JP6332979B2 - 建物ユニットの補強構造 - Google Patents

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本発明は、ユニット式建物の下階コーナー部に、柱がない状態の開放空間を形成するための建物ユニットの補強構造に関する。
従来、住宅等の建物の下階コーナー部に、玄関やガレージ、テラス等として利用されるピロティ等の開放空間が設けられる場合があった。建物に当該ピロティ等の開放空間を設ける方法として、例えば、箱形の建物ユニットのフレーム内をピロティ等の開放空間とする方式が採用されている(特許文献1参照)。
すなわち、箱形の建物本体の下階コーナー部に凹み状の開放空間を形成しようとする場合に、その部分の建物ユニットを省略してしまうと、直上に位置するバルコニーや部屋、屋根等の直上部を支持できず、建物全体の強度に影響する。ところが、上述のように建物ユニットのフレーム内をピロティ等の開放空間として利用すれば、通常の箱形に並んだユニット構成を崩さずに済み、建物全体の強度にはほとんど影響を与えないという利点がある。
特開平08−128110号公報
ところで、建物ユニット内をピロティ等の開放空間として利用した場合には、建物ユニットを構成する柱が見えてしまい、下階コーナー部における開放感や景観性を考慮すると、当該柱を取り除きたいという要望があった。
ところが、柱を取り除いてしまうと、柱を取り除いた状態の開放空間の直上に位置する直上部を支持することが困難になってしまうという問題があった。
本発明の課題は、柱がない状態であっても直上部を確実に支持でき、下階コーナー部における開放感や景観性を向上させることが可能な建物ユニットの補強構造を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図16に示すように、ユニット式建物1を構成する略直方体状の複数の建物ユニット20,30,40,50のうち、ユニット式建物1の下階コーナー部C1,C2に、柱がない状態の開放空間(ピロティ4,カーポート出入口5)を形成するための建物ユニット30,40,50の補強構造であって、
前記開放空間用の前記建物ユニット30,40,50は、
当該建物ユニット30,40,50の隅部にそれぞれ配置される二本または三本の柱31,41,51と、当該柱31,41,51の上端部および下端部をそれぞれ連結する複数の梁32〜35,43,52〜53と、からなる骨組みと、
前記骨組みに連結されて当該骨組みを補強する補強手段と、を備えており、
前記補強手段は、前記開放空間用の建物ユニット30,40,50の上端部において前記柱31,41,51がある隅部と前記柱31,41,51がない隅部との間に配置され、かつ前記開放空間用の建物ユニット30,40,50の直上に位置する直上部20を下方から支持する補強梁38a,38b,48a,58aを少なくとも有することを特徴とする。
さらに、請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図9,図11に示すように、建物ユニットの補強構造において、
前記補強手段は、前記開放空間用の建物ユニット30,40,50において前記柱31,41,51がない隅部に隣り合う前記柱31,41,51がある隅部側に配置され、かつ前記補強梁38a,38b,48a,58aとともに前記直上部20を支持する補強柱37,47,57を有しており、
前記補強梁38a,38b,48a,58aと前記補強柱37,47,57は、当該補強梁38a,38b,48a,58aの一端部と当該補強柱37,47,57の上端部とが交差してなる交差部39,49,59を介して一体的に形成されていることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、補強手段は、開放空間用の建物ユニット30,40,50の上端部において柱31,41,51がある隅部と柱31,41,51がない隅部との間に配置され、かつ開放空間用の建物ユニット30,40,50の直上に位置する直上部20を下方から支持する補強梁38a,38b,48a,58aを少なくとも有するので、下階コーナー部C1,C2に柱がない状態であっても、当該補強梁38a,38b,48a,58aによって直上部20を確実に支持することができる。これによって、柱がない状態の開放空間(ピロティ4,カーポート出入口5)を確実に形成でき、下階コーナー部における開放感や景観性を向上させることが可能となる。
さらに、請求項1に記載の発明によれば、補強梁38a,38b,48a,58aと交差部39,49,59を介して一体的に形成された補強柱37,47,57が、補強梁38a,38b,48a,58aとともに直上部20を支持するので、下階コーナー部C1,C2に柱がない状態であっても、補強梁38a,38b,48a,58aとともに直上部20をより確実に支持することができる。
請求項に記載の発明は、例えば図4〜図6に示すように、請求項に記載の建物ユニットの補強構造において、
前記開放空間用の建物ユニット30,40の前記骨組みの上端部と、前記開放空間用の建物ユニット30,40に隣接する下階の前記建物ユニット20の上端部と、前記交差部39,49の上端部とが、シアープレートP1,P2を介して連結されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明によれば、開放空間用の建物ユニット30,40の骨組みの上端部と、開放空間用の建物ユニット30,40に隣接する下階の建物ユニット20の上端部と、交差部39,49の上端部とが、シアープレートP1,P2を介して連結されているので、交差部39,49を含む補強手段にかかる直上部20の荷重を、シアープレートP1,P2を介して開放空間用の建物ユニット30,40の骨組みと、隣接する下階の建物ユニット20とに効果的に伝達することができる。これによって、補強手段にかかる負担を軽減できるので、当該補強手段によって直上部20をより確実に支持することができる。
請求項に記載の発明は、例えば図6〜図8に示すように、請求項に記載の建物ユニットの補強構造において、
前記開放空間用の建物ユニット40の前記骨組みは、隅部において前記柱41と前記天井梁42,43とを連結する複数の柱梁接合部材46を有しており、
前記複数の柱梁接合部材46のうち前記交差部49に近接する柱梁接合部材46は、
前記柱41の上端部に位置し、前記交差部49が接合される本体部と、
前記本体部から前記交差部49側の方向と直交する方向に突出し、前記補強梁48aと直交する天井梁43が接合される突出部46bと、を備えることを特徴とする。
請求項に記載の発明によれば、交差部49に近接する柱梁接合部材46は、交差部49が接合される本体部と、補強梁48aと直交する天井梁43が接合される突出部46bと、を備えるので、例えば交差部49を、本体部から突出する突出部46bに接合する場合に比して、当該交差部49と柱梁接合部材46との間隔を狭くして配置することができる。すなわち、交差部49と柱梁接合部材46とを近付けて接合することができる。
これによって、開放空間用の建物ユニット40の骨組みの上端部と、開放空間用の建物ユニット40に隣接する下階の建物ユニット20の上端部と、交差部49の上端部とを連結するシアープレートの長さを長くする必要がなく、通常の長さのシアープレートP2を使用することが可能となるので、コストの低減に寄与できる。
請求項に記載の発明は、例えば図11〜図16に示すように、請求項1〜のいずれか一項に記載の建物ユニットの補強構造において、
前記直上部20は、前記ユニット式建物1の上階を構成する建物ユニット20と隣接して配置されており、
前記直上部20の上端部と、前記上階の建物ユニット20の上端部との間には、当該双方の前記建物ユニット20,20に跨る補助支持部80が配置固定されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明によれば、直上部20の上端部と、上階の建物ユニット20の上端部との間には、当該双方の建物ユニット20,20に跨る補助支持部80が配置固定されているので、当該補助支持部80を介して双方の建物ユニット20,20を連結でき、直上部20を上方に引っ張るようにして(吊持するようにして)、上階の建物ユニット20によって保持できる。これによって、直上部20の下方に設けられる補強手段にかかる負担を軽減できるので、当該補強手段によって直上部20をより確実に支持することができる。
請求項に記載の発明は、例えば図1〜図16に示すように、請求項に記載の建物ユニットの補強構造において、
前記補強梁38a,48a,58aと前記補助支持部80とが、前記直上部20を挟んで平行に配置されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明によれば、補強梁38a,48a,58aと補助支持部80とが、直上部20を挟んで平行に配置されているので、補強梁38a,48a,58aと補助支持部80は、直上部20上下から挟み込み、かつ等しい方向となるように配置できることとなる。これによって、例えば補強梁38a,48a,58aと補助支持部80との配置方向が異なる場合等に比して、直上部20を補強手段によってより確実に支持することができる。
本発明によれば、柱がない状態であっても直上に位置する直上部を確実に支持でき、下階コーナー部における開放感や景観性を向上させることが可能となる。
ユニット式建物の一階を示す平面図である。 同、二階を示す平面図である。 ピロティを形成するための建物ユニットの一例を示す斜視図である。 図3に示す建物ユニットにおける補強梁とダイヤフラムとの接合部付近を示す側面図である。 同、平面図である。 図3に示す建物ユニットの変形例であり、補強梁とダイヤフラムとの接合部付近を示す側面図である。 同、平面図である。 図7におけるA−A矢視図である。 ピロティを形成するための建物ユニットの他の一例における補強梁とダイヤフラムとの接合部付近を示す斜視図である。 ピロティを形成するための建物ユニットの参考例を示す斜視図である。 補助支持部のユニット式建物への設置構造を示す側面図である。 同、平面図である。 補助支持部のユニット式建物への固定構造の一例を示す側面図である。 同、平面図である。 補助支持部のユニット式建物への固定構造の他の一例を示す側面図である。 同、平面図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1,図2等において符号1は、複数階建てのユニット式建物を示す。このユニット式建物1は、複数の建物ユニット20,40を組み合わせてなる建物本体2と、当該建物本体2の上部に設けられる屋根とを備える。
建物本体2は、複数の建物ユニット20,40を上下・左右・前後に組み合わせて形成されるものである。建物ユニット40は、後述する開放空間を形成するためのものであり、建物本体2のその他の部分は、建物ユニット20によって形成されている(ただし、後述するハンガーユニット20Aが一部に使用される)。
また、下階に設けられる建物ユニット20,40は、図示はしないが、アンカーボルトを介して基礎に接合される。
建物ユニット20,40は金属製の略直方体の骨組みを有するものである。すなわち、当該骨組みは、詳細は後述するが、複数の柱と、柱梁接合部材を介して複数の柱の上端間を連結する短辺天井梁および長辺天井梁と、柱梁接合部材を介して複数の柱の下端間を連結する短辺床梁および長辺床梁とを備える。なお、図1,図2において外壁や内壁の内部に表れる四角形状の表示が建物ユニット20,40の柱とされている。また、当該骨組みには、天井材、床材、外壁材、内壁材(間仕切壁)、配線等の各種部品が予め工場等で組み付けられ、その状態で現場に輸送される。
続いて、ユニット式建物1の間取りについて説明する。なお、図1,図2の紙面において上が北、下が南、左が西、右が東とされている。
図1は複数階建てのユニット式建物1の一階を示し、図2は二階を示している。また、図示はしないが、ユニット式建物1は三階を有する。
一階の中央南側には、建物ユニット40の柱41をポーチ柱3a,3aとした玄関ポーチ3が配設されている。
玄関ポーチ3の西側には、ユニット式建物1の下階コーナー部C1に相当する部分の柱が取り除かれた状態のピロティ4(すなわち、開放空間)が配設されている。なお、当該ピロティ4の床はウッドデッキとなっている。
玄関ポーチ3の東側には、ユニット式建物1の下階コーナー部C2に相当する部分の柱が取り除かれた状態のカーポート出入口5(すなわち、開放空間)が配設されている。当該カーポート出入口5の北側にはカーポート6が配設されている。
なお、柱が取り除かれた状態の開放空間であるピロティ4およびカーポート出入口5は、柱等が取り除かれた状態の建物ユニット40によって構成されている。また、本実施の形態においては建物ユニット40によってピロティ4およびカーポート出入口5を構成するものとしたが、これに限られるものではなく、その他の建物ユニット30,50,60を採用してもよい。これら他の建物ユニット30,50,60も、建物ユニット40と同様に柱等が取り除かれた状態となっている。
玄関ポーチ3およびピロティ4の北側であって、かつカーポート6の西側には、ユニット式建物1の屋内空間がある。当該屋内空間における玄関ポーチ3の北側には玄関土間および玄関ホールを含む玄関7が配設されている。また、当該玄関7には、一階と二階とを行き来するための階段7aが設けられている。
玄関7の北側から西側にかけて、平面視略L字状に形成された多目的広場としてのプラザ8が配設されている。プラザ8の周囲の外壁には窓が複数設けられており、当該窓を開放することによって、プラザ8を屋外に開けた開放的な空間として人に認識させることができる。
階段7aを上がった先には、二階の中央に位置するホール9が配設されている。ホール9の南側には、浴室・洗面所・トイレを有するサニタリー10が配設されている。また、当該サニタリー10の南側には、バルコニー10aが配設されている。
ホール9の北側にはキッチン11が配設されている。また、当該キッチン11、ホール9、サニタリー10、バルコニー10aの西側には、リビングルームとダイニングルームの機能を一室に併存させた部屋12が配設されている。また、当該部屋12の西側にはバルコニー12aが配設されている。
ホール9、サニタリー10、バルコニー10a、キッチン11の東側には主寝室13が配設されている。また、当該主寝室13の東側にはバルコニー13aが配設されており、当該主寝室13の北側部分は畳スペース13bとされている。
バルコニー12aの北側および南側には部屋12のための収納部12b,12bが設けられる。これらバルコニー12aおよび収納部12b,12bは建物本体2の一階の西側端部よりも外側に張り出しており、オーバーハングした状態となっている。
バルコニー13aの北側および南側には主寝室13のための収納部13c,13cが設けられる。これらバルコニー13aおよび収納部13c,13cは建物本体2の一階の東側端部よりも外側に張り出しており、オーバーハングした状態となっている。
これらオーバーハング部分を構成する建物ユニットとしては、前記建物ユニット20,40よりもサイズが小さく設定され、かつ隣接する建物ユニット20に連結されるハンガーユニット20Aが用いられている。
なお、本実施の形態においては、ピロティ4の直上には、前記部屋12の南側端部がある。すなわち、部屋12の南側端部を構成する建物ユニット20は、ピロティ4を構成する建物ユニット40(30,50,60)の直上部として設けられている。
また、カーポート出入口5の直上には、前記主寝室13の南側端部がある。すなわち、主寝室13の南側端部を構成する建物ユニット20は、カーポート出入口5を構成する建物ユニット40(30,50,60)の直上部として設けられている。
本実施の形態においては直上部として、建物ユニット20(その内部に設けられる部屋12,13)を例に挙げたが、これに限られるものではなく、適宜変更可能である。例えばバルコニーを形成するためのバルコニーユニットや屋根等を直上部としてもよい。
続いて、ユニット式建物1を構成する各建物ユニット20,30,40,50,60について、図面を参照して詳細に説明する。
〔建物ユニット20〕
建物ユニット20は、図10等に示すように、骨組みとして、四隅に設けられた柱21と、四本の柱21の上端間を連結する短辺天井梁22および長辺天井梁23と、四本の柱21の下端間を連結する短辺床梁24および長辺床梁25とを備える。また、各柱21と各梁22〜25とは、各柱21の端部と各梁22〜25の端部が接合される柱梁接合部材26を介して連結されている。
すなわち、当該建物ユニット20の骨組みは直方体状に形成され、柱21や各梁22〜25に省略された部分がない状態となっている。そして、ユニット式建物1を構築する上で、当該建物ユニット20が基本形状の建物ユニットとして用いられている。本実施の形態のユニット式建物1においては、ピロティ4およびカーポート出入口5、ハンガーユニット20Aの箇所を除いて、当該建物ユニット20が用いられている。
なお、ユニット式建物1に用いられる箇所に応じて、当該建物ユニット20のサイズ(柱21や各梁22〜25の長さ)は適宜変更されるが、説明の便宜上、符号は同一とする。
また、柱21は角筒状に形成されており、各梁22〜25は断面コ字状に形成された所謂溝形鋼である。
さらに、柱梁接合部材26は所謂ダイヤフラム(または仕口とも称する)であり、その上面または下面に柱21の端部が接合され、柱21が接合される領域よりも梁22〜25側に突出する突出部26a,26bに対して梁22〜25がそれぞれ接合される。
以下に説明する各建物ユニット30(40,50,60)における各柱および各梁自体の形状も、建物ユニット20の柱21および各梁22〜25と同様に形成されている。さらに、各建物ユニット30(40,50,60)における柱梁接合部材自体の形状も、建物ユニット20の柱梁接合部材26と同様のものが利用されるか、適宜加工されて利用されるものとする。
なお、前記ハンガーユニット20Aも、建物ユニット20に比して全体のサイズは小さいものの、建物ユニット20と略同様の形状の部材によって構成されているものとする。
〔建物ユニット30〕
建物ユニット30は、図3〜図5に示すように、仮想的な直方体状の空間R内に収まるように形成された建物ユニットである。当該建物ユニット30は、その骨組みとして、四隅のうち三つの隅に設けられた三本の柱31と、短辺天井梁32および長辺天井梁33と、短辺床梁34および長辺床梁35とを備える。また、各柱31と各梁32〜35とは、各柱31の端部と各梁32〜35の端部が接合される柱梁接合部材36を介して連結されている。
さらに、当該建物ユニット30は、その骨組みを補強するための補強手段である補強柱37および補強梁38a,38bを備える。
補強手段である補強柱37は、開放空間用の建物ユニット30において柱31がない隅部に隣り合う柱31がある隅部側に配置され、かつ補強梁38a,38bとともに直上部20を支持するものである。
補強手段である補強梁38a,38bは、開放空間用の建物ユニット30の上端部において柱31がある隅部と柱31がない隅部との間に配置され、かつ開放空間用の建物ユニット30の直上に位置する直上部20を下方から支持するものである。
短辺天井梁32は、上述の仮想的な直方体状空間Rの一方の短辺側(短辺床梁34の上方)に配置され、突出部36aのある柱梁接合部材36を介して二本の柱31,31の上端間を連結している。
長辺天井梁33は、前記直方体状空間Rの一方の長辺側(長辺床梁35の上方)に配置され、突出部36bのある柱梁接合部材36を介して二本の柱31,31の上端間を連結している。
短辺床梁34は、前記直方体状空間Rの一方の短辺側(短辺天井梁32の下方)に配置され、突出部36aのある柱梁接合部材36を介して二本の柱31,31の下端間を連結している。
長辺床梁35は、前記直方体状空間Rの一方の長辺側(長辺天井梁33の下方)に配置され、突出部36bのある柱梁接合部材36を介して二本の柱31,31の上端間を連結している。
柱梁接合部材36は、三本の柱31の上下端部にそれぞれ接合されている。
すなわち、補強柱37および補強梁38a,38bを除く建物ユニット30の形状は、平面視においてL字状となるように、各柱31および各梁32〜35が配置されている。換言すれば、骨組みが直方体状に形成された前記建物ユニット20と比較すると、補強柱37および補強梁38a,38bを除く建物ユニット30の骨組みは、前記直方体状空間Rの他方の短辺側および他方の長辺側においては各梁32〜35が取り除かれ、直方体状空間Rの他方の短辺と他方の長辺とが交差する箇所における柱31が取り除かれた状態となっている。
補強柱37および補強梁38a,38bは所謂H形鋼によって構成されており、柱31や各梁32〜35に比して剛性が高い。
すなわち、補強柱37は、柱31に比して建物ユニット30の短辺方向に寸法が長くなるように設定されている。
また、補強梁38a,38bは、各梁32〜35に比して建物ユニット30の上下方向に寸法が長くなるように設定されている。つまり、梁成の高い状態となっている。
さらに、補強柱37および補強梁38a,38bのウェブおよびフランジ自体の厚みは、柱31の各面を構成する金属板の厚みと、各梁32〜35を構成するウェブおよびフランジの厚みよりも厚くなるように設定されている。
補強梁38aは、前記直方体状空間Rの他方の短辺側において各天井梁32,33と略等しい高さに配置されている。また、補強梁38bは、前記直方体状空間Rの他方の長辺側において各天井梁32,33と略等しい高さに配置されている。さらに、補強梁38a,38bの上面と、各天井梁32,33の上面は面一となっている。また、後述する交差部39の上面と、各天井梁32,33の上面も面一となっている。
補強柱37の上端部と補強梁38aの一端部は、図4に示すように、交差部39を介して一体的に形成されている。これによって、当該補強柱37と補強梁38aは、側面視において逆L字状に連結された状態となっている。
なお、交差部39は、断面H型の補強柱37の断面形状と、同じく断面H型の補強梁38aの断面形状とを組み合わせた構成となっている。すなわち、水平方向の断面は補強柱37の断面形状と同様であり、鉛直方向の断面は補強梁38aの断面形状と同様である。
また、交差部39を形成するに当たって、本実施の形態の補強柱37と補強梁38aとの関係は柱勝ちの状態となっているものとする。
補強梁38aと補強梁38aは、平面視においてL字状に連結されている。そして、当該L字の角が、建物ユニット30の骨組みにおける柱がない隅部に配置されている。
補強梁38bは、図3に示すように、前記直方体状空間Rの他方の長辺側に臨む柱31の上端部に接合される。
また、補強柱37は、図3〜図5に示すように、前記直方体状空間Rの他方の短辺側に臨む柱31に隣り合うようにして配置されている。
より詳細には、当該補強柱37の二つのフランジのうち一方は、図4に示すように、直方体状空間Rの他方の短辺側に臨む柱31の側面に対向している。そして、当該一方のフランジの上端部(すなわち、交差部39の位置であって、当該交差部39の一方のフランジと称してもよい)は、柱31の上端部に位置する柱梁接合部材36の突出部36aに接合されている。なお、当該突出部36aの突出方向先端には金属製のエンドプレート36cが一体的に設けられており、当該エンドプレート36cと補強柱37の一方のフランジ(または交差部39の一方のフランジ)とがボルト結合(図示せず)されている。
以上のような建物ユニット30を設置する際は、当該建物ユニット30と、当該建物ユニット30に隣接する建物ユニット20とが、金属製のシアープレートP1を介して連結されている。
すなわち、開放空間用の建物ユニット30の骨組みの上端部と、開放空間用の建物ユニット30に隣接する下階の建物ユニット20の上端部と、交差部39の上端部とが、シアープレートP1を介して連結されている。シアープレートP1は隣接する下階の建物ユニット20のうち、建物ユニット30の直近の柱梁接合部材26の上面から、交差部39まで延出した状態となっている。また、シアープレートP1は、図示しないボルト・ナットにより固定されている。
〔建物ユニット40〕
建物ユニット40は、建物ユニット30の変形例であり、仮想的な直方体状の空間R内に収まるように形成された建物ユニットである。当該建物ユニット40は、その骨組みとして、四隅のうち三つの隅に設けられた三本の柱41と、短辺天井梁および長辺天井梁43と、短辺床梁および長辺床梁とを備える。また、各柱41と各梁43とは、各柱41の端部と各梁43の端部が接合される柱梁接合部材46を介して連結されている。
すなわち、建物ユニット40の骨組みは、建物ユニット30の骨組みと略同様の構成となっている。ただし、当該建物ユニット40の柱梁接合部材46は、図6,図7に示すように、前記直方体状空間Rの他方の短辺側に突出する突出部(建物ユニット30の例における突出部36aに相当)を有していない。
さらに、建物ユニット40は、その骨組みを補強するための補強手段として、補強柱47と、短辺側の補強梁48aおよび長辺側の補強梁(図示せず)と、を備える。これら補強柱47および補強梁38aは、前記補強柱37および前記補強梁38a,38bと同様に所謂H形鋼によって構成されており、建物ユニット40の骨組みの柱41や各梁43に比して剛性が高い。
補強柱47の上端部と補強梁48aの一端部は、図6に示すように、交差部49を介して一体的に形成されている。これによって、当該補強柱47と補強梁48aは、側面視において逆L字状に連結された状態となっている。
補強梁48aの他端部と長辺側の補強梁の一端部は、図示はしないが、平面視においてL字状に連結されている。
また、補強柱47は、図6,図7に示すように、前記直方体状空間Rの他方の短辺側に臨む柱41に隣接して配置されている。
より詳細には、当該補強柱47の二つのフランジのうち一方は、前記直方体状空間Rの他方の短辺側に臨む柱41の側面に対向している。そして、当該一方のフランジの上端部(または交差部49の一方のフランジ)は、柱41の上端部に位置する柱梁接合部材46に接合されている。なお、当該柱梁接合部材46には金属製のエンドプレート46cが一体的に設けられており、当該エンドプレート46cと補強柱47の一方のフランジとがボルト結合(図示せず)されている。
なお、柱梁接合部材46のエンドプレート46c側端面と、エンドプレート46cには、図8に示すように、複数のボルト孔46dとシノ孔46eが形成されている。シノ孔46eは、当該シノ孔46eにシノを挿入することで、補強柱47側に設けられるボルト孔(図示せず)と柱梁接合部材46側のボルト孔とのズレを矯正することができる。
以上のような建物ユニット40を設置する際は、当該建物ユニット40と、当該建物ユニット40に隣接する建物ユニット20とが、金属製のシアープレートP2を介して連結されている。
すなわち、開放空間用の建物ユニット40の骨組みの上端部と、開放空間用の建物ユニット40に隣接する下階の建物ユニット20の上端部と、交差部49の上端部とが、シアープレートP2を介して連結されている。シアープレートP2は隣接する下階の建物ユニット20のうち、建物ユニット40の直近の柱梁接合部材26の上面から、交差部49まで延出した状態となっている。より詳細には、シアープレートP2の端部は交差部49の上面のうち、一方のフランジに近い位置に配置されている。また、シアープレートP2は、図示しないボルト・ナットにより固定されている。
なお、交差部49の上面部のうち、前記一方のフランジに近い位置には、ボルトを挿入するためのボルト孔49aが形成されている。
また、シアープレートP2は、建物ユニット40と、当該建物ユニット40に隣接する建物ユニット20とを連結するものとして使用されているが、通常の長さに設定されているため、建物ユニット20,20同士の連結にも使用できる。
〔建物ユニット50〕
建物ユニット50は、仮想的な直方体状の空間R内に収まるように形成された建物ユニットである。当該建物ユニット50は、その骨組みとして、三本の柱51と、短辺天井梁52と、長辺天井梁53と、短辺床梁と、長辺床梁と、を備える。
三本の柱51は、前記直方体状空間Rの四隅の三つの隅に設けられている。
短辺天井梁52は、前記直方体状空間Rの一方および他方の短辺側にそれぞれ配置されている。また、長辺天井梁53は、前記直方体状空間Rの一方および他方の長辺側にそれぞれ配置されている。すなわち、建物ユニット50における各天井梁52,53は平面視において矩形枠状に組まれた状態となっている。また、矩形枠状に組まれた各天井梁52,53の三つの角と、三本の柱51は、柱梁接合部材56を介して連結されている。
短辺床梁は、図示はしないが、前記直方体状空間Rの一方の短辺側に配置され、柱梁接合部材56を介して二本の柱51,51の下端間を連結している。長辺床梁は、図示はしないが、前記直方体状空間Rの一方の長辺側に配置され、柱梁接合部材56を介して二本の柱51,51の下端間を連結している。すなわち、建物ユニット50における各床梁は平面視(または底面視)においてL字状に組まれた状態となっている。
さらに、図9に示すように、建物ユニット50は補強手段として少なくとも、補強柱57と、補強梁58aと、を備える。
補強柱57自体の剛性は、骨組みの柱51と略等しく設定されている。すなわち、建物ユニット50における補強柱57は、骨組みの柱51と同様の角筒状の部材で構成されている。
当該補強柱57は、前記直方体状空間Rの他方の短辺側に臨む柱51に隣接して配置されている。これら補強柱57と柱51とは、ピッチ溶接されて接合されている。
補強梁58aは、第一梁58Aと、第二梁58Bと、を備えており、これら第一梁58Aと第二梁58Bとを複合させてなる。
より詳細に説明すると、第一梁58Aおよび第二梁58Bは、骨組みの短辺天井梁52と同様の溝形鋼で構成されており、当該第一梁58Aおよび第二梁58B自体の剛性は、骨組みの短辺天井梁52と略等しく設定されている。そして、第一梁58Aに対し、当該第一梁58Aと略等しい断面形状の第二梁58Bを、互いの開口が向き合うようにして複合させる(溶接等によって接合させる)ことで、補強梁58a自体の剛性を向上させている。
また、当該補強梁58aは、前記直方体状空間Rの他方の短辺側に設けられた短辺天井梁52の直下に隣接して配置されている。これら補強梁58aと短辺天井梁52とは、ピッチ溶接されて接合されている。
また、補強柱57と補強梁58aは、補強柱57の上端部と補強梁58aの端部とが接合される柱梁接合部材59(交差部に相当)を介して連結されている。
柱梁接合部材59は、第一梁58Aと第二梁58Bとを複合させてなる補強梁58aの端面と略等しい広さの端面を有しており、互いに接合しやすくなっている。
また、当該柱梁接合部材59は、前記直方体状空間Rの他方の短辺側に臨む柱51と補強柱57に対して溶接されて接合されている。
また、図示はしないが、前記直方体状空間Rの他方の長辺側に設けられた長辺天井梁の53の直下に隣接して、補強梁58aと直交配置され、かつ一体的に形成される補強梁を配置してもよい。この長辺側の補強梁も、前記補強梁38aと同様に、第一梁と第二梁とを複合させてなるものが好適に利用される。
以上のような建物ユニット50を設置する際は、当該建物ユニット50と、当該建物ユニット50に隣接する下階の建物ユニット20とが、金属製のシアープレート(図示せず)を介して連結されている。
当該建物ユニット50の場合は、補強手段である補強柱57および補強梁58aが、骨組みの柱51の上端部と短辺天井梁52の端部との間の入隅側に配置される。そのため、シアープレートによる建物ユニット20と建物ユニット50との連結は、通常通りに行われる。
〔建物ユニット60〕
建物ユニット60は、図10に示すように、仮想的な直方体状の空間R内に収まるように形成された建物ユニットである。当該建物ユニット60は、その骨組みとして、二本の柱61と、短辺天井梁62と、長辺天井梁63と、長辺床梁65と、を備える。
二本の柱61は、前記直方体状空間Rの四隅のうち、隣接する建物ユニット20側の二つの隅に設けられている。そして、二本の柱61と、隣接する建物ユニット20の二本の柱21は、接合プレート61aを介して接合されている。また、双方の柱21,61には、当該接合プレート61aの下地となる下地プレート61bがそれぞれ接合されている。すなわち、接合プレート61aは、柱21に接合された下地プレート61bと、柱61に接合された下地プレート61b間に架け渡されて設けられている。なお、接合プレート61aは、下地プレート61b,61bに対してボルト結合されている。
短辺天井梁62は、前記直方体状空間Rの一方および他方の短辺側にそれぞれ配置されている。また、長辺天井梁63は、前記直方体状空間Rの一方の長辺側(建物ユニット20側)に配置されている。すなわち、建物ユニット60における各天井梁62,63は平面視においてコ字状に組まれた状態となっている。また、各天井梁62,63と、二本の柱61は、柱梁接合部材66を介して連結されている。
長辺床梁65は、前記直方体状空間Rの一方の長辺側(建物ユニット20側)に配置され、柱梁接合部材66を介して二本の柱61,61の下端間を連結している。
さらに、図10に示すように、建物ユニット60は少なくとも、補強梁68aを備える。当該補強梁68aは、前記短辺天井梁62を含んで所謂ラチス状に形成されている。
すなわち、当該補強梁68aは、短辺天井梁62を上弦材とし、当該短辺天井梁62の下方に設けられる下弦材68Aと、短辺天井梁62および下弦材68Aの突出方向端部間に設けられる縦材68Bと、短辺天井梁62と下弦材68Aとの間にジグザグに設けられるラチス材68Cと、を備える。なお、縦材68Bは、柱梁接合部材66を介して短辺天井梁62および長辺天井梁63に連結されている。
このようなラチス状の補強梁68aは、ラチス材68Cをジグザグに設けることでトラス構造となっており、当該補強梁68aと一体的に設けられた前記短辺天井梁62の剛性を高めることができる。
なお、建物ユニット60は、前記建物ユニット20に対して、前記接合プレート61aと、図示しないシアープレートによって連結された状態となっている。
また、このような場合、隣接する建物ユニット20(特に建物ユニット60側の柱21)に対して大きな負荷がかかるため、建物ユニット20には、当該建物ユニット20の強度を高め、建物ユニット60による直上部20の支持を補助するためのサブフレーム70が設けられている。
なお、当該サブフレーム70は、建物ユニット20の一方および他方の短辺側の架構面のうち、少なくともいずれか一方の架構面内に設けられる。
当該サブフレーム70は、縦材71と、水平材72と、斜材73と、固定ブラケット74と、を備える。
縦材71は、柱21,21と平行に配置され、短辺天井梁22と短辺床梁24との間に架け渡されている。
水平材72は、所定の間隔をあけて平行に配置される上下一対のものであり、建物ユニット60側の柱21と縦材71との間に架け渡されている。なお、当該双方の水平材72の両端部は、固定ブラケット74を介して柱21および縦材71に連結されている。
斜材73は、建物ユニット60側の柱21と、縦材71と、上下一対の水平材72,72とで形成された枠内に、互いに交差するようにして複数設けられている。なお、当該複数の斜材73の両端部は、固定ブラケット74を介して柱21および縦材71に連結されている。
なお、斜材73,73が設けられる前記枠は、建物ユニット60側の柱21と縦材71との間の中央付近の高さに配置されている。また、接合プレート61aおよび下地プレート61bの取り付け位置は、当該枠よりも高い位置に、かつ補強梁68aと略等しい高さに設定されている。
〔補助支持部80〕
続いて、建物ユニット30,40,50,60によって直上部(建物ユニット20)を支持する際に、その補助を行うために用いられる補助支持部80について説明する。
ここでは、当該補助支持部80が用いられる建物として、上述のユニット式建物1を例に挙げて説明する。
また、上述のように当該ユニット式建物1においては、ピロティ4およびカーポート出入口5を構成する建物ユニットとして、前記建物ユニット40が用いられている。ただし、これに限られるものではなく、他の建物ユニット30,50,60を採用してもよいものとする。
ユニット式建物1は、図11に示すように、建物本体2の上部に設けられる屋根14を備える。屋根14は勾配屋根(本実施の形態では例えば寄棟屋根)とされている。また、屋根14は、屋根面の形状に形成された複数の屋根パネルによって構成されている。
建物本体2の上部に屋根14を設けるにあたって、屋根14を好適に支持するために、建物本体2の二階を構成する複数の建物ユニット20の上面には小屋パネル15が設けられている。当該小屋パネル15は、各建物ユニット20の天井梁22,23と略等しい大きさの矩形枠状に形成されている。すなわち、当該小屋パネル15は、短辺梁15aと、長辺梁15bと、を備える。また、長辺方向の長さが長い場合には、中間梁15cが適宜設けられる。
なお、当該小屋パネル15の枠内には、当該枠状の小屋パネル15の対角線に沿ってブレースや小梁等が適宜設けられる。
また、ハンガーユニット20Aの上面にも、当該ハンガーユニット20Aのサイズに合わせた小屋パネル15Aが設けられている。
複数の小屋パネル15の上面には、屋根14を直接的に支持する屋根束等の屋根支持部材16が複数設けられている。当該屋根支持部材16は、屋根14の勾配に対応して複数種類のものが用意されている。また、当該屋根支持部材16は、隣接する小屋パネル15,15同士に跨って配置固定されている。また、建物本体2の四隅に位置する部分や、長辺梁15bと中間梁とが交差する部分を除き、複数の屋根支持部材16の多くは、隣接する小屋パネル15,15同士の角部同士や、中間梁のある部分同士に跨って配置されているものとする。
なお、建物本体2の二階を構成する複数の建物ユニット20の上面に設けられる複数の小屋パネル15のうち、直上部を構成する建物ユニット20の上面に設けられた小屋パネル15と、当該建物ユニット20の短辺方向に隣接する建物ユニット20の上面に設けられた小屋パネル15は、他の小屋パネル15とは異なる構成となっている。すなわち、補助支持部80が設けられる箇所の短辺梁15a,15aの代わりに、補助支持部80を構成する下弦材82(後述する)が設けられる。
補助支持部80は、図11〜図14に示すように、以上のような小屋パネル15と一体的に設けられている。より詳細に説明すると、当該補助支持部80は、ピロティ4およびカーポート出入口5の上方の前記直上部を構成する建物ユニット20の上端部と、当該建物ユニット20の短辺方向に隣接する建物ユニット20の上端部とに跨って設けられ、それぞれの建物ユニット20,20に固定された状態となっている。
すなわち、この補助支持部80は、直上部である建物ユニット20を上方から引っ張るようにして(または吊持するようにして)建物ユニット20の自重による傾きを抑制する機能を有する。
また、補助支持部80と前記開放空間用の建物ユニット40の補強梁48aとが、直上部20を挟んで平行に配置されている。このように補強梁48aと補助支持部80とが、直上部20を挟んで平行に配置されているので、補強梁48aと補助支持部80は、直上部20上下から挟み込み、かつ等しい方向となるように配置できることとなる。
なお、補強梁48aと補助支持部80は、鉛直方向に離間するようにして平行配置されているものとする。
当該補助支持部80は、一対の上弦材81,81と下弦材82とを備え、当該上弦材81,81と下弦材82とによって三角形状(トラス状)に形成されている。
一対の上弦材81,81は、それぞれが逆方向に傾斜し、かつ傾斜方向の上端部が互いに接合されている。また、当該一対の上弦材81,81の頂角には、屋根14の下面を受ける屋根受け部81a,81bが一体的に設けられている。
また、下弦材82は、一対の上弦材81,81の傾斜方向の下端部間に架け渡されて設けられている。また、この下弦材82は、直上部を構成する建物ユニット20の上面に設けられた小屋パネル15と、当該建物ユニット20の短辺方向に隣接する建物ユニット20の上面に設けられた小屋パネル15と一体的に設けられている。より詳細には、これら双方の建物ユニット20,20における双方の小屋パネル15,15の一方の短辺梁15a,15aに相当する箇所に下弦材82が設けられている。そして、当該下弦材82に対して、小屋パネル15,15の長辺梁15bが接合されている。
また、上弦材81,81と下弦材82によって三角形状に形成された枠内には、下弦材82上に立設され、かつ上端部が一対の上弦材81,81の頂角に固定される縦材83が設けられている。
当該縦材83は、前記直上部を構成する建物ユニット20と、前記隣接する建物ユニット20とに跨る位置に配置されている。
以上のような補助支持部80は、図13,図14に示すように、隣り合う屋根支持部材16間にブレース84を複数架設することによって、当該隣り合う屋根支持部材16に支持されている。
隣り合う屋根支持部材16は、縦材83が跨る複数の小屋パネル15,15の長手方向に間隔をあけて、かつ同一の複数の小屋パネル15,15に跨るようにして配置固定されている。
複数のブレース84は、縦材83の上下端部と、隣り合う屋根支持部材16の上下端部との間において互いに交差するようにして架設されている。
なお、本実施の形態においては、縦材83と隣り合う屋根支持部材16との間に複数のブレース84を架設するものとしたが、これに限られるものではない。例えば図15,図16に示すように、縦材83と隣り合う屋根支持部材16との間に斜材85を架設するようにしてもよい。この場合、斜材85は、縦材83の上端部と隣り合う屋根支持部材16の下端部との間に架設されている。
以上のような建物ユニット40(30,50,60)の補強構造を採用したユニット式建物1の場合、開放空間であるピロティ4およびカーポート出入口5が配置された箇所、すなわち下階コーナー部C1,C2が柱のない状態となる。このような場合は、例えば直上部である建物ユニット20が、自重や経年変化等により徐々に傾斜しようとする。換言すれば、当該直上部20を支持する下方の建物ユニット40(30,50,60)の骨組みが変形しようとする。
このような変形しようとする骨組みに対して補強手段である補強柱47や補強梁48aが連結されており、さらには、補助支持部80が直上部20の上端部に設けられるので、建物ユニット40(30,50,60)の骨組みの変形を抑制できる。そして、これによって直上部20の傾斜を抑制することができる。
本実施の形態によれば、補強手段は、開放空間用の建物ユニット30,40,50,60の上端部において柱31,41,51,61がある隅部と柱31,41,51,61がない隅部との間に配置され、かつ開放空間用の建物ユニット30,40,50,60の直上に位置する直上部20を下方から支持する補強梁38a,38b,48a,58a,68aを少なくとも有するので、下階コーナー部C1,C2に柱がない状態であっても、当該補強梁38a,38b,48a,58a,68aによって直上部20を確実に支持することができる。これによって、柱がない状態の開放空間(ピロティ4,カーポート出入口5)を確実に形成でき、下階コーナー部における開放感や景観性を向上させることが可能となる。
また、補強梁38a,38b,48a,58aと交差部39,49,59を介して一体的に形成された補強柱37,47,57が、補強梁38a,38b,48a,58aとともに直上部20を支持するので、下階コーナー部C1,C2に柱がない状態であっても、補強梁38a,38b,48a,58aとともに直上部20をより確実に支持することができる。
また、開放空間用の建物ユニット30,40の骨組みの上端部と、開放空間用の建物ユニット30,40に隣接する下階の建物ユニット20の上端部と、交差部39,49の上端部とが、シアープレートP1,P2を介して連結されているので、交差部39,49を含む補強手段にかかる直上部20の荷重を、シアープレートP1,P2を介して開放空間用の建物ユニット30,40の骨組みと、隣接する下階の建物ユニット20とに効果的に伝達することができる。これによって、補強手段にかかる負担を軽減できるので、当該補強手段によって直上部20をより確実に支持することができる。
また、交差部49に近接する柱梁接合部材46は、交差部49が接合される本体部と、補強梁48aと直交する天井梁43が接合される突出部46bと、を備えるので、例えば交差部49を、本体部から突出する突出部46bに接合する場合に比して、当該交差部49と柱梁接合部材46との間隔を狭くして配置することができる。すなわち、交差部49と柱梁接合部材46とを近付けて接合することができる。
これによって、開放空間用の建物ユニット40の骨組みの上端部と、開放空間用の建物ユニット40に隣接する下階の建物ユニット20の上端部と、交差部49の上端部とを連結するシアープレートの長さを長くする必要がなく、通常の長さのシアープレートP2を使用することが可能となるので、コストの低減に寄与できる。
また、直上部20の上端部と、上階の建物ユニット20の上端部との間には、当該双方の建物ユニット20,20に跨る補助支持部80が配置固定されているので、当該補助支持部80を介して双方の建物ユニット20,20を連結でき、直上部20を上方に引っ張るようにして(吊持するようにして)、上階の建物ユニット20によって保持できる。これによって、直上部20の下方に設けられる補強手段にかかる負担を軽減できるので、当該補強手段によって直上部20をより確実に支持することができる。
また、補強梁38a,48a,58a,68aと補助支持部80とが、直上部20を挟んで平行に配置されているので、補強梁38a,48a,58a,68aと補助支持部80は、直上部20上下から挟み込み、かつ等しい方向となるように配置できることとなる。これによって、例えば補強梁38a,48a,58a,68aと補助支持部80との配置方向が異なる場合等に比して、直上部20を補強手段によってより確実に支持することができる。
1 ユニット式建物
2 建物本体
4 ピロティ(開放空間)
5 カーポート出入口(開放空間)
20 建物ユニット
30,40,50,60 建物ユニット
31,41,51,61 柱
32,52,62 短辺天井梁
33,43,53,63 長辺天井梁
34 短辺床梁
35,65 長辺床梁
36,46,56,66 柱梁接合部材
37,47,57 補強柱
38a,48a,58a,68a 補強梁
38b 補強梁
39,49,59 交差部
80 補助支持部
C1,C2 下階コーナー部
R 直方体状空間

Claims (5)

  1. ユニット式建物を構成する略直方体状の複数の建物ユニットのうち、ユニット式建物の下階コーナー部に、柱がない状態の開放空間を形成するための建物ユニットの補強構造であって、
    前記開放空間用の前記建物ユニットは、
    当該建物ユニットの隅部にそれぞれ配置される二本または三本の柱と、当該柱の上端部および下端部をそれぞれ連結する複数の梁と、からなる骨組みと、
    前記骨組みに連結されて当該骨組みを補強する補強手段と、を備えており、
    前記補強手段は、前記開放空間用の建物ユニットの上端部において前記柱がある隅部と前記柱がない隅部との間に配置され、かつ前記開放空間用の建物ユニットの直上に位置する直上部を下方から支持する補強梁を少なくとも有しており、
    さらに、前記補強手段は、前記開放空間用の建物ユニットにおいて前記柱がない隅部に隣り合う前記柱がある隅部側に配置され、かつ前記補強梁とともに前記直上部を支持する補強柱を有しており、
    前記補強梁と前記補強柱は、当該補強梁の一端部と当該補強柱の上端部とが交差してなる交差部を介して一体的に形成されていることを特徴とする建物ユニットの補強構造。
  2. 請求項に記載の建物ユニットの補強構造において、
    前記開放空間用の建物ユニットの前記骨組みの上端部と、前記開放空間用の建物ユニットに隣接する下階の前記建物ユニットの上端部と、前記交差部の上端部とが、シアープレートを介して連結されていることを特徴とする建物ユニットの補強構造。
  3. 請求項に記載の建物ユニットの補強構造において、
    前記開放空間用の建物ユニットの前記骨組みは、隅部において前記柱と前記天井梁とを連結する複数の柱梁接合部材を有しており、
    前記複数の柱梁接合部材のうち前記交差部に近接する柱梁接合部材は、
    前記柱の上端部に位置し、前記交差部が接合される本体部と、
    前記本体部から前記交差部側の方向と直交する方向に突出し、前記補強梁と直交する天井梁が接合される突出部と、を備えることを特徴とする建物ユニットの補強構造。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載の建物ユニットの補強構造において、
    前記直上部は、前記ユニット式建物の上階を構成する建物ユニットと隣接して配置されており、
    前記直上部の上端部と、前記上階の建物ユニットの上端部との間には、当該双方の前記建物ユニットに跨る補助支持部が配置固定されていることを特徴とする建物ユニットの補強構造。
  5. 請求項に記載の建物ユニットの補強構造において、
    前記補強梁と前記補助支持部とが、前記直上部を挟んで平行に配置されていることを特徴とする建物ユニットの補強構造。
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