本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置は、レンズ枠部材、枠部材、駆動手段、弾性規制部材、ベース部材を備える。弾性規制部材は、駆動手段の無通電時にレンズ枠部材をベース部材に押し付ける弾性力(与圧)を有しており、駆動手段の駆動力と弾性規制部材の弾性力の釣り合いによってレンズ枠部材が光軸方向に駆動される。駆動手段の無通電時には、レンズ枠部材に設けた基準端面とベース部材に設けた基準当接面が当接する状態になり、この当接した状態で弾性規制部材に偏った撓みが生じないように前述した基準端面と基準当接面を設定している。このような基準面と基準当接面を設けて、駆動力が無通電状態での弾性規制部材の撓みに偏りが生じないようにすることで、弾性規制部材の弾性力を光軸に沿った方向に保ち、所望の駆動性能が得られるようにしている。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。以下の図においてZ軸方向が光軸方向を示し、光軸に垂直な平面(X−Y平面)内で互いに直交する方向をX軸方向とY軸方向としている。また、以下の図において、同一部位には共通符号を付して、重複説明を一部省略している。
図1に示すように、レンズ駆動装置1は、レンズ枠部材2、枠部材3、駆動手段4を備える。レンズ枠部材2は、レンズが装着されるレンズ装着口20を備え、装着されるレンズの光軸Oa方向に移動自在に配備される。枠部材3は、レンズ枠部材2の周囲に配置されレンズ枠部材2を移動自在に保持する。駆動手段4は、レンズ枠部材2に固定される第1駆動部材4Aと枠部材3に固定される第2駆動部材4Bとを備える。第1駆動部材4Aと第2駆動部材4Bは一方がコイル40で他方がマグネット41である(図示の例では、第1駆動部材4Aをマグネット41とし第2駆動部材4Bをコイル40としているが、第1駆動部材4Aをコイル40とし第2駆動部材4Bをマグネット41としてもよい。)。
駆動手段4は、コイル40の側面40Aとマグネット41の側面41Aを設定間隔Sdで対面させており、マグネット41の磁界内でコイル40に電流を流すことによって生じる駆動力(ローレンツ力)によりレンズ枠部材2を光軸Oa方向に駆動する。すなわち、コイル40はY軸方向に沿った直線部を有する長円状に巻かれており、コイル40の巻方向及び直線部の方向とマグネット41の磁極配置は前述した駆動力が光軸Oaに沿った図示Z軸方向に作用するように適宜配備されている。図示の例では、マグネット41における側面41Aと反対側の面にヨーク(磁性体)42を固定しており、これによってコイル40を通過するX方向に沿った磁界の成分を増やしている。
また、レンズ駆動装置1は、レンズ枠部材2の光軸Oa方向の移動を弾性的に規制する弾性規制部材5を備え、また枠部材3を支持するベース部材6を備える。このベース部材6は、レンズ駆動装置1における構成部品とすることもできるし、レンズ駆動装置1が装着される機器側の構成部品とすることもできる。
図2〜図4によって、第1駆動部材が固定されるレンズ枠部材の一例を説明する(図2が斜視図、図3が平面図、図4が分解図である。)。ここでは、第1駆動部材4Aとしてマグネット41を固定した例を示している。レンズ枠部材2は、光軸Oaが中心となるレンズ装着口20を有する筒状部材であり、その側面2Cに取付部10を備えている。図示の例では、光軸対称に4箇所の取付部10を設けているが、取付部10は左右対称位置の2箇所にすることもできる。
レンズ枠部材2は、光軸Oaからの設定された距離L1になる基準面Rsを備えている。図示の例では、図3に示すように、取付部10に対応する4方向の基準面Rsまでの距離が全て等しい設定された距離L1になっている。そして、この基準面Rsと第1駆動部材4Aであるマグネット41の側面41Aとを面一にしてマグネット41を取付部10に取り付けている。
このような基準面Rsを設けて、この基準面Rsとマグネット41の側面41Aが面一(同一面)になるようにマグネット41を取付部10に取り付けることで、マグネット41の厚さとは無関係にマグネット41の側面41Aを設定位置(光軸Oaから等距離の位置)に固定することができる。これに対して、このような基準面Rsを設けること無く、レンズ枠部材2の側面2Cにマグネット41を固定した場合には、マグネット41の厚さによって側面41Aの位置が変わってしまう。レンズ枠部材2は金型による射出成形によって、精度の高い同一寸法を得ることができ、基準面Rsは比較的高い精度で光軸Oaから等距離に設定することができるが、ネオジムなどを主成分とするマグネット41は精度の高い加工が困難であり、高い寸法精度で厚さを設定することが困難であった。
図示の例では、基準面Rsはレンズ枠部材2の側面2Cから外側に突出する一対の突起部22の突端面22Aに設けられ、一対の突起部22間に取付部10が設けられている。すなわち、同方向に突出する一対の突起部22の突端面22Aが同一平面上に形成されており、この平面が光軸Oaから設定距離L1の位置に形成されている。そして、突起部22の突端面22Aとマグネット41の側面41Aが同一面上に配置されている。同一面上に配置されることで特別な測定器具を用いなくても組立ズレを容易に目視で確認することができる。
図示の例では、マグネット41には側面41Aの反対面にヨーク42が固定されている。マグネット41は、ヨーク42を側面41Aの反対面に接着固定した状態で一対の突起部22の間に挿入され、マグネット41の側面41Aと突起部22の突端面22Aを同一平面上に支持した状態で突起部22に接着固定される。この際、図4に示した突起部22の高さ22tは、マグネット41の厚さにヨーク42の厚さを加えた合計厚さより大きく設定されている。これによって、マグネット41の厚さ寸法のばらつきは高さ22t内に収められマグネット41の側面41Aの位置精度とは無関係になる。
図5は、第1駆動部材としてコイルを固定したレンズ枠部材の構成例を示している。この例では、レンズ枠部材2の側面2Cにコイル40を取り付けるための突起部23を設けており、この突起部23の突端面23Aに基準面Rsを設けている。そして、この基準面Rs(突端面23A)とコイル40の側面40Aが面一(同一面上)になるようにしている。これによると、コイル40の側面40Aと基準面Rsとを同一面にすることで、コイル40の厚さとは無関係にコイル40の側面40Aの位置を光軸Oaから設定距離L2にして、コイル40をレンズ枠部材2に固定することができる。
このようにレンズ駆動装置1は、レンズ枠部材2に設けた基準面Rsと第1駆動部材4Aの側面とを同一面上にして第1駆動部材4Aをレンズ枠部材2に固定することで、第1駆動部材4Aの側面と第2駆動部材4Bの側面との隙間寸法を高い精度でばらつきなく設定することができる。これによって、第1駆動部材4A(コイル40又はマグネット41)の厚さ寸法のばらつきに関係なく、レンズ枠部材2の駆動性能を高めることができる。
また、レンズ枠部材2に第1駆動部材4Aを固定する作業は、レンズ枠部材2の基準面Rsと第1駆動部材4Aの側面を支持平面に当接させて同一面上に保持した状態でレンズ枠部材2と第1駆動部材4Aを接着固定する。これによると、複雑な調整作業を行うこと無く、第1駆動部材4Aを高い精度でレンズ枠部材2に位置決め固定することができる。
図6は、レンズ枠部材の周囲に複数配置される枠部材の一つを示している((a)が第2駆動部材を固定した状態を示し、(b)が第2駆動部材を取り付ける前の状態を示している)。枠部材3は、前述した光軸と交差する方向の断面形状がレンズ枠部材2に向けて突出する一対の腕部3Cを有し、この一対の腕部3C間に第2駆動部材4Bが固定されている。ここでは、第2駆動部材4Bとしてコイル40を固定した例を示している。
一対の腕部3C間の側面3Dには突起部(取付部)3Eがレンズ枠部材2に向けて突出しており、この突起部3Eにコイル40のボビン孔40Bが嵌合することで、枠部材3にコイル40が取り付けられる。この際、突起部3Eの突端面3E1に光軸からの距離が設定された距離L3になる基準面Rfが設けられている。そして、この基準面Rfとコイル40の側面40Aとを面一にすることで、コイル40の側面40Aの位置を精度良く位置決めしている。このように、枠部材3がコイル40の側面40Aと面一になる基準面Rfを備えることで、前述したようにレンズ枠部材2がマグネット41の側面41Aと面一になる基準面Rsを備えることと相俟って、コイル40とマグネット41の隙間を高い精度で位置決めすることができる。そして、これによりレンズ枠部材2の駆動性能を高めることができる。
また、ベース部材6に支持される枠部材3は、腕部3Cによって溝形断面形状の安定した柱形状をなしており、光軸に交差する方向の荷重に対しても傾きや変形が生じ難い形状になっている。また、腕部3Cの突出長さ3tが枠部材3に固定される第2駆動部材4Bにおける突出長さ3t方向の幅4Btよりかなり大きい形状になっているので、第2駆動部材4Bの自重やレンズ枠部材2の駆動時に第2駆動部材4Bが受ける荷重によって第2駆動部材4Bの側面(図示の例ではコイル40の側面40A)が傾くのを抑止することができ、安定した駆動性能を維持することができる。
図1に示すように、枠部材3は、弾性規制部材5(5A,5B)を介してレンズ枠部材2を移動自在に保持している。弾性規制部材5(5A,5B)は、図7に示す平面形状を有する板状弾性部材(板バネ)50であって、レンズ枠部材2がベース部材6から離れるように光軸方向に移動するとこの移動に対向した弾性力をレンズ枠部材2に付与して、レンズ枠部材2の光軸方向の移動を弾性的に規制する。
図示の例では、弾性規制部材5(5A,5B)は、枠部材3に取り付けられる外側取付部50Aと、レンズ枠部材2に取り付けられる内側取付部50Bと、外側取付部50Aと内側取付部50Bの間を連結する線状の弾性変形部50Cを備えている。外側取付部50Aは枠部材3の端面3A(3B)に取り付けられ、左右一対の枠部材3に取り付けられるように、弾性規制部材5A,5Bは左右一対の外側取付部50Aを備えている。内側取付部50Bはレンズ枠部材2の端部2A(2B)に取り付けられるように環状の平面形状を有している。弾性変形部50Cは、内側取付部50Bと一方の外側取付部50Aとを連結するために2本、合計4本備えている。このように外側取付部50Aと内側取付部50Bと弾性変形部50Cを備える弾性規制部材5A,5Bは、図示の光軸Oaを通るX軸に対して対称であり光軸Oaを通るY軸に対しても対称の形状を有している。ここで、外側取付部50Aは、内側取付部50Bの周囲を囲む形状ではなく内側取付部50Bの左右に分けて配備しており、Y軸方向の幅を内側取付部50Bの幅と略等しい寸法にしている。これによって弾性規制部材5A,5BのY軸方向の設置占有スペースの省スペース化を図っている。
弾性規制部材5の弾性変形部50Cは、X−Y平面に沿って湾曲するように変形する変形吸収部50C1を備えている。このような弾性変形部50Cはレンズ枠部材2が光軸方向に移動することによる撓みに対して弾性的な復元力が生じ、またレンズ枠部材2が光軸方向に移動することによる外側取付部50Aと内側取付部50Bとの間の距離変動を変形吸収部50C1の変形が吸収する。更に、弾性変形部50CはY軸方向の変位に対しては比較的高い剛性を有しており、これによってレンズ枠部材2の動きを光軸方向に沿った方向にガイドしている。また、弾性変形部50Cは、変形吸収部50C1を備えることで、レンズ枠部材2が取り付けられる内側取付部50BのX軸方向の動きを許容しており、落下衝撃などでレンズ枠部材2がX軸方向に変位した場合の弾性変形部50Cの破損を抑止している。
図8に示すように、レンズ枠部材2は一対の弾性規制部材5(第1の弾性規制部材5Aと第2の弾性規制部材5B)によって枠部材3に保持される。ベース部材6は、複数の枠部材3などを支持する支持面6Sを備えている。支持面6Sは、底面6Aから突出して光軸方向と交差する同一平面上に形成される。支持面6S上に支持される枠部材3は支持面6Sから光軸に沿って一定の設定高さ3hを有している。一対の弾性規制部材5(第1の弾性規制部材5Aと第2の弾性規制部材5B)は、レンズ枠部材2の光軸方向両端部2A,2Bを挟持し、また枠部材3における光軸方向の両端面3A,3Bに設定高さ3hの間隔を空けて位置決めされている。
具体的には、ベース部材6の支持面6S(外側取付面6S1)に第2の弾性規制部材5Bの外側取付部50Aが支持され、この外側取付部50A上に枠部材3の端面3Bが支持され、枠部材3の端面3A(外側取付面3A1)に第1の弾性規制部材5Aの外側取付部50Aが取り付けられる。そして、第1の弾性規制部材5Aと第2の弾性規制部材5Bがレンズ枠部材2を挟持して、第1の弾性規制部材5Aの内側取付部50Bがレンズ枠部材2の端部2A(内側取付面2A1)に取り付けられ、第2の弾性規制部材5Bの内側取付部50Bがレンズ枠部材2の端部2B(内側取付面2B1)に取り付けられる。
ベース部材6の支持面6Sに設けられる位置決め突起6Dは、第2の弾性規制部材5Bの外側取付部50Aに設けた位置決め孔50A1を通って枠部材3の端面3Bに設けた位置決め孔(図示省略)に嵌合する。枠部材3の端面3Aに設けた位置決め突起3Fは第1の弾性規制部材5Aの外側取付部50Aに設けた位置決め孔50A1を通って押さえ部材52の位置決め孔52Aに嵌合する。また、レンズ枠部材2の端部2A,2Bに設けた位置決め突起2Dは第1,第2の弾性規制部材5A,5Bの内側取付部50Bに設けた位置決め孔50B1に嵌合する。
このように一対の弾性規制部材5(第1の弾性規制部材5Aと第2の弾性規制部材5B)の外側取付部50Aは、ベース部材6における同一平面上の支持面6Sに支持されると共に枠部材3の両端面3A,3Bに支持されることで、枠部材3の設定高さ3hによって一定間隔で左右対称に位置決めされる。このように、一対の弾性規制部材5(5A,5B)を光軸に対してバランス良く支持し、その支持位置を均一且つ安定化させることで、レンズ枠部材2に光軸に沿った弾性力を付与することができる。これによって、レンズ枠部材2の傾きを抑止して、直進性を保ちながらレンズ枠部材2を光軸に沿って駆動させることができる。
枠部材3は前述した腕部3Cを備えており、第1の弾性規制部材5Aの外側取付部50Aを取り付ける端面3Aがレンズ枠部材2に向けて突出する腕部を有する平面形状であり、この端面3Aの形状に対応する平面形状を有する押さえ部材52で端面3A上に外側取付部50Aを押圧して取り付けている。
図示の例では、端面3Aが一対の腕部3Cに対応する溝形平面形状であり、外側取付部50Aも同様に一対の腕部50A2を有する溝形平面形状であり、押さえ部材52も同様に一対の腕部52Bを有する溝形平面形状になっている。そして一対の腕部3C(50A2,52B)の間に一対の弾性変形部50Cが設けられている。
このような端面3Aで外側取付部50Aを支持して、押さえ部材52で外側取付部50Aを端面3Aに押さえつけて固定することで、押さえ部材52の一対の腕部52Bが弾性変形部50Cの外側で弾性変形部50Cの付け根の部分から離れたところで外側取付部50Aを平面状に押さえ付けることができる。これによって、外側取付部50Aの全体を平面状態に保つことができ、弾性変形部50Cに撓みが加わった場合にも弾性変形部50Cの付け根に当たる外側取付部50Aに部分的な浮き上がりが生じることを抑止できる。これにより、弾性変形部50Cの撓みで所望の弾性力が得られなくなったり、弾性力にばらつきが生じたりする不具合を解消することができる。このように、弾性規制部材5の取付状態を均一にすることで、所望の駆動性能を得ることができる。
図9は、弾性規制部材における弾性変形部の配置状態を示している((a)が弾性変形部の設置を示す部分平面図であり、(b)が弾性変形部の設置を説明する枠部材の正面図)。弾性変形部50Cは、コイル40の湾曲部40C外側であってコイル40の光軸方向の高さ40H内領域を通って配置される。特に図示の例では、弾性変形部50Cは、コイル40の湾曲部40Cの外側であって、コイル40を囲む最小矩形空間Smの内側を通って配置されている。ここでいうコイル40を囲む最小矩形空間Smとは、コイル40の光軸方向(Z軸方向)高さ40Hを短辺としコイル40の横方向(Y軸方向)の幅40Lを長辺とする矩形の内側に形成される空間であり、弾性変形部50Cは図示の一点破線の枠内の内側に配置されている。
ここで、一対の弾性変形部材5A,5Bの各外側取付部50Aは、枠部材3の光軸方向の両端面3A,3Bにそれぞれ位置決めされ、コイル40は枠部材3の突起部3Eに固定されており、弾性規制部材5A,5Bの各弾性変形部50Cは、コイル40の四隅の湾曲部40C外側を通って配置されている。この配置は、コイル40の光軸方向の高さ40Hを一対の弾性規制部材5A,5B間の間隔(枠部材3の光軸方向の高さ3h)より大きくすることで実現できる。
弾性変形部50Cの変形吸収部50C1は、互いに向き合う方向に湾曲するように変形しており、レンズ枠部材2の突起部22内に取り付けられるマグネット41とヨーク42の光軸方向の高さの違いによって生じる段差内の領域に配置されている。駆動手段4の第1駆動部材4Aであるマグネット41は、突起部22内で側面41Aとは逆側の面にヨーク42が固定されているが、ヨーク42の光軸方向の高さをマグネット41の光軸方向の高さより小さくすることで、光軸方向に突出する段差を持ってレンズ枠部材2に固定されている。そして、枠部材3における光軸方向の両端面3A,3Bに位置決めされる一対の外側取付部50Aの間隔が第1駆動部材であるマグネット41の光軸方向の高さより小さく形成され、弾性規制部材5A,5Bの弾性変形部50Cは、この段差内の領域に変形吸収部50C1を配置している。すなわち、変形吸収部50C1は、第1駆動部材4Aの光軸方向の高さ内領域であって第1駆動部材5Aからレンズ枠部材2側の領域に配置されている。
このように、弾性規制部材5A,5Bの弾性変形部50Cは、駆動手段4であるコイル40が設置される空間のデッドスペースを利用して配置されており、また、弾性変形部50Cにおいて光軸と交差する面内で湾曲するように変形している変形吸収部50C1は、駆動手段4であるマグネット41をレンズ枠部材2に取り付ける際に形成されるデッドスペースを利用して配置されている。このように、弾性規制部材5A,5Bの弾性変形部50Cを配置することで、弾性変形部50Cは、枠部材3の腕部3Cの内側に設置されている駆動手段4の空きスペースを利用して配置されることになり、弾性変形部50Cを設置するためにレンズ枠部材2の周囲に個別の設置占有空間を要さない。これによってレンズ駆動装置1の薄型化・小型化が可能になる。
図10に示すように、ベース部材6は、中央に開口6Cを有し、前述した支持面6S、基準当接面6P、移動規制部60を備える。支持面6Sは、光軸方向に交差する同一平面上に形成され、第2の弾性規制部材5Bの外側取付部50Aが取り付けられる外側取付面6S1になっている。基準当接面6Pは、外側取付面6S1と同一又は平行な同一平面上にあり、図示の例では、底面6Aから部分的に突出した3つの凸部の上に形成されている。ここでは、外側取付面6S1と基準当接面6Pは共に、ベース部材6の底面6Aから光軸方向に突出した突端面6Bに形成されている。
これに対してレンズ枠部材2のベース部材6に対向する側の端部2Bには、図11に示すように、第2の弾性規制部材5Bの内側取付部50Bが取り付けられる内側取付面2B1が形成され、また、ベース部材6の基準当接面6Pに当接する基準端面2Sが形成されている。基準端面2Sは端部2Bの内側取付面2B1から突出した突端面に形成され、内部取付面2B1と平行な同一平面上に形成されている。
そして、駆動手段4の無通電時には、図1に示すように、レンズ枠部材2の基準端面2Sとベース部材6の基準当接面6Pが同一面上で当接するように、弾性規制部材5はレンズ枠部材2をベース部材6側に押し付ける与圧を付与している。この際、基準端面2Sと基準当接面6Pは弾性規制部材5に偏りが生じないように形成されており、この状態でレンズ枠部材2が長時間保持された場合にも、弾性規制部材5に偏った変形や歪みが生じることが無く、弾性規制部材5がレンズ枠部材2に付与する弾性力を光軸に沿った適正な方向に保つことができる。
レンズ枠部材2の基準端面2Sがベース部材6の基準当接面6Pに当接した状態で弾性規制部材5に偏りが生じないようにするためには、レンズ枠部材2側において内側取付面2A1,2B1と基準端面2Sとを同一又は平行な平面にし、ベース部材6側において外側取付面6S1(支持面6S)と基準当接面6Pを同一又は平行な平面にすることが必要になる。
ベース部材6に設けられる移動規制部60は、図10に示すように、ベース部材6の底面6Aからレンズ枠部材2の側面2Cの周りに突出するように複数設けた突起部であり、光軸周りの回転方向及び直交平面の移動に対して対面規制する規制面62を備えている。図示の例では、規制面62は異なる方向に向いた複数の平面を備えているが、これに限らず、光軸周りの回転方向に対面した曲面などであってもよい。この移動規制部60に対してレンズ枠部材2には、図11及び図12に示すように、側面2Cに規制面62に対面する対向面2C1を設けており、レンズ枠部材2をベース部材6に当接した状態でレンズ枠部材2に光軸周りの回転トルクが加わると、この対向面2C1が規制面62に当たってレンズ枠部材2の回転が止められる。
レンズ枠部材2のレンズ装着口20にはレンズバレルがねじ込みなどによって装着されるが、この際にレンズ枠部材2に光軸周りの回転トルクが加わっても、移動規制部60によってその回転が規制されるので、レンズバレル装着時においてコイルとマグネットの接触による破損や弾性規制部材の破損などの不具合を未然に防止することができる。
以下に、レンズ駆動装置の全体構成を更に具体的に説明する。図13〜図15は、駆動されるレンズ枠部材にマグネットを固定したムービング・マグネット型のレンズ駆動装置を示している。このレンズ駆動装置1Mは、図13の組み立て斜視図と図14の分解斜視図に示されるように、ベース部材6に対して各部品を積み上げるように組み立てることができる。ベース部材6には、レンズ枠部材2に装着されるレンズ(図示省略)の光軸を略中心とする開口6Cが設けられており、この開口6Cを通った光がベース部材6の背面側に配置される受光面に入射する。ベース部材6には、その底面6Aから光軸方向に突出した位置に支持面6Sと基準当接面6Pが形成されている。支持面6Sは、その上に支持する枠部材3の平面形状に応じた形状を有して複数箇所に形成されており、その全ての面が同一面(X−Y平面)上に形成されている。基準当接面6Pは、底面6Aからスポット状に突出した同一平面上の複数の突端面6Bによって形成されている。また、ベース部材6の底面6Aからは開口6Cの周囲に複数の移動規制部60が突出して形成されている。
ベース部材6の開口6Cを挟んだ一対の支持面6Sには、板状弾性部材50からなる弾性規制部材5Bの外側取付部50Aを介して、枠部材3がそれぞれ支持される。ベース部材6の他の支持面6Sには、開口部6Cを挟んで一対のコイルホルダ30が支持される。一対の枠部材3と一対のコイルホルダ30には、それぞれ第2駆動部材4Bであるコイル40が互いに対向するように固定される。
弾性規制部材5Bは、外側取付部50Aにおける位置決め孔50A1に支持面6S上の位置決め突起6Dを挿入し、支持面6S上に枠部材3の端面3Bを載せて固定することで、左右の外側取付部50Aがベース部材6の支持面6Sに固定される。弾性規制部材5Bの内側取付部50Bには、レンズ枠部材2の一方の端部2Bが取り付けられる。この際には、取付部材51が内側取付部50Bを挟んでレンズ枠部材2の端部2Bに取り付けられる。
一対の枠部材3の端面3Aには、板状弾性部材50からなる弾性規制部材5Aの一対の外側取付部50Aが支持される。端面3Aに弾性規制部材5Aの外側取付部50Aを載せて押さえ部材52で押さえて固定することで、弾性規制部材5Aの左右の外側取付部50Aが一対の枠部材3の端面3Aに固定される。弾性規制部材5Aの内側取付部50Bには、レンズ枠部材2の他方の端部2Aが取り付けられる。この際には、取付部材53が内側取付部50Bを挟んでレンズ枠部材2の端部2Aに取り付けられる。
レンズ枠部材2は、レンズを装着する筒状の開口であるレンズ装着口20を備える。そして、レンズ枠部材2には、第1駆動部材4Aであるマグネット41が第2駆動部材4Bであるコイル40に対面するように取り付けられている。ここでは、駆動手段4として、レンズ枠部材2の光軸周りに4組のコイル40とマグネット41を設けているが、図示Y軸方向に沿って配置される2組のコイル40とマグネット41は必要に応じて省略することが可能である。その場合にはコイルホルダ30を支持する支持面6Sを省くことができるのでベース部材6の専有面積の省スペース化が可能になる。
図13は、シールドカバー14を取り外した状態の組み立て完了状態を示している。ベース部材6には、その外周縁付近に2つの端子引出部61が設けられており、その端子引出部61にそれぞれ絶縁性部材13を介して端子12(12A,12B)が取り付けられている。複数のコイル40は連続した導線によって構成されており、その一端が端子12Aに接続され、他端が端子12Bに接続されている。
コイル40に電流が流れていない無通電状態では、レンズ枠部材2は、弾性規制部材5A,5Bの弾性変形部50Cによってベース部材6側に押圧(与圧)されており、レンズ枠部材2の基準端面2Sがベース部材6の基準当接面6Pに当接することで安定した状態を保持している。このような与圧を付与するためには、弾性規制部材5Bの外側取付部50Aが支持される支持面6Sの光軸方向の高さに対して弾性規制部材5Bの内側取付部50Bが取り付けられるレンズ枠部材2の端部2Bの光軸方向の高さが高くなるように基準当接面6Pの高さが設定されている。この際、基準端面2Sと基準当接面6Pをレンズの光軸に対して垂直な面に設定しておくことで、弾性規制部材5A,5Bは光軸に対して偏った変形を起こすこと無く光軸に対称な弾性力をレンズ枠部材2に付与し続けることができる。
図15は、レンズ枠部材の繰り出し状態を示した説明図(断面図)である。端子12(12A,12B)に駆動信号が送られコイル40に電流が流れると、図示のように、弾性規制部材5A,5Bによって動きが規制されているレンズ枠部材2は、駆動手段4の駆動力によって光軸方向に沿ってベース部材6から離間するように移動し、駆動手段4の駆動力と弾性規制部材5A,5Bの変形によって高められる弾性力が釣り合うところでレンズ枠部材2の位置が保持される。このように、駆動手段4の駆動力を制御することでレンズ枠部材2の光軸方向に沿った位置を任意に調整することが可能になる。
レンズ駆動装置1Mは、レンズ枠部材2の側面2Cに一対の突起部22を設けてその間にマグネット41を取り付けており、突起部22の突端面22Aとマグネット41の側面41Aを面一(同一面)にしている。これにより、マグネット41の側面41Aの位置は突端面22Aの加工によって精度良く設定することができ、組み立て時にもマグネット41の厚さとは無関係に精度良く位置設定を行うことができる。これによって、マグネット41の側面41Aとコイル40の側面40Aの間隔を高精度に設定して、駆動手段4の駆動性能のばらつきを抑止し、所望の駆動性能を得ることができる。
レンズ駆動装置1Mは、枠部材3が第2駆動部材4B(コイル40)を保持しているが、この枠部材3が、第2駆動部材4Bの厚さに対して十分に大きい突出長さを有する腕部3Cを備えていることで、溝形断面形状の柱部材を構成している。これによって、枠部材3は傾きが生じ難く、ベース部材6の支持面6S上で安定した状態で固定される。このため、枠部材3に保持された第2駆動部材4Bの傾きや揺れを抑止することができ、第1駆動部材4A(コイル40)との間隔を安定且つ高精度に設定することができる。これにより、駆動性能のばらつきを抑止し、所望の駆動性能を得ることができる。
レンズ駆動装置1Mは、2枚の弾性規制部材5A,5Bによってレンズ枠部材2をベース部材6側に押し付ける与圧を付与している。この2枚の弾性規制部材5A,5Bは枠部材3の端面3A,3Bにそれぞれ支持されており、弾性規制部材5A,5Bの間隔が枠部材3の高さによって決められている。このような支持構成にすることで、一対の枠部材3の高さを精度良く一定にし、弾性規制部材5A,5Bの左右のバランスを一定にすることができ、また,弾性規制部材5A,5Bによる弾性力をばらつき無く設定することで、レンズ駆動装置1Mの性能個体差を抑制することが可能になる。
レンズ駆動装置1Mは、ベース部材6に形成した支持面6Sを基準面にして、その上に弾性規制部材5Bを支持し、更にその上に枠部材3を介して弾性規制部材5Aを支持している。このため、支持面6Sを全て同一平面上にし、枠部材3の高さを一定にすることで、2枚の弾性規制部材5A,5Bの支持状態を均一にすることができる。また、2枚の弾性規制部材5A,5Bによってベース部材6側に押し付けられるレンズ枠部材2は、光軸に垂直な基準端面2Sを備えており、この基準端面2Sがベース部材6の基準当接面6Pに当接するので、基準当接面6Pを光軸に垂直な面上に精度良く形成することで、弾性規制部材5A,5Bを偏りの無い状態に保持することができる。これによると、弾性規制部材5A,5Bがレンズ枠部材2に付与する弾性力を光軸に対称な状態に保つことができ、レンズ枠部材2の移動方向を常時光軸に沿った設定方向に規制することができる。
レンズ駆動装置1Mは、枠部材3の光軸方向の高さをこの枠部材3に固定される第2駆動部材4B(コイル40)の光軸方向の高さより小さくしており、枠部材3の端面3A,3Bに支持される一対の弾性規制部材5A,5Bの弾性変形部50Cを第2駆動部材4Bの湾曲部の外側に配置し、無通電時の弾性規制部材5A,5Bを第2駆動部材4Bの光軸方向の高さ内領域に配置している。これによって、レンズ駆動装置1Mの光軸方向の薄型化を実現している。また、弾性規制部材5A,5Bの弾性変形部50Cは第2駆動部材4Bの幅の内を通っている。これによって、レンズ駆動部材1Mの幅方向のコンパクトさを実現している。
レンズ駆動装置1Mは、弾性規制部材5A,5Bの弾性変形部50CにX−Y平面方向に湾曲するように変形する変形吸収部50C1を設けることで、落下衝撃などでレンズ枠部材2がX方向に移動した場合の弾性変形部50Cの破損を抑止している。そして、この変形吸収部50C1を第1駆動部材4A(マグネット41)とレンズ枠部材2の側面の間の空間を利用して配置することで変形吸収部50C1の引き回しスペースを駆動手段4の設置スペースの空きスペース内に設けて、レンズ駆動部材1M内部のスペース効率の向上を図っている。
レンズ駆動装置1Mは、弾性規制部材5Aの外側取付部50Aとそれを枠部材3の端面3Aに押さえ付ける押さえ部材52の平面形状が、枠部材3の腕部3Cに対応する形状になっている。このような形状の外側取付部50Aと押さえ部材52を採用することで、外側取付部50A全体を端面3Aに面接触させることができ、弾性変形部50Cが大きく撓む際に生じる外側取付部50Aの浮き上がりを抑止することができる。これによって、弾性規制部材5Aの弾性力を適正に作用させることができる。
レンズ駆動装置1Mは、ベース部材6を精度良く加工することができ且つ高い剛性を有する金属材料で形成し、このベース部材6の外周縁部に端子引出部61を設けて、絶縁性部材13を介して端子12を引き出している。これによると、ベース部材6に支持面6S,基準当接面6P,移動規制部60などの複雑な形状部位を設けることを可能にし、また、端子12に絶縁塗装をする手間を省いている。更には、ベース部材6の支持面6S側全体を覆うシールドカバー14を設けることで、レンズ駆動装置1Mから周囲に発せられる電磁ノイズの輻射を効果的に抑止することができる。
また、レンズ駆動装置1Mは、ベース部材6に移動規制部60を設けて、レンズ枠部材2がベース部材6側に押し付けられている状態では、レンズ枠部材2は光軸周りに回転しないようにしている。これにより、レンズバレルをレンズ枠部材2のレンズ装着口20に取り付ける際のネジ込みトルクでレンズ枠部材2が回転して弾性規制部材5A,5Bが破損する不具合を解消することができる。
図16と図17は、駆動されるレンズ枠部材にコイルを固定したムービング・コイル型のレンズ駆動装置を示している。このレンズ駆動装置1Cは、前述したレンズ駆動装置1Mと同様に、ベース部材6に対して各部品を積み上げるように組み立てることができ、枠部材3、弾性規制部材5A,5B、レンズ枠部材2を備えている。そして、レンズ枠部材2に第1駆動部材4Aとしてのコイル40が固定され、レンズ枠部材2の周囲に配置される枠部材3及びマグネットホルダ31に第2駆動部材4Bとしてのマグネット41が固定されている。レンズ駆動装置1Cは、コイル40とマグネット41の配置に係る事項以外はレンズ駆動装置1Mと同じ構成であって同じ機能を有しているので、同じ部位には同一符号を付して重複説明を省略する。
図18は、レンズ駆動装置の実装状態を示している。前述したレンズ駆動装置1,1M,1Cは、撮像素子が実装された回路基板17上に配備され、ベース部材6から引き出された端子12A,12Bが回路基板の接続端子17A,17Bに半田などで接続される。ベース部材6は、その外周縁部にカバー取付部6Rを備えており、このカバー取付部6R上にシールドカバー14の外周端が載置される。シールドカバー14は、駆動手段4(第1駆動部材4A,第2駆動部材4B)や端子12A,12Bのレンズ枠部材2側を覆うように配置され、その天板部にはレンズ枠部材2のレンズ装着口20に装着されるレンズバレル21を露出させる開口14Aが形成されている。このようなシールドカバー14を設けることで駆動手段4から発せられる電磁ノイズの輻射を効果的に抑止することができる。
図19,図20は、レンズ駆動装置を備えた電子機器の例を示している。レンズ駆動装置1,1M,1Cは、図19に示すように、集光や結像機能或いは撮像機能を有する光学機器や電子機器、例えば、カメラ100,撮像装置200に装着される。また、レンズ駆動装置1,1M,1Cは、図20に示すように、集光や結像機能或いは撮像機能を有する携帯情報端末300(携帯電話,スマートフォン,タブレット型PC,ノート型PCなど)に装着される。
レンズ駆動装置1,1M,1Cを備えた光学機器や電子機器(カメラ100,撮像装置200,携帯情報端末300など)は、レンズ駆動装置1,1M,1Cの高いレンズ駆動性能によって良好な集光や結像性能或いは撮像性能を得ることができる。また、薄型化或いは小型化の実現が可能なレンズ駆動装置1,1M,1Cを装備することで他の部品を搭載するための内部スペースを十分に確保することができ、光学機器,電子機器自身の薄型化や小型化を実現することができる。また、電磁ノイズの輻射を抑止したレンズ駆動装置1,1M,1Cを装着した光学機器や電子機器(カメラ100,撮像装置200,携帯情報端末300など)は、安定した動作性能を発揮することができる。
特に、オートフォーカス機能を備えた光学機器や電子機器(カメラ100,撮像装置200,携帯情報端末300など)は、レンズ駆動装置1,1M,1Cがレンズの光軸方向に沿って直進性を維持しながらレンズ枠部材2を駆動させることができるので、所望のフォーカス性能を実現することができる。
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、本発明の具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。