以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る燃料電池装置FCは、セルスタックCSと、ケーシング10と、燃料ガス供給部20と、第1空気供給部31と、第2空気供給部32と、燃焼部40と、燃焼ガス排出部50と、を備えている。まず、図1を参照しながら、セルスタックCS及びケーシング10の構成について説明する。
セルスタックCSは、複数の燃料電池セル(不図示)の集合体である。各燃料電池セルは、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)であり、電極として正極(アノードまたは燃料極とも言い、Anとも記す)と負極(カソードまたは空気極とも言い、Caとも記す)と、を有している。複数の燃料電池セルは、全て電気的に直列に接続されている。各燃料電池セルの正極及び負極は、いずれも導電性セラミックスで形成されている。正極と負極との間には、イオン伝導性を有する固体電解質が設けられている。セルスタックCSは、ベースプレートBP上に立設されている。
ケーシング10は、セルスタックCSを収容する筐体であり、第1筒状体101と、第2筒状体102と、第3筒状体103と、第4筒状体104と、第5筒状体105と、下部筒状体108と、を有している。第1筒状体101、第2筒状体102、第3筒状体103、第4筒状体104、第5筒状体105及び下部筒状体108は、いずれも金属製で中心軸周りに略円筒状に形成されており、それぞれの中心軸が同軸となるように配置されている。
第1筒状体101は、上端を塞ぐ天板部101aと、円筒状の円筒部101bとを有する。第1筒状体101は、ベースプレートBP上に立設されたセルスタックCSをその内部に収容しており、その下端がベースプレートBP上に当接して固定されている。円筒部101bの下部には、後述する第1空気供給部31の吹出口313が形成されている。
第2筒状体102は、円筒状に形成され、その下端がベースプレートBP上に当接して固定されている。第2筒状体102は、円筒部101bの外側面と所定の距離を保つように、円筒部101bを覆っている。従って、第2筒状体102の内側面と、円筒部101bの外側面との間に隙間が形成されている。この隙間は、後述する空気加熱流路311の第2加熱流路311bとなる。
第3筒状体103は、その上端から下端まで径がほぼ一様の筒状に形成されている。第3筒状体103は、第2筒状体102の外側に配置されている。第3筒状体103は、第2筒状体102の外側面と所定の距離を保つように、その外側面を覆っている。第3筒状体103の内側面と第2筒状体102の外側面との間に隙間が形成されている。この隙間は、後述する燃焼ガス排出流路502の第1排出流路502aとなる。
第4筒状体104は、その下端にフランジ部104aを有する筒状に形成されており、第3筒状体103の外部に配置されている。このフランジ部104aは、ケーシング10の固定に利用される。第4筒状体104は、第3筒状体103の外側面を覆うとともに、その内側面が第3筒状体103の外側面との間に隙間を形成するように配置されている。その隙間は、後述する燃焼ガス排出流路502の第2排出流路502bとなる。第4筒状体104の下部の内部には、円板状の底板104bが配置されている。底板104bは、第4筒状体104の内部を上下に区画している。
第2筒状体102、第3筒状体103及び第4筒状体104のそれぞれの上端部の上方には、円環状の環状内蓋106が配置されている。環状内蓋106は、第2筒状体102の内側面及び第4筒状体104の外側面に対して固定され、第2筒状体102と第4筒状体104との間に形成される空間を覆っている。環状内蓋106は、第3筒状体103上端との間に隙間を空けて配置されることで、第2筒状体102と第3筒状体103との間に形成されている隙間(第1排出流路502a)と、第3筒状体103と第4筒状体104との間に形成されている隙間(第2排出流路502b)と、連通させている。
第5筒状体105は、第4筒状体104の外部に配置され、第4筒状体104の上部の外側を覆っている。第5筒状体105は、その内側面が第4筒状体104の外側面との間に隙間を形成するように配置されている。この隙間は、後述する空気加熱流路311の第1加熱流路311aとなる。第5筒状体105の上端部は、上面蓋107によって覆われている。
下部筒状体108は、第3筒状体103の下部の内部に配置され、その上端がベースプレートBPの下面に当接して固定されている。また、下部筒状体108は、その外側面が第3筒状体103の内側面との間に隙間を形成する隙間を形成するように配置されている。この隙間は、後述する燃焼ガス排出流路502の第1排出流路502aとなる。また、下部筒状体108の下部には、後述する燃焼ガス排出部50の燃焼ガス排出口501が形成されている。
続いて、図1及び図2を参照しながら、燃料ガス供給部20、第1空気供給部31、第2空気供給部32、燃焼部40及び燃焼ガス排出部50の構成について説明する。
燃料ガス供給部20は、水供給管201と、都市ガス供給管240と、改質ユニット202と、燃料ガス供給管203と、脱硫器204(図2参照)と、を有している。
水供給管201は、その内部に水を流す配管である。水供給管201は、ケーシング10の第4筒状体104を貫通し、改質ユニット202まで延びるように形成されている。
都市ガス供給管240は、炭化水素ガスを含む都市ガスをその内部に流す配管である。都市ガスは、都市ガス供給管240の上流において脱硫器204を通過することで、セルスタックCSの電池性能の低下を招く硫黄成分が除去される。都市ガス供給管240は、都市ガスに加えて空気を流すこともできる。都市ガス供給管240は、水供給管201よりも上方の位置でケーシング10の第4筒状体104を貫通し、改質ユニット202まで延びるように形成されている。
改質ユニット202は、下部筒状体108を囲むように円環状に形成されており、その中心軸は第1筒状体101等の中心軸と同軸とされている。改質ユニット202は、下部筒状体108と第3筒状体103との間に形成される隙間に配置されている。また、改質ユニット202は、その内周側の側面が下部筒状体108の外側面との間に隙間を形成するとともに、その外周側の側面が第3筒状体103の内側面と当接するように配置されている。
また、改質ユニット202は、その内部に水蒸発器206と、改質器208と、を有している。後述するように、改質ユニット202は、水蒸発器206及び改質器208をユニットケーシング205(図2においては明示せず、図3参照)の内部に収めることでユニット化されている。水供給管201及び都市ガス供給管240は、この改質ユニット202に接続されている。詳細には、水供給管201及び都市ガス供給管240は、改質ユニット202の水蒸発器206に接続されている。
燃料ガス供給管203は、改質ユニット202に接続され、改質ユニット202から排出される燃料ガスをその内部に流す配管である。燃料ガス供給管203は、改質ユニット202から水平方向に延び、さらに上方のベースプレートBPまで延びるように形成されている。
第1空気供給部31は、空気加熱流路311と、第1空気導入管312と、吹出口313と、を有している。空気加熱流路311は、第1加熱流路311a及び第2加熱流路311bを有している。第1加熱流路311aは、第4筒状体104と第5筒状体105との間に形成された隙間である。第2加熱流路311bは、第1筒状体101と第2筒状体102との間に形成された隙間である。第1空気導入管312は、第5筒状体105の外側面に接続される配管であり、空気加熱流路311の第1加熱流路311aに連通している。吹出口313は、第1筒状体101の下部に、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる貫通孔である。
第2空気供給部32は、第2空気導入管321と、吹出管322と、を有している。第2空気導入管321は、空気をその内部に流す配管であり、ケーシング10の底板104bを下方から貫通して下部筒状体108の内部に延びている。第2空気導入管321は、その上端近傍に螺旋状の螺旋部321aが形成されている。吹出管322は、第2空気導入管321と連通している配管であり、第1筒状体101の内部において、ベースプレートBPから上方に向けて突出するように設けられている。吹出管322は、第2空気導入管321を流れる空気を第1筒状体101の内部に吹き出す。
燃焼部40は、燃焼室401と、バーナー402と、イグナイタ403と、を有している。燃焼室401は、下部筒状体108の内部に形成された空間である。バーナー402は、ベースプレートBPから下方の燃焼室401内に向けて突出し、第2空気導入管321の螺旋部321aに覆われるように設けられている。バーナー402は、セルスタックCSにおける電気化学反応に用いられなかった残余の燃料ガスをその内部に流し、下端から燃焼室401内に供給する。
イグナイタ403は、点火装置であり、ケーシング10の底板104bを貫通して燃焼室401内に臨出するよう設けられている。イグナイタ403は、高電圧が印加されることで火花放電を発生させ、燃焼室401内の燃料ガスに着火して燃焼させる。このような残余の燃料ガスの燃焼により、燃焼室401内で燃焼ガスが発生する。
燃焼ガス排出部50は、燃焼ガス排出口501と、燃焼ガス排出流路502と、燃焼ガス排出管503と、を有している。燃焼ガス排出口501は、下部筒状体108に、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる貫通孔である。燃焼ガス排出流路502は、第1排出流路502a及び第2排出流路502bを有している。
第1排出流路502aは、下部筒状体108と第3筒状体103との間に形成された隙間である。第2排出流路502bは、第3筒状体103と第4筒状体104との間に形成された隙間である。燃焼ガス排出管503は、ケーシング10の第4筒状体104の外側面に接続される配管であり、燃焼ガス排出流路502の第2排出流路502bと連通している。
引き続いて、図1及び図2を参照しながら、以上のように構成された燃料電池装置FCの動作について説明する。
燃料電池装置FCの起動工程の際など、セルスタックCSや改質器208の温度が低い状態にあるときは、燃料ガス供給部20は、都市ガス及び空気を改質ユニット202に供給する。都市ガス及び空気は、都市ガス供給管240によって改質ユニット202に供給され、まず水蒸発器206に導入される。そして、水蒸発器206を通過した都市ガス及び空気は、水蒸気流路207を介して改質器208に導入される。
改質器208は、その内部に改質触媒2081(図3参照)が配置されている。改質器208において、都市ガスに含まれる炭化水素ガスと、空気に含まれる酸素とによる部分酸化改質が行われる。この部分酸化改質により、水素を含む燃料ガスが生成される。部分酸化改質は発熱反応であることから、改質器208において生成される燃料ガスも高温となる。また、改質ユニット202に接続された燃料ガス供給管203は、その一部が燃焼室401内(下部筒状体108の内部)に配置されているため、燃料ガスは当該部位を流れる際に燃焼ガスによって加熱され、さらに高温となる。このようにして高温となった燃料ガスが、セルスタックCSを構成する燃料電池セルの正極Anに供給されることで、セルスタックCSが加熱されて昇温し、燃料電池装置FCの迅速な起動に寄与する。
一方、第1空気供給部31の空気導入管312によってケーシング10内に導入される空気は、図1に示されるように、空気加熱流路311の第1加熱流路311aを上方に流れる。次に、空気は上面蓋107に沿ってその向きをケーシング10の中央側に変え、さらに第2加熱流路311bを下方に流れる。第2加熱流路311bを流れて第1筒状体101の下部に至った空気は、吹出口313から第1筒状体101の内部に向けて吹き出し、セルスタックCSを構成する燃料電池セルの負極Caに供給される。
後述するように、空気加熱流路311を流れる空気は、高温の燃焼ガスを熱源として加熱され、昇温する。このようにして高温となった空気が燃料電池セルの負極Caに供給されることで、セルスタックCSが加熱されて昇温し、燃料電池装置FCの迅速な起動に寄与する。
また、第2空気供給部32の第2空気導入管321によってケーシング10内に導入される空気は、図1に示されるように、螺旋部321aを上方へと流れる。この空気は、バーナー402の周囲を旋回しながら流れることにより、バーナー402から熱を受けて温度が上昇する。一方、バーナー402は、螺旋部321aを流れる空気に熱を奪われることで、過度な昇温が抑制される。第2空気導入管321を通過し、温度が上昇した空気は、吹出管322から第1筒状体101の内部に吹き出され、セルスタックCSを構成する燃料電池セルの負極Caに供給される。
セルスタックCSでは、以上のように供給される燃料ガスと空気を用いて電気化学反応を生じさせ、発電を行う。セルスタックCSにおける電気化学反応に用いられなかった残余の燃料ガスは、バーナー402から燃焼室401内に吹き出され、イグナイタ403によって着火されて燃焼する。この燃焼の結果として、燃焼室401内に高温の燃焼ガスが発生する。
燃焼室401内で発生した高温の燃焼ガスは、燃焼ガス排出口501から排出され、燃焼ガス排出流路502の第1排出流路502aに流入する。第1排出流路502aには改質ユニット202が配置されており、燃焼ガスは改質ユニット202の側面に沿って上方に流れる。これにより、高温の燃焼ガスによって改質ユニット202の改質器208が加熱され、昇温する。
改質ユニット202の側面を通過した第1排出流路502aの燃焼ガスは、空気加熱流路311の第2加熱流路311bを下方に流れる空気と、第2筒状体102を挟んで逆向きに流れる。これにより、第2加熱流路311bを流れる空気は、第2筒状体102を介して高温の燃焼ガスによって加熱され、昇温する。
第1排出流路502aを通過した燃焼ガスは、環状内蓋106に沿って折り返し、次に第2排出流路502bを下方に流れる。第2排出流路502bの燃焼ガスは、空気加熱流路311の第1加熱流路311aを流れる空気と、第4筒状体104を挟んで逆向きに流れる。これにより、第1加熱流路311aを流れる空気は、第4筒状体104を介して高温の燃焼ガスによって加熱され、昇温する。
第2排出流路502bをさらに下方に流れた燃焼ガスは、改質ユニット202の外側面が当接する第3筒状体103の下部に沿って流れる。これにより、改質ユニット202の水蒸発器206は、第3筒状体103を介して高温の燃焼ガスによって加熱され、昇温する。第2排出流路502bを流れ終えた燃焼ガスは、燃焼ガス排出管503を介してケーシング10から排出される。この燃焼ガスは、排熱回収器504(図2参照)を通過することで熱を回収された後に、低温となって排出される。
燃料電池装置FCの運転に伴い、セルスタックCSや改質器208が所定温度まで昇温した後は、燃料ガス供給部20は、空気に代えて、あるいは空気に加えて、水供給管201に水を流して改質ユニット202に供給する。都市ガスとともに改質ユニット202に供給された供給された水は、まず水蒸発器206に導入される。前述したように水蒸発器206は燃焼ガスによって加熱されて昇温していることから、水蒸発器206に導入された水は加熱されて蒸発し、水蒸気となる。
水蒸発器206において発生した水蒸気は、都市ガスとともに水蒸気流路207を介して改質器208に導入される。改質器208では、その内部の改質触媒2081により、水蒸気と、都市ガスに含まれる炭化水素ガスとによる水蒸気改質が行われ、水素を含む燃料ガスが生成される。水蒸気改質は、部分酸化改質に比べて水素の収率が高い改質反応である。改質器208は、燃焼ガス排出流路502を流れる高温の燃焼ガスから熱の供給を受けることで、吸熱反応である水蒸気改質を行っている。
セルスタックCSや改質器208が高温となり、燃料電池装置FCがセルスタックCSからの電力の取り出しが可能な発電工程(定常運転)に移行する際は、改質器208における水蒸気改質により水素リッチな燃料ガスを生成可能な状態となっている。これにより、燃料電池装置FCは高効率で発電を行うことが可能となる。
引き続いて、図3を参照しながら、改質ユニット202について説明する。まず、改質ユニット202の内部構造について説明する。
改質ユニット202は、ユニットケーシング205と、水蒸発器206と、水蒸気流路207と、改質器208と、を備えている。図3は、第1筒状体101(図1参照)等の中心軸に沿う平面における改質ユニット202の断面の一部を示す図であって、当該断面において離間して表れる2つの部位のうち、左側の部位を示している。
ユニットケーシング205は、改質ユニット202の筐体であり、金属製で、その外形は円環状に形成されている。また、ユニットケーシング205の内部には、2つの隔壁221,222が設けられている。隔壁221,222は、第1筒状体101等の中心軸を中心とする同心円状に設けられた円筒状の板状部材である。隔壁221は、径方向外側寄りに配置されている。隔壁222は、隔壁221よりも径方向内側に配置されている。
隔壁221は、ユニットケーシング205の下側壁面212から上方に延びている。隔壁221は、その上端がユニットケーシング205の上側壁面211と所定間隔を空けて水蒸気送出口231を形成するように設けられている。
隔壁222は、ユニットケーシング205の上側壁面211から下方に延びている。隔壁222は、その下端がユニットケーシング205の下側壁面212と所定間隔を空けて水蒸気受入口232を形成するように設けられている。水蒸気送出口231と水蒸気受入口232とは互いに正対しないように、上下にオフセット配置されている。
水蒸発器206は、隔壁221,222によってユニットケーシング205の内部に形成された3つの領域のうち、外周側壁面213と隔壁221とによって外周側に形成された領域を実質的に専有するように配置されている。水蒸発器206が配置されるこの領域には、ユニットケーシング205の下側壁面212に接続された水供給管201と、都市ガス供給管240が連通している(図1参照)。外周側壁面213は、第3筒状体103の下部の内側面と当接するように配置されている。
水蒸気流路207は、ユニットケーシング205の内部に形成された3つの領域のうち、隔壁221と隔壁222との間に形成された領域に設けられている。水蒸気流路207は、上下方向に延び、水蒸気送出口231と水蒸気受入口232とを接続する流路となっている。
改質器208は、ユニットケーシング205の内部に形成された3つの領域のうち、内周側壁面214と隔壁222とによって内周側に形成された領域を実質的に専有するように配置されている。これにより、水蒸発器206及び改質器208は、水蒸気流路207を挟んで径方向に互いに対向するようにしてユニットケーシング205の内部に収容されていることとなる。ユニットケーシング205の内周側壁面214には、ユニットケーシング205の内外を連通する燃料ガス送出口233が開設されている。内周側壁面214には燃料ガス供給管203が接続され、燃料ガス送出口233と連通している。
改質器208は、触媒配置部208aと、導出部208bと、を有している。触媒配置部208aは改質器208の下部の領域であり、表面に金属を担持した改質触媒2081が多数配置されている。導出部208bは、改質器208の上部で、且つ触媒配置部208aと燃料ガス送出口233との間の領域であり、そこには改質触媒2081は配置されていない。
触媒配置部208aは、水蒸気送出口231の下端(換言すれば、隔壁221の上端)の高さ位置Hよりも下方に位置している。すなわち、水蒸気送出口231と触媒配置部208aとは、互いに正対しないように上下方向にオフセット配置されている。水蒸気送出口231は、導出部208bと正対している。
以上のように構成された改質ユニット202では、水供給管201と都市ガス供給管240とによって、水蒸発器206に水と都市ガスとが導入される。前述したように、水蒸発器206は、燃焼ガス排出流路502の第2排出流路502bを流れる高温の燃焼ガスによって加熱されている。そのため、水蒸発器206に導入された水は加熱され、蒸発して水蒸気が発生する。
水蒸発器206において発生した水蒸気は、都市ガスとともに水蒸気送出口231から流出する。これらのガスは、水蒸気流路207に流入すると、隔壁222のうち導出部208bと隣り合う部分に当たって流れの向きを下方に変える。さらに、当該ガスは、隔壁221のうち触媒配置部208aと隣り合う部分と、隔壁222とに沿って、水蒸気受入口232に向けて流れる。水蒸気流路207の下端部に達した当該ガスは、水蒸気受入口232から流出する。
水蒸気受入口232からユニットケーシング205の内周側の領域に流入する水蒸気及び都市ガスは、当該領域に配置されている改質器208に導入される。改質器208の触媒配置部208aでは、改質触媒2081による水蒸気改質が行われ、水素を含む燃料ガスが生成される。この燃料ガスは、触媒配置部208aから流出すると、導出部208bによって燃料ガス送出口233まで導かれ、さらに燃料ガス供給管203によってセルスタックCSに供給される。
ここで、水蒸発器206が有する熱は、水蒸発器206において蒸発する水に奪われる。このため、水蒸発器206は、燃料電池装置FCの他の要素と比べて低温となる。仮に、改質器208から低温の水蒸発器206に輻射や熱伝達によって熱が移動し、改質器208において水蒸気改質に用いることができる熱が減少してしまうと、水素の収率や発電効率の低下を招くおそれがある。特に、水蒸発器206と改質器208とを1つのユニットケーシング205内に収容している場合は、この熱移動の懸念は大きなものとなる。改質器208と低温の水蒸発器206とを大きく離間した状態で配置することで上記熱移動を抑制する方法も考えられるが、このような方法は、装置の大型化や、組立コストの増大という新たな課題を招く。
また、水蒸発器206において発生して間もない水蒸気は、燃料電池装置FCの他の要素と比べて低温である。したがって、仮に、改質器208から水蒸気に熱伝達によって熱が移動し、改質触媒2081の温度が低下してしまうと、当該改質触媒2081において、水蒸気改質反応が進行しなくなったり、あるいは、水蒸気改質反応とは逆の、水素が改質前の炭化水素ガスに戻る反応が進行したりするおそれがある。このため、水素の収率低下や発電効率の低下を招いてしまう。
このような課題に対し、本実施形態では、まず、水蒸発器206及び改質器208を、水蒸気流路207を挟んで径方向に互いに対向するように配置することで、改質器208から水蒸発器206への熱移動を抑制している。つまり、改質器208から水蒸発器206への熱移動を、介在する水蒸気流路207によって抑制することが可能となる。したがって、改質器208における水蒸気改質に用いる熱を確保しつつ、水蒸発器206を改質器と近づけて配置し、両者を1つのユニットケーシング205の内部に収容し、装置のコンパクト化を図ることが可能となる。
また、本実施形態では、水蒸気送出口231と触媒配置部208aとを、互いに正対しないように上下方向にオフセット配置している。これにより、水蒸気送出口231から水蒸気流路207に流入する低温の水蒸気によって、改質器208の改質触媒2081の温度が低下することを抑制している。したがって、改質触媒2081において、水蒸気改質反応が進行しなくなったり、あるいは、水蒸気改質反応とは逆の、水素が改質前の炭化水素ガスに戻る反応が進行したりすることを抑制し、水素の収率や発電効率の向上を図ることが可能となる。
さらに、本実施形態では、水蒸気送出口231は、改質器208の導出部208bと互いに正対するように配置されている。これにより、水蒸気送出口231から水蒸気流路207に流入する低温の水蒸気は、導出部208bから熱を奪ってその温度が上昇する。導出部208bに存在する燃料ガスは、導出部208bが熱を奪われることでその温度が低下する。しかしながら、導出部208bには改質触媒2081が配置されていないため、導出部208bに存在する燃料ガス中の水素が、改質前の都市ガスに戻る反応が進行してしまうことはない。また、水蒸気が導出部208bから熱を奪って温度が上昇することで、水蒸気流路207の下流側において水蒸気が触媒配置部208aから熱を奪うことを抑制することができる。このため、触媒配置部208aに配置された改質触媒2081において、水蒸気改質反応が進行しなくなったり、あるいは、水蒸気改質反応とは逆の、水素が改質前の炭化水素ガスに戻る反応が進行したりすることを抑制し、水素の収率や発電効率の向上を図ることが可能となる。
次に、第1変形例に係る燃料電池装置の改質ユニット202Aについて、図4を参照しながら説明する。改質ユニット202Aは、前述した実施形態の改質ユニット202に代えて燃料電池装置FCに搭載されるものであり、ケーシング10の下部筒状体108と第3筒状体103との間に形成される隙間(第1排出流路502a)に配置されている。
図4は、第1筒状体101(図1参照)等の中心軸に沿う平面における改質ユニット202Aの断面の一部を示す図であって、当該断面において離間して表れる2つの部位のうち、左側の部位を示している。改質ユニット202Aは、その外形が円環状に形成され、内部に収容する水蒸発器206と改質器208とが水蒸気流路207を挟んで互いに対向するという基本的な構成は、改質ユニット202と共通している。このため、以下では改質ユニット202Aのうち、改質ユニット202と同一の機能を有する構成については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
図4に示されるように、改質ユニット202Aは、その隔壁222に複数のフィンFが設けられている。各フィンFは、金属製で平板状の部材であり、互いに間隔を空けて設けられている。また、各フィンFは、水蒸気送出口231の下端(換言すれば、隔壁221の上端)の高さ位置Hよりも上方に設けられている。すなわち、各フィンFは、隔壁222のうち導出部208bと隣り合う部分に、水蒸気流路207に向けて突出するように設けられている。
以上のように構成された改質ユニット202Aでは、水蒸発器206において発生した水蒸気は、都市ガスととともに水蒸気送出口231から流出し、水蒸気流路207に流入する。水蒸気流路207に流入する際、水蒸気は、水蒸気送出口231と正対する位置に設けられた各フィンFの表面を流れる。
各フィンFは、導出部208bを流れる燃料ガスから隔壁222を介した熱伝導によって熱を受け、高温となっている。したがって、各フィンFの表面を流れる水蒸気は、各フィンFからの熱伝達によって熱を受け、その温度が上昇する。すなわち、各フィンFは、水蒸気送出口231から水蒸気流路207に流入する水蒸気との接触面積を大きくし、燃料ガスから水蒸気への熱移動を促進するように機能している。
このようにして、水蒸気が導出部208bの燃料ガスから熱を奪って温度が上昇することで、水蒸気流路207の下流側において水蒸気が触媒配置部208aから熱を奪うことをさらに抑制することができる。このため、触媒配置部208aに配置された改質触媒2081において、水蒸気改質反応が進行しなくなったり、あるいは、水蒸気改質反応とは逆の、水素が改質前の炭化水素ガスに戻る反応が進行したりすることを抑制し、水素の収率や発電効率の向上を図ることが可能となる。
続いて、第2変形例に係る燃料電池装置の改質ユニット202Bについて、図5を参照しながら説明する。改質ユニット202Bは、前述した実施形態の改質ユニット202に代えて燃料電池装置FCに搭載されるものであり、ケーシング10の下部筒状体108と第3筒状体103との間に形成される隙間(第1排出流路502a)に配置されている。
図5は、第1筒状体101(図1参照)等の中心軸に沿う平面における改質ユニット202Bの断面の一部を示す図であって、当該断面において離間して表れる2つの部位のうち、左側の部位を示している。改質ユニット202Bは、その外形が円環状に形成され、内部に収容する水蒸発器206と改質器208とが水蒸気流路207を挟んで互いに対向するという基本的な構成は、改質ユニット202と共通している。このため、以下では改質ユニット202Bのうち、改質ユニット202と同一の機能を有する構成については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
図5に示されるように、改質ユニット202Bは、その内部に断熱材HIが設けられている。断熱材HIは、隔壁222の周囲を覆う円環状の部材であり、隔壁222を形成する金属材料よりも熱伝導率が小さい材料によって形成されている。また、断熱材HIは、隔壁222の外周側の面のうち、水蒸気送出口231の下端(換言すれば、隔壁221の上端)の高さ位置Hよりも下方の部位に貼り付けられている。
以上のように構成された改質ユニット202Bでは、断熱材HIが介在することにより、触媒配置部208aから水蒸気への熱移動が抑制される。これにより、触媒配置部208aの改質触媒2081の温度が低下することを抑制することができる。したがって、触媒配置部208aに配置された改質触媒2081において、水蒸気改質反応が進行しなくなったり、あるいは、水蒸気改質反応とは逆の、水素が改質前の炭化水素ガスに戻る反応が進行したりすることを抑制し、水素の収率や発電効率の向上を図ることが可能となる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。