JP6327909B2 - 硫化物系ガス吸着用樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、硫化物系のガスを吸着する吸着剤を含む硫化物系ガス吸着用樹脂組成物及びその成形体に関する。
硫化物系のガス、例えば硫化水素、メルカプタン等は、引火性及び毒性を有する有害なガスであり、また微量であっても刺激臭をもたらす。さらに、これらは高い腐食性を有するため、これらが発生する機器等では腐食等の問題が生じる場合がある。
例えば硫化物系固体電解質を用いる全固体型リチウム電池では、硫化物系固体電解質が水分と接触することで内部に硫化水素が発生し、その性能が著しく劣化するという問題がある。
LED機器においても、LED素子及び周辺部材(特に銀のリフレクタ部品)が腐食し、初期出力が長期にわたって低下し、かつ/又は色味が変化するという問題がある。また、硫化物系ガスの発生する工場内では、生産機械を制御するための回路基板等の金属部材、例えば銀又は銅の端子が腐食して、断線やショートが起こりやすくなるという問題がある。このような問題は、表示装置や通信機の内部でも発生することがあり、これらでは銅、銀等の金属部材が用いられているため、硫化物系ガスが存在する場所では腐食する。さらに、硫化物系ガスの濃度が高い下水道、排水処理施設等でも、金属部材やコンクリート材が腐食して劣化するという問題が起こりうる。
このような問題に対処するために、例えば特許文献1では、硫化物系固体電解質を用いる全固体型リチウム電池中で硫化水素等の硫化物系を吸着するために、未加硫ゴムを硫化水素吸収剤として含む流動性の封止剤を開示している。ただし、このようなリチウム電池の使用温度においては、未加硫ゴムが硫化水素を吸着する能力は高くないために、特許文献1に記載の発明の効果は限定的であると考えられる。
また、特許文献2に記載のような硫化物系ガスを除去するための無機吸着剤を用いることもできる。このような硫化物系ガス用の無機吸着剤は、他の無機吸着剤又は無機吸収剤と同様に、単体では通常は粒状又は粉状であるため、吸着剤を通気性の高い繊維等と共に用いることが多い。
しかしながら、吸着剤の用途によっては、繊維等に含ませて用いることが不適切な場合があり、粒状又は粉状の吸着剤を樹脂に混合して用いる方法が知られている。硫化物系ガス用以外の例では、特許文献3において、ゼオライト等の吸湿剤をLDPEに混練させて得た吸湿層に、補強フィルムを積層した積層フィルムが開示されている。また、特許文献4においては、炭酸カルシウム等の吸湿剤、ブチルゴム及びポリオレフィンを混練して得られる、複層ガラス用及び太陽電池パネル端部用のシーリング組成物が開示されている。また、特許文献5においては、鉄系酸素吸収剤と非相溶性の複数のポリオレフィン系樹脂又はエラストマーのブレンド物とを含む酸素吸収性層を有する酸素吸収性積層体が開示されている。ここでは、ポリオレフィン系樹脂又はエラストマーは、鉄系酸素吸収剤が内面側又は外面側へ突き出すのを防止するために有効であるとしている。
このように吸着剤を含有させた樹脂組成物は、成形体に加工して様々な用途に様々な態様で用いることができる一方で、吸着剤単体で用いる場合及び通気性の高い繊維等と組み合わせて用いる場合と比較して、吸着剤の能力が低下する場合があることが知られている。
特開2009−218010号公報 特開2011−104274号公報 特開2005−280188号公報 特開2011−231309号公報 特開2000−343661号公報
そこで、本発明は、様々な用途に用いることができる、硫化物系ガスの吸着性能が高い樹脂組成物及びその成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、以下の手段により、上記課題を解決できることを見出した。
[1] オレフィン系熱可塑性エラストマーを含むバインダー、及び硫化物を化学的に吸着する無機吸着剤を含む、硫化物系ガス吸着用樹脂組成物。
[2] 前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、エチレン及び/又はプロピレン由来の繰り返し単位を50mol%以上含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、及びエチレン−プロピレン−ジエン共重合体からなる群より選択される、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 前記無機吸着剤が、銅、鉄、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種の金属の化合物を含む、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[5] 前記無機吸着剤が、銅(II)ケイ酸塩である、[4]に記載の樹脂組成物。
[6] 前記バインダーが、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性樹脂をさらに含む、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[7] 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される、[6]に記載の樹脂組成物。
[8] [1]〜[7]のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、硫化物系ガス吸着用成形体。
[9] [1]〜[7]のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いて、硫化物系ガスを吸着する方法。
本発明の硫化物系ガス吸着用樹脂組成物は、硫化物系ガスに対して高い吸着能力を示し、様々な態様に成形することができ、一度吸着した硫化物系ガスは再放出することがなく、外部の温度や湿度に影響することなく硫化物系ガスを吸着するため、様々な用途に用いることができる。
<硫化物系ガス吸着用樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、オレフィン系熱可塑性エラストマーを含むバインダー、並びに硫化物を化学的に吸着する無機吸着剤を含む。通常、吸着剤を樹脂中に分散させると、樹脂のガス透過性の低さに起因して、吸着剤の性能は大きく低下する。しかしながら、本発明者らは、本発明の構成の樹脂組成物においては、硫化物系ガスの吸着能力に関して、予想外にも性能が一定程度維持できることを発見した。理論に拘束されるものではないが、これは、オレフィン系熱可塑性エラストマーに対する硫化物系ガスの透過性が高いことに起因していると推測される。ここで、硫化物系ガスとは、硫化水素ガス、メルカプタン系ガス、例えばメタンチオール、エタンチオール等の硫黄を含む物質のガスをいう。
(バインダー)
本発明の樹脂組成物に用いられるバインダーには、オレフィン系熱可塑性エラストマーが含まれる。ここで、オレフィン系熱可塑性エラストマーは、高温で流動化して成形が可能であり、常温ではゴム弾性を示す材料である。オレフィン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントと、ソフトセグメントとを含み、大別して以下の2種類がある:単一ポリマー中にハードセグメントとソフトセグメントとが化学結合している、一般にはブロック共重合体であるブロックポリマー型;及びハードセグメントとなるポリマーとソフトセグメントとなるポリマーとを物理的に混合してなる、一般的に「海島分散」と呼ばれるブレンド型。
具体的には、オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、常温(20℃)でゴム弾性を有するオレフィン系樹脂を挙げられ、このようなポリオレフィン系樹脂としては、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−ブテン共重合体(EBM)、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)等が挙げられる。また、オレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)のマトリクスにオレフィン系ゴム(EPM、EPDM等)を分散させたブレンド型の熱可塑性エラストマーも挙げることができる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、JIS−K7112−1999の水中置換法に基づいて測定した場合、好ましくは0.95g/cm以下、0.93g/cm以下、0.91g/cm以下、0.91g/cm未満、0.90g/cm以下、0.89g/cm以下、0.88g/cm以下、又は0.87g/cm以下であり、また0.84g/cm以上、0.85g/cm以上、0.86g/cm以上、0.87g/cm以上、又は0.88g/cm以上であってもよい。
バインダーが全てオレフィン系熱可塑性エラストマーから構成されていてもよいが、本発明の樹脂組成物の軟化温度を向上させる目的で、バインダーにオレフィン系熱可塑性エラストマー以外の他の樹脂を用いてもよい。その場合、オレフィン系熱可塑性エラストマーは、バインダーの全質量に対して、好ましくは10質量%以上、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上含まれ、また90質量%以下、70質量%以下、50質量%以下、又は30質量%以下であってもよい。
バインダーに含まれてもよい、オレフィン系熱可塑性エラストマー以外の樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、及びこれらの誘導体が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレンビニルアセテート共重合体(EVA)、カルボン酸変性ポリエチレン、カルボン酸変性エチレンビニルアセテート共重合体など)、ポリプロピレン(例えば、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、カルボン酸変性ポリプロピレン)、ポリブテンなどが挙げられる。
バインダーとしてオレフィン系熱可塑性エラストマー以外の他の熱可塑性樹脂を配合することによって、硫化物系ガスの吸着能力を一定程度維持しながら、本発明の樹脂組成物の軟化温度を好ましくは10℃以上、30℃以上、又は50℃以上向上させることができる。なお、ここで軟化温度とは、動的粘弾性測定装置TAインスツルメント製DMA Q−800により、3℃/minで昇温させながら測定した貯蔵弾性率の傾きが変化し始める温度である。本発明の樹脂組成物の軟化温度は、50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。
(無機吸着剤)
本発明で用いる硫化物系ガス吸着剤は、硫化物系ガスを化学的に吸着する無機吸着剤である。すなわち、本発明で用いる硫化物系ガス吸着剤は、その表面で硫化物と反応して硫化物を形成することにより吸着する、硫化物を配位結合によって吸着する等の吸着機構を有する無機吸着剤である。この無機吸着剤は、バインダー樹脂100質量部に対して、混練性及び吸着性能を考慮して、0.1質量部以上、1質量部以上、3質量部以上、5質量部以上又は10質量部以上含むことが好ましく、500質量部以下、300質量部以下、100質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、又は30質量部以下で含むことが好ましい。
そのような無機吸着剤の例としては、銅、鉄、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種の金属を含む化合物又は塩が挙げられる。ジルコニウム及びランタノイド元素の化合物については、特にこれらの水酸化物又は含水酸化物を挙げることができ、例えば特開平1−223968号公報に記載の吸着剤を挙げることができる。また、亜鉛及びマンガンの化合物については、これらの金属イオンを担持させた4価金属リン酸塩を挙げることができ、例えば特開平10−155883号公報に記載の吸着剤を挙げることができる。
特に好ましい無機吸着剤としては、銅、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケルから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属ケイ酸塩であり、さらに好ましくは金属とケイ素の元素組成(モル)比が、金属/ケイ素=0.60〜0.80の範囲となるものである。このような無機吸着剤は、金属塩とケイ酸アルカリ塩とを反応させて製造することができる。上記金属塩としては、銅、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケルから選ばれる少なくとも1種の金属の、硫酸、塩酸、硝酸等の無機塩、及び/又はギ酸、酢酸、シュウ酸などの有機塩を用いることができる。これらの内で、金属として好ましいのは銅(I)、銅(II)、亜鉛(I)である。上記ケイ酸塩としては、MO・nSiO・xHO(ここで、式中Mは1価アルカリ金属を表し、nは1以上、かつxは0以上である。)の式のケイ酸アルカリ塩をあげることができる。最も好ましい金属ケイ酸塩は、硫酸銅(II)とケイ酸ナトリウムとの反応生成物である銅(II)ケイ酸塩であり、例えば特開2011−104274号公報に記載のものである。また、市販品では、東亞合成株式会社のケスモン(商標)NS−10C、NS−10N、及びNS−20C等が挙げられる。
本発明で用いられる吸着剤の硫化物系ガスの吸着能力は、好ましくは25℃において吸着剤1gあたり、メチルメルカプタンに対して3ml/g以上、5ml/g以上、10ml/g以上、20ml/g以上、又は40ml/g以上であり、かつ/又は硫化水素に対して3ml/g以上、5ml/g以上、10ml/g以上、20ml/g以上、30ml/g以上、40ml/g以上、又は60ml/g以上である。
ここで、この吸着能力は次のようにして測定することができる。すなわち、乾燥した吸着剤0.3mgをアルミラミネート袋に入れ、ここに100ppmのメチルメルカプタン又は硫化水素を1L注入し、1日後、2日後、6日後のアルミラミネート袋中の残存ガス濃度をガスクロマトグラフィーのFPDで測定する。ガスクロマトグラフィーには(株)島津製作所製、GC−2014等を用いることができる。
本発明で用いられる吸着剤が粉体状である場合に、その好ましい粒径d50は、0.5〜10.0μmが好ましく、さらに好ましくは1.0〜8.0μmであり、より好ましくは2.0〜5.0μmである。また、d90粒径は、1〜50μmが好ましく、さらに好ましくは2〜30μmである。d50とd90の値の関係は、近いほど吸着剤の粒度が揃っていることになり、加工性などに優れるため、好ましくはd90の値がd50の2倍から15倍の間、さらに好ましくは3倍から12倍の間である。なお、この場合のd50及びd90の測定は、レーザー回折法により測定され、具体的にはマルバーン社製レーザー回折式粒度分布測定装置「MS2000」で測定される。また、好ましい比表面積は、50m/g以上、100m/g以上、200m/g以上、又は250m/g以上であり、この場合、JIS Z8830−2001に準拠して、堀場製作所製連続流動式表面積計「SA−6200」を用いて測定する。
上記の吸着剤を、他の吸着剤、例えば活性炭、ゼオライト、シリカゲル、ケイ酸アルミニウム、含水酸化ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、酸化亜鉛、及びセピオライト等とさらに組み合わせて用いることもできる。
(硫化物系ガス吸着用樹脂組成物の製造方法)
本発明の硫化物系ガス吸着用樹脂組成物を、上記のバインダー及び無機吸着剤を混練することによって製造することができる。混練には、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ミキシングロールなどのバッチ式混練機や、2軸混練機などの連続混練機などが用いられる。この際には、使用する材料に応じて、100℃以上、120℃以上、又は140℃以上で、かつ220℃以下、200℃以下、又は180℃以下の温度で混練することができる。
<硫化物系ガス吸着用成形体>
上記の硫化物系ガス吸着用樹脂組成物を成形体、例えばフィルム状、シート状、球体状、円柱状、直方体状、リング状、筒状等の様々な形状に成形して用いることができる。例えば、上記の硫化物系ガス吸着用樹脂組成物を、プレス成型、インフレーション法、Tダイ法、共押出等の押出成型又は射出成型等することによりフィルム状又はシート状に形成することができる。
<硫化物系ガスの吸着方法>
本発明の硫化物系ガスの吸着方法は、上記の硫化物系ガス吸着用樹脂組成物又は成形体を用いて硫化物系ガスを吸着する工程を含む。例えば、上記の硫化物系ガス吸着用樹脂組成物又は成形体は、硫化物系固体電解質を用いる全固体型リチウム電池内で用いることで、内部で発生する硫化水素を吸着し、電池の性能を長期間維持させることができる。また、この成形体をLED素子の付近、又はLEDパッケージ若しくはリードフレームの裏に配置することで、LED素子及び銀のリフレクタ部品等の周辺部材の腐食を防止することができる。硫化物系ガスの発生する場所で用いる機器、例えば工場内の生産機械を制御するための回路基板、並びに工場内で用いる表示装置及び通信機の付近に本発明の樹脂組成物又は成形体を用いることで、それらが含む金属部材、例えば銀又は銅の端子の腐食を防止することができる。さらに、硫化物系ガスの濃度が高い下水道、排水処理施設等の金属部材やコンクリート材の付近に本発明の樹脂組成物又は成形体を配置することで、それらの腐食を防止することができる。また、本発明の樹脂組成物又は成形体を袋状に形成し、この袋に、例えば銀や銅を含む基板部品を入れて、それを保管又は輸送することで、基板部品等の腐食を防ぐことができる。
さらに、本発明の成形体を特開昭62−64737号公報に記載の食品包装用のフィルムのように用いることができる。例えば、従来のレトルトパウチでは、生の魚介類等を加熱殺菌すると、硫化水素が発生し、この硫化水素によって内容食品特有の風味が失われ、硫化水素の異臭が残存し、商品価値を著しく低下させてしまう。このような場合、本発明の樹脂組成物又は成形体を用いてレトルトパウチを構成する、又は本発明の樹脂組成物又は成形体を内部に封入することにより、発生した硫化水素を吸着することが可能であるため、内容物の風味の劣化を抑制することができる。
例1:様々なポリマーを用いた樹脂組成物の硫化水素吸着性能の評価
下記の表1に記載のバインダー90質量部と、硫化物系ガスの吸着剤(ケスモンNS−20C、東亞合成株式会社)10質量部とをバンバリーミキサーで、回転数50rpm、温度170℃で10分混練し、吸着剤を含有する混練体を得た。上記混練体をプレス機で温度170℃圧力20MPaで30秒間プレスし、厚み50μmの硫化物系ガス吸着用シートを得た。
このシートを25mm×10mmにカットし、アルミパックに入れ100ppmの硫化水素標準ガス(残部:窒素)を400ml注入し、24時間後のアルミパック内の硫化水素量をガスクロマトグラフィー(FPD)で測定することで吸着量を得た。その結果を表1に示す。
Figure 0006327909
なお、タフマーA4070Sはエチレン−ブテン共重合体(EBM)、EP11はエチレン−プロピレン共重合体(EPM)、EP33はエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、そしてサーモラン3555Nはポリエチレン及び/又はポリプロピレンのマトリクスに、EPM及び/又はEPDMを分散させた熱可塑性エラストマーである。
オレフィン系熱可塑性エラストマーに吸着剤を含む本発明の実施例1〜4においては、上記の測定方法による硫化水素吸着量が、全て10.0μL/mg・24h以上の高い値となったが、ブタジエンゴム(BR)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、及びポリポリプロピレン(PP)に吸着剤を含む比較例1〜4は、硫化水素吸着量が非常に低くなった。
オレフィン系熱可塑性エラストマーとBRとは、一般に酸素等のガス透過率が同等であり、PE、PS及びPPのガス透過率よりも高い。通常は、硫化水素の透過率についてもオレフィン系熱可塑性エラストマーとBRとは同等であると考えるのが自然であり、BRを含む吸着剤樹脂組成物も、オレフィン系熱可塑性エラストマーを含む本発明の組成物と同等に吸着性能を発揮できると考えるのが通常である。しかしながら、上記の実験では、この推測とは異なる結果が得られており、オレフィン系熱可塑性エラストマーの組成物のみが予想外にも高い吸着性能を示した。理論に拘束されないが、オレフィン系熱可塑性エラストマーは、酸素等のガス透過率に対してはBRと同等であっても、硫化物系ガスに対しては、BRよりも透過率が高いためと推測される。
例2:ポリオレフィンを配合した本発明の樹脂組成物の硫化水素吸着性能及び熱特性の評価
次に、オレフィン系エラストマー及び/又はポリプロピレンを含む90質量部の各種のバインダーと、10質量部の硫化物系ガスの吸着剤(ケスモンNS−20C、東亞合成株式会社)とを、バンバリーミキサーで回転数50rpm、170℃で10分混練した。ここで、PPにはノバテックFL02A(日本ポリプロ株式会社)を使用し、熱可塑性エラストマーにはサーモラン(三菱化学株式会社)を使用した。
これを例1と同じ方法でシート状に成形し、さらに例1と同じ方法で吸着性能を評価した。さらに、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント製DMA Q−800)で、軟化温度を調べた。ここで、軟化温度とは、3℃/分で昇温させながら測定した貯蔵弾性率を測定した場合に、貯蔵弾性率の傾きが変化し始める温度である。その結果を表2に示す。
Figure 0006327909
オレフィン系熱可塑性エラストマーと、PPとを1:1で含むバインダーを用いた実施例6では、PPしか含まない比較例4と同等に非常に高い軟化温度を有し、かつオレフィン系熱可塑性エラストマーのみを含む実施例4と同等以上に高い硫化物系ガスの吸着量を有していた。このような態様においては、本発明の組成物は、耐熱性が必要とされる場所で用いる場合に有益であることが分かる。例えば、LEDの腐食対策で用いる場合には80℃以上、好ましくは100℃以上の耐熱性が求められるため、オレフィン系熱可塑性エラストマー及び他の樹脂を含むバインダーを用いた本発明の組成物は、特に有益である。
本発明の硫化物系ガス吸着用樹脂組成物は、硫化物系ガスに対して高い吸着能力を示し、様々な態様に成形することができるため有用である。例えば、本発明の組成物を成形して、硫化物系固体電解質を用いる全固体型リチウム電池内で用いた場合には、その成形体が内部で発生する硫化水素を吸着することで、電池の性能を長期間維持することができるため有用である。

Claims (8)

  1. オレフィン系熱可塑性エラストマーを含むバインダー、及び硫化物を化学的に吸着する無機吸着剤を含み、かつ前記無機吸着剤が、銅、亜鉛、マンガン、コバルト、及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の金属ケイ酸塩を含む、硫化物系ガス吸着用樹脂組成物。
  2. 前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、エチレン及び/又はプロピレン由来の繰り返し単位を50mol%以上含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、及びエチレン−プロピレン−ジエン共重合体からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記無機吸着剤が、銅(II)ケイ酸塩である、請求項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記バインダーが、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性樹脂をさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される、請求項に記載の樹脂組成物。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、硫化物系ガス吸着用成形体。
  8. 請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いて、硫化物系ガスを吸着する方法。
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