JP6327989B2 - 回転機 - Google Patents
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Description
近年、回転機を軽量化するために、固定子巻線を、銅線よりも安価で比重が小さいアルミニウムを含む材料(アルミニウム合金)で形成することが検討されている。
固定子巻線がアルミニウムを含む材料で形成されている場合、銅を含む材料で形成されている電源線が使用されているため、アルミニウムを含む材料で形成されている固定子巻線と銅を含む材料で形成されている電源線を接続することになる。ここで、アルミニウムを含む材料は、銅を含む材料に較べ、イオン化傾向(水溶液中における陽イオンへのなりやすさ)が大きい。このため、アルミニウムを含む材料で形成されている固定子巻線と銅を含む材料で形成されている電源線が直接接触すると、異種金属接触によりアルミニウムが銅にイオンを放出して固定子巻線が腐食する(「電食」あるいは「異種金属腐食」と呼ばれている)。
そこで、従来、特許文献1、2に開示されているように、アルミニウムを含む材料で形成されている固定子巻線と銅を含む材料で形成されている電力線を、直接接触を防止しながら接続するように構成した接続端子を用いる技術が提案されている。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、異種金属の接続構造を考慮することなく、電源線と異なる材料で固定子巻線を形成することができる技術を提供することを目的とする。
第一の発明の回転機は、相対移動可能に配置された固定子と回転子を備え、固定子は、電源線を介して電流が供給される複数の固定子巻線を有している。
各固定子巻線は、複数の分割固定子巻線により構成されている。典型的には、各固定子巻線を構成する複数の分割固定子巻線は、並列に接続される。
各固定子巻線の複数の分割固定子巻線の一方側の端部が共通接続されて共通接続部が形成されている。共通接続部は、好適には、各固定子巻線の複数の分割固定子巻線の一方側の端部を、絶縁被膜を除去した状態で束ね、周方向に沿って捩った後、溶接することによって形成される。各固定子巻線の複数の分割固定子巻線の他方側の端部は、電源線に接続される。
固定子巻線の数、各固定子巻線の分割固定子巻線の数、電源線の数、分割固定子巻線と電源線との接続方法等は、適宜選択される。
本発明では、各固定子巻線の複数の分割固定子巻線のうちの少なくとも一つの分割固定子巻線(各固定子巻線において、少なくとも一つの分割固定子巻線)は、電源線を形成する材料(金属)および各固定子巻線の複数の分割固定子巻線のうちの残りの分割固定子巻線(各固定子巻線において、少なくとも一つの分割固定子巻線以外の分割固定子巻線)を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料(金属)により形成されている。
イオン化傾向が異なる複数の金属を接触させると、よりイオン化傾向が大きい金属が電食(腐食)する。本発明では、イオン化傾向が大きい、各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線の電食を防止するために、共通接続部に電食防止部を設けている。
電食防止部は、各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料により形成されている。電食防止部を共通接続部に設ける方法としては、電食防止部の少なくとも一部を、共通接続部に接触させることができる種々の方法を用いることができる。例えば、電食部防止部を、共通接続部の外周に螺旋状に巻き付ける(必要があれば、さらに溶接する)方法を用いることができる。あるいは、電食防止部を、共通接続部の外周を覆うように配置した状態で、電食防止部の内周面によって共通接続部が挟持されるように、電食防止部の外周を押圧する(必要があれば、さらに溶接する)方法を用いることができる。あるいは、共通接続部の外周面を、薄膜状の電食防止部で被覆する(メッキする)方法を用いることもできる。
なお、本発明では、電食防止部によって各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線の電食が防止されているため、各固定子巻線の複数の分割固定子巻線の他方側の端部と電源線との接続方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、公知の接続端子を用いて接続する方法や、溶接や圧着等によって接続する方法等を用いることができる。
本発明では、各固定子巻線の複数の分割固定子巻線の一方側の端部を共通接続した共通接続部に、各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料で形成される電食防止部を設けている。これにより、各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線が電食する代わりに電食防止部が電食するため、各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線の電食を抑制することができる。
また、各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線と残りの分割固定子巻線が、イオン化傾向が異なる材料により形成されている場合、従来では、少なくとも一つの分割固定子巻線の一方側の端部と残りの分割固定子巻線の一方側の端部を別々に接続する必要があったが、本発明では、少なくとも一つの分割固定子巻線の一方側の端部と残りの分割固定子巻線の一方側の端部を共通に接続することができる。これにより、分割固定子巻線の結線作業が容易である。さらに、少なくとも一つの分割固定子巻線の一方側の端部と残りの分割固定子巻線の一方側の端部を共通に接続することにより、少なくとも一つの分割固定子巻線の一方側の端部と残りの分割固定子巻線の一方側の端部との間の電位差がなくなり、この電位差による漏れ電流の発生を防止することができる。
また、各固定子巻線の複数の分割固定子巻線の一方側の端部を共通接続した共通接続部に電食防止部を設けているため、電食防止部を形成する材料の量や電食防止部と共通接続部との接触面積を確保することができる。これにより、電食防止部を形成する材料が電食する期間を長くすることができるため、電食防止部を取り替えることなく固定子巻線の電食を長期間にわたって抑制することができる。
第一の発明の異なる形態では、固定子巻線は、第一の相、第二の相および第三の相の固定子巻線により構成され、電源線は、第一の相、第二の相および第三の相の電源線により構成されている。そして、第一〜第三の相の固定子巻線それぞれの複数の分割固定子巻線の一方側の端部が接続されて中性点用接続部が形成され、第一〜第三の相の固定子巻線それぞれの複数の分割固定子巻線の他方側の端部が、それぞれ第一〜第三の相の電源線に接続される。
本形態では、電源線を形成する材料および各相の固定子巻線の残りの分割固定子巻線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料により形成された各相の固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線がスター結線されているとともに、各固定子巻線の残りの分割固定子巻線がスター結線された、多重スター結線構造の三相の回転機として構成される。各相の固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線によるスター結線や、各相の固定子巻線の残りの分割固定子巻線によるスター結線は、一重でもよいし、多重でもよい。
第一の発明の他の異なる形態では、共通接続部は絶縁部材で覆われている。絶縁部材としては、公知の種々の絶縁部材を用いることができる。例えば、絶縁樹脂を筒状に形成した絶縁部材や、絶縁フィルムを巻いて筒状に形成した絶縁部材を用いることができる。
本形態では、共通接続部を絶縁部材で覆っているため、共通接続部が他の部材と接触するのを防止することができる。
各固定子巻線は、複数の分割固定子巻線により構成されている。
各固定子巻線の複数の分割固定子巻線のうちの少なくとも一つの分割固定子巻線の一方側の端部が共通接続されて第一の共通接続部が形成され、各固定子巻線の複数の分割固定子巻線のうちの残りの分割固定子巻線の一方側の端部が共通接続されて第二の共通接続部が形成されている。各固定子巻線の複数の分割固定子巻線の他方側の端部は、電源線に接続される。
各固定子巻線の複数の分割固定子巻線のうちの少なくとも一つの分割固定子巻線は、電源線を形成する材料(金属)および各固定子巻線の複数の分割固定子巻線のうちの残りの分割固定子巻線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料(金属)により形成されている。
本発明では、イオン化傾向が大きい、各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線の電食を防止するために、第一の共通接続部に電食防止部を設けている。
電食防止部は、各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料により形成されている。
本発明では、各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線の一方側の端部を共通接続した第一の共通接続部に、各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料で形成される電食防止部を設けている。これにより、各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線の電食をより確実に抑制することができる。
第二の発明の異なる形態では、固定子巻線は、第一の相、第二の相および第三の相の固定子巻線により構成され、電源線は、第一の相、第二の相および第三の相の電源線により構成されている。そして、第一〜第三の相の固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線の一方側の端部が接続されて第一の中性点用接続部が形成され、第一〜第三の相の固定子巻線の残りの分割固定子巻線の一方側の端部が接続されて第二の中性点用接続部が形成され、第一〜第三の相の固定子巻線それぞれの複数の分割固定子巻線の他方側の端部が、それぞれ第一〜第三の相の電源線に接続される。
本形態では、電源線を形成する材料および各相の固定子巻線の残りの分割固定子巻線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料により形成された各相の固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線がスター結線されているとともに、各固定子巻線の残りの分割固定子巻線がスター結線された、多重スター結線構造の三相の回転機として構成される。
第二の発明の他の異なる形態では、第一の共通接続部および第二の共通接続部は絶縁部材で覆われている。絶縁部材としては、前述した絶縁部材を用いることができる。
本形態では、第一の共通接続部および第二の共通接続部を絶縁部材で覆っているため、第一の共通接続部および第二の共通接続部が他の部材と接触するのを防止することができる。
これにより、イオン化傾向が大きい材料で固定子巻線を形成した場合の利点とイオン化傾向が小さい材料で固定子巻線を形成した場合の利点を有する回転機を構成することができる。
各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線を、アルミニウムを含む材料(アルミニウム合金)で形成することにより、固定子巻線、従って回転機を安価で軽量に製造することができる。
第一の発明および第二の発明の他の異なる形態では、各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線の他方側の端部は、リード線を介して電源線に接続される。リード線は、分割固定子巻線を電源線に接続するために引き出される線である。リード線は、各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線を形成する材料より小さいイオン化傾向を有する材料により形成されている。
なお、好適には、各固定子巻線の残りの分割固定子巻線の他方側の端部も、リード線を介して電源線に接続される。
分割固定子巻線の他方側の端部をリード線の一方側の端部に接続する方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、溶接や圧着等によって接続する方法を用いることができる。また、リード線の他方側の端部を電源線に接続する方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、公知の接続端子を用いて接続する方法、溶接や圧着等によって接続する方法を用いることができる。
本形態では、分割固定子巻線の他方側の端部を引き回す必要がないため、分割固定子巻線の他方側の端部の配線作業が容易となる。
第一の発明および第二の発明の他の異なる形態では、リード線は、銅を含む材料により形成されている。
本実施の形態の電動機100は、相対移動可能に配置された固定子と回転子(図示省略)を備えている。
固定子は、三相(U相、V相、W相)の固定子巻線を有している。また、各相の固定子巻線は、複数の分割固定子巻線により構成されている。例えば、U相の固定子巻線は、複数の分割固定子巻線111と131により構成され、V相の固定子巻線は、複数の分割固定子巻線112と132により構成され、W相の固定子巻線は、複数の分割固定子巻線113と133により構成されている。図では、各相の複数の分割固定子巻線111、112、113および131、132、133を一つの巻線で表しているが、複数の巻線により構成することもできる。
本実施の形態では、各相の固定子巻線の複数の分割固定子巻線111、112、113および131、132、133のうち少なくとも一つの分割固定子巻線111、112、113は、アルミニウムを含む材料(アルミニウム合金)により形成され、残りの分割固定子巻線131、132、133は、銅を含む材料により形成されている。
しかしながら、アルミニウムを含む材料は抵抗値が大きいため、アルミニウムを含む材料で固定子巻線を形成した場合には、電動機のサイズが大きくなる。
一方、銅を含む材料は、アルミニウムを含む材料に較べて抵抗値が小さいため、銅を含む材料で固定子巻線を形成することにより、電動機のサイズを小さくすることができる。
しかしながら、銅を含む材料は、アルミニウムを含む材料に較べて高価であり比重が大きい。このため、銅を含む材料で固定子巻線を形成した場合には、アルミニウムを含む材料で形成した場合に較べて、電動機が高価であり、重い。
本実施の形態では、各相の固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線をアルミニウムを含む材料で形成し、残りの分割固定子巻線を銅を含む材料で形成しているため、アルミニウムを含む材料で固定子巻線を形成した場合の利点と、銅を含む材料で固定子巻線を形成した場合の利点を有する電動機を得ることができる。
三相(U相、V相、W相)の固定子巻線それぞれを構成する複数の分割固定子巻線111と131、112と132、113と133が、本発明の「各固定子巻線の複数の分割固定子巻線」に対応する。また、分割固定子巻線111、112、113が、本発明の「各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線」に対応し、分割固定子巻線131、132、133が、本発明の「各固定子巻線の残りの分割固定子巻線」に対応する。
また、「アルミニウムを含む材料(アルミニウム合金)」が、本発明の「各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線を形成する材料」に対応する。
本実施の形態では、各分割固定子巻線111、112、113および131、132、133の一方側の端部111a、112a、113aおよび131a、132a、133aを、絶縁被覆を除去した状態で束ね、周方向に沿って捩った後溶接することによって、中性点用接続部151を形成している。中性点用接続部151を形成する方法としては、これ以外の種々の方法を用いることができる。
中性点用接続部151が、本発明の「共通接続部」に対応する。
各相の固定子巻線の複数の分割固定子巻線111、112、113および131、132、133の他方側の端部111b、112b、113bおよび131b、132b、133bは、相毎に接続端子181、182、183の一方側の端子に接続される。
電源回路10の電源端子11、12、13には、三相(R相、S相、T相)の電源線21、22、23の一方側の端部が接続される。各相の電源線21、22、23の他方側の端部は、接続端子181、182、183の他方側の端子に接続される。
各相の電源線21、22、23は、銅を含む材料(金属)で形成されている。
接続端子181、182、183としては、公知の接続端子を用いることができる。また、各相の固定子巻線の複数の分割固定子巻線111、112、113および131、132、133の他方側の端部と電源線21、22、23の他方側の端部を、圧着や溶接等によって直接接続することもできる。
三相(R相、S相、T相)の電源線21、22、23が、本発明の「電源線」に対応する。
また、R相、S相、T相の電源線21、22、23のうちのいずれかが、本発明の「第一の相の電源線」に対応し、残りの2つの電源線のうちの一方が、本発明の「第二の相の電源線」に対応し、他方が、本発明の「第三の相の電源線」に対応する。
また、「銅を含む材料(金属)」が、本発明の「電源線を形成する材料(金属)」および「各固定子巻線の残りの分割固定子巻線を形成する材料(金属)」に対応する。
本実施の形態では、アルミニウムを含む材料で形成されている、各固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線111、112、113の電食を防止するために、中性点用接続部151に電食防止部161を設けている。電食防止部161は、少なくとも一部が中性点用接続部151に接触するように設けられる。
各相の固定子巻線の複数の分割固定子巻線111、112、113および131、132、133の一方側の端部111a、112a,113aおよび131a、132a、133aを共通接続した中性点用接続部151に、各相の固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線111、112、113を形成している、アルミニウムを含む材料より大きいイオン化傾向を有する材料で形成された電食防止部161を設けることにより、分割固定子巻線111、112、113を形成している材料がイオンを放出する前に、電食防止部161を形成している部材がイオンを放出する。すなわち、分割固定子巻線111、112、113が電食する代わりに、電食防止部161が電食する。これにより、アルミニウムを含む材料で形成されている、各相の固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線111、112、113の電食が防止される。
分割固定子巻線111、112、113の電食は電動機100の動作に影響するが、電食防止部161の電食は、電動機100の動作にはほとんど影響しない。
なお、電食防止部161の電食が進行していくと、分割固定子巻線111、112、113が電食を開始する。このため、電食防止部161の電食が進行した場合には、電食防止部161を交換する必要がある。
なお、純粋のアルミニウムは、亜鉛に較べ、イオン化傾向がより大きいが、亜鉛より小さいイオン化傾向を有するアルミニウム合金が開発されている。このため、アルミニウム合金で形成される分割固定子巻線111、112、113に対して、亜鉛で形成される電食防止部161を用いることができる。
また、マグネシウム合金は、亜鉛に較べ、イオン化傾向がより大きい。このため、マグネシウム合金で形成される電食防止部161を用いる場合には、亜鉛で形成される電食防止部161を用いる場合に較べて、イオン化傾向がより大きいアルミニウム合金で固定子巻線111、112、113を形成することができる。これにより、アルミニウムの純度が高いアルミニウム合金で分割固定子巻線111、112、113を形成することができ、価格および重量をより低減することができる。
図2に、電食防止部161を中性点用接続部151に設ける方法の第1の実施の形態が示されている。
図2に示す第1の実施の形態の方法では、糸状あるいは帯状の電食防止部161を、中性点用接続部151の外周に螺旋状に巻き付けている。この時、電食防止部161の少なくとも一部が中性点用接続部151の外周に接触するように巻き付ける。
図3に、電食防止部161を中性点用接続部151に設ける方法の第2の実施の形態が示されている。
図3に示す第2の実施の形態の方法では、中性点用接続部151の周りを覆うように電食防止部161を配置した状態で、電食防止部161の内周面が中性点用接続部151の外周に当接するように電食防止部161を押圧している。例えば、電食防止部161を、長手方向(中性点用接続部151の延在方向)に交差する方向から見て、一部が開口している溝161cを内側に有する形状(略U字状)に形成し、中性点用接続部151を、開口部を介して溝161c内に挿入する。そして、開口部を形成している端部161aと161bが、開口部を閉じる方向に移動するように、電食防止部161の外周を押圧する。
なお、電食防止部161と中性点用接続部151との接触面積が大きくなるように、電食防止部161を中性点用接続部151に設けるのが好ましい。また、必要があれば、電食防止部161を中性点用接続部151の外周に溶接してもよい。
あるいは、中性点用接続部151の外周面を、電食防止部161を形成する材料からなる薄膜によって被覆する(メッキする)方法を用いることもできる。
中性点用接続部151を覆う絶縁部材としては、種々の構成の絶縁部材を用いることができる。例えば、絶縁フィルムを筒状に巻きつけ、一方側の端部を溶接した絶縁部材を用いることができる。あるいは、絶縁樹脂を筒状に形成した絶縁部材を用いることができる。
中性点用接続部151を絶縁部材171によって覆うことにより、中性点用接続部151に他の部材が接触するのを防止することができる。
このため、少なくとも一つの分割固定子巻線111、112、113の他方側の端部111b、112b、113bと電源線21、22、23との接続方法を考慮する必要がない。例えば、少なくとも一つの分割固定子巻線111、112、113の他方側の端部111b、112b、113bと電源線21、22、23を接続する接続端子181、182、183として、残りの分割固定子巻線131、132、133と電源線21、22、23を接続する通常の接続端子を用いることができる。
なお、各固定子巻線の複数の分割固定子巻線111、112、113および131、132、133の他方側の端部111b、112b、113bおよび131b、132b、133bと電源線21、22、23を、圧着や溶接等によって直接接続することもできる。
また、本実施の形態では、各相の固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線111、112、113の一方側の端部111a、112a、113aと残りの分割固定子巻線131、132、133の一方側の端部131a、132a、133aを共通接続しているため、分割固定子巻線の結線作業が容易である。さらに、少なくとも一つの分割固定子巻線111、112、113の一方側の端部111a、112a、113aと残りの分割固定子巻線131、132、133の一方側の端部131a、132a、133aを共通接続していることにより、少なくとも一つの分割固定子巻線111、112、113の一方側の端部111a、112a、113aと残りの分割固定子巻線131、132、133の一方側の端部131a、132a、133aとの間の電位差がなくなり、この電位差による漏れ電流の発生を防止することができる。
本発明の回転機の第2の実施の形態の概略構成を、図4を参照して説明する。
図4に示されている第2の実施の形態の電動機100は、リード線121、122、123および141、142、143が用いられている以外は、図1に示されている第1の実施の形態の電動機100と同様の構成である。
分割固定子巻線111、112、113および131、132、133の他方側の端部111b、112b、113bには、リード線121、122、123および141、142、143の一方側の端部が接続されている。リード線121、122、123および141、142、143の他方側の端部は、接続端子181、182、183の一方側の端子に接続されている。
リード線121、122、123および141、142、143を用いることにより、分割固定子巻線111、112、113および131、132、133の他方側の端部を引き回す必要がなくなる。これにより、分割固定子巻線111、112、113および131、132、133の他方側の端部の配線作業が容易となる。
リード線121、122、123および141、142、143を、分割固定子巻線111、112、113を形成する材料より小さいイオン化傾向を有する材料で形成することにより、リード線121、122、123および141、142、143の電食を考慮する必要がなく、中性点用接続部151に設けた電食防止部161を有効に利用することができる。
本実施の形態では、分割固定子巻線111、112、113および131、132、133の他方側の端部111b、112b、113bおよび131b、132b、133bとリード線121、122、123および141、142、143の一方側の端部を、接続部121a、122a、123aおよび141a、142a、143aで溶接により接続している。勿論、溶接以外の接続方法、例えば、圧着により接続する方法を用いることもできる。
また、リード線121、122、123および141、142、143の他方側の端部と電源線21、22、23との接続は、接続端子181、182、183を用いて行っている。
本発明の回転機の第3の実施の形態の概略構成を、図5を参照して説明する。
図5に示されている第3の実施の形態の電動機200は、分割固定子巻線211、212、213と分割固定子巻線231、232、233を別々に共通接続している以外は、図1に示されている第1の実施の形態の電動機100と同様の構成である。
なお、図5において、下2桁が図1に示されている符号と同じ符号が付されている構成要素は、同じ構成要素を表している。
各相の固定子巻線のうち少なくとも一つの分割固定子巻線211、212、213の一方側の端部211a、212a、213aが共通接続されて第1の中性点用接続部251が形成されている。
また、各相の固定子巻線のうち残りの分割固定子巻線231、232、233の一方側の端部231a、232a、233aが共通接続されて第2の中性点用接続部252が形成されている。
そして、本実施の形態では、第1の中性点用接続部251に電食防止部261が設けられている。
さらに、第1の中性点用接続部251および第2の中性点用接続部252は、それぞれ絶縁部材271および272によって覆われている。
なお、第3の実施の形態においても、第2の実施の形態と同様に、分割固定子巻線211、212、213および231、232、233の他方側の端部をリード線を介して電源線21、22、23に接続することもできる。
例えば、銅を含む材料で固定子巻線を形成した場合における小型化の利点と、アルミニウムを含む材料で固定子巻線を形成した場合におけるコストの低下および軽量化の利点を有する電動機を得ることができる。
また、各固定子巻線の複数の分割固定子巻線(イオン化傾向が大きい材料で形成された少なくとも一つの分割固定子巻線とイオン化傾向が小さい材料で形成され残りの分割固定子巻線)の一方側の端部を共通接続して形成した共通接続部あるいは各固定子巻線の複数の分割固定子巻線のうちよりイオン化傾向が大きい材料で形成された少なくとも一つの分割固定子巻線の一方側の端部を共通接続して形成した第一の共通接続部に、少なくとも一つの分割固定子巻線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料で形成される電食防止部を設けているため、各固定子巻線の複数の分割固定子巻線の他方側の端部と電源線あるいはリード線とを、よりイオン化傾向が大きい材料で形成されている少なくとも一つの固定子巻線の電食を考慮して接続する必要がない。これにより、電動機をより安価に製造することができる。
電源線やリード線を形成する材料は、銅を含む材料に限定されない。また、少なくとも一つの分割固定子巻線を形成する材料は、アルミニウムを含む材料(アルミニウム合金)に限定されず、電源線やリード線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料であればよい。また、電食防止部を形成する材料は、亜鉛を含む材料またはマグネシウムを含む材料(マグネシウム合金)に限定されず、少なくとも一つの分割固定子巻線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料であればよい。
三相の固定子巻線および三相の電源線を用いたが、固定子巻線の相数や電源線の相数は適宜選択可能である。
少なくとも一つの分割固定子巻線および残りの分割固定子巻線は、多重に結線することもできる。
分割固定子巻線をスター結線したが、分割固定子巻線の結線方法はスター結線に限定されない。
分割固定子巻線と電源線との接続方法、分割固定子巻線とリード線との接続方法、リード線と電源線との接続方法としては、少なくとも一つの分割固定子巻線の電食を考慮することなく、公知の種々の接続方法を用いることができる。
本発明の回転機は、電動機に限定されず、発電機等として構成することもできる。
例えば、イオン化傾向が大きい材料で形成される、各相の固定子巻線の少なくとも一つの分割固定子巻線をデルタ結線し、デルタ結線した分割固定子巻線のうちの少なくとも一つの分割固定子巻線の少なくとも一部に、当該分割固定子巻線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料で形成される電食防止部を設けてもよい。
あるいは、主巻線と補助巻線により構成される単相電動機において、主巻線と補助巻線の少なくとも一方を、電源線あるいはリード線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料で形成し、主巻線と補助巻線の少なくとも一方の少なくとも一部に、主巻線と補助巻線の少なくとも一方を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料で形成される電食防止部を設けてもよい。
このように構成した場合でも、イオン化傾向が大きい材料で形成されている分割固定子巻線あるいは主巻線と補助巻線のうちの少なくとも一方と、電源線やリード線との接続方法として、イオン化傾向が大きい材料で形成されている分割固定子巻線あるいは主巻線と補助巻線のうちの少なくとも一方の電食を考慮することなく、公知の種々の接続方法を用いることができる。
本発明は、
「相対移動可能に配置された固定子と回転子を備え、前記固定子は、電源線を介して電流が供給される少なくとも二つの固定子巻線を有している回転機であって、
前記少なくとも二つの固定子巻線のうちの少なくとも一方は、前記電源線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料により形成され、
前記少なくとも二つの固定子巻線のうちの前記少なくとも一方には、電食防止部が設けられ、
前記電食防止部は、前記少なくとも二つの固定子巻線のうちの少なくとも一方を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料により形成されていることを特徴とする回転機。」
として構成することができる。
11、21、31 電源端子
21、22、23 電源線
100、200電動機
111、112、113、131、132、133、211、212、213、231、232、233 分割固定子巻線
111a、112a、113a、131a、132a、133a、211a、212a、213a、231a、232a、233a 分割固定子巻線の一方側の端部
111b、112b、113b、131b、132b、133b、211b、212b、213b、231b、232b、233b 分割固定子巻線の他方側の端部
121、122、123、141、142、143 リード線
151、251、252 中性点用接続部
161、261 電食防止部
161a、161b 端部
161c 溝
171、271、272 絶縁部材
181、182、183 接続端子
Claims (9)
- 相対移動可能に配置された固定子と回転子を備え、前記固定子は、電源線を介して電流が供給される複数の固定子巻線を有している回転機であって、
前記複数の固定子巻線は、それぞれ複数の分割固定子巻線により構成され、
前記各固定子巻線の前記複数の分割固定子巻線の一方側の端部が共通接続されて共通接続部が形成され、
前記各固定子巻線の前記複数の分割固定子巻線の他方側の端部は、前記電源線に接続され、
前記共通接続部には、電食防止部が設けられており、
前記各固定子巻線の前記複数の分割固定子巻線のうちの少なくとも一つの分割固定子巻線は、前記電源線を形成する材料および前記各固定子巻線の前記複数の分割固定子巻線のうちの残りの分割固定子巻線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料により形成され、
前記電食防止部は、前記少なくとも一つの分割固定子巻線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料により形成されていることを特徴とする回転機。 - 請求項1に記載の回転機であって、
前記固定子巻線は、第一の相、第二の相および第三の相の固定子巻線により構成され、
前記電源線は、第一の相、第二の相および第三の相の電源線により構成され、
前記第一〜第三の相の固定子巻線それぞれの前記複数の分割固定子巻線の一方側の端部が共通接続されて中性点用接続部が形成され、
前記第一〜第三の相の固定子巻線それぞれの前記複数の分割固定子巻線の他方側の端部は、それぞれ前記第一〜第三の相の電源線に接続されていることを特徴とする回転機。 - 請求項1または2に記載の回転機であって、
前記共通接続部は絶縁部材で覆われていることを特徴とする回転機。 - 相対移動可能に配置された固定子と回転子を備え、前記固定子は、電源線を介して電流が供給される複数の固定子巻線を有している回転機であって、
前記複数の固定子巻線は、それぞれ複数の分割固定子巻線により構成され、
前記各固定子巻線の前記複数の分割固定子巻線のうちの少なくとも一つの分割固定子巻線の一方側の端部が共通接続されて第一の共通接続部が形成され、
前記各固定子巻線の前記複数の分割固定子巻線のうちの残りの分割固定子巻線の一方側の端部が共通接続されて第二の共通接続部が形成され、
前記各固定子巻線の前記複数の分割固定子巻線の他方側の端部は、前記電源線に接続され、
前記第1の共通接続部には、電食防止部が設けられており、
前記少なくとも一つの分割固定子巻線は、前記電源線を形成する材料および前記残りの分割固定子巻線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料により形成され、
前記電食防止部は、前記少なくとも一つの分割固定子巻線を形成する材料より大きいイオン化傾向を有する材料により形成されていることを特徴とする回転機。 - 請求項4に記載の回転機であって、
前記固定子巻線は、第一の相、第二の相および第三の相の固定子巻線により構成され、
前記電源線は、第一の相、第二の相および第三の相の電源線により構成され、
前記第一〜第三の相の固定子巻線それぞれの前記複数の分割固定子巻線のうちの少なくとも一つの分割固定子巻線の一方側の端部が共通接続されて第一の中性点接続部が形成され、
前記第一〜第三の相の固定子巻線それぞれの前記複数の分割固定子巻線のうちの残りの分割固定子巻線の一方側の端部が共通接続されて第二の中性点接続部が形成され、
前記第一〜第三の相の固定子巻線それぞれの前記複数の分割固定子巻線の他方側の端部は、それぞれ前記第一〜第三の相の電源線に接続されていることを特徴とする回転機。 - 請求項4または5に記載の回転機であって、
前記第一の共通接続部および前記第二の共通接続部は絶縁部材で覆われていることを特徴とする回転機。 - 請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の回転機であって、
前記少なくとも一つの分割固定子巻線は、アルミニウムを含む材料により形成され、前記電源線および前記残りの分割固定子巻線は、銅を含む材料により形成され、前記電食防止部は、亜鉛またはマグネシウムを含む材料により形成されていることを特徴とする回転機。 - 請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の回転機であって、
前記少なくとも一つの分割固定子巻線の他方側の端部は、リード線を介して前記電源線に接続されており、
前記リード線は、前記少なくとも一つの分割固定子巻線を形成する材料より小さいイオン化傾向を有する材料により形成されていることを特徴とする回転機。 - 請求項8に記載の回転機であって、
前記リード線は、銅を含む材料により形成されていることを特徴とする回転機。
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