JP6329537B2 - 生物学的薬剤の送達のための方法および組成物 - Google Patents

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関連出願への相互参照
本願は、2012年7月11日に出願された米国仮出願第61/670,451号(この開示は、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
本開示は、赤血球の遺伝子操作の分野における開示であり、とりわけ、毒素への曝露の処置のための、生物学的薬剤の組織への治療的な送達のための開示を含む。
遺伝子治療は、ヒト医療における新時代にとって大きな潜在的可能性を有する。これらの方法は、標準的な医療実践ではこれまでのところ取組み可能でなかった状態のための処置を可能とするであろう。とりわけ有望な1つの領域は、導入遺伝子を細胞に付加して、その細胞に、その細胞内で以前は産生されていない産物を発現させる能力である。この技術の使用の例は、新規の治療用タンパク質をコードする遺伝子の挿入、細胞または個体において欠如するタンパク質をコードするコード配列の挿入、およびマイクロRNAまたはsiRNAなどの構造的核酸をコードする配列の挿入を含む。
導入遺伝子は、細胞自身のゲノムに組み込まれ、そこで維持されるように、様々な方途により、細胞に送達することができる。近年では、導入遺伝子を組み込むための戦略であって、選択されたゲノム遺伝子座へのターゲティングされた挿入のために、部位特異的ヌクレアーゼによる切断を使用する戦略が開発されている(例えば、共有の米国特許第7,888,121号を参照されたい)。導入遺伝子構築物が、相同組換え修復(HDR:homology directed repair)により、または非相同末端結合(NHEJ)に駆動される過程における末端捕捉により挿入されるように、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN:zinc finger nuclease)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN:transcription activator−like effector nuclease)、またはCRISPR/Cas系などのヌクレアーゼ系などのヌクレアーゼ(操作されたガイドRNAを活用する)であって、ターゲティングされた遺伝子に特異的なヌクレアーゼを活用することができる。
ターゲティングされる遺伝子座は、ヒト細胞内のAAVS1遺伝子およびCCR5遺伝子、ならびにマウス細胞内のRosa26などの「セーフハーバー(safe harbor)」遺伝子座を含む(例えば、共有の米国特許出願公開第20080299580号、同第20080159996号、および同第201000218264号を参照されたい)。ヌクレアーゼ媒介型組込みは、遺伝子サイレンシングまたは近傍のがん遺伝子活性化の危険性を最小限とするための、導入遺伝子の正確なポジショニングを可能とするので、導入遺伝子のランダムな組込みに依拠する古典的な組込み法と比較して、導入遺伝子発現の改善、安全性および発現永続性の増大の見通しをもたらす。
導入遺伝子の標的細胞への送達が、この技術を十分に生かすために克服しなければならない1つの障害であるのに対し、乗り越えなければならない別の問題は、導入遺伝子を細胞に挿入し、発現させた後で、このようにしてコードされた遺伝子産物を、確実に、生物に必要な場所に到達させ、有効となるのに十分な局所濃度で産生させなければならないことである。タンパク質の欠如または異常な非機能的タンパク質の存在を特徴とする疾患では、導入遺伝子によりコードされる野生型タンパク質の送達は、状態の改善、処置、および/または予防、例えば、遺伝子疾患(例えば、リソソーム蓄積症)を処置するための導入遺伝子の発現に極めて有用でありうる。
赤血球(red blood cell(RBC)またはerythrocyte)は、血液の主要な細胞成分である。実際、RBCは、ヒトにおける細胞のうちの4分の1を占める。ヒトでは、成熟RBCは、核および他の多くの細胞小器官を欠き、酸素を肺から取り出し、末梢組織に送達するそれらの仕事を容易とするように、ヘモグロビンで満たされている。RBCは、骨髄中で、CD34+造血幹細胞から発生し、半減期が約100〜120日間である。RBCは、それらの表面上にタンパク質抗原(凝集原)を有し、これにより、被験体が不適合の血液型であるドナー血液を輸血される場合に問題となりうる血液型(A、B、AB、またはO)が決まる。血液細胞抗原の第2に重要な種類は、約50の異なる抗原を含むRh(Rhesus)抗原である。O型Rh(−)の血液では、主要な血液型抗原のうちのいずれもが存在しないことから、O抗原をコードする遺伝子は、誰に供与するのにも使用しうるように、天然においてはるか以前に突然変異して、非機能性となっている。加えて、血液細胞抗原の別のセットは、KEL遺伝子によりコードされるKell抗原である。Kellとは、高度に多型性のII型膜貫通糖タンパク質であり、一部の個体は、輸血の後で抗Kell抗体を発生させる。
業務災害、環境内に蓄積された毒素に由来する長期にわたる曝露、または化学戦争を介する毒素への曝露は、現在生じつつある懸念である。化学兵器の破壊効果は、起爆力に主に起因するわけではないため、ボツリヌス毒素、リシン、およびサキシトキシンなどの非生物毒素の使用を伴う化学戦争は、従来型兵器または核兵器の使用と異なる。20世紀には、多様な神経作用物質、リン含有有機化学物質のクラスであって、シクロサリン、サリン、ソマン、タブン、VX、VR;殺虫剤およびノビコック剤など、神経が器官にメッセージを送る機構を破壊するクラスを含む、約70の異なる化学物質が、化学兵器剤として使用または備蓄されている。毒性化学物質はまた、イソシアン酸メチルガスが放出された結果として、数十万人の人々が曝露され、数千人が死亡した、インドのボパールにおける事故などの業務災害に起因して、環境に放出される可能性もある。
これらの作用物質への曝露の結果としての神経破壊は、正常では神経伝達物質であるアセチルコリンの活性を弛緩させる酵素であるアセチルコリンエステラーゼの活性部位に対する共有結合的修飾により引き起こされる。神経作用物質への曝露は、多数の症状をもたらす結果として、最終的に窒息による死をもたらす。米軍は、第一次湾岸戦争において、国連により大量破壊兵器として分類される神経作用物質に曝露され、1995年の日本におけるテロリストによる攻撃では、神経作用物質であるサリンが放出された。神経作用物質の皮膚透過性に起因して、防護マスクに加えて、兵士または第一対応者にはあまり適さない装備である全身防護も要請される。処置の選択肢は存在するが、予防は手薄である。1つの戦略は、アセチルコリンエステラーゼの活性部位に可逆的に結合することが可能な低分子である、ピリドスチグミンの使用を伴うが、これは、理想的な解決法ではない。酵素と会合した後に、ピリドスチグミンは、活性部位に数時間にわたり滞留するに過ぎず、このため、予防的使用のためには8〜12時間ごとに服用しなければならない。加えて、ピリドスチグミンは、血液脳関門を越えることができないので、末梢神経系において効果的であるに過ぎず、他の所望されない副作用ももたらす。アトロピン、オキシムなどの他の低分子化合物、およびジアゼパムなどの鎮痙剤との組合せが使用されているが、有効性は限定的である(Russellら(2003年)、Annu Rev Biomed Eng、5巻:1〜27頁を参照されたい)。
ブチリルコリンエステラーゼ(BCHE:butyrylcholinesterase)とは、ヒト血清中の自然発生のタンパク質であり、広範なスペクトルにわたる有機リン酸神経作用物質の標的である(Bromfieldら(1991年)、Pharmacol Exp Ther.、259巻(2号):633〜8頁を参照されたい)。組換えBCHEが、神経作用物質の作用および効果を遮断するための犠牲的予防神経作用物質対策として開発中である(Lenzら(2007年)、Toxicology.、233巻(1〜3号):31〜9頁を参照されたい)。BCHEの触媒的類似体は、開発の早期段階にある。別の酵素である、血清パラオキソナーゼ/アリールエステラーゼ1(PON1:paraoxonase/arylesterase1)もまた、いくつかの神経作用物質を分解するように操作されている(Guptaら(2011年)、Nat Chem Biol.、7巻(2号):120〜5頁、Epub、2011年1月9日を参照されたい)。他の有用な融合パートナーは、カルボキシルエステラーゼ(CaE)、抗体、およびウシ胎仔血清AChE(FBS−AChE)、ウマ血清ブチリルコリンエステラーゼ(EqBChE)を含むコリンエステラーゼ(ChE:cholinesterase)、およびPseudonomas diminutaに由来するホスホトリエステラーゼでありうる。魅力的な防護選択肢ではあるが、半減期が短く、高価な注射用組換えタンパク質は、標準的な実践における組換えBCHEまたは操作PON1の有用性を制限しかねない。
近年では、環境毒素の潜在的危険の認識が増大している。重金属(例えば、鉛、カドミウム)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、ダイオキシン、殺虫剤、フタル酸、アスベスト、およびハロゲン(塩素、フッ素)などの化合物を含む、われわれの環境内の毒素は、がん、高血圧症、心血管疾患、パーキンソン病、肺疾患、精神遅滞、および骨粗鬆症など、多くの疾患と潜在的に関連している(例えば、Vaziri(2008年)、Am J Physiol Heart Circ Physiol.、295巻(2号):H454〜H465頁;Samantarayら(2008年)、CNS Neurol Disord Drug Targets.、7巻(3号):305〜12頁を参照されたい)。これらの毒素は、これらの疾患における誘発的役割を果たすか、または疾患誘発物質と相互作用して、疾患の進行を加速化することが多い。
米国特許第7,888,121号明細書 米国特許出願公開第2008/0299580号明細書 米国特許出願公開第2008/0159996号明細書
したがって、発現させた、導入遺伝子によりコードされる遺伝子産物を、例えば、環境毒素、産業毒素、および神経ガスなどの化学戦争毒素への曝露、ならびにリソソーム蓄積症などの遺伝子状態を処置するのに治療的に関与性のレベルで送達するのに使用しうるさらなる方法および組成物が依然として必要とされている。
本明細書では、赤血球の遺伝子改変のための方法および組成物であって、例えば、治療用生物学的薬剤(例えば、タンパク質)を、遺伝子状態(例えば、リソソーム蓄積症)を伴う生物、および/または毒素に曝露されているかもしくは毒素に曝露される生物における所望の部位に送達するための方法および組成物が開示される。本発明は、曝露された被験体(例えば、ヒト患者)を防護または処置するための、これらの改変RBCの集団を被験体に導入して、その必要とされる治療剤を供給することにより、高レベルの治療剤をもたらすような赤血球の改変に関する。治療用生物学的薬剤は、例えば、遺伝子疾患における突然変異体タンパク質の機能を置きかえ、かつ/または毒素の作用を遮断し、毒素を分解し、かつ/もしくは毒素を解毒するタンパク質(例えば、治療用タンパク質)をもたらす。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
タンパク質を発現させる組込み型導入遺伝子を含む単離された遺伝子改変赤血球(RBC)またはRBC前駆細胞であって、前記タンパク質が、1種または複数種の毒素を分解もしくは解毒するか、またはリソソーム蓄積症において欠如するタンパク質を提供する、RBCまたはRBC前駆細胞。
(項目2)
前記導入遺伝子が、グロビン遺伝子またはセーフハーバー遺伝子に組み込まれている、項目1に記載のRBCまたはRBC前駆細胞。
(項目3)
前記グロビン遺伝子が、ベータグロビン遺伝子またはガンマグロビン遺伝子である、項目2に記載のRBCまたはRBC前駆細胞。
(項目4)
前記タンパク質を前記細胞中に保持する、項目1から3のいずれかに記載のRBCまたはRBC前駆細胞。
(項目5)
前記導入遺伝子が膜タンパク質の細胞外ドメインを含み、かつ前記タンパク質が、前記細胞の表面上に局在化している、項目1から3のいずれかに記載のRBCまたはRBC前駆細胞。
(項目6)
前記導入遺伝子が内因性配列と共に発現される、項目1から5のいずれかに記載のRBCまたはRBC前駆細胞。
(項目7)
前記内因性配列が、前記導入遺伝子タンパク質のアミノ(N)末端部分またはカルボキシ(C)末端部分に存在する、項目6に記載のRBCまたはRBC前駆細胞。
(項目8)
前記導入遺伝子が、前記RBCまたはRBC前駆細胞のゲノムに、ヌクレアーゼにより前記ゲノムを切断した後で組み込まれる、項目1から7のいずれかに記載のRBCまたはRBC前駆細胞。
(項目9)
前記ヌクレアーゼが、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクタードメインヌクレアーゼ(TALEN)、またはCrispR/Cas系を含む、項目8に記載のRBCまたはRBC前駆細胞。
(項目10)
O型陰性である、項目1から9のいずれかに記載のRBCまたはRBC前駆細胞。
(項目11)
胎児性ヘモグロビンを発現させる、項目1から10のいずれかに記載のRBC前駆細胞。
(項目12)
毒素の分解または毒素の作用の解毒を必要とする被験体において毒素を分解するかまたは毒素の作用を解毒する方法であって、項目1から11のいずれかに記載のRBCまたはRBC前駆体を、それを必要とする前記被験体に投与するステップを含む、方法。
(項目13)
RBC前駆細胞を骨髄移植において投与する、項目12に記載の方法。
(項目14)
リソソーム蓄積症において欠損するタンパク質を提供する方法であって、項目1から11のいずれかに記載のRBCまたはRBC前駆細胞を、それを必要とする被験体に投与するステップを含む、方法。
一態様では、本明細書では、ゲノム内の対象の領域内の標的部位(例えば、グロビン遺伝子またはセーフハーバー遺伝子)に結合する亜鉛フィンガータンパク質(ZFP:zinc−finger protein)であって、1または複数の操作された亜鉛フィンガー結合性ドメインを含むZFPが記載される。一実施形態では、ZFPは、対象の標的ゲノム領域を切断する亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)であって、1または複数の操作された亜鉛フィンガー結合性ドメインおよびヌクレアーゼ切断ドメインまたはヌクレアーゼ切断ハーフドメインを含むZFNである。切断ドメインおよび切断ハーフドメインは、例えば、多様な制限エンドヌクレアーゼおよび/またはホーミングエンドヌクレアーゼから得ることができる。一実施形態では、切断ハーフドメインは、IIS型制限エンドヌクレアーゼ(例えば、Fok I)に由来する。ある種の実施形態では、亜鉛フィンガードメインは、グロビン遺伝子内またはセーフハーバー遺伝子内の標的部位を認識する。ある種の実施形態では、亜鉛フィンガードメインは、5つの亜鉛フィンガードメインを含み、グロビン遺伝子内の標的部位を認識する(例えば、表3に示される認識へリックス領域を伴う5本のフィンガーを有する亜鉛フィンガータンパク質)。
別の態様では、本明細書では、ゲノム内の対象の領域内の標的部位(例えば、グロビン遺伝子またはセーフハーバー遺伝子)に結合するTALEタンパク質(転写活性化因子様)であって、1または複数の操作されたTALE結合性ドメインを含むTALEタンパク質が記載される。一実施形態では、TALEは、対象の標的ゲノム領域を切断するヌクレアーゼ(TALEN)であって、1または複数の操作されたTALE DNA結合性ドメインおよびヌクレアーゼ切断ドメインまたはヌクレアーゼ切断ハーフドメインを含むTALENである。切断ドメインおよび切断ハーフドメインは、例えば、多様な制限エンドヌクレアーゼおよび/またはホーミングエンドヌクレアーゼから得ることができる。一実施形態では、切断ハーフドメインは、IIS型制限エンドヌクレアーゼ(例えば、Fok I)に由来する。ある種の実施形態では、TALE DNA結合性ドメインは、グロビン遺伝子内またはセーフハーバー遺伝子内の標的部位を認識する。
別の態様では、本明細書では、ゲノム内の対象の領域内の標的部位(例えば、高度に発現する遺伝子、疾患に関連する遺伝子、またはセーフハーバー遺伝子)に結合するCRISPR/Cas系であって、CRIPSR/Casヌクレアーゼおよび操作されたcrRNA/tracrRNA(または単鎖ガイドRNA)を含むCRISPR/Cas系が記載される。ある種の実施形態では、CRISPR/Cas系は、高度に発現する遺伝子内、疾患に関連する遺伝子内、またはセーフハーバー遺伝子内の標的部位を認識する。ある種の実施形態では、CRISPR/Cas系は、グロビン遺伝子内、アルブミン遺伝子内、CCR5遺伝子内、CXCR4遺伝子内、AAVS1遺伝子内、Rosa遺伝子内、またはHPRT遺伝子内の標的を認識する。
本明細書で記載されるZFN、TALEN、および/またはCRISPR/Cas系は、例えば、リーダー配列、トレーラー配列、またはイントロンなど、遺伝子内のコード領域内もしくは非コード領域内または遺伝子に隣接するコード領域内もしくは非コード領域内の対象の領域に結合し、かつ/または対象の領域を切断する場合もあり、コード領域の上流または下流の非転写領域内の対象の領域に結合し、かつ/または対象の領域を切断する場合もある。ある種の実施形態では、ZFN、TALEN、および/またはCRISPR/Cas系は、グロビン遺伝子に結合し、かつ/またはグロビン遺伝子を切断する。他の実施形態では、ZFN、TALEN、および/またはCRISPR/Cas系は、セーフハーバー遺伝子、例えば、CCR5遺伝子、CXCR4遺伝子、PPP1R12C(AAVS1としてもまた公知の)遺伝子、アルブミン遺伝子、またはRosa遺伝子に結合し、かつ/またはこれを切断する。例えば、米国特許出願公開第20080299580号、同第20080159996号、同第201000218264号、同第20110301073号、同第20130177983号、および同第20130177960号;ならびに米国仮出願第61/823,689号を参照されたい。加えて、選択の一助とするため、HPRT遺伝子座を使用することもできる(米国特許出願公開第20130122591号を参照されたい)。別の態様では、本明細書では、本明細書で記載される亜鉛フィンガーおよび/またはTALEヌクレアーゼまたはCRISPR/Cas系のうちの1または複数を含む組成物が記載される。
別の態様では、本明細書では、本明細書で記載される1または複数のZFNおよび/またはTALENまたはCRISPR/Cas系をコードするポリヌクレオチドが記載される。ポリヌクレオチドは、例えば、mRNAでありうる。いくつかの態様では、mRNAは、化学修飾することができる(例えば、Kormannら(2011年)、Nature Biotechnology、29巻(2号):154〜157頁を参照されたい)。
別の態様では、本明細書では、本明細書で記載される1または複数のZFN、TALEN、および/またはCRISPR/Cas系をコードするポリヌクレオチドであって、プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチドを含む、ZFNおよび/またはTALENまたはCRISPR/Cas系の発現ベクターが記載される。一実施形態では、発現ベクターは、ウイルスベクターである。別の実施形態では、発現ベクターは、ZFNタンパク質、TALENタンパク質、またはCRISPR/Cas系タンパク質をコードするmRNAをin vitroにおいて産生させるために使用する。
別の態様では、本明細書では、赤血球(RBC)またはRBC前駆細胞(幹細胞)などの遺伝子改変宿主細胞、例えば、1または複数の導入遺伝子を含む宿主細胞が記載される。ある種の実施形態では、導入遺伝子は、遺伝子状態、例えば、リソソーム蓄積症(表2を参照されたい)を伴う被験体において欠如するかまたは十分に機能しないタンパク質をコードする。他の実施形態では、導入遺伝子は、例えば、カルボキシルエステラーゼ(CaE)、抗体、ブチリルコリンエステラーゼ(BCHE)、ウシ胎仔血清AChE(FBS−AChE)、ウマ血清ブチリルコリンエステラーゼ(EqBChE)などのコリンエステラーゼ(ChE)、アリールエステラーゼ(例えば、血清パラオキソナーゼ/アリールエステラーゼ1(PON1))、および/またはPseudonomas diminutaに由来するホスホトリエステラーゼをコードすることにより、毒素(例えば、神経作用物質)を分解し、毒素を解毒し、かつ/または毒素の作用を遮断する1または複数のポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、miRNA、shRNAなど、機能的ポリヌクレオチドをコードする。ある種の実施形態では、ヌクレアーゼ、例えば、ZFN、TALEN(および/またはZFNおよび/またはTALENをコードするポリヌクレオチド)またはCRISPR/Cas系を使用して、導入遺伝子を、RBC前駆体のゲノムに組み込む。宿主細胞は、1または複数のZFNもしくはTALENの発現ベクターまたはCRISPR/Cas系で安定的に形質転換することもでき、1または複数のZFNもしくはTALENの発現ベクターまたはCRISPR/Cas系を一過性にトランスフェクトすることもでき、これらの組合せを施すこともできる。別の実施形態では、宿主細胞を、本発明のヌクレアーゼをコードするmRNAで処置する。次いで、ある種の実施形態では、ex vivoにおいて、ヌクレアーゼで改変されたRBC前駆体を増殖させ、成熟RBCに分化するように誘導する。次いで、例えば、状態(例えば、神経作用物質などの毒素への曝露)を処置および/または予防するために、結果として得られるRBCを、被験体に投与することができる。他の態様では、骨髄移植においてRBC前駆体(幹細胞)を施し、RBCをin vivoにおいて分化および成熟させる。ヌクレアーゼは、セーフハーバー遺伝子座に対する特異性により操作することもでき、赤血球内で高度に発現する遺伝子への特異性を有する場合もある。非限定的な例だけを目的として述べると、セーフハーバー遺伝子座は、AAVS1部位、CCR5遺伝子、またはHPRT遺伝子でありうる。非限定的な例だけを目的として述べると、赤血球内で高度に発現する遺伝子は、ベータグロビンである。
別の態様では、本明細書では、細胞内のベータグロビン遺伝子またはセーフハーバー遺伝子を切断するための方法であって、細胞に、ZFN、TALENまたはCRISPR/Cas系を発現させ、1または複数のグロビン遺伝子またはセーフハーバー遺伝子を切断するような条件下で、1または複数のグロビン遺伝子内の標的部位に結合する1または複数のZFNおよび/またはTALENまたはCRISPR/Cas系をコードする1または複数のポリヌクレオチドを導入するステップを含む方法が記載される。ある種の実施形態では、亜鉛フィンガードメインは、5つの亜鉛フィンガードメインを含み、グロビン遺伝子内の標的部位(例えば、表3に示される認識へリックス領域を伴う5本のフィンガーを有する亜鉛フィンガータンパク質)を認識する。いくつかの実施形態では、本発明のヌクレアーゼを含むポリヌクレオチドは、発現ベクターを含み、他の実施形態では、ポリヌクレオチドは、mRNAを含む。他の態様では、任意の標的遺伝子内のゲノム配列を、例えば、本明細書で記載されるZFNまたはTALEN(および/または前記ZFNまたはTALENをコードするベクター)またはCRISPR/Cas系、ならびにZFN、TALEN、および/またはCRISPR/Cas系によるターゲティングされた切断の後で遺伝子に挿入される「ドナー」配列を使用して置きかえる。ドナー配列は、ZFNベクター内またはTALENベクター内に存在させることもでき、別個のベクター(例えば、AdベクターまたはLVベクター)内に存在させることもでき、代替的に、異なる核酸送達機構を使用して細胞に導入することもできる。ドナーヌクレオチド配列の標的遺伝子座(例えば、グロビン遺伝子、他のセーフハーバー遺伝子など)へのこのような挿入は、標的遺伝子座の(例えば、グロビンの)遺伝子制御エレメントの制御下における導入遺伝子の発現を結果としてもたらす。いくつかの態様では、対象の導入遺伝子の、例えば、グロビン遺伝子への挿入は、無傷の外因性タンパク質配列の発現を結果としてもたらし、グロビンでコードされたいかなるアミノ酸も欠く。他の態様では、発現させた外因性タンパク質は、融合タンパク質であり、導入遺伝子およびさらなる(例えば、グロビン)遺伝子配列(例えば、内因性標的遺伝子座に由来する遺伝子配列、または、代替的に、導入遺伝子上のグロビンコード配列に由来する遺伝子配列)によりコードされるアミノ酸を含む。いくつかの場合には、グロビン遺伝子は、ベータグロビンである。他の場合には、グロビン遺伝子は、ガンマグロビン遺伝子である。ある場合には、グロビン配列が、外因性タンパク質のアミノ(N)末端部分に存在するのに対し、他の場合には、グロビン配列は、外因性タンパク質のカルボキシ(C)末端部分に存在するであろう。他の場合には、グロビン配列は、外因性タンパク質のN末端部分およびC末端部分のいずれにも存在するであろう。グロビン配列は、全長野生型グロビン配列または突然変異体グロビン配列を含む場合もあり、代替的に、部分的なグロビンアミノ酸配列を含む場合もある。いくつかの実施形態では、グロビン−導入遺伝子融合体を、細胞内の内因性遺伝子座に配置するのに対し、他の実施形態では、グロビン−導入遺伝子コード配列を、ゲノム内のセーフハーバーに挿入する。いくつかの態様では、セーフハーバーは、AAVS1遺伝子座、Rosa遺伝子座、HPRT遺伝子座、アルブミン遺伝子座、またはCCR5遺伝子座から選択される(共有の米国特許出願公開第20080299580号、同第20080159996号、同第201000218264号、同第20130122591号、同第20130177960号、および同第20130177960号を参照されたい)。
いくつかの実施形態では、治療用タンパク質産物を成熟赤血球内に保持するように、導入遺伝子を発現させる。他の実施形態では、発現させたときに、導入遺伝子融合体が、治療用タンパク質の表面への局在化を結果としてもたらすように、導入遺伝子を、膜タンパク質の細胞外ドメインに融合させる。いくつかの態様では、細胞外ドメインは、表1に列挙されたタンパク質から選択される。さらに他の実施形態では、治療用タンパク質産物が、いくつかの地点において改変細胞から放出される、例えば、改変RBC前駆細胞から発生する成熟赤血球から放出されるように、導入遺伝子を発現させる。
本発明はまた、例えば、遺伝子状態を伴う被験体および/または毒素(例えば、神経作用物質)に曝露される可能性が高い被験体を処置および/または予防するための単一の産物、ならびに毒素(例えば、神経作用物質)への曝露の犠牲者を処置するための単一の産物の開発を可能とする同種産物として、全ての被験体(例えば、ヒト患者)に広く使用されうる治療用タンパク質のRBC担体を作製するための方法および組成物も提供する。
別の態様では、本発明は、その産物がRBC前駆体内の遺伝子の発現を阻害しうる調節的遺伝子をノックアウトするか、またはこのようなタンパク質のDNA上の標的部位を破壊するための方法および組成物を提供する。いくつかの態様では、ノックアウトのために選択される遺伝子またはそれらの標的配列は、胎児性ヘモグロビンの発現の阻害に関与する遺伝子またはそれらの標的配列である。このような前駆体から分化したRBCであれば、胎児性ヘモグロビンを含有し、低酸素状況下の被験体において使用しうるであろう。
別の実施形態では、導入遺伝子は、非コードRNA、例えば、shRNAをコードする。RBCが成熟する前に導入遺伝子が発現すれば、対象の非コードRNAを含有するRBCが結果としてもたらされるであろう。
別の実施形態では、本発明は、これらの前駆体に由来する成熟RBCが、導入遺伝子によりコードされる高レベルの産物を含有するように、導入遺伝子が挿入されたRBC前駆細胞(すなわち、造血幹細胞:CD34+細胞)に関する。いくつかの実施形態では、前駆体は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。非限定的な例だけを目的として述べると、iPSCに由来する赤血球内で高度に発現する遺伝子は、ベータグロビンおよびガンマグロビンである。
いくつかの実施形態では、本発明の方法をin vivoにおいて使用して、例えば、トランスジェニック動物系を作り出すことができる。いくつかの態様では、トランスジェニック動物を、導入遺伝子によりヒト遺伝子がコードされるモデル開発において使用することができる。いくつかの場合には、トランスジェニック動物は、挿入された導入遺伝子をコードする内因性遺伝子座においてノックアウトされることから、ヒトタンパク質を単離して研究しうるin vivo系の開発を可能としうる。このようなトランスジェニックモデルは、対象のヒトタンパク質と相互作用する場合もあり、これを修飾する場合もある、低分子もしくは生体高分子または他の実体を同定するためのスクリーニング目的で使用することができる。いくつかの態様では、導入遺伝子を、幹細胞(例えば、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、肝幹細胞など)または本明細書で記載される方法のうちのいずれかにより得られる動物の胚の選択された遺伝子座(例えば、グロビンまたはセーフハーバー)に組み込み、次いで、生きた動物が出生するように胚を移植する。次いで、子孫のうちの少なくとも一部が、組込み型導入遺伝子を含むように、動物を性成熟期まで育成し、子孫をもうけさせる。
なおさらなる態様では、本明細書では、核酸配列を、染色体、例えば、胚の染色体の内因性遺伝子座(例えば、グロビン遺伝子)に部位特異的に組み込むための方法が提示される。ある種の実施形態では、方法は、(a)胚に、(i)組み込まれる核酸配列を挟む上流配列および下流配列を含む少なくとも1つのDNAベクター、および(ii)標的遺伝子座(例えば、グロビン遺伝子座)内の組込み部位を認識する亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ、またはCRISPR/Cas系ヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのRNA分子を注射するステップと、(b)胚を培養して、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、および/またはTALEヌクレアーゼ、またはCRISPR/Cas系ヌクレアーゼの発現を可能とするステップであって、亜鉛フィンガー、TALE、またはCRISPR/Cas系により組込み部位に導入された二本鎖の切断が、DNAベクターによる相同組換えを介して、核酸配列を染色体に組み込むように修復されるステップとを含む。
本明細書で記載される方法のうちのいずれかでは、亜鉛フィンガーヌクレアーゼおよび/またはTALENまたはCRISPR/Cas系をコードするポリヌクレオチドは、DNA、RNA、またはこれらの組合せを含みうる。ある種の実施形態では、ポリヌクレオチドは、プラスミドを含む。他の実施形態では、ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは、mRNAを含む。
また、本発明のZFPおよび/またはTALENまたはCRISPR/Cas系を含むキットも提供される。キットは、ZFP、TALEN、またはCRISPR/Cas系をコードする核酸(例えば、RNA分子、または、必要な場合、適切な発現ベクター内に含有されるZFP、TALEN、もしくはCasをコードする遺伝子および適切なCRISPRのガイドRNA)、ドナー分子、適切な宿主細胞または宿主細胞系、本発明の方法を実施するための指示書などを含みうる。
これらの態様および他の態様は、開示全体に照らせば、当業者にたやすく明らかであろう。
本明細書では、治療用生物学的薬剤を生物における所望の部位に送達するための方法および組成物が開示される。本発明は、高レベルの治療剤をもたらすような赤血球の改変に関する。これらの改変RBCの集団を患者に導入すれば、その必要とされるタンパク質が供給されるであろう。導入遺伝子は、それを必要とする患者において治療的に有益な、所望のタンパク質または非コードRNAをコードしうる。さらに、改変RBCは、O型前駆細胞に由来する場合もあり、A血液型抗原、B血液型抗原、Rh血液型抗原、および/またはKell血液型抗原を欠くことからほぼユニバーサルなドナー細胞となるように遺伝子操作された前駆細胞に由来する場合もある。このようなユニバーサルドナー細胞は、いかなる時点においてもすぐに使用できるように作製しうる集団をもたらすように増殖させることができる。本発明は、導入遺伝子から産生される治療用生物学的薬剤を必要とするヒト、例えば、毒素に曝露される可能性があるか、毒素に曝露されるか、または毒素に曝露されているヒトを処置するのに有用である。
したがって、本発明の方法および組成物を使用して、赤血球内の遺伝子座から高度に発現する治療的に有益なタンパク質を、導入遺伝子から発現させることができる。例えば、導入遺伝子は、遺伝子状態(例えば、リソソーム蓄積症)を伴う被験体において欠如するかもしくは十分に機能的ではないタンパク質、および/または毒素への曝露後において、体内の毒性作用物質もしくは有害作用物質に結合し、かつ/もしくはこれらを不活化することが可能なタンパク質をコードしうる。
加えて、導入遺伝子は、それを必要とする被験体における終局的移植で使用するための、患者に由来する細胞、例えば、患者に由来する人工多能性幹細胞(iPSC)または他の種類の幹細胞(胚性幹細胞または造血幹細胞)に導入することができる。
一般
別段に指し示されない限りにおいて、本明細書で開示される方法の実施のほか、本明細書で開示される組成物の調製および使用では、当技術分野の技術範囲内にある、分子生物学、生化学、クロマチンの構造および解析、計算化学、細胞培養、組換えDNA、および関連分野における従来の技法を援用する。これらの技法は、文献中で十分に説明されている。例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL、2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年;および3版、2001年;Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、New York、1987年;および定期的改訂版;METHODS IN ENZYMOLOGYシリーズ、Academic Press、San Diego; Wolffe、CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION、3版、Academic Press、San Diego、1998年;METHODS IN ENZYMOLOGY、304巻、「Chromatin」(P.M. WassarmanおよびA. P. Wolffe編)、Academic Press、San Diego、1999年;ならびにMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY、119巻、「Chromatin Protocols」(P.B. Becker編)Humana Press、Totowa、1999年を参照されたい。
定義
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、直鎖状コンフォメーションまたは環状コンフォメーションにあり、一本鎖形態または二本鎖形態にあるデオキシリボヌクレオチドポリマーまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示の目的では、これらの用語は、ポリマーの長さに関して限定的なものとしてはみなさないものとする。用語は、天然ヌクレオチドの公知の類似体のほか、塩基部分、糖部分、および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)において修飾されたヌクレオチドも包摂しうる。一般に、特定のヌクレオチドの類似体は、同じ塩基対合特異性を有し、すなわち、Aの類似体は、Tと塩基対であろう。
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すのに互換的に使用される。これらの用語はまた、1または複数のアミノ酸が、対応する自然発生アミノ酸の化学類似体または修飾誘導体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
「結合」とは、高分子の間の(例えば、タンパク質と核酸との間の)、配列特異的な非共有結合的相互作用を指す。相互作用全体が配列特異的である限りにおいて、結合性相互作用の全ての成分が配列特異的である(例えば、DNA骨格内のリン酸残基と接触する)必要はない。このような相互作用は一般に、10−6−1以下の解離定数(K)を特徴とする。「アフィニティー」とは、結合の強度を指すことから、結合アフィニティーの増大は、Kの低下と相関する。
「結合性タンパク質」とは、別の分子に非共有結合的に結合することが可能なタンパク質である。結合性タンパク質は、例えば、DNA分子に結合する場合(DNA結合性タンパク質)もあり、RNA分子に結合する場合(RNA結合性タンパク質)もあり、かつ/またはタンパク質分子に結合する場合(タンパク質結合性タンパク質)もある。タンパク質結合性タンパク質の場合、タンパク質結合性タンパク質は、タンパク質自体に結合する場合(ホモ二量体、ホモ三量体などを形成する)もあり、かつ/または1もしくは複数の異なるタンパク質のうちの1もしくは複数の分子に結合する場合もある。結合性タンパク質は、複数種類の結合活性を有しうる。例えば、亜鉛フィンガータンパク質は、DNA結合活性、RNA結合活性、およびタンパク質結合活性を有する。
「亜鉛フィンガーDNA結合性タンパク質」(または結合性ドメイン)とは、その構造が亜鉛イオンの配位を介して安定化する結合性ドメイン内のアミノ酸配列の領域である1または複数の亜鉛フィンガーを介して、配列特異的な様式でDNAに結合する大型タンパク質内のタンパク質またはドメインである。亜鉛フィンガーDNA結合性タンパク質という用語は、亜鉛フィンガータンパク質またはZFPと略記されることが多い。
「TALE DNA結合性ドメイン」または「TALE」とは、1単位当たり1または複数のTALEリピートドメインを含むポリペプチドである。リピートドメインは、TALEのそのコグネイトの標的DNA配列への結合に関与する。単一の「リピート単位」(また、「リピート」とも称する)は典型的に、33〜35アミノ酸の長さであり、自然発生のTALEタンパク質内の他のTALEリピート配列との少なくともある程度の配列相同性を呈示する。例えば、米国特許出願公開第20110301073号を参照されたい。
亜鉛フィンガー結合性ドメインおよびTALE結合性ドメインは、例えば、自然発生の亜鉛フィンガータンパク質またはTALEタンパク質の認識へリックス領域を操作すること(1または複数のアミノ酸を変化させる)を介して、所定のヌクレオチド配列に結合するように「操作」することができる。したがって、操作されたDNA結合性タンパク質(亜鉛フィンガーまたはTALE)とは、非自然発生のタンパク質である。DNA結合性タンパク質を操作するための方法の非限定的な例は、デザインおよび選択である。デザインされたDNA結合性タンパク質は、自然発生しないタンパク質であって、そのデザイン/組成が、主に合理的基準から生じるタンパク質である。デザインのための合理的基準は、既存のZFPおよび/またはTALEのデザインおよび結合データについての情報を保存するデータベース内の情報を処理するための置換規則およびコンピュータ化されたアルゴリズムの適用を含む。例えば、米国特許第6,140,081号、同第6,453,242号、および同第6,534,261号を参照されたい。また、WO98/53058、WO98/53059、WO98/53060、WO02/016536、およびWO03/016496、ならびに米国公開第20110301073号も参照されたい。
「選択された」亜鉛フィンガータンパク質またはTALEとは、天然では見出されないタンパク質であって、その産生が主に、ファージディスプレイ、相互作用トラップ、またはハイブリッド選択などの実験的工程から生じるタンパク質である。例えば、US5,789,538、US5,925,523、US6,007,988、US6,013,453、US6,200,759、WO95/19431、WO96/06166、WO98/53057、WO98/54311、WO00/27878、WO01/60970、WO01/88197、WO02/099084、および米国公開第20110301073号を参照されたい。
「組換え」とは、2つのポリヌクレオチドの間の遺伝子情報の交換の過程を指す。本開示の目的では、「相同組換え(HR:homologous recombination)」とは、このような交換の特化形態であって、例えば、相同性指向修復機構を介する、細胞内の二本鎖切断の修復において生じる形態を指す。この過程は、ヌクレオチド配列の相同性を要請し、「ドナー」分子を使用して、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経た標的分子)の修復の鋳型とし、ドナーから標的への遺伝子情報の移動をもたらすため、「非交差型遺伝子変換」または「ショートトラクト遺伝子変換」として様々に公知である。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まずに述べると、このような移動は、切断された標的とドナーとの間で形成されるヘテロ二重鎖DNAに対するミスマッチの補正、および/またはドナーを使用して標的の一部となる遺伝子情報を再合成する「合成依存型鎖アニーリング」、および/または関連過程を伴いうる。このような特化されたHRは、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全部が、標的ポリヌクレオチドに組み込まれるように、標的分子の配列の変化を結果としてもたらすことが多い。
本開示の方法では、本明細書で記載される、1または複数のターゲティングされたヌクレアーゼは、標的配列(例えば、細胞クロマチン)内の所定の部位において二本鎖切断を創出し、切断の領域内のヌクレオチド配列に対する相同性を有する「ドナー」ポリヌクレオチドを細胞に導入することができる。二本鎖切断の存在は、ドナー配列の組込みを容易とすることが示されている。ドナー配列を、物理的に組み込む場合もあり、代替的に、ドナーポリヌクレオチドを、相同組換えを介する切断を修復するための鋳型として使用する結果として、ヌクレオチド配列の全部または一部を、ドナー内の配列として細胞クロマチンに導入する場合もある。したがって、細胞クロマチン内の第1の配列を変化させることができ、ある種の実施形態では、ドナーポリヌクレオチド内に存在する配列に変換することができる。したがって、「〜を置きかえる」または「置きかえ」という用語の使用は、1つのヌクレオチド配列の別のヌクレオチド配列による置きかえ(すなわち、配列の情報的な意味における置きかえ)を表すと理解することができ、必ずしも1つのポリヌクレオチドの、別のポリヌクレオチドによる物理的または化学的な置きかえを要請するわけではない。
本明細書で記載される方法のうちのいずれかでは、亜鉛フィンガータンパク質またはTALENタンパク質のさらなる対を、細胞内のさらなる標的部位のさらなる二本鎖切断のために使用することができる。
細胞クロマチン内の対象の領域内の配列のターゲティングされた組換えおよび/または置きかえおよび/または改変のための方法についてのある種の実施形態では、染色体の配列を、外因性「ドナー」ヌクレオチド配列を伴う相同組換えにより変化させる。切断の領域と相同な配列が存在する場合は、このような相同組換えが、細胞クロマチン内の二本鎖切断の存在により刺激される。
本明細書で記載される方法のうちのいずれかでは、第1のヌクレオチド配列(「ドナー配列」)は、対象の領域内のゲノム配列と相同ではあるが同一ではない配列を含有する場合があり、これにより、対象の領域内に非同一配列を挿入する相同組換えが刺激される。したがって、ある種の実施形態では、対象の領域内の配列と相同なドナー配列の部分は、置きかえられるゲノム配列に対して、約80〜99%の間(またはそれらの間の任意の整数)の配列同一性を呈示する。他の実施形態では、例えば、ドナー配列とゲノム配列との間で、100連続塩基対にわたり、1つのヌクレオチドだけが異なる場合、ドナー配列とゲノム配列との間の相同性は99%を超える。ある種の場合には、新たな配列が対象の領域に導入されるように、ドナー配列の非相同部分は、対象の領域内に存在しない配列を含有しうる。これらの場合には、非相同配列は一般に、50〜1,000塩基対(またはそれらの間の任意の整数値)または1,000を超える任意の数の塩基対の配列であって、対象の領域内の配列と相同であるかまたは同一な配列により挟まれる。他の実施形態では、ドナー配列は、第1の配列と非相同であり、非相同組換え機構によりゲノムに挿入される。
本明細書で記載される方法のうちのいずれかを、対象の遺伝子の発現を破壊する、ターゲティングされたドナー配列の組込みによる、細胞内の1または複数の標的配列の部分的または完全な不活化のために使用することができる。また、部分的または完全に不活化された遺伝子を伴う細胞系も提供される。
さらに、本明細書で記載される、ターゲティングされた組込みの方法はまた、1または複数の外因性配列を組み込むのにも使用することができる。外因性核酸配列は、例えば、1もしくは複数の遺伝子もしくはcDNA分子、または任意の種類のコード配列もしくは非コード配列のほか、1または複数の制御エレメント(例えば、プロモーター)も含みうる。加えて、外因性核酸配列は、1または複数のRNA分子(例えば、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、阻害性RNA(RNAi)、マイクロRNA(miRNA)など)ももたらしうる。
「切断」とは、DNA分子の共有結合的骨格の切断を指す。切断は、ホスホジエステル結合の酵素的加水分解または化学的加水分解を含むがこれらに限定されない様々な方法により誘発することができる。一本鎖切断および二本鎖切断のいずれもが可能であり、二本鎖切断は、2つの個別の一本鎖切断イベントの結果として生じうる。DNAの切断は、平滑末端または粘着末端の生成を結果としてもたらしうる。ある種の実施形態では、融合ポリペプチドを、ターゲティングされた二本鎖DNAの切断に使用する。
「切断ハーフドメイン」とは、第2のポリペプチド(同一のポリペプチドまたは異なるポリペプチド)と共に、切断活性(好ましくは二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。「第1の切断ハーフドメインおよび第2の切断ハーフドメイン」、「+切断ハーフドメインおよび−切断ハーフドメイン」、ならびに「右側切断ハーフドメインおよび左側切断ハーフドメイン」という用語は、二量体化する切断ハーフドメインの対を指すのに互換的に使用される。
「操作された切断ハーフドメイン」とは、別の切断ハーフドメイン(例えば、別の操作された切断ハーフドメイン)と共に偏性ヘテロ二量体を形成するように修飾された切断ハーフドメインである。また、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2005/0064474号、同第2007/0218528号、同第2008/0131962号、および同第2011/0201055号も参照されたい。
「配列」という用語は、DNAの場合もあり、RNAの場合もあり;直鎖状の場合もあり、環状の場合もあり、分枝状の場合もあり;一本鎖の場合もあり、二本鎖の場合もある、任意の長さのヌクレオチド配列を指す。「ドナー配列」という用語は、ゲノムに挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さ、例えば、2〜10,000ヌクレオチドの間の長さ(またはその間もしくはそれらを上回る任意の整数値)、好ましくは約100〜1,000ヌクレオチドの間の長さ(またはそれらの間の任意の整数)、より好ましくは約200〜500ヌクレオチドの間の長さでありうる。
「クロマチン」とは、細胞ゲノムを含むヌクレオタンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびにヒストンおよびヒストン以外の染色体タンパク質を含むタンパク質を含む。真核細胞クロマチンの大半は、ヌクレオソームコアが、ヒストンH2A、H2B、H3、およびH4のうちの2つずつを含むオクタマーと関連する約150塩基対のDNAを含み、リンカーDNA(生物に応じた可変的な長さの)が、ヌクレオソームコアの間に張り渡される、ヌクレオソームの形態で存在する。ヒストンH1の分子は一般に、リンカーDNAと会合する。本開示の目的では、「クロマチン」という用語は、原核細胞および真核細胞の両方の、全ての種類の細胞ヌクレオタンパク質を包摂することを意味する。細胞クロマチンは、染色体クロマチンおよびエピソームクロマチンの両方を含む。
「染色体」とは、細胞のゲノムの全部または一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、細胞のゲノムを含む全ての染色体の集合体である、その核型により特徴づけられることが多い。細胞のゲノムは、1または複数の染色体を含みうる。
「エピソーム」とは、複製型核酸、ヌクレオタンパク質複合体、または細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む他の構造である。エピソームの例は、プラスミドおよびある種のウイルスゲノムを含む。
「標的部位」または「標的配列」とは、結合に十分な条件が存在する場合に、結合性分子が結合する核酸の部分を規定する核酸配列である。
「外因性」分子とは、正常では細胞内に存在しないが、1または複数の遺伝子法、生化学法、または他の方法により細胞に導入されうる分子である。「正常な細胞内の存在」は、細胞の特定の発生段階および環境的状態に関して決定される。したがって、例えば、筋肉の胚発生時だけに存在する分子は、成体の筋肉細胞に対して外因性分子である。同様に、熱ショックにより誘導される分子は、熱ショックを受けていない細胞に対して外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不全性内因性分子の機能性変化形または正常機能性内因性分子の機能不全性変化形を含みうる。
外因性分子は、とりわけ、コンビナトリアル化学工程により作り出される低分子などの低分子の場合もあり、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記の分子の任意の修飾誘導体、または上記の分子のうちの1もしくは複数を含む任意の複合体などの高分子の場合もある。核酸は、DNAおよびRNAを含み;一本鎖の場合もあり、二本鎖の場合もあり;直鎖状の場合もあり、分枝状の場合もあり、環状の場合もあり;任意の長さでありうる。核酸は、二重鎖を形成することが可能な核酸のほか、三重鎖形成核酸も含む。例えば、米国特許第5,176,996号、および同第5,422,251号を参照されたい。タンパク質は、DNA結合性タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合性タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、レコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ギラーゼ、およびヘリカーゼを含むがこれらに限定されない。
外因性分子は、内因性分子と同じ種類の分子、例えば、外因性タンパク質または外因性核酸でありうる。例えば、外因性核酸は、細胞に導入される感染ウイルスゲノム、プラスミド、もしくはエピソーム、または正常では細胞内に存在しない染色体を含みうる。外因性分子を細胞に導入するための方法は、当業者に公知であり、脂質媒介型導入(すなわち、中性脂質およびカチオン性脂質を含むリポソーム)、電気穿孔、直接的注射、細胞融合、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈殿、DEAE−デキストラン媒介型導入、およびウイルスベクター媒介型導入を含むがこれらに限定されない。外因性分子はまた、内因性分子と同じ種類の分子でありうるが、細胞が由来する種とは異なる種に由来する場合もある。例えば、ヒト核酸配列を、元来はマウスまたはハムスターに由来する細胞系に導入することができる。
これに対し、「内因性」分子とは、正常では、特定の環境的状態下で、特定の発生段階において、特定の細胞内に存在する分子である。例えば、内因性核酸は、染色体、ミトコンドリアのゲノム、葉緑体もしくは他の細胞小器官、または自然発生のエピソーム核酸を含みうる。さらなる内因性分子は、タンパク質、例えば、転写因子および酵素を含みうる。
「融合」分子とは、2つ以上のサブユニット分子が、好ましくは共有結合的に連結された分子である。サブユニット分子は、同じ化学的種類の分子の場合もあり、異なる化学的種類の分子の場合もある。第1の種類の融合分子の例は、融合タンパク質(例えば、ZFP DNA結合性ドメインまたはTALE DNA結合性ドメインと1または複数の活性化ドメインとの間の融合体)および融合核酸(例えば、上述で記載した融合タンパク質をコードする核酸)を含むがこれらに限定されない。第2の種類の融合分子の例は、三重鎖形成核酸とポリペプチドとの間の融合体、および副溝結合剤と核酸との間の融合体を含むがこれらに限定されない。
細胞内の融合タンパク質の発現は、融合タンパク質の細胞への送達から生じる場合もあり、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの細胞への送達であって、ポリヌクレオチドが転写され、転写物が翻訳されて、融合タンパク質を作り出す送達により生じる場合もある。また、トランススプライシング、ポリペプチドの切断、およびポリペプチドのライゲーションも、細胞内のタンパク質の発現に関与しうる。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを細胞に送達するための方法は、本開示の別の箇所で提示される。
本開示の目的では、「遺伝子」は、遺伝子産物をコードするDNA領域(下記を参照されたい)のほか、そのような調節的配列が、コード配列および/または転写配列に隣接する場合であれ、そうでない場合であれ、遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域も含む。したがって、遺伝子は、プロモーター配列、ターミネーター、リボソーム結合性部位および内部リボソーム導入部位などの翻訳調節配列、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス接合部位、および遺伝子座制御領域を含むが必ずしもこれらに限定されるわけではない。
「遺伝子発現」とは、遺伝子内に含有される情報の遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接的転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造的RNA、または他の任意の種類のRNA)の場合もあり、mRNAの翻訳により産生されるタンパク質の場合もある。遺伝子産物はまた、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、およびエディティングなどの過程により修飾されたRNA、ならびに、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボース化、ミリスチル化、およびグリコシル化により修飾されたタンパク質も含む。
遺伝子発現の「モジュレーション」とは、遺伝子の活性の変化を指す。発現のモジュレーションは、遺伝子の活性化および遺伝子の抑制を含みうるがこれらに限定されない。ゲノムエディティング(例えば、切断、改変、不活化、ランダム突然変異)を使用して、発現をモジュレートすることができる。遺伝子不活化とは、遺伝子発現の、本明細書で記載されるZFPまたはTALENを含まない細胞と比較した任意の低減を指す。したがって、遺伝子の不活化は、部分的な場合もあり、完全な場合もある。
「対象の領域」とは、例えば、遺伝子または遺伝子内の非コード配列もしくは遺伝子に隣接する非コード配列など、細胞クロマチンの任意の領域であって、外因性分子に結合することが望ましい領域である。結合は、DNAのターゲティングされた切断および/またはターゲティングされた組換えを目的としうる。対象の領域は、例えば、染色体内、エピソーム内、細胞小器官ゲノム(例えば、ミトコンドリアゲノム、葉緑体ゲノム)内、または感染ウイルスゲノム内に存在しうる。対象の領域は、遺伝子のコード領域内にある場合もあり、例えば、リーダー配列、トレーラー配列、またはイントロンなど、転写される非コード領域内にある場合もあり、コード領域の上流または下流における非転写領域内にある場合もある。対象の領域は、単一ヌクレオチド対という小領域の場合もあり、最大で2,000ヌクレオチド対の長さ、または任意の整数値のヌクレオチド対の場合もある。
「真核」細胞は、真菌細胞(酵母など)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞、およびヒト細胞(例えば、T細胞)を含むがこれらに限定されない。
「赤血球」(RBC)または赤血球(erythrocyte)とは、造血幹細胞に由来する最終分化細胞である。RBCは、ヌクレアーゼおよび大半の細胞性細胞小器官を欠く。RBCは、酸素を肺から末梢組織に運ぶヘモグロビンを含有する。実際、個々のRBCのうちの33%はヘモグロビンである。それらはまた、代謝時に細胞により産生されるCO2も、息を吐く時に放出するために組織から肺に運び戻す。RBCは、血中の低酸素状態に応答して骨髄中で産生されるが、これは、腎臓によるエリスロポエチン(EPO:erythropoietin)の放出により媒介される。EPOは、前赤芽球の数を増大させ、RBCの完全な成熟に要請される時間を短縮する。約120日間後、RBCは、核または他の任意の再生能を含有しないので、肝臓内、脾臓内、およびリンパ節内のマクロファージの食作用活性により(約90%)、または血漿中の溶血により(約10%)、循環から除去される。マクロファージによる貪食の後で、RBCの化学成分は、リソソーム酵素の作用に起因して、マクロファージの液胞内で分解される。
「分泌性組織」とは、動物における組織であって、生成物を、個々の細胞から、典型的には上皮に由来するいくつかの種類の管腔内に分泌する組織である。消化管に局在化した分泌性組織の例は、胃、膵臓、および膀胱の内膜となる細胞を含む。他の分泌性組織は、肝臓、眼と関連する組織、ならびに唾液腺、乳腺、前立腺、脳下垂体、および内分泌系の他のメンバーなどの粘膜を含む。加えて、分泌性組織は、分泌が可能な組織型のうちの個別の細胞を含む。
「作動的連結」および「作動的に連結された」(または「作動可能に連結された」)という用語は、2つ以上の構成要素(配列エレメントなど)の並置であって、構成要素を、構成要素が正常に機能し、かつ、構成要素のうちの少なくとも1つが、他の構成要素のうちの少なくとも1つに対して果たされる機能を媒介しうる可能性を許容するように配置する並置に関して互換的に使用される。例示を目的として述べると、プロモーターなどの転写調節配列は、1または複数の転写調節因子の存在または非存在に応答して、転写調節配列により、コード配列の転写レベルが制御される場合に、コード配列に作動的に連結されている。転写調節配列は一般に、シス側でコード配列と作動的に連結されるが、コード配列にじかに隣接する必要はない。例えば、エンハンサーは、コード配列に作動的に連結された転写調節配列であるが、それらは連接しない。
融合ポリペプチドに関して、「作動的に連結された」という用語は、他の構成要素と連結されると、構成要素の各々が、そのように連結されなかった場合と同じ機能を果たすという事実を指す場合がある。例えば、ZFP DNA結合性ドメインまたはTALE DNA結合性ドメインを、活性化ドメインに融合させた融合ポリペプチドに関して、ZFP DNA結合性ドメインまたはTALE DNA結合性ドメインと、活性化ドメインとは、融合ポリペプチドにおいて、ZFP DNA結合性ドメイン部分またはTALE DNA結合性ドメイン部分が、その標的部位および/またはその結合性部位に結合することが可能である一方で、活性化ドメインは、遺伝子発現を上方調節することが可能な場合に、作動的に連結されている。ZFP DNA結合性ドメインまたはTALE DNA結合性ドメインを、切断ドメインに融合させる融合ポリペプチドでは、ZFP DNA結合性ドメインまたはTALE DNA結合性ドメインと、切断ドメインとは、融合ポリペプチドにおいて、ZFP DNA結合性ドメイン部分またはTALE DNA結合性ドメイン部分が、その標的部位および/またはその結合性部位に結合することが可能である一方で、切断ドメインは、標的部位の近傍においてDNAを切断することが可能な場合に、作動的に連結されている。
タンパク質、ポリペプチド、または核酸の「機能的断片」とは、その配列が全長タンパク質、全長ポリペプチド、または全長核酸と同一でないが、全長タンパク質、全長ポリペプチド、または全長核酸と同じ機能をやはり保持するタンパク質、ポリペプチド、または核酸である。機能的断片は、対応する天然分子より多いか、少ないか、もしくは同じ数の残基を保有する場合もあり、かつ/または1もしくは複数のアミノ酸置換もしくはヌクレオチド置換を含有する場合もある。当技術分野では、核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸とハイブリダイズする能力)を決定するための方法が周知である。同様に、タンパク質の機能を決定するための方法も周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合性機能は、例えば、フィルター結合性アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、または免疫沈降アッセイにより決定することができる。DNAの切断は、ゲル電気泳動によりアッセイすることができる。Ausubelら、前出を参照されたい。別のタンパク質と相互作用するタンパク質の能力は、例えば、共免疫沈降、ツーハイブリッドアッセイ、または遺伝子的および生化学的両方の相補性により決定することができる。例えば、Fieldsら(1989年)、Nature、340巻:245〜246頁;米国特許第5,585,245号;およびPCT WO98/44350を参照されたい。
「ベクター」は、遺伝子配列を標的細胞に導入することが可能である。典型的に、「ベクター構築物」、「発現ベクター」、および「遺伝子導入ベクター」とは、対象の遺伝子の発現を方向付けることが可能であり、遺伝子配列を標的細胞に導入することが可能な任意の核酸構築物を意味する。したがって、この用語は、クローニングおよび発現媒体のほか、組込みベクターも含む。
「レポーター遺伝子」または「レポーター配列」とは、タンパク質産物をもたらす任意の配列であって、好ましくは日常的アッセイで容易に測定されるが、必ずしもそうではない配列を指す。適切なレポーター遺伝子は、抗生剤耐性(例えば、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を媒介するタンパク質をコードする配列、有色タンパク質または蛍光タンパク質または発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、増強緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)、ならびに細胞成長および/または遺伝子増幅の増強を媒介するタンパク質(例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ)をコードする配列を含むがこれらに限定されない。エピトープタグは、例えば、FLAG、His、myc、Tap、HA、または任意の検出可能なアミノ酸配列の1または複数のコピーを含む。「発現タグ」は、対象の遺伝子の発現をモニタリングするために、所望される遺伝子配列に作動可能に連結されうるレポーターをコードする配列を含む。
「被験体」および「患者」という用語は、互換的に使用され、ヒト患者および非ヒト霊長動物のほか、ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、および他の動物などの実験動物および/または愛玩動物などの哺乳動物を指す。したがって、本明細書で使用される「被験体」または「患者」という用語は、本発明の改変RBC(または幹細胞)を投与しうる任意の哺乳動物患者または哺乳動物被験体を意味する。本発明の被験体は、例えば、神経毒素を含む1または複数の化学毒素に曝露されている被験体を含む。
ヌクレアーゼ
本明細書では、組成物、特に、導入遺伝子をRBCに挿入するために遺伝子をターゲティングするのに有用なヌクレアーゼについて記載する。ある種の実施形態では、ヌクレアーゼは、自然発生である。他の実施形態では、ヌクレアーゼは、非自然発生である、すなわち、DNA結合性ドメイン内および/または切断ドメイン内で操作されている。例えば、自然発生のヌクレアーゼのDNA結合性ドメインは、選択された標的部位(例えば、コグネイトの結合性部位と異なる部位に結合するように操作されたメガヌクレアーゼ)に結合するように変化させることができる。他の実施形態では、ヌクレアーゼは、異種のDNA結合性ドメインおよび切断ドメイン(例えば、異種切断ドメインを伴う亜鉛フィンガーヌクレアーゼDNA結合性ドメイン;TALエフェクターヌクレアーゼDNA結合性ドメイン;メガヌクレアーゼDNA結合性ドメイン)または操作された単鎖ガイドRNAを活用するCRISPR/Cas系を含む。
A.DNA結合性ドメイン
ある種の実施形態では、ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)である。自然発生のメガヌクレアーゼは、15〜40塩基対の切断部位を認識し、一般に、4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY−YIGファミリー、His−Cystボックスファミリー、およびHNHファミリーに群分けされる。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼは、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevII、およびI−TevIIIを含む。それらの認識配列は公知である。また、米国特許第5,420,032号、米国特許第6,833,252号;Belfortら(1997年)、Nucleic Acids Res.、25巻:3379〜3388頁;Dujonら(1989年)、Gene、82巻:115〜118頁;Perlerら(1994年)、Nucleic Acids Res.、22巻:1125〜1127頁;Jasin(1996年)、Trends Genet.、12巻:224〜228頁;Gimbleら(1996年)、J. Mol. Biol.、263巻:163〜180頁;Argastら(1998年)、J. Mol. Biol.、280巻:345〜353頁;およびNew England Biolabsカタログも参照されたい。
ある種の実施形態では、ヌクレアーゼは、操作された(非自然発生の)ホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)を含む。I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevII、およびI−TevIIIなど、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼの認識配列は公知である。また、米国特許第5,420,032号、米国特許第6,833,252号;Belfortら(1997年)、Nucleic Acids Res.、25巻:3379〜3388頁;Dujonら(1989年)、Gene、82巻:115〜118頁;Perlerら(1994年)、Nucleic Acids Res.、22巻:1125〜1127頁;Jasin(1996年)、Trends Genet.、12巻:224〜228頁;Gimbleら(1996年)、J. Mol. Biol.、263巻:163〜180頁;Argastら(1998年)、J. Mol. Biol.、280巻:345〜353頁;およびNew England Biolabsカタログも参照されたい。加えて、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然標的部位に結合するように操作することができる。例えば、Chevalierら(2002年)、Molec. Cell、10巻:895〜905頁;Epinatら(2003年)、Nucleic Acids Res.、31巻:2952〜2962頁;Ashworthら(2006年)、Nature、441巻:656〜659頁;Paquesら(2007年)、Current Gene Therapy、7巻:49〜66頁;米国特許出願公開第20070117128号を参照されたい。ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合性ドメインは、ヌクレアーゼ全体の文脈で(すなわち、ヌクレアーゼが、コグネイトの切断ドメインを含むように)変化させることもでき、異種切断ドメインに融合させることもできる。
他の実施形態では、DNA結合性ドメインは、自然発生のTALエフェクターDNA結合性ドメイン、または操作された(非自然発生の)TALエフェクターDNA結合性ドメインを含む。例えば、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20110301073号を参照されたい。Xanthomonas属の植物病原性細菌は、重要な作物において多くの疾患を引き起こすことが公知である。Xanthomonas属の病原性は、25を超える異なるエフェクタータンパク質を植物細胞に注入する保存的III型分泌(T3S)系に依存する。これらの注入されるタンパク質の中には、植物の転写活性化因子を模倣し、植物のトランスクリプトームを操作する転写活性化因子様エフェクター(TALE:transcription activator−like effector)がある(Kayら(2007年)、Science、318巻:648〜651頁を参照されたい)。これらのタンパク質は、DNA結合性ドメインおよび転写活性化ドメインを含有する。最もよく特徴付けられたTALEのうちの1つは、Xanthomonas campestgris pv.Vesicatoriaに由来するAvrBs3である(Bonasら(1989年)、Mol Gen Genet、218巻:127〜136頁およびWO2010079430を参照されたい)。TALEは、各リピートが、これらのタンパク質のDNA結合特異性の鍵となる約34アミノ酸を含有する、タンデムリピートの集中ドメインを含有する。加えて、それらは、核局在化配列および酸性の転写活性化ドメインも含有する(総論としては、Schornack Sら(2006年)、J Plant Physiol、163巻(3号):256〜272頁を参照されたい)。加えて、植物病原性細菌であるRalstonia solanacearumのR.solanacearum biovar 1 strain GMI1000およびbiovar 4 strain RS1000では、brg11およびhpx17と称する2つの遺伝子が、Xanthomonas属のAvrBs3ファミリーと相同であることが見出されている(Heuerら(2007年)、Appl and Envir Micro、73巻(13号):4379〜4384頁を参照されたい)。これらの遺伝子は、ヌクレオチド配列が98.9%互いと同一であり、hpx17のリピートドメインにおける1,575bpの欠失だけ異なる。しかし、いずれの遺伝子産物の、Xanthomonas属のAvrBs3ファミリーのタンパク質との配列同一性も、40%未満である。
したがって、いくつかの実施形態では、標的遺伝子座(例えば、グロビンまたはセーフハーバー)内の標的部位に結合するDNA結合性ドメインは、植物病原体であるXanthomonas属(Bochら(2009年)、Science、326巻:1509〜1512頁;ならびにMoscouおよびBogdanove(2009年)、Science、326巻:1501頁を参照されたい)およびRalstonia属(Heuerら(2007年)、Applied and Environmental Microbiology、73巻(13号):4379〜4384頁;米国特許第8,420,782号、および同第8,440,431号、ならびに米国特許出願公開第20110301073号を参照されたい)に由来するTALエフェクターと類似するTALエフェクターに由来する操作ドメインである。
ある種の実施形態では、DNA結合性ドメインは、亜鉛フィンガータンパク質(例えば、グロビン遺伝子またはセーフハーバー遺伝子内の標的部位に結合する亜鉛フィンガータンパク質)を含む。好ましくは、亜鉛フィンガータンパク質は、選り抜きの標的部位に結合するように操作されるという点で非自然発生である。例えば、全てが参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、Beerliら(2002年)、Nature Biotechnol.、20巻:135〜141頁;Paboら(2001年)、Ann. Rev. Biochem.、70巻:313〜340頁;Isalanら(2001年)、Nature Biotechnol.、19巻:656〜660頁;Segalら(2001年)、Curr. Opin. Biotechnol.、12巻:632〜637頁;Chooら(2000年)、Curr. Opin. Struct. Biol.、10巻:411〜416頁;米国特許第6,453,242号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,503,717号、同第6,689,558号、同第7,030,215号、同第6,794,136号、同第7,067,317号、同第7,262,054号、同第7,070,934号、同第7,361,635号、同第7,253,273号、および米国特許出願公開第2005/0064474号、同第2007/0218528号、同第2005/0267061号を参照されたい。
操作された亜鉛フィンガー結合性ドメインまたはTALEドメインは、自然発生の亜鉛フィンガータンパク質と比較して新規の結合特異性を有しうる。操作法は、合理的デザインおよび多様な種類の選択を含むがこれらに限定されない。合理的デザインは、例えば、三連(または四連)ヌクレオチド配列および個々の亜鉛フィンガーアミノ酸配列を含むデータベースであって、各三連または四連のヌクレオチド配列が、特定の三連または四連の配列に結合する亜鉛フィンガーの1または複数のアミノ酸配列と関連するデータベースの使用を含む。例えば、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、共有の米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照されたい。
ファージディスプレイおよびツーハイブリッド系を含む例示的な選択法は、米国特許第5,789,538号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,410,248号、同第6,140,466号、同第6,200,759号、および同第6,242,568号のほか、WO98/37186、WO98/53057、WO00/27878、WO01/88197、およびGB2,338,237において開示されている。加えて、亜鉛フィンガー結合性ドメインへの結合特異性の増強については、例えば、共有のWO02/077227においても記載されている。
加えて、これらの参考文献および他の参考文献において開示されている通り、DNAドメイン(例えば、マルチフィンガーの亜鉛フィンガータンパク質またはTALEドメイン)は、例えば、5アミノ酸以上の長さのリンカーを含む任意の適切なリンカー配列を使用して、一体に連結することができる。また、6アミノ酸以上の長さの例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号、同第6,903,185号、および同第7,153,949号も参照されたい。本明細書で記載されるDNA結合性タンパク質は、タンパク質の個々の亜鉛フィンガーの間の適切なリンカーの任意の組合せを含みうる。加えて、亜鉛フィンガー結合性ドメインへの結合特異性の増強については、例えば、共有のWO02/077227においても記載されている。
標的部位、DNA結合性ドメイン、ならびに融合タンパク質(および融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド)をデザインおよび構築するための方法の選択は、当業者に公知であり、米国特許第6,140,0815号、同第5,789,538号、同第6,453,242号、同第6,534,261号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,200,759号、WO95/19431、WO96/06166、WO98/53057、WO98/54311、WO00/27878、WO01/60970、WO01/88197、WO02/099084、WO98/53058、WO98/53059、WO98/53060、WO02/016536、およびWO03/016496、ならびに米国特許出願公開第20110301073号において詳細に記載されている。
加えて、これらの参考文献および他の参考文献において開示されている通り、DNA結合性ドメイン(例えば、マルチフィンガーの亜鉛フィンガータンパク質)は、例えば、5アミノ酸以上の長さのリンカーを含む任意の適切なリンカー配列を使用して、一体に連結することができる。また、6アミノ酸以上の長さの例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号、同第6,903,185号、および同第7,153,949号も参照されたい。本明細書で記載されるタンパク質は、タンパク質の個々の亜鉛フィンガーの間の適切なリンカーの任意の組合せを含みうる。
B.切断ドメイン
任意の適切な切断ドメインをDNA結合性ドメインに作動的に連結して、ヌクレアーゼを形成することができる。例えば、ZFP DNA結合性ドメインを、ヌクレアーゼドメインに融合させて、ZFN(その操作(ZFP)DNA結合性ドメインを介して、その意図される核酸標的を認識し、ヌクレアーゼ活性を介して、ZFP結合性部位の近傍でDNAを切断させることが可能な機能的実体)を創出している。例えば、Kimら(1996年)、Proc Nat’l Acad Sci USA、93巻(3号):1156〜1160頁を参照されたい。より近年において、ZFNは、様々な生物におけるゲノム修飾に使用されている。例えば、米国特許出願公開第20030232410号、同第20050208489号、同第20050026157号、同第20050064474号、同第20060188987号、同第20060063231号;および国際公開第WO07/014275号を参照されたい。同様に、TALE DNA結合性ドメインも、ヌクレアーゼドメインに融合させて、TALENを創出している。例えば、米国特許出願公開第20110301073号を参照されたい。
上記で言及した通り、切断ドメインは、DNA結合性ドメインに対して異種でありうる、例えば、亜鉛フィンガーDNA結合性ドメインおよびヌクレアーゼに由来する切断ドメイン、またはTALEN DNA結合性ドメインおよび切断ドメイン、またはメガヌクレアーゼDNA結合性ドメインおよび異なるヌクレアーゼに由来する切断ドメインである。異種切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエクソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインが由来しうる例示的なエンドヌクレアーゼは、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼを含むがこれらに限定されない。例えば、2002年〜2003年版カタログ、New England Biolabs、Beverly、MA;およびBelfortら(1997年)、Nucleic Acids Res.、25巻:3379〜3388頁を参照されたい。DNAを切断するさらなる酵素も公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ、マングビーンヌクレアーゼ、膵臓DNアーゼI、小球菌ヌクレアーゼ、酵母HOエンドヌクレアーゼ;また、Linnら(編)、Nucleases、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1993年も参照されたい)。これらの酵素(またはこれらの機能的断片)のうちの1または複数を、切断ドメインおよび切断ハーフドメインの供給源として使用することができる。
同様に、切断ハーフドメインは、上記で示した通り、切断活性のために二量体化を要請する、任意のヌクレアーゼまたはその部分にも由来しうる。一般に、融合タンパク質が切断ハーフドメインを含む場合は、2つの融合タンパク質が切断に要請される。代替的に、2つの切断ハーフドメインを含む単一のタンパク質も使用することができる。2つの切断ハーフドメインが同じエンドヌクレアーゼ(またはこれらの機能的断片)に由来する場合もあり、各切断ハーフドメインが異なるエンドヌクレアーゼ(またはこれらの機能的断片)に由来する場合もある。加えて、2つの融合タンパク質の標的部位は、2つの融合タンパク質の、それらのそれぞれの標的部位への結合により、切断ハーフドメインが、互いに対する空間的配向性であって、例えば、二量体化することにより機能的切断ドメインを形成することを可能とする配向性に置かれるように、互いに対して配置することが好ましい。したがって、ある種の実施形態では、標的部位の近傍のエッジを、5〜8ヌクレオチドまたは15〜18ヌクレオチドだけ隔てる。しかし、2つの標的部位の間に、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対(例えば、2〜50ヌクレオチド対以上)を介在させることができる。一般に、切断部位は、標的部位の間に存在する。
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種において存在し、DNAに配列特異的に結合し(認識部位において)、結合部位においてまたは結合部位の近傍においてDNAを切断することが可能である。ある種の制限酵素(例えば、IIS型)は、DNAを、認識部位から除去される部位において切断し、隔離可能な結合性ドメインおよび切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素であるFok Iは、一方の鎖上のその認識部位から9ヌクレオチドおよび他方の鎖上のその認識部位から13ヌクレオチドにおいて、DNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号、同第5,436,150号、および同第5,487,994号のほか、Liら(1992年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻:4275〜4279頁;Liら(1993年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:2764〜2768頁;Kimら(1994年a)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、91巻:883〜887頁;Kimら(1994年b)J. Biol. Chem.、269巻:31,978〜31,982頁を参照されたい。したがって、一実施形態では、融合タンパク質は、少なくとも1つのIIS型制限酵素に由来する切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)、および操作される場合もあり、操作されない場合もある、1または複数の亜鉛フィンガー結合性ドメインを含む。
その切断ドメインが結合性ドメインから隔離可能な、例示的なIIS型制限酵素は、Fok Iである。この特定の酵素は、二量体として活性である(Bitinaiteら(1998年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、95巻:10,570〜10,575頁)。したがって、本開示の目的では、開示される融合タンパク質において使用されるFok I酵素の部分は、切断ハーフドメインと考えられる。したがって、亜鉛フィンガー−Fok I融合体を使用する細胞内配列のターゲティングされた二本鎖切断および/またはターゲティングされた置きかえのためには、各々がFokI切断ハーフドメインを含む2つの融合タンパク質を使用して、触媒的に活性の切断ドメインを再構成することができる。代替的にまた、DNA結合性ドメインおよび2つのFok I切断ハーフドメインを含有する単一のポリペプチド分子も、使用することができる。
切断ドメインまたは切断ハーフドメインは、切断活性を保持するか、または多量体化して(例えば、二量体化して)、機能的切断ドメインを形成する能力を保持する、タンパク質の任意の部分でありうる。
例示的なIIS型制限酵素は、その全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20070134796号において記載されている。さらなる制限酵素はまた、隔離可能な結合性ドメインおよび切断ドメインも含有し、本開示では、これらも想定される。例えば、Robertsら(2003年)、Nucleic Acids Res.、31巻:418〜420頁を参照されたい。
ある種の実施形態では、切断ドメインは、例えば、それらの全ての開示が参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20050064474号、同第20060188987号、および同第20080131962号において記載されている通り、ホモ二量体化を最小化または防止する、1または複数の操作された切断ハーフドメイン(また、二量体化ドメインの突然変異体とも称する)を含む。Fok Iの446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537、および538位におけるアミノ酸残基は全て、Fok I切断ハーフドメインの二量体化に影響を及ぼすための標的である。
偏性ヘテロ二量体を形成する、例示的なFok Iの操作された切断ハーフドメインは、第1の切断ハーフドメインが、Fok Iのアミノ酸残基490位および538位における突然変異を含み、第2の切断ハーフドメインが、アミノ酸残基486および499において突然変異を含む対を含む。
したがって、一実施形態では、490における突然変異によりGlu(E)をLys(K)で置きかえ、538における突然変異によりIso(I)をLys(K)で置きかえ、486における突然変異によりGln(Q)をGlu(E)で置きかえ、499位における突然変異によりIso(I)をLys(K)で置きかえる。具体的には、本明細書で記載される、操作された切断ハーフドメインは、1つの切断ハーフドメインにおいて490位(E→K)および538位(I→K)を突然変異させて、「E490K:I538K」と称する、操作された切断ハーフドメインを作製し、かつ、別の切断ハーフドメインにおいて486位(Q→E)および499位(I→L)を突然変異させて、「Q486E:I499L」と称する、操作された切断ハーフドメインを作製することにより調製した。本明細書で記載される、操作された切断ハーフドメインは、異常な切断を最小化または消失させた、偏性ヘテロ二量体の突然変異体である。例えば、その開示が全ての目的で参照によりその全体において組み込まれる、米国特許出願公開第2008/0131962号を参照されたい。
ある種の実施形態では、操作された切断ハーフドメインは、486、499、および496位(野生型FokIに照らして番号付けした)における突然変異、例えば、486位における野生型のGln(Q)残基をGlu(E)残基で置きかえる突然変異、499位における野生型のIso(I)残基をLeu(L)残基で置きかえる突然変異、および496位における野生型のAsn(N)残基をAsp(D)残基またはGlu(E)残基(それぞれまた、「ELD」および「ELE」ドメインとも称する)で置きかえる突然変異を含む。他の実施形態では、操作された切断ハーフドメインは、490、538、および537位における突然変異(野生型FokIに照らして番号付けした)、例えば、490位における野生型のGlu(E)残基をLys(K)残基で置きかえる突然変異、538位における野生型のIso(I)残基をLys(K)残基で置きかえる突然変異、および537位における野生型のHis(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基(それぞれまた、「KKK」、および「KKR」ドメインとも称する)で置きかえる突然変異を含む。他の実施形態では、操作された切断ハーフドメインは、490位および537位(野生型FokIに照らして番号付けした)における突然変異、例えば、490位における野生型のGlu(E)残基をLys(K)残基で置きかえる突然変異、および537位における野生型のHis(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基(それぞれまた、「KIK」、および「KIR」ドメインとも称する)で置きかえる突然変異を含む(米国特許出願公開第20110201055号を参照されたい)。本明細書で記載される、操作された切断ハーフドメインは、任意の適切な方法を使用して、例えば、米国特許出願公開第20050064474号、同第20080131962号、および同第20110201055号において記載されている、野生型切断ハーフドメイン(Fok I)の部位指向突然変異誘発により調製することができる。
代替的に、ヌクレアーゼは、いわゆる「スプリット酵素」技術(例えば、米国特許出願公開第20090068164号を参照されたい)を使用して、in vivoの核酸標的部位においてアセンブルすることができる。このようなスプリット酵素の構成要素は、別個の発現構築物上で発現させることもでき、個別の成分を、例えば、自己切断型2AペプチドまたはIRES配列により隔てた1つのオープンリーディングフレーム内で連結することもできる。構成要素は、個々の亜鉛フィンガー結合性ドメインまたはメガヌクレアーゼ核酸結合性ドメインでありうる。
ヌクレアーゼは、例えば、WO2009/042163および米国特許出願公開第20090068164号において記載されている、酵母ベースの染色体系において、使用前に活性についてスクリーニングすることができる。ヌクレアーゼ発現構築物は、当技術分野で公知の方法を使用して、たやすくデザインすることができる。例えば、米国特許出願公開第20030232410号、同第20050208489号、同第20050026157号、同第20050064474号、同第20060188987号、同第20060063231号;および国際公開第WO07/014275号を参照されたい。ヌクレアーゼの発現は、構成的プロモーターの制御下でなされる場合もあり、誘導的プロモーター、例えば、ラフィノースおよび/またはガラクトースの存在下で活性化し(抑制解除され)、グルコースの存在下で抑制される、ガラクトキナーゼプロモーターの制御下でなされる場合もある。
CRISPR/Cas系
近年、古細菌および多くの細菌において、真核細胞RNAi経路に匹敵することが仮定される、RNA媒介型ゲノム防御経路の存在について、有力な証拠が現れている(総論としては、GoddeおよびBickerton、2006年、J. Mol. Evol.、62巻:718〜729頁;Lillestolら、2006年、Archaea、2巻:59〜72頁;Makarovaら、2006年、Biol. Direct、1巻:7頁;Sorekら、2008年、Nat. Rev. Microbiol.、6巻:181〜186頁を参照されたい)。CRISPR−Cas系または原核細胞RNAi(pRNAi)として公知の経路は、進化において連関し、物理的にもしばしば連結された2つの遺伝子遺伝子座:系のRNA構成要素をコードするCRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)遺伝子座、およびタンパク質をコードするcas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansenら、2002年、Mol. Microbiol.、43巻:1565〜1575頁;Makarovaら、2002年、Nucleic Acids Res.、30巻:482〜496頁;Makarovaら、2006年、Biol. Direct、1巻:7頁;Haftら、2005年、PLoS Comput. Biol.、1巻:e60頁)から生じることが提起されている。微生物宿主内のCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子の組合せのほか、CRISPR媒介型核酸切断の特異性をプログラムすることが可能な非コードRNAエレメントも含有する。個々のCasタンパク質は、真核細胞RNAi機構のタンパク質構成要素と著明な配列類似性を共有しないが、予測される類似の機能(例えば、RNA結合機能、ヌクレアーゼ機能、ヘリカーゼ機能など)を有する(Makarovaら、2006年、Biol. Direct、1巻:7頁)。CRISPR関連(cas)遺伝子は、CRISPRリピート−スペーサーアレイと会合していることが多い。40を超える異なるCasタンパク質ファミリーについて記載されている。これらのタンパク質ファミリーのうちで、Cas1は、異なるCRISPR/Cas系間で遍在すると考えられる。それらのうちのいくつかが、RAMP(repeat−associated mysterious protein)をコードするさらなる遺伝子モジュールと関連する、8つのCRISPR亜型(Ecoli、Ypest、Nmeni、Dvulg、Tneap、Hmari、Apern、およびMtube)を定義するのに、cas遺伝子とリピート構造との特定の組合せが使用されている。単一のゲノム内では、複数のCRISPR亜型が発生しうる。CRISPR/Cas亜型の散在的分布からは、この系が、微生物の進化において、遺伝子の水平移動を受けていることが示唆される。
II型CRISPRは、最もよく特徴付けられた系のうちの1つであり、4つの連鎖的ステップでターゲティングされたDNA二本鎖切断を行う。第1に、2つの非コードRNAである、プレcrRNAアレイおよびtracrRNAを、CRISPR遺伝子座から転写する。第2に、tracrRNAが、プレcrRNAのリピート領域とハイブリダイズし、プレcrRNAの、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへのプロセシングを媒介する。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体が、Cas9を、crRNA上のスペーサーと、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM:protospacer adjacent motif)に隣接する標的DNA上のプロトスペーサーとの間のワトソン−クリック塩基対合を介して標的DNAに方向付けるが、これが、標的認識のためのさらなる要件である。最後に、Cas9が、標的DNAの切断を媒介して、プロトスペーサー内の二本鎖切断を創出する。CRISPR/Cas系の活性化は、3つのステップ:(i)「アダプテーション」と呼ばれる工程における、その後の攻撃を防止するための、外来DNA配列のCRISPRアレイへの挿入、(ii)関与性のタンパク質の発現のほか、アレイの発現およびプロセシングの後、(iii)外来核酸によるRNA媒介型干渉を含む。したがって、細菌細胞では、いわゆる「Cas」タンパク質のうちのいくつかが、CRISPR/Cas系の天然機能に関与する。
CRISPR遺伝子座の一次産物は、インベーダーターゲティング配列を含有する短鎖RNAであると考えられ、経路内で仮定されているそれらの役割に基づき、ガイドRNAまたは原核細胞サイレンシングRNA(psiRNA:prokaryotic silencing RNA)と称する(Makarovaら(2006年)、Biol. Direct、1巻:7頁;Haleら(2008年)、RNA、14巻:2572〜2579頁)。RNA解析は、CRISPR遺伝子座の転写物が、リピート配列内で切断されて、個々のインベーダーターゲティング配列およびフランキングリピート断片を含有する、約60nt〜70ntのRNA中間体を放出することを指し示す(Tangら(2002年)、Proc. Natl. Acad. Sci.、99巻:7536〜7541頁;Tangら(2005年)、Mol. Microbiol.、55巻:469〜481頁;Lillestolら(2006年)、Archaea、2巻:59〜72頁;Brounsら(2008年)、Science、321巻:960〜964頁;Haleら(2008年)、RNA、14巻:2572〜2579頁)。古細菌であるPyrococcus furiosusでは、これらの中間体RNAが、豊富で安定的な約35nt〜45ntの成熟psiRNAにさらにプロセシングされる(Haleら(2008年)、RNA、14巻:2572〜2579頁)。
Casタンパク質
「Cas1」ポリペプチドとは、CRISPR関連(Cas)タンパク質1を指す。Cas1(Clusters of Orthologous Group of proteins classification systemのCOG1518)は、CRISPR関連系(CASS:CRISPR−associated system)の最良のマーカーである。系統発生比較に基づき、CRISPR関連免疫系の7つの異なる変化形が同定されている(CASS1〜7)。
本明細書で記載される方法において使用されるCas1ポリペプチドは、任意の原核生物において存在する任意のCas1ポリペプチドでありうる。ある種の実施形態では、Cas1ポリペプチドは、古細菌微生物のCas1ポリペプチドである。ある種の実施形態では、Cas1ポリペプチドは、Euryarchaeota微生物のCas1ポリペプチドである。ある種の実施形態では、Cas1ポリペプチドは、Crenarchaeota微生物のCas1ポリペプチドである。ある種の実施形態では、Cas1ポリペプチドは、細菌のCas1ポリペプチドである。ある種の実施形態では、Cas1ポリペプチドは、グラム陰性菌またはグラム陽性菌のCas1ポリペプチドである。ある種の実施形態では、Cas1ポリペプチドは、Pseudomonas aeruginosaのCas1ポリペプチドである。ある種の実施形態では、Cas1ポリペプチドは、Aquifex aeolicusのCas1ポリペプチドである。ある種の実施形態では、Cas1ポリペプチドは、CASS1〜7のうちの1つのメンバーである、Cas1ポリペプチドである。ある種の実施形態では、Cas1ポリペプチドは、CASS3のメンバーである、Cas1ポリペプチドである。ある種の実施形態では、Cas1ポリペプチドは、CASS7のメンバーである、Cas1ポリペプチドである。ある種の実施形態では、Cas1ポリペプチドは、CASS3またはCASS7のメンバーである、Cas1ポリペプチドである。
いくつかの実施形態では、Cas1ポリペプチドは、GenBankの、例えば、GeneID番号:2781520、1006874、9001811、947228、3169280、2650014、1175302、3993120、4380485、906625、3165126、905808、1454460、1445886、1485099、4274010、888506、3169526、997745、897836、もしくは1193018で提供されているヌクレオチド配列によりコードされ、かつ/またはこれらのポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸に対する相同性(例えば、80%を超える、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む90〜99%)を呈示するアミノ酸配列であって、それらのポリペプチドがCas1ポリペプチドとして機能するアミノ酸配列を含む。
Cas6は、別のCasポリペプチドであり、本明細書では、そのエンドリボヌクレアーゼ活性を、Cas6エンドリボヌクレアーゼ活性と称する。適切なCas6ポリペプチドの非限定的例は、Genbank受託番号AAL81255に示されている。Cas6ポリペプチドは、CRISPR遺伝子座およびcas(CRISPR関連)遺伝子座を有する微生物であって、Pyrococcus furiosusなどであるがこれらに限定されない微生物から濃縮、単離、または精製することもでき、組換え技法を使用して作製することもでき、日常的方法を使用して化学的または酵素的に合成することもできる。いくつかの態様では、Cas6ポリペプチドは、CRISPR遺伝子座を有さない微生物から濃縮、単離、または精製することができる。Cas6ポリペプチドは、C末端の近傍において、GhGxxxxxGhG(配列番号133モチーフ(配列中、「h」は、疎水性アミノ酸を指し示す)を含みうる。ArgまたはLysは、中央部の5アミノ酸の連なりにおいて見出される場合があり、中央部の5アミノ酸の連なりにおいて見出されることが多い。Cas6ポリペプチドは、触媒において役割を果たしうる少なくとも1つの残基、またはその保存的置換を含有する。Cas6ポリペプチドは、これもまた触媒において役割を果たしうる他の残基、またはその保存的置換も含有しうる。触媒において役割を果たすことが予測される残基は、タンパク質の三次元構造においてCas6署名モチーフを含有するGに富むループの近傍に位置しうる。Cas6ポリペプチドは、TIGRFAMデータベースの受託番号TIGR01877およびPF01881に存在するドメインを含みうる。TIGRFAMデータベースは、その機能が保存されているポリペプチドのファミリーを含む(Haftら(2003年)、Nucl. Acids Res.、31巻:371〜373頁;BatemanおよびHaft(2002年)、Briefings Bioinformatics、3巻:236〜245頁;ならびにHaftら(2005年)、PLoS Computational Biol.、1巻(6号):e60頁)。
本明細書で提示されるCas6ポリペプチドの他の例は、CRISPR遺伝子座およびcas遺伝子座を有する原核微生物において存在するCas6ポリペプチドを含む。Cas6ポリペプチドは、CRISPR遺伝子座を含む任意の微生物において容易に同定することができる。Cas6ポリペプチドをコードするコード領域は典型的に、CRISPR遺伝子座と近接して位置するcas遺伝子座内にある。Haftら((2005年)、PLoS Computational Biol.、1巻(6号):e60頁)は、Casタンパク質ファミリーについて総説し、CRISPR/Cas系の特殊な亜型を同定するための規則を創出した。Haftらは、Cas6ポリペプチドをコードするコード領域について、少なくとも4つの個別のCRISPR/Cas亜型(Tneap、Hmari、Apern、およびMtube)と関連して見出され、典型的にCRISPR遺伝子座に対して最も遠位に位置するcasコード領域であるものとして記載している。Cas6ポリペプチドは、JCVI Comprehensive Microbial Resourceにおいて利用可能なリソースを使用して同定することができる。したがって、当業者は、本明細書で記載される方法において有用なCas6ポリペプチドを、日常的方法を使用して同定することができる。
Cas6ポリペプチドをコードすることが予測されるコード領域を含有する公知の全ゲノム配列を伴う原核微生物の例は、Thermotoga maritima MSB8、Campylobacter fetus subsp.fetus 82−40、Fusobacterium nucleatum ATCC 25586、Streptococcus thermophilus LMG 18311、Thermoanaerobacter tengcongensis MB4(T)、Moorella thermoacetica ATCC 39073、Desulfitobacterium hafniense Y51、Clostridium tetani E88、Clostridium perfringens SM101、Clostridium difficile QCD−32g58、Clostridium botulinum Hall A Sanger、Clostridium botulinum F Langeland、Clostridium botulinum B1 Okra株、Clostridium botulinum A3 Loch Maree株、Clostridium botulinum A Hall、Clostridium botulinum A ATCC 19397、Carboxydothermus hydrogenoformans Z−2901、Staphylococcus epidermidis RP62A、Thermus thermophilus HB8、Thermus thermophilus HB27、Nostoc sp.PCC 7120、Anabaena variabilis ATCC 29413、Synechococccus sp.OS Type B prime、Synechococccus sp.OS Type A、Porphyromonas gingivalis W83、Bacteroides fragilis YCH46、Bacteroides fragilis NCTC9343、Aquifex aeolicus VF5、Rubrobacter xylanophilus DSM 9941、Mycobacterium tuberculosis H37Rv(実験室株)、Mycobacterium tuberculosis CDC1551、Mycobacterium bovis subsp.bovis AF2122/97、Frankia alni ACN14a、Thermoplasma volcanium GSS1、Picrophilus torridus DSM 9790、Thermococcus kodakarensis KOD1、Pyrococcus horikoshii shinkaj OT3、Pyrococcus furiosus DSM 3638、Pyrococcus abyssi GE5、Methanosarcina barkeri fusaro、Methanosarcina acetivorans C2A、Methanococcoides burtonii DSM 6242、Methanococcus jannaschii DSM2661、Methanobacterium thermoautotrophicum delta H、Haloarcula marismortui ATCC 43049、Archaeoglobus fulgidus DSM4304、Pyrobaculum aerophilum 1M2、Sulfolobus tokodaii strain 7、Sulfolobus solfataricus P2、Sulfolobus acidocaldarius DSM 639、Aeropyrum pernix K1を含む。Cas6ポリペプチドの他の例は、当業者に公知であり、例えば、COG1583群のポリペプチドのメンバー(National Center for Biotechnology Informationのインターネットサイトを介して、Clusters of Orthologous Groups of proteins(COG)のウェブページで入手可能であり、また、Tatusovら(1997年)、Science、278巻:631〜637頁;およびTatusovら(2003年)、BMC Bioinformatics、4巻(1号):41頁も参照されたい)、受託番号IPRO10156であるInterProファミリーのメンバー(Makarovaら(2002年)、Nuc. Acids Res.、30巻:482〜496頁;およびHaftら(2005年)、PLoS Comput. Biol.、1巻(6号):e60頁、474〜483頁)を参照されたい。
全てがRNAおよびCasタンパク質を組み込む3種類のCRISPR/Cas系が存在する。I型およびIII型のいずれも、crRNAに完全にプロセシングされると、crRNAと相補的な核酸を切断することが可能な多重Casタンパク質複合体をアセンブルするプレcrRNAをプロセシングするCasエンドヌクレアーゼを有する。
II型CRISPR/Cas系では、crRNAは、プレcrRNA内のリピート配列と相補的なトランス活性化RNA(tracrRNA:trans−activating RNA)が、Cas9タンパク質の存在下で二本鎖特異的RNアーゼIIIによるプロセシングを誘発する、異なる機構を使用して産生される。次いで、Cas9は、成熟crRNAと相補的な標的DNAを切断することが可能であるが、Cas9による切断は、crRNAと標的DNAとの間の塩基対合、およびcrRNA内のPAM配列(プロトスペーサー隣接モチーフ)と称する短いモチーフの存在の両方に依存する(Qiら(2013年)、Cell、152巻:1173頁を参照されたい)。加えてまた、tracrRNAも、その3’端においてcrRNAと塩基対合するので存在しなければならず、この会合により、Cas9活性が誘発される。
Cas9タンパク質は、一方のヌクレアーゼドメインが、HNHエンドヌクレアーゼと類似するのに対し、他方のヌクレアーゼドメインは、Ruvエンドヌクレアーゼドメインと相似する、少なくとも2つのヌクレアーゼドメインを有する。HNH型のドメインが、crRNAと相補的なDNA鎖の切断の一因となると考えられるのに対し、Ruvドメインは、非相補的鎖を切断する。
crRNA−tracrRNA複合体の要請は、通常crRNAとtracrRNAとのアニーリングにより形成されるヘアピンを含む、操作された「単鎖ガイドRNA」(sgRNA:single−guide RNA)を使用することにより回避することができる(Jinekら(2012年)、Science、337巻:816頁;およびCongら(2013年)、Sciencexpress/10.1126/science.1231143を参照されたい)。S.pyrogenesでは、二本鎖RNA:DNAヘテロ二量体が、Cas関連RNAと標的DNAとの間で形成されると、操作tracrRNA:crRNA融合体またはsgRNAが、標的DNAを切断するように、Cas9を誘導する。Cas9タンパク質およびPAM配列を含有する操作sgRNAを含むこの系は、RNA誘導型ゲノムエディティング(Ramalingam、同上を参照されたい)に使用され、in vivoにおけるゼブラフィッシュ胚のゲノムエディティングに有用となっており(Hwangら(2013年)、Nature Biotechnology、31巻(3号):227頁を参照されたい)、エディティング効率は、ZFNおよびTALENと同様である。
ある種の実施形態では、Casタンパク質は、自然発生Casタンパク質の「機能的誘導体」でありうる。天然配列ポリペプチドの「機能的誘導体」とは、定性的な生物学的特性を天然配列ポリペプチドと共有する化合物である。「機能的誘導体」は、それらが、対応する天然配列ポリペプチドと生物学的活性を共有するという条件で、天然配列の断片ならびに天然配列ポリペプチドおよびその断片の誘導体を含むがこれらに限定されない。本明細書で想定される生物学的活性とは、DNA基質を断片に加水分解する機能的誘導体の能力である。「誘導体」という用語は、ポリペプチドのアミノ酸配列変異体、共有結合的修飾体、およびこれらの融合体を包摂する。
「Casポリペプチド」とは、全長Casポリペプチド、Casポリペプチドの酵素的に活性の断片、およびCasポリペプチドまたはその断片の酵素的に活性の誘導体を包摂する。Casポリペプチドまたはその断片の適切な誘導体には、Casタンパク質またはその断片の突然変異体、融合体、共有結合的修飾体が含まれるがこれらに限定されない。
Casタンパク質およびCasポリペプチドは、細胞から得ることもでき、化学合成することもでき、これらの2つの手順の組合せを介することもできる。細胞は、天然においてCasタンパク質をもたらす細胞の場合もあり、天然においてCasタンパク質をもたらし、かつ、内因性Casタンパク質をより高い発現レベルでもたらすか、または外因的に導入された核酸であって、内因性Casと同じであるかもしくは異なるCasをコードする核酸に由来するCasタンパク質をもたらすように遺伝子操作された細胞の場合もある。いくつかの場合には、細胞は、天然ではCasタンパク質をもたらさず、Casタンパク質をもたらすように遺伝子操作されている。
CRISPR/Cas系はまた、遺伝子発現を阻害するのにも使用することができる。Leiら((2013年)、Cell、152巻(5号):1173〜1183頁)は、エンドヌクレアーゼ活性を欠く、触媒的に不活性のCas9を、ガイドRNAと共に共発現させると、転写的伸長、RNAポリメラーゼの結合、または転写因子の結合に特異的に干渉しうる、DNA認識複合体を生成させることを示している。この系は、CRISPR干渉(CRISPRi)と呼ばれ、ターゲティングされた遺伝子の発現を効率的に抑制しうる。
加えて、それらの切断ドメイン内に、それらが二本鎖切断(DSB:double−strand break)を誘導することを不可能とし、代わりに、標的DNAにニックを導入する突然変異を含むCasタンパク質(「Cas9ニッキング酵素」;Congら、同上を参照されたい)も開発されている。
本発明のCasタンパク質は、機能性を変化させるように突然変異させることができる。ファージディスプレイおよびツーハイブリッド系を含む例示的な選択法は、米国特許第5,789,538号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,410,248号、同第6,140,466号、同第6,200,759号、および同第6,242,568号のほか、WO98/37186、WO98/53057、WO00/27878、WO01/88197、およびGB2,338,237において開示されている。加えて、亜鉛フィンガー結合性ドメインへの結合特異性の増強については、例えば、共有のWO02/077227においても記載されている。標的部位、DNA結合性ドメイン、ならびに融合タンパク質(および融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド)をデザインおよび構築するための方法の選択は、当業者に公知であり、米国特許第6,140,0815号、同第5,789,538号、同第6,453,242号、同第6,534,261号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,200,759号、WO95/19431、WO96/06166、WO98/53057、WO98/54311、WO00/27878、WO01/60970、WO01/88197、WO02/099084、WO98/53058、WO98/53059、WO98/53060、WO02/016536、およびWO03/016496、ならびに米国特許出願公開第20110301073号において詳細に記載されている。
CRISPR/CasのRNAの構成要素
Cas9関連CRISPR/Cas系は、2つのRNA非コード構成要素:tracrRNAと、同一のダイレクトリピート(DR)がそれぞれの間に介在しているヌクレアーゼガイド配列(スペーサー)を含有するプレcrRNAアレイとを含む。CRISPR/Cas系を使用して、ゲノム操作を達成するには、これらのRNAの機能のいずれもが存在しなければならない(Congら(2013年)、Sciencexpress 1/10.1126/science 1231143を参照されたい)。いくつかの実施形態では、tracrRNAおよびプレcrRNAは、別個の発現構築物を介して、または別個のRNAとしてもたらされる。他の実施形態では、キメラcrRNA−tracrRNAハイブリッド(また、単鎖ガイドRNAとも称する)を創出するように、操作成熟crRNA(標的特異性を付与する)を、tracrRNA(Cas9との相互作用をもたらす)に融合させた、キメラRNA(Jinek、同上;およびCong、同上を参照されたい)を構築する。
キメラRNAまたはsgRNAは、任意の所望の標的と相補的な配列を含むように操作することができる。RNAは、標的に対して相補性であり、G[n19]の形態の22塩基に続いて、NGGの形態のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含む。したがって、一方法では、sgRNAは、対象の遺伝子内の公知のZFN標的を活用して、(i)ZFNヘテロ二量体の認識配列を、関与性のゲノム(ヒト、マウス、または特定の植物種の)の基準配列で配列決定すること;(ii)ZFNハーフ部位の間のスペーサー領域を同定すること;(iii)スペーサー領域(複数のこのようなモチーフがスペーサーと重複する場合は、スペーサーに対して中央よりのモチーフを選択する)と最も近接するモチーフG[N20]GGの位置を同定すること;(iv)このモチーフをsgRNAのコアとして使用することによりデザインすることができる。この方法は、立証されたヌクレアーゼ標的に依拠して有利である。代替的に、sgRNAは、G[n20]GGの式に適合する適切な標的配列を同定することによるだけで、任意の対象の領域を標的とするようにデザインすることもできる。
標的部位
上記で詳細に記載した通り、DNA結合性ドメインは、遺伝子座内、例えば、グロビン遺伝子内またはセーフハーバー遺伝子内の任意の選り抜きの配列に結合するように操作することができる。操作されたDNA結合性ドメインは、自然発生のDNA結合性ドメインと比較して新規の結合特異性を有しうる。操作法は、合理的デザインおよび多様な種類の選択を含むがこれらに限定されない。合理的デザインは、例えば、三連(または四連)ヌクレオチド配列および個々の(例えば、亜鉛フィンガー)アミノ酸配列を含むデータベースであって、各三連または四連のヌクレオチド配列が、特定の三連または四連の配列に結合するDNA結合性ドメインの1または複数のアミノ酸配列と関連するデータベースの使用を含む。例えば、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、共有の米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照されたい。また、TALエフェクタードメインの合理的デザインも実施することができる。例えば、米国特許出願公開第20110301073号を参照されたい。
DNA結合性ドメインに適用可能な、例示的な選択法であって、ファージディスプレイおよびツーハイブリッド系を含む選択法は、米国特許第5,789,538号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,410,248号、同第6,140,466号、同第6,200,759号、および同第6,242,568号のほか、WO98/37186、WO98/53057、WO00/27878、WO01/88197、およびGB2,338,237において開示されている。
標的部位、ヌクレアーゼ、ならびに融合タンパク質(および融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド)をデザインおよび構築するための方法の選択は、当業者に公知であり、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20050064474号および同第20060188987号において詳細に記載されている。
加えて、これらの参考文献および他の参考文献において開示されている通り、DNA結合性ドメイン(例えば、マルチフィンガーの亜鉛フィンガータンパク質)は、例えば、5アミノ酸以上のリンカーを含む任意の適切なリンカー配列を使用して、一体に連結することができる。6アミノ酸以上の長さの例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号、同第6,903,185号、および同第7,153,949号を参照されたい。本明細書で記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のDNA結合性ドメインの間の適切なリンカーの任意の組合せを含みうる。また、米国特許出願公開第20110287512号も参照されたい。
ドナー
上記で言及した通り、例えば、タンパク質を発現させるか、突然変異体遺伝子を矯正するか、または野生型遺伝子の発現を増大させるための、外因性配列(また、「ドナー配列」または「ドナー」または「導入遺伝子」とも呼ばれる)の挿入が提供される。ドナー配列は典型的に、それが配置されるゲノム配列と同一ではないことがたやすく明らかであろう。ドナー配列は、対象の位置における効率的なHDRを可能とする相同な2つの領域で挟まれた、非相同配列を含有しうる。加えて、ドナー配列は、細胞クロマチン内の対象の領域と相同ではない配列を含有する、ベクター分子も含みうる。ドナー分子は、細胞クロマチンと相同な複数の不連続的領域を含有しうる。例えば、正常では対象の領域内に存在しない配列のターゲティングされた挿入のためには、前記配列を、ドナー核酸分子内に存在させ、対象の領域内の配列と相同性の領域で挟むことができる。
ドナーポリヌクレオチドは、DNAの場合もあり、RNAの場合もあり;一本鎖の場合もあり、二本鎖の場合もあり;直鎖状形態で細胞に導入することもでき、環状形態で細胞に導入することもできる。例えば、米国特許出願公開第20100047805号、同第20110281361号、同第20110207221号、および米国出願第13/889,162号を参照されたい。直鎖状形態で導入される場合、ドナー配列の末端は、当業者に公知の方法で保護する(例えば、エクソヌクレアーゼによる核酸分解から)ことができる。例えば、1または複数のジデオキシヌクレオチド残基を、直鎖状分子の3’端に付加し、かつ/または自己相補的オリゴヌクレオチドを、一方もしくは両方の末端にライゲーションする。例えば、Changら(1987年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84巻:4959〜4963頁;Nehlsら(1996年)、Science、272巻:886〜889頁を参照されたい。外因性ポリヌクレオチドを分解から保護するためのさらなる方法は、末端のアミノ基の付加および、例えば、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、およびO−メチルリボース残基、またはデオキシリボース残基など、修飾ヌクレオチド間連結の使用を含むがこれらに限定されない。
ポリヌクレオチドは、例えば、複製起点、プロモーター、および抗生剤耐性をコードする遺伝子など、さらなる配列を有するベクター分子の一部として、細胞に導入することができる。さらに、ドナーポリヌクレオチドは、ネイキッド核酸として導入することもでき、リポソームまたはポロキサマーなどの薬剤と複合体化させた核酸として導入することもでき、ウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、およびインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))により送達することもできる。
ドナーは一般に、その発現が、組込み部位における内因性プロモーター、すなわち、ドナーが挿入される内因性遺伝子(例えば、グロビン、AAVS1など)の発現を駆動するプロモーターに駆動されるように挿入する。しかし、ドナーは、プロモーターおよび/またはエンハンサー、例えば、構成的プロモーターまたは誘導的プロモーターまたは組織特異的プロモーターを含みうることが明らかとなろう。
ドナー分子は、内因性遺伝子のうちの全てを発現させるように内因性遺伝子に挿入することもでき、内因性遺伝子のうちの一部を発現させるように内因性遺伝子に挿入することもでき、内因性遺伝子のうちのいずれも発現させないように内因性遺伝子に挿入することもできる。例えば、本明細書で記載される導入遺伝子は、内因性グロビン配列のうちの一部を、例えば、導入遺伝子との融合体として発現させるように、グロビン遺伝子座に挿入することもでき、内因性グロビン配列のうちのいずれも、例えば、導入遺伝子との融合体としては発現させないように、グロビン遺伝子座に挿入することもできる。他の実施形態では、導入遺伝子(例えば、グロビンコード配列を伴う導入遺伝子またはグロビンコード配列を伴わない導入遺伝子)を、任意の内因性遺伝子座、例えば、セーフハーバー遺伝子座に組み込む。例えば、米国特許出願公開第20080299580号、同第20080159996号、および同第201000218264号を参照されたい。
さらなる(例えば、グロビン)配列(内因性配列または導入遺伝子の一部)を、導入遺伝子と共に発現させる場合、さらなる配列は、全長配列(野生型または突然変異体)の場合もあり、部分的配列の場合もある。さらなる(例えば、グロビン)配列は、機能的であることが好ましい。これらの全長グロビン配列または部分的グロビン配列の機能の非限定的例は、導入遺伝子(例えば、治療的遺伝子)が発現させるポリペプチドの血清半減期を延長すること、および/もしくはキャリアとして作用すること、ポリペプチドの宿主細胞からの分泌を引き起こすこと、またはアルファグロビン鎖/ベータグロビン鎖の不均衡および結果として生じるRBCに対するアルファ−ポリマー毒性を予防することを含む。
さらに、発現には要請されないが、外因性配列はまた、転写調節配列または翻訳調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インスレーター、内部リボソーム導入部位、2Aペプチドおよび/またはポリアデニル化シグナルをコードする配列も含みうる。
ある種の実施形態では、外因性配列(ドナー)は、対象のタンパク質の融合体、および、その融合パートナーとして、融合タンパク質を細胞の表面上に位置させる、膜タンパク質の細胞外ドメインを含む。これにより、導入遺伝子によりコードされるタンパク質は、RBCの表面上で発現すると、被験体の血清中で作用することが可能となる。環境毒素への曝露のための処置の場合、RBCの表面上で導入遺伝子融合体によりコードされる酵素は、血清中で蓄積される毒性化合物に作用する。加えて、RBC分解の正常なコースの通り、操作された過剰発現タンパク質を保有するRBCが、脾臓マクロファージにより貪食される場合、マクロファージがRBCを貪食するときに形成されるリソソームは、膜結合融合タンパク質または細胞質過剰発現タンパク質を、リソソーム内の異常に高い濃度の毒性産物/代謝中間体に、その酵素により自然に好適なpHで曝露するであろう。潜在的融合パートナーの非限定的例を、下記の表1に示す。
さらに、本発明のドナー(導入遺伝子)は、対象の化合物に作用し、対象の化合物を分解し、かつ/または対象の化合物の解毒が可能な特異的タンパク質を含みうる。毒素が血流を介して移動する間に、毒素のRBC内への拡散の後で、毒素の分解が生じるように、これらのタンパク質は、RBC内で産生され、保持されることが可能である。代替的に、タンパク質(例えば、酵素)は、RBCの表面にアンカリングすることができ、この場合、タンパク質(例えば、酵素)は、RBCの外側の血清中で毒素に作用するであろう。タンパク質はまた、RBCにより、血流に放出または分泌させることもできる。考慮されうるタンパク質は、毒素がもはや毒性でなくなるように、毒素を部分的または完全に分解するタンパク質を含む。他の種類の導入遺伝子は、RBCが循環から除去されるまで、化合物(すなわち、重金属原子)を隔離する導入遺伝子でありうる。複数の導入遺伝子を、任意の組合せで使用することができる。
毒素(例えば、神経作用物質)の機能を遮断する任意の遺伝子産物を使用することができる。毒素の分解および/または遮断において有用な遺伝子産物の非限定的例は、広範なスペクトルにわたる有機リン酸神経作用物質を分解するように操作しうる、カルボキシルエステラーゼ(CaE)、抗体、ブチリルコリンエステラーゼ(BCHE)、ウシ胎仔血清AChE(FBS−AChE)、ウマ血清ブチリルコリンエステラーゼ(EqBChE)などのコリンエステラーゼ(ChE)、Pseudonomas diminutaに由来するホスホトリエステラーゼ、および/または血清パラオキソナーゼ/アリールエステラーゼ1(PON1);ビスフェノールA(BPA)を分解するためのペルオキシダーゼ;重金属を解毒するためのメタロチオネインであるフィトケラチンを含む。
他の実施形態では、導入遺伝子は、リソソーム蓄積症を伴う被験体において欠如または欠損する産物を産生させる。なおさらなる実施形態では、産生されるタンパク質産物により、リソソーム蓄積症(LSD:lysosomal storage disease)と関連する症状を処置、予防、および/または改善する。LSDとは、正常では老廃物である脂質、糖タンパク質、およびムコ多糖の分解に関与する、機能的な個別のリソソームタンパク質の欠如を特徴とする、稀な代謝性単一遺伝子疾患の群である。例えば、表2を参照されたい。これらの疾患は、特異的酵素の機能不全に起因して、それらをリサイクルのために処理することが不可能であるので、細胞内のこれらの化合物の蓄積を特徴とする。最も一般的な例は、ゴーシェ病(グルコセレブロシダーゼ欠損症:遺伝子名GBA)、ファブリー病(α−ガラクトシダーゼ欠損症:GLA)、ハンター病(イヅロン酸−2−スルファターゼ欠損症:IDS)、ハーラー病(アルファ−L−イヅロニダーゼ欠損症:IDUA)、およびニーマン−ピック病(スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ1欠損症:SMPD1)である。参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願第13/839,336号を参照されたい。
リソソーム蓄積症は典型的に、5つのクラスに分けられる。これらのクラスを、疾患の具体例と共に下記の表2に示す。したがって、本明細書で記載されるドナー分子(導入遺伝子)は、リソソーム蓄積症を伴う被験体において欠如または欠損する1または複数の酵素であって、表2に示されるタンパク質を含むがこれらに限定されない酵素をコードする配列を含みうる。
いくつかの場合には、ドナーは、改変された内因性遺伝子でありうる。酵素置きかえ療法に対する抗体応答は、問題の特異的治療用酵素および個別の患者に応じて変化するが、酵素の置きかえで処置される多くのLSD患者において、著明な免疫応答が認められている。加えてまた、これらの抗体の、処置の有効性に対する関与性も可変的である(Katherine Ponder(2008年)、J Clin Invest、118巻(8号):2686頁を参照されたい)。したがって、本発明の方法および組成物は、このようなドナーにより産生されるポリペプチドの免疫原性が小さくなるように、内因性免疫応答のためのプライミングエピトープであることが公知の部位において、機能的にサイレントのアミノ酸変化によりその配列を変化させたドナー分子の使用を含みうる。
本発明の方法および組成物は、治療剤の脳への送達を増大させる方法と共に使用することができる。脳毛細血管の細胞間の密着結合の一過性の開裂を引き起こすいくつかの方法が存在する。例は、高張性マンニトール溶液の頸動脈内投与の使用、焦点化された超音波の使用、およびブラジキニン類似体の投与を介する一過性の浸透圧性破壊を含む。代替的に、治療剤は、脳への特異的輸送のための受容体または輸送機構を使用するようにデザインすることもできる。使用しうる特異的受容体の例は、トランスフェリン受容体、インスリン受容体、または低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1および2(LRP−1:low−density lipoprotein receptor related proteins 1およびLRP−2)を含む。LRPは、apoE、tPA、PAI−1など、ある範囲の分泌タンパク質と相互作用することが公知であるので、これらのタンパク質のうちの1つに由来するLRPの認識配列を融合させることにより、RBC前駆体内の治療用タンパク質の発現および成熟RBCから血流への分泌の後において、酵素の脳への輸送を容易とすることができる(Gabathuler(2010年)、同上を参照されたい)。
送達
本明細書で記載されるヌクレアーゼ、これらのヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチド、ならびにタンパク質および/またはポリヌクレオチドを含む組成物は、任意の適切な手段によりin vivoで送達することもでき、ex vivoで送達することもできる。
本明細書で記載されるヌクレアーゼを送達する方法は、例えば、それらの全ての開示が参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第6,453,242号、同第6,503,717号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,607,882号、同第6,689,558号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号、および同第7,163,824号において記載されている。
本明細書で記載されるヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物はまた、亜鉛フィンガータンパク質、TALENタンパク質、および/またはCRISPR/Cas系のうちの1または複数をコードする配列を含有するベクターを使用して送達することもできる。プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクターなどを含むがこれらに限定されない、任意のベクター系を使用することができる。また、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第6,534,261号、同第6,607,882号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号、および同第7,163,824号も参照されたい。さらに、これらのベクターのうちのいずれかは、処置に必要とされる配列のうちの1または複数を含みうることが明らかとなろう。したがって、1または複数のヌクレアーゼおよびドナー構築物を細胞に導入する場合、ヌクレアーゼおよび/またはドナーポリヌクレオチドは、同じベクターにより運び入れることもでき、異なるベクターにより運び入れることもできる。複数のベクターを使用する場合、各ベクターは、1または複数のヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物をコードする配列を含みうる。
従来のウイルスベースの遺伝子導入法および非ウイルスベースの遺伝子導入法を使用して、ヌクレアーゼおよびドナー構築物をコードする核酸を、細胞内(例えば、哺乳動物細胞)および標的組織内に導入することができる。非ウイルスベクター送達系は、DNAプラスミド、ネイキッド核酸、およびリポソームまたはポロキサマーなどの送達媒体と複合体化させた核酸を含む。ウイルスベクター送達系は、細胞への送達後においてエピソームゲノムまたは組込みゲノムを有する、DNAウイルスおよびRNAウイルスを含む。遺伝子治療手順の総説については、Anderson、Science、256巻:808〜813頁(1992年);NabelおよびFelgner、TIBTECH、11巻:211〜217頁(1993年);MitaniおよびCaskey、TIBTECH、11巻:162〜166頁(1993年);Dillon、TIBTECH、11巻:167〜175頁(1993年);Miller、Nature、357巻:455〜460頁(1992年);Van Brunt、Biotechnology、6巻(10号):1149〜1154頁(1988年);Vigne、Restorative Neurology and Neuroscience、8巻:35〜36頁(1995年);KremerおよびPerricaudet、British Medical Bulletin、51巻(1号):31〜44頁(1995年);Haddadaら、Current Topics in Microbiology and Immunology、DoerflerおよびBoehm(編)(1995年);ならびにYuら、Gene Therapy、1巻:13〜26頁(1994年)を参照されたい。
核酸の非ウイルス的送達法は、電気穿孔、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ウィロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン、または脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、およびDNAの薬剤増強取込みを含む。また、例えば、Sonitron 2000システム(Rich−Mar)を使用するソノポレーションも、核酸の送達に使用することができる。
さらなる例示的な核酸送達系は、Amaxa Biosystems(Cologne、Germany)、Maxcyte,Inc.(Rockville、Maryland)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston、MA)、およびCopernicus Therapeutics Inc.により提供される核酸送達系を含む(例えば、米国特許第6,008,336号を参照されたい)。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号、および同第4,897,355号において記載されており、リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識型リポフェクションに適するカチオン性脂質および中性脂質は、Felgner、WO91/17424、WO91/16024によるカチオン性脂質および中性脂質を含む。
免疫脂質複合体など、ターゲティングされたリポソームを含む、脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal、Science、270巻:404〜410頁(1995年);Blaeseら、Cancer Gene Ther.、2巻:291〜297頁(1995年);Behrら、Bioconjugate Chem.、5巻:382〜389頁(1994年);Remyら、Bioconjugate Chem.、5巻:647〜654頁(1994年);Gaoら、Gene Therapy、2巻:710〜722頁(1995年);Ahmadら、Cancer Res.、52巻:4817〜4820頁(1992年);米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、および同第4,946,787号を参照されたい)。
さらなる送達法は、送達される核酸の、EnGeneIC送達媒体(EDV:EnGeneIC delivery vehicle)へのパッケージングの使用を含む。これらのEDVは、抗体の一方のアームが、標的組織への特異性を有し、他方のアームが、EDVへの特異性を有する、二特異性抗体を使用して、標的組織に特異的に送達される。抗体により、EDVは、標的細胞表面に到達し、次いで、EDVは、エンドサイトーシスにより、細胞に到達する。細胞内に至ると、内容物が放出される(MacDiarmidら(2009年)、Nature Biotechnology、27巻(7号):643頁を参照されたい)。
操作されたヌクレアーゼおよび/またはドナーをコードする核酸を送達するための、RNAウイルスベースの系またはDNAウイルスベースの系の使用は、ウイルスを体内の特異的細胞にターゲティングし、ウイルスのペイロードを核にトラフィキングするための、高度に進化した過程を利用する。ウイルスベクターは、被験体に直接投与(in vivo)することもでき、細胞をin vitroにおいて処置し、改変細胞を被験体に投与(ex vivo)するのに使用することもできる。ヌクレアーゼおよび/またはドナーを送達するための従来のウイルスベースの系は、遺伝子導入のためのレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルスベクターを含むがこれらに限定されない。宿主ゲノム内の組込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルスによる遺伝子導入法により可能であり、挿入された導入遺伝子の長期間にわたる発現を結果としてもたらすことが多い。加えて、多くの異なる細胞型および標的組織において、高い形質導入効率が観察されている。
レトロウイルスの指向性は、外来のエンベロープタンパク質を組み込み、標的細胞の潜在的標的集団を増殖させることにより変化させることができる。レンチウイルスベクターとは、非分裂細胞に形質導入または感染することが可能であり、典型的に高いウイルス力価をもたらすレトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子導入系の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大で6〜10kbの外来の配列に対するパッキング能を伴う、シス作用型の長末端リピート(LTR:long terminal repeat)を含む。ベクターを複製およびパッキングするには、最小限のシス作用型のLTRで十分であり、次いで、これらを使用して、治療用遺伝子を、標的細胞に組み込み、恒久的な導入遺伝子発現をもたらす。広く使用されるレトロウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびこれらの組合せに基づくベクターを含む(例えば、Buchscherら、J. Virol.、66巻:2731〜2739頁(1992年);Johannら、J. Virol.、66巻:1635〜1640頁(1992年);Sommerfeltら、Virol.、176巻:58〜59頁(1990年);Wilsonら、J. Virol.、63巻:2374〜2378頁(1989年);Millerら、J. Virol.、65巻:2220〜2224頁(1991年);PCT/US94/05700を参照されたい)。
一過性の発現が好ましい適用では、アデノウイルスベースの系を使用することができる。アデノウイルスベースのベクターは、多くの細胞型において極めて高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を要請しない。このようなベクターにより、高力価および高レベルの発現が得られている。このベクターは、比較的単純な系で大量に産生させることができる。また、アデノ随伴ウイルス(「AAV:adeno−associated virus」)ベクターも、細胞に標的核酸を形質導入するのに使用され、例えば、in vitroにおける核酸およびペプチドの産生、ならびにin vivoおよびex vivoにおける遺伝子治療手順に使用される(例えば、Westら、Virology、160巻:38〜47頁(1987年);米国特許第4,797,368号;WO93/24641;Kotin、Human Gene Therapy、5巻:793〜801頁(1994年);Muzyczka、J. Clin. Invest.、94巻:1351頁(1994年)を参照されたい)。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号;Tratschinら、Mol. Cell. Biol.、5巻:3251〜3260頁(1985年);Tratschinら、Mol. Cell. Biol.、4巻:2072〜2081頁(1984年);HermonatおよびMuzyczka、PNAS、81巻:6466〜6470頁(1984年);ならびにSamulskiら、J. Virol.、63巻:03822〜3828頁(1989年)を含むいくつかの刊行物において記載されている。
現在、ヘルパー細胞系に挿入される欠損ベクターの、遺伝子による補完を伴う手法を使用して、形質導入剤を作り出す、少なくとも6つのウイルスベクター法が、臨床試験における遺伝子導入のために利用可能である。
pLASNおよびMFG−Sは、臨床試験において使用されているレトロウイルスベクターの例である(Dunbarら、Blood、85巻:3048〜305頁(1995年);Kohnら、Nat. Med.、1巻:1017〜102頁(1995年);Malechら、PNAS、94巻:22号、12133〜12138頁(1997年))。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験において使用された最初の治療用ベクターであった(Blaeseら、Science、270巻:475〜480頁(1995年))。MFG−Sによりパッキングされたベクターについては、50%以上の形質導入効率が観察されている(Ellemら、Immunol Immunother.、44巻(1号):10〜20頁(1997年);Dranoffら、Hum. Gene Ther.、1巻:111〜2頁(1997年))。
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV:recombinant adeno−associated virus)ベクターは、2型アデノ随伴ウイルスである、欠損性で非病原性のパルボウイルスに基づく、有望な代替的遺伝子送達系である。全てのベクターは、導入遺伝子発現カセットを挟む、145bpのAAV逆位末端リピートだけを保持するプラスミドに由来する。形質導入される細胞のゲノムへの組込みに起因する、効率的な遺伝子導入および安定的な導入遺伝子送達が、このベクター系の鍵となる特徴である(Wagnerら、Lancet、351巻:9117号、1702〜3頁(1998年)、Kearnsら、Gene Ther.、9巻:748〜55頁(1996年))。また、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9、およびAAVrh10、ならびにAAV2/8、AAV2/5、およびAAV2/6などの偽型AAVなどを含む他のAAV血清型も、本発明に従い使用されうる。
複製欠損組換えアデノウイルスベクター(Ad:adenoviral vector)は、高力価で産生させ、いくつかの異なる細胞型にたやすく感染させることができる。大半のアデノウイルスベクターは、導入遺伝子により、Ad E1a遺伝子、Ad E1b遺伝子、および/またはAd E3遺伝子を置きかえ、その後、欠失させた遺伝子機能をトランスで供給するヒト293細胞において複製欠損ベクターを繁殖させるように、操作する。Adベクターは、肝臓、腎臓、および筋肉において見出される細胞など、非分裂性の分化細胞を含む複数種類の組織に、in vivoで形質導入することができる。従来のAdベクターは、大きな搬送能力を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用の例は、筋内注射による抗腫瘍免疫化のためのポリヌクレオチド療法を伴った(Stermanら、Hum. Gene Ther.、7巻:1083〜9頁(1998年))。臨床試験における遺伝子導入のためのアデノウイルスベクターの使用さらなる例は、Roseneckerら、Infection、24巻:1号、5〜10頁(1996年);Stermanら、Hum. Gene Ther.、9巻:7号、1083〜1089頁(1998年);Welshら、Hum. Gene Ther.、2巻:205〜18頁(1995年);Alvarezら、Hum. Gene Ther.、5巻:597〜613頁(1997年);Topfら、Gene Ther.、5巻:507〜513頁(1998年);Stermanら、Hum. Gene Ther.、7巻:1083〜1089頁(1998年)を含む。
パッキング細胞を使用して、宿主細胞に感染することが可能なウイルス粒子を形成する。このような細胞は、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞またはPA317細胞を含む。遺伝子治療において使用されるウイルスベクターは通常、核酸ベクターを、ウイルス粒子にパッケージングするプロデューサー細胞系により作り出される。ベクターは典型的に、パッキングおよびその後の宿主への組込み(該当する場合)に要請される最小限のウイルス配列、発現させるタンパク質をコードする発現カセットにより置きかえられる他のウイルス配列を含有する。欠失するウイルス機能は、パッキング細胞系により、トランスで供給される。例えば、遺伝子治療において使用されるAAVベクターは典型的に、AAVゲノムに由来する逆位末端リピート(ITR:inverted terminal repeat)配列であって、ゲノムのパッケージングおよび宿主への組込みに要請されるITR配列だけを保有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、すなわち、rep遺伝子およびcap遺伝子をコードするが、ITR配列を欠くヘルパープラスミドを含有する細胞系内にパッキングされる。また、細胞系には、ヘルパーとしてのアデノウイルスも感染させる。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製、およびAAV遺伝子のヘルパープラスミドからの発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠如に起因して、著明量ではパッキングされていない。アデノウイルスによる汚染は、例えば、アデノウイルスの感受性がAAVより大きい熱処理により低減することができる。
多くの遺伝子治療適用では、遺伝子治療ベクターを、特定の組織型に対する高度の特異性により送達することが望ましい。したがって、ウイルスベクターは、ウイルスの外表面上のウイルスコートタンパク質との融合タンパク質としてのリガンドを発現させることにより、所与の細胞型に対する特異性を有するように改変することができる。リガンドは、対象の細胞型に存在することが公知の受容体に対するアフィニティーを有するように選択される。例えば、Hanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、92巻:9747〜9751頁(1995年)は、モロニーマウス白血病ウイルスを、gp70に融合させたヒトへレグリンを発現させるように改変することができ、組換えウイルスは、ヒト上皮成長因子受容体を発現させる、ある種のヒト乳がん細胞に感染することについて報告した。この原理は、標的細胞が、受容体を発現させ、ウイルスが、細胞表面受容体に対するリガンドを含む融合タンパク質を発現させる、他のウイルス標的細胞対へも拡張することができる。例えば、繊維状ファージは、事実上任意の選択された細胞性受容体に対する特異的結合アフィニティーを有する抗体断片(例えば、FabまたはFv)を提示するように操作することができる。上記の記載は主に、ウイルスベクターに適用されるが、同じ原理は、非ウイルスベクターへも適用することができる。このようなベクターは、特異的標的細胞による取込みに好適な特異的取込み配列を含有するように操作することができる。
遺伝子治療ベクターは、in vivoにおいて、個別の被験体への投与により、典型的には、下記で記載される全身投与(例えば、静脈内注入、腹腔内注入、筋内注入、皮下注入、または頭蓋内注入)または局所適用により送達することができる。代替的に、ベクターを、ex vivoにおいて、個別の患者から外植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄吸引物、組織生検)またはユニバーサルドナー造血幹細胞などの細胞に送達した後、通常ベクターを組み込んだ細胞について選択した後において、細胞を、患者に再移植することができる。
ヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)はまた、細胞を形質導入するために、in vivoにおいて、生物に直接投与することもできる。代替的に、ネイキッドDNAを投与することもできる。投与は、分子を血液または組織細胞と最終的に接触させるのに通常使用される経路のうちのいずれかであって、注射、注入、局所適用、および電気穿孔を含むがこれらに限定されない経路を介する。このような核酸を投与するのに適する方法は利用可能であり、当業者に周知であり、特定の組成物を投与するのに複数の経路を使用しうるが、特定の経路により、別の経路より即時的で、かつ、より効果的な反応をもたらしうることが多い。
本明細書で記載されるポリヌクレオチドの導入に適するベクターは、非組込み型レンチウイルスベクター(IDLV)を含む。例えば、Oryら(1996年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、93巻:11382〜11388頁;Dullら(1998年)、J. Virol.、72巻:8463〜8471頁;Zufferyら(1998年)、J. Virol.、72巻:9873〜9880頁;Follenziら(2000年)、Nature Genetics、25巻:217〜222頁;米国特許出願公開第2009/054985号を参照されたい。
薬学的に許容される担体は、投与される特定の組成物により部分的に決定されるほか、組成物を投与するのに使用される特定の方法によっても決定される。したがって、下記で記載される通り、多種多様な適切な処方の医薬組成物が利用可能である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、17版、1989年を参照されたい)。
ヌクレアーゼコード配列およびドナー構築物は、同じ系を使用して送達することもでき、異なる系を使用して送達することもできることが明らかであろう。例えば、ドナーポリヌクレオチドを、プラスミドに保有させうる一方で、1または複数のヌクレアーゼは、AAVベクターに保有させうる。さらに、異なるベクターは、同じ経路(筋内注射、尾静脈注射、他の静脈内注射、腹腔内投与、および/または筋内注射)で投与することもでき、異なる経路で投与することもできる。ベクターは、同時に送達することもでき、任意の逐次的順序で送達することもできる。
ex vivo投与およびin vivo投与のいずれのための処方物も、懸濁液または乳化液を含む。有効成分は、薬学的に許容され、有効成分と適合的な賦形剤と混合することが多い。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩液、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびこれらの組合せを含む。加えて、組成物は、保湿剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、または医薬組成物の有効性を増強する他の試薬など、少量の補助物質も含有しうる。
適用
本発明の方法および組成物は、治療剤がRBC内および/または造血幹細胞内で産生されるように、これらの細胞に由来する成熟RBCが治療剤を含有するように、1または複数の治療剤をコードする導入遺伝子を供給することが所望される、任意の状況下で使用することができる。
したがって、本明細書で記載される組成物および方法は、環境的曝露、業務災害を介して、または化学戦争を介して毒素に曝露されている被験体における毒素を分解するために使用することができる。この技術では、化学兵器剤への曝露の後で、神経毒素を分解することが可能な成熟RBC内または成熟RBC上の解毒酵素の発現が特に有用である。
加えて、本発明の組成物および方法を使用して、遺伝子疾患、例えば、リソソーム蓄積症を処置することもできる。治療用タンパク質は、成熟RBCが、タンパク質を含有するように、RBC前駆体内で発現させることができる。このようなRBCは、被験体では、タンパク質の正常な発現が異常となる疾患を処置するのに有用である。
以下の例は、ヌクレアーゼが、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む、本開示の例示的な実施形態に関する。これは、例示だけを目的とするものであり、他のヌクレアーゼ、例えば、操作されたDNA結合性ドメインを伴うホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)、ならびに/あるいは自然発生であるかまたは操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)DNA結合性ドメインと、操作された単鎖ガイドRNAを含む異種切断ドメインまたはTALENおよび/もしくはCRISPR/Cas系との融合体も使用しうることが察知されるであろう。
実施例1:亜鉛フィンガータンパク質ヌクレアーゼ(ZFN)のデザイン、構築、および一般的特徴付け
本質的には、Urnovら(2005年)、Nature、435巻(7042号):646〜651頁;Perezら(2008年)、Nature Biotechnology、26巻(7号):808〜816頁において記載されている通りに、かつ、米国特許第6,534,261号において記載されている通りに、亜鉛フィンガータンパク質をデザインし、プラスミド、AAVベクター、またはアデノウイルスベクターに組み込んだ。ヒトベータグロビン遺伝子座およびヒトHPRT遺伝子座に特異的なZFN、ならびにヒトHPRT遺伝子座に特異的なTALENについては、米国特許第7,888,121号、ならびに米国特許出願公開第2013122591号および同第20130137104号を参照されたい。ヒトAAVS1に特異的なZFNについては、共有の米国特許第8,110,379号を参照されたい。CCR5に特異的なZFNについては、共有の米国特許第7,9519,25号を参照されたい。AAVS1およびCCR5に特異的なTALENについては、共有の米国特許出願公開第20110301073号を参照されたい。mRosaに特異的なZFNについては、共有の米国特許出願公開第20120017290号、mRosaに特異的なTALENについては、米国特許出願公開第20110265198号を参照されたい。アルブミンに特異的なヌクレアーゼについては、PCT公開第WO201303044008号を参照されたい。
実施例2:グロビン特異的ZFNの活性
ヒトグロビン遺伝子をターゲティングするZFN対を使用して、これらのZFNの、特異的標的部位においてDSBを誘導する能力について調べた。表示されるZFNの認識へリックス領域のアミノ酸の配列を、それらの標的部位(DNA標的部位を大文字で表示し、非接触ヌクレオチドを小文字で表示する)と共に下記の表3に示す。また、米国特許出願公開第20130137104号、および同第20130122591号も参照されたい。
Perezら(2008年)、Nat. Biotechnol.、26巻:808〜816頁;およびGuschinら(2010年)、Methods Mol Biol.、649巻:247〜56頁において記載されている、Cel−Iアッセイ(Surveyor(商標)、Transgenomics)を使用して、ZFN誘導型改変を検出した。このアッセイでは、標的部位のPCR増幅の後、ミスマッチ検出酵素であるCel−Iを使用して、挿入および欠失(インデル)の定量化を行い(Yangら(2000年)、Biochemistry、39巻:3533〜3541頁)、これにより、DSB頻度の下限の推定値をもたらした。ZFN発現ベクターの、標準状態(37℃)におけるトランスフェクション、または低温ショック(30℃;米国特許出願公開第20110041195号を参照されたい)を使用するトランスフェクションの3日後、DNeasyキット(Qiagen)を使用して、ゲノムDNAをK562細胞から単離した。
Cel−Iアッセイからの結果により、ZFNが、それらのそれぞれの標的部位における切断を誘導することが可能なことが裏付けられた(また、米国特許出願公開第20130122591号も参照されたい)。
実施例3:BCHE遺伝子のベータグロビン遺伝子座への挿入
以下の通りに、ZFNを使用して、ドナーDNAを、ベータグロビン遺伝子座に導入する。ドナーDNAは、BCHE酵素をコードする配列が、ベータグロビン遺伝子内のZFN切断部位の周囲の領域と相同な配列(相同性アーム)で挟まれるようにデザインする。相同性アームは、約500〜600塩基対の長さである。BCHEドナー配列は、ベータグロビン標的部位に挿入されると、ドナーの発現が、ベータグロビンプロモーターおよび他の任意のベータグロビン調節配列により調節されるように、いかなる非コード配列も欠く。挿入されると、BCHEドナーは、内因性グロビン配列と同じフレームで融合し、融合タンパク質を結果としてもたらすか、または、代替的に、BCHEドナーは、ベータグロビンプロモーターからのドナーの発現により、BCHEコード配列だけを含有するタンパク質が結果としてもたらされるように挿入される。
挿入を実行するにはまず、K562などの細胞系を使用する。細胞を、ZFNをコードするmRNAで処置し、次いで、これに、BCHEドナーを含む、アデノウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、プラスミド、または一本鎖DNAを形質導入する。
CD34+細胞に挿入し、その後成熟改変RBCに分化させるために、同じZFNおよびドナー構築物を使用して、BCHEを、ベータグロビン遺伝子座にターゲティングする。ZFNを、mRNAとして細胞に導入し、ドナーを、当技術分野で公知の方法(例えば、AAVベクターまたはレンチウイルスベクター)を使用して導入する。標的領域においてPCRを実施することにより、形質導入細胞を遺伝子挿入について解析し、適切な制限解析および/または配列解析を実施して挿入を確認する。
トランスジェニックCD34+細胞を、成熟RBCに分化させるために、当技術分野で公知の方法を使用する。例えば、製造元の指示書に従い、Ficoll−Paque(GE Healthcare)およびCD34マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を使用して、SCD CD34細胞を精製する。CD34細胞を、成長因子の存在下、BIT 95000(StemCell Technologies)を伴うイスコーブMDM中で培養する。二相式液体培養モデルを使用して、細胞を、赤血球系列に分化させる。最初の6日間(第1相)では、CD34細胞を、SCF(100ng/ml)、Flt3−L(100ng/ml)、およびIL−3(20ng/ml)により増殖させる。次いで、増殖させた細胞を、Epo(2U/ml)およびSCF(50ng/ml)により、赤血球系列に拘束および分化させる(第2相)。
実施例4:ヒト患者の集団を処置するための赤血球プールの構築
操作赤血球治療剤を発生させるために、選り抜きの導入遺伝子をコードするドナー(例えば、毒素を遮断もしくは分解するためのBCHE、またはLSDなど、遺伝子状態のための治療用タンパク質)を使用して、導入遺伝子を、O血液型陰性造血幹細胞(HSC:hematopoietic stem cell)集団に挿入する。内因性遺伝子(例えば、グロビン、アルブミン、Rosa、AAVS1、CCR5など)にターゲティングされたヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、および/またはCRISPR/Cas)を、RNAを介して幹細胞に導入し、任意の適切な送達系、例えば、ZFNコード配列および/またはTALENコード配列のためのアデノウイルスベクターを使用して、ドナーを細胞に形質導入する。HSC内の標的へのドナーの挿入は、PCRおよび/または配列解析を使用して確認する。次いで、当技術分野で公知の技法を使用して、細胞を、赤血球に分化させ、それを必要とする患者、例えば、神経ガス剤に曝露されているもしくは曝露される可能性がある患者、またはLSDなどの遺伝子状態を伴う患者に輸血する(薬学的に許容される細胞処方物を作り出した後で、かつ/または適切な状態、例えば、凍結状態において保存した後で)。
本明細書で言及される全ての特許、特許出願、および刊行物は、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる。
理解の明確さを目的とする例示および例として、ある程度詳細に開示を行ったが、本開示の精神または範囲から逸脱しない限りにおいて、当業者には、多様な変化および改変を行いうることが明らかであろう。したがって、前出の記載および例は、限定的なものとしてみなすべきではない。

Claims (12)

  1. タンパク質を発現させる組込み型導入遺伝子を含む単離された遺伝子改変O型陰性(O−)赤血球(RBC)前駆細胞であって、前記タンパク質が、1種または複数種の毒素を分解もしくは解毒し、さらに、前記導入遺伝子が、グロビン遺伝子またはセーフハーバー遺伝子に組み込まれている、RBC前駆細胞。
  2. 前記グロビン遺伝子が、ベータグロビン遺伝子またはガンマグロビン遺伝子である、請求項1に記載のRBC前駆細胞。
  3. 前記タンパク質を前記細胞中に保持する、請求項1または2に記載のRBC前駆細胞。
  4. 前記導入遺伝子が膜タンパク質の細胞外ドメインをコードする配列を含み、かつ前記膜タンパク質が、前記細胞の表面上に局在化している、請求項1または2に記載のRBC前駆細胞。
  5. 前記導入遺伝子が内因性配列と共に発現される、請求項1から4のいずれかに記載のRBC前駆細胞。
  6. 前記内因性配列が、前記導入遺伝子タンパク質のアミノ(N)末端部分またはカルボキシ(C)末端部分に存在する、請求項5に記載のRBC前駆細胞。
  7. 前記導入遺伝子が、前記RBC前駆細胞のゲノムに、ヌクレアーゼにより前記ゲノムを切断した後で組み込まれる、請求項1から6のいずれかに記載のRBC前駆細胞。
  8. 前記ヌクレアーゼが、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクタードメインヌクレアーゼ(TALEN)、またはCrispR/Cas系を含む、請求項7に記載のRBC前駆細胞。
  9. 胎児性ヘモグロビンを発現させる、請求項1から8のいずれかに記載のRBC前駆細胞。
  10. 毒素の分解または毒素の作用の解毒を必要とする被験体において毒素を分解するかまたは毒素の作用を解毒するための組成物であって、請求項1から9のいずれかに記載のRBC前駆細胞を含む、組成物。
  11. 注入で投与されることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
  12. 請求項1から9のいずれかに記載のRBC前駆細胞から分化したRBCであって、毒素を分解もしくは解毒するタンパク質を含むRBC
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