JP6328006B2 - 防眩性付与剤 - Google Patents

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Description

本発明は、シリカ系エアロゲルからなる防眩性付与剤、並びにこれを含有する防眩性付与塗料及び防眩性付与コート層に関する。
一般に、陰極管表示装置、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、液晶表示装置のような画像表示装置において、画像表示部への像の映り込みを抑えることで、視認性を向上させるためにコート層が設けられている。原理としては、コート層表面に形成した凹凸による光の散乱を利用している。
防眩性付与剤とは、上記のコート層に塗布する塗料中の樹脂に分散される粒子である。従来、アクリル樹脂、メラミン樹脂等の樹脂粒子や、シリカ、酸化チタン、エアロゲル等の無機粒子が用いられる。(たとえば、特許文献1、2、3)
高い防眩効果を得るには、防眩性付与剤の添加量を増加させれば良いが、それでは媒体樹脂と防眩性付与剤粒子の屈折率の差による内部散乱により防眩フィルムの曇り度(ヘイズ値)の増加し、コントラストの低下や、白色化、いわゆる、白ボケが発生し、フィルムの視認性が悪化してしまう。
また防眩性付与剤は、添加量を増やすことでフィルムの耐擦傷性も悪化する。
特開平10−264284 特開2014−16602 特開2010−235683
従って、本発明の課題は、少ない添加量で優れた防眩性を発揮し、ヘイズ値が低く、白色化が小さく、耐擦傷性にも優れるコート層を得ることが可能な防眩性付与剤を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、高細孔容積と均一な細孔とを有し、且つ一定の粒径範囲であるシリカ系エアロゲルから成る防眩性付与剤が上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、BET法による比表面積が400〜1000m/gであり、BJH法による細孔容積及び細孔半径のピークが各々3〜8ml/g、10〜50nmであり、コールターカウンター法により測定された粒度分布における体積基準累積50%径(D50)値が1〜5μmであるシリカ系エアロゲルからなり、屈折率が1.44〜1.57の樹脂に分散させて使用されることを特徴とする防眩性付与剤である。
本発明の防眩性付与剤は、高細孔容積を有するエアロゲルである為、同重量の樹脂粒子や無機粒子を添加した場合と比較して、多くの個数の粒子を樹脂中に分散させることができる。その結果、重量当りの防眩効果が高いため、白ボケや耐擦傷性に優れたコート層を得ることができる。
また、均一な細孔径と特定の粒径を有するため、透明性に優れ、低いヘイズ値を有するコート層を得ることができる。
また、本発明の防眩性付与剤の一次粒子径は数nm程度であり、一般的な可視光波長(380nm〜750nm程度)と比較して数十分の1から数100分の1と小さいため、樹脂に入射した可視光を屈折・散乱させることなく、その結果、低いヘイズ値を有することができる。
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明の防眩性付与剤はシリカ系エアロゲルからなり、屈折率が1.44〜1.57の樹脂に分散させて使用される。上記シリカ系エアロゲルは、高い空隙率を有し、分散媒体として気体を伴う固体材料であり、空隙率60%以上のものをいう。なお、上記空隙率は、見掛けの体積中に含まれている気体の量を体積百分率で表した値である。一般に、シリカ系エアロゲルは粒径4〜8nmの一次粒子が網目状に凝集した二次粒子を形成しており、均一な細孔構造を有することを特徴とする。
上記のシリカ系エアロゲルは、金属酸化物により構成されており、シリカ、又は、シリカを主成分とする複合酸化物である。本発明において、「シリカを主成分とする複合酸化物」とは、当該複合酸化物が含有する酸素以外の元素群において、ケイ素(Si)のモル比率が50%以上100%未満であることを意味する。当該モル比率は好ましくは65%以上であり、より好ましくは75%以上であり、更に好ましくは80%以上である。
本発明の防眩性付与剤の比表面積は特に制限されないが、BET法による比表面積の下限は400m/gであり、好ましくは500m/gである。上限は1000m/gであり、好ましくは800m/gである。該比表面積は、シリカ系エアロゲルを構成する1次粒子の粒径に依存しており、比表面積が大きいほど、シリカ系エアロゲルを構成する一次粒子径が小さく、より複雑な網目構造を有することにより粒子強度が向上し、樹脂に分散させた際の細孔破壊を防止する上で好ましい。しかしながら、上記範囲を超えて大きくなると、シリカ系エアロゲルの細孔構造を形成することが難しくなり、結果的に細孔が潰れてしまう。
たとえば、後述の細孔容積、及び細孔径を有する本発明の防眩性付与剤の場合、比表面積が、600m/gであれば、1次粒子径は5nm程度である。一般に、1次粒子の粒子径が小さいほど、光の散乱を起こし難くなるため、ヘイズを上昇させることなく、コート層表面に凹凸を作成することが可能となり、視認性の高いコート層を得ることができる。
上記「BET法による比表面積」は、測定対象のサンプルを1kPa以下の真空下において150℃の温度で2時間以上乾燥させ、その後、液体窒素温度における窒素の吸着側のみの吸着等温線を測定し、該吸着等温線をBET法により解析して求めた値であって、その際の解析に用いる圧力範囲は、相対圧0.1〜0.25の範囲である。
本発明の防眩性付与剤は、BJH法による細孔容積が、3〜8mL/gであって、好ましくは3〜7mL/g、より好ましくは3.5〜6mL/gである。細孔容積が上記範囲を超えて小さい場合には、重量当たりの防眩効果が小さくなるため、十分な防眩効果を得るためには添加量を増加する必要がある。しかしながら、添加量が増加すると添加したコート層の耐擦傷性の低下や、画面の白ボケを招いてしまう。
また、細孔容積が、上記範囲を超えて大きいシリカ系エアロゲルを得ることは難しく、得られた場合でも、細孔構造を形成する骨組みの強度が小さくなるため、樹脂に分散させる際の負荷等により細孔が潰れるおそれがある。
上記「BJH法による細孔容積」は、測定対象のサンプルを、1kPa以下の真空下において、150℃の温度で2時間以上乾燥させ、その後液体窒素温度における窒素の吸着剤のみの吸着等温線を取得し、BJH法(Barrett,E.P.;Joyner,L.G.;Halenda,P.P.,J.Am.Chem.Soc.73,373(1951))により解析して得られる細孔半径1nm以上100nm以下の細孔に由来する細孔容積である。
本発明の防眩性付与剤はBJH法による細孔半径のピークが、10〜50nmであって、好ましくは10〜40nm、より好ましくは、12〜30nmである。 上記BJH法による細孔半径のピークは、前述の細孔容積と同様に吸着等温線をBJH法により解析して得られたものであり、細孔半径の対数による累積細孔容積の微分を縦軸にとり細孔半径を横軸にとってプロットした細孔分布曲線(体積分布曲線)が最大のピークをとる細孔半径である。
BJH法による細孔容積、及び細孔半径のピークが上記範囲である本発明の防眩性付与剤は、細孔構造の大きさがほぼ均一となる。即ち、細孔構造を形成する骨組みが強固となり、樹脂に分散させる際の負荷に対して細孔構造を十分に保つことが可能となる。また、上記均一な細孔の間隙に樹脂が浸透することによって、優れた樹脂強度が得られる。
本発明の防眩性付与剤は、コールターカウンター法により測定された粒度分布における体積基準累積50%経(D50)値が、1〜5μmであって、好ましくは1〜4μm、より好ましくは1.5〜3μmである。一般に、粒径が大きいほど防眩効果は大きくなるが、ヘイズ値が増加し、コントラストが低下する。また、大きな粒子ほど樹脂から脱落しやすく、耐擦傷性を低下させる傾向にある。一方で、D50値が上記範囲より小さくなるとフィルム表面、または、樹脂表面の凹凸が可視光の波長よりも小さくなり散乱が起きにくく、防眩効果が小さくなる。
上記D50値は、具体的には、エアロゲル試料0.005gをアルコール(例えば、日本アルコール販売株式会社製商品名「ソルミックスA−7」)50gに加えたものを入れた容器を、超音波洗浄機中にいれ、90Wで3分間分散したものを試料とし、コールターカウンター法によりアパーチャーチューブ50μmを用いて粒度分布を測定し、得られた体積基準の累積50%径である。なお、同様に体積基準累積10%径をD10、体積基準累積90%径をD90と表す。D10は0.7μm以上4μm以下であることが好ましく、0.8μm以上3μm以下であることがより好ましく、0.9μm以上2μm以下であることが更に好ましい。
D90は2μm以上30μm以下であることが好ましく、2.1μm以上20μm以下であることがより好ましく、2.2μm以上10μm以下であることが更に好ましい。一般に、D10/D90の値が大きくなるほど該シリカ系エアロゲルはシャープな粒度分布を有することを意味する。
本発明の防眩性付与剤は、疎水性であることが好ましい。本発明において、上記「疎水性である」とは、水に対して分散しないということを意味する。より具体的には、室温下で、エアロゲル1gをイオン交換水100gと共に容器に入れ十数秒間振とう又は攪拌した後、静置するとシリカ系エアロゲル相と水相とに完全に分離することをいう。
本発明の防眩性付与剤の疎水化度は、特に制限されないが、好ましくは10〜70であり、より好ましくは12〜70であり、更に好ましくは、12〜68である。一般に、疎水化度が大きいほど吸湿現象が起こりにくく、また、樹脂との馴染みがよく、分散性に優れるという傾向がある。
なお、本発明における疎水化度の測定方法は、以下のとおりである。疎水性無機酸化物粒子である試料粉末0.2gを、50mLの水が入った容量250mLのビーカーに加え、マグネチックスターラーにより攪拌する。ここに、ビュレットを使用してメタノールを試料粉末に直接接触しないように添加し、試料粉末の全量が溶液中に分散し懸濁したところを終点として滴定する。終点におけるメタノール−水混合溶媒中のメタノールの容量百分率(%)を疎水化度とする。
本発明の防眩性付与剤の形状は、特に限定されず、不定形でも、球状でもよいが、一般に、球状の方が嵩密度が大きい為、樹脂に分散しやすく、ハンドリング性に優れる傾向がある。また、同等の粒度分布を有する不定形のシリカ系エアロゲルを防眩性付与剤として用いた場合と比較すると、防眩性については同等であるが、球状の方が内部散乱が少ない、すなわち、平行透過光が多い為、ヘイズが低いコート層を得ることができる。
上記球状のシリカ系エアロゲルの円形度は特に限定されないが、0.8以上であることが、光透過性を向上させる上で好ましい。なお、円形度は、2000個以上のシリカエアロゲル粒子について、SEMにより観察したSEM像を画像解析して得られる円形度の相加平均値であり、下記式(1)により求めることができる。
C=4πS/L (1)
式(1)において、Cは円形度を表す。Sは、当該シリカエアロゲル粒子が画像中に占める面積(投影面積)を表す。Lは画像中における当該シリカエアロゲル粒子の外周部の長さ(周囲長)を表す。
本発明において、上記シリカ系エアロゲルの製造方法は、特に限定されない。例えば、特開平10−236817号等に開示されている超臨界乾燥法や、特開2013−203804号等に開示されている常圧乾燥法等が挙げられる。常圧乾燥法のなかでも、特許第4960534号に開示されている方法によれば、球状のシリカ系エアロゲルを製造することができる。これら方法により得られたシリカ系エアロゲルを、そのまま用いてもよいし、上記好ましい大きさに粉砕して用いてもよい。
本願発明の防眩性付与剤を分散させる樹脂は、屈折率が1.44〜1.57であって、好ましくは1.44〜1.56であり、より好ましくは、1.44〜1.53である。本発明の防眩性付与剤の屈折率は、1.44〜1.50の範囲であり、樹脂の屈折率が上記範囲を超えて外れる場合には、樹脂と防眩性付与剤との屈折率の差が大きくなりすぎるため、コート層のヘイズ値が増加し、コントラストが小さくなる。
上記樹脂の屈折率は、液浸法により求めることができる。液浸法とは、粒子と液体の屈折率が異なると、粒子の境界で乱反射が起こり、目視で粒子の存在を確認できるが、粒子と液の屈折率が一致した場合、乱反射が消滅し、粒子が見えなくなるため、このときの液体の屈折率を粒子の屈折率として求める方法である。
具体的には、まず、屈折率が、対象樹脂の予測される屈折率の±0.02の範囲を、0.01刻みで調整された液を作成し、各々スクリュー管瓶に入れる。次に、粒子状にした対象樹脂の試料を作成し、上記スクリュー管瓶に、各々1%程度づつ加え、試料を液中に十分に分散させる。得られた分散液を、25℃で目視にて観察し、最も透明な液の屈折率を樹脂の屈折率とする。
本願発明の樹脂は、屈折率が上記範囲であれば、特に限定されないが、熱や電離放射線で硬化する硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。上記硬化性樹脂として、具体的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
また、上記熱可塑性樹脂として、具体的には、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニル系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
上記樹脂のうち、透明性に優れていることから、アクリル系の樹脂が好適に用いられる。
本発明は、上記樹脂を含有する樹脂組成物中に本発明の防眩性付与剤を分散させた防眩性付与塗料である。該防眩性付与塗料は、たとえば、基材となる透明なフィルムの上に塗布することによって防眩性を有するコート層を形成するものである。
上記樹脂組成物は、主に前述の樹脂と希釈用の溶剤からなる。前記希釈用の溶剤は、前述のとおり防眩性付与塗料を基材のフィルム上に塗布するに際して、均一な厚みで塗布するために粘度を調整するものであり、揮発性を有するものが好ましい。溶剤の種類は、特に限定されないが、用いる樹脂との相溶性を勘案して選択すればよく、具体的には、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、シクロヘキサノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。これらは、単独、または、2種類以上を混合して使用することができる。
上記溶剤の量は、前述のとおり、適当な粘度に調整できればよいのであって、特に限定されないが、樹脂100重量部に対して、20〜400重量部とすることが好ましい。
上記防眩性付与塗料において、本発明の防眩性付与剤が上記樹脂を含有する樹脂組成物中に分散していればよく、防眩性付与剤の添加量は、上記樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、更には、0.5〜5重量部であることが好ましい。この範囲を超えて小さい場合には、防眩性を付与する効果が小さくなり、この範囲を超えて大きい場合には、ヘイズ値が高くなる。
また、目的に応じて、上記樹脂組成物に、硬化剤、可塑剤、顔料、染料、重合安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤および難燃剤等の添加剤を充填することができる。
上記硬化剤は、特に限定されず、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン類等、使用する樹脂の種類に応じて公知のものを使用することができる。該硬化剤は、単独、又は混合して用いることができる。該硬化剤の添加量は特に限定されず、樹脂の種類、及び硬化剤の種類を鑑みて決定されればよいが、前記樹脂100重量部に対して、0.5〜10重量部であることが好ましい。
その他添加剤についても、特に限定されず、目的、及び使用する樹脂の種類に応じて、公知のものを使用することができる。
本発明は、基材フィルム上に上記防眩性付与塗料を塗布した後、該塗料層を硬化することにより、形成されたコート層である。本発明において、基材フィルム上に、上記塗料を塗布する手段は特に限定されず、具体的には、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法等を適宜用いることができる。塗布する量は、硬化後のコート層の厚みが、所望の厚みとなるよう、適宜調整すればよい。
基材フィルム上に塗布した後、該塗料層を硬化することにより、強靱なコート層が形成される。硬化の方法特に限定されず、樹脂の種類に応じて、加熱または、電離放射線の照射等が挙げられる。また、硬化させる前に、予め加熱乾燥等により、溶剤の少なくとも一部を揮発させて除去することもできる。
斯様にして得られる本発明の防眩性付与コート層は、厚みが5〜30μmであり、好ましくは、5〜25であり、より好ましくは、5〜20である。コート層の厚みが上記範囲より薄くなると、防眩性付与剤が脱落し易くなり、上記範囲より厚くなると、フィルムの単位表面積あたりの防眩性付与剤の添加量が増加するため、ヘイズが高くなる傾向にある。
本発明の防眩性付与コート層において、単位面積当たりのシリカ系エアロゲルの含有量が、0.070〜19g/mであり、好ましくは、0.070〜16g/mであり、より好ましくは、0.070〜13g/mである。上記範囲を超えて小さい場合には、防眩性が低くなり、上記範囲を超えて大きい場合には、ヘイズが高くなる傾向にある。
本発明において、上記基材フィルムは透明性を有するフィルムであれば特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート等のポリエステル系のフィルムを好適に用いることができる。
以下、本発明を具体的に説明するため、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
以下実施例、比較例で評価に用いる各物性の評価方法は以下の通りである。
(粒度分布)
まず、粒度分布については、日本アルコール販売株式会社製のソルミックスA−7(標準組成:エタノール85.5%、プロピルアルコール9.6%、メタノール4.9%、水0.2%)50gに試料を0.005g添加したものを、日本エマソン株式会社製の超音波洗浄機B1510J‐MTを用いて3分間分散して測定試料を作成した。該測定試料をベックマン・コールター株式会社製、マルチサイザーIIIを用い、アパーチャーチューブ50μmにより、粒度分布の測定を行った。なお、上記分散時間に関して、分散時間が1、3、5分でそれぞれのD50の値が0.1μm以上変化しないことを確認した。
(光学特性評価試料の作成方法)
アクリル系塗料(日本ペイント株式会社製ニッペアクリルオートクリア―、屈折率1.49)に各条件に応じて防眩性付与剤を添加した。
その後、撹拌機で1000rpm、5分間撹拌後、脱泡器(IWAKI KM Shaker、イワキ産業製、V−SX、150SPM)で2時間脱泡させ、防眩性付与塗料を得た。得られた防眩性付与塗料を、塗布器(PI−1210 FILM COATER、テスター産業株式会社製)とドクターブレード(塗布厚3MIL、上島製作所株式会社製)を用いて、厚み100μmのPETフィルム上に塗布し、25℃で20分間乾燥させた後、更に60℃で20分間乾燥させて、塗膜を作成し、光学特性評価試料とした。
(ヘイズ値)
ヘイズ値、全光透過率:JIS K7136(ISO14782)、JIS K7361−1(ISO13468−1)に準じて測定した。
(グロス値)
また、防眩効果を確認するために、JIS Z 8741に準ずる方法で確認した。具体的には、光沢度計(NIPPON DENSHOKU製、Gloss Meter UG2000)を用い、入射角60度のときの光沢度(グロス値)を評価した。
<実施例1>
以下の条件でエアロゲルを作製した。
3号ケイ酸ソーダ(JIS K1408)をSiO2濃度が16.5g/100mLになるまで希釈し、このケイ酸ソーダと硫酸(9.5g/100mL)を室温で混合反応させ、シリカゾル(SiO2濃度が8%、pH2)1000mlを製造した。前記シリカゾルに、3号ケイ酸ソーダをSiO2濃度が8%に希釈したものを添加してpH5.8として、ゲル化させ、40℃のウォータバスにて90分熟成した。その後、2mmの網を通して粉砕したゲルを通液カラムに入れ、導電率100μS以下まで通水し、ゲルの洗浄を行った。その後、通液カラムにて、水分濃度0.2wt%以下までエタノールで置換し、更にエタノール濃度0.1wt%以下までトルエンで置換した。
得られたトルエンを分散媒としたゲルを2000mlのガラス容器に入れ、疎水化剤としてDMDCSを60g加え、60℃で6時間撹拌反応させた。反応後、ゲルを吸引濾過により濾別し、常圧、窒素雰囲気下、120℃で12時間乾燥させて粗エアロゲルを得た。上記粗エアロゲル1gを水100mLのビーカーに入れ、数十秒間撹拌した後、静置し、エアロゲル相と水相とに完全に分離することを確認した。
得られたエアロゲル(以下、粗エアロゲル)は、比表面積が576m2/g、細孔容積が4.2cm/g、細孔半径のピークが26nm、疎水化度50であった。
上記粗エアロゲルを、ジェットミル(セイシン企業株式会社製、STJ−100)を用いて、フィード圧とミル圧は共に0.64MPa、1.2m/minの圧縮空気を用い、原体の供給量は24g/min、単位風量当たり20g/mで粉砕した。
得られた不定形のエアロゲル(以下、エアロゲルB)は、D50が2.7μm、D10が1.4μm、D90が4.2μmであった。
上記エアロゲルBを再度上記条件で粉砕し、D50が1.8μm、D10が1.2μm、D90が2.6μmのエアロゲル(以下、エアロゲルA)を得た。
得られたエアロゲルAを、乾燥後の塗膜中におけるエアロゲル濃度が2.1wt%になるように前記アクリル系塗料に添加し、前記方法で塗膜を作成し光学特性を評価したところ、得られた塗膜は、厚み16μmであり、ヘイズ値13、グロス値82であった。
<実施例2>
実施例1で得られたエアロゲルBを、実施例1と同様にアクリル系塗料に添加し、前記方法で塗膜を作成し光学特性を評価したところ、得られた塗膜は、厚み16μmであり、ヘイズ値19、グロス値60であった。
<実施例3>
常圧乾燥法により得られた、疎水性の球状シリカエアロゲル粒子を実施例1と同様にアクリル系塗料に添加し、前記方法で塗膜を作成し光学特性を評価した。上記疎水性の球状シリカエアロゲルの物性値は、比表面積が637m2/g、細孔容積が3.8cm/g、細孔半径のピークが18nm、疎水化度50、円形度が0.93であった。得られた塗膜は、厚み16μmであり、ヘイズ値17、グロス値59であった
<比較例1>
シリカエアロゲルAをB社製アクリル樹脂ビーズ(D50が3.0μm、D10が2.2μm、D90が5.4μm)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で塗膜を作成し評価した。得られた塗膜は、厚み16μmであり、ヘイズ値12、グロス値103であった。
<比較例2>
シリカエアロゲルAをA社製シリコーン系ビーズ(D50が2.0μm、D10が1.7μm、D90が3.0μm)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で塗膜を作成し評価した。得られた塗膜は、厚み16μmであり、ヘイズ値14、グロス値116であった。
<実施例4>
エアロゲルAを、乾燥後の塗膜のグロス値が50%になるように添加量を調整した以外は、実施例1と同様の方法で塗膜を作成し評価を行った。得られた塗膜は、厚み16μmであり、ヘイズ値は22で、乾燥後の塗膜中におけるエアロゲル濃度は3.6wt%であった。
<実施例5>
エアロゲルAをエアロゲルBに変更した以外は、実施例4と同様の方法で塗膜評価を行った。得られた塗膜は、厚み16μmであり、ヘイズ値は25で、乾燥後の塗膜中におけるエアロゲル濃度は2.5wt%であった。
<比較例3>
エアロゲルAをB社製アクリル樹脂ビーズに変更した以外は、実施例4と同様の方法で塗膜評価を行った。得られた塗膜は、厚み16μmであり、ヘイズ値は28で、乾燥後の塗膜中におけるアクリル樹脂ビーズ濃度は6.7wt%だった。
<比較例4>
エアロゲルAをA社製シリコーン系ビーズに変更した以外は、実施例4と同様の方法で塗膜評価を行った。得られた塗膜は、厚み16μmであり、ヘイズ値は48で、乾燥後の塗膜中におけるシリコーン系ビーズ濃度は11.2wt%だった。
以下の表1に防眩性付与剤として添加した添加剤特性、表2に添加量を2.1wt%(塗膜固形分に対する)に揃えた時の塗膜特性、表3にグロス値を50%に揃えた時の添加量と塗膜特性を纏めて記した。
Figure 0006328006
Figure 0006328006
Figure 0006328006

Claims (8)

  1. BET法による比表面積が400〜1000m/gであり、BJH法による細孔容積及び細孔半径のピークが各々3〜8ml/g、10〜50nmであり、コールターカウンター法により測定された粒度分布における体積基準累積50%径(D50)値が1〜5μmであるシリカ系エアロゲルからなり、屈折率が1.44〜1.57の樹脂に分散させて使用されることを特徴とする防眩性付与剤。
  2. 前記シリカ系エアロゲルが疎水性である請求項1記載の防眩性付与剤。
  3. 前記シリカ系エアロゲルが球状である請求項1または2に記載の防眩性付与剤。
  4. 前記屈折率が1.44〜1.57の樹脂がアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の防眩性付与剤。
  5. 前記屈折率が1.44〜1.57の樹脂を含有する樹脂組成物中に、請求項1〜3のいずれか一項に記載の防眩性付与剤が分散されてなることを特徴とする防眩性付与塗料。
  6. 前記樹脂組成物中のシリカ系エアロゲルの含有量が、前記樹脂組成物に含まれる、屈折率が1.44〜1.57の樹脂100質量部に対し、0.2〜25.0質量部であることを特徴とする請求項5記載の防眩性付与塗料。
  7. 前記屈折率が1.44〜1.57の樹脂がアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項5または6に記載の防眩性付与塗料。
  8. 基材フィルム上に請求項5〜7のいずれか1項に記載の防眩性付与塗料を塗布した後、硬化することにより形成されたコート層であって、該コート層の厚みが5〜30μmであり、単位面積当たりのシリカ系エアロゲルの含有量が、0.070〜19g/mである防眩性付与コート層。
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