<感光性シロキサン組成物>
本発明の感光性シロキサン組成物は、(A)上記式(1)で表されるビニル基含有化合物と、(B)ポリシロキサンと、(C)キノンジアジド化合物と、を含有する。以下、本発明の感光性シロキサン組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
[(A)式(1)で表されるビニル基含有化合物]
本発明の感光性シロキサン組成物に含有されるビニル基含有化合物(A)は、下記式(1)で表されるものである。本明細書において、「式(1)で表されるビニル基含有化合物」を「式(1)で表される化合物」、「ビニル基含有化合物(A)」又は「(A)成分」ということがある。ビニル基含有化合物(A)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記式(1)において、W1及びW2は独立に下記式(2)で表される基を示す。
上記式(2)において、環Zとしては、例えば、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、ナフタレン環等のC8−20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式芳香族炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環等)等の縮合2乃至4環式芳香族炭化水素環]等が挙げられる。環Zは、ベンゼン環又はナフタレン環であるのが好ましく、ナフタレン環であるのがより好ましい。W1に含まれる環ZとW2に含まれる環Zとは、同一であってもよく、異なっていてもよく、例えば、一方の環がベンゼン環、他方の環がナフタレン環等であってもよいが、いずれの環もナフタレン環であることが特に好ましい。また、W1及びW2の両方が直結する炭素原子にXを介して結合する環Zの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Zがナフタレン環の場合、上記炭素原子に結合する環Zに対応する基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基等であってもよい。
上記式(2)において、Xは、独立に単結合又は−S−で示される基を示し、典型的には単結合である。
上記式(2)において、R1としては、例えば、単結合;メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブタン−1,2−ジイル基等の炭素数1〜4のアルキレン基が挙げられ、単結合;C2−4アルキレン基(特に、エチレン基、プロピレン基等のC2−3アルキレン基)が好ましく、単結合がより好ましい。なお、W1に含まれるR1とW2に含まれるR1とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記式(2)において、R2としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のC1−12アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、より好ましくはC1−6アルキル基等)、シクロアルキル基(シクロへキシル基等のC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、より好ましくはC5−6シクロアルキル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のC6−14アリール基、好ましくはC6−10アリール基、より好ましくはC6−8アリール基等)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基等のC6−10アリール−C1−4アルキル基等)等の1価炭化水素基;水酸基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のC1−12アルコキシ基、好ましくはC1−8アルコキシ基、より好ましくはC1−6アルコキシ基等)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基等のC5−10シクロアルコキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等のC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等のC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)等の−OR4aで示される基[式中、R4aは1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等のC1−12アルキルチオ基、好ましくはC1−8アルキルチオ基、より好ましくはC1−6アルキルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(シクロへキシルチオ基等のC5−10シクロアルキルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基等のC6−10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基等のC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基)等の−SR4bで示される基[式中、R4bは1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];アシル基(アセチル基等のC1−6アシル基等);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基等のC1−4アルコキシ−カルボニル基等);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等);ニトロ基;シアノ基;メルカプト基;カルボキシ基;アミノ基;カルバモイル基;アルキルアミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基等のC1−12アルキルアミノ基、好ましくはC1−8アルキルアミノ基、より好ましくはC1−6アルキルアミノ基等)、シクロアルキルアミノ基(シクロへキシルアミノ基等のC5−10シクロアルキルアミノ基等)、アリールアミノ基(フェニルアミノ基等のC6−10アリールアミノ基)、アラルキルアミノ基(例えば、ベンジルアミノ基等のC6−10アリール−C1−4アルキルアミノ基)等の−NHR4cで示される基[式中、R4cは1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等のジ(C1−12アルキル)アミノ基、好ましくはジ(C1−8アルキル)アミノ基、より好ましくはジ(C1−6アルキル)アミノ基等)、ジシクロアルキルアミノ基(ジシクロへキシルアミノ基等のジ(C5−10シクロアルキル)アミノ基等)、ジアリールアミノ基(ジフェニルアミノ基等のジ(C6−10アリール)アミノ基)、ジアラルキルアミノ基(例えば、ジベンジルアミノ基等のジ(C6−10アリール−C1−4アルキル)アミノ基)等の−N(R4d)2で示される基[式中、R4dは独立に1価炭化水素基(上記例示の1価炭化水素基等)を示す。];(メタ)アクリロイルオキシ基;スルホ基;上記の1価炭化水素基、−OR4aで示される基、−SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、−NHR4cで示される基、若しくは−N(R4d)2で示される基に含まれる炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部が上記の1価炭化水素基、水酸基、−OR4aで示される基、−SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、カルバモイル基、−NHR4cで示される基、−N(R4d)2で示される基、(メタ)アクリロイルオキシ基、メシルオキシ基、若しくはスルホ基で置換された基[例えば、アルコキシアリール基(例えば、メトキシフェニル基等のC1−4アルコキシC6−10アリール基)、アルコキシカルボニルアリール基(例えば、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基等のC1−4アルコキシ−カルボニルC6−10アリール基等)]等が挙げられる。
これらのうち、代表的には、R2は、1価炭化水素基、−OR4aで示される基、−SR4bで示される基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、−NHR4cで示される基、−N(R4d)2で示される基等であってもよい。
好ましいR2としては、1価炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)等]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基等)等が挙げられる。特に、R2a及びR2bは、アルキル基[C1−4アルキル基(特にメチル基)等]、アリール基[例えば、C6−10アリール基(特にフェニル基)等]等の1価炭化水素基(特に、アルキル基)であるのが好ましい。
なお、mが2以上の整数である場合、R2は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、W1に含まれるR2とW2に含まれるR2とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記式(2)において、R2の数mは、環Zの種類に応じて選択でき、例えば、0〜4、好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2であってもよい。なお、W1におけるmとW2におけるmとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記式(1)において、環Y1及び環Y2としては、例えば、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、ナフタレン環等のC8−20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式芳香族炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環等)等の縮合2乃至4環式芳香族炭化水素環]等が挙げられる。環Y1及び環Y2は、ベンゼン環又はナフタレン環であるのが好ましい。なお、環Y1及び環Y2は、同一でも異なっていてもよく、例えば、一方の環がベンゼン環、他方の環がナフタレン環等であってもよい。
上記式(1)において、Rは単結合、置換基を有してもよいメチレン基、置換基を有してもよく、2個の炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいエチレン基、−O−で示される基、−NH−で示される基、又は−S−で示される基を示し、典型的には単結合である。ここで、置換基としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、1価炭化水素基[例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等のC1−6アルキル基)、アリール基(フェニル基等のC6−10アリール基)等]等が挙げられ、ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、珪素原子等が挙げられる。
上記式(1)において、R3a及びR3bとしては、通常、非反応性置換基、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、1価炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基等のC6−10アリール基)等]等が挙げられ、シアノ基又はアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等のC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)等が例示できる。なお、n1が2以上の整数である場合、R3aは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、n2が2以上の整数である場合、R3bは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。更に、R3aとR3bとが同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対するR3a及びR3bの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数n1及びn2は、0又は1、特に0である。なお、n1及びn2は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
式(1)で表される化合物は、優れた光学的特性及び熱的特性を保持しつつ、ビニロキシ基を有するため、高い反応性を有する。特に、環Y1及び環Y2がベンゼン環であり、Rが単結合である場合、上記式(1)で表される化合物は、フルオレン骨格を有し、光学的特性及び熱的特性に更に優れる。上記式(1)で表される化合物は、ビニロキシ基の形で含まれる2個のビニル基が別々の分子と反応することができるため、高い反応性を有し、ビニル基含有化合物(A)同士で反応したり、ポリシロキサン(B)と反応することにより、硬化膜の架橋度を高めることができ、例えば、耐薬品性、機械的強度を向上することができる。上記式(1)で表される化合物は、光ファイバー、光導波路、プリズムシート、ホログラム、高屈折フィルム、再帰反射フィルム等の光学部材;光学材料に用いることができる。
上述の通り、環Y1及び環Y2がベンゼン環であり、Rが単結合である場合、上記一般式(1)で表される化合物は、フルオレン骨格を有し、光透過率、屈折率等の光学的特性及び熱的特性に更に優れるため好ましい。また、上記一般式(1)で表される化合物においてW1及びW2としての上記一般式(2)で表される基において、Xが単結合であり、R1が単結合である場合には光透過率、屈折率等の光学特性はより優れる傾向がある。特に、R1が単結合である場合には光学的特性及び熱的特性は格段に向上する傾向があり好ましい。
上記式(1)で表される化合物のうち、特に好ましい具体例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
上記式(1)で表される化合物の含有量は、特に限定されないが、ポリシロキサン(B)の固形分100質量部に対して5〜20質量部が好ましく、7〜15質量部がより好ましい。上記式(1)で表される化合物の含有量が上記下限値以上であると、得られる組成物の硬化性に優れ、高い屈折率及び高い透明性を有する硬化物を得やすく、また、上記上限値以下であると、パターニングを行う場合、プリベークで架橋してしまうことによる感度の低下を防止することができる。
[式(1)で表されるビニル基含有化合物の製造方法]
上記式(1)で表されるビニル基含有化合物は、例えば、下記の製造方法1〜3により製造することができる。
・製造方法1
上記式(1)で表されるビニル基含有化合物は、例えば、特開2008−266169号公報に記載の製造方法に従い、遷移元素化合物触媒及び無機塩基の存在下、下記式(13)で表されるビニルエステル化合物と、下記式(4)で表される水酸基含有化合物とを反応させることにより、合成することが可能である。上記無機塩基は、粒子径150μm未満の粒子を10質量%以上含有する固体の無機塩基であることが好ましい。上記式(1)で表されるビニル基含有化合物は、例えば、後述する合成例1又は2のようにして合成することが可能である。
R6−CO−O−CH=CH2 (13)
(式中、R6は、水素原子又は有機基を示す。)
(式中、W
3及びW
4は独立に下記式(5)で表される基を示し、環Y
1、環Y
2、R、R
3a、R
3b、n1、及びn2は上記の通りである。)
(式中、環Z、X、R
1、R
2、及びmは上記の通りである。)
なお、上記式(4)で表される化合物は、例えば、酸触媒の存在下、下記式(14)で表される化合物及び/又は下記式(15)で表される化合物と、下記式(16)で表される化合物とを反応させることにより、合成することができる。適宜、下記式(14)で表される化合物及び下記式(15)で表される化合物の組み合わせ方や添加量等を調整することにより、上記式(4)で表される所望の水酸基含有化合物を得ることができる。また、反応後に、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の公知の分離方法により、目的とする水酸基含有化合物を分離してもよい。
(式中、環Y
1、環Y
2、環Z、R、R
1、R
2、R
3a、R
3b、m、n1、及びn2は上記の通りである。)
上記式(4)で表される化合物の合成に用いられる酸触媒、反応条件等としては、例えば、特開2011−201791号公報又は特開2002−255929号公報において、特許請求の範囲に記載されたフルオレン系化合物の製造方法に用いることができると記載されているもの等が挙げられる。
・製造方法2
上記式(1)で表される化合物は、例えば、上記式(4)で表される水酸基含有化合物から、下記式(6)で表される脱離基含有化合物を経由して、上記式(1)で表されるビニル基含有化合物を得ることを含む製造方法により、合成することも可能である。
(式中、W
5及びW
6は独立に下記式(7)で表される基を示し、環Y
1、環Y
2、R、R
3a、R
3b、n1、及びn2は上記の通りである。)
(式中、Eは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、パラトルエンスルホニルオキシ基、又はベンゼンスルホニルオキシ基で置換された炭素数1〜4のアルキルオキシ基を示し、環Z、X、R
1、R
2、及びmは上記の通りである。)
上記式(6)で表される脱離基含有化合物は、例えば、上記式(4)で表される水酸基含有化合物と脱離基含有化合物とを反応させることにより、合成することができる。脱離基含有化合物としては、例えば、塩化チオニル、下記式で表される化合物等が挙げられる。また、反応温度としては、例えば、−20〜150℃、好ましくは−10〜140℃、より好ましくは30〜130℃が挙げられる。
上記式(1)で表されるビニル基含有化合物は、例えば、上記式(6)で表される脱離基含有化合物とビニル化剤とを反応させることにより、合成することができる。ビニル化剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロウンデセン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド等が挙げられ、好ましくはジアザビシクロウンデセン、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド等が挙げられ、より好ましくはカリウム−t−ブトキシド等が挙げられる。また、反応温度としては、例えば、−20〜150℃、好ましくは−10〜100℃、より好ましくは0〜60℃が挙げられる。
・製造方法3
上記式(1)で表される化合物は、例えば、下記式(8)で表されるヒドロキシアルキルオキシ基含有化合物から、上記式(6)で表される脱離基含有化合物を経由して、上記式(1)で表されるビニル基含有化合物を得ることを含む製造方法により、合成することも可能である。
(式中、W
7及びW
8は独立に下記式(9)で表される基を示し、環Y
1、環Y
2、R、R
3a、R
3b、n1、及びn2は上記の通りである。)
(式中、lは1〜4の整数を示し、環Z、X、R
1、R
2、及びmは上記の通りである。)
上記式(8)で表されるヒドロキシアルキルオキシ基含有化合物は、例えば、酸触媒の存在下、下記式(17)で表される化合物及び/又は下記式(18)で表される化合物と、上記式(16)で表される化合物とを反応させることにより、合成することができる。適宜、下記式(17)で表される化合物及び下記式(18)で表される化合物の組み合わせ方や添加量等を調整することにより、上記式(8)で表される所望のヒドロキシアルキルオキシ基含有化合物を得ることができる。また、反応後に、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の公知の分離方法により、目的とするヒドロキシアルキルオキシ基含有化合物を分離してもよい。上記式(8)で表される化合物の合成に用いられる酸触媒、反応条件等としては、例えば、上記式(4)で表される化合物の合成方法の説明中で例示したもの等が挙げられる。
(式中、環Z、R
1、R
2、及びmは上記の通りである。)
上記式(6)で表される脱離基含有化合物は、例えば、上記式(8)で表されるヒドロキシアルキルオキシ基含有化合物と脱離基含有化合物とを反応させることにより、合成することができる。脱離基含有化合物及び反応温度としては、例えば、上記製造方法2について例示したもの等が挙げられる。
上記式(1)で表されるビニル基含有化合物は、例えば、上記式(6)で表される脱離基含有化合物とビニル化剤とを反応させることにより、合成することができる。ビニル化剤及び反応温度としては、例えば、上記製造方法2について例示したもの等が挙げられる。
[(B)ポリシロキサン]
本発明の感光性シロキサン組成物は、ポリシロキサン(B)を含有する。本明細書において、「ポリシロキサン(B)」を「(B)成分」ということがある。このポリシロキサン(B)と上記式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)とが反応することで、耐熱性を損なうことなく高い屈折率及び高い透明性を有し、光学的特性に優れた硬化物を形成することができる。ポリシロキサン(B)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
ポリシロキサン(B)としては、特に限定されないが、有機基を1分子中に少なくとも1個有するオルガノポリシロキサンが好ましい。
ポリシロキサン(B)としては、特に限定されないが、下記式(3)で表される少なくとも1種のシラン化合物の加水分解縮合物であることが好ましい。
(式中、R
5は水素原子又は炭素数1〜20の有機基を示し、pが2又は3のとき、複数のR
5はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Xは加水分解性基又は水酸基を示し、pが0、1又は2のとき、複数のXはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。pは0〜3の整数を示す。)
上記式(3)中においてR5で示される炭素数1〜20の有機基としては、特に限定されず、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられ、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、及び炭素数6〜15のアリール基が好ましい。
アルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕プロピル基、3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基等が挙げられる。アルケニル基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基等が挙げられる。アリール基としては、特に限定されず、例えば、フェニル基、トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル基、ナフチル基等が挙げられる。
上記炭素数1〜20の有機基としては、中でも、炭素数1〜6の有機基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭化水素1〜6のアルキル基;フェニル基等の炭化水素6〜10のアリール基がより好ましく、メチル基及びフェニル基が更に好ましく、メチル基が更により好ましい。
上記式(3)においてR5で示される炭素数1〜20の有機基としては、置換基を有するものであってもよく、なかでもアルキル基、アリール基、特にアルキル基は置換基を有するものであってもよい。置換基としては、例えば、グリシジル基、エポキシシクロアルキル基、グリシジルオキシ基等のエポキシ含有基;オキセタニル基等の炭素数3〜10の環状エーテル含有基;炭素数1〜10のアルコキシ基;アルカノイルオキシ基、カルボキシアルカノイルオキシ基、アルケノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等のカルボニルオキシ含有基;フェニル基、置換フェニル基等のアリール基;アミノ基、☆アミノアルキルアミノ基、アルキリデンアミノ基、フェニルアミノ基等のアミノ含有基;ハロゲン原子;メルカプト基;ウレイド基;イソシアネート基;水酸基等が挙げられる。R5で示される炭素数1〜20の有機基は、例えば、置換基としてアリール基を有するアルキル基である場合、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基である。
上記式(3)においてXで示される加水分解性基としては、加水分解により水酸基を生成し得る基であれば特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基;ビニロキシ基、2−プロペノキシ基等の炭素数2〜10、好ましくは炭素数1〜6のアルケノキシ基;フェノキシ基等の炭素数6〜15のアリールオキシ基;アセトキシ基等の炭素数1〜10、好ましくは炭素数2〜6のアシロキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ブタノキシム基等のオキシム基(RRC=NO−、RHC=NO−;Rは有機基を示す。);アミノ基等が挙げられる。上記加水分解性基としては、アルコキシ基、及びアリールオキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましく、加水分解縮合時の制御の容易さから、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、及びイソプロポキシ基が更に好ましい。
上記式(3)で表されるシラン化合物は、p=0の場合は4官能性シラン、p=1の場合は3官能性シラン、p=2の場合は2官能性シラン、p=3の場合は1官能性シランである。
上記式(3)で表されるシラン化合物としては、特に限定されないが、例えば、以下の具体的な化合物等が挙げられる。
((3−1)p=0の場合)
p=0の場合、上記式(3)で表されるシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン等が挙げられる。
(3−2)p=1の場合)
p=1の場合、上記式(3)で表されるシラン化合物としては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン等のトリアルコキシシラン;モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、モノメチルトリプロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、モノエチルトリメトキシシラン、モノエチルトリエトキシシラン、モノエチルトリプロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、モノプロピルトリメトキシシラン、モノプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等のモノアルキルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のモノビニルトリアルコキシシラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン;モノフェニルトリメトキシシラン、モノフェニルトリエトキシシラン、p−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン等のモノフェニルトリアルコキシシラン;1−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン等のモノアラルキルトリアルコキシシラン;トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノアルキルトリアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有アルキルトリアルコキシシラン;〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシラン等のオキセタニルアルキルトリアルコキシシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトアルキルトリアルコキシシラン;4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン等の置換されていてもよいアリールカルボニルオキシアルキルトリアルコキシシラン;3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸等が挙げられる。
((3−3)p=2の場合)
p=2の場合、上記式(3)で表されるシラン化合物としては、例えば、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジプロポキシシラン等のジアルコキシシラン;モノメチルジメトキシシラン、モノメチルジエトキシシラン、モノメチルジプロポキシシラン、モノエチルジメトキシシラン、モノエチルジエトキシシラン、モノエチルジプロポキシシラン、モノプロピルジメトキシシラン、モノプロピルジエトキシシラン、モノプロピルジプロポキシシラン等のモノアルキルジアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジn−ブチルジメトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン;ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジフェニルジアルコキシシラン;ジメチルジアセトキシシラン等のジアルキルジアシロキシシラン;(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン等のエポキシ基含有アルキルモノアルキルジアルコキシシラン等が挙げられる。
((3−4)p=3の場合)
p=3の場合、上記式(3)で表されるシラン化合物としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリn−ブチルエトキシシラン等のトリアルキルモノアルコキシシラン;(3−グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン等のエポキシ基含有アルキルジアルキルモノアルコキシシラン等が挙げられる。
上記式(3)で表されるシラン化合物は、中でも、硬化膜の耐クラック性と硬度の点から、p=1である3官能性シランが好ましい。
ポリシロキサン(B)は、上記式(3)で表されるシラン化合物の1種以上とともに、下記式(10)で表されるシリケート化合物を反応させることによって合成されるポリシロキサンであってもよい。シリケート化合物を反応させることで、パターン解像度を向上することができる。これは、ポリシロキサン中に多官能のシリケート化合物が組み込まれることで、膜のガラス転移温度が高くなり熱硬化時のパターンだれが抑えられるためと考えられる。
(式中、R
7、R
8、R
9及びR
10はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアシル基又は炭素数6〜15のアリール基を示す。qは2〜10の整数を示す。)
上記式(10)で表されるシリケート化合物としては、特に限定されず、例えば、メチルシリケート51(扶桑化学工業社製)、Mシリケート51、シリケート40、シリケート45(多摩化学工業社製)、メチルシリケート51、メチルシリケート53A、エチルシリケート40、エチルシリケート48(コルコート社製)等が挙げられる。また、これらのシリケート化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
シリケート化合物を用いる場合の混合比率は、特に限定されないが、ケイ素原子モル数でポリマー全体のケイ素原子モル数に対して50%以下が好ましい。シリケート化合物の混合比率が上記上限値以下であると、ポリシロキサン(B)とキノンジアジド化合物(C)との相溶性の悪化による硬化膜の透明性の低下を防止することができる。
なお、ポリマー全体のケイ素原子モル数に対するシリケート化合物のケイ素原子モル比はIRにおいてSi−C結合由来のピークとSi−O結合由来のピークの積分比から求めることができる。ピークの重なりが多く求められない場合は、1H−NMR、13C−NMR、IR、TOF−MS等によりシリケート化合物以外のモノマーの構造を決定し、更に元素分析法において発生する気体と残存する灰(すべてSiO2と仮定する)の割合から求めることができる。
ポリシロキサン(B)において、後述するキノンジアジド化合物(C)との相溶性を向上し、相分離することなく均一な硬化膜を形成させる目的から、ポリシロキサン(B)中にあるフェニル基の含有率はケイ素原子に対して30モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましい。フェニル基の含有率が上記下限値以上であると、塗布、乾燥、熱硬化中等において、ポリシロキサン(B)とキノンジアジド化合物(C)との相分離による膜の白濁又は硬化膜の透過率の低下を防止することができる。また、ポリシロキサン(B)中にあるフェニル基の含有率はケイ素原子に対して70モル%以下が好ましい。フェニル基の含有率が上記上限値以下であると、熱硬化時の架橋を十分に起こすことができる。
フェニル基の含有率は、例えば、ポリシロキサンの29Si−NMRを測定し、そのフェニル基が結合したSiのピーク面積とフェニル基が結合していないSiのピーク面積との比から求めることができる。
ポリシロキサン(B)は、ポリシロキサン中にアルコール性水酸基を含有するものであってもよい。ポリシロキサン中のアルコール性水酸基は、ビニル基含有化合物(A)のビニル基と、熱硬化時に容易に反応して膜の架橋度が高くなる。
アルコール性水酸基を含有するポリシロキサンは、エポキシ基を含有するシラン化合物を反応させることで、反応中にエポキシ基が加水分解によってアルコール性水酸基となり合成される。エポキシ基を含有するオルガノシランとしては、特に限定されず、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
ポリシロキサン中のアルコール性水酸基の含有率は、30モル%以下であることが好ましい。上記上限値以下であると、現像時の未露光部の膜減りを抑制し、硬化膜の膜均一性を向上することができる。
ポリシロキサン(B)の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィ)で測定されるポリスチレン換算で1000〜100000が好ましく、2000〜50000がより好ましい。Mwが上記下限値以上であると、塗膜性が良好であり、上記上限値以下であると、パターン形成時の現像液に対する溶解性が良好である。
ポリシロキサン(B)は、上述の式(3)で表されるシラン化合物等のモノマーを加水分解及び部分縮合させることにより合成することができる。加水分解及び部分縮合には一般的な方法を用いることができる。例えば、混合物に溶媒、水、必要に応じて触媒を添加し、50〜150℃で0.5〜100時間程度加熱攪拌する。なお、攪拌中、必要に応じて、蒸留によって加水分解副生物(メタノール等のアルコール)や縮合副生物(水)の留去を行ってもよい。
上記の加水分解及び部分縮合の反応に用いる溶媒としては、特に限定されないが、通常は後述する溶剤(D)と同様のものが用いられる。溶媒の添加量はシラン化合物等のモノマー100質量部に対して10〜1000質量部が好ましい。また、加水分解反応に用いる水の添加量は、加水分解性基1モルに対して0.5〜2モルが好ましい。
上記反応において必要に応じて添加される触媒としては、特に限定されないが、酸触媒、塩基触媒が好ましい。酸触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、多価カルボン酸又はその無水物、イオン交換樹脂等が挙げられる。塩基触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノ基を有するアルコキシシラン、イオン交換樹脂等が挙げられる。触媒の添加量としては、特に限定されないが、シラン化合物等のモノマー100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましい。
また、組成物の貯蔵安定性の観点から、加水分解、部分縮合後のポリシロキサン溶液には触媒が含まれないことが好ましく、必要に応じて触媒の除去を行うことができる。除去方法としては、特に限定されないが、水洗浄、及び/又はイオン交換樹脂による処理が好ましい。水洗浄とは、ポリシロキサン溶液を適当な疎水性溶剤で希釈した後、水で数回洗浄して得られた有機層をエバポレーターで濃縮する方法である。イオン交換樹脂での処理とは、ポリシロキサン溶液を適当なイオン交換樹脂に接触させる方法である。
[(C)キノンジアジド化合物]
本発明の感光性シロキサン組成物は、キノンジアジド化合物(C)を含有する。本明細書において、「キノンジアジド化合物(C)」を「(C)成分」ということがある。キノンジアジド化合物を含有することにより、露光部が現像液で除去されるポジ型を形成することができる。用いるキノンジアジド化合物(C)としては、特に限定されないが、フェノール性水酸基を有する化合物にナフトキノンジアジドスルホン酸がエステル結合した化合物が好ましく、当該化合物のフェノール性水酸基のオルト位、及びパラ位がそれぞれ独立して水素原子又は下記式(11)で表される置換基のいずれかである化合物が用いられる。
(式中、R
11、R
12及びR
13はそれぞれ独立に炭素数1〜10の置換していてもよいアルキル基、カルボキシ基、又は、置換していてもよいフェニル基を示す。また、R
11、R
12及びR
13で環を形成してもよい。)
上記式(11)においてR11、R12及びR13で示されるアルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、トリフルオロメチル基、2−カルボキシエチル基等が挙げられる。また、フェニル基が有する置換基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、上記式(11)で表される置換基等が挙げられる。また、R11、R12及びR13で形成してもよい環としては、特に限定されないが、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、フルオレン環等が挙げられる。
キノンジアジド化合物(C)は、フェノール性水酸基のオルト位及びパラ位が上記以外、例えばメチル基の場合、熱硬化によって酸化分解が起こり、キノイド構造に代表される共役系化合物が形成され、硬化膜が着色して無色透明性が低下する傾向にある。なお、これらのキノンジアジド化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物と、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドとの公知のエステル化反応により合成することができる。
フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、以下の化合物等が挙げられる。
ナフトキノンジアジドスルホン酸としては、特に限定されず、例えば、4−ナフトキノンジアジドスルホン酸、5−ナフトキノンジアジドスルホン酸等が挙げられる。4−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物は、i線(波長365nm)領域に吸収を持つため、i線露光に適している。また、5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物は、広範囲の波長領域に吸収が存在するため、広範囲の波長での露光に適している。露光する波長によって4−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物又は5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を選択することが好ましい。4−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物とを混合して用いることもできる。
キノンジアジド化合物(C)の添加量は、特に制限されないが、ポリシロキサン(B)の固形分100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、2〜15質量部がより好ましい。キノンジアジド化合物(C)の添加量が上記下限値以上であると、露光部と未露光部との溶解コントラストの低下による現実的な感光性の喪失を防止することができる。また、更に良好な溶解コントラストを得るためには2質量部以上が好ましい。一方、キノンジアジド化合物(C)の添加量が上記上限値以下であると、ポリシロキサン(B)とキノンジアジド化合物(C)との相溶性の悪化による塗布膜の白化を防止でき、また、熱硬化時に起こるキノンジアジド化合物(C)の分解による着色を抑制して、硬化膜の無色透明性を維持することができる。また、更に高透明性の膜を得るためには15質量部以下が好ましい。
[(D)溶剤]
本発明の感光性シロキサン組成物は、溶剤(D)を含有するものであることが好ましい。溶剤(D)としては、特に限定されないが、アルコール性水酸基を有する化合物が好ましい。このような溶剤を用いると、ポリシロキサン(B)とキノンジアジド化合物(C)とが均一に溶解し、組成物を塗布成膜しても膜は白化することなく、高透明性を達成することができる。
上記アルコール性水酸基を有する化合物としては、特に限定されないが、大気圧下の沸点が110〜250℃である化合物が好ましい。沸点が上記下限値以上であると、塗膜時の乾燥が速すぎることによる膜表面の荒れ等を防ぎ、塗膜性の悪化を防止することができる。一方、沸点が上記上限値以下であると、膜中の残存溶剤量の過剰によるキュア時の膜収縮の増大を抑制し、良好な平坦性が得られやすい。
アルコール性水酸基を有する化合物としては、特に限定されず、例えば、アセトール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール等が挙げられる。なお、これらのアルコール性水酸基を有する化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
また、本発明の感光性シロキサン組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の溶剤を含有するものであってもよい。その他の溶剤としては、特に限定されないが、例えば、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−1−ブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシ−1−ブチルアセテート、アセト酢酸エチル等のエステル類;メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等のシクロアルカノン類;炭酸プロピレン;N−メチルピロリドン等が挙げられる。
溶剤(D)の含有量は、特に限定されないが、ポリシロキサン(B)の固形分100質量部に対して100〜1000質量部が好ましい。
[その他の添加物]
本発明の感光性シロキサン組成物は、必要に応じて更に、シランカップリング剤、架橋剤、架橋促進剤、増感剤、熱ラジカル発生剤、溶解促進剤、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤、消泡剤等の添加剤を含有するものであってもよい。
本発明の感光性シロキサン組成物は、シランカップリング剤を含有するものであってもよい。シランカップリング剤を含有することにより、基板との密着性を向上することができる。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸、N−t−ブチル−3−(3−トリメトキシシリルプロピル)コハク酸イミド等が挙げられる。
シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、ポリシロキサン(B)の固形分100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。添加量が上記下限値以上であると、密着性向上の効果が十分であり、上記上限値以下であると、保管中のシランカップリン剤同士の縮合反応による現像時の溶け残りを防止することができる。
本発明の感光性シロキサン組成物は、架橋剤を含有するものであってもよい。架橋剤は熱硬化時にポリシロキサン架橋して樹脂中に取り込まれる化合物であり、含有することによって硬化膜の架橋度が高くなる。これによって、熱硬化時のパターンだれによるパターン解像度の低下を抑制することができる。
架橋剤としては、特に限定されないが、下記式(20)で表される基を2個以上有する化合物が好ましい。
(式中、R
14は水素又は炭素数1〜10のアルキル基を示す。化合物中の複数のR
14はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
上記式(20)においてR14で示されるアルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基等が挙げられる。
上記式(20)で表される基を2個以上有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、以下のようなメラミン誘導体や尿素誘導体(三和ケミカル社製「ニカラック」類)等が挙げられる。
上記架橋剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
架橋剤の含有量は、特に限定されないが、ポリシロキサン(B)の固形分100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。架橋剤の含有量が上記下限値以上であると、樹脂の架橋が十分である。一方、架橋剤の添加量が上記上限値以下であると、硬化膜の無色透明性の低下及び組成物の貯蔵安定性の低下を防止することができる。
本発明の感光性シロキサン組成物は、架橋促進剤を含有するものであってもよい。架橋促進剤とは、熱硬化時のポリシロキサン(B)の架橋を促進する化合物であり、熱硬化時に酸を発生する熱酸発生剤や、熱硬化前のブリーチング露光時に酸を発生する光酸発生剤が用いられる。熱硬化時に膜中に酸が存在することによって、ポリシロキサン(B)中の未反応シラノール基の縮合反応が促進され、硬化膜の架橋度を高めることができる。これによって、熱硬化時のパターンだれによるパターン解像度の低下を抑制することができる。
本発明において、熱酸発生剤は、熱硬化時に酸を発生する化合物であり、組成物塗布後のプリベーク時には酸を発生しない又は少量しか発生しないことが好ましく、従って、プリベーク温度以上、例えば100℃以上で酸を発生する化合物であることが好ましい。酸発生温度がプリベーク温度以上であると、プリベーク時にポリシロキサンの架橋を抑制し、該架橋による感度の低下及び現像時の溶け残りを防止することができる。
熱酸発生剤としては、特に限定されず、例えば、SI−60、SI−80、SI−100、SI−110、SI−145、SI−150、SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−145L、SI−150L、SI−160L、SI−180L(以上商品名、三新化学工業社製)、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、2−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシカルボニルオキシフェニルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ベンジル−4−メトキシカルボニルオキシフェニルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート(以上、三新化学工業社製)等が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明において、光酸発生剤は、ブリーチング露光時に酸を発生する化合物であり、露光波長365nm(i線)、405nm(h線)、436nm(g線)又はこれらの混合線の照射によって酸を発生する化合物である。従って、同様の光源を用いるパターン露光においても酸が発生する可能性はあるが、パターン露光はブリーチング露光と比べて露光量が小さいために、少量の酸しか発生せず問題とはならない。また、発生する酸としてはパーフルオロアルキルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の強酸が好ましい。カルボン酸が発生するキノンジアジド化合物はここでいう光酸発生剤の機能は有しておらず、本発明における架橋促進剤とは異なるものである。
光酸発生剤としては、特に限定されないが、例えば、SI−100、SI−101、SI−105、SI−106、SI−109、PI−105、PI−106、PI−109、NAI−100、NAI−1002、NAI−1003、NAI−1004、NAI−101、NAI−105、NAI−106、NAI−109、NDI−101、NDI−105、NDI−106、NDI−109、PAI−01、PAI−101、PAI−106、PAI−1001(以上商品名、みどり化学社製)、SP−077、SP−082(以上商品名、ADEKA社製)、TPS−PFBS(以上商品名、東洋合成工業社製)、CGI−MDT、CGI−NIT(以上商品名、チバジャパン社製)、WPAG−281、WPAG−336、WPAG−339、WPAG−342、WPAG−344、WPAG−350、WPAG−370、WPAG−372、WPAG−449、WPAG−469、WPAG−505、WPAG−506(以上商品名、和光純薬工業社製)等が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
架橋促進剤として、上述の熱酸発生剤と光酸発生剤とを併用してもよい。
架橋促進剤の含有量は、特に限定されないが、ポリシロキサン(B)の固形分の100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。含有量が上記下限値以上であると、効果が十分であり、上記上限値質量部以下であると、プリベーク時やパターン露光時のポリシロキサンの架橋を防止することができる。
本発明の感光性シロキサン組成物は、増感剤を含有するものであってもよい。増感剤を含有することによって、感光剤であるキノンジアジド化合物(C)の反応を促進して感度を向上することができ、また、架橋促進剤として光酸発生剤が含有されている場合は、ブリーチング露光時の反応を促進して硬化膜のパターン解像度を向上することができる。
本発明において、増感剤としては、特に限定されず、例えば、熱処理により気化する及び/又は光照射によって退色する増感剤等が挙げられる。この増感剤は、パターン露光やブリーチング露光における光源の波長である365nm(i線)、405nm(h線)、436nm(g線)に対して吸収をもつことが必要であるが、そのまま硬化膜に残存すると可視光領域に吸収が存在するために無色透明性が低下してしまう。そこで、増感剤による無色透明性の低下を防ぐために、用いられる増感剤は、熱硬化等の熱処理で気化する化合物(増感剤)、及び/又はブリーチング露光等の光照射によって退色する化合物(増感剤)が好ましい。
上記の熱処理により気化する、及び/又は光照射によって退色する増感剤としては、特に限定されず、例えば、3,3’−カルボニルビス(ジエチルアミノクマリン)等のクマリン;9,10−アントラキノン等のアントラキノン、ベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、アセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、ベンズアルデヒド等の芳香族ケトン;ビフェニル;1,4−ジメチルナフタレン、9−フルオレノン、フルオレン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、アントラセン、9−フェニルアントラセン、9−メトキシアントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ビス(4−メトキシフェニル)アントラセン、9,10−ビス(トリフェニルシリル)アントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジペンタオキシアントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ビス(トリメチルシリルエチニル)アントラセン等の縮合芳香族等が挙げられる。
これらの増感剤の中で、熱処理により気化する増感剤は、好ましくは熱処理により昇華、蒸発、熱分解による熱分解物が昇華又は蒸発する増感剤である。また、増感剤の気化温度としては、130℃〜400℃が好ましく、150℃〜250℃がより好ましい。増感剤の気化温度が130℃以上であると、プリベーク中の増感剤の気化による露光プロセスにおける消失を防ぎ、感度の低下を防止することができる。また、プリベーク中の気化を極力抑えるためには、増感剤の気化温度は150℃以上が好ましい。一方、増感剤の気化温度が400℃以下であると、増感剤が熱硬化時に気化して硬化膜中に残存せず、無色透明性の低下を防止することができる。また、熱硬化時に完全に気化させるためには、増感剤の気化温度は250℃以下が好ましい。
一方、光照射によって退色する増感剤は、透明性の観点から可視光領域における吸収が光照射によって退色する増感剤が好ましい。また、更に好ましい光照射によって退色する化合物は、光照射によって二量化する化合物である。光照射によって二量化することによって、分子量が増大して不溶化するので、耐熱性向上、透明硬化膜からの抽出物の低減という効果が得られる。
また、増感剤としては、高感度を達成できるという点、光照射によって二量化して退色するという点からアントラセン系化合物が好ましく、更に、9,10位が水素であるアントラセン系化合物は熱に不安定であるので、9,10−二置換アントラセン系化合物であることがより好ましい。更に、増感剤の溶解性の向上と光二量化反応の反応性の観点から、下記式(21)で表される9,10−ジアルコキシアントラセン系化合物であることが好ましい。
(式中、R
15〜R
22は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アシル基又はそれらが置換された有機基を示し、R
23及びR
24は、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルコキシ基又はそれらが置換された有機基を示す。)
上記式(21)においてR15〜R22で示される、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられ、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アクリロキシプロピル基、メタクリロキシプロピル基等が挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、アシル基としては、アセチル基等が挙げられる。上記式(21)で表される化合物としては、該化合物の気化性、光二量化の反応性の点から、R15〜R22が水素原子又は炭素数1〜6の有機基であるものが好ましく、R15、R18、R19及びR22が水素原子であるものがより好ましい。
上記式(21)においてR23及びR24で示されるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられるが、化合物の溶解性と光二量化による退色反応の点から、プロポキシ基、ブトキシ基が好ましい。
増感剤の含有量は、特に限定されないが、ポリシロキサン(B)の固形分100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。上記範囲内であると、透明性の低下及び感度の低下を防止することができる。
<感光性シロキサン組成物の調製方法>
本発明の感光性シロキサン組成物は、上記各成分を混合等することにより得られる。例えば、ビニル基含有化合物(A)、ポリシロキサン(B)としてポリシロキサン溶液、及び、キノンジアジド化合物(C)を、必要に応じてシランカップリング剤、架橋促進剤、増感剤等の添加物とともに、溶剤(D)に投入し、黄色灯下で混合、攪拌して均一溶液とした後、0.2μm等のフィルターで濾過することにより、本発明の感光性シロキサン組成物を調製することができる。
<感光性シロキサン組成物の硬化方法>
本発明の感光性シロキサン組成物を用いた硬化膜の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、本発明の組成物をスピナー、スリット等の公知の方法によって下地基板上に塗布し、ホットプレート、オーブン等の加熱装置でプリベークする。プリベークは、50〜150℃の範囲で30秒〜30分間行い、プリベーク後の膜厚は、0.1〜15μmとするのが好ましい。
プリベーク後、ステッパー、ミラープロジェクションマスクアライナー(MPA)、パラレルライトマスクアライナー(PLA)等の紫外可視露光機を用い、10〜4000J/m2程度(波長365nm露光量換算)を所望のマスクを介してパターン露光する。
露光後、現像により露光部が溶解し、ポジ型のパターンを得ることができる。現像方法としては、シャワー、ディップ、パドル等の方法で現像液に5秒〜10分間浸漬することが好ましい。現像液としては、公知のアルカリ現像液を用いることができる。具体例としてはアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩等の無機アルカリ、2−ジエチルアミノエタノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類、水酸化テトラメチルアンモニウム、コリン等の4級アンモニウム塩を1種又は2種以上含む水溶液等が挙げられる。また、現像後は水でリンスすることが好ましく、必要であればホットプレート、オーブン等の加熱装置で50〜150℃の範囲で脱水乾燥ベークを行うこともできる。
その後、ブリーチング露光を行うことが好ましい。ブリーチング露光を行うことによって、膜中に残存する未反応のキノンジアジド化合物が光分解して、膜の光透明性が更に向上する。ブリーチング露光の方法としては、PLA等の紫外可視露光機を用い、100〜20000J/m2程度(波長365nm露光量換算)を全面に露光する。
ブリーチング露光した膜を、必要であればホットプレート、オーブン等の加熱装置で50〜150℃の範囲で30秒〜30分間ソフトベークを行った後、ホットプレート、オーブン等の加熱装置で150〜450℃の範囲で1時間程度キュアすることで、光導波路におけるコアやクラッド材といった硬化膜が形成される。
得られる硬化膜は、耐熱性及びパターン特性を損なうことなく、高透明性及び高屈折率を有するので、例えば、光ファイバーを含む光導波路のコアやクラッド材、液晶表示素子、有機EL表示素子等のTFT基板用平坦化膜、タッチパネルの保護膜や絶縁膜、半導体素子の層間絶縁膜等として好適に用いられる。
本発明の感光性シロキサン組成物を硬化してなる光学部品もまた、本発明の一つである。この光学部品としては、上記硬化膜として用いられるものとして上述したものの他、膜に限定されない硬化物であってもよい。上記硬化物としては、例えば、レンズ等が挙げられる。
以下に、本発明の実施例及び比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。用いた化合物のうち、略語を使用しているものについて、以下に示す。
DAA:ダイアセトンアルコール
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル。
<上記式(1)で表されるビニル基含有化合物(A)、及び比較化合物>
ビニル基含有化合物(A)としては、下記式で表される化合物A1及びA2を用意した。また、比較のため、下記式で表される比較化合物A3〜A5を用意した。
化合物A1
化合物A2
比較化合物A3:9,9−ビス〔4−グリシジルオキシエチルオキシフェニル〕フルオレン
比較化合物A4:9,9−ビス〔4−グリシジルオキシフェニル〕フルオレン
比較化合物A5:9,9−ビス〔4−アクリロイルオキシエチルオキシフェニル〕フルオレン
化合物A1及びA2の合成法を下記に示す。合成例で用いた材料は下記の通りである。
[無機塩基]
(1)軽灰炭酸ナトリウム
粒子径分布:250μm以上;3質量%
150μm以上250μm未満;15質量%
75μm以上150μm未満;50質量%
75μm未満;32質量%
なお、上記の粒子径分布は、60メッシュ(250μm)、100メッシュ(150μm)、200メッシュ(75μm)のふるいを用いて仕分けた後、最終的に得られた篩上成分及び篩下成分各々の質量を測定することにより算出した。
[遷移元素化合物触媒]
(1)ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I):[Ir(cod)Cl]2
[ヒドロキシ化合物]
(1)9,9’−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン
(2)9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン
[ビニルエステル化合物]
(1)プロピオン酸ビニル
[合成例1]ビニル基含有化合物A1の合成
冷却管、及び、凝縮液を分液させて有機層を反応容器に戻し水層を系外に排出するためのデカンターを取り付けた1000ml反応容器に、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2(839mg、1.25mmol)、軽灰炭酸ナトリウム(12.7g、0.12mol)、9,9’−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン(225g、0.5mol)、プロピオン酸ビニル(125g、1.25mol)、及びトルエン(300ml)を仕込んだ後、表面積が10cm2の撹拌羽根を用い回転数を250rpmに設定し、撹拌しながら徐々に温度を上げて還流させた。還流下、副生する水をデカンターで除去しながら、5時間反応させた。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、9,9’−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンの転化率は100%であり、9,9’−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンを基準として9,9’−ビス(6−ビニロキシ−2−ナフチル)フルオレン(化合物1)が81%、ビス6−ナフトールフルオレンモノビニルエーテルが4%の収率で生成していた。
1H−NMR(CDCl3):4.47(dd、2H、J=1.5Hz、5.0Hz)、4.81(dd、2H、J=3.5Hz、12.0Hz)、6.71(dd、2H、J=6.0Hz)、7.12−7.82(m、20H)
[合成例2]ビニル基含有化合物A2の合成
冷却管、及び、凝縮液を分液させて有機層を反応容器に戻し水層を系外に排出するためのデカンターを取り付けた1000ml反応容器に、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2(839mg、1.25mmol)、軽灰炭酸ナトリウム(12.7g、0.12mol)、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(186g、0.5mol)、プロピオン酸ビニル(125g、1.25mol)、及びトルエン(300ml)を仕込んだ後、表面積が10cm2の撹拌羽根を用い回転数を250rpmに設定し、撹拌しながら徐々に温度を上げて還流させた。還流下、副生する水をデカンターで除去しながら、5時間反応させた。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの転化率は100%であり、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを基準として、9,9’−ビス(4−ビニロキシフェニル)フルオレン(化合物3)が72%、ビス4−フェノールフルオレンモノビニルエーテルが9%の収率で生成していた。
1H−NMR(CDCl3):4.47(dd、2H)、4.81(dd、2H)、6.71(dd、2H)、7.12−7.82(m、16H)
<ポリシロキサン(B)>
ポリシロキサン(B)としては、下記合成例で得られるポリシロキサン溶液B1及びB2を用意した。固形分濃度及び質量平均分子量(Mw)は、以下の通り求めた。
(1)固形分濃度
アルミカップにポリシロキサン(アクリル樹脂)溶液を1g秤取し、ホットプレートを
用いて250℃で30分間加熱して液分を蒸発させた。加熱後のアルミカップに残った固
形分を秤量して、ポリシロキサン(アクリル樹脂)溶液の固形分濃度を求めた。
(2)質量平均分子量
質量平均分子量はGPC(Waters社製996型デテクター、展開溶剤:テトラヒ
ドロフラン)にてポリスチレン換算により求めた。
[合成例3]ポリシロキサン溶液B1の調製
500mlの三口フラスコにメチルトリメトキシシランを40.86g(0.3mol)、フェニルトリメトキシシランを99.15g(0.5mol)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを12.32g(0.05mol)、Mシリケート51(多摩化学工業社製)を17.63g(シラン原子モル数で0.15mol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと略する)を153.66g仕込み、室温で攪拌しながら水53.55gにリン酸0.51g(仕込みモノマーに対して0.3質量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて30分攪拌した後、オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱攪拌し(内温は100〜110℃)、ポリシロキサン溶液B1を得た。なお、加熱攪拌中、窒素を0.05l(リットル)/min流した。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計120g留出した。得られたポリシロキサン溶液B1の固形分濃度は40質量%、ポリシロキサンの質量平均分子量は10000であった。なお、ポリシロキサン中のフェニル基含有率はケイ素原子に対して50モル%であった。
[合成例4]ポリシロキサン溶液B2の調製
500mlの三口フラスコにメチルトリメトキシシランを54.48g(0.4mol)、フェニルトリメトキシシランを99.15g(0.5mol)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを24.64g(0.1mol)、ダイアセトンアルコール(以下、DAAと略する)を163.35g仕込み、室温で攪拌しながら水54gにリン酸0.535g(仕込みモノマーに対して0.3質量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて30分攪拌した後、オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱攪拌し(内温は100〜110℃)、ポリシロキサン溶液B2を得た。なお、加熱攪拌中、窒素を0.05l(リットル)/min流した。反応中に副生成物であるメタノール、水が合計120g留出した。得られたポリシロキサン溶液B2の固形分濃度は40質量%、ポリシロキサンの質量平均分子量は6500であった。なお、ポリシロキサン中のフェニル基含有率はケイ素原子に対して50モル%であった。
<キノンジアジド化合物(C)>
キノンジアジド化合物(C)としては、下記合成例で得られる化合物C1及びC2を用意した。
[合成例5]キノンジアジド化合物C1の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業社製)21.23g(0.05mol)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド37.62g(0.
14mol)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン15.58g(0.154mol)を系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記構造のキノンジアジド化合物C1を得た。
[合成例6]キノンジアジド化合物C2の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−HAP(商品名、本州化学工業社製)15.32g(0.05mol)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド26.87g(0.1mol)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン11.13g(0.11mol)を系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入させた。その後、析出した沈殿を濾過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記構造のキノンジアジド化合物C2を得た。
<感光性シロキサン組成物の調製及びその硬化膜の作製>
[実施例1〜5]
ビニル基含有化合物(A)として化合物A1又はA2を用い、ポリシロキサン(B)としてポリシロキサン溶液B1又はB2を用い、キノンジアジド化合物(C)として化合物C1又はC2を用い、溶剤(D)としてPGME及びPGMEAを用い、表1に示した配合割合(単位:質量部)で配合し、黄色灯下で混合、攪拌して均一溶液とした後、0.2μmのフィルターで濾過して感光性シロキサン組成物を調製した。
得られた感光性シロキサン組成物を、ガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で100℃で120秒間プリベークを行い、乾燥塗膜(膜厚2.0μm)を形成した。この乾燥塗膜を230℃で20分間ポストベークを行い、硬化膜(膜厚1.7μm)を得た。
[比較例1〜4]
ビニル基含有化合物(A)に代り比較化合物A3〜A5のいずれかを用いること以外は、実施例と同様にして、表1に示した配合割合(単位:質量部)で組成物を調製し、硬化膜を得た。
<屈折率の測定>
得られた硬化物について、波長633nmでの屈折率を測定し、以下の基準で評価した。硬化膜が得られなかった場合、上記乾燥塗膜について、同様に測定し、評価した。結果を表1に示す。
◎:1.6以上、○:1.5以上1.6未満、×:1.5未満
<光透過率(透明性)の測定>
得られた硬化物について、波長633nmでの光透過率を測定し、以下の基準で評価した。硬化膜が得られなかった場合、上記乾燥塗膜について、同様に測定し、評価した。結果を表1に示す。
◎:98%以上、○:95%以上98%未満
<耐熱性の測定>
得られた硬化物を室温(約20℃)から1分間に10℃ずつの割合で昇温加熱して大気中で熱重量分析を行い、分析開始時の質量を基準として、質量が5%減少する温度(Td5%)を測定し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:330℃以上、×:330℃未満
<パターン形成>
実施例又は比較例で得られた感光性シロキサン組成物を、ガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上で100℃で120秒間加熱(プリベーク)を行い、乾燥塗膜(膜厚 2.0μm)を得た。この乾燥塗膜をラインアンドスペースパターン(幅10μm)のマスクを用いてブロードバンド光で露光した。ホットプレート上で100℃で120秒間加熱(PEB)を行った後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液で現像を行い、ポジ型パターニングを行った。
<パターン形成性の評価>
上記パターン形成において、パターン形成が可能であった場合をPTN特性○、パターン形成が不能であった場合をPTN特性×として評価し、結果を表1に示す。
表1から分かるように、ビニル基含有化合物(A)として化合物A1又はA2を含有する感光性シロキサン組成物は、比較化合物A3〜A5のいずれかを含有する組成物に比べ、得られる硬化膜において、耐熱性を損なうことなく、高い透明性と高い屈折率とを有しており、また、パターン特性も損なわれていなかった。特に、上述の式(1)における環Zがナフタレン環である化合物A1を含有する感光性ポリシロキサン組成物は、ポリシロキサン(B)としてポリシロキサン溶液B1又はB2、また、キノンジアジド化合物(C)として化合物C1又はC2のいずれを用いた場合であっても、得られる硬化膜において高い透明性と高い屈折率とを有していた。