JP6333529B2 - リチウムイオン二次電池用負極材、リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極材、リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極材、該負極材を用いたリチウムイオン二次電池用負極、及び該負極を備えたリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は、正極、負極及び電解質を備えて構成される。そして、正極及び負極、すなわち電極は、電極活物質が配合されて構成され、通常はさらに、導電助剤及びバインダーが配合されて構成される。なかでも電極活物質は、リチウムイオン二次電池の容量に関わる重要な因子であり、負極活物質として従来は、主に黒鉛(グラファイト)が使用されている。
これに対して、より高容量のリチウムイオン二次電池を実現し得る負極活物質として、ケイ素が注目されている。例えば、黒鉛を用いた場合の容量が375mAh/g程度であるのに対して、ケイ素を用いた場合には4200mAh/g程度の容量が実現可能である。そして、ケイ素を用いて負極を構成したリチウムイオン二次電池として、種々のものが開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
特表2009−521792号公報 特表2010−519718号公報
しかし、負極活物質としてケイ素を用いて負極を構成した従来のリチウムイオン二次電池では、充放電時の初期クーロン効率が不十分であるという問題点があった。初期クーロン効率とは、初回の充電電気量に対して取り出し得る放電電気量の割合のことであり、初期クーロン効率が低いことは、充放電サイクルの1サイクル目から取り出し得る放電電気量が少なく、2サイクル目以降も取り出し得る放電電気量が当然に少なくなることから、リチウムイオン二次電池として、電池性能の向上が見込めない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ケイ素を用いても初期クーロン効率に優れるリチウムイオン二次電池用の負極材、該負極材を用いたリチウムイオン二次電池用負極、及び該負極を備えたリチウムイオン二次電池を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、
本発明は、ケイ素及び一酸化ケイ素のいずれか一方又は両方、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤並びにバインダーが配合されてなるリチウムイオン二次電池用負極材であって、記リチウムイオン二次電池用負極材において、前記ケイ素、一酸化ケイ素、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤及びバインダーの総配合量に占める、ケイ素及び一酸化ケイ素の総配合量の比率が30〜55質量%であり、前記リチウムイオン二次電池用負極材において、前記ケイ素、一酸化ケイ素、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤及びバインダーの総配合量に占める、金属シリサイドの配合量の比率が1〜15質量%であり、前記リチウムイオン二次電池用負極材において、前記ケイ素、一酸化ケイ素、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤及びバインダーの総配合量に占める、遷移金属カルコゲナイドの配合量の比率が4〜45質量%であり、前記金属シリサイドが二ケイ化モリブデンであることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材提供する。
発明のリチウムイオン二次電池用負極材においては、前記遷移金属カルコゲナイドが、遷移金属の硫化物であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材においては、前記遷移金属カルコゲナイドが、モリブデン、銅、タングステン又はチタンのカルコゲナイドであることが好ましい。
発明のリチウムイオン二次電池用負極材においては、前記遷移金属カルコゲナイドが硫化モリブデン(IV)であることが好ましい。
また、本発明は、前記リチウムイオン二次電池用負極材を用いて形成された負極活物質層を、集電体上に備えたことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極を提供する。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極は、前記リチウムイオン二次電池用負極材が、さらに溶媒が配合されてなる液状組成物であり、前記負極活物質層が、前記液状組成物を塗工及び乾燥させて形成されたものであることが好ましい。
また、本発明は、前記リチウムイオン二次電池用負極を備えたことを特徴とするリチウムイオン二次電池を提供する。
本発明のリチウムイオン二次電池は、さらに、(A)カルボン酸リチウム塩並びに(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体、あるいは(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体が配合されてなる電解液を備えたことが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池においては、前記(A)カルボン酸リチウム塩がシュウ酸リチウムであり、前記(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体がシュウ酸リチウム−三フッ化ホウ素錯体であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池においては、前記電解液が、プロピレンカーボネート及びビニレンカーボネートが配合されてなるものであることが好ましい。
本発明によれば、ケイ素を用いても初期クーロン効率に優れるリチウムイオン二次電池用の負極材、該負極材を用いたリチウムイオン二次電池用負極、及び該負極を備えたリチウムイオン二次電池が提供される。
<リチウムイオン二次電池用負極材>
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材(以下、「負極材」と略記することがある)は、ケイ素(シリコン)及び一酸化ケイ素のいずれか一方又は両方(以下、「ケイ素等」と略記することがある)、金属シリサイド、導電助剤並びにバインダーが配合されてなることを特徴とする。
かかる負極材が金属シリサイドを用いていることで、負極は、ケイ素等を用いているにも関わらず、初期クーロン効率に優れたものとなる。なお、本発明において「初期クーロン効率」とは、初回の充電電気量に対して取り出し得る放電電気量の割合([1サイクル目の放電容量(mAh)/1サイクル目の充電容量(mAh)]×100(%))を意味する。
また、本発明の負極材で好ましいものとしては、さらに遷移金属カルコゲナイドが配合されてなるものが例示できる。
ケイ素を用いて負極を構成した場合、充放電時におけるリチウムイオンの吸蔵及び放出過程で、負極が膨張及び収縮することが知られている。負極では、1個のケイ素原子に対して4個のリチウムイオンの吸蔵及び放出が可能であり、二次電池が作動する際に、負極は4倍膨張及び収縮し得るため、充放電サイクルを繰り返し行った場合、この膨張及び収縮の影響により放電容量が低下し、後述するサイクル特性が低くなることが知られている。
これに対して、本発明の負極材において遷移金属カルコゲナイドを用いることにより、負極は、ケイ素等を用いているにも関わらず、膨張及び収縮の影響が顕著に緩和され、リチウムイオン二次電池は、充放電サイクルを繰り返し行っても、放電容量の低下が抑制された、サイクル特性に優れたものとなる。このような優れたサイクル特性は、初期クーロン効率が優れていることでもたらされる。初期クーロン効率が低い場合、サイクル特性が見かけ上良好であっても、充放電サイクルを繰り返し行った後で取り出し得る放電電気量は実際には少ないので、サイクル特性が実質的には良好とはいえないためである。
本発明において、ケイ素等としては、ケイ素及び一酸化ケイ素のいずれか一方のみを用いてもよいし、ケイ素及び一酸化ケイ素を併用してもよく、目的に応じて適宜選択すればよい。
ケイ素及び一酸化ケイ素を併用する場合には、これらの配合量の比率は、任意に選択できる。
前記ケイ素等は、粉末状であることが好ましく、粒子状であることがより好ましく、例えば、平均粒子径が1μm以下であることが好ましく、600nm以下であることがより好ましい。このような微粉末状のケイ素等を用いるとで、金属シリサイド及び遷移金属カルコゲナイドを用いることによる効果が、より顕著に得られる。
ケイ素等の平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡を用いて、任意のケイ素等の粒子約100個について粒子径を計測し、その平均値を算出することで求められる。
ケイ素等は、例えば、ボールミル等を用いる公知の手法で粉砕することにより、平均粒子径を所望の値に調節できる。
前記負極材において、前記ケイ素、一酸化ケイ素、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤及びバインダーの総配合量に占める、ケイ素及び一酸化ケイ素の総配合量の比率(配合比率)は、5〜85質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。ケイ素及び一酸化ケイ素の総配合量の比率が前記下限値以上であることで、リチウムイオン二次電池は放電容量がより向上し、ケイ素及び一酸化ケイ素の総配合量の比率が前記上限値以下であることで、負極構造の安定した維持が容易となる。
前記金属シリサイドを構成する金属種は、シリサイド(ケイ化物)を構成し得るものであれば特に限定されず、金属シリサイドとしては、一般式「ZSi」、「ZSi」又は「ZSi」(式中、Zは金属原子である。)で表されるものが例示できる。なかでも、金属シリサイドは、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、マグネシウム(Mg)又はカルシウム(Ca)のシリサイドであることが好ましく、二ケイ化モリブデン(MoSi)、二ケイ化タングステン(WSi)、二ケイ化鉄(FeSi)、二ケイ化チタン(TiSi)、二ケイ化クロム(CrSi)、二ケイ化ニッケル(NiSi)、二ケイ化タンタル(TaSi)、二ケイ化バナジウム(VSi)、二ケイ化コバルト(CoSi)、二ケイ化ニオブ(NbSi)、二ケイ化マグネシウム(MgSi)又は二ケイ化カルシウム(CaSi)であることがより好ましく、二ケイ化モリブデンであることが特に好ましい。
前記金属シリサイドは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
前記負極材において、前記ケイ素、一酸化ケイ素、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤及びバインダーの総配合量に占める、金属シリサイドの配合量の比率(配合比率)は、1〜55質量%であることが好ましく、1〜45質量%であることがより好ましい。金属シリサイドの配合量の比率が前記下限値以上であることで、リチウムイオン二次電池は初期クーロン効率により優れたものとなり、金属シリサイドの配合量の比率が前記上限値以下であることで、リチウムイオン二次電池の放電容量の向上と、負極構造の安定した維持が容易となる。
前記遷移金属カルコゲナイドは、遷移金属とカルコゲンとを構成元素とするものである。
遷移金属は、周期表の第3属から第11族までの元素であり、第4周期、第5周期又は第6周期の元素であることが好ましく、モリブデン、銅、タングステン又はチタンであることがより好ましい。すなわち、前記遷移金属カルコゲナイドは、モリブデン、銅、タングステン又はチタンのカルコゲナイドであることがより好ましい。
カルコゲンは、周期表の第16属の元素であり、酸素、硫黄、セレン、テルルが例示でき、本発明においては、硫黄又は酸素であることが好ましく、硫黄であることがより好ましい。すなわち、前記遷移金属カルコゲナイドは、遷移金属の硫化物又は酸化物であることが好ましく、遷移金属の硫化物であることがより好ましい。
好ましい前記遷移金属カルコゲナイドとしては、硫化モリブデン(IV)(MoS)、硫化銅(II)(CuS)、硫化タングステン(IV)(WS)、硫化チタン(IV)(TiS)が例示できる。
遷移金属カルコゲナイドは、分子同士でグラファイトのような層状構造を形成し得るものが好ましい。
前記遷移金属カルコゲナイドは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
前記負極材において、前記ケイ素、一酸化ケイ素、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤及びバインダーの総配合量に占める、遷移金属カルコゲナイドの配合量の比率(配合比率)は、55質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、0質量%であってもよい。遷移金属カルコゲナイドの配合量の比率が前記上限値以下であることで、リチウムイオン二次電池の初期クーロン効率及び放電容量の向上と、負極構造の安定した維持が容易となる。そして、遷移金属カルコゲナイドを用いる場合、前記ケイ素、一酸化ケイ素、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤及びバインダーの総配合量に占める、遷移金属カルコゲナイドの配合量の比率(配合比率)は、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。遷移金属カルコゲナイドの配合量の比率が前記下限値以上であることで、リチウムイオン二次電池はサイクル特性により優れたものとなる。
前記負極材において、前記ケイ素、一酸化ケイ素、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤及びバインダーの総配合量に占める、ケイ素、一酸化ケイ素、金属シリサイド及び遷移金属カルコゲナイドの合計配合量の比率(合計配合比率)は、65〜95質量%であることが好ましく、70〜90質量%であることがより好ましい。前記合計配合量の比率が前記下限値以上であることで、金属シリサイド、又は金属シリサイド及び遷移金属カルコゲナイドを併用したことによる効果がより顕著に得られ、前記合計配合量の比率が前記上限値以下であることで、負極構造の安定した維持が容易となる。
前記導電助剤は公知のものでよく、好ましいものとしては、黒鉛(グラファイト);ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;カーボンナノチューブ;グラフェン;フラーレン等が例示できる。
前記導電助剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
前記負極材において、前記ケイ素、一酸化ケイ素、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤及びバインダーの総配合量に占める、導電助剤の配合量の比率(配合比率)は、3〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。導電助剤の配合量の比率が前記下限値以上であることで、導電助剤を用いたことによる効果がより顕著に得られ、導電助剤の配合量の比率が前記上限値以下であることで、リチウムイオン二次電池の初期クーロン効率及び放電容量の向上と、負極構造の安定した維持が容易となる。
前記バインダーは公知のものでよく、好ましいものとしては、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸リチウム(PAALi)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体(PVDF−HFP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)等が例示できる。
前記バインダーは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
前記負極材において、前記ケイ素、一酸化ケイ素、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤及びバインダーの総配合量に占める、バインダーの配合量の比率(配合比率)は、3〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。バインダーの配合量の比率が前記下限値以上であることで、負極構造がより安定して維持され、バインダーの配合量の比率が前記上限値以下であることで、リチウムイオン二次電池の初期クーロン効率及び放電容量の向上が容易となる。
前記負極材は、前記ケイ素等、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤及びバインダー以外に、これらに該当しないその他の成分が配合されてなるものでもよい。
前記その他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、好ましいものとしては、前記配合成分(ケイ素等、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤、バインダー)を溶解又は分散させるための溶媒が例示できる。
このような、さらに溶媒が配合されてなる負極材は、使用時において流動性を有する液状組成物であることが好ましい。
前記溶媒は、前記配合成分の種類に応じて任意に選択でき、好ましいものとしては、水、有機溶媒が例示できる。
前記有機溶媒で好ましいものとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール;N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の鎖状又は環状アミド;アセトン等のケトンが例示できる。
前記溶媒は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
負極材における前記溶媒の配合量は、特に限定されず、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、溶媒が配合された液状組成物である負極材を塗工及び乾燥させて、後述する負極活物質層を形成する場合には、この液状組成物が塗工に適した粘度となるように、溶媒の配合量を調節すればよい。具体的には、負極材において、配合成分の総量に占める、溶媒以外の配合成分の合計配合量の比率(配合比率)が、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜35質量%となるように、溶媒の配合量を調節するとよい。
前記その他の成分として、前記溶媒以外の成分(その他の固体成分)を配合する場合、前記負極材において、溶媒以外の配合成分の総量に占めるその他の固体成分の配合量の比率(配合比率)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
前記負極材は、前記ケイ素等、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤及びバインダー、並びに必要に応じてその他の成分を配合することで製造できる。
各成分の配合時には、これら成分を添加して、各種手段により十分に混合することが好ましい。
各成分は、これらを順次添加しながら混合してもよいし、全成分を添加してから混合してもよく、配合成分が均一に混合されればよい。
本発明においては、ケイ素等及び金属シリサイド、並びに必要に応じて遷移金属カルコゲナイドを、導電助剤及びバインダーの少なくとも一方と共存させてから混合することが好ましく、ケイ素等及び金属シリサイド、並びに必要に応じて遷移金属カルコゲナイドを、導電助剤及びバインダーの少なくとも一方と共に添加して、混合してもよい。そして、ケイ素等及び金属シリサイド、並びに必要に応じて遷移金属カルコゲナイドを、導電助剤及びバインダーと共存させてから混合することが好ましく、ケイ素等及び金属シリサイド、並びに必要に応じて遷移金属カルコゲナイドを、導電助剤及びバインダーと共に添加して、混合してもよい。
前記その他の成分として前記溶媒を配合する場合、この溶媒は、少なくとも一部を、前記ケイ素等、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤、バインダー、及びその他の固体成分からなる群から選択される一種以上とあらかじめ混合して、これら成分の溶液又は分散液として、配合してもよい。このような溶液又は分散液の調製に用いる溶媒は、全量であってもよい。
各成分の混合方法は、特に限定されず、例えば、撹拌子、撹拌翼、ボールミル、スターラー、超音波分散機、超音波ホモジナイザー、自公転ミキサー等を使用する公知の方法を適用すればよい。そして、複数種の方法を組み合わせて行ってもよい。
混合温度、混合時間等の混合条件は、各種方法に応じて適宜設定すればよい。通常は、混合時の温度は10〜50℃であることが好ましく、15〜35℃であることがより好ましい。また、混合時間は3〜40分であることが好ましく、5〜20分であることがより好ましい。
各成分を添加及び混合して得られた組成物は、そのまま負極材として用いてもよいし、例えば、配合した前記溶媒の一部を留去等によって除去するなど、得られた組成物に何らかの操作を追加して行って得られたものを、負極材として用いてもよい。
<リチウムイオン二次電池用負極>
本発明のリチウムイオン二次電池用負極(以下、「負極」と略記することがある)は、上記本発明の負極材を用いて形成された負極活物質層を、集電体(負極集電体)上に備えたことを特徴とする。
かかる負極は、本発明の負極材を用いること以外は、公知の負極と同様の方法で製造できる。
集電体は、公知のものでよく、その材質で好ましいものとしては、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ステンレス鋼等の導電性を有するものが例示できる。
また、前記集電体はシート状であることが好ましく、その厚さは、5〜20μmであることが好ましい。
負極活物質層の厚さは、特に限定されないが、5〜100μmであることが好ましく、10〜60μmであることがより好ましい。
負極活物質層は、前記負極材を用いて集電体上に形成すればよい。
例えば、負極材として、溶媒が配合されてなる液状組成物を用いる場合には、この液状組成物を塗工及び乾燥させることで、負極活物質層を形成できる。
液状組成物の塗工方法としては、グラビアコーター、コンマコーター、リップコーター等の各種コーターを用いる方法;ドクターブレード法;ディッピング法等の、各種塗布方法が例示できる。
液状組成物の乾燥は、公知の方法で常圧下又は減圧下で行えばよい。そして、乾燥温度は、40〜180℃であることが好ましい。乾燥温度が前記下限値以上であることで、短時間で乾燥させることができ、乾燥温度が前記上限値以下であることで、集電体の酸化等を抑制する効果が高くなる。乾燥時間は、乾燥温度に応じて適宜調節すればよいが、例えば、12〜48時間とすることができる。
負極活物質層は、集電体上に直接形成して設けてもよいし、他の基材上に形成してから集電体上に移動させ、集電体上に圧着させて設けてもよい。そして、負極活物質層は、集電体上に直接形成する場合にも、集電体上に圧着させてもよい。
本発明の負極は、負極材において金属シリサイドを用いたことにより、ケイ素等を用いているにも関わらず、初期クーロン効率に優れたものとなる。
また、本発明の負極は、負極材においてさらに遷移金属カルコゲナイドを用いた場合、ケイ素等を用いているにも関わらず、リチウムイオン二次電池の充放電(リチウムイオンの吸蔵及び放出)時において、膨張及び収縮の影響が顕著に緩和される。その結果、リチウムイオン二次電池は、初期クーロン効率だけでなくサイクル特性にも優れたものとなる。
また、遷移金属カルコゲナイドは、リチウムイオンの吸蔵及び放出が可能であり、リチウムイオン伝導材としても作用し得る。さらに、遷移金属カルコゲナイドには、硫化銅(II)(CuS)のように導電性を有するものもある。したがって、本発明の負極は、遷移金属カルコゲナイドを用いた場合でも、リチウムイオンの吸蔵及び放出が妨げられることがないと推測される。硫化モリブデン(IV)(MoS)は、導電性は低いものの潤滑性を有しており、これが特に顕著に、充放電時における負極の膨張及び収縮の影響を緩和して、リチウムイオン二次電池のサイクル特性の向上に寄与していると推測される。
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、上記本発明の負極を備えたことを特徴とする。
かかるリチウムイオン二次電池は、本発明の負極を備えたこと以外は、従来のリチウムイオン二次電池と同様の構成とすることができ、例えば、前記負極以外に、正極及び電解液、ゲル電解質又は固体電解質を備えて構成される。さらに必要に応じて、負極と正極との間に、セパレータが設けられていてもよい。
前記正極としては、集電体(正極集電体)上に、正極活物質、導電助剤及びバインダー等が配合されてなる正極材を用いて形成された正極活物質層を備えたものが例示できる。正極としては、市販品を用いてもよい。
正極における集電体、導電助剤及びバインダーは、いずれも負極における集電体、導電助剤及びバインダーと同様のものでよい。
正極活物質としては、一般式「LiM(式中、Mは金属であり;x及びyは、金属Mと酸素Oとの組成比である。)」で表される金属酸リチウム化合物が例示できる。
このような金属酸リチウム化合物としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMn)等が例示でき、類似の組成であるオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)を用いることもできる。
前記金属酸リチウム化合物は、前記一般式において、Mが複数種のものであってもよく、このような金属酸リチウム化合物としては、一般式「LiM (式中、M、M及びMは互いに異なる種類の金属であり;p、q、r及びyは、金属M、M及びMと酸素Oとの組成比である。)」で表されるものが例示できる。ここで、p+q+r=xである。
このような金属酸リチウム化合物としては、LiNi0.33Mn0.33Co0.33等が例示できる。
正極活物質は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
正極活物質層の厚さは、特に限定されないが、20〜60μmであることが好ましい。
正極は、前記負極材に代えて前記正極材を用いること以外は、前記負極と同様の方法で製造できる。
前記電解液としては、(A)カルボン酸リチウム塩、(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体、並びに(C)有機溶媒が配合されてなるもの(以下、「第一の電解液」と略記することがある)が例示できる。
(A)カルボン酸リチウム塩は、電解質であり、カルボキシ基がリチウム塩(−C(=O)−OLi)を構成しているものであればよく、リチウム塩を構成するカルボキシ基の数は、特に限定されない。例えば、カルボキシ基の数が2以上である場合には、すべてのカルボキシ基がリチウム塩を構成していてもよいし、一部のカルボキシ基のみがリチウム塩を構成していてもよい。
(A)カルボン酸リチウム塩で好ましいものとしては、ギ酸リチウム(HCOOLi)、酢酸リチウム(CHCOOLi)、プロピオン酸リチウム(CHCHCOOLi)、酪酸リチウム(CH(CHCOOLi)、イソ酪酸リチウム((CHCHCOOLi)、吉草酸リチウム(CH(CHCOOLi)、イソ吉草酸リチウム((CHCHCHCOOLi)、カプロン酸リチウム(CH(CHCOOLi)等の1価カルボン酸のリチウム塩;シュウ酸リチウム((COOLi))、マロン酸リチウム(LiOOCCHCOOLi)、コハク酸リチウム((CHCOOLi))、グルタル酸リチウム(LiOOC(CHCOOLi)、アジピン酸リチウム((CHCHCOOLi))等の2価カルボン酸のリチウム塩;乳酸リチウム(CHCH(OH)COOLi)等の水酸基を有する1価カルボン酸のリチウム塩;酒石酸リチウム((CH(OH)COOLi))、リンゴ酸リチウム(LiOOCCHCH(OH)COOLi)等の水酸基を有する2価カルボン酸のリチウム塩;マレイン酸リチウム(LiOOCCH=CHCOOLi、cis体)、フマル酸リチウム(LiOOCCH=CHCOOLi、trans体)等の不飽和2価カルボン酸のリチウム塩;クエン酸リチウム(LiOOCCHC(COOLi)(OH)CHCOOLi)等の3価カルボン酸のリチウム塩(水酸基を有する3価カルボン酸のリチウム塩)が例示でき、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、コハク酸リチウムがより好ましく、シュウ酸リチウムが特に好ましい。
(A)カルボン酸リチウム塩は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
(B)三フッ化ホウ素及び三フッ化ホウ素錯体は、(A)カルボン酸リチウム塩と錯形成反応を行うものであり、三フッ化ホウ素錯体は、三フッ化ホウ素(BF)が別の成分に配位結合したものである。
好ましい前記三フッ化ホウ素錯体としては、三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体(BF・O(CH)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BF・O(C)、三フッ化ホウ素ジn−ブチルエーテル錯体(BF・O(C)、三フッ化ホウ素ジtert−ブチルエーテル錯体(BF・O((CHC))、三フッ化ホウ素tert−ブチルメチルエーテル錯体(BF・O((CHC)(CH))、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体(BF・OC)等の三フッ化ホウ素アルキルエーテル錯体;三フッ化ホウ素メタノール錯体(BF・HOCH)、三フッ化ホウ素プロパノール錯体(BF・HOC)、三フッ化ホウ素フェノール錯体(BF・HOC)等の三フッ化ホウ素アルコール錯体が例示できる。
(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体としては、取り扱いが容易で、錯形成反応がより円滑に進行する点から、前記三フッ化ホウ素錯体を用いることが好ましい。
(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体としては、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体の配合量は特に限定されず、(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体や(A)カルボン酸リチウム塩の種類に応じて適宜調節すればよい。通常は、[(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体の配合量(モル数)]/[配合された(A)カルボン酸リチウム塩中のリチウム原子のモル数]のモル比が0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましい。このような範囲とすることで、(C)有機溶媒に対する(A)カルボン酸リチウム塩の溶解度がより向上する。また、前記モル比の上限値は本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、2.0であることが好ましく、1.5であることがより好ましい。
(C)有機溶媒は特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ビニレンカーボネート等の炭酸エステル化合物;γ−ブチロラクトン等のラクトン化合物;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等のカルボン酸エステル化合物;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;スルホラン等のスルホン化合物が例示できる。
(C)有機溶媒は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
(C)有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル及びスルホランからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
二種以上を併用した(C)有機溶媒としては、プロピレンカーボネート及びビニレンカーボネートが配合されたもの、並びにエチレンカーボネート及びジメチルカーボネートが配合されたものが好ましく、プロピレンカーボネート及びビニレンカーボネートが配合されたものがより好ましい。
前記電解液における(C)有機溶媒の配合量は特に限定されず、例えば、電解質の種類に応じて、適宜調節すればよい。通常は、リチウム原子(Li)の濃度が、好ましくは0.2〜3.0モル/kg、より好ましくは0.4〜2.0モル/kgとなるように、配合量を調節することが好ましい。
第一の電解液としては、(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体、及び(C)有機溶媒が配合されてなるものも例示できる。
(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体は、例えば、(A)カルボン酸リチウム塩、(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体、並びに(C’)溶媒を配合して、(A)カルボン酸リチウム塩と、(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体と、を反応させる工程(以下、「反応工程」と略記する)と、前記反応後の反応液から、(C’)溶媒と、(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体に由来する不純物と、を除去する工程(以下、「除去工程」と略記する)と、を有する製造方法で製造できる。かかる製造方法で得られた(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体は、(A)カルボン酸リチウム塩と(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体とが、錯形成反応して、形成されたものである。
この製造方法において、(A)カルボン酸リチウム塩、(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体は、上記のものと同じである。すなわち、(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体における「カルボン酸リチウム塩」は、(A)カルボン酸リチウム塩と同じものである。
(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
前記(C’)溶媒は、前記反応工程における、(A)カルボン酸リチウム塩と(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体との錯形成反応を妨げず、これらを溶解可能なものであれば、特に限定されないが、有機溶媒が好ましく、常圧下又は減圧下での留去が可能なものが好ましい。
(C’)溶媒の沸点は、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、35℃以上であることが特に好ましい。そして、(C’)溶媒の沸点は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。(C’)溶媒の沸点が前記下限値以上であることで、前記反応工程における反応液を常温で撹拌することができるので、前記反応工程をより容易に行うことができる。また、(C’)溶媒の沸点が前記上限値以下であることで、前記除去工程での留去により、(C’)溶媒をより容易に除去できる。
(C’)溶媒における好ましい前記有機溶媒としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状炭酸エステル化合物(鎖状構造中に、炭酸エステル結合を有する化合物);アセトニトリル等のニトリル化合物;テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物(環状構造中にエーテル結合を有する化合物);ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル化合物(鎖状構造中にエーテル結合を有する化合物);酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のカルボン酸エステル化合物が例示できる。
これらの中でも、前記有機溶媒としては、鎖状炭酸エステル化合物、ニトリル化合物、環状エーテル化合物が好ましい。
(C’)溶媒は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
前記除去工程において、前記不純物としては、(A)カルボン酸リチウム塩と反応せずに残存した、過剰量の(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体や、これから生じた副生物が挙げられ、前記副生物としてより具体的には、(B)成分である三フッ化ホウ素錯体において、反応前に元々三フッ化ホウ素に配位結合していた成分等が例示できる。これら不純物は、留去が可能なものである。
(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体を用いた第一の電解液は、例えば、(A)カルボン酸リチウム塩、並びに(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体を配合するのに代えて、(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体を配合することにより、(A)カルボン酸リチウム塩、並びに(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体が配合されてなる上記の第一の電解液と同様の方法で得られる。例えば、(C)有機溶媒の配合量は特に限定されないが、リチウム原子(Li)の濃度が、好ましくは0.2〜3.0モル/kg、より好ましくは0.4〜2.0モル/kgとなるように、配合量を調節することが好ましい。
また、前記電解液としては、電解質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ素リチウム(LiBF)、リチウムビスフルオロスルホニルイミド(LiFSI)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(SOCF、LiTFSI)等の、(A)カルボン酸リチウム塩以外の公知のリチウム塩が有機溶媒に溶解されてなるもの(以下、「第二の電解液」と略記することがある)も例示できる。
第二の電解液における前記電解質は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
第二の電解液における前記有機溶媒としては、第一の電解液における(C)有機溶媒と同じのものが例示できる。
また、第二の電解液におけるリチウム原子(Li)の濃度も、第一の電解液の場合と同様である。
第一及び第二の電解液は、いずれも、上記の必須成分(第一の電解液における(A)カルボン酸リチウム塩、(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体、(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体、(C)有機溶媒;第二の電解液におけるリチウム塩、有機溶媒)以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、任意成分が配合されてなるものでもよい。
前記任意成分は、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
第一及び第二の電解液は、前記必須成分、及び必要に応じて任意成分を配合することで製造できる。各成分の配合方法は、前記負極材の製造時における各成分の配合方法と同様である。ただし、混合時の組成は特に限定されない。
本発明において、前記電解液は、(A)カルボン酸リチウム塩並びに(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体、あるいは(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体が配合されてなるもの、すなわち第一の電解液であることが好ましい。
前記セパレータの材質は特に限定されないが、微多孔性の高分子膜、不織布、ガラスファイバー等が例示でき、これら材質からなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
前記ゲル電解質としては、(A)カルボン酸リチウム塩、(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体、(C)有機溶媒、並びに(D)マトリクスポリマーが配合されてなるもの;(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体、(C)有機溶媒、及び(D)マトリクスポリマーが配合されてなるものが例示でき、必要に応じて、前記第一及び第二の電解液における任意成分が配合されてなるものでもよい。また、前記ゲル電解質としては、第一の電解液に、さらに(D)マトリクスポリマーが配合されてなるものも例示できる。ここで、(A)カルボン酸リチウム塩、(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体、(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体、並びに(C)有機溶媒は、いずれも第一の電解液におけるものと同じである。
ゲル電解質は、型を用いて所望の形状に成型してもよい。
ゲル電解質では、(D)マトリクスポリマー以外の成分(電解液)が、マトリクスポリマー中に保持される。
ゲル電解質は、配合した(C)有機溶媒の一部が、乾燥等によって除去されたものでもよく、製造時において、ゲル電解質中に主として残存する(C)有機溶媒とは異なる有機溶媒(希釈用有機溶媒)が別途配合され、この希釈用有機溶媒が上記の乾燥時に除去されたものであってもよい。
(D)マトリクスポリマーは、特に限定されず、固体電解質分野で公知のものが適宜使用できる。
好ましい(D)マトリクスポリマーとしては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系ポリマー(ポリエーテル骨格を有するポリマー);ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン−六フッ化アセトン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー(フッ素原子を有するポリマー);ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、エチレンオキシドユニットを含むポリアクリレート等のポリアクリル系ポリマー((メタ)アクリル酸エステル又はアクリルアミドから誘導される構成単位を有するポリマー);ポリアクリロニトリル;ポリホスファゼン;ポリシロキサンが例示できる。
(D)マトリクスポリマーは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
(D)マトリクスポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン−六フッ化アセトン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリホスファゼン及びポリシロキサンからなる群から選択される一種以上であることが好ましい。
ゲル電解質において、(D)マトリクスポリマーの配合量は特に限定されず、その種類に応じて適宜調節すればよいが、配合成分の総量に占める(D)マトリクスポリマーの配合量は、2〜50質量%であることが好ましい。(D)マトリクスポリマーの配合量が前記下限値以上であることで、ゲル電解質の強度がより向上し、(D)マトリクスポリマーの配合量が前記上限値以下であることで、リチウムイオン二次電池はより優れた電池性能を示す。
前記希釈用有機溶媒は、配合成分のいずれかを十分に溶解又は分散させることができるものが好ましく、具体的には、アセトニトリル等のニトリル化合物;テトラヒドロフラン等のエーテル化合物:ジメチルホルムアミド等のアミド化合物が例示できる。
希釈用有機溶媒は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すればよい。
ゲル電解質は、リチウムイオン二次電池が通常使用される40℃以下の環境において、流動性を示さないものが好ましい。
ゲル電解質製造時における各成分の配合方法は、前記電解液の場合と同様でよい。
希釈用有機溶媒を除去するときの乾燥方法は、特に限定されず、例えば、ドライボックス、真空デシケータ、減圧乾燥機等を使用する公知の方法を適用すればよい。
前記固体電解質としては、(A)カルボン酸リチウム塩、(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体、希釈用有機溶媒、並びに(D)マトリクスポリマーが配合されて得られた組成物;(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体、希釈用有機溶媒、及び(D)マトリクスポリマーが配合されて得られた組成物から、乾燥により前記希釈用有機溶媒が除去されてなるものが例示でき、必要に応じて、前記第一及び第二の電解液における任意成分が配合されてなるものでもよい。ここで、(A)カルボン酸リチウム塩、(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体、(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体、並びに(C)有機溶媒は、いずれも第一の電解液におけるものと同じであり、希釈用有機溶媒及び(D)マトリクスポリマーは、前記ゲル電解質におけるものと同じである。
固体電解質は、型を用いて所望の形状に成型してもよい。
固体電解質において、(D)マトリクスポリマーの配合量は特に限定されず、その種類に応じて適宜調節すればよいが、配合成分の総量に占める(D)マトリクスポリマーの配合量は、2〜65質量%であることが好ましい。(D)マトリクスポリマーの配合量が前記下限値以上であることで、固体電解質(電解質膜)の強度がより向上し、(D)マトリクスポリマーの配合量が前記上限値以下であることで、リチウムイオン二次電池はより優れた電池性能を示す。
固体電解質製造時における各成分の配合方法は、前記電解液の場合と同様でよい。
また、希釈用有機溶媒を除去するときの乾燥方法は、前記ゲル電解質の場合と同様でよい。
前記リチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、円筒型、角型、コイン型、シート型等、種々のものに調節できる。
前記リチウムイオン二次電池は、公知の方法に従って、例えば、グローブボックス内又は乾燥空気雰囲気下で、前記電解液、ゲル電解質又は固体電解質、及び電極を用いて製造すればよい。
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
なお、以下に示す実施例1〜3、7〜10は参考例である。
本実施例で使用した化学物質を以下に示す。
・金属シリサイド
二ケイ化モリブデン(MoSi)(和光純薬工業社製)
・導電助剤
アセチレンブラック(電気化学工業社製)
カーボンナノチューブ(保土ヶ谷化学社製)
・バインダー
カルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬社製)
ポリイミド(河村産業社製)
・遷移金属カルコゲナイド
硫化モリブデン(IV)(MoS)(アルドリッチ社製)
・(A)カルボン酸リチウム塩
シュウ酸リチウム(アルドリッチ社製)
・(B)三フッ化ホウ素錯体
三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BF・O(C)(アルドリッチ社製)
・有機溶媒
エチレンカーボネート(以下、「EC」と略記する)(キシダ化学社製)
ジメチルカーボネート(以下、「DMC」と略記する)(キシダ化学社製)
プロピレンカーボネート(以下、「PC」と略記する)(キシダ化学社製)
ビニレンカーボネート(以下、「VC」と略記する)(キシダ化学社製)
・その他
水酸化リチウム・一水和物(LiOH・HO)(アルドリッチ社製)
<リチウムイオン二次電池の製造>
[実施例1]
(シリコンナノ粒子の製造)
シリコン屑ウェハ(信越半導体社製)(150g)、φ20mmジルコニアボールを専用ジルコニア容器に入れ、遊星型ボールミル(P−6:FRITSCH)で400rpm、30分の条件でシリコン屑ウェハを粗粉砕した。
得られた粗粉砕シリコン(100g)、2−プロパノール(120g)、φ1mmジルコニアビーズを専用ジルコニア容器に入れ、遊星型ボールミル(P−6:FRITSCH)で400rpm、60分の条件で粗粉砕シリコンを粉砕し、平均粒子径が約150nmである微粉末シリコンの2−プロパノール分散液を得た。
得られた微粉末シリコンの2−プロパノール分散液(110g)、2−プロパノール(40g)、φ0.5mmジルコニアビーズを専用ジルコニア容器に入れ、遊星型ボールミル(P−6:FRITSCH)で400rpm、90分の条件で微粉末シリコンを粉砕し、平均粒子径が約100nmであるシリコンナノ粒子の2−プロパノール分散液を得た。
得られたシリコンナノ粒子の2−プロパノール分散液を遠心分離機による分離及び回収に供し、シリコンナノ粒子の2−プロパノールウェットケーキ(固形分66質量%)を得た。
(MoSiナノ粒子の製造)
シリコン屑ウェハに代えてMoSi(平均粒子径6〜12μm)を用いたこと以外は、上記のシリコンナノ粒子の場合と同様の方法で、シリコンナノ粒子の2−プロパノールウェットケーキ(固形分66質量%)を得た。
(PAALi水溶液の製造)
水酸化リチウム・一水和物(1.63g)を瓶に計り取り、これに水(7g)を加えて、1時間混合した。そして、得られた全量のLiOH水溶液に、35質量%ポリアクリル酸水溶液(PAA水溶液、アルドリッチ社製)(3.5g)を加えて、24時間撹拌し、バインダーとしてポリアクリル酸リチウム(PAALi)を20質量%の濃度で含むPAALi水溶液を得た。
(負極材の製造)
上記で得られたPAALi水溶液(PAALiとして13質量部)、CMC(2質量部)、シリコンナノ粒子のウェットケーキ(シリコンナノ粒子として65質量部)、MoSiナノ粒子のウェットケーキ(MoSiナノ粒子として10質量部)、導電助剤としてアセチレンブラック(10質量部)をそれぞれ容器に計り取り、これにさらに水を加えて、配合成分の総量に占める、溶媒以外の配合成分(PAALi、CMC、シリコンナノ粒子、MoSiナノ粒子及びアセチレンブラック)の合計配合量の比率が、20質量%となるように調節した。
次いで、自転・公転ミキサー(シンキー社製「ARE−250」)を用いて配合成分を25℃で3分間混合した後、ホモジナイザー(東京理化器械社製「VCX−130PB」)を用いて5分間分散させ、さらに、自転・公転ミキサー(シンキー社製「ARE−250」)を用いて25℃で1分間撹拌し、次いで25℃で1分間脱泡させることで、スラリー状の負極材を得た。
得られた負極材における溶媒以外の各成分の配合量を表1に示す。なお、表1中、「−」は、その成分が未配合であることを意味する。
(負極の製造)
銅箔からなる厚さ18μmの集電体上に、乾燥後の厚さが30μmとなるように、ミニコーター(宝仙社製「MC20」)を用いて、得られた負極材を塗布し、この負極材を、50℃のホットプレートを用いて2時間乾燥させ、さらに真空乾燥機を用いて100℃で24時間真空乾燥させた。
次いで、ロールプレス機(テスター産業社製)を用いて、集電体上の乾燥後の負極材を、1500Nの圧力でプレスした後、グローブボックスの乾燥炉内で、100℃で6時間乾燥させることで、集電体上に負極活物質層が形成された負極を得た。
(電解液の製造)
シュウ酸リチウム(0.153g)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(0.426g)、並びに有機溶媒としてEC及びDMCの混合溶媒(2.42g)(EC:DMC=30:70(体積比))をサンプル瓶に量り取り、リチウム原子の濃度が1.0モル/kgとなるように25℃で混合することにより、非水電解液を得た。
(リチウムイオン二次電池の製造)
上記で得られた負極、及び市販品の三元系正極(宝仙社製)を、それぞれ直径16mmの円盤状に打ち抜いた。また、セパレータとしてガラスファイバーからなるものを用い、これを直径17mmの円盤状に打ち抜いた。得られた正極、セパレータ及び負極を、この順にSUS製の電池容器(CR2032)内で積層し、上記で得られた電解液を、セパレータ、負極及び正極に含浸させ、さらに負極上に、SUS製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)を載せ、蓋をすることにより、コイン型セルであるリチウムイオン二次電池を製造した。
[実施例2〜6、比較例1]
負極材製造時の各配合成分の種類とその配合量とを、表1に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、負極材、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
なお、実施例6においては、有機溶媒としてEC及びDMCの混合溶媒(2.42g)(EC:DMC=30:70(体積比))に代えて、PC及びVCの混合溶媒(2.42g)(PC:VC=30:70(体積比))を用いたこと以外は、実施例1の場合と同様の方法で製造した電解液を用いた。
<リチウムイオン二次電池の充放電特性の評価>
上記で得られたリチウムイオン二次電池について、25℃において0.2Cの定電流定電圧充電を、上限電圧4.2Vとして電流値が0.1Cに収束するまで行った後、0.2Cの定電流放電を1.5Vまで行った。その後、充放電電流を1Cとして同様の方法で、充放電サイクルを繰り返し行った。そして、1サイクル目の充電容量及び放電容量の値から、初期クーロン効率([1サイクル目の放電容量(mAh)/1サイクル目の充電容量(mAh)]×100)(%)を算出した。また、10サイクルでの容量維持率([10サイクル目の放電容量(mAh)/1サイクル目の放電容量(mAh)]×100)(%)、及び100サイクルでの容量維持率([100サイクル目の放電容量(mAh)/1サイクル目の放電容量(mAh)]×100)(%)を算出した。結果を表1に示す。
Figure 0006333529
上記結果から明らかなように、負極材において金属シリサイドを用いた実施例1〜6のリチウムイオン二次電池は、負極材において金属シリサイドを用いなかった比較例1のリチウムイオン二次電池よりも、1サイクル目の放電容量が高く、初期クーロン効率が高かった。また、実施例1〜6の中では、金属シリサイドに加えて遷移金属カルコゲナイドを用いた実施例4〜6が、特に初期クーロン効率が高く、さらに10サイクル目及び100サイクル目の容量維持率が、実施例1〜3よりも高くなっており、サイクル特性にも優れていた。
<リチウムイオン二次電池の製造>
[実施例7]
(シリコンナノ粒子の製造)
実施例1と同様の方法で、シリコンナノ粒子を製造した。
(負極材の製造)
上記で得られたシリコンナノ粒子のウェットケーキ(シリコンナノ粒子として69質量部)、MoSi(1質量部、平均粒子径6〜12μm)、アセチレンブラック(10質量部)、カーボンナノチューブ(5質量部)、ポリイミド溶液(ポリイミドとして15質量部)、及びN−メチルピロリドンを25℃で10分間混合し、スラリー状の負極材を得た。このとき、配合成分の総量に占める、溶媒以外の配合成分(シリコンナノ粒子、MoSi、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ及びポリイミド)の合計配合量の比率が、20質量%となるように調節した。
得られた負極材における溶媒以外の各成分の配合量を表2に示す。なお、表2中、「−」は、その成分が未配合であることを意味する。
(負極の製造)
上記で得られた負極材を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、負極を製造した。
(電解液の製造)
有機溶媒として、EC及びDMCに代えて、EC及びPCの混合溶媒(EC:PC=30:70(体積比))に濃度が5質量%となるようにVCを添加したものを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、非水電解液を得た。この電解液のリチウム原子の濃度は1.0モル/kgである。
(リチウムイオン二次電池の製造)
上記で得られた負極及び電解液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を製造した。
[実施例8〜10、比較例2]
負極材製造時の各配合成分の配合量を、表2に示す通りとしたこと以外は、実施例7と同様の方法で、負極材、負極及びリチウムイオン二次電池を製造した。
<リチウムイオン二次電池の充放電特性の評価>
上記で得られたリチウムイオン二次電池について、25℃において0.2Cの定電流定電圧充電を、上限電圧4.2Vとして電流値が0.1Cに収束するまで行った後、0.2Cの定電流放電を2.5Vまで行った。その後、充放電電流を1Cとして同様の方法で、充放電サイクルを繰り返し行った。そして、1サイクル目の充電容量及び放電容量の値から、初期クーロン効率([1サイクル目の放電容量(mAh)/1サイクル目の充電容量(mAh)]×100)(%)を算出した。また、50サイクルでの容量維持率([50サイクル目の放電容量(mAh)/1サイクル目の放電容量(mAh)]×100)(%)を算出した。結果を表2に示す。
Figure 0006333529
負極材において金属シリサイドを用いた実施例7〜10のリチウムイオン二次電池は、1サイクル目の放電容量と初期クーロン効率が高く、特に実施例7〜9で高かった。負極材において金属シリサイドを用いなかった比較例2のリチウムイオン二次電池も、1サイクル目の放電容量と初期クーロン効率が高かったが、これはカーボンナノチューブを用いたことによる効果と推測される。また、実施例7〜10のリチウムイオン二次電池は、比較例2のリチウムイオン二次電池よりも、50サイクル目の容量維持率が高くなっており、サイクル特性にも優れていた。実施例1〜6及び比較例1の場合と同様に、100サイクル目の容量維持率を比較すれば、実施例7〜10と比較例2との間の容量維持率の差は、さらに大きくなると推測される。
本発明は、リチウムイオン二次電池の分野で利用可能である。

Claims (10)

  1. ケイ素及び一酸化ケイ素のいずれか一方又は両方、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤並びにバインダーが配合されてなるリチウムイオン二次電池用負極材であって、
    記リチウムイオン二次電池用負極材において、前記ケイ素、一酸化ケイ素、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤及びバインダーの総配合量に占める、ケイ素及び一酸化ケイ素の総配合量の比率が30〜55質量%であり、
    前記リチウムイオン二次電池用負極材において、前記ケイ素、一酸化ケイ素、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤及びバインダーの総配合量に占める、金属シリサイドの配合量の比率が1〜15質量%であり、
    前記リチウムイオン二次電池用負極材において、前記ケイ素、一酸化ケイ素、金属シリサイド、遷移金属カルコゲナイド、導電助剤及びバインダーの総配合量に占める、遷移金属カルコゲナイドの配合量の比率が4〜45質量%であり、
    前記金属シリサイドが二ケイ化モリブデンであることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材
  2. 前記遷移金属カルコゲナイドが、遷移金属の硫化物であることを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
  3. 前記遷移金属カルコゲナイドが、モリブデン、銅、タングステン又はチタンのカルコゲナイドであることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
  4. 前記遷移金属カルコゲナイドが硫化モリブデン(IV)であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材を用いて形成された負極活物質層を、集電体上に備えたことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極。
  6. 前記リチウムイオン二次電池用負極材が、さらに溶媒が配合されてなる液状組成物であり、
    前記負極活物質層が、前記液状組成物を塗工及び乾燥させて形成されたものであることを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
  7. 請求項又はに記載のリチウムイオン二次電池用負極を備えたことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  8. さらに、(A)カルボン酸リチウム塩並びに(B)三フッ化ホウ素及び/又は三フッ化ホウ素錯体、あるいは(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体が配合されてなる電解液を備えたことを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
  9. 前記(A)カルボン酸リチウム塩がシュウ酸リチウムであり、前記(E)カルボン酸リチウム塩−三フッ化ホウ素錯体がシュウ酸リチウム−三フッ化ホウ素錯体であることを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン二次電池。
  10. 前記電解液が、プロピレンカーボネート及びビニレンカーボネートが配合されてなるものであることを特徴とする請求項又はに記載のリチウムイオン二次電池。
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