JP6331692B2 - 十字軸式自在継手の組立方法 - Google Patents
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Description
即ち、前記ヨーク7a(7b)に形成された円孔15の内径寸法や、カップ軸受18の外径寸法、十字軸8を構成する軸部17a(17b)の軸方向寸法等、自在継手6を構成する各部材には、常に寸法公差内で寸法にばらつきを生じる。この為、複数の自在継手6を組み立てる場合に例えば、円孔15の内径寸法が大きめのものと、カップ軸受18の外径寸法が小さめのものとを組み合わせたり、反対に、円孔15の内径寸法が小さめのものと、カップ軸受18の外径寸法が大きめのものとを組み合わせたりする場合がある。従って、このカップ軸受18の圧入量を、前記圧入パンチ26に加わる圧力の大きさのみに基づいて決定すると、この圧入量が過大になったり、不足したりする可能性があり、カップ軸受18に適正な予圧を安定して付与する事が難しくなる。
特に本発明の場合には、前記カップ軸受を前記円孔の内側に、予め設定した基準位置まで圧入し、その時点で前記圧入パンチに加わる圧力の値を基準圧力として設定(記憶)する。
次いで、前記カップ軸受を前記基準位置から更に圧入し、この圧入パンチに加わる圧力が前記基準圧力よりも予め設定した値だけ大きくなった時点で、前記カップ軸受が圧入完了位置にまで達したと判定して圧入作業を終了する。
そして、前記カップを構成する底部の内面が、前記軸部の先端面に当接する位置よりも手前の位置を、前記基準位置として設定する。
尚、この基準位置は、前記カップを構成する底部の内面が、前記軸部の先端面に当接する位置よりも手前の位置であれば、前記カップ軸受の圧入量が少ない圧入初期の位置を基準位置としても良い。但し、圧入作業のサイクルタイムの短縮の面からは、前記当接する位置に接近した、例えば0.1〜1.0mm程度の僅かに手前の位置を基準位置する事が好ましい。
又、圧入完了位置を決定する為の圧力の値は、ヨークやカップ軸受の材質、大きさ、形状等に基づき、各種シミュレーションや実験等により予め適正な値を求めておく事ができる。
上述した様な請求項4に記載した発明を実施する場合、例えば請求項5に記載した発明の様に、前記カップ軸受の圧入速度を段階的に遅くする。
即ち、本発明の場合には、カップ軸受を基準位置まで圧入した時点で圧入パンチに加わる圧力の値である基準圧力を基準として、圧力の値が予め設定した値だけ大きくなるまでカップ軸受を圧入する。この様に本発明の場合には、最終的に圧入パンチに加わる圧力の値(圧入完了位置と判定する圧力の値)を、円孔の内径寸法とカップ軸受の外径寸法との間に生じる寸法のばらつきに起因して変化する基準圧力の値を考慮して決定する為、このばらつきが、カップ軸受の圧入量(圧入位置)に与える影響を排除できる。又、本発明の場合には、カップ軸受の圧入量に基づいて圧入完了位置を判定するのではなく、前記基準圧力から予め設定した値だけ圧力が大きくなった位置を、カップ軸受に適正な予圧を付与できる、圧入完了位置と判定する為、十字軸を構成する軸部の軸方向寸法のばらつきが、カップ軸受の圧入量に与える影響も排除できる。従って、本発明によれば、自在継手の構成各部材の寸法のばらつきに拘らず、カップ軸受を適正な予圧を付与できる適正位置に精度良く組み付ける事ができる。
更に、請求項4に記載した発明によれば、サイクルタイムをより一層短縮できる。
図1〜4は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例の特徴は、カップ軸受18の圧入工程を工夫する事により、自在継手6(図5〜7参照)を構成する各部材の寸法のばらつきに拘らず、前記カップ軸受18を精度良く組み付けられる組立方法を実現する点にある。本例の組立方法の対象となる自在継手6の構造及び作用効果に就いては、前述した従来構造の場合と同じであるから、同等部分に関する図示及び説明は省略し、以下、本例の特徴部分である組立方法を中心に説明する。
図1の(A)に示す様に、十字軸8を構成する一方の軸部17aの両端部を、ヨーク7aを構成する1対の結合腕部10、10に形成された円孔15、15内にそれぞれ挿入した予備組み立て状態で、前記ヨーク7aを、前記ヨーク受け治具30の上方位置に、図示しないチャックにより下向きに保持する。より具体的には、このヨーク受け治具30の中心軸(機械中心)と、前記ヨーク7aの中心軸とを一致させた状態で、このヨーク7aを前記ヨーク受け治具30の上方位置に配置する。又、図示しないセンタ出し治具を用いて、前記一方の軸部17aの両端部を前記両円孔15、15の中心に位置させる。
次に、前記ヨーク7aを所定量だけ下降させて、前記両結合腕部10、10の先端部に形成された円孔15、15と、前記両圧入かしめ装置29、29を構成する、それぞれが円柱状の1対の圧入パンチ31、31とを同軸上に位置させる。又、この状態で、前記両結合腕部10、10の先端部内側面同士の間に、前記ヨーク受け治具30を構成する、略L字形に構成された1対の支持腕部32、32の先端部を挿入する。又、このヨーク受け治具30を構成するサーボモータを駆動する事により、前記両支持腕部32、32を互いに離れる方向(図1の左右方向)に駆動し、これら両支持腕部32、32の先端部外側面を、前記両結合腕部10、10の先端部内側面に当接させる。そして、前記両支持腕部32、32に加わる圧力が所定値になるまで、前記両結合腕部10、10を拡開する方向に押圧する。これにより、次述する(C)〜(E)の工程で、これら両結合腕部10、10の先端部内側面同士の間隔を一定に保持できるようにバックアップする。又、図示しない軸受供給装置を利用して、1対のカップ軸受18、18を、前記各円孔15、15及び前記各圧入パンチ31、31の同軸上に供給する。尚、これら両カップ軸受18、18は、図1の(A)に示した様に、セット前工程の段階で供給し、待機しておく事もできる。
次に、前記両圧入かしめ装置29、29を構成するサーボモータを駆動する事により、前記両圧入パンチ31、31をそれぞれ前方に移動(互いに近づく方向に移動)させて、前記両カップ軸受18、18を、前記両結合腕部10、10の外側面側から前記両円孔15、15内に同時に圧入する。本例の場合、前記両圧入パンチ31、31にそれぞれ設置した圧力センサにより、これら両圧入パンチ31、31に加わる圧力(圧入反力)の大きさを測定すると共に、リニアスケール又はサーボモータの送りパルス数により、これら両圧入パンチ31、31の機械中心位置に対する送り量(カップ軸受18の圧入量)を測定している。これにより、これら両カップ軸受18、18を構成するカップ19の底部22の内面が、前記一方の軸部17aの各端面に当接する位置よりも1mm程度手前の位置を基準位置として定め、前記両カップ軸受18、18がこの基準位置にそれぞれ到達するまで、前記両圧入パンチ31、31によりこれら両カップ軸受18、18を高速で圧入する。別な言い方をすれば、これら両圧入パンチ31、31の先端面同士の間隔が、前記軸部17aの軸方向寸法(公差を含む)と、前記底部22の内面と前記軸部17aの先端面との間の隙間(1mm程度)の2倍の値と、この底部22の厚さ寸法の2倍の値との合計に等しくなるまで、前記両圧入パンチ31、31を高速で前方に移動させる。そして、前記両カップ軸受18、18を基準位置にまで圧入した時点で、前記圧力センサにより測定される前記両圧入パンチ31、31に加わる圧力の値を、基準圧力(X)として、前記組立装置28を構成する制御器中のメモリに記憶する。又、前記両圧入パンチ31、31の前方への移動を一旦停止する。尚、図2には、前記カップ軸受18を基準位置まで圧入した時点での、前記圧入パンチ31の先端面の位置を、便宜上、前記軸部17aの端面との間隔を実際の場合よりも広くした状態で、一点鎖線により表している。
その後、図3に示す様に、前記両カップ軸受18、18の圧入速度をこれまでよりも低く設定した中速(高速時の1/2500〜1/500程度の速度)にて、圧入を再開する。そして、図4に示す様に、前記両圧入パンチ31、31に加わる圧力の値が、前記基準圧力(X)よりも予め設定した第一の所定値(α)分だけ大きくなった時点で、前記両カップ軸受18、18の圧入速度を、中速から低速(中速時の半分程度の速度)に減速して圧入を継続する。そして最終的に、前記両圧入パンチ31、31に加わる圧力の値が、前記基準圧力(X)よりも予め設定した第二の所定値(β、β>α)分だけ大きくなった時点で、前記両カップ軸受18、18が圧入完了位置にまで達したと判定して圧入作業を終了する。この様に、これら両カップ軸受18、18を圧入完了位置に圧入した状態で、これら両カップ軸受18、18は、底部22の内面が軸部17aの先端面に当接した後、更に所定量圧入され、予圧が付与されている。本例の場合には、前記両カップ軸受18、18の基準位置到達後の圧入速度を、中速に設定した後、低速に設定しており、前記両圧入パンチ31、31に加わる圧力が大きくなるに従って段階的に遅くしている。但し、前記両カップ軸受18、18の圧入速度を、直線的又は曲線的に遅くしても良い。
尚、前記第一の所定値(α)及び前記第二の所定値(β)は、前記ヨーク7aや前記カップ軸受18(カップ19、ニードル20)の材質、大きさ、形状等に基づき、各種シミュレーションや実験等により予め適正な値を求めておく。
次いで、前記両圧入かしめ装置29、29を構成するサーボモータ(圧入パンチ31の駆動に用いるサーボモータとは別のサーボモータ)を駆動する事により、又は、油圧若しくは空圧によって作動するシリンダを駆動する事により、1対のかしめパンチ33、33を前方に移動させる。そして、これら両かしめパンチ33、33の先端面により、前記両円孔15、15の内周縁部の円周方向複数個所を塑性変形させて、当該部分にかしめ部24、24(図6〜8参照)を形成する。これにより、これら各かしめ部24、24を、前記両カップ19、19を構成する底部22、22の外面に押し付けて、これら両カップ19、19が前記両円孔15、15から抜け出る事を防止する。
尚、本例の場合にも、前記図8に示した従来方法で使用したかしめパンチと同様に、前記両かしめパンチ33、33として、円筒状のものを使用し、これら両かしめパンチ33、33を、前記両圧入パンチ31、31の周囲に外嵌した状態で配置している。
最後に、前記両かしめパンチ33、33及び前記両圧入パンチ31、31を、それぞれ初期位置まで後退させる。又、前記ヨーク受け治具30を構成する前記両支持腕部32、32同士を、互いに近づく方向に移動させて、これら両支持腕部32、32による前記両結合腕部10、10のバックアップを解除する。次いで、前記ヨーク7aを、前記ヨーク受け治具30の上方位置に移動(退避)させて、このヨーク7aを前記組立装置28から取り出す。
即ち、本例の場合には、これら両カップ軸受18、18を基準位置まで圧入した時点で圧入パンチ31、31に加わる圧力の値である基準圧力(X)を基準として、圧力の値が予め設定した第二の所定値(β)だけ大きくなるまで前記両カップ軸受18、18を圧入する。この様に本例の組立方法の場合には、最終的に圧入パンチ31、31に加わる圧力の値(圧入完了位置と判定する圧力の値)を、前記各円孔15、15の内径寸法と前記各カップ軸受18、18の外径寸法との間に生じる寸法のばらつきに起因して変化する基準圧力の値を考慮して決定する。この為、このばらつきが、前記両カップ軸受18、18の圧入量(圧入位置)に与える影響を排除できる。
この結果、本例の組立方法によれば、前記自在継手6の構成各部材の寸法のばらつきに拘らず、前記両カップ軸受18、18を適正な予圧を付与できる適正位置に精度良く組み付ける事ができる。
2 ステアリングシャフト
3 中間シャフト
4 ステアリングギヤユニット
5 入力軸
6 自在継手
7a、7b ヨーク
8 十字軸
9a、9b 基部
10 結合腕部
11a、11b フランジ
12 通孔
13 通孔
14 ナット
15 円孔
16 回転軸
17a、17b 軸部
18 カップ軸受
19 カップ
20 ニードル
21 円筒部
22 底部
23 内向鍔部
24 かしめ部
25 回転軸
26 圧入パンチ
27 かしめパンチ
28 組立装置
29 圧入かしめ装置
30 ヨーク受け治具
31 圧入パンチ
32 支持腕部
33 かしめパンチ
Claims (7)
- ヨークを構成する結合腕部の先端部に形成された円孔と、この円孔の内側にこの結合腕部の内側面側から挿入された十字軸の軸部の先端部との間部分に、この軸部の先端部をこの円孔の内側に回転自在に支持する為のカップ軸受を組み込むべく、このカップ軸受をこの円孔の内側に前記結合腕部の外側面側から圧入パンチを用いて圧入する、十字軸式自在継手の組立方法であって、
前記カップ軸受を前記円孔の内側に予め設定した基準位置まで圧入し、その時点で前記圧入パンチに加わる圧力の値を基準圧力として設定した後、前記カップ軸受を前記基準位置から更に圧入し、前記圧入パンチに加わる圧力が前記基準圧力よりも予め設定した値だけ大きくなった時点で、前記カップ軸受が圧入完了位置にまで達したと判定して圧入作業を終了する事を特徴とする十字軸式自在継手の組立方法。 - 前記カップ軸受が、有底円筒状のカップと、このカップの内側に転動自在に配置された複数本のニードルとを含んで構成されており、このカップの底部の内面が前記軸部の先端面に当接する位置よりも手前の位置を、前記基準位置として設定している、請求項1に記載した十字軸式自在継手の組立方法。
- 前記カップ軸受が前記基準位置に達するまでのこのカップ軸受の圧入速度を、このカップ軸受がこの基準位置に達した後のこのカップ軸受の圧入速度よりも速くする、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した十字軸式自在継手の組立方法。
- 前記カップ軸受が前記基準位置に達した後のこのカップ軸受の圧入速度を、前記圧入パンチに加わる圧力の前記基準圧力からの増大量に応じて遅くする、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した十字軸式自在継手の組立方法。
- 前記カップ軸受の圧入速度を段階的に遅くする、請求項4に記載した十字軸式自在継手の組立方法。
- 前記圧入パンチに加わる圧力を、この圧入パンチに設置した圧力センサにより測定する、請求項1〜5のうちの何れか1項に記載した十字軸式自在継手の組立方法。
- 前記ヨークを構成する1対の結合腕部の先端部に互いに同心に形成された1対の円孔と、これら両円孔の内側にそれぞれ配置された前記軸部の両端部との間部分に、1対のカップ軸受を同時に組み込む、請求項1〜6のうちの何れか1項に記載した十字軸式自在継手の組立方法。
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