次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係るトラクタ100の側面図である。図2はトラクタ100の平面図である。なお、以下の説明において「左」、「右」等というときは、トラクタ100が前進する方向に向かって左及び右を意味する。
図1に示す農作業用の作業車両としてのトラクタ100は、プラウ、ローダ等の様々な作業装置を必要に応じて装着し、様々な種類の作業を行うことが可能に構成されている。
トラクタ100は、図2等に示すように、機体2と、当該機体2の前部を支持する左右1対の前輪(車輪)3L,3Rと、機体2の後部を支持する左右1対の後輪4L,4Rと、を備えている。1対の前輪3及び1対の後輪4は、それぞれのトレッドを調整できるように前車軸30及び後車軸40に取り付けられている(詳細は後述する)。
図1に示すように、機体2の前部にはボンネット5が配置されている。このボンネット5内にはエンジン6が収容されている。当該エンジン6は、ディーゼルエンジンとして構成され、トラクタ100の駆動源として機能する。しかし、エンジン6の構成は上記に限定せず、例えばガソリンエンジンとして構成されても良い。
ボンネット5の後方には、オペレータが搭乗するためのキャビン7が設置されている。このキャビン7の内部には、オペレータが操縦するためのハンドル8と、オペレータが座る運転座席9と、各種の操作を行うための様々な操作装置と、が設けられている。
上記の操作装置としては、図2に示すモニタ装置50、スロットルレバー61、シフトレバー62、PTOスイッチ63、及び、複数の油圧操作レバー64等を例として挙げることができる。これらの操作装置は、運転座席9の右側に配置されている。モニタ装置50は、トラクタ100の様々な情報を表示可能に構成されている。スロットルレバー61は、エンジン6の回転速度を設定するためのものである。シフトレバー62は、トランスミッション12の変速比を変更操作するためのものである。PTOスイッチ63は、トランスミッション12の後端から突出した図略のPTO軸(動力取出し軸)から機体2に装着されたローダ等の作業機への動力伝達を接続/遮断することができる。油圧操作レバー64は、図略の油圧外部取出バルブを切換操作することができる。なお、上記PTO軸は、エンジン6から伝達された動力により回転することで、トラクタ100の機体2に接続された作業装置を駆動するように構成されている。
機体2の下部には、トラクタ100のシャーシ10が設けられている。当該シャーシ10は、機体フレーム11、トランスミッション12、フロントアクスル13及びリアアクスル14等から構成されている。
機体フレーム11は、トラクタ100の前部における支持部材であって、直接、又は防振部材等を介してエンジン6を支持している。
トランスミッション12は、エンジン6からの動力を減速してフロントアクスル13やリアアクスル14に伝達する。オペレータがシフトレバー62を操作することにより、当該トランスミッション12の変速比を調整することができる。
フロントアクスル13は、トランスミッション12から入力された動力を前輪3に伝達するように構成されている。リアアクスル14は、トランスミッション12から入力された動力を後輪4に伝達するように構成されている。
このように構成されたトラクタ100は、圃場で走行しながら、耕耘、播種、収穫等の様々な作業を行うことができるが、特に畑作農業においては複数種類の作物の管理作業を行うことがあり、畝の幅や植付け間隔は作物に応じて異なる。そこで、本実施形態のトラクタ100は、複数の作物に柔軟に対応するために、前輪3及び後輪4のトレッドを調整することができるように構成されている。
続いて、本実施形態のトラクタ100におけるトレッドの調整について説明する。先に、前輪3のトレッドの調整について図3を参照して説明する。図3は、トラクタ100の前輪3の支持構造を示す平面図である。
前記フロントアクスル13は、図示しないデフケースの左右に固定された1対の車軸ケース90を備える。それぞれの車軸ケース90は、機体左右方向内側に配置されたアウタ筒91と、外側に配置されたインナ筒92と、を備える。
インナ筒92の機体左右方向内側の端部はアウタ筒91の内部に挿入されており、インナ筒92はアウタ筒91に対して摺動可能に設けられている。従って、インナ筒92はアウタ筒91に対して左右方向にスライドすることができる。
インナ筒92の機体左右方向外側の端部には、ギアケース93が旋回可能に支持されている。当該ギアケース93には、前輪3が取り付けられている前車軸30が回転可能に支持されている。
車軸ケース90の後部には、トレッドロック機構80が設けられている。当該トレッドロック機構80は、プレート81と、回り止めシャフト82と、ブラケット(固定部材)83と、を備えている。
プレート81は、図3に示すように、インナ筒92におけるトラクタ100の機体左右方向外側の端部に固定されている。
回り止めシャフト82は機体左右方向に細長く形成されており、その一端がプレート81に固定され、他端が、アウタ筒91に設けられたボス部94に挿入されている。この回り止めシャフト82により、インナ筒92やギアケース93等がアウタ筒91に対して回転することを防止することができる。回り止めシャフト82は、ボス部94に対してスライド移動可能に構成されており、これにより、トレッド変更に対応することができる。
上記の構成により、インナ筒92がアウタ筒91に対してスライドすることに伴い、ギアケース93と、前輪3と、プレート81と、回り止めシャフト82と、が一体となってトラクタ100の左右方向にスライドすることができる。
ブラケット83は機体左右方向にやや細長く形成されており、その一端がプレート81の上部に固定されている。このブラケット83には、5つの取付孔84が形成されている。取付孔84は、プレート81の長手方向(トラクタ100の機体左右方向)で位置を異ならせて設けられている。なお、取付孔84の数は5つに限定せず、6つ以上又は4つ以下としてもよい。
この構成で、5つの取付孔84のうち選択された1つに前車軸固定ボルト85を差し込み、ボス部94にボルト止めすることで、ブラケット83をボス部94に固定することができる。また、前車軸固定ボルト85を取り付ける取付孔84を変更することによって、アウタ筒91に対するインナ筒92の位置(ひいては、ギアケース93及び前輪3の位置)を5段階で変更することができる。
また、図3に示すように、ギアケース93の前部にはナックルアーム70が固定されている。当該ナックルアーム70には、タイロッド71が回動可能に取り付けられている。
タイロッド71は、パイプ部72と、シャフト部(固定部材)73と、を備えている。シャフト部73の一端は、中空状のパイプ部72の内部に差し込まれるとともに、パイプ部72の長手方向に沿ってスライドできるように構成されている。当該シャフト部73をパイプ部72に対してスライドさせることにより、タイロッド71の長さを変更することができる。
パイプ部72の端部(ギアケース93に近い側の端部)には、上下に配置された板部材74が固定されている。当該板部材74には、タイロッド固定ボルト75を通すための孔が開けられている。一方、シャフト部73には、その長手方向に一定の間隔をあけて5つの取付孔76が並べて形成されている。ただし、取付孔76の数は5つに限定せず、6つ以上又は4つ以下としてもよい。
この構成で、タイロッド固定ボルト75が、シャフト部73の上記5つの取付孔76のうち選択された1つに差し込まれた状態で、パイプ部72の板部材74の孔に取り付けられることにより、タイロッド71のパイプ部72とシャフト部73とを互いに固定することができる。また、タイロッド固定ボルト75を取り付ける取付孔76を変更することで、パイプ部72に対するシャフト部73の位置(ひいては、タイロッド71の長さ)を5段階で変更することができる。
上記で説明したように、ブラケット83及びシャフト部73のそれぞれに5つの取付孔84,76が設けられているので、アウタ筒91に対するギアケース93(インナ筒92)の位置及びタイロッド71の長さをそれぞれ5段階で調整することができる。例えば、ギアケース93の位置を1段階内側(図3においては右側)に移動させ、タイロッド71を1段階短くすることにより、前輪3のトレッドを1段階短くすることができる。
そして、本実施形態のトラクタ100には、前輪3が旋回時に機体2に接触することを回避するための切れ角ストッパボルト86が設けられている。当該切れ角ストッパボルト86が機体左右方向外側に突出する長さを調整することにより、前輪3の切れ角度を調整することができる。なお、切れ角ストッパボルト86による前輪3の切れ角度の調整は公知であるため、詳細な説明を省略する。
次に、後輪4のトレッドの調整について、図4を中心に参照して説明する。図4は、トラクタ100の後輪4の支持構造を示す平面図である。図5は、トレッド調整に関する電気的構成を示すブロック図である。
左右の後輪4L,4Rを支持するリアアクスル14は、左右1対の車軸ケース95を備える。車軸ケース95は、機体左右方向内側に配置されるアウタ筒96と、外側に配置されるインナ筒97と、を備える。インナ筒97はアウタ筒96に対してスライド可能に構成されており、これにより、車軸ケース95が伸縮可能となっている。インナ筒97の機体左右方向端部には、プレート98が固定されている。
左右の車軸ケース95のそれぞれには、当該車軸ケース95を伸縮させるためのアクチュエータとしての油圧シリンダ68が取り付けられている。油圧シリンダ68のシリンダ部はアウタ筒96に固定される一方、シリンダロッドの先端は前記プレート98に固定されている。
プレート98には回り止めシャフト88が固定され、この回り止めシャフト88は、アウタ筒96に固定された回り止め筒99に差し込まれている。この回り止めシャフト88及び回り止め筒99により、インナ筒97等がアウタ筒96に対して回転することを防止することができる。
上記の構成により、インナ筒97がアウタ筒96に対してスライドすることに伴い、後輪4と、プレート98と、回り止めシャフト88と、が一体となってトラクタ100の左右方向にスライドすることができる。
油圧シリンダ68は、図5に示すように適宜の油圧回路を介して油圧ポンプ66と接続されている。油圧回路には流路切換弁67が配置されている。なお、油圧シリンダ68は、左右の後輪4L,4Rに対応して左右1対で設けられており、流路切換弁67はそれぞれの油圧シリンダ68に対応して備えられている。この構成で、油圧シリンダ68は、流路切換弁67によって切り替えられる圧油によって伸長又は短縮し、これに伴って、後輪4L,4Rが機体2の左右方向外側又は内側に移動される。以上により、後輪4のトレッドを自動的に調整することができる。
リアアクスル14の適宜の位置には、後輪4の位置を検出するためのポジションセンサ65が、左右の後輪4L,4Rに対応して設けられている。このポジションセンサ65は、例えば回り止めシャフト88に形成された図略の凹部を検出可能なセンサとして構成されており、制御部60に対して電気的に接続されている。
図5に示すように、本実施形態のトラクタ100は、後輪4のトレッドの調整やモニタ装置50の表示を制御するための制御部60を備えている。この制御部60は、演算部としてのCPUと、記憶部としてのROM及びRAMと、を備えたコンピュータとして構成されている。
制御部60は、オペレータが後述のモニタ装置50を操作することによって入力された指示に応じて流路切換弁67を切り換えて、油圧シリンダ68を伸長/短縮させるように駆動する。また、制御部60は、ポジションセンサ65により検出された後輪4のトレッドの実際の値や、トレッド調整中の後輪4等の情報を、オペレータが確認できるようにモニタ装置50に表示することができる。
次に、本実施形態のトラクタ100において運転座席9の近傍に設置されているモニタ装置50について説明する。
このモニタ装置50は、図6に示すように、表示部としてのディスプレイ51と、操作部としての操作具52及び5つのコマンドボタン54と、を備えている。
ディスプレイ51は、液晶パネルから構成され、モニタ装置50の略中央位置に配置されている。当該ディスプレイ51は、トラクタ100の走行及び作業に関する様々な情報を表示することができる。
操作具52は、モニタ装置50の右上部に設けられている。この操作具52は、両方向の回転操作が可能で、かつ、押込み操作が可能に構成されている。
図5に示す回転検出部52aは、操作具52の回転を検出可能な例えばロータリエンコーダとして構成されている。回転検出部52aは、操作具52の所定角度毎の回転を検出して、制御部60に検出信号を出力することができる。
押込み検出部52bは、操作具52の押込みを検出可能な例えばマイクロスイッチとして構成されている。押込み検出部52bは、操作具52の押込みを検出して、制御部60に検出信号を出力することができる。
操作具52により、オペレータは様々な指示を制御部60に対して行うことができる。具体的には、オペレータは、操作具52を回転させることで、ディスプレイ51に表示されるカーソルやハイライト表示部分を複数の項目の間で移動させ、これにより複数の項目から所望の項目を選択する操作(以下、選択操作と呼ぶことがある)を行うことができる。また、オペレータは、操作具52を押し込むことで、上記の選択操作により行った選択を確定する操作(以下、確定操作と呼ぶことがある)を行うことができる。
コマンドボタン54は、モニタ装置50の上部に左右に並べて設けられている。オペレータは、コマンドボタン54を押すことにより、ディスプレイ51に表示された画面において、それぞれのコマンドボタン54に対応する位置に表示されたコマンドを制御部60に指示することができる。
続いて、前輪3のトレッド調整時におけるモニタ装置50の表示について詳細に説明する。
このモニタ装置50は、起動されると、図7に示すようなホーム画面をディスプレイ51に表示する。このホーム画面には、「トラクタ情報」、「トラクタ設定」、「パワートレッド」等の様々なメニューが並べて表示されている。それぞれのメニューには、当該メニューの内容をオペレータに容易に理解させるためのアイコンが併せて表示されている。
前輪3のトレッド変更を希望するオペレータは、操作具52を操作することにより、ボルト取付支援画面(図10)をディスプレイ51に表示させる。
具体的には、オペレータは先ず操作具52を回転させて、ディスプレイ51上のハイライト表示部分を「パワートレッド」のメニューへ移動させることで、当該メニューを選択した状態にする。なお、図面での表現の便宜上、図7においては、ハイライト表示はハッチングで表現されている。そして、オペレータは、「パワートレッド」のメニューが図7に示すようにハイライト表示された状態で、操作具52を押し込むことにより、「パワートレッド」のメニューの選択を確定させる。なお、ホーム画面の上端の左から4番目には「決定」コマンドが表示されているので、メニューの選択の確定は、操作具52の押込み操作だけでなく、左から4番目のコマンドボタン54dを押すことでも行うことができる。
上記のように「パワートレッド」のメニューが選択されると、ディスプレイ51に表示される画面が、図8に示す後輪4のトレッド調整画面に切り替えられる。このトレッド調整画面は、左右の後輪4L,4Rの位置を調整して所望のトレッドを実現するためのものである。後輪4のトレッド調整を希望する場合、オペレータは、操作具52を適宜操作することにより、この画面に縦に並べて表示されている複数のトレッド値Vのうち所望のトレッド値を選択する。その後、トレッドの実際の調整を指示するための「調整開始」ボタンB1をハイライト表示させた状態で操作具52を押し込むことにより(又はコマンドボタン54dを押すことにより)、後輪4のトレッドの調整を自動的に行わせることができる。
なお、図8の画面を操作してトレッドを調整する場合は左右両方の後輪4L,4Rの位置が調整されるが、本実施形態では、左右の後輪4L,4Rの何れか一方の位置のみを調整することもできるようになっている。後輪4の片輪のみの位置調整は、図8のトレッド調整画面において「次ページ」を選択した状態で確定操作を行い、図9に示す片輪のみのトレッド調整画面を表示させることで行うことができる。図9の画面における操作は、左右の後輪4L,4Rのうち何れを調整するかを選択する必要があることを除いて、図8に示す左右両方の後輪4L,4Rのトレッド調整画面と実質的に同様である。
図9に示す(後輪4の)片輪トレッド調整画面において「次ページ」を選択した状態で確定操作を行うと、ディスプレイ51の表示は、前輪3のトレッドを調整するためのボルト取付支援画面に切り替えられる。
ボルト取付支援画面では、図10に示すように、機体2の左側に取り付けられた前輪3L及びその支持構造の一部(タイロッド71、ブラケット83)をトラクタ100の真上から見た状態が、画面の右側に、適宜簡略化された図(絵)によってグラフィカルに表示される。そして、この前輪3及びその支持構造の模式図の左側に、複数のトレッド値V1〜V5が縦に並べて表示されている。また、画面の下端部には注意表示領域D1が配置されている。この注意表示領域D1には、トレッドを調整する場合はトラクタ100を安全な位置に移動させるようにオペレータの注意を喚起するためメッセージM1が表示されている。
タイロッド71の模式図には、シャフト部73に対してタイロッド固定ボルト75を取り付けることが可能な5つの取付位置E1〜E5が、円形又は6角形で表示される。この取付位置E1〜E5は、シャフト部73に形成された5つの取付孔76に対応している。図10の例では、5つの取付位置E1〜E5のうち、取付位置E5は6角形で、それ以外の取付位置E1〜E4は円形でそれぞれ表示されている。ここで、6角形はボルトの頭部を示すものである。即ち、図10に示すタイロッド71の模式図は、取付位置E5にタイロッド固定ボルト75を取り付けるべきことを示している。
ブラケット83の模式図には、ブラケット83に対して前車軸固定ボルト85を取り付けることが可能な5つの取付位置E11〜E15が、円形又は6角形で表示される。この取付位置E11〜E15は、ブラケット83に形成された5つの取付孔84に対応している。図10の例では、5つの取付位置E11〜E15のうち、取付位置E15は6角形で、それ以外の取付位置E11〜E14は円形でそれぞれ表示されている。即ち、図10に示すブラケット83の模式図は、取付位置E15に前車軸固定ボルト85を取り付けるべきことを示している。
上記で説明したように、タイロッド固定ボルト75及び前車軸固定ボルト85の取付位置によって、前輪3のトレッドを5段階で調整することができる。図10の画面に表示される5つのトレッド値V1〜V5は、前輪3のトレッド調整の前記5段階のそれぞれにおけるトレッド値を示している。
そして、本実施形態のトラクタ100においては、タイロッド固定ボルト75及び前車軸固定ボルト85の取付位置と、前輪3のトレッドと、の対応関係をオペレータに分かり易く示すため、ディスプレイ51に、5つのトレッド値V1〜V5のそれぞれと、タイロッド固定ボルト75及び前車軸固定ボルト85の取付位置のそれぞれと、を対応させて表示することができる。
具体的には、図10に示すボルト取付支援画面において、5つのトレッド値V1〜V5が互いに異なる色で表示される。また、タイロッド固定ボルト75の取付位置E1〜E5が互いに異なる色で表示されるとともに、前車軸固定ボルト85の取付位置E11〜E15も互いに異なる色で表示される。そして、あるトレッド値の表示色と、それに対応するタイロッド固定ボルト75の取付位置及び前車軸固定ボルト85の取付位置の表示色と、が同一となっている。
例えば、トレッド値V1と、それに対応するタイロッド固定ボルト75の取付位置E1及び前車軸固定ボルト85の取付位置E11と、の対応関係が分かるように、それらを同じ色(例えば、黄色)で表示する。同じように、トレッド値V2,V3,V4,V5のそれぞれを例えば橙、ピンク、青、緑で表示し、それに対応するタイロッド固定ボルト75の取付位置E2,E3,E4,E5及び前車軸固定ボルト85の取付位置E12,E13,E14,E15のそれぞれを橙、ピンク、青、緑で表示する。なお、図面での表現の便宜上、図10においては、異なる態様のハッチングで異なる色を表現している。
このように色による対応付けがされているので、オペレータが手作業で前輪3のトレッドを調整するとき、所望のトレッド値に対応するタイロッド固定ボルト75及び前車軸固定ボルト85の取付位置を直感的に理解することができる。この結果、トレッドの調整(ひいては、タイロッド固定ボルト75及び前車軸固定ボルト85の取付け)を正確に行うことができる。
また、図10の画面においては、表示された5つのトレッド値V1〜V5のそれぞれと、タイロッド固定ボルト75の取付位置E1〜E5のそれぞれと、を直線で結び付けて表示している。このように線による対応付けがされているので、それらの対応関係が一層分かり易くなる。
更に、本実施形態のトラクタ100は、図10の画面で表示されている5つのトレッド値V1〜V5のうち何れか1つを選択することができるように構成されている。そして、何れかのトレッド値が選択されると、そのトレッド値に対応するタイロッド固定ボルト75及び前車軸固定ボルト85の取付位置を円形でなく6角形で表示するように構成されている。
具体的には、オペレータは、操作具52を回転させることにより、表示されている5つのトレッド値V1〜V5のうち所望のトレッド値を選択し、そのトレッド値を選択した状態で確定操作を行うと、制御部60は、タイロッド固定ボルト75及び前車軸固定ボルト85の取付位置を示す6角形を、確定されたトレッド値に対応する取付位置に表示させる。なお、図10には、縦に並んだトレッド値V1〜V5のうち最も下のトレッド値V5を選択して確定操作を行った状態が示されている。
これにより、オペレータが手作業で前輪3のトレッドを調整する場合に、所望のトレッド値を一覧から選ぶだけで、タイロッド固定ボルト75及び前車軸固定ボルト85の取付位置を分かり易くオペレータに示すことができる。この結果、オペレータが所望するトレッド値に応じたタイロッド固定ボルト75及び前車軸固定ボルト85の取付けを一層正確に行うことができる。また、取扱説明書等を参照しながら作業を行う必要がないため、作業の効率も向上させることができる。
続いて、前輪3のトレッドを調整するためのストッパボルト調整支援画面について、図11を参照して説明する。
図10の画面で「次ページ」を選択した状態で確定操作を行うと、ディスプレイ51には、図11に示すような、前記切れ角ストッパボルト86を調整するためのストッパボルト調整支援画面が表示される。
ストッパボルト調整支援画面は、それぞれのトレッド値V1〜V5に対応する切れ角ストッパボルト86の取付長さをオペレータに示すものである。このストッパボルト調整支援画面では、図11に示すように、画面の左側に5つのトレッド値V1〜V5が縦に並べて表示され、画面の右側に、前輪3L及びその支持構造の一部が模式図でグラフィカルに表示される。そして、トレッド値V1〜V5の右側には、それに対する切れ角ストッパボルト86の突出長さL1〜L5の具体的な値が表示されている。
なお、図11に示すように、ディスプレイ51に表示される前輪3の支持構造の模式図には切れ角ストッパボルト86の拡大図が含まれており、どこからどこまでの長さが突出長さLであるかが図で示されている。従って、オペレータは、切れ角ストッパボルト86の突出長さの調整を正確に行うことができる。
更に、本実施形態のトラクタ100においては、当該5つのトレッド値V1〜V5と、切れ角ストッパボルト86の突出長さL1〜L5の対応関係を分かり易く表示するために、それぞれのトレッド値V1〜V5とそれに対応する切れ角ストッパボルト86の突出長さL1〜L5とが同じ色で表示されている。具体的には、5つのトレッド値V1〜V5が上から黄、橙、ピンク、青、緑の順で表示されるとともに、それらに対応する切れ角ストッパボルト86の突出長さL1〜L5が上から黄、橙、ピンク、青、緑の順で表示される。
これにより、オペレータが前輪3のトレッドを調整する場合に、所望のトレッド値に対応する切れ角ストッパボルト86の突出長さをディスプレイ51の表示で確認することができる。この結果、調整したトレッド値に対応する切れ角ストッパボルト86の突出長さを容易にかつ正確に調整することができる。
次に、前輪3のディスク31及びリム32の取付けによるトレッドの変更について説明する。図3に示すように、本実施形態のトラクタ100が備える前輪3は、前車軸30に固定されるディスク31と、ディスク31に固定されるリム32と、を備える。リム32には、ゴム製のタイヤが装着される。リム32は、ディスク31に対して着脱可能に構成されるとともに、機体左右方向で互いに異なる2つの位置から1つを選択して固定することができるようになっている。また、ディスク31は表裏を反転させた状態で前車軸30に固定することができ、リム32も表裏を反転させた状態でディスク31に固定することができるようになっている。
この結果、本実施形態のトラクタ100は、リム32のディスク31に対する固定位置と、リム32及びディスク31の表裏と、の組合せにより、複数とおり(本実施形態では、8とおり)の前輪3の位置を実現することができる。以下の説明では、リム32のディスク31に対する固定位置と、リム32が固定される向きと、前車軸30に対してディスク31が固定される向きと、を合わせて「固定状態」と呼ぶことがある。
ところで、ディスク31及びリム32による前輪3のトレッド調整は、上述したタイロッド固定ボルト75及び前車軸固定ボルト85によるトレッド調整とは無関係に行うことができる。従って、前輪3のトレッド値をオペレータの意図どおりに正確に実現するには、ディスク31及びリム32の固定状態がどのようになっているかを考慮した調整が必要になる。
この点、本実施形態のトラクタ100においては、前輪3におけるディスク31及びリム32の固定状態をモニタ装置50に入力できるように構成されている。そして、図10及び図11の画面においては、5つのトレッド値V1〜V5として、入力された固定状態に基づいて算出された値を表示するように構成されている。この結果、前輪3のトレッド調整を一層正確に行うことができる。
以下、ディスク31及びリム32の固定状態を変更した場合のモニタ装置50の操作について説明する。オペレータが前輪3について固定状態を変更した場合、新しい固定状態を、図12に示すリム固定選択画面で指定することができる。このリム固定選択画面は、図11のストッパボルト調整支援画面で「次ページ」が選択された状態で確定操作を行うことで表示させることができる。
図12のリム固定選択画面においては、前輪3のディスク31とリム32との固定に関する8とおりの状態(固定状態)が、それに対応する基準トレッド値を伴って、選択可能に表示される。
ここで、基準トレッド値とは、タイロッド固定ボルト75及び前車軸固定ボルト85を、トラクタの製造業者が定めた標準的な取付位置(例えば、工場出荷時における取付位置)に取り付けた場合におけるトレッド値である。本実施形態のトラクタ100では、標準的な取付位置は、タイロッド固定ボルト75においては取付位置E1とされ、前車軸固定ボルト85においては取付位置E11とされている。従って、基準トレッド値は、5段階のトレッド値の中で最も短いトレッド値に相当する。ただし、他の取付位置を標準的な取付位置としても良い。
リム固定選択画面では、図12に示すように、前輪3のディスク31及びリム32の8とおりの固定状態の模式図が並べて表示される。それぞれの前輪3の模式図には当該前輪3の中心線c1が表示されるとともに、当該中心線c1の近傍に、当該前輪3のディスク31とリム32との固定位置に対応する基準トレッド値が表示されている。
なお、オペレータは、前輪3のディスク31及びリム32の固定状態を変更する作業を行う前に、このリム固定選択画面を参照することもできる。この場合、所望の基準トレッド値を実現するためにディスク31及びリム32をどのように固定すべきかを容易に確認してから作業を行うことができる。
オペレータは、操作具52を操作することで、ディスプレイ51に表示される8つの模式図のうち、新しいディスク31及びリム32の固定状態と一致するものを選択する。具体的には、8つの模式図の中でハイライト表示される模式図を操作具52の回転操作により切り替えるとともに、新しい固定状態と一致している模式図がハイライト表示されている状態で確定操作を行う。なお、図12では、図面での表現の便宜上、ハイライト表示がハッチングにより示されている。これにより、ディスク31及びリム32の固定状態を制御部60に指示することができる。
制御部60は、選択されたディスク31及びリム32の固定状態(言い換えれば、上記の基準トレッド値)に基づいて、図11及び図12の画面で表示するトレッド値V1〜V5を再計算する。なお、最も短いトレッド値V1は基準トレッド値と一致しており、また、それ以外のトレッド値V2〜V5の計算は幾何学的な関係を用いて容易に行うことができるため、詳細な説明は省略する。以上により、オペレータは、所望のトレッド値を実現するための調整作業を的確に行うことができる。
次に、前輪3のトレッド調整の制限について説明する。例えば、トラクタの前部にフロントローダ等の作業装置が装着される場合、前輪3のトレッドを大きくし過ぎると、前輪3が作業装置と干渉したり、操舵のための前輪3の切れ角を確保できなくなるおそれがある。従って、前輪3のトレッド調整が制限されることをオペレータに分かり易く示すことが望まれる。
この点、本実施形態のトラクタ100においては、作業装置が装着されていることを制御部60が検出した場合は、リム固定選択画面(図12)において、当該作業装置に適合可能な固定状態及び基準トレッドを、オペレータが分かるように表示することができる。具体的な表示方法としては、適合可能な固定状態及び基準トレッドに適宜のマーク(図略)を付して表示させたり、適合不能な固定状態及び基準トレッドをグレーアウト表示したりすることが考えられる。また、適合可能な固定状態及び基準トレッドだけを絞り込んで表示しても良い。
また、トラクタ100に装着される作業装置は、例えば制御部60が作業装置のコントローラと適宜通信することにより検出することができる。
これにより、作業装置が装着されている場合に、オペレータは、当該作業装置に適合可能な前輪3のディスク31及びリム32の固定状態及び基準トレッドを容易に把握することができる。
図12の画面で「次ページ」を選択した状態で確定操作を行うと、ディスプレイ51の表示は、図8の後輪4のトレッド調整画面に戻る。このように、「次ページ」の操作を行うことで、画面の表示を循環的に切り替えることができる。また、「前ページ」の操作をすることにより、「次ページ」の場合とは逆の順に画面を切り替えることができる。以上のようなページ遷移により、オペレータは、所望の画面を表示させて様々な情報を得ることができる。
以上に説明したように、本実施形態のトラクタ100は、タイロッド71のシャフト部73と、トレッドロック機構80のブラケット83と、トレッドに関する情報を表示するディスプレイ51と、を備える。シャフト部73及びブラケット83は、前輪3のトレッドを調整するための複数の取付位置E1〜E5,E11〜E15を有する。ディスプレイ51は、複数のトレッド値V1〜V5と、それぞれのトレッド値を実現するための複数の前記取付位置E1〜E5,E11〜E15と、のそれぞれを対応させて表示可能である。
これにより、オペレータが手作業で前輪3のトレッドを調整するとき、ディスプレイ51の表示を確認するだけで、タイロッド固定ボルト75及び前車軸固定ボルト85を複数の取付位置のうち何れに取り付ければ意図するトレッド値を実現できるかを容易に把握することができる。従って、前輪3のトレッド調整を簡単かつ正確に行うことができる。
また、本実施形態のトラクタ100は、操作具52を備える。操作具52は、ディスプレイ51に表示される複数のトレッド値V1〜V5のうち何れか1つを選択するようにオペレータが操作可能である。ディスプレイ51は、複数の取付位置E1〜E5,E11〜E15をグラフィカルに表示するとともに、オペレータの操作により選択されたトレッド値に対応する取付位置を他の取付位置と異なる態様で(即ち、6角形で)表示可能である。
これにより、前輪3のトレッドを調整するとき、オペレータが意図するトレッド値を選択することで、そのトレッド値に対応するタイロッド固定ボルト75及び前車軸固定ボルト85の取付位置が分かり易く表示される。従って、前輪3のトレッド調整を一層正確に行うことができる。
また、本実施形態のトラクタ100においては、前輪3は、ディスク31と、ディスク31に固定されるリム32と、を備える。リム32は、ディスク31に対して複数の固定位置で固定可能に構成される。ディスプレイ51に表示されるトレッド値V1〜V5は、リム32のディスク31に対する固定位置(言い換えれば、前記固定状態)に応じて変化する。
これにより、リム32とディスク31との固定位置によってトレッドを変化させた場合であっても、オペレータは、トレッド値と取付位置との対応を正確に知ることができる。
また、本実施形態のトラクタ100においては、ディスプレイ51は、リム32のディスク31に対する複数の固定位置(前記固定状態)と、当該固定位置に対応する基準トレッド値と、を対応させて表示可能である。
これにより、オペレータは、リム32をディスク31に対してどう固定するべきかを、希望する基準トレッド値との関係で容易に確認することができる。この結果、トレッド調整作業の効率を向上させることができる。
また、本実施形態のトラクタ100においては、ディスプレイ51は、機体2に作業装置が装着された場合に、複数の基準トレッド値のうち、作業装置に適合可能な基準トレッド値を表示する。
これにより、ディスプレイ51の表示を参照して前輪3を取り付けることで、取り付けられた前輪3と作業装置との接触等を防止することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記の実施形態においては、ディスプレイ51においてトレッド値V1〜V5及び取付位置E1〜E5,取付位置E11〜E15を黄、橙、ピンク、青、緑の色で表示しているが、他の色に変更することも可能である。
上記の実施形態においては、選択確定されたトレッド値に対応するタイロッド固定ボルト75及び前車軸固定ボルト85の取付位置が6角形で表示されている。しかしながら、他の取付位置と区別して(異なる態様で)示すことができれば、他の形状で表示したり、円形を点滅表示させたりしても良い。
上記の実施形態のトラクタ100では、後輪4のトレッド調整は油圧シリンダ68によって行われるが、これを手作業で調整する構成に変更することもできる。この場合、モニタ装置50には、後輪4のトレッドを手作業で調整するために、図10等と同じような画面を表示するように構成することができる。
上記の実施形態では、トラクタ100に作業装置が装着された場合に、基準トレッドのうち適合可能なものを(他と区別して)表示している。しかしながら、これに代えて、又はこれに加えて、トレッド値V1〜V5(言い換えれば、タイロッド固定ボルト75の取付位置E1〜E5、前車軸固定ボルト85の取付位置E11〜E15)のうち、作業装置に適合可能なものを(他と区別して)表示することも可能である。
モニタ装置50の操作は、操作具52やコマンドボタン54に限定されず、操作のための他の部材により行うように構成することもできる。例えば、ディスプレイ51をタッチパネルとして構成し、当該タッチパネルにオペレータが指で触れることによってモニタ装置50を操作する構成でも良い。
本発明は、トラクタ以外の作業車両にも適用することができる。