JP6347638B2 - 防汚防曇性部材の製造方法 - Google Patents
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Description
図5A及びBは、従来の防曇性部材の理想的な状態について示したものである。図5Aに示すように、従来の防曇性部材30は、平面視において、親水性の高いスルホ基32が密に配置されており、基板のガラス31の表面はほとんど外部に露出していない。基材のガラス(SiO2)の表面はほとんど外部に露出しないことにより、図5Bに示すように汚染物質33(水道水中のミネラル分や洗髪剤に含まれるシリコーンオイル等)が基材(ガラス31)の表面に近づくことができない。
なお、図5A及びB並びに図6A及びBのスルホ基32は、便宜的に「SO3H」と表記したが、アルカリ金属塩の状態になっていてもよい。
これにより、親水性の高いスルホ基を有する成分が基材表面における結露を防止するとともに、マトリクス成分が存在することによって、スルホ基を有する成分同士の間に侵入した汚染物質が基材表面に付着して水垢を形成してしまうのを防ぐことができる。このように、本発明により、高い防曇性と防汚性を兼ね備えた防汚防曇性部材を提供できる。また、スルホ基を有する成分がコーティング部の内部で偏析せずに均一に分布されることから、製造時におけるコーティング部の白濁を防止できる。
これにより、上記のように高い防曇性と防汚性を兼ね備えた防汚防曇性部材を製造することができる。また、基材上のコーティング部の形成においてスルホ基を有する物質が偏析せず、相分離が起きないので、基材表面が白濁していない品質の高い防汚防曇性部材を安定して製造することができる。
未硬化膜形成工程において、溶液を、スプレー塗装のように溶液をミスト化する方法で塗装した場合、溶液の比表面積が非常に大きくなる。溶液の比表面積が大きくなると、溶媒が急激に揮発したり、溶液が大気中の水分を吸収したりすることで、UV硬化型樹脂とスルホ基を有する物質のバランスが崩れて未硬化膜中で成分の偏析が起こり、塗膜が白濁する。これに対し、マイクロディスペンサ、スリットコーター又はディップコーターを用いた塗装では、通常のスプレー塗装と比べ、吐出する液滴のサイズが大きいため、塗装時の溶液の比表面積が小さく、上記の問題が生じ難い。従って、この発明により、基材表面が白濁していない品質の高い防汚防曇性部材を安定して製造することができる。
図1Aは、本実施形態に係る防汚防曇性部材1の平面を模式的に示した図であり、図1Bは、本実施形態に係る防汚防曇性部材1の断面を模式的に示した図である。
図1Bに示すように、防汚防曇性部材1は、基材10と、基材10上に形成されたコーティング部20と、を備える。
マトリクス成分21は、アクリル樹脂を含む。マトリクス成分21の含む樹脂は、疎水性の高いアクリル樹脂である。また、マトリクス成分21の含む樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルを重合したアクリル樹脂であることが好ましい。マトリクス成分21の含む樹脂が、(メタ)アクリル酸エステルを重合したアクリル樹脂であることでコーティング部20の防汚性がより向上し、(メタ)アクリル酸エステルの一部が後述するスルホ基を有する成分22と結合すれば防曇性能の持続性が向上する。
スルホ基を有する成分22は、マトリクス成分21と反応して結合していてもよい。
防汚防曇性部材1の製造方法は、未硬化膜形成工程S1と、脱溶媒工程S2と、予備硬化工程S3と、本硬化工程S4と、を有する。
また、UV硬化型樹脂21a及びスルホ基を有する物質22aを両方とも良好に分散する観点から、分散媒23aとしては、複数の、SP値が10.2〜14.5である溶剤からなる分散媒を用いることが好ましい。
なお、これら溶液をミスト化しない塗装方法は、異物の無い高品位な塗装を実現するために必須となるクリーンルーム内で用いる場合にも、環境を汚染せず、また、換気回数を減らすことができ経済的である。
なお、マイクロディスペンサを用いて、基材10に塗着させた塗料の単位面積当たりの質量(g/cm2)は、単位時間当たりの吐出量(g/sec)を、搬送速度(cm/sec)と塗装幅(cm)で割ることで求めることができる。
工程S2で加熱装置を使用する場合、使用される加熱装置は特に限定されないが、溶媒揮発を均一に且つ迅速に行うため、強制対流装置を備えることが好ましい。溶媒揮発を均一に行うことで、未硬化膜中の成分の偏析がおきにくくなる。
工程S3では、未硬化膜に短時間UVを照射することで、UV硬化型樹脂21aを若干硬化させることでスルホ基を有する物質22aを未硬化膜中で拘束し、スルホ基を有する物質22aが偏析してしまうのを防ぐ。
工程S4では、工程S3で予備硬化された未硬化膜にUVを照射して、UV硬化型樹脂21a完全に硬化させる。
本実施形態では、防汚防曇性部材1の基材10上に形成されたコーティング部20が、疎水性が高いことから汚染物質と反応し難いマトリクス成分21と、親水性の高いスルホ基を有する成分22とを含んで構成され、スルホ基を有する成分22が、コーティング部20の内部に均一に分布し且つ少なくとも一部がコーティング部20の表面に露出されるものとした。
これにより、親水性の高いスルホ基を有する成分22が基材10表面における結露を防止するとともに、マトリクス成分21が存在することによって、スルホ基を有する成分22同士の間に侵入した汚染物質33が基材10表面に付着して水垢を形成してしまうのを防ぐことができる。このように、高い防曇性と防汚性を兼ね備えた防汚防曇性部材1を提供できる。また、スルホ基を有する成分22がコーティング部20の内部で偏析せずに均一に分布されることから、製造時におけるコーティング部20の白濁を防止できる。
これにより、上記のように高い防曇性と防汚性を兼ね備えた防汚防曇性部材1を製造することができる。また、基材10上のコーティング部20の形成においてスルホ基を有する物質22aが偏析せず、相分離が起きないので、基材10表面が白濁していない品質の高い防汚防曇性部材1を安定して製造することができる。
フォルシードNo.140C−P(アクリル系UV硬化塗料、中国塗料株式会社製)50部を、エタノール、2‐メトキシエタノール、1‐プロパノール及び2‐プロパノールが質量比6:4:1:1で混合された溶媒50部で希釈した溶液を、マイクロディスペンサ(Aero Jet、武蔵エンジニアリング株式会社製)を用いて、塗料溶液の塗着量が25g/m2となるよう、ポリカーボネート板に塗布した。続いて、塗布した未硬化膜を、60℃で3分間乾燥して、UV硬化させることで実施例1の部材を得た(硬化膜厚4μm)。UV硬化では、高圧水銀ランプを用いて、塗膜に瞬間的に(0.1秒間)UV(波長365nmにおける照度:600mW/cm2)を照射する工程と、予備硬化した塗膜に継続して(2秒間)UV(波長365nmにおける照度:600mW/cm2)を照射する工程と、を連続して行った。なお、フォルシードNo.140C−Pは、メタノール及び1−メトキシ−2−プロパノールを含有する。
浴室用鏡(表面:ソーダガラス)を、酸化セリウムで研磨し、純水でよく洗浄したのち、クリーンエアで乾燥させた。シランカップリング剤KBM5103(信越化学工業株式会社製)1部をプロピレングリコールモノメチルエーテル99部で希釈し、5%塩酸0.3部を加え、1時間攪拌した。これをマイクロディスペンサ(Aero Jet、武蔵エンジニアリング株式会社製)で溶液の塗着量が10g/m2となるよう鏡に塗布し、140℃で10分加熱硬化した。この鏡を冷却した後、その表面に、KPP#04(アクリル系UV硬化塗料、公進ケミカル株式会社製)50部をエタノール、2‐プロパノール及び2‐メトキシエタノールが質量比6:2:2で混合された溶媒50部で希釈した溶液を、マイクロディスペンサ(Aero Jet、武蔵エンジニアリング株式会社製)を用いて、25g/m2となるよう、塗布した。続いて、塗布した未硬化膜を60℃で5分間乾燥して、UV硬化させることで実施例2の部材を得た(硬化膜厚5μm)。UV硬化では実施例1と同様に、高圧水銀ランプを用いて、塗膜に瞬間的に(0.2秒間)UV(波長365nmにおける照度:800mW/cm2)を照射する工程と、予備硬化した塗膜に継続して(2秒間)UV(波長365nmにおける照度:800mW/cm2)を照射する工程と、を連続して行った。なお、KPP#04は、メタノール及び2‐メトキシエタノールを含有する。
ポリカーボネートシートにUV硬化塗料FA−3118(アクリル系UV硬化塗料、日本化工塗料株式会社製)をバーコーターで塗布してUV硬化させ、8μmの塗膜を形成することで、比較例1の部材を得た。
ガラス表面を酸化セリウムで研磨し、純水でよく洗浄したのち、エアブローで乾燥させた。スルホシラン(構造:(HO)3Si−(CH2)3−SO3H)1部をイソプロピルアルコール100部で希釈して1時間攪拌した溶液を、乾燥後のガラス上にウエスで塗布し、60℃で1時間加熱することで比較例2の部材を得た。
比較例2の処方に従って得た部材の表面を、酸化セリウムで磨くことで、部分的にスルホシランに覆われ、且つ、部分的にガラスが露出した表面状態である比較例3の部材を得た。
フォルシードNo.140C−Pを、溶媒で希釈することなく、ポリカーボネート板にスプレーを用いて塗布した。そして、塗布した塗膜を60℃で3分間乾燥して、UV硬化させることで部材の作製を行った(硬化膜厚4μm)。UV硬化では、高圧水銀ランプを用いて、塗膜に継続して(2秒間)UV(波長365nmにおける照度:600mW/cm2)を照射する工程を行った。
しかしながら、この場合にはUV硬化時に塗膜が白濁してしまい、透明な塗膜の形成された部材を得ることができなかった。
UV硬化において、塗膜に瞬間的に(0.2秒間)UV(波長365nmにおける照度:800mW/cm2)を照射する工程を行わない以外は、実施例1と同様の方法で部材の作成を行った。
しかしながら、この場合にはUV硬化時に塗膜が白濁してしまい、透明な塗膜の形成された部材を得ることができなかった。
接触角計DM−500(協和界面科学株式会社)を用い、各部材の表面で水接触角(単位:°)を測定した。結果を表2に示す。
水道水を各部材の表面に噴霧し、40℃温風で2時間乾燥させた。この操作を30回繰り返し、水道水中の溶存ミネラルを各部材の表面に析出させた。各部材の表面に析出したミネラル汚れを濡れスポンジで拭き掃除した後の、ミネラル汚れの除去率を、下記数式(1)に基づき算出した結果を表2に示す。なお、下記数式(1)の、「拭き掃除後のミネラル汚れ残存面積」及び「拭き掃除前のミネラル汚れ付着面積」は、目視にて算出した。水垢除去試験の結果は、下記の判定基準により評価することができる。
[数1]
除去率={1−(拭き掃除後のミネラル汚れ残存面積/拭き掃除前のミネラル汚れ付着面積)}×100 ・・・(1)
オレイン酸5部とステアリン酸カルシウム5部とを混合した擬似汚れを各部材上に塗布し、40℃の温水をシャワーで3分間当てた後の擬似汚れの除去率を下記数式(2)に基づき算出しした。結果を表2に示す。なお、下記数式(2)の、「洗浄後の擬似汚れ残存面積」及び「洗浄前の擬似汚れ付着面積」は、目視にて算出した。耐汚染性試験の結果は、下記の判定基準により評価することができる。
[数2]
除去率={1−(洗浄後の擬似汚れ残存面積/洗浄前の擬似汚れ付着面積)}×100 ・・・(2)
各部材の表面にシャワーで散水し、60℃の加熱式加湿器の上方に各部材を硬化塗膜が上向きになるよう配置した。この状態で曇る(結露する)までの時間を測定し、下記の判定基準により評価した。結果を表2に示す。なお、測定は、10分で終了した。
水を含ませたスポンジ(住友3MスコッチブライトS−21K)に1kgの荷重を掛け、各部材の表面を10000回往復磨耗した。スポンジの乾燥を防ぐため、500往復ごとに、水を供給した。磨耗試験後、上に示した試験・測定を実施し、部材のコーティング部の耐久性を確認した。結果を表2に示す。
各部材のシリコーンオイルの吸着・除去性について以下の方法で試験した。水で50倍に希釈した市販の頭髪用化粧品(LUXスーパーリッチシャインコンディショナー、ユニリーバ・ジャパン株式会社製)を、霧吹きで各部材の表面にまんべんなく吹きつけ、10分間放置した。これを50回繰り返した後、洗浄剤(バスマジックリン泡立ちスプレー、花王株式会社)とスポンジを用いて各部材の表面を洗浄した。耐リンス試験後、上に示した試験・測定を実施し、部材のコーティング部の耐久性を確認した。結果を表2に示す。
実施例1で得られた部材の表面及び断面について、EPMA分析した。EPMA分析はJXA−8500Fフィールドエミッション電子プローブマイクロアナライザ(日本電子株式会社製)によって行った。EPMA分析によって、実施例1で得られた部材のコーティング部における硫黄(S)原子の分布状態、つまり、親水性の高いスルホ基を有する成分の分布状態を知ることができる。具体的には、今回の分析においては、硫黄(S)原子の濃度の高い部分が薄い色(白色)を呈する。結果を図3及び4に示す。
10…基材
20…コーティング部
21…マトリクス成分
22…スルホ基を有する成分
20a…未硬化膜
21a…UV硬化型樹脂
22a…スルホ基を有する物質
23a…分散媒
Claims (2)
- 基材と、該基材上に形成された防汚性及び防曇性を有するコーティング部と、を備える防汚防曇性部材の製造方法であって、
アクリル樹脂を含むUV硬化型樹脂と、スルホ基及び1個以上の重合性官能基を含む化合物と、これらUV硬化型樹脂及び化合物を分散可能であり且つ溶解度パラメータの異なる複数の溶媒からなる分散媒と、を含有する溶液を、前記基材上に塗布することで未硬化膜を形成する未硬化膜形成工程と、
前記未硬化膜形成工程で形成された未硬化膜に、強度400〜1500mW/cm2のUVを0.05〜0.5秒間照射して予備硬化させる予備硬化工程と、
前記予備硬化工程で予備硬化された未硬化膜に、前記UV硬化型樹脂が完全に硬化するまでUVを継続して照射して本硬化させることで前記コーティング部を形成する本硬化工程と、を有し、
前記予備硬化工程における前記UVの照射時間は、前記本硬化工程における前記UVの照射時間よりも短いことを特徴とする防汚防曇性部材の製造方法。 - 前記未硬化膜形成工程は、マイクロディスペンサ、スリットコーター又はディップコーターにより前記溶液を前記基材上に塗布することを特徴とする請求項1に記載の防汚防曇性部材の製造方法。
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