JP6312363B2 - 合成開口レーダ装置 - Google Patents
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Description
この合成開口レーダ装置では、2つのアンテナ開口で受信された信号を用いて、合成開口レーダ画像をそれぞれ再生するとともに、2つの合成開口レーダ画像の位置合わせを実施してから、2つの合成開口レーダ画像の複素振幅の差分あるいは位相差を算出することで、差分画像や位相差画像を生成している。
これら2つの画像は、若干の時間差をつけて同じ場所で観測された2枚の画像と理解することができる。
したがって、静止目標の信号は、2つの画像で一致するため、差分画像内では、静止目標からの信号の振幅が抑圧される。また、位相差画像内では、静止目標からの信号については位相差がほぼゼロになる。
一方、移動目標は、2つの画像の観測時刻で位置がずれるため、差分画像内では、移動目標からの信号の振幅が抑圧されない。また、位相差画像内では、移動目標の位置ずれに対応する位相差が発生している。
また、移動目標の信号が存在する画素における位相差の値を用いて、移動目標の速度(レンジ方向の速度)を推定するようにしている。
ただし、移動目標の信号が存在する画素における位相差の値を用いて、移動目標の速度を推定する方式では、背景のクラッタの影響で、推定精度が大きく劣化することがある。
また、この方式では、低速の移動目標に対応するために、アンテナ開口間の距離(基線長)を長く設定すると、速度のアンビギュイティ(不定性)が発生することが知られている。
この合成開口レーダ装置では、3つ以上のアンテナ開口で受信された信号に対して、時空間フィルタを適用することで、移動目標を検出する方式を採用している。
この方式を採用する場合、移動目標の検出性能や速度推定精度が高くなるが、演算量が増大することが知られている。
また、3つ以上のアンテナ開口を用いる場合、移動目標の検出性能や速度推定精度が高くなるが、演算量が増大する課題があった。
図1はこの発明の実施の形態1による合成開口レーダ装置を示す構成図である。
図1では、説明の簡単化のために、アンテナ開口数Naが3個である合成開口レーダ装置を説明するが、アンテナ開口数Naは3個以上であればよく、アンテナ開口数Naが3個に限るものではない。
図1において、送信機1はパルス信号を生成する装置である。
送受切換器2は送信機1により生成されたパルス信号を送受信アンテナ3aに出力する一方、送受信アンテナ3aから入射された信号を受信機4aに出力する切換装置である。
プラットフォームとしては、例えば、航空機、人工衛星や車両などの移動体を想定しているが、このような移動体に限るものではない。
送受信アンテナ3a及び受信アンテナ3b,3cは、必ずしも同一のプラットフォームに搭載されている必要はなく、別々のプラットフォームに搭載されていても構わないが、その場合には、各々のプラットフォームは同じ軌道を進行方向に一列に並んで移動する必要がある。
送受信アンテナ3a及び受信アンテナ3b,3cは、送受信アンテナ3aからパルス信号が空間に放射された後、観測対象によって散乱された上記パルス信号の散乱波を入射する。図1の例では、上述したように、送受信アンテナ3a及び受信アンテナ3b,3cによるアンテナ開口数Naは3個である。
受信機4aは送受信アンテナ3aから入射された信号を受信し、その受信信号に対する位相検波処理やA/D変換処理を実施することで、その受信信号の振幅と位相を示すデジタル受信信号をSAR画像再生部6aに出力する装置である。
受信機4b,4cは受信アンテナ3b,3cから入射された信号を受信し、その受信信号に対する位相検波処理やA/D変換処理を実施することで、その受信信号の振幅と位相を示すデジタル受信信号をSAR画像再生部6b,6cに出力する装置である。
図1では、受信機4の台数が3台である例を示しているが、受信機4の台数はアンテナ3の本数よりも少なくても構わない。その場合には、スイッチを介して、1つの受信機4を複数のアンテナ3と接続し、パルス信号の送受信毎にスイッチを切り替えることで、複数の開口で信号を受信するようにすればよい。
SAR画像再生部6a,6b,6cは例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、プラットフォーム運動計測部5により計測されたプラットフォームの位置及び速度を用いて、受信機4a,4b,4cから出力されたデジタル受信信号から合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)画像(1)〜(3)を再生する処理を実施する。なお、SAR画像再生部6a,6b,6cは合成開口レーダ画像再生手段を構成している。
位相補償部8は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、レジストレーション部7によりずれ量が補償された3つのSAR画像(1)〜(3)間の位相差を補償する処理を実施する。
振幅補償部9は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、位相補償部8により位相差が補償された3つのSAR画像(1)〜(3)間の振幅差を補償する処理を実施する。
移動目標速度推定部11は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、クラッタ抑圧部10によりクラッタが抑圧された3つのSAR画像(1)〜(3)の中から、2つのSAR画像の組をそれぞれ選択して、各々の組毎に、2つのSAR画像間の干渉処理であるATI処理を実施し、3つのATI処理結果からLOS方向(視線方向)の移動目標の速度を推定する処理を実施する。なお、移動目標速度推定部11は移動目標速度推定手段を構成している。
例えば、SAR画像再生部6a,6b,6c、レジストレーション部7、位相補償部8、振幅補償部9、クラッタ抑圧部10及び移動目標速度推定部11がコンピュータで構成されている場合、SAR画像再生部6a,6b,6c、レジストレーション部7、位相補償部8、振幅補償部9、クラッタ抑圧部10及び移動目標速度推定部11の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
図2において、ATI処理部11aはクラッタ抑圧部10によりクラッタが抑圧された3つのSAR画像(1)〜(3)のうち、SAR画像(1)とSAR画像(2)を入力し、SAR画像(1)とSAR画像(2)の間の干渉処理であるATI処理を実施する。
ATI処理部11bはクラッタ抑圧部10によりクラッタが抑圧された3つのSAR画像(1)〜(3)のうち、SAR画像(1)とSAR画像(3)を入力し、SAR画像(1)とSAR画像(3)の間の干渉処理であるATI処理を実施する。
ATI処理部11cはクラッタ抑圧部10によりクラッタが抑圧された3つのSAR画像(1)〜(3)のうち、SAR画像(2)とSAR画像(3)を入力し、SAR画像(2)とSAR画像(3)の間の干渉処理であるATI処理を実施する。
以下、図3を参照して、合成開口レーダ装置の観測信号について説明する。
図3では、送受信アンテナ3aと受信アンテナ3b間の距離がLab、送受信アンテナ3aと受信アンテナ3c間の距離がLacである。θはオフナディア角、Vplfはプラットフォームの速度である。
各々のアンテナ3から入射された信号を用いてSAR画像(1)〜(3)を再生し、位置合わせ後のSAR画像(1)〜(3)の信号をz1(τ,η)、z2(τ,η)、z3(τ,η)とする。
レンジ方向の距離r[m]及びアジマス方向の距離a[m]と、レンジ方向軸の時間τ、アジマス方向軸の時間ηとは、下記の式(1)の関係を満足する。
ただし、cは光速である。
ここでは、Na個のアンテナに入射された信号を用いて再生されたSAR画像を一般化して表現するために、q=1,2,・・・,Naとしている。
このとき、zq[m,n]は、下記の式(2)によって定義される。
式(2)において、mはレンジ方向の画素番号であり、m=1,2,・・・,Mの値をとる。nはアジマス方向の画素番号であり、n=1,2,・・・,Nの値をとる。
また、Mはレンジ方向の画素数であり、Nはアジマス方向の画素数である。
式(3)では、受信信号z1[m,n],・・・,zNa[m,n]をまとめてベクトル形式で表現している。
また、s1[m,n],・・・,sNa[m,n]は移動目標からの信号であり、u1[m,n],・・・,uNa[m,n]は静止目標からの信号である。
w1[m,n],・・・,eNa[m,n]は雑音である。
一方、移動目標からの信号については、各アンテナ3に入射された信号を用いて再生されたSAR画像の観測時刻が若干異なるため、その観測時刻差の間に移動目標が動いた距離分の位相差が発生する。
そのため、s1[m,n],・・・,sNa[m,n]の間には、下記の式(5)の関係を満足する。
式(5)において、Vtgtは移動目標のグランドレンジ方向の速度であり、θは入射角、λは波長である。
また、L1qは1番目のアンテナとq番目のアンテナの間の長さである。表記の統一のため変数L11を導入しているが、L11=0である。
送信機1は、繰返し周期Δη(繰り返し周波数Fa)でパルス信号を生成し、そのパルス信号を送受切換器2に出力する。
送受切換器2は、送信機1からパルス信号を受ける毎に、そのパルス信号を送受信アンテナ3aに出力する。
これにより、プラットフォームに搭載されている送受信アンテナ3aから繰返し周期Δηで、パルス信号が空間に繰り返し放射される。
送受信アンテナ3aから空間に放射されたパルス信号の一部は、観測対象によって散乱され、プラットフォームに戻ってくる。
受信機4aは、送受信アンテナ3aから入射された信号を受信し、その受信信号に対する位相検波処理やA/D変換処理を実施することで、その受信信号の振幅と位相を示すデジタル受信信号をSAR画像再生部6aに出力する。
また、受信機4b,4cは、受信アンテナ3b,3cから入射された信号を受信し、その受信信号に対する位相検波処理やA/D変換処理を実施することで、その受信信号の振幅と位相を示すデジタル受信信号をSAR画像再生部6b,6cに出力する。
SAR画像再生部6a,6b,6cは、受信機4a,4b,4cから振幅と位相を示すデジタル受信信号を受けると、プラットフォーム運動計測部5により計測されたプラットフォームの位置及び速度を用いて、そのデジタル受信信号からSAR画像を再生する。
なお、SAR画像再生部6aにより再生されたSAR画像(1)をx1(mΔτ,nΔη)、SAR画像再生部6bにより再生されたSAR画像(2)をx2(mΔτ,nΔη)、SAR画像再生部6cにより再生されたSAR画像(3)をx3(mΔτ,nΔη)のように表記する。
[非特許文献3]
大内和夫著「リモートセンシングのための合成開口レーダの基礎」東京電機大学出版局
ここで、プラットフォームの速度をVplfとすると、SAR画像(1)に対するSAR画像(2)のアジマス方向のずれ量η12と、SAR画像(1)に対するSAR画像(3)のアジマス方向のずれ量η13は、下記の式(6)で表される。
そこで、位相補償部8は、レジストレーション部7から位置合わせ後のSAR画像(1)〜(3)を受けると、位置合わせ後のSAR画像(1)〜(3)間の比率から、位相のバイアス誤差を推定して補償する。
また、振幅補償部9は、位置合わせ後のSAR画像(1)〜(3)間の比率から、振幅のバイアス誤差を推定して補償する。
補償処理後のSAR画像(2),(3)であるz2,cal(mΔτ,nΔη),z3,cal(mΔτ,nΔη)は、下記の式(9)で表される。
振幅補償部9からSAR画像(1)であるx1(mΔτ,nΔη)のほかに、位相振幅補償後のSAR画像(2),(3)であるz2,cal(mΔτ,nΔη),z3,cal(mΔτ,nΔη)がクラッタ抑圧部10に出力されるが、以下では、表記を簡明にするために、振幅補償部9からクラッタ抑圧部10に出力されるSAR画像(1)〜(3)を改めて、z1(mΔτ,nΔη),z2(mΔτ,nΔη),z3(mΔτ,nΔη)のように表記する。また、離散化した表現は、z1[m,n],z2[m,n],z3[m,n]である。
ここで、クラッタ(静止目標信号成分)は、例えば、以下の非特許文献4に記載されているように、直交射影の考え方により抑圧する。直交射影によるクラッタ抑圧は、下記の式(10)によって実現される。
式(10)において、Iは3×3の単位行列である。また、Pは直交射影行列であり、下記の式(11)によって実現される。
クラッタ抑圧部10は、クラッタ抑圧後のSAR画像(1)〜(3)として、[ζ1[m,n] ζ2[m,n] ζ3[m,n]]Tを移動目標速度推定部11に出力する。
[非特許文献4]
諏訪,若山,岡村,“アジマスアンビギュイティを抑圧する複数開口SAR-MTI方式とその性能評価,” 信学技報, Vol.112,No.41,May.2012
ATI処理部11bは、クラッタ抑圧部10から出力されたクラッタ抑圧後のSAR画像(1)〜(3)のうち、SAR画像(1)であるζ1[m,n]と、SAR画像(3)であるζ3[m,n]とを入力して、そのSAR画像(1)とSAR画像(3)の間の干渉処理であるATI処理を実施する。
ATI処理部11cは、クラッタ抑圧部10から出力されたクラッタ抑圧後のSAR画像(1)〜(3)のうち、SAR画像(2)であるζ2[m,n]と、SAR画像(3)であるζ3[m,n]とを入力して、そのSAR画像(2)とSAR画像(3)の間の干渉処理であるATI処理を実施する。
式(12)では、和を計算した後にLで割っているので、平均値を出力していることになる。
なお、速度推定処理のためには、Lで割ることは必ずしも必要ではない。また、式(12)においては、クラッタ抑圧部10から出力された3チャネル分のSAR画像について可能な3通りの全ての組み合わせについてATI処理を実施している。全ての組み合わせについてATI処理を実施することが望ましいが、例えば、ATI処理は、式(12)の第一式と第二式のみとするなど、組み合わせの数は、可能な組み合わせ数の全てである必要はない。
式(13)において、vlos0はLOS方向の目標速度であり、マッチドフィルタhmati(vlos0)として、観測対象である移動目標が取り得る速度の範囲内で様々に変化させたものを用意する。
式(13)では、sの上部に“〜”が付されているものを表記しているが、明細書の文章中では、電子出願の関係上、文字の上部に“〜”が付されている表記が不可であるため、例えば、「s〜 1(vlos0)」のように表記する。
s〜 1(vlos0),s〜 2(vlos0),s〜 3(vlos0)はLOS方向の目標速度がvlos0である場合の信号モデルs1(vlos0),s2(vlos0),s3(vlos0)に対して、式(10)のクラッタ抑圧処理を適用したものであり、下記の式(14)で表わされる。
明細書の文章中では、電子出願の関係上、vの上部に“^”が付されている表記が不可であるため、「v^los0」のように表記している。
図4はこの発明の実施の形態2による合成開口レーダ装置のクラッタ抑圧部10及び移動目標速度推定部11を示す構成図である。
上記実施の形態1では、クラッタ抑圧部10が、直交射影行列Pを用いて、振幅補償部9により振幅差が補償された3つのSAR画像(1)〜(3)に含まれているクラッタを抑圧するものを示したが、この実施の形態2では、DPCA(Displaced Phase Center Antenna)方式を採用し、クラッタ抑圧部10のDPCA処理部10a,10b,10cが、2つのSAR画像のDPCA処理(差分処理)を実施して、その差分処理結果をクラッタ抑圧後のSAR画像(1)〜(3)として出力するようにしてもよい。
具体的には、以下の通りである。
DPCA処理部10bは、SAR画像(1)とSAR画像(3)のDPCA処理を実施して、そのDPCA処理結果をクラッタ抑圧後のSAR画像(2)として移動目標速度推定部11に出力する。
DPCA処理部10cは、SAR画像(2)とSAR画像(3)のDPCA処理を実施して、そのDPCA処理結果をクラッタ抑圧後のSAR画像(3)として移動目標速度推定部11に出力する。
式(17)の左辺は、式(12)の左辺と同じ記号を用いているが、右辺からも明らかなとおり、異なる処理をしているため、式(12)の左辺と式(17)の左辺は一致しない。しかし、クラッタ抑圧後の信号であるという点で意味が同じであること、また、特に混乱を生じないため、同じ記号を用いている。
図5はこの発明の実施の形態3による合成開口レーダ装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
リフォーカス型移動目標速度精推定部12は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、移動目標速度推定部11による移動目標の速度推定結果を用いて、クラッタ抑圧部10によりクラッタが抑圧された3つのSAR画像(1)〜(3)内の移動目標に焦点を合わせるリフォーカス処理を実施し、リフォーカス処理後の3つのSAR画像(1)〜(3)の中から、2つのSAR画像の組をそれぞれ選択して、各々の組毎に、2つのSAR画像間の干渉処理であるATI処理を実施し、3つのATI処理結果からLOS方向の移動目標の速度を推定する処理を実施する。なお、リフォーカス型移動目標速度精推定部12はリフォーカス型移動目標速度精推定手段を構成している。
例えば、SAR画像再生部6a,6b,6c、レジストレーション部7、位相補償部8、振幅補償部9、クラッタ抑圧部10、移動目標速度推定部11及びリフォーカス型移動目標速度精推定部12がコンピュータで構成されている場合、SAR画像再生部6a,6b,6c、レジストレーション部7、位相補償部8、振幅補償部9、クラッタ抑圧部10、移動目標速度推定部11及びリフォーカス型移動目標速度精推定部12の処理内容を記述しているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
図6において、速度候補算出部21は移動目標速度推定部11のマッチドフィルタ部11dにより推定された移動目標の速度のほかに、移動目標の速度を表している可能性がある速度(評価関数Pmati(vlos0;m,n)の関数値が極大値になる速度)を推定し、その速度とマッチドフィルタ部11dにより推定された移動目標の速度を速度候補としてリフォーカス処理部23a,23b,23cに出力する処理を実施する。なお、速度候補算出部21は速度候補算出手段を構成している。
アジマス圧縮解凍処理部22bはクラッタ抑圧部10によりクラッタが抑圧されたSAR画像(2)をアジマス方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後のSAR画像(2)に対して、SAR画像再生部6bがSAR画像(2)を再生する際に用いているアジマス圧縮用参照関数の複素共役を乗算することで、SAR画像(2)におけるアジマス圧縮を解凍する処理を実施する。
アジマス圧縮解凍処理部22cはクラッタ抑圧部10によりクラッタが抑圧されたSAR画像(3)をアジマス方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後のSAR画像(3)に対して、SAR画像再生部6cがSAR画像(3)を再生する際に用いているアジマス圧縮用参照関数の複素共役を乗算することで、SAR画像(3)におけるアジマス圧縮を解凍する処理を実施する。
なお、アジマス圧縮解凍処理部22a,22b,22cはアジマス圧縮解凍手段を構成している。
リフォーカス処理部23bは速度候補算出部21により算出された速度候補毎に、当該速度候補に対応するアジマス圧縮用参照関数を用いて、アジマス圧縮解凍処理部22bによりアジマス圧縮が解凍されたSAR画像(2)を再度アジマス圧縮することで、移動目標に焦点を合わせるリフォーカス処理を実施する。
リフォーカス処理部23cは速度候補算出部21により算出された速度候補毎に、当該速度候補に対応するアジマス圧縮用参照関数を用いて、アジマス圧縮解凍処理部22cによりアジマス圧縮が解凍されたSAR画像(3)を再度アジマス圧縮することで、移動目標に焦点を合わせるリフォーカス処理を実施する。
なお、リフォーカス処理部23a,23b,23c及び選択処理部24からリフォーカス処理手段が構成されている。
ATI処理部25bはリフォーカス処理部23aから出力されたリフォーカス処理後のSAR画像(1)とリフォーカス処理部23cから出力されたリフォーカス処理後のSAR画像(3)の間の干渉処理であるATI処理を実施する。
ATI処理部25cはリフォーカス処理部23bから出力されたリフォーカス処理後のSAR画像(2)とリフォーカス処理部23cから出力されたリフォーカス処理後のSAR画像(3)の間の干渉処理であるATI処理を実施する。
なお、ATI処理部25a,25b,25cはATI処理手段を構成している。
リフォーカス型移動目標速度精推定部12を実装している点以外は、上記実施の形態1,2と同様であるため、ここでは、リフォーカス型移動目標速度精推定部12の処理内容だけを説明する。
このような場合、評価関数Pmati(vlos0;m,n)の関数値が最大になる速度が、移動目標の速度に対応しておらず、その他の極大値になる速度が、移動目標の速度に対応していることがある。
そこで、この実施の形態3では、移動目標の速度の推定精度を高めるために、リフォーカス型移動目標速度精推定部12を実装している。
速度候補算出部21は、マッチドフィルタ部11dから評価関数Pmati(vlos0;m,n)と移動目標の速度の推定結果を取得すると、その速度を速度候補の一つに決定する。以下、この速度候補をVc0と表記する。
また、速度候補算出部21は、評価関数Pmati(vlos0;m,n)の関数値が最大になる極大値の他に、極大値があれば、その極大値になる速度を算出して速度候補に決定する。
ここでは、説明の便宜上、評価関数Pmati(vlos0;m,n)の関数値が最大になる極大値の他に、2つの極大値があるものとし、2つの極大値になる速度(速度候補)をVc1,Vc2と表記する。
なお、アジマス圧縮用参照関数は、ドップラーシフトによる位相変化の共役関数であり、アジマス圧縮用参照関数自体は公知の関数であるため詳細な説明を省略する。
アジマス圧縮解凍処理部22cは、クラッタ抑圧部10からクラッタ抑圧後のSAR画像(3)を受けると、アジマス圧縮解凍処理部22aと同様に、そのSAR画像(3)をアジマス方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後のSAR画像(3)に対して、SAR画像再生部6cがSAR画像(3)を再生する際に用いているアジマス圧縮用参照関数の複素共役を乗算することで、SAR画像(3)におけるアジマス圧縮を解凍する。
また、リフォーカス処理部23aは、その速度候補Vc1に対応するアジマス圧縮用参照関数を用いて、アジマス圧縮解凍処理部22aによりアジマス圧縮が解凍されたSAR画像(1)を再度アジマス圧縮することで、移動目標に焦点を合わせるリフォーカス処理を実施する。
さらに、リフォーカス処理部23aは、その速度候補Vc2に対応するアジマス圧縮用参照関数を用いて、アジマス圧縮解凍処理部22aによりアジマス圧縮が解凍されたSAR画像(1)を再度アジマス圧縮することで、移動目標に焦点を合わせるリフォーカス処理を実施する。
これにより、速度候補算出部21により算出された速度候補Vc0,Vc1,Vc2の数分(3個)だけ、リフォーカス処理後のSAR画像(1)が生成される。
なお、リフォーカス処理部23aが使用するアジマス圧縮用参照関数は、上述したように、ドップラーシフトによる位相変化の共役関数であり、移動目標の速度が異なれば関数も異なる。
リフォーカス処理部23cについても、リフォーカス処理部23aと同様に、速度候補算出部21により算出された速度候補Vc0,Vc1,Vc2毎に、当該速度候補に対応するアジマス圧縮用参照関数を用いて、アジマス圧縮解凍処理部22cによりアジマス圧縮が解凍されたSAR画像(3)を再度アジマス圧縮することで、移動目標に焦点を合わせるリフォーカス処理を実施する。
これにより、速度候補算出部21により算出された速度候補Vc0,Vc1,Vc2の数分(3個)だけ、リフォーカス処理後のSAR画像(2),(3)が生成される。
以下、選択処理部24の処理内容を具体的に説明する。
また、速度候補Vc1に対応するリフォーカス処理後のSAR画像(1)〜(3)内の移動目標の輝度を合計して、その輝度の合計値L1を算出する。
同様に、速度候補Vc2に対応するリフォーカス処理後のSAR画像(1)〜(3)内の移動目標の輝度を合計して、その輝度の合計値L2を算出する。
選択処理部24は、輝度の合計値L0,L1,L2を算出すると、それらを比較して、最も大きな合計値を特定し、例えば、最も大きな合計値が合計値L0であれば、移動目標の焦点が最も合う速度候補は速度候補Vc0であるとして、速度候補Vc0に対応するリフォーカス処理後のSAR画像(1)〜(3)の出力をリフォーカス処理部23a,23b,23cに指示する。
また、最も大きな合計値が合計値L1であれば、移動目標の焦点が最も合う速度候補は速度候補Vc1であるとして、速度候補Vc1に対応するリフォーカス処理後のSAR画像(1)〜(3)の出力をリフォーカス処理部23a,23b,23cに指示する。
また、最も大きな合計値が合計値L2であれば、移動目標の焦点が最も合う速度候補は速度候補Vc2であるとして、速度候補Vc2に対応するリフォーカス処理後のSAR画像(1)〜(3)の出力をリフォーカス処理部23a,23b,23cに指示する。
これにより、リフォーカス処理部23a,23b,23cは、速度候補Vc0,Vc1,Vc2の数分(3個)のSAR画像(1)〜(3)のうち、選択処理部24が指示するSAR画像(1)〜(3)を出力する。
ATI処理部25bは、リフォーカス処理部23aからリフォーカス処理後のSAR画像(1)を受け、リフォーカス処理部23cからリフォーカス処理後のSAR画像(3)を受けると、移動目標速度推定部11のATI処理部11bと同様に、そのSAR画像(1)とSAR画像(3)の間の干渉処理であるATI処理を実施する(式(12)の第二式を参照)。
ATI処理部25cは、リフォーカス処理部23bからリフォーカス処理後のSAR画像(2)を受け、リフォーカス処理部23cからリフォーカス処理後のSAR画像(3)を受けると、移動目標速度推定部11のATI処理部11cと同様に、そのSAR画像(2)とSAR画像(3)の間の干渉処理であるATI処理を実施する(式(12)の第三式を参照)。
このように、アジマス圧縮解凍処理部22a,22b,22cが、レジストレーション部7により補償された位置ずれを元に戻すようにした場合、リフォーカス処理部23a,23b,23cは、SAR画像(1)〜(3)のリフォーカス処理を実施したのち、レジストレーション部7と同様の方法で、リフォーカス処理後のSAR画像(1)〜(3)間のずれ量を算出して、そのずれ量を補償することで位置合わせを行うようにする。
これにより、マッチドフィルタ部26による速度の推定精度が更に向上する効果が得られる。
Claims (7)
- プラットフォームの進行方向と平行に並べられた状態で、上記プラットフォームに搭載されている3つ以上のアンテナと、
各々のアンテナから入射された信号を受信する受信機と、
上記プラットフォームの位置及び速度を計測する位置速度計測手段と、
上記位置速度計測手段により計測されたプラットフォームの位置及び速度を用いて、上記受信機により受信された各々の信号から合成開口レーダ画像をそれぞれ再生する合成開口レーダ画像再生手段と、
上記位置速度計測手段により計測されたプラットフォームの位置及び速度を用いて、上記合成開口レーダ画像再生手段により再生された複数の合成開口レーダ画像間のずれ量を算出して、上記ずれ量を補償するレジストレーション手段と、
上記レジストレーション手段によりずれ量が補償された複数の合成開口レーダ画像に含まれている静止目標信号成分を抑圧するクラッタ抑圧手段と、
上記クラッタ抑圧手段により静止目標信号成分が抑圧された複数の合成開口レーダ画像の中から、2つの合成開口レーダ画像の組をそれぞれ選択して、各々の組毎に、2つの合成開口レーダ画像間の干渉処理であるATI処理を実施し、複数のATI処理結果から視線方向の移動目標の速度を推定する移動目標速度推定手段と
を備えた合成開口レーダ装置。 - 上記クラッタ抑圧手段は、直交射影行列を用いて、上記レジストレーション手段によりずれ量が補償された複数の合成開口レーダ画像に含まれている静止目標信号成分を抑圧することを特徴とする請求項1記載の合成開口レーダ装置。
- 上記クラッタ抑圧手段は、上記レジストレーション手段によりずれ量が補償された複数の合成開口レーダ画像の中の2つの合成開口レーダ画像の組み合わせ毎に、2つの合成開口レーダ画像の差分処理を実施して、その差分処理結果を静止目標信号成分抑圧後の合成開口レーダ画像として出力することを特徴とする請求項1記載の合成開口レーダ装置。
- 上記移動目標速度推定手段による移動目標の速度推定結果を用いて、上記クラッタ抑圧手段により静止目標信号成分が抑圧された複数の合成開口レーダ画像内の移動目標に焦点を合わせるリフォーカス処理を実施し、リフォーカス処理後の複数の合成開口レーダ画像の中から、2つの合成開口レーダ画像の組をそれぞれ選択して、各々の組毎に、2つの合成開口レーダ画像間の干渉処理であるATI処理を実施し、複数のATI処理結果から視線方向の移動目標の速度を推定するリフォーカス型移動目標速度精推定手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の合成開口レーダ装置。
- 上記リフォーカス型移動目標速度精推定手段は、
上記移動目標速度推定手段により推定された移動目標の速度のほかに、上記移動目標の速度を表している可能性がある速度を推定し、上記速度と上記移動目標速度推定手段により推定された移動目標の速度を速度候補として出力する速度候補算出手段と、
上記クラッタ抑圧手段により静止目標信号成分が抑圧された複数の合成開口レーダ画像におけるアジマス圧縮を解凍するアジマス圧縮解凍手段と、
上記速度候補算出手段により算出された速度候補毎に、当該速度候補に対応するアジマス圧縮用参照関数を用いて、上記アジマス圧縮解凍手段によりアジマス圧縮が解凍された複数の合成開口レーダ画像を再度アジマス圧縮することで、上記移動目標に焦点を合わせるリフォーカス処理を実施するとともに、上記速度候補算出手段により算出された1以上の速度候補の中から、リフォーカス処理後の合成開口レーダ画像内の移動目標の焦点が最も合う速度候補を選択するリフォーカス処理手段と、
上記リフォーカス処理手段により選択された速度候補に対応するリフォーカス処理後の複数の合成開口レーダ画像の中から、2つの合成開口レーダ画像の組をそれぞれ選択して、各々の組毎に、2つの合成開口レーダ画像間の干渉処理であるATI処理を実施するATI処理手段と、
上記ATI処理手段による複数のATI処理結果から視線方向の移動目標の速度を推定するマッチドフィルタ手段と
から構成されていることを特徴とする請求項4記載の合成開口レーダ装置。 - 上記アジマス圧縮解凍手段は、上記クラッタ抑圧手段により静止目標信号成分が抑圧された複数の合成開口レーダ画像をアジマス方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の合成開口レーダ画像に対して、上記合成開口レーダ画像再生手段が合成開口レーダ画像を再生する際に用いているアジマス圧縮用参照関数の複素共役を乗算することで、アジマス圧縮を解凍することを特徴とする請求項5記載の合成開口レーダ装置。
- 上記アジマス圧縮解凍手段は、上記クラッタ抑圧手段により静止目標信号成分が抑圧された複数の合成開口レーダ画像をアジマス方向にフーリエ変換し、フーリエ変換後の合成開口レーダ画像に対して、上記合成開口レーダ画像再生手段が合成開口レーダ画像を再生する際に用いているアジマス圧縮用参照関数の複素共役を乗算することで、アジマス圧縮を解凍するとともに、上記レジストレーション手段により補償された位置ずれを元に戻す処理を実施し、
上記リフォーカス処理手段は、上記速度候補算出手段により算出された速度候補毎に、当該速度候補に対応するアジマス圧縮用参照関数を用いて、上記アジマス圧縮解凍手段により位置ずれが元に戻された複数の合成開口レーダ画像を再度アジマス圧縮することで、上記移動目標に焦点を合わせるリフォーカス処理を実施し、リフォーカス処理後の複数の合成開口レーダ画像間のずれ量を算出して、上記ずれ量を補償するとともに、上記速度候補算出手段により算出された1以上の速度候補の中から、リフォーカス処理後の合成開口レーダ画像内の移動目標の焦点が最も合う速度候補を選択する
ことを特徴とする請求項5記載の合成開口レーダ装置。
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