JP6347025B2 - 熱電変換材料、回路作製方法、及び、熱電変換モジュール - Google Patents
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図1は、熱電変換モジュール1の模式図である。
図1に例示するように、熱電発電モジュール1は、p型熱電変換素子2、n型熱電変換素子3、高温側電極4、p型に接続する低温側電極5、及び、n型に接続する低温側電極6により構成される。
p型熱電変換素子2は、p型熱電変換材料を焼成したものである。p型熱電変換材料は、例えば、p型熱電変換物質Ca2.7La0.3Co4O9の焼結粒子と、導電性ガラス粒子とを混合したものであり、p型熱電変換素子2は、この混合物を印刷法で成形したものである。本例の印刷法は、スクリーン印刷法、又は、混合物をインク状にしてインクジェットプリント法であるが、これに限定されるものではない。
n型熱電変換素子3は、n型熱電変換材料を焼成したものである。n型熱電変換材料は、例えば、n型熱電変換物質Ca0.9La0.1MnO3と、導電性ガラス粒子を混合したものであり、n型熱電変換素子3は、この混合物を印刷法で成形したものである。
なお、従来のp型及びn型とも熱電変換材料の粒子径が大きく、インクジェットプリンターのノズルを詰まらせてしまうため、スクリーン印刷法に頼らざるを得なかった。スクリーン印刷法は印刷するための版が必要であり、製版工程に多大の時間と労力が必要で製造コストも高く、短納期・低コスト対応には問題があった。
熱電変換材料の粒子径を300ナノメートル以下にすることにより、インクジェットプリンターで回路形成が出来るインクを製造する。これにより、PC上での回路形成パターンが容易にインクジェットプリンターで表現されるため、試作に要する時間が大幅に短縮され、試作品の評価のスピードも格段に早くなること、さらには粒子径が従来の10分の1程度と小さく、その表面積は2乗に反比例する事から100倍となり、焼成のための熱エネルギーが有効に働き、効率的に熱電変換材料を焼成する事が出来る。したがって、従来よりも低温でパターンを形成する事が出来る。
これらp型及びn型の熱電変換素子の膜厚は、例えば、10〜200μm程度であるが、インクジェットプリント法では1〜50μmと比較的薄い膜厚に有効であり、スクリーン印刷法は50〜300μmと比較的厚い膜厚に有効である。
熱電変換材料を説明する。
熱電変換材料は、p型又はn型の熱電変換物質の粒子と、導電性ガラス粒子とを含む。熱電変換物質粒子の平均粒径は10μm以下である。より具体的には、熱電変換物質は、平均粒径2μm以上3μm以下の粒子と、平均粒径200nm以下の粒子とを重量比9:1で混合したものである。
導電性ガラス粒子は、ガラス粉末単体として高い導電率を示すと共に、熱電性能の阻害要因となる導電性粉末ではないため、熱電変換材料の結着剤及び導電剤として有効である。
p型及びn型の熱電変換物質ミクロン粒子は、所定の組成となるように秤量された出発物質を混合して焼結し、この焼結体を粉砕して得られたものである。
具体的には、n型の熱電変換物質ミクロン粒子として、以下のようにしてカルシウム・マンガン系酸化物熱電材料(Ca0.9La0.1MnO3)を調製した。すなわち、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ランタン(La2O3)及び酸化マンガン(MnO2)を所定の組成:Ca0.9La0.1MnO3となるように秤量し、混合・プレス成形後、800℃で大気フロー(200ml/min)にて1時間仮焼成した。次いでボールミルにて粉砕後、プレス成形・CIP成形(200MPa)し、1200℃大気中にて10時間本焼成した。
上記で合成したn型の熱電変換材料をボールミルにて18〜24時間粉砕して、平均粒径2〜3μmの焼結ミクロン粒子を得た。
p型及びn型の熱電変換物質ナノ粒子は、クエン酸と、所定の組成となるように秤量された出発物質とを攪拌して、前駆体溶液を作製した。この前駆体溶液を乾燥させ、上記焼結ミクロン粒子の焼成温度よりも低い温度で焼成して得られたものである。
具体的には、n型の熱電変換物質ナノ粒子として、以下のようにしてカルシウム・マンガン系酸化物熱電材料(Ca0.9La0.1MnO3)を調製した。すなわち、硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO3)2・4H2O)、硝酸ランタン六水和物(La(NO3)2・6H2O)及び硝酸マンガン六水和物(Mn(NO3)2・6H2O)を所定の組成:Ca0.9La0.1MnO3となるように秤量し、これらを順にクエン酸一水和物に投入して150℃にて加熱しながら攪拌して前駆体溶液を作製した。この前駆体溶液を150℃で8時間乾燥させ、400℃で4時間仮焼した後、600℃で1時間焼成し、粒径100nm程度のn型ナノ粒子を得た。
導電性ガラス粒子は、例えば、バナジウム系ガラスを、平均粒径1.5μm以上2.5μm以下の大きさに粉砕したバナジウム系ガラスフリットである。バナジウム系ガラスフリットは、導電性ガラスフリットの一例であり、ある温度で部分的に溶融することで接着して導電性の機能を持つガラス系の微粉末である。
バナジウム系ガラスフリットは以下の方法で合成した。まず、五酸化バナジウム(V2O5)と炭酸バリウム(BaCO3)、酸化タングステン(WO3)及び酸化鉄(Fe2O3)を出発材料とし、ガラスの骨格を3次元化することでバナジウムのイオンの電子のホッピング伝導効果を促進することが可能な20BaO・10Fe2O3・xWO3・(70−x)V2O5の組成でx=0と5と10の3種類の試料を秤量した。次に、本試料をアルミナルツボに入れ、720℃で1時間保持した後にグラファイトルツボ中に流し込み急冷処理することでガラス状に固化した試料を作製した。この試料を用いて示差熱分析装置(リガク、Thermo Plus TG8120)でガラス転移点(Tg)と結晶化温度(Tc)を求め、非晶質構造の確認のためX線回折装置(ブルカーAXS、D8 ADVANCE)で結晶構造を評価した。ガラス試料の導電性は、導電性付与のためのアニーリング処理を行った後、熱電特性評価装置(オザワ科学、RZ-2001i)にて四端子法で求めた。
p型又はn型の熱電変換材料インクは以下の方法で作製した。まずバナジウム系ガラスフリットを粗粉砕した後、タングステンカーバイド製の振動ミルで乾式粉砕した後、エタノールを溶媒として湿式ボールミルにて18時間粉砕処理することで約2μmのメジアン径をもつガラスフリットを作製した。次に、液相沈殿法で作製したナノオーダーのp型又はn型の熱電変換物質粒子と、固相法で作製した約2μmのp型又はn型の熱電変換物質粒子とを重量比1:9の割合で混合した後、熱電変換物質粒子に対して5wt%のバナジウム系ガラスフリットを混合した。インク化には、上記の混合粉末6gに対して1wt%のアラビアゴム水溶液15mlと微量のグリセリンを加え、自転・公転式ミキサー(シンキー、ARE−310)に1mmのアルミナボールと共に投入し、2000rpmで10分混合処理を行った。
熱電変換モジュールの作製は、非接触ディスペンサー方式のインクジェット印刷機を用いた。図2に示すように、30×30mmのガラス基板2枚にそれぞれ上部電極と下部電極とをパターン印刷した。次に、上部電極上の一方の素子部をp型熱電変換材料インクにて印刷し、他方をn型熱電変換材料インクにて印刷して大気中にて乾燥させた後、下部電極と張り合わせて電気炉中で加圧しながら500℃で1時間保持することで作製した。
作製した熱電変換モジュールは、熱電発電効率特性評価装置(ULVAC RIKO、 PEM−2)にて発電特性を評価した。
図3(A)は、滴下後のn型熱電変換材料インクを電子顕微鏡で観察したものであり、図3(B)は、焼成後のp型熱電変換材料インクを電子顕微鏡で観察したものである。
図3(A)に示すように、n型熱電変換材料インク(滴下後、かつ、未焼成)の中で、バナジウム系ガラスフリットが満遍なく分布しているのがわかる。なお、p型熱電変換材料インクにおいても、同様にバナジウム系ガラスフリットが満遍なく分布していた。
また、図3(B)に示すように、焼成したp型熱電変換材料インクにおいて、バナジウム系ガラスフリットが、p型熱電変換材料の粒子表面に融着し、広がって分布していることがわかる。なお、焼成したn型熱電変換材料インクにおいても、バナジウム系ガラスフリットがn型熱電変換材料の粒子表面に広がって融着していた。
図4は、バナジウム系ガラスの示差熱分析の結果を示す。
図4に示すように、相変化に伴う発熱ピークの位置から、バナジウム系ガラスのガラス転移温度(Tg)と結晶化温度(Tc)が求まり、x=0の試料ではTg=265℃とTc=331℃であった。x=5及び10の試料ではTg及びTcは上昇したが、どちらも結晶化温度以上で熱処理することで部分溶融による接着効果が認められた。
またX線回折測定結果は、両試料とも非晶質材料に特徴的なブロードピークを示した。
図5は、導電性付与処理として500℃で1時間保持した試料の電気伝導性の測定結果を示す。
図5に示すように、バナジウム系ガラスの導電率は、x=0において室温から500℃の範囲で、10−1(S/cm)オーダーの高い値を示し、負のゼーベック係数を示すことから導電性を示すキャリアが電子であることがわかる。またバナジウム系ガラスの導電率はWO3の添加量が増えるに従い急激に低下した。
図6は、20BaO・10Fe2O3・xWO3・(70−x)V2O5の示差熱分析結果を示す。
図6(A)に示すように、x=0のとき、Tg及びTcが最も低く、熱電変換モジュール作製工程における低温焼成に最も適している。また、図6(B)に示すように、導電性ガラスをナノ粒子化することにより、さらにTg及びTcを下げることができる。つまり、図6(C)に示すように、本実施例の導電性ガラス(ナノ処理前)は、比較例の導電性ガラス(従来品)と同じ組成ではあるが、出発材料の一つとしてBaOではなくBaCO3を採用している点、及び、微粉砕処理を行っている点により、比較例よりもTg及びTcが低くなっている。これは、出発材料BaCO3が600℃近辺でCO2脱ガスとともに激しく他の材料と混ざり、溶解中の均一化状態へも影響を及ぼした結果、Tg及びTcの低温化に寄与していると考えられる。
さらに、本実施例の導電性ガラス(ナノ処理後)は、ナノ粒子化によって、Tg及びTcが下がり、20BaO・10Fe2O3・70V2O5ガラスの低温焼成に最適である。
p型及びn型の熱電変換物質に、微粉砕したバナジウム系ガラスを混合した素子の熱電特性評価を行った。熱電変換素子は、粉砕したバナジウム系ガラス試料の微粉末を熱電変換物質粒子に5wt%添加してプレス処理した後、500℃で1時間保持してアニール処理を行うことで得た。
図7(A)は、n型の熱電変換素子の熱電特性の測定結果を示し、図7(B)は、p型の熱電変換素子の熱電特性の測定結果を示す。
図7に示すように、バナジウム系ガラスフリット(導電性ガラスフリット)の添加前後でゼーベック係数は維持されており、添加後の導電率が0.1S/cmと1桁以上向上した。またn型の熱電変換物質の素子化には通常1200℃以上の熱処理が必要であるのに対して、導電性ガラスフリットの添加した素子では、500℃の熱処理でガラスが融着し、焼結体並みの硬度が得られた。一方、p型の熱電変換素子では、ゼーベック係数の低下がみられるものの、n型熱電変換素子と同様に導電性の向上が認められた。
図8は、熱電変換モジュールの発電特性を示す。
最大の温度差が得られた条件において、熱電変換モジュールの高温端の最高温度は531℃で、低温端は149℃であり、熱電変換モジュールにおける温度差は382℃となった。このときの開放電圧、内部抵抗及び最高出力は、それぞれ0.1V、2.2Ω、1.3mWであった。この結果は、24対の直列素子から得られた値であることから定格出力が得られる熱電変換モジュールの規模を算出することが可能である。1.5Vの出力を得るためには720対の直列素子で構成される熱電変換モジュールが必要であると見積もられる。インクジェット印刷で形成するパターンを改良して熱電変換素子の集積化を図ることで、定格出力が得られる熱電変換モジュールを実現できる。
また、酸化物の熱電変換物質では、p型とn型で焼結温度が異なるため、素子化工程が煩雑になるという課題があったが、導電性ガラス粒子を利用することにより、p型とn型の接合を伴うモジュール化の一体成型が、同一の処理温度で可能になった。さらに、バナジウム系ガラスフリットは、n型の熱電変換特性を有するため、特にn型熱電変換材料への添加が効果的である。
また、導電性ガラス粒子を添加した熱電変換材料インクと、インクジェット印刷とにより素子を集積化することにより、環境発電の電源として利用可能な熱電変換モジュールが実現可能になった。
上記実施形態では、平均粒径2μm前後の熱電変換物質粒子で熱電変換材料インクを作製する形態を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、平均粒径50nm〜300nmの熱電変換物質粒子に、同程度の粒径のバナジウム系ガラスフリットを添加して熱電変換材料インクを作製してもよい。その際には、分散剤が必要になる。
2・・・p型熱電変換素子
3・・・n型熱電変換素子
Claims (5)
- 平均粒径2μm以上3μm以下の粒状である熱電変換物質と、
平均粒径200nm以下の粒状である熱電変換物質と、
20BaO・10Fe 2 O 3 ・xWO 3 ・(70−x)V 2 O 5 で表される、平均粒径1.5μm以上2.5μm以下の粒状である導電性ガラスと
を混合してなる
熱電変換材料。 - 前記熱電変換物質は、n型の熱電変換特性を有する無機材料であり、
前記導電性ガラスは、BaCO3を出発材料の一つとして合成された20BaO・10Fe 2 O 3 ・xWO 3 ・(70−x)V 2 O 5 である
請求項1に記載の熱電変換材料。 - 溶媒と、
前記溶媒中に、少なくとも、粒状の前記熱電変換物質を分散させる分散剤と
をさらに有し、
前記熱電変換物質及び前記導電性ガラスが前記溶媒中に分散してなる
請求項1に記載の熱電変換材料。 - n型の熱電変換物質の粒子が分散したn型熱電変換材料インクと、p型の熱電変換物質の粒子が分散したp型熱電変換材料インクとを既定のパターンで基板に塗布するステップと、
前記n型熱電変換材料インク及び前記p型熱電変換材料インクが塗布された基板を加圧下で加熱するステップと
を有し、
前記n型の熱電変換物質の粒子、及び、前記p型の熱電変換物質の粒子は、平均粒径2μm以上3μm以下の粒状の熱電変換物質と、平均粒径200nm以下の粒状の熱電変換物質との混合物であり、
前記n型熱電変換材料インク、及び、前記p型熱電変換材料インクには、20BaO・10Fe 2 O 3 ・xWO 3 ・(70−x)V 2 O 5 で表される、平均粒径1.5μm以上2.5μm以下の粒状である導電性ガラスが含まれている
回路作製方法。 - n型の熱電変換物質の粒子と、導電性ガラスの粒子とを混合して焼結されたn型素子と、
p型の熱電変換物質の粒子と、導電性ガラスの粒子とを混合して焼結されたp型素子と
を有し、
前記n型の熱電変換物質の粒子、及び、前記p型の熱電変換物質の粒子は、平均粒径2μm以上3μm以下の粒状の熱電変換物質と、平均粒径200nm以下の粒状の熱電変換物質との混合物であり、
前記導電性ガラスは、20BaO・10Fe 2 O 3 ・xWO 3 ・(70−x)V 2 O 5 で表される、平均粒径1.5μm以上2.5μm以下の粒状である
熱電変換モジュール。
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