〔定義〕
本発明について説明し、権利請求するにあたり、以下に示す定義に従って次のような技術用語を使用する。
本明細書で使用する場合、「約」という表現は、記載された値または値の範囲よりも10パーセント以内で大きいまたは小さいことを意味するが、この広めに定義された値においてのみ、値または値の範囲を示すことを意図するものではない。「約」という表現を直前に伴う値または値の範囲はいずれも、表記されている値そのものまたは値の範囲そのものの実施形態を包含することもまた、意図している。
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容されるキャリア」という表現は、リン酸緩衝生理食塩水、水、水中油滴型エマルションまたは油中水滴型エマルションなどのエマルションならびに、さまざまなタイプの保湿剤といった、標準的な薬学的キャリアを含む。また、この表現は、ヒトをはじめとする動物での用途向けに米国連邦政府の規制当局によって承認された薬剤または米国薬局方に記載された薬剤も包含する。
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」という表現は、親化合物の生物学的活性を保持し、かつ、生物学的にまたはそれ以外に望ましくない点のない化合物の塩を示す。本明細書に開示する化合物の多くは、アミノ基および/またはカルボキシ基またはこれらに類する基が存在することで、酸性塩および/または塩基性塩を形成可能である。
薬学的に許容される塩基付加塩は、無機塩基および有機塩基から調製可能なものである。無機塩基から誘導される塩としては、単なる一例として、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩があげられる。有機塩基から誘導される塩としては、第1級アミンの塩、第2級アミンの塩、第3級アミンの塩があげられるが、これらに限定されるものではない。薬学的に許容される酸付加塩を、無機酸および有機酸から調製してもよい。無機酸から誘導される塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などがあげられる。有機酸から誘導される塩としては、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエン−スルホン酸、サリチル酸などがあげられる。
本明細書で使用する場合、「治療する」という表現は、特定の障害または状態の予防法あるいは、特定の障害または状態に関連する症状の軽減および/またはこれらの症状を予防または解消することを含む。たとえば、本明細書で使用する場合、「糖尿病を治療する」という表現は、概して、血中グルコース濃度を正常なレベルになる方向で変化させることを示し、個々の状況に応じて血中グルコース濃度を上昇させるか低下させることを含む場合もある。
本明細書で使用する場合、グルカゴンペプチドの「有効」量または「治療有効量」とは、無毒であるが、望ましい効果を得るのに十分なペプチドの量を示す。たとえば、ひとつの望ましい効果として、低血糖症を予防または治療できることがあろう。それは、たとえば、血中グルコース濃度の上昇などを基準に判断できる。本開示に記載のグルカゴンペプチドでの別の望ましい効果としては、高血糖症を治療できること、あるいは、体重減少を誘導/体重増加を防止できること、あるいは、体重増加を防止または低減できること、あるいは、体脂肪分布を正常化できることがあろう。なお、たとえば、高血糖症が治療されているかどうかは、血中グルコース濃度が正常値に近づくよう変化することなどを基準に判断でき、体重減少が誘導されているかや体重増加が防止されているかは、体重の減少などを基準に判断できる。「有効な」量は、個人の年齢や全身状態、投与モードなどに応じて、治療対象者ごとに変わってくる。このため、常に正確な「有効量」を規定できるわけではない。しかしながら、個々の症例における適切な「有効」量については、当業者がルーチンな実験を用いて判断できる。
「非経口」という用語は、消化管を経由せず、皮下、筋肉内、脊髄内または静脈内など、他の何らかの経路によることを意味する。
本明細書で使用する場合、「患者」という用語は、他に指定のないかぎり、飼いならされた温血脊椎動物(たとえば、家畜、ウマ、ネコ、イヌ、その他のペットを含むがこれらに限定されるものではない)、哺乳動物、ヒトを包含することを意図している。
「単離された」という表現は、本明細書で使用する場合、それがある本来の環境から取り出されていることを意味する。いくつかの実施形態では、組換え方法によって類縁体を作製し、その類縁体を宿主細胞から単離する。
「精製された」という表現は、本明細書で使用する場合、ある分子または化合物が天然の環境または自然環境で通常一緒に存在する不純物を実質的に含まない形で、その分子または化合物を単離することに関し、元の組成物の他の成分から分離した結果、純度が増していることを意味する。「精製されたポリペプチド」という表現は、本明細書では、他の化合物から分離されているポリペプチドを説明するのに用いられる。ここで、他の化合物とは、核酸分子、脂質、炭水化物を含むがこれらに限定されるものではない。
本明細書で使用する場合、「ペプチド」という用語は、2個または3個以上のアミノ酸で、一般には50個未満のアミノ酸からなる配列を包含し、ここで、アミノ酸は、天然のアミノ酸すなわちコードされたアミノ酸あるいは、非天然のアミノ酸すなわちコードされていないアミノ酸である。非天然のアミノ酸は、in vivoでは天然に生じないが、本明細書に記載のペプチド構造に取り込むことは可能である。「コードされていない」とは、本明細書で使用する場合、以下の20種類のアミノ酸すなわち、Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、TyrのいずれのL異性体でもないアミノ酸を示す。
本明細書で使用する場合、「一部が非ペプチド性」とは、分子の一部が、生物学的活性を有し、かつ、アミノ酸の配列を含まない化合物または置換基である分子を示す。
本明細書で使用する場合、「非ペプチド性」とは、生物学的活性を有し、かつ、アミノ酸の配列を含まない分子を示す。
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、ポリマーの長さとは関係なく、アミノ酸のポリマーを示すのには、同義に用いられる用語である。一般に、ポリペプチドおよびタンパク質は、ポリマー長が「ペプチド」よりも長い。場合によっては、タンパク質は、互いに共有結合または非共有結合している2個以上のポリペプチド鎖を含む。
本出願全体をとおして、特定のアミノ酸の位置を数字で参照する場合(28番目の位置など)はいずれも、天然のグルカゴン(配列番号1601)におけるその位置のアミノ酸またはその類縁体における対応するアミノ酸の位置を示す。たとえば、本明細書で「28番目の位置」といえば、配列番号1601の最初のアミノ酸が欠失したグルカゴンの類縁体であれば対応する27番目の位置を意味する。同様に、本明細書で「28番目の位置」といえば、配列番号1601のN末端より前に1個のアミノ酸が付加されたグルカゴンの類縁体であれば、対応する29番目の位置を意味する。
本明細書で使用する場合、「アミノ酸修飾」とは、(i)基準ペプチド(配列番号1601、1603、1607など)のアミノ酸と異なるアミノ酸(天然のアミノ酸すなわちコードされたアミノ酸またはコードされていないアミノ酸すなわち非天然のアミノ酸)との置換すなわち入れ換え、(ii)基準ペプチド(配列番号1601、1603、1607など)に対する、アミノ酸(天然のアミノ酸すなわちコードされたアミノ酸またはコードされていないアミノ酸すなわち非天然のアミノ酸)の付加または(iii)基準ペプチド(配列番号1601、1603、1607など)からの1個または2個以上のアミノ酸の欠失を示す。
いくつかの実施形態では、アミノ酸の置換すなわち入れ換えは、1番目、2番目、5番目、7番目、8番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目または29番目のうちの1箇所または2箇所以上におけるアミノ酸の保存的な置換など、保存的なアミノ酸置換である。本明細書で使用する場合、「保存的なアミノ酸置換」という表現は、1個のアミノ酸が、大きさ、電荷、疎水性、親水性および/または芳香族性などの特性の点で類似した別のアミノ酸と入れ換わることであり、以下の5群のうちの1つの範囲内での交換を含む。
I.脂肪族、非極性またはわずかに極性の小さな残基
Ala、Ser、Thr、Pro、Gly
II.極性を有し、負の電荷を持つ残基およびそのアミドおよびエステル
Asp、Asn、Glu、Gln、システイン酸およびホモシステイン酸
III.極性を有し、正の電荷を持つ残基
His、Arg、Lys、オルニチン(Orn)
IV.脂肪族で非極性の大きな残基
Met、Leu、Ile、Val、Cys、ノルロイシン(Nle)、ホモシステイン
V.大きな芳香族残基
Phe、Tyr、Trp、アセチルフェニルアラニン
いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、保存的なアミノ酸置換ではなく、たとえば非保存的なアミノ酸置換である。
本明細書で使用する場合、「アミノ酸」という用語は、アミノ官能基とカルボキシ官能基の両方を含む分子を包含し、ここでのアミノ基とカルボキシ基は同一の炭素(α炭素)に結合している。α炭素は、任意に、1個または2個の別の有機置換基を有するものであってもよい。本開示の目的で、異性体の型を明記しない場合のアミノ酸の表示は、アミノ酸のL型またはD型あるいは、ラセミ混合物を包含することを意図している。しかしながら、アミノ酸を3文字コードで表記し、そこに上付の数字を含む(すなわち、Lys−1)場合、その表示はアミノ酸の天然のL型を示すことを意図したものであるのに対し、D型については、3文字コードの前に半角のdと、上付の数字を含めて示してある(すなわち、dLys−1)。
本明細書で使用する場合、「ヒドロキシ酸」という用語は、α炭素のアミノ基をヒドロキシ基に入れ換える修飾がなされたアミノ酸を示す。
本明細書で使用する場合、「電荷を持つアミノ酸」という表現は、生理的pHの水溶液中で負の電荷を持つ(すなわち、脱プロトン化された)または正の電荷を持つ(すなわち、プロトン化された)側鎖を有するアミノ酸を示す。たとえば、負の電荷を持つアミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン酸、ホモシステイン酸、ホモグルタミン酸があげられるのに対し、正の電荷を持つアミノ酸としては、アルギニン、リジン、ヒスチジンがあげられる。電荷を持つアミノ酸としては、20種類のコードされたアミノ酸ならびに、典型的ではないアミノ酸または非天然のアミノ酸すなわちコードされていないアミノ酸のうち、電荷を持つアミノ酸があげられる。
本明細書で使用する場合、「酸性アミノ酸」という用語は、第2の酸性部分(アミノ酸のαカルボン酸以外)を含むアミノ酸を示し、たとえば、側鎖のカルボン酸基またはスルホン酸基があげられる。
本明細書で使用する場合、「アシル化された」アミノ酸は、それを製造する手段とは関係なく、天然のアミノ酸に対して非天然のアシル基を含むアミノ酸である。アシル化されたアミノ酸およびアシル化されたペプチドを製造する方法の例は、当分野で知られており、アミノ酸をアシル化した上でペプチドに含ませることや、ペプチド合成後にこのペプチドを化学的にアシル化することを含む。いくつかの実施形態では、アシル基が、ペプチドに、(i)血中半減期を延ばすこと、(ii)作用開始を遅らせること、(iii)作用時間を延ばすこと、(iv)DPP−IVなどのプロテアーゼに対する耐性を改善すること、(v)グルカゴンスーパーファミリーのペプチド受容体における作用を増強することのうちの1つまたは2つ以上をさせる。
本明細書で使用する場合、「アルキル化された」アミノ酸は、それを製造する手段とは関係なく、天然のアミノ酸に対して非天然のアルキル基を含むアミノ酸である。アルキル化されたアミノ酸およびアルキル化されたペプチドを製造する方法の例は、当分野で知られており、アミノ酸をアルキル化した上でペプチドに含ませることや、ペプチド合成後にこのペプチドを化学的にアルキル化することを含む。特定の理論に拘泥することなく、ペプチドのアルキル化によって、ペプチドのアシル化と同一でないにしても似たような作用、たとえば血中半減期を延ばすこと、作用開始を遅らせること、作用時間を延ばすこと、DPP−IVなどのプロテアーゼに対する耐性を改善すること、グルカゴンスーパーファミリーのペプチド受容体における作用を増強することなどが達成されると考えられている。
nが1〜18であり得る「C1〜Cnアルキル」という表現は、本明細書で使用する場合、1個から指定数までの炭素原子を有する分岐状または直鎖状のアルキル基を表す。たとえば、C1〜C6アルキルは、炭素原子数が1〜6の分岐状または直鎖状のアルキル基を表す。一般的なC1〜C18アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。任意に、アルキル基は、ヒドロキシ(OH)、ハロ、アリール、カルボキシル、チオ、C3〜C8シクロアルキル、アミノなどで置換可能である。
nが1〜18であり得る「C0〜Cnアルキル」という表現は、本明細書で使用する場合、最大で18個の炭素原子を有する分岐状または直鎖状のアルキル基を表す。たとえば、「(C0〜C6アルキル)OH」という表現は、最大6個の炭素原子を有するアルキル置換基に結合しているヒドロキシ基である親部分(hydroxyl parent moiety)を表す(−OH、−CH2OH、−C2H4OH、−C3H6OH、−C4H8OH、−C5H10OH、−C6H12OHなど)。
nが2〜18であり得る「C2〜Cnアルケニル」という表現は、本明細書で使用する場合、2個から指定数までの炭素原子と、少なくとも1個の二重結合とを有する分岐状または直鎖状の不飽和基を表す。このような基の例としては、1−プロペニル、2−プロペニル(−CH2−CH=CH2)、1,3−ブタジエニル、(−CH=CHCH=CH2)、1−ブテニル(−CH=CHCH2CH3)、ヘキセニル、ペンテニルなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。アルケニル基は、任意に、ヒドロキシ(OH)、ハロ、アリール、カルボキシル、チオ、C3〜C8シクロアルキル、アミノなどで置換可能である。
nが2〜18であり得る「C2〜Cnアルキニル」という表現は、2個からn個までの炭素原子と、少なくとも1個の三重結合とを有する分岐状または直鎖状の不飽和基を示す。このような基の例としては、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニルなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。アルキニル基は、任意に、ヒドロキシ(OH)、ハロ、アリール、カルボキシル、チオ、C3〜C8シクロアルキル、アミノなどで置換可能である。
本明細書で使用する場合、「アリール」という用語は、単環式または多環式(たとえば、二環式、三環式または四環式)の芳香族基を示す。アリール環(単数または複数)の大きさについては、存在する炭素の数で表示する。たとえば、「(C1〜C3アルキル)(C6〜C10アリール)」という表現は、C1〜C3のアルキル鎖を介して親部分(parent moiety)に結合しているC6〜C10のアリールを示す。他に示さなければ、アリール基は、たとえば、ハロ、アルキル、アルケニル、OCF3、NO2、CN、NC、OH、アルコキシ、アミノ、CO2H、C3〜C8シクロアルキル、C(O)Oアルキル、アリール、ヘテロアリールから独立に選択される1個または2個以上、特に1個から5個の基で置換されていても、されていなくてもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、クロロフェニル、インダニル、インデニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ニトロフェニル、2,4−メトキシクロロフェニルなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
本明細書で使用する場合、「ヘテロアリール」という用語は、1個または2個以上の芳香環を含み、この芳香環に窒素原子、酸素原子または硫黄原子を少なくとも1個含む単環式または多環式の環系を示す。ヘテロアリール環の大きさと、置換基または結合基の存在については、存在する炭素の数で表示する。たとえば、「(C1〜C6アルキル)(C5〜C6ヘテロアリール)」という表現は、C1〜C6のアルキル鎖を介して親部分に結合しているC5〜C6のヘテロアリールを示す。他に示さなければ、ヘテロアリール基は、たとえば、ハロ、アルキル、アルケニル、OCF3、NO2、CN、NC、OH、アルコキシ、アミノ、CO2H、C3〜C8シクロアルキル、C(O)Oアルキル、アリール、ヘテロアリールから独立に選択される1個または2個以上、特に1個から5個の基で置換されていても、されていなくてもよい。ヘテロアリール基の例としては、チエニル、フリル、ピリジル、オキサゾリル、キノリル、チオフェニル、イソキノリル、インドリル、トリアジニル、トリアゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、チアゾリル、チアジアゾリルがあげられるが、これらに限定されるものではない。
本明細書で使用する場合、「ヘテロアルキル」という用語は、構造の骨格に、表記の数の炭素原子と、少なくとも1個のヘテロ原子とを含む直鎖状または分岐状の炭化水素を示す。本明細書の目的で適したヘテロ原子としては、N、S、Oがあげられるが、これらに限定されるものではない。ヘテロアルキル基は、任意に、ヒドロキシ(OH)、ハロ、アリール、カルボキシル、アミノなどで置換することも可能である。
本明細書で使用する場合、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素からなる群の1つまたは2つ以上の構成要素を示す。
本明細書で使用する場合、「グルカゴン関連ペプチド」という用語は、グルカゴン受容体、GLP−1受容体、GLP−2受容体、GIP受容体のうちの1個または2個以上に対して(アゴニストまたはアンタゴニストとしての)生物学的活性を有し、天然のグルカゴン、天然のオキシントモジュリン、天然のエキセンディン−4、天然のGLP−1、天然のGLP−2または天然のGIPのうちの少なくとも1つとの配列同一性が少なくとも40%(45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%など)であるアミノ酸配列を含むペプチドを示す。他に述べなければ、(GRリガンドの結合、結合部分の結合、親水性ポリマーの結合、アシル化またはアルキル化などについて)グルカゴン関連ペプチドにおけるアミノ酸の位置に言及する場合、天然グルカゴンのアミノ酸配列(配列番号1601)に照らして対応する位置を示す。
本明細書で使用する場合、第2の受容体と比較した場合の第1の受容体に対する分子の「選択性」という表現は、第2の受容体に対する分子のEC50を第1の受容体に対する分子のEC50で割った比を示す。たとえば、第1の受容体に対するEC50が1nMで、第2の受容体に対するEC50が100nMの分子は、第2の受容体と比較した場合の第1の受容体に対する選択性が100倍である。
「同一性」という用語は、本明細書で使用する場合、2つまたは3つ以上の配列間の類似性と関連している。同一性は、同一残基数を残基の総数で割り、その結果に100を掛けてパーセンテージを得ることで求められる。このため、完全に同じ配列の2つのコピーは同一性が100%であるのに対し、比較したときにアミノ酸の欠失、付加または置換のある2つの配列の同一性の度合いは、それよりも低くなる。BLAST(Basic Local Alignment Search Tool, Altschul et al. (1993) J. Mol. Biol. 215:403-410)などのアルゴリズムを用いたものなどのいくつかのコンピュータープログラムを利用して配列の同一性を求められることは、当業者にはわかるであろう。
本明細書で使用する場合、「グルカゴンスーパーファミリーのペプチド」という表現は、N末端領域およびC末端領域における構造が関連する一群のペプチドを示す(たとえば、Sherwood et al., Endocrine Reviews 21: 619-670 (2000)を参照のこと)。この群に含まれるメンバーは、すべてのグルカゴン関連ペプチド、さらには成長ホルモン放出ホルモン(GHRH、配列番号1619)、血管作用性小腸ペプチド(VIP、配列番号1620)、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド27(PACAP−27、配列番号1621)、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI、配列番号1642)、ペプチドヒスチジンメチオニン(PHM、配列番号1622)、セクレチン(配列番号1623)ならびに、天然のペプチドと比較した場合に最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸修飾を有する類縁体、誘導体または結合体を含む。このようなペプチド(アゴニストまたはアンタゴニスト)は、グルカゴン受容体スーパーファミリーの受容体と相互作用する能力を保持していると好ましい。他に述べなければ、(GRリガンドの結合、結合部分の結合、親水性ポリマーの結合、アシル化またはアルキル化などについて)グルカゴンスーパーファミリーのペプチドにおけるアミノ酸の位置に言及する場合、天然グルカゴンのアミノ酸配列(配列番号1601)に照らして対応する位置を示す。代表的なグルカゴンスーパーファミリーのペプチドのアライメントに関しては、図1を参照のこと。
「グルカゴンアゴニストのペプチド」という表現は、グルカゴン受容体と結合し、グルカゴン受容体の下流シグナルを活性化する化合物を示す。しかしながら、この表現は、その化合物をグルカゴン受容体だけに対して活性を持つことに限定するものと解釈されるべきものではない。むしろ、本開示内容におけるグルカゴンアゴニストのペプチドは、本明細書でさらに論じるように、他の受容体に対して別の活性を示すものであってもよい。グルカゴンアゴニストのペプチドは、たとえば、GLP−1受容体および/またはGIP受容体に対する活性(アゴニスト活性など)を示すものであってもよい。また、「グルカゴンアゴニストのペプチド」という表現は、その化合物を、ペプチドだけに限定するものと解釈されるべきものではない。むしろ、ペプチド以外の化合物も、この表現に包含される。したがって、いくつかの態様でのグルカゴンアゴニストのペプチドは、結合体のペプチド(ヘテロダイマー、マルチマー、融合ペプチド)、化学的に誘導体化されたペプチド、ペプチドの薬学的な塩、擬似ペプチドなどである。
「GLP−1アゴニストのペプチド」という表現は、GLP−1受容体と結合し、GLP−1受容体の下流シグナルを活性化する化合物を示す。しかしながら、この表現は、その化合物を、GLP−1受容体だけに対して活性を持つことに限定するものと解釈されるべきものではない。むしろ、本開示内容におけるGLP−1アゴニストのペプチドは、本明細書でさらに論じるように、他の受容体に対して別の活性を示すものであってもよい。GLP−1アゴニストのペプチドは、たとえば、グルカゴン受容体および/またはGIP受容体に対する活性(アゴニスト活性など)を示すものであってもよい。また、「GLP−1アゴニストのペプチド」という表現は、その化合物を、ペプチドだけに限定するものと解釈されるべきものではない。むしろ、ペプチド以外の化合物も、この表現に包含される。したがって、いくつかの態様でのGLP−1アゴニストのペプチドは、結合体のペプチド(ヘテロダイマー、マルチマー、融合ペプチド)、化学的に誘導体化されたペプチド、ペプチドの薬学的な塩、擬似ペプチドなどである。
「GIPアゴニストのペプチド」という表現は、GIP受容体と結合し、GIP受容体の下流シグナルを活性化する化合物を示す。しかしながら、この表現は、その化合物を、GIP受容体だけに対して活性を持つことに限定するものと解釈されるべきものではない。むしろ、本開示内容におけるGIPアゴニストのペプチドは、本明細書でさらに論じるように、他の受容体に対して別の活性を示すものであってもよい。GIPアゴニストのペプチドは、たとえば、GLP−1受容体に対する活性(アゴニスト活性など)を示すものであってもよい。また、「GIPアゴニストのペプチド」という表現は、その化合物を、ペプチドだけに限定するものと解釈されるべきものではない。むしろ、ペプチド以外の化合物も、この表現に包含される。したがって、いくつかの態様でのGIPアゴニストのペプチドは、結合体のペプチド(ヘテロダイマー、マルチマー、融合ペプチド)、化学的に誘導体化されたペプチド、ペプチドの薬学的な塩、擬似ペプチドなどである。
「グルカゴンアンタゴニストのペプチド」という表現は、グルカゴンの活性を低下させるまたはグルカゴンの機能を阻害する化合物を示す。たとえば、グルカゴンアンタゴニストは、グルカゴン受容体でグルカゴンが達成する最大限の反応の少なくとも60%を阻害する(少なくとも70%、80%、90%またはさらに多くを阻害するなど)。具体的な実施形態では、濃度約1μMのグルカゴンアンタゴニストは、グルカゴン受容体でグルカゴンが達成する最大限の約20%未満しかアゴニスト活性を示さない(約10%未満または約5%未満など)。この表現は、その化合物を、グルカゴン受容体だけに対して活性を有するものに限定するものとして解釈されるべきものではない。むしろ、本開示内容におけるグルカゴンアンタゴニストのペプチドは、グルカゴン受容体(部分的活性化作用など)または他の受容体に対する別の活性を示すものであってもよい。グルカゴンアンタゴニストのペプチドは、たとえば、GLP−1受容体に対する活性(アゴニスト活性など)を示すものであってもよい。また、「グルカゴンアンタゴニストのペプチド」という表現は、その化合物を、ペプチドだけに限定するものと解釈されるべきものではない。むしろ、ペプチド以外の化合物も、これらの表現に包含される。したがって、いくつかの態様では、グルカゴンアゴニストのペプチドは、結合体のペプチド、化学的に誘導体化されたペプチド、ペプチドの薬学的な塩、擬似ペプチドなどである。
「GLP−1アンタゴニストのペプチド」という表現は、GLP−1の活性を低下させるまたはGLP−1の機能を阻害する化合物を示す。たとえば、GLP−1アンタゴニストは、GLP−1受容体でGLP−1が達成する最大限の反応の少なくとも60%を阻害する(少なくとも70%、80%、90%またはさらに多くを阻害するなど)。具体的な実施形態では、濃度約1μMのGLP−1アンタゴニストは、GLP−1受容体でGLP−1が達成する最大限の約20%未満しかアゴニスト活性を示さない(約10%未満または約5%未満など)。この表現は、その化合物を、GLP−1受容体だけに対して活性を有するものに限定するものとして解釈されるべきものではない。むしろ、本開示内容におけるGLP−1アンタゴニストのペプチドは、GLP−1受容体(部分的活性化作用など)または他の受容体に対する別の活性を示すものであってもよい。GLP−1アンタゴニストのペプチドは、たとえば、グルカゴン受容体に対する活性(アゴニスト活性など)を示すものであってもよい。また、「GLP−1アンタゴニストのペプチド」という表現は、その化合物を、ペプチドだけに限定するものと解釈されるべきものではない。むしろ、ペプチド以外の化合物も、これらの表現に包含される。したがって、いくつかの態様では、GLP−1アゴニストのペプチドが、結合体のペプチド、化学的に誘導体化されたペプチド、ペプチドの薬学的な塩、擬似ペプチドなどである。
「GIPアンタゴニストのペプチド」という表現は、GIPの活性を低下させるまたはGIP−1の機能を阻害する化合物を示す。たとえば、GIPアンタゴニストは、GIP受容体でGIPが達成する最大限の反応の少なくとも60%を阻害する(少なくとも70%、80%、90%またはさらに多くを阻害するなど)。具体的な実施形態では、濃度約1μMのGIPアンタゴニストは、GIP受容体でGIPが達成する最大限の約20%未満しかアゴニスト活性を示さない(約10%未満または約5%未満など)。この表現は、その化合物を、GIP受容体だけに対して活性を有するものに限定するものとして解釈されるべきものではない。むしろ、本開示内容におけるGIPアンタゴニストのペプチドは、GIP受容体(部分的活性化作用など)または他の受容体に対する別の活性を示すものであってもよい。GIPアンタゴニストのペプチドは、たとえば、グルカゴン受容体に対する活性(アゴニスト活性など)を示すものであってもよい。また、「GIPアンタゴニストのペプチド」という表現は、その化合物を、ペプチドだけに限定するものと解釈されるべきものではない。むしろ、ペプチド以外の化合物も、これらの表現に包含される。したがって、いくつかの態様では、GIPアゴニストのペプチドが、結合体のペプチド、化学的に誘導体化されたペプチド、ペプチドの薬学的な塩、擬似ペプチドなどである。
本明細書で使用する場合、「グルカゴン類縁体」および「グルカゴンペプチド」という用語は、グルカゴン関連ペプチド受容体に対して上記の活性を有するグルカゴンの類縁体を示すのに同義に用いることが可能である。
本明細書で使用する場合、「天然のグルカゴン」という用語は、配列番号1601の配列からなるペプチドを示す。
本明細書で使用する場合、「天然のGLP−1」という用語は、GLP−1(7−36)アミド(配列番号1603)、GLP−1(7−37)酸(配列番号1604)またはこれら2種類の化合物の混合物を示す一般的な用語である。
本明細書で使用する場合、「天然のGIP」とは、配列番号1607からなるペプチドを示す。
本明細書で使用する場合、分子の「グルカゴン活性」または「天然のグルカゴンと比較した場合の活性」とは、グルカゴン受容体に対する分子のEC50を、グルカゴン受容体での天然のグルカゴンのEC50で割った比を示す。
本明細書で使用する場合、分子の「GLP−1活性」または「天然のGLP−1と比較した場合の活性」とは、GLP−1受容体に対する分子のEC50を、GLP−1受容体に対する天然のGLP−1のEC50で割った比を示す。
本明細書で使用する場合、分子の「GIP活性」または「天然のGIPと比較した場合の活性」とは、GIP受容体に対する分子のEC50を、GIP受容体に対する天然のGIPのEC50で割った比を示す。
本明細書で使用する場合、「NHRリガンド」とは、核内ホルモン受容体(NHR)に対する生物学的活性(アゴニスト活性またはアンタゴニスト活性)を有する疎水性部分または親油性部分を示す。NHRリガンドは、全体または一部が非ペプチド性である。いくつかの実施形態では、NHRリガンドは、NHRに結合してこれを活性化するアゴニストである。他の実施形態では、NHRリガンドは、アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、NHRリガンドは、天然のリガンドが活性部位に結合するのを完全にまたは部分的にブロックすることで作用するアンタゴニストである。他の実施形態では、NHRリガンドは、活性部位またはアロステリック部位に結合し、NHRの活性化を阻害するか、NHRを不活性化することで作用するアンタゴニストである。
本明細書で使用する場合、「GRリガンド」とは、グルココルチコイド受容体(GR)に対する生物学的活性(アゴニスト活性またはアンタゴニスト活性)を有する、疎水性または親油性の部分を示す。GRリガンドは、全体または一部が非ペプチド性である。いくつかの実施形態では、GRリガンドは、GRに結合してこれを活性化するアゴニストである。他の実施形態では、GRリガンドはアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、GRリガンドは、天然のリガンドが活性部位に結合するのを完全にまたは部分的にブロックすることで作用するアンタゴニストである。他の実施形態では、GRリガンドは、GRの活性部位またはアロステリック部位に結合して、GRの活性化を阻害するかまたはGRを不活性化することで作用するアンタゴニストである。
本明細書で使用する場合、「核内ホルモン受容体」(NHR)とは、ときには他のコアクチベーターおよびコリプレッサーとともに、細胞核内での遺伝子発現を調節するリガンド活性化タンパク質を示す。
本明細書で使用する場合、「コルチゾールおよびその誘導体」は、式Cで表される、天然または合成の化合物を示す。
(式中、R2、R3、R6、R7、R8、R9、R10は各々独立に、式Cの化合物がグルココルチコイド受容体に結合する際にアゴニスト活性またはアンタゴニスト活性を与えるまたは促進する部分であり、点線は各々、任意の二重結合を表す。)いくつかの実施形態では、式Cの構造は、たとえば、1位、2位、4位、5位、6位、7位、8位、11位、12位、14位、15位など、四環の1箇所または2箇所以上において、1個または2個以上の置換基で置換される。コルチゾールの誘導体およびこれらの誘導体の非限定的な具体例として、コルチゾール、酢酸コルチゾン、ベクロメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、デキサメタゾンがあげられる。
本明細書で使用する場合、「結合基」は、2つの別々のものを互いに結合する分子または分子群である。結合基が、2つのものの間に最適な間隔をもたせることもあるし、あるいは、2つのものを互いに分離できるようにする不安定な結合をさらに提供することもある。不安定な結合としては、加水分解可能な基、光切断可能な基、酸感受性部分、塩基感受性部分、酵素切断可能な基があげられる。
本明細書で使用する場合、「プロドラッグ」という用語を、その完全な薬理作用を発揮する前に化学修飾がなされる化合物として定義する。
本明細書で使用する場合、「ジペプチド」は、α−アミノ酸またはα−ヒドロキシ酸が、ペプチド結合を介して別のアミノ酸と結合した結果である。
本明細書で使用する場合、「化学反応による開裂」という表現は、他に何ら断りがなければ、化学的共有結合の切断につながる非酵素的反応を包含する。
〔実施形態〕
本開示は、GRリガンドと結合しているグルカゴンスーパーファミリーのペプチドを提供するものである。いくつかの態様では、GRリガンドは、代謝またはグルコースホメオスタシスに関与するグルココルチコイド受容体に作用でき、ペプチド単独またはGRリガンド単独の場合と比較して、結合体のほうが代謝またはグルコースホメオスタシスに対する生物学的効果が大きい。本発明の理論に拘泥することなく、GRリガンドは、グルカゴンスーパーファミリーのペプチドを、特定種類の細胞または組織を標的とするよう機能するものであってもよい。あるいは、グルカゴンスーパーファミリーのペプチドは、GRリガンドを標的とするか、または結合体を細胞内に入れる受容体にペプチドが結合することなどによって、その結合体の細胞内への輸送を促進するよう機能するものであってもよい。
本発明のグルカゴンスーパーファミリーのペプチド結合体は、式:
Q−L−Y
で表すことが可能なものである(式中、Qはグルカゴンスーパーファミリーのペプチドであり、YはGRリガンドであり、Lは結合基または結合である)。
いくつかの実施形態におけるグルカゴンスーパーファミリーのペプチド(Q)は、グルカゴン受容体に対するアゴニスト活性、GLP−1受容体に対するアゴニスト活性、GIP受容体に対するアゴニスト活性、グルカゴン受容体およびGLP−1受容体に対するコアゴニスト活性、グルカゴン受容体およびGIP受容体に対するコアゴニスト活性、GLP−1受容体およびGIP受容体に対するコアゴニスト活性またはグルカゴン受容体、GIP受容体およびGLP−1受容体に対するトリアゴニスト活性を示すグルカゴン関連ペプチドであってもよい。いくつかの実施形態では、グルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体、GLP−1受容体またはGIP受容体に対するアンタゴニスト活性を示す。
いくつかの実施形態におけるグルカゴンスーパーファミリーのペプチド(Q)は、グルカゴン関連ペプチド、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH、配列番号1619)、血管作用性小腸ペプチド(VIP、配列番号1620)、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド27(PACAP−27、配列番号1621)、ペプチドヒスチジンメチオニン(PHM、配列番号1622)またはセクレチン(配列番号1623)および/またはおよびこれらの類縁体、誘導体および結合体であってもよい。グルカゴンスーパーファミリーのペプチドは、N末端のアミノ酸の相同性および/またはC末端領域のαヘリックス構造を含むがこれに限定されるものではない、共通の構造的な特徴を有するものであってもよい。機能し、N末端は通常、受容体のシグナル伝達において機能すると考えられている。N末端部分およびC末端領域における数個のアミノ酸は、1番目のヒスチジン、4番目のグリシン、6番目のフェニルアラニン、22番目のフェニルアラニン、23番目のバリン、25番目のスレオニン、26番目のロイシンなどのグルカゴンスーパーファミリーのメンバー間で高度に保存され、これらの位置のアミノ酸が、アミノ酸側鎖で同一性、保存的な置換または類似性を示している。いくつかの実施形態では、グルカゴン関連ペプチドQは、グルカゴン(配列番号1601)、オキシントモジュリン(配列番号1606)、エキセンディン−4(配列番号1618)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)(アミノ酸7−37、配列番号1603および1604として提供)、グルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)(配列番号1608)、GIP(配列番号1607)または上記のものの類縁体、誘導体、結合体である。いくつかの実施形態では、グルカゴン関連ペプチドとしてのQは、天然のペプチドの全長にわたって(あるいはグルカゴンに対応する位置全体にわたって(たとえば図1参照))、天然のグルカゴン、天然のオキシントモジュリン、天然のエキセンディン−4、天然の(7−37)GLP−1、天然のGLP−2または天然のGIP対応する配列と少なくとも約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%同一のアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、グルカゴンスーパーファミリーのペプチド(Q)は、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸修飾を有する、天然のグルカゴン、天然のエキセンディン−4、天然の(7−37)GLP−1、天然のGLP−2、天然のGHRH、天然のVIP、天然のPACAP−27、天然のPHM、天然のオキシントモジュリン、天然のセクレチンまたは天然のGIPのアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、Qは、2つまたは3つ以上の天然のグルカゴン関連ペプチド配列のキメラであるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、Qが、12番目から29番目のアミノ酸に対応するアミノ酸のαヘリックス構造を保持する、天然のグルカゴン(配列番号1601)と少なくとも約50%同一のアミノ酸配列を含む。
関連の態様では、本発明は、式
Q−L−Y
で表されるペプチド結合体を提供するものである(式中、Qは、グルカゴンスーパーファミリーのペプチドではなく、オステオカルシン、カルシトニン、アミリンまたはその類縁体、誘導体または結合体であり、YはGRリガンドであり、Lは結合基または結合である)。いくつかの実施形態では、Qは、オステオカルシン(配列番号1644)あるいは、天然のペプチドの全長にわたって、天然のオステオカルシンと少なくとも約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%同一のアミノ酸配列を含む。Qは、天然のオステオカルシンと比べて、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸修飾を有する、オステオカルシンの類縁体あるいは、天然の短くされたオステオカルシンと比べて、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸修飾を有する、オステオカルシン(アミノ酸70−84など)の短くされた類縁体を含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、Qは、カルシトニン(配列番号1645)あるいは、天然のペプチドの全長にわたって、天然のカルシトニンと少なくとも約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%同一のアミノ酸配列を含む。Qは、天然のカルシトニンと比べて、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸修飾を有する、カルシトニンの類縁体を含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、Qは、アミリン(配列番号1646)あるいは、天然のペプチドの全長にわたって、天然のアミリンと少なくとも約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%同一のアミノ酸配列を含む。Qは、天然のアミリンと比べて、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸修飾を有する、アミリンの類縁体を含むものであってもよい。
GRリガンド(Y)
Q−L−Y結合体に関連する本開示内容において、Yは、グルココルチコイド受容体に対して作用するリガンドである。GRなどの核内ホルモン受容体は通常、C4型zinc fingerDNA結合ドメイン(DBD)および/またはリガンド結合ドメイン(LBD)のうちの少なくとも1個を有する。DBDは標的遺伝子付近でDNAを結合するよう機能し、LBDは、その同族ホルモンに結合してこれに応答する。「伝統的な核内ホルモン受容体」は、DBDとLBD(エストロゲン受容体αなど)の両方を持つが、他の核内ホルモン受容体には、DBDだけ(Knirps、ORDなど)またはLBDだけ(Short Heterodimer Partner(SHP))しか持たないものもある。
核内ホルモン受容体は、タイプI、タイプII、タイプIII、タイプIVという4つの機構的なクラスに分類することが可能なものである。タイプIの受容体(NR3群)に結合するリガンドは、受容体からの熱ショックタンパク質(HSP)の解離、受容体のホモダイマー化、細胞質から細胞核への移動、DNAの逆方向の繰り返し配列であるホルモン応答配列(HRE)を生じる。核受容体/DNA複合体は、他のタンパク質を動員し、これがHREの下流にあるDNAをメッセンジャーRNAに転写する。タイプIIの受容体(NR1群)は、核内で保持され、ヘテロダイマーとして、通常はレチノイドX受容体(RXR)が、DNAに結合する。タイプIIの核内ホルモン受容体は、コリプレッサータンパク質との間で複合体を形成することが多い。タイプIIの受容体に結合するリガンドは、コリプレッサーの解離とコアクチベータータンパク質の動員を引き起こす。さらにタンパク質が核受容体/DNA複合体に動員され、これがDNAをメッセンジャーRNAに転写する。タイプIIIの核内ホルモン受容体(NR2群)は、順方向の繰り返し配列であるHREのDNAにホモダイマーとして結合するオーファン受容体である。タイプIVの核内ホルモン受容体は、モノマーまたはダイマーとしてDNAに結合する。タイプIVの受容体は、受容体の単一のDNA結合ドメインが単一のHREの半分の領域に結合するため、独特である。NHRリガンドは、タイプI、タイプII、タイプIIIまたはタイプIV核内ホルモン受容体の1個または2個以上に対して(たとえば、アゴニストまたはアンタゴニストとして)作用するリガンドであってもよい。
GRリガンド(Y)の活性
いくつかの実施形態では、YのGR活性化のEC50(あるいは、アンタゴニストの場合、IC50)は、約10mMまたはそれ未満または1mM(1000μM)またはそれ未満(約750μMまたはそれ未満、約500μMまたはそれ未満、約250μMまたはそれ未満、約100μMまたはそれ未満、約75μMまたはそれ未満、約50μMまたはそれ未満、約25μMまたはそれ未満、約10μMまたはそれ未満、約7.5μMまたはそれ未満、約6μMまたはそれ未満、約5μMまたはそれ未満、約4μMまたはそれ未満、約3μMまたはそれ未満、約2μMまたはそれ未満または約1μMまたはそれ未満など)である。いくつかの実施形態では、グルココルチコイド受容体に対するYのEC50またはIC50は、約1000nMまたはそれ未満(約750nMまたはそれ未満、約500nMまたはそれ未満、約250nMまたはそれ未満、約100nMまたはそれ未満、約75nMまたはそれ未満、約50nMまたはそれ未満、約25nMまたはそれ未満、約10nMまたはそれ未満、約7.5nMまたはそれ未満、約6nMまたはそれ未満、約5nMまたはそれ未満、約4nMまたはそれ未満、約3nMまたはそれ未満、約2nMまたはそれ未満または約1nMまたはそれ未満など)である。いくつかの実施形態では、グルココルチコイド受容体に対するYのEC50またはIC50は、ピコモルの範囲である。したがって、いくつかの実施形態では、グルココルチコイド受容体に対するYのEC50またはIC50は、約1000pMまたはそれ未満(約750pMまたはそれ未満、約500pMまたはそれ未満、約250pMまたはそれ未満、約100pMまたはそれ未満、約75pMまたはそれ未満、約50pMまたはそれ未満、約25pMまたはそれ未満、約10pMまたはそれ未満、約7.5pMまたはそれ未満、約6pMまたはそれ未満、約5pMまたはそれ未満、約4pMまたはそれ未満、約3pMまたはそれ未満、約2pMまたはそれ未満または約1pMまたはそれ未満など)である。
いくつかの実施形態では、Yは、グルココルチコイド受容体に対するEC50またはIC50が、約0.001pMまたはそれより大きい、約0.01pMまたはそれより大きいあるいは、約0.1pMまたはそれより大きい。グルココルチコイド受容体の活性化(グルココルチコイド受容体の活性)については、当分野で知られたアッセイによって、in vitroで測定可能である。たとえば、ホルモン応答性プロモーターの制御下にて、レポーター遺伝子(β−ガラクトシダーゼをコードするlacZなど)を有する酵母細胞で受容体を発現させることで、グルココルチコイド受容体に対する活性を測定可能である。よって、受容体に対して作用するリガンドの存在下、レポーター遺伝子が発現され、レポーター遺伝子産物の活性を(たとえば、最初は黄色だったクロロフェノールレッド−β−D−ガラクトピラノシド(CPRG)などの色素生成基質を分解して、吸収で測定できる赤色産物にするという、β−ガラクトシダーゼの活性を測定することによって)測定すればよい。たとえば、Jungbauer and Beck, J. Chromatog. B, 77: 167-178 (2002);Routledge and Sumpter, J. Biol. Chem, 272: 3280-3288 (1997);Liu et al., J. Biol. Chem., 274: 26654-26660 (1999)を参照のこと。グルココルチコイド受容体に対するGRリガンドの結合については、たとえば、蛍光偏光または放射性アッセイなどの当分野で知られた結合アッセイで判断できる。たとえば、Ranamoorthy et al., 138(4): 1520-1527 (1997)を参照のこと。
いくつかの実施形態では、天然のグルココルチコイドの場合と比較して、グルココルチコイド受容体に対するYの活性(グルココルチコイド活性)が、約0.001%またはそれよりも高い、約0.01%またはそれよりも高い、約0.1%またはそれよりも高い、約0.5%またはそれよりも高い、約1%またはそれよりも高い、約5%またはそれよりも高い、約10%またはそれよりも高い、約20%またはそれよりも高い、約30%またはそれよりも高い、約40%またはそれよりも高い、約50%またはそれよりも高い、約60%またはそれよりも高い、約75%またはそれよりも高い、約100%またはそれよりも高い、約125%またはそれよりも高い、約150%またはそれよりも高い、約175%またはそれよりも高い、約200%またはそれよりも高い、約250%またはそれよりも高い、約300%またはそれよりも高い、約350%またはそれよりも高い、約400%またはそれよりも高い、約450%またはそれよりも高いあるいは、約500%またはそれよりも高い。いくつかの実施形態では、天然のグルココルチコイドの場合と比較して、グルココルチコイド受容体に対するYの活性が、約5000%またはそれ未満または約10,000%またはそれ未満。受容体の天然のリガンドと比較した場合の受容体に対するYの活性については、天然のリガンドのEC50に対するYのEC50の反比として計算する。いくつかの実施形態では、Yは、受容体の天然のリガンドである。
GRリガンド(Y)の構造
本発明のGRリガンド(Y)は、一部または全体が非ペプチド性で、疎水性または親油性である。いくつかの実施形態では、GRリガンドは、分子量が約5000ダルトンまたはそれ未満または約4000ダルトンまたはそれ未満または約3000ダルトンまたはそれ未満または約2000ダルトンまたはそれ未満あるいは、約1750ダルトンまたはそれ未満あるいは、約1500ダルトンまたはそれ未満あるいは、約1250ダルトンまたはそれ未満あるいは、約1000ダルトンまたはそれ未満または約750ダルトンまたはそれ未満または約500ダルトンまたはそれ未満または約250ダルトンまたはそれ未満である。Yの構造は、本明細書に開示の教示内容に従うものであればよい。
本明細書に記載の実施形態では、Yは、QまたはLと反応できるYの任意の位置で、L(Lが結合基である場合など)またはQ(Lが結合である場合など)に結合する。当業者であれば、一般的な知識と本明細書にて提供する開示内容とに鑑みて、結合の位置および手段を容易に判断できよう。
Yが1つの5員環に結合した3つの6員環を有する四環性骨格またはそのバリエーション(ビタミンD受容体で作用するYなど)を含む本明細書に記載のいずれの実施形態においても、骨格の炭素原子を以下に示すような位置番号で参照する。
たとえば、6位にケトンを有する修飾は、以下の構造を示す。
全ての実施形態で、Yは、グルココルチコイド受容体(GR)に対して作用する。いくつかの実施形態では、Yは、GRに対してアゴニスト活性を与えるまたは促進する構造を有し、他の実施形態では、Yは、GRのアンタゴニストである。例示としての実施形態では、Yは、式Cの構造を有する。
(式中、R2、R3、R6、R7、R8、R9、R10は各々独立に、式Cの化合物がGRに結合する際にアゴニスト活性またはアンタゴニスト活性を与えるまたは促進する部分であり、点線は各々、任意の二重結合を表す)。いくつかの実施形態では、式Cは、1位、2位、4位、5位、6位、7位、8位、9位、11位、12位、14位、15位(11位のヒドロキシルまたはケトンなど)のうちの1箇所または2箇所以上に、1個または2個以上の置換基をさらに有する。
いくつかの実施形態では、Yが式Cの構造を有し、式中、
R2は、水素、(C0〜C8アルキル)ハロ、C1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、C2〜C18アルキニル、ヘテロアルキル、(C0〜C8アルキル)アリール、(C0〜C8アルキル)ヘテロアリール(C0〜C8アルキル)OC1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)OC2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)OC2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)OH、(C0〜C8アルキル)SH、(C0〜C8アルキル)NR24C1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)NR24C2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)NR24C2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)NR24H2、(C0〜C8アルキル)C(O)C1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)C(O)C2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)C(O)C2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)H、(C0〜C8アルキル)C(O)アリール、(C0〜C8アルキル)C(O)ヘテロアリール(C0〜C8アルキル)C(O)OC1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)C(O)OC2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)C(O)OC2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)OH、(C0〜C8アルキル)C(O)Oアリール、(C0〜C8アルキル)C(O)Oヘテロアリール(C0〜C8アルキル)OC(O)C1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)OC(O)C2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)OC(O)C2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24C1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24C2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24C2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24H2、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24アリール、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24ヘテロアリール(C0〜C8アルキル)NR24C(O)C1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)NR24C(O)C2〜C8アルケニルまたは(C0〜C8アルキル)NR24C(O)C2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)NR24C(O)OH、(C0〜C8アルキル)OC(O)OC1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)OC(O)OC2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)OC(O)OC2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)OC(O)OH、(C0〜C8アルキル)OC(O)NR24C1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)OC(O)NR24C2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)OC(O)NR24C2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)OC(O)NR24H2、(C0〜C8アルキル)NR24(O)OC1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)NR24(O)OC2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)NR24(O)OC2〜C18アルキニルまたは(C0〜C8アルキル)NR24(O)OHであり、
R3は、水素、(C0〜C8アルキル)ハロ、C1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、C2〜C18アルキニル、ヘテロアルキル、(C0〜C8アルキル)アリール、(C0〜C8アルキル)ヘテロアリール(C0〜C8アルキル)OC1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)OC2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)OC2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)OH、(C0〜C8アルキル)SH、(C0〜C8アルキル)NR24C1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)NR24C2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)NR24C2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)NR24H2、(C0〜C8アルキル)C(O)C1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)C(O)C2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)C(O)C2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)H、(C0〜C8アルキル)C(O)アリール、(C0〜C8アルキル)C(O)ヘテロアリール(C0〜C8アルキル)C(O)OC1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)C(O)OC2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)C(O)OC2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)OH、(C0〜C8アルキル)C(O)Oアリール、(C0〜C8アルキル)C(O)Oヘテロアリール(C0〜C8アルキル)OC(O)C1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)OC(O)C2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)OC(O)C2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24C1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24C2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24C2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24H2、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24アリール、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24ヘテロアリール(C0〜C8アルキル)NR24C(O)C1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)NR24C(O)C2〜C8アルケニルまたは(C0〜C8アルキル)NR24C(O)C2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)NR24C(O)OH、(C0〜C8アルキル)OC(O)OC1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)OC(O)OC2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)OC(O)OC2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)OC(O)OH、(C0〜C8アルキル)OC(O)NR24C1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)OC(O)NR24C2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)OC(O)NR24C2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)OC(O)NR24H2、(C0〜C8アルキル)NR24(O)OC1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)NR24(O)OC2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)NR24(O)OC2〜C18アルキニルまたは(C0〜C8アルキル)NR24(O)OHであり、
R6は、水素、C1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、C2〜C18アルキニル、ヘテロアルキル、(C0〜C8アルキル)アリール、(C0〜C8アルキル)ヘテロアリール(C0〜C8アルキル)C(O)C1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)C(O)C2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)C(O)C2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)H、(C0〜C8アルキル)C(O)アリール、(C0〜C8アルキル)C(O)ヘテロアリール(C0〜C8アルキル)C(O)OC1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)C(O)OC2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)C(O)OC2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)OH、C0〜C8アルキル)C(O)Oアリール、(C0〜C8アルキル)C(O)Oヘテロアリール(C0〜C8アルキル)C(O)NR24C1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24C2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24C2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24H2、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24アリールまたは(C0〜C8アルキル)C(O)NR24ヘテロアリールであり、
R7は、水素、C1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、C2〜C18アルキニル、ヘテロアルキル、(C0〜C8アルキル)アリール、(C0〜C8アルキル)ヘテロアリール(C0〜C8アルキル)C(O)C1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)C(O)C2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)C(O)C2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)H、(C0〜C8アルキル)C(O)アリール、(C0〜C8アルキル)C(O)ヘテロアリール(C0〜C8アルキル)C(O)OC1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)C(O)OC2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)C(O)OC2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)OH、C0〜C8アルキル)C(O)Oアリール、(C0〜C8アルキル)C(O)Oヘテロアリール(C0〜C8アルキル)C(O)NR24C1〜C18アルキル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24C2〜C18アルケニル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24C2〜C18アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24H2、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24アリールまたは(C0〜C8アルキル)C(O)NR24ヘテロアリールであり、
R8は、水素、(C0〜C8アルキル)ハロ、C1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、C2〜C18アルキニル、ヘテロアルキル、(C0〜C8アルキル)アリール、(C0〜C8アルキル)ヘテロアリールであり、
R9は、水素、(C0〜C8アルキル)ハロ、C1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、C2〜C18アルキニル、ヘテロアルキル、(C0〜C8アルキル)アリール、(C0〜C8アルキル)ヘテロアリールであり、
R10は、水素、(C0〜C8アルキル)ハロ、C1〜C18アルキルまたは(C0〜C8アルキル)OHであり、
R24は、水素またはC1〜C18アルキルである。
いくつかの実施形態では、Yは式Cの構造を有し、式中、
R2は、水素、ハロ、OHまたはC1〜C7アルキルであり、
R3は、水素、ハロ、OHまたはC1〜C7アルキルであり、
R6は、水素、C1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルキニル、ヘテロアルキル、(C0〜C8アルキル)アリール、(C0〜C8アルキル)ヘテロアリール(C0〜C8アルキル)C(O)C1〜C8アルキル、(C0〜C8アルキル)C(O)C2〜C8アルケニル、(C0〜C8アルキル)C(O)C2〜C8アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)H、(C0〜C8アルキル)C(O)アリール、(C0〜C8アルキル)C(O)ヘテロアリール(C0〜C8アルキル)C(O)OC1〜C8アルキル、(C0〜C8アルキル)C(O)OC2〜C8アルケニル、(C0〜C8アルキル)C(O)OC2〜C8アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)OH、C0〜C8アルキル)C(O)Oアリール、(C0〜C8アルキル)C(O)Oヘテロアリール(C0〜C8アルキル)C(O)NR24C1〜C8アルキル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24C2〜C8アルケニル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24C2〜C8アルキニル、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24H2、(C0〜C8アルキル)C(O)NR24アリールまたは(C0〜C8アルキル)C(O)NR24ヘテロアリールであり、
R7は、水素、C1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルキニル、ヘテロアルキル、(C0〜C8アルキル)アリール、(C0〜C8アルキル)ヘテロアリール(C0アルキル)C(O)C1〜C8アルキル、(C0アルキル)C(O)C2〜C8アルケニル、(C0アルキル)C(O)C2〜C8アルキニル、(C0)C(O)アリール、(C0)C(O)ヘテロアリール(C0)C(O)OC1〜C8アルキル、(C0アルキル)C(O)OC2〜C8アルケニル、(C0アルキル)C(O)OC2〜C8アルキニルまたは(C0アルキル)C(O)OHであり、
R8は、水素またはC1〜C7アルキルであり、
R9は、水素またはC1〜C7アルキルであり、
R10は、水素またはOHであり、
R24は、水素またはC1〜C7アルキルである。
たとえば、R2は水素またはメチルであり、R3は、水素、フルオロ、クロロまたはメチルであり、R6は、水素またはC(O)C1〜C7アルキルであり、R7は、水素、C(O)CH3またはC(O)CH2CH3であり、R8は水素またはメチルであり、R9は水素またはメチルであり、R10は、ヒドロキシルである。
式Cの構造の非限定的な例として、以下のもの、およびこれらの誘導体があげられる。
Yが式Cの構造を有する実施形態では、Yは、QまたはLと反応できる式Cの任意の位置で、L(Lが結合基である場合など)またはQ(Lが結合である場合など)に結合している。当業者であれば、一般的な知識と本明細書にて提供する開示内容とに鑑みて、QまたはLに対する式Cでの結合位置と式Cの結合手段とを容易に判断できよう。いくつかの実施形態では、式Cは、式Cの1位、2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位、9位、10位、11位、12位、13位、14位、15位、16位、17位、18位、19位、20位、21位、22位または23位のいずれかで、LまたはQに結合している。いくつかの実施形態では、式Cは、式Cの3位、10位、16位または17位でLまたはQに結合している。好ましい実施形態において、式Cは、式Cの13位または17位でLまたはQに結合している。
GRリガンド(Y)の修飾
いくつかの実施形態では、GRリガンドは、グルカゴンスーパーファミリーのペプチド(Q)または結合基(L)と反応できる反応性部分を含むように、誘導体化されるか、そうでなければ化学的に修飾される。本明細書に記載の実施形態では、Yは、QまたはLと反応できるYの任意の位置で誘導体化される。Yでの誘導体化の位置は、当業者には自明であり、使用するGRリガンドのタイプと、所望の活性とに左右される。たとえば、Yが、3つの6員環が1つの5員環に結合した四環骨格の構造またはそのバリエーションを有する実施形態では、Yは、1位、2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位、9位、10位、11位、12位、13位、14位、15位、16位、17位、18位、19位、20位、21位、22位、23位、24位または25位のいずれでも誘導体化可能である。他の誘導体位置は、本明細書で上述した通りであってもよい。
当業者に知られた薬剤または本明細書に記載の薬剤を用いて、GRリガンドを誘導体化することが可能である(結合基のセクションとQおよび/またはYの化学修飾のサブセクションなどを参照のこと)。たとえば、コハク酸、無水コハク酸、安息香酸、2−ブロモ酢酸エチルまたはヨード酢酸を用いてエストラジオールを誘導体化し、以下に示すエストラジオールの誘導体を形成することができ、それらの誘導体は、QまたはLに結合可能である。
同様に、上述したGRリガンドはいずれも、当分野で知られた方法によって誘導体化可能なものである。また、誘導体化されたリガンドには市販されているものもあり、Sigma-Aldrichなどの化学企業から購入可能である。
グルカゴンスーパーファミリーのペプチド(Q)
本明細書に記載のQ−L−Y結合体では、Qは、グルカゴンスーパーファミリーのペプチドである。グルカゴンスーパーファミリーのペプチドとは、N末端領域および/またはC末端領域の構造が関連したペプチドの群を示す(たとえば、Sherwood et al., Endocrine Reviews 21: 619-670 (2000)を参照のこと)。C末端は通常、受容体の結合において機能し、N末端は通常、受容体のシグナル伝達において機能すると考えられている。N末端領域およびC末端領域における数個のアミノ酸は、グルカゴンスーパーファミリーのメンバー間で高度に保存されている。これらの保存されたアミノ酸のうちのいくつかには、1番目のヒスチジン、4番目のグリシン、6番目のフェニルアラニン、22番目のフェニルアラニン、23番目のバリン、25番目のスレオニン、26番目のロイシンがあり、これらの位置のアミノ酸が、そのアミノ酸側鎖の構造で同一性、保存的な置換または類似性を示している。
グルカゴンスーパーファミリーのペプチドは、グルカゴン関連ペプチド、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH、配列番号1619)、血管作用性小腸ペプチド(VIP、配列番号1620)、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド27(PACAP−27、配列番号1621)、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI;配列番号1542)、ペプチドヒスチジンメチオニン(PHM、配列番号1622)、セクレチン(配列番号1623)および/またはこれらの類縁体、誘導体または結合体を含む。いくつかの実施形態では、Qは、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸修飾を有する、天然のグルカゴン、天然のエキセンディン−4、天然のGLP−1(7−37)、天然のGLP−2、天然のGHRH、天然のVIP、天然のPACAP−27、天然のPHM、天然のオキシントモジュリン、天然のセクレチンまたは天然のGIPのアミノ酸配列を有する。
本発明のいくつかの態様では、Qは、たとえば、グルカゴン(配列番号1601)、オキシントモジュリン(配列番号1606)、エキセンディン−4(配列番号1618)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)(配列番号1603として提供される7番目から36番目のアミノ酸;7番目から37番目のアミノ酸は、配列番号1604として提供される)、グルカゴン様ペプチド−2(GLP−2、配列番号1608)、胃抑制ペプチド(GIP、配列番号1607)またはこれらの類縁体、誘導体および結合体などのグルカゴン関連ペプチドである。グルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体、GLP−1受容体、GLP−2受容体、GIP受容体のうちの1個または2個以上に対して(アゴニストまたはアンタゴニストとしての)生物学的活性を有し、天然のグルカゴン、天然のオキシントモジュリン、天然のエキセンディン−4、天然のGLP−1(7−37)、天然のGLP−2または天然のGIPのうちの少なくとも1つとのアミノ酸配列の配列同一性が、ペプチドの長さ全体にわたって(あるいはグルカゴンに対応する位置全体にわたって、たとえば図1を参照のこと)、少なくとも20%(25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%など)である。
グルカゴン受容体またはGLP−1受容体またはGIP受容体のうちの1個または2個以上に対する生物学的活性(アゴニストまたはアンタゴニストとして)を有するペプチドなど、グルカゴン関連ペプチドの活性で分類された可能性のあるすべてのサブセットならびに、天然のGLP−1の長さ全体で天然のGLP−1との配列同一性が少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%であるアミノ酸配列を含むものなど、表記の天然ペプチドそれぞれに対する配列同一性で分類された可能性のあるサブセットが考えられていることを、理解されたい。本発明のいくつかの実施形態では、グルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体アゴニスト活性、GLP−1受容体アゴニスト活性、GIP受容体アゴニスト活性、グルカゴン受容体/GLP−1受容体コアゴニスト活性、グルカゴン受容体/GIP受容体コアゴニスト活性、GLP−1受容体/GIP受容体コアゴニスト活性、グルカゴン受容体/GLP−1受容体/GIP受容体トリアゴニスト活性、グルカゴン受容体アンタゴニスト活性またはグルカゴン受容体アンタゴニスト/GLP−1受容体アゴニスト活性を有するペプチドである。いくつかの実施形態では、ペプチドは、分子のC末端側の半分におけるαヘリックス構造を保持している。いくつかの実施形態では、ペプチドは、グルカゴンの3番目の位置あるいは、GLP−1(7−37)の7番目、10番目、12番目、13番目、15番目または17番目の位置など、受容体との相互作用またはシグナル伝達に関与する位置を保持している。したがって、グルカゴン関連ペプチドは、クラス1、クラス2、クラス3、クラス4および/またはクラス5のペプチドであってもよく、その各々について本明細書でさらに説明する。
また、Qは、当分野で知られたグルカゴンスーパーファミリーのペプチドであってもよく、このうちいくつかを、非限定的な例によって本明細書に開示する。多岐にわたるGLP−1類縁体が当分野で知られており、本発明によるグルカゴン関連ペプチドである。たとえば、国際特許出願公開第WO2008023050号、同第WO2007030519号、同第WO2005058954号、同第WO2003011892号、同第WO2007046834号、同第WO2006134340号、同第WO2006124529号、同第WO2004022004号、同第WO2003018516号、同第WO2007124461号を参照のこと(GLP−1類縁体または誘導体の配列または式が開示されている文献についてはいずれも、その全体を本明細書に援用する)。いずれの実施形態でも、Qは、国際特許出願公開第WO2007/056362号、同第WO2008/086086号、同第WO2009/155527号、同第WO2008/101017号、同第WO2009/155258号、同第WO2009/058662号、同第WO2009/058734号、同第WO2009/099763号、同第WO2010/011439号、国際特許出願第US09/68745号、米国特許出願第61/187,578号(それぞれ全体を本明細書に援用する)に開示されたグルカゴン関連ペプチドであってもよい。特定の実施形態では、Qは、本明細書で詳細に説明するような、クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドである。本明細書に記載のいずれの実施形態においても、Qは、配列番号1〜760、801〜919、1001〜1275、1301〜1371、1401〜1518、1601〜1650のいずれかである。いくつかの実施形態では、Qは、配列番号1647〜1650のいずれかである。
グルカゴンスーパーファミリーのペプチド(Q)の活性
グルカゴン受容体に対する活性
いくつかの実施形態では、Qは、グルカゴン受容体の活性化でのEC50(またはグルカゴン受容体の拮抗作用でのIC50)が、約10mMまたはそれ未満あるいは、約1mM(1000μM)またはそれ未満(約750μMまたはそれ未満、約500μMまたはそれ未満、約250μMまたはそれ未満、約100μMまたはそれ未満、約75μMまたはそれ未満、約50μMまたはそれ未満、約25μMまたはそれ未満、約10μMまたはそれ未満、約7.5μMまたはそれ未満、約6μMまたはそれ未満、約5μMまたはそれ未満、約4μMまたはそれ未満、約3μMまたはそれ未満、約2μMまたはそれ未満または約1μMまたはそれ未満など)である。いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQのEC50またはIC50は、約1000nMまたはそれ未満(約750nMまたはそれ未満、約500nMまたはそれ未満、約250nMまたはそれ未満、約100nMまたはそれ未満、約75nMまたはそれ未満、約50nMまたはそれ未満、約25nMまたはそれ未満、約10nMまたはそれ未満、約7.5nMまたはそれ未満、約6nMまたはそれ未満、約5nMまたはそれ未満、約4nMまたはそれ未満、約3nMまたはそれ未満、約2nMまたはそれ未満または約1nMまたはそれ未満など)である。いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQのEC50またはIC50は、ピコモルの範囲である。したがって、いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQのEC50またはIC50は、約1000pMまたはそれ未満(約750pMまたはそれ未満、約500pMまたはそれ未満、約250pMまたはそれ未満、約100pMまたはそれ未満、約75pMまたはそれ未満、約50pMまたはそれ未満、約25pMまたはそれ未満、約10pMまたはそれ未満、約7.5pMまたはそれ未満、約6pMまたはそれ未満、約5pMまたはそれ未満、約4pMまたはそれ未満、約3pMまたはそれ未満、約2pMまたはそれ未満または約1pMまたはそれ未満など)である。
いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQのEC50またはIC50は、約0.001pMまたはそれより大きい、約0.01pMまたはそれより大きいあるいは、約0.1pMまたはそれより大きい。グルカゴン受容体の活性化(グルカゴン受容体の活性)は、グルカゴン受容体を過剰発現するHEK293細胞において、cAMP誘導を測定するin vitroのアッセイによって測定することができる。たとえば、実施例2で記載したように、グルカゴン受容体をコードするDNAと、cAMP応答配列に結合させたルシフェラーゼ遺伝子とをコトランスフェクトしたHEK293細胞をアッセイすればよい。
いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQの活性は、天然のグルカゴン(グルカゴン活性)の場合と比較して、約0.001%またはそれよりも高い、約0.01%またはそれよりも高い、約0.1%またはそれよりも高い、約0.5%またはそれよりも高い、約1%またはそれよりも高い、約5%またはそれよりも高い、約10%またはそれよりも高い、約20%またはそれよりも高い、約30%またはそれよりも高い、約40%またはそれよりも高い、約50%またはそれよりも高い、約60%またはそれよりも高い、約75%またはそれよりも高い、約100%またはそれよりも高い、約125%またはそれよりも高い、約150%またはそれよりも高い、約175%またはそれよりも高い、約200%またはそれよりも高い、約250%またはそれよりも高い、約300%またはそれよりも高い、約350%またはそれよりも高い、約400%またはそれよりも高い、約450%またはそれよりも高いあるいは、約500%またはそれよりも高い。いくつかの実施形態では、Qは、天然のグルカゴンの場合と比較して、グルカゴン受容体に対する活性は、約5000%またはそれ未満あるいは、約10,000%またはそれ未満である。受容体の天然のリガンドと比較した場合の受容体に対するQの活性については、天然のリガンドに対するQのEC50の反比として計算する。
いくつかの実施形態では、Qは、グルカゴン受容体に対してのみ十分な活性を示し、GLP−1受容体またはGIP受容体に対しては、ほとんど活性を示さないか、まったく活性を示さない。いくつかの実施形態では、Qは、「純粋なグルカゴン受容体アゴニスト」であるとみなされるか、「グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニスト」または「グルカゴン/GIP受容体コアゴニスト」であるとはみなされない。いくつかの実施形態では、Qは、本明細書に記載のグルカゴン受容体に対して任意のレベルの活性を示すが、GLP−1受容体またはGIP受容体に対する活性のほうが実質的に低い。いくつかの実施形態では、Qは、GLP−1受容体に対するEC50が、グルカゴン受容体に対するEC50と比較して、100倍またはそれより大きい。いくつかの実施形態では、Qは、GIP受容体に対するEC50が、グルカゴン受容体に対するEC50と比較して、100倍またはそれより大きい。
GLP−1受容体に対する活性
いくつかの実施形態では、Qは、GLP−1受容体の活性化でのEC50(またはGLP−1受容体の拮抗作用でのICGLP−1)が、約10mMまたはそれ未満あるいは、約1mM(1000μM)またはそれ未満(約750μMまたはそれ未満、約500μMまたはそれ未満、約250μMまたはそれ未満、約100μMまたはそれ未満、約75μMまたはそれ未満、約50μMまたはそれ未満、約25μMまたはそれ未満、約10μMまたはそれ未満、約7.5μMまたはそれ未満、約6μMまたはそれ未満、約5μMまたはそれ未満、約4μMまたはそれ未満、約3μMまたはそれ未満、約2μMまたはそれ未満または約1μMまたはそれ未満など)である。いくつかの実施形態では、GLP−1受容体の活性化に対するQのEC50またはIC50は、約1000nMまたはそれ未満(約750nMまたはそれ未満、約500nMまたはそれ未満、約250nMまたはそれ未満、約100nMまたはそれ未満、約75nMまたはそれ未満、約50nMまたはそれ未満、約25nMまたはそれ未満、約10nMまたはそれ未満、約7.5nMまたはそれ未満、約6nMまたはそれ未満、約5nMまたはそれ未満、約4nMまたはそれ未満、約3nMまたはそれ未満、約2nMまたはそれ未満または約1nMまたはそれ未満など)である。いくつかの実施形態では、GLP−1受容体に対するQのEC50またはIC50は、ピコモルの範囲である。したがって、いくつかの実施形態では、GLP−1受容体の活性化に対するQのEC50またはIC50は、約1000pMまたはそれ未満(約750pMまたはそれ未満、約500pMまたはそれ未満、約250pMまたはそれ未満、約100pMまたはそれ未満、約75pMまたはそれ未満、約50pMまたはそれ未満、約25pMまたはそれ未満、約10pMまたはそれ未満、約7.5pMまたはそれ未満、約6pMまたはそれ未満、約5pMまたはそれ未満、約4pMまたはそれ未満、約3pMまたはそれ未満、約2pMまたはそれ未満または約1pMまたはそれ未満など)である。
いくつかの実施形態では、GLP−1受容体に対するQのEC50またはIC50は、約0.001pMまたはそれより大きい、約0.01pMまたはそれより大きいあるいは、約0.1pMまたはそれより大きい。GLP−1受容体の活性化(GLP−1受容体の活性)は、GLP−1受容体を過剰発現するHEK293細胞において、cAMP誘導を測定するin vitroのアッセイによって測定することができる。たとえば、実施例2で記載したように、GLP−1受容体をコードするDNAと、cAMP応答配列に結合させたルシフェラーゼ遺伝子とをコトランスフェクトしたHEK293細胞をアッセイすればよい。
いくつかの実施形態では、GLP−1受容体に対するQの活性は、天然のGLP−1(GLP−1活性)の場合と比較して、約0.001%またはそれよりも高い、約0.01%またはそれよりも高い、約0.1%またはそれよりも高い、約0.5%またはそれよりも高い、約1%またはそれよりも高い、約5%またはそれよりも高い、約10%またはそれよりも高い、約20%またはそれよりも高い、約30%またはそれよりも高い、約40%またはそれよりも高い、約50%またはそれよりも高い、約60%またはそれよりも高い、約75%またはそれよりも高い、約100%またはそれよりも高い、約125%またはそれよりも高い、約150%またはそれよりも高い、約175%またはそれよりも高い、約200%またはそれよりも高い、約250%またはそれよりも高い、約300%またはそれよりも高い、約350%またはそれよりも高い、約400%またはそれよりも高い、約450%またはそれよりも高いあるいは、約500%またはそれよりも高い。いくつかの実施形態では、GLP−1受容体にQの対する活性は、天然のGLP−1(GLP−1活性)の場合と比較して、約5000%またはそれ未満あるいは、約10,000%またはそれ未満である。
いくつかの実施形態では、Qは、GLP−1受容体に対してのみ十分な活性を示し、グルカゴン受容体またはGIP受容体に対しては、ほとんど活性を示さないか、まったく活性を示さない。いくつかの実施形態では、Qは、「純粋なGLP−1受容体アゴニスト」であるとみなされるか、「グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニスト」または「GLP−1/GIPコアゴニスト」であるとはみなされない。いくつかの実施形態では、Qは、本明細書に記載のGLP−1受容体に対して任意のレベルの活性を示すが、グルカゴン受容体またはGIP受容体に対する活性のほうが実質的に低い。いくつかの実施形態では、Qは、グルカゴン受容体に対するEC50が、GLP−1受容体に対するEC50と比較して、100倍またはそれより大きい。いくつかの実施形態では、Qは、GIP受容体に対するEC50が、GLP−1受容体に対するEC50と比較して、100倍またはそれより大きい。
GIP受容体に対する活性
いくつかの実施形態では、Qは、GIP受容体の活性化でのEC50(またはGIP受容体の拮抗作用でのICGIP)が、約10mMまたはそれ未満あるいは、約1mM(1000μM)またはそれ未満(約750μMまたはそれ未満、約500μMまたはそれ未満、約250μMまたはそれ未満、約100μMまたはそれ未満、約75μMまたはそれ未満、約50μMまたはそれ未満、約25μMまたはそれ未満、約10μMまたはそれ未満、約7.5μMまたはそれ未満、約6μMまたはそれ未満、約5μMまたはそれ未満、約4μMまたはそれ未満、約3μMまたはそれ未満、約2μMまたはそれ未満または約1μMまたはそれ未満など)である。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するQのEC50またはIC50は、1000nM未満、900nM未満、800nM未満、700nM未満、600nM未満、500nM未満、400nM未満、300nM未満または200nM未満である。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するQのEC50またはIC50は、約100nMまたはそれ未満、たとえば、約75nMまたはそれ未満、約50nMまたはそれ未満、約25nMまたはそれ未満、約10nMまたはそれ未満、約8nMまたはそれ未満、約6nMまたはそれ未満、約5nMまたはそれ未満、約4nMまたはそれ未満、約3nMまたはそれ未満、約2nMまたはそれ未満あるいは、約1nMまたはそれ未満である。いくつかの実施形態では、GIP受容体の活性化でのQのEC50またはIC50は、ピコモルの範囲である。例示としての実施形態では、GIP受容体に対するQのEC50またはIC50は、1000pM未満、900pM未満、800pM未満、700pM未満、600pM未満、500pM未満、400pM未満、300pM未満、200pM未満である。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するQのEC50またはIC50は、約100pMまたはそれ未満、たとえば、約75pMまたはそれ未満、約50pMまたはそれ未満、約25pMまたはそれ未満、約10pMまたはそれ未満、約8pMまたはそれ未満、約6pMまたはそれ未満、約5pMまたはそれ未満、約4pMまたはそれ未満、約3pMまたはそれ未満、約2pMまたはそれ未満あるいは、約1pMまたはそれ未満である。受容体の活性化は、GIP受容体を過剰発現するHEK293細胞において、cAMP誘導を測定するin vitroのアッセイによって測定することができる。たとえば、実施例2で記載したように、受容体をコードするDNAと、cAMP応答配列に結合させたルシフェラーゼ遺伝子とをコトランスフェクトしたHEK293細胞をアッセイすればよい。
本開示のいくつかの実施形態では、Qは、GIP受容体に対する活性が、天然のGIPの場合と比較して、少なくともまたは約0.1%である。例示としての実施形態では、Qは、GIP受容体に対する活性が、天然のGIPの場合と比較して、少なくともまたは約0.2%、少なくともまたは約0.3%、少なくともまたは約0.4%、少なくともまたは約0.5%、少なくともまたは約0.6%、少なくともまたは約0.7%、少なくともまたは約0.8%、少なくともまたは約0.9%、少なくともまたは約1%、少なくともまたは約5%、少なくともまたは約10%、少なくともまたは約20%、少なくともまたは約30%、少なくともまたは約40%、少なくともまたは約50%、少なくともまたは約60%、少なくともまたは約70%、少なくともまたは約75%、少なくともまたは約80%、少なくともまたは約90%、少なくともまたは約95%または少なくともまたは約100%である。
本開示のいくつかの実施形態では、Qは、GIP受容体に対する活性が、天然のGIPの場合よりも大きい。例示としての実施形態では、Qは、GIP受容体に対する活性が、天然のGIPの場合と比較して、少なくともまたは約101%、少なくともまたは約105%、少なくともまたは約110%、少なくともまたは約125%、少なくともまたは約150%、少なくともまたは約175%、少なくともまたは約200%、少なくともまたは約300%、少なくともまたは約400%、少なくともまたは約500%あるいはこれよりさらに高い%である。いくつかの実施形態では、Qは、GIP受容体に対する活性が、天然のGIPの場合と比較して、最大で1000%、10,000%、100,000%または1,000,000%である。天然のGIPと比較した場合のGIP受容体に対するペプチドの活性については、GIPアゴニストのペプチド対天然のGIPのEC50の反比として計算する。
いくつかの実施形態では、Qは、GIP受容体に対してのみ十分な活性を示し、グルカゴン受容体またはGLP−1受容体に対しては、ほとんど活性を示さないか、まったく活性を示さない。いくつかの実施形態では、Qは、「純粋なGIP受容体アゴニスト」であるとみなされるか、「グルカゴン/GIP受容体コアゴニスト」または「GLP−1/GIPコアゴニスト」であるとはみなされない。いくつかの実施形態では、Qは、本明細書に記載のGIP受容体に対して任意のレベルの活性を示すが、グルカゴン受容体またはGLP−1受容体に対する活性のほうが実質的に低い。いくつかの実施形態では、Qは、グルカゴン受容体に対するEC50が、GIP受容体に対するEC50よりも100倍またはそれより大きく、GLP−1受容体に対するEC50が、GIP受容体に対するEC50よりも100倍またはそれより大きい。
GLP−1受容体およびグルカゴン受容体に対する活性
いくつかの実施形態では、Qは、GLP−1受容体およびグルカゴン受容体の両方に対して活性を示す(「グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニスト」)。いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQの活性(EC50または相対活性など)は、GLP−1受容体に対する活性(EC50または相対活性など)と比較して、約50倍以内、約40倍以内、約30倍以内、約20倍以内、約10倍以内または約5倍以内で異なる(高いまたは低い)。いくつかの実施形態では、Qのグルカゴン活性は、そのGLP−1活性と比較して、約25倍以内、約20倍以内、約15倍以内、約10倍以内または約5倍以内で異なる(高いまたは低い)。
いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQの相対活性またはEC50または活性をGLP−1受容体に対するQの相対活性またはEC50または活性で割った比は、X未満であるか約Xであり、ここで、Xは、100、75、60、50、40、30、20、15、10または5から選択される。いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQのEC50または活性または相対活性をGLP−1受容体に対するQのEC50または活性または相対活性で割った比は、約1から5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、QのGLP−1活性に対するQのグルカゴン活性の比が、Z未満であるか約Zであり、ここで、Zは、100、75、60、50、40、30、20、15、10、5から選択される。いくつかの実施形態では、QのGLP−1活性に対するQのグルカゴン活性の比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQのEC50は、GLP−1受容体に対するEC50よりも2倍〜10倍(2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍など)大きい。
いくつかの実施形態では、GLP−1受容体に対するQの相対活性または活性またはEC50をグルカゴン受容体に対するグルカゴン類縁体の相対活性または活性またはEC50で割った比は、V未満であるか約Vであり、ここで、Vは、100、75、60、50、40、30、20、15、10または5から選択される。いくつかの実施形態では、GLP−1受容体に対するQのEC50または活性または相対活性をグルカゴン受容体に対するQのEC50または活性または相対活性で割った比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、Qのグルカゴン活性に対するQのGLP−1活性の比は、W未満であるか約Wであり、ここで、Wは、100、75、60、50、40、30、20、15、10、5から選択される。いくつかの実施形態では、Qのグルカゴン活性に対するQのGLP−1活性の比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、QのGLP−1受容体に対するEC50は、グルカゴン受容体に対するEC50よりも約2〜約10倍(2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍など)大きい。
いくつかの実施形態では、Qは、GLP−1受容体に対する活性(GLP−1活性)が、天然のGLP−1の少なくとも0.1%(約0.5%またはそれよりも高い、約1%またはそれよりも高い、約5%またはそれよりも高い、約10%またはそれよりも高いあるいはさらに高いなど)であり、グルカゴン受容体に対する活性(グルカゴン活性)が、天然のグルカゴンの少なくとも0.1%(約0.5%またはそれよりも高い、約1%またはそれよりも高い、約5%またはそれよりも高い、約10%またはそれよりも高いあるいはさらに高いなど)である。
Qの、GLP−1受容体に対するグルカゴン受容体の選択性は、グルカゴン/GLP−1活性の相対比(天然のグルカゴンの場合と比較したグルカゴン受容体に対するQの活性を、天然のGLP−1の場合と比較したGLP−1受容体に対する類縁体の活性で割ったもの)で説明できる。たとえば、グルカゴン受容体に対する活性が天然のグルカゴンの60%であり、かつ、GLP−1受容体に対する活性が天然のGLP−1の60%であるQは、グルカゴン/GLP−1活性の比が1:1である。グルカゴン/GLP−1活性の比の例として、約1:1、約1.5:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1または約10:1あるいは、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2または約1:1.5があげられる。一例として、グルカゴン/GLP−1活性の比が10:1であるということは、GLP−1受容体の選択性に対してグルカゴン受容体の選択性が10倍であることを示す。同様に、GLP−1/グルカゴン活性の比が10:1であるということは、グルカゴン受容体の選択性に対してGLP−1受容体の選択性が10倍であることを示す。
いくつかの実施形態では、Qは、グルカゴン受容体およびGLP−1受容体に対して十分な活性を示すが、GIP受容体に対しては、ほとんど活性を示さないか、まったく活性を示さない。いくつかの実施形態では、Qは、本明細書に記載のグルカゴン受容体およびGLP−1受容体に対して任意のレベルの活性を示すが、GIP受容体に対する活性のほうが実質的に低い。いくつかの実施形態では、Qは、GIP受容体に対するEC50が、グルカゴン受容体に対するEC50およびGLP−1受容体に対するEC50と比較して、100倍またはそれより大きい。
GLP−1受容体およびGIP受容体に対する活性
いくつかの実施形態では、Qは、GLP−1受容体およびGIP受容体の両方に対して活性を示す(「GIP/GLP−1受容体コアゴニスト」)。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するQの活性(EC50または相対活性など)は、GLP−1受容体に対する活性(EC50または相対活性など)と比較して、約50倍以内、約40倍以内、約30倍以内、約20倍以内、約10倍以内または約5倍以内で異なる(高いまたは低い)。いくつかの実施形態では、QのGIP活性は、そのGLP−1活性と比較して、約25倍以内、約20倍以内、約15倍以内、約10倍以内または約5倍以内で異なる(高いまたは低い)。
いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するQの相対活性またはEC50または活性をGLP−1受容体に対するQの相対活性またはEC50または活性で割った比は、X未満であるか約Xであり、ここで、Xは、100、75、60、50、40、30、20、15、10または5から選択される。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するQのEC50または活性または相対活性をGLP−1受容体に対するQのEC50または活性または相対活性で割った比は、約1から5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、QのGLP−1活性と比較した場合のQのGIP活性の比は、Z未満であるか約Zであり、ここで、Zは、100、75、60、50、40、30、20、15、10、5から選択される。いくつかの実施形態では、QのGLP−1活性と比較した場合のQのGIP活性の比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するQのEC50は、GLP−1受容体に対するEC50よりも2倍〜10倍(2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍など)大きい。
いくつかの実施形態では、GLP−1受容体に対するQの相対活性または活性またはEC50をGIP受容体に対するQの相対活性または活性またはEC50で割った比は、V未満であるか約Vであり、ここで、Vは、100、75、60、50、40、30、20、15、10または5から選択される。いくつかの実施形態では、GLP−1受容体に対するQのEC50または活性または相対活性をGIP受容体に対するQのEC50または活性または相対活性で割った比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、QのGIP活性と比較した場合のQのGLP−1活性の比、W未満であるか約Wであり、ここで、Wは、100、75、60、50、40、30、20、15、10、5から選択される。いくつかの実施形態では、QのGIP活性と比較した場合のQのGLP−1活性の比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、GLP−1受容体に対するQのEC50は、GIP受容体に対するEC50よりも約2〜約10倍(2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍など)大きい。
いくつかの実施形態では、Qは、GLP−1受容体に対する活性(GLP−1活性)が、天然のGLP−1の少なくとも0.1%(約0.5%またはそれよりも高い、約1%またはそれよりも高い、約5%またはそれよりも高い、約10%またはそれよりも高いあるいはさらに高いなど)であり、GIP受容体に対する活性(GIP活性)が天然のGIPの少なくとも0.1%(約0.5%またはそれよりも高い、約1%またはそれよりも高い、約5%またはそれよりも高い、約10%またはそれよりも高いあるいは、さらに高いなど)である。
Qの、GLP−1受容体に対するGIP受容体の選択性は、GIP/GLP−1活性の相対比(天然のGIPの場合と比較したGIP受容体に対するQの活性を天然のGLP−1の場合と比較したGLP−1受容体に対する類縁体の活性で割ったもの)で説明できる。たとえば、GIP受容体に対する活性が天然のGIPの60%であり、かつ、GLP−1受容体に対する活性が天然のGLP−1の60%であるQは、GIP/GLP−1活性の比が1:1である。GIP/GLP−1活性の比の例として、約1:1、約1.5:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1または約10:1あるいは、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2または約1:1.5があげられる。一例として、GIP/GLP−1活性の比が10:1であるということは、GLP−1受容体の選択性に対してGIP受容体の選択性が10倍であることを示す。同様に、GLP−1/GIP活性の比が10:1であるということは、GIP受容体の選択性に対してGLP−1受容体の選択性が10倍であることを示す。
グルカゴン受容体およびGIP受容体に対する活性
いくつかの実施形態では、Qは、グルカゴン受容体およびGIP受容体の両方に対して活性を示す(「GIP/グルカゴン受容体コアゴニスト」)。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するQの活性(EC50または相対活性など)は、グルカゴン受容体に対する活性(EC50または相対活性など)と比較して、約50倍以内、約40倍以内、約30倍以内、約20倍以内、約10倍以内または約5倍以内で異なる(高いまたは低い)。いくつかの実施形態では、QのGIP活性は、そのグルカゴン活性と比較して、約25倍以内、約20倍以内、約15倍以内、約10倍以内または約5倍以内で異なる(高いまたは低い)。
いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するQの相対活性またはEC50または活性をグルカゴン受容体に対するQの相対活性またはEC50または活性で割った比は、X未満であるか約Xであり、ここで、Xは、100、75、60、50、40、30、20、15、10または5から選択される。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するQのEC50または活性または相対活性をグルカゴン受容体に対するQのEC50または活性または相対活性で割った比は、約1から5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、Qのグルカゴン活性と比較した場合のQのGIP活性の比は、Z未満であるか約Zであり、ここで、Zは、100、75、60、50、40、30、20、15、10、5から選択される。いくつかの実施形態では、Qのグルカゴン活性と比較した場合のQのGIP活性の比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するQのEC50は、グルカゴン受容体に対するEC50よりも2倍〜10倍(2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍など)大きい。
いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQの相対活性または活性またはEC50をGIP受容体に対するQの相対活性または活性またはEC50で割った比は、V未満であるか約Vであり、ここで、Vは、100、75、60、50、40、30、20、15、10または5から選択される。いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQのEC50または活性または相対活性をGIP受容体に対するQのEC50または活性または相対活性で割った比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、Qのグルカゴン活性とQのGIP活性との比は、W未満であるか約Wであり、ここで、Wは、100、75、60、50、40、30、20、15、10、5から選択される。いくつかの実施形態では、Qのグルカゴン活性とQのGIP活性との比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQのEC50は、GIP受容体に対するEC50よりも約2〜約10倍(2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍など)大きい。
いくつかの実施形態では、Qは、グルカゴン受容体に対する天然のグルカゴンの活性(グルカゴン活性)の少なくとも0.1%(約0.5%またはそれよりも高い、約1%またはそれよりも高い、約5%またはそれよりも高い、約10%またはそれよりも高いあるいは、さらに高いなど)を示し、GIP受容体に対する天然のGIPの活性(GIP活性)の少なくとも0.1%(約0.5%またはそれよりも高い、約1%またはそれよりも高い、約5%またはそれよりも高い、約10%またはそれよりも高いあるいは、さらに高いなど)を示す。
Qの、グルカゴン受容体に対するGIP受容体の選択性は、GIP/グルカゴン活性の相対比(天然のGIPの場合と比較したGIP受容体に対するQの活性を、天然のグルカゴンの場合と比較したグルカゴン受容体に対する類縁体の活性で割ったもの)で説明できる。たとえば、GIP受容体に対する活性が天然のGIPの60%であり、かつ、グルカゴン受容体に対する活性が天然のグルカゴンの60%であるQは、GIP/グルカゴン活性の比が1:1である。GIP/グルカゴン活性の比の例として、約1:1、約1.5:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1または約10:1あるいは、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2または約1:1.5があげられる。一例として、GIP/グルカゴン活性の比が10:1であるということは、グルカゴン受容体の選択性に対してGIP受容体の選択性が10倍であることを示す。同様に、グルカゴン/GIP活性の比が10:1であるということは、GIP受容体の選択性に対してグルカゴン受容体の選択性が10倍であることを示す。
グルカゴン受容体、GLP−1受容体およびGIP受容体に対する活性
いくつかの実施形態では、Qは、グルカゴン受容体、GLP−1受容体、GIP受容体の3つすべてに対して活性を示す(「グルカゴン/GLP−1/GIP受容体トリアゴニスト」)。いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQの活性(EC50または相対活性など)は、GLP−1受容体およびGIP受容体の両方に対する活性(EC50または相対活性など)と比較して、約100倍以内、約75倍以内、約60倍以内、50倍以内、約40倍以内、約30倍以内、約20倍以内、約10倍以内または約5倍以内で異なる(高いまたは低い)。いくつかの実施形態では、GLP−1受容体に対するQの活性(EC50または相対活性など)は、グルカゴン受容体およびGIP受容体の両方に対する活性(EC50または相対活性など)と比較して、約100倍以内、約75倍以内、約60倍以内、50倍以内、約40倍以内、約30倍以内、約20倍以内、約10倍以内または約5倍以内で異なる(高いまたは低い)。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するQの活性(EC50または相対活性など)は、グルカゴン受容体およびGLP−1受容体の両方に対する活性(EC50または相対活性など)と比較して、約100倍以内、約75倍以内、約60倍以内、50倍以内、約40倍以内、約30倍以内、約20倍以内、約10倍以内または約5倍以内で異なる(高いまたは低い)。この何倍異なるかという差を、上述のように、グルカゴン/GLP−1またはGLP−1/GIPまたはグルカゴン/GLP−1の比として表現することも可能である。
グルカゴンスーパーファミリーのペプチド(Q)の構造
本明細書に記載のグルカゴンスーパーファミリーのペプチド(Q)は、天然のヒトグルカゴンのアミノ酸配列(配列番号1601)、天然のヒトGLP−1のアミノ酸配列(配列番号1603または1604)、または天然のヒトGIPのアミノ酸配列(配列番号1607)に基づくアミノ酸配列を有するものであってもよい。
天然のヒトグルカゴンに基づいて
本発明のいくつかの態様では、グルカゴンスーパーファミリーのペプチド(Q)は、天然のヒトグルカゴン(配列番号1601)のアミノ酸配列に基づくアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、Qは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、場合によっては16個または17個以上(17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個など)のアミノ酸修飾を有する、配列番号1601の修飾されたアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、Qは、天然のヒトグルカゴン配列(配列番号1601)と比較して、合計で1個、最大2個、最大3個、最大4個、最大5個、最大6個、最大7個、最大8個、最大9個または最大10個のアミノ酸修飾を有する。いくつかの実施形態では、修飾は、本明細書に記載の任意のものであり、たとえば、1番目、2番目、3番目、7番目、10番目、12番目、15番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、23番目、24番目、27番目、28番目、29番目のうちの1箇所または2箇所以上でのアミノ酸のアシル化、アルキル化、PEG化、C末端での短縮、置換などである。
いくつかの実施形態では、Qは、天然のヒトグルカゴンのアミノ酸配列(配列番号1601)との配列同一性が少なくとも25%であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、Qは、配列番号1601との配列同一性が少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%であるか、90%を上回るアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、上述した配列同一性(%)を有するQのアミノ酸配列は、Qの全長アミノ酸配列である。いくつかの実施形態では、上述した配列同一性(%)を有するQのアミノ酸配列は、Qのアミノ酸配列の一部のみである。いくつかの実施形態では、Qは、配列番号1601の少なくとも5個の連続したアミノ酸(少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のアミノ酸など)からなる基準アミノ酸配列との配列同一性が約A%またはそれよりも高いアミノ酸配列を有し、ここで、基準アミノ酸配列は、配列番号1601のC番目のアミノ酸から始まって配列番号1601のD番目のアミノ酸で終わり、この場合のAは、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99であり、Cは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28であり、Dは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28または29である。Aが90%であり、CとDが1と27または6と27または8と27または10と27または12と27または16と27であるものを含むがこれらに限定されるものではない、上述のパラメーターの考えられるあらゆる組み合わせが想定される。
天然のヒトGLP−1に基づいて
本発明のいくつかの態様では、グルカゴンスーパーファミリーのペプチド(Q)は、天然のヒトGLP−1(配列番号1603)のアミノ酸配列に基づくアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、Qは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、場合によっては16個または17個以上(17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個など)のアミノ酸修飾を有する、配列番号1603の修飾されたアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、Qは、天然のヒトGLP−1配列(配列番号1603)と比較して、合計で1個、最大2個、最大3個、最大4個、最大5個、最大6個、最大7個、最大8個、最大9個または最大10個のアミノ酸修飾を有する。いくつかの実施形態では、修飾は、本明細書に記載の任意のものであり、たとえば、1番目、2番目、3番目、7番目、10番目、12番目、15番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、23番目、24番目、27番目、28番目、29番目のうちの1箇所または2箇所以上でのアミノ酸のアシル化、アルキル化、PEG化、C末端での短縮、置換などである。
いくつかの実施形態では、Qは、天然のヒトGLP−1のアミノ酸配列(配列番号1603)との配列同一性が少なくとも25%であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、Qは、配列番号1603との配列同一性が少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%であるか、90%を上回るアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、上述した配列同一性(%)を有するQのアミノ酸配列は、Qの全長アミノ酸配列である。いくつかの実施形態では、上述した配列同一性(%)を有するQのアミノ酸配列は、Qのアミノ酸配列の一部のみである。いくつかの実施形態では、Qは、配列番号1603の少なくとも5個の連続したアミノ酸(少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のアミノ酸など)からなる基準アミノ酸配列との配列同一性が約A%またはそれよりも高いアミノ酸配列を有し、ここで、基準アミノ酸配列は、配列番号1603のC番目のアミノ酸から始まって配列番号1603のD番目のアミノ酸で終わり、この場合のAは、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99であり、Cは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28であり、Dは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28または29である。Aが90%であり、CとDが1と27または6と27または8と27または10と27または12と27または16と27であるものを含むがこれらに限定されるものではない、上述のパラメーターの考えられるあらゆる組み合わせが想定される。
天然のヒトGIPに基づいて
本開示のいくつかの実施形態では、Qは、天然のヒトGIPの類縁体であり、そのアミノ酸配列を本明細書では配列番号1607として提供する。したがって、いくつかの実施形態では、Qは、配列番号1607のアミノ酸配列に基づくアミノ酸配列を有するが、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、場合によっては16個または17個以上(17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個など)のアミノ酸修飾で修飾されている。いくつかの実施形態では、Qは、天然のヒトGIP配列(配列番号1607)と比較して、合計で1個、最大2個、最大3個、最大4個、最大5個、最大6個、最大7個、最大8個、最大9個または最大10個のアミノ酸修飾を有する。いくつかの実施形態では、修飾は、本明細書に記載の任意のものであり、たとえば、1番目、2番目、3番目、7番目、10番目、12番目、15番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、23番目、24番目、27番目、28番目、29番目のうちの1箇所または2箇所以上でのアミノ酸のアシル化、アルキル化、PEG化、C末端での短縮、置換などである。GIP受容体アゴニストの例は、当分野で知られている。たとえば、Irwin et al., J Pharm and Expmt Ther 314(3): 1187-1194 (2005);Salhanick et al., Bioorg Med Chem Lett 15(18): 4114-4117 (2005);Green et al., Dibetes 7(5): 595-604 (2005);O’Harte et al., J Endocrinol 165(3): 639-648 (2000);O’Harte et al., Diabetologia 45(9): 1281-1291 (2002);Gault et al., Biochem J 367 (Pt3): 913-920 (2002);Gault et al., J Endocrin 176: 133-141 (2003);Irwin et al., Diabetes Obes Metab. 11(6): 603-610 (epub 2009)を参照のこと。
いくつかの実施形態では、Qは、天然のヒトGIPのアミノ酸配列(配列番号1607)との配列同一性が少なくとも25%であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、Qは、配列番号1607との配列同一性が少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%であるか、90%を上回るアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、上述した配列同一性(%)を有するQのアミノ酸配列は、Qの全長アミノ酸配列である。いくつかの実施形態では、上述した配列同一性(%)を有するQのアミノ酸配列は、Qのアミノ酸配列の一部のみである。いくつかの実施形態では、Qは、配列番号1607の少なくとも5個の連続したアミノ酸(少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個のアミノ酸など)からなる基準アミノ酸配列との配列同一性が約A%またはそれよりも高いアミノ酸配列を有し、ここで、基準アミノ酸配列は、配列番号1607のC番目のアミノ酸から始まって配列番号1607のD番目のアミノ酸で終わり、この場合のAは、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99であり、Cは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28であり、Dは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28または29である。Aが90%であり、CとDが1と27または6と27または8と27または10と27または12と27または16と27であるものを含むがこれらに限定されるものではない、上述のパラメーターの考えられるあらゆる組み合わせが想定される。
修飾
Qがグルカゴン関連ペプチドである場合、Qは、修飾がなされた天然のグルカゴンのアミノ酸配列(配列番号1601)を含むものであってもよい。例示としての実施形態では、グルカゴン関連ペプチドは、天然のグルカゴン配列と比較して、保存的な置換または非保存的な置換などの合計で1個、最大2個、最大3個、最大4個、最大5個、最大6個、最大7個、最大8個、最大9個または最大10個のアミノ酸修飾を有するものであってもよい。本明細書に記載の修飾および置換は、特定の態様において、Qの特定の位置でなされるものであり、ここで、位置の番号はグルカゴン(配列番号1601)の番号に対応する。いくつかの実施形態では、2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目または29番目の任意の位置で、1個、2個、3個、4個または5個の非保存的な置換がなされ、これらの位置のいずれかで、さらに最大5個の保存的な置換がなされる。いくつかの実施形態では、1番目から16番目のアミノ酸の範囲内で、1個、2個または3個のアミノ酸修飾がなされ、17番目から26番目のアミノ酸の範囲内で、1個、2個または3個のアミノ酸修飾がなされる。いくつかの実施形態では、Qは、天然のグルカゴンの対応する位置に、少なくとも22個、23個、24個、25個、26個、27個または28個の天然アミノ酸を保持する(天然のグルカゴンと比較して、1〜7個、1〜5個または1〜3個の修飾を有するなど)。
DPP−IV耐性
いくつかの実施形態では、Qがグルカゴンスーパーファミリーペプチドである場合、Qは、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)による切断に対する感受性を低減するための修飾を、1番目または2番目に有する。特に、いくつかの実施形態では、Qの1番目の位置(図1に示すものから選択されるなど)は、D−ヒスチジン、α,α−ジメチルイミダゾール酢酸(DMIA)、N−メチルヒスチジン、α−メチルヒスチジン、イミダゾール酢酸、デスアミノヒスチジン、ヒドロキシルヒスチジン、アセチルヒスチジン、ホモヒスチジンからなる群から選択されるアミノ酸で置換される。特に、いくつかの実施形態では、Qの2番目の位置は、D−セリン、D−アラニン、バリン、グリシン、N−メチルセリン、アミノイソ酪酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換される。いくつかの実施形態では、グルカゴン関連ペプチドの2番目の位置はD−セリンではない。
3位でのグルカゴン修飾
本明細書に記載のクラス1〜クラス3のグルカゴン関連ペプチドを(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)3番目で修飾し、グルカゴン受容体に対する活性を維持または増大させてもよい。
Qがクラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドであるいくつかの実施形態では、3番目のGlnをグルタミン類縁体で修飾することによって、グルカゴン受容体に対する活性を維持または増強してもよい。たとえば、3番目にグルタミン類縁体を有する、クラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体に対して、天然のグルカゴン(配列番号1601)の約5%、約10%、約20%、約50%または約85%またはそれより高い活性を示すものであってもよい。いくつかの実施形態では、3番目にグルタミン類縁体を有する、クラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体に対して、3番目の修飾されたアミノ酸以外はグルタミン類縁体を有するペプチドと同一のアミノ酸配列を有する対応のグルカゴンペプチドの約20%、約50%、約75%、約100%、約200%または約500%またはそれより高い活性を示すものであってもよい。いくつかの実施形態では、3番目にグルタミン類縁体を有する、クラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドグルカゴン受容体に対する活性が増強しているが、その活性は、天然のグルカゴンまたは3番目の修飾されたアミノ酸以外はグルタミン類縁体を有するペプチドと同一のアミノ酸配列を有する対応のグルカゴン関連ペプチドの活性に対して最大で1000%、10,000%、100,000%または1,000,000%になる。
いくつかの実施形態では、グルタミン類縁体は、構造I、構造II、または構造IIIの側鎖を有する天然または非天然のアミノ酸である:
(式中、R1は、C0〜3アルキルまたはC0〜3ヘテロアルキルであり、R2は、NHR4またはC1〜3アルキルであり、R3は、C1〜3アルキルであり、R4は、HまたはC1〜3アルキルであり、Xは、NH、OまたはSであり、Yは、NHR4、SR3またはOR3である)。いくつかの実施形態では、XがNHであるか、あるいは、YがNHR4である。いくつかの実施形態では、R1は、C0〜2アルキルまたはC1ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、R2は、NHR4またはC1アルキルである。いくつかの実施形態では、R4は、HまたはC1アルキルである。Qが、クラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドである例示としての実施形態では、構造Iの側鎖を有するアミノ酸が提示され、式中、R1はCH2−Sであり、XはNHであり、R2は、CH3(アセトアミドメチル−システイン、C(Acm))である;R1はCH2であり、XはNHであり、R2は、CH3(アセチルジアミノブタン酸、Dab(Ac))である;R1は、C0アルキルであり、XはNHであり、R2はNHR4であり、R4は、H(カルバモイルジアミノプロピオン酸、Dap(urea))である;またはR1はCH2−CH2であり、XはNHであり、R2は、CH3(アセチルオルニチン、Orn(Ac))である。例示としての実施形態では、構造IIの側鎖を有するアミノ酸が提示され、式中、R1はCH2であり、YはNHR4であり、R4は、CH3(メチルグルタミン、Q(Me))である;例示としての実施形態では、構造IIIIの側鎖を有するアミノ酸が提示され、式中、R1はCH2であり、R4はH(メチオニン−スルホキシド、M(O))である。具体的な実施形態では、3番目のアミノ酸を、Dab(Ac)で置換する。
Qのアシル化
いくつかの実施形態では、グルカゴン関連ペプチド(クラス1のグルカゴン関連ペプチド、クラス2のグルカゴン関連ペプチド、クラス3のグルカゴン関連ペプチド、クラス4のグルカゴン関連ペプチド、クラス4のグルカゴン関連ペプチドまたはクラス5のグルカゴン関連ペプチドなど)であるQは、アシル基を含むように修飾される。アシル基は、ペプチドQのアミノ酸に直接的に共有結合してもよいし、Qのアミノ酸にスペーサーを介して間接的に共有結合してもよく、この場合、スペーサーは、Qのアミノ酸とアシル基との間に位置する。Qは、親水性部分が結合している同一のアミノ酸の位置でアシル化されていてもよいし、異なるアミノ酸の位置でアシル化されていてもよい。本明細書で説明するように、Qは、グルカゴンスーパーファミリーのペプチド、グルカゴン関連ペプチド(クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドを含む)またはオステオカルシン、カルシトニン、アミリンまたはその類縁体、誘導体または結合体であってもよい。たとえば、Qは、クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のうちの1つであってもよく、天然アミノ酸に対して非天然のアシル基を有するものであってもよい。アシル化は、Qの範囲内のどの位置でなされてもよい。Qがグルカゴン関連ペプチドである場合、アシル化されていないグルカゴン関連ペプチドの活性が、アシル化されても保持される限り、アシル化は、1番目から29番目の任意の位置、C末端の延長部分の範囲内にある位置またはC末端アミノ酸を含む、どの位置で起こってもよい。たとえば、アシル化されていないペプチドがグルカゴンアゴニスト活性を有する場合、アシル化されたペプチドは、グルカゴンアゴニスト活性を保持する。また、たとえば、アシル化されていないペプチドがグルカゴンアンタゴニスト活性を有する場合、アシル化されたペプチドは、グルカゴンアンタゴニスト活性を保持する。たとえば、アシル化されていないペプチドがGLP−1アゴニスト活性を有する場合、アシル化されたペプチドは、GLP−1アゴニスト活性を保持する。非限定的な例として、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目または29番目でのアシル化があげられる。クラス1、クラス2、クラス3のグルカゴン関連ペプチドについては、アシル化は、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目、29番目、30番目、37番目、38番目、39番目、40番目、41番目、42番目または43番目のいずれかで起こり得る。グルカゴン関連ペプチド(クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5など)に関する他の非限定的な例として、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)10番目でのアシル化およびグルカゴンペプチドのC末端領域の1箇所または2箇所以上、たとえば(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)24番目、28番目または29番目、C末端の延長部分の範囲内またはC末端(C末端でのCysの付加によるなど)でのPEG化があげられる。
本発明の具体的な態様では、ペプチドQ(グルカゴンスーパーファミリーのペプチド、グルカゴン関連ペプチド、クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドあるいは、オステオカルシン、カルシトニン、アミリンまたはその類縁体、誘導体または結合体など)は、Qのアミノ酸の側鎖のアミン、ヒドロキシルまたはチオールの直接的なアシル化によって、アシル基を含むように修飾される。いくつかの実施形態では、Qは、アミノ酸の側鎖のアミン、ヒドロキシルまたはチオールを介して、直接的にアシル化される。いくつかの実施形態では、Qがグルカゴン関連ペプチドである場合、アシル化は、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)10番目、20番目、24番目または29番目である。この点について、アシル化されたグルカゴン関連ペプチドは、配列番号1601のアミノ酸配列を有するものであってもよいし、あるいは、本明細書に記載されたアミノ酸修飾の1個または2個以上を有する修飾されたアミノ酸配列であって、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)10番目、20番目、24番目、29番目のアミノ酸の少なくとも1つが、側鎖にアミン、ヒドロキシルまたはチオールを有するアミノ酸になるように修飾された配列であってもよい。本発明のいくつかの具体的な実施形態では、Qがグルカゴン関連ペプチドである場合、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)10番目のアミノ酸の側鎖のアミン、ヒドロキシルまたはチオールを介して、Qの直接的なアシル化が起こる。
いくつかの実施形態では、側鎖のアミンを有するペプチドQ(グルカゴンスーパーファミリーのペプチド、グルカゴン関連ペプチド、クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドあるいは、オステオカルシン、カルシトニン、アミリンまたはその類縁体、誘導体または結合体など)のアミノ酸は、式Iのアミノ酸である。
例示としてのいくつかの実施形態では、式Iのアミノ酸は、nが4(Lys)またはnが3(Orn)のアミノ酸である。
他の実施形態では、側鎖にヒドロキシルを有するペプチドQのアミノ酸は、式IIのアミノ酸である。
例示としてのいくつかの実施形態では、式IIのアミノ酸は、nが1(Ser)のアミノ酸である。
さらに他の実施形態では、側鎖にチオールを有するペプチドQのアミノ酸は、式IIIのアミノ酸である。
例示としてのいくつかの実施形態では、式IIIのアミノ酸は、nが1(Cys)のアミノ酸である。
さらに他の実施形態では、側鎖にアミン、ヒドロキシルまたはチオールを有するペプチドQのアミノ酸は、式I、式IIまたは式IIIのアミノ酸のα炭素に結合した水素が第2の側鎖で置換されていること以外は、式I、式IIまたは式IIIの同一の構造を有する二置換されたアミノ酸である。
本発明のいくつかの実施形態では、アシル化されたペプチドQ(グルカゴンスーパーファミリーのペプチド、グルカゴン関連ペプチド、クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドあるいは、オステオカルシン、カルシトニン、アミリンまたはその類縁体、誘導体または結合体など)は、ペプチドとアシル基との間にスペーサーを含む。いくつかの実施形態では、Qは、スペーサーに共有結合し、これがアシル基に共有結合している。例示としてのいくつかの実施形態では、Qは、スペーサーのアミン、ヒドロキシルまたはチオールのアシル化によって、アシル基を含むように修飾される、このスペーサー(Qがグルカゴン関連ペプチドである場合、たとえば、クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5)は、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)10番目、20番目、24番目または29番目あるいは、グルカゴン関連ペプチドのC末端アミノ酸で、アミノ酸の側鎖に結合している。スペーサーが結合しているペプチドQのアミノ酸は、スペーサーとの結合を可能にする部分を有するものであれば、どのようなアミノ酸であってもよい。たとえば、側鎖に、−NH2、−OHまたは−COOHを有するアミノ酸(Lys、Orn、Ser、AspまたはGluなど)が適している。側鎖に、−NH2、−OHまたは−COOHを有するペプチドQのアミノ酸(α一置換アミノ酸またはα二置換アミノ酸など)(Lys、Orn、Ser、AspまたはGluなど)も適している。Qがグルカゴン関連ペプチド(クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5など)であるいくつかの実施形態では、アシル化されたグルカゴン関連ペプチドは、配列番号1601のアミノ酸配列を有するものであってもよいし、あるいは、本明細書に記載されたアミノ酸修飾の1個または2個以上を有する修飾されたアミノ酸配列であって、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)10番目、20番目、24番目、29番目のアミノ酸の少なくとも1つが、側鎖にアミン、ヒドロキシルまたはカルボキシレートを有するアミノ酸になるように修飾された配列であってもよい。
いくつかの実施形態では、ペプチドQとアシル基との間のスペーサーは、側鎖にアミン、ヒドロキシルまたはチオールを有するアミノ酸であるか、側鎖にアミン、ヒドロキシルまたはチオールを有するアミノ酸を有するジペプチドまたはトリペプチドである。いくつかの実施形態では、アミノ酸スペーサーは、γ−Gluではない。いくつかの実施形態では、ジペプチドスペーサーは、γ−Glu−γ−Gluではない。
スペーサーのアミノ酸のアミン基を介してアシル化が起こる場合、このアシル化は、アミノ酸のαアミンまたは側鎖のアミンを介して起こり得る。αアミンがアシル化されている例では、スペーサーのアミノ酸は、どのようなアミノ酸であってもよい。たとえば、スペーサーのアミノ酸は、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Trp、Met、Phe、Tyrなどの疎水性のアミノ酸であってもよい。いくつかの実施形態では、スペーサーのアミノ酸は、たとえば、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Trp、Met、Phe、Tyr、6−アミノヘキサン酸、5−アミノ吉草酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸などの疎水性のアミノ酸であってもよい。あるいは、スペーサーのアミノ酸は、AspおよびGluなどの酸性残基であってもよい。スペーサーのアミノ酸の側鎖のアミンがアシル化されている例では、スペーサーのアミノ酸は、式Iのアミノ酸(LysまたはOrnなど)といった側鎖のアミンを有するアミノ酸である。この場合、ペプチドがジアシル化されるように、スペーサーのアミノ酸のαアミンと側鎖のアミンのどちらも、アシル化が可能である。本発明の実施形態は、このようなジアシル化された分子を含む。
スペーサーのアミノ酸のヒドロキシ基を介してアシル化が起こる場合、アミノ酸あるいは、ジペプチドまたはトリペプチドのアミノ酸のうちの1つは、式IIのアミノ酸であってもよい。一例としての具体的な実施形態では、アミノ酸はSerである。
スペーサーのアミノ酸のチオール基を介してアシル化が起こる場合、アミノ酸あるいは、ジペプチドまたはトリペプチドのアミノ酸のうちの1つは、式IIIのアミノ酸であってもよい。一例としての具体的な実施形態では、アミノ酸はCysである。
いくつかの実施形態では、スペーサーは、親水性の二官能性スペーサーであってもよい。具体的な実施形態では、スペーサーは、アミノポリ(アルキルオキシ)カルボキシレートを有する。この点について、スペーサーは、たとえば、NH2(CH2CH2O)n(CH2)mCOOHを含むものであってもよく、式中、mは1〜6の任意の整数であり、nは2〜12の任意の整数である。その一例として、Peptides International, Inc.(Louisville, KY)から市販されている8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸がある。
いくつかの実施形態では、ペプチドQとアシル基との間のスペーサーは、親水性の二官能性スペーサーであってもよい。特定の実施形態では、親水性の二官能性スペーサーは、2個または3個以上の反応性基、たとえば、アミン、ヒドロキシル、チオール、カルボキシ基またはこれらの任意の組み合わせを有する。特定の実施形態では、親水性の二官能性スペーサーは、ヒドロキシ基とカルボキシレートとを有する。他の実施形態では、親水性の二官能性スペーサーは、アミン基とカルボキシレートとを有する。他の実施形態では、親水性の二官能性スペーサーは、チオール基とカルボキシレートとを有する。
いくつかの実施形態では、ペプチドQとアシル基との間のスペーサーは、疎水性の二官能性スペーサーである。疎水性の二官能性スペーサーは、当分野で知られている。たとえば、Bioconjugate Techniques、G. T. Hermanson(Academic Press, San Diego, CA, 1996)(その内容全体を本明細書に援用する)を参照のこと。特定の実施形態では、疎水性の二官能性スペーサーは、2個または3個以上の反応性基、たとえば、アミン、ヒドロキシル、チオール、カルボキシ基またはこれらの任意の組み合わせを有する。特定の実施形態では、疎水性の二官能性スペーサーは、ヒドロキシ基とカルボキシレートとを有する。他の実施形態では、疎水性の二官能性スペーサーは、アミン基とカルボキシレートとを有する。他の実施形態では、疎水性の二官能性スペーサーは、チオール基とカルボキシレートとを有する。カルボキシレートとヒドロキシ基またはチオール基とを有する好適な疎水性の二官能性スペーサーは、当分野で知られており、たとえば、8−ヒドロキシオクタン酸および8−メルカプトオクタン酸があげられる。
いくつかの実施形態では、二官能性スペーサーは、カルボキシレート基の間に、メチレン基の炭素原子を直鎖状に1〜7個含むジカルボン酸ではない。いくつかの実施形態では、二官能性スペーサーは、カルボキシレート基の間にメチレン基の炭素原子を直鎖状に1〜7個含むジカルボン酸である。
Qがクラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドである具体的な実施形態におけるスペーサー(アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、親水性の二官能性スペーサーまたは疎水性の二官能性スペーサーなど)は、原子3〜10個(たとえば原子6〜10個(原子6個、原子7個、原子8個、原子9個または原子10個など))の長さである。Qがクラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドである一層具体的な実施形態では、スペーサーは、原子約3〜約10個(原子6〜10個など)の長さであり、アシル基は、スペーサーとアシル基とを合わせた全長が、原子14〜28個、たとえば、原子約14個、約15個、約16個、約17個、約18個、約19個、約20個、約21個、約22個、約23個、約24個、約25個、約26個、約27個または約28個になるように、C12〜C18の脂肪族アシル基、たとえば、C14の脂肪族アシル基、C16の脂肪族アシル基である。Qがクラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドであるいくつかの実施形態では、スペーサーとアシル基との長さは、原子17〜28個(19〜26個、19〜21個など)の長さである。
Qがクラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドである特定の実施形態によれば、二官能性スペーサーは、原子3〜10個の長さのアミノ酸骨格を有する合成のアミノ酸または天然のアミノ酸(本明細書に記載のものを含むが、これらに限定されるものではない)であってもよい(6−アミノヘキサン酸、5−アミノ吉草酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸など)。あるいは、クラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドに結合しているスペーサーは、原子3〜10個(原子6〜10個など)の長さのペプチド骨格を有するジペプチドスペーサーまたはトリペプチドスペーサーであってもよい。クラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドに結合しているジペプチドスペーサーまたはトリペプチドスペーサーのそれぞれのアミノ酸は、このジペプチドまたはトリペプチドの他のアミノ酸(単数または複数)と同一であっても異なっていてもよく、独立に、たとえば、天然のアミノ酸(Ala、Cys、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Met、Asn、Pro、Arg、Ser、Thr、Val、Trp、Tyr)の任意のD異性体またはL異性体あるいは、β−アラニン(β−Ala)、N−α−メチル−アラニン(Me−Ala)、アミノ酪酸(Abu)、α−アミノ酪酸(γ−Abu)、アミノヘキサン酸(ε−Ahx)、アミノイソ酪酸(Aib)、アミノメチルピロールカルボン酸、アミノピペリジンカルボン酸、アミノセリン(Ams)、アミノテトラヒドロピラン−4−カルボン酸、アルギニンN−メトキシ−N−メチルアミド、β−アスパラギン酸(β−Asp)、アゼチジンカルボン酸、3−(2−ベンゾチアゾリル)アラニン、α−tert−ブチルグリシン、2−アミノ−5−ウレイド−n−吉草酸(シトルリン、Cit)、β−シクロヘキシルアラニン(Cha)、アセトアミドメチル−システイン、ジアミノブタン酸(Dab)、ジアミノプロピオン酸(Dpr)、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)、ジメチルチアゾリジン(DMTA)、γ−グルタミン酸(γ−Glu)、ホモセリン(Hse)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、イソロイシンN−メトキシ−N−メチルアミド、メチル−イソロイシン(MeIle)、イソニペコチン酸(Isn)、メチルロイシン(MeLeu)、メチルリジン、ジメチルリジン、トリメチルリジン、メタノプロリン、メチオニン−スルホキシド(Met(O))、メチオニン−スルホン(Met(O2))、ノルロイシン(Nle)、メチル−ノルロイシン(Me−Nle)、ノルバリン(Nva)、オルニチン(Orn)、パラアミノ安息香酸(PABA)、ペニシラミン(Pen)、メチルフェニルアラニン(MePhe)、4−クロロフェニルアラニン(Phe(4−Cl))、4−フロオロフェニルアラニン(Phe(4−F))、4−ニトロフェニルアラニン(Phe(4−NO2))、4−シアノフェニルアラニン((Phe(4−CN))、フェニルグリシン(Phg)、ピペリジニルアラニン、ピペリジニルグリシン、3,4−デヒドロプロリン、ピロリジニルアラニン、サルコシン(Sar)、セレノシステイン(Sec)、O−ベンジル−ホスホセリン、4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸(Sta)、4−アミノ−5−シクロヘキシル−3−ヒドロキシペンタン酸(ACHPA)、4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸(AHPPA)、1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸(Tic)、テトラヒドロピラングリシン、チエニルアラニン(Thi)、O−ベンジル−ホスホチロシン、O−ホスホチロシン、メトキシチロシン、エトキシチロシン、O−(ビス−ジメチルアミノ−ホスホノ)−チロシン、硫酸チロシンテトラブチルアミン、メチル−バリン(MeVal)、1−アミノ−1−シクロヘキサンカルボン酸(Acx)、アミノ吉草酸、β−シクロプロピル−アラニン(Cpa)、プロパギルグリシン(Prg)、アリルグリシン(Alg)、2−アミノ−2−シクロヘキシル−プロパン酸(2−Cha)、tert−ブチルグリシン(Tbg)、ビニルグリシン(Vg)、1−アミノ−1−シクロプロパンカルボン酸(Acp)、1−アミノ−1−シクロペンタンカルボン酸(Acpe)、アルキル化された3−メルカプトプロピオン酸、1−アミノ−1−シクロブタンカルボン酸(Acb)からなる群から選択される非天然のアミノ酸のD異性体またはL異性体をはじめとする、天然および/または非天然のアミノ酸からなる群から選択可能である。
Qがクラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドであるいくつかの実施形態では、スペーサーは、たとえば1個または2個以上の負の電荷を持つアミノ酸を有するなど、全体として負の電荷を有する。Qがクラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドであるいくつかの実施形態では、ジペプチドは、一般構造A−Bのジペプチドのいずれでもなく、lこの場合、Aは、Gly、Gln、Ala、Arg、Asp、Asn、Ile、Leu、Val、Phe、Proからなる群から選択され、Bは、Lys、His、Trpからなる群から選択される。Qがクラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドであるいくつかの実施形態では、ジペプチドスペーサーは、Ala−Ala、β−Ala−β−Ala、Leu−Leu、Pro−Pro、γ−アミノ酪酸−γ−アミノ酪酸、γ−Glu−γ−Gluからなる群から選択される。
ペプチドQは、長鎖アルカンのアシル化によってアシル基を含むように修飾されていてもよい。具体的な態様では、長鎖アルカンは、ペプチドQのカルボキシ基またはその活性化形態と反応するアミン、ヒドロキシルまたはチオール基を有する(オクタデシルアミン、テトラデカノール、ヘキサデカンチオールなど)。Qのカルボキシ基またはその活性化形態は、Qのアミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸など)の側鎖の一部であってもよいし、ペプチド骨格の一部であってもよい。
特定の実施形態では、ペプチドQは、Qに結合しているスペーサーによる長鎖アルカンのアシル化によって、アシル基を含むように修飾される。具体的な態様では、長鎖アルカンは、スペーサーのカルボキシ基またはその活性化形態と反応するアミン、ヒドロキシルまたはチオール基を有する。カルボキシ基またはその活性化形態を有する好適なスペーサーを本明細書に記載し、一例として、アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、親水性の二官能性スペーサー、疎水性の二官能性スペーサーなどの二官能性スペーサーがあげられる。
本明細書で使用する場合、「カルボキシ基の活性化形態」という表現は、一般式R(C=O)Xのカルボキシ基を示し、式中、Xは脱離基であり、RはQまたはスペーサーである。たとえば、カルボキシ基の活性化形態としては、塩化アシル、無水物、エステルがあげられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、活性化したカルボキシ基は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)脱離基を有するエステルである。
長鎖アルカンがペプチドQまたはスペーサーによってアシル化される本発明の態様に関して、長鎖アルカンは、どのようなサイズであってもよく、どのような炭素鎖長であってもよい。長鎖アルカンは、直鎖状であっても分岐状であってもよい。特定の態様では、長鎖アルカンは、C4〜C30アルカンである。たとえば、長鎖アルカンは、C4アルカン、C6アルカン、C8アルカン、C10アルカン、C12アルカン、C14アルカン、C16アルカン、C18アルカン、C20アルカン、C22アルカン、C24アルカン、C26アルカン、C28アルカンまたはC30アルカンのいずれであってもよい。いくつかの実施形態では、長鎖アルカンは、C8〜C20アルカン、たとえばC14アルカン、C16アルカンまたはC18アルカンであってもよい。
いくつかの実施形態では、Qのアミン、ヒドロキシルまたはチオール基は、コレステロール酸でアシル化される。具体的な実施形態では、ペプチドは、アルキル化されたデスアミノシステインスペーサー、すなわちアルキル化された3−メルカプトプロピオン酸スペーサーを介して、コレステロール酸に結合している。
アミン、ヒドロキシル、チオールによってペプチドをアシル化する好適な方法は、当分野で知られている。たとえば、Miller, Biochem Biophys Res Commun 218: 377-382 (1996);Shimohigashi and Stammer, Int J Pept Protein Res 19: 54-62 (1982);およびPreviero et al., Biochim Biophys Acta 263: 7-13 (1972)(ヒドロキシルでアシル化する方法);およびSan and Silvius, J Pept Res 66: 169-180 (2005)(チオールでアシル化する方法);Bioconjugate Chem. "Chemical Modifications of Proteins: History and Applications" pages 1, 2-12 (1990);Hashimoto et al., Pharmacuetical Res. "Synthesis of Palmitoyl Derivatives of Insulin and their Biological Activity" Vol. 6, No: 2 pp.171-176 (1989)を参照のこと。
アシル化されたペプチドQのアシル基は、どのような炭素鎖長であってもよいなど、どのようなサイズであってもよく、直鎖状であっても分岐状であってもよい。本発明のいくつかの具体的な実施形態では、アシル基は、C4〜C30脂肪酸である。たとえば、アシル基は、C4脂肪酸、C6脂肪酸、C8脂肪酸、C10脂肪酸、C12脂肪酸、C14脂肪酸、C16脂肪酸、C18脂肪酸、C20脂肪酸、C22脂肪酸、C24脂肪酸、C26脂肪酸、C28脂肪酸またはC30脂肪酸のいずれであってもよい。いくつかの実施形態では、アシル基は、C8〜C20脂肪酸、たとえば、C14脂肪酸またはC16脂肪酸である。
別の実施形態では、アシル基は胆汁酸である。胆汁酸は、好適な胆汁酸であれば、どのようなものであってもよい。一例をあげると、コール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、タウロコール酸、グリココール酸、コレステロール酸などであるが、これらに限定されるものではない。
本明細書に記載のアシル化されたペプチドQは、親水性部分を有するようにさらに修飾されていてもよい。いくつかの具体的な実施形態では、親水性部分は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を有するものであってもよい。親水性部分の取り込みについては、本明細書に記載の任意の方法など、好適な任意の手段で達成可能である。クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドに関するいくつかの実施形態では、アシル化されたグルカゴン関連ペプチドは、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)10番目、20番目、24番目、29番目のアミノ酸の少なくとも1つがアシル基を有し、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)16番目、17番目、21番目、24番目または29番目、C末端の延長部分の範囲内にある位置にあるアミノ酸またはC末端のアミノ酸の少なくとも1つが、Cys、Lys、Orn、ホモシステインまたはAc−Pheになるように修飾され、アミノ酸の側鎖が親水性部分(PEGなど)に共有結合している、本明細書に記載のあらゆる修飾を含む、配列番号1601を有するものであってもよい。クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドに関するいくつかの実施形態では、アシル基は、任意に、Cys、Lys、Orn、ホモシステインまたはAc−Pheを有するスペーサーを介して、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)10番目に結合し、親水性部分は、24番目でCys残基に取り込まれる。
あるいは、アシル化されたペプチド(Q)は、スペーサーを有するものであってもよく、この場合のスペーサーは、アシル化され、なおかつ親水性部分を含むように修飾される。好適なスペーサーの非限定的な例としては、Cys、Lys、Orn、ホモシステイン、Ac−Pheからなる群から選択される1個または2個以上のアミノ酸を有するスペーサーがあげられる。
Qのアルキル化
いくつかの実施形態では、Qは、アルキル基を含むように修飾される。アルキル基は、ペプチドQのアミノ酸に直接的に共有結合してもよいし、Qのアミノ酸にスペーサーを介して間接的に共有結合してもよく、この場合、スペーサーは、Qのアミノ酸とアルキル基との間に位置する。アルキル基は、エーテル結合、チオエーテル結合またはアミノ結合などを介してQに結合していてもよい。Qは、親水性部分が結合している同一のアミノ酸の位置でアルキル化されていてもよいし、異なるアミノ酸の位置でアルキル化されていてもよい。本明細書で説明するように、Qは、グルカゴンスーパーファミリーのペプチド、グルカゴン関連ペプチド(クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドを含む)またはオステオカルシン、カルシトニン、アミリンまたはその類縁体、誘導体または結合体であってもよい。たとえば、Qは、クラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドであってもよいし、天然のアミノ酸に対して非天然のアルキル基を有するものであってもよい。
アルキル化は、Qの範囲内のどの位置でなされてもよい。Qがグルカゴン関連ペプチドである場合、アルキル化は、グルカゴン受容体、GLP−1受容体、GIP受容体または他のグルカゴン関連ペプチド受容体に対するアルキル化されていないペプチドのアゴニスト活性が、アルキル化されても保持される限り、1番目から29番目の任意の位置、C末端の延長部分の範囲内にある位置またはC末端アミノ酸を含む、どの位置で起こってもよい。いくつかの実施形態では、アルキル化されていないペプチドがグルカゴンアゴニスト活性を有する場合、アルキル化されたペプチドは、グルカゴンアゴニスト活性を保持する。いくつかの実施形態では、アルキル化されていないペプチドがGLP−1アゴニスト活性を有する場合、アルキル化されたペプチドは、GLP−1アゴニスト活性を保持する。非限定的な例として、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目または29番目でのアルキル化があげられる。クラス1、クラス2、クラス3のグルカゴン関連ペプチドについては、アルキル化は、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目、29番目、30番目、37番目、38番目、39番目、40番目、41番目、42番目または43番目で起こり得る。グルカゴン関連ペプチド(クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5など)に関する他の非限定的な例として、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)10番目でのアルキル化およびグルカゴン関連ペプチドのC末端領域の1箇所または2箇所以上、たとえば(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)24番目、28番目または29番目、C末端の延長部分の範囲内またはC末端(C末端でのCysの付加によるなど)でのPEG化があげられる。
本発明の具体的な態様では、ペプチドQ(グルカゴンスーパーファミリーのペプチド、グルカゴン関連ペプチド、クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドあるいは、オステオカルシン、カルシトニン、アミリンまたはその類縁体、誘導体または結合体など)は、Qのアミノ酸の側鎖のアミン、ヒドロキシルまたはチオールの直接的なアルキル化によって、アルキル基を含むように修飾される。いくつかの実施形態では、Qは、アミノ酸の側鎖のアミン、ヒドロキシルまたはチオールを介して、直接的にアルキル化される。いくつかの実施形態では、Qがグルカゴン関連ペプチドである場合、アルキル化は、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)10番目、20番目、24番目または29番目である。この点について、アルキル化されたグルカゴン関連ペプチドは、配列番号1601のアミノ酸配列を有するものであってもよいし、あるいは、本明細書に記載されたアミノ酸修飾の1個または2個以上を有する修飾されたアミノ酸配列であって、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)10番目、20番目、24番目、29番目のアミノ酸の少なくとも1つが、側鎖にアミン、ヒドロキシルまたはチオールを有するアミノ酸になるように修飾された配列であってもよい。本発明のいくつかの具体的な実施形態では、Qがグルカゴン関連ペプチドである場合、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)10番目のアミノ酸の側鎖のアミン、ヒドロキシルまたはチオールを介して、Qの直接的なアルキル化が起こる。
いくつかの実施形態では、側鎖のアミンを有するペプチドQ(グルカゴンスーパーファミリーのペプチド、グルカゴン関連ペプチド、クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドあるいは、オステオカルシン、カルシトニン、アミリンまたはその類縁体、誘導体または結合体など)のアミノ酸は、式Iのアミノ酸である。例示としてのいくつかの実施形態では、式Iのアミノ酸は、nが4(Lys)またはnが3(Orn)のアミノ酸である。
他の実施形態では、側鎖にヒドロキシルを有するペプチドQのアミノ酸は、式IIのアミノ酸である。例示としてのいくつかの実施形態では、式IIのアミノ酸は、nが1(Ser)のアミノ酸である。
さらに他の実施形態では、側鎖にチオールを有するペプチドQのアミノ酸は、式IIIのアミノ酸である。例示としてのいくつかの実施形態では、式IIのアミノ酸は、nが1(Cys)のアミノ酸である。
さらに他の実施形態では、側鎖にアミン、ヒドロキシルまたはチオールを有するペプチドQのアミノ酸は、式I、式IIまたは式IIIのアミノ酸のα炭素に結合した水素が第2の側鎖で置換されていること以外は、式I、式IIまたは式IIIの同一の構造を有する二置換されたアミノ酸である。
本発明のいくつかの実施形態では、アルキル化されたペプチドQ(グルカゴンスーパーファミリーのペプチド、グルカゴン関連ペプチド、クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドあるいは、オステオカルシン、カルシトニン、アミリンまたはその類縁体、誘導体または結合体など)は、ペプチドとアルキル基との間にスペーサーを有する。いくつかの実施形態では、Qは、スペーサーに共有結合し、これがアルキル基に共有結合している。例示としてのいくつかの実施形態では、ペプチドQは、スペーサーのアミン、ヒドロキシルまたはチオールのアルキル化によって、アルキル基を有するように修飾され、このスペーサー(Qがグルカゴン関連ペプチドである場合、たとえば、クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5)は、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)Qの10番目、20番目、24番目または29番目でアミノ酸の側鎖に結合している。スペーサーが結合しているペプチドQのアミノ酸は、スペーサーとの結合を可能にする部分を有するものであれば、どのようなアミノ酸であってもよい。スペーサーが結合しているペプチドQのアミノ酸は、スペーサーとの結合を可能にする部分を有するものであれば、どのようなアミノ酸(α一置換アミノ酸またはα,α−二置換されたアミノ酸など)であってもよい。側鎖に、−NH2、−OHまたは−COOH(Lys、Orn、Ser、AspまたはGluなど)を有するペプチドQのアミノ酸が適している。Qがグルカゴン関連ペプチド(クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5など)であるいくつかの実施形態では、アルキル化されたQは、配列番号1601のアミノ酸配列を有するものであってもよいし、あるいは、本明細書に記載されたアミノ酸修飾の1個または2個以上を有する修飾されたアミノ酸配列であって、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)10番目、20番目、24番目、29番目のアミノ酸の少なくとも1つが、側鎖にアミン、ヒドロキシルまたはカルボキシレートを有するアミノ酸になるように修飾された配列であってもよい。
いくつかの実施形態では、ペプチドQとアルキル基との間のスペーサーは、側鎖にアミン、ヒドロキシルまたはチオールを有するアミノ酸あるいは、側鎖にアミン、ヒドロキシルまたはチオールを有するアミノ酸を有するジペプチドまたはトリペプチドである。いくつかの実施形態では、アミノ酸スペーサーは、γ−Gluではない。いくつかの実施形態では、ジペプチドスペーサーは、γ−Glu−γ−Gluではない。
スペーサーのアミノ酸のアミン基を介してアルキル化が起こる場合、このアルキル化は、アミノ酸のαアミンまたは側鎖のアミンを介して起こり得る。αアミンがアルキル化されている例では、スペーサーのアミノ酸は、どのようなアミノ酸であってもよい。たとえば、スペーサーのアミノ酸は、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Trp、Met、Phe、Tyrなどの疎水性のアミノ酸であってもよい。あるいは、スペーサーのアミノ酸は、AspおよびGluなどの酸性残基であってもよい。例示としての実施形態では、スペーサーのアミノ酸は、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Trp、Met、Phe、Tyr、6−アミノヘキサン酸、5−アミノ吉草酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸などの疎水性のアミノ酸であってもよい。あるいは、スペーサーのアミノ酸は、アルキル化が酸性残基のαアミンで起こるかぎりにおいて、AspおよびGluなどの酸性残基であってもよい。スペーサーのアミノ酸の側鎖のアミンがアルキル化されている例では、スペーサーのアミノ酸は、式Iのアミノ酸(LysまたはOrnなど)といった側鎖のアミンを有するアミノ酸である。この場合、ペプチドがジアルキル化されるように、スペーサーのアミノ酸のαアミンと側鎖のアミンのどちらも、アルキル化が可能である。本発明の実施形態は、このようなジアルキル化された分子を含む。
スペーサーのアミノ酸のヒドロキシ基を介してアルキル化が起こる場合、スペーサーのアミノ酸またはアミノ酸のうちの1つは、式IIのアミノ酸であってもよい。一例としての具体的な実施形態では、アミノ酸はSerである。
スペーサーのアミノ酸のチオール基を介してアルキル化が起こる場合、スペーサーのアミノ酸またはアミノ酸のうちの1つは、式IIIのアミノ酸であってもよい。一例としての具体的な実施形態では、アミノ酸はCysである。
いくつかの実施形態では、スペーサーは、親水性の二官能性スペーサーであってもよい。具体的な実施形態では、スペーサーは、アミノポリ(アルキルオキシ)カルボキシレートを有する。この点について、スペーサーは、たとえば、NH2(CH2CH2O)n(CH2)mCOOHを含むものであってもよく、式中、mは1〜6の任意の整数であり、nは2〜12の任意の整数である。その一例として、Peptides International, Inc.(Louisville, KY)から市販されている8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸がある。
いくつかの実施形態では、ペプチドQとアルキル基との間のスペーサーは、親水性の二官能性スペーサーである。特定の実施形態では、親水性の二官能性スペーサーは、2個または3個以上の反応性基、たとえば、アミン、ヒドロキシル、チオール、カルボキシ基またはこれらの任意の組み合わせを有する。特定の実施形態では、親水性の二官能性スペーサーは、ヒドロキシ基とカルボキシレートとを有する。他の実施形態では、親水性の二官能性スペーサーは、アミン基とカルボキシレートとを有する。他の実施形態では、親水性の二官能性スペーサーは、チオール基とカルボキシレートとを有する。
いくつかの実施形態では、ペプチドQとアルキル基との間のスペーサーは、疎水性の二官能性スペーサーである。特定の実施形態では、疎水性の二官能性スペーサーは、2個または3個以上の反応性基、たとえば、アミン、ヒドロキシル、チオール、カルボキシ基またはこれらの任意の組み合わせを有する。特定の実施形態では、疎水性の二官能性スペーサーは、ヒドロキシ基とカルボキシレートとを有する。他の実施形態では、疎水性の二官能性スペーサーは、アミン基とカルボキシレートとを有する。他の実施形態では、疎水性の二官能性スペーサーは、チオール基とカルボキシレートとを有する。カルボキシレートとヒドロキシ基またはチオール基とを有する好適な疎水性の二官能性スペーサーは、当分野で知られており、たとえば、8−ヒドロキシオクタン酸および8−メルカプトオクタン酸があげられる。
Qがクラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドである具体的な実施形態におけるスペーサー(アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、親水性の二官能性スペーサーまたは疎水性の二官能性スペーサーなど)は、原子3〜10個(たとえば原子6〜10個(原子6個、原子7個、原子8個、原子9個または原子10個など))の長さである。一層具体的な実施形態では、クラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドに結合しているスペーサーは、原子約3〜約10個(原子6〜10個など)の長さであり、アルキルは、スペーサーとアルキル基とを合わせた全長が、原子14〜28個、たとえば、原子約14個、約15個、約16個、約17個、約18個、約19個、約20個、約21個、約22個、約23個、約24個、約25個、約26個、約27個または約28個になるように、C12〜C18のアルキル基、たとえば、C14アルキル基、C16アルキル基である。Qがクラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドであるいくつかの実施形態では、スペーサーとアルキルとの長さは、原子17〜28個(19〜26個、19〜21個など)の長さである。
Qがクラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドである特定の上述した実施形態では、二官能性スペーサーは、原子3〜10個の長さのアミノ酸骨格を有する合成のアミノ酸または非天然のアミノ酸であってもよい(6−アミノヘキサン酸、5−アミノ吉草酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸など)。あるいは、クラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドに結合しているスペーサーは、原子3〜10個(原子6〜10個など)の長さのペプチド骨格を有するジペプチドスペーサーまたはトリペプチドスペーサーであってもよい。クラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドに結合しているジペプチドスペーサーまたはトリペプチドスペーサーは、たとえば、本明細書にて教示する任意のアミノ酸をはじめとする、天然および/または非天然のアミノ酸からなるものであってもよい。Qがクラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドであるいくつかの実施形態では、スペーサーは、たとえば1個または2個以上の負の電荷を持つアミノ酸を有するなど、全体として負の電荷を有する。Qがクラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドであるいくつかの実施形態では、ジペプチドスペーサーは、Ala−Ala、β−Ala−β−Ala、Leu−Leu、Pro−Pro、γ−アミノ酪酸−γ−アミノ酪酸、γ−Glu−γ−Gluからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ジペプチドスペーサーは、γ−Glu−γ−Gluではない。
アミン、ヒドロキシル、チオールを用いてペプチドをアルキル化する好適な方法は、当分野で知られている。たとえば、ウィリアムソンエーテル合成を使用して、グルカゴン関連ペプチドとアルキル基との間にエーテル結合を形成してもよい。また、ペプチドとハロゲン化アルキルとの求核置換反応では、エーテル結合、チオエーテル結合またはアミノ結合のいずれでも得ることができる。
アルキル化されたペプチドQのアルキル基は、どのような炭素鎖長であってもよいなど、どのようなサイズであってもよく、直鎖状であっても分岐状であってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、アルキル基は、C4〜C30アルキルである。たとえば、アルキル基は、C4アルキル、C6アルキル、C8アルキル、C10アルキル、C12アルキル、C14アルキル、C16アルキル、C18アルキル、C20アルキル、C22アルキル、C24アルキル、C26アルキル、C28アルキルまたはC30アルキルのいずれであってもよい。いくつかの実施形態では、アルキル基は、C8〜C20アルキル、たとえば、C14アルキルまたはC16アルキルである。
いくつかの具体的な実施形態では、アルキル基は、コール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、タウロコール酸、グリココール酸、コレステロール酸などの胆汁酸のステロイド部分を有する。
本発明のいくつかの実施形態では、ペプチドQは、求核基である長鎖アルカンをQと反応させることによってアルキル基を含むように修飾され、この場合のQは、求核置換に適した脱離基を有する。具体的な態様では、長鎖アルカンの求核基は、アミン、ヒドロキシルまたはチオール基(オクタデシルアミン、テトラデカノール、ヘキサデカンチオールなど)であってもよい。Qの脱離基は、アミノ酸の側鎖の一部であってもよいし、ペプチド骨格の一部であってもよい。好適な脱離基としては、たとえば、N−ヒドロキシスクシンイミド、ハロゲン、スルホン酸エステルがあげられる。
特定の実施形態では、ペプチドQは、求核基である長鎖アルカンを、Qに結合しているスペーサーと反応させることで、アルキル基を含むように修飾され、この場合のスペーサーは、脱離基を有する。具体的な態様では、長鎖アルカンは、アミン、ヒドロキシルまたはチオール基を有する。特定の実施形態では、脱離基を有するスペーサーは、アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、親水性の二官能性スペーサー、疎水性の二官能性スペーサー(好適な脱離基をさらに有する)など、本明細書で説明するどのようなスペーサーであってもよい。
長鎖アルカンがペプチドQまたはスペーサーによってアルキル化された本発明の態様に関して、長鎖アルカンは、どのようなサイズであってもよく、どのような炭素鎖長であってもよい。長鎖アルカンは、直鎖状であっても分岐状であってもよい。特定の態様では、長鎖アルカンは、C4〜C30アルカンである。たとえば、長鎖アルカンは、C4アルカン、C6アルカン、C8アルカン、C10アルカン、C12アルカン、C14アルカン、C16アルカン、C18アルカン、C20アルカン、C22アルカン、C24アルカン、C26アルカン、C28アルカンまたはC30アルカンのいずれであってもよい。グルカゴン関連ペプチドが、クラス1、クラス2またはクラス3のグルカゴン関連ペプチドであるいくつかの実施形態では、長鎖アルカンは、C8〜C20アルカン、たとえばC14アルカン、C16アルカンまたはC18アルカンであってもよい。
また、いくつかの実施形態では、Qとコレステロール部分との間で、アルキル化が起こり得る。たとえば、コレステロールのヒドロキシ基は、長鎖アルカンの脱離基を置換して、コレステロール−グルカゴンペプチド産物を形成することができる。
本明細書に記載のアルキル化されたペプチド(Q)は、親水性部分を有するようにさらに修飾されていてもよい。いくつかの具体的な実施形態では、親水性部分は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を有するものであってもよい。親水性部分の取り込みについては、本明細書に記載の任意の方法など、好適な任意の手段で達成可能である。クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドに関するいくつかの実施形態では、アルキル化されたQは、配列番号1601を有するものであってもよいし、あるいは、本明細書に記載されたアミノ酸修飾の1個または2個以上を有する修飾されたアミノ酸配列であって、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)10番目、20番目、24番目、29番目のアミノ酸の少なくとも1つがアルキル基を有し、16番目、17番目、21番目、24番目、29番目、C末端の延長部分の範囲内にある位置のアミノ酸またはC末端のアミノ酸の少なくとも1つが、Cys、Lys、Orn、ホモシステインまたはAc−Pheになるように修飾され、アミノ酸の側鎖が親水性部分(PEGなど)に共有結合している配列であってもよい。クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドに関するいくつかの実施形態では、アルキル基は、任意に、Cys、Lys、Orn、ホモシステインまたはAc−Pheを有するスペーサーを介して(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)10番目に結合し、親水性部分は、24番目でCys残基に取り込まれる。
あるいは、アルキル化されたペプチドQは、アルキル化され、なおかつ親水性部分を含むように修飾されたスペーサーを含むものであってもよい。好適なスペーサーの非限定的な例としては、Cys、Lys、Orn、ホモシステイン、Ac−Pheからなる群から選択される1個または2個以上のアミノ酸を有するスペーサーがあげられる。
αヘリックス構造の安定化
いくつかの実施形態では、2つのアミノ酸側鎖間に分子内架橋を形成して、クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドQのカルボキシ末端部分((野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)12番目〜29番目のアミノ酸など)の三次元構造を安定させる。2つのアミノ酸側鎖を、水素結合、塩結合の形成などのイオンの相互作用で、あるいは、共有結合によって、互いに結合することが可能である。
いくつかの実施形態では、i番目とi+4番目のアミノ酸など、アミノ酸を3個あけて離れた2つのアミノ酸の間に、分子内架橋を形成する。ここで、iは、野生型グルカゴンのアミノ酸番号で12〜25の整数(12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25など)である。特に、野生型グルカゴンのアミノ酸番号で、12番目と16番目、16番目と20番目、20番目と24番目または24番目と28番目のアミノ酸の対(i=12、16、20または24のアミノ酸の対)の側鎖は、互いに結合しているため、グルカゴンのαヘリックスを安定させる。あるいは、iは17であってもよい。
i番目のアミノ酸とi+4番目のアミノ酸とが分子内架橋によって結合しているいくつかの具体的な実施形態では、リンカーのサイズは、原子約8個または約7〜約9個である。
他の実施形態では、j番目とj+3番目のアミノ酸など、アミノ酸を2個あけて離れた2つのアミノ酸の間に、分子内架橋を形成する。ここで、jは、野生型グルカゴンのアミノ酸番号で12〜26の整数(12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26など)である。いくつかの具体的な実施形態では、jは17である。
j番目のアミノ酸とj+3番目のアミノ酸とが分子内架橋によって結合しているいくつかの具体的な実施形態では、リンカーのサイズは、原子約6個または原子約5個〜約7個である。
さらに他の実施形態では、k番目のアミノ酸とk+7番目のアミノ酸など、アミノ酸を6個あけて離れた2つのアミノ酸の間に、分子内架橋を形成する。ここで、kは、野生型グルカゴンのアミノ酸番号で12〜22の整数(12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22など)である。いくつかの具体的な実施形態では、kは12、13または17である。例示としての実施形態では、kは17である。
共有結合して、6個の原子からなる架橋した構造を形成できるアミノ酸対形成の例として、OrnとAsp、Gluと式Iのアミノ酸(nは2)、ホモグルタミン酸と式Iのアミノ酸(nは1)があげられ、式Iは以下のとおりである。
共有結合して、7個の原子からなる架橋した構造を形成できるアミノ酸対形成の例として、Orn−Glu(ラクタム環);Lys−Asp(ラクタム);またはホモセリン−ホモグルタミン酸(ラクトン)があげられる。8個の原子からなるリンカーを形成できるアミノ酸対形成の例として、Lys−Glu(ラクタム);ホモリジン−Asp(ラクタム);Orn−ホモグルタミン酸(ラクタム);4−アミノフェニルアラニン−Asp(ラクタム);またはTyr−Asp(ラクトン)があげられる。9個の原子からなるリンカーを形成できるアミノ酸対形成の例として、ホモリジン−Glu(ラクタム);Lys−ホモグルタミン酸(ラクタム);4−アミノフェニルアラニン−Glu(ラクタム);またはTyr−Glu(ラクトン)があげられる。これらのアミノ酸の側鎖はいずれも、αヘリックスの三次元構造が破壊されないかぎり、別の化学基でさらに置換されていてもよい。当業者であれば、同様のサイズと望ましい効果を持つ、安定させる構造を生成する化学的に修飾された誘導体をはじめとして、別の対形成または別のアミノ酸類縁体を想定することができる。たとえば、ホモシステイン−ホモシステインジスルフィド結合は原子6個の長さであるが、望ましい効果を得られるように、これをさらに修飾してもよい。共有結合がない場合ですら、上述したアミノ酸対形成または当業者が想定できる同様の対形成によって、塩結合の形成または水素結合の相互作用などの非共有結合で、αヘリックスの安定性を高めることができる。
ラクタム環のサイズは、アミノ酸側鎖の長さに応じて可変であり、いくつかの実施形態では、リジンアミノ酸の側鎖をグルタミン酸の側鎖に結合することで、ラクタムを形成する。(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)さらに他の例示としての実施形態は、任意にラクタム架橋を有する、以下の対形成を含む。12番目のGluと16番目のLys;12番目の天然のLysと16番目のGlu;16番目のGluと20番目のLys;16番目のLysと20番目のGlu;20番目のGluと24番目のLys;20番目のLysと24番目のGlu;24番目のGluと28番目のLys;24番目のLysと28番目のGlu。あるいは、ラクタム環のアミド結合の順序を逆にしてもよい(ラクタム環を、12番目のリジンと16番目のグルタミン酸の側鎖間あるいは、12番目のグルタミン酸と16番目のリジンとの間に形成してもよいなど)。
ラクタム架橋以外の分子内架橋を利用して、Qのαヘリックスを安定させてもよい。いくつかの実施形態では、分子内架橋は、疎水性の架橋である。この場合、分子内架橋は、任意に、Qのαヘリックスの疎水性の側の一部である2つのアミノ酸の側鎖の間にある。たとえば、疎水結合によって結合したアミノ酸の1つが、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)10番目、14番目、18番目のアミノ酸であってもよい。
具体的な一態様では、オレフィンメタセシスを使用して、全炭化水素架橋系でQのαヘリックスの1または2回転分を架橋させる。この場合のQは、さまざまな長さのオレフィン側鎖を持つα−メチル化アミノ酸を有するものであってもよく、I番目およびi+4番目またはi+7番目で、RかSの立体異性を有するように構成されている。たとえば、オレフィン側は、(CH2)nを有するものであってもよく、式中、nは1〜6の整数である。いくつかの実施形態では、原子8個の長さで架橋する場合、nは3である。このような分子内架橋を形成するための好適な方法は、従来技術において説明されている。たとえば、Schafmeister et al., J. Am. Chem. Soc. 122: 5891-5892 (2000)およびWalensky et al., Science 305: 1466-1470 (2004)を参照のこと。あるいは、Qは、ヘリックスの隣接する回転部分にあるO−アリルセリル残基を含むものであってもよく、この回転部分は、ルテニウム触媒を用いた閉環メタセシスによって架橋されている。このような架橋の工程は、たとえば、Blackwell et al., Angew, Chem., Int. Ed. 37: 3281-3284 (1998)に記載されている。
もうひとつの具体的な態様では、非天然のチオジアラミンアミノ酸であるランチオニンは、シスチンの擬似ペプチドとして広く使われてきたが、αヘリックスの1つの回転を架橋するのに用いられる。ランチオニンを基にした環化の好適な方法は、当分野で知られている。たとえば、Matteucci et al., Tetrahedron Letters 45: 1399-1401 (2004);Mayer et al., J. Peptide Res. 51: 432-436 (1998);Polinsky et al., J. Med. Chem. 35: 4185-4194 (1992);Osapay et al., J. Med. Chem. 40: 2241-2251 (1997);Fukase et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 65: 2227-2240 (1992);Harpp et al., J. Org. Chem. 36: 73-80 (1971);Goodman and Shao, Pure Appl. Chem. 68: 1303-1308 (1996);Osapay and Goodman, J. Chem. Soc. Chem. Commun. 1599-1600 (1993)を参照のこと。
いくつかの実施形態では、i番目とi+7番目のGlu残基間を繋ぐα,ω−ジアミノアルカン(1,4−ジアミノプロパンおよび1,5−ジアミノペンタンなど)を利用して、Qのαヘリックスを安定させる。このような繋ぎを用いると、ジアミノアルカンの繋ぎの長さに応じて、原子9個またはそれより長い架橋が形成される。このような繋ぎを用いて架橋したペプチドを生成する好適な方法は、従来技術において説明されている。たとえば、Phelan et al., J. Am. Chem. Soc. 119: 455-460 (1997)を参照のこと。
本発明のさらにもうひとつの実施形態では、ジスルフィド結合を利用して、Qのαヘリックスの1または2回転分を架橋させる。あるいは、一方または両方の硫黄原子がメチレン基で置換されて等配電子のマクロ環化が生じる修飾されたジスルフィド結合を利用して、Qのαヘリックスを安定させる。ジスルフィド結合または硫黄を基にした環化でペプチドを修飾する好適な方法は、たとえば、Jackson et al., J. Am. Chem. Soc. 113: 9391-9392 (1991)およびRudinger and Jost, Experientia 20: 570-571 (1964)に記載されている。
さらにもうひとつの実施形態では、i番目とi+4番目に位置する2つのHis残基またはHisとCysとの対で金属原子を結合することによって、Qのαヘリックスを安定させる。金属原子は、たとえば、Ru(III)、Cu(II)、Zn(II)またはCd(II)であってもよい。このような金属結合を基にしたαヘリックス安定化方法は、当分野で知られている。たとえば、Andrews and Tabor, Tetrahedron 55: 11711-11743 (1999);Ghadiri et al., J. Am. Chem. Soc. 112: 1630-1632 (1990);Ghadiri et al., J. Am. Chem. Soc. 119: 9063-9064 (1997)を参照のこと。
Qのαヘリックスを、他のペプチド環化手段で安定させてもよく、この手段は、Davies, J. Peptide. Sci. 9: 471-501 (2003)に概説されている。αヘリックスは、アミド結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、尿素結合、カルバメート結合、スルホンアミド結合などを形成することで安定させることが可能なものである。たとえば、Cys残基の側鎖とC末端との間に、チオエステル結合を形成すればよい。あるいは、チオール(Cys)とカルボン酸(Asp、Gluなど)とを有するアミノ酸の側鎖によって、チオエステルを形成すればよい。もうひとつの方法では、スベリン酸(オクタン二酸)といったジカルボン酸などの架橋剤を用いることで、アミノ酸側鎖の2つの官能基間に、遊離アミノ基、ヒドロキシ基、チオール基、これらの組み合わせなどの結合を導入してもよい。
いくつかの実施形態によれば、Qのαヘリックスを、疎水性のアミノ酸をi番目とi+4番目に取り込むことで安定させる。たとえば、iはTyrであってもよく、i+4はValまたはLeuであってもよい;iはPheであってもよく、i+4はCysまたはMetであってもよい;IはCysであってもよく、i+4はMetであってもよい;またはiはPheであってもよく、i+4はIleであってもよい。本明細書の目的で、ここに示したi番目のアミノ酸をi+4番目におくことができる一方、i+4番目のアミノ酸をi番目におけるという意味で、上記のアミノ酸対形成を逆にしてもよいことを理解されたい。
Qがグルカゴン関連ペプチドである本発明の他の実施形態によれば、QのC末端領域(野生型グルカゴンのアミノ酸番号の番号付けで12番目から29番目のアミノ酸のあたり)で、1個または2個以上のαヘリックスを安定させるアミノ酸を(アミノ酸置換または挿入のいずれかによって)取り込んで、αヘリックスを安定させる。具体的な実施形態では、αヘリックスを安定させるアミノ酸は、アミノイソ酪酸(Aib)あるいは、メチル、エチル、プロピル、n−ブチルから選択される同一の基または異なる基で二置換されたアミノ酸またはシクロオクタンまたはシクロヘプタン(1−アミノシクロオクタン−1−カルボン酸など)で二置換されたアミノ酸を含むがこれらに限定されるものではない、α,α−二置換アミノ酸である。いくつかの実施形態では、グルカゴン関連ペプチドの16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目または29番目のうち1つ、2つ、3つ、4つまたは5つ以上を、α,α−二置換アミノ酸で置換する。具体的な実施形態では、16番目、20番目、21番目、24番目のうち1つ、2つ、3つまたはすべてを、Aibで置換する。
結合体
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のペプチド(Q)は、ジスルフィド結合などによって、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N−アシル化、環化されるあるいは、または塩(酸付加塩、塩基付加塩など)に変換されるおよび/または任意に二量体化、多量体化または重合または結合される。本明細書で説明するように、Qは、グルカゴンスーパーファミリーのペプチド、グルカゴン関連ペプチド(クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドを含む)またはオステオカルシン、カルシトニン、アミリンまたはその類縁体、誘導体または結合体であってもよい。
本開示は、Q−L−YのQがさらに異種部分に結合している結合体も包含する。Qと異種部分との結合は、共有結合、非共有結合(静電相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、塩結合、疎水性相互作用など)または両方のタイプの結合によって実施すればよい。ビオチン−アビジン、リガンド/受容体、酵素/基質、核酸/核酸結合タンパク質、脂質/脂質結合タンパク質、細胞接着分子の結合相手あるいは、互いに親和性のある任意の結合相手またはそれらの断片をはじめとして、多岐にわたる非共有結合系を利用できる。いくつかの態様では、共有結合はペプチド結合である。異種部分に対するQの結合は、間接的であっても直接的な結合であってもよく、間接的な場合には、リンカーまたはスペーサーが関与してもよい。好適なリンカーおよびスペーサーは、当分野で知られており、「アシル化およびアルキル化」および「結合基」のセクションならびに、「Qおよび/またはLの化学修飾」のサブセクションにて本明細書に記載されたリンカーまたはスペーサーを含むが、これらに限定されるものではない
本明細書で使用する場合、「異種部分」という用語は「結合体部分」という用語と同義であり、自己が結合するQとは異なる(化学的または生化学的、天然またはコードされていない)分子を示す。Qに結合できる結合体部分の例として、異種ペプチドまたはポリペプチド(血漿タンパク質などを含む)、ターゲットするための薬剤、免疫グロブリンまたはその一部(可変領域、CDRまたはFc領域など)、放射性同位元素、フルオロフォアまたは酵素標識などの診断用標識、水溶性ポリマーをはじめとするポリマーまたは他の治療薬または診断薬があげられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、Qおよび血漿タンパク質を含む結合体が提供され、ここで、血漿タンパク質は、アルブミン、トランスフェリン、フィブリノーゲン、グロブリンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、結合体の血漿タンパク質部分は、アルブミンまたはトランスフェリンである。いくつかの実施形態における結合体は、Qと、ポリペプチド、核酸分子、抗体またはその断片、ポリマー、量子ドット、低分子、トキシン、診断薬、炭水化物、アミノ酸のうち1つまたは2つ以上を有する。
C末端の異種部分
いくつかの実施形態では、Qに結合している異種部分は、Qとは異なるペプチドであり、結合体は、融合ペプチドまたはキメラペプチドである。Qがグルカゴンスーパーファミリーのペプチドであるいくつかの実施形態では、異種部分は、1〜21個のアミノ酸からなるペプチドの延長部分である。Qがグルカゴン関連ペプチド(クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドなど)である具体的な実施形態では、延長部分は、QのC末端、たとえば29番目のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、延長部分は、配列番号1610(GPSSGAPPPS)、配列番号1611(GGPSSGAPPPS-CONH2)、配列番号1614(KRNRNNIA)、配列番号1643(KRNR)またはKGKKNDWKHNITQ(配列番号1613)のアミノ酸配列を有する。具体的な態様では、このアミノ酸配列は、29番目のアミノ酸などのQのC末端のアミノ酸を介して結合している。いくつかの実施形態では、配列番号1610、1611、1613、1614、1643のアミノ酸配列を、ペプチド結合によってペプチドの29番目のアミノ酸に結合する。いくつかの具体的な実施形態では、グルカゴン関連ペプチドの29番目のアミノ酸(クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドなど)はGlyであり、このGlyは、配列番号1610、1611、1613、1614、1643のアミノ酸配列のうちの1つに結合する。
ポリマーの異種部分
いくつかの実施形態では、Qに結合している異種部分は、ポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレンおよびこれらの誘導体(ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレートなど)、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのポリマー(ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)など)、ポリビニルポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルピロリドンなど)、ポリグリコライド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびこれらのコポリマー、セルロース(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、セルロース硫酸ナトリウム塩など)、ポリプロピレン、ポリエチレン(ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)など)、ポリスチレンからなる群から選択される。
いくつかの態様では、ポリマーは、合成生分解性ポリマー(乳酸およびグリコール酸のポリマー、ポリ酸無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−コカプロラクトン)など)、天然の生分解性ポリマー(たとえば、アルギン酸および他の多糖類(デキストランおよびセルロースを含む)、コラーゲン、これらの化学的誘導体(置換、化学基の付加、たとえば、アルキル、アルキレン、ヒドロキシル化、酸化ならびに、当業者によって常法でなされる他の修飾)、アルブミンおよび他の親水性のタンパク質(ゼインおよび他のプロラミンおよび疎水性タンパク質など))ならびにこれらのコポリマーまたは混合物を含む、生分解性ポリマーである。通常、これらの物質は、in vivoでの酵素による加水分解または水への曝露によって、あるいは表面が浸食されたり、内部まで一挙に浸食されたりすることで、分解される。
いくつかの態様では、ポリマーは、H. S. Sawhney, C. P. Pathak and J. A. Hubbell in Macromolecules, 1993, 26, 581-587(その教示内容を本明細書に援用する)に記載された生浸食性ハイドロゲル、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ酸無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)などの生付着性ポリマーである。
いくつかの実施形態では、ポリマーは、水溶性ポリマーまたは親水性ポリマーである。親水性ポリマーについては、本明細書の「親水性の異種部分」でさらに説明する。好適な水溶性ポリマーは当分野で知られており、たとえば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC;Klucel)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC;Methocel)、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルブチルセルロース、ヒドロキシプロピルペンチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース(Ethocel)、ヒドロキシエチルセルロース、さまざまなアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロース、さまざまなセルロースエーテル、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルシウムカルボキシメチルセルロース、酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、メタクリル酸コポリマー、ポリメタクリル酸、ポリメチルメタクリレート、無水マレイン酸/メチルビニルエーテルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムおよびポリアクリル酸カルシウム、ポリアクリル酸、酸性カルボキシポリマー、カルボキシポリメチレン、カルボキシビニルポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリメチルビニルエーテルコ無水マレイン酸、カルボキシメチルアミド、カリウムメタクリレートジビニルベンゼンコポリマー、ポリオキシエチレングリコール、ポリエチレンオキシドならびに、これらの誘導体、塩および組み合わせがあげられる。
具体的な実施形態では、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)などをはじめとするポリアルキレングリコールである。
いくつかの実施形態では、異種部分は炭水化物である。いくつかの実施形態では、炭水化物は、単糖(グルコース、ガラクトース、フルクトースなど)、二糖(スクロース、ラクトース、マルトースなど)、オリゴ糖(ラフィノース、スタキオースなど)、多糖(スターチ、アミラーゼ、アミロペクチン、セルロース、キチン、カロース、ラミナリン、キシラン、マンナン、フコイダン、ガラクトマンナンである。
いくつかの実施形態では、異種部分は脂質である。いくつかの実施形態における脂質は、脂肪酸、エイコサノイド、プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサン、N−アシルエタノールアミン)、グリセロ脂質(一置換グリセロール、二置換グリセロール、三置換グリセロールなど)、グリセロリン脂質(ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンなど)、スフィンゴ脂質(スフィンゴシン、セラミドなど)、ステロール脂質(ステロイド、コレステロールなど)、フェノール脂質、糖脂質またはポリケタイド、オイル、ワックス、コレステロール、ステロール、脂溶性ビタミン、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質である。
Fc融合異種部分
上述したように、いくつかの実施形態では、Qは、免疫グロブリンまたはその一部(可変領域、CDRまたはFc領域など)に結合する(融合するなど)。本明細書で説明するように、Qは、グルカゴンスーパーファミリーのペプチド、グルカゴン関連ペプチド(クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドを含む)またはオステオカルシン、カルシトニン、アミリンまたはその類縁体、誘導体または結合体であってもよい。周知のタイプの免疫グロブリン(Ig)には、IgG、IgA、IgE、IgDまたはIgMがある。Fc領域は、Ig重鎖のC末端領域であって、再利用(半減期の延長になる)、抗体依存性細胞介在性細胞障害(ADCC)、補体依存性細胞障害(CDC)などの作用を行うFc受容体に結合する役割を担う。
たとえば、いくつかの定義によれば、ヒトIgGの重鎖Fc領域は、重鎖の226番目のシステインからC末端までの範囲である。「ヒンジ領域」は通常、ヒトIgG1の216番目のグルタミン酸から230番目のプロリンまでの範囲である(他のIgGイソタイプのヒンジ領域については、システイン結合に関与するシステインをアラインすることで、IgG1配列とアラインすることができる)。IgGのFc領域は、2つの定常ドメインであるCH2とCH3を有する。ヒトIgGのFc領域のCH2ドメインは通常、231番目のアミノ酸から341番目のアミノ酸までの範囲である。ヒトIgGのFc領域のCH3ドメインは通常、342番目〜447番目のアミノ酸の範囲である。免疫グロブリンまたは免疫グロブリン断片または領域のアミノ酸番号の表記はいずれも、Kabat et al. 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Public Health, Bethesda, Mdに基づいている。関連の実施形態では、Fc領域は、CH1以外に、免疫グロブリン重鎖の1つまたは2つ以上の天然の定常領域または修飾された定常領域(IgGおよびIgAのCH2領域およびCH3領域あるいは、IgEのCH3領域およびCH4領域)を有するものであってもよい。
好適な結合体部分は、FcRn結合部位を含む免疫グロブリン配列の一部を有する。サルベージ受容体であるFcRnは、免疫グロブリンを再利用し、これを血液循環に戻す役割を担う。FcRn受容体に結合するIgGのFc部分の領域は、X線結晶解析に基づいて説明されている(Burmeister et al. 1994, Nature 372:379)。FcとFcRnとの主な接触領域は、CH2とメインとCH3ドメインの接合部付近である。FcとFcRnとの接点はいずれも、単一のIg重鎖の範囲内にある。主要な接触部位は、CH2ドメインの248番目、250番目〜257番目、272番目、285番目、288番目、290番目〜291番目、308番目〜311番目、314番目のアミノ酸残基およびCH3ドメインの385番目〜387番目、428番目、433番目〜436番目のアミノ酸残基を含む。
いくつかの結合体部分は、FcγR結合部位(単数または複数)を有するものであってもよいし、そうでなくてもよい。FcγRは、ADCCおよびCDCを担う。FcγRと直接接するFc領域内の位置の例は、234番目〜239番目のアミノ酸(ヒンジ領域内の下側)、265番目〜269番目のアミノ酸(B/Cループ)、297番目〜299番目のアミノ酸(C’/Eループ)、327番目〜332番目のアミノ酸(F/G)ループである(Sondermann et al., Nature 406: 267-273, 2000)。IgEのヒンジ領域内の下側は、FcRI結合にも関与している(Henry, et al., Biochemistry 36, 15568-15578, 1997)。IgA受容体結合に関与する残基が、Lewis et al., (J Immunol. 175:6694-701, 2005)に記載されている。IgE受容体結合に関与するアミノ酸残基は、Sayers et al. (J Biol Chem. 279(34):35320-5, 2004)に記載されている。
アミノ酸修飾を、免疫グロブリンのFc領域に対して実施してもよい。このような変異したFc領域は、Fc領域のCH3ドメイン(342番目〜447番目の残基)での少なくとも1つのアミノ酸修飾および/またはFc領域のCH2ドメイン(231番目〜341番目の残基)での少なくとも1つのアミノ酸修飾を有する。FcRnに対する親和性を高めると考えられている変異として、T256A、T307A、E380A、N434Aがあげられる(Shields et al. 2001, J. Biol. Chem. 276:6591)。他の変異が、FcRnに対する親和性を有意に低下させることなく、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIBおよび/またはFcγRIIIAへのFc領域の結合を低下させてもよい。たとえば、Fc領域の297番目のAsnをAlaまたは他のアミノ酸で置換すると、高度に保存されたN−グリコシル化部位がなくなり、Fc領域の半減期の延長を伴う免疫原性を低下させ、FcγRに対する結合を低下させるかもしれない(Routledge et al. 1995, Transplantation 60:847;Friend et al. 1999, Transplantation 68:1632;Shields et al. 1995, J. Biol. Chem. 276:6591)。FcγRへの結合を低下させるIgG1の233番目〜236番目のアミノ酸修飾がなされている(Ward and Ghetie 1995, Therapeutic Immunology 2:77およびArmour et al. 1999, Eur. J. Immunol. 29:2613)。いくつかのアミノ酸置換例が、米国特許第7,355,008号および同第7,381,408号(各々の全体を本明細書に援用する)に記載されている。
親水性の異種部分
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のQは、親水性部分に共有結合している。本明細書で説明するように、Qは、グルカゴンスーパーファミリーのペプチド、グルカゴン関連ペプチド(クラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドを含む)またはオステオカルシン、カルシトニン、アミリンまたはその類縁体、誘導体または結合体であってもよい。親水性部分は、タンパク質を活性化ポリマー分子と反応させるのに用いられる任意の好適な条件下で、Qに結合可能である。標的化合物(アルデヒド基、アミノ基、エステル基、チオール基、α−ハロアセチル基、マレイミド基またはヒドラジノ基など)の反応性基に、PEG部分(アルデヒド基、アミノ基、エステル基、チオール基、α−ハロアセチル基、マレイミド基またはヒドラジノ基など)の反応性基を介して結合させる、アシル化、還元的アルキル化、マイケル付加、チオールアルキル化または他の化学選択的結合/ライゲーション方法をはじめとして、当分野で知られたどのような手段を用いてもよい。水溶性ポリマーを1つまたは2つ以上のタンパク質に結合するのに用いられる活性化基として、限定することなく、スルホン、マレイミド、スルフヒドリル、チオール、トリフレート、トレシレート、アジリジン、オキシラン、5−ピリジル、α−ハロゲン化アシル基(α−ヨード酢酸、α−ブロモ酢酸、α−クロロ酢酸など)があげられる。還元的アルキル化によってペプチドに結合する場合、重合度を制御できるように、選択するポリマーは、単一の反応性アルデヒドを有するものでなければならない。たとえば、Kinstler et al., Adv. Drug. Delivery Rev. 54: 477-485 (2002);Roberts et al., Adv. Drug Delivery Rev. 54: 459-476 (2002);Zalipsky et al., Adv. Drug Delivery Rev. 16: 157-182 (1995)を参照のこと。
親水性部分(水溶性ポリマー)をタンパク質に結合するのに用いられる他の活性化基として、α−ハロゲン化アシル基(α−ヨード酢酸、α−ブロモ酢酸、α−クロロ酢酸など)があげられる。具体的な態様では、チオールを有するペプチドのアミノ酸残基を、PEGなどの親水性部分で修飾する。いくつかの実施形態では、チオールを有するQのアミノ酸を、マイケル付加反応においてマレイミド活性化PEGで修飾し、以下に示すチオエーテル結合を有するPEG化ペプチドを得る。
いくつかの実施形態では、Qのアミノ酸のチオールを、求核置換反応においてハロアセチル活性化PEGで修飾し、以下に示すチオエーテル結合を有するPEG化ペプチドを得る。
好適な親水性部分として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール(POGなど)、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール(POG)、ポリオキシアルキレン、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、モノ−(C1〜C10)アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリ(β−アミノ酸)(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、ポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー(PPG)および他のポリアルキレンオキシド、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、コロン酸または他の多糖ポリマー、Ficollまたはデキストランおよびこれらの混合物があげられる。デキストランは、α1〜6結合によって優先的に結合するグルコースサブユニットの多糖ポリマーである。デキストランは、約1kD〜約100kDあるいは、約5、10、15または20kDから約20、30、40、50、60、70、80または90kDなど、多くの分子量範囲で入手可能である。
いくつかの実施形態によるポリエチレングリコール鎖などの親水性部分は、分子量が、約500〜約40,000ダルトンの範囲から選択される。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコール鎖は、分子量が、約500〜約5,000ダルトンまたは約1,000〜約5,000ダルトンの範囲から選択される。もうひとつの実施形態では、ポリエチレングリコール鎖などの親水性部分は、分子量が、約10,000〜約20,000ダルトンである。さらに他の例示としての実施形態では、ポリエチレングリコール鎖などの親水性部分は、分子量が約20,000〜約40,000ダルトンである。
直鎖状または分岐状の親水性ポリマーが考えられている。得られる結合体の調製物は、基本的に単分散であっても多分散であってもよく、ペプチド1つあたり約0.5個、0.7個、1個、1.2個、1.5個または2個のポリマー部分を有するものであってもよい。
いくつかの実施形態では、ペプチドの天然のアミノ酸を、親水性部分との架橋に適した側鎖を有するアミノ酸で置換し、ペプチドに対する親水性部分の結合を容易にする。アミノ酸の例として、Cys、Lys、Orn、ホモシステインまたはアセチルフェニルアラニン(Ac−Phe)があげられる。他の実施形態では、親水基を含むように修飾されたアミノ酸を、C末端でペプチドに付加する。
いくつかの実施形態では、結合体のペプチドを、ペプチドのアミノ酸の側鎖と親水性部分との間の共有結合によって、PEGなどの親水性部分に結合する。Qがクラス1、クラス2、クラス3、クラス4またはクラス5のグルカゴン関連ペプチドであるいくつかの実施形態では、16番目、17番目、21番目、24番目、29番目、40番目のアミノ酸の側鎖、C末端の延長部分の範囲内にある位置あるいは、C末端のアミノ酸またはこれらの位置の組み合わせを介して、親水性部分にペプチドを結合する。いくつかの態様では、親水性部分に共有結合しているアミノ酸(親水性部分を有するアミノ酸など)は、Cys、Lys、Orn、ホモシステインまたはAc−Pheであり、アミノ酸の側鎖が親水性部分(PEGなど)に共有結合している。
rPEGの異種部分
いくつかの実施形態では、本発明の結合体は、国際特許出願公開第WO2009/023270号および米国特許出願第US2008/0286808号に記載されているような、化学的PEG(組換えPEG(rPEG)分子など)に類似の伸長した構造を形成できる補助ペプチドに融合したQを有する。rPEG分子は、ポリエチレングリコールではない。いくつかの態様におけるrPEG分子は、グリシン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニンまたはプロリンのうちの1個または2個以上を有するポリペプチドである。いくつかの態様では、rPEGは、ポリグリシン、ポリセリン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリアラニンまたはポリプロリンなどのホモポリマーである。他の実施形態では、rPEGは、poly(Gly−Ser)、poly(Gly−Glu)、poly(Gly−Ala)、poly(Gly−Asp)、poly(Gly−Pro)、poly(Ser−Glu)など、2つのアミノ酸の繰り返し構造を含む。いくつかの態様では、rPEGは、poly(Gly−Ser−Glu)など、3つの異なるアミノ酸を含む。具体的な態様では、rPEGは、Qの半減期を長くする。いくつかの態様では、rPEGは、全体として正の電荷または全体として負の電荷を有する。いくつかの態様におけるrPEGには、二次構造が欠けている。いくつかの実施形態では、rPEGは、アミノ酸10個以上の長さであり、いくつかの実施形態では、アミノ酸約40〜約50個の長さである。いくつかの態様における補助ペプチドは、ペプチド結合またはプロテイナーゼ切断部位を介して本発明のペプチドのN末端またはC末端に融合されるか、本発明のペプチドのループに挿入される。いくつかの態様におけるrPEGは、親和性タグを有するか、5kDaよりも大きいPEGに結合する。いくつかの実施形態では、rPEGは、本発明の結合体の流体力学半径を大きくし、血清半減期を延ばし、プロテアーゼ耐性を高めるまたは溶解性を高め、いくつかの態様では、結合体の免疫原性を低下させる。
ペプチドの標的にされるアミノ酸残基と、これらの標的にされるアミノ酸の選択された側鎖あるいは、N末端またはC末端の残基と反応できる有機誘導体化剤とを反応させることで、Qを直接的な共有結合によって結合体部分に結合することが可能である。結合体部分またはペプチドの反応性基として、アルデヒド基、アミノ基、エステ基ル、チオール基、α−ハロアセチル基、マレイミド基またはヒドラジノ基があげられる。誘導体化剤として、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介した結合)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介して)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸または当分野で知られた他の薬剤があげられる。あるいは、多糖キャリアまたはポリペプチドキャリアなどの中間キャリアを使用して、結合体部分をペプチドに間接的に結合することも可能である。多糖キャリアの例として、アミノデキストランがあげられる。好適なポリペプチドキャリアの例として、結合させたキャリアに望ましい溶解特性を与えるための、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、これらのコポリマーならびに、これらのアミノ酸と他のアミノ酸、たとえばセリンの混合ポリマーがあげられる。
マルチマー
クラス1、クラス2、クラス3のグルカゴン関連ペプチドに関して、Qは、リンカーを介して結合した少なくとも2つ、3つまたは4つ以上のペプチドを含むダイマー、トリマーまたはさらに高次のマルチマーの一部であってもよく、ここで、少なくとも一方または両方のペプチドが、グルカゴン関連ペプチドである。ダイマーは、ホモダイマーであってもヘテロダイマーであってもよい。いくつかの実施形態では、リンカーは、二官能性チオールクロスリンカーおよび二官能性アミンクロスリンカーからなる群から選択される。特定の実施形態では、リンカーは、PEG、たとえば、5kDaのPEG、20kDaのPEGである。いくつかの実施形態では、リンカーは、ジスルフィド結合である。たとえば、ダイマーの各モノマーは、Cys残基(末端または末端以外のCysなど)を含むものであってもよく、各Cys残基の硫黄原子は、ジスルフィド結合の形成に関与する。本発明のいくつかの態様では、末端のアミノ酸(N末端またはC末端など)、末端以外のアミノ酸あるいは、少なくとも1個のモノマーの末端のアミノ酸と少なくとも1個の他のモノマーの末端以外のアミノ酸とを介して、モノマー同士が結合する。特定の態様では、モノマーは、N末端のアミノ酸を介して結合する。いくつかの態様では、マルチマーのモノマーは、各モノマーのC末端のアミノ酸が互いに結合する、「尾と尾」の向きで互いに結合している。結合体部分は、ダイマー、トリマーまたはさらに高次のマルチマーをはじめとして、本明細書に記載のどのグルカゴン関連ペプチドと共有結合していてもよい。
Qに対する異種部分の結合
異種部分は、「結合基」のセクションおよび「Qおよび/またはYの化学修飾」のサブセクションで説明する架橋方法や結合方法に従って、ペプチド(Q)に結合している。
Qの生成方法
本明細書に開示のペプチド(Q)は、標準的な合成方法、組換えDNA技術あるいは、ペプチドおよび融合タンパク質を調製する他の任意の方法で、調製できるものである。非天然のアミノ酸の中には標準的な組換えDNA技術では発現できないものもあるが、これらを調製するための技術は、当分野で知られている。非ペプチド部分を包含する本発明の化合物を、適切な場合は標準的なペプチド化学反応に加えて、標準的な有機化学反応で合成してもよい。
本開示のペプチドは、当分野で知られた方法によって得られる。ペプチドを新たに合成する好適な方法は、たとえば、Chan et al., Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis, Oxford University Press, Oxford, United Kingdom, 2005;Peptide and Protein Drug Analysis, ed. Reid, R., Marcel Dekker, Inc., 2000;Epitope Mapping, ed. Westwood et al., Oxford University Press, Oxford, United Kingdom, 2000;米国特許第5,449,752号に記載されている。
また、本開示のペプチドが、コードされていないアミノ酸すなわち非天然のアミノ酸を含まない場合、標準的な組換え方法を使用して、そのペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸を使用して、ペプチドを組換え的に製造することが可能である。たとえば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 3rd ed., Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY 2001;およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons, NY, 1994を参照のこと。
いくつかの実施形態では、本開示のペプチドは、単離されている。いくつかの実施形態では、本開示のペプチドは、精製されている。「純度」は相対的な表現であり、必ずしも、絶対値としての純度または絶対値としての濃縮または絶対値を選択したものとして解釈されるものではないことは、自明である。いくつかの態様では、純度は、少なくともまたは約50%であり、少なくともまたは約60%、少なくともまたは約70%、少なくともまたは約80%または少なくともまたは約90%(たとえば、少なくともまたは約91%、少なくともまたは約92%、少なくともまたは約93%、少なくともまたは約94%、少なくともまたは約95%、少なくともまたは約96%、少なくともまたは約97%、少なくともまたは約98%、少なくともまたは約99%または約100%である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のペプチドは、Synpep(Dublin, CA)、Peptide Technologies Corp.(Gaithersburg, MD)およびMultiple Peptide Systems(San Diego, CA)などの企業によって、商業的に合成されている。この点において、ペプチドは、合成、組換え、単離および/または精製可能なものである。
グルカゴン関連ペプチド(Q)のクラスについて、下記において詳細に説明する。クラス1、クラス2、クラス3、クラス4、クラス5のグルカゴン関連ペプチドに関して開示する各セクションでは、上記にて詳細に説明したQ−L−Y結合体のグルカゴン関連ペプチド部分(Q)の修飾について説明する。よって、グルカゴン関連ペプチドのクラスに関して説明する構成要素は、上述したようなQ−L−Y結合体を生成するように後にさらに修飾されるQの構成要素である。
クラス1のグルカゴン関連ペプチド
特定の実施形態では、グルカゴン関連ペプチドは、クラス1のグルカゴン関連ペプチドであり、これは、本明細書および国際特許出願公開第WO2009/155257号(2009年12月23日公開)、同第WO2008/086086号(2008年7月17日公開)、同第WO2007/056362号(2007年5月18日公開)に記載されている(その内容全体を本明細書に援用する)。
クラス1のグルカゴン関連ペプチドに関する、以下のセクションに示す生物学的配列(配列番号801〜915)は、国際特許出願公開第WO2009/155257号の配列番号1〜115に対応する。
活性
クラス1のグルカゴンペプチドは、天然のグルカゴンペプチドに対するグルカゴン受容体の活性を保持する(配列番号801)。たとえば、グルカゴンペプチドは、天然のグルカゴンの活性の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%または90%を保持できる(グルカゴンに対するグルカゴンペプチドのEC50の反比として算出され、たとえば、実施例2で概要を説明するアッセイを用いて、cAMPの産生を基準に判断できる)。いくつかの実施形態では、クラス1のグルカゴン関連ペプチドは、活性(activity)(本明細書では、「活性(potency)」という用語と同義に用いられる)が、グルカゴンと同一またはそれよりも高い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のグルカゴンペプチドは、天然のグルカゴンペプチドと比較して、活性が最大で約100%、約1000%、約10,000%、約100,000%または約1,000,000%である。
本明細書に記載のクラス1のグルカゴン関連ペプチドはいずれも、ヒトグルカゴン受容体に対するEC50が、実施例2に記載のアッセイなどを用いて、グルカゴン受容体を過剰発現するHEK293細胞においてcAMP誘導を試験すると、約100nM、約75nM、約50nM、約40nM、約30nM、約20nM、約10nM、約5nM、約1nMまたはそれ未満であってもよい。一般に、PEG化ペプチドは、PEG化されていないペプチドよりもEC50が高い。たとえば、本明細書に記載のクラス1のグルカゴン関連ペプチドは、PEG化されていないとき、グルカゴン受容体に対する活性が、グルカゴン受容体に対する天然のグルカゴン(配列番号801)の活性と比較して、少なくとも20%(少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、100%、150%、200%、400%、500%またはそれよりも高いなど)であり得る。特定の実施形態では、本明細書に記載のクラス1のグルカゴン関連ペプチドは、親水性部分がない場合にはグルカゴン受容体に対して天然のグルカゴンの表記の活性(%)を示すが、親水性部分を有するときは、グルカゴン受容体に対する天然のグルカゴンの活性(%)が低下する。たとえば、本明細書に記載のクラス1のグルカゴン関連ペプチド、PEG化されているとき、は、グルカゴン受容体に対する活性が、天然のグルカゴンの活性と比較して、少なくとも2%(少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%または少なくとも10%など)であってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のクラス1のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体に対して上述した活性のどれを示すものであってもよいが、最大で天然のグルカゴンの活性の1000%、10,000%、100,000%または1,000,000%である。
いくつかの実施形態では、クラス1のグルカゴン関連ペプチドは、GLP−1受容体に対する活性が、天然のGLP−1の約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満または約1%未満であるおよび/またはグルカゴン受容体に対する選択性が、GLP−1受容体に対する選択性の約5倍より高い、約10倍より高いまたは約15倍より高い。たとえば、いくつかの実施形態では、クラス1のグルカゴン関連ペプチドは、GLP−1受容体に対する活性が、天然のGLP−1の5%未満であり、グルカゴン受容体に対する選択性が、GLP−1受容体に対する選択性の5倍より高い。
溶解性の改善
天然のグルカゴンは、特に生理的なpHで水溶液に対する溶解性が低く、時間が経過するにつれて凝集および沈殿しやすい。これとは対照的に、いくつかの実施形態におけるクラス1のグルカゴン関連ペプチドは、pH6〜8または6〜9、たとえばpH7にて、25℃で24時間後に、天然のグルカゴンと比較して、溶解性が少なくとも2倍、5倍またはそれよりも高い。
したがって、いくつかの実施形態では、クラス1のグルカゴン関連ペプチドを、His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Ser−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Met−Asn−Thr(配列番号801)の野生型ペプチドに比して修飾して、天然のペプチドの生物学的活性を維持したまま、特に約5.5〜約8.0の範囲のpHで、水溶液に対するペプチドの溶解性を改善してある。
たとえば、親水性部分をペプチドに結合することによって、本明細書に記載のクラス1のグルカゴン関連ペプチドの溶解性を、さらに改善することが可能である。このような基を導入すると、作用時間が長くなるが、これは血中半減期が延びることを基準に判断できるものである。親水性部分については、本明細書でさらに説明する。
電荷をもつ残基を用いた修飾
いくつかの実施形態では、天然の電荷を持たないアミノ酸を、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸からなる群から選択される電荷を持つアミノ酸で置換するか、ペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端に、電荷を持つアミノ酸を付加することによって、クラス1のグルカゴン関連ペプチドに電荷を付加して溶解性を改善する。
いくつかの実施形態によれば、クラス1のグルカゴン関連ペプチドは、ペプチドが、アミノ酸置換および/または電荷を持つアミノ酸をペプチドのC末端領域に導入する付加ならびに、いくつかの実施形態では、配列番号801の27番目よりC末端側の位置に導入する付加によって修飾されるという事実がゆえに、溶解性が改善されている。任意に、電荷を持つ、1個、2個または3個のアミノ酸を、C末端領域内に導入してもよく、いくつかの実施形態では、27番目よりC末端側に導入してもよい。いくつかの実施形態によれば、28番目および/または29番目の天然のアミノ酸(単数または複数)を、電荷を持つアミノ酸で置換および/または電荷を持つ1〜3個のアミノ酸を、たとえば27番目の後、28番目の後または29番目の後など、ペプチドのC末端に付加する。例示としての実施形態では、電荷を持つアミノ酸のうち、1個、2個、3個またはすべてが、負の電荷を持つ。他の実施形態では、電荷を持つアミノ酸のうち、1個、2個、3個またはすべてが、正の電荷を持つ。
一例としての具体的な実施形態では、クラス1のグルカゴン関連ペプチドは、以下の修飾のうち1つまたは2つを有するものであってもよい。28番目のNからEへの置換、28番目のNからDへの置換、29番目のTからDへの置換、29番目のTからEへの置換、27番目、28番目または29番目の後ろにEの挿入、27番目、28番目または29番目の後ろにDの挿入。たとえば、DE(28番目と29番目)、EE(28番目と29番目)、EE(29番目と30番目)、EE(28番目と30番目)、DE(28番目と30番目)。
一例としての一実施形態によれば、クラス1のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号811のアミノ酸配列あるいは、天然のグルカゴンと比較して1〜3個のアミノ酸修飾(本明細書ではグルカゴンアゴニストに関連して説明)をさらに有する類縁体のアミノ酸配列またはそのグルカゴンアゴニスト類縁体。配列番号811は、天然タンパク質の28番目のアスパラギン残基がアスパラギン酸で置換されている、修飾されたクラス1のグルカゴン関連ペプチドを表す。もうひとつの例示としての実施形態では、クラス1のグルカゴン関連ペプチドは、天然タンパク質の28番目のアスパラギン残基がグルタミン酸で置換されている、配列番号838のアミノ酸配列を有する。他の例示としての実施形態は、配列番号824、825、826、833、835、836、837のクラス1のグルカゴン関連ペプチドを含む。
28番目および/または29番目の普通に生じるアミノ酸を、電荷を持つアミノ酸で置換することおよび/またはクラス1のグルカゴン関連ペプチドのカルボキシ末端に電荷を持つ1個または2個のアミノ酸を付加することで、生理的に関連するpH(すなわち、pH約6.5〜約7.5)での水溶液に対するグルカゴンペプチドの溶解性および水溶液中での安定性が、少なくとも5倍高まり、30倍になるほど高まる。したがって、いくつかの実施形態でのクラス1のグルカゴンペプチドは、グルカゴン活性を保持し、25℃で24時間後に測定すると、約5.5〜約8の特定のpH、たとえばpH7で、天然のグルカゴンと比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、15倍、25倍、30倍またはそれよりも高い溶解性を示す。
グルカゴン活性を保つことのできる、保存的な置換などの追加の修飾(本明細書でさらに説明する)を、クラス1のグルカゴン関連ペプチドに対してほどこしてもよい。
安定性の改善
クラス1のグルカゴンペプチドはいずれも、安定性が改善および/または分解が低減されることがあり、たとえば、25℃で24時間後にもとのペプチドの少なくとも95%を保持する。本明細書に開示のクラス1のグルカゴン関連ペプチドはいずれも、5.5〜8の範囲内のpHで安定性が改善されることがあり、たとえば、25℃で24時間後に、もとのペプチドの少なくとも75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%を保持する。いくつかの実施形態では、本発明のクラス1のグルカゴン関連ペプチドは、ペプチドの濃度の少なくとも75%(少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、95%を超える、最大100%など)または分解されたペプチドの約25%未満(20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0%までなど)が、280nmで紫外線(UV)検出器によって、約1週間または2週間以上(約2週間、約4週間、約1か月、約2か月、約4か月、約6か月、約8か月、約10か月、約12か月など)後に、少なくとも20℃(21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、少なくとも27.5℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃など)かつ100℃未満、85℃未満、75℃未満または70℃未満の温度の溶液で検出可能であるように安定性が改善される。クラス1のグルカゴン関連ペプチドは、たとえば、活性の増大、血中半減期の延長、寿命の延長、沈殿または凝集の低減および/または分解の低減(保管後に切断または化学修飾が生じるのを低減するなど)といった、ペプチドの薬学的特性を変化させる追加の修飾を有するものであってもよい。
一例としてのさらに別の実施形態では、特に酸性バッファーまたはアルカリ性バッファーでの経時的なペプチドの分解を低減するように、配列番号801の15番目のアミノ酸を修飾することによって、上記のクラス1のグルカゴン関連ペプチドのいずれかをさらに修飾して安定性を改善してもよい。例示としての実施形態では、15番目のAspを、Glu、ホモグルタミン酸、システイン酸またはホモシステイン酸で置換する。
あるいは、配列番号801の16番目のアミノ酸を修飾することで、本明細書に記載のクラス1のグルカゴン関連ペプチドのいずれかをさらに修飾して安定性を改善してもよい。例示としての実施形態では、16番目のSerを、ThrまたはAibで置換するか、グルカゴン受容体に対する活性を増強する、クラス1のグルカゴン関連ペプチドに関して本明細書に記載のアミノ酸置換のいずれかのアミノ酸で置換する。このような修飾は、15番目のアスパラギン酸と16番目のセリンとの間のペプチド結合の切断を低減するものである。
いくつかの実施形態では、2さまざまなアミノ酸位置での分解を低減するように、0番目、21番目、24番目または27番目のうちの1箇所、2箇所、3箇所または4箇所すべてを修飾することによって、本明細書に記載のクラス1のグルカゴン関連ペプチドのいずれかをさらに修飾してもよい。例示としての実施形態は、20番目のGlnから、Ser、Thr、AlaまたはAibへの置換、21番目のAspからGluへの置換、24番目のGlnからAlaまたはAibへの置換、27番目のMetからLeuまたはNleへの置換を含む。メチオニンを除去または置換すると、メチオニンの酸化による分解が低減される。GlnまたはAsnを除去または置換すると、GlnまたはAsnの脱アミド化による分解が低減される。Aspを除去または置換すると、Aspが脱水し、環状スクシンイミド中間体を形成した後、イソアスパラギン酸へ異性体化することで生じる分解が低減される。
増強された活性
もうひとつの実施形態によれば、グルカゴン受容体に対する活性が増強された、天然のグルカゴン(配列番号801)の16番目にアミノ酸修飾を有するクラス1のグルカゴン関連ペプチドが提示される。非限定的な例として、このような増強された活性は、16番目の天然のセリンを、グルタミン酸で置換あるいは、原子4個の長さの側鎖を有する別の負の電荷を持つアミノ酸で置換あるいは、グルタミン、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸のうちの任意の1つで置換あるいは、少なくとも1個のヘテロ原子(N、O、S、Pなど)を含有し、原子約4個(または3個〜5個)の長さの側鎖を有する電荷を持つアミノ酸で置換することによって、与えられるものである。16番目のセリンをグルタミン酸で置換すると、グルカゴン受容体に対するグルカゴン活性が、少なくとも2倍、4倍、5倍、最大10倍大きくなる。いくつかの実施形態では、クラス1のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体に対する選択性を、GLP−1受容体に対し、たとえば、少なくとも5倍、10倍または15倍保持する。
DPP−IV耐性
いくつかの実施形態では、本明細書に開示のクラス1のグルカゴンペプチドを1番目または2番目でさらに修飾し、ジペプチジルペプチダーゼIVによる切断に対する感受性を低減する。特に、いくつかの実施形態では、クラス1のグルカゴン関連ペプチドの1番目および/または2番目を、本明細書に記載のDPP−IV耐性アミノ酸(単数または複数)で置換する。いくつかの実施形態では、類縁体ペプチドの2番目を、アミノイソ酪酸で置換する。いくつかの実施形態では、類縁体ペプチドの2番目を、D−セリン、D−アラニン、グリシン、N−メチルセリン、ε−アミノ酪酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換する。もうひとつの実施形態では、クラス1のグルカゴン関連ペプチドの2番目を、D−セリン、グリシン、アミノイソ酪酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換する。いくつかの実施形態では、2番目のアミノ酸はD−セリンではない。
グルカゴンペプチドのC末端領域(アミノ酸12番目〜29番目のあたり)におけるαヘリックス構造を安定化することで、グルカゴンペプチドの1番目および/または2番目のアミノ酸の修飾時におけるグルカゴン活性の低下を回復することが可能である。αヘリックス構造については、本明細書にてさらに説明するように、12番目〜29番目のあたりでの共有結合または非共有結合の分子内架橋の形成(たとえば、「i」番目と「i+4」番目のアミノ酸の側鎖間のラクタム架橋であって、この場合のiは12〜25の整数である)、αヘリックスを安定化するアミノ酸(α,α−二置換アミノ酸など)でのアミノ酸の置換および/またはその挿入などによって、安定させることが可能である。
3位での修飾
3番目の天然のグルタミンから、酸性、塩基性または疎水性のアミノ酸への置換などの(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)3番目のアミノ酸修飾によって、グルカゴン受容体の活性を低減してもよい。たとえば、3番目をグルタミン酸、オルニチンまたはノルロイシンで置換すると、グルカゴン受容体の活性が実質的に低減または破壊される。
3番目のグルタミンを本明細書に記載のグルタミン類縁体で修飾することによって、グルカゴン受容体に対する活性を維持または増強してもよい。たとえば、グルカゴンアゴニストは、配列番号863、配列番号869、配列番号870、配列番号871、配列番号872、配列番号873、配列番号874のアミノ酸配列を含むものであってもよい。
C末端のアミドおよびエステルによるGLP−1活性の増強
C末端のアミノ酸のカルボン酸を、アミドまたはエステルなどの電荷が中性の基で置換することによって、GLP−1受容体に対する活性が増強される。逆に、ペプチドのC末端における天然のカルボン酸を保持すると、クラス1のグルカゴン関連ペプチドの、GLP−1受容体に対するグルカゴン受容体の選択性が比較的高く維持される(約5倍より高い、約6倍より高い、約7倍より高い、約8倍より高い、約9倍より高い、約10倍より高い、約11倍より高い、約12倍より高い、約13倍より高い、約14倍より高い、約15倍より高い、約16倍より高い、約17倍より高い、約18倍より高い、約19倍または約20倍など)。
別の修飾と組み合わせ
クラス1のグルカゴン関連ペプチドをさらに修飾してもよく、この修飾によって、溶解性および/または安定性および/またはグルカゴン活性が、さらに増大することがある。あるいは、クラス1のグルカゴン関連ペプチドは、溶解性または安定性に実質的に影響せず、グルカゴン活性を実質的に低下させない他の修飾を含むものであってもよい。例示としての実施形態では、クラス1のグルカゴン関連ペプチドは、天然のグルカゴン配列と比較して、合計で最大11または最大12または最大13または最大14のアミノ酸修飾を有するものであってもよい。たとえば、保存的または非保存的な置換、付加または欠失を、2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目または29番目のいずれで実施してもよい。
クラス1のグルカゴン関連ペプチドの修飾の例として、以下のものがあげられるが、これらに限定されるものではない。
(a)少なくともグルカゴンアゴニストの部分活性を保持した状態での非保存的な置換、保存的な置換、付加または欠失、たとえば、2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目または29番目のうちの1箇所または2箇所以上での保存的な置換、10番目のTyrからValまたはPheへの置換、12番目のLysからArgへの置換、これらの位置の1個または2個以上のアミノ酸からAlaへの置換、
(b)少なくともグルカゴンアゴニストの部分活性を保持した状態での29番目および/または28番目ならびに、任意に27番目のアミノ酸の欠失、
(c)グルタミン酸、ホモグルタミン酸、システイン酸またはホモシステイン酸で置換することなどによる15番目のアスパラギン酸の修飾(この修飾が分解を低減することがある);または16番目のセリンの修飾、たとえば、スレオニン、Aib、グルタミン酸の置換による修飾あるいは、原子4個の長さの側鎖を有する別の負の電荷を持つアミノ酸への置換あるいは、グルタミン、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸のうちの任意の1つへの置換による修飾(この修飾も同様に、15番目のアスパラギン酸と16番目のセリンとの間の結合の切断による分解を低減することがある)、
(d)たとえば16番目、17番目、20番目、21番目、24番目、29番目、40番目またはC末端のアミノ酸における、本明細書に記載するような水溶性ポリマーであるポリエチレングリコールなどの親水性部分の付加(これによって、溶解性および/または半減期が増大することがある)、
(e)酸化による分解を低減するための、ロイシンまたはノルロイシンで置換することなどによる27番目のメチオニンの修飾、
(f)Glnの脱アミド化によって起こる分解を低減するための、Ser、Thr、AlaまたはAibで置換することなどによる20番目または24番目のグルタミンの修飾、
(g)Aspが脱水し、環状スクシンイミド中間体を形成した後、イソアスパラギン酸へ異性体化することで生じる分解を低減するための、Gluで置換することなどによる21番目のAspの修飾、
(h)任意に「i」番目と「i+4」番目との間のラクタム架橋などの分子内架橋(式中、iは、12、16、20、24など、12〜25の整数である)との組み合わせで、DPP−IVによる切断に対する耐性を改善する、本明細書に記載するような1番目または2番目の修飾、
(i)血中半減期を延ばすおよび/または作用時間を長くするおよび/または作用開始を遅らせることで、グルカゴン受容体および/またはGLP−1受容体に対する活性を増強することがある、本明細書に記載するようなグルカゴンペプチドのアシル化またはアルキル化(このアシル化またはアルキル化に、任意に、親水性部分の付加を組み合わせてもよく、これに加えて、あるいはこれに代えて、任意にGLP−1ペプチドに対する活性を選択的に低減する修飾、たとえば、7番目のThrから、ヒドロキシ基を欠いたアミノ酸、たとえば、AbuまたはIleへの置換などの7番目でのThrの修飾と組み合わせてもよい)、27番目のアミノ酸よりC末端側のアミノ酸の欠失(28番目と29番目のアミノ酸の一方または両方を欠失させ、アミノ酸27個または28個の長さのペプチドを得るなど)、
(j)本明細書に記載するようなC末端の延長部分、
(k)本明細書に記載するようなホモダイマー化またはヘテロダイマー化、
(a)から(k)の組み合わせ。
いくつかの実施形態では、クラス1のグルカゴン関連ペプチドの修飾の例として、A群から選択される少なくとも1つのアミノ酸修飾およびB群および/またはC群から選択される1つまたは2つ以上のアミノ酸修飾があげられる。
この場合のA群は、次のとおりである。
28番目のAsnから電荷を持つアミノ酸への置換、
28番目のAsnから、Lys、Arg、His、Asp、Glu、システイン酸、ホモシステイン酸からなる群から選択される電荷を持つアミノ酸への置換、
28番目でのAsn、AspまたはGluへの置換、
28番目でのAspへの置換、
28番目でのGluへの置換、
29番目のThrから電荷を持つアミノ酸への置換、
29番目のThrから、Lys、Arg、His、Asp、Glu、システイン酸、ホモシステイン酸からなる群から選択される電荷を持つアミノ酸への置換、
29番目でのAsp、GluまたはLysへの置換、
29番目でのGluへの置換、
29番目の後ろに電荷を持つ1〜3個のアミノ酸の挿入、
29番目の後ろにGluまたはLysの挿入、
29番目の後ろにGly−LysまたはLys−Lysの挿入、
またはこれらの組み合わせ。
また、この場合のB群は、次のとおりである。
15番目のAspからGluへの置換、
16番目のSerからThrまたはAibへの置換、
さらに、この場合のC群は、次のとおりである。
1番目のヒスチジンからジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)による切断に対するグルカゴンペプチドの感受性を低減する非天然のアミノ酸への置換、
2番目のSerからジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)による切断に対するグルカゴンペプチドの感受性を低減する非天然のアミノ酸への置換、
12番目のLysからArgへの置換、
20番目のGlnからSer、Thr、AlaまたはAibへの置換、
21番目のAspからGluへの置換、
24番目のGlnからSer、Thr、AlaまたはAibへの置換、
27番目のMetからLeuまたはNleへの置換、
27〜29番目のアミノ酸の欠失、
28番目〜29番目のアミノ酸の欠失、
29番目のアミノ酸の欠失、
またはこれらの組み合わせ。
例示としての実施形態では、12番目のLysをArgで置換する。他の例示としての実施形態では、29番目および/または28番目のアミノ酸ならびに、任意に27番目のアミノ酸が、欠失される。
いくつかの具体的な実施形態では、グルカゴンペプチドは、(a)DPP−IV耐性を与える、1番目および/または2番目のアミノ酸修飾、たとえば、1番目でのDMIAへの置換または2番目でのAibへの置換、(b)16番目と20番目など、12番目〜29番目の範囲内での分子内架橋あるいは、16番目、20番目、21番目、24番目のアミノ酸の1つまたは2つ以上から、α,α−二置換アミノ酸への置換、任意に(c)24番目、29番目のCysを介するか、またはC末端のアミノ酸における、PEGなどの親水物への結合、任意に(d)MetからNleなどに置換する27番目のアミノ酸修飾、任意に(e)分解を低減する、20番目、21番目および24番目のアミノ酸修飾ならびに、任意に(f)配列番号820への結合を含む。グルカゴンペプチドが配列番号820に結合している場合、特定の実施形態における29番目のアミノ酸はThrまたはGlyである。他の具体的な実施形態では、グルカゴンペプチドは、(a)Asp−Glu(28番目と29番目)またはGlu−Glu(28番目と29番目)またはGlu−Glu(29番目と30番目)またはGlu−Glu(28番目と30番目)またはAsp−Glu(28番目と30番目)および任意に(b)SerからThrまたはAibなどに置換する、16番目のアミノ酸修飾および任意に(c)MetからNleなどに置換する、27番目のアミノ酸修飾および任意に(d)分解を低減させる、20番目、21番目および24番目のアミノ酸修飾を有する。具体的な実施形態では、グルカゴンペプチドは、T16、A20、E21、A24、27番目のNle、D28、E29である。
いくつかの実施形態では、クラス1のグルカゴン関連ペプチドは、以下に示すアミノ酸配列を有する。
1〜3個のアミノ酸修飾がなされた、X1−X2−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Ser−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Met−Z(配列番号839)
ここで、X1および/またはX2は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)による切断に対するグルカゴンペプチドの感受性を低減する(または耐性を高める)非天然のアミノ酸であり、
この場合のZは、−COOH(天然のC末端カルボキシレート)、−Asn−COOH、Asn−Thr−COOH、Y−COOHからなる群から選択され、Yは、1〜2個のアミノ酸であり、
ここで、分子内架橋、好ましくは共有結合によって、i番目のアミノ酸とi+4番目のアミノ酸の側鎖同士を結合し、ここで、iは、12、16、20または24である。
いくつかの実施形態では、分子内架橋はラクタム架橋である。いくつかの実施形態では、配列番号839のi番目とi+4番目のアミノ酸は、LysとGlu、たとえば、16番目のグルタミン酸および20番目のリジンである。いくつかの実施形態では、X1は、D−His、N−メチルヒスチジン、α−メチルヒスチジン、イミダゾール酢酸、デスアミノヒスチジン、ヒドロキシルヒスチジン、アセチルヒスチジン、ホモヒスチジン、α,α−ジメチルイミダゾール酢酸(DMIA)からなる群から選択される。他の実施形態では、X2は、D−Ser、D−Ala、Gly、N−メチルセリン、Val、α−アミノイソ酪酸(Aib)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドは、16番目、17番目、20番目、21番目、24番目、29番目、40番目のアミノ酸、C末端の延長部分の範囲内またはC末端のアミノ酸のいずれかで、親水性部分に共有結合している。例示としての実施形態では、この親水性部分は、これらの位置のいずれかで、Lys、Cys、Orn、ホモシステインまたはアセチル−フェニルアラニン残基に共有結合している。親水性部分の例として、分子量約1,000ダルトン〜約40,000ダルトンまたは約20,000ダルトン〜約40,000ダルトンなどのポリエチレングリコール(PEG)があげられる。
他の実施形態では、クラスIのグルカゴン関連ペプチドは、以下に示すアミノ酸配列を有する。
X1−X2−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Ser−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Met−Z(配列番号839)、
ここで、X1および/またはX2は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)による切断に対するグルカゴンペプチドの感受性を低減する(または耐性を高める)非天然のアミノ酸であり、
この場合のグルカゴンペプチドの16番目、20番目、21番目、24番目のうち1箇所、2箇所、3箇所、4箇所または5箇所以上が、α,α−二置換アミノ酸で置換され、
Zは、−COOH(天然のC末端カルボキシレート)、−Asn−COOH、Asn−Thr−COOH、Y−COOHからなる群から選択され、この場合のYは、1〜2個のアミノ酸である。
上記のクラス1のグルカゴン関連ペプチドまたは類縁体に対するさらに他のアミノ酸修飾の例として、任意に(任意にスペーサーを介して)アシル基またはアルキル基(このアシル基またはアルキル基は、天然のアミノ酸に対して非天然である)に共有結合している側鎖を有するアミノ酸の置換または付加との組み合わせで、7番目のThrから、アミノ酪酸(Abu)、Ileなどのヒドロキシ基を欠いたアミノ酸への置換、12番目のLysからArgへの置換、15番目のAspからGluへの置換、16番目のSerからThrまたはAibへの置換、20番目のGlnからSer、Thr、AlaまたはAibへの置換、21番目のAspからGluへの置換、24番目のGlnから、Ser、Thr、AlaまたはAibへの置換、27番目のMetからLeuまたはNleへの置換、28番目のAsnから電荷を持つアミノ酸への置換、28番目のAsnから、Lys、Arg、His、Asp、Glu、システイン酸、ホモシステイン酸からなる群から選択される電荷を持つアミノ酸への置換、28番目でのAsn、AspまたはGluへの置換、28番目でのAspへの置換、28番目でのGluへの置換、29番目のThrから電荷を持つアミノ酸への置換、29番目のThrから、Lys、Arg、His、Asp、Glu、システイン酸、ホモシステイン酸からなる群から選択される電荷を持つアミノ酸への置換、29番目でのAsp、GluまたはLysへの置換、29番目でのGluへの置換、29番目の後ろに電荷を持つ1〜3個のアミノ酸の挿入、30番目(すなわち、29番目の後ろ)でのGluまたはLysの挿入(任意に31番目にLysの挿入)、C末端に対する配列番号820の付加(任意に、29番目のアミノ酸はThrまたはGlyである)、親水性部分に共有結合しているアミノ酸の置換または付加またはこれらの組み合わせがあげられる。
グルカゴン受容体の活性を増強し、グルカゴン受容体の部分活性を保持し、溶解性を改善し、安定性を高め、あるいは分解を低減する、クラス1のグルカゴンアゴニストに関連して上述した修飾については、クラス1のグルカゴンペプチドに、個々に適用してもよいし、組み合わせで適用してもよい。よって、グルカゴン受容体に対する天然のグルカゴンの活性の少なくとも20%を保持し、pH6〜8または6〜9(pH7など)にて、少なくとも1mg/mLの濃度で可溶であり、任意に、25℃で24時間後にもとのペプチドの少なくとも95%を保持する(たとえば、もとのペプチドの5%またはそれ未満しか分解または切断されない)、クラス1のグルカゴン関連ペプチドを調製可能である。あるいは、グルカゴン受容体に対する活性が天然のグルカゴンの少なくとも約100%、約125%、約150%、約175%、約200%、約250%、約300%、約350%、約400%、約450%、約500%、約600%、約700%、約800%、約900%または約10倍であるかそれより高く、任意に、pH6〜8または6〜9(pH7など)にて、少なくとも1mg/mLの濃度で可溶であり、任意に、25℃で24時間後に、もとのペプチドの少なくとも95%を保持する(たとえば、もとのペプチドの5%またはそれ未満しか分解または切断されない)、高活性なクラス1のグルカゴンペプチドを調製可能である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のクラス1のグルカゴンペプチドは、グルカゴン受容体に対する活性の上述した相対レベルの少なくともいずれかを示すものであればよいが、グルカゴン受容体に対する活性が、天然のグルカゴンの場合と比較して、最大で1,000%、5,000%または10,000%である。
クラス1のグルカゴン関連ペプチドの実施形態の例
いくつかの実施形態によれば、28番目および/または29番目における天然のアミノ酸を、負の電荷を持つアミノ酸(アスパラギン酸またはグルタミン酸など)で置換し、任意に、負の電荷を持つアミノ酸(アスパラギン酸またはグルタミン酸など)を、ペプチドのカルボキシ末端に付加することによって、配列番号801の天然のグルカゴンペプチドを修飾する。別の実施形態では、29番目における天然のアミノ酸を、正の電荷を持つアミノ酸(リジン、アルギニンまたはヒスチジンなど)で置換し、任意に、1個または2個の正の電荷を持つアミノ酸(リジン、アルギニンまたはヒスチジンなど)を、ペプチドのカルボキシ末端に付加することによって、配列番号801の天然のグルカゴンペプチドを修飾する。いくつかの実施形態によれば、配列番号834のアミノ酸配列を有する、溶解性と安定性が改善されたグルカゴン類縁体が提供されるが、ただし、28番目または29番目の少なくとも1個のアミノ酸が、酸性アミノ酸で置換されるおよび/または追加の酸性アミノ酸が、配列番号834のカルボキシ末端に付加される。いくつかの実施形態では、酸性アミノ酸は、Asp、Glu、システイン酸、ホモシステイン酸からなる群から独立に選択される。
いくつかの実施形態によれば、27番目、28番目または29番目のアミノ酸のうちの少なくとも1つが、非天然のアミノ酸残基で置換されている配列番号833のアミノ酸配列を有する、溶解性と安定性が改善されたグルカゴンアゴニストが提供される(すなわち、類縁体の27番目、28番目または29番目に存在する少なくとも1つのアミノ酸が、配列番号801の対応する位置に存在するアミノ酸とは異なる酸のアミノ酸である)。いくつかの実施形態によれば、配列番号833の配列を有するグルカゴンアゴニストが提供されるが、ただし、28番目のアミノ酸がアスパラギンであり、29番目のアミノ酸がスレオニンである場合、ペプチドは、このグルカゴンペプチドのカルボキシ末端に付加された、Lys、Arg、His、AspまたはGluからなる群から独立に選択される1〜2個のアミノ酸をさらに含む。
親ペプチドの活性を少なくともいくらか維持しつつ、天然のグルカゴンペプチドの特定の位置を修飾可能であることが報告されている。したがって、本出願人らは、配列番号811のペプチドの2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目または29番目の位置にあるアミノ酸のうち1つまたは2つ以上を、天然のグルカゴンペプチドに存在するものとは異なるアミノ酸で置換して、それでもなお親のグルカゴンペプチドの増強された活性、生理的なpHの安定性、生物学的活性を保つことが可能であると予想している。たとえば、いくつかの実施形態によれば、天然のペプチドの27番目に存在するメチオニン残基をロイシンまたはノルロイシンに変更して、ペプチドの酸化による分解を防止する。
いくつかの実施形態では、配列番号833のグルカゴン類縁体であって、この類縁体の1番目、2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目または24番目から選択される1〜6個のアミノ酸が、配列番号801の対応するアミノ酸とは異なる、配列番号833のグルカゴン類縁体が提供される。もうひとつの実施形態によれば、配列番号833のグルカゴン類縁体であって、類縁体の1番目、2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目または24番目から選択される1〜3個のアミノ酸が、配列番号801の対応するアミノ酸とは異なる、配列番号833のグルカゴン類縁体が提供される。もうひとつの実施形態では、配列番号807、配列番号808または配列番号834のグルカゴン類縁体であって、類縁体の1番目、2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目または24番目から選択される1〜2個のアミノ酸が、配列番号801の対応するアミノ酸とは異なる、配列番号807、配列番号808または配列番号834のグルカゴン類縁体が提供され、別の実施形態では、これらの1〜2個の異なるアミノ酸が、天然の配列(配列番号801)に存在するアミノ酸と比較した場合に保存的なアミノ酸置換を表す。いくつかの実施形態では、2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目または29番目から選択される位置に、1つ、2つまたは3つのアミノ酸置換をさらに有する、配列番号811または配列番号813のグルカゴンペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、27番目または29番目での置換は、保存的なアミノ酸置換である。
いくつかの実施形態では、配列番号801の類縁体ペプチドを有するグルカゴンアゴニストが提供される。この類縁体は、セリン以外のアミノ酸を2番目に有すること、かつ、28番目または29番目に天然のアミノ酸に代えて酸性アミノ酸を有すること、または配列番号801のペプチドのカルボキシ末端に付加された酸性アミノ酸を有することが、配列番号801とは異なる。いくつかの実施形態では、酸性アミノ酸は、アスパラギン酸またはグルタミン酸である。いくつかの実施形態では、2番目の置換が親分子とは異なる、配列番号809、配列番号812、配列番号813または配列番号832のグルカゴン類縁体が提供される。特に、類縁体ペプチドの2番目は、D−セリン、アラニン、D−アラニン、グリシン、n−メチルセリン、アミノイソ酪酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
もうひとつの実施形態では、配列番号801の類縁体ペプチドを有するグルカゴンアゴニストが提供される。この類縁体は、ヒスチジン以外のアミノ酸を1番目に有すること、かつ、28番目または29番目に天然のアミノ酸に代えて酸性アミノ酸を有するまたは配列番号801のペプチドのカルボキシ末端に付加された酸性アミノ酸を有することが、配列番号801とは異なる。いくつかの実施形態では、酸性アミノ酸は、アスパラギン酸またはグルタミン酸である。いくつかの実施形態では、1番目の置換が親分子とは異なる、配列番号809、配列番号812、配列番号813または配列番号832のグルカゴン類縁体が提供される。特に、類縁体ペプチドの1番目は、DMIA、D−ヒスチジン、デスアミノヒスチジン、ヒドロキシルヒスチジン、アセチルヒスチジン、ホモヒスチジンからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
いくつかの実施形態によれば、修飾されたグルカゴンペプチドは、配列番号809、配列番号812、配列番号813、配列番号832からなる群から選択される配列を有する。別の実施形態では、配列番号809、配列番号812、配列番号813または配列番号832のC末端に付加される1〜2個のアミノ酸をさらに有する、配列番号809、配列番号812、配列番号813または配列番号832の配列を有するグルカゴンペプチドが提供される。この場合、追加のアミノ酸は、Lys、Arg、His、Asp、Glu、システイン酸またはホモシステイン酸からなる群から独立に選択される。いくつかの実施形態では、カルボキシ末端に付加される追加のアミノ酸は、Lys、Arg、His、AspまたはGluからなる群から選択されるか、別の実施形態では、追加のアミノ酸は、AspまたはGluである。
もうひとつの実施形態では、グルカゴンペプチドは、配列番号807またはそのグルカゴンアゴニスト類縁体の配列を有する。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号808、配列番号810、配列番号811、配列番号812、配列番号813からなる群から選択される配列を有する。もうひとつの実施形態では、ペプチドは、配列番号808、配列番号810、配列番号811からなる群から選択される配列を有する。いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドは、そのC末端に付加された、AspおよびGluからなる群から選択される追加のアミノ酸をさらに含む、配列番号808、配列番号810、配列番号811の配列を有する。いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドは、配列番号811または配列番号813の配列を有し、別の実施形態では、グルカゴンペプチドは、配列番号811の配列を有する。
いくつかの実施形態によれば、
NH2−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Xaa−Ser−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Xaa−Xaa−Xaa−R(配列番号834)、
NH2−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Ser−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Met−Asp−Thr−R(配列番号811)、
NH2−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Xaa−Tyr−Leu−Glu−Ser−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Met−Asp−Thr−R(配列番号813)
からなる群から選択される修飾されたグルカゴンペプチドを有するグルカゴンアゴニストが提供される。
ここで、15番目のXaaは、Asp、Glu、システイン酸、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸であり、28番目のXaaはAsnまたは酸性アミノ酸であり、29番目のXaaはThrまたは酸性アミノ酸であり、Rは、酸性アミノ酸、COOHまたはCONH2であり、ただし、28番目、29番目または30番目のうちの1箇所に、酸性の酸残基が存在する。いくつかの実施形態では、RはCOOHであり、別の実施形態では、RはCONH2である。
また、本開示は、グルカゴンペプチドの安定性と溶解性を高めるために、第2のペプチドをグルカゴンペプチドのC末端に融合させたグルカゴン融合ペプチドも包含する。特に、融合グルカゴンペプチドは、グルカゴンペプチドNH2−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Xaa−Ser−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Xaa−Xaa−Xaa−R(配列番号834)を有するグルカゴンアゴニスト類縁体を含むものであってもよく、ここで、Rは、酸性アミノ酸または結合およびグルカゴンペプチドのカルボキシ末端のアミノ酸に結合する配列番号820(GPSSGAPPPS)、配列番号821(KRNRNNIA)または配列番号822(KRNR)のアミノ酸配列である。いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドは、配列番号833、配列番号807または配列番号808からなる群から選択され、さらに、そのカルボキシ末端のアミノ酸に結合している配列番号820(GPSSGAPPPS)、配列番号821(KRNRNNIA)または配列番号822(KRNR)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、グルカゴン融合ペプチドは、配列番号802、配列番号803、配列番号804、配列番号805、配列番号806またはそのグルカゴンアゴニスト類縁体を含み、さらに、その29番目のアミノ酸に結合した配列番号820(GPSSGAPPPS)、配列番号821(KRNRNNIA)または配列番号822(KRNR)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態によれば、融合ペプチドは、16番目、17番目、21番目、24番目、29番目、C末端の延長部分の範囲内またはC末端のアミノ酸で、アミノ酸に結合しているPEG鎖をさらに有し、この場合のPEG鎖は、500〜40,000ダルトンの範囲から選択される。いくつかの実施形態では、配列番号820(GPSSGAPPPS)、配列番号821(KRNRNNIA)または配列番号822(KRNR)のアミノ酸配列は、ペプチド結合を介してグルカゴンペプチドの29番目のアミノ酸に結合する。いくつかの実施形態では、グルカゴン融合ペプチドのグルカゴンペプチド部分は、配列番号810、配列番号811、配列番号813からなる群から選択される配列を有する。いくつかの実施形態では、グルカゴン融合ペプチドのグルカゴンペプチド部分は、配列番号811または配列番号813の配列を有し、この場合のPEG鎖は、21番目、24番目、29番目、C末端の延長部分の範囲内またはC末端のアミノ酸に、それぞれ結合している。
もうひとつの実施形態では、融合ペプチドのグルカゴンペプチド配列は、配列番号811の配列を有し、さらに、その29番目のアミノ酸に結合した配列番号820(GPSSGAPPPS)、配列番号821(KRNRNNIA)または配列番号822(KRNR)のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、グルカゴン融合ペプチドは、配列番号824、配列番号825、配列番号826からなる群から選択される配列を有する。一般に、本発明の融合ペプチドは、標準的なカルボン酸基を有するC末端のアミノ酸を含む。しかしながら、C末端のアミノ酸がカルボン酸に代えてアミドを有する、上記配列の類縁体も、実施形態として包含される。いくつかの実施形態によれば、融合グルカゴンペプチドは、配列番号810、配列番号811、配列番号813からなる群から選択され、さらに、その29番目のアミノ酸に結合している配列番号823(GPSSGAPPPS-CONH2)のアミノ酸配列を有する、グルカゴンアゴニスト類縁体を含む。
本発明のグルカゴンアゴニストをさらに修飾して、グルカゴンペプチドの生物学的活性を保ちつつ、水溶液に対するペプチドの溶解性および水溶液中での安定性を改善することが可能である。いくつかの実施形態によれば、配列番号811のペプチドまたはそのグルカゴンアゴニスト類縁体の16番目、17番目、20番目、21番目、24番目、29番目から選択される1箇所または2箇所以上に親水性部分を導入すると、そのpHでの溶解性及び安定性が改善し、グルカゴン類縁体が安定化することが予想される。特に、いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドの21番目および24番目に存在するアミノ酸の側鎖に共有結合している1個または2個以上の親水基を含むように、配列番号810、配列番号811、配列番号813または配列番号832のグルカゴンペプチドを修飾する。
いくつかの実施形態によれば、16番目、17番目、20番目、21番目、24番目および/または29番目での1つまたは2つ以上のアミノ酸置換を含むように、配列番号811のグルカゴンペプチドを修飾する。この場合、天然のアミノ酸を、PEGなどをはじめとする親水性部分と架橋するのに適した側鎖を有するアミノ酸で置換する。この天然のペプチドについては、天然のアミノ酸で置換してもよいし、合成(非天然)のアミノ酸で置換してもよい。合成または非天然のアミノ酸は、in vivoでは天然に生じないが、本明細書に記載のペプチド構造に取り込むことは可能である。
いくつかの実施形態では、天然の配列の16番目、17番目、21番目、24番目、29番目、C末端の延長部分の範囲内またはC末端のアミノ酸のうちの少なくとも1箇所で、天然または合成のアミノ酸を含むように天然のグルカゴンペプチド配列が修飾された、配列番号810、配列番号811または配列番号813のグルカゴンアゴニストが提供され、この場合の置換したアミノ酸は、親水性部分をさらに有する。いくつかの実施形態では、置換は21番目または24番目でなされ、別の実施形態では、親水性部分がPEG鎖である。いくつかの実施形態では、配列番号811のグルカゴンペプチドを、少なくとも1個のシステイン残基で置換し、この場合のシステイン残基の側鎖を、マレイミド、ビニルスルホン、2−ピリジルチオ、ハロアルキル、ハロアシルなどをはじめとするチオール反応性試薬でさらに修飾する。これらのチオール反応性試薬は、カルボキシ基、ケト基、ヒドロキシ基、エーテル基ならびに、ポリエチレングリコール単位などの他の親水性部分を含むものであってもよい。別の実施形態では、天然のグルカゴンペプチドをリジンで置換し、ポリエチレングリコールなどの親水性部分のアルデヒドまたはカルボン酸の活性エステル(スクシンイミド、無水物など)などのアミン反応性試薬を用いて、置換するリジン残基の側鎖をさらに修飾する。いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドは、配列番号814、配列番号815、配列番号816、配列番号817、配列番号818、配列番号819からなる群から選択される。
いくつかの実施形態によれば、PEG化グルカゴンペプチドは、グルカゴンペプチドに共有結合している2つまたは3つ以上のポリエチレングリコール鎖を有し、この場合のグルカゴン鎖の合計の分子量は、約1,000〜約5,000ダルトンである。いくつかの実施形態では、PEG化グルカゴンアゴニストは、21番目および24番目でPEG鎖がアミノ酸残基に共有結合し、2つのPEG鎖の合算での分子量が約1,000〜約5,000ダルトンである、配列番号806のペプチドを含む。もうひとつの実施形態では、PEG化グルカゴンアゴニストは、21番目および24番目でPEG鎖がアミノ酸残基に共有結合し、2つのPEG鎖の合算での分子量が約5,000〜約20,000ダルトンである、配列番号806のペプチドを含む。
ポリエチレングリコール鎖は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。いくつかの実施形態によれば、ポリエチレングリコール鎖は、平均分子量が、約500〜約40,000ダルトンの範囲から選択される。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコール鎖の分子量は、約500〜約5,000ダルトンの範囲から選択される。もうひとつの実施形態では、ポリエチレングリコール鎖は、分子量が約20,000〜約40,000ダルトンである。
共有結合または非共有結合の分子内架橋またはαヘリックスを安定化するアミノ酸を、グルカゴンペプチドのC末端領域(12番目〜29番目のアミノ酸)に含むように、上述したグルカゴンペプチドのいずれかを、さらに修飾してもよい。いくつかの実施形態によれば、グルカゴンペプチドは、16番目、20番目、21番目または24番目(またはこれらの組み合わせ)を、α,α−二置換アミノ酸、たとえばAibで置換するアミノ酸置換に加えて、上述した修飾のうちの1つまたは2つ以上を有する。もうひとつの実施形態によれば、グルカゴンペプチドは、グルカゴンペプチドの16番目と20番目のアミノ酸の側鎖間での分子内架橋、たとえばラクタムに加えて、上述した修飾のうちの1つまたは2つ以上を有する。
いくつかの実施形態によれば、グルカゴンペプチドは、3番目のXaaが、構造I、構造II、または構造IIIの側鎖を有するアミノ酸である、配列番号877のアミノ酸配列を有する:
(式中、R1は、C0〜3アルキルまたはC0〜3ヘテロアルキルであり、R2は、NHR4またはC1〜3アルキルであり、R3は、C1〜3アルキルであり、R4は、HまたはC1〜3アルキルであり、Xは、NH、OまたはSであり、Yは、NHR4、SR3またはOR3である)。いくつかの実施形態では、XがNHであるか、あるいは、YがNHR4である。いくつかの実施形態では、R1は、C0〜2アルキルまたはC1ヘテロアルキルである。いくつかの実施形態では、R2は、NHR4またはC1アルキルである。いくつかの実施形態では、R4は、HまたはC1アルキルである。例示としての実施形態では、構造Iの側鎖を有するアミノ酸が提示され、式中、R1はCH2−Sであり、XはNHであり、R2は、CH3(アセトアミドメチル−システイン、C(Acm))である;R1はCH2であり、XはNHであり、R2は、CH3(アセチルジアミノブタン酸、Dab(Ac))である;R1は、C0アルキルであり、XはNHであり、R2はNHR4であり、R4は、H(カルバモイルジアミノプロピオン酸、Dap(urea))である;またはR1はCH2−CH2であり、XはNHであり、R2は、CH3(アセチルオルニチン、Orn(Ac))である。例示としての実施形態では、構造IIの側鎖を有するアミノ酸が提示され、式中、R1はCH2であり、YはNHR4であり、R4は、CH3(メチルグルタミン、Q(Me))である;例示としての実施形態では、構造IIIの側鎖を有するアミノ酸が提示され、式中、R1はCH2であり、R4はH(メチオニン−スルホキシド、M(O))である。具体的な実施形態では、3番目のアミノ酸を、Dab(Ac)で置換する。たとえば、グルカゴンアゴニストは、配列番号863、配列番号869、配列番号871、配列番号872、配列番号873、配列番号874のアミノ酸配列を有するものであってもよい。
特定の実施形態では、グルカゴンペプチドは、配列番号877のグルカゴンペプチドの類縁体である。具体的な態様では、類縁体は、28番目のAsnから電荷を持つアミノ酸への置換、28番目のAsnから、Lys、Arg、His、Asp、Glu、システイン酸、ホモシステイン酸からなる群から選択される電荷を持つアミノ酸への置換、28番目でのAsn、AspまたはGluへの置換、28番目でのAspへの置換、28番目でのGluへの置換、29番目のThrから電荷を持つアミノ酸への置換、29番目のThrから、Lys、Arg、His、Asp、Glu、システイン酸、ホモシステイン酸からなる群から選択される電荷を持つアミノ酸への置換、29番目でのAsp、GluまたはLysへの置換、29番目でのGluへの置換、29番目の後ろに電荷を持つ1〜3個のアミノ酸の挿入、29番目の後ろにGluまたはLysの挿入、29番目の後ろにGly−LysまたはLys−Lysの挿入、これらの組み合わせを含むがこれらに限定されるものではない、本明細書に記載のアミノ酸修飾を有する。
特定の実施形態では、配列番号877のグルカゴンペプチドの類縁体は、16番目、20番目、21番目、24番目のうちの1箇所、2箇所、3箇所またはすべてに、Aibなどのα,α−二置換アミノ酸を有する。
特定の実施形態では、配列番号877のグルカゴンペプチドの類縁体は、以下のうちの1つまたは2つ以上を有する。1番目のヒスチジンから、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)による切断に対するグルカゴンペプチドの感受性を低減する非天然のアミノ酸への置換、2番目のSerから、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)による切断に対するグルカゴンペプチドの感受性を低減する非天然のアミノ酸への置換、7番目のThrから、ヒドロキシ基を欠いたアミノ酸、たとえば、AbuまたはIleへの置換、10番目のTyrからPheまたはValへの置換、12番目のLysからArgへの置換、15番目のAspからGluへの置換、16番目のSerからThrまたはAibへの置換、20番目のGlnからAlaまたはAibへの置換、21番目のAspからGluへの置換、24番目のGlnからAlaまたはAibへの置換、27番目のMetからLeuまたはNleへの置換、27〜29番目のアミノ酸の欠失、28番目〜29番目のアミノ酸の欠失、29番目のアミノ酸の欠失、C末端に対する、配列番号820のアミノ酸配列の付加(この場合、29番目のアミノ酸はThrまたはGlyである)またはこれらの組み合わせ。
具体的な実施形態によれば、グルカゴンペプチドは、配列番号862〜867および869〜874のいずれかのアミノ酸配列を有する。
特定の実施形態では、配列番号877を有するグルカゴンペプチドの類縁体は、16番目、17番目、20番目、21番目、24番目、29番目またはC末端のアミノ酸のいずれかでアミノ酸に共有結合している、PEGなどの親水性部分を有する。
特定の実施形態では、配列番号877を有するグルカゴンペプチドの類縁体は、任意にスペーサーを介してアシル基またはアルキル基に共有結合している側鎖を有するアミノ酸を有し、このアシル基またはアルキル基は、天然のアミノ酸に対して非天然である。いくつかの実施形態におけるアシル基は、C4〜C30の脂肪族アシル基である。他の実施形態では、アルキル基は、C4〜C30アルキルである。具体的な態様では、アシル基またはアルキル基は、10番目のアミノ酸の側鎖に共有結合している。いくつかの実施形態では、7番目のアミノ酸は、IleまたはAbuである。
グルカゴンアゴニストは、配列番号801〜919のいずれかのアミノ酸配列を有し、さらに、グルカゴンアゴニスト活性を保持する修飾を、任意に最大1つ、2つ、3つ、4つまたは5つ有するペプチドであってもよい。特定の実施形態では、グルカゴンアゴニストは、配列番号859〜919のいずれかのアミノ酸を有する。
クラス2のグルカゴン関連ペプチド
特定の実施形態では、グルカゴン関連ペプチドは、クラス2のグルカゴン関連ペプチドであり、これは、本明細書および国際特許出願公開第WO2010/011439号および米国特許出願第61/187,578号(2009年6月16日にファイル)に記載されている(その内容全体を本明細書に援用する)。
クラス2のグルカゴン関連ペプチドに関する、以下のセクションに示す生物学的配列(配列番号1001〜1262)は、国際特許出願公開第WO2010/011439号における配列番号1〜262に対応する。クラス2のグルカゴン関連ペプチドに関する配列番号1263〜1275は、米国特許出願第61/187,578号の配列番号657〜669に対応する。
活性
天然のグルカゴンは、GIP受容体を活性化せず、GLP−1受容体に対する活性が通常は天然の−GLP−1の約1%である。本明細医書に記載の天然のグルカゴン配列に対する修飾によって、天然のグルカゴン(配列番号1001)の活性と同等またはそれよりも高いグルカゴン活性、天然のGIP(配列番号1004)の活性と同等またはそれよりも高いGIP活性および/または天然のGLP−1の活性と同等またはそれよりも高いGLP−1活性を示すことのできるクラス2のグルカゴン関連ペプチドが生成される。この点について、クラス2のグルカゴン関連ペプチドは、本明細書にてさらに説明するように、グルカゴン/GIPコアゴニスト、グルカゴン/GIP/GLP−1トリアゴニスト、GIP/GLP−1コアゴニストまたはGIPアゴニストグルカゴンペプチドのうちの1つであってもよい。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のクラス2のグルカゴン関連ペプチドは、GIP受容体の活性化の活性に対するEC50が、約100nMまたはそれ未満あるいは、約75nM、約50nM、約25nM、約10nM、約8nM、約6nM、約5nM、約4nM、約3nM、約2nMまたは約1nMまたはそれ未満である。いくつかの実施形態では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体の活性化に対するEC50が、約100nMまたはそれ未満あるいは、約75nM、約50nM、約25nM、約10nM、約8nM、約6nM、約5nM、約4nM、約3nM、約2nMまたは約1nMまたはそれ未満である。いくつかの実施形態では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドは、GLP−1受容体の活性化に対するEC50が、約100nMまたはそれ未満あるいは、約75nM、約50nM、約25nM、約10nM、約8nM、約6nM、約5nM、約4nM、約3nM、約2nMまたは約1nMまたはそれ未満である。受容体の活性化は、受容体を過剰発現するHEK293細胞において、cAMP誘導を測定するin vitroのアッセイによって測定することができる。たとえば、実施例2で記載したように、受容体をコードするDNAと、cAMP応答配列に結合させたルシフェラーゼ遺伝子とをコトランスフェクトしたHEK293細胞をアッセイすればよい。
いくつかの実施形態では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドは、天然のGIP(GIP活性)と比較して、GIP受容体に対する活性が、少なくとも約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約75%、約100%、約125%、約150%、約175%または約200%またはそれよりも高い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のグルカゴンペプチドは、天然のGIPと比較して、GIP受容体に対する活性が最大で1000%、10,000%、100,000%または1,000,000%である。いくつかの実施形態では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドは、天然のグルカゴン(グルカゴン活性)と比較して、グルカゴン受容体に対する活性が少なくとも約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約75%、約100%、約125%、約150%、約175%、約200%、約250%、約300%、約350%、約400%、約450%または約500%またはそれよりも高い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のグルカゴンペプチドは、天然のグルカゴンと比較して、グルカゴン受容体に対する活性が、最大で1000%、10,000%、100,000%または1,000,000%である。いくつかの実施形態では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドは、天然のGLP−1(GLP−1活性)と比較して、GLP−1受容体に対する活性が、少なくとも約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、75%、100%、125%、150%、175%または200%またはそれよりも高い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のグルカゴンペプチドは、天然のGLP−1と比較して、GLP−1受容体に対する活性が、最大で1000%、10,000%、100,000%または1,000,000%である。受容体の天然のリガンドと比較した場合の受容体に対するクラス2のグルカゴン関連ペプチドの活性については、天然のリガンドのEC50に対するクラス2のグルカゴン関連ペプチドのEC50の反比として計算する。
いくつかの実施形態では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体およびGIP受容体の両方に対して活性を示す(「グルカゴン/GIPコアゴニスト」)。これらのクラス2のグルカゴン関連ペプチドは、GIP受容体に対し、グルカゴン受容体に対する天然のグルカゴンの持つ選択性を失っている。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するクラス2のグルカゴン関連ペプチドのEC50は、そのグルカゴン受容体に対するEC50と比較して、約50倍未満、約40倍未満、約30倍未満または約20倍未満で異なる(高いまたは低い)。いくつかの実施形態では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドのGIP活性は、そのグルカゴン活性と比較して、約500倍未満、約450倍未満、約400倍未満、約350倍未満、約300倍未満、約250倍未満、約200倍未満、約150倍未満、約100倍未満、約75倍未満、約50倍未満、約25倍未満、約20倍未満、約15倍未満、約10倍未満または約5倍未満で異なる(高いまたは低い)。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するクラス2のグルカゴン関連ペプチドのEC50をグルカゴン受容体に対するクラス2のグルカゴン関連ペプチドのEC50で割った比は、約100未満、約75未満、約60未満、約50未満、約40未満、約30未満、約20未満、約15未満、約10未満または約5未満である。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するEC50をグルカゴン受容体に対するEC50で割った比は、約1または約1未満(約0.01、約0.013、約0.0167、約0.02、約0.025、約0.03、約0.05、約0.067、約0.1、約0.2など)である。いくつかの実施形態では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドのGIP活性をクラス2のグルカゴン関連ペプチドのグルカゴン活性と比較した比は、約500未満、約450未満、約400未満、約350未満、約300未満、約250未満、約200未満、約150未満、約100未満、約75未満、約60未満、約50未満、約40未満、約30未満、約20未満、約15未満、約10未満または約5未満である。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対する活性をグルカゴン受容体に対する活性で割った比は、約1または約1未満(約0.01、約0.013、約0.0167、約0.02、約0.025、約0.03、約0.05、約0.067、約0.1、約0.2など)である。いくつかの実施形態では、7番目のアミノ酸修飾、27番目または28番目のアミノ酸までのC末端でのアミノ酸(単数または複数)の欠失(アミノ酸27個または28個のペプチドを生じる)またはこれらの組み合わせなどによって、GLP−1活性が有意に低減または破壊される。
もうひとつの態様では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体、GIP受容体、GLP−1受容体に対して活性を示す(「グルカゴン/GIP/GLP−1トリアゴニスト」)。これらのクラス2のグルカゴン関連ペプチドは、GLP−1受容体とGIP受容体の両方に対し、グルカゴン受容体に対する天然のグルカゴンの選択性を失っている。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するクラス2のグルカゴン関連ペプチドのEC50は、グルカゴンおよびGLP−1受容体に対するそれぞれのEC50と比較して、約50倍未満、約40倍未満、約30倍未満または約20倍未満で異なる(高いまたは低い)。いくつかの実施形態では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドのGIP活性は、そのグルカゴン活性およびGLP−1活性と比較して、約500倍未満、約450倍未満、約400倍未満、約350倍未満、約300倍未満、約250倍未満、約200倍未満、約150倍未満、約100倍未満、約75倍未満、約50倍未満、約25倍未満、約20倍未満、約15倍未満、約10倍未満または約5倍未満で異なる(高いまたは低い)。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するトリアゴニストのEC50をGLP−1受容体に対するトリアゴニストのEC50で割った比は、約100未満、約75未満、約60未満、約50未満、約40未満、約30未満、約20未満、約15未満、約10未満または約5未満である。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するEC50をGLP−1受容体に対するEC50で割った比は、約1または約1未満(約0.01、約0.013、約0.0167、約0.02、約0.025、約0.03、約0.05、約0.067、約0.1、約0.2など)である。いくつかの実施形態では、トリアゴニストのGIP活性をトリアゴニストのGLP−1活性と比較した比は、約100未満、約75未満、約60未満、約50未満、約40未満、約30未満、約20未満、約15未満、約10未満または約5未満である。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対する活性をGLP−1受容体に対する活性で割った比は、約1または約1未満(約0.01、約0.013、約0.0167、約0.02、約0.025、約0.03、約0.05、約0.067、約0.1、約0.2など)である。関連の実施形態では、GIP受容体に対するトリアゴニストのEC50をグルカゴン受容体に対するトリアゴニストのEC50で割った比は、約100未満、約75未満、約60未満、約50未満、約40未満、約30未満、約20未満、約15未満、約10未満または約5未満である。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するEC50をグルカゴン受容体に対するEC50で割った比は、約1または約1未満(約0.01、約0.013、約0.0167、約0.02、約0.025、約0.03、約0.05、約0.067、約0.1、約0.2など)である。いくつかの実施形態では、トリアゴニストのGIP活性をトリアゴニストのグルカゴン活性と比較した比は、約500未満、約450未満、約400未満、約350未満、約300未満、約250未満、約200未満、約150未満、約100未満、約75未満、約60未満、約50未満、約40未満、約30未満、約20未満、約15未満、約10未満または約5未満である。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対する活性をグルカゴン受容体に対する活性で割った比は、約1または約1未満(約0.01、約0.013、約0.0167、約0.02、約0.025、約0.03、約0.05、約0.067、約0.1、約0.2など)である。いくつかの実施形態では、GLP−1受容体に対するトリアゴニストのEC50をグルカゴン受容体に対するトリアゴニストのEC50で割った比は、約100未満、約75未満、約60未満、約50未満、約40未満、約30未満、約20未満、約15未満、約10未満または約5未満である。いくつかの実施形態では、GLP−1受容体に対するEC50をグルカゴン受容体に対するEC50で割った比は、約1または約1未満(約0.01、約0.013、約0.0167、約0.02、約0.025、約0.03、約0.05、約0.067、約0.1、約0.2など)である。いくつかの実施形態では、トリアゴニストのGLP−1活性をトリアゴニストのグルカゴン活性と比較した比は、約100未満、約75未満、約60未満、約50未満、約40未満、約30未満、約20未満、約15未満、約10未満または約5未満である。いくつかの実施形態では、GLP−1受容体に対する活性をグルカゴン受容体に対する活性で割った比は、約1または約1未満(約0.01、約0.013、約0.0167、約0.02、約0.025、約0.03、約0.05、約0.067、約0.1、約0.2など)である。
さらに別の態様では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドは、GLP−1受容体およびGIP受容体に対する活性を示すが、グルカゴン活性は、3番目のアミノ酸修飾などによって、有意に低減または破壊されている(「GIP/GLP−1コアゴニスト」)。たとえば、この位置を、酸性、塩基性または疎水性のアミノ酸(グルタミン酸、オルニチン、ノルロイシン)で置換すると、グルカゴン活性が低減される。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するグルカゴンペプチドのEC50は、そのGLP−1受容体に対するEC50と比較して、約50倍未満、約40倍未満、約30倍未満または約20倍未満で異なる(高いまたは低い)。いくつかの実施形態では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドのGIP活性は、そのGLP−1活性と比較して、約25倍未満、約20倍未満、約15倍未満、約10倍未満または約5倍未満で異なる(高いまたは低い)。いくつかの実施形態では、これらのクラス2のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体に対する活性が、天然のグルカゴンの約10%またはそれ未満、たとえば約1%〜約10%あるいは、約0.1%〜約10%あるいは、約0.1%を超えるが、約10%未満である。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するクラス2のグルカゴン関連ペプチドのEC50をGLP−1受容体に対するクラス2のグルカゴン関連ペプチドのEC50で割った比は、約100未満、約75未満、約60未満、約50未満、約40未満、約30未満、約20未満、約15未満、約10未満または約5未満で、1以上である。いくつかの実施形態では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドのGIP活性をクラス2のグルカゴン関連ペプチドのGLP−1活性と比較した比は、約100未満、約75未満、約60未満、約50未満、約40未満、約30未満、約20未満、約15未満、約10未満または約5未満で、1以上である。
別の態様では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドは、GIP受容体に対する活性を示し、グルカゴン活性およびGLP−1活性は、3番目でのGlu、7番目でのIleによるアミノ酸修飾などによって、有意に低減または破壊される(「GIPアゴニストグルカゴンペプチド」)。いくつかの実施形態では、これらのクラス2のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体に対する活性が、天然のグルカゴンの約10%またはそれ未満、たとえば約1%〜約10%あるいは、約0.1%〜約10%あるいは、約0.1%を超える、約0.5%を超えるまたは約1%を超えるが、約1%未満、約5%未満または約10%未満である。いくつかの実施形態では、これらのクラス2のグルカゴン関連ペプチドは、GLP−1受容体に対する活性が、天然のGLP−1の約10%またはそれ未満、たとえば約1%〜約10%あるいは、約0.1%〜約10%あるいは、約0.1%を超える、約0.5%を超えるまたは約1%を超えるが、約1%未満、約5%未満または約10%未満である。
いくつかの実施形態では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドがPEG化されていない場合、GIP受容体の活性化に対するクラス2のグルカゴン関連ペプチドのEC50が、約4nM、約2nM、約1nMまたはそれ未満であるか、あるいは、GIP受容体に対する類縁体の活性が、天然のGIPの少なくとも約1%、約2%、約3%、約4%または約5%である。関連の実施形態では、PEG化されていないクラス2のグルカゴン関連ペプチドは、GLP−1受容体の活性化に対するEC50が、約4nM、約2nM、約1nMまたはそれ未満であるか、GLP−1受容体に対する活性が、天然のGLP−1の少なくとも約1%、約2%、約3%、約4%または約5%である。さらに他の関連の実施形態では、PEG化されていないクラス2のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体の活性化に対するEC50が、約4nM、約2nM、約1nMまたはそれ未満であるか、あるいは、グルカゴン受容体に対する活性が、天然のグルカゴンの少なくとも約5%、約10%、約15%または約20%である。いくつかの実施形態では、PEG化されていないクラス2のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体に対する活性が、天然のグルカゴンの約1%未満である。他の実施形態では、PEG化されていないクラス2のグルカゴン関連ペプチドは、GLP−1受容体に対する活性が、天然のGLP−1の約10%未満、約5%未満または約1%未満である。
クラス2のグルカゴン関連ペプチドがPEGなどの親水性部分に結合している実施形態では、1つまたは2つ以上の受容体に対する相対EC50が、さらに高くなる(約10倍高くなるなど)ことがある。たとえば、PEG化した類縁体は、GIP受容体の活性化に対するEC50が約10nMまたはそれ未満であるか、クラス2のグルカゴン関連ペプチドのGIP受容体に対する活性が、天然のGIPの少なくとも約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%または約0.5%である。関連の実施形態では、PEG化されたクラス2のグルカゴン関連ペプチドは、GLP−1受容体の活性化に対するEC50が約10nMまたはそれ未満であるか、GLP−1受容体に対する活性が、天然のGLP−1の少なくとも約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%または約0.5%である。さらに他の関連の実施形態では、PEG化されたクラス2のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体の活性化に対するEC50が約10nMまたはそれ未満であるか、グルカゴン受容体に対する活性が天然のグルカゴンの少なくとも約0.5%、約1%、約1.5%または約2%である。いくつかの実施形態では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体に対する活性が、天然のグルカゴンの約1%未満である。他の実施形態では、クラス2のグルカゴン関連ペプチドは、GLP−1受容体に対する活性が、天然のGLP−1の約10%、約5%または約1%である。
修飾
クラス2のグルカゴン関連ペプチドに関して本明細書に開示する修飾によって、GIP活性、グルカゴン活性および/またはGLP−1活性が高められたグルカゴンペプチドを生成するようグルカゴン(配列番号1001)を操作することができる。クラス2のグルカゴン関連ペプチドに関して本明細書に開示する他の修飾によって、得られるペプチドの半減期が延び、溶解性が高まり、あるいは、安定性が向上する。クラス2のグルカゴン関連ペプチドに関して本明細書に開示するさらに他の修飾は、活性に対しては何ら影響しないか、所望の活性(単数または複数)を破壊することなく生成可能なものである。同一の目的(GIP活性を高めるなど)を果たすクラス2のグルカゴン関連ペプチドに関する組み合わせを、個々に適用してもよいし、組み合わせで適用してもよい。特性を増強するクラス2のグルカゴン関連ペプチド単体またはこれに関する一組の組み合わせを、個々に適用してもよいし、組み合わせで適用してもよく、たとえばGIP活性および/またはGLP−1活性を高めることを、半減期の延長と組み合わせてもよい。関連の実施形態では、アミノ酸修飾のうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは7つ以上が、非保存的な置換、付加または欠失であってもよい。いくつかの実施形態では、アミノ酸修飾のうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは7つ以上が、保存的な置換であってもよい。
GIP活性に影響する修飾
1番目のアミノ酸修飾によって、GIP受容体に対する活性が増強される。たとえば、1番目のヒスチジンを、高分子芳香族アミノ酸、任意に、Tyr、Phe、Trp、アミノフェニルアラニン、ニトロフェニルアラニン、クロロフェニルアラニン、スルホフェニルアラニン、4−ピリジルアラニン、メチルチロシンまたは3−アミノチロシンで置換する。1番目のTyrと12番目〜29番目のアミノ酸に対応する領域内でのαヘリックスの安定化とを組み合わせると、GIP受容体およびGLP−1受容体ならびにグルカゴン受容体を活性化するクラス2のグルカゴン関連ペプチドが提供された。αヘリックス構造は、たとえば、共有結合または非共有結合の分子内架橋の形成あるいは、12番目〜29番目あたりで、αヘリックスを安定化するアミノ酸(α,α−二置換アミノ酸など)で置換するアミノ酸置換および/またはこれを挿入することによって安定化可能なものである。
27番目および/または28のアミノ酸修飾、任意に29番目のアミノ酸修飾によって、GIP受容体に対する活性が増強される。たとえば、27番目のMetを高分子脂肪族アミノ酸(任意にLeu)に置換し、28番目のAsnを低分子脂肪族アミノ酸(任意にAla)に置換し、29番目のThrを低分子脂肪族アミノ酸(任意にGly)に置換する。27番目〜29番目をLAGに置換すると、これらの位置でのGIP活性が、天然のMNT配列よりも高くなる。
12番目のアミノ酸修飾によって、GIP受容体に対する活性が増強される。たとえば、12番目を高分子非極性脂肪族アミノ酸(任意にIle)に置換する。
17番目および/または18番目のアミノ酸修飾によって、GIP受容体に対する活性が増強される。たとえば、17番目を極性残基(任意にGln)に置換し、18番目を低分子脂肪族アミノ酸(任意にAla)に置換する。17番目と18番目をQAに置換すると、これらの位置でのGIP活性が、天然のRR配列より高くなる。
12番目から29番目のアミノ酸側鎖間での分子内架橋の形成を可能にする修飾によって、GIP受容体に対する活性が増加する。たとえば、i番目とi+4番目またはj番目とj+3番目またはk番目とk+7番目の2つのアミノ酸の側鎖間の共有結合によって、分子内架橋を形成してもよい。例示としての実施形態では、この架橋は、12番目と16番目の間、16番目と20番目の間、20番目と24番目の間、24番目と28番目の間または17番目と20番目の間である。他の実施形態では、これらの位置で、正の電荷を持つアミノ酸と負の電荷を持つアミノ酸との間に、塩結合などの非共有結合の相互作用を形成してもよい。
GIP受容体の活性を高める上述した修飾を、個々に適用してもよいし、組み合わせで適用してもよい。GIP受容体の活性を高める修飾の組み合わせを用いると、通常は、このような修飾のどれを単独で用いる場合よりも、GIP活性が高くなる。
グルカゴン活性に影響する修飾
いくつかの実施形態では、天然のグルカゴン(配列番号1001)の16番目のアミノ酸修飾によって、グルカゴン活性が増強される。非限定的な例として、このような増強された活性は、16番目の天然のセリンを、グルタミン酸で置換あるいは、原子4個の長さの側鎖を有する別の負の電荷を持つアミノ酸で置換あるいは、グルタミン、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸のうちの任意の1つで置換あるいは、少なくとも1個のヘテロ原子(N、O、S、Pなど)を含有し、原子約4個(または3個〜5個)の長さの側鎖を有する電荷を持つアミノ酸で置換することによって、与えられるものである。いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドは、グルカゴン受容体に対するもとの選択性を、GLP−1受容体に対して保持する。
3番目の天然のグルタミンから、酸性、塩基性または疎水性のアミノ酸への置換などの3番目のアミノ酸修飾によって、グルカゴン受容体の活性を低減してもよい。たとえば、3番目をグルタミン酸、オルニチンまたはノルロイシンで置換すると、グルカゴン受容体の活性が実質的に低減または破壊される。
3番目のGlnを本明細書に記載するようなグルタミン類縁体で修正することによって、グルカゴン受容体に対する活性を維持または増強してもよい。たとえば、グルカゴンアゴニストは、配列番号1243〜1248、1250、1251、1253〜1256のうち、どのアミノ酸配列を含むものであってもよい。
グルカゴンペプチドまたはその類縁体のC末端領域(12番目〜29番目のアミノ酸)のαヘリックス構造を安定化する修飾によって、1番目と2番目のアミノ酸修飾によって低下したグルカゴン活性が回復される。たとえば、i番目とi+4番目またはj番目とj+3番目またはk番目とk+7番目の2つのアミノ酸の側鎖間の共有結合によって、分子内架橋を形成してもよい。他の実施形態では、これらの位置で、正の電荷を持つアミノ酸と負の電荷を持つアミノ酸との間に、塩結合などの非共有結合の相互作用を形成してもよい。さらに他の実施形態では、所望の活性が保たれる位置で、このC末端領域(アミノ酸12番目〜29番目)に、1個または2個以上のα,α−二置換アミノ酸を挿入または置換する。たとえば、16番目、20番目、21番目または24番目のうちの1箇所、2箇所、3箇所またはすべてのアミノ酸を、Aibなどのα,α−二置換アミノ酸に置換する。
GLP−1活性に影響する修飾
C末端のアミノ酸のカルボン酸を、アミドまたはエステルなどの電荷が中性の基で置換することによって、GLP−1受容体に対する活性が増強される。
また、本明細書にてさらに説明するように、たとえば2つのアミノ酸の側鎖間での分子内架橋の形成あるいは、αヘリックスを安定化するアミノ酸(α,α−二置換アミノ酸など)を有する12番目〜29番目あたりでの、アミノ酸の置換および/または挿入によって、グルカゴンのC末端領域(アミノ酸12番目〜29番目のあたり)におけるαヘリックス構造を安定化することで、GLP−1受容体に対する活性も増強される。例示としての実施形態では、12番目と16番目、13番目と17番目、16番目と20番目、17番目と21番目、20番目と24番目または24番目と28番目のアミノ酸の対の側鎖(i=12、16、20または24のアミノ酸の対)は、互いに結合しているため、グルカゴンのαヘリックスを安定させる。いくつかの実施形態では、架橋またはリンカーは、特に架橋がi番目とi+4番目の間にある場合、原子約8個(または約7個〜約9個)の長さである。いくつかの実施形態では、特に架橋がj番目とj+3番目の間にある場合、架橋またはリンカーは、原子約6個(または約5個〜約7個)の長さである。
いくつかの実施形態では、(a)16番目の天然のセリンを、グルタミン酸で置換あるいは、原子4個の長さの側鎖を有する別の負の電荷を持つアミノ酸で置換あるいは、グルタミン、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸のうちの任意の1つで置換あるいは、少なくとも1個のヘテロ原子(N、O、S、Pなど)を含有し、原子約4個(または3個〜5個)の長さの側鎖を有する電荷を持つアミノ酸で置換すること、(b)20番目の天然のグルタミンを、電荷を持つか水素結合でき、かつ、少なくとも原子約5個(または約4個〜約6個)の長さの側鎖を有する別の親水性アミノ酸、たとえば、リジン、シトルリン、アルギニンまたはオルニチンで置換することによって、分子内架橋が形成される。16番目と20番目のこのようなアミノ酸の側鎖は、塩結合を形成可能であるか、共有結合可能である。いくつかの実施形態では、2つのアミノ酸が互いに結合して、ラクタム環が形成される。
いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドのC末端領域におけるαヘリックス構造の安定化は、ラクタム架橋以外の分子内架橋の形成によって達成される。たとえば、好適な共有結合方法は、オレフィンメタセシス、ランチオニンを基にした環化、ジスルフィド結合または修飾された硫黄含有架橋の形成、α,ω−ジアミノアルカンでの繋ぎの使用、金属原子架橋の形成のうちの1つまたは2つ以上を含み、他のペプチド環化手段もαヘリックスの安定化に用いられる。
さらに他の実施形態では、所望の活性が保たれる位置で、このC末端領域(アミノ酸12番目〜29番目)に、1個または2個以上のα,α−二置換アミノ酸を挿入または置換する。たとえば、16番目、20番目、21番目または24番目のうちの1箇所、2箇所、3箇所またはすべてのアミノ酸を、Aibなどのα,α−二置換アミノ酸に置換する。
本明細書に記載するような20番目のアミノ酸修飾によって、GLP−1受容体に対する活性が高められる。
GPSSGAPPPS(配列番号1095)またはXGPSSGAPPPS(配列番号1096)をC末端に付加することによって、GLP−1受容体に対する活性が高められる。本明細書に記載するように、18番目、28番目または29番目のアミノ酸あるいは、18番目と29番目のアミノ酸を修飾することで、このような類縁体でのGLP−1活性を、さらに高めることが可能である。
10番目のアミノ酸を修飾して高分子芳香族アミノ酸残基(任意にTrp)にすることで、GLP−1活性が、さらに適度に高められる。
たとえば、本明細書に記載するような7番目のアミノ酸修飾によって、GLP−1受容体に対する活性が低下する。
18番目を天然のアルギニンからアラニンに置換することによって、GLP−1受容体に対する活性を、さらに増強することが可能である。
GLP−1受容体の活性を高める、クラス2のグルカゴン関連ペプチドに関して上述したいずれかの修飾を、個々に適用してもよいし、組み合わせで適用してもよい。GLP−1受容体の活性を高める修飾の組み合わせを用いると、通常は、このような修飾のどれを単独で用いる場合よりも、GLP−1活性が高くなる。たとえば、本発明は、16番目、20番目、C末端のカルボン酸基に修飾を有し、任意に、16番目と20番目のアミノ酸の間に共有結合を有するグルカゴンペプチド;16番目とC末端のカルボン酸基に修飾を有するグルカゴンペプチド;16番目と20番目に修飾を有し、任意に、16番目と20番目のアミノ酸の間に共有結合を有するグルカゴンペプチド;20番目とC末端のカルボン酸基に修飾を有するグルカゴンペプチドを提供するものである。
DPP−IV耐性を改善する修飾
1番目および/または2番目の修飾によって、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)による切断に対するペプチドの耐性を高めることが可能である。たとえば、1番目および/または2番目を、本明細書に記載するようなDPP−IV耐性アミノ酸に置換してもよい。いくつかの実施形態では、2番目のアミノ酸をN−メチルアラニンに置換する。
2番目(2番目のAibなど)の修飾ならびに、場合によっては1番目(1番目のDMIAなど)の修飾によって、グルカゴン活性が、ときに大幅に低下することが観察された。驚くべきことに、本明細書に記載するように、グルカゴン(アミノ酸12番目〜29番目のあたり)のC末端領域のαヘリックス構造を、たとえば2つのアミノ酸の側鎖間での共有結合の形成によって安定化することで、このグルカゴン活性の低下を回復可能である。いくつかの実施形態では、この共有結合は、「i」番目と「i+4」番目のアミノ酸の間または「j」番目と「j+3」番目のアミノ酸の間、たとえば、12番目と16番目、16番目と20番目、20番目と24番目、24番目と28番目または17番目と20番目のアミノ酸の間である。例示としての実施形態では、この共有結合は、16番目のグルタミン酸と20番目のリジンとの間のラクタム架橋である。いくつかの実施形態では、この共有結合は、本明細書に記載するようなラクタム架橋以外の分子内架橋である。
分解を低減する修飾
一例としてのさらに別の実施形態では、特に酸性バッファーまたはアルカリ性バッファーでの経時的なペプチドの分解を低減するように、配列番号1001の15番目および/または16番目のアミノ酸を修飾することによって、クラス2のグルカゴン関連ペプチドのいずれかをさらに修飾して安定性を改善してもよい。このような修飾によって、15番目のアスパラギン酸と16番目のセリンとの間のペプチド結合の切断が低減される。例示としての実施形態では、15番目のアミノ酸修飾が欠失であるか、Aspからグルタミン酸、ホモグルタミン酸、システイン酸またはホモシステイン酸への置換である。他の例示としての実施形態では、16番目のアミノ酸修飾が欠失であるか、SerからThrまたはAibへの置換である。他の例示としての実施形態では、16番目のSerをグルタミン酸に置換するか、原子4個の長さの側鎖を有する別の負の電荷を持つアミノ酸あるいは、グルタミン、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸のうちの任意の1つに置換する。
いくつかの実施形態では、天然のペプチドの27番目に存在するメチオニン残基を、たとえば欠失または置換によって修飾する。このような修飾によって、ペプチドの酸化による分解が防止されることがある。いくつかの実施形態では、27番目のMetを、ロイシン、イソロイシンまたはノルロイシンに置換する。いくつかの具体的な実施形態では、27番目のMetをロイシンまたはノルロイシンに置換する。
いくつかの実施形態では、20番目および/または24番目のグルタミンを、たとえば欠失または置換によって修飾する。このような修飾によって、Glnの脱アミド化によって生じる分解を低減することができる。いくつかの実施形態では、20番目および/または24番目のグルタミンを、Ser、Thr、AlaまたはAibに置換する。いくつかの実施形態では、20番目および/または24番目のグルタミンを、Lys、Arg、Ornまたはシトルリンに置換する。
いくつかの実施形態では、21番目のAspを、たとえば欠失または置換によって修飾する。このような修飾によって、Aspが脱水し、環状スクシンイミド中間体を形成した後、イソアスパラギン酸へ異性体化することで生じる分解を低減することができる。いくつかの実施形態では、21番目を、Glu、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸に置換する。いくつかの具体的な実施形態では、21番目をGluで置換する。
αヘリックス構造の安定化
クラス2のグルカゴン関連ペプチドのC末端領域(アミノ酸12番目〜29番目のあたり)でのαヘリックス構造の安定化によって、GLP−1活性および/またはGIP活性が増強され、1番目および/または2番目のアミノ酸修飾によって低下していたグルカゴン活性が回復する。αヘリックス構造は、たとえば、共有結合または非共有結合の分子内架橋の形成あるいは、12番目〜29番目あたりで、αヘリックスを安定化するアミノ酸(α,α−二置換アミノ酸など)で置換するアミノ酸置換および/またはこれを挿入することによって安定化可能なものである。GIPアゴニストのαヘリックス構造の安定化については、本明細書に記載するようにして達成すればよい。
アシル化およびアルキル化
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示のグルカゴンペプチドを、アシル基またはアルキル基、たとえば、本明細書に記載するような天然アミノ酸に対して非天然のアシル基またはアルキル基を含むように修飾する。アシル化またはアルキル化によって、グルカゴンペプチドの血中半減期を延ばすことが可能である。好都合なことに、アシル化またはアルキル化は、作用開始を遅らせるおよび/またはグルカゴン受容体および/またはGLP−1受容体での作用時間を延ばすおよび/またはDPP−IVなどのプロテアーゼに対する耐性を改善するおよび/または溶解性を改善する。グルカゴンペプチドのグルカゴン受容体および/またはGLP−1受容体および/またはGIP受容体に対する活性を、アシル化後も維持してもよい。いくつかの実施形態では、アシル化されたグルカゴンペプチドの活性は、グルカゴンペプチドのアシル化されていないものの活性に匹敵する。本明細書に記載するように、クラス2のグルカゴン関連ペプチドを、親水性部分が結合した同一のアミノ酸の位置でアシル化またはアルキル化してもよいし、異なるアミノ酸の位置でアシル化またはアルキル化してもよい。
いくつかの実施形態では、本発明は、グルカゴンペプチドの10番目のアミノ酸に共有結合しているアシル基またはアルキル基を有するように修飾されたグルカゴンペプチドを提供するものである。グルカゴンペプチドは、グルカゴンペプチドの10番目のアミノ酸とアシル基またはアルキル基との間に、スペーサーをさらに有するものであってもよい。いくつかの実施形態では、アシル基は、脂肪酸または胆汁酸あるいは、これらの塩、たとえば、C4〜C30脂肪酸、C8〜C24脂肪酸、コール酸、C4〜C30アルキル、C8〜C24アルキルあるいは、胆汁酸のステロイド部分を有するアルキルである。スペーサーは、アシル基またはアルキル基を結合するための好適な反応性基を有する部分であれば、どの部分であってもよい。例示としての実施形態では、スペーサーは、アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、親水性の二官能性または疎水性の二官能性スペーサーであってもよい。いくつかの実施形態では、スペーサーは、Trp、Glu、Asp、Cys、NH2(CH2CH2O)n(CH2)mCOOHを有するスペーサーからなる群から選択され、式中、mは1〜6の任意の整数であり、nは2〜12の任意の整数である。このようなアシル化グルカゴンペプチドされたまたはアルキル化されたグルカゴンペプチドは、親水性部分、任意にポリエチレングリコールをさらに含むものであってもよい。上記のグルカゴンペプチドはいずれも、2個のアシル基または2個のアルキル基またはこれらの組み合わせを有するものであってもよい。
結合体と融合体
GIPアゴニストを、任意に共有結合を介して、また、任意にリンカーを介して、本明細書に記載するような結合体部分に結合することが可能である。
他の実施形態では、第2のペプチドはXGPSSGAPPPS(配列番号1096)であり、ここで、Xは、20種類の一般的なアミノ酸、たとえば、グルタミン酸、アスパラギン酸またはグリシンから選択される。いくつかの実施形態では、Xは、そのアミノ酸の側鎖に共有結合している親水性部分をさらに有するCysなどのアミノ酸を表す。このようなC末端の延長部分は、溶解性を改善し、GIP活性またはGLP−1活性をも改善できることがある。グルカゴンペプチドがカルボキシ末端の延長部分をさらに有するいくつかの実施形態では、延長部分のカルボキシ末端のアミノ酸が、カルボン酸ではなくアミド基またはエステル基で終端する。
いくつかの実施形態では、たとえば、C末端の延長部分を有するグルカゴンペプチドにおいて、天然のグルカゴンペプチドの29番目のスレオニンをグリシンに置換する。たとえば、29番目をスレオニンからグリシンへと置換し、GPSSGAPPPS(配列番号1095)のC末端の延長部分を有するグルカゴンペプチドは、同一のC末端の延長部分を有するように修飾した天然のグルカゴンよりもGLP−1受容体に対する活性が4倍高い。このT29G置換を本明細書に開示の他の修飾と併用して、GLP−1受容体に対するグルカゴンペプチドの親和性を高めることが可能である。たとえば、T29G置換を、S16EおよびN20Kのアミノ酸置換と組み合わせ、任意に16番目と20番目との間のラクタム架橋も組み合わせ、さらに任意に、本明細書に記載するようなPEG鎖の付加も組み合わせることが可能である。
いくつかの実施形態では、C末端にアミノ酸を付加し、この追加のアミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシンからなる群から選択される。
溶解性を高める修飾
もうひとつの実施形態では、好ましくは配列番号1001の27番目よりC末端側の位置でのアミノ酸置換および/または電荷を持つアミノ酸をペプチドのC末端領域に導入する付加によって、グルカゴンペプチドの溶解性を改善することが可能である。任意に、電荷を持つ、1個、2個または3個のアミノ酸を、C末端領域内、好ましくは27番目よりC末端側に導入してもよい。いくつかの実施形態では、28番目および/または29番目の天然のアミノ酸(単数または複数)を、1個または2つ個電荷を持つアミノ酸に置換するおよび/または別の実施形態では、電荷を持つ1〜3個のアミノ酸をペプチドのC末端に付加する。例示としての実施形態では、電荷を持つアミノ酸のうちの1個、2個またはすべてが、負の電荷を持つ。いくつかの実施形態では、負の電荷を持つ(酸性アミノ酸)は、アスパラギン酸またはグルタミン酸である。
保存的な置換などの追加の修飾をグルカゴンペプチドにほどこしてもよく、このような修飾をしても、依然としてGIP活性(かつ任意にGLP−1活性および/またはグルカゴン活性)を保持できる。
他の修飾
GIP活性を高めるまたは低下させ、グルカゴン受容体の活性を高めるまたは低下させ、GLP−1受容体の活性を高めるクラス2のペプチドに関して上述した修飾を、個々に適用してもよいし、組み合わせで適用してもよい。クラス2のグルカゴン関連ペプチドに関して上述したどの修飾も、クラス2のグルカゴン関連ペプチドに関して本明細書に記載するような溶解性および/または安定性および/または作用時間の増大などの他の望ましい特性を与える、他の修飾と組み合わせることが可能である。あるいは、クラス2のグルカゴン関連ペプチドに関して上述したどの修飾も、溶解性または安定性または活性に実質的に影響しない、クラス2のグルカゴン関連ペプチドに関して本明細書に記載の他の修飾と組み合わせることが可能である。修飾の例として以下のものがあげられるが、これらに限定されるものではない。
(A)1個、2個、3個または4個以上の電荷を持つアミノ酸(単数または複数)を、天然のグルカゴンのC末端領域、好ましくは27番目よりC末端側の位置に導入することなどによる、溶解性の改善。このような電荷を持つアミノ酸は、28番目または29番目などで、天然のアミノ酸を電荷を持つアミノ酸で置換することあるいは、27番目、28番目または29番目の後などに、電荷を持つアミノ酸を付加することによって導入可能なものである。例示としての実施形態では、電荷を持つアミノ酸のうち、1個、2個、3個またはすべてが、負の電荷を持つ。他の実施形態では、電荷を持つアミノ酸のうち、1個、2個、3個またはすべてが、正の電荷を持つ。このような修飾によって、25℃で24時間後に測定すると、約5.5〜約8の特定のpH、たとえばpH7で、天然のグルカゴンと比較して、溶解性が少なくとも2倍、5倍、10倍、15倍、25倍、30倍またはそれより高くなるなど、溶解性が高まる。
(B)ペプチドの16番目、17番目、20番目、21番目、24番目または29番目、C末端の延長部分の範囲内またはC末端のアミノ酸などで、本明細書に記載するようなポリエチレングリコール鎖などの親水性部分を付加することによる、溶解性および作用時間または血中半減期の増大。
(C)本明細書に記載するようなグルカゴンペプチドのアシル化またはアルキル化による、溶解性の増大および/または作用時間または血中半減期の延長および/または作用開始を遅らせること。
(D)本明細書に記載するような1番目または2番目におけるアミノ酸の修飾による、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)での切断に対する耐性を導入することによる、作用時間または血中半減期の延長。
(E)欠失あるいは、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、システイン酸またはホモシステイン酸への置換などの15番目のAspの修飾による、安定性の向上。このような修飾によって、25℃で24時間後に、もとのペプチドの少なくとも75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%、最大100%が保持されるなど、pH5.5〜8の範囲内でのあるpHにおいて、分解または切断を低減することができる。このような修飾は、15番目のアスパラギン酸と16番目のセリンとの間のペプチド結合の切断を低減するものである。
(F)ThrまたはAibへの置換など、16番目のSerの修飾による、安定性の向上。このような修飾によって、15番目のアスパラギン酸と16番目のセリンとの間のペプチド結合の切断も低減される。
(G)ロイシンまたはノルロイシンへの置換などによる、27番目のメチオニンの修飾による安定性の向上。このような修飾によって、酸化による分解を低減することができる。また、Ser、Thr、AlaまたはAibへの置換など、20番目または24番目のGlnの修飾によって、安定性を向上させることも可能である。このような修飾によって、Glnの脱アミド化によって生じる分解を低減することができる。Gluへの置換など、21番目のAspの修飾によって安定性を向上させることが可能である。このような修飾によって、Aspが脱水し、環状スクシンイミド中間体を形成した後、イソアスパラギン酸へ異性体化することで生じる分解を低減することができる。
(H)活性には実質的に影響しない非保存的なまたは保存的な置換、付加または欠失、たとえば、2番目、5番目、9番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、15番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目または29番目のうちの1箇所または2箇所以上における保存的な置換、これらの位置の1個または2個以上のアミノ酸からAlaへの置換、27番目、28番目または29番目のうちの1箇所または2箇所以上におけるアミノ酸の欠失あるいは、29番目のアミノ酸の欠失(任意に、C末端のカルボン酸基からC末端のアミドまたはエステルへの変更を組み合わせてもよい)、12番目のLysからArgへの置換、10番目のTyrからValまたはPheへの置換。
GPSSGAPPPS(配列番号1095)をC末端に付加することで、PEG化後も活性が保たれる。
天然のグルカゴンペプチドの位置には、親ペプチドの活性を少なくともいくらかは保ったままで修飾可能なものがある。したがって、本出願人らは、2番目、5番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目または29番目にある1個または2個以上のアミノ酸を、天然のグルカゴンペプチドに存在するものとは異なるアミノ酸で置換し、それでもなおグルカゴン受容体に対する活性を保持できると予想している。
いくつかの実施形態では、18番目を、Ala、SerまたはThrからなる群から選択されるアミノ酸に置換する。いくつかの実施形態では、20番目のアミノ酸を、Ser、Thr、Lys、Arg、Orn、シトルリンまたはAibに置換する。いくつかの実施形態では、21番目を、Glu、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸に置換する。いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドは、16番目、17番目、18番目、20番目、21番目、23番目、24番目、27番目、28番目、29番目から選択される1〜10個のアミノ酸修飾を有する。例示としての実施形態では、この修飾は、17番目のグルタミン、18番目のアラニン、21番目のグルタミン酸、23番目のイソロイシン、24番目のアラニン、27番目のバリン、29番目のグリシンからなる群から選択される1個または2個以上のアミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、17番目〜26番目から選択される1〜2個のアミノ酸が、親ペプチドと異なる。他の実施形態では、17番目〜22番目から選択される1〜2個のアミノ酸が、親ペプチドと異なる。さらに他の実施形態では、修飾は、17番目のグルタミン、18番目のアラニン、21番目のグルタミン酸、23番目のイソロイシン、24番目のアラニンである。
いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドのカルボキシ末端に、1個または2個以上のアミノ酸を付加する。このアミノ酸は通常、20種類の一般的なアミノ酸から選択され、いくつかの実施形態では、このアミノ酸は、天然のアミノ酸のカルボン酸に代えてアミド基を有する。例示としての実施形態では、付加されるアミノ酸は、グルタミン酸およびアスパラギン酸およびグリシンからなる群から選択される。
活性を破壊しない他の修飾は、W10またはR20を含む。
いくつかの実施形態では、1個または2個のアミノ酸残基でC末端を短縮することによって、本明細書に開示のクラス2のグルカゴン関連ペプチドを修飾するが、グルカゴン受容体、GLP−1受容体および/またはGIP受容体に対する同様の活性は保持されたままである。これに関して、29番目および/または28番目のアミノ酸を欠失させることが可能である。
例示としての実施形態
本発明のいくつかの実施形態によれば、GIPアゴニスト活性を有するグルカゴン(配列番号1001)の類縁体は、(a)GIPアゴニスト活性を与える、1番目のアミノ酸修飾、(b)類縁体のC末端領域(アミノ酸12番目〜29番目)のαヘリックス構造を安定化する修飾、(c)任意に、1〜10個(1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個など)のさらに別のアミノ酸修飾を伴う、配列番号1001を有する。いくつかの実施形態では、類縁体は、本明細書に記載したGIP受容体に対する天然のGIPの活性あるいは、GIP受容体に対する他の任意の活性レベルの少なくとも約1%を示す。
特定の実施形態では、αヘリックス構造を安定化する修飾は、分子内架橋を提供または導入するものであり、たとえば、本明細書に記載したものなどの共有結合の分子内架橋を含む。いくつかの実施形態における共有結合の分子内架橋は、ラクタム架橋である。これらの実施形態の類縁体のラクタム架橋は、本明細書に記載するようなラクタム架橋であってもよい。たとえば、「αヘリックス構造の安定化」セクションのラクタム架橋についての教示内容を参照のこと。たとえば、ラクタム架橋は、i番目のアミノ酸とi+4番目のアミノ酸の側鎖間あるいは、j番目のアミノ酸とj+3番目のアミノ酸の側鎖間のものであってもよい(iは12、13、16、17、20または24であり、jは17である)。特定の実施形態では、ラクタム架橋は、16番目と20番目のアミノ酸の間であってもよく、この場合、16番目および20番目のうちの一方のアミノ酸はGluに置換され、16番目と20番目の他方のアミノ酸はLysに置換される。
別の実施形態では、αヘリックス構造を安定化する修飾は、類縁体の16番目、20番目、21番目、24番目における、1つ、2つ、3つまたは4つのα,α−二置換アミノ酸の導入である。いくつかの実施形態では、α,α−二置換アミノ酸はAibである。特定の態様では、α,α−二置換アミノ酸(Aibなど)は20番目にあり、16番目のアミノ酸を、本明細書に記載の式IVのアミノ酸などの正の電荷を持つアミノ酸に置換する。式IVのアミノ酸は、ホモリジン、Lys、Ornまたは2,4−ジアミノ酪酸(Dab)であってもよい。
本発明の具体的な態様では、1番目でのアミノ酸修飾は、Hisから、イミダゾール側鎖を欠いたアミノ酸(たとえば高分子芳香族アミノ酸(Tyrなど))への置換である。
特定の態様では、グルカゴンの類縁体は、27番目、28番目、29番目のうちの1箇所、2箇所またはすべてにおけるアミノ酸修飾である。たとえば、27番目のMetを高分子脂肪族アミノ酸(任意にLeu)に置換可能であり、28番目のAsnを低分子脂肪族アミノ酸(任意にAla)に置換可能であり、29番目のThrを低分子脂肪族アミノ酸(任意にGly)に置換可能であり、あるいは、上記の2つまたは3つを組み合わせてもよい。具体的な実施形態では、グルカゴンの類縁体は、27番目のLeu、28番目のAla、29番目のGlyまたはThrを有する。
本発明の特定の実施形態では、グルカゴンの類縁体は、29番目のアミノ酸よりC末端側で1〜21個のアミノ酸からなる延長部分を有する。延長部分は、配列番号1095または1096などのアミノ酸配列を有するものであってもよい。上記に加えてあるいは上記に代えて、グルカゴンの類縁体は、延長部分の1〜6個のアミノ酸が正の電荷を持つアミノ酸である、延長部分を有するものであってもよい。正の電荷を持つアミノ酸は、Lys、ホモリジン、Orn、Dabを含むがこれらに限定されるものではない、式IVのアミノ酸であってもよい。
いくつかの実施形態におけるグルカゴンの類縁体は、本明細書に記載するようにアシル化されたまたはアルキル化されている。たとえば、アシル基またはアルキル基は、本明細書にてさらに説明するように、類縁体の10番目または40番目でスペーサーを介してあるいは介さずに、グルカゴンの類縁体に結合していてもよい。上記に加えてあるいは上記に代えて、本明細書にてさらに説明するような親水性部分を含むように類縁体を修飾してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、類縁体は、以下の修飾のうちのいずれか1つまたはそれらの組み合わせを有する。
(a)2番目のSerにおける、D−Ser、Ala、D−Ala、Gly、N−メチルセリン、Aib、Valまたはα−アミノ−N−酪酸との置換、
(b)10番目のTyrにおける、Trp、Lys、Orn、Glu、PheまたはValとの置換、
(c)10番目のLysへのアシル基の結合、
(d)12番目のLysにおける、ArgまたはIleとの置換、
(e)16番目のSerにおける、Glu、Gln、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸、Thr、GlyまたはAibとの置換、
(f)17番目のArgにおける、Glnとの置換、
(g)18番目のArgにおける、Ala、Ser、ThrまたはGlyとの置換、
(h)20番目のGlnにおける、Ser、Thr、Ala、Lys、シトルリン、Arg、OrnまたはAibとの置換、
(i)21番目のAspにおける、Glu、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸との置換、
(j)23番目のValにおける、Ileとの置換、
(k)24番目のGlnにおける、Asn、Ser、Thr、AlaまたはAibとの置換、
(l)2番目、5番目、9番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、15番目、16番目、8 19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目、29番目のいずれかにおける保存的な置換。
例示としての実施形態では、GIPアゴニスト活性を有するグルカゴン(配列番号1001)の類縁体は、以下の修飾を有する。
(a)GIPアゴニスト活性を与える、1番目のアミノ酸修飾、
(b)i番目とi+4番目のアミノ酸の側鎖間またはj番目とj+3番目のアミノ酸の側鎖間でのラクタム架橋(iは12、13、16、17、20または24であり、jは17である)、
(c)27番目、28番目および29番目のうちの1箇所、2箇所またはすべてにおけるアミノ酸修飾、たとえば、27番目および/または28番目におけるアミノ酸修飾、
(d)1〜9個または1〜6個のさらなるアミノ酸修飾、たとえば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個または9個のさらなるアミノ酸修飾、
かつ、GIP受容体の活性化に対する類縁体のEC50は、約10nMまたはそれ未満である。
これらの実施形態の類縁体のラクタム架橋は、本明細書に記載するようなラクタム架橋であってもよい。たとえば、「αヘリックス構造の安定化」セクションのラクタム架橋についての教示内容を参照のこと。たとえば、ラクタム架橋は、16番目と20番目のアミノ酸の間であってもよく、この場合、16番目および20番目のうちの一方のアミノ酸はGluに置換され、16番目と20番目の他方のアミノ酸はLysに置換される。
これらの実施形態によれば、類縁体は、たとえば、配列番号1005〜1094のいずれかのアミノ酸配列を有するものであってもよい。
他の例示としての実施形態では、GIPアゴニスト活性を有するグルカゴン(配列番号1001)の類縁体は、以下の修飾を有する。
(a)GIPアゴニスト活性を与える、1番目のアミノ酸修飾、
(b)類縁体の16番目、20番目、21番目、24番目における1個、2個、3個またはすべてのアミノ酸が、α,α−二置換アミノ酸で置換されていること、
(c)27番目、28番目および29番目のうちの1箇所、2箇所またはすべてにおけるアミノ酸修飾、たとえば、27番目および/または28番目におけるアミノ酸修飾、
(d)1〜9個または1〜6個のさらなるアミノ酸修飾、たとえば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個または9個のさらなるアミノ酸修飾、
かつ、GIP受容体の活性化に対する類縁体のEC50は、約10nMまたはそれ未満である。
これらの実施形態の類縁体のα,α−二置換アミノ酸は、アミノイソ酪酸(Aib)あるいは、メチル、エチル、プロピル、n−ブチルから選択される同一の基または異なる基で二置換されたアミノ酸またはシクロオクタンまたはシクロヘプタン(1−アミノシクロオクタン−1−カルボン酸など)で二置換されたアミノ酸を含むがこれらに限定されるものではない、どのようなα,α−二置換アミノ酸であってもよい。特定の実施形態では、α,α−二置換アミノ酸はAibである。特定の実施形態では、20番目のアミノ酸が、Aibなどのα,α−二置換アミノ酸で置換されている。
これらの実施形態によれば、類縁体は、たとえば、配列番号1099〜1141、1144〜1164、1166〜1169、1173〜1178のいずれのアミノ酸配列を含むものであってもよい。
さらに他の例示としての実施形態では、GIPアゴニスト活性を有するグルカゴン(配列番号1001)の類縁体は、以下の修飾(a)〜(e)を有し:
(a)GIPアゴニスト活性を与える、1番目のアミノ酸修飾、
(b)16番目のSerにおける、式IVのアミノ酸によるアミノ酸置換:
(式中、nは、1〜16または1〜10または1〜7または1〜6または2〜6であり、R1およびR2は各々独立に、H、C1〜C18アルキル、(C1〜C18アルキル)OH、(C1〜C18アルキル)NH2、(C1〜C18アルキル)SH、(C0〜C4アルキル)(C3〜C6)シクロアルキル、(C0〜C4アルキル)(C2〜C5複素環)、(C0〜C4アルキル)(C6〜C10アリール)R7、(C1〜C4アルキル)(C3〜C9ヘテロアリール)からなる群から選択され、式中、R7は、HまたはOHであり、式IVのアミノ酸の側鎖は、遊離アミノ基を有する)、
(c)20番目におけるGlnからα,α−二置換アミノ酸に置換するアミノ酸置換、
(d)27番目、28番目および29番目のうちの1箇所、2箇所またはすべてにおけるアミノ酸修飾、たとえば、27番目および/または28番目におけるアミノ酸修飾、および、
(e)1〜9個または1〜6個のさらなるアミノ酸修飾、たとえば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個または9個のさらなるアミノ酸修飾、
かつ、GIP受容体の活性化に対する類縁体のEC50は、約10nMまたはそれ未満である。
これらの実施形態の類縁体の式IVのアミノ酸は、式IVのアミノ酸など、どのようなアミノ酸であってもよく、式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16である。特定の実施形態では、nは、2、3、4または5であり、この場合、アミノ酸は、それぞれDab、Orn、Lysまたはホモリジンである。
これらの実施形態の類縁体のα,α−二置換アミノ酸は、アミノイソ酪酸(Aib)あるいは、メチル、エチル、プロピル、n−ブチルから選択される同一の基または異なる基で二置換されたアミノ酸またはシクロオクタンまたはシクロヘプタン(1−アミノシクロオクタン−1−カルボン酸など)で二置換されたアミノ酸を含むがこれらに限定されるものではない、どのようなα,α−二置換アミノ酸であってもよい。特定の実施形態では、α,α−二置換アミノ酸はAibである。
これらの実施形態によれば、類縁体は、たとえば、配列番号1099〜1165のいずれかのアミノ酸配列を含むものであってもよい。
さらに他の例示としての実施形態では、GIPアゴニスト活性を有するグルカゴン(配列番号1001)の類縁体は、
(a)GIPアゴニスト活性を与える、1番目のアミノ酸修飾と、
(b)29番目のアミノ酸よりC末端側で約1〜約21個のアミノ酸からなる延長部分(この場合、延長部分のアミノ酸の少なくとも1個がアシル化されたまたはアルキル化されている)と、を有し、
この場合、GIP受容体の活性化に対する類縁体のEC50は、約10nMまたはそれ未満である。
いくつかの実施形態では、アシル化されたアミノ酸またはアルキル化されたアミノ酸は、式I、式IIまたは式IIIのアミノ酸である。一層具体的な実施形態では、式Iのアミノ酸は、Dab、Orn、Lysまたはホモリジンである。また、いくつかの実施形態では、約1〜約21個のアミノ酸からなる延長部分は、GPSSGAPPPS(配列番号1095)またはXGPSSGAPPPS(配列番号1096)(Xは任意のアミノ酸である)またはGPSSGAPPPK(配列番号1170)またはXGPSSGAPPPK(配列番号1171)またはXGPSSGAPPPSK(配列番号1172)のアミノ酸配列を有し、ここで、Xは、Glyまたは低分子脂肪族アミノ酸または非極性アミノ酸またはわずかに極性のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、約1〜約21個のアミノ酸は、配列番号1095、1096、1170、1171または1172と比較して、1個または2個以上の保存的な置換を含む配列を有するものであってもよい。いくつかの実施形態では、アシル化されたアミノ酸またはアルキル化されたアミノ酸は、C末端が伸長した類縁体の37番目、38番目、39番目、40番目、41番目、42番目または43番目にある。特定の実施形態では、アシル化されたアミノ酸またはアルキル化されたアミノ酸は、C末端が伸長した類縁体の40番目にある。
いくつかの実施形態では、GIPアゴニスト活性を有する類縁体は、27番目、28番目および29番目のうちの1箇所、2箇所またはすべてにおけるアミノ酸修飾、たとえば、27番目および/または28番目のアミノ酸修飾を有する。
上述した例示としての実施形態のいずれにおいても、GIPアゴニスト活性を与える、1番目のアミノ酸修飾は、Hisから、イミダゾール側鎖を欠いているアミノ酸への置換であってもよい。1番目のアミノ酸修飾は、たとえば、Hisから高分子芳香族アミノ酸への置換であってもよい。いくつかの実施形態では、高分子芳香族アミノ酸は、Tyrなどをはじめとして、本明細書に記載したうちのいずれであってもよい。
特定の態様では、類縁体は、GIPアゴニスト活性を与える1番目にアミノ酸修飾を持たない。いくつかの態様では、1番目のアミノ酸は、高分子芳香族アミノ酸、たとえばTyrではない。いくつかの実施形態では、1番目のアミノ酸は、イミダゾール環、たとえば、His、Hisの類縁体を有するアミノ酸である。特定の実施形態では、類縁体は、国際特許出願公開第WO2010/011439号に開示されたいずれの化合物もはない。特定の態様では、類縁体は、配列番号1263〜1275のいずれかのアミノ酸配列を有する。
また、上記の例示としての実施形態に鑑みて、27番目、28番目および29番目のうちの1箇所、2箇所またはすべてにおけるアミノ酸修飾は、本明細書に記載のこれらの位置でのどのような修飾であってもよい。たとえば、27番目のMetを高分子脂肪族アミノ酸(任意にLeu)に置換可能であり、28番目のAsnを低分子脂肪族アミノ酸(任意にAla)に置換可能であるおよび/または29番目のThrを低分子脂肪族アミノ酸(任意にGly)に置換可能である。あるいは、類縁体は、このような27番目および/または28番目のアミノ酸修飾を有するものであってもよい。
上記の例示としての実施形態の類縁体は、1〜9個または1〜6個の追加のアミノ酸修飾、たとえば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個または9個のさらなるアミノ酸修飾、たとえば、GIP受容体、GLP−1受容体、グルカゴン受容体のいずれかに対する活性を高めるまたは低下させる、溶解性を改善する、作用時間または血中半減期を改善する、作用開始を遅らせるまたは安定性を高める、本明細書に記載のいずれかの修飾などを、さらに含むものであってもよい。類縁体は、たとえば、12番目のアミノ酸修飾、任意にIleへの置換および/または17番目および18番目のアミノ酸修飾、任意に17番目におけるQとの置換および18番目におけるAとの置換および/またはGPSSGAPPPS(配列番号1095)またはXGPSSGAPPPS(配列番号1096)あるいは、配列番号1095または1096と比較して1個または2個以上の保存的な置換を有する配列の、C末端への付加をさらに含むものであってもよい。類縁体は、以下の修飾のうちの1つまたは2つ以上を含むものであってもよい。
(i)2番目のSerにおける、D−Ser、Ala、D−Ala、Gly、N−メチルセリン、Aib、Valまたはα−アミノ−N−酪酸との置換、
(ii)10番目のTyrにおける、Trp、Lys、Orn、Glu、PheまたはValとの置換、
(iii)10番目のLysへのアシル基の結合、
(iv)12番目のLysにおける、Argとの置換、
(v)16番目のSerにおける、Glu、Gln、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸、Thr、GlyまたはAibとの置換、
(vi)17番目のArgにおける、Glnとの置換、
(vii)18番目のArgにおける、Ala、Ser、ThrまたはGlyとの置換、
(viii)20番目のGlnにおける、Ala、Ser、Thr、Lys、シトルリン、Arg、OrnまたはAibとの置換、
(ix)21番目のAspにおける、Glu、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸との置換、
(x)23番目のValにおける、Ileとの置換、
(xi)24番目のGlnにおける、Asn、Ala、Ser、ThrまたはAibとの置換、
(xii)2番目、5番目、9番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、15番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目、29番目のいずれかにおける保存的な置換。
いくつかの実施形態における類縁体は、修飾(i)から(xii)の組み合わせを有する。上記に代えてまたは上記に加えて、類縁体は、3番目のアミノ酸修飾(GlnからGluへのアミノ酸置換など)を有するものであってもよく、この場合、類縁体は、グルカゴン受容体に対する活性がグルカゴンの1%未満である。上記に代えてまたは上記に加えて、類縁体は、7番目にアミノ酸修飾(Thrから、ヒドロキシ基を欠いたアミノ酸、たとえば、AbuまたはIleへのアミノ酸置換など)を有するものであってもよく、この場合、類縁体は、GLP−1受容体に対する活性がGLP−1の約10%未満である。
例示としての実施形態に関して、類縁体は、親水性部分と共有結合していてもよい。いくつかの実施形態では、類縁体は、アミノ酸の16番目、17番目、20番目、21番目、24番目、29番目、40番目またはC末端のいずれかで親水性部分と共有結合している。特定の実施形態では、類縁体は、C末端の延長部分(配列番号1095のアミノ酸配列など)と、親水性部分が40番目で類縁体に共有結合するように親水性部分を有するアミノ酸の付加と、を有する。
いくつかの実施形態では、親水性部分は、類縁体のLys、Cys、Orn、ホモシステインまたはアセチルフェニルアラニンと共有結合している。Lys、Cys、Orn、ホモシステインまたはアセチルフェニルアラニンは、グルカゴン配列(配列番号1001)に対して天然のアミノ酸であってもよいし、配列番号1001の天然のアミノ酸を置換するアミノ酸であってもよい。親水性部分がCysと結合しているいくつかの実施形態では、親水性部分への結合は、以下の構造のいずれかを含み得る。
親水性部分を有する類縁体に関して、親水性部分は、本明細書に記載のどのようなものであってもよい。たとえば、「親水性部分の結合」セクションの教示内容を参照のこと。いくつかの実施形態では、親水性部分は、ポリエチレングリコール(PEG)である。特定の実施形態におけるPEGは、分子量が約1,000ダルトン〜約40,000ダルトン、たとえば、約20,000ダルトン〜約40,000ダルトンである。
例示としての実施形態に関して、類縁体は、側鎖がアシル基またはアルキル基(天然のアミノ酸に対して非天然のアシル基またはアルキル基など)に共有結合している、修飾されたアミノ酸を有するものであってもよい。アシル化された類縁体またはアルキル化された類縁体は、「アシル化およびアルキル化」のセクションで説明するアシル化されたペプチドまたはアルキル化されたペプチドに準じるものであってもよい。いくつかの実施形態では、アシル基は、たとえば、C10の脂肪族アシル基またはアルキル基、C12の脂肪族アシル基またはアルキル基、C14の脂肪族アシル基またはアルキル基、C16の脂肪族アシル基またはアルキル基、C18の脂肪族アシル基またはアルキル基、C20のアシル基またはアルキル基またはC22のアシル基またはアルキル基など、C4からC30の脂肪族アシル基である。アシル基またはアルキル基は、10番目または40番目のアミノ酸あるいは、C末端のアミノ酸を含むがこれらに限定されるものではない、類縁体のアミノ酸に共有結合していてもよい。特定の実施形態では、類縁体は、アシル基またはアルキル基が40番目で類縁体に共有結合するような形で、C末端の延長部分(配列番号1095のアミノ酸配列など)と、アシル基またはアルキル基を有するアミノ酸の付加とを有する。いくつかの実施形態では、アシル基またはアルキル基は、式I、式IIまたは式IIIのアミノ酸、たとえば、Lys残基の側鎖に共有結合している。アシル基またはアルキル基を、グルカゴン配列(配列番号1001)に対して天然のアミノ酸に共有結合してもよいし、配列番号1001の配列あるいは配列番号1001の配列に続いて配列番号1095の配列(N末端またはC末端で)に付加されるアミノ酸に結合してもよく、あるいは、天然のアミノ酸、たとえば、配列番号1001の10番目のTyrを置換するアミノ酸に結合してもよい。
類縁体がアシル基またはアルキル基を有する上述した例示としての実施形態では、類縁体は、本明細書に記載するように、スペーサーを介してアシル基またはアルキル基と結合していてもよい。スペーサーは、たとえば、原子3〜10個の長さであればよく、たとえば、アミノ酸(6−アミノヘキサン酸、本明細書に記載の任意のアミノ酸など)、ジペプチド(Ala−Ala、βAla−βAla、Leu−Leu、Pro−Pro、γ−Glu−γ−Gluなど)、トリペプチドまたは親水性または疎水性の二官能性スペーサーであってもよい。特定の態様では、スペーサーとアシル基またはアルキル基とを合わせた全長が、原子約14個〜約28個の長さである。いくつかの実施形態では、アミノ酸スペーサーは、γ−Gluではない。いくつかの実施形態では、ジペプチドスペーサーは、γ−Glu−γ−Gluではない。
さらに別の例示としての実施形態では、GIPアゴニスト活性を有するグルカゴンの類縁体は、配列番号1227、1228、1229または1230のいずれかによるアミノ酸配列を有し、この配列はさらに、以下の修飾を有する。
(a)任意に、GIPアゴニスト活性を与える、1番目のアミノ酸修飾、
(b)29番目のアミノ酸よりC末端側で約1〜約21個のアミノ酸からなる延長部分(この場合、延長部分のアミノ酸の少なくとも1個がアシル化されたまたはアルキル化されている)、
(d)最大6個のさらなるアミノ酸修飾、
この場合、GIP受容体の活性化に対する類縁体のEC50は、約10nMまたはそれ未満である。
いくつかの態様では、アシル化されたアミノ酸またはアルキル化されたアミノ酸は、式I、式IIまたは式IIIのアミノ酸である。一層具体的な実施形態では、式Iのアミノ酸は、Dab、Orn、Lysまたはホモリジンである。また、いくつかの実施形態では、約1個から約21個のアミノ酸は、GPSSGAPPPS(配列番号1095)またはXGPSSGAPPPS(配列番号1096)(Xは任意のアミノ酸である)またはGPSSGAPPPK(配列番号1170)またはXGPSSGAPPPK(配列番号1171)またはXGPSSGAPPPSK(配列番号1172)のアミノ酸配列を有し、ここで、Xは、Glyまたは低分子脂肪族アミノ酸または非極性アミノ酸またはわずかに極性のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、約1〜約21個のアミノ酸は、配列番号1095、1096、1170、1171または1172と比較して、1個または2個以上の保存的な置換を含む配列を有するものであってもよい。いくつかの実施形態では、アシル化されたアミノ酸またはアルキル化されたアミノ酸は、C末端が伸長した類縁体の37番目、38番目、39番目、40番目、41番目、42番目または43番目にある。特定の実施形態では、アシル化されたアミノ酸またはアルキル化されたアミノ酸は、C末端が伸長した類縁体の40番目にある。
上述した例示としての実施形態のいずれにおいても、GIPアゴニスト活性を与える1番目のアミノ酸は、イミダゾール側鎖を欠いているアミノ酸であってもよい。1番目のアミノ酸は、たとえば、高分子芳香族アミノ酸であってもよい。いくつかの実施形態では、高分子芳香族アミノ酸は、Tyrなどをはじめとして、本明細書に記載したうちのいずれであってもよい。
上記の例示としての実施形態の類縁体は、たとえば、GIP受容体、GLP−1受容体、グルカゴン受容体のいずれかに対する活性を高めるまたは低下させる、溶解性を改善する、作用時間または血中半減期を改善する、作用開始を遅らせるまたは安定性を高める、本明細書に記載のいずれかの修飾などの、1〜6個のさらなるアミノ酸修飾を含むものであってもよい。
特定の態様では、上記の例示としての実施形態で説明したグルカゴン類縁体は、27番目、28番目および29番目のうちの1箇所、2箇所またはすべてにおけるアミノ酸修飾を有する。これらの位置での修飾は、これらの位置に関して本明細書で説明するいずれの修飾であってもよい。たとえば、配列番号1227、1228、1229または1230に関して、27番目を高分子脂肪族アミノ酸(Leu、Ileまたはノルロイシンなど)またはMetに置換することが可能であり、28番目を別の低分子脂肪族アミノ酸(GlyまたはAlaなど)またはAsnに置換することが可能であるおよび/または29番目を別の低分子脂肪族アミノ酸(AlaまたはGlyなど)またはThrに置換することが可能である。あるいは、類縁体は、このような27番目および/または28番目のアミノ酸修飾を有するものであってもよい。
類縁体は、以下の追加の修飾のうち、1個または2個以上をさらに含むものであってもよい。
(i)2番目のアミノ酸は、D−Ser、Ala、D−Ala、Gly、N−メチルセリン、Aib、Valまたはα−アミノ−N−酪酸のうちのどれでもよく、
(ii)10番目のアミノ酸は、Tyr、Trp、Lys、Orn、Glu、PheまたはValであり、
(iii)10番目のLysに対するアシル基の結合、
(iv)12番目のアミノ酸は、Ile、LysまたはArgであり、
(v)16番目のアミノ酸は、Ser、Glu、Gln、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸、Thr、GlyまたはAibのうちのどの1つでもよく、
(vi)17番目のアミノ酸は、GlnまたはArgであり、
(vii)18番目のアミノ酸は、Ala、Arg、Ser、ThrまたはGlyのうちのどの1つでもよく、
(viii)20番目のアミノ酸は、Ala、Ser、Thr、Lys、シトルリン、Arg、OrnまたはAibまたは他のα,α−二置換アミノ酸のうちのどの1つでもよく、
(ix)21番目のアミノ酸は、Glu、Asp、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸のうちのどの1つでもよく、
(x)23番目のアミノ酸は、ValまたはIleであり、
(xi)24番目のアミノ酸は、Gln、Asn、Ala、Ser、ThrまたはAibのうちのどの1つでもよく、
(xii)2番目、5番目、9番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、15番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目、29番目のいずれかにおける1個または2個以上の保存的な置換。
いくつかの実施形態における類縁体は、修飾(i)から(xii)の組み合わせを有する。上記に代えてまたは上記に加えて、類縁体は、3番目のアミノ酸修飾(GlnからGluへのアミノ酸置換など)を有するものであってもよく、この場合、類縁体は、グルカゴン受容体に対する活性がグルカゴンの1%未満である。上記に代えてまたは上記に加えて、類縁体は、7番目にアミノ酸修飾(Thrから、ヒドロキシ基を欠いたアミノ酸、たとえば、AbuまたはIleへのアミノ酸置換など)を有するものであってもよく、この場合、類縁体は、GLP−1受容体に対する活性がGLP−1の約10%未満である。
例示としての実施形態に関して、類縁体は、親水性部分と共有結合していてもよい。いくつかの実施形態では、類縁体は、アミノ酸の16番目、17番目、20番目、21番目、24番目、29番目、40番目またはC末端のいずれかで親水性部分と共有結合している。特定の実施形態では、類縁体の24番目に、親水性部分が共有結合している。
いくつかの実施形態では、親水性部分は、類縁体のLys、Cys、Orn、ホモシステインまたはアセチルフェニルアラニンと共有結合している。Lys、Cys、Orn、ホモシステインまたはアセチル−フェニルアラニンは、配列番号1001、1227、1228、1229または1230に対して天然のアミノ酸であってもよいし、置換されたアミノ酸であってもよい。親水性部分がCysに結合したいくつかの実施形態では、この結合は、以下の構造のいずれかを有するものであってもよい。
親水性部分を有する類縁体に関して、親水性部分は、本明細書に記載のどのようなものであってもよい。たとえば、「親水性部分の結合」セクションの教示内容を参照のこと。いくつかの実施形態では、親水性部分は、ポリエチレングリコール(PEG)である。特定の実施形態におけるPEGは、分子量が約1,000ダルトン〜約40,000ダルトン、たとえば、約20,000ダルトン〜約40,000ダルトンである。
例示としての実施形態に関して、類縁体は、側鎖がアシル基またはアルキル基に共有結合しているC末端の延長部分内に、修飾されたアミノ酸を有するものであってもよい。アシル化された類縁体またはアルキル化された類縁体は、「アシル化およびアルキル化」のセクションで説明するアシル化されたペプチドまたはアルキル化されたペプチドに準じるものであってもよい。いくつかの実施形態では、アシル基は、たとえば、C10の脂肪族アシル基またはアルキル基、C12の脂肪族アシル基またはアルキル基、C14の脂肪族アシル基またはアルキル基、C16の脂肪族アシル基またはアルキル基、C18の脂肪族アシル基またはアルキル基、C20のアシル基またはアルキル基またはC22のアシル基またはアルキル基など、C4からC30の脂肪族アシル基である。アシル基またはアルキル基は、10番目または40番目のアミノ酸あるいは、C末端のアミノ酸を含むがこれらに限定されるものではない、類縁体のアミノ酸に共有結合していてもよい。いくつかの実施形態では、アシル基またはアルキル基は、式I、式IIまたは式IIIのアミノ酸、たとえば、Lys残基の側鎖に共有結合している。アシル基またはアルキル基は、配列番号1001、1227、1228、1229または1230に対して天然のアミノ酸に共有結合しているか、置換されたアミノ酸に結合していてもよい。アシル基またはアルキル基は、配列番号1095、1096、1171または1172に対して天然のアミノ酸に共有結合しているか、置換されたアミノ酸に結合していてもよい。
類縁体がアシル基またはアルキル基を有する上述した例示としての実施形態では、類縁体は、本明細書に記載するように、スペーサーを介してアシル基またはアルキル基と結合していてもよい。スペーサーは、たとえば、原子3〜10個の長さであればよく、たとえば、アミノ酸(6−アミノヘキサン酸、本明細書に記載の任意のアミノ酸など)、ジペプチド(Ala−Ala、βAla−βAla、Leu−Leu、Pro−Pro、γ−Glu−γ−Gluなど)、トリペプチドまたは親水性または疎水性の二官能性スペーサーであってもよい。特定の態様では、スペーサーとアシル基またはアルキル基とを合わせた全長が、原子約14個〜約28個の長さである。いくつかの実施形態では、アミノ酸スペーサーは、γ−Gluではない。いくつかの実施形態では、ジペプチドスペーサーは、γ−Glu−γ−Gluではない。
いくつかの極めて具体的な実施形態では、本発明の類縁体は、配列番号1099〜1141、1144〜1164、1166、1192〜1207、1209〜1221、1223からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号1167〜1169、1173〜1178、1225からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
さらに、本発明の類縁体の具体例は、表1〜表3に示すものをいずれも含むが、これらに限定されるものではない。
さらに別の例示としての実施形態では、GIPアゴニスト活性を有するグルカゴンの類縁体は、アシル基またはアルキル基(天然のアミノ酸に対して非天然のアシル基またはアルキル基など)を有し、ここで、アシル基またはアルキル基は、スペーサーに結合し、(i)スペーサーは、類縁体の10番目でアミノ酸の側鎖に結合している;または(ii)類縁体は、29番目のアミノ酸よりC末端側で1〜21個のアミノ酸からなる延長部分を有し、スペーサーは、配列番号1001の37番目〜43番目の1つに対応するアミノ酸の側鎖に結合し、この場合、GIP受容体の活性化に対する類縁体のEC50は、約10nMまたはそれ未満である。
このような実施形態では、類縁体は、(i)GIPアゴニスト活性を与える、1番目のアミノ酸修飾、(ii)27番目、28番目および29番目のうちの1箇所、2箇所またはすべてにおけるアミノ酸修飾、(iii)以下のうちの少なくとも1つ
(A)類縁体は、i番目とi+4番目のアミノ酸の側鎖間またはj番目とj+3番目のアミノ酸の側鎖間でのラクタム架橋、(iは12、13、16、17、20または24であり、jは17である)を有し、
(B)類縁体の16番目、20番目、21番目、24番目における1個、2個、3個またはすべてのアミノ酸が、α,α−二置換アミノ酸で置換され、または
(C)類縁体は、(i)16番目のSerにおける、式IVのアミノ酸とのアミノ酸置換を有し、
式中、nは1〜7であり、R1およびR2は各々独立に、H、C1〜C18アルキル、(C1〜C18アルキル)OH、(C1〜C18アルキル)NH2、(C1〜C18アルキル)SH、(C0〜C4アルキル)(C3〜C6)シクロアルキル、(C0〜C4アルキル)(C2〜C5複素環)、(C0〜C4アルキル)(C6〜C10アリール)R7、(C1〜C4アルキル)(C3〜C9ヘテロアリール)からなる群から選択され、式中、R7は、HまたはOHであり、式IVのアミノ酸の側鎖は、遊離アミノ基を有する;および(ii)20番目におけるGlnからα,α−二置換アミノ酸に置換するアミノ酸置換、
かつ、(iv)最大6個のさらなるアミノ酸修飾を有する、配列番号1001のアミノ酸配列を有するものであってもよい。
これらの実施形態の類縁体のα,α−二置換アミノ酸は、アミノイソ酪酸(Aib)あるいは、メチル、エチル、プロピル、n−ブチルから選択される同一の基または異なる基で二置換されたアミノ酸またはシクロオクタンまたはシクロヘプタン(1−アミノシクロオクタン−1−カルボン酸など)で二置換されたアミノ酸を含むがこれらに限定されるものではない、どのようなα,α−二置換アミノ酸であってもよい。特定の実施形態では、α,α−二置換アミノ酸はAibである。
これらの実施形態の類縁体の式IVのアミノ酸は、式IVのアミノ酸など、どのようなアミノ酸であってもよく、式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16である。特定の実施形態では、nは、2、3、4または5であり、この場合、アミノ酸は、それぞれDab、Orn、Lysまたはホモリジンである。
上述した例示としての実施形態のいずれにおいても、GIPアゴニスト活性を与える、1番目のアミノ酸修飾は、Hisから、イミダゾール側鎖を欠いているアミノ酸への置換であってもよい。1番目のアミノ酸修飾は、たとえば、Hisから高分子芳香族アミノ酸への置換であってもよい。いくつかの実施形態では、高分子芳香族アミノ酸は、Tyrなどをはじめとして、本明細書に記載したうちのいずれであってもよい。
また、上記の例示としての実施形態に鑑みて、27番目、28番目および29番目のうちの1箇所、2箇所またはすべてにおけるアミノ酸修飾は、本明細書に記載のこれらの位置でのどのような修飾であってもよい。たとえば、27番目のMetを高分子脂肪族アミノ酸(任意にLeu)に置換可能であり、28番目のAsnを低分子脂肪族アミノ酸(任意にAla)に置換可能であるおよび/または29番目のThrを低分子脂肪族アミノ酸(任意にGly)に置換可能である。あるいは、類縁体は、このような27番目および/または28番目のアミノ酸修飾を有するものであってもよい。
上記の例示としての実施形態の類縁体は、1〜9個または1〜6個の追加のアミノ酸修飾、たとえば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個または9個のさらなるアミノ酸修飾、たとえば、GIP受容体、GLP−1受容体、グルカゴン受容体のいずれかに対する活性を高めるまたは低下させる、溶解性を改善する、作用時間または血中半減期を改善する、作用開始を遅らせるまたは安定性を高める、本明細書に記載のいずれかの修飾などを、さらに含むものであってもよい。類縁体は、たとえば、12番目のアミノ酸修飾、任意にIleへの置換および/または17番目および18番目のアミノ酸修飾、任意に17番目におけるQとの置換および18番目におけるAとの置換および/またはGPSSGAPPPS(配列番号1095)またはXGPSSGAPPPS(配列番号1096)あるいは、配列番号1095または1096と比較して1個または2個以上の保存的な置換を有する配列の、C末端への付加をさらに含むものであってもよい。類縁体は、以下の修飾のうちの1つまたは2つ以上を含むものであってもよい。
(i)2番目のSerにおける、D−Ser、Ala、D−Ala、Gly、N−メチルセリン、Aib、Valまたはα−アミノ−N−酪酸との置換、
(ii)10番目のTyrにおける、Trp、Lys、Orn、Glu、PheまたはValとの置換、
(iii)10番目のLysへのアシル基の結合、
(iv)12番目のLysにおける、Argとの置換、
(v)16番目のSerにおける、Glu、Gln、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸、Thr、GlyまたはAibとの置換、
(vi)17番目のArgにおける、Glnとの置換、
(vii)18番目のArgにおける、Ala、Ser、ThrまたはGlyとの置換、
(viii)20番目のGlnにおける、Ala、Ser、Thr、Lys、シトルリン、Arg、OrnまたはAibとの置換、
(ix)21番目のAspにおける、Glu、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸との置換、
(x)23番目のValにおける、Ileとの置換、
(xi)24番目のGlnにおける、Asn、Ala、Ser、ThrまたはAibとの置換、
(xii)2番目、5番目、9番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、15番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目、29番目のいずれかにおける保存的な置換。
いくつかの実施形態における類縁体は、修飾(i)から(xii)の組み合わせを有する。上記に代えてまたは上記に加えて、類縁体は、3番目のアミノ酸修飾(GlnからGluへのアミノ酸置換など)を有するものであってもよく、この場合、類縁体は、グルカゴン受容体に対する活性がグルカゴンの1%未満である。上記に代えてまたは上記に加えて、類縁体は、7番目のアミノ酸修飾(Thrから、ヒドロキシ基を欠いたアミノ酸、たとえば、AbuまたはIleへのアミノ酸置換など)、27個または28個のアミノ酸からなるペプチドが得られる、27番目または28番目のアミノ酸よりC末端側でのアミノ酸(単数または複数)の欠失またはこれらの組み合わせを有するものであってもよく、この場合、類縁体は、GLP−1受容体に対する活性がGLP−1の約10%未満である。
例示としての実施形態に関して、類縁体は、親水性部分と共有結合していてもよい。いくつかの実施形態では、類縁体は、アミノ酸の16番目、17番目、20番目、21番目、24番目、29番目、40番目またはC末端のいずれかで親水性部分と共有結合している。特定の実施形態では、類縁体は、C末端の延長部分(配列番号1095のアミノ酸配列など)と、親水性部分が40番目で類縁体に共有結合するように親水性部分を有するアミノ酸の付加と、を有する。
いくつかの実施形態では、親水性部分は、類縁体のLys、Cys、Orn、ホモシステインまたはアセチルフェニルアラニンと共有結合している。Lys、Cys、Orn、ホモシステインまたはアセチルフェニルアラニンは、グルカゴン配列(配列番号1001)に対して天然のアミノ酸であってもよいし、配列番号1001の天然のアミノ酸を置換するアミノ酸であってもよい。親水性部分がCysと結合しているいくつかの実施形態では、親水性部分への結合は、以下の構造のいずれかを含み得る。
親水性部分を有する類縁体に関して、親水性部分は、本明細書に記載のどのようなものであってもよい。たとえば、「親水性部分の結合」セクションの教示内容を参照のこと。いくつかの実施形態では、親水性部分は、ポリエチレングリコール(PEG)である。特定の実施形態におけるPEGは、分子量が約1,000ダルトン〜約40,000ダルトン、たとえば、約20,000ダルトン〜約40,000ダルトンである。
類縁体が、スペーサーを介して類縁体と結合しているアシル基またはアルキル基を有する例示としての実施形態では、スペーサーは、本明細書に記載するような、どのようなスペーサーであってもよい。スペーサーは、たとえば、原子3〜10個の長さであればよく、たとえば、アミノ酸(6−アミノヘキサン酸、本明細書に記載の任意のアミノ酸など)、ジペプチド(Ala−Ala、βAla−βAla、Leu−Leu、Pro−Pro、γ−Glu−γ−Gluなど)、トリペプチドまたは親水性または疎水性の二官能性スペーサーであってもよい。特定の態様では、スペーサーとアシル基またはアルキル基とを合わせた全長が、原子約14個〜約28個の長さである。いくつかの実施形態では、アミノ酸スペーサーは、γ−Gluではない。いくつかの実施形態では、ジペプチドスペーサーは、γ−Glu−γ−Gluではない。
アシル基またはアルキル基は、天然のアミノ酸に対して非天然のアシル基またはアルキル基など、本明細書に記載するようなどのようなアシル基またはアルキル基であってもよい。いくつかの実施形態におけるアシル基またはアルキル基は、たとえば、C10の脂肪族アシル基またはアルキル基、C12の脂肪族アシル基またはアルキル基、C14の脂肪族アシル基またはアルキル基、C16の脂肪族アシル基またはアルキル基、C18の脂肪族アシル基またはアルキル基、C20のアシル基またはアルキル基あるいは、C22のアシル基またはアルキル基などのC4〜C30の脂肪族アシル基またはC4〜C30アルキル基である。具体的な実施形態では、アシル基は、C12〜C18の脂肪族アシル基(C14またはC16の脂肪族アシル基など)である。
いくつかの実施形態では、類縁体の29番目のアミノ酸よりC末端側で約1〜約21個のアミノ酸からなる延長部分は、GPSSGAPPPS(配列番号1095)またはXGPSSGAPPPS(配列番号1096)(Xは任意のアミノ酸である)またはGPSSGAPPPK(配列番号1170)またはXGPSSGAPPPK(配列番号1171)またはXGPSSGAPPPSK(配列番号1172)のアミノ酸配列を有し、ここで、Xは、Glyまたは低分子脂肪族アミノ酸または非極性アミノ酸またはわずかに極性のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、約1〜約21個のアミノ酸は、配列番号1095、1096、1170、1171または1172と比較して、1個または2個以上の保存的な置換を含む配列を有するものであってもよい。いくつかの実施形態では、アシル化されたアミノ酸またはアルキル化されたアミノ酸は、C末端が伸長した類縁体の37番目、38番目、39番目、40番目、41番目、42番目または43番目にある。特定の実施形態では、アシル化されたアミノ酸またはアルキル化されたアミノ酸は、C末端が伸長した類縁体の40番目にある。
GIPアゴニストは、任意にGIPアゴニスト活性を保持する最大で1個、2個、3個、4個または5個のさらなる修飾を有する、配列番号1005〜1094などのアミノ酸配列のいずれのアミノ酸配列を有するペプチドであってもよい。特定の実施形態では、GIPアゴニストは、配列番号1099〜1275のいずれかのアミノ酸を有する。
クラス3のグルカゴン関連ペプチド
特定の実施形態では、グルカゴン関連ペプチドは、本明細書ならびに、国際特許出願公開第WO2009/155258号、国際特許出願公開第第WO2008/101017号および米国仮特許出願第61/288,248号(2009年12月18日にファイル)(これらの内容全体を本明細書に援用する)に記載のクラス3のグルカゴン関連ペプチドである。
クラス3のグルカゴン関連ペプチドに関する、以下のセクションに示す生物学的配列(配列番号1〜656)のいくつかは、国際特許出願公開第WO2009/155258号における配列番号1〜656に対応する。
活性
クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体に対する活性が高まったペプチドであってもよく、さらに他の実施形態では、生物物理学的安定性および/または水溶性が高まっている。また、いくつかの実施形態では、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、GLP−1受容体に対して、グルカゴン受容体に対する天然のグルカゴンの選択性を失っており、よって、これら2つの受容体のコアゴニストであることを示している。クラス3のグルカゴン関連ペプチド内の選択されたアミノ酸修飾によって、グルカゴン受容体に比してGLP−1受容体に対するペプチドの相対活性を制御することが可能である。よって、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、GLP−1受容体に比してグルカゴン受容体に対する活性のほうが高いグルカゴン/GLP−1コアゴニスト、両方の受容体に対する活性がほぼ等しいグルカゴン/GLP−1コアゴニストまたはグルカゴン受容体に比してGLP−1受容体に対する活性のほうが高いグルカゴン/GLP−1コアゴニストであり得る。後者のカテゴリのコアゴニストは、天然のGLP−1と同一またはこれよりも高い活性でGLP−1受容体を活性化する機能を保持したまま、グルカゴン受容体に対して活性をほとんど示さないかまったく示さないように操作可能なものである。これらのコアゴニストのいずれも、生物物理学的安定性および/または水溶性を高める修飾を含むものであってもよい。
天然のGLP−1と比較して、GLP−1受容体に対して少なくとも約1%(少なくとも約1.5%、2%、5%、7%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、75%、100%、125%、150%、175%を含む)から約200%のいずれかまたはそれより高い活性を有し、天然のグルカゴンと比較して、グルカゴン受容体に対して少なくとも約1%(約1.5%、2%、5%、7%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、75%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%を含む)から約500%のいずれかまたはそれよりも高い活性を有するグルカゴンペプチドを得られるように、クラス3のグルカゴン関連ペプチドを修飾することが可能である。天然のグルカゴンのアミノ酸配列は配列番号1であり、GLP−1(7−36)アミドのアミノ酸配列は配列番号52であり、GLP−1(7−37)酸のアミノ酸配列は配列番号50である。例示としての実施形態では、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体に対する活性が天然のグルカゴンの少なくとも10%かつ、GLP−1受容体に対する活性が天然のGLP−1の少なくとも50%あるいは、グルカゴン受容体に対する活性が天然のグルカゴンの少なくとも40%かつ、GLP−1受容体に対する活性が天然のGLP−1の少なくとも40%あるいは、グルカゴン受容体に対する活性が天然のグルカゴンの少なくとも60%かつ、GLP−1受容体に対する活性が天然のGLP−1の少なくとも60%であってもよい。
クラス3のグルカゴン関連ペプチドの、GLP−1受容体に対するグルカゴン受容体の選択性は、グルカゴン/GLP−1活性の相対比(天然のグルカゴンの場合と比較したグルカゴン受容体に対するペプチドの活性を、天然のGLP−1の場合と比較したGLP−1受容体に対するペプチドの活性で割ったもの)で説明できる。たとえば、グルカゴン受容体に対する活性が天然のグルカゴンの60%であり、かつ、GLP−1受容体に対する活性が天然のGLP−1の60%であるクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン/GLP−1活性の比が1:1である。グルカゴン/GLP−1活性の比の例として、約1:1、約1.5:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1または約10:1あるいは、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2または約1:1.5があげられる。一例として、グルカゴン/GLP−1活性の比が10:1であるということは、GLP−1受容体の選択性に対してグルカゴン受容体の選択性が10倍であることを示す。同様に、GLP−1/グルカゴン活性の比が10:1であるということは、グルカゴン受容体の選択性に対してGLP−1受容体の選択性が10倍であることを示す。
いくつかの実施形態では、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体に対する活性が、約1%〜約10%あるいは、約0.1%〜約10%あるいは、約0.1%を上回るが約10%未満であるなど、天然のグルカゴンの約10%またはそれ未満である一方で、GLP−1受容体に対する活性はGLP−1の少なくとも20%である。たとえば、本明細書に記載の例示としてのクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、活性が天然のグルカゴンの約0.5%、約1%または約7%である一方で、GLP−1受容体に対する活性はGLP−1の少なくとも20%である。
クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体またはGLP−1受容体またはその両方に対する活性が高まったまたは低下したグルカゴンペプチドであってもよい。クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、GLP−1受容体に対し、グルカゴン受容体に対する選択性が変化したグルカゴンペプチドであってもよい。
よって、本明細書にて開示するように、溶解性および/または安定性が改善された高活性なクラス3のグルカゴン関連ペプチドが提供される。例示としての高活性なクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体に対する活性が天然のグルカゴンの少なくとも約200%であり、任意に、6〜8または6〜9または7〜9のpH(pH7など)にて、少なくとも1mg/mLの濃度で可溶であり、かつ、任意に、25℃で24時間後に、もとのペプチドの少なくとも95%を保持する(たとえば、もとのペプチドの5%またはそれ未満しか分解または切断されない)。もうひとつの例として、例示としてのクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体およびGLP−1受容体の両方に対する活性が、約40%より高いまたは約60%より高く(約1:3〜3:1または約1:2〜2:1の比)、任意に、6〜8または6〜9または7〜9のpH(pH7など)にて、少なくとも1mg/mLの濃度で可溶であり、任意に、25℃で24時間後に、もとのペプチドの少なくとも95%を保持する。もうひとつの例示としてのクラス3のグルカゴン関連ペプチドグルカゴン受容体に対する活性が天然のグルカゴンの約175%またはそれより高く、かつ、GLP−1受容体に対する活性が天然のGLP−1の約20%またはそれ未満であり、任意に、6〜8または6〜9または7〜9のpH(pH7など)にて、少なくとも1mg/mLの濃度で可溶であり、任意に、25℃で24時間後に、もとのペプチドの少なくとも95%を保持する。さらにもうひとつの例示としてのクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体に対する活性が天然のグルカゴンの約10%またはそれ未満であり、かつ、GLP−1受容体に対する活性が天然のGLP−1の少なくとも約20%であり、任意に、6〜8または6〜9または7〜9のpH(pH7など)にて、少なくとも1mg/mLの濃度で可溶であり、任意に、25℃で24時間後に、もとのペプチドの少なくとも95%を保持する。さらにもうひとつの例示としてのクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体に対する活性が天然のグルカゴンの約10%またはそれ未満であるが、0.1%、0.5%または1%よりは高く、かつ、GLP−1受容体に対する活性が、天然のGLP−1の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%または100%またはそれよりも高く、任意に、6〜8または6〜9または7〜9のpH(pH7など)にて、少なくとも1mg/mLの濃度で可溶であり、任意に、25℃で24時間後に、もとのペプチドの少なくとも95%を保持する。いくつかの実施形態では、このようなクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、天然のグルカゴンの対応する位置に、少なくとも22個、23個、24個、25個、26個、27個または28個の天然アミノ酸を保持する(天然のグルカゴンと比較して、1〜7個、1〜5個または1〜3個の修飾を有するなど)。
グルカゴン活性に影響する修飾
天然のグルカゴン(配列番号1)の16番目のアミノ酸修飾によって、グルカゴン受容体に対する活性が高まる。いくつかの実施形態では、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体に対するペプチドの活性を増強するために、His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Ser−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Met−Asn−Thr(配列番号1)の野生型ペプチドの修飾したグルカゴンアゴニストである。天然のグルカゴン(配列番号1)の普通に生じる16番目のセリンを、選択した酸性アミノ酸で置換し、cAMP合成を刺激する機能に関して、確立されたin vitroモデルでのアッセイでグルカゴンの活性を増強することが可能である(実施例2を参照のこと)。特に、この置換によって、グルカゴン受容体に対する類縁体の活性が、少なくとも2倍、4倍、5倍、最大で10倍増強される。また、この置換によって、GLP−1受容体に対する類縁体の活性が、天然のグルカゴンの少なくとも5倍、10倍または15倍に増強されるが、GLP−1受容体に対し、グルカゴン受容体に対する選択性は維持される。
非限定的な例として、このような増強された活性は、16番目の天然のセリンを、グルタミン酸で置換あるいは、原子4個の長さの側鎖を有する別の負の電荷を持つアミノ酸で置換あるいは、グルタミン、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸のうちの任意の1つで置換あるいは、少なくとも1個のヘテロ原子(N、O、S、Pなど)を含有し、原子約4個(または3個〜5個)の長さの側鎖を有する電荷を持つアミノ酸で置換することによって、与えられるものである。いくつかの実施形態によれば、天然のグルカゴンの16番目のセリン残基を、グルタミン酸、グルタミン、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸、スレオニンまたはグリシンからなる群から選択されるアミノ酸で置換する。いくつかの実施形態によれば、天然のグルカゴンの16番目のセリン残基を、グルタミン酸、グルタミン、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換し、いくつかの実施形態では、セリン残基をグルタミン酸で置換する。
いくつかの実施形態では、活性が増強されたクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7のペプチドあるいは、配列番号5のグルカゴンアゴニスト類縁体を有する。いくつかの実施形態によれば、グルカゴン受容体に対する活性が野生型グルカゴンに比して増強されたクラス3のグルカゴン関連ペプチドが提供され、この場合のペプチドは、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10の配列を有し、このグルカゴンペプチドは、GLP−1受容体に対し、グルカゴン受容体に対するその選択性を保持する。いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対する特異性が増強されたクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号8、配列番号9、配列番号10のペプチドまたはそのグルカゴンアゴニスト類縁体を有し、この場合、カルボキシ末端のアミノ酸は、その天然のカルボン酸基を保持する。いくつかの実施形態によれば、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、NH2−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Glu−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Met−Asn−Thr−COOH(配列番号10)の配列を有し、ここで、ペプチドは、天然のグルカゴンよりも、グルカゴン受容体に対する活性がほぼ5倍に増強されている(実施例2のin vitroでのcAMPアッセイで測定)。
3番目のアミノ酸修飾、たとえば3番目の天然のグルタミンの置換などによって、グルカゴン受容体の活性を低減、維持または増強してもよい。いくつかの実施形態では、3番目のアミノ酸から、酸性、塩基性または疎水性のアミノ酸(グルタミン酸、オルニチン、ノルロイシン)に置換すると、グルカゴン受容体の活性が実質的に低減または破壊されることが明らかになっている。たとえば、グルタミン酸、オルニチンまたはノルロイシンで置換された類縁体は、グルカゴン受容体に対する活性が、天然のグルカゴンの約10%またはそれ未満、約1%〜約10%あるいは、約0.1%〜約10%あるいは、約0.1%を上回るが約10%未満である一方で、GLP−1受容体に対する活性はGLP−1の少なくとも20%である。たとえば、本明細書に記載の例示としての類縁体は、天然のグルカゴンに対する活性がGLP−1の約0.5%、約1%または約7%である一方で、GLP−1受容体に対する活性はGLP−1の少なくとも20%である。特に、本明細書に記載のグルカゴン類縁体、グルカゴンアゴニスト類縁体、グルカゴンコアゴニストおよびグルカゴン/GLP−1コアゴニスト分子をはじめとする、クラス3のグルカゴン関連ペプチドのいずれも、たとえばGlnをGluで置換するなど、3番目に修飾を含むように修飾して、グルカゴン受容体に対する選択性と比較した場合に、GLP−1受容体に対する選択性が高い、たとえば選択性が10倍のペプチドを生成できるものである。
もうひとつの実施形態では、どのクラス3のグルカゴンペプチドの3番目の天然のグルタミンでも、場合によっては、本明細書に記載するように、グルカゴン受容体の活性を増強しつつ、グルカゴン受容体に対する活性を実質的に損なうことなくグルタミン類縁体と置換可能である。具体的な実施形態では、3番目のアミノ酸をDab(Ac)で置換する。たとえば、グルカゴンアゴニストは、配列番号595、配列番号601、配列番号603、配列番号604、配列番号605、配列番号606のアミノ酸配列を有するものであってもよい。
2番目(2番目のAibなど)の修飾ならびに、場合によっては1番目の修飾によって、グルカゴン活性が低下する場合があることが観察された。本明細書に記載の手段、「i」番目と「i+4」番目のアミノ酸の側鎖間、たとえば12番目と16番目、16番目と20番目または20番目と24番目での共有結合によって、グルカゴンのC末端領域のαヘリックスを安定化することで、このグルカゴン活性の低下を回復可能である。いくつかの実施形態では、この共有結合は、16番目のグルタミン酸と20番目のリジンとの間のラクタム架橋である。いくつかの実施形態では、この共有結合は、ラクタム架橋以外の分子内架橋である。たとえば、好適な共有結合方法は、オレフィンメタセシス、ランチオニンを基にした環化、ジスルフィド結合または修飾された硫黄含有架橋の形成、α,ω−ジアミノアルカンでの繋ぎの使用、金属原子架橋の形成、他のペプチド環化手段のうちの任意の1つまたは2つ以上を含む。
GLP−1活性に影響する修飾
C末端のアミノ酸のカルボン酸を、アミドまたはエステルなどの電荷が中性の基で置換することによって、GLP−1受容体に対する活性が増強される。いくつかの実施形態では、これらのクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号20の配列を有し、この場合のカルボキシ末端のアミノ酸は、天然のアミノ酸に見られるカルボン酸基に代えてアミド基を有する。これらのクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン受容体とGLP−1受容体の両方に対して強い活性を有するため、両方の受容体に対するコアゴニストとして作用する。いくつかの実施形態によれば、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴンおよびGLP−1受容体コアゴニストであり、この場合のペプチドは、28番目のアミノ酸がAsnまたはLysであり、29番目のアミノ酸がチロシンアミドである配列番号20の配列を有する。
グルカゴンのC末端領域(12番目〜29番目の残基のあたりなど)におけるαヘリックスを安定化する修飾によって、GLP−1受容体に対する活性が高められる。
いくつかの実施形態では、このような修飾によって、あいだに介在するアミノ酸3個(すなわち、「i」番目のアミノ酸と「i+4」番目のアミノ酸で、iは12〜25の任意の整数である)、アミノ酸2個(すなわち、「j」番目のアミノ酸と「j+3」番目のアミノ酸で、jは12〜27の任意の整数である)またはアミノ酸6個(すなわち、「k」番目のアミノ酸と「k+7」番目のアミノ酸で、kは12〜22の任意の整数である)だけ離れた2つのアミノ酸の側鎖間に分子内架橋を形成することが可能である。例示としての実施形態では、架橋またはリンカーは、原子約8個(または約7個〜約9個)の長さであり、12番目と16番目または16番目と20番目または20番目と24番目または24番目と28番目のアミノ酸の側鎖間に形成される。非共有結合、たとえば、水素結合、塩結合の形成などのイオンの相互作用または共有結合によって、2つのアミノ酸側鎖を互いに結合することが可能である。
いくつかの実施形態によれば、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニスト活性を示し、配列番号11、47、48、49からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、側鎖が互いに共有結合し、いくつかの実施形態では、2つのアミノ酸が互いに結合して、ラクタム環が形成される。
いくつかの実施形態によれば、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、12番目と16番目、16場目と20番目、20番目と24番目または24番目と28番目のアミノ酸の対からなる群から選択されるアミノ酸の対の側鎖間に少なくとも1個のラクタム環が形成される、配列番号45を有する。いくつかの実施形態では、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、ペプチドの12番目と16番目のアミノ酸の間または16番目と20番目のアミノ酸の間に分子内ラクタム架橋が形成された、配列番号20のグルカゴンペプチド類縁体を有する。いくつかの実施形態では、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、12番目と16番目のアミノ酸の間、16番目と20番目のアミノ酸の間番目または20番目と24番目のアミノ酸の間に分子内ラクタム架橋が形成され、29番目のアミノ酸がグリシンである、配列番号20の配列を有し、ここで、配列番号20のC末端のアミノ酸には、配列番号29の配列が結合している。別の実施形態では、28番目のアミノ酸はアスパラギン酸である。
いくつかの具体的な実施形態では、クラス3のグルカゴン関連ペプチドのC末端領域でのαヘリックス構造の安定化は、ラクタム架橋以外の分子内架橋の形成によって達成される。たとえば、好適な共有結合方法は、オレフィンメタセシス、ランチオニンを基にした環化、ジスルフィド結合または修飾された硫黄含有架橋の形成、α,ω−ジアミノアルカンでの繋ぎの使用、金属原子架橋の形成のうちの1つまたは2つ以上を含み、他のペプチド環化手段もαヘリックスの安定化に用いられる。
さらに、1個または2個以上のα,α−二置換アミノ酸を、所望の活性を保持する位置に目的をもって導入することで、グルカゴンペプチドのC末端領域(アミノ酸12番目〜29番目のあたり)におけるαヘリックス構造を安定化して、GLP−1受容体に対する活性を増強してもよい。このようなペプチドは、本明細書では、分子内架橋を欠いたペプチドとみなすことができる。いくつかの態様では、塩結合または共有結合などの分子内架橋を導入することなく、このようにしてαヘリックスを安定化する。いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドの16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目または29番目のうちの1箇所、2箇所、3箇所、4箇所またはそれより多くを、α,α−二置換アミノ酸で置換する。たとえば、クラス3のグルカゴン関連ペプチドの16番目をアミノイソ酪酸(Aib)で置換すると、塩結合またはラクタムがなくても、GLP−1活性が増強される。いくつかの実施形態では、16番目、20番目、21番目または24番目のうちの1箇所、2箇所、3箇所またはそれより多くを、Aibで置換する。
20番目でのアミノ酸修飾によって、GLP−1受容体に対する活性を増強してもよい。いくつかの実施形態では、20番目のグルタミンを、電荷を持つか水素結合でき、かつ、少なくとも原子約5個(または約4個〜約6個)の長さの側鎖を有する別の親水性アミノ酸、たとえば、リジン、シトルリン、アルギニンまたはオルニチンで置換する。
GLP−1受容体に対する活性の増大が、配列番号26のC末端の延長部分を有するクラス3のグルカゴン関連ペプチドで認められる。本明細書に記載するように、配列番号26を有するこのようなクラス3のグルカゴン関連ペプチドのGLP−1活性を、18番目、28番目または29番目のアミノ酸を修飾するか、あるいは18番目と29番目のアミノ酸を修飾することによって、さらに高めることが可能である。
10番目のアミノ酸をTrpに修飾することで、GLP−1活性を、さらに適度に高めることもできる。
GLP−1受容体の活性を高める修飾を組み合わせると、このような修飾のどれを単独で用いる場合よりも、GLP−1活性を高められることがある。たとえば、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、任意に、12番目のアミノ酸がArgではないという条件で;または任意に9番目のアミノ酸がGluではないという条件で、16番目、20番目およびC末端のカルボン酸基に、任意に16番目と20番目のアミノ酸の間の共有結合によって、修飾を含むものであってもよい;16番目とC末端のカルボン酸基に修飾を有するものであってもよい;16番目と20番目に、任意に、16番目と20番目のアミノ酸の間の共有結合によって、修飾を有するものであってもよい;または20番目とC末端のカルボン酸基に修飾を有するものであってもよい。
溶解性に影響する修飾
親水性部分の付加
クラス3のグルカゴン関連ペプチドをさらに修飾し、天然のグルカゴンの高い生物学的活性を維持したまま、生理的なpHでの水溶液に対するペプチドの溶解性および水溶液中での安定性を改善してもよい。本明細書に記載の親水性部分は、本明細書でさらに論じるように、クラス3のグルカゴン関連ペプチドに結合可能なものである。
いくつかの実施形態によれば、配列番号9または配列番号10を有するクラス3のグルカゴン関連ペプチドの17番目、21番目、24番目に親水基を導入すると、生理的なpHの溶液に対する高活性なグルカゴン類縁体の溶解性と、このような溶液中での安定性が、改善されると予想される。このような基を導入すると、作用時間が長くなるが、これは血中半減期が延びることを基準に判断できるものである。
いくつかの実施形態では、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19からなる群から選択される配列を有し、この場合、前記クラス3のグルカゴン関連ペプチドの16番目、17番目、21番目または24番目のうちの1つのアミノ酸残基の側鎖が、約500〜約40,000ダルトンの範囲から選択される分子量のポリエチレングリコール鎖をさらに有する。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコール鎖の分子量は、約500〜約5,000ダルトンの範囲から選択される。もうひとつの実施形態では、ポリエチレングリコール鎖の分子量は、約10,000〜約20,000ダルトンである。さらに他の例示としての実施形態では、ポリエチレングリコール鎖の分子量は、約20,000〜約40,000ダルトンである。
好適な親水性部分としては、本明細書に記載の親水性部分、PEGのホモポリマーまたはコポリマー、PEGのモノメチル置換ポリマー(mPEG)をはじめとして、当分野で知られた水溶性ポリマーがあげられる。いくつかの実施形態によれば、親水基は、ポリエチレン(PEG)鎖を有する。特に、いくつかの実施形態では、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号6または配列番号7の配列を有し、クラス3のグルカゴン関連ペプチドの21番目および24番目に存在するアミノ酸の側鎖にPEG鎖が共有結合し、クラス3のグルカゴン関連ペプチドのカルボキシ末端のアミノ酸は、カルボン酸基を有する。いくつかの実施形態によれば、ポリエチレングリコール鎖は、平均分子量が、約500〜約10,000ダルトンの範囲から選択される。
いくつかの実施形態によれば、PEG化されたクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、クラス3のグルカゴン関連ペプチドに共有結合している2つまたは3つ以上のポリエチレングリコール鎖を有し、この場合のグルカゴン鎖の合計の分子量は、約1,000〜約5,000ダルトンである。いくつかの実施形態では、PEG化グルカゴンアゴニストは、PEG鎖が21番目および24番目でアミノ酸残基に共有結合し、2つのPEG鎖の合算での分子量が約1,000〜約5,000ダルトンである、配列番号5からなるペプチドまたは配列番号5のグルカゴンアゴニスト類縁体を有する。
電荷を持つC末端
たとえば、1個、2個、3個または4個以上の電荷を持つアミノ酸(単数または複数)を、配列番号20のグルカゴンペプチドのC末端領域、好ましくは27番目よりC末端側の位置に導入することによって、配列番号20を有するクラス3のグルカゴン関連ペプチドの溶解性を、さらに改善することが可能である。このような電荷を持つアミノ酸は、28番目または29番目などで、天然のアミノ酸を電荷を持つアミノ酸で置換することあるいは、27番目、28番目または29番目の後などに、電荷を持つアミノ酸を付加することによって導入可能なものである。例示としての実施形態では、電荷を持つアミノ酸のうち、1個、2個、3個またはすべてが、負の電荷を持つ。クラス3のグルカゴン関連ペプチドに、修飾後もペプチドがグルカゴン活性を保持できる、保存的な置換などの追加の修飾をほどこしてもよい。いくつかの実施形態では、配列番号20のクラス3のグルカゴン関連ペプチドの類縁体が提供され、この類縁体は、配列番号20とは、17番目から26番目での1〜2個のアミノ酸置換が異なり、いくつかの実施形態では、類縁体は、配列番号20のペプチドとは、20番目のアミノ酸置換が異なる。
アシル化/アルキル化
いくつかの実施形態によれば、グルカゴンペプチドは、C4〜C30アシル基またはアルキル基など、アシル基またはアルキル基を含むように修飾される。いくつかの態様では、このアシル基またはアルキル基は、アミノ酸に天然のものではない。特定の態様では、アシル基またはアルキル基は、天然のどのアミノ酸に対しても非天然である。アシル化またはアルキル化によって、血中半減期を延ばすおよび/または作用開始を遅らせるおよび/または作用時間を延ばすおよび/またはDPP−IVなどのプロテアーゼに対する耐性を改善することが可能である。クラス3のグルカゴン関連ペプチドのグルカゴン受容体およびGLP−1受容体に対する活性は、アシル化後に実質的に増強されないまでも、維持される。さらに、アシル化された類縁体の活性は、実質的に増強されていないにしても、アシル化されていないクラス3のグルカゴン関連ペプチドに匹敵するものであった。
いくつかの実施形態では、本発明は、グルカゴンペプチドの10番目のアミノ酸に共有結合しているアシル基またはアルキル基を有するように修飾された、クラス3のグルカゴン関連ペプチドを提供するものである。グルカゴンペプチドは、クラス3のグルカゴン関連ペプチドの10番目のアミノ酸とアシル基またはアルキル基との間にスペーサーをさらに有するものであってもよい。上述したクラス3のグルカゴン関連ペプチドはいずれも、2個のアシル基または2個のアルキル基あるいはこれらの組み合わせを有するものであってもよい。
本発明の具体的な態様では、アシル化されたクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号534〜544および546〜549のいずれかのアミノ酸配列を有する。
C末端の短縮
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のクラス3のグルカゴン関連ペプチドを、グルカゴンペプチドのC末端の1個または2個のアミノ酸(すなわち、29番目および/または28番目)の短縮または欠失によって、グルカゴンおよびGLP−1受容体に対する活性および/または活性に影響することなく、さらに修飾する。この点について、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、天然のグルカゴンペプチド(配列番号1)の1番目から27番目または1番目から28番目のアミノ酸を有するものであってもよく、任意に、本明細書に記載の1個または2個以上の修飾がなされている。
いくつかの実施形態では、短くされたクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号550または配列番号551を有する。もうひとつの実施形態では、短くされたグルカゴンアゴニストのペプチドは、配列番号552または配列番号553を有する。
C末端の延長
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示のクラス3のグルカゴン関連ペプチドを、配列番号26、配列番号27または配列番号28などのグルカゴンペプチドのカルボキシ末端に第2のペプチドを付加することによって、修飾する。いくつかの実施形態では、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69からなる群から選択される配列を有するクラス3のグルカゴン関連ペプチドが、ペプチド結合によって、第2のペプチドに共有結合し、この場合の第2のペプチドは、配列番号26、配列番号27、配列番号28からなる群から選択される配列を有する。別の実施形態では、C末端の延長部分を有するクラス3のグルカゴン関連ペプチドにおいて、天然のグルカゴンペプチドの29番目のスレオニンがグリシンに置換される。29番目のスレオニンに代えてグリシン置換を有し、配列番号26のカルボキシ末端の延長部分を有するクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号26のカルボキシ末端の延長部分を有するように修飾された天然のグルカゴンよりも、GLP−1受容体に対する活性が4倍高い。18番目を天然のアルギニンからアラニンに置換することによって、GLP−1受容体に対する活性を、さらに増強することが可能である。
したがって、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号27(KRNRNNIA)または配列番号28のカルボキシ末端の延長部分を有するものであってもよい。いくつかの実施形態によれば、配列番号33または配列番号20を有するクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、グルカゴンペプチドの29番目のアミノ酸に結合した配列番号27(KRNRNNIA)または配列番号28のアミノ酸配列をさらに有する。特に、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号10、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15からなる群から選択される配列を有し、グルカゴンペプチドの29番目に結合した、配列番号27(KRNRNNIA)または配列番号28のアミノ酸配列をさらに有する。特に、グルカゴンペプチドは、配列番号10、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号55、配列番号56からなる群から選択される配列を有し、クラス3のグルカゴン関連ペプチドの29番目のアミノ酸に結合した、配列番号26(GPSSGAPPPS)または配列番号29のアミノ酸配列をさらに有する。いくつかの実施形態では、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号64の配列を有する。
他の修飾
グルカゴン受容体の活性を高めるまたは低下させ、かつ、GLP−1受容体の活性を高める、クラス3のグルカゴン関連ペプチドに関して上述したいずれかの修飾を、個々に適用してもよいし、組み合わせで適用してもよい。GLP−1受容体の活性を高める修飾の組み合わせを用いると、通常は、このような修飾のどれを単独で用いる場合よりも、GLP−1活性が高くなる。上述したどの修飾も、溶解性および/または安定性および/または作用時間の増大などの他の望ましい特性を与える、クラス3のグルカゴン関連ペプチドに関する本明細書に記載の他の修飾と組み合わせることが可能である。あるいは、上述した修飾はいずれも、溶解性または安定性または活性に実質的に影響しない、クラス3のグルカゴン関連ペプチドに関して本明細書に記載の他の修飾と組み合わせることが可能である。修飾の例として以下のものがあげられるが、これらに限定されるものではない。
(A)1個、2個、3個または4個以上の電荷を持つアミノ酸(単数または複数)を、天然のグルカゴンのC末端領域、好ましくは27番目よりC末端側の位置に導入することなどによる、溶解性の改善。このような電荷を持つアミノ酸は、28番目または29番目などで、天然のアミノ酸を電荷を持つアミノ酸で置換することあるいは、27番目、28番目または29番目の後などに、電荷を持つアミノ酸を付加することによって導入可能なものである。例示としての実施形態では、電荷を持つアミノ酸のうち、1個、2個、3個またはすべてが、負の電荷を持つ。他の実施形態では、電荷を持つアミノ酸のうち、1個、2個、3個またはすべてが、正の電荷を持つ。このような修飾によって、25℃で24時間後に測定すると、約5.5〜約8の特定のpH、たとえばpH7で、天然のグルカゴンと比較して、溶解性が少なくとも2倍、5倍、10倍、15倍、25倍、30倍またはそれより高くなるなど、溶解性が高まる。
(B)ペプチドの16番目、17番目、20番目、21番目、24番目または29番目またはC末端のアミノ酸などで、本明細書に記載するようなポリエチレングリコール鎖などの親水性部分を付加することによる、溶解性および作用時間または血中半減期の増大。
(C)欠失あるいは、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、システイン酸またはホモシステイン酸への置換などの15番目のアスパラギン酸の修飾による、安定性の向上。このような修飾によって、このような修飾によって、25℃で24時間後に、もとのペプチドの少なくとも75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%、最大100%が保持されるなど、特に酸性バッファーまたはアルカリ性バッファー中で、pH5.5〜8の範囲内でのあるpHにおいて、分解または切断を低減することができる。
(D)ロイシンまたはノルロイシンへの置換などによる、27番目のメチオニンの修飾による安定性の向上。このような修飾によって、酸化による分解を低減することができる。また、Ser、Thr、AlaまたはAibへの置換など、20番目または24番目のグルタミンの修飾によって、安定性を向上させることも可能である。このような修飾によって、Glnの脱アミド化によって生じる分解を低減することができる。Gluへの置換など、21番目のAspの修飾によって安定性を向上させることが可能である。このような修飾によって、Aspが脱水し、環状スクシンイミド中間体を形成した後、イソアスパラギン酸へ異性体化することで生じる分解を低減することができる。
(E)1番目または2番目のアミノ酸を、本明細書に記載のDPP−IV耐性アミノ酸で修飾すること(2番目のアミノ酸をN−メチルアラニンで修飾することを含む)による、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)での切断に対する耐性の向上。
(F)活性には影響しない保存的または非保存的な置換、付加または欠失、たとえば、2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目または29番目のうちの1箇所または2箇所以上における保存的な置換、27番目、28番目または29番目のうちの1箇所または2箇所以上におけるアミノ酸の欠失あるいは、29番目のアミノ酸の欠失(任意に、C末端のカルボン酸基からC末端のアミドまたはエステルへの変更を組み合わせてもよい)。
(G)本明細書に記載するようなC末端の延長部分の付加。
(H)たとえば、本明細書に記載するようなグルカゴンペプチドのアシル化またはアルキル化によって、血中半減期を長くするおよび/または作用時間を延ばすおよび/または作用開始を遅らせること。
(I)本明細書に記載するようなホモダイマー化またはヘテロダイマー化。
他の修飾として、1番目のヒスチジンから高分子芳香族アミノ酸(Tyr、Phe、Trpまたはアミノフェニルアラニンなど)への置換、2番目のSerからAlaへの置換、10番目のTyrからValまたはPheへの置換、12番目のLysからArgへの置換、15番目のAspからGluへの置換、16番目のSerからThrまたはAibへの置換があげられる。
1番目のヒスチジンから高分子芳香族アミノ酸(Tyrなど)への非保存的な置換を含むGLP−1活性を有する、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、本明細書に記載したものなどの分子内架橋によってαヘリックスが安定化しているかぎり、GLP−1活性を保持することができる。
結合体と融合体
クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、任意に共有結合を介し、かつ、任意にリンカーによって、結合体部分に結合可能なものである。
また、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、第2のペプチドまたはポリペプチドが、クラス3のグルカゴン関連ペプチドのカルボキシ末端などの末端に融合した、融合ペプチドまたはタンパク質の一部であってもよい。
特に、クラス3のグルカゴン関連融合ペプチドは、配列番号55、配列番号9または配列番号10のグルカゴンアゴニストを含むものであってもよく、さらに、配列番号26(GPSSGAPPPS)、配列番号27(KRNRNNIA)または配列番号28(KRNR)のアミノ酸配列が、グルカゴンペプチドの29番目のアミノ酸に結合している。いくつかの実施形態では、配列番号26(GPSSGAPPPS)、配列番号27(KRNRNNIA)または配列番号28(KRNR)は、ペプチド結合を介して、クラス3のグルカゴン関連ペプチドの29番目のアミノ酸に結合している。本出願人らは、発エキセンディン−4(配列番号26または配列番号29など)のC末端の延長部分ペプチドでは、29番目の天然のスレオニン残基からグリシンへの置換を有するクラス3のグルカゴン関連ペプチド融合ペプチドが、GLP−1受容体の活性を劇的に高めることを見した。このアミノ酸置換を、クラス3のグルカゴン関連ペプチドに関して本明細書に開示の他の修飾と一緒に利用して、GLP−1受容体に対するグルカゴン類縁体の親和性を高めることが可能である。たとえば、T29G置換を、S16EおよびN20Kのアミノ酸置換と組み合わせ、任意に16番目と20番目との間のラクタム架橋も組み合わせ、さらに任意に、本明細書に記載するようなPEG鎖の付加も組み合わせることが可能である。いくつかの実施形態では、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号64の配列を有する。いくつかの実施形態では、グルカゴン融合ペプチドのクラス3のグルカゴン関連ペプチド部分は、配列番号55、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5からなる群から選択され、ここで、PEG鎖は、17番目、21番目、24番目またはC末端のアミノ酸あるいは、21番目と24番目の両方に存在する場合、500〜40,000ダルトンの範囲から選択される。特に、いくつかの実施形態では、クラス3のグルカゴン関連ペプチドセグメントは、配列番号7、配列番号8、配列番号63からなる群から選択され、PEG鎖は、500〜5,000の範囲から選択される。いくつかの実施形態では、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号55および配列番号65の配列を有する融合ペプチドであり、配列番号65のペプチドは、配列番号55のカルボキシ末端に結合している。
いくつかの実施形態によれば、配列番号10のクラス3のグルカゴン関連ペプチドの追加の化学修飾によって、グルカゴン受容体とGLP−1受容体に対する相対活性が、事実上等しくなる点まで、GLP−1受容体の活性が高められる。したがって、いくつかの実施形態では、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、天然のアミノ酸に存在するカルボン酸基に代えて、アミド基を有する末端のアミノ酸を有する。クラス3のグルカゴン関連ペプチドをさらに修飾することによって、グルカゴン受容体およびGLP−1受容体それぞれに対するクラス3のグルカゴン関連ペプチドの相対活性を調節し、グルカゴン受容体に対する活性が天然のグルカゴンの約40%〜約500%またはそれより高く、GLP−1受容体に対する活性が天然のGLP−1の約20%〜約200%またはそれより高い類縁体を生成することが可能である(たとえば、GLP−1受容体に対するグルカゴンの通常の活性と比較して、50倍、100倍またはそれより高めるなど)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のグルカゴンペプチドは、グルカゴン受容体に対する活性が、天然のグルカゴンの最大で約100%、約1000%、約10,000%、約100,000%または約1,000,000%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のグルカゴンペプチドは、GLP−1受容体に対する活性が、天然のGLP−1の最大で約100%、約1000%、約10,000%、約100,000%または約1,000,000%である。
例示としての実施形態
いくつかの実施形態によれば、配列番号55の配列を有するグルカゴン類縁体が提供され、ここで、上記の類縁体は、1番目、2番目、3番目、5番目、7番目、10番目、11番目、13番目、14番目、17番目、18番目、19番目、21番目、24番目、27番目、28番目、29番目から選択される1〜3個のアミノ酸が配列番号55とは異なり、上記のグルカゴンペプチドは、GLP−1受容体に対する活性が天然のGLP−1の少なくとも20%である。
いくつかの実施形態によれば、次の配列すなわち、
NH2−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Xaa−Xaa−Arg−Arg−Ala−Xaa−Asp−Phe−Val−Xaa−Trp−Leu−Met−Xaa−Xaa−R(配列番号33)を有するグルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストが提供される。ここで、15番目のXaaは、Asp、Glu、システイン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸からなるアミノ酸の群から選択され、16番目のXaaは、Ser、Glu、Gln、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸からなるアミノ酸の群から選択され、20番目のXaaは、GlnまたはLysであり、24番目のXaaは、GlnまたはGluであり、28番目のXaaは、Asn、Lysまたは酸性アミノ酸であり、29番目のXaaは、Thr、Glyまたは酸性アミノ酸であり、Rは、COOHまたはCONH2である。ただし、16番目がセリンの場合、20番目はLysであるか、あるいは、16番目がセリンの場合、24番目はGluであり、20番目または28番目のいずれかがLysである。いくつかの実施形態では、グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストは、配列番号33の配列を有し、ここで、28番目のアミノ酸はアスパラギン酸であり、29番目のアミノ酸はグルタミン酸である。もうひとつの実施形態では、28番目のアミノ酸は天然のアスパラギンであり、29番目のアミノ酸はグリシンであり、配列番号29または配列番号65のアミノ酸配列は、配列番号33のカルボキシ末端と共有結合している。
いくつかの実施形態では、追加の酸性アミノ酸がペプチドのカルボキシ末端に付加された、配列番号33の配列を有するコアゴニストが提供される。別の実施形態では、グルカゴン類縁体のカルボキシ末端のアミノ酸は、天然のアミノ酸のカルボン酸基の代わりに、アミドを有する。いくつかの実施形態では、グルカゴン類縁体は、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44からなる群から選択される配列を有する。
いくつかの実施形態によれば、配列番号33のグルカゴンペプチド類縁体が提供され、ここで、上記の類縁体は、1番目、2番目、3番目、5番目、7番目、10番目、11番目、13番目、14番目、17番目、18番目、19番目、21番目、27番目から選択される1〜3個のアミノ酸が配列番号33とは異なる。ただし、16番目のアミノ酸がセリンの場合、20番目がリジンであるか、あるいは、24番目のアミノ酸と20番目または28番目のいずれかのアミノ酸との間に、ラクタム架橋が形成される。いくつかの実施形態によれば、この類縁体は、1番目、2番目、3番目、21番目、27番目から選択される1〜3個のアミノ酸が配列番号33とは異なる。いくつかの実施形態では、配列番号33のグルカゴンペプチド類縁体は、その配列と1〜2個のアミノ酸が異なるか、いくつかの実施形態では、1番目、2番目、3番目、5番目、7番目、10番目、11番目、13番目、14番目、17番目、18番目、19番目、21番目、27番目から選択される単一のアミノ酸が異なる。ただし、16番目のアミノ酸がセリンの場合、20番目がリジンであるか、あるいは、24番目のアミノ酸と20番目または28番目のいずれかのアミノ酸との間に、ラクタム架橋が形成される。
もうひとつの実施形態によれば、配列NH2−His−Ser−Xaa−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Xaa−Xaa−Arg−Arg−Ala−Xaa−Asp−Phe−Val−Xaa−Trp−Leu−Met−Xaa−Xaa−R(配列番号53)を含む、比較的選択性の高いGLP−1受容体アゴニストが提供され、ここで、3番目のXaaは、Glu、OrnまたはNleからなるアミノ酸の群から選択され、15番目のXaaは、Asp、Glu、システイン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸からなるアミノ酸の群から選択され、16番目のXaaは、Ser、Glu、Gln、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸からなるアミノ酸の群から選択され、20番目のXaaは、GlnまたはLysであり、24番目のXaaは、GlnまたはGluであり、28番目のXaaは、Asn、Lysまたは酸性アミノ酸であり、29番目のXaaは、Thr、Glyまたは酸性アミノ酸であり、Rは、COOH、CONH2、配列番号26または配列番号29である。ただし、16番目がセリンの場合、20番目はLysであるか、あるいは、16番目がセリンの場合、24番目はGluであり、20番目または28番目のいずれかがLysである。いくつかの実施形態では、3番目のアミノ酸はグルタミン酸である。いくつかの実施形態では、28番目および/または29番目で置換される酸性アミノ酸は、アスパラギン酸またはグルタミン酸である。いくつかの実施形態では、コアゴニストのペプチドをはじめとするグルカゴンペプチドは、ペプチドのカルボキシ末端に付加された追加の酸性アミノ酸をさらに有する配列番号33の配列を有する。別の実施形態では、グルカゴン類縁体のカルボキシ末端のアミノ酸は、天然のアミノ酸のカルボン酸基の代わりに、アミドを有する。
いくつかの実施形態によれば、以下からなる群から選択される、修飾されたグルカゴンペプチドを有するグルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストが提供される。
NH2−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Xaa−Xaa−Arg−Arg−Ala−Xaa−Asp−Phe−Val−Xaa−Trp−Leu−Met−Xaa−Xaa−R(配列番号34)。ここで、15番目のXaaは、Asp、Glu、システイン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸からなるアミノ酸の群から選択され、16番目のXaaは、Ser、Glu、Gln、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸からなるアミノ酸の群から選択され、20番目のXaaは、GlnまたはLysであり、24番目のXaaは、GlnまたはGluであり、28番目のXaaは、Asn、AspまたはLysであり、Rは、COOHまたはCONH2であり、29番目のXaaは、ThrまたはGlyであり、Rは、COOH、CONH2、配列番号26または配列番号29である。ただし、16番目がセリンの場合、20番目はLysであるか、あるいは、16番目がセリンの場合、24番目はGluであり、20番目または28番目のいずれかがLysである。いくつかの実施形態では、RはCONH2であり、15番目のXaaはAspであり、16番目のXaaは、Glu、Gln、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸からなるアミノ酸の群から選択され、20番目と24番目のXaaは各々Glnであり、28番目のXaaはAsnまたはAspであり、29番目のXaaはThrである。いくつかの実施形態では、15番目と16番目のXaaは各々Gluであり、20番目と24番目のXaaは各々Glnであり、28番目のXaaはAsnまたはAspであり、29番目のXaaはThrであり、RはCONH2である。
親ペプチドの活性を少なくともいくらか維持しつつ、天然のグルカゴンペプチドの特定の位置を修飾可能であることが報告されている。したがって、本出願人らは、配列番号11のペプチドの2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目または29番目の位置にあるアミノ酸のうち1つまたは2つ以上を、天然のグルカゴンペプチドに存在するものとは異なるアミノ酸で置換して、それでもなおグルカゴン受容体に対する活性を保つことが可能であると予想している。いくつかの実施形態では、天然のペプチドの27番目に存在するメチオニン残基をロイシンまたはノルロイシンに変更して、ペプチドの酸化による分解を防止する。もうひとつの実施形態では、20番目のアミノ酸が、Lys、Arg、Ornまたはシトルリンで置換されるおよび/または21番目を、Glu、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸に置換する。
いくつかの実施形態では、配列番号20のグルカゴン類縁体であって、この類縁体の1番目、2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、13番目、14番目、17番目、18番目、19番目、21番目、27番目、28番目または29番目から選択される1〜6個のアミノ酸が、配列番号1の対応するアミノ酸とは異なる、配列番号20のグルカゴン類縁体が提供されるが、ただし、16番目のアミノ酸がセリンの場合、20番目はLysであるか、あるいは、16番目がセリンの場合、24番目はGluであり、20番目または28番目のいずれかがLysである。もうひとつの実施形態によれば、配列番号20のグルカゴン類縁体であって、この類縁体の1番目、2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、13番目、14番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、27番目、28番目または29番目から選択される1〜3個のアミノ酸が、配列番号1の対応するアミノ酸とは異なる、配列番号20のグルカゴン類縁体が提供される。もうひとつの実施形態では、配列番号8、配列番号9または配列番号11のグルカゴン類縁体であって、この類縁体の1番目、2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、13番目、14番目、17番目、18番目、19番目、20番目または21番目から選択される1〜2個のアミノ酸が、配列番号1の対応するアミノ酸とは異なる、配列番号8、配列番号9または配列番号11のグルカゴン類縁体が提供され、別の実施形態では、1〜2個の異なるアミノ酸が、天然のグルカゴン配列(配列番号1)に存在するアミノ酸に対する保存的なアミノ酸置換を表す。いくつかの実施形態では、配列番号12、配列番号13、配列番号14または配列番号15のグルカゴンペプチドが提供され、この場合のグルカゴンペプチドは、2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、13番目、14番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、27番目または29番目から選択される1つ、2つまたは3つのアミノ酸置換をさらに有する。いくつかの実施形態では、2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、13番目、14番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、27番目または29番目での置換は、保存的なアミノ酸置換である。
いくつかの実施形態によれば、配列番号33の配列の変異種を有し、この変異種の16番目、17番目、18番目、20番目、21番目、23番目、24番目、27番目、28番目、29番目から選択される1〜10個のアミノ酸が、配列番号1の対応するアミノ酸とは異なる、グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストが提供される。いくつかの実施形態によれば、配列番号33の配列の変異種であって、17番目のグルタミン、18番目のアラニン、21番目のグルタミン酸、23番目のイソロイシン、24番目のアラニン、27番目のバリン、29番目のグリシンからなる群から選択される1個または2個以上のアミノ酸置換が配列番号33とは異なる、変異種が提供される。いくつかの実施形態によれば、配列番号33の配列の変異種を有し、この変異種の17番目〜26番目から選択される1〜2個のアミノ酸が、配列番号1の対応するアミノ酸とは異なる、グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストが提供される。いくつかの実施形態によれば、配列番号33の配列の変異種が提供され、この場合の変異種は、17番目のグルタミン、18番目のアラニン、21番目のグルタミン酸、23番目のイソロイシン、24番目のアラニンからなる群から選択されるアミノ酸置換が、配列番号33とは異なる。いくつかの実施形態によれば、配列番号33の配列の変異種が提供され、この場合の変異種は、18番目のアミノ酸置換が配列番号33とは異なる。ここで、置換されたアミノ酸は、Ala、Ser、Thr、Glyからなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、配列番号33の配列の変異種が提供され、この場合の変異種は、18番目のAlaのアミノ酸置換が、配列番号33とは異なる。このような変異は、配列番号55に包含される。もうひとつの実施形態では、配列番号33の配列の変異種を有し、この変異種の17番目〜22番目から選択される1〜2個のアミノ酸が、配列番号1の対応するアミノ酸とは異なる、グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストが提供され、別の実施形態では、配列番号33の変異種が提供され、この変異種は、20番目および21番目の1〜2個のアミノ酸置換が、配列番号33とは異なる。いくつかの実施形態によれば、次の配列を有するグルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストが提供される。
NH2−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Xaa−Xaa−Arg−Arg−Ala−Xaa−Xaa−Phe−Val−Xaa−Trp−Leu−Met−Xaa−Xaa−R(配列番号51)。ここで、15番目のXaaは、Asp、Glu、システイン酸、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸であり、16番目のXaaは、Ser、Glu、Gln、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸であり、20番目のXaaは、Gln、Lys、Arg、Ornまたはシトルリンであり、21番目のXaaは、Asp、Glu、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸であり、24番目のXaaは、GlnまたはGluであり、28番目のXaaは、Asn、Lysまたは酸性アミノ酸であり、29番目のXaaは、Thrまたは酸のアミノ酸であり、Rは、COOHまたはCONH2である。いくつかの実施形態では、RはCONH2である。いくつかの実施形態によれば、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号47、配列番号48または配列番号49の変異種を有するグルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストが提供され、この場合の変異種は、20番目のアミノ酸置換が前記配列とは異なる。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、20番目のLys、Arg、Ornまたはシトルリンからなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、配列番号34の類縁体ペプチドを有し、この類縁体が、セリン以外のアミノ酸を2番目に有することで配列番号34とは異なる、グルカゴンアゴニストが提供される。いくつかの実施形態では、セリン残基が、アミノイソ酪酸、D−アラニンで置換され、いくつかの実施形態では、セリン残基はアミノイソ酪酸で置換される。このような修飾は、親化合物の固有の活性を保持したまま、ジペプチジルペプチダーゼIVによる切断を抑制するものである(親化合物の活性の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%またはそれより高いなど)。いくつかの実施形態では、たとえば、1個、2個、3個または4個以上の電荷を持つアミノ酸(単数または複数)を、天然のグルカゴンのC末端領域、好ましくは27番目よりC末端側の位置に導入することによって、類縁体の溶解性を高める。例示としての実施形態では、電荷を持つアミノ酸のうち、1個、2個、3個またはすべてが、負の電荷を持つ。もうひとつの実施形態では、この類縁体は、28番目または29番目で天然のアミノ酸を置換した酸性アミノ酸あるいは、配列番号34のペプチドのカルボキシ末端に付加された酸性アミノ酸をさらに有する。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示のグルカゴン類縁体を1番目または2番目でさらに修飾し、ジペプチジルペプチダーゼIVによる切断に対する感受性を低減する。いくつかの実施形態では、配列番号9、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14または配列番号15のグルカゴン類縁体が得られ、この類縁体は、2番目の置換が親分子とは異なり、ジペプチジルペプチダーゼIVによる切断に対する感受性(すなわち耐性)が低下している。特に、いくつかの実施形態では、類縁体ペプチドの2番目は、D−セリン、D−アラニン、バリン、アミノn−酪酸、グリシン、N−メチルセリン、アミノイソ酪酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換される。いくつかの実施形態では、類縁体ペプチドの2番目は、D−セリン、D−アラニン、グリシン、N−メチルセリン、アミノイソ酪酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換される。もうひとつの実施形態では、類縁体ペプチドの2番目は、D−セリン、グリシン、N−メチルセリン、アミノイソ酪酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換される。いくつかの実施形態では、2番目のアミノ酸はD−セリンではない。いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドは、配列番号21または配列番号22の配列を有する。
いくつかの実施形態では、配列番号9、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14または配列番号15のグルカゴン類縁体が得られ、この類縁体は、1番目の置換が親分子とは異なり、ジペプチジルペプチダーゼIVによる切断に対する感受性(すなわち耐性)が低下している。特に、類縁体ペプチドの1番目は、D−ヒスチジン、α,α−ジメチルイミダゾール酢酸(DMIA)、N−メチルヒスチジン、α−メチルヒスチジン、イミダゾール酢酸、デスアミノヒスチジン、ヒドロキシルヒスチジン、アセチルヒスチジン、ホモヒスチジンからなる群から選択されるアミノ酸で置換される。もうひとつの実施形態では、配列番号34の類縁体ペプチドを有し、この類縁体が、1番目にヒスチジン以外のアミノ酸を有することが配列番号34とは異なる、グルカゴンアゴニストが提供される。いくつかの実施形態では、たとえば、1個、2個、3個または4個以上の電荷を持つアミノ酸(単数または複数)を、天然のグルカゴンのC末端領域、好ましくは27番目よりC末端側の位置に導入することによって、類縁体の溶解性を高める。例示としての実施形態では、電荷を持つアミノ酸のうち、1個、2個、3個またはすべてが、負の電荷を持つ。もうひとつの実施形態では、この類縁体は、28番目または29番目で天然のアミノ酸を置換した酸性アミノ酸あるいは、配列番号34のペプチドのカルボキシ末端に付加された酸性アミノ酸をさらに有する。いくつかの実施形態では、酸性アミノ酸は、アスパラギン酸またはグルタミン酸である。
いくつかの実施形態では、グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストは、配列番号20の配列を有し、配列番号26、配列番号27、配列番号28からなる群から選択される1つのアミノ酸またはペプチドの追加のカルボキシ末端延長部分をさらに有する。配列番号20のカルボキシ末端に単一のアミノ酸が付加される実施形態では、このアミノ酸は通常、20種類の一般的なアミノ酸から選択され、いくつかの実施形態では、追加のカルボキシ末端のアミノ酸は、天然のアミノ酸のカルボン酸に代えてアミド基を有する。いくつかの実施形態では、追加のアミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシンからなる群から選択される。
別の実施形態では、ペプチドが、グルタミン酸残基とリジン残基の側鎖間に形成される少なくとも1個のラクタム環を有する、グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストが提供され、この場合のグルタミン酸残基とリジン残基とは、アミノ酸3個あけて離れている。いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドを持つラクタムのカルボキシ末端のアミノ酸は、天然のアミノ酸のカルボン酸に代えて、アミド基を有する。特に、いくつかの実施形態では、以下からなる群から選択される修飾されたグルカゴンペプチドを有する、グルカゴンおよびGLP−1コアゴニストが提供される。
NH2−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Glu−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Met−Xaa−Xaa−R(配列番号66)
NH2−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Glu−Arg−Arg−Ala−Lys−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Met−Xaa−Xaa−R(配列番号67)
NH2−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Ser−Arg−Arg−Ala−Lys−Asp−Phe−Val−Glu−Trp−Leu−Met−Xaa−Xaa−R(配列番号68)
NH2−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Ser−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Glu−Trp−Leu−Met−Lys−Xaa−R(配列番号69)
NH2−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Glu−Arg−Arg−Ala−Lys−Asp−Phe−Val−Glu−Trp−Leu−Met−Asn−Thr−R(配列番号16)
NH2−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Glu−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Glu−Trp−Leu−Met−Lys−Thr−R(配列番号17)
NH2−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Glu−Arg−Arg−Ala−Lys−Asp−Phe−Val−Glu−Trp−Leu−Met−Lys−Thr−R(配列番号18)
ここで、28番目のXaaはAspまたはAsnであり、29番目のXaaはThrまたはGlyであり、Rは、COOH、CONH2、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、配列番号26、配列番号27、配列番号28からなる群から選択され、ラクタム架橋が、配列番号66の場合は12番目のLysと16番目のGluとの間、配列番号67の場合は16番目のGluと20番目のLysとの間、配列番号68の場合は20番目のLysと24番目のGluとの間、配列番号69の場合は24番目のGluと28番目のLysとの間、配列番号16の場合は、12番目のLysと16番目のGluの間と、20番目のLysと24番目のGluとの間、配列番号17の場合は、12番目のLysと16番目のGluとの間と、24番目のGluと28番目のLysとの間、配列番号18の場合は、16番目のGluと20番目のLysとの間と、24番目のGluと28番目のLysとの間に形成される。いくつかの実施形態では、Rは、COOH、CONH2、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシンからなる群から選択され、28番目のアミノ酸はAsnであり、29番目のアミノ酸はスレオニンである。いくつかの実施形態では、RはCONH2であり、28番目のアミノ酸はAsnであり、29番目のアミノ酸はスレオニンである。もうひとつの実施形態では、Rは、配列番号26、配列番号29、配列番号65からなる群から選択され、29番目のアミノ酸はグリシンである。
別の実施形態では、グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18からなる群から選択され、ここで、ペプチドは、配列番号26、配列番号27、配列番号28からなる群から選択される1つのアミノ酸またはペプチドの追加のカルボキシ末端延長部分をさらに有する。いくつかの実施形態では、末端の延長部分は、配列番号26、配列番号29または配列番号65の配列を有し、グルカゴンペプチドは、配列番号55の配列を有する。いくつかの実施形態では、グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストは、配列番号33の配列を有し、ここで、16番目のアミノ酸はグルタミン酸であり、20番目のアミノ酸はリジンであり、28番目のアミノ酸はアスパラギンであり、配列番号26または配列番号29のアミノ酸配列は、配列番号33のカルボキシ末端に結合している。
配列番号20のカルボキシ末端に単一のアミノ酸が付加される実施形態では、このアミノ酸は通常、20種類の一般的なアミノ酸から選択され、いくつかの実施形態では、このアミノ酸は、天然のアミノ酸のカルボン酸に代えてアミド基を有する。いくつかの実施形態では、追加のアミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシンからなる群から選択される。グルカゴンアゴニスト類縁体がカルボキシ末端延長部分をさらに有する実施形態では、いくつかの実施形態における延長部分のカルボキシ末端のアミノ酸は、カルボン酸ではなくアミド基またはエステル基で終端する。
もうひとつの実施形態では、グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストは、配列NH2−His−Ser−Gln−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Glu−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Met−Asn−Thr−Xaa−CONH2(配列番号19)を有し、ここで、30番目のXaaは任意のアミノ酸を表す。いくつかの実施形態では、Xaaは、20種類の一般的なアミノ酸から選択され、いくつかの実施形態では、このアミノ酸が、グルタミン酸、アスパラギン酸またはグリシンである。配列番号19の17番目、21、24または30で、PEG鎖をアミノ酸の側鎖に共有結合することで、このペプチドの溶解性をさらに改善することが可能である。別の実施形態では、ペプチドは、配列番号26、配列番号27、配列番号28からなる群から選択されるペプチドの追加のカルボキシ末端延長部分を有する。いくつかの実施形態によれば、グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストは、配列番号30、配列番号31、配列番号32の配列を有する。
配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号64のグルカゴン配列内部の別の部位特異的修飾をほどこして、さまざまな度合いのGLP−1活性化作用を持つ一組のグルカゴンアゴニストを生成することが可能である。したがって、それぞれの受容体に対して事実上同じin vitro活性を持つペプチドを調製し、特徴を調べた。同様に、2つの受容体それぞれに対して10倍選択的に増強された活性を持つペプチドを同定し、特徴を調べた。上述したように、16番目のセリン残基をグルタミン酸に置換すると、グルカゴン受容体とGLP−1受容体の両方に対する天然のグルカゴンの活性が増強されるが、グルカゴン受容体に対する約10倍の選択性は維持される。また、3番目の天然のグルタミンをグルタミン酸(配列番号22)に置換すると、GLP−1受容体に対する選択性が約10倍のグルカゴン類縁体が生成される。
ペプチドの16番目、17番目、21番目、24番目に親水基を導入することあるいは、グルカゴン/GLP−1コアゴニストのペプチドのカルボキシ末端に、単一の修飾されたアミノ酸(すなわち、親水基を含むように修飾されたアミノ酸)を付加することで、天然のグルカゴンに対して高い生物学的活性を維持したまま、生理的なpHの水溶液中に対するグルカゴン/GLP−1コアゴニストのペプチドの溶解性を、さらに高めることが可能である。いくつかの実施形態によれば、親水基は、ポリエチレン(PEG)鎖を有する。特に、いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドは、このグルカゴンペプチドの16番目、17番目、21番目、24番目、29番目またはC末端のアミノ酸で、アミノ酸の側鎖にPEG鎖が共有結合している、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17または配列番号18の配列を有し、ただし、ペプチドが配列番号10、配列番号11、配列番号12または配列番号13を有する場合、ポリエチレングリコール鎖は、17番目、21番目または24番目でアミノ酸残基に共有結合し、ペプチドが配列番号14または配列番号15を有する場合、ポリエチレングリコール鎖は、16番目、17番目または21番目のアミノ酸残基に共有結合し、ペプチドが配列番号16、配列番号17または配列番号18を有する場合、ポリエチレングリコール鎖は、17番目または21番目のアミノ酸残基に共有結合している。
いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドは、このグルカゴンペプチドの17番目、21番目、24番目またはC末端のアミノ酸で、アミノ酸の側鎖にPEG鎖が共有結合し、ペプチドのカルボキシ末端のアミノ酸が、天然のアミノ酸のカルボン酸基に代えてアミド基を有する、配列番号11、配列番号12または配列番号13の配列を有する。いくつかの実施形態では、グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストのペプチドは、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19からなる群から選択される配列を有し、ここで、グルカゴンペプチドの配列番号12、配列番号13、配列番号19の17番目、21番目または24番目または配列番号14および配列番号15の16番目、17番目または21番目あるいは、配列番号16、配列番号17、配列番号18の17番目または21番目で、アミノ酸の側鎖にPEG鎖が共有結合している。もうひとつの実施形態では、グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストのペプチドは、17番目、21番目または24番目あるいは、グルカゴンペプチドのC末端のアミノ酸で、アミノ酸の側鎖にPEG鎖が共有結合している、配列番号11または配列番号19の配列を有する
いくつかの実施形態に従って、かつ、前述の段落に記載の但し書きされた条件を考慮して、16番目、17番目、21番目、24番目または29番目またはC末端のアミノ酸に1個または2個以上のアミノ酸置換を含むように、グルカゴンコアゴニストのペプチドを修飾し、ここで、天然のアミノ酸を、PEGなどをはじめとする親水性部分と架橋させるのに適した側鎖を有するアミノ酸に置換する。この天然のペプチドについては、天然のアミノ酸で置換してもよいし、合成(非天然)のアミノ酸で置換してもよい。合成または非天然のアミノ酸は、in vivoでは天然に生じないが、本明細書に記載のペプチド構造に取り込むことは可能である。あるいは、PEGなどをはじめとする親水性部分と架橋するのに適した側鎖を有するアミノ酸を、本明細書に開示のどのグルカゴン類縁体のカルボキシ末端にも付加することが可能である。いくつかの実施形態によれば、グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストのペプチドにおいて、16番目、17番目、21番目、24番目または29番目からなる群から選択される位置で、天然のアミノ酸を、リジン、システイン、オルニチン、ホモシステイン、アセチルフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸に置換する、アミノ酸置換がなされ、ここで、置換しているアミノ酸は、アミノ酸の側鎖に共有結合しているPEG鎖をさらに有する。いくつかの実施形態では、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19からなる群から選択されるグルカゴンペプチドを、グルカゴンペプチドの17番目または21番目でアミノ酸の側鎖に共有結合しているPEG鎖を有するように、さらに修飾する。いくつかの実施形態では、PEG化グルカゴン/GLP−1受容体コアゴニストは、配列番号26、配列番号27または配列番号29の配列をさらに有する。
もうひとつの実施形態では、グルカゴンペプチドは、配列番号55または配列番号56の配列を有し、配列番号55または配列番号56のC末端のアミノ酸に結合した配列番号26、配列番号29または配列番号65のC末端の延長部分をさらに含み、任意に、ペプチドの17番目、18番目、21番目、24番目または29番目あるいは、C末端のアミノ酸で、アミノ酸の側鎖に共有結合しているPEG鎖をさらに有する。もうひとつの実施形態では、グルカゴンペプチドは、このグルカゴンペプチドの21番目または24番目で、アミノ酸の側鎖にPEG鎖が共有結合している、配列番号55または配列番号56の配列を有し、このペプチドは、配列番号26または配列番号29のC末端の延長部分をさらに有する。
もうひとつの実施形態では、グルカゴンペプチドは、配列番号33または配列番号34のカルボキシ末端に、追加のアミノ酸が付加され、付加したアミノ酸の側鎖に、PEG鎖が共有結合している、配列番号55または配列番号33または配列番号34の配列を有する。別の実施形態では、配列番号33または配列番号34のPEG化グルカゴン類縁体は、C末端のアミノ酸に結合した配列番号26または配列番号29のC末端の延長部分をさらに有する。もうひとつの実施形態では、グルカゴンペプチドは、このグルカゴンペプチドの30番目のアミノ酸の側鎖にPEG鎖が共有結合している配列番号19の配列を有し、このペプチドは、配列番号19のC末端のアミノ酸に結合した配列番号26または配列番号29のC末端の延長部分をさらに有する。
ポリエチレングリコール鎖は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。いくつかの実施形態によれば、ポリエチレングリコール鎖は、平均分子量が、約500〜約10,000ダルトンの範囲から選択される。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコール鎖は、平均分子量が、約1,000〜約5,000ダルトンの範囲から選択される。別の実施形態では、ポリエチレングリコール鎖は、平均分子量が、約10,000〜約20,000ダルトンの範囲から選択される。いくつかの実施形態によれば、PEG化グルカゴンペプチドは、グルカゴンペプチドに共有結合している2つまたは3つ以上のポリエチレングリコール鎖を有し、この場合のグルカゴン鎖の合計の分子量は、約1,000〜約5,000ダルトンである。いくつかの実施形態では、PEG化グルカゴンアゴニストは、PEG鎖が21番目および24番目でアミノ酸残基に共有結合し、2つのPEG鎖の合算での分子量が約1,000〜約5,000ダルトンである、配列番号5からなるペプチドまたは配列番号5のグルカゴンアゴニスト類縁体を有する。
特定の例示としての実施形態では、グルカゴンペプチドは、最大10個のアミノ酸修飾を含む配列番号1のアミノ酸配列を有し、10番目に、アシル化されたまたはアルキル化されたアミノ酸を有する。いくつかの実施形態では、10番目のアミノ酸は、C4〜C30脂肪酸でアシル化またはアルキル化されている。特定の態様では、10番目のアミノ酸は、天然のアミノ酸に対して非天然のアシル基またはアルキル基を有する。
特定の実施形態では、10番目にアシル化またはアルキル化されたアミノ酸を有するグルカゴンペプチドは、安定化されたαヘリックスを有する。したがって、特定の態様では、グルカゴンペプチドは、本明細書に記載するようなアシル基またはアルキル基と、i番目のアミノ酸とi+4番目のアミノ酸の側鎖間の分子内架橋、たとえば、共有結合の分子内架橋(ラクタム架橋など)と、を有し、ここで、iは、12、16、20または24である。上記に代えてまたは上記に加えて、グルカゴンペプチドは、本明細書に記載するようなアシル基またはアルキル基と、グルカゴンペプチドの16番目、20番目、21番目および/または24番目のうちの1箇所、2箇所、3箇所または4箇所以上を、Aibなどのα,α−二置換アミノ酸に置換する。場合によっては、非天然のグルカゴンペプチドは、16番目のGluと20番目のLysとを有し、ここで、任意に、ラクタム架橋がGluとLysとを結合し、任意に、グルカゴンペプチドは、17番目のGln、18番目のAla、21番目のGlu、23番目のIle、24番目のAlaからなる群から選択される1個または2個以上の修飾をさらに有する。
また、グルカゴンペプチドが、10番目に、アシル化されたまたはアルキル化されたアミノ酸を有するいずれの実施形態でも、グルカゴンペプチドは、C末端のαカルボキシレートに代えて、C末端のアミドをさらに含むものであってもよい。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するようなアシル基またはアルキル基を有するグルカゴンペプチドは、1番目、2番目または1番目と2番目にアミノ酸置換をさらに有し、このアミノ酸置換(単数または複数)によって、DPP−IVプロテアーゼ耐性を達成する。たとえば、1番目のHisを、D−ヒスチジン、α,α−ジメチルイミダゾール酢酸(DMIA)、N−メチルヒスチジン、α−メチルヒスチジン、イミダゾール酢酸、デスアミノヒスチジン、ヒドロキシルヒスチジン、アセチルヒスチジン、ホモヒスチジンからなる群から選択されるアミノ酸で置換してもよい。上記に代えてまたは上記に加えて、2番目のSerを、D−セリン、アラニン、D−アラニン、バリン、グリシン、N−メチルセリン、N−メチルアラニン、アミノイソ酪酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換してもよい。いくつかの実施形態では、2番目のアミノ酸はD−セリンではない。
本明細書に記載するようにアシル化またはアルキル化されている10番目のアミノ酸を有するグルカゴンペプチドは、実質的に配列番号1と関連するアミノ酸配列を含むものであってもよい。たとえば、グルカゴンペプチドは、最大で10個のアミノ酸修飾(0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個の修飾など)を含む、配列番号1を有する。特定の実施形態では、アシル化されたまたはアルキル化されたグルカゴンペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1と25%を超えて同一である(配列番号1と比較して、30%、35%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%を超えて同一であるか、ほぼ100%同一であるなど)。特定の具体的な実施形態では、グルカゴンペプチドは、10番目のアミノ酸が、本明細書に記載するようにアシル化またはアルキル化された、配列番号55を有するものである。グルカゴンペプチドは、配列番号55、1個または2個のアミノ酸修飾を有する配列番号55、配列番号2〜4、9〜18、20、23〜25、33、40〜44、53、56、61、62、64、66〜514、534のいずれであってもよい。
これらの実施形態のアシル基またはアルキル基は、本明細書に記載のどのアシル基またはアルキル基であってもよい。たとえば、アシル基は、C4〜C30(C8〜C24など)の脂肪族アシル基であってもよく、アルキル基は、C4〜C30(C8〜C24など)のアルキル基であってもよい。
アシル基またはアルキル基が結合しているアミノ酸は、たとえば、式I(Lysなど)、式II、式IIIのいずれかのアミノ酸など、本明細書に記載のどのアミノ酸であってもよい。
いくつかの実施形態では、アシル基またはアルキル基は、10番目のアミノ酸に直接的に結合している。いくつかの実施形態では、アシル基またはアルキル基は、原子3〜10個の長さのスペーサー、たとえば、アミノ酸またはジペプチドなどのスペーサーを介して10番目のアミノ酸に結合している。アシル基またはアルキル基を結合するための好適なスペーサーについては、本明細書で説明する。
いくつかの実施形態によれば、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、本明細書に記載するような上記のクラス3のグルカゴン関連ペプチドのいずれかの類縁体であってもよく、この類縁体は、GIP受容体に対するアゴニスト活性を示す。グルカゴン受容体、GLP−1受容体、GIP受容体に対する類縁体の活性レベル、これらの受容体各々に対する活性、これらの受容体各々に対する選択性は、本明細書に記載したクラス2のグルカゴン関連ペプチドについての教示内容に従うものであってもよい。クラス2のグルカゴン関連ペプチドのセクションで「活性」というタイトルのついたサブセクションの教示内容を参照のこと。
本発明のいくつかの実施形態では、GIP受容体に対するアゴニスト活性を示すグルカゴンペプチドの類縁体が提供される。特定の実施形態における類縁体は、少なくとも1個のアミノ酸修飾(任意に、最大15のアミノ酸修飾)を含む配列番号1のアミノ酸配列と、類縁体の29番目のアミノ酸よりC末端側で1〜21個のアミノ酸からなる延長部分と、を有する。
特定の態様では、類縁体は、少なくとも1個のアミノ酸修飾を有し、最大15個のアミノ酸修飾(1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個のアミノ酸修飾、最大10個のアミノ酸修飾など)を有する。特定の実施形態では、類縁体は、最大で10個のアミノ酸修飾における少なくとも1個のアミノ酸修飾と、追加の保存的なアミノ酸修飾とを有する。保存的なアミノ酸修飾については、本明細書で説明する。
いくつかの態様では、アミノ酸修飾のうちの少なくとも1個が、類縁体のC末端領域に、安定化したαヘリックス構造を与える。安定化したαヘリックス構造を達成する修飾については、本明細書で説明する。たとえば、αヘリックス/分子内架橋の安定化というタイトルのセクションを参照のこと。いくつかの態様では、類縁体は、類縁体の2つのアミノ酸の側鎖間に分子内架橋(共有結合の分子内架橋、非共有結合の分子内架橋など)を有する。特定の態様では、分子内架橋は、i番目のアミノ酸の側鎖とi+4番目のアミノ酸の側鎖とを結合し、ここで、iは、12、13、16、17、20または24である。他の態様では、分子内架橋によって、j番目とj+3番目のアミノ酸の側鎖を結合(jは17である)するか、k番目とk+7番目のアミノ酸の側鎖を結合(kは12〜22の整数)する。特定の実施形態では、分子内架橋は、共有結合の分子内架橋、たとえば、ラクタム架橋である。特定の態様では、ラクタム架橋は、16番目と20番目のアミノ酸の側鎖を結合する。特定の態様では、16番目および20番目のアミノ酸の一方が正の電荷を持つアミノ酸であり、他方が負の電荷を持つアミノ酸である。たとえば、類縁体は、16番目のGluと20番目のLysの側鎖を結合するラクタム架橋を含むものであってもよい。他の態様では、負の電荷を持つアミノ酸と、正の電荷を持つアミノ酸が、塩結合を形成する。この場合、分子内架橋は、非共有結合の分子内架橋である。
特定の態様では、安定化されたαヘリックスを与えるアミノ酸修飾は、配列番号1のアミノ酸にα,α−二置換アミノ酸を入れる挿入または配列番号1のアミノ酸からα,α−二置換アミノ酸への置換である。αヘリックスを安定化するのに適したα,α−二置換アミノ酸については、本明細書にて説明し、たとえばAibがあげられる。いくつかの態様では、配列番号1の16番目、20番目、21番目、24番目のアミノ酸のうちの1つ、2つ、3つまたは4つ以上を、α,α−二置換アミノ酸、たとえばAibで置換する。特定の実施形態では、16番目のアミノ酸はAibである。
GIP受容体に対するアゴニスト活性を示す類縁体は、本明細書に記載したものなどの追加の修飾を含むものであってもよい。たとえば、アミノ酸修飾は、GLP−1受容体およびグルカゴン受容体の一方または両方に対する活性を高めるまたは低下させることがある。アミノ酸修飾は、ペプチドの安定性を高める、たとえば、DPP−IVプロテアーゼ分解に対する耐性を高め、15番目と16番目のアミノ酸の間の結合を安定化することがある。アミノ酸修飾は、ペプチドの溶解性を高めるおよび/またはGIP受容体、グルカゴン受容体、GLP−1受容体のいずれかに対する類縁体の作用時間を変化させることがある。これらのタイプの修飾のいずれかの組み合わせが、GIP受容体に対するアゴニスト活性を示す類縁体に存在してもよい。
したがって、いくつかの態様では、類縁体は、17番目のGln、18番目のAla、21番目のGlu、23番目のIle、24番目のAlaまたはCysまたはこれらの保存的なアミノ酸置換のうち1個または2個以上を伴う配列番号1のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、類縁体は、C末端のαカルボキシレートに代えて、C末端のアミドを有する。特定の実施形態では、類縁体は、1番目、2番目または1番目と2番目にアミノ酸置換を有し、この置換(単数または複数)が、DPP−IVプロテアーゼ耐性を達成する。好適なアミノ酸置換については、本明細書で説明する。たとえば、1番目のDMIAおよび/または2番目のd−SerまたはAib。いくつかの実施形態では、2番目のアミノ酸はD−セリンではない。
上記に加えてあるいは上記に代えて、類縁体は、以下のうちの1つまたはいずれかの組み合わせを含むものであってもよい。(a)2番目のSerにおける、Alaとの置換、(b)3番目のGlnにおける、Gluまたはグルタミン類縁体との置換、(c)7番目のThrにおける、Ileとの置換、(d)10番目のTyrにおける、Trpあるいは、天然のアミノ酸に対して非天然のアシル基またはアルキル基を有するアミノ酸との置換、(e)12番目のLysにおける、Ileとの置換、(f)15番目のAspにおける、Gluとの置換、(g)16番目のSerにおける、Gluとの置換、(h)20番目のGlnにおける、Ser、Thr、Ala、Aibとの置換、(i)24番目のGlnにおける、Ser、Thr、Ala、Aibとの置換、(j)27番目のMetにおける、LeuまたはNleとの置換、(k)29番目のAsnにおける、電荷を持つアミノ酸、任意にAspまたはGluとの置換、および(l)29番目のThrにおける、Glyまたは電荷を持つアミノ酸、任意にAspまたはGluとの置換。
GIP受容体に対するアゴニスト活性を示す類縁体に関して、類縁体は、1〜21個のアミノ酸(5〜19個、7〜15個、9〜12個のアミノ酸など)からなる延長部分を有する。類縁体の延長部分は、この延長部分が1〜21個のアミノ酸であるかぎり、どのアミノ酸配列を含むものであってもよい。いくつかの態様では、延長部分は、7〜15個のアミノ酸であり、他の態様では、延長部分は9〜12個のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、延長部分は、(i)配列番号26または674のアミノ酸配列、(ii)配列番号26または674のアミノ酸配列との配列同一性が高い(少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%など)アミノ酸配列または(iii)1個または2個以上の保存的なアミノ酸修飾を有する、(i)または(ii)のアミノ酸配列を有する。
いくつかの実施形態では、延長部分のアミノ酸のうちの少なくとも1個が、アシル化またはアルキル化されている。アシル基またはアルキル基を有するアミノ酸は、類縁体の延長部分のどの位置にあってもよい。特定の実施形態では、延長部分のアシル化またはアルキル化されたアミノ酸は、(配列番号1の番号で)類縁体の37番目、38番目、39番目、40番目、41番目または42番目に位置する。特定の実施形態では、アシル化またはアルキル化されたアミノ酸は、類縁体の40番目に位置する。
例示としての実施形態では、アシル基またはアルキル基は、天然のアミノ酸に対して非天然のアシル基またはアルキル基である。たとえば、アシル基またはアルキル基は、C4〜C30(C12〜C18など)の脂肪族アシル基またはC4〜C30(C12〜C18など)のアルキルであってもよい。アシル基またはアルキル基は、本明細書で説明するうちのいずれであってもよい。
いくつかの実施形態では、アシル基またはアルキル基は、たとえばアミノ酸の側鎖を介して、アミノ酸に直接結合している。他の実施形態では、アシル基またはアルキル基は、スペーサー(アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、親水性の二官能性スペーサー、疎水性の二官能性スペーサーなど)を介して、アミノ酸に結合している。特定の態様では、スペーサーは、原子3〜10個の長さである。いくつかの実施形態では、アミノ酸スペーサーは、γ−Gluではない。いくつかの実施形態では、ジペプチドスペーサーは、γ−Glu−γ−Gluではない。
また、例示としての実施形態では、アシル基またはアルキル基が結合しているアミノ酸は、たとえば、式I、式IIまたは式IIIのアミノ酸をはじめとして、本明細書で説明するうちのいずれであってもよい。アシル化またはアルキル化されたアミノ酸は、たとえばLysであってもよい。アシル基またはアルキル基を有する好適なアミノ酸ならびに、好適なアシル基およびアルキル基については、本明細書に記載してある。たとえば、アシル化およびアルキル化というタイトルのセクションの教示内容を参照のこと。
他の実施形態では、延長部分の1〜6個のアミノ酸(1〜2個、1〜3個、1〜4個、1〜5個のアミノ酸など)は、正の電荷を持つアミノ酸、たとえば、Lysなどの式IVのアミノ酸である。本明細書で使用する場合、「正の電荷を持つアミノ酸」という表現は、生理的なpHで側鎖の原子に正の電荷を持つ天然または非天然のアミノ酸を示す。特定の態様では、正の電荷を持つアミノ酸は、37番目、38番目、39番目、40番目、41番目、42番目、43番目のどこに位置していてもよい。具体的な実施形態では、正の電荷を持つアミノ酸は、40番目に位置する。
他の例では、延長部分は、本明細書に記載するようにアシル化またはアルキル化され、本明細書に記載するような1〜6個の正の電荷を持つアミノ酸を有する。
さらに他の実施形態では、GIP受容体に対するアゴニスト活性を示す類縁体は、(i)少なくとも1個のアミノ酸修飾を有する配列番号1、(ii)類縁体の29番目のアミノ酸よりC末端側における、1〜21個のアミノ酸(5〜18個、7〜15個、9〜12個のアミノ酸など)からなる延長部分、(iii)C末端の延長部分の外側(1番目から29番目の任意の位置など)に位置する、天然のアミノ酸に対して非天然のアシル基またはアルキル基を有するアミノ酸を有する。いくつかの実施形態では、類縁体は、10番目に、アシル化またはアルキル化されたアミノ酸を有する。特定の態様では、アシル基またはアルキル基は、C4〜C30の脂肪族アシル基またはC4〜C30のアルキル基である。いくつかの実施形態では、アシル基またはアルキル基は、スペーサー、たとえばアミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、親水性の二官能性スペーサー、疎水性の二官能性スペーサー)を介して結合している。特定の態様では、類縁体は、16番目のGluと20番目のLysの間の塩結合あるいは、16番目、20番目、21番目、24番目のうちの1箇所、2箇所、3箇所または4箇所以上におけるα,α−二置換アミノ酸など、αヘリックスを安定化するアミノ酸修飾を有する。具体的な態様では、類縁体は、DPP−IVプロテアーゼ耐性を与えるアミノ酸修飾、たとえば、1番目のDMIA、2番目のAibをさらに有する。別のアミノ酸修飾を有する類縁体も、本明細書で考えられている。
特定の実施形態では、GIP受容体の活性を有する類縁体は、GIP受容体に対する活性が、天然のGIPの少なくとも0.1%(少なくとも0.5%、1%、2%、5%、10%、15%または20%など)である。いくつかの実施形態では、類縁体は、GIP受容体に対する活性が、天然のGIPの20%を超える(50%を超える、75%を超える、100%を超える、200%を超える、300%を超える、500%を超えるなど)。いくつかの実施形態では、類縁体は、GLP−1受容体およびグルカゴン受容体の一方または両方に対して、かなりのアゴニスト活性を示す。いくつかの態様では、これらの受容体(GIP受容体およびGLP−1受容体および/またはグルカゴン受容体)に対する選択性が、1000倍以内である。たとえば、GIP受容体の活性を有する類縁体のGLP−1受容体に対する選択性は、GIP受容体および/またはグルカゴン受容体に対する選択性の500倍未満、100倍、50倍以内、25倍以内、15倍以内、10倍以内)であってもよい。
いくつかの実施形態によれば、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、以下の修飾を有する天然のグルカゴンのアミノ酸配列(配列番号1)を有する。2番目のAib、3番目のGlu、10番目のLys、16番目のGlu、17番目のGln、18番目のAla、20番目のLys、21番目のGlu、23番目のIle、24番目のAla;ここで、10番目のLysは、C14またはC16脂肪酸でアシル化され、C末端のカルボキシレートは、アミドに置き換えられている。具体的な実施形態では、このクラス3のグルカゴン関連ペプチドは、リンカー(L)を介してGRリガンド(Y)に結合している。
いくつかの実施形態によれば、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、GLP−1アゴニスト活性および/またはグルカゴンアゴニスト活性を保持する、任意に最大で1個、2個、3個、4個または5個のさらなる修飾を有する、配列番号70〜514、517〜534または554のいずれかのアミノ酸配列を有する、本質的にこのようなアミノ酸配列からなる、あるいは、このようなアミノ酸配列からなる。特定の実施形態では、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号562〜760のいずれかのアミノ酸を有する。いくつかの実施形態では、クラス3のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号1301〜1421のいずれかのアミノ酸配列を有する。
クラス4のグルカゴン関連ペプチド
特定の実施形態では、Qは、クラス4のグルカゴン関連ペプチドである(たとえば、国際(PCT)特許出願公開第WO2009/058662号(その全体を本明細書に援用する)を参照のこと)。
以下のセクションに示す生物学的配列(配列番号1301〜1371)はすべて、国際特許出願公開第WO2009/058662号における配列番号1〜71に対応する。
活性
いくつかの実施形態によれば、クラス4のグルカゴン関連ペプチドが提供される(以下、「クラス4のペプチド」と呼ぶ)。特定の態様では、グルカゴンアンタゴニスト活性を有するクラス4のペプチドが提供される。グルカゴンアンタゴニストは、グルカゴン活性化作用の抑制が望ましい環境であれば、どのような環境でも使用されるであろう。最も直接的で明らかな用途は、高血糖症の前臨床モデルでグルカゴンの拮抗作用が示されている糖尿病の治療に適用して、血糖を低下させる用途であろう。グルカゴンアンタゴニストをさらに修飾し、親化合物のアンタゴニスト活性を維持したまま、化合物の生物物理学的安定性および/または水溶性を改善してもよい。特定の態様では、クラス4のペプチドは、純粋なグルカゴンアンタゴニストとして望ましい。
「グルカゴンアンタゴニスト」という用語は、グルカゴンの活性を低下させるまたはグルカゴンの機能を阻害する化合物を示す。たとえば、グルカゴンアンタゴニストは、グルカゴン受容体でグルカゴンが達成する最大限の反応の少なくとも60%を阻害し(少なくとも70%阻害するなど)、好ましくは、少なくとも80%を阻害する。いくつかの実施形態では、グルカゴンアンタゴニストは、グルカゴン受容体でグルカゴンが達成する最大限の反応の少なくとも90%を阻害する。具体的な実施形態では、グルカゴンアンタゴニストは、グルカゴン受容体でグルカゴンが達成する最大限の反応の100%を阻害する。また、濃度約1μMのグルカゴンアンタゴニストは、グルカゴン受容体でグルカゴンが達成する最大限の約20%未満しかアゴニスト活性を示さない。いくつかの実施形態では、グルカゴンアンタゴニストは、グルカゴン受容体でグルカゴンが達成する最大限の約10%未満しかアゴニスト活性を示さない。具体的な実施形態では、グルカゴンアンタゴニストは、グルカゴン受容体でグルカゴンが達成する最大限の約5%未満しかアゴニスト活性を示さない。さらにもうひとつの具体的な実施形態では、グルカゴンアンタゴニストは、グルカゴン受容体でグルカゴンが達成する最大限の0%しかアゴニスト活性を示さない。
「純粋なグルカゴンアンタゴニスト」とは、確立されたin vitroモデルでのアッセイを用いてcAMPの産生を基準に判断できる、グルカゴン受容体またはGLP−1受容体の活性の検出される刺激を生成しないグルカゴンアンタゴニストである(たとえば、国際特許出願公開第WO2009/058662号を参照のこと)。たとえば、純粋なグルカゴンアンタゴニストは、グルカゴン受容体でグルカゴンが達成する最大限の約5%未満(約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0%など)しかアゴニスト活性を示さなず、GLP−1受容体でGLP−1が達成する最大限の約5%未満(約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0%など)しかアゴニスト活性を示さない。
したがって、いくつかの態様では、純粋なグルカゴンアンタゴニスト活性を示すクラス4のペプチドが提供される。いくつかの実施形態によれば、グルカゴンアンタゴニストは、グルカゴン受容体を0.8nMのグルカゴンとグルカゴンアンタゴニストに同時に接触させると、in vitroアッセイでのcAMPの産生を基準に判断できる、グルカゴン受容体に対してグルカゴン誘導cAMP産生を最大で少なくとも50%低下させる活性を示す。いくつかの実施形態では、グルカゴンアンタゴニストは、グルカゴン受容体に対してグルカゴン誘導cAMP産生を最大量で少なくとも80%低下させる。
クラス4のペプチドは、グルカゴンアンタゴニストについて上述したどのような用途にも適していると考えられる。したがって、本明細書に記載のクラス4のペプチドを、高血糖症の治療またはグルカゴンの血中濃度またはグルコースの血中濃度が高いことで生じる他の代謝疾患の治療に用いることが可能である。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示のクラス4のペプチドを用いて治療される患者は、飼いならされた動物であり、別の実施形態では、治療対象となる患者はヒトである。研究では、糖尿病患者におけるグルカゴン抑制の欠如は、ある程度、グリコーゲンの分解を加速させることで、食後高血糖症の一因となる。経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)にて血糖を分析したところ、ソマトスタチン誘導グルカゴンの抑制がなされる状態またはなされない状態で、グルカゴン濃度の高い治療対象者で、グルコースの有意な増加が認められた。したがって、本発明のクラス4のペプチドを高血糖症の治療に用いることが可能であり、糖尿病I型、真性糖尿病II型または妊娠性糖尿病(インスリン依存性または非インスリン依存性)をはじめとするさまざまなタイプの糖尿病を治療し、胃障害、網膜症、血管疾患などの糖尿病の合併症を低減するのに有用であると思われる。
いくつかの実施形態では、エキセンディン−4の末端の10個のアミノ酸(すなわち、配列番号1319(GPSSGAPPPS)の配列)を、クラス4のペプチドのカルボキシ末端に結合する。これらの融合タンパク質は、食欲を抑制し、体重減少/体重維持を誘導するための薬理学的活性を有するものと予想される。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示のクラス4のペプチドを、配列番号1342のクラス4のペプチドの24番目のアミノ酸に結合した配列番号1319(GPSSGAPPPS)のアミノ酸配列を含むようにさらに修飾し、対象個体に投与して体重減少を誘導する、あるいは、体重維持を助けることが可能である。特に、配列番号1302、配列番号1303、配列番号1304、配列番号1305、配列番号1306、配列番号1307、配列番号1308、配列番号1336、配列番号1339、配列番号1340、配列番号1341、配列番号1342、配列番号1343、配列番号1344からなる群から選択される配列を有し、かつ、クラス4のペプチドの24番目のアミノ酸に結合した配列番号1319(GPSSGAPPPS)のアミノ酸配列をさらに有するクラス4のペプチドは、食欲を抑制し、体重減少/体重維持を誘導するのに用いられる。いくつかの実施形態では、投与されるクラス4のペプチドは、配列番号1346または配列番号1347の配列を有する。
食欲を低減し、あるいは体重減少を促進するための上述したような方法は、体重を落とし、体重増加を防止し、あるいは、薬物誘発性肥満をはじめとするさまざまな原因の肥満を治療し、血管疾患(冠動脈疾患、脳卒中、末梢血管疾患、虚血再灌流障害など)、高血圧症、II型糖尿病の発症、高脂血症、筋骨格系疾患をはじめとする肥満に関連する合併症を軽減する上で、有用であると思われる。
本発明のクラス4のペプチドは、単独で投与してもよいし、他の抗糖尿病薬または抗肥満薬との組み合わせで投与してもよいものである。当分野で知られた抗糖尿病薬または研究中の抗糖尿病薬として、インスリン、トルブタミド(Orinase)、アセトヘキサミド(Dymelor)、トラザミド(Tolinase)、クロルプロパミド(Diabinese)、グリピジド(Glucotrol)、グリブリド(Diabeta、Micronase、Glynase)、グリメピリド(Amaryl)またはグリクラジド(Diamicron)などのスルホニル尿素;レパグリニド(Prandin)またはナテグリニド(Starlix)などのメグリチニド;メトホルミン(Glucophage)またはフェンホルミンなどのビグアナイド;ロシグリタゾン(Avandia)、ピオグリタゾン(Actos)またはトログリタゾン(Rezulin)または他のPPARγ阻害薬などのチアゾリジンジオン;ミグリトール(Glyset)、アカルボース(Precose/Glucobay)などの炭水化物の消化を阻害するαグルコシダーゼ阻害薬;エクセナチド(Byetta)またはプラムリンチド;ビルダグリプチンまたはシタグリプチンなどのジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP−4)阻害薬;SGLT(ナトリウム依存性グルコーストランスポーター1)阻害剤;またはFBPase(フルクトース1,6−ビスホスファターゼ)阻害薬があげられる。
当分野で知られた抗肥満薬または研究中の抗肥満薬は、フェネチルアミンタイプの刺激薬、フェンテルミン(任意にフェンフルラミンまたはデクスフェンフルラミン併用)、ジエチルプロピオン(Tenuate(登録商標))、フェンジメトラジン(Prelu-2(登録商標)、Bontril(登録商標))、ベンズフェタミン(Didrex(登録商標))、シブトラミン(Meridia(登録商標)、Reductil(登録商標));リモナバン(Acomplia(登録商標))、他のカンナビノイド受容体アンタゴニスト;オキシントモジュリン;塩酸フルオキセチン(Prozac);Qnexa(トピラマートとフェンテルミンとの合剤)、Excalia(ブプロピオンおよびゾニサミド)またはContrave(ブプロピオンおよびナルトレキソン);またはゼニカル(Orlistat)またはセチリスタット(ATL−962としても知られる)またはGT 389−255に類するリパーゼ阻害薬をはじめとする食欲抑制薬を含む。
また、本発明のクラス4のペプチドを、悪液質になった患者に投与することも可能である。悪液質は、意図的ではなく体重が減少しつづけ、衰弱し、体脂肪と筋肉が落ちることが特徴であり、がん患者の半数以上に悪液質が生じると推定される。この症候群はAIDSにも普通に見られ、細菌による疾患や寄生虫症、関節リウマチならびに、腸、肝臓、肺、心臓の慢性疾患に伴うこともある。これは通常、摂食障害に関連し、老化に伴う状態として、あるいは肉体的な外傷の結果として、顕在化することがある。悪液質は、生活の質を落とし、基礎疾患を悪化させる症状であり、主な死因のひとつでもある。本出願人らは、悪液質を治療するために、本明細書に開示のクラス4のペプチドを患者に投与可能であると予想している。
当業者に知られた標準的な薬学的に許容されるキャリアおよび投与経路を用いて、本明細書に開示のクラス4のペプチドを含む薬学的組成物を、調製し、患者に投与することが可能である。したがって、本開示は、本明細書に開示のクラス4のペプチド1つまたは2つ以上を、薬学的に許容されるキャリアとの組み合わせで含む薬学的組成物も包含する。この薬学的組成物は、クラス4のペプチドを、唯一の薬学的に活性な成分として含むものであってもよいし、クラス4のペプチドを、1種または2種以上の別の活性剤と組み合わせることも可能である。いくつかの実施形態によれば、本発明のクラス4のペプチドと、GLP−1受容体(GLP−1、GLP−1類縁体、エキセンディン−4類縁体またはこれらの誘導体など)を活性化する化合物とを含む、組成物が提供される。いくつかの実施形態によれば、本発明のクラス4のペプチドと、インスリンまたはインスリン類縁体とを含む、組成物が提供される。あるいは、配列番号1342の配列を有し、かつ、配列番号1342の24番目のアミノ酸に結合した配列番号1319(GPSSGAPPPS)のアミノ酸配列と抗肥満ペプチドとをさらに有する、体重減少を誘導または体重増加を防止するために提供される組成物を提供することが可能である。好適な抗肥満ペプチドとして、米国特許第5,691,309号、同第6,436,435号または米国特許出願第20050176643号に開示されたものがあげられ、GLP−1、GIP(胃抑制ポリペプチド)、MP1、PYY、MC−4、レプチンを含むがこれらに限定されるものではない。
クラス4のペプチドの構造
いくつかの実施形態では、(グルカゴン、配列番号1301)の9番目の普通に生じるアスパラギン酸が、グルタミン酸を基にした誘導体またはシステイン酸を基にした誘導体で置換された、クラス4のグルカゴン関連ペプチドが提供される。特に、1番目のアミノ酸の欠失(デスヒスチジン)と、9番目のアスパラギン酸からグルタミン酸への置換によって、いくつかの態様では、クラス4のペプチドが生成される。グルカゴンの9番目のアミノ酸が置換された、スルホン酸置換基を有するクラス4のグルカゴン関連ペプチドは、カルボン酸を基にしたアミノ酸と似たような形で働くが、溶解性などの物性の点でいくつか重要な差異がある。ホモシステイン酸(hCysSO3)を、従来のデスヒスチジンにおける9番目の等配電子でグルタミン酸と置換すると、9番目のアミノ酸がグルタミン酸であるクラス4のペプチドは、部分アンタゴニストと弱いアゴニストとを保持する。
いくつかの実施形態では、最初の2〜5個のアミノ酸が除去され、(配列番号1301の番号で)9番目が、hCys(SO3)、ホモグルタミン酸、β−ホモグルタミン酸あるいは、以下の構造を有するシステインのアルキルカルボキシレート誘導体で置換された、クラス4のペプチドが提供される
式中、X5は、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニルまたはC2〜C4アルキニルであり、極めて特異的かつ活性が高く、アゴニスト特性を低下させないホルモンアンタゴニストとして作用する化合物を提供する。
いくつかの実施形態によれば、配列番号1301の野生型配列に比して、2〜5個のアミノ酸残基がN末端から欠失し、天然のタンパク質の9番目のアスパラギン酸残基が、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、β−ホモグルタミン酸、システインのスルホン酸誘導体あるいは、以下の構造を有するシステインのアルキルカルボキシレート誘導体で置換されたグルカゴンペプチドを有する、クラス4のペプチドが提供される。
式中、X5は、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニルまたはC2〜C4アルキニルである。
具体的な一実施形態では、2〜5個のアミノ酸残基がN末端から欠失し、天然のグルカゴンの9番目のAspが置換されたクラス4のペプチドを、最大でアミノ酸修飾3個までさらに修飾する。たとえば、クラス4のペプチドは、1個、2個または3個の保存的なアミノ酸修飾を有するものであってもよい。上記に代えてまたは上記に加えて、クラス4のペプチドは、以下からなる群から選択される1個または2個以上のアミノ酸修飾を有するものであってもよい。
A.(配列番号1301のアミノ酸番号で)10番目、20番目、24番目の1個または2個のアミノ酸またはクラス4のペプチドのN末端またはC末端のアミノ酸を、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合またはアルキルアミン結合を介してアシル基またはアルキル基に共有結合しているアミノ酸で置換、
B.(配列番号1301のアミノ酸番号で)16番目、17番目、20番目、21番目、24番目の1個または2個のアミノ酸またはクラス4のペプチドのN末端またはC末端のアミノ酸を、Cys、Lys、オルニチン、ホモシステイン、アセチルフェニルアラニン(Ac−Phe)からなる群から選択されるアミノ酸(この群のアミノ酸は親水性部分に共有結合している)と置換、
C.親水性部分に共有結合しているアミノ酸を、クラス4のペプチドのN末端またはC末端に付加、
D.(配列番号1301の番号で)15番目のAspを、システイン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸と置換、
E.(配列番号1301の番号で)16番目のSerを、システイン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸と置換、
F.配列番号1301のアミノ酸番号で16番目、20番目、21番目、24番目のうちの1箇所または2箇所以上における、Aibとの置換、
G.配列番号1301の番号で29番目のアミノ酸または28番目と29番目のアミノ酸の欠失、
H.(配列番号1301のアミノ酸番号で)28番目のAsnと29番目のThrの一方または両方を、電荷を持つアミノ酸で置換および/または配列番号1301のC末端に1〜2個の電荷を持つアミノ酸を付加、
I.(配列番号1301の番号で)27番目のMetを、Leuまたはノルロイシンと置換、
J.配列番号19〜21および53のいずれかのアミノ酸配列を有するペプチドを、配列番号1301のC末端に付加(ここで、(配列番号1301の番号で)29番目はThrまたはGlyである)、
K.C末端のカルボキシレートを、アミドまたはエステルと置換。
具体的な実施形態では、クラス4のペプチドは、上述したようなA、BまたはCのアミノ酸修飾またはこれらの組み合わせを有する。さらにもうひとつの具体的な実施形態では、クラス4のペプチドは、A、Bおよび/またはCのアミノ酸修飾(単数または複数)に加えて、上述したようなD〜Kのいずれかのアミノ酸修飾またはこれらの組み合わせをさらに有する。
いくつかの実施形態では、クラス4のペプチドは、N末端から最初の5個のアミノ酸を除去し、残りのN末端のアミノ基をヒドロキシ基に置換(「PLA6類縁体」)して生成される、配列番号1339のペプチドであるグルカゴンペプチドを有する。本出願人らは、最初の5個のアミノ酸が欠失し、(天然のグルカゴンでみた)9番目のグルタミン酸が置換されたクラス4のペプチド類縁体のフェニルアラニンをフェニル乳酸で置換すると、これらのクラス4のペプチド類縁体の活性がさらに増強されることを見出した。
いくつかの実施形態では、配列番号1339のクラス4のペプチドのペプチドを、4番目(天然のグルカゴンであれば9番目)のアスパラギン酸残基を、以下に示す一般構造を有するアミノ酸と置換することによって、さらに修飾する。
式中、X6は、C1〜C3アルキル、C2〜C3アルケンまたはC2〜C3アルキニルであり、いくつかの実施形態では、X6はC1〜C3アルキルであり、もうひとつの実施形態では、X6はC2アルキルである。いくつかの実施形態では、クラス4のペプチドは、最初の5個のアミノ酸がN末端から除去され、4番目(天然のグルカゴンであれば9番目)のアスパラギン酸残基がシステイン酸またはホモシステイン酸と置換された、グルカゴンペプチドを有する。いくつかの実施形態では、クラス4のペプチドは、配列番号1339、配列番号1307、配列番号1308からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するグルカゴンペプチドを有する。いくつかの実施形態では、クラス4のペプチドは、4番目のアミノ酸がホモシステイン酸である配列番号1308からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
もうひとつの実施形態では、配列番号1339のクラス4のペプチドを、4番目(天然のグルカゴンであれば9番目)のアスパラギン酸残基を、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、β−ホモグルタミン酸または以下に示す構造を有するシステインのアルキルカルボキシレート誘導体で置換することによって、さらに修飾する。
式中、X5は、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニルまたはC2〜C4アルキニルである。具体的な実施形態では、X5は、C1またはC2アルキルである。
しかしながら、本出願人らは、純粋な拮抗作用を示す類縁体を生成するのに、デス1〜5グルカゴン類縁体(すなわち、最初の5個のアミノ酸が欠失したグルカゴン類縁体)において、N末端のフェニルアラニンをPLAで置換すると、4番目(天然のグルカゴンであれば9番目)の天然のアスパラギン酸残基をさらに置換する必要はないことを見出した。グルカゴン(2−29)類縁体の親和性および活性の高いアンタゴニストを生成するには、4番目の天然のアスパラギン酸残基を置換しなければならないという従来技術の教示内容を考慮すると、この結果は驚くべきものである。PLA置換を用いることで、Asp9類縁体の相対活性が、Glu9類縁体およびhCys(SO3H)9類縁体に匹敵する点まで改善される。
フェニルアラニン残基を、3,4−2F−フェニルアラニン(3,4−2F−Phe)、2−ナフチルアラニン(2−Nal)、N−アシル−フェニルアラニン(Ac−Phe)、α−メチルヒドロケイ皮酸(MCA)およびベンジルマロン酸(BMA)をはじめとする他のフェニルアラニン類縁体と置換しても、PLA置換ほど高い活性では作用しなかった。
(天然のグルカゴンのアミノ酸番号で)4番目および5番目を含む6番目以外の部位でPLAを置換すると、PLA6類縁体が、わずかに伸長させたN末端を有するグルカゴン類縁体よりも明らかに活性の高いアンタゴニストであることがわかる。また、本発明jは、N末端のアミノ基がアシル化およびアルキル化された「O末端」ペプチドで置換された類縁体も含む。
さらに、PLA6置換は、アンタゴニストの活性を高めるだけでなく、PEG化で重要な役割も果たす。PLA6類縁体は、グルカゴン活性化作用を回復させることなく選択的にPEG化可能なものである。PLA置換がない場合、驚くべきことに、類縁体のPEG化によってグルカゴン活性化作用が誘導される。このグルカゴン活性化作用は、PEG化されたPLA6類縁体には見られない。3番目、6番目、19番目(天然のグルカゴンの8番目、11番目、19番目)ならびにN末端のアミノ酸残基をはじめとするいくつかのPEG化部位を調査した。いくつかの実施形態では、PEG化は、19番目(天然のグルカゴンの24番目)でなされる。この部位が最も活性が高く、かつ選択性の高いグルカゴン拮抗作用を示すからである。
いくつかの実施形態では、クラス4のペプチドは、A−B−Cの一般構造を有し、ここで、Aは以下の(i)〜(iii)からなる群から選択され:
(i)フェニル乳酸(PLA)、
(ii)PLAのオキシ誘導体、
(iii)ペプチドの2個の連続したアミノ酸がエステル結合またはエーテル結合を介して結合している、2〜6個のアミノ酸からなるペプチド、
Bは、任意に、以下の(iv)〜(ix)からなる群から選択される1個または2個以上のアミノ酸修飾を有する、配列番号1301のi番目〜26番目(iは、3、4、5、6または7である)のアミノ酸を表し:
(iv)(配列番号1301のアミノ酸番号で)9番目のAspが、Glu、Cysのスルホン酸誘導体、ホモグルタミン酸、β−ホモグルタミン酸、または以下に示す構造を有するシステインのアルキルカルボキシレート誘導体で置換される:
(式中、X5は、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニルまたはC2〜C4アルキニルである)、
(v)(配列番号1301のアミノ酸番号で)10番目、20番目、24番目の1個または2個のアミノ酸を、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合またはアルキルアミン結合を介してアシル基またはアルキル基に共有結合しているアミノ酸で置換、
(vi)(配列番号1301のアミノ酸番号で)16番目、17番目、20番目、21番目、24番目の1個または2個のアミノ酸を、Cys、Lys、オルニチン、ホモシステイン、アセチルフェニルアラニン(Ac−Phe)からなる群(この群のアミノ酸は、親水性部分に共有結合している)から選択されるアミノ酸で置換、
(vii)(配列番号1301の番号で)15番目のAspが、システイン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸で置換される、
(viii)(配列番号1301の番号で)16番目のSerが、システイン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸で置換される、
(ix)配列番号1301のアミノ酸番号で16番目、20番目、21番目、24番目のうちの1箇所または2箇所以上において、Aibで置換、
Cは、以下の(x)〜(xiv)からなる群から選択される:
(x)X
(xi)X−Y
(xii)X−Y−Z
(xiii)X−Y−Z−R10
ここで、Xは、Met、LeuまたはNleであり、Yは、Asnまたは電荷を持つアミノ酸であり、Zは、Thr、Gly、Cys、Lys、オルニチン(Orn)、ホモシステイン、アセチルフェニルアラニン(Ac−Phe)または電荷を持つアミノ酸であり、R10は、配列番号1319〜1321および1353からなる群から選択され、
(xiv)C末端のカルボキシレートがアミドで置換されている、(x)から(xiii)のいずれか。
具体的な態様において、クラス4のペプチドは、PLAのオキシ誘導体を有する。本明細書で使用する場合、「PLAのオキシ誘導体」とは、ヒドロキシ基がO−R11で置換された、PLAの修飾された構造を有する化合物を示し、式中、R11は、化学部分である。この点について、PLAのオキシ誘導体は、たとえば、PLAのエステルまたはPLAのエーテルであってもよい。
PLAのオキシ誘導体を生成する方法は、当分野で知られている。たとえば、オキシ誘導体がPLAのエステルである場合、PLAのヒドロキシルと求核物質を持つカルボニルとの反応によって、エステルを形成してもよい。求核物質は、アミンまたはヒドロキシルを含むがこれらに限定されるものではない、好適な求核物質であればよい。したがって、PLAのエステルには、式IVの構造を有するものを用いることが可能である。
式中、R7は、PLAのヒドロキシルと求核物質を持つカルボニルとの反応時に形成されるエステルである。
求核物質を持つカルボニル(PLAのヒドロキシルと反応してエステルを形成する)は、たとえば、カルボン酸、カルボン酸誘導体またはカルボン酸の活性化エステルであってもよい。カルボン酸誘導体は、塩化アシル、酸無水物、アミド、エステルまたはニトリルであってもよいが、これらに限定されるものではない。カルボン酸の活性化エステルは、たとえば、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、トシレート(Tos)、カルボジイミドまたはヘキサフルオロホスフェートであってもよい。いくつかの実施形態では、カルボジイミドは、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)または1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DICD)である。いくつかの実施形態では、ヘキサフルオロホスフェートは、ヘキサフルオロホスフェートベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、o−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウム−ヘキサフルオロ−ホスフェート(HBTU)からなる群から選択される。
ヒドロキシ基(PLAのヒドロキシルなど)との反応からエーテルを生成する方法も、当分野で知られている。たとえば、PLAのヒドロキシ基を、ハロゲン化アルキルまたはトシル化アルキルアルコールと反応させ、エーテル結合を形成する。
通常、R11の化学部分は、クラス4のペプチドの活性を低下させないものである。いくつかの実施形態では、化学部分は、クラス4のペプチドの活性、安定性および/または溶解性を高めるものである。
具体的な実施形態では、酸素含有結合を介して(エステル結合またはエーテル結合を介するなど)PLAに結合する化学部分は、ポリマー(ポリアルキレングリコールなど)、炭水化物、アミノ酸、ペプチドまたは脂質、たとえば、脂肪酸またはステロイドである。
具体的な実施形態では、化学部分はアミノ酸であり、これは任意に、式IVがデプシペプチドになるようなペプチドの一部であってもよい。この点について、クラス4のペプチドが、PLA残基より手前に1個または2個以上(1個、2個、3個、4個、5個、6個またはそれより多いなど)のアミノ酸のN末端を有するように、PLAがクラス4のペプチドのN末端のアミノ酸残基以外の位置にあってもよい。たとえば、クラス4のペプチドは、n番目にPLAを有するものであってもよく、ここで、nは、クラス4のペプチドの2、3、4、5または6である。
PLA残基よりN末端側のアミノ酸は、合成であっても天然であってもよい。具体的な実施形態では、N末端PLAであるアミノ酸は、天然のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、PLAよりN末端側のアミノ酸は、天然のグルカゴンのN末端のアミノ酸である。たとえば、クラス4のペプチドは、N末端に、配列番号1354〜1358のいずれかのアミノ酸配列を有するものであってもよく、ここで、PLAは、エステル結合を介してスレオニンに結合している。
配列番号1354 His−Ser−Gln−Gly−Thr−PLA
配列番号1355 Ser−Gln−Gly−Thr−PLA
配列番号1356 Gln−Gly−Thr−PLA
配列番号1357 Gly−Thr−PLA
配列番号1358 Thr−PLA
別の実施形態では、N末端のアミノ酸のうちの1個または2個以上を、天然のグルカゴンのアミノ酸以外のアミノ酸で置換してもよい。たとえば、クラス4のペプチドが、5番目または6番目のアミノ酸としてPLAを有する場合、1番目および/または2番目のアミノ酸は、ジペプチジルペプチダーゼIVによる切断に対する感受性を低減するアミノ酸であってもよい。特に、いくつかの実施形態では、クラス4のペプチドの1番目は、D−ヒスチジン、α,α−ジメチルイミダゾール酢酸(DMIA)、N−メチルヒスチジン、α−メチルヒスチジン、イミダゾール酢酸、デスアミノヒスチジン、ヒドロキシルヒスチジン、アセチルヒスチジン、ホモヒスチジンからなる群から選択されるアミノ酸である。特に、いくつかの実施形態では、アンタゴニストのペプチドの2番目は、D−セリン、D−アラニン、バリン、グリシン、N−メチルセリン、N−メチルアラニン、アミノイソ酪酸(Aib)からなる群から選択されるアミノ酸である。また、たとえば、クラス4のペプチドが、4番目、5番目または6番目のアミノ酸としてPLAを有する場合、クラス4のペプチドの3番目のアミノ酸は、天然のグルカゴンでは天然のグルタミン残基であるのに対し、グルタミン酸であってもよい。本発明の例示としての実施形態では、クラス4のペプチドは、N末端に、配列番号1359〜1361のいずれかのアミノ酸配列を有する。
式IVの化合物を有するクラス4のペプチドに関して、ポリマーは、PLAのヒドロキシ基と反応できるものであれば、どのようなポリマーであってもよい。ポリマーは、自然にまたは普通に求核物質を持つカルボニルを有するものであってもよい。あるいは、ポリマーは、カルボニルを持つカルボニルを含むように誘導体化されたものであってもよい。ポリマーは、以下に示すいずれかの物質の誘導体化されたポリマーであってもよい:ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレンおよびこれらの誘導体(ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレートなど)、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのポリマー(ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)など)、ポリビニルポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルピロリドンなど)、ポリグリコライド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびこれらのコポリマー、セルロース(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、セルロース硫酸ナトリウム塩など)、ポリプロピレン、ポリエチレン(ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)など)、ポリスチレン。
ポリマーは、合成生分解性ポリマー(乳酸およびグリコール酸のポリマー、ポリ酸無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−コカプロラクトン)など)、天然の生分解性ポリマー(たとえば、アルギン酸および他の多糖類(デキストランおよびセルロースを含む)、コラーゲン、これらの化学的誘導体(置換、化学基の付加、たとえば、アルキル、アルキレン、ヒドロキシル化、酸化ならびに、当業者によって常法でなされる他の修飾)、アルブミンおよび他の親水性タンパク質(ゼインおよび他のプロラミンおよび疎水性タンパク質など))ならびにこれらのコポリマーまたは混合物をはじめとする、生分解性ポリマーであってもよい。通常、これらの物質は、in vivoでの酵素による加水分解または水への曝露によって、あるいは表面が浸食されたり、内部まで一挙に浸食されたりすることで、分解される。
ポリマーは、H. S. Sawhney, C. P. Pathak and J. A. Hubbell in Macromolecules, 1993, 26, 581-587(その教示内容を本明細書に援用する)に記載された生浸食性ハイドロゲル、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ酸無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)などの生付着性ポリマーであってもよい。
いくつかの実施形態では、ポリマーは、水溶性ポリマーである。好適な水溶性ポリマーは当分野で知られており、たとえば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC;Klucel)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC;Methocel)、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルブチルセルロース、ヒドロキシプロピルペンチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース(Ethocel)、ヒドロキシエチルセルロース、さまざまなアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロース、さまざまなセルロースエーテル、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルシウムカルボキシメチルセルロース、酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、メタクリル酸コポリマー、ポリメタクリル酸、ポリメチルメタクリレート、無水マレイン酸/メチルビニルエーテルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムおよびポリアクリル酸カルシウム、ポリアクリル酸、酸性カルボキシポリマー、カルボキシポリメチレン、カルボキシビニルポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリメチルビニルエーテルコ無水マレイン酸、カルボキシメチルアミド、カリウムメタクリレートジビニルベンゼンコポリマー、ポリオキシエチレングリコール、ポリエチレンオキシドならびに、これらの誘導体、塩および組み合わせがあげられる。
具体的な実施形態では、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)などをはじめとするポリアルキレングリコールである。
炭水化物は、α脱離基を持つカルボニルを有するまたは有するようにできるものであれば、どのような炭水化物であってもよい。炭水化物は、たとえば、α脱離基を持つカルボニルを有するように誘導体化されたものであってもよい。この点について、炭水化物は、単糖(グルコース、ガラクトース、フルクトースなど)、二糖(スクロース、ラクトース、マルトースなど)、オリゴ糖(ラフィノース、スタキオースなど)、多糖(スターチ、アミラーゼ、アミロペクチン、セルロース、キチン、カロース、ラミナリン、キシラン、マンナン、フコイダン、ガラクトマンナンの誘導体化された形態であってもよい。
式IVの化合物を有するクラス4のペプチドに関して、脂質は、α脱離基を持つカルボニルを有するどのような脂質であってもよい。脂質は、たとえば、カルボニルを有するように誘導体化されたものであってもよい。この点について、脂質は、脂肪酸(C4〜C30脂肪酸、エイコサノイド、プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサン、N−アシルエタノールアミンなど)、グリセロ脂質(一置換グリセロール、二置換グリセロール、三置換グリセロールなど)、グリセロリン脂質(ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンなど)、スフィンゴ脂質(スフィンゴシン、セラミドなど)、ステロール脂質(ステロイド、コレステロールなど)、フェノール脂質、糖脂質またはポリケタイドの誘導体であってもよい。いくつかの実施形態では、脂質は、オイル、ワックス、コレステロール、ステロール、脂溶性ビタミン、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質である。
いくつかの実施形態では、R7は、分子量が約100kDaまたはそれ未満、たとえば、約90kDaまたはそれ未満、約80kDaまたはそれ未満、約70kDaまたはそれ未満、約60kDaまたはそれ未満、約50kDaまたはそれ未満、約40kDaまたはそれ未満である。したがって、R7は、分子量が約35kDaまたはそれ未満、約30kDaまたはそれ未満、約25kDaまたはそれ未満、約20kDaまたはそれ未満、約15kDaまたはそれ未満、約10kDaまたはそれ未満、約5kDaまたはそれ未満あるいは、約1kDaであってもよい。
別の実施形態では、クラス4のペプチドは、Aとして2〜6個のアミノ酸からなるペプチドを有し、この場合、ペプチドの2個の連続したアミノ酸は、エステル結合またはエーテル結合を介して結合している。エステル結合またはエーテル結合は、たとえば、2番目と3番目のアミノ酸、3番目と4番目のアミノ酸、4番目と5番目のアミノ酸または5番目と6番目のアミノ酸の間であってもよい。任意に、ポリマー(親水性ポリマーなど)への結合を含むもうひとつの化学部分への共有結合、アルキル化またはアシル化によって、このペプチドをさらに修飾してもよい。
一般構造A−B−Cを有するクラス4のペプチドに関して、Bは、任意に1個または2個以上のアミノ酸修飾を有する、天然のグルカゴンのアミノ酸、たとえば、配列番号1301のi番目〜26番目(iは、3、4、5、6または7である)を表す。具体的な実施形態では、Bは、任意にさらに修飾されていてもよい、配列番号1301の7番目〜26番目のアミノ酸を表す。
いくつかの実施形態では、Bは、最大で3個のアミノ酸修飾によって修飾される。たとえば、配列番号1301の天然のアミノ酸配列を表すBは、1個または2個以上の保存的なアミノ酸修飾によって修飾される。
もうひとつの実施形態では、Bは、本明細書に記載するような(iv)〜(ix)からなる群から選択される1個または2個以上のアミノ酸修飾を有する。具体的な実施形態では、Bは、アミノ酸修飾(v)および(vi)の一方または両方を有する。別の具体的な実施形態では、Bは、(v)および(vi)に加えて、(iv)、(vii)、(viii)、(ix)からなる群から選択されるアミノ酸修飾のうちの1つまたは組み合わせを有する。
もうひとつの具体的な実施形態では、クラス4のペプチドは、C末端に、1個または2個以上の電荷を持つアミノ酸を有する。たとえば、Yおよび/またはZが、電荷を持つアミノ酸、たとえば、Lys、Arg、His、Asp、Gluであってもよい。さらにもうひとつの実施形態では、クラス4のペプチドは、1〜2個の電荷を持つアミノ酸(Lys、Arg、His、Asp、Gluなど)を、ZよりC末端側に有する。具体的な態様において、Zに1〜2個の電荷を持つアミノ酸が続く場合、R10は含まれない。
いくつかの実施形態におけるクラス4のペプチドは、本明細書に記載するようなクラス4のペプチドのアミノ酸残基に共有結合している親水性部分を有する。たとえば、クラス4のペプチドは、配列番号1301の番号で1番目、16番目、20番目、21番目または24番目でアミノ酸に共有結合している親水性部分を有するものであってもよい。もうひとつの実施形態では、親水性部分は、クラス4のペプチドのC末端のアミノ酸に結合し、これは、場合によってはZよりアミノ酸1個または11個、C末端側である。さらにもうひとつの実施形態では、親水性部分はPLAに結合し、AがPLAである場合、PLA−PheまたはPLA−Thr−Pheに結合し、この場合のPLAは親水性部分を有するように修飾されている。もうひとつの実施形態では、親水性部分を有するアミノ酸を、クラス4のペプチドのN末端またはC末端に付加する。もうひとつの実施形態では、クラス4のペプチドは、本明細書に記載するようなアシル基またはアルキル基を有する。たとえば、アシル化またはアルキル化は、配列番号1301の番号で10番目、20番目または24番目のアミノ酸の側鎖から離れて生じるものであってもよい。別の実施形態では、アシル化またはアルキル化は、場合によってはZよりアミノ酸1個または11個、C末端側の、クラス4のペプチドのC末端のアミノ酸の側鎖から離れて生じる。さらにもうひとつの実施形態では、AがPLA、PLA−PheまたはPLA−Thr−Pheである場合、PLAは、アシル基またはアルキル基を含むように修飾される。
例示としての実施形態
クラス4のペプチドは、ペプチドの少なくとも2個の連続したアミノ酸がエステル結合またはエーテル結合を介して結合されているかぎり、合成または天然のどのようなアミノ酸を有するものであってもよい。具体的な実施形態では、ペプチドは、天然のグルカゴンのアミノ酸を有する。たとえば、ペプチドは、天然のグルカゴン(配列番号1301)のj番目〜6番目(jは、1、2、3、4または5である)を含むものであってもよい。あるいは、ペプチドは、1個または2個以上のアミノ酸が修飾された配列番号1301のN末端に基づくアミノ酸配列を含むものであってもよい。1番目および/または2番目のアミノ酸は、ジペプチジルペプチダーゼIVによる切断に対する感受性を低減するアミノ酸であってもよい。たとえば、ペプチドは、クラス4のペプチドの1番目に、D−ヒスチジン、α,α−ジメチルイミダゾール酢酸(DMIA)、N−メチルヒスチジン、α−メチルヒスチジン、イミダゾール酢酸、デスアミノヒスチジン、ヒドロキシルヒスチジン、アセチルヒスチジン、ホモヒスチジンからなる群から選択されるアミノ酸を含むものであってもよい。特に、いくつかの実施形態では、アンタゴニストのペプチドの2番目は、D−セリン、D−アラニン、バリン、グリシン、N−メチルセリン、N−メチルアラニン、アミノイソ酪酸(Aib)からなる群から選択されるアミノ酸である。また、たとえば、クラス4のペプチドの3番目のアミノ酸は、天然のグルカゴンでは天然のグルタミン残基であるのに対し、グルタミン酸であってもよい。したがって、クラス4のペプチドは、以下に示すアミノ酸配列を有するものであってもよい。
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Thr−Gly−Phe(配列番号1368)
Xaa2−Xaa3−Thr−Gly−Phe(配列番号1369)または
Xaa3−Thr−Gly−Phe(配列番号1370)
ここで、Xaa1は、His、D−ヒスチジン、α,α−ジメチルイミダゾール酢酸(DMIA)、N−メチルヒスチジン、α−メチルヒスチジン、イミダゾール酢酸、デスアミノヒスチジン、ヒドロキシルヒスチジン、アセチルヒスチジン、ホモヒスチジンからなる群から選択され、Xaa2は、Ser、D−セリン、D−アラニン、バリン、グリシン、N−メチルセリン、N−メチルアラニン、アミノイソ酪酸(Aib)からなる群から選択され、Xaa3は、GlnまたはGluである。
また、本発明は、クラス4のペプチドのC末端のアミノ酸が、天然のアミノ酸に存在するカルボン酸基を置換するアミド基を有する、実施形態も包含する。
クラス4のペプチドがPEG化されているいくつかの実施形態では、クラス4のペプチドは、短くされたグルカゴンペプチド、特に6〜29を有し、この場合の「N末端」アミノ酸はPLA(フェニル乳酸)である。このようなグルカゴン誘導体には、独特の利点がある。これらは天然のN末端フェニルアラニンを有するものよりも活性の高いペプチドであり、天然のフェニルアラニンには見られない、PEG化によるグルカゴン活性化作用を抑制する。最後に、現時点での文献には、アンタゴニスト活性を得るには9番目の天然のアスパラギン酸を置換しなければならないことが示されているが、本出願人らは、PLA6−(6−29)グルカゴン類縁体ではこのような置換が必要ないという驚くべき結果を見出した。
いくつかの実施形態では、クラス4のペプチドのアミノ酸を少なくとも1個のシステイン残基で置換し、この場合のシステイン残基の側鎖を、マレイミド、ビニルスルホン、2−ピリジルチオ、ハロアルキル、ハロアシルなどをはじめとするチオール反応性試薬でさらに修飾する。これらのチオール反応性試薬は、カルボキシ基、ケト基、ヒドロキシ基、エーテル基ならびに、ポリエチレングリコール単位などの他の親水性部分を含むものであってもよい。別の実施形態では、クラス4のペプチドのアミノ酸をリジンで修飾し、ポリエチレングリコールなどの親水性部分のアルデヒドまたはカルボン酸の活性エステル(スクシンイミド、無水物など)などのアミン反応性試薬を用いて、置換するリジン残基の側鎖をさらに修飾する。いくつかの実施形態によれば、天然のペプチドの12番目に相当するリジン残基をアルギニンに置換し、天然のペプチドの1番目、16番目、17番目、20番目、21番目、24番目または29番目に対応するアミノ酸のうちの1つに単一のリジン置換を挿入するか、クラス4のペプチドのN末端またはC末端にリジンを付加する。
もうひとつの実施形態では、天然のペプチドの27番目に対応するメチオニン残基をロイシンまたはノルロイシンに変更して、ペプチドの酸化による分解を防止する。
いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドのC末端の1個または2個のアミノ酸の短縮すなわち欠失(すなわち、天然のグルカゴンの29番目あるいは、28番目と29番目のアミノ酸の短縮)によって、グルカゴン受容体に対する活性(activity)および/または活性(potency)影響することなく、本明細書に記載のクラス4のペプチドをさらに修飾する。この点について、本明細書に記載のクラス4のペプチドは、たとえば、本明細書に記載するようなクラス4のペプチドの活性が生じる1個または2個以上の修飾を有する、天然のグルカゴンペプチド(配列番号1301)の1番目〜27番目、1番目〜28番目、2番目〜27番目、2番目〜28番目、3番目〜27番目、3番目〜28番目、4番目〜27番目、4番目〜28番目、5番目〜27番目、5番目〜28番目、6番目〜27番目または6番目〜28番目のアミノ酸から本質的になるまたはこのようなアミノ酸からなるものであってもよい。
また、本明細書に開示のクラス4のペプチドは、グルカゴンペプチドの機能に重要ではないことが知られている位置でのアミノ酸置換も包含する。いくつかの実施形態では、置換は、配列番号1339の2番目、5番目、6番目、7番目、8番目、9番目、12番目、13番目、14番目、15番目、16番目、19番目、22番目、23番目または24番目からなる群から選択される1箇所、2箇所または3箇所における保存的なアミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、クラス4のペプチドは、配列番号1342の誘導体ペプチドを有し、ここで、グルカゴンペプチドは、2番目、5番目、6番目、8番目、9番目、12番目、13番目、14番目から選択される1〜3箇所のアミノ酸で、配列番号1342に比してさらなるアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、配列番号1342の2番目、5番目、6番目、8番目、9番目、12番目、13番目、14番目での置換は、保存的なアミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、天然のペプチドの16番目、17番目、20番目、21番目、24番目または29番目に対応するアミノ酸、特に、21番目および/または24番目を、システインまたはリジンで置換し、この場合のPEG鎖は、置換されたシステイン残基またはリジン残基に共有結合している。
いくつかの実施形態によれば、修飾されたクラス4のペプチドは、ペプチドに共有結合している2つまたは3つ以上のポリエチレングリコール鎖を有し、この場合のグルカゴン鎖の合計の分子量は、約1,000〜約5,000ダルトンである。いくつかの実施形態では、PEG化されたクラス4のペプチドは、配列番号1312および配列番号1322からなる群から選択されるペプチドを有する。当該ペプチドは、11番目と19番目でアミノ酸に結合したポリエチレングリコール鎖を含み、2つのPEG鎖の合計の分子量は約1,000〜約5,000ダルトンである。
いくつかの実施形態によれば、以下の配列からなる群から選択される修飾されたグルカゴンペプチドを含むクラス4のペプチドが提供される。
R1−Phe−Thr−Ser−Xaa−Tyr−Ser−Xaa−Tyr−Leu−Xaa−Xaa−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Xaa−Asn−Thr−R2(配列番号1309)
R1−Phe−Thr−Ser−Xaa−Tyr−Ser−Xaa−Tyr−Leu−Asp−Ser−Arg−Arg−Ala−Gln−Xaa−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Xaa−Asn−Thr−R2(配列番号1310)
R1−Phe−Thr−Ser−Xaa−Tyr−Ser−Xaa−Tyr−Leu−Asp−Ser−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Xaa−Trp−Leu−Xaa−Asn−Thr−R2(配列番号1311)
R1−Phe−Thr−Ser−Xaa−Tyr−Ser−Xaa−Tyr−Leu−Asp−Ser−Arg−Arg−Ala−Gln−Xaa−Phe−Val−Xaa−Trp−Leu−Xaa−Asn−Thr−R2(配列番号1312)
ここで、4番目のXaa=アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン酸またはホモシステイン酸であり、7番目のXaa=LysまたはArgであり、10番目のXaaは、アスパラギン酸、システイン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸であり、11番目のXaaは、Ser、Lys、Cys、Orn、ホモシステインまたはアセチルフェニルアラニンであり、16番目のXaaは、Asp、Lys、Cys、Orn、ホモシステインまたはアセチルフェニルアラニンであり、19番目のXaaは、Gln、Lys、Cys、Orn、ホモシステイン、アセチルフェニルアラニンであり、22番目のXaa=Met、LeuまたはNleであり、R1は、OHまたはNH2であり、R2は、COOHまたはCONH2であり、ここで、配列番号1309の場合は11番目で、配列番号1310の場合は16番目で、配列番号1311の場合は19番目で、配列番号1312は16番目および19番目で、ペプチドがPEG化され、ただし、4番目のXaa=アスパラギン酸である場合、R1はOHである。いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、配列番号1309、配列番号1310または配列番号1311の配列を有し、ここで、R1はOHであり、R2はCONH2である。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号1309、配列番号1310または配列番号1311の配列を有し、ここで、R1はOHであり、R2はCONH2であり、4番目のアミノ酸はアスパラギン酸であり、別の実施形態では、このようなペプチドは、配列番号1319の配列を有するカルボキシ末端の延長部分を有する。
いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、配列番号1309、配列番号1310、配列番号1313、配列番号1314、配列番号1316からなる群から選択される配列を有し、このペプチドは、配列番号1309および配列番号1313の場合は11番目でPEG化され、配列番号1310の場合は16番目でPEG化され、配列番号1310および配列番号1314の場合は19番目でPEG化される。いくつかの実施形態では、グルカゴンアゴニストは、配列番号1313または配列番号1314のペプチドを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示のクラス4のペプチドのC末端のアミノ酸は、天然のアミノ酸に存在するカルボン酸基に代えてアミド基を有する。いくつかの実施形態によれば、クラス4のペプチドは、配列番号1318の配列を有する。
いくつかの実施形態によれば、グルカゴンペプチドの溶解性、安定性および/または薬物動態を改善するために、ペプチドのアミノ酸側鎖に血漿タンパク質が共有結合したクラス4のペプチドが提供される。たとえば、血清アルブミンを、本明細書で提示するクラス4のペプチドに共有結合することが可能である。いくつかの実施形態では、血漿タンパク質は、天然のグルカゴンペプチドの16番目、17番目、20番目、21番目、24番目または29番に対応するアミノ酸に共有結合している。特に、いくつかの実施形態では、血漿タンパク質は、天然のグルカゴンペプチドの16番目または24番目に対応するアミノ酸に結合し、ここで、クラス4のペプチドは、配列番号1303、配列番号1304、配列番号1305、配列番号1306、配列番号1307、配列番号1308、配列番号1309、配列番号1311、配列番号1312、配列番号1322、配列番号1323、配列番号1324、配列番号1325、配列番号1326、配列番号1327、配列番号1328、配列番号1336、配列番号1339の配列を有する。いくつかの実施形態では、クラス4のペプチドは、配列番号1309、配列番号1310、配列番号1311、配列番号1312からなる群から選択されるペプチドを有する。
いくつかの実施形態によれば、グルカゴンペプチドの溶解性、安定性および/または薬物動態を改善するために、免疫グロブリン分子のFc部分を表す直鎖状のアミノ酸配列が、本明細書に記載のクラス4のペプチドのアミノ酸側鎖に共有結合している、クラス4のペプチドが提供される。たとえば、免疫グロブリン分子のFc部分を表すアミノ酸配列を、配列番号1307、配列番号1339のグルカゴンペプチドまたはそれらのグルカゴン類縁体の11番目、12番目、15番目、16番目、19番目、21番目または24番目に共有結合させてもよい。いくつかの実施形態では、Fcペプチドは、配列番号1306、配列番号1307、配列番号1308または配列番号1336のクラス4のペプチドの11番目または19番目に共有結合している。Fc部分は通常、IgGから単離されるが、どの免疫グロブリン由来のFcペプチド断片も等しく機能するはずである。いくつかの実施形態では、グルカゴンペプチドは、配列番号1303、配列番号1304、配列番号1305、配列番号1307、配列番号1308、配列番号1339からなる群から選択され、ここで、Fc部分は、天然のグルカゴンペプチドの16番目、17番目、20番目、21番目、24番目または29番目の対応する位置に結合している。いくつかの実施形態では、クラス4のペプチドは、配列番号1309、配列番号1310、配列番号1311、配列番号1312からなる群から選択されるグルカゴンペプチドを有し、Fcペプチドは、それぞれ配列番号1309、配列番号1310、配列番号1311の11番目、16番目または19番目と、配列番号1312の11番目および19番目の両方にあるアミノ酸の側鎖に結合している。
本発明の特定の実施形態では、クラス4のペプチドは、配列番号1362、1364〜1367、1371のいずれかのアミノ酸配列を有する。
溶解性を改善するための修飾
いくつかの態様において、クラス4のペプチドをさらに修飾して、グルカゴンアンタゴニスト活性を保持したまま、生理的なpHでの水溶液に対するペプチドの溶解性を改善してもよい。天然のペプチドの1番目、16番目、17番目、20番目、21番目、24番目、29番目に対応する位置またはC末端に親水基を導入することで、親化合物のアンタゴニスト活性を維持したまま、得られるクラス4のペプチドの、生理的なpHの溶液に対する溶解性を改善することが可能である。したがって、いくつかの実施形態では、天然のグルカゴンペプチドのアミノ酸の1番目、16番目、17番目、20番目、21番目、24番目、29番目に対応するアミノ酸の側鎖またはN末端またはC末端のアミノ酸の側鎖に共有結合している1個または2個以上の親水基を有するように、本明細書に開示のクラス4のペプチドをさらに修飾する。別の実施形態では、天然のグルカゴンペプチドのアミノ酸の16番目および24番目に対応するアミノ酸の側鎖は親水基に共有結合し、いくつかの実施形態では、親水基はポリエチレングリコール(PEG)である。
本出願人らは、天然のグルカゴンのカルボキシ末端に電荷を導入することで、天然のグルカゴンを修飾して、ペプチドのアゴニスト特性を保持したままペプチドの溶解性を高められることを見出した。溶解性が高まると、グルカゴン溶液を、中性のpH付近で調製および保管できるようになる。グルカゴン溶液を比較的中性のpH(pH約6.0〜約8.0など)で調製すると、クラス4のペプチドの長期の安定性が改善される。
繰り返すが、本出願人らは、本明細書に開示のクラス4のペプチドを同様に修飾して、親タンパク質のアンタゴニスト特性を保持したまま、比較的中性のpH(pH約6.0〜約8.0など)の水溶液に対するペプチドの溶解性を改善することが可能であると予測している。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、天然の電荷を持たないアミノ酸を電荷を持つアミノ酸で置換するか、電荷を持つアミノ酸をカルボキシ末端に付加することによって、ペプチドに電荷を付加するために、野生型グルカゴン(配列番号1301)の6番目〜29番目に存在する天然のアミノ酸をさらに修飾した配列番号1339のクラス4のペプチドに関するものである。いくつかの実施形態によれば、配列番号1339のクラス4のペプチドの電荷を持たない天然のアミノ酸1〜3個を、電荷を持つアミノ酸で置換する。いくつかの実施形態では、電荷を持つアミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸からなる群から選択される。特に、本出願人らは、天然のグルカゴンに比して対応する28番目および/または29番目にある普通に生じるアミノ酸を電荷を持つアミノ酸で置換することおよび/または1〜2個の電荷を持つアミノ酸をクラス4のペプチドのカルボキシ末端に付加することで、生理的に関連するpH(すなわち、pH約6.5〜約7.5)の水溶液に対するクラス4のペプチドの溶解性および当該水溶液中における安定性が高められることを見出した。したがって、親ペプチドの生物学的活性を保持したまま、特に約5.5〜約8.0の範囲のpHで、水溶液に対する溶解性に同様の作用を持つように、本明細書に開示のクラス4のペプチドの上記のような修飾が予想される。
いくつかの実施形態によれば、天然のグルカゴンで対応する28番目および/または29番目における天然のアミノ酸を、負の電荷を持つアミノ酸(アスパラギン酸またはグルタミン酸など)で置換し、任意に、負の電荷を持つアミノ酸(アスパラギン酸またはグルタミン酸など)を、ペプチドのカルボキシ末端に付加することによって、配列番号1339のクラス4のペプチドを修飾する。別の実施形態では、天然のグルカゴンで対応する29番目における天然のアミノ酸を、正の電荷を持つアミノ酸(リジン、アルギニンまたはヒスチジンなど)で置換し、任意に、1個または2個の正の電荷を持つアミノ酸(リジン、アルギニンまたはヒスチジンなど)を、ペプチドのカルボキシ末端に付加することによって、配列番号1339のクラス4のペプチドを修飾する。いくつかの実施形態によれば、溶解性と安定性が改善されたクラス4のペプチドが提供され、ここで、ペプチドは配列番号1341のアミノ酸配列を有し、ただし、配列番号1341の23番目または24番目における少なくとも1個のアミノ酸が酸性アミノ酸で置換されるおよび/または配列番号1341のカルボキシ末端に追加の酸性アミノ酸が付加される。いくつかの実施形態では、酸性アミノ酸は、Asp、Glu、システイン酸、ホモシステイン酸からなる群から独立に選択される。
いくつかの実施形態によれば、溶解性と安定性が改善されたクラス4のペプチドが提供され、ここで、アンタゴニストは、配列番号1341、配列番号1342、配列番号1343または配列番号1344のアミノ酸配列を有し、23番目または24番目のアミノ酸のうちの少なくとも1個が、非天然のアミノ酸残基で置換されている(すなわち、類縁体の23番目または24番目に存在する少なくとも1個のアミノ酸が、配列番号1307の対応する位置に存在するアミノ酸とは異なる酸性アミノ酸である)。いくつかの実施形態によれば、配列番号1341または1342の配列を有するグルカゴンアゴニストが提供され、ただし、23番目のアミノ酸がアスパラギンであり、24番目のアミノ酸がスレオニンである場合、ペプチドは、クラス4のペプチドのカルボキシ末端に付加された、Lys、Arg、His、AspまたはGluからなる群から独立に選択される1〜2個のアミノ酸をさらに含む。
もうひとつの実施形態では、11番目、12番目、15番目、16番目、19番目または24番目のアミノ酸残基に親水性部分を共有結合することによって、配列番号1342のクラス4のペプチドの溶解性を改善することが可能であり、いくつかの実施形態では、親水性部分は11番目、16番目または19番目のアミノ酸に結合し、別の実施形態では、親水性部分は19番目のアミノ酸に結合している。いくつかの実施形態では、親水性部分は血漿タンパク質または免疫グロブリンのFc部分であり、別の実施形態では、親水性部分は親水性の炭化水素鎖である。いくつかの実施形態では、親水性部分は、分子量が約1,000〜約5,000ダルトンの範囲から選択されるポリエチレングリコールである。もうひとつの実施形態では、親水性部分は、分子量が少なくとも約20,000ダルトンのポリエチレングリコールである。いくつかの実施形態では、ポリエチレンで修飾されたクラス4のペプチドは、配列番号1309、配列番号1310、配列番号1311、配列番号1312、配列番号1343、配列番号1344または配列番号1345のアミノ酸配列を有する。
安定性を改善するための修飾
天然のグルカゴンの15番目と16番目のAsp−Ser配列は、水性バッファーにおける天然のホルモンの早期の化学反応による開裂につながる独特の不安定なジペプチドとして同定されている。たとえば、0.01NのHClにて37℃で2週間維持すると、天然のグルカゴンの50%を超える部分が切断されて断片になってしまうことがある。この遊離した2つのペプチド断片1−15および16−29は、グルカゴン様の生物学的活性を持たず、よって、グルカゴンおよびその関連の類縁体の水溶液による使用前調製に対する制約を示す。天然のグルカゴンペプチドの15番目のAspをGluで選択的に化学置換すると、15番目と16番目のペプチド結合の化学反応による開裂が、事実上なくなることが観察されている。
したがって、本発明のクラス4のペプチドを同様に修飾して、水性バッファーにおける早期の化学反応による開裂に対する感受性を低減することが可能であると思われる。いくつかの実施形態によれば、水溶液中での安定性を高めるために、天然のグルカゴンペプチドの15番目にある天然のアスパラギン酸のアミノ酸を、システイン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換することによって、本明細書に記載のクラス4のペプチドを、さらに修飾することが可能である。いくつかの実施形態によれば、配列番号1339のクラス4のペプチドの10番目のアスパラギン酸残基を、システイン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換してもよく、いくつかの実施形態では、配列番号1339の10番目の天然のアスパラギン酸をグルタミン酸で置換する。いくつかの実施形態によれば、水溶液中での安定性が改善されたクラス4のペプチドが提供され、ここで、アンタゴニストは、配列番号1336、配列番号1340、配列番号1342からなる群から選択される配列を有する。別の実施形態では、クラス4のペプチドがアミド化される。
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載のクラス4のペプチドの分解が低減されることによる安定性の向上を、(天然のグルカゴンの番号で)16番目のセリンからグルタミン酸、システイン酸、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸への置換によって達成してもよい。具体的な実施形態では、(天然のグルカゴンの番号で)16番目のセリンをグルタミン酸に置換する。一層具体的な態様では、このような修飾を有するクラス4のペプチドは、C末端のカルボキシレートを有し、アミド化されていない。
いくつかの実施形態によれば、配列番号1307、配列番号1336、配列番号1339、配列番号1340、配列番号1341、配列番号1342、配列番号1343、配列番号1344からなる群から選択されるグルカゴンペプチドを有し、天然のグルカゴンペプチドの11番目、12番目、15番目、16番目、19番目および/または24番目に対応する1個または2個以上の追加のアミノ酸置換によってさらに修飾される、クラス4のペプチドが提供される。ここで、アミノ酸置換は、親水性部分、たとえばPEGとの架橋に適した側鎖を有するアミノ酸での置換であってもよい。ペプチドは、天然のアミノ酸で置換されてもよいし、合成(非天然)のアミノ酸で置換されてもよい。合成または非天然のアミノ酸は、in vivoでは天然に生じないが、本明細書に記載のペプチド構造に取り込むことは可能である。いくつかの実施形態では、ペプチドが、配列番号1307、配列番号1336、配列番号1339、配列番号1340、配列番号1341、配列番号1342、配列番号1343、配列番号1344の配列を有し、天然のグルカゴンペプチドの対応する21番目または24番目に結合したポリエチレングリコール鎖をさらに有する、クラス4のペプチドが提供される。別の実施形態では、クラス4のペプチドのC末端を、カルボン酸基がアミド基で置換されるように修飾する。
融合ペプチドと結合体
また、本開示は、クラス4のペプチドのC末端に第2のペプチドが融合した、クラス4のペプチドの融合ペプチドも包含する。特に、この融合ペプチドは、配列番号1344のクラス4のペプチドのペプチドを有するものであってもよく、このペプチドは、クラス4のペプチドのC末端のアミノ酸に結合した配列番号1319(GPSSGAPPPS)、配列番号1320(Lys Arg Asn Arg Asn Asn Ile Ala)または配列番号1321(Lys Arg Asn Arg)のアミノ酸配列をさらに有する。いくつかの実施形態では、配列番号1319(GPSSGAPPPS)のアミノ酸配列が、ペプチド結合を介して、配列番号1342のクラス4のペプチドの24番目のアミノ酸に結合している。もうひとつの実施形態では、融合ペプチドは、配列番号1307、配列番号1336、配列番号1339、配列番号1340、配列番号1341または配列番号1343のクラス4のペプチドのペプチドを有し、クラス4のペプチドの24番目のアミノ酸に結合した配列番号1319(GPSSGAPPPS)のアミノ酸配列をさらに有する。もうひとつの実施形態では、融合ペプチドは、配列番号1307、配列番号1336、配列番号1337、配列番号1338、配列番号1339、配列番号1341または配列番号1343のクラス4のペプチドのペプチドを有し、クラス4のペプチドの24番目のアミノ酸に結合した配列番号1320、配列番号1321または配列番号1353のアミノ酸配列をさらに有する。いくつかの実施形態では、クラス4のペプチドの融合ペプチドは、配列番号1346および配列番号1347からなる群から選択される配列を有する。別の実施形態では、融合ペプチドのC末端を、カルボン酸基がアミド基に置換されるように修飾する。
いくつかの実施形態では、融合ペプチドのクラス4のペプチド部分が、配列番号1303、配列番号1304、配列番号1305、配列番号1306、配列番号1307、配列番号1308、配列番号1309、配列番号1311、配列番号1312、配列番号1313、配列番号1314、配列番号1315、配列番号1310、配列番号1316、配列番号1317、配列番号1318、配列番号1339からなる群から選択される、クラス4のペプチドの融合ペプチドが提供され、配列番号1319の配列は、クラス4のペプチド部分のカルボキシ末端に融合し、ここで、PEG鎖が存在する場合には、このPEG鎖は、500〜40,000ダルトンの範囲から選択される。特に、いくつかの実施形態では、クラス4のペプチドセグメントは、配列番号1313、配列番号1314、配列番号1315、配列番号1316、配列番号1346、配列番号1347からなる群から選択され、ここで、PEG鎖は、約500〜約5,000ダルトンの範囲から選択され、特に、いくつかの実施形態では、PEG鎖は約1,000ダルトンである。別の実施形態では、C末端を、カルボン酸基がアミド基で置換されるように修飾する。
クラス4のペプチドは、カルボキシ末端に付加された、1〜2個の電荷を持つアミノ酸をさらに有するものであってもよい。1〜2個の電荷を持つアミノ酸が配列番号1344のカルボキシ末端に付加されるいくつかの実施形態では、アミノ酸は、たとえば、グルタミン酸およびアスパラギン酸などの負の電荷を持つアミノ酸である。いくつかの実施形態では、クラス4のペプチドは、配列番号1342の配列を有し、天然のグルカゴンペプチドで対応する27番目および28番目のうちの少なくとも1つは、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸を有し、配列番号1342を、任意に、カルボキシ末端に付加される1〜2個の負の電荷を持つアミノ酸の付加を含むように修飾する。いくつかの実施形態では、負の電荷を持つアミノ酸は、グルタミン酸またはアスパラギン酸である。
過剰なグルカゴン活性を特徴とする疾患または状態を治療するために、本明細書に開示のクラス4のペプチドを、たとえばインスリンをはじめとする他の活性剤と組み合わせてもよい。いくつかの実施形態では、糖尿病患者で安定した血中グルコース濃度を維持しやすくするために、分子量が10,000ダルトンを超えるPEG鎖に共有結合するよう修飾されたクラス4のペプチドを、インスリンとの併用で投与してもよい。本開示のクラス4のペプチドは、単一の組成物としてインスリンと同時投与してもよいし、別々の溶液として同時に投与してもよく、あるいは、インスリンとクラス4のペプチドを互いに異なる時刻に投与してもよい。いくつかの実施形態では、インスリンを含む組成物と、クラス4のペプチドを含む組成物とを、互いに12時間以内の間隔で投与する。投与されるインスリンに対するクラス4のペプチドの正確な比は、ある程度は患者のグルカゴン濃度についての判断に左右されることになり、ルーチンな実験で求めることが可能なものである。
ダイマーペプチド
また、本開示は、本明細書に開示の修飾されたクラス4のペプチドのマルチマーも包含する。修飾されたクラス4のペプチドのうち2つまたは3つ以上を、当業者に知られた標準的な結合剤と手順を用いて、互いに結合してもよい。たとえば、特に(11番目、16番目または19番目などで)システイン残基、リジン残基、オルニチン残基、ホモシステイン残基またはアセチルフェニルアラニン残基で置換されたクラス4のペプチド(配列番号1309、配列番号1310、配列番号1311、配列番号1312など)の場合、二官能性のチオールクロスリンカーと二官能性のアミンクロスリンカーを使用して、2つの修飾されたクラス4のペプチドの間に、ダイマーを形成してもよい。ダイマーは、ホモダイマーであってもよいし、ヘテロダイマーであってもよい。いくつかの実施形態では、ダイマーは、配列番号1308、配列番号1309、配列番号1310、配列番号1311、配列番号1312、配列番号1345、配列番号1346または配列番号1347からなる群から独立に選択される2つのクラス4のペプチドの間に形成され、ここで、2つのペプチドは、各自ペプチドの11番目、各ペプチドの16番目または各ペプチドの19番目またはこれらの任意の組み合わせに結合したリンカーを介して、互いに結合する。いくつかの実施形態では、結合は、それぞれのクラス4のペプチドのペプチドの11番目のシステイン残基と11番目のシステイン残基との間または19番目のシステイン残基と19番目のシステイン残基との間あるいは、11番目のシステイン残基と19番目のシステイン残基との間のジスルフィド結合である。
同様に、配列番号1303、配列番号1304、配列番号1305、配列番号1306、配列番号1307、配列番号1308、配列番号1309、配列番号1310、配列番号1311、配列番号1312、配列番号1336、配列番号1337、配列番号1338、配列番号1339、配列番号1342からなる群から独立に選択される2つのクラス4のペプチドのペプチド間に、ダイマーを形成してもよく、ここで、結合は、天然のグルカゴンペプチドでの16番目、21番目、24番目から独立に選択されるアミノ酸の位置間に形成される。
いくつかの実施形態によれば、各々が配列番号1346の配列を有する2つのクラス4のペプチドを有する、クラス4のペプチドダイマーが提供され、ここで、2つのアンタゴニストは、アミノ酸の25番目を介したジスルフィド結合によって、互いに結合している。もうひとつの実施形態では、各々が配列番号1347の配列を有する2つのクラス4のペプチドを含むクラス4のペプチドダイマーが提供され、ここで、2つのアンタゴニストは、アミノ酸の35番目を介したジスルフィド結合によって、互いに結合している。いくつかの実施形態では、ダイマーは、10番目のアミノ酸がグルタミン酸である配列番号1346および配列番号1347のクラス4のペプチドから形成される。
いくつかの実施形態では、ダイマーは、配列番号1307、配列番号1308、配列番号1336、配列番号1337、配列番号1340、配列番号1339、配列番号1340、配列番号1341、配列番号1342、当該クラス4のペプチドの薬学的に許容される塩からなる群から選択されるクラス4のペプチドの融合ペプチドのホモダイマーであってもよい。いくつかの実施形態によれば、リンカーを介して第2のクラス4のペプチドに結合した第1のクラス4のペプチドを含むダイマーが提供され、ここで、ダイマーの第1および第2のペプチドは、配列番号1307、配列番号1308、配列番号1336、配列番号1337、配列番号1339、配列番号1340、配列番号1341、配列番号1342、当該グルカゴンポリペプチドの薬学的に許容される塩からなる群から独立に選択される。もうひとつの実施形態では、ダイマーの第1および第2のクラス4のペプチドは、配列番号1307、配列番号1308、配列番号1336、配列番号1339からなる群から独立に選択される。
もうひとつの実施形態では、ダイマーは、配列番号1323、配列番号1324、配列番号1325、配列番号1326、配列番号1327、配列番号1328、配列番号1329、配列番号1330、配列番号1331からなる群から選択されるクラス4のペプチドのホモダイマーであってもよい。もうひとつの実施形態では、ダイマーの第1および第2のペプチドが、配番号1323、配列番号1324、配列番号1325、配列番号1326、配列番号1327、配列番号1328からなる群から独立に選択されるアミノ酸配列を有する、クラス4のペプチドダイマーが提供される。もうひとつの実施形態では、ダイマーは、配列番号1309、配列番号1311、配列番号1312からなる群から選択されるクラス4のペプチドのホモダイマーであってもよく、ここで、ペプチドは、グルカゴンペプチドの11番目または19番目に共有結合しているポリエチレングリコール鎖をさらに含むものであってもよい。
クラス4のグルカゴン関連ペプチドは、配列番号1301〜1371のいずれのアミノ酸配列を有するものであってもよく、任意に、グルカゴンアンタゴニスト活性を保持する、最大1個、2個、3個、4個または5個の修飾をさらに有する。
クラス5のグルカゴン関連ペプチド
特定の実施形態では、グルカゴン関連ペプチドは、クラス5のグルカゴン関連ペプチドである(たとえば、国際(PCT)特許出願公開第WO2009/058734号(その全体を本明細書に援用する)を参照のこと)。
以下のセクションに示す生物学的配列(配列番号1401〜1518)はすべて、国際特許出願公開第WO2009/058734号における配列番号1〜118に対応する。
活性
特定の態様では、クラス5のグルカゴン関連ペプチド(以下、「クラス5のペプチド」と呼ぶ)は、グルカゴンアンタゴニスト/GLP−1アゴニストであってもよい。グルカゴンアンタゴニスト/GLP−1アゴニストは、グルカゴン活性化作用の抑制が望ましく、同時にGLP−1活性の刺激も望ましい環境であれば、どのような環境でも使用される。たとえば、高血糖症の前臨床モデルでグルカゴンの拮抗作用が示されている糖尿病の治療において、血糖を低下させるためにGLP−1の刺激と併せてグルカゴンアンタゴニスト活性を使用することが可能であり、GLP−1活性はインスリンの産生と関連している。GLP−1活性を示す化合物は、肥満を治療し、体重増加を防止するのにも有用であることも知られている。
特定の態様では、クラス5のペプチドは、他のグルカゴンアンタゴニスト/GLP−1アゴニストについて上述したどのような用途にも適していると思われる。これらの2種類の活性は、別々に、メタボリックシンドローム、特に糖尿病および肥満を治療する上で、極めて望ましい特性であることが示されている。グルカゴンアンタゴニスト活性は、グルカゴン活性化作用の抑制が望ましい環境であれば、どのような環境でも有用である。また、GLP−1活性化作用は、インスリンの合成と分泌を刺激する一方で、膵臓からのグルカゴンの内在性分泌をさらに抑制する。2つの薬理学的作用が、代謝の異常を正常化するよう相乗的に機能する。したがって、高血糖症を治療またはグルカゴンの血中濃度またはグルコースの血中濃度が高いことで生じる他の代謝疾患を治療するために、クラス5のペプチドを用いることが可能である。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示のクラス5のペプチドなどのグルカゴンアンタゴニスト/GLP−1アゴニストを用いる治療の対象となる患者は、飼いならされた動物であり、別の実施形態では、治療対象となる患者はヒトである。研究では、糖尿病患者におけるグルカゴン抑制の欠如は、ある程度、グリコーゲンの分解を加速させることで、食後高血糖症の一因となる。経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)にて血糖を分析したところ、ソマトスタチン誘導グルカゴンの抑制がなされる状態またはなされない状態で、グルカゴン濃度の高い治療対象者で、グルコースの有意な増加が認められた。したがって、本明細書に記載のグルカゴンアンタゴニスト/GLP−1アゴニストまたはクラス5のペプチドは、高血糖症の治療に使用でき、糖尿病I型、真性糖尿病II型または妊娠性糖尿病(インスリン依存性または非インスリン依存性)をはじめとするさまざまなタイプの糖尿病を治療し、胃障害、網膜症、血管疾患などの糖尿病の合併症を低減するのに有用であると思われる。
食欲を低減し、あるいは体重減少を促進するための上述したような方法は、体重を落とし、体重増加を防止し、あるいは、薬物誘発性肥満をはじめとするさまざまな原因の肥満を治療し、血管疾患(冠動脈疾患、脳卒中、末梢血管疾患、虚血再灌流障害など)、高血圧症、II型糖尿病の発症、高脂血症、筋骨格系疾患をはじめとする肥満に関連する合併症を軽減する上で、有用であると思われる。
当業者に知られた標準的な薬学的に許容されるキャリアおよび投与経路を用いて、クラス5のペプチドを含む薬学的組成物を、調製し、患者に投与することが可能である。したがって、したがって、本開示は、本明細書に開示のクラス5のペプチド1つまたは2つ以上を、薬学的に許容されるキャリアとの組み合わせで含む薬学的組成物も包含する。この薬学的組成物は、クラス5のペプチドを、唯一の薬学的に活性な成分として含むものであってもよいし、クラス5のペプチドを、1種または2種以上の別の活性剤と組み合わせることも可能である。いくつかの実施形態によれば、クラス5のペプチドと、インスリンまたはインスリン類縁体とを含む、組成物が提供される。あるいは、配列番号1415または配列番号1451の配列を有し、配列番号1415または配列番号1451の24番目のアミノ酸に結合した配列番号1421(GPSSGAPPPS)または配列番号1450のアミノ酸配列と抗肥満ペプチドとをさらに有する、体重減少を誘導または体重増加を防止するために提供される組成物を提供することが可能である。好適な抗肥満ペプチドとして、米国特許第5,691,309号、同第6,436,435号または米国特許出願第20050176643号に開示されたものがあげられる。
クラス5のペプチドの構造
いくつかの実施形態によれば、N末端からの最初の1〜5個アミノ酸残基(最初のアミノ酸、最初の2個のアミノ酸、最初の3個のアミノ酸、最初の4個のアミノ酸、最初の5個のアミノ酸など)の欠失ならびに、たとえば、水素結合またはイオンの相互作用(塩結合の形成など)または共有結合による、(天然のグルカゴンペプチド配列で)12番目と16番目、16番目と20番目、20番目と24番目、24番目と28番目から選択されるアミノ酸の対の側鎖同士の結合による、化合物のC末端領域でのαヘリックス構造の安定化(野生型グルカゴンすなわち配列番号1401のアミノ酸番号で12番目〜29番目のアミノ酸のあたり)によって修飾されたグルカゴンペプチドを含む、クラス5のペプチドが提供される。あるいは、所望の活性を保持する位置に、1個または2個以上のα,α−二置換アミノ酸を導入することで、12番目〜29番目の残基のあたりでのαヘリックスの安定化を達成する。いくつかの実施形態では、クラス5のペプチドまたはその類縁体の(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目または29番目のうちの1箇所、2箇所、3箇所、4箇所または5箇所以上が、α,α−二置換アミノ酸で置換される。たとえば、クラス5のペプチドまたはその類縁体の(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)16番目をアミノイソ酪酸(Aib)で置換すると、塩結合またはラクタムが存在しない状態で、安定化したαヘリックスが提供される。いくつかの実施形態では、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)16番目、20番目、21番目または24番目のうちの1箇所、2箇所、3箇所または4箇所以上を、Aibで置換する。
いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、GLP−1受容体に対して天然のGLP−1が達成する最大限の活性化作用の少なくとも80%を示し、in vitroアッセイでのcAMPの産生を基準に判断できる、グルカゴン受容体に対する最大限のグルカゴン誘導cAMP産生を少なくとも約50%低減するグルカゴンアンタゴニスト活性を示す、クラス5のペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、クラス5のペプチドは、GLP−1受容体に対する活性が天然のGLP−1の少なくとも90%であり、グルカゴン受容体に対する最大限のグルカゴン誘導cAMP産生を少なくとも約80%低減する、グルカゴンアンタゴニスト活性を示す。
いくつかの実施形態によれば、クラス5のペプチドは、配列番号1402の誘導体ペプチドを有し、この場合のペプチドは、配列番号1402に比して、1番目、2番目、4番目、5番目、6番目、7番目、8番目、9番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、15番目、16番目、19番目、22番目、24番目から選択される1〜3箇所のアミノ酸の位置でのアミノ酸置換をさらに有し、GLP−1受容体に対する活性が天然のGLP−1の少なくとも90%であり、グルカゴン受容体に対する最大限のグルカゴン誘導cAMP産生を少なくとも約80%低減する、グルカゴンアンタゴニスト活性を示す。
いくつかの実施形態では、クラス5のペプチドのC末端領域(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で12番目〜29番目のアミノ酸のあたり)のαヘリックス構造を、たとえば、共有結合または非共有結合の分子内架橋の形成あるいは、12番目〜29番目あたりで、αヘリックスを安定化するアミノ酸(α,α−二置換アミノ酸など)で置換するアミノ酸置換および/またはこれを挿入することによって、安定化する。いくつかの実施形態では、クラス5のペプチドまたはその類縁体の(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目または29番目のうちの1箇所、2箇所、3箇所、4箇所または5箇所以上を、α,α−二置換アミノ酸、たとえばアミノイソ酪酸(Aib)で置換する。たとえば、クラス5のペプチドまたはその類縁体の(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)16番目をアミノイソ酪酸(Aib)で置換すると、塩結合またはラクタムが存在しない状態で、安定化したαヘリックスが提供される。
いくつかの実施形態では、クラス5のペプチドは、配列番号1415または配列番号1451を有し、特に、配列番号1405、配列番号1406、配列番号1407、配列番号1408、配列番号1409、配列番号1416、配列番号1417、配列番号1418、配列番号1419、配列番号1422、配列番号1423、配列番号1424、配列番号1425からなる群から選択される配列を有する。別の実施形態では、クラス5のペプチドは、配列番号1415または配列番号1451の誘導体ペプチドを有し、この場合のペプチドは、配列番号1415または配列番号1451に比して、1番目、2番目、5番目、6番目、8番目、9番目、12番目、13番目、14番目から選択される1〜3箇所のアミノ酸の位置で、アミノ酸置換をさらに有する。いくつかの実施形態では、1番目、2番目、5番目、6番目、8番目、9番目、12番目、13番目、14番目での置換は、保存的なアミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、配列番号1405または配列番号1406の24番目のスレオニンを、グリシンで置換する。
いくつかの実施形態によれば、クラス5のペプチドは、ペプチドのさらなる修飾を表すものであり、ここで、N末端での欠失に加え、天然のグルカゴンペプチドの6番目のフェニルアラニンが、たとえば、N末端のアミノ基に代えてヒドロキシ基を含むように修飾される。別の実施形態では、C末端のアミノ酸の天然のカルボン酸に代えて、アミドまたはエステルなどの電荷が中性の基が用いられる。
いくつかの実施形態によれば、天然のグルカゴンの最初の3個〜5個のアミノ酸が欠失され、天然のグルカゴンペプチドで9番目のアミノ酸が、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、β−ホモグルタミン酸、システインのスルホン酸誘導体、または以下に示す構造を有するシステインのアルキルカルボキシレート誘導体からなる群から選択されるアミノ酸で置換された、クラス5のペプチドが調製され:
式中、X5は、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニルまたはC2〜C4アルキニルであり、グルカゴンのC末端領域(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で12番目〜29番目のアミノ酸のあたり)のαヘリックス構造が、たとえば、天然のグルカゴンペプチドで12番目と16番目のアミノ酸または16番目と20番目のアミノ酸の側鎖間に形成されたラクタム架橋によって安定化される。共有結合して原子7個の結合架橋を形成できるアミノ酸対形成の例を、本開示全体で詳細に説明する。いくつかの実施形態では、システインのスルホン酸誘導体は、システイン酸またはホモシ8ステイン酸である。
いくつかの実施形態では、配列番号1405、配列番号1406、配列番号1407または配列番号1408からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するクラス5が提供され、ここで、当該ペプチドは、配列番号1405の場合は7番目と11番目、配列番号1406の場合は11番目と15番目、配列番号1407の場合は15番目と19番目、配列番号1408の場合は19番目と24番目のアミノ酸の側鎖間に形成されるラクタム環を有し、前記配列は各々、ペプチドに共有結合している親水性部分を含むようにさらに修飾される。特に、いくつかの実施形態では、ラクタムを持つクラス5のペプチド各々を、ポリエチレングリコール鎖の共有結合によって修飾する。たとえば、配列番号1405を有するクラス5のペプチドの場合、このペプチドを、12番目、15番目、16番目、19番目、24番目からなる群から選択される位置でPEG化する;配列番号1406を有するクラス5のペプチドの場合、このペプチドを、12番目、16番目、19番目、24番目からなる群から選択される位置でPEG化する;配列番号1407を有するクラス5のペプチドの場合、このペプチドを、11番目、12番目、16番目、24番目からなる群から選択される位置でPEG化する;配列番号1408を有するクラス5のペプチドの場合、このペプチドを、11番目、12番目、15番目、16番目からなる群から選択される位置でPEG化する。いくつかの実施形態によれば、配列番号1447または配列番号1448を有するクラス5のペプチドが提供され、ここで、ペプチドは、配列番号1447または配列番号1448の配列で12番目、16番目、19番目、24番目からなる群から選択される位置でPEG化される。別の実施形態では、配列番号1421の配列をペプチドのカルボキシ末端に付加することで、配列番号1447または配列番号1448のペプチドを、さらに修飾する。
上記にて詳細に説明したように、特定の態様では、天然のグルカゴンの最初の5個のアミノ酸が欠失され、N末端のアミノ酸(フェニルアラニン)のアミノ基が、ヒドロキシ基で置換され(すなわち、最初のアミノ酸がフェニル乳酸である)、12番目と16番目、16番目と20番目、20番目と24番目、24番目と28番目から選択される1つまたは2ち以上のアミノ酸の対の側鎖が互いに結合しているため、クラス5のペプチドのαヘリックスが安定化している、クラス5のペプチドが提供される。
いくつかの実施形態によれば、配列番号1402の11番目(天然のグルカゴンのアミノ酸番号で16番目)のセリン残基を、グルタミン酸、グルタミン、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸、スレオニンまたはグリシンからなる群から選択されるアミノ酸で置換することによって修飾された配列番号1402の配列を有する、クラス5のペプチドが提供される。いくつかの実施形態によれば、配列番号1402の11番目のセリン残基を、グルタミン酸、グルタミン、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換する。いくつかの実施形態では、セリン残基をグルタミン酸で置換する。いくつかの実施形態によれば、クラス5のペプチドは、配列番号1438の配列を有する。
いくつかの実施形態では、配列番号1402のペプチドのカルボキシ末端の三次元構造を安定化するために、2つのアミノ酸側鎖間に分子内架橋が形成された、クラス5のペプチドが提供される。特に、配列番号1402の7番目と11番目、11番目と15番目、15番目と19番目または19番目と23番目のアミノ酸の対から選択される1個または2個以上のアミノ酸の側鎖を互いに結合することで、C末端領域のαヘリックスを安定化する。2つの側鎖を、水素結合、イオンの相互作用(塩結合の形成など)または共有結合によって、互いに結合することが可能である。いくつかの実施形態によれば、リンカーのサイズは原子7〜9個であり、いくつかの実施形態では、リンカーのサイズは原子8個である。いくつかの実施形態では、クラス5のペプチドは、配列番号1405、配列番号1406、配列番号1407、配列番号1408からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、クラス5のペプチドのC末端のアミノ酸は、天然のアミノ酸に存在するカルボン酸基を置換するアミド基を有する。
いくつかの実施形態によれば、類縁体が配列番号1409のアミノ酸配列を有するクラス5のペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号1409のペプチドのカルボキシ末端の三次元構造を、ペプチドの側鎖間に共有結合を形成することで安定化する。いくつかの実施形態では、2つのアミノ酸側鎖を互いに結合し、ラクタム環を形成する。ラクタム環のサイズは、アミノ酸側鎖の長さに応じて可変であり、いくつかの実施形態では、リジンアミノ酸の側鎖をグルタミン酸の側鎖に結合することで、ラクタムを形成する。いくつかの実施形態では、クラス5のペプチドのC末端のアミノ酸は、天然のアミノ酸に存在するカルボン酸基を置換するアミド基を有する。
ラクタム環のアミド結合の順序を逆にしてもよい(ラクタム環を、12番目のリジンと16番目のグルタミン酸の側鎖間あるいは、12番目のグルタミン酸と16番目のリジンとの間に形成してもよいなど)。いくつかの実施形態によれば、配列番号1409の7番目と11番目、11番目と15番目、15番目と19番目または19番目と23番目のアミノ酸の対からなる群から選択されるアミノ酸の側鎖対の間に少なくとも1個のラクタム環が形成される、配列番号1409のグルカゴン類縁体が提供される。いくつかの実施形態では、ペプチドが配列番号1410の配列を有し、当該配列は、配列番号1410の7番目と11番目のアミノ酸の間または11番目と15番目のアミノ酸の間または15番目と19番目のアミノ酸の間に形成される分子内ラクタム架橋をさらに含む、クラス5のペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、ペプチドが配列番号1411の配列を有し、当該配列が、配列番号1411の7番目と11番目のアミノ酸の間または11番目と15番目のアミノ酸の間に形成される分子内ラクタム架橋をさらに有する、クラス5のペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、クラス5のペプチドは、配列番号1417の配列を有する。
配列番号1405の誘導体を有する別のクラス5のペプチドが提供され、ここで、配列番号1405の10番目(天然のグルカゴンの15番目)のアスパラギン酸は、グルタミン酸、以下の一般構造を有するアミノ酸で置換されている。
式中、X6は、C1〜C3アルキル、C2〜C3アルケンまたはC2〜C3アルキニルであり、いくつかの実施形態では、X6はC1〜C3アルキルであり、もうひとつの実施形態では、X6はC2アルキルである。いくつかの実施形態では、配列番号1409の10番目(天然のグルカゴンの15番目)が、グルタミン酸、システイン酸、ホモシステイン酸、ホモグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換される、配列番号1409のクラス5のペプチド誘導体が提供される。別の実施形態では、配列番号1409の10番目を、システイン酸またはホモシステイン酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換する。いくつかの実施形態では、配列番号1406、配列番号1407または配列番号1408の10番目が、グルタミン酸、システイン酸、ホモシステイン酸、ホモグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換される、配列番号1406、配列番号1407または配列番号1408のクラス5のペプチド誘導体が提供される。いくつかの実施形態では、クラス5のペプチドのC末端のアミノ酸は、天然のアミノ酸に存在するカルボン酸基に代えて、アミド基を有する。
いくつかの実施形態では、クラス5のペプチドのアミノ酸を少なくとも1個のシステイン残基で置換し、この場合のシステイン残基の側鎖を、マレイミド、ビニルスルホン、2−ピリジルチオ、ハロアルキル、ハロアシルなどをはじめとするチオール反応性試薬でさらに修飾する。これらのチオール反応性試薬は、カルボキシ基、ケト基、ヒドロキシ基、エーテル基ならびに、ポリエチレングリコール単位などの他の親水性部分を含むものであってもよい。別の実施形態では、クラス5のペプチドのアミノ酸をリジンで置換し、ポリエチレングリコールなどの親水性部分のアルデヒドまたはカルボン酸の活性エステル(スクシンイミド、無水物など)などのアミン反応性試薬を用いて、置換するリジン残基の側鎖をさらに修飾する。いくつかの実施形態によれば、配列番号1405のペプチドの7番目に対応するリジン残基をアルギニンに置換し、単一のリジン置換を、配列番号1405の12番目、15番目、16番目、19番目、24番目に対応するアミノ酸の1つに代えて、挿入する。
もうひとつの実施形態では、本明細書に開示のクラス5のペプチドの22番目に対応するメチオニン残基をロイシンまたはノルロイシンに変更して、ペプチドの酸化による分解を防止する。
さらに、いくつかの態様におけるクラス5のペプチドは、グルカゴン類縁体の機能に重要ではないことが知られている位置でのアミノ酸置換も包含する。いくつかの実施形態では、置換は、2番目、5番目、6番目、7番目、8番目、9番目、12番目、13番目、14番目、15番目、16番目、19番目、22番目、23番目または24番目からなる群から選択される1箇所、2箇所または3箇所における保存的なアミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、天然のグルカゴンペプチドの16番目、17番目、20番目、21番目、24番目または29番目に対応するアミノ酸、特に、天然のグルカゴンでの21番目および/または24番目を、システインまたはリジンで置換し、この場合のPEG鎖は、置換されたシステイン残基またはリジン残基に共有結合している。
いくつかの実施形態によれば、配列番号1409からなる配列を有し、ペプチドの11番目、12番目、15番目、16番目、19番目および/または24番目に対応する位置で、1個または2個以上の追加のアミノ酸置換(システインでの置換などを含む)によってさらに修飾された、クラス5のペプチドが提供され、この場合のアミノ酸置換は、PEGなどをはじめとする親水性部分との架橋に適した側鎖を有するアミノ酸を有する。この天然のグルカゴンについては、天然のアミノ酸で置換してもよいし、合成(非天然)のアミノ酸で置換してもよい。合成または非天然のアミノ酸は、in vivoでは天然に生じないが、本明細書に記載のペプチド構造に取り込むことは可能である。いくつかの実施形態では、ペプチドが配列番号1409の配列を有し、ペプチドの16番目または19番目に結合したポリエチレングリコール鎖をさらに有する、クラス5のペプチドが提供される。別の実施形態では、グルカゴン類縁体のC末端を、カルボン酸基がアミド基に置換されるように修飾する。
いくつかの実施形態によれば、以下の配列からなる群から選択されるグルカゴン類縁体を有する、クラス5のペプチドが提供される。
R1−Phe−Thr−Ser−Xaa−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Xaa−Glu−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Xaa−Asn−Thr−R2(配列番号1439)
R1−Phe−Thr−Ser−Xaa−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Glu−Arg−Arg−Ala−Gln−Xaa−Phe−Val−Gln−Trp−Leu−Xaa−Asn−Thr−R2(配列番号1413)
R1−Phe−Thr−Ser−Xaa−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Glu−Arg−Arg−Ala−Gln−Asp−Phe−Val−Xaa−Trp−Leu−Xaa−Asn−Thr−R2(配列番号1414)
R1−Phe−Thr−Ser−Xaa−Tyr−Ser−Lys−Tyr−Leu−Asp−Glu−Arg−Arg−Ala−Gln−Xaa−Phe−Val−Xaa−Trp−Leu−Xaa−Asn−Thr−R2(配列番号1412)
ここで、4番目のXaa=アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン酸またはホモシステイン酸であり、10番目のXaa=Asp、Glu、システイン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸であり、16番目のXaaは、Asp、Cys、Orn、ホモシステインまたはアセチルフェニルアラニンであり、19番目のXaaは、Gln、Cys、Orn、ホモシステイン、アセチルフェニルアラニンであり、22番目のXaa=Met、LeuまたはNleであり、R1は、OHまたはNH2であり、R2は、Gly Pro Ser Ser Gly Ala Pro Pro Pro Ser(配列番号1421)、Gly Pro Ser Ser Gly Ala Pro Pro Pro Ser Xaa(配列番号1450;ここで、Xaaは、Cys、Orn、ホモシステインまたはアセチルフェニルアラニンである)、COOHまたはCONH2であり、ここで、ペプチドは、配列番号1413の16番目、配列番号1414の19番目と配列番号1412の16番目および19番目で、任意にPEG化される。いくつかの実施形態では、配列番号1412〜1414および1439の24番目のThrをGlyで置換する。いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、配列番号13または配列番号1414の配列を有し、ここで、R1はOHである。いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、配列番号1413または配列番号1414の配列を有し、ここで、R1はOHであり、R2はCONH2である。いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、配列番号1413または配列番号1414の配列を有し、ここで、R1はOHであり、R2はCONH2であり、24番目のスレオニンはグリシンで置換される。
いくつかの実施形態では、クラス5のペプチドは、対応するアミノ酸の位置で、天然のグルカゴン残基(単数または複数)を置換することによって、天然のGLP−1の1個または2個以上のアミノ酸を有するようにさらに修飾される。たとえば、クラス5のペプチドは、(天然のグルカゴンのアミノ酸番号で)2番目、3番目、17番目、18番目、21番目、23番目、24番目のいずれかに、1個または2個以上のアミノ酸置換を有するものであってもよい。具体的な実施形態では、以下のアミノ酸置換のうちの1個または2個以上で、クラス5のペプチドを修飾する。2番目のセリンをAlaで置換し、3番目のグルタミンをGluで置換し、17番目のアルギニンをGlnで置換し、18番目のArgをAlaで置換し、21番目のAspをGluで置換し、23番目のバリンをIleで置換し、24番目のGlnをAlaで置換する(アミノ酸の位置は、天然のグルカゴン配列での位置である)。具体的な実施形態では、(天然のグルカゴンのアミノ酸番号で)2番目のセリンをAlaで置換し、3番目のグルタミンをGluで置換することによって、クラス5のペプチドを修飾する。もうひとつの具体的な実施形態では、以下のアミノ酸置換のすべてでクラス5のペプチドを修飾する。(天然のグルカゴンのアミノ酸番号で)17番目のアルギニンをGlnで置換し、18番目のArgをAlaで置換し、21番目のAspをGluで置換し、23番目のバリンをIleで置換し、24番目のGlnをAlaで置換する。さらにもうひとつの具体的な実施形態では、(配列番号1401の番号で)21番目のGluだけを含むようにクラス5のペプチドを修飾する。したがって、クラス5のペプチドは、配列番号1460〜1470、1473〜1478、1480〜1488、1490〜1496、1503、1504、1506、1514〜1518のいずれかのアミノ酸配列を有するものであってもよい。
また、本明細書で提供されるのは、(1)本明細書に記載の手段で安定化したαヘリックス(たとえば、分子内架橋あるいは、(配列番号1401の番号で)16番目での1個または2個以上のα,α二置換アミノ酸または酸性アミノ酸の取り込みまたはこれらの組み合わせ、(2)C末端のカルボキシレートに代えて、C末端のアミドまたはエステル、(3)A−B−Cの一般構造、を有するクラス5のペプチドまたはその結合体である。
ここで、Aは以下の化合物からなる群から選択され、
(i)フェニル乳酸(PLA)
(ii)PLAのオキシ誘導体
(iii)ペプチドの2個の連続したアミノ酸がエステル結合またはエーテル結合を介して結合している、2〜6個のアミノ酸からなるペプチド
Bは、任意に、本明細書に記載するような1個または2個以上のアミノ酸修飾を有する、配列番号1401のp番目〜26番目(pは、3、4、5、6または7である)のアミノ酸を表し、たとえば、クラス5のペプチドで説明したいずれかの修飾を含む。たとえば、1個または2個以上の修飾は、以下の修飾からなる群から選択される。
(iv)(配列番号1401のアミノ酸番号で)9番目のAspが、Glu、Cysのスルホン酸誘導体、ホモグルタミン酸、β−ホモグルタミン酸または以下に示す構造を有するシステインのアルキルカルボキシレート誘導体で置換される
(式中、X5は、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニルまたはC2〜C4アルキニルである)
(v)(配列番号1401のアミノ酸番号で)10番目、20番目、24番目の1個または2個のアミノ酸を、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合またはアルキルアミン結合を介してアシル基またはアルキル基に共有結合しているアミノ酸で置換
(vi)(配列番号1401のアミノ酸番号で)16番目、17番目、20番目、21番目、24番目の1個または2個のアミノ酸を、Cys、Lys、オルニチン、ホモシステイン、アセチルフェニルアラニン(Ac−Phe)からなる群(この群のアミノ酸は、親水性部分に共有結合している)から選択されるアミノ酸で置換
(vii)(配列番号1401の番号で)15番目のAspが、システイン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸で置換される
(viii)(配列番号1401の番号で)16番目のSerが、システイン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸で置換される
(ix)(配列番号1401のアミノ酸の番号で)17番目のArgがGlnで置換され、18番目のArgがAlaで置換され、21番目のAspがGluで置換され、23番目のバリンがIleで置換され、24番目のGlnがAlaで置換される
(x)(配列番号1401のアミノ酸番号で)16番目のSerがGluで置換され、20番目のグルタミンがGluで置換され、あるいは、24番目のGlnがGluで置換される
(一般構造A−B−C)のCは、以下からなる群から選択される。
(vii)X
(viii)X−Y
(ix)X−Y−Z
(x)X−Y−Z−R10
ここで、Xは、Met、LeuまたはNleであり、Yは、Asnまたは電荷を持つアミノ酸であり、Zは、Thr、Gly、Cys、Lys、オルニチン(Orn)、ホモシステイン、アセチルフェニルアラニン(Ac−Phe)または電荷を持つアミノ酸であり、R10は、配列番号1421、1426、1427、1450からなる群から選択される。
具体的な態様において、ペプチドは、PLAのオキシ誘導体を有する。本明細書で使用する場合、「PLAのオキシ誘導体」とは、ヒドロキシ基がO−R11で置換された、PLAの修飾された構造を有する化合物を示し、式中、R11は、化学部分である。この点について、PLAのオキシ誘導体は、たとえば、PLAのエステルまたはPLAのエーテルであってもよい。
PLAのオキシ誘導体を生成する方法は、当分野で知られている。たとえば、オキシ誘導体がPLAのエステルである場合、PLAのヒドロキシルと求核物質を持つカルボニルとの反応によって、エステルを形成してもよい。求核物質は、アミンまたはヒドロキシルを含むがこれらに限定されるものではない、好適な求核物質であればよい。したがって、PLAのエステルには、式IVの構造を有するものを用いることが可能である:
(式中、R7は、PLAのヒドロキシルと求核物質を持つカルボニルとの反応時に形成されるエステルである)。
求核物質を持つカルボニル(PLAのヒドロキシルと反応してエステルを形成する)は、たとえば、カルボン酸、カルボン酸誘導体またはカルボン酸の活性化エステルであってもよい。カルボン酸誘導体は、塩化アシル、酸無水物、アミド、エステルまたはニトリルであってもよいが、これらに限定されるものではない。カルボン酸の活性化エステルは、たとえば、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、トシレート(Tos)、カルボジイミドまたはヘキサフルオロホスフェートであってもよい。いくつかの実施形態では、カルボジイミドは、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)または1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DICD)である。いくつかの実施形態では、ヘキサフルオロホスフェートは、ヘキサフルオロホスフェートベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、o−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウム−ヘキサフルオロ−ホスフェート(HBTU)からなる群から選択される。
ヒドロキシ基(PLAのヒドロキシルなど)との反応からエーテルを生成する方法も、当分野で知られている。たとえば、PLAのヒドロキシ基を、ハロゲン化アルキルまたはトシル化アルキルアルコールと反応させ、エーテル結合を形成する。
具体的な実施形態では、酸素含有結合を介して(エステル結合またはエーテル結合を介するなど)PLAに結合する化学部分は、ポリマー(ポリアルキレングリコールなど)、炭水化物、アミノ酸、ペプチドまたは脂質、たとえば、脂肪酸またはステロイドである。
具体的な実施形態では、化学部分はアミノ酸であり、これは任意に、式IVがデプシペプチドになるようなペプチドの一部であってもよい。この点について、ペプチドが、PLA残基より手前に1個または2個以上(1個、2個、3個、4個、5個、6個またはそれより多いなど)のアミノ酸のN末端を有するように、PLAがペプチドのN末端のアミノ酸残基以外の位置にあってもよい。たとえば、ペプチドは、n番目にPLAを有するものであってもよく、ここで、nは、ペプチドの2、3、4、5または6である。
PLA残基よりN末端側のアミノ酸は、合成であっても天然であってもよい。具体的な実施形態では、N末端PLAであるアミノ酸は、天然のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、PLAよりN末端側のアミノ酸は、天然のグルカゴンのN末端のアミノ酸である。たとえば、ペプチドは、N末端に、配列番号1452〜1456のいずれかのアミノ酸配列を有するものであってもよく、ここで、PLAは、エステル結合を介してスレオニンに結合している。
配列番号1452 His−Ser−Gln−Gly−Thr−PLA
配列番号1453 Ser−Gln−Gly−Thr−PLA
配列番号1454 Gln−Gly−Thr−PLA
配列番号1455 Gly−Thr−PLA
配列番号1456 Thr−PLA
別の実施形態では、N末端のアミノ酸のうちの1個または2個以上を、天然のグルカゴンのアミノ酸以外のアミノ酸で置換してもよい。たとえば、ペプチドが、5番目または6番目のアミノ酸としてPLAを有する場合、1番目および/または2番目のアミノ酸は、ジペプチジルペプチダーゼIVによる切断に対する感受性を低減するアミノ酸であってもよい。特に、いくつかの実施形態では、ペプチドの1番目は、D−ヒスチジン、α,α−ジメチルイミダゾール酢酸(DMIA)、N−メチルヒスチジン、α−メチルヒスチジン、イミダゾール酢酸、デスアミノヒスチジン、ヒドロキシルヒスチジン、アセチルヒスチジン、ホモヒスチジンからなる群から選択されるアミノ酸である。特に、いくつかの実施形態では、アンタゴニスト/アゴニストのペプチドの2番目は、D−セリン、D−アラニン、バリン、グリシン、N−メチルセリン、N−メチルアラニン、アミノイソ酪酸(Aib)からなる群から選択されるアミノ酸である。また、たとえば、ペプチドが、4番目、5番目または6番目のアミノ酸としてPLAを有する場合、ペプチドの3番目のアミノ酸は、天然のグルカゴンでは天然のグルタミン残基であるのに対し、グルタミン酸であってもよい。本発明の例示としての実施形態では、ペプチドは、N末端に、配列番号1457〜1459のいずれかのアミノ酸配列を有する。
式IVの化合物を有するペプチドに関して、ポリマーは、PLAのヒドロキシ基と反応できるものであれば、どのようなポリマーであってもよい。ポリマーは、自然にまたは普通に求核物質を持つカルボニルを有するものであってもよい。あるいは、ポリマーは、カルボニルを持つカルボニルを含むように誘導体化されたものであってもよい。ポリマーは、以下に示すいずれかの物質の誘導体化されたポリマーであってもよい:ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレンおよびこれらの誘導体(ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレートなど)、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのポリマー(ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)など)、ポリビニルポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルピロリドンなど)、ポリグリコライド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびこれらのコポリマー、セルロース(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、セルロース硫酸ナトリウム塩など)、ポリプロピレン、ポリエチレン(ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)など)、ポリスチレン。
ポリマーは、合成生分解性ポリマー(乳酸およびグリコール酸のポリマー、ポリ酸無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−コカプロラクトン)など)、天然の生分解性ポリマー(たとえば、アルギン酸および他の多糖類(デキストランおよびセルロースを含む)、コラーゲン、これらの化学的誘導体(置換、化学基の付加、たとえば、アルキル、アルキレン、ヒドロキシル化、酸化ならびに、当業者によって常法でなされる他の修飾)、アルブミンおよび他の親水性タンパク質(ゼインおよび他のプロラミンおよび疎水性タンパク質など))ならびにこれらのコポリマーまたは混合物をはじめとする、生分解性ポリマーであってもよい。通常、これらの物質は、in vivoでの酵素による加水分解または水への曝露によって、あるいは表面が浸食されたり、内部まで一挙に浸食されたりすることで、分解される。
ポリマーは、H. S. Sawhney, C. P. Pathak and J. A. Hubbell in Macromolecules, 1993, 26, 581-587(その教示内容を本明細書に援用する)に記載された生浸食性ハイドロゲル、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ酸無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)などの生付着性ポリマーであってもよい。
いくつかの実施形態では、ポリマーは、水溶性ポリマーである。好適な水溶性ポリマーは当分野で知られており、たとえば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC;Klucel)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC;Methocel)、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルブチルセルロース、ヒドロキシプロピルペンチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース(Ethocel)、ヒドロキシエチルセルロース、さまざまなアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロース、さまざまなセルロースエーテル、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルシウムカルボキシメチルセルロース、酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、メタクリル酸コポリマー、ポリメタクリル酸、ポリメチルメタクリレート、無水マレイン酸/メチルビニルエーテルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムおよびポリアクリル酸カルシウム、ポリアクリル酸、酸性カルボキシポリマー、カルボキシポリメチレン、カルボキシビニルポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリメチルビニルエーテルコ無水マレイン酸、カルボキシメチルアミド、カリウムメタクリレートジビニルベンゼンコポリマー、ポリオキシエチレングリコール、ポリエチレンオキシドならびに、これらの誘導体、塩および組み合わせがあげられる。
具体的な実施形態では、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)などをはじめとするポリアルキレングリコールである。
炭水化物は、α脱離基を持つカルボニルを有するまたは有するようにできるものであれば、どのような炭水化物であってもよい。炭水化物は、たとえば、α脱離基を持つカルボニルを有するように誘導体化されたものであってもよい。この点について、炭水化物は、単糖(グルコース、ガラクトース、フルクトースなど)、二糖(スクロース、ラクトース、マルトースなど)、オリゴ糖(ラフィノース、スタキオースなど)、多糖(スターチ、アミラーゼ、アミロペクチン、セルロース、キチン、カロース、ラミナリン、キシラン、マンナン、フコイダン、ガラクトマンナンの誘導体化された形態であってもよい。
脂質は、α脱離基を持つカルボニルを有するどのような脂質であってもよい。脂質は、たとえば、カルボニルを有するように誘導体化されたものであってもよい。この点について、脂質は、脂肪酸(C4〜C30脂肪酸、エイコサノイド、プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサン、N−アシルエタノールアミンなど)、グリセロ脂質(一置換グリセロール、二置換グリセロール、三置換グリセロールなど)、グリセロリン脂質(ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンなど)、スフィンゴ脂質(スフィンゴシン、セラミドなど)、ステロール脂質(ステロイド、コレステロールなど)、フェノール脂質、糖脂質またはポリケタイドの誘導体であってもよい。いくつかの実施形態では、脂質は、オイル、ワックス、コレステロール、ステロール、脂溶性ビタミン、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドまたはリン脂質である。
いくつかの実施形態では、R7は、分子量が約100kDaまたはそれ未満、たとえば、約90kDaまたはそれ未満、約80kDaまたはそれ未満、約70kDaまたはそれ未満、約60kDaまたはそれ未満、約50kDaまたはそれ未満、約40kDaまたはそれ未満である。したがって、R7は、分子量が約35kDaまたはそれ未満、約30kDaまたはそれ未満、約25kDaまたはそれ未満、約20kDaまたはそれ未満、約15kDaまたはそれ未満、約10kDaまたはそれ未満、約5kDaまたはそれ未満あるいは、約1kDaであってもよい。
別の実施形態では、一般構造A−B−Cを有するペプチドは、Aとして2〜6個のアミノ酸からなるペプチドを有し、この場合、Aのペプチドの2個の連続したアミノ酸は、エステル結合またはエーテル結合を介して結合している。エステル結合またはエーテル結合は、たとえば、2番目と3番目のアミノ酸、3番目と4番目のアミノ酸、4番目と5番目のアミノ酸または5番目と6番目のアミノ酸の間であってもよい。任意に、ポリマー(親水性ポリマーなど)への結合を含むもうひとつの化学部分への共有結合、アルキル化またはアシル化によって、Aのペプチドをさらに修飾してもよい。
具体的な実施形態では、PLAを有する上述したクラス5のペプチドを、PLAのエステルまたはPLAのエーテルなどのPLAのオキシ誘導体を有するように修飾する。たとえば、クラス5のペプチドは、配列番号1402、1405〜1420、1422〜1425、1432〜1436、1438、1439、1445、1446、1451のいずれのアミノ酸配列を有するものであってもよく、ここで、PLAは、エステル結合またはエーテル結合を介して、アミノ酸、ペプチド、ポリマー、アシル基またはアルキル基に結合している。アミノ酸、ペプチド、ポリマー、アシル基またはアルキル基は、本明細書に記載のいずれであってもよい。PLAがエステル結合を介してアミノ酸またはペプチドに結合している場合、クラス5のペプチドは、デプシペプチドであるとみなすことができる。
また、もうひとつの具体的な実施形態では、PLAを欠いた上述したクラス5のペプチドを、(天然のグルカゴンの番号で)7番目のアミノ酸よりN末端側の2個の連続したアミノ酸の間に少なくとも1個のエステル結合またはエーテル結合を有するように修飾する。具体的な実施形態では、クラス5のペプチドは、2個の連続したアミノ酸の間に、少なくとも1個のエステル結合またはエーテル結合を有する。一層具体的な実施形態では、クラス5のペプチドは、配列番号1401のN末端の6個のアミノ酸を有し、N末端の6個のアミノ酸の2個の連続したアミノ酸が、エステル結合またはエーテル結合を介して結合している。
Aのペプチドは、少なくとも2個の連続したアミノ酸がエステル結合またはエーテル結合を介して結合されているかぎり、合成または天然のどのようなアミノ酸を有するものであってもよい。具体的な実施形態では、Aのペプチドは、天然のグルカゴンのアミノ酸を有する。1番目および/または2番目のアミノ酸は、ジペプチジルペプチダーゼIVによる切断に対する感受性を低減するアミノ酸であってもよい。たとえば、Aのペプチドは、1番目に、D−ヒスチジン、α,α−ジメチルイミダゾール酢酸(DMIA)、N−メチルヒスチジン、α−メチルヒスチジン、イミダゾール酢酸、デスアミノヒスチジン、ヒドロキシルヒスチジン、アセチルヒスチジン、ホモヒスチジンからなる群から選択されるアミノ酸を含むものであってもよい。特に、いくつかの実施形態では、Aのペプチドの2番目は、D−セリン、D−アラニン、バリン、グリシン、N−メチルセリン、N−メチルアラニン、アミノイソ酪酸(Aib)からなる群から選択されるアミノ酸である。また、たとえば、Aのペプチドの3番目のアミノ酸は、天然のグルカゴンでは天然のグルタミン残基であるのに対し、グルタミン酸であってもよい。したがって、一般構造A−B−Cのペプチドは、以下に示すアミノ酸配列を有するものであってもよい。
Xaa1−Xaa2−Xaa3−Thr−Gly−Phe(配列番号1507)
Xaa2−Xaa3−Thr−Gly−Phe(配列番号1508)または
Xaa3−Thr−Gly−Phe(配列番号1509)
ここで、Xaa1は、His、D−ヒスチジン、α,α−ジメチルイミダゾール酢酸(DMIA)、N−メチルヒスチジン、α−メチルヒスチジン、イミダゾール酢酸、デスアミノヒスチジン、ヒドロキシルヒスチジン、アセチルヒスチジン、ホモヒスチジンからなる群から選択され、Xaa2は、Ser、D−セリン、D−アラニン、バリン、グリシン、N−メチルセリン、N−メチルアラニン、アミノイソ酪酸(Aib)からなる群から選択され、Xaa3は、GlnまたはGluである。
いくつかの実施形態では、Bは、最大で3個のアミノ酸修飾によって修飾される。たとえば、配列番号1401の天然のアミノ酸配列を表すBは、1個または2個以上の保存的なアミノ酸修飾によって修飾される。
もうひとつの実施形態では、Bは、本明細書に記載するような(iv)〜(x)からなる群から選択される1個または2個以上のアミノ酸修飾を有する。具体的な実施形態では、Bは、アミノ酸修飾(v)および(vi)の一方または両方を有する。別の具体的な実施形態では、Bは、(v)および(vi)に加えて、(iv)、(vii)、(viii)、(ix)、(x)からなる群から選択されるアミノ酸修飾のうちの1つまたは組み合わせを有する。
本明細書で説明するように、一般構造A−B−Cを有するペプチドは、本明細書に記載するように、Yおよび/またはZなどのC末端に、1個または2個以上の電荷を持つアミノ酸を有するものであってもよい。上記に代えてまたは上記に加えて、一般構造A−B−Cを有するペプチドは、CがX−Y−Zを有する場合、ZよりC末端側に、1〜2個の電荷を持つアミノ酸をさらに有するものであってもよい。電荷を持つアミノ酸は、たとえば、Lys、Arg、His、Asp、Gluのうちの1つであってもよい。具体的な実施形態では、YはAspである。
いくつかの実施形態では、一般構造A−B−Cを有するペプチドは、(配列番号1401のアミノ酸番号で)1番目、16番目、20番目、21番目または24番目または一般構造A−B−Cを有するペプチドのN末端残基またはC末端残基に、アミノ酸残基に共有結合する親水性部分を有する。具体的な実施形態では、親水性部分は、一般構造A−B−Cを有するペプチドのCys残基に結合される。この点について、天然のグルカゴン(配列番号1401)の16番目、21番目、24番目または29番目のアミノ酸を、Cys残基で置換してもよい。あるいは、たとえば、一般構造A−B−Cを有するペプチドが、C末端の延長部分(配列番号1401のアミノ酸番号での位置)を有する場合、親水性部分を有するCys残基を、30番目または40番目として、一般構造A−B−Cを有するペプチドのC末端に付加してもよい。あるいは、親水性部分を、一般構造A−B−Cを有するペプチドのPLAに、PLAのヒドロキシル部分を介して結合してもよい。親水性部分は、本明細書に記載のいずれであってもよく、たとえば、ポリエチレングリコールを含む。
具体的な態様において、一般構造A−B−Cを有するペプチドは、分子内架橋の取り込みがゆえに、安定化されたαヘリックスを有する。いくつかの実施形態では、分子内架橋はラクタム架橋である。ラクタム架橋は、(配列番号1401のアミノ酸番号で)9番目と12番目のアミノ酸の間、12番目と16番目のアミノ酸の間、16番目と20番目のアミノ酸の間、20番目と24番目のアミノ酸の間または24番目と28番目のアミノ酸であってもよい。具体的な実施形態では、(配列番号1401のアミノ酸番号で)12番目と16番目のアミノ酸または16番目と20番目のアミノ酸を、ラクタム架橋によって結合する。他のラクタム架橋の位置も考えられている。
上記に加えてあるいは上記に代えて、一般構造A−B−Cを有するペプチドは、たとえば、(配列番号1401のアミノ酸番号で)16番目、20番目、21番目または24番目のいずれかに、α,α−二置換アミノ酸を有するものであってもよい。いくつかの実施形態では、α,α−二置換アミノ酸はAibである。具体的な態様において、Aibは、(配列番号1401の番号で)16番目に位置する。
上記に代えてまたは上記に加えて、一般構造A−B−Cを有するペプチドを、(配列番号1401の番号で)16番目に酸性アミノ酸を有するように修飾してもよく、この修飾はαヘリックスの安定性を高めるものである。いくつかの実施形態では、酸性アミノ酸は、側鎖のスルホン酸または側鎖のカルボン酸を有するアミノ酸である。一層具体的な実施形態では、酸性アミノ酸は、Glu、Asp、ホモグルタミン酸、Cysのスルホン酸誘導体、システイン酸、ホモシステイン酸、Asp、以下に示す構造を有するCysのアルキル化された誘導体からなる群から選択される。
式中、X5は、C1〜C4アルキル、C2〜C4アルケニルまたはC2〜C4アルキニルである。
具体的な実施形態では、クラス5のペプチドは、配列番号1460〜1470、1473〜1478、1480〜1488、1490〜1496、1503、1504、1506、1514〜1518のいずれのアミノ酸配列を有するものであってもよく、あるいは、表13のペプチド2〜6、表14のペプチド1〜8、表15のペプチド2〜6、8、9のアミノ酸配列を有する。
いくつかの実施形態では、一般構造A−B−Cを有するペプチドは、クラス5のペプチドである。具体的な実施形態では、ペプチドは、GLP−1受容体に対して天然のGLP−1が達成する最大限の活性化作用の少なくとも約50%を示し、かつ、グルカゴン受容体で天然のグルカゴンが達成する最大限の反応の少なくとも約50%を阻害する。もうひとつの具体的な実施形態では、ペプチドは、GLP−1受容体に対して天然のGLP−1が達成する最大限の活性化作用の少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または約100%を示す。上記に代えてまたは上記に加えて、ペプチドは、受容体で天然のグルカゴンが達成する最大限の反応の少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または約100%を阻害するものであってもよい。
いくつかの実施形態では、以下のものを有する、クラス5のペプチドまたはその結合体を有するペプチドが提供される。
(1)以下の修飾を含むがこれらに限定されるものではない、グルカゴンアンタゴニスト活性を与える修飾
(a)(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)6番目のPheからPLAへの置換、任意に、野生型グルカゴンのN末端からの1〜5個のアミノ酸の欠失または
(b)野生型グルカゴンのN末端からの2〜5個のアミノ酸の欠失;任意に、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)野生型グルカゴンの9番目のAspから、グルタミン酸、ホモグルタミン酸またはシステインのスルホン酸誘導体への置換
(2)以下の修飾を含むがこれら限定されるものではない、GLP−1アゴニスト活性を与える修飾
(a)野生型グルカゴンの12番目〜29番目、たとえば、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目または29番目のうちの1箇所、2箇所、3箇所、4箇所または5箇所以上でのアミノ酸でのα,α−二置換アミノ酸の挿入または置換または
(b)野生型グルカゴンの12番目〜29番目のアミノ酸への分子内架橋、たとえば塩結合またはラクタム架橋または他のタイプの共有結合の導入または
(c)(天然のグルカゴンのアミノ酸番号で)2番目、3番目、17番目、18番目、21番目、23番目または24番目1箇所または2箇所以上のアミノ酸から、GLP−1の対応するアミノ酸への置換、たとえば、2番目のセリンをAlaで置換、3番目のグルタミンをGluで置換、17番目のアルギニンをGlnで置換、18番目のArgをAlaで置換、21番目のAspをGluで置換、23番目のバリンをIleで置換および/または24番目のGlnをAlaで置換または
(d)野生型グルカゴンのアミノ酸番号で12番目〜29番目のアミノ酸のあたりでαヘリックス構造を安定化する他の修飾
(3)GLP−1アゴニスト活性を高める他の修飾、たとえば、C末端のカルボキシレートに代えたC末端のアミドまたはエステルならびに、任意に
(4)以下の修飾のうちの1つまたは2つ以上
(a)たとえばN末端または6番目、16番目、17番目、20番目、21番目、24番目、29番目、40番目またはC末端のアミノ酸でのポリエチレングリコールなどの親水性部分に対する共有結合および/または
(b)アシル化またはアルキル化ならびに、任意に
(5)以下の追加の修飾のうちの1つまたは2つ以上
(a)意に、DPP−IV切断に対する耐性を改善する、本明細書に記載するような1番目または2番目での修飾を伴う、N末端に対するアミノ酸の共有結合、たとえば、任意に(野生型グルカゴンの番号で)6番目でPLAへのエステル結合を介したN末端に対する1〜5個のアミノ酸の共有結合
(b)(野生型グルカゴンの番号で)29番目および/または28番目ならびに、任意に27番目のアミノ酸の欠失
(c)C末端に対するアミノ酸の共有結合
(d)所望の活性を保持したままでの非保存的な置換、保存的な置換、付加または欠失、たとえば、2番目、5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目または29番目のうちの1箇所または2箇所以上での保存的な置換、10番目のTyrからValまたはPheへの置換、12番目のLysからArgへの置換、これらの位置の1個または2個以上のアミノ酸からAlaへの置換、
(e)グルタミン酸、ホモグルタミン酸、システイン酸またはホモシステイン酸で置換することなどによる15番目のアスパラギン酸の修飾(この修飾が分解を低減することがある);または16番目のセリンの修飾、たとえば、スレオニン、Aib、グルタミン酸の置換による修飾あるいは、原子4個の長さの側鎖を有する別の負の電荷を持つアミノ酸への置換あるいは、グルタミン、ホモグルタミン酸またはホモシステイン酸のうちの任意の1つへの置換による修飾(この修飾も同様に、15番目のアスパラギン酸と16番目のセリンとの間の結合の切断による分解を低減することがある)、
(f)酸化による分解を低減するための、ロイシンまたはノルロイシンで置換することなどによる27番目のメチオニンの修飾、
(g)Glnの脱アミド化によって起こる分解を低減するための、AlaまたはAibで置換することなどによる20番目または24番目のGlnの修飾、
(h)Aspが脱水し、環状スクシンイミド中間体を形成した後、イソアスパラギン酸へ異性体化することで生じる分解を低減するための、Gluで置換することなどによる21番目のAspの修飾、
(j)本明細書に記載するようなホモダイマー化またはヘテロダイマー化、
(k)上記の組み合わせ。
同一クラスの修飾を任意に組み合わせてもよいおよび/または異なるクラスの修飾を組み合わせてもよいことは、理解できよう。たとえば、(1)(a)の修飾を(2)(a)および(3)と組み合わせてもよい;(1)(a)の修飾を、ラクタム架橋または塩結合などの(2)(b)および(3)と組み合わせてもよい;(1)(a)の修飾を(2)(c)および(3)と組み合わせてもよい;(1)(b)の修飾を(2)(a)および(3)と組み合わせてもよい;(1)(b)の修飾をラクタム架橋または塩結合などの(2)(b)および(3)と組み合わせてもよい;(1)(b)の修飾を(2)(c)および(3)と組み合わせてもよい;上記のいずれかを(4)(a)および/または(4)(b)と組み合わせてもよい;および上記のいずれかを(5)(a)から(5)(k)のいずれかと組み合わせてもよい。
例示としての実施形態では、α,α−二置換アミノ酸Aibを、(野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)16番目、20番目、21番目または24番目のうちの1箇所、2箇所、3箇所またはすべてで置換する。
例示としての実施形態では、分子内架橋は塩結合である。
他の例示としての実施形態では、分子内架橋は、ラクタム架橋などの共有結合である。いくつかの実施形態では、ラクタム架橋は、(配列番号1401のアミノ酸番号で)9番目と12のアミノ酸、12番目と16番目のアミノ酸、16番目と20番目のアミノ酸、20番目と24番目のアミノ酸または24番目と28番目のアミノ酸の間である。
例示としての実施形態では、(配列番号1401の野生型グルカゴンのアミノ酸番号で)アシル化またはアルキル化は、6番目、10番目、20番目または24番目またはN末端またはC末端である。
例示としての実施形態では、以下の修飾を含む。
(i)(配列番号1401の番号で)15番目のAspから、システイン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸への置換、
(ii)(配列番号1401の番号で)16番目のSerから、システイン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸への置換、
(iii)28番目のAsnから電荷を持つアミノ酸への置換、
(iv)28番目のAsnから、Lys、Arg、His、Asp、Glu、システイン酸、ホモシステイン酸からなる群から選択される電荷を持つアミノ酸への置換、
(v)28番目でのAsn、AspまたはGluへの置換、
(vi)28番目でのAspへの置換、
(vii)28番目でのGluへの置換、
(viii)29番目のThrから電荷を持つアミノ酸への置換、
(ix)29番目のThrから、Lys、Arg、His、Asp、Glu、システイン酸、ホモシステイン酸からなる群から選択される電荷を持つアミノ酸への置換、
(x)29番目でのAsp、GluまたはLysへの置換、
(xi)29番目でのGluへの置換、
(xii)29番目の後ろに電荷を持つ1〜3個のアミノ酸の挿入、
(xiii)29番目の後ろにGluまたはLysの挿入、
(xiv) 29番目の後ろにGly−LysまたはLys−Lysの挿入、
またはこれらの組み合わせ。
GLP−1受容体アゴニスト活性、グルカゴン受容体アンタゴニスト活性、ペプチドの溶解性および/またはペプチドの安定性を高める、上述した修飾を、個々に適用してもよいし、組み合わせで適用してもよい。
安定性を高めるための修飾
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示のクラス5のペプチドを、クラス5のペプチドのカルボキシ末端のアミノ酸(24番目)に結合した配列番号1421(GPSSGAPPPS)または配列番号1450のアミノ酸配列を含むようにさらに修飾し、対象個体に投与して体重減少を誘導する、あるいは、体重維持を助けることが可能である。特に、クラス5のペプチドは、配列番号1405、配列番号1406、配列番号1407、配列番号1408、配列番号1409、配列番号1412、配列番号1413、配列番号1414、配列番号1416、配列番号1417、配列番号1418、配列番号1419、配列番号1422、配列番号1423、配列番号1424、配列番号1425からなる群から選択される配列を有し、ペプチドまたはクラス5のペプチドのカルボキシ末端のアミノ酸(24番目)に結合した配列番号1421(GPSSGAPPPS)または配列番号1450のアミノ酸配列をさらに有し、食欲を抑制し、体重減少/体重維持を誘導するのに用いられる。いくつかの実施形態では、投与されるペプチドまたはクラス5のペプチドは、配列番号1416、配列番号1417、配列番号1418、配列番号1419からなる群から選択される配列を有し、クラス5のペプチドのカルボキシ末端のアミノ酸(24番目)に結合した配列番号1421(GPSSGAPPPS)のアミノ酸配列をさらに有する。いくつかの実施形態では、この方法は、配列番号1445または配列番号1446の配列を有するペプチドまたはクラス5のペプチドを投与することを含む。
したがって、本明細書に開示のクラス5のペプチドを同様に修飾して、水性バッファー中での早期の化学反応による開裂に対する感受性を低減することが可能である。いくつかの実施形態によれば、天然のグルカゴンの対応する15番目に位置する天然のアスパラギン酸のアミノ酸を、システイン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換することによって、本明細書に記載のクラス5のペプチドを、水溶液中でのその安定性を高めるようにさらに修飾してもよい。いくつかの実施形態によれば、配列番号1405、配列番号1406、配列番号1407または配列番号1408のクラス5のペプチドの10番目におけるアスパラギン酸残基を、システイン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸からなる群から選択されるアミノ酸で置換してもよく、いくつかの実施形態では、配列番号1405、配列番号1406、配列番号1407または配列番号1408の10番目の天然のアスパラギン酸を、グルタミン酸で置換する。いくつかの実施形態によれば、水溶液中での安定性が改善されたクラス5のペプチドが提供され、ここで、アンタゴニストは、配列番号1409の修飾された配列を有し、この修飾は、配列番号1409の10番目のAspからGluへの置換を含む。いくつかの実施形態では、配列番号1422、配列番号1423、配列番号1424、配列番号1425からなる群から選択される配列を有するクラス5のペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、クラス5のペプチドは、アミド化されている。
天然のグルカゴンの15番目と16番目のAsp−Ser配列は、水性バッファーにおける天然のホルモンの早期の化学反応による開裂につながる独特の不安定なジペプチドとして同定されている。たとえば、0.01NのHClにて37℃で2週間維持すると、天然のグルカゴンの50%を超える部分が切断されて断片になってしまうことがある。この遊離した2つのペプチド断片1−15および16−29は、グルカゴン様の生物学的活性を持たず、よって、グルカゴンおよびその関連の類縁体の水溶液による使用前調製に対する制約を示す。天然のグルカゴンの15番目のAspをGluで選択的に化学置換すると、15番目と16番目のペプチド結合の化学反応による開裂が、事実上なくなることが観察されている。
一例としてのさらに別の実施形態では、特に酸性バッファーまたはアルカリ性バッファーでの経時的なペプチドの分解を低減するように、天然のグルカゴンの15番目または16番目に対応するアミノ酸を修飾することによって、上記の化合物のいずれかをさらに修飾して安定性を改善してもよい。
溶解性を高めるための修飾
クラス5のペプチドをさらに修飾して、特定の態様ではグルカゴンアンタゴニスト活性およびGLP−1アゴニスト活性を保持したまま、生理的なpHの水溶液に対するペプチドの溶解性を改善することが可能である。配列番号1405のペプチドの12番目、15番目、16番目、19番目および24番目に対応する位置または配列番号1406のペプチドの12番目、16番目、19番目または24番目に対応する位置に親水基を導入することで、親化合物のグルカゴンアンタゴニスト活性およびGLPアゴニスト活性を保持したまま、生理的なpHの溶液に対する、得られるペプチドの溶解性を改善することが可能である。したがって、いくつかの実施形態では、配列番号1405または配列番号1406のペプチドの12番目、15番目、16番目、19番目および24番目のアミノ酸に対応するアミノ酸の側鎖に共有結合している1個または2個以上の親水基を有するようにさらに修飾された本明細書に開示のクラス5のペプチド。別の実施形態では、配列番号1405または配列番号1406のアミノ酸の16番目および19番目に対応するアミノ酸の側鎖は親水基に共有結合し、いくつかの実施形態では、親水基はポリエチレングリコール(PEG)である。
カルボキシ末端に電荷を導することで、クラス5のグルカゴン関連ペプチドを修飾し、ペプチドのアゴニスト特性を維持したままペプチドの溶解性を高めることが可能である。溶解性が高まると、グルカゴン溶液を、中性のpH付近で調製および保管できるようになる。グルカゴン溶液を比較的中性のpH(pH約6.0〜約8.0など)で調製すると、クラス5のペプチドの長期の安定性が改善される。
本出願人らは、本明細書に開示のクラス5のペプチドを同様に修飾して、場合によっては、グルカゴンアンタゴニスト活性およびGLP−1活性を保持したまま、比較的中性のpH(pH約6.0〜約8.0など)の水溶液に対する溶解性を高めることが可能であると予測している。したがって、いくつかの実施形態は、天然の電荷を持たないアミノ酸を電荷を持つアミノ酸で置換するか、電荷を持つアミノ酸をカルボキシ末端に付加することによって、ペプチドに電荷を付加するために、野生型グルカゴン(配列番号1401)の6番目〜29番目に存在する天然のアミノ酸をさらに修飾した配列番号1405、配列番号1406、配列番号1407または配列番号1408のグルカゴンアンタゴニスト/GLP−1に関するものである。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示のクラス5のペプチドの電荷を持たない天然のアミノ酸1〜3個を、電荷を持つアミノ酸で置換する。いくつかの実施形態では、電荷を持つアミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸からなる群から選択される。特に、本出願人らは、(天然のグルカゴンに比して)対応する28番目および/または29番目にある普通に生じるアミノ酸を電荷を持つアミノ酸で置換することおよび/または1〜2個の電荷を持つアミノ酸をペプチドのカルボキシ末端に付加することで、生理的に関連するpH(すなわち、pH約6.5〜約7.5)の水溶液に対するクラス5のペプチドの溶解性および当該水溶液中における安定性が高められることを見出した。したがって、親ペプチドの生物学的活性を保持したまま、特に約5.5〜約8.0の範囲のpHで、水溶液に対する溶解性に同様の作用を持つように、クラス5のペプチドの上記のような修飾が予想される。
いくつかの実施形態によれば、これらの配列の23番目および/または24番目の天然のアミノ酸を、負の電荷を持つアミノ酸(アスパラギン酸またはグルタミン酸など)で置換し、任意に、負の電荷を持つアミノ酸(アスパラギン酸またはグルタミン酸など)を、ペプチドのカルボキシ末端に付加することによって、配列番号1405、配列番号1406、配列番号1407または配列番号1408のクラス5のペプチドを修飾する。別の実施形態では、配列番号1405、配列番号1406、配列番号1407または配列番号1408の24番目の天然のアミノ酸を、正の電荷を持つアミノ酸(リジン、アルギニンまたはヒスチジンなど)で置換し、任意に、1個または2個の正の電荷を持つアミノ酸(リジン、アルギニンまたはヒスチジンなど)を、ペプチドのカルボキシ末端に付加することによって、配列番号1405、配列番号1406、配列番号1407または配列番号1408を有するクラス5のペプチドを修飾する。いくつかの実施形態によれば、類縁体が、配列番号1415または配列番号1451のアミノ酸配列を有する、溶解性および安定性が改善されたクラス5のペプチドが提供される。ただし、配列番号1415または配列番号1451の23番目または24番目の少なくとも1個のアミノ酸が、酸性アミノ酸で置換および/または追加の酸性アミノ酸が配列番号1415または配列番号1451のカルボキシ末端に付加される。いくつかの実施形態では、酸性アミノ酸は、Asp、Glu、システイン酸、ホモシステイン酸からなる群から独立に選択される。
いくつかの実施形態によれば、アンタゴニストが、配列番号1416、配列番号1417、配列番号1418または配列番号1419のアミノ酸配列を有する、溶解性および安定性が改善されたクラス5のペプチドが提供される。いくつかの実施形態によれば、配列番号1416または配列番号1417を有するグルカゴンアゴニストが提供される。いくつかの実施形態では、クラス5のペプチドは、配列番号1420の配列を有する。
いくつかの実施形態によれば、配列番号1415または配列番号1451の配列を有する、クラス5のペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号1415または配列番号1451の4番目は、アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、システイン酸またはホモシステイン酸であり、いくつかの実施形態では、4番目は、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン酸またはホモシステイン酸であり、別の実施形態では、配列番号1415または配列番号1451の4番目は、アスパラギン酸またはグルタミン酸であり、いくつかの実施形態では、配列番号1415または配列番号1451の4番目は、アスパラギン酸である。いくつかの実施形態では、配列番号1415の4番目がアスパラギン酸であり、配列番号1415の10番目がグルタミン酸である、配列番号1415または配列番号1451の配列を有するクラス5のペプチドが提供される。別の実施形態では、配列番号1415または配列番号1451のC末端のアミノ酸を、天然のカルボン酸基をアミドまたはエステルなどの電荷が中性の基で置換するように修飾する。
クラス5のペプチド融合体
別の実施形態では、本明細書に記載のクラス5のペプチドのカルボキシ末端のアミノ酸は、配列番号1421、1426、1427、1450からなる群から選択される配列を有する第2のペプチドに共有結合している。たとえば、いくつかの実施形態では、配列番号1415、配列番号1451、配列番号1405、配列番号1406、配列番号1407、配列番号1408、配列番号1412、配列番号1413、配列番号1414、配列番号1416、配列番号1417、配列番号1418、配列番号1419、配列番号1422、配列番号1423、配列番号1424、配列番号1425のクラス5のペプチドは、配列番号1421(GPSSGAPPPS)、配列番号1426(KRNRNNIA)、配列番号1427(KRNR)、配列番号1450(GPSSGAPPPSX)からなる群から選択される配列を有する第2のペプチドに共有結合している。
いくつかの実施形態では、配列番号1405、配列番号1406、配列番号1407、配列番号1408、配列番号1409、配列番号1422、配列番号1423、配列番号1424、配列番号1425からなる群から独立に選択される2つの配列を有し、クラス5のペプチドのカルボキシ末端のアミノ酸に結合した配列番号1421(GPSSGAPPPS)のアミノ酸配列をさらに有する、クラス5のペプチドダイマーが提供される。
いくつかの実施形態では、ペプチドのC末端の1個または2個のアミノ酸の短縮または欠失(すなわち、天然のグルカゴンの29番目あるいは、28番目と29番目のアミノ酸の短縮)によって、クラス5のペプチドをさらに修飾する。好ましくは、短縮は、クラス5のペプチドの活性(グルカゴン拮抗作用/GLP−1活性化作用など)に影響しない。
クラス5のペプチド結合体
グルカゴンペプチドが、任意に共有結合を介して、任意にリンカーを介して、結合体部分に結合している、クラス5のペプチドの結合体も提供される。
クラス5のペプチドがポリエチレングリコール鎖を有する実施形態では、ポリエチレングリコール鎖は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。いくつかの実施形態によれば、ポリエチレングリコール鎖は、平均分子量が、約500〜約10,000ダルトンの範囲から選択される。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコール鎖は、平均分子量が、約1,000〜約5,000ダルトンの範囲から選択される。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコール鎖は、平均分子量が、約1,000〜約5,000ダルトンの範囲から選択される。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコール鎖は、平均分子量が約1,000〜約2,000ダルトンから選択される。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコール鎖は、平均分子量が約1,000ダルトンである。
いくつかの実施形態では、PEG化されたクラス5のペプチドは、配列番号1415または配列番号1451の配列からなるペプチドを有し、ここで、ポリエチレングリコール鎖は、配列番号1415または配列番号1451の11番目、12番目、15番目、16番目、19番目、24番目から選択されるアミノ酸に結合し、PEG鎖の分子量は約1,000〜約5,000ダルトンである。いくつかの実施形態では、PEG化されたクラス5のペプチドは、配列番号1415または配列番号1451の配列からなるペプチドを有し、ここで、ポリエチレングリコール鎖は、配列番号1415または配列番号1451の16番目または19番目でアミノ酸に結合し、PEG鎖の分子量は約1,000〜約5,000ダルトンである。別の実施形態では、修飾されたクラス5のペプチドは、このペプチドに共有結合している2つまたは3つ以上のポリエチレングリコール鎖を有し、この場合のグルカゴン鎖の合計の分子量は、約1,000〜約5,000ダルトンである。いくつかの実施形態では、クラス5のペプチドは、配列番号1415または配列番号1451の配列を有し、ポリエチレングリコール鎖は、配列番号1415または配列番号1451の16番目および19番目のアミノ酸に結合し、2つのPEG鎖の合計の分子量は約1,000〜約5,000ダルトンである。
クラス5のグルカゴン関連ペプチドは、任意に、グルカゴンアンタゴニスト活性およびGLP−1アゴニスト活性を保持する最大で1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの修飾をさらに有する、配列番号1401〜1518のいずれかのアミノ酸配列を有するものであってもよい。
結合基(L)
本明細書で説明するように、本開示は、式Q−L−Yで表されるGRリガンドと結合しているグルカゴンスーパーファミリーのペプチドを提供するものであり、式中、Lは結合基または化学結合である。いくつかの実施形態では、Lはin vivoで安定である。いくつかの実施形態では、Lはin vivoで加水分解可能である。いくつかの実施形態では、Lはin vivoで準安定である。
QとYとを、当業者に知られた標準的な結合剤と手順を用いて、Lを介して互いに結合することが可能である。いくつかの態様では、QとYとを直接的に融合させ、Lは結合である。他の態様では、QとYとを、結合基Lを介して融合する。たとえば、いくつかの実施形態では、QとYとを、任意に、ペプチドまたはアミノ酸スペーサーを介する、ペプチド結合によって互いに結合する。いくつかの実施形態では、QとYとを、任意に、結合基(L)を介して、化学的な結合によって互いに結合する。いくつかの実施形態では、Lは、QおよびYの各々に直接的に結合する。
化学的な結合は、一方の化合物の求核反応性基を他方の化合物の求電子反応性基と反応させることで、起こり得る。いくつかの実施形態では、Lが結合である場合、Qの求核反応性部分をYの求電子反応性部分と反応させるか、Qの求電子反応性部分をYの求核反応性部分と反応させることによって、QとYとを結合する。LがQとYとを結合する基である実施形態では、Qおよび/またはYの求核反応性部分をLの求電子反応性部分と反応させることによって、あるいは、Qおよび/またはYの求電子反応性部分をLの求核反応性部分と反応させることによって、Qおよび/またはYをLに結合することが可能である。求核反応性基の非限定的な例として、アミノ、チオール、ヒドロキシルがあげられる。求電子反応性基の非限定的な例として、カルボキシル、塩化アシル、無水物、エステル、スクシンイミドエステル、ハロゲン化アルキル、スルホン酸エステル、マレイミド、ハロアセチル、イソシアン酸があげられる。カルボン酸とアミンとの反応によってQとYとが互いに結合する実施形態では、活性化剤を用いてカルボン酸の活性化エステルを形成してもよい。
カルボン酸の活性化エステルは、たとえば、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、トシレート(Tos)、メシレート、トリフレート、カルボジイミドまたはヘキサフルオロホスフェートであってもよい。いくつかの実施形態では、カルボジイミドは、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)または1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DICD)である。いくつかの実施形態では、ヘキサフルオロホスフェートは、ヘキサフルオロホスフェートベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、o−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウム−ヘキサフルオロ−ホスフェート(HBTU)からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、Qは、YまたはLの求電子反応性基に結合できる求核反応性基(リジン、システインまたはセリンの側鎖のアミノ基、チオール基またはヒドロキシ基など)を有する。いくつかの実施形態では、Qは、YまたはLの求核反応性基に結合できる求電子反応性基(AspまたはGluの側鎖のカルボキシレート基など)を有する。いくつかの実施形態では、Qを、YまたはLに直接結合できる反応性基を持つように、化学的に修飾する。いくつかの実施形態では、本明細書で上述した(アシル化およびアルキル化を参照のこと)ように、Qを、式I、式IIまたは式IIIで表されるアミノ酸などの求核側鎖を有する天然または非天然のアミノ酸を含むように、C末端で修飾する。例示としての実施形態では、QのC末端のアミノ酸は、リジン、オルニチン、セリン、システイン、ホモシステインからなる群から選択される。たとえば、QのC末端のアミノ酸を、リジン残基を持つように修飾してもよい。いくつかの実施形態では、Qを、AspおよびGluなどの求電子側鎖を有する天然または非天然のアミノ酸を含むように、C末端のアミノ酸で修飾する。いくつかの実施形態では、本明細書で上述した(アシル化およびアルキル化を参照のこと)ように、Qの末端以外のアミノ酸を、式I、式IIまたは式IIIで表されるアミノ酸などの求核側鎖を有する天然または非天然のアミノ酸で置換する。例示としての実施形態では、置換されるQの末端以外のアミノ酸は、リジン、オルニチン、セリン、システイン、ホモシステインからなる群から選択される。たとえば、Qの末端以外のアミノ酸を、リジン残基で置換してもよい。いくつかの実施形態では、Qの末端以外のアミノ酸を、AspおよびGluなどの求電子側鎖を有する天然または非天然のアミノ酸で置換してもよい。
いくつかの実施形態では、Yは、QまたはLに直接結合できる反応性基を有する。いくつかの実施形態では、Yは、QまたはLの求電子反応性基に結合できる求核反応性基(アミン、チオール、ヒドロキシルなど)を有する。いくつかの実施形態では、Yは、QまたはLの求核反応性基に結合できる求電子反応性基(カルボキシ基、カルボキシ基の活性化形態、脱離基を有する化合物など)を有する。いくつかの実施形態では、Yは、QまたはLの求電子反応性基のいずれかに結合できる求核反応性基を持つように、化学的に修飾される。いくつかの実施形態では、Yは、QまたはLの求核反応性基に結合できる求電子反応性基を持つように化学的に修飾される。
いくつかの実施形態では、グルタルアルデヒドで処理したアミノシランなどのオルガノシランによって;シラノール基のカルボニルジイミダゾール(CDI)活性化;またはデンドリマーを用いることで、結合を実施することが可能である。多岐にわたるデンドリマーが当分野で知られており、アンモニアまたはエチレンジアミン開始剤コア試薬から開始して、多岐にわたる方法で合成されるポリ(アミドアミン)(PAMAN)デンドリマー;トリス−アミノエチレン−イミンコアに基づくPAMANデンドリマーのサブクラス;内側が親水性の求核ポリアミドアミン(PAMAN)、外側が疎水性有機ケイ素(OS)からなる裏返しになった単分子層のミセルである、放射状に層状化したポリ(アミドアミン−オルガノシリコン)のデンドリマー(PAMANOS);通常は一級アミンを末端基として有するポリアルキルアミンであるポリ(プロピレンイミン)(PPI)デンドリマーで、デンドリマーの内側は多数の三級トリス−プロピレンアミンからなる;ポリ(プロピレンアミン)(POPAM)デンドリマー;ジアミノブタン(DAB)デンドリマー;両親媒性デンドリマー;水溶性の超分岐ポリフェニレンの単分子層のミセルであるミセルデンドリマー;ポリリジンデンドリマー;ポリベンジルエーテル超分岐骨格を基にしたデンドリマーがあげられる。
いくつかの実施形態では、オレフィンメタセシスによって、結合を実施することが可能である。いくつかの実施形態では、YとQ、YとLまたはQとLは、ともに、メタセシスが生じるアルケン部分またはアルキン部分を有する。いくつかの実施形態では、好適な触媒(銅、ルテニウムなど)を用いて、メタセシス反応を加速する。オレフィンメタセシス反応を実施する好適な方法は、従来技術において説明されている。たとえば、Schafmeister et al., J. Am. Chem. Soc. 122: 5891-5892 (2000)、Walensky et al., Science 305: 1466-1470 (2004)およびBlackwell et al., Angew, Chem., Int. Ed. 37: 3281-3284 (1998)を参照のこと。
いくつかの実施形態では、クリックケミストリーを用いて結合を実施することが可能である。「クリック反応」は、適用範囲が広く、実施しやすく、容易に入手可能な試薬しか使用せず、酸素および水に対して非感受性である。いくつかの実施形態では、クリック反応は、アルキニル基とアジド基との環化付加反応であり、トリアゾリル基が形成される。いくつかの実施形態では、クリック反応で銅触媒またはルテニウム触媒を使用する。クリック反応を実施する好適な方法は、従来技術において説明されている。たとえば、Kolb et al., Drug Discovery Today 8:1128 (2003);Kolb et al., Angew. Chem. Int. Ed. 40:2004 (2001);Rostovtsev et al., Angew. Chem. Int. Ed. 41:2596 (2002);Tornoe et al., J. Org. Chem. 67:3057 (2002);Manetsch et al., J. Am. Chem. Soc. 126:12809 (2004);Lewis et al., Angew. Chem. Int. Ed. 41:1053 (2002);Speers, J. Am. Chem. Soc. 125:4686 (2003);Chan et al. Org. Lett. 6:2853 (2004);Zhang et al., J. Am. Chem. Soc. 127:15998 (2005);およびWaser et al., J. Am. Chem. Soc. 127:8294 (2005)を参照のこと。
ストレプトアビジン/ビオチンまたはアビジン/ビオチンまたはレクチン/炭水化物などの高親和性特異的結合相手を介した間接的な結合も考えられている。
Qおよび/またはYの化学修飾
いくつかの実施形態では、有機誘導体化剤を用いてQおよび/またはYを官能化し、求核反応性基または求電子反応性基を持つようにする。この誘導体化剤は、Qの標的にされるアミノ酸の選択された側鎖またはN末端残基またはC末端残基およびYの官能基と反応できる。Qおよび/またはYの反応性基として、たとえば、アルデヒド基、アミノ基、エステ基ル、チオール基、α−ハロアセチル基、マレイミド基またはヒドラジノ基があげられる。誘導体化剤として、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介した結合)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介して)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸または当分野で知られた他の薬剤があげられる。あるいは、Qおよび/またはYを、多糖またはポリペプチドキャリアなどの中間体のキャリアを用いて、互いに間接的に結合してもよい。多糖キャリアの例として、アミノデキストランがあげられる。好適なポリペプチドキャリアの例として、結合させたキャリアに望ましい溶解特性を与えるための、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、これらのコポリマーならびに、これらのアミノ酸と他のアミノ酸、たとえばセリンの混合ポリマーがあげられる。
システイニル残基は、最も一般的には、クロロ酢酸またはクロロアセトアミドなどのα−ハロ酢酸(および対応するアミン)と反応し、カルボキシメチル誘導体またはカルボキシアミドメチル誘導体を生成する。システイニル残基も、ブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミダゾール)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル2−ピリジルジスルフィド、p−クロロ水銀安息香酸、2−クロロ水銀−4−ニトロフェノールまたはクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応によって誘導体化される。
ヒスチジル残基は、比較的ヒスチジル側鎖に特異的であるため、pH5.5〜7.0でジエチルピロカルボネートとの反応によって誘導体化される。p−ブロモフェナシルブロミドも有用である。この反応については、0.1Mのカコジル酸ナトリウム中にてpH6.0で実施すると好ましい。
リジニルおよびアミノ末端残基は、コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応する。これらの薬剤を用いる誘導体化には、リジニル残基の電荷を逆にする作用がある。α−アミノ含有残基を誘導体化するための他の好適な試薬として、ピコリンイミダートなどのイミドエステル、リン酸ピリドキサール、ピリドキサール、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O−メチルイソ尿素、2,4−ペンタンジオン、グリオキシル酸とのトランスアミナーゼ触媒反応があげられる。
アルギニル残基は、1種類または複数種類の従来の試薬との反応によって修飾され、この試薬としては、フェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、ニンヒドリンがあげられる。グアニジン官能基のpKaが高いため、アルギニン残基の誘導体化には、アルカリ条件で反応を実施する必要がある。さらに、これらの試薬は、リジンの基ならびにアルギニンのε−アミノ基と反応することがある。
チロシル残基に対しては、独特の修飾をほどこすことができ、特に興味深いのが、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応によって、スペクトル標識をチロシル残基に導入することである。最も一般的には、N−アセチルイミダゾールおよびテトラニトロメタンを用いて、それぞれO−アセチルチロシル種および3−ニトロ誘導体を生成する。
カルボジイミド(R−N=C=N−R’)との反応によって、カルボキシル側基(アスパルチルまたはグルタミル)を選択的に修飾する。式中、RとR’は、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドなどの異なるアルキル基である。さらに、アンモニウムイオンとの反応によって、アスパルチル残基およびグルタミル残基を、アスパラギニル残基およびグルタミニル残基に変換する。
他の修飾として、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリル残基またはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン側鎖、アルギニン側鎖、ヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化(T. E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp. 79-86 (1983))、アスパラギンまたはグルタミンの脱アミド化、N末端アミンのアセチル化および/またはアミド化またはC末端のカルボン酸基のエステル化があげられる。
もうひとつのタイプの共有結合修飾では、グリコシドをペプチドに化学的または酵素的に結合する。(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシ基、(c)システインのものなどの遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、スレオニンまたはヒドロキシプロリンのものなどの遊離ヒドロキシ基、(e)チロシンまたはトリプトファンのものなどの芳香族残基または(f)グルタミンのアミド基に、糖(単数または複数)を結合してもよい。これらの方法は、1987年9月11日に公開された国際特許出願公開第WO87/05330号ならびに、Aplin and Wriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981)に記載されている。
Lの構造
いくつかの実施形態では、Lは結合である。これらの実施形態では、Qの求核反応性部分とYの求電子反応性部分とを反応させることで、QとYとを結合する。別の実施形態では、Qの求電子反応性部分をYの求核部分と反応させることで、QとYとを結合する。例示としての実施形態では、Lは、Qのアミン(リジン残基のε−アミンなど)とYのカルボキシ基との反応時に形成されるアミド結合である。別の実施形態では、結合前に、誘導体化剤でQおよびまたはYを誘導体化する。
いくつかの実施形態では、Lは結合基である。いくつかの実施形態では、Lは、二官能性リンカーであり、QおよびYへの結合前に、反応性基を2つしか持たない。QとYがともに求電子反応性基を有する実施形態では、Lは、QおよびYへの結合前に、同一の求核基(アミン、ヒドロキシル、チオールなど)2個または異なる求核基2個を有する。QとYがともに求核反応性基を有する実施形態では、Lは、QおよびYへの結合前に、同一の求電子基(カルボキシ基、カルボキシ基の活性化形態、脱離基を有する化合物など)2個または異なる求電子基2個を有する。QまたはYのうちの一方が求核反応性基を有し、QまたはYの他方が求電子反応性基を有する実施形態では、Lは、QおよびYへの結合前に、求核反応性基1個と求電子基1個を有する。
Lは、QおよびYの各々と反応できる反応性基を(QおよびYへの結合前に)少なくとも2個有するものであれば、どのような分子であってもよい。いくつかの実施形態では、Lは反応性基を2個しか持たず、二官能性である。L(ペプチドへの結合前)を、式VIで表すことが可能である:
(ここで、AおよびBは独立に、求核反応性基または求電子反応性基である)。いくつかの実施形態では、AおよびBは、ともに求核基であるか、ともに求電子基である。いくつかの実施形態では、AまたはBの一方が求核基であり、AまたはBの他方が求電子基である。AとBの非限定的な組み合わせを以下の表にあげておく。
いくつかの実施形態では、AおよびBは、オレフィンメタセシス反応に適したアルケン官能基および/またはアルキン官能基を含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、AおよびBは、クリックケミストリー(アルケン、アルキン、ニトリル、アジドなど)に適した部分を含む。反応性基(AおよびB)の他の非限定的な例として、ピリジルジチオール、アリールアジド、ジアジリン、カルボジイミド、ヒドラジドがあげられる。
いくつかの実施形態では、Lは疎水性である。疎水性リンカーは、当分野で知られている。たとえば、Bioconjugate Techniques, G. T. Hermanson(Academic Press, San Diego, CA, 1996)(その内容全体を本明細書に援用する)を参照のこと。当分野で知られた好適な疎水性結合基として、たとえば、8−ヒドロキシオクタン酸および8−メルカプトオクタン酸があげられる。組成物のペプチドへの結合前に、疎水性の結合基は、本明細書で説明し、かつ、以下に示すように、少なくとも2つの反応性基(AおよびB)を有する。
いくつかの実施形態では、疎水性結合基は、マレイミドまたはヨードアセチル基のいずれかと、カルボン酸または活性化カルボン酸(NHSエステルなど)のいずれかを反応性基として有する。これらの実施形態では、マレイミドまたはヨードアセチル基は、QまたはYのチオール部分に結合可能であり、カルボン酸または活性化カルボン酸は、QまたはYのアミンに結合可能である(カップリング試薬を使用する場合と使用しない場合がある)。当業者に知られたカップリング剤を使用して、DCC、DIC、HATU、HBTU、TBTUなどの遊離アミンならびに本明細書に記載の他の活性化剤に、カルボン酸を結合することが可能である。具体的な実施形態では、親水性の結合基は、2〜100個のメチレン基からなる脂肪族鎖を有し、この場合のAおよびBは、カルボキシ基またはこれらの誘導体(コハク酸など)である。他の具体的な実施形態では、Lはヨード酢酸である。
いくつかの実施形態では、結合基は、ポリアルキレングリコールなど、親水性である。組成物のペプチドへの結合前に、親水性の結合基は、本明細書で説明し、かつ、以下に示すように、少なくとも2つの反応性基(AおよびB)を有する。
具体的な実施形態では、結合基は、ポリエチレングリコール(PEG)である。特定の実施形態におけるPEGは、分子量が約100ダルトン〜約10,000ダルトン、たとえば、約500ダルトン〜約5000ダルトンである。いくつかの実施形態におけるPEGは、分子量が、約10,000ダルトン〜約40,000ダルトンである。
いくつかの実施形態では、親水性結合基は、マレイミドまたはヨードアセチル基のいずれかと、カルボン酸または活性化カルボン酸(NHSエステルなど)のいずれかを反応性基として有する。これらの実施形態では、マレイミドまたはヨードアセチル基は、QまたはYのチオール部分に結合可能であり、カルボン酸または活性化カルボン酸は、QまたはYのアミンに結合可能である(カップリング試薬を使用する場合と使用しない場合がある)。当業者に知られた適切なカップリング剤を使用して、DCC、DIC、HATU、HBTU、TBTUなどのアミンならびに本明細書に記載の他の活性化剤に、カルボン酸を結合することが可能である。いくつかの実施形態では、結合基は、マレイミド−PEG(20kDa)−COOH、ヨードアセチル−PEG(20kDa)−COOH、マレイミド−PEG(20kDa)−NHSまたはヨードアセチル−PEG(20kDa)−NHSである。
いくつかの実施形態では、結合基は、アミノ酸、ジペプチド、トリペプチドまたはポリペプチドで構成され、このアミノ酸、ジペプチド、トリペプチドまたはポリペプチドは、本明細書に記載するような活性化基を少なくとも2つ有する。いくつかの実施形態では、結合基(L)は、アミノ、エーテル、チオエーテル、マレイミド、ジスルフィド、アミド、エステル、チオエステル、アルケン、シクロアルケン、アルキン、トリゾイル、カルバメート、カーボネート、カテプシンB分解可能、ヒドラゾンからなる群から選択される部分を有する。
いくつかの実施形態では、Lは、原子1〜約60個または1〜30個の長さまたはこれよりも長い、原子2〜5個、原子2〜10個、原子5〜10個または原子10〜20個の長さの原子鎖を有する。いくつかの実施形態では、鎖の原子はすべて炭素原子である。いくつかの実施形態では、リンカーの骨格における鎖の原子は、C、O、N、Sからなる群から選択される。鎖の原子およびリンカーは、さらに溶解性の高い結合体を提供するよう、想定される溶解性(親水性)に応じて選択できるものである。いくつかの実施形態では、Lは、標的となる組織または臓器または細胞に見られる酵素または他の触媒または加水分解状態によって切断される官能基を提供するものである。いくつかの実施形態では、Lの長さは、立体障害の可能性を低減できるだけの十分な長さである。
in vivoでのLの安定性
いくつかの実施形態では、Lはin vivoで安定である。いくつかの実施形態では、Lは、たとえば、血清中で5分間インキュベートすると、結合体の25%未満、20%未満、15%未満、10%未満または5%未満しか切断されないなど、血清中で少なくとも5分間、安定である。他の実施形態では、Lは、血清中で少なくとも10分間または20分間または25分間または30分間または60分間または90分間または120分間または3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間、15時間、18時間または24時間、安定である。これらの実施形態では、Lは、in vivoで加水分解できる官能基を含まない。例示としてのいくつかの実施形態では、Lは、血清中で少なくとも約72時間、安定である。in vivoで大幅に加水分解されない官能基の非限定的な例として、アミド、エーテル、チオエーテルがあげられる。たとえば、以下の化合物は、in vivoで大幅に加水分解されることがない。
いくつかの実施形態では、Lはin vivoで加水分解可能である。これらの実施形態では、Lは、in vivoで加水分解できる官能基を含む。in vivoで加水分解できる官能基の非限定的な例として、エステル、無水物、チオエステルがあげられる。たとえば、以下の化合物は、エステル基を有するがゆえにin vivoで加水分解できるものである。
いくつかの例示としての実施形態では、Lは不安定であり、血漿中にて37℃で、3時間以内でかなり加水分解され、6時間以内には完全に加水分解される。例示としてのいくつかの実施形態では、Lは不安定ではない。
いくつかの実施形態では、Lはin vivoで準安定である。これらの実施形態では、Lは、任意に経時的に、in vivoで化学的または酵素的に切断される官能基を有する(酸感受性官能基、還元感受性官能基または酵素感受性官能基など)。これらの実施形態では、Lは、たとえば、ヒドラゾン部分、ジスルフィド部分またはカテプシン分解可能な部分を有するものであってもよい。Lが準安定である場合、特定の理論に拘泥することなく、Q−L−Y結合体は、たとえば血清中で上述した時間は安定であるなど、細胞外環境で安定であるが、細胞内環境または細胞内環境を真似た状態では不安定であるため、細胞内に入ると分解される。いくつかの実施形態では、Lが準安定である場合、Lは、血清中で少なくとも約24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間、30時間、31時間、32時間、33時間、34時間、35時間、36時間、42時間または48時間、たとえば、少なくとも約48時間、54時間、60時間、66時間または72時間または約24〜約48、約48〜約72、約24〜約60、約36〜約48、約36〜約72または約48〜約72時間、安定である。
Q−L−Y結合体
QとYとの結合
Lを介したYに対するQの結合は、1番目から29番目の任意の位置、C末端の延長部分の範囲内にある位置またはC末端のアミノ酸をはじめとして、Qの範囲内のどの位置で実施してもよいが、ただし、Qの活性は、増強されないまでも保持はされるものとする。非限定的な例として、(配列番号1601のアミノ酸番号で)5番目、7番目、10番目、11番目、12番目、13番目、14番目、15番目、16番目、17番目、18番目、19番目、20番目、21番目、24番目、27番目、28番目、29番目、30番目、37番目、38番目、39番目、40番目、41番目、42番目または43番目があげられる。いくつかの実施形態では、Yは、10番目、20番目、24番目、30番目、37番目、38番目、39番目、40番目、41番目、32番目または43番目のうちの1箇所または2箇所以上で、Lを介してQに結合する。具体的な実施形態では、Yは、Qの10番目および/または40番目で、Lを介してQに結合する。
活性
グルカゴン受容体およびグルココルチコイド受容体に対する活性
いくつかの実施形態では、Q−L−Yは、グルカゴン受容体およびグルココルチコイド受容体の両方に対して活性を示す。いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQの活性(EC50または相対活性など)は、グルココルチコイド受容体に対するYの活性(EC50または相対活性など)と比較して、約2000倍以内、約1000倍以内、約100倍以内、約75倍以内、約60倍以内、約50倍以内、約40倍以内、約30倍以内、約20倍以内、約10倍以内または約5倍以内で異なる(高いまたは低い)。いくつかの実施形態では、Qのグルカゴン活性は、Yの活性と比較して、約25倍以内、約20倍以内、約15倍以内、約10倍以内または約5倍以内で異なる(高いまたは低い)。
いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQの相対活性またはEC50または活性をグルココルチコイド受容体に対するYの相対活性またはEC50または活性で割った比は、X未満であるか約Xであり、ここで、Xは、100、75、60、50、40、30、20、15、10または5から選択される。いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQのEC50または活性または相対活性をグルココルチコイド受容体に対するYのEC50または活性または相対活性で割った比は、約1から5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、Qのグルカゴン活性と比較した場合のYのグルココルチコイド活性の比は、Z未満であるか約Zであり、ここで、Zは、100、75、60、50、40、30、20、15、10、5から選択される。いくつかの実施形態では、Qのグルカゴン活性と比較した場合のYのグルココルチコイド活性の比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、グルカゴン受容体に対するQのEC50は、グルココルチコイド受容体に対するYのEC50よりも2倍〜10倍(2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍など)大きい。
いくつかの実施形態では、グルココルチコイド受容体に対するYの相対活性または活性またはEC50をグルカゴン受容体に対するQの相対活性または活性またはEC50で割った比は、V未満であるか約Vであり、ここで、Vは、100、75、60、50、40、30、20、15、10または5から選択される。いくつかの実施形態では、グルココルチコイド受容体に対するYのEC50または活性または相対活性をグルカゴン受容体に対するQのEC50または活性または相対活性で割った比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、Yのグルココルチコイド活性とQのグルカゴン活性との比は、W未満であるか約Wであり、ここで、Wは、100、75、60、50、40、30、20、15、10、5から選択される。いくつかの実施形態では、Yのグルココルチコイド活性とQのグルカゴン活性との比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、グルココルチコイド受容体に対するYのEC50は、グルカゴン受容体に対するQのEC50よりも約2〜約10倍(2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍など)大きい。
いくつかの実施形態では、Yは、グルココルチコイド受容体に対する内因性のリガンドの活性(グルココルチコイド活性)の、少なくとも0.001%、少なくとも0.01%、少なくとも0.1%(約0.5%またはそれよりも高い、約1%またはそれよりも高い、約5%またはそれよりも高い、約10%またはそれよりも高いあるいは、さらに高いなど)を示し、Qは、グルカゴン受容体に対する天然のグルカゴン受容体の活性(グルカゴン受容体活性)の少なくとも0.1%(約0.5%またはそれよりも高い、約1%またはそれよりも高い、約5%またはそれよりも高い、約10%またはそれよりも高いあるいは、さらに高いなど)を示す。
GLP−1受容体およびグルココルチコイド受容体に対する活性
いくつかの実施形態では、Q−L−Yは、GLP−1受容体およびグルココルチコイド受容体の両方に対して活性を示す。いくつかの実施形態では、GLP−1受容体に対するQの活性(EC50または相対活性など)は、核内ホルモン受容体に対するYの活性(EC50または相対活性など)と比較して、約2000倍以内、約1000倍以内、約100倍以内、約75倍以内、約60倍以内、約50倍以内、約40倍以内、約30倍以内、約20倍以内、約10倍以内、または約5倍以内で異なる(高いまたは低い)。いくつかの実施形態では、QのGLP−1活性は、Yの活性と比較して、約25倍以内、約20倍以内、約15倍以内、約10倍以内、または約5倍以内で異なる(高いまたは低い)。
いくつかの実施形態では、GLP−1受容体に対するQの相対活性またはEC50または活性をグルココルチコイド受容体に対するYの相対活性またはEC50または活性で割った比は、X未満であるか約Xであり、ここで、Xは、100、75、60、50、40、30、20、15、10または5から選択される。いくつかの実施形態では、GLP−1受容体に対するQのEC50または活性または相対活性をグルココルチコイド受容体に対するYのEC50または活性または相対活性で割った比は、約1から5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、QのGLP−1活性と比較した場合のYのグルココルチコイド活性の比は、Z未満であるか約Zであり、ここで、Zは、100、75、60、50、40、30、20、15、10、5から選択される。いくつかの実施形態では、QのGLP−1活性と比較した場合のYのグルココルチコイド活性の比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、GLP−1受容体に対するQのEC50は、グルココルチコイド受容体に対するYのEC50よりも2倍〜10倍(2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍など)大きい。
いくつかの実施形態では、グルココルチコイド受容体に対するYの相対活性または活性またはEC50をGLP−1受容体に対するQの相対活性または活性またはEC50で割った比は、V未満であるか約Vであり、ここで、Vは、100、75、60、50、40、30、20、15、10または5から選択される。いくつかの実施形態では、グルココルチコイド受容体に対するYのEC50または活性または相対活性をGLP−1受容体に対するQのEC50または活性または相対活性で割った比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、Yのグルココルチコイド活性とQのGLP−1活性との比は、W未満であるか約Wであり、ここで、Wは、100、75、60、50、40、30、20、15、10、5から選択される。いくつかの実施形態では、Yのグルココルチコイド活性とQのGLP−1活性との比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、グルココルチコイド受容体に対するYのEC50は、GLP−1受容体に対するQのEC50よりも約2〜約10倍(2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍など)大きい。
いくつかの実施形態では、Yは、グルココルチコイド受容体に対する内因性のリガンドの活性(グルココルチコイド活性)の約0.001%またはそれよりも高い、約0.01%またはそれよりも高い、少なくとも0.1%よりも高い(例えば約0.5%またはそれよりも高い、約1%またはそれよりも高い、約5%またはそれよりも高い、約10%またはそれよりも高いあるいは、さらに高いなど)を示し、Qは、GLP−1受容体に対する天然のGLP−1受容体の活性(GLP−1受容体活性)の少なくとも0.1%(約0.5%またはそれよりも高い、約1%またはそれよりも高い、約5%またはそれよりも高い、約10%またはそれよりも高いあるいは、さらに高いなど)を示す。
GIP受容体およびグルココルチコイド受容体に対する活性
いくつかの実施形態では、Q−L−Yは、GIP受容体およびグルココルチコイド受容体の両方に対して活性を示す。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するQの活性(EC50または相対活性など)は、核内ホルモン受容体に対するYの活性(EC50または相対活性など)と比較して、約2000倍以内、約1000倍以内、約100倍以内、約75倍以内、約60倍以内、約50倍以内、約40倍以内、約30倍以内、約20倍以内、約10倍以内または約5倍以内で異なる(高いまたは低い)。いくつかの実施形態では、QのGIP活性は、Yの活性と比較して、約25倍以内、約20倍以内、約15倍以内、約10倍以内または約5倍以内で異なる(高いまたは低い)。
いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するQの相対活性またはEC50または活性をグルココルチコイド受容体に対するYの相対活性またはEC50または活性で割った比は、X未満であるか約Xであり、ここで、Xは、100、75、60、50、40、30、20、15、10または5から選択される。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するQのEC50または活性または相対活性をグルココルチコイド受容体に対するYのEC50または活性または相対活性で割った比は、約1から5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、QのGIP活性と比較した場合のYのグルココルチコイド活性の比は、Z未満であるか約Zであり、ここで、Zは、100、75、60、50、40、30、20、15、10、5から選択される。いくつかの実施形態では、QのGIP活性と比較した場合のYのグルココルチコイド活性の比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、GIP受容体に対するQのEC50は、グルココルチコイド受容体に対するYのEC50よりも2倍〜10倍(2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍など)大きい。
いくつかの実施形態では、グルココルチコイド受容体に対するYの相対活性または活性またはEC50をGIP受容体に対するQの相対活性または活性またはEC50で割った比は、V未満であるか約Vであり、ここで、Vは、100、75、60、50、40、30、20、15、10、または5から選択される。いくつかの実施形態では、グルココルチコイド受容体に対するYのEC50もしくは活性または相対活性を、GIP受容体に対するQのEC50もしくは活性または相対活性で割った比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、Yのグルココルチコイド活性とQのGIP活性との比は、W未満であるか約Wであり、ここで、Wは、100、75、60、50、40、30、20、15、10、5から選択される。いくつかの実施形態では、Yのグルココルチコイド活性とQのGIP活性との比は、5未満(約4、約3、約2、約1など)である。いくつかの実施形態では、グルココルチコイド受容体に対するYのEC50は、GIP受容体に対するQのEC50よりも約2〜約10倍(2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍など)大きい。
いくつかの実施形態では、Yは、グルココルチコイド受容体に対する内因性のリガンドの活性(グルココルチコイド活性)の、少なくとも約0.001%、少なくとも約0.01%、少なくとも0.1%、またはそれよりも高い(例えば約0.5%またはそれよりも高い、約1%またはそれよりも高い、約5%またはそれよりも高い、約10%またはそれよりも高い、あるいは、さらに高いなど)活性を示し、Qは、GIP受容体に対する天然のGIP受容体の活性(GIP受容体活性)の、少なくとも0.1%(約0.5%またはそれよりも高い、約1%またはそれよりも高い、約5%またはそれよりも高い、約10%またはそれよりも高い、あるいは、さらに高いなど)の活性を示す。
Q−L−Yのプロドラッグ
本発明のいくつかの態様では、国際特許出願第PCT US09/68745号(2009年12月18日にファイル)(その内容全体を本明細書に援用する)に開示されているように、Q−L−Yのプロドラッグが提供され、ここで、このプロドラッグは、Qの活性部位にアミド結合を介して共有結合しているジペプチドプロドラッグ要素(A−B)を有する。あとから生理的条件下かつ酵素活性のない状態でジペプチドを除去すると、Q−L−Y結合体に対する活性が完全に回復する。
いくつかの実施形態では、一般構造A−B−Q−L−Yを有する、Q−L−Yのプロドラッグが提供される。これらの実施形態では、Aはアミノ酸またはヒドロキシ酸であり、Bは、(A−Bの)BのカルボキシルとQのアミンとの間のアミド結合の形成によってQに結合した、N−アルキル化されたアミノ酸である。さらに、いくつかの実施形態では、A、BまたはA−Bが結合しているQのアミノ酸は、コードされていないアミノ酸であり、QからのA−Bの化学反応による開裂は、PBS中にて生理的条件下で、約1時間から約720時間以内に少なくとも約90%完了する。もうひとつの実施形態では、QからのA−Bの化学反応による開裂は、PBS中にて生理的条件下で、約1時間または約1週間以内に少なくとも約50%完了する。
いくつかの実施形態では、ジペプチドプロドラッグ要素(A−B)は、以下の一般構造を有する化合物を含む。
式中、
R1、R2、R4およびR8は独立に、H、C1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、(C1〜C18アルキル)OH、(C1〜C18アルキル)SH、(C2〜C3アルキル)SCH3、(C1〜C4アルキル)CONH2、(C1〜C4アルキル)COOH、(C1〜C4アルキル)NH2、(C1〜C4アルキル)NHC(NH2 +)NH2、(C0〜C4アルキル)(C3〜C6シクロアルキル)、(C0〜C4アルキル)(C2〜C5複素環)、(C0〜C4アルキル)(C6〜C10アリール)R7、(C1〜C4アルキル)(C3〜C9ヘテロアリール)、C1〜C12アルキル(W1)C1〜C12アルキルからなる群から選択され、W1は、N、S、Oからなる群から選択されるヘテロ原子であるか、またはR1およびR2は、これらが結合している原子と一緒になって、C3〜C12シクロアルキルを形成しするか、またはR4およびR8は、これらが結合している原子と一緒になって、C3〜C6シクロアルキルを形成し、
R3は、C1〜C18アルキル、(C1〜C18アルキル)OH、(C1〜C18アルキル)NH2、(C1〜C18アルキル)SH、(C0〜C4アルキル)(C3〜C6)シクロアルキル、(C0〜C4アルキル)(C2〜C5複素環)、(C0〜C4アルキル)(C6〜C10アリール)R7、(C1〜C4アルキル)(C3〜C9ヘテロアリール)からなる群から選択されるか、またはR4およびR3は、これらが結合している原子と一緒になって、4員環、5員環または6員環の複素環を形成し、
R5は、NHR6またはOHであり、
R6は、H、C1〜C8アルキルであるか、またはR6およびR1は、これらが結合している原子と一緒になって、4員環、5員環または6員環の複素環を形成し、
R7は、水素、C1〜C18アルキル、C2〜C18アルケニル、(C0〜C4アルキル)CONH2、(C0〜C4アルキル)COOH、(C0〜C4アルキル)NH2、(C0〜C4アルキル)OH、ハロからなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、ジペプチドプロドラッグ要素を、Qのアミノ末端に結合する。他の実施形態では、ジペプチドプロドラッグを、国際特許出願第PCT US09/68745号に記載されているようなQの末端以外のアミノ酸に結合する。
Q−L−Yの例示としての実施形態
本発明のいくつかの実施形態では、グルカゴンスーパーファミリーのペプチド結合体は、式:
Q−L−Y
で表すことが可能なものである(式中、Qはグルカゴンスーパーファミリーのペプチドであり、YはGRリガンドであり、Lは結合基または結合である)。
具体的な態様では、Qは、天然のヒトGLP−1(配列番号1603)のアミノ酸配列を基にしたアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、Qは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、場合によっては16個または17個以上(17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個など)のアミノ酸修飾を有する、配列番号1603の修飾されたアミノ酸配列を有し、天然のヒトGLP−1配列(配列番号1603)に対して最大1個、最大2個、最大3個、最大4個、最大5個、最大6個、最大7個、最大8個、最大9個または最大10個のアミノ酸修飾(アシル化、アルキル化、PEG化、C末端での短縮、置換など)を有する。たとえば、Qは、GLP−1(Aib2E16Cex K40)(配列番号1647)、GLP−1(Aib2A22Cex K40)(配列番号1648)、dGLP−1(A1Aib2A22Cex K40)(配列番号1649)、GLP−1(Aib2E16C24(PEG−40kDa)Cex K40)(配列番号1650)であってもよい。
具体的な態様では、Yは、ステロイドまたはその誘導体であり、エストロゲン受容体、アンドロゲン受容体、グルココルチコイド受容体またはRAR関連オーファン受容体に対して作用する。いくつかの実施形態では、Yは、エストロゲン受容体、アンドロゲン受容体、グルココルチコイド受容体またはRAR関連オーファン受容体に対してアゴニスト活性を与えるまたは促進する構造を有し、他の実施形態では、Yは、エストロゲン受容体、アンドロゲン受容体、グルココルチコイド受容体またはRAR関連オーファン受容体のアンタゴニストである。たとえば、Yは、エストラジオール、エストロンまたはコレステロールであってもよい。
具体的な態様では、Yはグルココルチコイド受容体に対して作用する。たとえば、Yは、コルチゾール、酢酸コルチゾン、ベクロメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、またはデキサメタゾンであってもよい。
具体的な態様では、Lはin vivoで安定である。いくつかの実施形態では、Lは、たとえば、アミド、エーテル、カルバメートまたはチオエーテルを有する。別の態様では、Lはin vivoで加水分解可能である。いくつかの実施形態では、Lは、エステル、無水物またはチオエステルを有する。他の態様では、Lはin vivoで準安定である。いくつかの態様では、Lは、酸感受性(ヒドラゾン部分を有するなど)、還元感受性(ジスルフィド部分を有するなど)または酵素感受性(カテプシンB分解可能部分を有するなど)を有する。
いくつかの実施態様では、Yはデキサメタゾンである。これらの実施態様では、構造Q−L−Yは、以下を含んでもよい:
(式中、
B’は、Qのアミノ含有またはチオール含有側鎖であって、任意にさらに、B’は、天然のグルカゴンを含む配列の10番目、20番目、24番目、30番目、37番目、38番目、39番目、40番目、41番目、42番目、または43番目に対応するアミノ酸の側鎖であってもよく、
Lは、結合であるか、あるいは、Lは、
のいずれかであり、
xは、C1〜C10アルキレン(たとえば、C1〜C6アルキレン)、C1〜C10アルケニレン、または、C1〜C10アルキニレンである)。
いくつかの実施態様では、B’は、
のいずれかである。これらの実施態様のうちのいくつかにおいては、zはC1〜C6アルキレンである。例えば、B’は、リジン、システイン、ホモシステイン、またはペニシラミンの側鎖を含んでもよい。
いくつかの実施態様では、Lは結合である。他の実施態様では、Lは、
のいずれかであり、xはC1〜C6アルキレンである。例えば、Lは
のいずれかを含んでもよい。
いくつかの実施態様では、構造Q−L−Yは、たとえば、
のいずれかであってもよい。
これらの実施態様のうちのいくつかにおいては、xはC1〜C4アルキレンである。たとえば、構造Q−L−Yは、
のいずれかを含んでもよい。
いくつかの例示の実施態様では、構造Q−L−Yは、
のいずれかを含んでもよい。
Yがデキサメタゾンであるいくつかの実施態様では、構造Q−L−Yは、以下を含んでもよい:
(式中、
B”は、Qのアミノ酸のチオール含有側鎖であって、
任意にさらに、B”は、天然のグルカゴンを含む配列の10番目、20番目、24番目、30番目、37番目、38番目、39番目、40番目、41番目、42番目、または43番目に対応するアミノ酸の側鎖であってもよく、
yは、C1〜C10アルキレン(たとえば、C1〜C6アルキレン)、C1〜C10アルケニレン、または、C1〜C10アルキニレンである)。
いくつかの実施態様では、B”は、
である。これらの実施態様のうちのいくつかにおいては、zはC1〜C6アルキレンである。たとえば、B”は、システイン、ホモシステイン、またはペニシラミンの側鎖を含んでもよい。
たとえば、構造Q−L−Yは、
であってもよい。
いくつかの例示の実施態様では、構造L−Yは、
のいずれかであってもよい。
安定な結合を介してエストラジオールに結合する、GLP−1を基にしたグルカゴンスーパーファミリーのペプチドの非限定的な例を、以下に示す(配列番号1651〜1654、1667)。
安定な結合を介してコレステロールに結合する、GLP−1を基にしたグルカゴンスーパーファミリーのペプチドの非限定的な例を、以下に示す(配列番号1660〜1661)。
加水分解可能な結合を介してエストラジオールまたはエストロンに結合する、GLP−1を基にしたグルカゴンスーパーファミリーのペプチドの非限定的な例を、以下に示す(配列番号1655〜1659、1666)。
酸感受性の結合を介してエストラジオールに結合する、GLP−1を基にしたグルカゴンスーパーファミリーのペプチドの非限定的な例を、以下に示す(配列番号1662)。
還元感受性の結合を介してエストラジオールに結合する、GLP−1を基にしたグルカゴンスーパーファミリーのペプチドの非限定的な例を、以下に示す(配列番号1663−1664)。
酵素感受性の結合を介してエストラジオールに結合する、GLP−1を基にしたグルカゴンスーパーファミリーのペプチドの非限定的な例を、以下に示す(配列番号1665、1668)。
酸感受性結合を介してデキサメタゾンと結合する、GLP−1を基にしたグルカゴンスーパーファミリーペプチドの、非限定的な例を以下に示す(配列番号1669)。
安定な結合を介してデキサメタゾンと結合する、GLP−1を基にしたグルカゴンスーパーファミリーペプチドの、非限定的な例を以下に示す(配列番号1670および1671)。
還元感受性の結合を介してデキサメタゾンと結合する、GLP−1を基にしたグルカゴンスーパーファミリーペプチドの、非限定的な例を以下に示す(配列番号1672、1673、および1674)。
いくつかの実施形態では、配列番号1〜760、801〜919、1001〜1275、1301〜1371、1401〜1518、1601〜1646のうちのいずれも、上記の例示としての実施形態での配列番号1647〜1650に代えることができる。
本明細書に示すデータは、本発明のグルカゴンスーパーファミリーのペプチド(Q)およびエストロゲン(Y)を有する結合体が、相乗的な薬理学作用を有することを確認するものである。これらの結合体のQ部分は、従来の婦人科学的組織から離れて、結合体のエストロゲン部分に所望の作用を標的させ、さらに高い治療指数で血糖コントロールおよびエネルギーの恒常性を改善するよう作用できる。
膵臓のβ細胞の機能障害は、インスリンの生合成と分泌が損なわれることに加えて、慢性のグルコースおよび脂質酸化(糖脂肪毒性)に起因するβ細胞のアポトーシスによる機能的な質量の減少と、代償性の機能亢進(ERストレス)とが組み合わさることを特徴とする。2型糖尿病は、β細胞の機能障害に続いて生じるため、インスリン産生β細胞をアポトーシスから保護し、あるいは、β細胞の機能的な質量を回復させるための戦略は、2型糖尿病の治療に介入する主要な機会となる。
エストロゲンは、齧歯類およびヒトのβ細胞ならびに、体内の他の標的組織で、強い抗アポトーシス性作用を有する。脂質生成を抑制し、インスリン感受性を回復させる、肝臓におけるエストロゲンの膵臓外での機能は、間接的にβ細胞の機能を改善できる。また、エストロゲンは、視床下部にも作用し、食物摂取量を減らしてエネルギー消費を増やす。しかしながら、エストロゲンによるこれらの作用は、婦人科学的標的組織では有害となり得る。これは、ホルモン交換療法が乳癌の発生率を高めることがわかっているためである。特定の理論に拘泥することなく、エストロゲンの作用を、β細胞、肝臓および/または視床下部に選択的に向けることには、利点があり得る。
エストロゲンの臨床への応用は、それによる発癌の可能性と婦人科学的な作用がゆえに、かぎられている。エストロゲンの治療指数を高めるには、本発明のインクレチンを基にした結合体を用いると、胸部および子宮内膜組織への作用を最小限に抑えつつ、所望の組織にエストロゲンを優先的に標的できるようになる。本明細書の実施例に示すデータは、グルカゴンスーパーファミリーのペプチドとエストロゲンとの結合体が、膵臓のβ細胞でのインスリン分泌活性とタンパク質同化活性が視床下部での食欲を抑える作用と組み合わさることで、血糖コントロール(グルコース濃度の低下などを基準に判断できる)およびエネルギーの恒常性(体重および/または体脂肪量の減少などを基準に判断できる)に対して相乗的かつ有益な作用を持つことを証明するものである。
結合体の各構成要素(GLP−1部分およびエストロゲン部分など)が血糖および体重を調節する機能を調べるために、血漿中への差次的なエストロゲン放出を可能にするリンカー化学(安定、不安定、準安定)を用いて、in vitroが0.1%未満から100%を超えるまでの範囲のGLP−1活性化作用を網羅するよう、一組のペプチド−エストロゲン結合体を合成した。安定した臨床形態から、エストロゲンを数時間以内に放出する他の形態まで、広い範囲内で変化するエストロゲンの特定の放出を判断した。
たとえば、食餌で誘導した肥満マウスでは、エストロゲンが安定して結合した完全に活性のあるGLP−1アゴニストのほうが、これに匹敵するGLP−1対照よりも、一貫して、血糖および体重を落とす上で効果的であることが示された。安定のエストロゲン−ペプチド結合体は、卵巣を摘出したマウスで子宮に効果のある活性がないことを基準に判断できる、従来のエストロゲン活性を欠いていることが示されたのに対し、不安定なエストロゲン−ペプチド結合体は、子宮に栄養活性を示した。GLP−1活性化作用をノックアウトしたおよび/または血漿中でエストロゲン不安定性にした化学的な誘導体では、安定したGLP−1/エストロゲン結合体よりも効果が低く、GLP−1と標的のエストロゲンが組み合わせで存在することで、グルコースおよび体重を低減させる作用を高められることがわかる。
調製された「準」安定のペプチド−エストロゲン結合体は、血漿中では安定であるが、細胞内移行時にエストロゲンを放出できる。これらの準安定の結合を有するグルカゴンスーパーファミリーのペプチド/エストロゲン結合体は、子宮に対する有害な活性がない状態で、不安定な結合を有する結合体よりもグルコース濃度を下げて体重を減らすことができた。
エストロゲンに安定または準安定的に結合したグルカゴンスーパーファミリーのペプチドでは、肥満で糖尿病ではないマウスにおいて、適切な対照との比較で、一貫して体重、食物摂取量および体脂肪量における有効性が高くなることが証明された。このような有効性の上昇は、エストロゲンが薬理学的に不安定な結合体には見られず、グルカゴンスーパーファミリーのペプチドを意図的に不活性にした結合体でも観察されない。エストロゲンをグルカゴンスーパーファミリーのペプチドに安定および準安定に結合すると、不安定な結合体に比してエストロゲン活性が差次的に欠如し、不安定な結合体とは対照的に、子宮の成長も認められなかった。まとめると、これらの所見は、肥満で代謝的に代償性のマウスにおいて、エストロゲンの医療用途を制限する従来のエストロゲンの作用の形跡なく、本発明の安定および準安定に結合したグルカゴンスーパーファミリーのペプチド/エストロゲン結合体を用いて、有効性を高められることを示すものである。
例示としての実施形態では、結合体は、高血糖の病状、肥満、メタボリックシンドローム、NAFLDを含むがこれらに限定されるものではない、本明細書に記載のいずれの状態の治療にも有用である。
薬学的組成物
塩
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のQ−L−Y結合体は、薬学的に許容される塩などの塩の形態である。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」という表現は、親化合物の生物学的活性を保持し、かつ、生物学的にまたはそれ以外に望ましくない点のない化合物の塩を示す。このような塩は、結合体の最終的な単離および精製時にin situにて調製可能であるか、あるいは、遊離塩基官能基を好適な酸と反応させることで、別途調製される。本明細書に開示する化合物の多くは、アミノ基および/またはカルボキシ基またはこれらに類する基が存在することで、酸性塩および/または塩基性塩を形成可能である。
薬学的に許容される酸付加塩を、無機酸および有機酸から調製してもよい。代表的な酸付加塩として、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、二グロコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イソチオシアン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パルミトエート、ペクチニン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、炭酸水素塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩などがあげられるが、これらに限定されるものではない。無機酸から誘導される塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などがあげられる。有機酸から誘導される塩としては、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエン−スルホン酸、サリチル酸などがあげられる。薬学的に許容される酸付加塩を形成するのに使用可能な酸の例として、たとえば、無機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸など)、有機酸(シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸など)があげられる。
塩基付加塩も、サリチル酸のソースの最終的な単離および精製時にin situにて調製可能であるか、あるいは、カルボン酸含有部分を、薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩などの好適な塩基と反応させるか、アンモニアまたは一級、二級または三級の有機アミンと反応させることで調製可能である。薬学的に許容される塩として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を基にしたカチオン(リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム塩など)、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、エチルアンモニウムをはじめとする無毒の四級アンモニアおよびアミンカチオンなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンとして、たとえば、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジンなどがあげられる。有機塩基から誘導される塩としては、第1級アミンの塩、第2級アミンの塩、第3級アミンの塩があげられるが、これらに限定されるものではない。
さらに、本開示の結合を用いて、基本的な窒素含有基をメチル、エチル、プロピル、ブチル・クロリド、ブロミド、ヨージドなどの低級ハロゲン化アルキル;デシル、ラウリル、ミリスチル、ステアリル・クロリド、ブロミド、ヨージドなどの長鎖ハロゲン化物;ベンジルおよびフェネチルブロミドなどのアリールハロゲン化アルキルとし、第四級化することが可能である。水溶性または油溶性または分散可能な生成物を、このようにして得る。
調製物
いくつかの実施形態によれば、本開示のQ−L−Y結合体またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容されるキャリアとを含む、薬学的組成物が提供される。薬学的組成物は、酸性化剤、添加剤、吸着剤、エアロゾル噴霧剤、空気置換剤、アルカリ化剤、固化防止剤、抗凝固剤、抗菌防腐剤、抗酸化剤、抗腐食剤、基剤、バインダー、緩衝剤、キレート化剤、コーティング剤、着色剤、乾燥剤、洗浄剤、希釈剤、殺菌消毒剤、崩壊剤、分散剤、溶解促進剤、染色剤、軟化剤、乳化剤、乳化安定剤、フィラー、成膜剤、香気増強剤、香味剤、流動促進剤、ゲル化剤、造粒剤、保湿剤、潤滑剤、粘着付与剤、軟膏基剤、軟膏、油性担体、有機塩基、トローチ基剤、顔料、可塑剤、研磨剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、皮膚浸透剤、可溶化剤、溶媒、安定化剤、坐剤の基剤、表面活性剤、界面活性剤、懸濁剤、甘味剤、治療剤、濃化剤、等張化剤、毒性剤、増粘剤、吸水剤、水混和性共溶媒、軟水化剤または湿潤剤などの薬学的に許容される成分を含むものであってもよい。
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、以下の成分のうちの1つまたは組み合わせを含む:アカシア、アセスルファムカリウム、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、寒天、アルブミン、アルコール、無水アルコール、変性アルコール、希アルコール、アロイリチン酸、アルギン酸、脂肪族ポリエステル、アルミナ、水酸化アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、アミロペクチン、α−アミロース、アスコルビン酸、アスコルビルパルミタート、アスパルテーム、注射用静菌水、ベントナイト、マグマベントナイト、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、ブロノポール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチルパラベン、ブチルパラベンナトリウム、アルギン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、炭酸カルシウム、シクラミン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム(無水物、anhydrous)、リン酸水素カルシウム(無水物、dehydrate)、第三リン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸カルシウム半水和物、キャノーラ油、カルボマー、二酸化炭素、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、β−カロテン、カラギーナン、ひまし油、硬化ひまし油、カチオン性乳化ワックス、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、粉末セルロース、ケイ化微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セトステアリルアルコール、セトリミド、セチルアルコール、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、コレステロール、酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、クロロジフルオロエタン(HCFC)、クロロジフルオロメタン、クロロフロオロカーボン(CFC)クロロフェノキシエタノール、クロロキシレノール、コーンシロップ固体、無水クエン酸、クエン酸一水和物、カカオバター、着色料、コーン油、綿実油、クレゾール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、シクラミン酸、シクロデキストリン、デキストレート、デキストリン、ブドウ糖、ブドウ糖(無水物)、ジアゾリジニル尿素、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、ジエタノールアミン、フタル酸ジエチル、ジフルオロエタン(HFC)、ジメチル−β−シクロデキストリン、Captisol(登録商標)などのシクロデキストリンタイプの化合物、ジメチルエーテル、フタル酸ジメチル、エデト酸二カリウム、エデト酸二ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、ドクサートカルシウム、ドクサートカリウム、ドクサートナトリウム、没食子酸ドデシル、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸、エグルミン、エチルアルコール、エチルセルロース、没食子酸エチル、ラウリン酸エチル、エチルマルトール、オレイン酸エチル、エチルパラベン、エチルパラベンカリウム、エチルパラベンナトリウム、エチルバニリン、フルクトース、フルクトース液、粉砕フルクトース、フルクトース(滅菌済)、粉末フルクトース、フマル酸、ゼラチン、グルコース、液体グルコース、飽和植物脂肪酸のグリセリド混合物、グリセリン、ベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、グリシン、グリコール、グリコフロール、グアーガム、ヘプタフルオロプロパン(HFC)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、高フルクトースシロップ、ヒト血清アルブミン、炭化水素(HC)、希塩酸、硬化植物油およびそのタイプII、ヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、イミド尿素、インジゴカルミン、イオン交換体、酸化鉄、イソプロピルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、等張食塩水、カオリン、乳酸、ラクチトール、ラクトース、ラノリン、ラノリンアルコール、ラノリン(無水物)、レシチン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、炭酸マグネシウム、正炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム(無水物)、炭酸水酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ラウリル硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、トリケイ酸マグネシウム、トリケイ酸マグネシウム(無水物)、リンゴ酸、麦芽、マルチトール、マルチトール溶液、マルトデキストリン、マルトール、マルトース、マンニトール、中鎖トリグリセリド、メグルミン、メントール、メチルセルロース、メチルメタクリレート、オレイン酸メチル、メチルパラベン、メチルパラベンカリウム、メチルパラベンナトリウム、微結晶セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム、鉱物油、軽鉱物油、鉱物油/ラノリンアルコール組成物、油、オリーブ油、モノエタノールアミン、モンモリロナイト、没食子酸オクチル、オレイン酸、パルミチン酸、パラフィン、ピーナッツ油、ワセリン、ワセリン/ラノリンアルコール組成物、医薬用つや出しコーティング液、フェノール、液状フェノール、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、ポラクリリン、ポラクリリンカリウム、ポロキサマー、ポリデキストロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリメタクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸カリウム、安息香酸カリウム、炭酸水素カリウム、亜硫酸水素カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カリウム(無水物)、リン酸水素カリウム、ピロ亜硫酸カリウム、リン酸二水素カリウム、プロピオン酸カリウム、ソルビン酸カリウム、ポビドン、プロパノール、プロピオン酸、炭酸プロピレン、プロピレングリコール、アルギン酸プロピレングリコール、没食子酸プロピル、プロピルパラベン、プロピルパラベンカリウム、プロピルパラベンナトリウム、プロタミンスルファート、ナタネ油、リンゲル液、サッカリン、サッカリンアンモニウム、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、ベニバナ油、サポナイト、血清タンパク質、ゴマ油、コロイドシリカ、コロイド状二酸化アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム(無水物、anhydrous)、クエン酸ナトリウム(無水物、dehydrate)、塩化ナトリウム、シクラミン酸ナトリウム、EDTAのナトリウム塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム(二塩基)、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム(三塩基)、プロピオン酸ナトリウム(無水物)、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビタンエステル(ソルビタン脂肪酸エステル)、ソルビトール、ソルビトール液70%、ダイズ油、鯨蝋、スターチ、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルファ化デンプン、滅菌可能なトウモロコシデンプン、ステアリン酸、精製ステアリン酸、ステアリルアルコール、スクロース、糖、錠剤圧縮形成用糖、粉砂糖、徐放剤用糖、転化糖、糖タブ、サンセットイエローFCF、合成パラフィン、タルク、酒石酸、タートラジン、テトラフルオロエタン(HFC)、カカオ油、チメロサール、二酸化チタン、アルファトコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、α型ビタミンE、β−トコフェロール、δ−トコフェロール、γ−トコフェロール、トラガント、トリアセチン、クエン酸トリブチル、トリエタノールアミン、クエン酸トリエチル、トリメチル−β−シクロデキストリン、臭化トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリスバッファー、EDTAの三ナトリウム塩、バニリン、タイプIの硬化植物油、水、軟水、硬水、二酸化炭素を含まない水、滅菌水、注射用水、吸入用滅菌水、注射用滅菌水、灌水用滅菌水、ワックス、アニオン性乳剤用蝋、カルナバワックス、カチオン性乳化ワックス、セチルエステルワックス、マイクロクリスタリンワックス、非イオン性乳剤用蝋、坐剤用蝋、白蝋、黄蝋、白色ワセリン、羊毛蝋、キサンタンガム、キシリトール、ゼイン、プロピオン酸亜鉛、亜鉛塩、ステアリン酸亜鉛あるいは、Handbook of Pharmaceutical Excipients, ThirdEdition, A. H. Kibbe(Pharmaceutical Press, London, UK, 2000)(その内容全体を本明細書に援用する)に記載の賦形剤。Remington’s Pharmaceutical Sciences, Sixteenth Edition, E. W. Martin(Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1980)(その内容全体を本明細書に援用する)には、薬学的に許容される組成物を調製するのに用いられるさまざまな成分ならびに、これを調製するための周知の技術が開示されている。従来の薬剤が薬学的組成物と不適合ではないかぎり、これを薬学的組成物に用いることも考えられている。補助的な活性成分を組成物に取り込むことも可能である。
いくつかの実施形態では、上記の成分(単数または複数)は、薬学的組成物中に、たとえば少なくともAなど、どのような濃度で存在してもよい。ここで、Aは、0.0001%w/v、0.001%w/v、0.01%w/v、0.1%w/v、1%w/v、2%w/v、5%w/v、10%w/v、20%w/v、30%w/v、40%w/v、50%w/v、60%w/v、70%w/v、80%w/vまたは90%w/vである。いくつかの実施形態では、上記の成分(単数または複数)は、薬学的組成物中に、たとえば、最大でBなど、どのような濃度で存在してもよい。ここで、Bは、90%w/v、80%w/v、70%w/v、60%w/v、50%w/v、40%w/v、30%w/v、20%w/v、10%w/v、5%w/v、2%w/v、1%w/v、0.1%w/v、0.001%w/vまたは0.0001%である。他の実施形態では、上記の成分(単数または複数)は、薬学的組成物中に、たとえば約Aから約Bなど、どのような濃度の範囲で存在してもよい。いくつかの実施形態では、Aは0.0001%、Bは90%である。
薬学的組成物を、生理的に適応可能なpHが達成されるように調製してもよい。いくつかの実施形態では、薬学的組成物のpHは、処方と投与経路とに応じて、少なくとも5、少なくとも5.5、少なくとも6、少なくとも6.5、少なくとも7、少なくとも7.5、少なくとも8、少なくとも8.5、少なくとも9、少なくとも9.5、少なくとも10または少なくとも10.5、最大でpH11(11を含む)であればよい。特定の実施形態では、薬学的組成物は、生理的に適応可能なpHを達成するための緩衝剤を含むものであってもよい。緩衝剤は、リン酸バッファー(PBSなど)、トリエタノールアミン、トリス、ビシン、TAPS、トリシン、HEPES、TES、MOPS、PIPES、カコジル酸、MESなど、所望のpHで緩衝作用のあるどのような化合物を含むものであってもよい。特定の実施形態では、バッファーの強度は少なくとも0.5mM、少なくとも1mM、少なくとも5mM、少なくとも10mM、少なくとも20mM、少なくとも30mM、少なくとも40mM、少なくとも50mM、少なくとも60mM、少なくとも70mM、少なくとも80mM、少なくとも90mM、少なくとも100mM、少なくとも120mM、少なくとも150mMまたは少なくとも200mMである。いくつかの実施形態では、バッファーの強度は300mM以下(たとえば、最大で200mM、最大で100mM、最大で90mM、最大で80mM、最大で70mM、最大で60mM、最大で50mM、最大で40mM、最大で30mM、最大で20mM、最大で10mM、最大で5mM、最大で1mM)である。
投与経路
投与経路についての以下の記述は、単に例示としての実施形態を示すためのものであり、いかなる形でも範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
経口投与に適した調製物は、(a)有効量の本開示の結合体を、希釈剤(水、生理食塩水またはオレンジ果汁など)に溶解させたものなどの液体溶液;(b)あらかじめ定められた量の活性成分を、固体または顆粒として各々含有する、カプセル、サシェ、錠剤、薬用キャンディおよびトローチ;(c)粉末;(d)適切な液体を用いた懸濁液;および(e)好適なエマルションからなるものであってもよい。液体調製物は、薬学的に許容される界面活性剤を添加して、あるいは添加せずに、水およびアルコール(エタノール、ベンジルアルコール、ポリエチレンアルコールなど)などの希釈剤を含むものであってもよい。カプセル形態は、界面活性剤、潤滑剤、不活性フィラー、たとえばラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、トウモロコシデンプンなどを含有する、通常の硬カプセルまたは軟カプセルのゼラチンタイプであってもよい。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸、微結晶セルロース、アカシア、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化アンモニウム、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ならびに、他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、防腐剤、香味剤および他の薬理学的に適応可能な賦形剤のうち、1つまたは2つ以上を含むものであってもよい。薬用キャンディの形態は、本開示の結合体を、通常はスクロース/アカシアまたはトラガントであるフレーバーに含むものであってもよい、ならびに、ゼラチン/グリセリンまたはスクロース/アカシア、エマルション、ゲルなどの不活性基剤に本開示の結合体を含み、これに加えて当分野で知られているような賦形剤も含有するトローチであってもよい。
本開示の結合体は、単独または他の好適な成分との組み合わせで、経肺投与での送達が可能なものであり、これを吸入投与用のエアロゾル調製物にすることも可能である。これらのエアロゾル調製物を、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などのacceptableな高圧ガスに入れてもよい。また、ネブライザーまたはアトマイザーに入れるなど、非圧縮成型のための医薬として調製してもよい。このような噴霧調製物は、粘膜への噴霧にも使用できるものである。いくつかの実施形態では、結合体を粉末ブレンドまたは微粒子またはナノ粒子に調製する。好適な経肺調製物は、当分野で知られている。たとえば、Qian et al., Int J Pharm 366: 218-220 (2009);Adjei and Garren, Pharmaceutical Research, 7(6): 565-569 (1990);Kawashima et al., J Controlled Release 62(1-2): 279-287 (1999);Liu et al., Pharm Res 10(2): 228-232 (1993);国際特許出願公開第WO2007/133747号および国際特許出願公開第WO2007/141411号を参照のこと。
非経口投与に適した調製物として、抗酸化剤、バッファー、静菌剤、溶質を含有することが可能な、調製物と想定レシピエントの血液とを等張にする水性および非水性の等張滅菌注射溶液ならびに、懸濁剤、可溶化剤、濃化剤、安定化剤、防腐剤を含み得る、水性および非水性の滅菌懸濁液があげられる。「非経口」という用語は、消化管を経由せず、皮下、筋肉内、脊髄内または静脈内など、他の何らかの経路によることを意味する。本開示の結合体は、薬学的キャリアにて、生理的に許容可能な希釈剤と一緒に投与可能なものである。この希釈剤としては、滅菌した液体または液体混合物、たとえば、水、生理食塩水、ブドウ糖液、関連の糖液、エタノールまたはヘキサデシルアルコールなどのアルコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコール、ジメチルスルホキシド、グリセロール、2,2−ジメチル−l53−ジオキソラン−4−メタノールなどのケタール、エーテル、ポリ(エチレングリコール)400、油、脂肪酸、脂肪酸エステルまたはグリセリドまたはアセチル化脂肪酸グリセリド(石鹸または洗浄剤などの薬学的に許容される界面活性剤を添加するか、あるいは添加しない)、ペクチンなどの懸濁剤、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースまたは乳化剤および他の薬学的アジュバントなどがあげられる。
非経口調製物に使用可能な油として、石油、動物油、植物油または合成油があげられる。油の具体例として、ピーナッツ油、ダイズ油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油、ワセリン、鉱物油があげられる。非経口調製物に用いられる好適な脂肪酸として、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸があげられる。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルが、好適な脂肪酸エステルの例である。
非経口調製物に用いられる好適な石鹸として、脂肪酸アルカリ金属、アンモニウム、トリエタノールアミン塩があげられ、好適な洗浄剤としては、(a)たとえば、ジメチルジアルキルアンモニウムハライド、アルキルピリジニウムハライドなどのカチオン性洗浄剤、(b)たとえば、アルキル、アリールおよびスルホン酸オレフィン、アルキル、オレフィン、エーテルおよび硫酸モノグリセリド、スルホコハク酸塩などのアニオン性洗浄剤、(c)たとえば、脂肪族アミンオキシド、脂肪属アルカノイルアミド、ポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマーなどの非イオン性洗浄剤、(d)たとえば、アルキル−β−アミノプロピオネート、2−アルキル−イミダゾリン四級アンモニウム塩などの両性洗浄剤、(e)これらの混合物があげられる。
非経口調製物は一般に、約0.5重量%〜約25重量%の本開示のQ−L−Y結合体を溶液で含有する。防腐剤とバッファーを使用してもよい。注射部位での刺激を最小限に抑えるか、あるいはなくすために、このような組成物は、親水性・親油性のバランス(HLB)が約12〜約17の1種類または2種類以上の非イオン性界面活性剤を含有するものであってもよい。このような調製物に含まれる界面活性剤の量は一般に、約5重量%〜約15重量%の範囲になる。好適な界面活性剤としては、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル(モノオレイン酸ソルビタンなど)ならびに、プロピレンオキシドをプロピレングリコールと縮合させて形成される、疎水性塩基を有するエチレンオキシドの高分子量付加物があげられる。非経口調製物は、アンプルおよびバイアルなどの単位用量または複数用量の密閉容器に入れて提供可能であり、注射用の滅菌された液体賦形剤(水など)を使用直前に加えるだけでよい、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管可能である。即時注射液および懸濁液を、上述したような種類の滅菌した粉末、顆粒および錠剤から調製することも可能である。
注射可能な調製物は、本発明によるものである。注射可能な組成物用の有効な薬学的キャリアの要件は、当業者らに良く知られている(たとえば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice, J. B. Lippincott Company, Philadelphia, PA, Banker and Chalmers, eds., pages 238-250 (1982)およびASHP Handbook on Injectable Drugs, Toissel, 4th ed., pages 622-630 (1986)を参照のこと)。
また、乳化用基剤または水溶性基剤などの多岐にわたる基剤と混合して、本開示の結合体を直腸投与用の坐剤にしてもよい。経膣投与に適した調製物は、活性成分に加えて、適切であることが当分野で知られているキャリアを含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー調製物として提供可能なものである。
上述した薬学的組成物に加えて、本開示の結合体を、シクロデキストリン包接錯体またはリポソームなどの包接錯体として調製してもよいことは、当業者であれば理解できるであろう。
用量
本開示のQ−L−Y結合体は、グルカゴン受容体活性化作用、GLP−1受容体の活性化作用、GIP受容体の活性化作用、グルカゴン受容体/GLP−1受容体二重活性化作用、グルカゴン受容体/GIP受容体二重活性化作用、GLP−1受容体/GIP受容体二重活性化作用またはグルカゴン受容体/GLP−1受容体/GIP受容体三重活性化作用が何らかの役割を果たす疾患または病状を治療する方法において有用であると思われる。本開示の目的で、本開示の結合体の投与量または用量は、たとえば、治療対象者または動物で、相応の時間にわたって治療応答または予防応答を得られるだけの十分なものでなければならない。たとえば、本開示の結合体の用量は、投与時点から起算して、約1分〜約4分、約1時間〜約4時間または約1週間〜4週間またはそれより長く、たとえば、5〜20週間またはそれより多くの週、本明細書に記載するように細胞からcAMPの分泌を刺激するのに十分あるいは、哺乳動物の血中グルコース濃度、脂肪濃度、食物摂取量または体重を低下させるのに十分な量でなければならない。特定の実施形態では、期間をさらに長くすることができる。用量については、本開示の特定の結合体の有効性ならびに、動物の状態(ヒトなど)、治療対象となる動物(ヒトなど)の体重に応じて判断されることになる。
投与量を判断するための多くのアッセイが、当分野で知られている。本明細書の目的で、異なる用量の結合体を与える哺乳動物の組において、一定用量の本開示の結合体を哺乳動物に投与したときに血中グルコース濃度が低下する度合いを比較することを含むアッセイを用いて、哺乳動物に投与する開始用量を判断することができる。特定用量の投与時に血中グルコース濃度が低下する度合いを、当分野で知られた方法(たとえば、本明細書の実施例セクションで説明するものを含む)でアッセイすることも可能である。
本開示の結合体の用量は、本開示の特定の結合体を投与することに伴って生じ得る有害作用の有無、性質、度合いによって決まることもある。一般に、対象患者を治療するのに用いられる本開示の結合体の投薬量は、年齢、体重、全身の健康状態、食事、性別、投与対象となる本開示の結合体、投与経路、治療対象となる状態の重症度などの多岐にわたる要因を考慮して、担当医師が決定することになる。本発明を限定する意図のない例として、本開示の結合体の用量は、約0.0001〜約1g/kg治療対象者の体重/日、約0.0001〜約0.001g/kg体重/日または約0.01mg〜約1g/kg体重/日であってもよい。
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、本明細書に開示のいずれかの結合体を、患者への投与に適した純度レベルで含むものである。いくつかの実施形態では、結合体は、純度レベルが少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%または約99%であり、薬学的に許容される希釈剤、キャリアまたは賦形剤を有する。いくつかの態様における薬学的組成物は、本開示の結合体を、少なくともAの濃度で含み、ここで、Aは約0.001mg/ml、約0.01mg/ml、約0.1mg/ml、約0.5mg/ml、約1mg/ml、約2mg/ml、約3mg/ml、約4mg/ml、約5mg/ml、約6mg/ml、約7mg/ml、約8mg/ml、約9mg/ml、約10mg/ml、約11mg/ml、約12mg/ml、約13mg/ml、約14mg/ml、約15mg/ml、約16mg/ml、約17mg/ml、約18mg/ml、約19mg/ml、約20mg/ml、約21mg/ml、約22mg/ml、約23mg/ml、約24mg/ml、約25mg/mlまたはそれより高い。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、結合体を、最大Bの濃度で含み、ここで、Bは、約30mg/ml、約25mg/ml、約24mg/ml、約23mg/ml、約22mg/ml、約21mg/ml、約20mg/ml、約19mg/ml、約18mg/ml、約17mg/ml、約16mg/ml、約15mg/ml、約14mg/ml、約13mg/ml、約12mg/ml、約11mg/ml、約10mg/ml、約9mg/ml、約8mg/ml、約7mg/ml、約6mg/ml、約5mg/ml、約4mg/ml、約3mg/ml、約2mg/ml、約1mg/mlまたは約0.1mg/mlである。いくつかの実施形態では、組成物は、結合体を、AからBmg/mlの濃度範囲、たとえば、約0.001〜約30.0mg/mlで含有する。
標的化形態
本開示の結合体の治療の有効性または予防の有効性が、修飾によって高まるように、本開示のQ−L−Y結合体を、いくつの手段で修飾してもよいことは、当業者であれば容易に理解できるであろう。たとえば、本開示の結合体を、直接的にまたはリンカーを介して間接的に、ターゲットするための部分にさらに結合してもよい。本明細書に記載のグルカゴン結合体などの化合物を、ターゲットするための部分に結合するための実務は、当分野で知られている。たとえば、Wadhwa et al., J Drug Targeting, 3, 111-127 (1995)および米国特許第5,087,616号を参照のこと。「ターゲットするための部分」という表現は、本明細書で使用する場合、ターゲットするための部分が、本開示の結合体を、表面に受容体(グルカゴン受容体、GLP−1受容体)が発現している細胞集団に到達させることができるように、細胞表面受容体を特異的に認識し、これに結合する分子または薬剤を示す。ターゲットするための部分としては、細胞表面受容体(たとえば、上皮増殖因子受容体(EGFR)、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、CD28、血小板由来増殖因子受容体(PDGF)、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)など)に結合する、抗体またはその断片、ペプチド、ホルモン、増殖因子、サイトカインならびに、他の天然または非天然のリガンドがあげられるが、これらに限定されるものではない。本明細書で使用する場合、「リンカー」とは、2つの別々のものを互いに結合する、結合、分子または分子群である。リンカーは、2つのものの間に最適な間隔を提供するものであってもよいし、あるいは、2つのものを互いに分離できるようにする不安定な結合をさらに提供するものであってもよい。不安定な結合としては、光切断可能な基、酸感受性部分、塩基感受性部分、加水分解可能な基および酵素切断可能な基があげられる。「リンカー」という用語は、いくつかの実施形態では、本開示の結合体をターゲットするための部分に結合する薬剤または分子を示す。リンカーおよび/またはターゲットするための部分が、本開示の結合体に結合したあとは本開示の結合体の機能すなわち、細胞からのcAMPの分泌を刺激し、糖尿病または肥満を治療する機能に干渉しないという条件で、本開示の結合体の機能に必要ではない、本開示の結合体上の部位が、リンカーおよび/またはターゲットするための部分を結合するのに理想的な部位である旨は、当業者であれば認識している。リンカーおよび/またはターゲットするための部分が、本開示のペプチド(Q)に結合したあとは、本開示のペプチドの機能に干渉しないという条件で、本開示のペプチド(グルカゴンアゴニストのペプチド、グルカゴンアンタゴニストのペプチド、GLP−1アゴニストのペプチド、GIPアゴニストのペプチドまたは上記の任意の組み合わせなど)の機能に必要ない、本開示のペプチド(Q)上の部位が、リンカーおよび/またはターゲットするための部分を結合するのに理想的な部位である旨は、当業者であれば認識している。
制御放出調製物
あるいは、本開示の結合体を、これを投与する対象となる体内に放出する方法が、時間と体内での位置の点で制御されるように、本明細書に記載のグルカゴン結合体をデポーの形態に修飾してもよい(たとえば、米国特許第4,450,150号を参照のこと)。本開示の結合体のデポー形態は、たとえば、本開示の結合体と多孔性または非多孔性材料(ポリマーなど)を含む移植可能な組成物であってもよく、この場合、本開示の結合体を当該材料によってカプセル化するか、当該材料全体に拡散させるおよび/または非多孔性材料を分解する。このようにした上で、デポーを体内の所望の位置に植込み、そのインプラントから、あらかじめ定められた速度で、本開示の結合体が放出されることになる。
特定の態様における薬学的組成物を、任意のタイプのin vivo放出プロファイルを持つように修飾する。いくつかの態様では、薬学的組成物は、時放出調製物、制御放出調製物、持続性放出調製物、長時間放出調製物、遅延放出調製物または二相性放出調製物である。制御放出用のペプチドまたは結合体を調製するための方法は、当分野で知られている。たとえば、Qian et al., J Pharm 374: 46-52 (2009)および国際特許出願公開第WO2008/130158号、同第WO2004/033036号;同第WO2000/032218号;同第WO1999/040942号を参照のこと。
本組成物は、たとえば、ミセルまたはリポソームあるいは、他の何らかのカプセル化形態をさらに含むものであってもよいし、あるいは、保存および/または送達効果を持続するために、長時間放出形態で投与してもよい。ここに開示の薬学的調製物は、たとえば、毎日(1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回)、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、毎週、2週間に1回、3週間に1回、毎月または2か月に1回など、どのような治療計画で投与してもよい。
用途
本明細書にて初めて提供された情報に基づいて、本明細書に記載のQ−L−Y結合体および関連の薬学的組成物は、たとえば、グルカゴン受容体、GLP−1受容体、GIP受容体または上記の任意の組み合わせに対する活性の欠如が、疾患または病状の発症および/または進行の一要因であるような場合に、その疾患または病状の治療に有用であると考えられている。したがって、本発明は、患者において、GLP−1受容体の活性化および/またはグルカゴン受容体の活性化および/またはGIP活性化の欠如が、疾患または病状の発症および/または進行に関連している疾患または病状を治療または予防する方法を提供するものである。この方法は、患者に、本明細書に記載したいずれかの結合体を、疾患または病状を治療または予防するのに有効な量で提供することを含む。
いくつかの実施形態では、疾患または病状は、メタボリックシンドロームである。メタボリックシンドロームは、メタボリックシンドロームX、インスリン抵抗性症候群またはReaven症候群としても知られ、5000万人を超える米国人に認められる障害である。メタボリックシンドロームは一般に、以下の危険因子のうち少なくとも3つまたは4つ以上に該当することを特徴とするものである:(1)腹部肥満(腹部およびその周辺の脂肪組織が過剰である)、(2)アテローム性脂質異常症(動脈壁へのプラークの蓄積を増やす、高トリグリセリド、高HDLコレステロール、高LDLコレステロールを含む血中脂質値の異常)、(3)血圧上昇、(4)インスリン抵抗性またはグルコース不耐性、(5)血栓形成傾向(たとえば、血中の高フィブリノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化因子阻害因子−1など)、(6)炎症誘発状態(血中のC反応性タンパク質など)。他の危険因子として、老化、ホルモンのアンバランス、遺伝的素因があげられる。
メタボリックシンドロームは、血管プラークの蓄積に関連する冠動脈心疾患ならびに、脳卒中およびアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)と呼ばれる末梢血管疾患などの他の障害の危険性の増加と関連している。メタボリックシンドロームの患者は、初期のインスリン抵抗性状態から完全に打撃を受けたII型糖尿病まで進行し、ASCVDの危険性がさらに高まる。特定の理論に拘泥することなく、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、血管疾患の関係は、インスリン刺激による血管拡張の障害、酸化ストレスが高まることによるインスリン抵抗性に関連したNO利用率の低下、アディポネクチンなどの脂肪細胞由来のホルモンにおける異常(Lteif and Mather, Can. J. Cardiol. 20 (suppl. B):66B-76B (2004))のうちの1つまたは2つ以上が同時に発症することにある。
2001 National Cholesterol Education Program Adult Treatment Panel(ATP III)によれば、同一の対象個体で以下の特徴のうち3つが当てはまる場合に、メタボリックシンドロームの基準を満たすことになる:(a)腹部肥満(ウェスト周りが男性で102cmを超え、女性で88cmを超える);(b)血清トリグリセリド(150mg/dl以上);(c)HDLコレステロール(男性で40mg/dl以下、女性で50mg/dl以下);(d)血圧(130/85以上;(e)空腹時血糖(110mg/dl以上)。世界保健機関(WHO)によれば、以下の基準のうち少なくとも2つが当てはまる、インスリンレベルが高い対象個体(空腹時血糖上昇または食後高血糖単独)は、メタボリックシンドロームの基準を満たす:(a)腹部肥満(ウェスト部と腰部の比が0.9を上回り、肥満度指数が少なくとも30kg/m2またはウェスト周りが37インチを超える);(b)コレステロールパネルでトリグリセリドレベルが少なくとも150mg/dlまたはHDLコレステロールが35mg/dl未満;(c)血圧140/90以上または高血圧の治療中)。(Mathur, Ruchi, "Metabolic Syndrome," ed. Shiel, Jr., William C., MedicineNet.com, May 11, 2009)。
本明細書の目的で、2001 National Cholesterol Education Program Adult Treatment PanelまたはWHOによって規定された基準の一方または両方を対象個体が満たす場合、その対象個体は、メタボリックシンドロームの状態にあるとみなす。
特定の理論に拘泥することなく、本明細書に記載のQ−L−Y結合体は、メタボリックシンドロームを治療するのに有用である。したがって、本発明は、治療対象者で、メタボリックシンドロームを予防または治療する、あるいは、その危険因子のうちの1つ、2つ、3つまたは4つ以上を低減する方法であって、その治療対象者に、本明細書に記載の結合体を、メタボリックシンドロームまたはその危険因子を予防または治療するのに有効な量で与えることを含む、方法が提供される。
いくつかの実施形態では、この方法は、高血糖の病状を治療する。特定の態様では、高血糖の病状は、糖尿病、糖尿病I型、真性糖尿病II型または妊娠性糖尿病(インスリン依存性または非インスリン依存性)である。いくつかの態様では、この方法は、胃障害、網膜症、血管疾患を含む、糖尿病の1つまたは2つ以上の合併症による高血糖の病状を治療する。
いくつかの態様では、疾患または病状は肥満である。いくつかの態様では、肥満は、薬物誘発性肥満である。いくつかの態様では、この方法は、患者における体重増加を防止または低減するか、体重減少量を増やすことで、肥満を治療する。いくつかの態様では、この方法は、患者の食欲を抑え、食物摂取量を減らし、脂肪レベルを下げるか、あるいは胃腸管系での食物の移動速度を落とすことで、肥満を治療する。
肥満は他の疾患の発症または進行と関連しているため、肥満を治療する方法は、血管疾患(冠動脈疾患、脳卒中、末梢血管疾患、虚血再灌流障害など)、高血圧症、II型糖尿病の発症、高脂血症、筋骨格系疾患をはじめとする肥満に関連する合併症を減らす方法にも有用である。したがって、本発明は、これらの肥満関連合併症を治療または予防する方法を提供するものである。
いくつかの実施形態では、疾患または病状は、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)である。NAFLDは、単純性脂肪肝(脂肪過多症)から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変(不可逆的、肝臓の瘢痕化が進行)まで、広い範囲の肝臓疾患を示す。NAFLDのすべての段階で、共通して、肝細胞(肝実質細胞)に脂肪の蓄積(脂肪浸潤)が認められる。単純性脂肪肝は、特定の種類の脂肪すなわちトリグリセリドが肝細胞に異常蓄積するもので、炎症または瘢痕化はない。NASHでは、脂肪の蓄積が肝臓でのさまざまな度合いの炎症(肝炎)および瘢痕化(線維症)と関連している。炎症細胞が肝細胞を破壊することもある(肝細胞の壊死)。「脂肪性肝炎」および「脂肪壊死(steatonecrosis)」という用語でステアト(steato)は脂肪浸潤を示し、肝炎は肝臓における炎症を示し、壊死は破壊された肝細胞を示す。NASHは、最終的には肝臓の瘢痕化(線維症)に、さらには不可逆的かつ進行性の瘢痕化(肝硬変)につながることがある。NASHによって生じる肝硬変は、NAFLDのスペクトルで最も重篤な最終段階である。(Mendler, Michel, "Fatty Liver: Nonalcoholic Fatty Liver Disease (NAFLD) and Nonalcoholic Steatohepatitis (NASH)," ed. Schoenfield, Leslie J., MedicineNet.com, August 29, 2005)。
アルコール性肝疾患またはアルコール誘発肝疾患は、アルコールの過剰摂取に関連するまたはこれによって生じる、病理学的に異なる3種類の肝疾患すなわち、脂肪肝(脂肪過多症)、慢性肝炎または急性肝炎、肝硬変を包含する。アルコール性肝炎は、臨床検査の異常だけが疾患を示す指標である軽度の肝炎から、黄疸(ビリルビンの貯留によって生じる皮膚の黄変)、肝性脳症(肝臓障害による神経の異常)、腹水症(腹部での体液蓄積)、食道静脈瘤の出血(食堂に静脈瘤が生じる)、凝血異常および昏睡などの合併症を伴う重篤な肝臓の機能障害までの範囲に至る。組織学的に、アルコール性肝炎は、肝細胞の風船様腫大による変性、好中球を伴う炎症、ときにはマロリー小体を伴う炎症(細胞の中間径フィラメントタンパク質の異常凝集)という見た目での特徴がある。肝硬変は、解剖学的に、肝臓全体に小結節が生じ、線維症を伴う。(Worman, Howard J., "Alcoholic Liver Disease", Columbia University Medical Centerのウェブサイト)。
特定の理論に拘泥することなく、本明細書に記載のQ−L−Y結合体は、脂肪過多症、脂肪性肝炎、肝炎、肝臓の炎症、NASH、肝硬変またはこれらの合併症をはじめとするアルコール性肝疾患、NAFLDまたはそのいずれかのステージの治療に有用である。したがって、本発明は、治療対象者において、アルコール性肝疾患、NAFLDまたはそのいずれかのステージを予防または治療する方法であって、治療対象者に、本明細書に記載の結合を、アルコール性肝疾患、NAFLDまたはそのステージを予防または治療するのに効果的な量で提供することを含む。このような治療方法は、以下の1つ、2つ、3つまたは4つ以上の低減を含む:肝脂肪含有量、肝硬変の出現または進行、肝細胞癌の出現、炎症の徴候、たとえば肝酵素レベル(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)および/またはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはLDHなど)の異常、血清フェリチン上昇、血清ビリルビン上昇および/または線維症の徴候、たとえばTGF−βレベルの上昇。好ましい実施形態では、本明細書に記載のQ−L−Y結合体を用いて、単純性脂肪肝(脂肪過多症)よりも症状が進行し、炎症または肝炎の徴候が認められる患者を治療する。このような方法を用いると、たとえば、ASTレベルおよび/またはALTレベルを下げることができる。
GLP−1およびエキセンディン−4には、神経保護作用があることがわかっている。本発明は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、他の脱髄関連障害、老年認知症、皮質下性認知症、動脈硬化性認知症、エイズ関連認知症または他の認知症、中枢神経系のがん、外傷性脳損傷、脊髄損傷、脳卒中または脳虚血、脳血管炎、てんかん、ハンチントン病、トゥレット症候群、ギラン・バレー症候群、ウイルソン病、ピック病、炎症性神経疾患、脳炎、脳脊髄炎または髄膜炎(ウイルス性、真菌性または細菌性)または他の中枢神経系感染症、プリオン病、小脳性運動失調症、小脳変性症、脊髄小脳変性症候群、フリードライヒ運動失調症、毛細血管拡張性運動失調症、脊髄性筋萎縮症、進行性核上性麻痺、ジストニア、筋痙縮、振戦、網膜色素変性、線条体黒質変性症、ミトコンドリア脳筋症、神経セロイドリポフスチン症、肝性脳症、腎性脳症、代謝性脳症、毒物による脳症および放射能による脳損傷を含むがこれらに限定されるものではない神経変性疾患の治療に、本明細書に記載のQ−L−Y結合体を用いる用途も提供するものである。
いくつかの実施形態では、疾患または病状が低血糖症である。いくつかの実施形態では、患者が糖尿病患者であり、インスリンを投与することで、低血糖症を誘導する。具体的な態様では、この方法は、インスリンのボーラス投与による血糖低下効果を結合体が緩衝するように、本開示の結合体をインスリンとの組み合わせで提供することを含む。
いくつかの実施形態では、非経口で栄養を摂取している患者または完全非経口栄養などの病院環境で、非糖尿病患者への栄養の非経口投与とQ−L−Y結合体とを併用する。非限定的な例として、手術患者、昏睡患者、消化管に病気のある患者または胃腸管が機能していない患者(外科手術での摘出、閉塞または吸収力の低下、クローン病、潰瘍性大腸炎、胃腸管の通過障害、胃腸管の瘻孔、急性膵炎、虚血性大腸炎、胃腸外科手術、特定の先天性胃腸管異常、手術による遷延性下痢または短腸症候群、ショック患者ならびに、脂質、電解質、ミネラル、ビタミン、アミノ酸のさまざまな組み合わせと一緒に炭水化物の非経口投与を受けている治療中の患者があげられる。非経口栄養組成物が消化される時点でQ−L−Y結合体によって所望の生物学的作用が得られるかぎり、Q−L−Y結合体および非経口栄養組成物を、同時に、異なる時点で、互いに前後して投与することが可能である。たとえば、グルカゴン結合体を2日に1回、1週間に3回、1週間に2回、1週間に1回、2週間ごと、3週間ごとまたは1か月ごとに投与しながら、非経口栄養を1日1回、1日2回または1日3回投与してもよい。
本明細書で使用する場合、「治療」および「予防」という表現ならびにその派生語は、かならずしも100%または完全に治療または予防することを示唆するものではない。むしろ、当業者が潜在的な利点または治療効果が得られると認識する、さまざまな度合いの治療または予防がある。この点において、本発明の方法は、哺乳動物で、疾患または病状のあらゆるレベルの治療または予防の量を提供することが可能である。さらに、この方法によって提供される治療または予防に、疾患または病状の1つまたは2つ以上の状態または症状の治療または予防を含むものであってもよい。たとえば、肥満を治療する方法に関して、いくつかの実施形態における方法で、患者による食物摂取または患者における脂肪レベルの低下を実現する。また、本明細書の目的で、「予防」には、疾患またはその症状または状態の発症を遅らせることを含み得る。
上記の治療方法に関して、患者はどのような宿主であってもよい。いくつかの実施形態では、宿主は哺乳動物である。本明細書で使用する場合、「哺乳動物」という用語は、哺乳綱の脊椎動物を示し、単孔類、有袋類、胎盤類を含むがこれらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、哺乳動物は、ネズミおよびハムスターなどの齧歯目、ウサギなどのウサギ目の哺乳動物の一種である。特定の実施形態では、哺乳動物は、ネコ(猫)およびイヌ(犬)を含む食肉目の動物である。特定の実施形態では、哺乳動物は、ウシ(牛)およびブタ(豚)を含む偶蹄目またはウマ(馬)を含む奇蹄目の動物である。場合によっては、哺乳動物は、霊長目、CeboidsまたはSimoids(サル)または類人猿目(ヒトおよびエイプである)の動物である。特定の実施形態では、哺乳動物はヒトである。
組み合わせ
本明細書に記載のQ−L−Y結合体は、単独で投与してもよいし、本明細書に記載の疾患または病状を治療または予防することを目的とする他の治療剤との組み合わせで投与してもよい。たとえば、本明細書に記載のQ−L−Y結合体を、(同時にまたは順番に)抗糖尿病または抗肥満薬と同時投与してもよい。当分野で知られた抗糖尿病薬または研究中の抗糖尿病薬として、インスリン、レプチン、ペプチドYY(PYY)、膵ペプチド(PP)、繊維芽細胞増殖因子21(FGF21)、Y2Y4受容体アゴニスト、スルホニル尿素、たとえば、トルブタミド(Orinase)、アセトヘキサミド(Dymelor)、トラザミド(Tolinase)、クロルプロパミド(Diabinese)、グリピジド(Glucotrol)、グリブリド(Diabeta、Micronase、Glynase)、グリメピリド(Amaryl)またはグリクラジド(Diamicron);メグリチニド、たとえば、レパグリニド(Prandin)またはナテグリニド(Starlix);ビグアナイド、たとえば、メトホルミン(Glucophage)またはフェンホルミン;チアゾリジンジオン、たとえば、ロシグリタゾン(Avandia)、ピオグリタゾン(Actos)またはトログリタゾン(Rezulin)または他のPPARγ阻害薬;炭水化物の消化を阻害するαグルコシダーゼ阻害薬、たとえば、ミグリトール(Glyset)、アカルボース(Precose/Glucobay);エクセナチド(Byetta)またはプラムリンチド;ジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP−4)阻害薬、たとえば、ビルダグリプチンまたはシタグリプチン;SGLT(ナトリウム依存性グルコーストランスポーター1)阻害剤;グルコキナーゼ活性化因子(GKA);グルカゴン受容体アンタゴニスト(GRA);またはFBPase(フルクトース1,6−ビスホスファターゼ)阻害薬があげられる。
当分野で知られた抗肥満薬または研究中の抗肥満薬は、フェネチルアミンタイプの刺激薬、フェンテルミン(任意にフェンフルラミンまたはデクスフェンフルラミン併用)、ジエチルプロピオン(Tenuate(登録商標))、フェンジメトラジン(Prelu-2(登録商標)、Bontril(登録商標))、ベンズフェタミン(Didrex(登録商標))、シブトラミン(Meridia(登録商標)、Reductil(登録商標));リモナバン(Acomplia(登録商標))、他のカンナビノイド受容体アンタゴニスト;オキシントモジュリン;塩酸フルオキセチン(Prozac);Qnexa(トピラマートとフェンテルミンとの合剤)、Excalia(ブプロピオンおよびゾニサミド)またはContrave(ブプロピオンおよびナルトレキソン);またはXENICAL(Orlistat)に類するリパーゼ阻害薬またはセチリスタット(ATL−962としても知られる)またはGT 389−255をはじめとする食欲抑制薬を含む。
いくつかの実施形態で本明細書に記載のQ−L−Y結合体を、非アルコール性脂肪肝またはNASHの治療用の薬剤と同時投与する。非アルコール性脂肪肝疾患の治療に用いられる薬剤として、ウルソデオキシコール酸(Actigall、URSOおよびUrsodiolとしても知られる)、メトホルミン(Glucophage)、ロシグリタゾン(Avandia)、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、ポリミキシンB、ベタインがあげられる。
いくつかの実施形態で本明細書に記載のQ−L−Y結合体を、神経変性疾患、たとえば、パーキンソン病の治療用の薬剤と同時投与する。抗パーキンソン病薬も当分野で知られており、レボドパ、カルビドパ、抗コリン薬、ブロモクリプチン、プラミペキソールおよびロピニロール、アマンタジン、ラサギリンがあげられるが、これらに限定されるものではない。
上記に鑑みて、本発明はさらに、これらの他の治療剤のうちの1つを含む薬学的組成物およびキットを提供するものである。追加の治療剤は、本開示の結合体と同時に投与してもよいし、順次投与してもよい。いくつかの態様では、追加の治療剤よりも前に結合体を投与するが、別の態様では、追加の治療剤の後に結合体を投与する。
キット
一実施形態では、キットの一部として本開示のQ−L−Y結合体を提供することができる。したがって、いくつかの実施形態では、Q−L−Y結合体の投与が必要な患者にこれ投与するためのキットであって、本明細書に記載するようなQ−L−Y結合体を含むキットが提供される。
一実施形態では、注射針、ペンデバイス、ジェットインジェクターまたは他の針のない注射器など、Q−L−Y結合体組成物を患者に投与するための装置を含むキットが提供される。キットは、これらに代えてあるいはこれらに加えて、バイアル、チューブ、ボトル、シングルチャンバーまたはマルチチャンバーのプレフィルドシリンジ、カートリッジ、輸液ポンプ(体外型または移植型)、ジェットインジェクター、プレフィルドペンデバイスなど、任意にグルカゴン結合体を凍結乾燥形態または水溶液中で含む1つまたは2つ以上の容器を含むものであってもよい。いくつかの実施形態におけるキットは、取扱説明書を含む。一実施形態によれば、キットのデバイスはエアロゾル用の装置であり、この場合、組成物は、エアロゾル装置の中にあらかじめ封入されている。もうひとつの実施形態では、キットに注射器と針を含み、一実施形態では、滅菌グルカゴン組成物があらかじめ注射器に封入されている。
以下の実施例は、単に本発明を例示するためのものにすぎず、その範囲を何ら限定するものではない。
実施例1:グルカゴンスーパーファミリーのペプチドのペプチド断片の合成
材料
別段の記載がないかぎり、本明細書に記載のペプチドは、いずれもアミド化したものである。ペプチド合成時には、MBHA(4−メチルベンズヒドリルアミンポリスチレン)樹脂を使用した。MBHA樹脂、100〜180メッシュ、1%ジビニルベンゼン(DVB)架橋ポリスチレン;ローディング0.7〜1.0mmol/g)、Boc保護(tert−ブチルカルバメート)およびFmoc保護(9−フルオエニルメチルカルバメート)アミノ酸を、Midwest Biotechから購入した。Boc保護したアミノ酸を用いる固相ペプチド合成を、Applied Biosystem 430A Peptide Synthesizerで実施した。Fmoc保護したアミノ酸の合成については、Applied Biosystems Model 433 Peptide Synthesizerを用いて実施した。具体的な実施形態では、以下の手順を用いることができる。
Boc化学戦略でのペプチド合成の一般的なプロトコール
Boc化学を用いるペプチドの合成を、Applied Biosystem Model 430A Peptide Synthesizerを用いて実施した。2mmolのBoc保護したアミノ酸を含むカートリッジに、アミノ酸を連続的に付加することで、合成ペプチドを作製した。具体的には、3−(ジエトキシ−ホスホリルオキシ)−3H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアジン−4−オン(DEPBT)またはHBTUをカップリング剤として使用して、シングルカップリングで合成を実施した。カップリング工程の終わりに、ペプチジル樹脂をトリフルオロ酢酸(TFA)で処理し、N末端のBoc保護基を除去した。この樹脂をジメチルホルムアミド(DMF)で繰り返し洗浄し、この繰り返しサイクルを所望の回数のカップリング工程分だけ繰り返した。Bocアミノ酸およびHBTUについては、Midwest Biotech(Fishers, IN)から入手した。使用した一般的な側鎖保護基は、Arg(Tos)、Asn(Xan)、Asp(OcHex)、Cys(pMeBzl)、His(Bom)、Lys(2Cl−Z)、Ser(OBzl)、Thr(OBzl)、Tyr(2Br−Z)、Trp(CHO)であった。ラクタム架橋形成部位には、Boc−Glu(OFm)−OHおよびBoc−Lys(Fmoc)−OH(Chem-Impex, Wood dale, IL)を使用した。
ペプチドを構築した後、20%ピペリジン処理を用いて、Fmoc保護した側鎖を脱保護した。ラクタム化では、GluおよびLysにオルソゴナル保護基グループを選択した(Glu(Fm)、Lys(Fmoc)など)。保護基の除去後かつHF開裂前に、上述したようにして環化を実施した(たとえば、国際特許出願公開第WO2008/101017号を参照のこと)。
ペプチジル樹脂のHF処理
p−クレゾールおよび硫化ジメチルの存在下、無水HFでペプチジル樹脂を処理した。これによって、一般に約350mg(収率約50%)の粗脱保護ペプチドが生成された。具体的には、ペプチジル樹脂(30mg〜200mg)を、開裂用のフッ化水素(HF)反応容器に入れた。次に、500μLのp−クレゾールをカルボニウムイオンスカベンジャーとして容器に加えた。この容器をHFシステムに取り付け、メタノール/ドライアイス混合物に浸漬した。真空ポンプで容器を脱気し、10mLのHFを蒸留して反応容器に入れた。このペプチジル樹脂とHFの反応混合物を0℃で1時間攪拌した後、真空状態にしてHFをすみやかに排除した(10〜15分)。この容器を慎重に取り出し、約35mLのエーテルを満たしてペプチドを沈殿させ、HF処理による低分子有機保護基とp−クレゾールを抽出した。この混合物をTeflonフィルターで濾過し、2回繰り返して余分なクレゾールをすべて除去した。この濾液をあけた。沈殿したペプチドを約20mLの10%酢酸(aq)に溶解させた。この濾液には所望のペプチドが含まれているが、これを回収して凍結乾燥した。
分析用のHPLCで、可溶化した粗ペプチドを以下の条件で分析した。[4.6×30mmのXterra C8、1.50mL/分、220nm、Aバッファーは0.1%TFA/10%アセトニトリル(CH3CN)、Bバッファーは0.1%TFA/100%CH3CN、15分で勾配5〜95%B]。抽出物を水で2倍に希釈し、2.2×25cmのVydac C4分取逆相カラムに通し、アセトニトリル勾配を用いて、WatersのHPLCシステムで溶出した(Aバッファーは0.1%TFA/10%CH3CN、Bバッファーは0.1%TFA/10%CH3CN、流速15.00mL/分にて120分で勾配0〜100%B。精製ペプチドのHPLC分析によって、純度が95%を超えていることがわかった。エレクトロスプレー/四重極質量分析計を用いて、ペプチドのアイデンティティを確認した。
Fmoc化学戦略での一般的なペプチド合成プロトコール:
標準的なFmoc化学を用いて、Rink MBHAアミド樹脂または最初のアミノ酸が結合したWang樹脂(Novabiochem, San Diego, CA)で、DIC/HOBTをカップリング試薬として使用し、ABI 433A自動ペプチド合成器でペプチドを合成した。使用可能なNα−Fmoc[N−(9−フルオレニル)メトキシカルボニル]アミノ酸の側鎖保護基は、Arg、Pmc;Asp、OtBu;Cys、Trt;Gln、Trt;His、Trt;Lys、Boc;Ser、tBu、Tyr、tBu;およびTrp、Boc(Pmc=2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル、OtBu=tert−ブチルエステル、Trt=トリチル、Boc=tert−ブチルオキシカルボニル、tBu=tert−ブチルエステル)であった。Fmoc−Glu(O−2−PhiPr)−OHおよびFmoc−Lys(Mmt)−OH(Novabiochem, San Diego, CA)は、ラクタム架橋形成部位に取り込まれた。
固相合成後、1%TFA/DCMをペプチジル樹脂にフラッシュして、Gluの2−フェニルイソプロピル(2−PhiPr)基とLysの4−メトキシトリチル(Mmt)基を除去した。ラクタム架橋形成の場合、通常は150mg(0.5mmole、5倍)のBEPBTを10%DIEA/DMFに加え、ニンヒドリン試験で陰性になるまで2〜4時間反応させた。
85%TFA、5%フェノール、5%水および5%チオアニソール(ペプチドがシステインを含む場合は2.5%EDTを加えた)を含有するクリーベイジカクテルを用いて、ペプチドを樹脂から切断した。粗ペプチドをエーテル中で沈殿させ、遠心し、凍結乾燥した。次に、ペプチドを分析用HPLCで分析し、ESIまたはMALDI−TOF質量分析法で調べた。さらに、一般的なHPLC精製手順でペプチドを精製した。
ペプチドのアシル化
アシル化ペプチドを、以下のようにして調製した。固体の担体樹脂上で、CS Bio 4886 Peptide SynthesizerまたはApplied Biosystems 430A Peptide Synthesizerのいずれかを用いて、ペプチドを合成した。Schnolzer et al., Int. J. Peptide Protein Res. 40: 180-193 (1992)に説明されているような、in situ中和法を使用した。アシル化ペプチドの場合、アシル化対象となる標的アミノ酸残基(配列番号1601のアミノ酸の位置番号で10番目など)をNε−FMOCリジン残基で置換した。完成したN端がBOCで保護されたペプチドをDMF中にて20%ピペリジンで30分間処理し、FMOC/ホルミル基を除去した。10倍モル過剰のFMOCした保護スペーサーのアミノ酸(たとえば、FMOC−Glu−OtBu)またはアシル鎖(たとえば、CH3(CH2)14−COOH)と、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、N,N’ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)またはDEPBTカップリング試薬とを、DMF/ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)溶液で反応させて、遊離ε−アミノLys残基への結合を達成した。その後、スペーサーのアミノ酸のFmoc基を除去し、アシル鎖とのカップリングを繰り返す。100%TFAでの最後の処理で、側鎖保護基とN末端のBOC基を除去した。ペプチド樹脂を5%DIEA/DMFで中和し、乾燥させた後、HF/p−クレゾール(95:5)を0℃で1時間用いて、担体から接続する。エーテル抽出後、5%酢酸(HOAc)溶液を用いて、粗ペプチドを溶媒和させる。その後、ESI−MSによって、溶液の試料に正しい分子量のペプチドが含まれることを確認した。逆相(RP)HPLCによって、10%CH3CN/0.1%TFAから100%CH3CN中0.1%TFAの直線勾配で、正しいペプチドを精製した。精製には、Vydac C18の22mm×250mmのタンパク質カラムを用いた。アシル化したペプチド結合体は通常、バッファー比20:80で溶出された。一部をプールし、分析用RP−HPLCで純度を確認した。純粋な画分を凍結乾燥し、白色で固体のペプチドを得た。
ペプチドがラクタム架橋とアシル化対象の標的残基を含むのであれば、そのアミノ酸をペプチド骨格に付加する際に、上述したようにしてアシル化を実施した。
チオエーテル結合を形成するためのペプチドのPEG化
ペプチドをPEGするために、ペプチドとPEGの両方を溶解して透明な溶液にするのに必要な最小量の溶媒(通常、2〜3mgのペプチドを用いる反応で2mL未満)を使用して、40kDaのメトキシポリ(エチレングリコール)ヨードアセトアミドを、7M尿素、50mM Tris−HClバッファーにてモル等量のペプチドと反応させた。4〜6時間、室温での強い攪拌を開始し、分析用RP−HPLCを用いて反応物を分析した。PEG化生成物は、保持時間が短くなり、開始材料とは異なるように見えた。最初のペプチド精製に用いた条件と類似の条件で、Vydac C4カラムで精製を実施した。溶出はバッファー比50:50のあたりで生じた。純粋なPEG化ペプチドの画分を見つけ、凍結乾燥した。収率は50%を超え、反応ごとに異なっていた。
マレイミド結合を形成するためのペプチドのPEG化
ペプチドをPEG化するために、システインを含有するペプチドをリン酸緩衝食塩水(5〜0mg/mL)に溶解させ、0.01Mのエチレンジアミン四酢酸を加える(合計容量の10〜15%)。過剰な(2倍)マレイミドメトキシPEG試薬(Dow)を加え、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で反応の進み具合を観察しながら反応物を室温にて攪拌した。8〜24時間後、反応混合物を酸性化し、分取逆相カラムに通して、0.1%テトラフルオロ酢酸(TFA)/アセトニトリルを用いてグラジエントモードで精製する。適切な画分を合わせ、凍結乾燥して、所望のPEG化誘導体を得た。
質量分析による分析
Sciex API-IIIエレクトロスプレー/四重極質量分析計を標準的なESIイオン化源で用いて、質量スペクトルを得た。使用したイオン化状態は次のとおりである:陽イオンモードでESI;イオンスプレー電圧、3.9kV;オリフィス電位60V。使用したネブライジングガスおよびカーテンガスは窒素で、流量を9L/分とした。600〜1800トンプソンの1ステップあたり0.5Th、滞留時間2ミリ秒で質量スペクトルを記録した。試料(約1mg/mL)を1%酢酸もに含有50%アセトニトリル溶液に溶解し、外側のシリンジポンプで5μL/分で導入した。
PBS溶液中でESI MSによってペプチドを分析する場合、最初に、0.6μLのC4樹脂の入ったZipTip固相抽出チップを製造業者の指示どおりに用いて、ペプチドを脱塩した(Millipore Corporation, Billerica, MA、ワールドワイドウェブでmillipore.com/catalogue.nsf/docs/C5737のMillipore社のウェブサイトを参照のこと)。
高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析:
これらの粗ペプチドで予備分析を実施し、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)およびMALDI分析を用いて、リン酸緩衝食塩水(PBS)バッファー(pH、7.2)にて相対的な変換率を概算で求めた。粗ペプチド試料をPBSバッファーに1mg/mLの濃度で溶解させた。得られた溶液1mLを1.5mLのHPLCバイアルで保管し、これを密閉して37℃でインキュベートした。100μlのアリコートをさまざまな間隔で抜き取り、室温まで冷却し、HPLCで分析した。
214nmでUV検出器を使用して、Beckman System Gold Chromatographyシステムで、HPLC分析を実施した。HPLC分析は、150mm×4.6mmのC18 Vydacカラムで実施する。流速は1mL/分とした。溶媒Aは0.1%TFAを蒸留水に加えたものを含有し、溶媒Bは0.1%TFAを90%CH3CNに加えたものを含有した。直線勾配を用いた(15分間で40%〜70%B)。データを集め、Peak Simple Chromatographyソフトウェアで分析した。
実施例2
それぞれのペプチドがcAMPを誘導する機能については、ホタルルシフェラーゼを用いるレポーターアッセイで測定した。誘導されるcAMP産生は、グルカゴン受容体またはGIP受容体またはGLP−1受容体に結合しているグルカゴン断片と正比例する。受容体とcAMP応答配列に結合させたルシフェラーゼ遺伝子とをコトランスフェクトしたHEK293細胞を、バイオアッセイに使用した。
0.25%BGS(Bovine Growth Serum)(HyClone, Logan, UT)を加えたダルベッコ変法最小必須培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)で16時間培養して、培地から血清を除去した後、37℃、5%CO2にて、96ウェルのポリ−D−リジンコートディッシュ「Biocoat(登録商標)」プレート(BD Biosciences, San Jose, CA)で5時間、グルカゴン断片を段階希釈したものとインキュベートした。インキュベーション終了時、100μLのLucLite発光基質試薬(Perkin Elmer, Wellesley, MA)を各ウェルに加えた。プレートを軽く振盪し、暗所にて10分間インキュベートし、MicroBeta-1450液体シンチレーションカウンター(Perkin-Elmer, Wellesley, MA)で発光を測定した。Originソフトウェア(OriginLab, Northampton, MA)を用いて、50%有効濃度(EC50)および50%阻害濃度(IC50)を計算した。以下の実施例では、別段の記載がないかぎり、記載のEC50およびIC50はいずれも、nM単位での値である。
実施例3:GLP−1/エストロゲン(3−エーテル)の調製
Bocプロトコールを使用し、実施例1に開示したBoc−Lys(Fmoc)−OH残基をC末端に用いて、GLP−1類縁体を合成した。(生成物4を加える前に、リジン残基の側鎖のアミンを保護しているFmoc基を、20%ピペルジン/DMFで30分かけて除去した)。エチル2−ブロモ酢酸との反応によって、エストラジオール17−アセテートを3位で誘導体化した。以下に示すように、誘導体化後のエストラジオールを加水分解し、GLP−1類縁体のC末端のリジンと反応させて、GLP−1/エストロゲン(3−エーテル)結合体を生成した。
具体的には、等モル量のエストラジオール17−アセテート(1)と2−ブロモ酢酸エチル(2)とをジオキサン/K2CO3に溶解させ、反応物を還流条件下で16時間、攪拌した。反応溶媒を真空中で蒸発させ、生成物(3)をジオキサンに再懸濁させた。NaOH(1N)をゆっくりと加え、2時間攪拌した。反応溶媒を真空中で蒸発させた。この生成物(4)をジクロロメタンで3回洗浄した後、ジクロロメタンに再懸濁させた。HCl(1N)をゆっくりと加えて、生成物を酸性化した。生成物4と樹脂結合ペプチドとをHOBt/DIC/NMPにて4時間混合し、濾過し、トリフルオロ酢酸で処理し、フッ化水素酸で処理して樹脂から切断した。ペプチド−エストロゲン結合体を逆相HPLCで精製し、ESI質量分析で特徴を調べた。
実施例4:GLP−1/エストロゲン(17−カルバメート)の調製
Bocプロトコールを使用し、実施例1に開示したBoc−Lys(Fmoc)−OH残基をC末端に用いて、GLP−1類縁体を合成した。(エストロゲン誘導体の結合前に、リジン残基の側鎖のアミンを保護しているFmoc基を、20%ピペルジン/DMFで30分かけて除去した)。以下に示すように、クロロギ酸4−ニトロフェニルとの反応によって、β−エストラジオール3−ベンゾエートを17位で誘導体化した。誘導体化後のエストラジオールをGLP−1類縁体のC末端のリジンと反応させて、GLP−1/エストロゲン(17−エステル)結合体を生成した。
具体的には、β−エストラジオール3−ベンゾエート(1)と2倍過剰のクロロギ酸4−ニトロフェニル(2)とを、ピリジン、トルエン、DMAP中、灌流条件下で24時間、一緒に攪拌した。反応溶媒を真空中で蒸発させ、生成物であるβ−エストラジオール17−ニトロフェニルエステル3−ベンゾエート(3)を、酢酸エチルに再懸濁させた。反応生成物をHCl(0.01N)溶液で2回洗浄した後、水で1回洗浄した。酢酸エチルを真空中で蒸発させ、生成物(3)をヘキサンで沈殿させた。生成物3と樹脂結合ペプチドとをNMP/5%DIEA中にて4時間混合し、濾過し、TFAで処理し、HF処理によって樹脂から切断した。ペプチド−エストロゲン結合体を逆相HPLCで精製し、ESI質量分析で特徴を調べた。
実施例5:GLP−1/エストロゲン(17−エステル)の調製
Bocプロトコールを使用し、実施例1に開示したBoc−Lys(Fmoc)−OH残基をC末端に用いて、GLP−1類縁体を合成した。(エストロゲン誘導体の結合前に、リジン残基の側鎖のアミンを保護しているFmoc基を、20%ピペルジン/DMFで30分かけて除去した)。無水コハク酸との反応によって、エストラジオールを17位で誘導体化した。以下に示すように、誘導体化後のエストラジオールをGLP−1類縁体のC末端のリジンと反応させて、GLP−1/エストロゲン(17−エステル)結合体を生成した。
具体的には、β−エストラジオール17−アセテート(1)と10倍過剰の無水コハク酸(2)とを、5%DIEAおよびDMAPを含有するDMF中、室温にて48時間、一緒に攪拌した。48時間後、反応溶媒を真空中で蒸発させ、生成物(3)を酢酸エチルに再懸濁させた。反応生成物(3)をHCl(0.01N)溶液で2回洗浄した後、水で1回洗浄した。酢酸エチルを真空中で蒸発させ、生成物(3)をMeOH/アセトニトリル/水の混合物に再懸濁させた。エストロゲン誘導体生成物(3)を逆相HPLCで精製した。凍結乾燥生成物(3)と樹脂結合ペプチドとを、HOBt/DIC/NMPにて4時間混合し、濾過し、TFAで処理し、HF処理によって樹脂から切断した。ペプチド−エストロゲン結合体を逆相HPLCで精製し、ESI質量分析で特徴を調べた。
実施例6:GLP−1/エストロゲン(3−エステル)の調製
Bocプロトコールを使用し、実施例1に開示したBoc−Lys(Fmoc)−OH残基をC末端に用いて、GLP−1類縁体を合成した。(エストロゲン誘導体の結合前に、リジン残基の側鎖のアミンを保護しているFmoc基を、20%ピペルジン/DMFで30分かけて除去した)。無水コハク酸との反応によって、エストラジオール17−アセテートを3位で誘導体化した。以下に示すように、誘導体化後のエストラジオールをGLP−1類縁体のC末端のリジンと反応させて、GLP−1/エストロゲン(3−エステル)結合体を生成した。
具体的には、β−エストラジオール17−アセテート(1)と10倍過剰の無水コハク酸(2)とを、5%DIEAおよびDMAPを含有するDMF中、室温にて48時間、一緒に攪拌した。48時間後、反応溶媒を真空中で蒸発させ、生成物(3)を酢酸エチルに再懸濁させた。反応生成物(3)をHCl(0.01N)溶液で2回洗浄した後、水で1回洗浄した。酢酸エチルを真空中で蒸発させ、生成物(3)をMeOH/アセトニトリル/水の混合物に再懸濁させた。エストロゲン誘導体生成物(3)を逆相HPLCで精製した。凍結乾燥生成物(3)と樹脂結合ペプチドとを、HOBt/DIC/NMPにて4時間混合し、濾過し、TFAで処理し、HF処理によって樹脂から切断した。ペプチド−エストロゲン結合体を逆相HPLCで精製し、ESI質量分析で特徴を調べた。
実施例7:GLP−1/エストロン3−エステル)の調製
Bocプロトコールを使用し、実施例1に開示したBoc−Lys(Fmoc)−OH残基をC末端に用いて、GLP−1類縁体を合成した。(エストロゲン誘導体の結合前に、リジン残基の側鎖のアミンを保護しているFmoc基を、20%ピペルジン/DMFで30分かけて除去した)。無水コハク酸との反応によって、エストロンを3位で誘導体化した。以下に示すように、誘導体化後のエストロンをGLP−1類縁体のC末端のリジンと反応させて、GLP−1/エストロン(3−エステル)結合体を生成した。
具体的には、エストロン(1)と10倍過剰の無水コハク酸(2)とを、5%DIEAおよびDMAPを含有するDMF中、室温にて48時間、一緒に攪拌した。48時間後、反応溶媒を真空中で蒸発させ、生成物(3)を酢酸エチルに再懸濁させた。反応生成物(3)をHCl(0.01N)溶液で2回洗浄した後、水で1回洗浄した。酢酸エチルを真空中で蒸発させ、生成物(3)をMeOH/アセトニトリル/水の混合物に再懸濁させた。エストロン誘導体生成物(3)を逆相HPLCで精製した。凍結乾燥生成物(3)と樹脂結合ペプチドとを、HOBt/DIC/NMPにて4時間混合し、濾過し、TFAで処理し、HF処理によって樹脂から切断した。ペプチド−エストロゲン結合体を逆相HPLCで精製し、ESI質量分析で特徴を調べた。
実施例8:GLP−1/エストロゲン(17−ヒドラゾン)の調製
実施例1に開示したBocプロトコールを用いて、GLP−1類縁体を合成した。Bocを用いるin situ中和法を使用し、エストロゲンを付加しやすくするためにBoc−Cys(4−MeBzl)−OH残基をC末端に用いて、ペプチドを合成した。マレイミドカプロン酸ヒドラジドとの反応によって、エストロンを17位で誘導体化した。以下に示すように、誘導体化後のエストロンをGLP−1類縁体のC末端のシステインと反応させ、GLP−1/エストラジオール(17−ヒドラゾン)結合体を生成した。
具体的には、等モル量のエストロン(1)とε−マレイミドカプロン酸ヒドラジド(2)とを、0.1%TFAを含有するMeOH中、室温にて4時間、一緒に攪拌した。4時間後、反応溶媒を真空中で蒸発させ、生成物(3)を冷エーテル中で沈殿させ、シリカカラムで精製した。DMF、ACN、Tris、水の混合物(pH7.5)を、室温にて24時間、5倍過剰の生成物3を切断・精製後のペプチドと混合し、ペプチド−エストロゲン結合体を生成した。ペプチド−エストロゲン結合体を逆相HPLCで精製し、ESI質量分光で特徴を調べた。
実施例9:GLP−1/エストロゲン(17−カルバメートジスルフィド)の調製(立体障害があるものとないもの)
実施例1に開示したBocプロトコールを用いて、GLP−1類縁体を合成した。Bocを用いるin situ中和法を使用し、エストロゲンを付加しやすくするためにBoc−Cys(4−MeBzl)−OH残基(立体障害のないジスルフィド結合体を生成する場合)またはBoc−Pen(4−MeBzl)−OH残基(立体障害のあるジスルフィド結合体を生成する場合)をC末端に使用して、ペプチドを合成した。クロロギ酸4−ニトロフェニルとの反応によって、β−エストラジオール3−ベンゾエートを17位で誘導体化した。次に、以下に示すように、中間体をピリジルジチオ−エチルアミン−HClと反応させ、GLP−1類縁体のC末端のシステインとジスルフィド交換反応により、GLP−1/エストラジオール(17−カルバメートジスルフィド)結合体を生成した。
まず、等モル量のアルドリチオール−2(1)と2−メルカプトエチルアミンHCl(2)とを、2%AcOHを含有するMeOH中、室温にて48時間、一緒に攪拌した。48時間後、反応溶媒を真空中で蒸発させ、生成物(3)を冷エーテル中で沈殿させた。第2に、β−エストラジオール3−ベンゾエート(4)と2倍過剰のクロロギ酸4−ニトロフェニル(5)とを、ピリジン、トルエン、DMAP中、灌流条件下で4時間、一緒に攪拌した。反応溶媒を真空中で蒸発させ、生成物であるβ−エストラジオール17−ニトロフェニルエステル3−ベンゾエート(6)を酢酸エチルに再懸濁させた。この反応生成物をHCl(0.01N)溶液で2回洗浄した後、水で1回洗浄し、これを分液漏斗に移した。酢酸エチルを真空中で蒸発させ、生成物(6)をヘキサンで沈殿させた。
等モル量のピリジルジチオ−エチルアミンHCl(3)とβ−エストラジオール17−ニトロフェニルエステル3−ベンゾエート(6)とを、5%DIEAおよびDMAPを含有するピリジン中、室温にて48時間、一緒に攪拌した。48時間後、反応溶媒を真空中で蒸発させ、生成物(7)を酢酸エチルに再懸濁させた。この反応生成物をHCl(0.01N)溶液で2回洗浄した後、水で1回洗浄し、酢酸エチルを真空中で蒸発させた。0.25%K2CO3のジオキサン/メタノール混液中で室温にて3時間処理することで、生成物(7)の3−ベンゾエート基を除去し、生成物であるβ−エストラジオール17−カルバメートS−S−NPy(8)を生成した。この生成物をシリカカラムで精製した。NMPおよびTris(pH7.5)中、室温にて48時間、5倍過剰の生成物8を切断・精製後のペプチド(システイン残基またはペニシラミン残基を40番目に有する)と混合し、ペプチド−エストロゲン結合体を精製した。このペプチド−エストロゲン結合体を逆相HPLCで精製し、ESI質量分光で特徴を調べた。
実施例10:GLP−1/エストロゲン(17−カテプシンジアミノエタン)の調製
実施例1に開示したBocプロトコールを用いて、GLP−1類縁体を合成した。Bocを用いるin situ中和法を使用し、ジペプチドスペーサーおよびエストロゲンを付加しやすくするためにZ−His(BOM)−OH残基をN末端に、Boc−Lys(Fmoc)−OHをC末端に用いて、ペプチドを合成した。以下に示すように、β−エストラジオール17−ニトロフェニルエステルベンゾエートを17位で誘導体化して、GLP−1/エストラジオール(17−カテプシンジアミノエタン)結合体を生成した。
Wang樹脂でFmoc−を基にしたin situ中和法を使用してFmoc−Phy−Lys(Cl−Z)−OH(1)を合成し、TFA/DCMを用いて樹脂から切断した。等モル量のFmoc−Phe−Lys(Cl−Z)−OH(1)とBoc−エチレンジアミン(2)とを、HOBt、DIC、DCM中、室温にて4時間、一緒に攪拌した。この反応生成物をHCl(0.01N)溶液で2回洗浄した後、水で1回洗浄し、これを分液漏斗に移し、酢酸エチルを真空中で蒸発させた。洗浄ステップの後、反応生成物を20%ピペルジンのDMF溶液で30分間処理してN末端のFmoc基を除去し、NH2−Phe−Lys(Cl−Z)−EDA−Boc(3)を生成した。これを、ピペルジン/DMF溶媒を真空中で除去した後に冷エーテル中で沈殿させた。NH2−Phe−Lys(Cl−Z)−EDA−Boc(3)を、DMF、5%DIEA、DMAP中、室温にて16時間、2倍過剰の無水コハク酸(4)と一緒に攪拌した。その後、反応溶媒を真空中で蒸発させ、MeOH、アセトニトリル、水に再懸濁させた。反応生成物であるヘミコハク酸−Phe−Lys(Cl−Z)−EDA−Boc(5)を、逆相HPLCで精製した。5倍過剰の凍結乾燥生成物(5)と樹脂結合ペプチドとをHOBt/DIC/NMP中にて16時間混合し、濾過し、TFAで処理して、生成物であるGLP−1+ヘミコハク酸−Phe−Lys(Cl−Z)−EDA(6)を生成した。NMP/5%DIEA中、上記の樹脂結合生成物(6)を5倍過剰のβ−エストラジオール17−ニトロフェニルエステル3−ベンゾエート(7)と16時間混合し、濾過し、HF処理によって樹脂から切断して、最終生成物(8)を生成した。ペプチド−エストロゲン結合体を逆相HPLCで精製し、ESI質量分光で特徴を調べた。
実施例11:GLP−1/コレステロール3−アミド)の調製
実施例1に開示したBocプロトコールを用いて、GLP−1類縁体を合成した。Bocを用いるin situ中和法を使用し、Boc−Lys(Fmoc)−OH残基をC末端に用いて、ペプチドを合成した。以下に示すように、コレステロール3−カルボン酸をGLP−1類縁体のC末端のリジンと反応させて、GLP−1/コレステロール(3−アミド)結合体を生成した。
具体的には、コレステロール3−カルボン酸(1)と樹脂結合ペプチドとをHOBt/DIC/NMP中にて16時間混合し、濾過し、TFAで処理し、HF処理によって樹脂から切断した。生成物4を加える前に、リジン残基の側鎖のアミンを保護しているFmoc基を、20%ピペルジン/DMFで30分かけて除去した。ペプチド−コレステロール結合体(2)を逆相HPLCで精製し、ESI質量分析で特徴を調べた。ペプチド骨格をPEG化するのであれば、PEG部分を付加しやすいように配列の24番目にシステイン残基を付加し、等モル量のヨードアセチル40k PEGと結合体とを7Mの尿素/0.05Mのトリスバッファー(pH8.5)で1時間混合することによって、PEG部分をペプチド−コレステロール結合体に付加した。
実施例12:エストロゲン受容体結合アッセイ
精製ERαおよびMillipore Filter Plateを用いるPhosphoImagerプロトコール
以下の試薬を使用して、エストロゲン受容体結合アッセイを実施した:リガンド結合バッファー(pH7.6)、50mMのHEPES−ナトリウム塩、1mMのCaCl2、5mMのMgCl2、0.5%のBSA、スクロース Cushion(pH7.6)、20%スクロース、120mMのNaCl、40mMのTris−HCl、0.4%BSA、ポリエチレンイミン(PEI)、0.25%PEI。
「コールド」のエストラジオールの滴定
所望の試験濃度のうち最も高い濃度の5倍のコールドのエストラジオールのストック希釈液を調製した。試験した最高濃度は10μMである。よって、合計容量500μlで、50μMのストックを調製した。正確に40μlの結合バッファーを、カラム11および12以外の滴定プレートの各ウェルに加えた。正確に60μlのストック濃縮液を滴定プレートのカラム11の各ウェルに加えた。20μlをカラム11からカラム10に移し、混合して、3倍滴定を実施した。それぞれのカラムを、カラム1から順に滴定した。正確に20μlを滴定プレートの各ウェルからアッセイプレートの対応するウェルに移した。正確に20μlの結合バッファーを「全結合」ウェル(ウェル12(A〜D))に加えた。正確に20μlの100μMのコールドのエストラジオールを「非特異的結合」ウェル(ウェル12(E〜H))に加えた。
一定濃度の「ホットの」エストラジオール
望ましい試験濃度である0.05nMよりも5倍高い濃度で、放射能標識したエストラジオールのストック溶液を調製した。このため、0.25nMの放射能標識したエストラジオールのストックを、少なくとも合計容量2.3mLで調製した。放射能標識したエストラジオールは、10uCiで容量100μlの溶液になるが、これを2200Ci/mmolで換算すると、濃度45.45nMに相当する。0.25nMのストック2.3mLのために、放射能標識したエストラジオール12.65μLを2.29mlの結合バッファーに加えた。正確に20μLのストック溶液を、設計に応じてアッセイプレートの各ウェルに加えた。
精製エストロゲン受容体αの滴定
精製エストロゲン受容体を、濃度1.5nMで試験した。各ウェルに60μLのエストロゲン受容体を加えているため、1.667倍高いストック濃度とした。試験濃度1.5nMのために、ストック濃度を2.5nMとした。8.4μLのストックを6.99mLの結合バッファーに加えて、2.5nMの受容体を容量7.0mLで調製した。その後、正確に60μLの受容体を、アッセイプレートの適切なウェルに移した。
アッセイ
アッセイプレート(コールドのリガンド、ホットのリガンド、細胞ライセートを入れてある)を室温にて2時間、インキュベートした。正確に25μLの0.25%PEIをフィルタープレートの各ウェルに加えた。フィルタープレートを20分間インキュベートした後、ウェルを真空でクリーニングした。アッセイプレートの懸濁液を正確に80μL、PEIコートフィルタープレートに移した。真空マニホールドを使用し、フィルタープレートを介して試料を真空にした。フィルタープレートを結合バッファーで数回洗浄した後、セロファンで包んだ。ウェルの底がスクリーンに最も近くなるようにして、プレートをホスホイメージング用スクリーンの表面に固定した。ホスホイメージング用スクリーンとプレートを、放射能測定用フィルムバッグに入れ、48時間露光した。イメージング用スクリーンをホスホイメージャーでスキャンし、露光ファイルを得た。
実施例13
マウス(db/db、N=6、平均初期体重=54g)に、以下のうちの1つを40μg/kgまたは400μg/kgか、そうでなければ溶媒を、4週間にわたって1日1回、皮下注射した。
(a)GLP−1(Aib2A22CexK40)(400μg/kg−日)
(b)GLP−1(Aib2A22CexK40)/エストロゲン(17−エステル)(40μg/kg−日)または
(c)GLP−1(Aib2A22CexK40)/エストロゲン(17−エステル)(400μg/kg−日)
23日後に体重を測定し、体重の変化を求めた(図2a)。高用量のGLP−1(Aib2A22CexK40)/エストロゲン(17−エステル)結合体を投与したマウスのほうが、GLP−1を単独で投与したマウスよりも体重の減り方が大きかった。
GLP−1(Aib2A22CexK40)/エストロゲン(17−エステル)結合体が、23日間の期間に累積の食物摂取量に対しておよぼす影響も判断した。高用量のGLP−1(17−エステル)/エストロゲン(17−エステル)結合体を投与したマウスのほうが、GLP−1を単独で投与したマウスよりも食物摂取量が少なかった。
図2bおよび図2cは、GLP−1(Aib2A22CexK40)/エストロゲン(17−エステル)結合体が、血中グルコース濃度(mg/dL)に対しておよぼす影響を示している。高用量のGLP−1(Aib2A22CexK40)/エストロゲン(17−エステル)結合体を投与したマウスで、0日目から14日目までの間に血中グルコース濃度の下がり方が最も大きかった。
実施例14.GLP−1/エストロゲン結合体のin vivoでの作用
食餌で誘導した肥満(DIO)マウス(N=8、1群あたりマウス6匹、平均初期体重=58g)に、以下のうちの1つを4μg/kg、40μg/kgまたは400μg/kgか、そうでなければ溶媒を、4週間にわたって1日1回、皮下注射した。
(a)GLP−1(Aib2E16CexK40)(40μg/kg−日)
(b)GLP−1(Aib2A22CexK40)(400μg/kg−日)または
(c)GLP−1(Aib2A22CexK40)/エストロゲン(17−エステル)(4、40または400μg/kg−日)
25%(v/v)のグルコースを含有する生理食塩水を、7日目と21日目の0分の時点で、体重1kgあたり1.5gの用量で注射した。7日目と21日目の0分、15分、30分、60分、120分の時点で、血糖を測定した(図3a)。
23日後に体重を測定し、体重の変化、体脂肪量の変化、除脂肪体重の変化を求めた(図3b〜図3d)。高用量のGLP−1(Aib2A22CexK40)/エストロゲン(17−エステル)結合体を投与したマウスで、体重および体脂肪量の減り方が最も大きく、除脂肪体重の減少が最も少なかった。
GLP−1(Aib2A22CexK40)/エストロゲン(17−エステル)結合体が、23日間の期間に累積の食物摂取量に対しておよぼす影響も判断した。高用量のGLP−1(Aib2A22CexK40)/エストロゲン(17−エステル)を投与したマウスが、食餌の量が最も少なかった。
図3eは、GLP−1(Aib2A22CexK40)/エストロゲン(17−エステル)結合体が、血糖の変化に対しておよぼす影響を示している。高用量のGLP−1(Aib2A22CexK40)/エストロゲン(17−エステル)結合体を投与したマウスで、0日目から14日目までの間に血中グルコース濃度の下がり方が最も大きかった。これらの結果から、A22を基にしたGLP−1のアゴニストにエストロゲンを付加すると、用量依存性の有効性も増強されることがわかる。
実施例15.
食餌で誘導した肥満(DIO)マウス(N=8、平均初期体重=59g)に、溶媒または以下のうちの1つを、4週間にわたって1日1回、皮下注射した。
(a)GLP−1(Aib2E16Cex K40)(40または400μg/kg−日)
(b)GLP−1(Aib2E16Cex K40)/エストロゲン(17−エステル)(40または400μg/kg−日)または
(c)GLP−1(Aib2E16Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)(40または400μg/kg−日)
25%(v/v)のグルコースを含有する生理食塩水を、14日目の0分の時点で、体重1kgあたり1.5gの用量で注射した。0分、15分、30分、60分、120分の時点で、血中グルコース濃度を測定した。図4aに、この実験で得られたデータを示す。
21日後に体重を測定し、総体重と体脂肪量の変化を求めた(図4b〜図4c)。高用量のGLP−1/エストロゲン結合体を投与したマウスで、総体重の減り方が最も大きかった(図4b)。体脂肪量は、溶媒処理動物に比して、高用量のエストロゲンエーテル結合体で低下した(図4c)。エステル結合体のほうがエーテル結合体よりも総体重に対する影響が大きく、エーテル結合体のほうがエステル結合体よりも体脂肪量に対する影響が大きかった。
GLP−1(Aib2E16Cex K40)/エストロゲン結合体が、21日間の期間に累積の食物摂取量に対しておよぼす影響も判断した。GLP−1/エストロゲン結合体を投与したマウスのほうが、GLP−1(Aib2E16Cex K40)を単独で投与したマウスよりも、食物摂取量が少なかった。
図4dは、GLP−1(Aib2E16Cex K40)/エストロゲン結合体が、血中グルコース濃度(mg/dL)に対しておよぼす影響を示す。高用量で、いずれかのGLP−1(Aib2E16Cex K40)/エストロゲン結合体を投与したマウスのほうが、GLP−1(Aib2E16Cex K40)を単独で投与したマウスよりも、0日目から21日目までの間の血中グルコース濃度の変化が大きかった。
実施例16.
9か月間にわたって糖尿病食を与えたマウス(N=8、11月齢、平均体重60g)に、溶媒または以下のうちの1つを皮下注射した
(a)GLP−1(Aib2E16Cex K40)(40または400μg/kg/日)
(b)GLP−1(Aib2E16Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)(40または400μg/kg−日)
(c)dGLP−1(A1Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)(40または400μg/kg−日)
(d)GLP−1(Aib2E16C24(PEG−40kDa)Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)(40、400μg/kg−日)
(e)GLP−1(Aib2E16C24(PEG−40kDa)Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)(40μg/kg−週)
(f)GLP−1(Aib2E16C24(PEG−40kDa)Cex K40)(40μg/kg−週)
7日後に体重を測定し、体重の変化を求めた(図5a)。高用量のGLP−1/エストロゲン結合体を投与したマウスで、体重の減り方が最も大きかったが、低一日量のGLP−1/エストロゲン結合体を投与したマウスでも、体重が有意に減少した。
GLP−1(Aib2E16K40Cex)/エストロゲン(3−エーテル)結合体、dGLP−1(A1Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)結合体、GLP−1(Aib2E16C24(PEG−40kDa)Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)結合体が、7日間の期間に累積の食物摂取量に対しておよぼす影響も判断した。高用量または低用量のGLP−1(Aib2E16K40Cex)/エストロゲン(3−エーテル)およびGLP−1(Aib2E16K40Cex)または低一日量のGLP−1(Aib2E16C24(PEG−40kDa)Cex K40)を投与したマウスが、食餌の量が最も少なかった。
図5bは、GLP−1(Aib2E16K40Cex)/エストロゲン(3−エーテル)結合体、dGLP−1(A1Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)結合体、GLP−1(Aib2E16C24(PEG−40kDa)Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)結合体が、血中グルコース濃度の変化(mg/dL)に対しておよぼす影響を示す。高用量または低用量のGLP−1(Aib2E16K40Cex)を投与したマウスで、高用量のGLP−1(Aib2E16K40Cex)/エストロゲン(3−エーテル)もに血糖の変化が最も大きかった。
実施例17.
食餌で誘導した肥満(DIO)マウス(N=8、平均初期体重=65g)に、以下のうちの1つを40μg/kgか、そうでなければ溶媒を、1週間にわたって1日1回、皮下注射した。
(a)GLP−1(Aib2E16Cex K40)
(b)dGLP−1(A1Aib2A22Cex K40)
(c)GLP−1(Aib2A22 Cex K40)
(d)GLP−1(Aib2E16Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)
(e)dGLP−1(A1Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)
(f)GLP−1(Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)
(g)GLP−1(Aib2E16Cex K40)/エストロゲン(17−エステル)
(h)dGLP−1(A1Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(17−エステル)または
(i)GLP−1(Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(17−エステル)
7日後に体重を測定し、体重の変化と体脂肪量を求めた(図6a〜図6b)。エストロゲン結合体を投与したマウスで、総体重の減り方が最も大きかった。体脂肪量の分析結果(図6b)では、体重の合計減少量の点で比較的一定であった。
図6cは、GLP−1/エストロゲン結合体が、血糖の変化(mg/dL)に対しておよぼす影響を示している。GLP−1(Aib2E16K40Cex)/エストロゲン(3−エーテル)またはGLP−1(Aib2E16K40Cex)/エストロゲン(17−エステル)結合体を投与したマウスで、0日目から7日目までの間の血糖の変化が最も大きかった。
実施例18.
9か月間にわたって糖尿病食を与えたマウス(N=8、11月齢、平均体重60g)に、以下のうちの1つを400μg/kgか、そうでなければ溶媒を、1週間にわたって1日1回、皮下注射で投与した。
(a)GLP−1(Aib2E16Cex K40)
(b)GLP−1(Aib2E16Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)
(c)GLP−1(Aib2E16Cex K40)/エストロゲン(17−エステル)
(d)dGLP−1(A1Aib2A22Cex K40)
(e)dGLP−1(A1Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)
(f)dGLP−1(A1Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(17−エステル)
(g)GLP−1(Aib2A22Cex K40)
(h)GLP−1(Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)または
(i)GLP−1(Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(17−エステル)
7日後に体重を測定し、体重の変化を求めた(図7a)。GLP−1(Aib2A22Cex K40)/エストロゲン結合体を投与したマウスで、総体重の減り方が最も大きかった。GLP−1/エストロゲン結合体のほうが、エストロゲンに結合していない対応のGLP−1ペプチドよりも、in vivoでの体重の減り方が大きかった。
GLP−1/エストロゲン結合体が、7日間の期間に累積の食物摂取量に対しておよぼす影響も求めた。GLP−1(Aib2A22Cex K40)/エストロゲン結合体を投与したマウスが、食餌の量が最も少なかった。
図7bは、GLP−1/エストロゲン結合体が、血糖の変化(mg/dL)に対しておよぼす影響を示している。GLP−1(Aib2A22Cex K40)/エストロゲン結合体を投与したマウスで、0日目から7日目までの間に血糖の変化が最も大きかった。
ペプチドを含むd−アミノ酸またはA22のどちらも、GLP−1(Aib2E16Cex K40)/エストロゲン結合体ほどは低下しなかった。また、GLP−1(Aib2E16Cex K40)のエストロゲン結合体は、明らかに、同一のペプチド由来の非エストロゲン形態よりも効果的であった。
実施例19.
マウス(N=8、平均体重55g)に、溶媒または以下のうちの1つを、1週間にわたって1日1回、皮下注射で投与した。
(a)GLP−1(Aib2E16Cex K40)(120または400μg/kg−日)
(b)GLP−1(Aib2E16Cex K40)/エストロゲン(3−エステル)(120または400μg/kg−日)
(c)dGLP−1(A1Aib2A22Cex K40)(400または1200μg/kg−日)または
(d)dGLP−1(A1Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(3−エステル)(400または1200μg/kg−日)
d−アミノ酸含有ペプチドは、明らかに、有効性に関するすべての測定値が、l−アミノ酸含有ペプチドより劣っていた。7日後に体重を測定し、体重の変化を求めた(図8a)。これらの用量のペプチドでは、エストロゲンの有無を問わず、体重の低下についての顕著な差はわずかしかなかった。
図8bは、さまざまなGLP−1/エストロゲン結合体が、血中グルコース濃度の変化(mg/dL)に対しておよぼす影響を示している。GLP−1(Aib2E16 Cex K40)/エストロゲン(3−エステル)結合体を投与したマウスで、0日目から7日目までの間にin vivoで血中グルコース濃度の変化が最も大きく、同一のペプチドではあるがエストロゲンを持たない処理した動物とはかなりの差であった。このことから、体重の違いとは関係なく、血糖が直接的に改善されることがわかった。
図8cは、図示のGLP−1結合体を投与して生じた、体脂肪量の変化に対する影響を示している。
実施例20.
食餌で誘導した肥満マウス(DIO)(N=8、平均体重61g)に、以下のうちの1つを40μg/kg、400μg/kg、1200μg/kgまたは4000μg/kgか、そうでなければ溶媒を、1週間または2週間にわたって1日1回、皮下注射で投与した。
(a)GLP−1(Aib2E16Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)(40μg/kg−日)
(b)dGLP−1(A1Aib2A22Cex K40)(4000μg/kg−日)
(c)dGLP−1(A1Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(3−エステル)(400、1200、4000μg/kg−日)
(d)GLP−1(Aib2E16C24(PEG−40kDa)Cex K40)(40μg/kg−日)
(e)GLP−1(Aib2E16C24(PEG−40kDa)Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)(40μg/kg−日)または
(f)GLP−1(Aib2E16C24(PEG−40kDa)Cex K40)/コレステロール(40μg/kg−日)
7日後に体重を測定し、体重の変化を求めた。GLP−1/エストロゲン(3−エステル)結合体を投与したマウスで、体重の減り方が最も大きく(図9a)、体脂肪量が最も少なかった(図9b)。
GLP−1/エストロゲン(3−エステル)結合体が、7日間の期間に累積の食物摂取量に対しておよぼす影響も求めた。GLP−1(Aib2E16Cex K40)/エストロゲン(3−エステル)結合体(PEGなし)を投与したマウスで、GLP−1を単独で投与したマウスよりも有意に食餌の量が減少した。
図9cは、GLP−1/エストロゲン(3−エステル)結合体が、血糖の変化に対しておよぼす影響を示している。d−アミノ酸含有GLP−1/エストロゲン(3−エステル)結合体には、0日目から7日目までの間に明らかな用量依存性のグルコース低下が認められ、GLP−1を単独で投与したマウスに比して最高用量で増強された(図9c)
実施例21.
糖尿病食を与えたマウス(N=8、14月齢)に、溶媒または以下のうちの1つを、1週間にわたって1日1回、皮下注射した。
(a)d−GLP−1(A1Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(3−エステル)(1200、4000μg/kg)
(b)d−GLP−1(A1Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)(1200、4000μg/kg)または
(c)d−GLP−1(Aib2E16K40Cex)(4000μg/kg)
7日後に体重を測定し、体重の変化を求めた(図10a)。エストロゲンがin vivo では不安定である、安定したアミドまたはエステルとして共有結合している、d−アミノ酸含有GLP−1/エストロゲン結合体を投与したマウス。不安定なエステル結合体で処理した動物で、総体重の減り方が最も大きかった。
GLP−1/エストロゲン結合体が、7日間の期間に累積の食物摂取量に対しておよぼす影響も求めた。不安定なエステル結合体を投与したマウスは、残りの結合体を投与したマウスよりも食餌の量が有意に少なかった。
GLP−1/エストロゲン結合体が、血中グルコース濃度の変化(mg/dL)に対しておよぼす影響も求めた。図10bは、d−アミノ酸含有GLP−1/エストロゲンエステル結合体を投与したマウスのほうが、安定したエストロゲン結合体を持つこと以外はd−アミノ酸含有ペプチドに匹敵するペプチドを投与したマウスよりも0日目から7日目までの間に血中グルコース濃度の変化が大きかったことを示している。
実施例22.活性GLP−1/エストロゲン結合体のin vitroでの受容体アッセイ
以下の化合物の段階希釈物を調製した。
(i)エストラジオール
(ii)GLP−1
(iii)活性かつエストロゲン安定なGLP−1/エストロゲン(3−エーテル)結合体
(iv)活性かつエストロゲン不安定なGLP−1/エストロゲン(3−エステル)結合体
(v)活性かつエストロゲン安定なGLP−1/エストロゲン(17−エステル)結合体
(vi)活性かつ準安定、酸感受性のGLP−1/エストロゲン(17−ヒドラゾン)結合体
(vii)活性かつ準安定、チオール還元感受性のGLP−1/エストロゲン(17−カルバメートジスルフィド)結合体
(viii)活性かつ活性化エストロゲン不安定なGLP−1/エストロゲン(3−エステル、17−OAc)
GLP−1の活性(cAMP誘導)−(ii)、(iii)、(iv)の段階希釈物を、GLP−1受容体とcAMP応答配列(CRE)に結合させたルシフェラーゼ遺伝子とをコトランスフェクトしたHEK293細胞とインキュベートした。細胞溶解およびルシフェリンを用いたインキュベーション後に、発光を測定した。結果を以下の表に示すが、これらの結果から、GLP−1をエストロゲンに結合しても、GLP−1受容体に対するGLP−1の固有の活性には影響しないことがわかる。
GLP−1の結合−シンチレーション測定前に、(ii)、(iii)、(iv)の段階希釈物を、GLP−1受容体細胞膜抽出物、[I125]−GLP−1、アグルチニンコートSPAビーズとインキュベートした。結果を以下の表に示すが、これらの結果から、GLP−1をエストロゲンに結合しても、GLP−1受容体に対するGLP−1の固有の活性には影響しないことがわかる。
エストロゲン活性−(i)、(iii)、(iv)の段階希釈物を、エストロゲン応答配列(ERE)に結合させたルシフェラーゼ遺伝子をトランスフェクとしたT47D細胞とインキュベートした。細胞溶解およびルシフェリンを用いたインキュベーション後に、発光を測定した。結果を以下の表に示すが、これらの結果から、エストロゲンがGLP−1に安定に結合すると、エストロゲンの細胞内エストロゲン活性が有意に低下するが、不安定な結合体では高い度合いで細胞内エストロゲン活性が認められることがわかる。
ERαの結合−(i)、(iii)、(iv)の段階希釈物を、精製したERαおよび[I125]−エストラジオールとインキュベートした。濾過後、放射性リガンドの結合をホスホイメージングで定量化した。結果を以下の表に示すが、これらの結果から、エストロゲンがGLP−1に安定に結合すると、エストロゲンがエストロゲン受容体に結合する機能が大幅に低下するのに対し、不安定な結合体では、エストロゲン受容体の結合が認められる(これは、バイオアッセイ条件下でのエステル結合体の不安定性の関数になる)ことがわかる。
GLP−1活性(cAMP誘導)−(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、(vii)、(viii)の段階希釈物を、GLP−1受容体とcAMP応答配列(CRE)に結合させたルシフェラーゼ遺伝子とをコトランスフェクトしたHEK293細胞とインキュベートした。細胞溶解およびルシフェリンを用いたインキュベーション後に、発光を測定した。活性かつ準安定のGLP−1/エストロゲン結合体は、GLP−1受容体に対して等しく活性であった(図11a)。
エストロゲンの活性−(i)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、(vii)、(viii)の段階希釈物を、エストロゲン応答配列(ERE)に結合させたルシフェラーゼ遺伝子をトランスフェクトしたT47D細胞とインキュベートした。細胞溶解およびルシフェリンを用いたインキュベーション後に、発光を測定した。活性かつ準安定のGLP−1/エストロゲン結合体は、エストロゲン受容体に対する活性がまちまちであった(図11b)これらの活性かつ準安定の結合体を意図的に、たとえば、酸、チオールまたは酵素(カテプシンなど)で処理すると、準安定のGLP−1/エストロゲン結合体がほぼ完全なエストロゲン活性状態に戻る。よって、活性かつ準安定のGLP−1/エストロゲン結合体は、共有結合の結合体としてはエストロゲン活性が低下し、活性になるのに放出が必要となる。
実施例23.不活性GLP−1/エストロゲン結合体のin vitroでの受容体アッセイ
以下の化合物の段階希釈物を調製した。
(i)不活性のGLP−1
(ii)不活性かつエストロゲン安定なGLP−1/エストロゲン(3−エーテル)結合体
(iii)不活性かつエストロゲン不安定なGLP−1/エストロゲン(3−エステル)結合体
GLP−1の活性(cAMP誘導)−(i)、(ii)、(iii)の段階希釈物を、GLP−1受容体とcAMP応答配列(CRE)に結合させたルシフェラーゼ遺伝子とをコトランスフェクトしたHEK293細胞とインキュベートした。細胞溶解およびルシフェリンを用いたインキュベーション後に、発光を測定した。結果を以下の表に示す
実施例24.
食餌で誘導した肥満マウス(DIO)(N=8、平均体重51g)に、以下のうちの1つを400μg/kgまたは4000μg/kgか、そうでなければ溶媒を、2週間にわたって1日1回、皮下注射で投与した。
(a)d−アミノ酸含有GLP−1(A1Aib2E16K40Cex)(4000μg/kg)
(b)d−アミノ酸含有GLP−1(A1Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(3−エステル)(400、
4000μg/kg)または
(c)d−アミノ酸含有GLP−1(A1Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)(400、4000μg/kg)。
15日後に体重を測定し、体重の変化を求めた。不活性かつエストロゲン不安定なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロゲン(3−エステル)結合体を投与したマウスで、体重の減り方が最も大きく、高用量のほうがその影響は顕著だった(図12a)。
不活性のGLP−1および不活性のGLP−1/エストロゲン結合体が、15日間の期間に累積の食物摂取量に対しておよぼす影響も求めた。不活性かつエストロゲン不安定なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロゲン(3−エステル)結合体を投与したマウスのほうが、不活性のGLP−1単独または不活性かつエストロゲン安定なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスよりも、食餌の量が有意に少なく、高用量のほうがその影響は顕著だった(図12b)。
図12cは、不活性のGLP−1および不活性なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロゲン結合体が、血糖の変化に対しておよぼす影響を示す。高用量の不活性なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロゲン(3−エステル)結合体で、0日目と14日目の間に血糖が低下した。
15日後に肝臓重量を測定し、肝臓重量の変化を求めた。エストロゲン不安定かつ不活性なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスのほうが、エストロゲン安定かつ不活性なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロゲン(3−エステル)結合体を投与したマウスよりも肝臓重量の減り方が大きかった(図12d)。
15日後に子宮重量を測定し、子宮重量の変化を求めた。不活性かつエストロゲン不安定なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロゲン(3−エステル)結合体を投与したマウスのほうが、不活性のGLP−1単独または不活性かつエストロゲン安定なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスよりも、子宮重量の増え方が有意に大きかった(図12e)。
実施例25.
標準的な固形飼料を与えたC57BI/6マウス(N=8、平均体重19.6g)の卵巣を摘出し、5日間かけて回復させた後、以下のうちの1つを4000μg/kgか、そうでなければ溶媒を、7日間にわたって1日1回、皮下注射で投与した。
(a)GLP−1アゴニスト
(b)d−アミノ酸含有GLP−1(A1Aib2A22Cex K40)/エストロン(3−エステル)
(c)d−アミノ酸含有GLP−1(A1Aib2A22Cex K40)/エストロゲン(3−エーテル)または
(d)GLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)
研究の最後でマウスを屠殺し、子宮を回収して秤量した。
7日後に体重を測定し、体重の変化を求めた。活性かつエストロゲン安定なGLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスのほうが、活性かつGLP−1アゴニスト単独(図13a)、不活性かつエストロゲン不安定なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロン(3−エステル)結合体または不活性かつエストロゲン安定なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスよりも、体重の減り方が大きかった。GLP−1アゴニスト、不活性かつエストロゲン不安定なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロン(3−エステル)結合体、活性かつエストロゲン安定なGLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスでは、体脂肪量の減少が認められた(図13b)。
GLP−1結合体が、7日間の期間に累積の食物摂取量に対しておよぼす影響も求めた。活性かつエストロゲン安定なGLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスのほうが、活性かつGLP−1アゴニスト単独、不活性かつエストロゲン不安定なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロン(3−エステル)結合体または不活性かつエストロゲン安定なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスよりも、摂取した食餌の量が少なかった(図13c)。
図13dは、GLP−1結合体が、血糖の変化に対しておよぼす影響を示している。不活性かつエストロゲン不安定な不活性なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロン(3−エステル)結合体または活性かつ安定なGLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスのほうが、溶媒よりも血中グルコース濃度の下がり方が大きかった。不活性かつエストロゲン安定なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスでは、血中グルコース濃度の低下は認められなかった。
7日後に子宮重量を測定し、子宮重量の変化を求めた。不活性かつエストロゲン不安定なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロン(3−エステル)結合体投与したマウスのほうが、GLP−1を単独で投与したマウス、不活性かつエストロゲン安定なd−アミノ酸含有GLP−1/エストロゲン(3−エーテル)結合体または活性かつエストロゲン安定なGLP−1/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスよりも、子宮重量の増え方が有意に大きかった(図13e)。
実施例26.
標準的な固形飼料を与えたマウス(N=8、平均体重19.1g)の卵巣を摘出し、5日間かけて回復させた後、以下のうちの1つを4000μg/kgか、そうでなければ溶媒を、7日間にわたって1日1回、皮下注射で投与した。
(a)GLP−1アゴニスト/エストロン(3−エステル)
(b)GLP−1アゴニスト/エストロゲン(17−カルバメートジスルフィド)
(c)GLP−1アゴニスト/エストロゲン(17−ヒドラゾン)または
(d)GLP−1アゴニスト/エストロゲン(17−カテプシン)
研究の最後でマウスを屠殺し、子宮を回収して秤量した。
7日後に体重を測定し、体重の変化を求めた。準安定のGLP−1アゴニスト/エストロゲン結合体を投与したマウスのほうが、活性のGLP−1アゴニスト単独または活性かつエストロゲン不安定なGLP−1アゴニスト/エストロン(3−エステル)結合体を投与したマウスよりも、体重および体脂肪量の減り方が大きかった(図14aおよび図14b)。準安定の酵素感受性結合体および酸感受性結合体、GLP−1アゴニスト/エストロゲン(17−カテプシン)およびGLP−1アゴニスト/エストロゲン(17−ヒドラゾン)を投与したマウスはそれぞれ、最初は体重が大きく減ったが、7日間の研究では、準安定のチオール還元感受性結合体、GLP−1アゴニスト/エストロゲン(17−カルバメートジスルフィド)を投与したマウスで、全体としての体重の減り方が最も大きかった。
図14cは、準安定のGLP−1結合体が、血糖の変化に対しておよぼす影響を示している。準安定のチオール還元感受性結合体および酸感受性結合体、GLP−1アゴニスト/エストロゲン(17−カルバメートジスルフィド)およびGLP−1アゴニスト/エストロゲン(17−ヒドラゾン)を投与したマウスではそれぞれ、研究期間をとおして、不安定なGLP−1アゴニスト/エストロン(3−エステル)結合体よりも血中グルコース濃度の下がり方が大きかった。
7日後に子宮重量を測定し、子宮重量の変化を求めた。エストロゲン不安定なGLP−1/エストロン(3−エステル)結合体を投与したマウスでは、準安定のGLP−1/エストロゲン結合体を投与したマウスよりも子宮重量の増え方が有意に大きかった(図14d)。
実施例27.
食餌で誘導した肥満マウスに、以下のうちの1つを40μg/kgまたは400μg/kgか、そうでなければ溶媒を、2週間にわたって1日1回、皮下注射で投与した。
(a)GLP−1アゴニスト
(b)GLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エステル)または
(c)GLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)
15日後に体重を測定し、体重の変化を求めた。活性かつエストロゲン安定なGLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスでは、活性のGLP−1アゴニスト単独または活性かつエストロゲン不安定なGLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エステル)結合体を投与したマウスよりも、体重の減り方が有意に大きかった(図15a)。
活性のGLP−1および活性のGLP−1/エストロゲン結合体が、15日間の期間に、累積の食物摂取量に対しておよぼす影響も求めた。活性かつエストロゲン安定なGLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスのほうが、活性のGLP−1アゴニスト単独または活性かつエストロゲン不安定なGLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エステル)結合体を投与したマウスよりも、摂取した食餌の量が有意に少なかった(図15b)。
実施例28.GLP−1/エストロゲン結合体の安定性の分析
ペプチド結合体(1mg/mL)を、100%ヒト血漿中、pH7.4および37℃でインキュベートした。アリコートを抜き取り、血漿タンパク質を沈殿させ、微量遠心によって除去した。アリコートを、実施例1で説明したようにして、HPLCおよびMSで分析した。活性でエストロゲン安定なGLP−1/エストロゲン(3−エーテル)結合体(実施例3など)では、72時間にわたってエストロゲンの放出が認められなかったが、活性でエストロゲン不安定なGLP−1/エストロゲン(3−エステル)結合体(実施例6など)では、3時間後に相当なエストロゲン放出が認められ、6時間以内に完全なエストロゲン放出が認められた(図16a)。酸感受性の結合体であるGLP−1/エストロゲン(17−ヒドラゾン)(実施例7など)では、生理的なpHで48時間にわたって血漿中にエストロゲンの放出は見られなかったが、酸(pH5.0)に曝露すると、3時間以内にエストロゲンが放出され、6時間以内に完全なエストロゲン放出が起こった(図16b)。立体障害のないチオール還元感受性結合体(実施例9など)では、24時間後に相当なエストロゲン放出が生じ48時間には、完全なエストロゲン放出となるが、立体障害のあるチオール還元感受性結合体であるGLP−1/エストロゲン(17−カルバメートジスルフィド)(実施例9など)では、72時間で血漿中へのエストロゲン放出が認められなかった(図16c)。この立体障害のあるチオール還元感受性結合体では、グルタチオンの細胞外濃度(15μMなど)でもエストロゲン放出が認められなかったが、15mMの細胞内グルタチオン濃度では6時間以内にエストロゲンが放出された(図16d)。酵素感受性GLP−1/エストロゲン(カテプシン)結合体(実施例10など)では、72時間にわたって血漿中にエストロゲン放出が認められなかった(図16e)。
実施例29.
食餌で誘導した肥満マウスに、以下のうちの1つを400μg/kgか、そうでなければ溶媒を、7日間にわたって1日1回、皮下注射で投与した。
(a)GLP−1アゴニスト
(b)GLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)
(c)GIPアゴニスト
(d)GIPアゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)
(e)グルカゴンアゴニストまたは
(f)グルカゴンアゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)。
7日後に体重を測定し、体重の変化を求めた(図17a)。GLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスのほうが、GLP−1アゴニスト単独を投与したマウスよりも、体重の減り方が大きく、体重の減り方が有意に大きかった。GIPアゴニスト単独およびGIPアゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスでは、体重の減り方が似通っていた。GIPアゴニストおよびGIPアゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスでは、溶媒を投与したマウスよりも体重の減り方が大きかった。グルカゴンアゴニスト単独およびグルカゴンアゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスでは、体重の減り方が似通っていた。グルカゴンアゴニストまたはグルカゴンアゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスでの体重の減り方は、溶媒を投与したマウスでの体重の減り方と似通っていた。特定の理論に拘泥することなく、GLP−1受容体を標的にするペプチドのほうが、エストロゲンを細胞(単数または複数)に標的する機能にすぐれ、これがゆえに体重の意味のある差を生み出すことができる。この実験では、GLP−1活性のペプチド(GLP−1アゴニスト)に対する結合体は、主にGIPまたはグルカゴン受容体を標的にするペプチド(GIPアゴニストまたはグルカゴンアゴニスト)よりも体重の減少にうまく作用した。
結合体が、累積の食物摂取量に対しておよぼす影響も求めた(図17b)。GLP−1、GIP、グルカゴンのエストロゲン結合体を投与したマウスのほうが、それぞれ、GLP−1アゴニスト、GIPアゴニストまたはグルカゴンアゴニストを投与したマウスよりも、摂取した食餌の量が少なかった。GLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスで、7日間にわたって食餌の量が最も少なかった。
結合体が、血糖の変化に対しておよぼす影響も求めた。GLP−1アゴニストおよびGLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスでは、どちらも7日間にわたって血中グルコース濃度の低下が認められ、結合体を投与したマウスのほうが減り方が大きかった。GIPアゴニストおよびGIPアゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスでも、7日間にわたって血中グルコース濃度の低下が認められた。グルカゴンアゴニストを投与したマウスでは、7日間にわたって血中グルコース濃度の増加が見られたが、グルカゴンアゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスでは、7日間にわたって血中グルコース濃度の低下が認められた(図17c)。
実施例30
食餌で誘導した肥満の野生型マウス、エストロゲン受容体βノックアウト(ERβKO)マウス、エストロゲン受容体αノックアウト(ERαKO)マウスに、以下のうちの1つを400μg/kgか、そうでなければ溶媒を、2週間にわたって1日1回、皮下注射で投与した
(a)GLP−1アゴニストまたは
(b)GLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)
14日後に体重を測定し、体重の変化を求めた(図18a)。GLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与した野生型マウスでは、溶媒またはGLP−1アゴニストを投与したマウスよりも体重の減り方が大きかった。溶媒を投与した野生型マウスでは、2週間の期間にわたって体重が約10%増加し、GLP−1アゴニストを投与すると体重が約3%増加し、GLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与すると体重が約10%減少した。GLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したERαKOマウスでは、溶媒またはGLP−1アゴニストを投与した場合よりも体重の減り方が大きかった。ERαKOマウスでは、溶媒を投与した場合には体重の変化は認められず、GLP−1アゴニストを投与すると体重が約10%減少し、GLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与すると体重が約20%減少した。GLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したERβKOマウスでは、GLP−1アゴニストを投与したマウスと体重の減り方が似ていた。ERβKOマウスでは、溶媒を投与すると体重が約2%減少し、GLP−1アゴニストまたはGLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体のいずれかを投与すると体重が約15%減少した。特定の理論に拘泥することなく、これらのデータから、ERβ受容体が体重をさらに減らす作用を担っているのではないかと考えられる。ERβ受容体をノックアウトすると、GLP−1アゴニストとGLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体でマウスの体重減少に差は見られなくなる。
GLP−1結合体が、野生型マウスおよびノックアウトマウスで、累積の食物摂取量に対しておよぼす影響も求めた(図18b)。GLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エステル)結合体を投与したノックアウトマウスで、食餌の量が最も少なかった。
GLP−1結合体が、野生型マウスとノックマウスで血糖の変化に対しておよぼす影響も求めた。GLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エステル)結合体を投与したERαKOマウスで、血中グルコース濃度の減り方が最も大きかった(図18c)。
実施例31
血中グルコース濃度500mg/dlのオスのdb/dbマウスに、以下のうちの1つを50nmol/kgか、そうでなければ溶媒を、皮下注射で投与した。
(a)GLP−1アゴニスト
(b)GLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)
(c)GLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エステル)
GLP−1アゴニストを投与したマウスで、48時間で(溶媒を除いて)血糖の低下作用が最も小さかったのに対し、エストロゲン安定なGLP−1アゴニスト/エストロゲン(3−エーテル)結合体を投与したマウスは、48時間で血糖の低下作用が最も大きかった(図19)。
上記の実験の結果は、I型糖尿病のモデルであるストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病モデルを用いた場合と一致していた。
実施例32:GLP−1アゴニスト/デキサメタゾン・カルバメート−βアラニン結合体
本実施例では、以下および図20に記載の通り、カルバメート−βアラニンリンカーを用いたデキサメタゾンのGLP−1アゴニストへの固相カップリングを示す。
ピリジン中でデキサメタゾンを4−ニトロフェニルクロロギ酸とカップリングさせ、[21−(4−ニトロフェニルギ酸]デキサメタゾンを生成した。[21−(4−ニトロフェニルギ酸]デキサメタゾンを、中間精製なしで直接に、βアラニンのtert−ブチルエステルとカップリングさせ、[21−(N−カルボニル−β−アラニン tert−ブチルエステル]デキサメタゾンを生成した。次に、[21−(N−カルボニル−β−アラニン tert−ブチルエステル)]デキサメタゾンを、ジクロロメタン(DCM)中の70%TFAで処理して、[21−(N−カルボニル−β−アラニン)]デキサメタゾンを得たが、その分子量は508.2(M+H+)であった(ESI−MSにより決定)。
GLP−1類縁体の配列(HaibEGTFTSDVSSYLEEQAAKEFIAWLVKGGPSSGAPPPSK)からなるペプチジル樹脂を、Rink MBHAアミド樹脂を用いたFmoc化学により合成した。C末端Lys残基はFmoc−Lys(Mtt)−OHとしてカップリングさせた。Mttを1%TFA/Tis/DCMで除去した後、DMF/DIEA中のDEPBTを用いてペプチジル樹脂を[21−(N−カルボニル−β−アラニン)]デキサメタゾンとカップリングさせた。このペプチド・デキサメタゾン結合体を、85%TFA、5%フェノール、5%水および5%Tisからなる切断カクテルを用いて樹脂から切断した。ペプチド結合体は0.1%TFA/アセトニトリル/水を用いた逆相HPLCにより精製した。精製されたGLP−1類縁体デキサメタゾン結合体を分析用逆相HPLCで分析し、MALDI−TOF質量分析で調べたところ、分子量は4680.5(計算上の分子量4680.0と一致)であった。得られたペプチド結合体は40個のアミノ酸を有し、分子量は4680であり、pIの理論値は4.96であった(以下と図21に示す)。
実施例33:GLP−1アゴニスト/デキサメタゾン・ヒドラジン結合体
1%TFA/メタノール中でデキサメタゾンをマレイミドカプロン酸ヒドラジド一塩酸塩と反応させて、以下と図22に示すように、ESI−MSにおける分子量600.3(M−H+)を有する[3−(マレイミドカプロン酸ヒドラジド)−イリデン]デキサメタゾンを生成した。
単一の遊離チオールを有するGLP−1類縁体の配列(HaibEGTFTSDVSSYLEEQAAKEFIAWLVKGGPSSGAPPPSC)を、Rink MBHAアミド樹脂を用いたFmoc化学により合成した。このGLP−1類縁体ペプチドの、[マレイミドカプロン酸ヒドラジド−3−イリデン]デキサメタゾン(1.5倍過剰量)によるチオール−マレイミドアルキル化を、TrisベースでpHを8に調整した50%アセトニトリル水溶液中で行った。得られたペプチド結合体を0.1%TFA/アセトニトリル/水を用いた逆相HPLCにより精製した。精製されたGPL−1類縁体デキサメタゾン結合体を分析用HPLCで分析し、ESI−MSにより調べた。結合体の分子量は4764±1.5であり、計算上の分子量4766.5と一致していた。得られたペプチド結合体について以下と図23に示す。ペプチドは40個のアミノ酸を有し、分子量は4766であり、pIの理論値は4.96であった。
実施例34
実施例32と33のペプチド結合体のグルココルチコイド受容体に対する活性を、マウス乳癌ウィルス長末端反復駆動型のホタルルシフェラーゼを導入したHeLa細胞(ATCC #CCL−2)の2つのクローンを使用して、ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイで調べた。その結果を図24に示す。両方の結合体はともに、結合体化をしていないデキサメタゾンほどではなかったものの、グルココルチコイド受容体に対するアゴニスト活性を、両方のレポータークローン中でかなり維持していた。本実施例は、デキサメタゾンは、GLP−1類縁体と結合させてもグルココルチコイド受容体に対するアゴニスト活性をかなり維持できることを示している。
実施例35:GLP−1アゴニスト/デキサメタゾン・カルバメート結合体
本実施例では、以下の通り、カルバメートリンカーを用いたデキサメタゾンのGLP−1アゴニストペプチドへの固相カップリングを示す。
室温にて2時間、触媒量のDMAPを含むピリジン中で、デキサメタゾンを4−ニトロフェニルクロロギ酸とカップリングさせ、[21−(4−ニトロフェニルギ酸)]デキサメタゾンを生成した。[21−(4−ニトロフェニルギ酸)]デキサメタゾンは、精製なしで直接にペプチジル樹脂とカップリングさせた。
GLP−1類縁体の配列(HaibEGTFTSDVSSYLEEQAAKEFIAWLVKGGPSSGAPPPSK)からなるペプチジル樹脂を、Rink MBHAアミド樹脂を用いたFmoc化学により合成した。C末端Lys残基はFmoc−Lys(Mtt)−OHとしてカップリングさせた。Mttを1%TFA/Tis/DCMで除去した後、ピリジン/DMF中で約16時間、ペプチジル樹脂を[21−(4−ニトロフェニルギ酸)]デキサメタゾンとカップリングさせた。このペプチド・デキサメタゾン結合体を、85%TFA、5%フェノール、5%水、および5%Tisからなる切断カクテルを用いて樹脂から切断した。ペプチド結合体は0.1%TFA/アセトニトリル/水の溶出剤を用いた逆相HPLCにより精製した。精製されたGLP−1類縁体デキサメタゾン結合体を分析用逆相HPLCで分析し、MALDI−TOF質量分析で調べた。ペプチド結合体の分子量は4608.2であり、計算上の分子量4609.0と一致していた。このGLP−1アゴニスト/デキサメタゾン・カルバメート結合体を以下に示す。
実施例36:GLP−1アゴニスト/デキサメタゾン・ジスルフィド結合体
本実施例では、以下の通り、ジスルフィドリンカーを介してデキサメタゾンをGLP−1アゴニストペプチドと結合体化する方法を示す。
デキサメタゾンを、ピリジン中で4−ニトロフェニルクロロギ酸とカップリングさせ、[21−(4−ニトロフェニルギ酸)]デキサメタゾンを生成した。この[21−(4−ニトロフェニルギ酸)]デキサメタゾンを、中間精製なしで直接に、ピリジン/DIEA中で2−(2−ピリジルジチオ)エチルアミン塩酸塩とカップリングさせ、[21−(N−カルボニル−2−(2−ピリジルジチオ)エチルアミン]デキサメタゾンを得た。反応バッファーを10%AcOH/10%ACNで希釈してからC8逆相カラムに注入し、0.1%TFA/アセトニトリル/水の溶媒を用いて反応生成物を精製した。精製された反応生成物[21−(N−カルボニル−2−(2−ピリジルジチオ)エチルアミン]デキサメタゾンをESI−MSにより調べた。反応生成物の分子量は605.22(M+H)+であり、計算上の分子量604.75と一致していた。
単一の遊離チオールを有するGLP−1類縁体の配列(HaibEGTFTSDVSSYLEEQAAKEFIAWLVKGGPSSGAPPPSC)を、Rink MBHAアミド樹脂を用いたFmoc化学により合成した。チオール含有ペプチドとデキサメタゾン中間体との間のジスルフィド形成の手順として、チオール含有ペプチドを1M TrisベースでpHを8に調整した70%アセトニトリル水溶液に溶解し、DMFに溶解した2倍過剰量の[21−(N−カルボニル−2−(2−ピリジルジチオ)エチルアミン]デキサメタゾンと混合して、室温にて4時間撹拌した。反応バッファーを10%AcOH/10%ACNで希釈し、0.1%TFA/アセトニトリル/水の溶媒を用いて逆相HPLCで精製した。精製されたGLP−1類縁体デキサメタゾン結合体を分析用逆相HPLCで分析し、MALDI−TOF質量分析で調べた。結合体の分子量は4658.1であり、計算上の分子量4658.5と一致していた。
その他のジスルフィドリンカー結合体、例えば[Aib2,E16]GLP−1−CEX−ホモCys40(S−SCH2CH2NHCO−O−DEX)や、[Aib2,E16]GLP−1−CEX−Pen40(S−SCH2CH2NHCO−O−DEX)なども、前述の方法で合成した。ただし、単一の遊離チオールを有するGLP−1ペプチドを使用する代わりに、40位にホモシステインまたはペニシラミンを有するペプチドを使用した。
3種類の異なるジスルフィドリンカー(システイン、ペニシラミン、およびホモシステイン)を有するGLP−1アゴニスト/デキサメタゾン結合体の例を以下に示す。
実施例37
実施例34で記載したのと同様にして、実施例35および36のペプチド結合体のGLP−1受容体とグルココルチコイド受容体に対する活性を、マウス乳癌ウィルス長末端反復駆動型のホタルルシフェラーゼを導入したHeLa細胞(ATCC #CCL−2)の2つのクローンを使用して、ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイで調べた。その結果を図25と図26に示す。
全ての結合体が、結合体化をしていないデキサメタゾンほどではなかったものの、グルココルチコイド受容体に対するアゴニスト活性を、両方のレポータークローン中でかなり維持していた。調べた結合体のうちでは、[Aib2,E16]GLP−1−CEX−Lys40(NHCO−O−DEX)結合体がグルココルチコイド受容体への活性を最もよく維持していた。[Aib2,E16]GLP−1−CEX−ホモCys40(S−SCH2CH2NHCO−O−DEX)ペプチドは、他の調べたペプチドと同様のGLP−1受容体アゴニスト活性を有することが期待される。本実施例は、デキサメタゾンは、GLP−1類縁体と結合させてもグルココルチコイド受容体に対するアゴニスト活性をかなり維持できることを示している。