JP6333538B2 - 磁気エンコーダ装置および回転検出装置 - Google Patents

磁気エンコーダ装置および回転検出装置 Download PDF

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Description

本発明は、磁気エンコーダ装置およびこれを有する回転検出装置に関するものである。
磁気エンコーダ装置は、磁気センサに対面する多極磁石を回転させ、磁気センサで多極磁石の各磁極N、Sの通過を検出することで、回転部材の回転を検出する構成を有する。この種の磁気エンコーダ装置としては、例えば特開2010−249536号公報(特許文献1)に開示されているように、自動車の車輪用軸受装置に組み込まれ、アンチロックブレーキシステム(ABS)における車輪の回転数を検出するために用いられるものが公知である。この磁気エンコーダ装置では、磁気センサに対向する多極磁石が、磁性粉と熱可塑性樹脂とを含む磁石材料を射出成形することで形成されている。
その一方で、例えば特開2009−80058号公報(特許文献2)に開示されているように、磁気エンコーダ装置として、磁気エンコーダトラックを複列に配置し、異なるトラックで検出した磁気信号の位相差に基づき、回転軸の絶対角度(回転位相)を検出できるようにしたものも知られている。
特開2010−249536号公報 特開2009−80058号公報
特許文献1に記載されるような回転数を検出するための回転検出装置であれば、それほど高い分解能が要求されないので、検出精度に関する限り既存の製品精度でも実用上の不都合はない。これに対し、特許文献2に記載される回転軸の絶対角度を検出する回転検出装置では、単に回転数を検出するにすぎない場合と比べて格段に高い分解能と精度が必要とされる。
このように回転軸の角度を検出する場合、特許文献1記載のように樹脂および磁性粉からなる多極磁石を使用すると、回転検出装置が大きな温度変化に晒された際に、多極磁石がそのベースとなる部材(通常は、多極磁石とは別材料で形成される)から剥離し、あるいは多極磁石に割れを生じる場合がある。この剥離や割れにより、多極磁石とベースとなる部材とが同期回転せずに両者間に微少な位相ずれを生じ、そのために絶対角度の検出精度が大きく低下するおそれがある。
そこで、本発明は、温度変化が大きい環境下で回転軸の角度を検出する際の検出精度の低下を防止することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、回転部材に取り付けるための取り付け面を有するベース部と、ベース部をインサートして射出成形された成形部とを備え、成形部に円周方向に配列した複数の磁極を有する磁気エンコーダトラックが設けられ、磁気エンコーダトラックの各磁極を磁気センサとの対向領域で移動させることで、回転部材の角度が検出される磁気エンコーダ装置において、ベース部と成形部を異種材料で形成し、ベース部に第一係合部を設けると共に、成形部に前記第一係合部と円周方向で係合する第二係合部を設け、第一係合部と第二係合部とで回り止めを構成したことを特徴とする。この場合、磁気エンコーダトラックに、それぞれに磁極を有する第一トラックおよび第二トラックを設けるのが好ましい。
かかる構成から、ベース部の第一係合部と成形部の第二係合部とが円周方向で係合して回り止めとして機能するため、温度変化で成形部の一部がベース部から剥離等した際にも、ベース部と成形部の微小な位相ずれを防止することができる。そのため、回転部材の角度を精度良く検出することが可能となる。
成形部の第二係合部を、ベース部の第一係合部を成形型にして成形することにより、第一係合部と第二係合部を隙間なく密着させることができる。従って、ベース部と成形部の間の微小な位相ずれをより確実に防止することができる。
回り止めを磁気センサと対向させて配置すれば、回り止めの近傍で磁界や磁力線の乱れを生じ、検出精度の低下を招く。これに対し、回り止めを磁気センサと対向しない領域に配置することにより、かかる問題を回避することができる。
また、回り止めを、成形部を射出成形する際の射出成形材料の流動方向下流側に設けることにより、射出成形材料の流れが乱れることによる回り止め周辺での磁気エンコーダトラックの着磁精度の低下を回避し、検出精度を高めることができる。
ベース部を円筒状とし、成形部に、ベース部の軸方向一方側の端面を覆う第一プレート部と、ベース部の軸方向他方側の端面を覆う第二プレート部と、ベース部の外周面を覆う円筒部とを設け、かつ成形部を、第一プレート部から円筒部を経て第二プレート部に至るまで連続して形成するのが好ましい。
射出成形工程におけるゲートは、第一プレート部の内周面に設けるのが好ましい。この場合、離型後の成形品の第一プレート部の内周面にゲート跡が形成される。この時、第一プレート部が射出成形材料の流動方向上流側となり、第二プレート部が射出成形材料の流動方向下流側となる。ゲートをディスクゲートとすれば、成形部でのウェルド等の発生を防止することができる。この場合、ゲート跡が第一プレート部の内周面全周にわたって形成される。
ベース部を焼結金属で形成し、ベース部の少なくとも取り付け面をサイジングで仕上げることにより(サイジングで仕上げた面には切削痕や研摩痕等の機械加工痕が存在しない)、取り付け面の平面度、円筒度等の表面精度を低コストに向上させることができる。そのため、取り付け面に回転部材を取り付けた場合でも、回転部材の回転中心に対して磁気エンコーダ装置を高精度の同軸度をもって回転させることができる。そのため、成形部に設けた磁気エンコーダトラックの振れ回りを防止することができる。
成形部の射出成形材料としては、熱可塑性樹脂と磁性粉を主成分としたものを用いることができる。
以上に述べた磁気エンコーダ装置と、ベース部が取り付けられる回転部材と、磁気エンコーダトラックに対向する磁気センサとで回転検出装置を構成することにより、大きな温度変化が予想される状況下でも、回転部材の角度を精度よく検出することが可能となる。
本発明によれば、成形部の剥離や割れが生じにくくなるので、大きな温度変化が予想される環境下でもベース部と成形部の間での位相ずれを防止し、回転部材の角度を検出する際の検出精度の低下を防止することができる。
本発明にかかる回転検出装置(ラジアルギャップタイプ)の断面図である。 図1に示す回転検出装置を半径方向から見た平面図である。 図1に示す回転検出装置を第二プレート部側から見た正面図である。 サイジング工程を示す断面図である。 射出成形工程を示す断面図である。 着磁工程を示す断面図である。 磁気エンコーダトラックの振れ回りを説明する概略図である。 本発明にかかる回転検出装置(アキシャルギャップタイプ)の断面図である。 図8に示す回転検出装置を第一プレート側から見た正面図である。 図8に示す磁気エンコーダ装置を第二プレート側から見た正面図である。 (a)図は磁気エンコーダ装置の断面図、(b)図は磁気エンコーダ装置を第一プレート部側から見た正面図である。 (a)図は磁気エンコーダ装置の断面図、(b)図は磁気エンコーダ装置を第二プレート部側から見た正面図である。 (a)図は磁気エンコーダ装置の断面図、(b)図は磁気エンコーダ装置を第二プレート部側から見た正面図である。 (a)図は磁気エンコーダ装置の断面図、(b)図は磁気エンコーダ装置を第二プレート部側から見た正面図である。 (a)図は磁気エンコーダ装置の断面図(同図(b)のX−X線断面図)、(b)図は磁気エンコーダ装置を第二プレート部側から見た正面図である。 回転検出装置の他の実施形態を示す断面図である。 (a)図、(b)図とも磁極パターンの他の実施形態を示す平面図(展開図)である。 磁気センサと対向する領域に回り止めを形成した場合のデメリットを説明する図で、(a)図が平面図であり、(b)図が断面図である。
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、この実施形態の回転検出装置1の概略構成を示す断面図である。図1に示すように、この回転検出装置1は、回転部材としての回転軸2と、回転軸2に取り付けられる磁気エンコーダ装置3と、ハウジング等の静止部材に取り付けられる磁気センサ4とで構成される。回転軸2は、図示しないモータ(例えばサーボモータ)等の回転駆動源により回転駆動される。
図1では、磁気エンコーダ装置3としてラジアルギャップタイプを例示している。この磁気エンコーダ装置3は、ベース部33と成形部34とで構成される。以下、ベース部33および成形部34の主要構成を説明する。
ベース部33は、多孔質の焼結金属で円筒状に形成される。焼結金属としては、銅を主成分とする銅系、銅および鉄を主成分とする銅鉄系、並びに鉄を主成分とする鉄系の何れも使用できるが、ベース部33は磁性体であるのが好ましく、そのために鉄の含有量を極力多くするのが好ましい。本実施形態では鉄系の焼結金属(Fe:100wt%)を使用している。多孔質のベース部33に対する潤滑油の含浸は行われていない。ベース部33の外周面33aおよび内周面33bのうち、外周面33aが成形部34を介して磁気センサ4のセンシング面と対向し、内周面33bが回転軸2に取り付けるための取り付け面を構成する。
成形部34は、ベース部33の外周面33a、およびベース部33の軸方向両端部を連続して被覆しており、平板状をなす第一プレート部341および第二プレート部342と、円筒状をなす円筒部343とで一体に形成される。第一プレート部341、第二プレート部342、および円筒部343の肉厚は実質的に同一である。図1に示す実施形態において、第一プレート部341はベース部33の軸方向一方側の端面33cの外径側領域を覆っている。ベース部33の軸方向他方側の端面33dは軸方向の段差を有しており、第二プレート部342はこの段差付き端面33dのうち軸方向一方側の端面33d1を覆っている。また、円筒部343はベース部33の外周面33aを覆っている。ベース部33の内径側の面取り33eは、成形部43には覆われずに露出している。
この実施形態において、第一プレート部341および第二プレート部342の内径寸法は何れもベース部33の内径寸法よりも大きい。また、第二プレート部342の内径寸法は、第一プレート部341の内径寸法よりも大きい。成形部34の第一プレート部341の端面とベース部33の軸方向一方側の端面33cとの間には、軸方向の段差が存在するが、成形部34の第二プレート部342の端面とベース部33の軸方向他方側の端面33dの一部(段差付き端面33dのうち軸方向他方側の端面33d2)とは、半径方向で同一平面上にある。
図2は回転検出装置1をセンサ4側から見た平面図である。
図1および図2に示すように、成形部34の円筒部343の外周面には、異なる磁極(N極およびS極)を周方向交互に配置した磁気エンコーダトラック30が形成される。磁気エンコーダトラック30は、バーニャ原理により絶対角度を検出可能としたのもので、図2に示すように、第一トラック31と第二トラック32とを同心で環状に複列配置した形態をなしている。
第一トラック31および第二トラック32のそれぞれに、N極およびS極からなる磁極対31a,32aが異なる磁極を周方向交互に配置して着磁されている。本実施形態では、第一トラック31の磁極を等ピッチλ1とし、第二トラック32の磁極も等ピッチλ2としている。第一トラック31おける磁極対31aの数(例えば32個)は、第二トラック32における磁極対32aの数(例えば31個)と異なる。例えば第一トラック31における磁極対31aを任意の数nとした場合、第二トラック32には、n±1で表される数の磁極対32aを設けることができる。これにより回転軸2の1回転を0°〜360°の範囲の絶対角度で検出することができる。検出可能な絶対角度の範囲を360°ではなく180°とする場合には、第二トラック32にn±2で表される数の磁極対32aを設ければよい。この場合、回転軸2の1回転に対して0°〜180°の範囲の検出を2回繰り返すことになる(いわゆる2xモード)。同様にn±3とした場合には絶対角度検出範囲は120°となり、回転軸2の1回転に対して3回繰り返して検出することになる(いわゆる3xモード)。
成形部34は、磁性粉(強磁性体)と熱可塑性樹脂とを主成分とする樹脂材料で形成される。磁性粉としては、例えばストロンチウムフェライトやバリウムフェライトなどに代表されるフェライト系磁性粉の他、ネオジウム−鉄−ボロン、サマリウム−コバルト、サマリウム−鉄−窒素等などに代表される希土類系磁性粉等の公知の磁性粉が使用できる。これらの磁性粉は単独で、あるいは複数組み合わせて使用される。本実施形態では、コストおよび耐候性の面で優位性を示すフェライト系磁性粉を主として使用している。なお、フェライト系の磁性粉を用いる場合、フェライトの磁気特性を向上させるためにランタンやコバルト等の希土類系元素を混合することもできる。
また、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系の樹脂材料、例えばPA12を使用することができる。本実施形態のように薄肉(0.5mm程度)の成形部34で高磁力を得るためには磁性粉を高充填する必要があるが、ポリアミド系は流動性に優れることからそのような要求にも応えることができる。また、本実施形態の磁気エンコーダ装置3を例えば自動車の車輪用軸受に使用する場合には、広い温度範囲で耐候性、耐薬品性等を満たすことが求められるが、ポリアミド系は要求される温度範囲(−40℃〜+120℃)でもこれらの特性を満足することができる。ポリアミド系として、PA12の他にPA6,PA66,PA612等も使用可能であるが、特にPA12はこれらの中で吸水性が最も少ないので、吸水による磁気特性低下を防止するために最も好ましい。
図2に示すように、磁気センサ4は、第一トラック31および第二トラック32のそれぞれと対面する検出素子4aを有する。各検出素子4aは、トラックピッチの方向に所定距離だけ離隔させた二つの磁気検出素子等からなり、半径方向に0.3mm〜4mm程度のラジアルギャップを介して第一トラック31および第二トラック32のそれぞれと対向している。磁気エンコーダトラック30を回転させることで、各トラック32の磁極が検出素子4aの対面領域を移動するので、二つの検出素子4aの出力波形を比較してその位相差を求めることにより、磁気エンコーダトラック30の絶対角度を検出することが可能となる。
図3は磁気エンコーダ装置3を軸方向他方側(第二プレート部342側)から見た正面図である。図3に示すように、円筒状をなすベース部33の軸方向他方側の端部には、その外周面の円周方向一部領域を半径方向に除肉した形態の除肉部36が形成される(以下、「半径方向の除肉部」と呼ぶ)。図3は、平面状にした除肉部36を例示している。成形部34の第二プレート部342の内周面には、除肉部36と対応して内径側に突出させた突出部37が形成されている。この除肉部36と突出部37は密着状態にあり、かつ円周方向で係合した状態にある。
除肉部36と突出部37のうち、回転軸2に直接回転駆動されるベース部33の除肉部36が第一係合部を構成し、回転軸2に直接回転駆動されない成形部34の突出部37が第二係合部を構成する。第一係合部36と第二係合部37は、ベース部33と成形部34の微小な位相ずれを防止する回り止め38として機能する。
図3では、この回り止め38を半径方向で対向する円周方向二カ所に設けているが、円周方向の一カ所のみに形成し、あるいは円周方向の三箇所以上に形成することもできる(図12等参照)。
次に、以上に述べた磁気エンコーダ装置3の製造工程を順次説明する。
先ず、焼結金属製のベース部33が製作される。ベース部33は、焼結金属の製造手法として常用される、金属粉末の圧縮成形→焼結→サイジングの各工程を経て製作される。圧縮成形工程では、鉄粉に潤滑剤を添加した原料粉末を成形して圧粉体が成形される。この圧粉体の段階で、その軸方向一端部外周に除肉部36が成形される。この圧粉体を焼結炉に移送して例えば1120℃で焼結することにより、Fe100wt%の焼結素材が得られる。原料粉に添加された潤滑剤は、焼結工程中に燃焼あるいは揮散する。焼結後の焼結素材の密度は、6.2〜7.0g/cm3程度である。
サイジングは、図4に示すように、焼結後の焼結素材33’を、その軸方向両端面33c’,33d’をパンチ13,14で拘束しつつダイ11に圧入し、あるいはダイ11に焼結素材33’を収容してから、焼結素材33’の軸方向両端面33c’、33d’をパンチ13,14で加圧することで、焼結金属素材33’を圧迫する工程である。サイジング中は焼結金属素材33’の内周にはコアロッド12が挿入されている。
このサイジングにより、焼結素材33’の外周面33a’、内周面33b’、および両端面33c’,33d’がそれぞれダイ11の内周面、コアロッド12の外周面、および両パンチ13,14の端面に押し付けられて塑性変形により矯正され、各面が精度良く仕上げられる。その後、焼結金属素材33’をダイ11内から取り出すことで、ベース部33が完成する。
ベース部の33の外周面33a、内周面33b、および両端面33c、33dは何れもサイジングされた面となるが、サイジングに伴って表面空孔が潰れるため、サイジング後の各面33a〜33dの表面空孔率は、内部の空孔率よりも小さくなる。ベース部33の軸方向両端の内径角部および外径角部には、それぞれ面取り33eが設けられているが、これら面取り33eはサイジングされないため、面取り33eの表面空孔率は上記各面33a〜33dの表面空孔率よりも大きい。また、除肉部36もサイジングされないため、面取り33eと同様に、除肉部36の表面空孔率は上記各面33a〜33dの表面空孔率よりも大きくなる。
このようにして製作されたベース部33は射出成形工程に移送される。この射出成形工程は、図5に示すように、ベース部33を固定金型40および可動金型41内にインサートして位置決め保持し、両金型40,41間に形成したキャビティ42に、上述した熱可塑性樹脂と磁性粉とを含む樹脂材料を、スプール43およびゲート44を介して射出することで成形部34を成形(インサート成形)する工程である。この成形部34の成形と同時に、ベース部33の除肉部36を成形型として突出部37が成形される。成形部34でのウェルド等の発生を防止するため、ゲート44としては、ディスクゲート(フィルムゲート)を使用するのが好ましい。射出成形に際しては、キャビティ42に磁場をかけながら磁性粉の磁化容易軸を揃える処理(磁場成形)も併せて行われる。
樹脂材料の冷却固化後、型開きを行い、図示しない押し出しピンで成形品を押し出す。成形品の押し出しと共にゲートカットが行われ、成形品が離型される。ディスクゲート44を介して射出成形を行っているため、ゲートカットの痕跡であるゲート跡344(図1参照)は、成形部34の第一プレート部341の内周面全周にわたって形成される。
その後、脱磁を行ってから、成形品に着磁を行って磁気エンコーダトラック30を形成する。着磁中は、図6に示すように、成形品39のベース部33の内周面33bがスピンドル50に嵌合されると共に、図示しないチャック機構でベース部33の端面、例えば軸方向他方側の端面33dが着磁装置の位置決め面51に押し付けられる。この時、位置決め精度の向上のため、成形部34は位置決め面51と接触させないのが好ましい。これにより、成形品39が内周面33bおよび一方の端面(本実施形態では33d)を基準として、着磁装置に対して軸方向および半径方向で位置決めされる。
この状態で磁気エンコーダトラック30の外径側に着磁ヘッド52を配置し、成形品をインデックス回転させながら、磁気エンコーダトラック30の第一トラック31と第二トラック32のうち、どちらか一方のトラックの着磁を行う。その後、着磁ヘッド52を軸方向にスライドさせ、同様の操作を繰り返して他方のトラックの着磁を行うことで、図1および図2に示す磁気エンコーダ装置3が完成する。なお、インデックス回転させながら複数のトラックを同時に着磁するようにしてもよく、その他、全ての磁極を同時に着磁させる方法を採用することもできる。
このようにして製作した磁気エンコーダ装置3のベース部33の内周面(取り付け面)33bに回転部材である回転軸2を固定し、ハウジングの所定位置に磁気センサ4を取り付けることで、図1および図2に示す回転検出装置1が完成する。ベース部33と回転軸2との固定は、両者間での芯ずれ防止のために圧入で行うのが好ましいが、芯ずれを回避できる対策を講じれば、接着等の他の固定手段で固定することもできる。例えば自動車の車輪用軸受装置にこの磁気エンコーダ装置を使用する場合、車輪用軸受装置の内輪(回転部材)の外周面にベース部33の取り付け面33bが嵌合固定され、軸受外輪やナックル等の車体側の部材の所定位置に磁気センサ4が取り付けられる。
本発明の磁気エンコーダ装置3においては、ベース部33が焼結金属で形成され、かつベース部33の少なくとも回転軸2に対する取り付け面(内周面)33bがサイジングにより仕上げられている。そのため、取り付け面33bは高い平面度および円筒度を有し、かつ両端面33c、33dに対する直角度や回転軸心に対する同軸度も良好なものとなる。このように取り付け面33bが高い表面精度を有するため、ベース部33の取り付け面33bに回転軸2を嵌合固定して回転軸2を回転させた場合でも、磁気エンコーダトラック30の振れ回りを小さくすることができる。そのため、回転中の磁気エンコーダトラック30の幾何学的な誤差、さらには磁気センサ4との間のギャップ変動に基づく誤差を小さくすることができ、回転軸2の角度(例えば絶対角度)の検出精度を高めることができる。
以下、この作用効果を図7に示すモデルを用いて説明する。同図において、磁気エンコーダトラック30の半径Rに対して、磁気エンコーダトラック30の中心が回転軸心OからΔRだけ偏心した位置に固定されている場合を想定すると、磁気エンコーダトラック30に回転角θに依存したΔRの振れ回りが発生する。これにより、tanΔθ〜ΔR/Rの大きさで変動する角度誤差(幾何学的な誤差)が観測されることになる。
例えば、複列の磁気エンコーダトラック30を用いて1回転を12ビット(4096分割)以上の分解能で測定する場合、磁気エンコーダトラック30の各トラック31,32のピッチ誤差を±0.5%以下に抑えることが望まれる。R=25mmの位置に32極対の磁気エンコーダトラック30を形成する場合を考えると、1磁極対に相当する回転角度は360°/32=11.25°なので、ピッチ誤差0.5%は、11.25°×0.5%=0.05625°となり、その場合、許容される偏心量はΔR<Rtan(0.05625°)=24.5μmとなる。従って、ピッチ誤差を0.5%以下にするためには、ベース部33の取り付け面33bにおける公差を±20μm以下に設定することが望まれる。少なくともベース部33の取り付け面33bを焼結金属で形成し、これにサイジングを施せば、取り付け面33bをそのような公差範囲に収めることは容易であるので、ピッチ誤差を0.5%以下に抑えた磁気エンコーダトラック30を低コストに提供することが可能となる。
また、振れ回り量が小さくなることで、磁気センサ4と各磁極との間のギャップ変動を抑えることができる。既存の磁気エンコーダ装置では、磁気センサ4と各磁極との間のギャップは、機械部品の加工精度や組み付け精度によって制限され、その変動幅が大きいためにギャップを小さくするには限度がある。これに対し、本発明では、磁気エンコーダトラック30の振れ回り量が小さいため、ギャップの変動範囲を±0.1mm以下に抑えることができる。そのため、磁気センサ4と各磁極との間のギャップを詰めることができ、磁気強度の増大を通じてノイズの少ない高品質の信号を出力することが可能となる。この点からも、回転軸2の絶対角度の検出精度を高めることができる。
また、図4に示すように、磁気エンコーダトラック30に着磁する際には、ベース部33の取り付け面33bが着磁装置のスピンドル50に嵌合すると共に、どちらか一方の端面(本実施形態では軸方向他方側の端面33d)が位置決め面51と当接している。着磁の際には、スピンドル50の回転角度を基準として磁気パターンを形成するため、着磁面に振れ回りがあると、正確な角度ピッチで着磁することが困難となる。これに対し、本実施形態の構成では、被位置決め面となるベース部33の取り付け面33bおよび端面33dがサイジングにより高精度に仕上げられているので、着磁装置のスピンドル50に対するベース部33の取り付け姿勢を安定化することができ、磁気エンコーダ装置3の使用時と同レベルの同軸状態で着磁を行うことができる。そのため、着磁中の成形部34の振れ回りを小さくして、振れ回りによる着磁パターンの幾何学的誤差を防止することができ、これにより回転軸2の絶対角度をさらに精度良く検出することが可能となる。
異種材料からなるベース部33と成形部34の複合成形品を、温度変化の大きい環境下で使用した場合には、成形部34のうちベース部33との境界部の一部領域で剥離(浮き上がりやはがれ)や割れを生じるおそれがある。このような剥離や割れを放置すると、振動等によりベース部33と成形部34が同期回転せずに微小な位相ずれを生じる場合がある。特に本実施形態の磁気エンコーダ装置3のように回転軸2の絶対角度を検出する場合には、このような微小な位相ずれが絶対角度の検出精度に大きな影響を与えることになる。
これに対し、図3に示すように、ベース部33の除肉部36(第一係合部)と成形部34の突出部37(第二係合部)とを円周方向で係合させて回り止め38を構成すれば、仮に成形部34が剥離等した場合でも、ベース部33と成形部34の円周方向の位相ずれを防止することができる。そのため、磁気エンコーダ装置3を温度変化が大きい使用条件下で使用する場合でも、回転軸2の絶対角度を精度良く検出することが可能となる。
特に本実施形態の構成では、図5に示すインサート成形時に、突出部37(第二係合部)が除肉部36(第一係合部)を成形型として成形されるので、成形後は第一係合部36と第二係合部37を隙間なく密着させることができ、ベース部33と成形部34の間の微小な位相ずれをより確実に防止することができる。
以下、本発明の他の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態の説明において、図1〜図3に示す実施形態と共通する構成および部材には共通の参照符号を付して重複説明を省略する。
図8および図9は、アキシャルギャップタイプの回転検出装置1の断面図および平面図である。この実施形態においても、図8に示すように、複列の磁気エンコーダトラック30が成形部34に形成されている。また、ベース部33が焼結金属で形成されると共に、少なくとも取り付け面33b、さらに好ましくはベース部33の全面33a〜33dがサイジングで仕上げられている。このアキシャルギャップタイプの磁気エンコーダ装置3において、磁気センサ4に対向する磁気エンコーダトラック30は第一プレート部341に形成されている。磁気エンコーダトラック30は、半径方向に離隔した第一トラック31と第二トラック32とを有する。また、図10に示すように、ベース部33と第二プレート部342との間に、図3の実施形態と同様に、半径方向の除肉部36(第一係合部)および突出部27(第二係合部)からなる回り止め38が設けられている。
図11(a)(b)は、回り止め38の他の実施形態を示すもので、ベース部33に、その端面33cの一部領域を軸方向に除肉した形態の除肉部36(以下、「軸方向の除肉部」と称する)を形成すると共に、成形部34に、除肉部36に対応する軸方向の突出部37を形成して回り止め38を構成した場合を示す。この実施形態では、軸方向の除肉部36として、ベース部33に端面33cに形成した円孔状の凹部を例示している。かかる構成でも、第一係合部となる除肉部36と第二係合部となる突出部37とが密着し、かつ円周方向で係合するため、ベース部33と成形部34の間の回り止め38を構成することができる。
図11(a)(b)に示す実施形態では、成形部34のうち、ゲート側(ゲート跡344への接近側)となる第一プレート部341とベース部33との間に回り止め38を設けており、この点が反ゲート側(ゲート跡344からの遠方側)となる第二プレート部342とベース部33との間に回り止め38を設けた図1〜図3の実施形態と異なる。射出成形時のキャビティ42(図5参照)内での樹脂材料の流動を乱さないためにも、図1〜図3に示す実施形態のように、回り止め38は樹脂材料の流動方向下流側である第二プレート部342とベース部33との間に形成するのが好ましい。但し、この点についての影響が軽微である場合には、図11(a)(b)に示すように、樹脂材料の流動方向上流側である第一プレート部341とベース部38の間に回り止め38を設けることができる。
この他、図18(a)(b)に示すように、成形部34の円筒部343とベース部333の間に回り止め38を設けることも考えられるが、ラジアルギャップタイプにおいてかかる構成を採用すると、円筒部34に設けた磁気エンコーダトラック30の磁界や磁力線が回り止め38の周辺で乱れるため、検出精度に悪影響を及ぼす。これを防止するため、回り止め38はセンサ4と対向しない領域、すなわち第一プレート部341とベース部33の間や、第二プレート部342とベース部33の間に形成するのが好ましい。
以上を勘案すれば、ラジアルギャップタイプ(図1〜図3、および図11(a)(b)に示す実施形態)、およびアキシャルギャップタイプ(図8〜図10に示す実施形態)を問わず、回り止め38は、成形部34のうち、センサ4と対向せず、かつ樹脂材料の流動方向下流側(磁気センサ4との対向面よりも下流側)となる第二プレート部342とベース部33の間に設けるのが最も好ましい。
図12(a)(b)〜図15(a)(b)に回り止め38の他の実施形態を示す。
図12(a)(b)〜図14(a)(b)は、半径方向の除肉部36の他の実施形態を示すものであり、このうち、図12(a)(b)および図13(a)(b)は凹円筒面状に形成した除肉部36を示している。図12(a)(b)では、図13(a)(b)よりも円筒面の曲率半径を大きくしてある。また、図12(a)(b)では、除肉部36の円周方向両端と、これと円周方向で隣接するベース部33の外周面とを凸円筒面を介して滑らかにつなげている。また、図14(a)(b)は、断面V字状に形成された除肉部36を示している。
図15(a)(b)は、軸方向の除肉部36の他の実施形態を示すもので、円周方向に延びる長孔状の除肉部36を形成した場合を例示している。
図12(a)(b)〜図15(a)(b)の何れの実施形態でも、突出部37は除肉部36と密着する形状をなしている。なお、図12(a)(b)〜図15(a)(b)に示す各回り止め38の形態は、図8〜図10に示すアキシャルギャップタイプの磁気エンコーダ装置3にも同様に適用することができる。
図12(a)(b)〜図14(a)(b)に示すように半径方向の除肉部37を形成した場合、除肉部37の円周方向両端と、これと円周方向で隣接するベース部33の外周面との間のコーナー部cがエッジであると、ベース部33と成形部34の熱膨張係数の差に起因して生じた熱応力により、エッジ部分に対向する成形部34で剥離や割れ等を生じるおそれがある。これを防止するため、コーナー部cはアール形状にするのが好ましい。この時のコーナー部cの曲率半径としては、0.5〜8mm程度が好ましい(図3に示す実施形態のコーナー部cでも同じ)。0.5mmを下回ると応力集中による破壊が生じやすくなり、8mmを上回ると回り止めとしての効果が低減する。
以上の各実施形態では、ベース部33として円筒状の焼結金属を用いる場合を例示したが、ベース部33の形状や材質はこれには限定されない。例えば図16に示すように、ベース部33を断面L字型として溶製金属材(例えば金属板のプレス加工品)で形成し、これをインサートして成形部34を射出成形することもできる。この場合も、温度変化が大きくなると、ベース部33に対し、ベース部33と異種材料からなる成形部34が剥離し、ベース部33と成形部34の間の微小な位相ずれを生じる場合があるが、各実施形態で述べた回り止め38を設けることでかかる事態を防止することができる。この回り止め36を構成する除肉部36は、ベース部33をプレス加工する際に同時に形成することができる。
図16に示す実施形態では、ベース部33の内周面(取り付け面33b)を円筒状の回転部材61の外周面に圧入固定し、さらに回転部材61の内周に回転軸2を圧入固定している。この場合、回転部材61を焼結金属で形成し、かつその内周面にサイジングを施すことで、各実施形態と同様に磁気エンコーダトラック30の振れ回りを抑制し、回転軸2の絶対角度を検出することが可能となる。
また、以上の説明では、成形部34の射出成形材料として熱可塑性樹脂と磁性粉を主成分とするものを例示したが、射出成形材料としては着磁可能でかつ射出成形可能である限り任意の材料を使用することができる。例えばゴムと磁性粉を主成分とする射出成形材料で成形部34を成形することもできる。
さらに、以上の説明では、回り止め38を構成する除肉部36および突出部37のうち、除肉部36をベース部33に形成し、突出部37を成形部34に形成する場合を例示しているが、これとは逆に突出部34をベース部33に形成し、除肉部36を成形部34に形成してもよい。
また、以上の説明では、成形部34に形成する複列の磁気エンコーダトラック30として、第一トラック31と第二トラック32の磁極対の数を異ならせると共に、第一トラック31の磁極を等ピッチλ1とし、第二トラック32の磁極を等ピッチλ2としたものを説明したが、磁気エンコーダトラック30の磁極パターンはこれに限定されず、回転軸2の絶対角度を検出可能なあらゆる磁極パターンを採用することができる。例えば図17(a)に示すように、第一トラック31と第二トラック32で磁極対の数を同じにすると共に、第一トラック31および第二トラック32のそれぞれで磁極ピッチを不等ピッチにすることもできる。この他、図17(b)に示すように、第一トラック31を、異なる磁極を交互に等ピッチで形成した回転検出用トラックとすると共に、第二トラック32を、回転基準位置検出用の磁極を周方向の一カ所もしくは複数個所に形成した、インデックス信号(Z相)生成用トラックとしてもよい。
以上に述べた回転検出装置1は、回転軸2の絶対角度の検出が求められる用途に適用することができ、例示した車輪用軸受装置の他、ロボットの関節部分、精密位置決め装置をはじめ、各種産業機器に広く用いることが可能である。
1 回転検出装置
2 回転軸(回転部材)
3 磁気エンコーダ装置
4 磁気センサ
30 磁気エンコーダトラック
31 第一トラック
32 第二トラック
33 ベース部
33a 外周面
33b 内周面(取り付け面)
33c 軸方向一方側の端面
33d 軸方向他方側の端面
34 成形部
341 第一プレート部
342 第二プレート部
343 円筒部
344 ゲート跡
36 除肉部(第一係合部)
37 突出部(第二係合部)
38 回り止め

Claims (9)

  1. 回転部材に取り付けるための取り付け面を有するベース部と、ベース部をインサートして射出成形された成形部とを備え、成形部に円周方向に配列した複数の磁極を有する磁気エンコーダトラックが設けられ、磁気エンコーダトラックの各磁極を磁気センサとの対向領域で移動させることで、回転部材の角度が検出される磁気エンコーダ装置において、
    ベース部と成形部を異種材料で形成し、ベース部に第一係合部を設けると共に、成形部に前記第一係合部と円周方向で係合する第二係合部を設け、第一係合部と第二係合部とで回り止めを構成し
    回り止めを、磁気センサと対向しない領域に配置し、
    回り止めを、成形部を射出成形する際の射出成形材料の流動方向下流側に設けたことを特徴とする磁気エンコーダ装置。
  2. 回転部材に取り付けるための取り付け面を有するベース部と、ベース部をインサートして射出成形された成形部とを備え、成形部に円周方向に配列した複数の磁極を有する磁気エンコーダトラックが設けられ、磁気エンコーダトラックの各磁極を磁気センサとの対向領域で移動させることで、回転部材の角度が検出される磁気エンコーダ装置において、
    ベース部と成形部を異種材料で形成し、ベース部に第一係合部を設けると共に、成形部に前記第一係合部と円周方向で係合する第二係合部を設け、第一係合部と第二係合部とで回り止めを構成し、
    ベース部を円筒状とし、成形部に、ベース部の軸方向一方側の端面を覆う第一プレート部と、ベース部の軸方向他方側の端面を覆う第二プレート部と、ベース部の外周面を覆う円筒部とを設け、かつ成形部を、第一プレート部から円筒部を経て第二プレート部に至るまで連続して形成したことを特徴とする磁気エンコーダ装置。
  3. 第一プレート部の内周面にゲート跡を有する請求項記載の磁気エンコーダ装置。
  4. 成形部の第二係合部を第二プレート部に形成した請求項記載の磁気エンコーダ装置。
  5. 前記ゲート跡が第一プレート部の内周面全周にわたって形成されている請求項記載の磁気エンコーダ装置。
  6. 成形部の第二係合部を、ベース部の第一係合部を成形型にして成形した請求項1または2記載の磁気エンコーダ装置。
  7. ベース部を焼結金属で形成し、ベース部の少なくとも取り付け面をサイジングで仕上げた請求項1または2記載の磁気エンコーダ装置。
  8. 成形部の射出成形材料として、熱可塑性樹脂と磁性粉を主成分とするものを用いた請求項1または2記載の磁気エンコーダ装置。
  9. 請求項1または2に記載した磁気エンコーダ装置と、ベース部材が取り付けられる回転部材と、磁気エンコーダトラックに対向する磁気センサとを有する回転検出装置。
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