JP6319935B2 - 管状杭の打設方法 - Google Patents

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Description

本発明は、重機や施工装置の搬入が困難な地盤での杭打ち施工や掘削施工に利用される方法・装置に関するものであり、例えば、深い峡谷やダムサイト、急峻な山岳地帯などの施工現場で好適に用いられる。
(背景技術の概要)
世界経済の流動化や、産業構造の転換、また異常多雨・大地震・津波などの気象・地象環境の大きな変化に対応するため、道路橋・鉄道橋・ダム・護岸などの社会資本の更新や新設が活発に行われている。
このような社会資本の更新・新設工事のなかには、杭打ち施工や掘削施工が大径化、長尺化しているものが数多くあり、その具体例としては、桟橋支持杭、斜面上の抑止杭や土留め杭、あるいは河川・ダム・港湾部締切用の鋼管矢板壁などの工事が挙げられる。
この種の打設や掘削を要する施工現場が峡谷、ダム、護岸、河川などにある場合、通常、対象地盤上に施工機材を搬入することが困難であるため、地盤から離れた位置に機械足場を構築し、該足場上に搬入した施工機材を使って打設や掘削を行う必要がある。しかしながら、三点支持式杭打ち機のような「杭心位置」と「機械稼動範囲の位置」が固定的となる装置では、杭心に装置が届かず施工が困難となる。そこで、図11に示すように、足場12に搬入したクレーンで掘削装置9を吊り下げて施工する方法が採用されている。
このクレーン吊り下げ方式の管状杭の打設工法を採用する現場のなかでも、例えば、深い峡谷を通る難工事路線となる道路橋、鉄道橋工事や深い既設のダムサイトにおける工事用道路や作業構台構台のための桟橋施工では、図11に示すように、桟橋の杭長が60mを超えるなど極めて長くなる。
また、ダムサイトにおいては、堰堤やゲート部の部材が大型で重量物であり、比較的大型のクレーン(150t〜300t程度)が用いられる。従って、クレーン荷重等を含む鉛直荷重が大きくなれば、それを支えるために桟橋の杭径がより大きくなる。
現在までも、このような各種要請から、現在、峡谷やダムなどにおける桟橋施工では、長尺でかつ大径の支持杭を用いる極めて大きな荷重の掘削装置を吊り下げるため、クレーンが大型化し、その結果桟橋の規格も大型化している。
そのため、公共工事の合理化が強く推進される近年では、支間長が縮まると、その分杭の打設本数が増えて、工期長期化、コスト増大、原地盤の大きな改変といった弊害を招くため、工期短縮、コスト縮減、環境保全などを目的として、大径・長尺の杭を起用することで、より長い支間長(打設間隔)で施工することを求める事例が増加している。
今後は、経済再興の要として早期開通が期待されるリニア新幹線のルート選定や、大震災に対応した緊急輸送道路の難工事区間を含むルートの選定などを受け、そこに含まれる道路橋、鉄道橋やトンネル建設のための工事用道路や作業構台の構築に際し、例えば日本アルプスのような急峻な山間部の難工事区間においても、長尺杭桟橋の、それらの工事目的の緊急性に適うだけの急速施工が求められることになる。
また、特にダム湖においては、桟橋の下部補強材の取り付け作業が大水深の水中作業となり作業者への負担が大きくなるなどの理由から、設計上可能な限りブレス設置を行わないよう、大径の鋼管杭を利用することで断面係数を高めるなどの方法が望まれる。
更に、ダムサイトの重仮設工においては、桟橋工ばかりではなく、堰堤やゲート部分の老朽化や堆砂による保水機能低下に伴い近年行われる洪水吐新設などのダム機能を維持しつつ補修や機能追加の工事を行う際、堰堤の規模に応じた大水深の締切を行うため、その水圧に耐えうる十分な止水壁を構築することが必要であり、その結果、十分な断面性能を有する大径でかつ長尺の鋼管矢板により高規格の仮締切が計画されるなど老朽化した大規模ダムの補修工事の増加とともに、そこで用いられる施工機械と重仮設が不可避的に大規模となることが既に顕在化し、その対策が必要となっている。
その他にも、近年では、各地の地すべり地帯において、気象の変化による長梅雨や大規模台風により度々発生する異常多雨の際に発生する、河道閉塞や天然ダム、土石流により市民生活に重篤な被害をもたらすような深層崩壊による地すべりを抑止するための大深度の大口径抑止杭(多くの場合鋼管杭)を打設する防災措置が全国的に急務であるなど、強度に優れる管状杭の仕様が、大径・長尺化する例は枚挙に暇がない。
現在、上記のような環境下で有効な急速施工方法として、特許文献1(特許3211673号)の桟橋工法や、特許文献2,3(特許3640371号,特許3708795号)の杭打ち方法が広く用いられている。これらの特許文献に開示の方法では、ドリルロッドを備えた掘削装置を用いている。このドリルロッドの先端側には掘削ビットが設けられ、上端側には、該ドリルロッドを回転駆動する回転駆動装置が設けられている。このような装置を用いて管状杭の打設を行うためには、図11に示すように、杭長と同等以上の長さのロッドを備えた掘削装置が常に必要となる。
(桟橋施工の概要)
図12〜図14に基づいて、桟橋施工の一例を説明する。
図12は、桟橋施工で用いる桟橋パネル13を示す平面図である。
図13は、桟橋施工の一工程を例示する斜視図であって、図12に示す桟橋パネル13をクレーンで設計位置に運搬している様子を示している。
図14は、図13の次工程を示す斜視図であって、片持ち状に延設した桟橋パネル13をガイドに利用し、橋脚をなす管状杭6を打設している様子を示している。
桟橋施工では、桟橋の上部構造の一単位を成す桟橋パネルを複数用いる。図12に示す桟橋パネル13は、主として、メインフレーム14と、該メインフレームに連結されたガイドフレーム15とから構成されている。
メインフレーム14は、既設の桟橋パネルに対し連結される連結部材17を有している。ガイドフレーム15は、打設時に管状杭を地盤へガイドする筒状の杭ガイド16と、次段の桟橋パネルに対して連結される連結金具18を有している。杭ガイド16は、管状杭を挿通させるための挿通孔19を有している。
上記構成の桟橋パネル13を用いて桟橋を架設するにあたっては、はじめに図13に示すように、桟橋完成部分からなる足場上にクレーンを用意し、該クレーンで桟橋パネル13を吊り上げ、延設地点(桟橋完成部分の先端位置)へ運搬する。続いて、運搬してきた桟橋パネル13を、桟橋完成部分の先端側の既設桁(既設桟橋パネル)に対し連結して、図14に示すように、桟橋完成部分から張り出すように片持ち状に延設する。
次に図14に示すように、橋脚を成す管状杭6を、延設した桟橋パネル13の杭ガイド16に通して、打設予定位置の地盤上に建て込む。続いて、後述する掘削装置9のドリルロッドを、建て込んだ管状杭6に挿通させる。管状杭6の先端からドリルロッドの先端ビットが突き出たら、該ドリルロッドで対象地盤を回転掘削しつつ同時に管状杭6の打ち込みを行い、次いで、打設した管状杭6の頭部を桟橋パネル13に固定する。
図示する例では、1つの桟橋パネルを延設する毎に3本の管状杭を打設して、これらの杭頭部を杭ガイド16に固定する。上記工程を経て、1ユニット分(1桟橋パネル分)の上部構造及び下部構造の構築作業が完了する。
上述した工程を繰り返して、管状杭で支持される桟橋パネルを延設し続けることにより桟橋を完成させる。
(掘削装置)
次に、図15に基づいて、上述した桟橋施工や掘削施工で用いる掘削装置について説明する。
図15に示す掘削装置9は、主として、回転駆動装置91と、該駆動装置の下部に固定された排土キャップ92と、該排土キャップの内側を通って回転駆動装置91に連結された長尺のドリルロッド93とを有している。
回転駆動装置91は、その下部のドリルロッド93を回転駆動する。
ドリルロッド93はダウンザホールハンマ94を含んで構成されており、該ハンマは、打撃力発生用のピストンを内部に具備している。ドリルロッド93の上端側は、略スリーブ状の排土キャップ92の内側を通って、回転駆動装置91に連結されている。一方、ドリルロッド93の先端には掘削ビット95が設けられている。
管打ち施工の際には、図15に示すように管状杭6の内空部にドリルロッド93を挿通させ、管状杭先端から掘削ビット95を突き出した状態で対象地盤を掘削する。
上記構成の掘削装置9を用いて掘削を行う際には、ダウンザホールハンマ94による連続的打撃を対象地盤に対し加えながら回転掘削を行う。掘削土は、ダウンザホールハンマ94の駆動用エアを利用してエアリフト式に吹き上がる。吹き上げられた掘削土は、エアの流れに乗って管状杭内の排土経路を通り、管状杭6の上端開口部から噴出する。
管状杭6の上部から噴出した掘削土は、図15に矢印で示すように、管状杭上部と排土キャップ92との間の隙間を通って外部へ排出される。排土キャップ92を介して排出された掘削土は、管状杭6と飛散防止カバー96の間の隙間を通って下方へ落下する。
上記のような排土経路を確保する観点から、従来の掘削装置は、打設する管状杭と同等以上の長さのドリルロッドを具備する必要があった。
特許第3211673号公報 特許第3640371号公報 特許第3708795号公報
前述したとおり、工期短縮、施工コスト縮減、環境保全など見地から、コストと時間を最も要する桟橋支持杭や仮締切のための鋼管矢板、大規模な地すべりへの対策としての抑止杭などの杭打ち工程を削減することが求められており、そのためには、支間長(杭の打設間隔)を長くとる必要がある。すなわち、大径で長尺の杭を長支間で打ち込むことが求められている。
一方、従来技術で杭打ち施工を行う場合には、杭長に比例して掘削装置の構成長が長くなる。例えば図15に示す装置構成で60mの管状杭を打設するためには、60m以上のドリルロッドを備えた掘削装置が必要となる。すなわち、杭が長尺化すれば、その打設に用いる掘削装置(ロッド部分)も必然的に長尺化し、その結果、杭打ち施工における吊荷重量が大きくなるため、クレーンの作業半径が狭まることになる。
そうすると、従来技術で杭の大径化・長尺化のニーズに応えるためには、(1)選定するクレーンの能力・規格を大型化する、(2)支間長を縮める、などの方法で対応するほかないが、これは、工期短縮、施工コスト縮減、環境保全の要請に反する結果となる。
また、杭の大径化・長尺化のニーズに応えるためには、杭長に合わせて、より長尺のドリルロッドを備えた掘削装置を用意する必要があるが、要求されるロッド長が著しく長くなる場合には対応できず、施工そのものが不能になるおそれもある。
上述した問題点やニーズに鑑み、本発明の目的は、管状杭の打設やケーシングを利用した掘削において、施工現場の地形や環境に影響されず大径・長尺施工のニーズに柔軟に対応できる方法と装置を提供することにある。
上記目的は、重機や施工装置の搬入が困難な位置にある地盤に管状杭を打設する方法(すなわち、対象地盤から離れた遠方位置より打設する方法)において、対象地盤から離れた位置に用意した足場に導材を設け、管状杭をなすパイプ類を前記導材を介して前記対象地盤上にセットし、前記パイプ類より短尺の中掘り装置を足場上のクレーンで吊って該パイプ類に挿入し、掘削用反力を前記パイプ類にとった状態の前記中掘り装置で地盤を掘削し、前記パイプ類を貫入方向に進行させる、ことによって達成される。なお、前記パイプ類に該当する鋼管杭などの設計長が前記中掘り装置より短い場合においては、やっとこ杭を溶接などで接続しておく、また、例えば鋼管杭ならば予め設計長さに打ち込み施工に必要な仮設分長さとして所定長さの余長をプラスした長尺にして発注するなどして、少なくとも打ち込みが完了するまでの所定期間は中掘り装置よりパイプ類が長尺になるように準備しておくことで施工を達成することができる。
また上記目的は、重機や施工装置の搬入が困難な位置にある地盤に管状杭を打設する方法において、対象地盤から離れた位置に用意した足場に導材を設け、管状杭をなすパイプ類を把持するとともに該パイプ類を地盤に圧入する把持装置を、前記導材上に固定し、前記把持装置と導材を介して該把持装置の動力で前記パイプ類を地盤に貫入する、ことによって達成される。なお、この方法では、把持装置だけの動力でパイプ類を貫入してもよいし、或いは、中掘り装置を併用して貫入してもよい。
また上記目的は、クレーン吊り下げ式の中掘り装置であって、該装置をパイプ類に挿入した状態で該パイプ類に掘削用反力をとる反力確保部と、前記反力を確保した状態で対象地盤を掘削する掘削部とを有し、前記パイプ類より短く構成されている中掘り装置によって達成される。
この中掘り装置は、前記掘削部としてスクリュー式オーガ又はダウンザホールハンマを具備しており、好ましくは、掘削した土砂の格納部を具備している。
また上記目的は、パイプ類をガイドする導材に対し該装置を固定するための固定手段と、パイプ類をチャッキングするチャック手段と、前記固定関係を反力としてパイプ類を上下動させる上下駆動手段と、を有する把持装置によって達成される。
この把持装置は、例えば請求項1乃至3に記載の方法の実施において用いられる。
また、この把持装置は、好ましくは、前記固定関係を反力としてパイプ類を回転又は揺動させる回転駆動手段も有する。
また、上記方法及び装置で用いる管状杭に代えて、管状の掘削ケーシングを利用して掘削作業を行うようにしてもよい。
図11に示すように、対象地盤から離れた位置に用意した足場から杭打ち施工を行う場合、従来の方法では、杭長と同等以上の長さのドリルロッドを具備する掘削装置が必要があり、そのため、打設する杭が長尺になるほど、クレーン規格の増大と支間長の縮小を招くなどの弊害が生じていた。
これに対し、本発明の打設方法では、杭長よりも短い構成の中掘り装置を用意して、該装置全体を管状杭に挿入し、掘削用反力を管状杭にとった状態で掘削するようになっている。すなわち、杭長の変化にかかわらず重量が一定の中掘り装置を用いることが可能になるので、長尺・大径の杭を打設する場合でも、杭打ち施工におけるクレーン規格の増大を抑えることができる。
また、杭長にかかわらず中掘り装置が一定重量となれば、杭長・杭径に関係なく掘削時の吊荷重量(中掘り装置の重量)は一定となるので、杭長・杭径が増してもクレーン作業半径が狭まることはなく、そのため、支間長を縮めるといった弊害が生じることはない。すなわち、長尺・大径の杭を打設する場合でも、長支間の要請に応えることができる。
さらに、従来技術では対応不能になるおそれのあった、杭長が著しく長くなる施工の場合でも、本発明であれば確実に対応することができる。
さらに、杭長に合わせたドリルロッドを具備する必要がなくなるため、1種の中掘り装置であらゆる現場・地形での杭打ち施工に対応することが可能になるので、中掘り装置の汎用性が高まる。
よって本発明によれば、杭の大径化・長尺化のニーズに応えることができるのは勿論のこと、同時に、工期短縮、施工コスト縮減、環境保全の要請を満たすこともできる。
また、上記管状杭に代えて管状の掘削ケーシングを利用して掘削作業を行うことで、杭の直接の打込み施工だけでなく、掘削作業だけ行う工事にも広く適用できる。例えば、砂置換工や、土留め杭用のH形鋼の建て込みに先行する掘削作業において適用可能である。
また、本発明の中掘り装置によれば、管状杭に挿入された状態で該管状杭に対し反力をとる反力確保部を有しており、装置全体は管状杭の全長より短く構成されている。このような構成によれば、杭長に比例した長さのドリルロッドを具備する必要がなくなるので、杭長が変化しても中掘り装置の重量が一定となる。したがって、大径・長尺杭の管状杭施工において、クレーン規格の増大を抑えることができ、長い支間長で杭を打ち込むことが可能になる。
また、本発明の中掘り装置は、掘削部としてスクリュー式オーガを具備するので、低騒音、低振動の施工ができる。したがって例えば、市街地施工や、ダムサイトなどに多い希少動物の営巣期の施工等、低騒音・低振動での施工が求められる現場にも適用できる。
また別の態様において、本発明の中掘り装置は、掘削部としてダウンザホールハンマを具備する。これにより、上記スクリュー式オーガでの掘削が困難となる、硬質な岩盤への直接の打込みが可能になる。
また、本発明の中掘り装置は、掘削した土砂の格納部を具備している。これにより、掘削ずりの排出の際の、掘削装置のつり出し回数を抑えることができ、その結果、クレーン吊り下げ式の中掘り装置を使用する際の作業効率(掘削・排土の作業効率)が向上する。
また、本発明の把持装置によれば、チャッキングした管状杭を上下動できるので、杭長が長い場合でも鉛直精度を確実に保持できる。また、中掘り装置による掘削の進行にあわせて、管状杭や掘削ケーシングを地盤に圧入することができる。さらに、中掘りが不要な地盤(例えば軟弱地盤や土丹、風化岩など)では、中掘り装置による掘削を省き、把持装置の動力だけで管状杭や掘削ケーシングを地盤に圧入することもできる。中掘りを行わない場合には、無排土でパイプ類を打ち込むことができ環境に配慮した施工が可能となる。
また、本発明の把持装置によれば、上下駆動手段により管状杭を圧入すると同時に回転駆動手段を作動させることで、管状杭の回転圧入が可能になり、管状杭の圧入抵抗を軽減できる。また、管状杭の先端に予め切削ビットを設けておくことで、スクリュー式オーガ付き中掘り装置による低騒音、低振動の施工を行う際に、管状杭を回転切削圧入することが可能になる。更に中掘りを行わない場合には、無排土で管状杭を打ち込むことができ、環境に配慮した施工が可能となる。
本発明を利用した杭打ち施工の一例を示す図である。 把持装置を導材に固定した状態を示す図である。 第1実施形態の中掘り装置の構成と伸縮動作を示す図である。 図3の中掘り装置のV−V線に沿った断面図であって、圧着体を引っ込ませた状態を示している。 第1実施形態の中掘り装置を用いた杭打ち施工を示す図である。 管状杭の建て込み方法の別の例を示す図である。 先端に切削ビットを備えた管状杭を示す図である。 第2実施形態の中掘り装置を示す図である。 第2実施形態の中掘り装置の機能作用を示す図である。 第2実施形態の中掘り装置を用いた杭打ち施工を示す図である。 従来の杭打ち施工を示す図である。 桟橋施工で用いる桟橋パネルを示す平面図である。 桟橋施工の一工程を例示する斜視図であって、図12に示す桟橋パネルをクレーンで設計位置に運搬している様子を示している。 図13の次工程を示す斜視図であって、片持ち状に延設した桟橋パネルをガイドに利用し、橋脚をなす管状杭を打ち込んでいる様子を示している。 従来の掘削装置を示す図である。
(本発明の概要)
はじめに本発明の概要を説明する。
本発明は、重機の進入や装置の搬入が困難な地盤での杭打ち施工や掘削施工に用いられ、例えば、深い峡谷やダムサイト、急峻な山岳地帯などの施工現場で好適に用いられる。図1は、本発明の実施形態の一例であって、ダムサイトでの桟橋施工において管状杭(支持杭)を打設している様子を示している。
図1に示す実施形態では、対象地盤から離れた位置に機械足場12を用意して、該足場に導材13を延設している。機械足場12は、既打設の管状杭5,5…によって支持された桟橋パネルから構成されており、該足場上には、図示するようにクレーンが用意されている。機械足場12から片持ち状に張り出した導材13は、後に機械足場の一部となる桟橋パネルであって、メインフレーム14と筒状の杭ガイド16を有している(図12参照)。
従来のような手順(図13参照)で導材13の延設が完了したら、管状杭6を把持するための把持装置3を、導材13の杭ガイド16の上に固定する。次に、図1に示すように管状杭6を把持装置3及び導材13に通して対象地盤上に建て込み、杭心にセットする。続いて、中掘り装置1を足場12上のクレーンで吊り込み、該中掘り装置を落下させることなく管状杭6内に挿入する。本発明で用いる中掘り装置1は、掘削で生じる土砂の格納部を具備しており、打設する管状杭6の全長よりも短尺となるように構成されている。
機械足場12上のクレーンのワイヤロープを繰り出し、管状杭6内に挿入した中掘り装置1の先端ビットが地盤に着地したら、把持装置3の上下駆動手段を作動させて管状杭6の圧入を開始する。管状杭を所定長さ圧入したら圧入動作を一旦停止し、中掘り装置1の反力確保部を作動させて、装置自身を管状杭6に固定させる。なお、管状杭6の上部は、導材13に固定された把持装置3によってグリップされている。続いて、掘削用反力を管状杭6(圧入停止状態)にとった状態の中掘り装置1で地盤を掘削し、該中掘り装置の土砂格納部が一杯になったら、管状杭6から抜き出して排土する。
以後、次の(1)〜(4)の一連の手順を繰り返して目標深度に至るまで管状杭を打ち込む。
(1) 導材13に固定した把持装置3を作動させて、管状杭6を圧入する。
(2) 圧入を一旦停止して、中掘り装置1の土砂格納部が一杯になるまで掘削を続ける。
(3) 中掘り装置1の土砂格納部が一杯になったら、管状杭6から抜き出して排土する。
(4) 再び中掘り装置1を管状杭6に挿入する。
なお上記順序は一例であって、管状杭を圧入するタイミングや、中掘り装置で掘削を行うタイミングは特に限定されず、施工機材や地盤条件などに応じて適宜変更可能である。例えば、先行して把持装置で管状杭を圧入し、これに続いて中掘り装置で掘削を行ってもよく、或いは、先行して中掘り装置で掘削を行い、これに続いて把持装置で管状杭を圧入するようにしてもよい。
また、中掘り装置と把持装置は必ずしも併用する必要はなく、地盤によっては(例えば軟弱地盤や土丹、風化岩など)、中掘り装置による掘削を省略して、把持装置の動力だけで管状杭を圧入するようにしてもよい。
以下、本発明で用いる各装置の構成について具体的に説明する。
(把持装置)
図2に基づいて把持装置の構成を説明する。
図2は、延設した導材13が具備する杭ガイド16の上に、把持装置3をボルトで固定した状態を示している。
把持装置3は、該装置自身を導材13の杭ガイド16に固定するための固定部31と、打設する管状杭6をチャッキングするチャック装置33と、チャッキングした管状杭6を上下動させる上下駆動装置35と、上下動の際に管状杭6を回転又は揺動させる回転駆動装置37を有している。
チャック装置33は、打設する管状杭6をチャッキングして固定する役割を担っている。上下駆動装置35は、主として、チャッキングした管状杭6を地盤内に圧入する役割を担っている。また、管状杭6を圧入している間に適当なタイミングで上下動させて、鉛直性を確保するなどの役割も担っている。
回転駆動装置37は、上下駆動装置35を作動させている間、管状杭6を回転又は揺動させる役割を担っている。
固定部31は、フランジ付きパイプとボルトから構成されている。フランジ付きパイプを杭ガイド16の上に載せた状態で、ボルトで固定する。これにより、上下駆動及び回転駆動の反力が、延設状態の導材13に確保される。また、把持装置3を導材13に固定することで、後述する中掘り装置で回転掘削を行う際に管状杭6の共回りが防止される。
なお、固定部31の構成は、取り外し可能であって上記反力を確保できるものであれば特に限定されず、ボルト以外の固定手段を採用することも可能である。
上記構成の把持装置は、後述するように中掘り装置を併用した管状杭の打設に用いることができ、また、把持装置単独利用での管状杭の打設に用いることもできる。さらに、中掘り装置を併用したケーシング掘削に用いることができ、また、把持装置単独利用でのケーシング圧入に用いることもできる。
(中掘り装置)
図3及び図4に基づいて、第1実施形態に係る中掘り装置の構成を説明する。
図3(A)(B)は、中掘り装置の構成と伸縮動作を示している。
図4は、図3のV−V線に沿った断面図である。
中掘り装置1は、スイベルが連結される吊り下げ部21と、掘削用反力を確保する反力確保部23と、その下方の地盤を掘削する掘削部25と、伸縮自在に構成された反力伝達部(内管27と外管28からなる略二重管構造)とを含んで構成されている。この中掘り装置1は、クレーン吊り下げ式の掘削装置であって、管状杭6を打設するに際し該管状杭の内側に挿入した状態で掘削するために用いられる。
吊り下げ部21には、クレーンからのワイヤロープに繋がったスイベルが連結される。
反力確保部23は、ピストンロッドの先端が掘削部25に連結された油圧シリンダ24と、管状杭6の内壁に対し反力をとるための複数の圧着装置40とを含んで構成されている。複数の圧着装置は、図4の断面図に示すように、油圧シリンダ24を囲むように配置されている。各圧着装置40は、圧着体41と楔体43と油圧シリンダ45を有している。
圧着装置の圧着体41は進退動可能に設けられ、中掘り装置1が管状杭6の内側に挿入された状態で該管状杭の内壁面に対し圧着される。これにより、掘削部25での掘削用反力(回転駆動装置22の回転反力,油圧シリンダ24の圧入反力)が管状杭6に支持される。
掘削部25は、螺旋状のフィン47を備えたオーガースクリュー48と、該スクリューを回転させる回転駆動装置22と、該スクリューを囲繞するように設けられた土砂格納部26とを含んで構成されている。
筒状部材からなる土砂格納部26は、オーガースクリュー48のフィン47を囲繞し、下端側に開口部を有するように設けられている。土砂格納部26の内側では、オーガースクリュー48が自在に正逆回転可能である。オーガースクリューのフィン47によりリフトアップされてきた土砂は、格納部26の内側に収容され、その後はフィン47によって該格納部内に閉じ込められる。なお、格納部26は、反力確保部23の油圧シリンダ24の伸長する長さよりも長尺である。
上記構成の反力確保部23と掘削部25は、反力確保部側に固設された油圧シリンダ24によって相互連結されている。
反力伝達部(嵌合部材)は、図4の断面図に示すように、断面角形の内管27と、同じく断面角形の外管28からなる二重管構造で構成されている。図3(B)に示すように、外管28は反力確保部23の側に固設され、内管27は掘削部25の上端に固設されている。このような構成の反力伝達部材27,28は、油圧シリンダ24の伸縮動作に従って自在に伸縮する一方で、反力確保部23で確保した回転反力を掘削部25において利用できるようにしている。
上記構成の中掘り装置1は、掘削土を自身で保持しながら掘進する。具体的には、反力確保部23で反力を確保した状態で、図3(B)に示すように油圧シリンダ24を作動させて、オーガースクリュー48の先端ビットに押し込み作用を与る。同時に、回転駆動装置22でオーガースクリュー48を回転させてその先端ビットで対象地盤を回転掘削する。掘削により生じた土砂は、オーガースクリュー48でリフトアップされて、該スクリューを囲う土砂格納部26に収容される。
(桟橋施工での管状杭の打設)
次に、図5に示す工程a〜fを参照しながら、上述した把持装置及び中掘り装置を用いた桟橋施工の一例について説明する。図5は、図1に例示する桟橋施工において管状杭を打設する際の手順を具体的に示している。
1.工程a
はじめに、図1に示すように機械足場に用意したクレーンを使って、桟橋パネルからなる導材13を該機械足場に対し片持ち状に延設する。導材13の先端には、管状杭を地盤へガイドする杭ガイド16(ガイドパイプ)が設けられている。
2.工程b
次に、足場上のクレーンで吊り込んだ把持装置3を、延設した導材13の杭ガイド16の上に固定する。これにより、片持ち状態の導材13と把持装置3が一体化する。
3.工程c
次に、鋼管(杭材)を必要本数継ぎ足してなる管状杭6を、足場上のクレーンで吊って把持装置3及び導材13に通し、打設予定位置の地盤上に建て込む。管状杭6の先端には予め図7に示すような切削ビット7を固設しておく。
なお、管状杭6の建て込みに先立って鋼管の連結作業を済ませておいてもよいが、管状杭の全長が長い場合には、鋼管を継ぎ足しながら導材13に管状杭を通すようにしてもよい。例えば図6に示すように、(c1)把持装置3及び杭ガイド16に鋼管8を通して把持し、(c2)把持した該鋼管8の上部に別の鋼管を継ぎ足し、(c3)さらに別の鋼管を継ぎ足し、以後同様に鋼管の連結を繰り返して管状杭6を建て込んでもよい(c4)。また、図6に示す連結作業時の鋼管6,6…の荷重(杭ガイド16に通した鋼管6,6…の荷重)は、吊りピースなどを用いて導材13に預けるようにしてもよい。
上記手順で、管状杭6を把持装置3及び導材13に通して地盤上に建て込み、杭心にセットする。続いて、導材上の把持装置3で管状杭6を把持したまま次工程に進む。
4.工程d,e
図1に示すように中掘り装置1を機械足場上のクレーンで吊り込んで、鉛直にセットされた管状杭6の内側に挿入し、ワイヤロープを繰り出して該装置を落下させることなく降下させる。
中掘り装置1の先端ビットが杭底の地盤に着地したら、把持装置3の上下駆動装置を作動させて管状杭6を圧入し、同時に、その回転駆動装置を作動させて該管状杭先端の切削ビットで回転切削を行う。この間、管状杭6が杭心ずれを起こさないように、適当なタイミングで該管状杭を上下動させる。すなわち、圧入途中における管状杭6の引き抜きを繰り返しながら、目標深度まで打ち込むようにする。このように上下動を繰り返しながら圧入することで、管状杭6の鉛直性が確保されるとともに、圧入抵抗も軽減される。
管状杭6を所定長さ圧入したら圧入動作及び回転切削動作を一旦停止して、中掘り装置1の反力確保部の圧着体を管状杭6の内壁面に対し圧着させ、中掘り装置1の回転反力及び圧入反力を該管状杭に支持させる。なお、管状杭6の上部は、導材13に固定された把持装置3によって把持されている。したがって、中掘り装置1で回転掘削を行っても管状杭6が共回りしたり持ち上がることはない。
次に、圧入停止中の管状杭6に反力をとった状態で、図3(B)に示すように油圧シリンダ24を伸長させて掘削部25を突き出して、オーガースクリュー48の先端ビットに押し込み作用を与える。同時に、掘削部25の回転駆動装置22でオーガースクリュー48を回転させてその先端ビットで対象地盤を回転掘削する。掘削により生じた土砂は、そのフィン47でリフトアップされて、該スクリューを囲う土砂格納部26の内側に収容される。
以後は次の一連の手順(1)〜(4)を繰り返し、中掘り装置1の土砂格納部の容量が一杯になるまで中掘りを続ける。
(1) 図3に示す油圧シリンダ24を伸長させて掘削部25を掘進させた後、
管状杭6に対する圧着固定状態を解除する。
(2) 非圧着状態で油圧シリンダ24を縮退させて反力確保部23を降下させる。
(3) 降下した反力確保部23を管状杭6に再固定させて反力を確保する。
(4) 反力確保部23の油圧シリンダ24を伸長させて掘削部25を掘進させる。
なお、上記手順において中掘り装置1の圧着固定を解除している間、把持装置3の上下駆動装置を作動させて管状杭6を圧入し、同時に、その回転駆動装置を作動させて該管状杭先端の切削ビットで回転切削を行うようにしてもよい。
また、上述した手順では、先行して管状杭を圧入し、これに続いて中掘り掘削を行っているが、これとは逆に、先行して中掘り掘削を行い、続いて管状杭を圧入するようにしてもよい。また、後者の場合における管状杭の圧入は、本工程に限らず、後工程fで(すなわち、排土のために中掘り装置1を引き上げている間に)行うようにしてもよい。
5.工程f
中掘り装置1の土砂格納部の容量が一杯になったら、中掘り装置の圧着固定状態を解除して該装置を引上げて、管状杭6から抜き出す。続いて管状杭6の外でオーガースクリューを逆回転させて、その格納部内に収納された土砂を外部へ排出する。
6.工程d,e,fの繰り返し
管状杭6の根入れが目標深度に達するまで、上述した杭内への挿入(工程d)、圧入・中掘り掘削(工程e)、杭外での排土(工程f)を、繰り返す。
なお、図5に示す実施形態では中掘り装置と把持装置を併用しているが、把持装置の回転圧入力だけで管状杭を圧入可能な地盤(例えば軟弱地盤や土丹、風化岩など)である場合には、必ずしも中掘り装置を併用する必要はなく、例えば把持装置の回転圧入力だけで管状杭を打設するようにしてもよい。また、基本的に把持装置の回転圧入力だけで管状杭を打設するとともに、貫入抵抗が過大になったときに必要であれば中掘り装置を導入して回転圧入を補助させることも可能である。
(第2実施形態に係る中掘り装置)
第2実施形態の中掘り装置を図8に示し、その機能作用の概要を図9に示す。
中掘り装置2は、クレーン吊り下げ式の掘削装置であって、管状杭を打設するに際し該管状杭の内側に挿入して掘削するために用いられる。
中掘り装置2は、スイベルが連結される吊り下げ部21と、掘削用反力を確保する反力確保部23と、その下方の地盤を掘削する掘削部60と、伸縮自在に構成された反力伝達部(内管27と外管28からなる略二重管構造)と、を含んで構成されている。
掘削部60以外の構成は、第1実施形態と同様の構成であり、説明を省略する。
以下、掘削部60の構成について説明する。
掘削部60は、先端に掘削ビット72を備えたドリルロッド62と、該ドリルロッドを回転駆動する回転駆動装置63と、掘削で生じた土砂を格納する格納部64を有している。
ドリルロッド62は、ダウンザホールハンマ71と、その先端に設けられた掘削ビット72と、ダウンザホールハンマ71を回転駆動装置63に連結する駆動シャフト73とを有している。ダウンザホールハンマ71の上端中央から延出する駆動シャフト73は、筒状の土砂格納部64の内側を通って、回転駆動装置63に連結している。また、ダウンザホールハンマ71の上端部には、土砂格納部64が載置されている。
ダウンザホールハンマ71は、打撃力発生用のピストンを内部に備えている。ダウンザホールハンマ71の上端中央には駆動シャフト73が固設されており、該シャフトは回転駆動装置63に作動可能に連結されている。一方、ダウンザホールハンマ71の先端には、地盤を掘削するための掘削ビット72が設けられている。
筒状の土砂格納部64は、固定されておらず、ダウンザホールハンマ71の上端部に載置されている。土砂格納部64の上下はいずれも開口しているが、図8に示すように載置された状態では、下開口部はダウンザホールハンマ71の上端部によって閉塞されている。一方、上開口部は閉塞されておらず、土砂格納部64の上開口部と回転駆動装置63との間には空間が広がっている。土砂格納部64の上開口部、下開口部は、それぞれ、土砂取り込み口、土砂排出口として機能する。
土砂格納部64の内壁と駆動シャフト73との間は、土砂格納空間となっている。掘削によって生じる掘削土は、図9(A)に矢印で示すように、ドリルロッド62と管状杭6との間の隙間を通って吹き上がり、更に回転駆動装置63と土砂格納部64との間の空間を通って、該格納部内に収容される。土砂格納部64の下開口部は閉塞状態にあるので、格納された土砂が下から漏れ落ちることはない。
土砂格納部64から排土するときには、中掘り装置2を吊り上げて管状杭6の外に抜き出し、重機等を使って図9(B)に示すように土砂格納部64を持ち上げる。土砂格納部64の下開口部をダウンザホールハンマ71の上端から引き離すと、格納部内の土砂がその下開口部から落下して、中掘り装置の外へ排出される。続いて、持ち上げていた土砂格納部64を離すと、該格納部が自重で落下し、再び図8に示すようにダウンザホールハンマ71の上部に載置される。
なお、土砂格納部64を有する装置構成により、従来の図15に示す掘削装置9と管状杭6で施工を行う際のようにエアリフト式に掘削土を長尺の管状杭6の上端開口部から噴出させ排土することが不要となり、供給するエア量を低減することもでき、その結果、水中施工(特にダム湖などの大水深の施工)の際には、これまで掘削土とともにエアで吹き上げられていた大量の濁水の発生と拡散が抑制される。
(第2実施形態の中掘り装置を用いた管状杭の打設)
次に、図10を参照しながら、上述した第2実施形態の中掘り装置を用いた桟橋施工の一例について説明する。
1.工程a
はじめに、図1に示すように機械足場に用意したクレーンを使って、桟橋パネルからなる導材13を該機械足場に対し片持ち状に延設する。導材13の先端には、管状杭を地盤へガイドする杭ガイド16(ガイドパイプ)が設けられている。
2.工程b
次に、足場上のクレーンで吊り込んだ把持装置3を、延設した導材13の杭ガイド16の上に固定する。これにより、片持ち状態の導材13と把持装置3が一体化する。
3.工程c
次に、鋼管(杭材)を必要本数継ぎ足してなる管状杭6を、足場上のクレーンで吊って把持装置3及び導材13に通し、打設予定位置の地盤上に建て込む。管状杭6を杭心にセットしたら、導材上の把持装置3で該管状杭を把持したまま次工程に進む。
4.工程d,e
図1に示すように中掘り装置2を機械足場上のクレーンで吊り込んで、鉛直にセットされた管状杭6の内側に挿入し、ワイヤロープを繰り出して該装置を落下させることなく降下させる。中掘り装置2の先端ビットが着地したら、その反力確保部の圧着体を管状杭6の内壁面に対し圧着させる。
反力確保部の圧着体が管状杭6に圧着すると、中掘り装置2の回転反力及び圧入反力が該管状杭に支持される。この管状杭6の上部は、導材13に固定された把持装置3によって把持されている。したがって、中掘り装置2で回転掘削を行っても、管状杭6が共回りしたり持ち上がることはない。
次に、管状杭6に反力をとった状態で、図9(A)に示すように油圧シリンダ24を伸長させて掘削部60を突き出して、ドリルロッド62の先端ビットに押し込み作用を与える。同時に、ダウンザホールハンマ71による連続的打撃を加えながら、掘削部60の回転駆動装置63でドリルロッド62を回転させて対象地盤を掘削する。
掘削で生じた土砂は、ダウンザホールハンマ71の駆動用エアを利用してエアリフト式に吹き上がる。吹き上げられた土砂は、エアの流れに乗って管状杭内の排土経路(詳細には、ドリルロッド62と管状杭6との間の隙間から成る排土経路)を通って上昇し、図9(A)に示すように筒状格納部64の上開口部を通ってその内側に収容される。なお、図15に示す従来構成の如く掘削土を管状杭6の上端開口部まで噴き上げる必要がないので、供給するエア量は従来に比べて大幅に低減できる。
以降は次の一連の手順(1)〜(4)を繰り返し、中掘り装置2の土砂格納部の容量が一杯になるまで中掘り続ける。
(1) 図9(A)に示すように油圧シリンダ24を伸長させて掘削部60を掘進させた後、
管状杭6に対する圧着固定状態を解除する。
(2) 非圧着状態で油圧シリンダ24を縮退させて反力確保部23を降下させる。
(3) 降下した反力確保部23を管状杭6に再固定させて反力を確保する。
(4) 反力確保部23の油圧シリンダ24を伸長させて掘削部60を掘進させる。
また、中掘り装置2の圧着固定を解除している間、把持装置3の上下駆動装置を作動させて管状杭6を圧入する。この間、管状杭6が杭心ずれを起こさないように、適当なタイミングで管状杭を上下動させる。すなわち、圧入途中における管状杭6の引き抜きを繰り返しながら、目標深度まで打ち込むようにする。このように上下動を繰り返しながら圧入することで、管状杭6の鉛直性が確保されるとともに、圧入抵抗も軽減される。
なお、ドリルロッド62の先端に拡縮可能な拡径ビットを設け、管状杭6に出し入れするときには縮径状態(管状杭の内径よりも小さな径)にセットし、掘削の間は、管状杭6の先端から突き出して拡径状態(管状杭の外径よりも大きな径)にセットするようにしてもよい。
5.工程f
中掘り装置2の土砂格納部の容量が一杯になったら、中掘り装置の圧着固定状態を解除して該装置を引上げて、管状杭6から抜き出す。続いて図9(B)に示すように、重機等で筒状格納部64を持ち上げて、該格納部の下端とダウンザホールハンマ71の上端との間にあいた隙間から土砂を排出する。
6.工程d,e,fの繰り返し
管状杭6の根入れが目標深度に達するまで、上述した杭内への挿入(工程d)、中掘り掘削・圧入(工程e)、杭外での排土(工程f)を、繰り返す。
なお、図10に示す実施形態では中掘り装置と把持装置を併用しているが、把持装置の回転圧入力だけで管状杭を圧入可能な地盤(例えば軟弱地盤や土丹、風化岩など)である場合には、必ずしも中掘り装置を併用する必要はなく、例えば把持装置の回転圧入力だけで管状杭を打設するようにしてもよい。また、基本的に把持装置の回転圧入力だけで管状杭を打設するとともに、貫入抵抗が過大になったときに必要であれば中掘り装置を導入して回転圧入を補助させることも可能である。
(他の実施形態)
上述した実施形態では、本発明を桟橋施工における杭打ちに適用する場合を例示したが、本発明の実施形態はこれに限定されない。
例えば、管状杭に代えて、管状の掘削ケーシングを利用して掘削作業を行うこともできる。すなわち、本発明は、杭の打設を伴わない掘削施工で利用することも可能である。なお、そのような掘削施工の実施態様の外観は、図5や図10に示す杭打ち施工と同様であるので(ただし、施工に用いるパイプ類が管状杭から掘削ケーシングに変わる)、詳細な説明および図示を省略する。
また、本発明は桟橋施工における支持杭の打設に限らず、斜面上の抑止杭や土留め杭、あるいは河川・ダム・港湾部締切用の鋼管矢板壁などの打設に利用することもできる。
1 中掘り装置(第1実施形態)
2 中掘り装置(第2実施形態)
3 把持装置(回転圧入装置)
5 既打設の管状杭
6 管状杭(支持杭)
7 切削ビット
8 鋼管(杭材)
9 掘削装置(従来装置)
12 機械足場
13 導材/桟橋パネル
14 メインフレーム
15 ガイドフレーム
16 杭ガイド(ガイドパイプ)
17 連結部材
18 連結金具
19 挿通孔
21 吊り下げ部
22 回転駆動装置
23 反力確保部
24 油圧シリンダ
25 掘削部
26 土砂格納部
27 内管(反力伝達部材)
28 外管(反力伝達部材)
31 固定部(固定手段)
33 チャック装置(チャック手段)
35 上下駆動装置(上下駆動手段)
37 回転駆動装置(回転駆動手段)
40 圧着装置
41 圧着体
43 楔体
45 油圧シリンダ
47 フィン
48 オーガースクリュー
60 掘削部
62 ドリルロッド
63 回転駆動装置
64 土砂格納部
71 ダウンザホールハンマ
72 掘削ビット
73 駆動シャフト
91 回転駆動装置
92 排土キャップ
93 ドリルロッド
94 ダウンザホールハンマ
95 掘削ビット
96 飛散防止カバー

Claims (8)

  1. 地盤に管状杭を打設する方法において、
    対象地盤から離れた位置に用意した足場に導材を設け、
    管状杭を把持するとともに該管状杭を地盤に圧入する把持装置を、前記導材に固定し、
    掘削を行うことなく、前記把持装置と導材を介して該把持装置の動力で前記管状杭を地盤に貫入させる、ことを特徴とする管状杭の打設方法。
  2. 地盤に管状杭を打設する方法において、
    対象地盤から離れた位置に用意した足場に導材を設け、
    管状杭を把持するとともに該管状杭を地盤に圧入する把持装置を、前記導材に固定し、
    管状杭を前記導材を介して対象地盤上にセットし、
    前記管状杭より短尺であって、杭長にかかわらず重量が一定の中掘り装置を該管状杭に挿入し、
    回転駆動式の掘削部を具備する前記中掘り装置で地盤を掘削し、
    前記把持装置と導材を介して前記把持装置の動力で前記管状杭を地盤に貫入させる、ことを特徴とする管状杭の打設方法。
  3. 中掘り装置を管状杭に挿入した状態で該管状杭に掘削用反力をとる反力確保部と、
    スクリュー式オーガまたはダウンザホールハンマを具備し、前記反力を確保した状態で対象地盤を掘削する掘削部と、を有し、
    前記管状杭より短く構成されていることを特徴とするクレーン吊り下げ式の中掘り装置を用いる方法であって、
    対象地盤から離れた位置に用意した足場に導材を設け、
    管状杭を把持するとともに該管状杭を地盤に圧入する把持装置を、前記導材に固定し、
    管状杭を前記導材を介して対象地盤上にセットし、
    前記管状杭より短尺であって、杭長にかかわらず重量が一定の中掘り装置を該管状杭に挿入し、
    回転駆動式の掘削部を具備する前記中掘り装置で地盤を掘削し、
    前記把持装置と導材を介して前記把持装置の動力で前記管状杭を地盤に貫入させる、ことを特徴とする管状杭の打設方法。
  4. 把持装置を固定して打設用反力を確保するための固定手段と、
    管状杭をチャッキングするチャック手段と、
    前記固定関係を反力として管状杭を上下動させる上下駆動手段と、を有することを特徴とする把持装置を用いる方法であって、
    対象地盤から離れた位置に用意した足場に導材を設け、
    管状杭を把持するとともに該管状杭を地盤に圧入する把持装置を、前記導材に固定し、
    管状杭を前記導材を介して対象地盤上にセットし、
    前記管状杭より短尺であって、杭長にかかわらず重量が一定の中掘り装置を該管状杭に挿入し、
    回転駆動式の掘削部を具備する前記中掘り装置で地盤を掘削し、
    前記把持装置と導材を介して前記把持装置の動力で前記管状杭を地盤に貫入させる、ことを特徴とする管状杭の打設方法。
  5. 足場から片持ち状に張り出すことを特徴とする導材を用いる方法であって、
    対象地盤から離れた位置に用意した足場に導材を設け、
    管状杭を把持するとともに該管状杭を地盤に圧入する把持装置を、前記導材に固定し、
    管状杭を前記導材を介して対象地盤上にセットし、
    前記管状杭より短尺であって、杭長にかかわらず重量が一定の中掘り装置を該管状杭に挿入し、
    回転駆動式の掘削部を具備する前記中掘り装置で地盤を掘削し、
    前記把持装置と導材を介して前記把持装置の動力で前記管状杭を地盤に貫入させる、ことを特徴とする管状杭の打設方法。
  6. 橋の構造の一部となることを特徴とする導材を用いる方法であって、
    対象地盤から離れた位置に用意した足場に導材を設け、
    管状杭を把持するとともに該管状杭を地盤に圧入する把持装置を、前記導材に固定し、
    管状杭を前記導材を介して対象地盤上にセットし、
    前記管状杭より短尺であって、杭長にかかわらず重量が一定の中掘り装置を該管状杭に挿入し、
    回転駆動式の掘削部を具備する前記中掘り装置で地盤を掘削し、
    前記把持装置と導材を介して前記把持装置の動力で前記管状杭を地盤に貫入させる、ことを特徴とする管状杭の打設方法。
  7. 前記中掘り装置が、掘削した土砂の格納部を具備することを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載の管状杭の打設方法。
  8. 前記把持装置が、前記固定関係を反力として管状杭を回転又は揺動させる回転駆動手段を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の管状杭の打設方法。
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