には、種々の慣用の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、界面活性剤、水溶性高分子、レベリング剤、充填剤、架橋剤、カップリング剤、着色剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、消泡剤などが含まれていてもよい。添加剤の割合は、例えば、透明樹脂層全体に対して0.01〜10重量%(特に0.1〜5重量%)程度である。
透明樹脂層の屈折率は、例えば1.5〜1.8、好ましくは1.55〜1.75、さらに好ましくは1.6〜1.7程度である。
なお、本発明では、屈折率は、JIS K 7142に準拠して、波長633nmにおいて、メトリコンプリズムカプラーを用いて測定できる。
透明樹脂層の厚み(平均厚み)は、例えば20〜200μm、好ましくは30〜150μm、さらに好ましくは40〜120μm(特に50〜100μm)程度である。透明樹脂層が薄すぎると、タッチパネルに利用するとウォーターマークが発生し易く、厚すぎると、薄肉化デバイスの製造が困難となる虞がある。
[第1の易接着層]
前記透明樹脂層の一方の面には、第1の易接着層が積層されている。第1の易接着層は、通常、接着性樹脂で構成されている。
接着性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂[例えば、ポリエチレン、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリロニトリル−アクリル酸共重合体などのポリエチレン系樹脂、非晶性ポリプロピレン系樹脂など]、塩化ビニル系樹脂(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体など)、塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体など)、アクリル系樹脂[例えば、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル)の単独又は共重合体、これらの(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体(スチレン系単量体、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体、不飽和ジカルボン酸又はそのエステルなど)との共重合体など]、酢酸ビニル系樹脂[ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルと他の共重合性単量体(オレフィン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル、不飽和ジカルボン酸又はそのエステルなど)との共重合体など]、スチレン系樹脂[例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体など]、ポリエステル系樹脂[低分子量のポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂(例えば、非晶性脂肪族又は芳香族ポリエステル)など]、ウレタン系樹脂(熱可塑性ウレタン系樹脂、イソシアネート基含有ポリマーなど)、ゴム状重合体(スチレン−ブタジエン共重合体など)、イミノ基含有ポリマー(ポリエチレンイミンなどのポリアルキレンイミンなど)などが挙げられる。
これらの接着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの接着性樹脂は、透明樹脂層の種類に応じて適宜選択できるが、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂などが汎用される。
第1の易接着層は、後述する第1のハードコート層の項で例示される硬化性樹脂であってもよい。例えば、硬化性樹脂のうち、透明樹脂層との接着力が高い硬化性樹脂で構成された層を薄膜として形成することにより、易接着層として用いてもよい。
第1の易接着層の屈折率は、例えば1.50〜1.62、好ましくは1.51〜1.61、さらに好ましくは1.52〜1.60程度である。
第1の易接着層の厚み(平均厚み)は、例えば30〜200nm、好ましくは40〜180nm、さらに好ましくは50〜150nm程度である。
[第1のハードコート層]
前記第1の易接着層の上には、さらに第1のハードコート層が積層されている。第1のハードコート層としては、硬化性樹脂を含む透明な硬化性組成物を利用できる。
(硬化性樹脂)
硬化性樹脂(硬化性モノマー又は硬化性樹脂前駆体)としては、熱や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)などにより反応する官能基を有する化合物であり、熱や活性エネルギー線などにより硬化又は架橋して樹脂(特に硬化又は架橋樹脂)を形成可能な種々の硬化性化合物が使用できる。前記硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性化合物又は樹脂[エポキシ基、重合性基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、シラノール基などを有する低分子量化合物(例えば、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂など)]、活性光線(紫外線など)により硬化可能な光硬化性化合物(光硬化性モノマー、オリゴマーなどの紫外線硬化性化合物など)などが例示でき、光硬化性化合物は、EB(電子線)硬化性化合物などであってもよい。なお、光硬化性モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい光硬化性樹脂などの光硬化性化合物を、単に「光硬化性樹脂」という場合がある。
光硬化性化合物には、例えば、単量体、オリゴマー(又は樹脂、特に低分子量樹脂)が含まれる。単量体は、例えば、1つの重合性基を有する単官能単量体と、少なくとも2つの重合性基を有する多官能単量体とに分類できる。
単官能単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系単量体、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
多官能単量体には、2〜8程度の重合性基を有する多官能単量体が含まれ、2官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの橋架環式炭化水素基を有するジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
3〜8官能単量体としては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
オリゴマー又は樹脂としては、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなど)、ポリエステル(メタ)アクリレート(例えば、脂肪族ポリエステル型(メタ)アクリレート、芳香族ポリエステル型(メタ)アクリレートなど)、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート(ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレートなど)、シリコーン(メタ)アクリレートなどが例示できる。これらの(メタ)アクリレートオリゴマー又は樹脂には、前記ポリマー成分における(メタ)アクリル系樹脂の項で例示された共重合性単量体が含まれていてもよい。これらの光硬化性化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
好ましい硬化性樹脂は、短時間で硬化できる光硬化性化合物、例えば、紫外線硬化性化合物(モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい樹脂など)、EB硬化性化合物である。特に、実用的に有利な硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂である。
また、本発明では、第1のハードコート層の耐擦傷性を向上させるため、硬化性樹脂は、2官能以上(例えば、2〜10官能程度)、好ましくは3官能以上(例えば、3〜8官能程度)の重合性基を有する硬化性樹脂、特に、多官能(メタ)アクリレート、例えば、3官能以上(特に4〜8官能)の(メタ)アクリレート(例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなど)を含むのが好ましい。
さらに、本発明では、ハードコート性などの点から、4官能以下(好ましくは2〜4官能、さらに好ましくは3〜4官能程度)の重合性基を有する硬化性樹脂と、5官能以上(例えば、5〜10官能、好ましくは5〜8官能、さらに好ましくは5〜7官能程度)の重合性基を有する硬化性樹脂とを組み合わせるのが好ましい。特に、2〜4官能(メタ)アクリレート[特に、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3〜4官能(メタ)アクリレート]と、5〜8官能(メタ)アクリレート[特に、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの5〜7官能(メタ)アクリレート]とを組み合わせてもよい。
4官能以下の重合性基を有する硬化性樹脂(例えば、2〜4官能(メタ)アクリレート)と、5官能以上の重合性基を有する硬化性樹脂(例えば、5〜10官能(メタ)アクリレート)との重量割合は、前者/後者=99/1〜1/99、好ましくは90/10〜10/90、さらに好ましくは70/30〜30/70(特に60/40〜40/60)程度である。本発明では、特定の官能基数の硬化性樹脂をこのような割合で組み合わせることにより、ハードコート性を向上できる。
硬化性樹脂の分子量としては、5000以下(例えば、100〜5000)、好ましくは2000以下(例えば、200〜2000)、さらに好ましくは1000以下(例えば、300〜1000)程度である。分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で測定した重量平均分子量であり、低分子は分子式から算出できる。
(熱可塑性樹脂)
硬化性組成物には、前記硬化性樹脂に加えて、柔軟性などの機械的特性を向上させるために、熱可塑性樹脂、例えば、前記硬化性樹脂の硬化反応に関与する反応性基(特にエチレン性不飽和結合などの重合性基)を有さない熱可塑性樹脂を配合してもよい。
このような熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂[ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体、AS樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体など]、(メタ)アクリル系樹脂[ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸イソボルニル共重合体など]、有機酸ビニルエステル系樹脂[エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール樹脂など]、ビニルエーテル系樹脂(ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルプロピルエーテル、ポリビニルt−ブチルエーテルなど)、ハロゲン含有樹脂[ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など]、オレフィン系樹脂[ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィンの単独重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、脂環式オレフィン系樹脂など]、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリC2−4アルキレンアリレート、C2−4アルキレンアリレート系コポリエステルなどの非晶性ポリエステルなど)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族ポリアミドなど)、熱可塑性ポリウレタン樹脂(ポリエステル型ウレタン系樹脂など)、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステルなど)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが例示できる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの熱可塑性樹脂のうち、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体などが汎用されるが、透明性及び耐熱性に優れるとともに、柔軟性などの機械的特性も向上できる点から、セルロース誘導体が好ましい。
セルロース誘導体には、セルロースエステル類、セルロースエーテル類、セルロースカーバメート類が含まれる。
セルロースエステル類としては、例えば、脂肪族有機酸エステル(セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート;セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのC2−6アシレートなど)、芳香族有機酸エステル(セルロースフタレート、セルロースベンゾエートなどのC7−12芳香族カルボン酸エステルなど)、無機酸エステル類(例えば、リン酸セルロース、硫酸セルロースなど)などが例示できる。セルロースエステル類は、酢酸・硝酸セルロースエステルなどの混合酸エステルであってもよい。
セルロースエーテル類としては、例えば、シアノエチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロース;メチルセルロース、エチルセルロースなどのC1−6アルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース又はその塩、ベンジルセルロース、アセチルアルキルセルロースなどが例示できる。セルロースカーバメート類としては、例えば、セルロースフェニルカーバメートなどが例示できる。
これらのセルロース誘導体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのセルロース誘導体のうち、セルロースエステル類、特に、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2−6アシレートが好ましい。なかでも、溶剤への溶解性が高く、塗工液の調製がし易い上に、少量の添加によって塗工液の粘度調節が容易にできるとともに、塗工液での微粒子の過度の凝集を抑制し、保存安定性を高めるため、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2−4アシレート(特に、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースアセテートC3−4アシレート)が好ましい。
熱可塑性樹脂の割合は、硬化性樹脂100重量部に対して、例えば、0.1〜30重量部、好ましくは0.1〜10重量部(例えば、0.3〜5重量部)、さらに好ましくは0.5〜3重量部(特に0.8〜2重量部)程度である。本発明では、熱可塑性樹脂の割合を調整することにより、耐擦傷性と、衝撃吸収性やクッション性などの機械的特性とのバランスを調整でき、この範囲にあると、両者のバランスに優れる。
(他の添加剤)
硬化性組成物は、硬化性樹脂の種類に応じて、硬化剤を含んでいてもよい。例えば、熱硬化性樹脂では、アミン類、多価カルボン酸類などの硬化剤を含んでいてもよく、光硬化性樹脂では光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、アセトフェノン類又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類などが例示できる。光硬化剤などの硬化剤の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜8重量部(特に1〜5重量部)程度であり、3〜8重量部程度であってもよい。
さらに、硬化性組成物は硬化促進剤を含んでいてもよい。光硬化性樹脂は、光硬化促進剤、例えば、第三級アミン類(ジアルキルアミノ安息香酸エステルなど)、ホスフィン系光重合促進剤などを含んでいてもよい。硬化促進剤の割合は、硬化性樹脂100重量部に対して、0.001〜50重量部、好ましくは0.005〜30重量部、さらに好ましくは0.01〜10重量部程度であってもよい。
硬化性組成物は、透明樹脂層の項で例示された慣用の添加剤や、微粒子(有機微粒子、無機微粒子など)を含んでいてもよい。特に、硬化性組成物は、生産性などの点から、後述する第2のハードコート層と同一の金属酸化物微粒子を含んでいてもよい。添加剤の割合は、例えば、第1のハードコート層全体に対して0.01〜10重量%(特に0.1〜5重量%)程度である。
(第1のハードコート層の特性)
第1のハードコート層の屈折率は、例えば1.4〜1.6、好ましくは1.45〜1.57、さらに好ましくは1.49〜1.54程度である。
第1のハードコート層の厚み(平均厚み)は、例えば50〜2000nm、好ましくは80〜1000nm(例えば100〜800nm)、さらに好ましくは200〜600nm(特に300〜500nm)程度である。第1のハードコート層が薄すぎると、透明積層フィルムの生産性などが低下し、厚すぎると、デバイスの薄肉化が困難となる上に、色差によるパターンの視認が発生する虞がある。
[高屈折率層]
前記第1のハードコート層の上には、さらに高屈折率層が積層されている。高屈折率層は、主として、インデックスマッチング機能を有しており、デバイスがパターン化された透明導電層を備えていても、色差によるパターンの視認を抑制するのに寄与する。高屈折率層としては、無機微粒子を含む透明な硬化性組成物を利用できる。
無機微粒子の粒径はナノメーターサイズであればよく、詳しくは、個数平均一次粒径が1〜100nm程度の範囲から選択でき、例えば、2〜50nm、好ましくは3〜40nm、さらに好ましくは5〜30nm(特に8〜20nm)程度である。無機微粒子の粒径が小さすぎると、光散乱が小さくなり、色差によるパターンの視認を抑制する効果が小さくなる虞があり、大きすぎると、光散乱が大きくなるとともに、透明性も低下する虞がある。
なお、本発明では、無機微粒子の平均粒径は、粒度分布計、例えば、動的光散乱法に基づき、粒度測定装置(大塚電子(株)製「PAR−III」)を用いて、慣用の方法で測定できる。
無機微粒子の形状は、特に限定されず、球状、楕円体状、多角体形(多角錘状、正方体状、直方体状など)、板状、棒状、不定形などが挙げられるが、等方的に光を散乱し、視認性を向上できる点から、略球状などの等方形状が好ましい。
無機微粒子を構成する無機化合物としては、例えば、金属単体、金属酸化物、屈折率を上昇できる効果の点から、金属酸化物が好ましい。
金属酸化物としては、例えば、周期表第4A族金属酸化物(例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウムなど)、第5A族金属酸化物(酸化バナジウムなど)、第6A族金属酸化物(酸化モリブデン、酸化タングステンなど)、第7A族金属酸化物(酸化マンガンなど)、第8族金属酸化物(酸化ニッケル、酸化鉄など)、第1B族金属酸化物(酸化銅など)、第2B族金属酸化物(酸化亜鉛など)、第3B族金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化インジウムなど)、第4B族金属酸化物(酸化ケイ素、酸化錫など)、第5B族金属酸化物(酸化アンチモンなど)などが挙げられる。これらの金属酸化物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの金属酸化物のうち、少ない割合で高屈折率層の屈折率を上昇でき、かつ添加量が増加してもヘイズの上昇を抑制できる点から、酸化チタンや酸化ジルコニウムなどの周期表第4A族金属酸化物が好ましく、酸化ジルコニウムが特に好ましい。
無機微粒子(特に酸化チタン及び酸化ジルコニウム)は、凝集を抑制する点から、表面処理されていない粒子が好ましい。
硬化性組成物は、樹脂成分として、第1のハードコート層で例示された硬化性樹脂をさらに含んでいてもよい。前記硬化性樹脂のうち、紫外線硬化性樹脂、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートに、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
無機微粒子の割合は、硬化性樹脂100重量部に対して、例えば、170〜700重量部、好ましくは200〜500重量部、さらに好ましくは233〜500重量部程度である。無機微粒子の割合が少なすぎると、屈折率を向上できず、多すぎると、機械的特性が低下する虞がある。
硬化性組成物は、第1のハードコート層の項で例示された硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、透明樹脂層の項で例示された慣用の添加剤を、第1のハードコート層及び透明樹脂層の項で記載された割合で含んでいてもよい。
高屈折率層の屈折率は、例えば1.6〜1.8、好ましくは1.65〜1.78、さらに好ましくは1.7〜1.76(特に1.72〜1.75)程度である。屈折率が小さすぎると、色差によるパターンの視認を抑制する効果が小さくなる虞があり、大きすぎると、干渉縞が発生し、透明性も低下する虞がある。
高屈折率層の厚み(平均厚み)は、例えば120〜2000μm、好ましくは130〜1000nm(例えば140〜500nm)、さらに好ましくは150〜300nm(特に180〜250nm)程度である。高屈折率層が薄すぎると、色差によるパターンの視認が発生し、厚すぎると、デバイスの薄肉化が困難となる上に、干渉縞が発生する虞があり、透明性が低下する虞がある。
第1のハードコート層及び高屈折率層の総厚みは300nm以上であってもよく、例えば300〜5000nm、好ましくは400〜4000nm、さらに好ましくは500〜3000nm(特に600〜1000nm)程度である。両層の総厚みが薄すぎると生産性が低下する虞がある。厚すぎると薄膜化の妨げとなる虞がある。
[透明導電層]
前記高屈折率層の上には、さらに透明導電層が積層されていてもよい。透明導電層としては、例えば、酸化インジウム−酸化錫系複合酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、InO2、SnO2、ZnOなどの金属酸化物や、金、銀、白金、パラジウムなどの金属で構成された層(特に、ITO膜などの金属酸化物層)で構成されている。このような透明導電層は、慣用の方法、例えば、スパッタリング、蒸着、化学的気相成長法など(通常、スパッタリング)により形成できる。
透明導電層は、タッチパネルの種類に応じて、通常、アナログ方式では面状に形成され、デジタル方式ではストライプ状に形成される。透明導電層を面状又はストライプ状に形成する方法としては、例えば、ガラス基板の全面に透明導電層を形成した後、エッチングにより面状、ストライプ状又は格子状(ダイヤ又は菱形形状)にパターン化する方法、予めパターン状に形成する方法などが挙げられる。本発明の透明積層フィルムは骨見え現象を有効に抑制できるため、パターン化された透明導電層が好ましい。
透明導電層の屈折率は、例えば1.8〜2.3、好ましくは1.85〜2.25、さらに好ましくは1.9〜2.2程度である。
透明導電層の厚み(平均厚み)は、例えば10〜60nm、好ましくは15〜50nm、さらに好ましくは20〜40nm程度である。
[透明接着層]
前記透明導電層の上には、さらに透明接着層が積層されていてもよい。透明接着層は、透明バインダー樹脂で形成されていてもよい。透明バインダー樹脂としては、例えば、慣用の接着性樹脂又は粘着性樹脂などが例示できる。
接着性樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタンなど)、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、多官能(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂、アミノ樹脂、セルロース誘導体など)などが挙げられる。これらの接着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
粘着性樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、ロジン系樹脂、石油樹脂、ゴム系粘着剤、変性ポリオレフィン、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。これらの粘着性樹脂は、架橋性基(イソシアネート基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、メチロール基、アルコキシシリル基など)を有していてもよい。これらの粘着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの透明バインダー樹脂のうち、光学特性及び取り扱い性に優れる点から、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤(特にアクリル系粘着剤)が好ましい。
アクリル系粘着剤としては、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアクリル酸C2−10アルキルエステルを主成分とするアクリル系共重合体で構成された粘着剤を使用できる。アクリル系共重合体の共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系単量体[例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなど]、重合性ニトリル化合物[例えば、(メタ)アクリロニトリルなど]、不飽和ジカルボン酸又はその誘導体(例えば、無水マレイン酸、イタコン酸など)、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)、芳香族ビニル類(例えば、スチレンなど)などが挙げられる。
シリコーン系粘着剤としては、例えば、シリコーンゴム成分[一官能のR3SiO1/2(式中、Rは、メチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基などを示す。以下、同じ)と四官能のSiO2からなるMQレジンなど]及びシリコーンレジン成分(二官能のR2SiO単独、又は二官能のR2SiOと一官能のR3SiO1/2とを組み合わせたオイル状又はガム状成分など)を有機溶媒に溶解した粘着剤などを使用できる。前記シリコーンゴム成分は架橋されていてもよい。
透明接着層は、前記透明樹脂層の項で例示された慣用の添加剤を、透明樹脂層の項で記載された割合で含んでいてもよい。
透明接着層の屈折率は、例えば1.3〜1.7、好ましくは1.4〜1.6、さらに好ましくは1.45〜1.55程度である。
透明接着層の厚み(平均厚み)は、例えば1〜100μm、好ましくは2〜80μm、さらに好ましくは3〜70μm(特に5〜50μm)程度である。
[第2の易接着層]
前記透明樹脂層の他方の面には、第2の易接着層が積層されている。第2の易接着層は、第1の易接着層で例示された樹脂成分で形成されており、第1の易接着層と異なっていてもよいが、通常、第1の易接着層と同一である。屈折率及び厚みも第1の易接着層と同一の範囲から選択でき、第1の易接着層と異なっていてもよいが、通常、第1の易接着層と同一である。
[第2のハードコート層]
前記第2の易接着層の上には、第2のハードコート層が積層されている。第2のハードコート層としても、硬化性樹脂を含む透明な硬化性組成物を利用できる。第2のハードコート層に含まれる硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂は、第1のハードコート層で例示された硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂を利用でき、好ましい種類及び添加量に関して第1のハードコート層と同様である。
他の添加剤についても、第1のハードコート層と同様の硬化剤、硬化促進剤及び慣用の添加剤を利用でき、添加量も第1のハードコート層と同様である。
特に、第2のハードコート層では、低屈折率層にAWM性を付与するため、金属酸化物微粒子を配合するのが好ましい。第2のハードコート層に高屈折率層よりも少量の金属酸化物微粒子を配合することにより、対流が発生し樹脂成分中の金属酸化物の分布が均一でなくなることにより樹脂成分が隆起して微小な凹凸構造を形成できる。このような凹凸構造はその形状を追従した低屈折率層の表面において、ウォーターマークの発生を抑制でき、かつギラツキの発生を抑制できる。さらに、この金属酸化物微粒子は、透明性及び耐擦傷性に優れる上に、低屈折率層との密着性も向上できる。
金属酸化物微粒子としては、前記高屈折率層で例示された金属酸化物微粒子を、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。前記金属酸化物微粒子のうち、アンチモン、錫、亜鉛を含む金属酸化物、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン含有酸化錫(アンチモンドープ酸化錫)、酸化錫、酸化亜鉛などが好ましく、アンチモン含有酸化錫、酸化アンチモン、酸化錫及び酸化亜鉛からなる群から選択された少なくとも一種で構成された微粒子(特にアンチモン含有酸化錫粒子(ATO粒子))が特に好ましい。
金属酸化物微粒子は、溶媒中に分散された分散液の形態であってもよい。溶媒としては、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなどの低級アルコールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチルなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの溶媒のうち、エタノールやイソプロパノールなどの低級アルコール(例えば、重量比で、エタノール/イソプロパノール=90/10〜50/50(特に80/20〜60/40)程度の混合溶媒)が汎用される。分散液中の金属酸化物微粒子の濃度は、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%程度である。金属酸化物微粒子の表面は、これらの溶媒に分散させるために、慣用の表面処理がされていてもよい。
金属酸化物微粒子の形状は、特に限定されず、球状、楕円体状、多角体形(多角錘状、正方体状、直方体状など)、板状、棒状、不定形などが挙げられるが、表面に均一な凹凸構造を形成する点から、略球状などの等方形状が好ましい。
金属酸化物微粒子の個数平均一次粒径は、1〜50nm、好ましくは1.5〜40nm(例えば2〜30nm)、さらに好ましくは3〜15nm(特に5〜10nm)程度である。一次粒径が小さすぎると、第2のハードコート層の表面に凹凸構造を形成するのが困難となり易く、大きすぎると、微小な凹凸構造を形成するのが困難となる上に、光の波長よりも大きくなり、ギラツキの発生原因となる虞がある。本発明では、粒径の大きな粒子を用いることなく、ナノメータサイズの粒子を用いて特定の条件で製造することにより、微小な凹凸構造を形成できる。
金属酸化物微粒子の割合は、硬化性樹脂100重量部に対して、例えば0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.15〜3重量部(特に0.2〜1重量部)程度である。微粒子の割合が少なすぎると、第2のハードコート層の表面に凹凸構造を形成するのが困難となり易く、多すぎると、微小な凹凸構造を形成するのが困難となる。本発明では、微粒子の割合が少なくても、AWM性を実現できる凹凸構造を形成できる。そのため、低ヘイズであり、ギラツキも抑制できる。
熱可塑性樹脂の割合は、金属酸化物微粒子100重量部に対して、例えば、100〜1000重量部、好ましくは150〜500重量部、さらに好ましくは200〜400重量部程度である。
第2のハードコート層の屈折率も、第1のハードコート層の屈折率と同一の範囲から選択できる。
第2のハードコート層の厚み(平均厚み)は、例えば100〜2000nm、好ましくは300〜1800nm、さらに好ましくは500〜1500nm(特に800〜1200nm)程度である。第2のハードコート層が薄すぎると、透明積層フィルムの生産性などが低下し、厚すぎると、デバイスの薄肉化が困難となる虞がある。
さらに、第1のハードコート層及び第2のハードコート層の総厚みは2μm以下であってもよく、例えば0.5〜2μm、好ましくは0.8〜1.8μm、さらに好ましくは1〜1.5μm程度であってもよい。総厚みが薄すぎると、透明積層フィルムの生産性などが低下し、厚すぎると、デバイスの薄肉化が困難となる上に、色差によるパターン視認が発生する虞がある。
[低屈折率層]
前記第2のハードコート層の上には、さらに低屈折率層が積層されている。低屈折率層は、表面での反射率を下げて、外部への出射光の透過率を向上でき、第2のハードコート層に金属酸化物微粒子を添加することにより、特定の凹凸構造を形成すると、ギラツキを抑制するとともに、AWM性も向上できる。
低屈折率層は、慣用の低屈折率層、例えば、特開2001−100006号公報、特開2008−58723号公報に記載の低屈折率層などが使用できる。低屈折率層は、通常、低屈折率樹脂や、第1のハードコート層で例示された硬化性樹脂とフッ素含有化合物又は低屈折率の無機フィラーとの組み合わせなどで構成されている。
低屈折率樹脂としては、例えば、メチルペンテン樹脂、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)樹脂、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)などのフッ素樹脂などが挙げられる。
また、低屈折率層は、通常、フッ素含有化合物や低屈折率の無機フィラーを含有するのが好ましく、フッ素含有化合物や低屈折率の無機フィラーを用いると、低屈折率層の屈折率を所望に応じて低減できる。
前記フッ素含有化合物としては、フッ素原子と、熱や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)などにより反応する官能基(架橋性基又は重合性基などの硬化性基など)とを有し、熱や活性エネルギー線などにより硬化又は架橋してフッ素含有樹脂(特に硬化又は架橋樹脂)を形成可能なフッ素含有樹脂前駆体が挙げられる。
このようなフッ素含有樹脂前駆体としては、例えば、フッ素原子含有熱硬化性化合物又は樹脂[フッ素原子とともに、反応性基(エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基など)、重合性基(ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基など)などを有する低分子量化合物]、活性光線(紫外線など)により硬化可能なフッ素原子含有光硬化性化合物又は樹脂(光硬化性フッ素含有モノマー又はオリゴマーなどの紫外線硬化性化合物など)などが例示できる。
前記熱硬化性化合物又は樹脂としては、例えば、少なくともフッ素含有モノマーを用いて得られる低分子量樹脂、例えば、構成モノマーとしてのポリオール成分の一部又は全部に代えてフッ素含有ポリオール(特にジオール)を用いて得られるエポキシ系フッ素含有樹脂;同様に、ポリオール及び/又はポリカルボン酸成分の一部又は全部に代えて、フッ素原子含有ポリオール及び/又はフッ素原子含有ポリカルボン酸成分を用いて得られる不飽和ポリエステル系フッ素含有樹脂;ポリオール及び/又はポリイソシアネート成分の一部又は全部に代えて、フッ素原子含有ポリオール及び/又はポリイソシアネート成分を用いて得られるウレタン系フッ素含有樹脂などが例示できる。これらの熱硬化性化合物又は樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
前記光硬化性化合物には、例えば、単量体、オリゴマー(又は樹脂、特に低分子量樹脂)が含まれ、単量体としては、例えば、前記第1のハードコート層の項で例示の単官能性単量体及び多官能性単量体に対応するフッ素原子含有単量体[(メタ)アクリル酸のフッ化アルキルエステルなどのフッ素原子含有(メタ)アクリル系単量体、フルオロオレフィン類などのビニル系単量体などの単官能性単量体;1−フルオロ−1,2−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチレンなどのフッ化アルキレングリコールのジ(メタ)アクリレートなど]が例示できる。また、オリゴマー又は樹脂としては、前記第1のハードコート層の項で例示のオリゴマー又は樹脂に対応するフッ素原子含有オリゴマー又は樹脂などが使用できる。これらの光硬化性化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
低屈折率層中におけるフッ素含有化合物の割合は、例えば、低屈折率層全体に対して1重量%以上であってもよく、例えば、5〜90重量%程度である。
低屈折率の無機フィラーとしては、例えば、前記特開2001−100006号公報に記載のフィラーなどが使用できるが、シリカやフッ化マグネシウムなどの低屈折率のフィラー、特にシリカが好ましい。シリカは、特開2001−233611号公報、特開2003−192994号公報などに記載されている中空シリカであってもよい。中空シリカは、透過率の向上効果が大きいだけでなく、AWM性の向上効果も優れている。
無機フィラーの個数平均一次粒径は100nm以下、好ましくは80nm以下(例えば、10〜80nm)、さらに好ましくは20〜70nm程度である。
低屈折率層中における低屈折率の無機フィラーの割合は、例えば、低屈折率層全体に対して1重量%以上であってもよく、例えば、5〜90重量%程度である。また、低屈折率の無機フィラーは、カップリング剤(チタンカップリング剤、シランカップリング剤)により表面改質されていてもよい。さらに、低屈折率層は、塗膜強度を向上させるために、他の無機フィラーを含んでいてもよい。
低屈折率層は、AWM性を向上できる点から、表面に微細な凹凸構造を有しているのが好ましい。低屈折率層の凹凸構造は、通常、前記第2のハードコート層の凹凸構造を追従することにより形成される。
詳しくは、低屈折率層は、表面に比較的小さい凹凸構造を有しているのが好ましく、測定エリア10μm×10μmで算出した算術平均粗さRa1が0.7nm以上5nm未満(例えば、0.75nm以上2nm未満)であり、特に1.5nm未満の微小な凹凸構造であっても、AWM性を発現でき、好ましくは0.8nm以上1.5nm未満、さらに好ましくは0.85〜1.3nm(特に0.88〜1.2nm)程度であってもよい。Ra1が小さすぎると、AWM性が低下し、大きすぎると、高精細ディスプレイでギラツキが発生し易い。
低屈折率層は、前記微細な凹凸構造に加えて、より大きな凹凸構造(うねり)も有しており、測定エリア500μm×500μmで算出した算術平均粗さRa2が8〜50nm(例えば10〜45nm)であり、特に30nm以下の微小な凹凸構造であっても、AWM性を発現でき、好ましくは9〜30nm、さらに好ましくは10〜20nm程度であってもよい。Ra2が小さすぎると、AWM性が低下し、大きすぎると、高精細ディスプレイでギラツキが発生し易い。微細な凹凸構造である前記Ra1に加えて、うねり構造であるRa2をこのような範囲で有することにより、AWM性とギラツキの抑制とを両立できる。
凹凸の平均間隔Smは、例えば10〜300μmであり、好ましくは20〜250μm、さらに好ましくは50〜200μm程度である。Smが小さすぎると、高精細ディスプレイの画素のサイズに近似するため、干渉してギラツキが発生する虞がある。一方、Smが大きすぎると、AWM性が低下する上に、ギラツキも発生する虞がある。
凹凸構造の算術平均傾斜Δaは、例えば0.01〜1°、好ましくは0.02〜0.5°、さらに好ましくは0.03〜0.10°程度である。Δaが大きすぎると、高精細ディスプレイでギラツキが発生し易く、小さすぎると、AWM性が低下する虞がある。
凹凸構造の十点平均粗さRzは10〜200nm、好ましくは30〜150nm、さらに好ましくは50〜100nm程度である。Rzが小さすぎると、AWM性が低下し、大きすぎると、高精細ディスプレイでギラツキが発生し易い。
なお、本発明では、これらのRa,Sm,Δa及びRzは、JIS B0601に準拠した方法で測定できる。
低屈折率層は、表面の濡れ性にも優れており、水接触角が80°以下(例えば、65〜80°)であり、例えば、69〜80°、好ましくは70〜75°、さらに好ましくは71〜74°程度である。水接触角が低すぎると、滑り性が低下するためか、耐擦傷性が低下する虞もある。なお、本発明では、水接触角は、自動・動的接触角計を用いて測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
低屈折率層の屈折率は、例えば、1.2〜1.5、好ましくは1.25〜1.45、さらに好ましくは1.3〜1.4程度である。
低屈折率層の厚み(平均厚み)は、例えば10〜200nm、好ましくは30〜180nm、さらに好ましくは50〜150nm(特に80〜120nm)程度である。
[透明積層フィルム及びその製造方法]
本発明の透明積層フィルムは、光学特性に優れており、下記式で表される透明導電層の有無による反射色差ΔEが10以下であってもよく、例えば0.1〜10、好ましくは0.5〜9、さらに好ましくは1〜5(特に2〜4)程度である。ΔEが高すぎると、色差によるパターンの視認を抑制する効果が小さくなる虞がある。
ΔE=((La *−Lb *)2+(aa *−ab *)2+(ba *−bb *)2)1/2
(式中、La *,aa *,ba *は透明導電層積層部分の10°反射L*,a*,b*であり、Lb *,ab *,bb *は透明導電層非積層部分の10°反射L*,a*,b*である)。
なお、La *,Lb *,aa *,ba *、ab *,bb *は、積分球反射強度測定装置((株)日立ハイテクノロジーズ製「U−3300」)を用いて測定できる。
本発明の透明積層フィルム(透明導電層を有さない積層フィルム)は、厚み100μmにおいて、JIS K7361に準拠した全光線透過率が80%以上(特に90%以上)であってもよく、例えば80〜100%、好ましくは85〜99%、さらに好ましくは90〜95%程度である。
本発明の透明積層フィルム(透明導電層を有さない積層フィルム)は、ヘイズも小さく、厚み100μmにおいて、JIS K7136に準拠したヘイズ率が、例えば0.05〜1%、好ましくは0.2〜0.9%、さらに好ましくは0.3〜0.8%(特に0.5〜0.7%)程度である。本発明では、このような低いヘイズ値を有することにより、高精細ディスプレイでもギラツキを抑制でき、視認性を向上できる。
本発明の透明積層フィルムは、さらに他の光学要素(例えば、ガラス基板、偏光板、位相差板、導光板などの光路内に配設される種々の光学要素)と組み合わせてもよい。
本発明の透明積層フィルムは、例えば、易接着層を有する透明樹脂層の上に各層を積層することにより積層することにより製造できる。
詳しくは、第1及び第2のハードコート層は、透明樹脂層の一方の面(易接着層の上)に、硬化性組成物を塗布する塗布工程、塗布した硬化性組成物を乾燥後、活性エネルギー線を照射して硬化する硬化工程を経て製造できる。
塗布工程において、硬化性組成物は、通常、硬化性樹脂と熱可塑性樹脂と金属酸化物微粒子と溶媒とを含む混合液(特に均一溶液などの液状組成物)で構成されている。好ましい態様では、前記混合液として、光硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂と、金属酸化物微粒子と、光重合開始剤と、前記光硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂を可溶な溶媒とを含む組成物が使用される。
溶媒は、前記硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の種類及び溶解性に応じて選択でき、少なくとも固形分(硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、反応開始剤、その他添加剤)を均一に溶解できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)など)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などが例示できる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、混合溶媒であってもよい。これらの溶媒のうち、メチルエチルケトンやシクロヘキサノンなどのケトン類、ブタノールや1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコール類が好ましく、これらを混合してもよい。例えば、前記ケトン類と前記アルコール類とを、前者/後者=90/10〜10/90、好ましくは80/20〜40/60、さらに好ましくは70/30〜50/50程度の割合(重量比)で混合してもよい。さらに、メチルエチルケトンなどのアルカンケトン類と、シクロヘキサノンなどのシクロアルカンケトン類とを、前者/後者=95/5〜50/50(特に90/10〜70/30)程度の割合(重量比)で混合してもよい。また、ブタノールなどのアルカノールと、1−メトキシ−2−プロパノールなどのセロソルブ類とを、前者/後者=5/95〜50/50(特に10/90〜30/70)程度の割合(重量比)で混合してもよい。本発明では、溶媒を適宜組み合わせることにより、金属酸化物微粒子の凝集の程度を制御してもよい。本発明では、特に、このような割合で溶媒を組み合わせることにより、ハードコート層の表面に、微細な凹凸構造とうねり構造とを有する表面構造を形成できる。
混合液中の溶質(硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、金属酸化物微粒子、反応開始剤、その他添加剤)の濃度は、流延性やコーティング性などを損なわない範囲で選択でき、例えば、1〜80重量%、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは15〜40重量%(特に20〜40重量%)程度である。
塗布方法としては、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター法、ディップ法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、バーコーター法やグラビアコーター法などが汎用される。なお、必要であれば、塗布液は複数回に亘り塗布してもよい。
塗布工程では、さらに前記混合液を流延又は塗布した後、溶媒を蒸発させる。溶媒の蒸発は、通常、例えば、溶媒の沸点に応じて、40〜150℃、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃程度の温度で行ってもよい。
硬化工程では、塗布した硬化性組成物を、活性光線(紫外線、電子線など)や熱などにより最終的に硬化し、ハードコート層を形成する。硬化性樹脂の硬化は、硬化性樹脂の種類に応じて、加熱、光照射などを組合せてもよい。
加熱温度は、適当な範囲、例えば、50〜150℃程度から選択できる。光照射は、光硬化成分などの種類に応じて選択でき、通常、紫外線、電子線などが利用できる。汎用的な露光源は、通常、紫外線照射装置である。
光源としては、例えば、紫外線の場合は、Deep UV ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなどの光源)などを用いることができる。照射光量(照射エネルギー)は、塗膜の厚みにより異なり10〜10000mJ/cm2(例えば、50〜1000mJ/cm2)程度の範囲から選択でき、例えば、10〜5000mJ/cm2、好ましくは30〜3000mJ/cm2、さらに好ましくは50〜1000mJ/cm2程度であってもよい。
なお、光照射は、必要であれば、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。特に、光硬化を利用した場合、硬化性樹脂を硬化させることにより直ちに固定化できるだけでなく、透明樹脂層の内部から熱によりオリゴマーなどの低分子成分が析出することも抑制できる。
第1及び第2のハードコート層の上に、さらに高屈折率層や低屈折率層を形成する場合も、通常、前記第1及び第2のハードコート層と同様の方法で、塗工液を塗布又は流延した後、活性光線や熱などを用いて硬化することにより形成できる。易接着層や透明接着層の形成方法も、慣用の方法を利用でき、前記第1及び第2のハードコート層と同様の方法で、塗工液を塗布又は流延する方法などを利用できる。
本発明では、層間の密着性を向上させるために、各層を表面処理に供してもよい。表面処理としては、慣用の表面処理、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾンや紫外線照射処理などが挙げられる。
透明導電層は、金属又は金属化合物を含む薄膜を形成可能な方法であれば、特に限定されず、慣用の成膜方法を利用して形成できる。成膜方法としては、例えば、物理的気相法(PVD)[例えば、真空蒸着法、フラッシュ蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法(例えば、HCD法、エレクトロンビームRF法、アーク放電法など)、スパッタリング法(例えば、直流放電法、高周波(RF)放電法、マグネトロン法など)、分子線エピタキシー法、レーザーアブレーション法など]、化学的気相法(CVD)[例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、MOCVD法(有機金属気相成長法)、光CVD法など]、イオンビームミキシング法、イオン注入法などが例示できる。これらの成膜方法のうち、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの物理的気相法、化学的気相法などが汎用され、スパッタリング法、プラズマCVD法(特にスパッタリング法)が好ましい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で得られた透明積層フィルムを以下の項目で評価した。
[各層の平均厚み]
各層の平均厚みは、瞬間マルチ測光システム(大塚電子(株)製「MCPD−3700」を用いて測定した。
[屈折率]
JIS K7142に準拠して、屈折率計(メトリコン社製「Metriconモデル2010プリズムカプラー」を用いて、407nm、633nm(He−Neレーザー)、826nmの条件で各層の屈折率を測定した。
[干渉縞]
透明積層フィルムの干渉縞は、黒色のアクリル板上に高屈折率層側(第1のハードコート層側)を上にして重ね、三波長蛍光灯(ツインバード工業(株)製「LK−H451」)で照射し、以下の基準で評価した。
◎:干渉縞が見えない
○:干渉縞が僅かに見える
×:干渉縞が明確に見える。
[全光線透過率及びヘイズ]
ヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH−5000W」)を用いて、JIS K7361に準拠して、全光線透過率を測定し、JIS K7136に準拠して、ヘイズを測定した。
[反射色差ΔE]
反射色差ΔEは、積分球反射強度測定装置((株)日立ハイテクノロジーズ製「U−3300」)を用いて測定したLab値に基づいて算出した。
[反射率]
透明積層フィルムの高屈折率層側に黒フィルムを貼り合わせ、積分球反射強度測定装置((株)日立ハイテクノロジーズ製「U−3300」)を用いて、積分反射率(視感度換算)を測定した。
[ギラツキの評価]
表示面におけるギラツキの判定は、厚み3mmの透明ガラス板に実施例及び比較例で得られた透明積層フィルムを、透明積層フィルムの粘着層を介して貼り、5インチサイズのLCDモニター(画素数1920×1080、解像度440ppi)上に、透明積層フィルム面とモニターとが対向するように載置し、モニターを緑表示としてモニター正面から目視で観察したときのギラツキを以下の基準で評価した。
◎:ギラツキが感じられない
○:ギラツキが僅かに感じられる
△:ギラツキが感じられる
×:強いギラツキが感じられる。
[アンチウォーターマーク(AWM)性]
実施例及び比較例で得られた透明積層フィルムの粘着層を介して0.7mmの透明ガラス板を前記透明積層フィルムに貼り合わせた。次に、外周に1cm幅で0.2mmのギャップを設けた10インチサイズ偏光板を前記透明積層フィルムの低屈折率層(第2のハードコート層)と対向させて重ね合わせた。最後に、前記透明ガラス板の中心部を20N/cm2の荷重で10秒間押し、離して10秒後の状態を以下の基準で評価した。
◎:透明積層フィルムと透明ガラス板とが密着していない
○:透明積層フィルムと透明ガラス板とが僅かな部分で密着している
×:両者の全体が密着している。
[低屈折率層側表面の水接触角]
自動・動的接触角計(協和界面科学(株)製「型式DCA−UZ」)を使用し、低屈折率層側表面に対し、約3μLの各液の接触角を5点測定して平均した。
[算術平均粗さRa1]
JIS B0601に準拠して、実施例及び比較例で得られた透明積層フィルムの粘着層側から、透明積層フィルムの低屈折率層側(第2のハードコート層側)の表面(凹凸面)の算術平均粗さを以下の手順で測定した。すなわち、走査プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用い、プローブとしてシリコンカンチレバーを使用し、測定モードをTappingモードとし、測定エリアを10μm×10μmとして画像の取り込みを行った。得られた画像について、前記走査プローブ顕微鏡に付属の解析ソフトウェアを用いて、うねりを除去するための加増処理としてFlaatten処理(0次)を1回、及びPlanefit処理(XY)を1回行った後、算術平均粗さRa1を算出した。
[算術平均粗さRa2]
JIS B0601に準拠して、非接触表面形状測定システム((株)菱化システム製「VertScan2.0」)を用いて、測定エリアを500μm×500μmとして算術平均粗さRa2を測定した。
[塗工液]
(第1及び第2のハードコート層塗工液の製造例1:HC−1a又はHC−2a)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセル・オルネクス(株)製「DPHA」)50重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(ダイセル・オルネクス(株)製「PETRA」)50重量部、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマン社製「CAP」)1.2重量部を、メチルエチルケトン(MEK)131重量部、1−メトキシ−2−プロパノール(MMPG)65重量部、1−ブタノール(BuOH)22重量部及びシクロヘキサノン24重量部の混合溶媒に溶解した。この溶液に、光重合開始剤(BASFジャパン(株)製「イルガキュア184」)2重量部及び光重合開始剤(BASFジャパン(株)製「イルガキュア907」)1重量部を加えて溶解した。さらに、この溶液に、ATO粒子分散液(日揮触媒化成(株)製「ELCOM SH−1212ATV」、一次粒径8nm、20重量%のアルコール(エタノール/イソプロパノール=80/20(重量比)の混合溶媒)分散液)1.5重量部を加えて、1時間攪拌し、ハードコート層塗工液:HC−1a(又はHC−2a)を調製した。
(第1及び第2のハードコート層塗工液の製造例2:HC−1b又はHC−2b)
ATO粒子分散液の添加量を0.5重量部に変更する以外は製造例1と同様にして、ハードコート層塗工液:HC−1b(又はHC−2b)を調製した。
(第1及び第2のハードコート層塗工液の製造例3:HC−1c又はHC−2c)
ATO粒子分散液1.5重量部の代わりにアクリル粒子分散液(積水化学工業(株)製「K−001」、固形分20重量%)1.5重量部を用いる以外は製造例1と同様にして、ハードコート層塗工液:HC−1c(又はHC−2c)を調製した。
(第1及び第2のハードコート層塗工液の製造例4:HC−1d又はHC−2d)
ATO粒子分散液の添加量を20重量部に変更する以外は製造例1と同様にして、ハードコート層塗工液:HC−1d(又はHC−2d)を調製した。
(高屈折率層塗工液:IM層)
光硬化性樹脂含有コート剤(東洋インキ(株)製「LiodurasTYZ」、ナノメータサイズの酸化ジルコニウム微粒子含有)
(低屈折率層塗工液:LR層)
市販の中空シリカ微粒子分散液(日揮触媒化成(株)製、「ELCOM P−5063」、固形分3重量%)を用いた。
なお、以下の比較例及び実施例において、コート液の濃度を調整することにより高屈折率層及びハードコート層の厚みを調整した。
比較例1
透明樹脂層として、PETフィルム(三菱樹脂(株)製、厚み100nm、屈折率1.61の易接着層を両面に備えたPETフィルム、厚み75μm)を用い、このフィルムの一方の面に、HC−1a層塗工液をバーコーター♯8を用いて塗工した後、80℃で1分間乾燥した。塗工フィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:500mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行い、HC−1a層を形成した。得られた透明積層フィルムにおけるHC−1a層の厚みは1.0μmであった。
さらに、PETフィルムの他方の面に、HC−2a層塗工液をバーコーター♯8を用いて塗工した後、80℃で1分間乾燥した。塗工フィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:500mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行い、HC−2a層を形成し、透明積層フィルムを得た。得られた透明積層フィルムにおけるHC−2a層の厚みは1.0μmであった。
比較例2
比較例1で得られた透明積層フィルムのHC−2a層の上に、LR層塗工液をバーコーター♯4を用いて塗工し、120℃で1分間乾燥した。その後、塗工フィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:500mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行い、低屈折率層を形成した。得られた透明積層フィルムにおけるLR層の厚みは100nmであった。
比較例3
透明樹脂層として、PETフィルム(三菱樹脂(株)製、易接着層を備えたPETフィルム、厚み75μm)を用い、このフィルムの一方の面に、IM層塗工液をバーコーター♯5を用いて塗工した後、80℃で2分間乾燥した。塗工フィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:500mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行い、IM層を形成し、透明積層フィルムを得た。得られた透明積層フィルムにおけるIM層の厚みは0.9μmであった。
実施例1
バーコーター♯8を用いてHC−1a層の厚みを0.1μmとする以外は比較例2と同様にして透明積層フィルムを得た。得られた透明積層フィルムのHC−1a層の上に、IM層塗工液をバーコーター♯5を用いて塗工した後、80℃で2分間乾燥した。塗工フィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:500mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行い、IM層を形成し、透明積層フィルムを得た。得られた透明積層フィルムにおけるIM層の厚みは0.6μmであった。
実施例2
HC−1a層の厚みを0.4μmとし、かつIM層の厚みを0.2μmとする以外は実施例1と同様にして透明積層フィルムを得た。
実施例3
HC−1a層の厚みを3.0μmとし、かつIM層の厚みを0.4μmとする以外は実施例1と同様にして透明積層フィルムを得た。
実施例4
HC−1a層の厚みを3.0μmとし、かつIM層の厚みを1.0μmとする以外は実施例1と同様にして透明積層フィルムを得た。
実施例5
HC−1a層の厚みを3.0μmとし、かつIM層の厚みを0.4μm、屈折率を1.7とする以外は実施例1と同様にして透明積層フィルムを得た。
実施例6
IM層の厚みを0.9μm、屈折率を1.65とする以外は実施例1と同様にして透明積層フィルムを得た。
比較例4
透明樹脂層として、PETフィルム(三菱樹脂(株)製、易接着層を備えたPETフィルム、厚み75μm)を用い、このフィルムの一方の面に、HC−1b層塗工液をバーコーター♯8を用いて塗工した後、80℃で1分間乾燥した。塗工フィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:500mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行い、HC−1b層を形成した。得られた透明積層フィルムにおけるHC−1a層の厚みは1.0μmであった。
さらに、PETフィルムの他方の面に、HC−2b層塗工液をバーコーター♯8を用いて塗工した後、80℃で1分間乾燥した。塗工フィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:500mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行い、HC−2b層を形成し、透明積層フィルムを得た。得られた透明積層フィルムにおけるHC−2b層の厚みは1.0μmであった。
比較例5
HC−1b層及びHC−2b層の代わりにHC−1c層及びHC−2c層を用いる以外は比較例4と同様にして透明積層フィルムを得た。
比較例6
比較例5で得られた透明積層フィルムのHC−2c層の上に、LR層塗工液をバーコーター♯4を用いて塗工し、120℃で1分間乾燥した。その後、塗工フィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:500mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行い、低屈折率層を形成した。得られた透明積層フィルムにおけるLR層の厚みは100nmであった。
比較例7
透明樹脂層として、PETフィルム(三菱樹脂(株)製、易接着層を備えたPETフィルム、厚み75μm)を用い、このフィルムの一方の面に、HC−1d層塗工液をバーコーター♯8を用いて塗工した後、80℃で1分間乾燥した。塗工フィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:500mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行い、HC−1d層を形成した。得られた透明積層フィルムにおけるHC−1a層の厚みは1.0μmであった。
さらに、PETフィルムの他方の面に、HC−2d層塗工液をバーコーター♯8を用いて塗工した後、80℃で1分間乾燥した。塗工フィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:500mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行い、HC−2d層を形成し、透明積層フィルムを得た。得られた透明積層フィルムにおけるHC−2d層の厚みは1.0μmであった。
得られた透明積層フィルムのHC−2d層の上に、LR層塗工液をバーコーター♯4を用いて塗工し、120℃で1分間乾燥した。その後、塗工フィルムを紫外線照射装置(ウシオ電機(株)製、高圧水銀ランプ、紫外線照射量:500mJ/cm2)に通して、紫外線硬化処理を行い、低屈折率層を形成した。得られた透明積層フィルムにおけるLR層の厚みは100nmであった。
比較例及び実施例で得られた透明積層フィルムの全光線透過率及びヘイズを測定した後、比較例及び実施例で得られた透明積層フィルムのHC−1a〜1d層又はIM層の上に、InO2及びSnO2の複合酸化物物(ITO)をスパッタリング処理して透明導電層を形成した後、1Nの塩酸に浸漬することによりITO膜を除去して透明導電層が形成されていない領域を作成した。さらに、ITO膜の上に、粘着層用塗工液(日東電工(株)製「LUCIACS CS9621T」)を貼り付け、厚み25μmの透明接着層を形成した。比較例1〜3及び実施例で得られた透明積層フィルムの干渉縞及び反射色差ΔEを測定した。得られた結果を表1に示す。さらに、比較例4〜7及び実施例で得られた透明積層フィルムの反射率、ギラツキ、AWM性、水接触角、表面粗さRaを測定した。得られた結果を表2に示す。
表1の結果から明らかなように、比較例に比べて、実施例の透明積層フィルムは、透明性が高い上に、干渉縞が発生せず、かつ色差ΔEも小さい。
表2の結果から明らかなように、比較例に比べて、実施例の透明積層フィルムは、低ヘイズであり、ギラツキが小さく、AWM性も優れている。