JP6339715B2 - 水冷式空調システムおよび水冷式空調システムの運転制御方法 - Google Patents

水冷式空調システムおよび水冷式空調システムの運転制御方法 Download PDF

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Description

本発明は水冷式空調システムに係り、特に、中央熱源式の水冷式空調システムおよび水冷式空調システムの運転制御方法に関する。
従来、データセンター等における中央熱源式の水冷式空調システム100は、図7に示すように熱源機104、往水ヘッダー101及び還水ヘッダー102間を結ぶ一次冷水回路105と、往水ヘッダー101、二次ポンプ109、各空調機(AHU)104及び還水ヘッダー102間を結ぶ二次冷水回路106と、により構成され、熱源機104で製造した冷水を二次ポンプ109により二次冷水回路106側に供給して、空調対象室を冷却するシステムである。空調機104側では流量制御弁(二方弁)108により冷水流量を調整して、送風ファン(図示せず)により空調対象室に冷風を循環供給する。
通常、熱源機104は出口温度一定(例えば7℃)で運転され、空調機104側の冷房負荷が小さいときはバイパス配管103側循環量を増加させる制御としている。
また、二次側の冷水流量制御方式としては、二次ポンプ109から吐出される冷水の圧力を所定の設定値に制御する方法や、往水主管106aと還水主管106b間の往還温度差が一定となるように二次ポンプ109の流量を制御する方法が公知である(特許文献1、2)。
さらに、いずれかの空調機の熱負荷が増加したときに。空調機の冷却不足による室温上昇を回避するためアラーム発報し、二次ポンプ109の流量を増やす制御が公知である(特許文献3)。
特許第4406778号公報 特許第4333818号公報 特許第4748175号公報
通常、中央熱源式の水冷式空調システムでは、冷水供給側の熱源機、二次ポンプの運転制御と、冷風供給側の空調機の制御と、がそれぞれ独立して行われることが多く、省エネ効果が限定的となる。さらなる省エネ性向上のためには、冷熱供給側である二次ポンプ流量制御、熱源機出口温度制御と、冷風供給側である空調機の流量制御弁、送風ファン制御とを連係させることが求められる。このためには、空調機側の冷却余裕度を流量制御弁開度等により把握し、これに対応して二次ポンプ又は熱源機による冷熱供給量を調整することが有効手段として挙げられる。
しかしながら、流量制御弁は送風ファンと比較して応答性が遅いため、例えば空調機風量や吹出し温度設定が変更された場合に、吹出設定温度と計測温度との乖離が過渡的に大きくなり、必要以上の流量制御弁の開弁等の現象が発生するケースがある。
さらに、冷却余裕度が閾値以下のときにアラーム発報とした場合、アラーム頻発の問題がある。
さらに、室内環境とずれた流量制御弁動作に伴って、さらに実態と乖離した余裕度演算がされ、演算結果に連係して稼働する二次ポンプの運転制御に齟齬が生じるという問題がある。
本発明は上記課題を解決するためのものであって、冷水供給側の二次ポンプ流量制御、熱源機の出口温度制御と、空調機側の流量制御弁開度制御と、を連係させるとともに、流量制御弁の応答遅れに伴う上記問題を解決する技術を提供する。
本発明は以下の内容をその要旨とする。すなわち、本発明に係る水冷式空調システムの運転制御方法は、
(1)一次側回路に配設した熱源機で製造した冷水を、往水ヘッダー及び還水ヘッダーを介して、二次側回路に配設した二次ポンプにより複数の空調機に循環供給し、
各空調機は、冷水導入量を制御可能とする流量制御弁と、導入した冷水と戻り空気との熱交換により冷房対象空間に冷風を供給する送風ファンと、を備え、
て成る水冷式空調システムにおいて、
(a1)各空調機の定格冷却能力に対するその時点における冷却余裕度(Ri)に基づいて、複数の空調機により構成される空調機群の群冷却余裕度(Rg)を演算するステップと、
(a2)群冷却余裕度(Rg)が所定の下限閾値(Rc)以下に至ったときは、非常時運転モードとして、二次ポンプ又は/及び熱源機の出力アップにより冷熱供給量を増加させ、かつ、アラーム発報するステップと、
(a3)但し、いずれかの空調機について、所定値以上の冷房出力設定変更があったときは、所定時間(τc)経過するまでは、(a1)に関らず当該空調機を除外して群冷却余裕度(Rg)を演算するステップと、を含むことを特徴とする。
本発明において「空調機群」とは、同一室内、同一冷却エリア、設置者が任意に設定したグルーピング、又は、外部の空調自動制御システムにより定義されるグルーピング 等に属する1又は複数の空調機をいう。
群冷却余裕度(Rg)について、「所定の下限閾値(Rc)」の設定に際しては、室としての許容温度逸脱の可能性の度合いに基づき行い、例えば、同一冷却エリアの常用空調機台数と予備機台数の関係性等を考慮して設定することができる。さらに、学習機能により閾値を随時更新可能とすることにより、最適化を図ることもできる。以下の各閾値、所定値等の設定についても同様である。
また、冷房出力設定変更について、「所定値」の設定に際しては、各空調機の特性、例えば、風量や吹出し温度設定変更の際の吹出設定温度と計測温度との過渡的な乖離や、過渡的な流量制御弁の過剰開度、等の実績データを考慮して行うことができる。
(2)上記(1)の発明において、前記群冷却余裕度(Rg)が、各空調機の前記冷却余裕度(Ri)の平均値(ΣRi/n、n:空調機群に属する空調機台数)であることを特徴とする。
(3)上記各発明において、前記冷却余裕度(Ri)が、
前記流量制御弁の全開開度(θmax)と、当該時点における開度(θ(t))と、により求めた開度余裕率[(Ri=1−(θ(t)/θmax)]、
前記送風ファンの最大周波数(fmax)と、当該時点における周波数(f(t))と、により求めた周波数余裕率[(Ri=1−(f(t)/fmax)]、又は、
空調機の吹出温度計測値(Tb)と吹出温度設定値(Tbs)との乖離度(ΔTb=Tb−Tbs)について、所定の上限乖離度(ΔTb*)と、前記冷房出力設定変更のあった当該空調機の当該時点における乖離度(ΔTb(t))と、により求めた乖離度余裕率[(Ri=1−(ΔTb(t)/ΔTb*)]、
のいずれか、又は、これらの組み合わせであることを特徴とする。
「上限乖離度(ΔTb*)」については、吹出温度の現設定値に対応して定義することができ、また、空調機運転実績に基づく所与の室内温度条件を考慮して設定してもよい。なお、上限を超えた検知(ΔTb(t)>ΔTb*)をした場合は、一律にRi=0とする。
「これらの組み合わせ」とは、例えば開度余裕率、周波数余裕率、乖離度余裕率の平均値を以て、当該空調機の冷却余裕度(Ri)とすることをいう。
(4) 上記各発明において、前記冷房出力設定変更が、室温設定(Trs)変更、又は、送風ファン風量設定(Qs)変更のいずれか一方、又は、両方であることを特徴とする。
(5) 上記各発明において、所定値以上の冷房出力設定変更があったときに、
前記流量制御弁の当該時点における開度比(Φi(t)=θ(t)/θmax)が、上限開度比(Φi*)以上、
前記乖離度(ΔTb)が上限乖離度(ΔTb*)以上、又は、
前記冷房対象空間温度(Tr)が上限空間温度(ΔTr*)以上、
のいずれかに該当する場合には、前記(a3)のステップを実行しないことを特徴とする。
各上限閾値については、サーバ許容温度から逆算して求める当該冷房対象空間の許容上限温度、運転実績により定められた所与の室内温度条件 等に基づき設定する。その際、同一冷却エリアの常用空調機台数、予備機台数の関係 等を考慮に入れることができる。
(6) 上記各発明において、前記(a3)において、
「(a1)に関らず当該空調機を除外して群冷却余裕度(Rg)を演算する」に替えて、
「当該空調機については、設定変更率に対応する緩和係数(k)を乗じた冷却余裕度(Ri’=k*Ri)として、群冷却余裕度(Rg)を演算する」であることを特徴とする。
なお、緩和係数(k)については、同一冷却エリアの空調機台数や、室の総冷却負荷量、等を考慮して設定することができる。
(7) 上記各発明において、前記アラーム発報の有無に応じて、発報回数累計を加算又は減算するステップと、
回数累計が所定の上限閾値(Na*)以上の場合には、室温設定(Trs)変更速度(ΔTrs/Δt)、又は、送風ファン風量設定(Qs)変更速度(ΔQs/Δt)を1段階遅延化させるステップと、
その後、群冷却余裕度(Rg)が所定の下限閾値(Rc)を下回ったときは、室温設定変更速度又は送風ファン風量変更速度を1段階迅速化させるステップと、をさらに含むことを特徴とする。
「上限閾値(Na*)」については、対象建物の安全性の要求グレード、アラーム発生時における対応者の常駐有無、対象建物の規模や空調機総台数、等を考慮して設定することができる。
本発明によれば、室温設定(Trs)、送風ファン風量設定(Qs)等、冷房出力設定変更の際に、流量制御弁の応答遅れにより過渡的に生じる、吹出設定温度と計測温度の乖離や、流量制御弁の過度の開弁等の問題を防止できるという効果がある。
また、緊急性を要しないアラームの頻発を回避できるため、空調信頼性を維持しつつ、本来目的である冷水の搬送動力の低減や熱源効率の向上が可能となり、高い省エネ制御が実現できるという効果がある。
本発明の一実施形態に係る水冷式空調システム1の全体構成を示す図である。 空調機群に属する空調機5の構成を示す図である。 第一の実施形態に係る連係制御フローを示す図である。 第二の実施形態に係る連係制御フローの一部(群冷却余裕度Rg演算部分)を示す図である。 第三の実施形態に係る連係制御フローを示す図である。 第四の実施形態に係る連係制御フローを示す図である。 室温及び二方弁開度設定変更時における到達時間を比較した図である(設定変化速度遅延化なし)。 同上において設定変化速度を遅延化した場合の到達時間を比較した図である。 従来の水冷式空調システム100の構成を示す図である。
以下、本発明に係る空調システムの実施形態について、図1乃至6を参照してさらに詳細に説明する。各図において同一構成には同一符号を用いて示し、重複説明を省略する。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
<第一の実施形態>
図1(a)、1(b)を参照して説明する。空調システム1は、往水ヘッダー2eと還水ヘッダー2fを介在させて、一次側の熱源機冷水系統2と、二次側の空調機系統3と、の2つの冷水系統により構成されている。熱源機冷水系統2は、冷水発生源である複数の熱源機2aと、各熱源機2aで作られた冷水を往水ヘッダー2eに供給する熱源機出口配管2cと、出口配管2c経路中に介装した一次ポンプ2bと、還水ヘッダー2fに集められた還水を熱源機2aに戻す熱源機入口配管2dと、両ヘッダー間を直接結ぶバイパス配管2gと、を備えて構成されている。
空調機系統3は、往水ヘッダー2e、3cとの間に介装される複数の二次ポンプ8と、往水ヘッダー3cと複数の入側支管4aとを結び、空調機5に冷水を供給する往水主管3aと、出側支管4bに集められた空調機5からの還水を還水ヘッダー2fに戻す還水主管3bと、を備えて構成されている。また、同一主管系統に属する複数の空調機5により、空調機群5Aを構成している。往水主管3a、還水主管3bの経路中にはそれぞれ温度センサS1、S2が配設されており、後述するように両温度センサの計測値及び空調機側の冷却余裕度に基づいて二次ポンプ8の流量を調整可能に構成されている。
なお、本実施形態では主管系統が1系統(往水主管3a、還水主管3b)の例を示しているが、これに限らず複数の主管系統を備えたシステムであってもよい。
空調機(AHU)5は、熱交換器5a、送風ファン5bを主要構成として備えている。熱交換器5aにおいて、入側支管4a及び分岐入管6aを経由して供給される冷水と室内空気とを熱交換させて、送風ファン5bにより冷風を空調対象室7内に供給可能に構成されている。
分岐入管6aには二方弁(請求項の流量制御弁に該当)6が介装されている。また、空調機5には出口吹出温度(Tb)を計測する温度センサS3と、空調対象室7内に配設され室内温度を計測する温度センサS4と、が付設されている。
さらに、空調システム1は制御部9を備えており、各温度センサS1〜S4、二方弁6開度等の情報を入力して、群冷却余裕度(Rg)の演算を行い、熱源機2a、二次ポンプ8に対して必要な稼働指令を行うように構成されている。なお、制御部9は、CPU、ROM、RAM、入出力IF等を備えたマイコンにより実装可能である。
水冷式空調システム1は以上のように構成されており、次に図2乃至4も参照して、制御部9の指令により熱源機2a、二次ポンプ8と空調機5間の間で行われる連係制御の内容について説明する。なお、以下のフローでは制御の安定化を考慮して、各ステップは所定の時間間隔で行われるものとする。
群冷却余裕度(Rg)の取得は、空調機5(i=1〜n、以下、適宜、空調機5iという場合がある)ごとに付設されるn台の二方弁6の弁開度に基づいて、次式で示される各空調機5iの冷却余裕度Riに基づいて行われる。
Ri=1−Φi(t) ・・・・(1)
但し、Φi(t)は弁全開時の開度(θmax)と時刻tにおける弁開度(θ(t))との開度比として示される。
Φi(t)=θ(t)/θmax ・・・・(2)
さらにRiの平均値(ΣRi/n)に基づいて、(3)式により空調機群の群冷却余裕度Rgを演算する。
Rg=ΣRi/n ・・・・(3)
次に、図2を参照して連系制御の具体的フローについて説明する。制御開始時において各空調機5は吹出温度Tb一定(例えば20℃)となるように、二方弁6により冷水流量制御が行われている。また、各二次ポンプ8は温度センサS1、S2による往還温度差ΔT=T2−T1が一定(例えば7℃)となるように周波数制御及び台数制御が行われている。さらに、各熱源機2aは出口温度一定(例えば7℃)となるように能力制御が行われている(S101)。
制御中は、各空調機5iの設定温度(室温設定)Trs、又は設定風量Qsが、自動又は手動により変更されたか否かを監視している(S102)。いずれかの空調機5iについて設定変更があった場合には(S102においてY)、温度変化率(ΔTrs/Trs)、又は、風量変化率(ΔQs/Qs)がそれぞれ、閾値α%、β%以上か否かが判定される(S107)。
S107においてY、すなわち当該空調機5iについて設定温度変化率又は風量変化率が閾値以上の場合には、さらに当該変更から所定時間τx経過しているか否かが判定される(S108)。τxに達していない場合には(S108においてN)、当該空調機5iを除外してその時点における群冷却余裕度Rgの演算が行われる(S109)。
S102においてN(設定変更なし)、S107においてN(所定の閾値α%、β%未満)、及び、S108においてY(変更後τx経過)の場合には、当該空調機5iを含めて全空調機を対象としてその時点における群冷却余裕度Rgの演算が行われる(S103)。
さらに、S103又はS109により求めた群冷却余裕度Rgが、臨界値Rc以下に至っているか否かが判定される(S104)。臨界値Rc以下に至っていない場合には(S104においてN)、S101以下の制御が継続して行われる。
一方、S104においてY、すなわち群冷却余裕度Rgが臨界値Rc以下に至っている場合には、現状冷水供給量では空調負荷に対応不可のおそれありと判定され、アラーム発報により注意喚起する(S105)。
さらに、非常時運転モードとして臨界値Rc以上に戻るまで全ての二次ポンプを最大能力で運転させる(S106、S110)。なお、非常時運転モードとしては、熱源機温度を1℃上昇させる態様とすることもできる。さらに、二次ポンプの最大能力運転及び熱源機温度の段階的上昇、又は、両者を同時に行う態様としてもよい。
その後、群冷却余裕度Rgが臨界値Rc以上に戻ったときは(S104においてN)、通常の運転モード(S101)に戻すことができる。
なお、本実施形態では各空調機5iの冷却余裕度Riを二方弁6の弁開度に基づいて演算する例を示したが、吹出温度の計測値(Tb)と吹出温度の設定値(Tbs)との乖離度(ΔTb=Tb−Tbs)に基づいて、次式を用いて演算する態様とすることもできる。なお、ΔTb*は所定の上限乖離度である。
Ri=1−(ΔTb(t)/ΔTb*) ・・・・(1')
さらに、送風ファンの最大周波数(fmax)に対する当該時点における周波数(f(t))との比に基づいて、次式を用いて演算する態様とすることもできる。
Ri=1−f(t)/fmax ・・・・(1")
また、本実施形態では空調対象室7内に1台の空調機5を配置する例を示したが、複数台の空調機を配置する態様であってもよい。
また、単一の温度センサS4の計測値を以て室内温度とする例を示したが、複数の温度センサを用いて計測し、その代表温度(例えば最高温度、平均温度)を以て室内温度とする態様とすることもできる。
<第二の実施形態>
次に、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は上述の実施形態において、冷房出力設定変更のあった空調機5iを冷却余裕度の演算から除外することによる、空調信頼性の過度の低下を回避するための制御形態である。本実施形態の構成は第一の実施形態の空調システム1と同様であるので、重複説明を省略する。
本実施形態では、閾値以上の冷房出力設定変更があった空調機5iについても、一定の条件下で除外することなく演算対象とする。具体的には図3を参照して、上述の図2のS107において設定温度変化率又は風量変化率が閾値以上で、かつ、S108において当該変更から所定時間τx経過していない場合(S1080)であっても、以下の(a)乃至(c)の条件に該当する場合には(S1081、S1082、S1083のいずれかにおいてY)、空調信頼性を優先して当該空調機5iを含めて全空調機を対象としてその時点における群冷却余裕度Rgの演算を行う(図2のS103)。上記各ステップにおいて該当しない場合には、当該空調機5iを除いて群冷却余裕度Rgの演算を行う(図2のS109)。
(a)Φi(t−1)≧Φi*(S1081)
設定温度又は風量変更が行われた時(時刻t)より以前(t−1)から、二方弁開度比Φi(t−1)が閾値(Φi*)以上に至っている場合。
(b)Tb−Tbs≧ΔT*(S1082)
空調機5iの吹出温度について、計測温度(Tb)と設定温度(Tbs)との乖離が閾値(ΔT*)以上に至っている場合。
(c)Tr≧Tr*(S1083)
室温(Tr)が閾値(Tr*)以上に至っている場合。
上記(a)乃至(c)の場合に演算対象としたのは、これらが空調対象空間の許容温度逸脱度合いに与える影響が大と判断されるからである。演算対象に含めることにより、空調信頼性が必要以上に低下することを回避することができる。
なお、上記(a)乃至(c)以外であっても、許容温度逸脱に与える影響大の因子があれば、これについては同様の処理フローとすることが適当である。
<第三の実施形態>
さらに、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、群冷却余裕度Rgの演算に際して、冷房出力設定変更閾値超えの空調機による影響度を小さくすることにより、アラーム頻発を回避する形態に係る。
図3を参照して、本実施形態による制御フローは、S301〜S307、S310(設定温度変化率が閾値以下の場合)については、第一の実施形態のS101〜S107、S110と同様である。
S107においてY、すなわちいずれかの空調機5iについて設定温度変化率(ΔTb/Tb)が閾値α%以上の場合、当該空調機の余裕度Ri’については、(1)式に所定の緩和係数k(但し、k<1)を乗じて、
Ri’=k*(1−Φi(t)) ・・・・・(4)
として、その時点における群冷却余裕度Rgの演算が行われる(S112)。
その後のフローについては第一の実施形態と同様であるので重複説明を省略する。
当該空調機のRiに緩和係数kを乗じることにより、Ri’<Riとなるため、群冷却余裕度Rgへの寄与度が小さくなり、その分、非常時運転モード移行回避の可能性が高まる。
なお、緩和係数kの値については、同一冷却エリア内の空調機台数、室の総冷却負荷量等を考慮して設定することができる。
<第四の実施形態>
さらに、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、群冷却余裕度に関するアラーム頻度に対応して、冷房出力設定変更に際してその変化速度(ΔQs/Δt、ΔTrs/Δt)を調整する形態に関する。
図6(a)は、変化速度遅延化なし条件で、時刻t1において風量設定をQ0→Q1に変更した場合の、風量及び二方弁開度の設定値までの到達時間を比較した図である。両者の間に大きな時間差が生じるため、室温制御に支障をきたすことが容易に予測できる。
また、図6(b)は変化速度を遅延化した場合の同上比較図である。このように、風量設定を段階的にすることにより、両者の設定値到達時間を同調させることができる。
以下、図5を参照して本実施形態の連係制御フローについて説明する。制御開始に伴い初期設定としてアラーム回数累計ΣNa=0とする(S401)。制御開始後、いずれかの空調機について風量又は室温の設定変更があった場合を想定する(S402)。設定変更により伴い上述の各実施形態のフローにしたがい群冷却余裕度Rg≧Rcとなり、アラーム対象か否かが判定される(S403)。
アラーム対象の場合には(S403においてY)、アラーム回数を加算する(ΣNa=ΣNa+1)(S404)。
加算後のアラーム累計が閾値(Na*)以上に至っていない場合には(S405においてN)、設定変更速度は変化させない(S408)。
S405においてY、すなわち加算後のアラーム累計が閾値(Na*)以上に至っている場合には、さらに室温(Tr)が上限値(Th)に至っているか否かを判定する(S406)。
上限値(Th)に至っていない場合には(S406においてN)、設定変更速度を1段階遅延化させる(S127)。これにより、変更後の設定室温(又は設定風量)に到達するまでの時間が遅くなり、二方弁の開閉速度との差異を縮小化させることができる。
S406においてY、すなわち室温(Tr)が上限値(Th)に至っている場合には、非常時として風量を急速に上げる必要があるため、設定変更速度は変化させない(S408)。
S403においてN、すなわち設定変更がアラーム対象に該当しない場合には、アラーム累計を減算し、設定変更速度を1段階アップさせる(S127)。これにより、変更後の設定室温(又は設定風量)への到達時間迅速化が図られる。アラーム累計が上限値に達していない場合には(S124においてN)、現状の設定温度変更速度を維持する(S127)。
以上の制御により冷房出力設定変更時にアラームが頻発する場合に、風量設定等変更後の目標値に到達するまでの時間を遅延化させることができ、動作の遅い二方弁の開度変更速度と同調させることが可能となる。これにより、事後のアラーム回数減少化が可能となり、空調管理作業の効率化を図ることができる。
1・・・・水冷式空調システム
2・・・・熱源機冷水系統
2a・・・熱源機
2b・・・一次ポンプ
3・・・・空調機系統
5・・・・空調機(AHU)
5b・・・送風ファン
6・・・・二方弁(流量制御弁)
7・・・・空調対象室
8・・・・二次ポンプ
9・・・・制御部
Rc・・・群冷却余裕度臨界値
Rg・・・群冷却余裕度
Ri・・・空調機冷却余裕度
S1〜S4・・・・温度センサ

Claims (7)

  1. 一次側回路に配設され冷水を製造する熱源機と、
    流量制御弁により導入量が制御された前記冷水と戻り空気との熱交換により冷房対象空間に冷風を供給する送風ファンと、を有する複数の空調機と、
    二次側回路に配設され、往水ヘッダー及び還水ヘッダーを介して前記冷水を前記空調機に循環供給する二次ポンプと、
    (a1)各空調機の定格冷却能力に対するその時点における冷却余裕度(Ri)に基づいて、前記複数の空調機により構成される空調機群の群冷却余裕度(Rg)を演算する処理と、
    (a2)前記群冷却余裕度(Rg)が所定の下限閾値(Rc)以下に至ったときは、非常時運転モードとして、前記二次ポンプ又は/及び前記熱源機の出力アップにより冷熱供給量を増加させ、かつ、アラーム発報する処理と、
    (a3)但し、いずれかの空調機について、所定値以上の冷房出力設定変更があったときは、所定時間(τc)経過するまでは、(a1)に関らず当該空調機を除外して前記群冷却余裕度(Rg)を演算する処理と、を行う制御部と、
    が設けられていることを特徴とする水冷式空調システム。
  2. 前記制御部は、前記群冷却余裕度(Rg)を、前記各空調機の前記冷却余裕度(Ri)の平均値(ΣRi/n、n:空調機群に属する空調機台数)として求めることを特徴とする請求項1に記載の水冷式空調システム。
  3. 前記制御部は、
    前記冷却余裕度(Ri)を、
    前記流量制御弁の全開開度(θmax)と、当該時点における開度(θ(t))と、により求めた開度余裕率[(Ri=1−(θ(t)/θmax)]、
    前記送風ファンの最大周波数(fmax)と、当該時点における周波数(f(t))と、により求めた周波数余裕率[(Ri=1−(f(t)/fmax)]、又は、
    空調機における吹出温度の計測値(Tb)と吹出温度の設定値(Tbs)との乖離度(ΔTb=Tb−Tbs)について、所定の上限乖離度(ΔTb)と、前記冷房出力設定変更のあった当該空調機の当該時点における乖離度(ΔTb(t))と、により求めた乖離度余裕率[(Ri=1−(ΔTb(t)/ΔTb)]、
    のいずれか、又は、これらの組み合わせとして求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の水冷式空調システム。
  4. 前記冷房出力設定変更が、室温設定(Trs)変更、又は、送風ファン設定風量(Qs)変更のいずれか一方、又は、両方であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水冷式空調システム。
  5. 前記制御部は、所定値以上の冷房出力設定変更があったときに、
    前記流量制御弁の当該時点における開度比(Φi(t)=θ(t)/θmax)が、上限開度比(Φi)以上、
    前記乖離度(ΔTb)が上限乖離度(ΔTb)以上、又は、
    前記冷房対象空間温度(Tr)が上限空間温度(ΔTr)以上、のいずれかに該当する場合には、前記(a3)のステップを実行しないことを特徴とする請求項3又は4に記載の水冷式空調システム。
  6. 前記制御部は、前記(a3)において、
    「(a1)に関らず当該空調機を除外して前記群冷却余裕度(Rg)を演算する」処理に替えて、
    「当該空調機については、設定変更率に対応する緩和係数(k)を乗じた冷却余裕度(Ri’=k*Ri)として、前記群冷却余裕度(Rg)を演算する」処理を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の水冷式空調システム。
  7. 前記制御部は、前記アラーム発報の有無に応じて、発報回数累計を加算又は減算する処理と、
    回数累計が所定の上限閾値(Na)以上の場合には、室温設定(Trs)変更速度(ΔTrs/Δt)、又は、送風ファン設定風量(Qs)変更速度(ΔQs/Δt)を1段階遅延化させる処理と、
    その後、前記群冷却余裕度(Rg)が所定の下限閾値(Rc)を下回ったときは、室温設定変更速度又は送風ファン風量変更速度を1段階迅速化させる処理と、をさらに行うことを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の水冷式空調システム。
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