JP6310198B2 - 桟橋構築方法 - Google Patents

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Description

本発明は、桟橋を構築するための方法の技術に関するものであり、特に、ダム湖等の水上に桟橋を構築するための技術に関するものである。
(桟橋施工の概要)
図6〜図9に基づいて、従来の桟橋施工について説明する。
図6は、従来の桟橋施工を示す斜視図であって、一支間長の桟橋パネルをクレーンで設計位置に運搬している様子を示している。
図7は、図6の後工程を示す斜視図であって、桟橋構築完了部分に対して延設した桟橋パネルをガイドに利用し、支持杭を地盤に打ち込んでいる様子を示している。
図8は、桟橋施工で用いる削孔装置を示している。
図9は、従来の桟橋施工において補強材等をダイバーによる水中作業で取り付けている様子を示している。
特許文献1に開示された桟橋施工では、はじめに図6に示すように、桟橋構築完了部分からなる足場上にクレーンを用意し、該クレーンで桟橋パネル71を吊り込んで、延設地点(桟橋構築完了部分の先端位置)へ運搬する。続いて、運搬してきた桟橋パネル71を、桟橋構築完了部分の先端側の既設桁(既設桟橋パネル)に対し連結して、図7に示すように、桟橋構築完了部分から水平方向に張り出すように取り付ける。
次に図7に示すように、橋脚を成す支持杭73を、延設した桟橋パネル先端の杭ガイド16に通して、打設予定位置の地盤上に建て込む。続いて、後述する削孔装置90のドリルロッドを、建て込んだ支持杭73に挿通させる。支持杭73の先端からドリルロッドの先端ビットが突き出たら、該ドリルロッドで対象地盤を回転掘削しつつ同時に支持杭73の打ち込みを行い、次いで、打設した支持杭73の頭部を桟橋パネル先端の筒状の杭ガイド16に固定する。
図示する例では、1つの桟橋パネルを延設する毎に3本の支持杭を打設して、これらの杭頭部をそれぞれ杭ガイド16に固定する。上記工程を経て、1支間分(1桟橋パネル分)の桟橋構築作業が完了する。
上述した工程を繰り返して、桟橋パネルの延設と支持杭の打設とを繰り返すことにより設計長の桟橋を完成させる。
(削孔装置)
次に、図8に基づいて、上述した桟橋施工で用いる削孔装置について説明する。
図8に示す削孔装置90は、主として、回転駆動装置91と、該駆動装置の下部に固定された排土キャップ92と、該排土キャップの内側を通って回転駆動装置91に連結された長尺のドリルロッド93とを有している。
回転駆動装置91は、その下部のドリルロッド93を回転駆動する。
ドリルロッド93はダウンザホールハンマ94を含んで構成されており、該ハンマは、打撃力発生用のピストンを内部に具備している。ドリルロッド93の上端側は、略スリーブ状の排土キャップ92の内側を通って、回転駆動装置91に連結されている。一方、ドリルロッド93の下端にはハンマービット95が設けられている。
杭打ちの際には、図8に示すように支持杭73の内空部にドリルロッド93を挿通させ、支持杭73の先端からハンマービット95を突き出した状態・拡径させた状態で対象地盤を掘削する。
上記構成の削孔装置90を用いて掘削を行う際には、ダウンザホールハンマ94による連続的打撃を対象地盤に対し加えながら回転掘削を行う。掘削土は、ダウンザホールハンマ94の駆動用エアを利用してエアリフト式に吹き上がる。吹き上げられた掘削土は、エアの流れに乗って支持杭内の排土経路を通り、支持杭73の上端開口部から噴出する。
支持杭73の上部から噴出した掘削土は、図8に矢印で示すように、支持杭73の上部と排土キャップ92との間の隙間を通って外部へ排出される。排土キャップ92を介して排出された掘削土は、支持杭73と飛散防止カバー96の間の隙間を通って下方へ落下する。
特許第3211673号公報
桟橋の構築にあたっては、一般的に図9に示すように、隣り合う支持杭73,73の間に、鉄骨などからなる補強材81を架け渡すことで、高い安定性を確保している。このような補強材81を支持杭間に取り付ける際には、該補強材を支持杭73に固定するための固定部材83が用いられる。
しかしながら、ダム湖等の水上に構築される一般的な桟橋では、図9に示すように、補強材81や固定部材83の多くが水中に取り付けられるため、その取付作業はダイバー85が長時間にわたって水中に潜って行う必要があった。このようなダイバーによる水中作業は、水上での作業に比べると作業性が著しく悪いため、水中作業に多くの手間と時間を要していた。特に、水深が深くなるにつれて水圧が高くなって、ダイバーへの負担が増大するとともに、水中作業が危険なものとなっていた。
また、ダム湖等の湖沼は、水の濁度が高くて視界が悪いため、支持杭への固定部材の取付といった水中作業(水中でのボルト締め等)に多くの手間と時間がかかり、施工コストの高騰と工期の長期化を招いていたため、作業性の改善が強く求められていた。また、このように水の濁度が高くて視界が悪い状況のもとでは、寸法取りなどが困難なため、固定部材や補強材を、支持杭の所定位置に正確に取り付けることが困難であった。
そこで上述した従来技術の問題点に鑑み、この出願の発明の目的は、ダム湖等の水上に桟橋を構築する際におけるダイバーの作業負担を軽減することができ、施工現場の水質にかかわらず、補強材やその固定部材を支持杭の所定位置に正確に取り付けることが可能な桟橋構築方法を提供することにある。
上記目的は、支持杭をなす杭材を打設して、隣り合う杭材を補強材で連結する桟橋構築方法において、前記補強材の固定に用いる固定部材の少なくとも一部を、杭材に取り付けて、該杭材を地中に設置する(すなわち地中に建て込む又は打設する)、ことによって達成される。
また上記目的は、支持杭をなす杭材を打設して、隣り合う杭材を補強材で連結する桟橋構築方法において、前記補強材の固定に用いる固定部材の取り付け予定位置を、杭材にマーキングして、該杭材を地中に設置する(すなわち地中に建て込む又は打設する)、ことによって達成される。
また上記目的は、上部構造を支持するための杭材を打設して、隣り合う杭材を補強材で連結する桟橋構築方法において、前記補強材の固定に用いる固定部材の取り付け予定位置を、杭材の吊り上げ途中または吊り下げ途中で、該杭材にマーキングする、ことを特徴とする桟橋構築方法によって達成される。
また上記目的は、上部構造を支持するための杭材を打設して、隣り合う杭材を補強材で連結する桟橋構築方法において、前記補強材の固定に用いる固定部材の少なくとも一部を、杭材の吊り上げ途中または吊り下げ途中で、該杭材に取り付ける、ことを特徴とする桟橋構築方法によって達成される。
また上記目的は、桟橋構築完了部分に導材を設け、該導材で杭材をガイドしながら打設し、隣り合う杭材を補強材で連結する、桟橋構築方法であって、前記導材を介して杭材を吊り降ろして打設する工程と、前記導材を介して杭材を吊り降ろす途中または吊り上げる途中で、補強材の固定に用いる固定部材を、該杭材に取り付ける工程と、を含む桟橋構築方法によって達成される。
また上記目的は、桟橋構築完了部分に導材を設け、該導材で杭材をガイドしながら打設し、隣り合う杭材を補強材で連結する、桟橋構築方法であって、前記導材を介して杭材を吊り降ろして打設する工程と、打設した前記杭材を引き抜いて、前記導材でガイドしながら吊り上げる工程と、杭材を吊り上げる途中で、補強材の固定に用いる固定部材の取り付け予定位置を、前記杭材にマーキングする工程と、マーキングされた前記杭材を、前記導材でガイドしながら吊り降ろす工程と、杭材を吊り降ろす途中で、前記杭材のマーキング位置に前記固定部材を取り付ける工程と、前記固定部材が取り付けられた前記杭材を吊り降ろして、打設位置に建て込む工程と、を含む桟橋構築方法によって達成される。
上述した桟橋構築方法では、例えば、杭材に取り付ける前記固定部材は、一対の上固定部材および下固定部材で構成され、前記固定部材の取付工程で、上固定部材および下固定部材の少なくとも何れか一方を前記杭材に取り付けるようにする。
また上述した桟橋構築方法では、上下方向で離隔した複数の導材を介して杭材を吊り降ろし、該杭材の直進性を維持しながら地盤に打設することが好ましい。
本発明では、杭材を地盤に最終的に建て込む前(すなわち杭材の最終的な打設の前)に、該杭材に対して補強材固定部材の全部または一部を取り付けるようになっている。この固定部材の取り付けのタイミングは特に限定されず、いかなる場所で実施してもよい。例えば、桟橋構築完了部分に固定した足場に作業員を配置して、その場において取り付けるようにしてもよい。または、現場に横置きされた杭材(建て込み前の作業場の杭材)に対して、固定部材を取り付けるようにしてもよい。或いは、杭材を現場に搬入する前の機材センターや杭材製造現場などにて、杭材に固定部材を取り付けるようにしてもよい。
このように本発明では、杭材の地中への設置に先行して(或いはそれと同時並行で)、該杭材に対して固定部材を取り付けておくので、杭材打設後におけるダイバーの負担が大幅に軽減される。
また、杭材を地盤に最終的に建て込む前に、補強材固定部材の取り付け予定位置に、その目印となるマーキングを施すようになっている。このマーキングについても、実施のタイミングは特に限定されず、いかなる場所で実施してもよい。
このように本発明では、杭材の地中への設置に先行して(或いはそれと同時並行で)、該杭材に対してマーキングを施しておくので、その後の固定部材の取り付け作業をスピーディーに且つ正確に行うことが可能になる。
後述する一例としての実施形態では、杭材を仮打設した後、地盤からいったん引き抜くとともに、導材でガイドしながら吊り上げるようになっている。そして、このように杭材を吊り上げる途中で、補強材を固定するための固定部材の取り付け予定位置を、当該杭材にマーキングする。このマーキングは、ダイバーが水中で行うものではなく、足場に配置した作業員が気中(水面より上の大気中)で行う。マーキングの方法は特に限定されず、視覚的に分かる手段であれば、いかなる方法でも採用可能である(例えば着色用のスプレーなど)。
このような実施例により、補強材固定部材の取付位置をダイバーが水中で定める手間が省けるので、その分ダイバーの負担や水中作業量が減り、作業効率の改善を図ることができる。また、工期の短縮や施工コストの低減を図ることができる。
また後述する実施形態では、仮打設された杭材を上述したように引き抜いて吊り上げた後、当該杭材を打設方向に再び吊り降ろすようになっている。そして、このように吊り降ろす途中で、杭材のマーキング位置に補強材固定部材の全部または一部を取り付けるようになっている。これにより、水中で杭材に固定部材を取り付けるための作業量が減り、或いは、水中での固定部材の取り付けが不要となって、その分ダイバーの負担や水中作業量が減り、作業効率の改善を図ることができる。また、更なる工期の短縮・施工コストの低減を図ることができる。
また後述する実施形態では、杭材を目標深度まで打設してから、いったん引き抜くようにし、その吊り上げ過程又はその後の吊り下げ過程で、固定部材取付予定位置を杭材にマーキングしたり、固定部材を杭材に取り付けるようになっている。このように、固定部材の取り付けに先行して仮打設したりマーキングをすることで、補強材の取付予定位置を正確に定めることが可能になる。また、杭材を目標深度まで打設してから一旦引き抜くことで、水中ではなく気中(水面より上の大気中)において、杭材にマーキングしたり固定部材を取り付けることが可能になる。したがってこの実施例によれば、気中での作業にもかかわらず、杭材の所定位置に正確に補強材固定部材を取り付けることが可能になる。
また後述する実施形態では、上下方向で離隔した複数の導材を介して杭材を吊り降ろし、該杭材の直進性を維持しながら地盤に打設するようになっている。これにより、杭材の打設時においてその貫入抵抗の増大が可及的に回避され、また、打設される杭材の鉛直精度を簡単かつ確実に確保することができる。
また、上記のように複数の導材を介して杭材を上げ下げすることで、その間の杭材の姿勢が安定するので、マーキングや固定部材の取り付け作業を効率的に且つ安全に進めることができる。
桟橋構築作業で用いる杭材ガイド構造を示す正面図である。 図1の杭材ガイド構造が具備する第1の導材と第2の導材を示す平面図である。 桟橋構築方法の一工程(工程a)を例示する図である。 桟橋構築方法の一工程(工程b)を例示する図である。 桟橋構築方法の一工程(工程c)を例示する図である。 桟橋構築方法の一工程(工程d)を例示する図である。 桟橋構築方法の一工程(工程e)を例示する図である。 桟橋構築方法の一工程(工程f)を例示する図である。 桟橋構築方法の一工程(工程g)を例示する図である。 桟橋構築方法の一工程(工程h)を例示する図である。 桟橋構築方法の一工程(工程i)を例示する図である。 リング状固定部材による補強材の固定態様の一例を示す拡大図である。 桟橋構築方法の一工程(工程a)を例示する図である。 桟橋構築方法の一工程(工程b)を例示する図である。 桟橋構築方法の一工程(工程c)を例示する図である。 桟橋構築方法の一工程(工程d)を例示する図である。 桟橋構築方法の一工程(工程e)を例示する図である。 桟橋構築方法の一工程(工程f)を例示する図である。 従来の桟橋施工を示す斜視図であって、桟橋パネルをクレーンで設計位置に運搬している様子を示している。 図6の後工程を示す斜視図であって、延設した桟橋パネルの先端部をガイドに利用し、支持杭を打ち込んでいる様子を示している。 桟橋施工で用いる削孔装置を示す図である。 従来の桟橋施工においてダイバーの水中作業によりリング状固定部材や補強材を取り付けている様子を示す図である。
(杭材ガイド構造)
はじめに、図1及び図2に基づいて、後述する桟橋構築方法で利用する杭材ガイド構造について説明する。
図1は、杭材ガイド構造を示す正面図である。
図2(A)は、図1の杭材ガイド構造が具備する第1の導材を示す平面図である。
図2(B)は、図1の杭材ガイド構造が具備する第2の導材を示す平面図である。
図1に示す杭材ガイド構造は、桟橋構築の際に打設する杭材4を対象地盤方向へガイドするとともに、打設の間この杭材4(管状杭/支持杭)の直進性を維持するための構造である。この杭材ガイド構造は、主として、杭材ガイド手段をなす第1の導材1と、これとは別体の杭材ガイド手段をなす第2の導材2と、これらの導材1,2を相互連結する連結部材3,3を有している。以下、必要に応じて、第1の導材1は単に「導材1」と略称し、第2の導材2は単に「導材2」と略称する。
(第1の導材)
導材1は、杭材4を打設方向にガイドするとともに、導材2と協働して杭材4の直進性を維持する役割を担っている。この導材1は、図7に示す従来技術の桟橋パネルと同様に桟橋構築完了部分から張り出すように取り付けられる。この導材1を介して必要数の杭材(本実施形態の場合では一つの導材につき3本の杭材)を打設したら、当該導材1を桟橋構築完了部分から取り外すことなくそのまま上部構造の一部として(すなわち、桁材としての機能を具備する桟橋パネルとして)利用することが可能である。
この導材1は、図2(A)の平面図に示すように、主として、メインフレーム14と、該メインフレームに連結された横桁15とから構成されている。メインフレーム14は、主桁・横桁としての機能を具備するフレーム状部材である。
メインフレーム14は、既設の桟橋パネルに対し連結される連結部材13を複数有している。横桁15は、打設時に杭材を地盤へガイドする筒状の杭ガイド16(杭頭固定管)と、次段のメインフレームに対して連結される連結部材17を有している。筒状の杭ガイド16は、杭材を挿通させるための挿通孔19を有している。
(第2の導材)
導材2は、杭材4を打設方向にガイドするとともに、上記導材1と協働して杭材4の直進性を維持する役割を担っている。この導材2は、図1に示すように連結部材3を介して導材1に連結される。この導材2は、必要数の杭材(本実施形態の場合では3本の杭材)の打設が完了したら撤去できるように、導材1に対して連結され固定されている。
この導材2は、図2(B)の平面図に示すように、杭材4を挟んで向かい合うように配される2本の定規本体21,21(足場)と、打設される杭材4を定規本体21,21間の所定位置に位置決めする位置決め部材23とを有している。一対の位置決め部材23,23は、図2(B)に示すように、略井桁状になるように定規本体21,21に固設されている。
(連結部材)
連結部材3は、図1に示すように、導材2を導材1に対して連結する役割を担っている。この連結により、導材1に対する導材2の相対姿勢や位置が固定されるので、導材1,2を通って打設される杭材4の直進性が維持される。
この連結部材3は、撓み難いように柱状の鋼材で構成されている。またこの連結部材3は、導材1,2を任意の離隔で固定できるように構成されている。例えば本実施形態の場合では、連結部材3には、導材1に対して連結させるための連結金具31が設けられている。この連結金具31は、段階的に固定位置を変更できるように設けられている。一方、連結部材3の下端側では導材2が固設されている。
また、この連結部材3は、図1に示すように梯子としても機能するように構成されている。このように連結部材3に梯子機能を持たせることで、導材1,2との間を作業員が連結部材を伝って昇り降りできるようになり、後述するマーキング作業やリング状固定部材の取り付け作業などを効率的に進めることが可能になる。
(桟橋構築方法)
次に、図3A〜図3Fを参照しながら、上述した杭材ガイド構造を利用した桟橋構築方法について説明する。なお、以下説明する工程a〜iは、それぞれ図3A〜図3Iに対応している。
1.工程a/第1の導材を片持ち状に延設する工程(図3A)
図3Aに示す桟橋構築完了部分は、主として、上部構造とそれを支える下部構造とで構成されている。桟橋構築完了部分は、完成予定の桟橋全体の一部分の構造物であるが、構築済みの当該部分(図示する構造物部分)だけであっても、上部構造と下部構造を具備する構台として機能する。したがって、桟橋構築完了部分は機械足場として利用可能であり、各種施工用機材や重機をその上に搬入することが可能である。
この工程では、図3Aに示すように桟橋構築完了部分(機械足場)にクレーンを用意し、これを使って、導材1を、該桟橋構築完了部分の前方または側方(すなわち桟橋架設方向/桟橋拡張方向)に吊り下ろす。この導材1は、前述したとおり、杭材の打設時には杭ガイドとして機能し、杭材の打設完了後には、上部構造の一部(桁材としての機能を具備する桟橋パネル)として利用できる。
次に、桟橋構築完了部分の前方に用意した導材1を、該桟橋構築完了部分の既設桟橋パネル1’に連結する。この既設桟橋パネル1’は、既打設の杭材4’の打設時に第1の導材として機能していた部材であって、図示する状態では上部構造の一部として機能している。桟橋パネル1’と導材1は、同様の構成を有している。
この既設桟橋パネル1’の端に導材1を連結して、桟橋構築完了部分から水平方向に張り出すように、該導材1を片持ち状に延設する。続いて、片持ち状に延設した導材1を、「杭材ガイド手段」兼「作業足場」として利用できるように、該導材1を、桟橋構築完了部分側に立設された反力ポール51に対してワイヤで連結する(図3B参照)。これにより、導材1とその上に載せる作業機材などの荷重を、桟橋構築完了部分側に預けることができる。
このように取り付けられた導材1は、杭材打設が完了するまでは、杭材をガイドするとともにその直進性を維持するための部材として機能する。一方、必要本数(当該第1の導材を使って打設する本数)の杭材の打設が完了したら、杭材ガイド手段としての役割を終えるが、撤去することなく現状の取付位置で、上部構造の一部(主桁・横桁としての機能を具備する桟橋パネル)として機能する。
2.工程b/第1の導材の下方に第2の導材を取り付ける工程(図3B)
次に、延設した導材1の横桁15の下方に、導材2を吊り下ろし、図3Bに示すように連結部材3にて導材1,2を相互連結し、導材2を導材1に対して固定する。また、導材1に対する導材2の相対姿勢や相対位置が更に安定するように、桟橋構築完了部分の下部構造と導材2の間に、鋼材などからなる堅牢な連結部材6を架設する。
この状態を桟橋構築完了部分の正面側から見たときの様子を図1に示す。図1に示す状態で、導材2は、導材1に対してその位置や姿勢が固定されており、該導材1と協動して杭材4(導材1,2を介して打設される杭材4)の直進性を維持することが可能である。また、導材2を導材1に連結することで、作業員は、梯子として機能する連結部材3を伝って、導材1,2間で昇り降りすることができる。さらに、導材1,2は、図1に示すように、それぞれ足場としても利用できるように構成されているので、後述する杭材へのマーキングやリング状固定部材の取り付けなどを円滑に進めることができる。
3.工程c/第1及び第2の導材でガイドしながら杭材を仮打設する工程(図3C)
上述した作業を経て、導材1,2の取り付けと連結が完了したら、下部構造の一部として利用可能な杭材4を、導材1,2に通して地盤上に建込む。そして、図3Cに示すように削孔装置90を使って、杭材を目標深度まで打設(仮打設)する。削孔装置90の構成やこれを用いた打設原理は、図8を引用して説明した従来技術と同様である。打設する杭材4の具体例としては、例えば鋼管杭(管状杭)などが挙げられる。この杭材は、上部構造を支持する支持杭として機能する。
なお、この打設工程では、打設する杭材4が、離隔した2点(打設方向で離隔して固設された導材1,2)によってガイドされ続けるので、打設中の杭材4の直進性は維持される。
4.工程d/杭材を地盤から引抜いて吊り上げる途中でマーキングする工程(図3D)
上記工程cで所定深度まで仮打設したら、次いで当該杭材の引き抜きを行う。
なお図3Dに示す状態において、杭材の下端開口部からは、削孔装置90のドリルロッド下端にあるハンマービット95が拡径状態で突き出ている。したがって、クレーンで削孔装置90を吊り上げると、当該ハンマービット95によって下支えされた状態で杭材4が地盤から引き抜かれる。すなわち、削孔装置90を吊り上げると、杭材4の下端に拡径状態のハンマービット95が引っかかるので、杭材4が削孔装置90と一体となって地盤から引き抜かれる。
この引き抜き工程の際には、図3Dに示すように、足場としても機能する導材2に作業員を配置する。この作業員は、杭材4を引抜く過程で、リング状固定部材取付予定位置にマーキングを行う(図3D左下参照)。
「リング状固定部材」とは、杭材補強部材をなす補強材を、杭材に固定するための固定部材である。このリング状固定部材は、杭材の所定位置(補強材の連結位置)に所定ピッチで取り付けられる。また図4に示すように、杭材の外周を囲繞するように取り付けられる。
「補強材」とは、打設された杭材間に架け渡して下部構造を補強するための部材であって、一般的には水平材と斜材から構成される。なお、本実施形態では、水平材と斜材から構成される補強材を用いているが、水平材・斜材のいずれか一方で補強材を構成する態様も採用可能である。
図3Dの左下にリング状固定部材の一例を示す。図示するとおり、固定部材をなすリング状固定部材7は、上固定部材8(リング状上部材)と下固定部材9(リング状下部材)を具備し、これらの各部材はボルト締結によって杭材に固定される。杭材補強部材をなす補強材は、杭材と一体化するように取り付けられたリング状固定部材7(上固定部材8と下固定部材9)によって、杭材に対して固定される。
足場(本実施形態の場合では導材2)に配置された作業員は、杭材4が引き抜かれる過程で杭材表面の所定位置にマーキングする。所定位置とは、リング状固定部材の取り付け予定位置(補強材の固定位置)である。例えば、図3Dに示すように引き抜きによって杭材が4m上昇するたびに、杭材4に対してマーキングを行い、これをリング状固定部材取付下端位置まで必要回数繰り返す。
作業員が配置された導材2は、図3Dに示すように気中にあるので(すなわち水面より上の大気中にあるので)、リング状固定部材取付位置のマーキングが容易である。また、マーキング対象の杭材側が上下に移動するので、杭材の複数箇所にマーキングするにあたって作業員は移動する必要がない。しかも、先行して杭材を仮打設したので、リング状固定部材取付位置を正確に定めることができる。
なお、本実施形態では、導材2に作業員を配置してマーキングしているが、導材1に作業員を配置してマーキングを行うようにしてもよい。また、マーキングの方法は特に限定されず、例えばスプレーにより該当位置を着色することなどが挙げられる。
5.工程e/リング状固定部材を取り付ける工程(図3E)
上記工程でマーキングをリング状固定部材取付下端位置まで行ったら、再び、杭材4を打設方向に導材1,2を介して吊り降ろす。このときも、杭材4の下端は、削孔装置90のハンマービット95によって下支えされているので、杭材4は削孔装置90と一体となって降下する。
この吊り降ろし過程では、導材2にいる作業員が、図3Eの左下に示すように、杭材4に下固定部材9(リング状固定部材の一部)を取り付ける。杭材表面の下固定部材取付予定位置には、前工程でマーキングが施されているので、下固定部材9の取り付けは速やかに且つ正確に位置決めして行うことができる。この下固定部材9の取り付けを、杭材4を吊り降ろす過程ですべてのマーキング位置に対して行う。
なお、本実施形態では、導材2に作業員を配置してリング状固定部材を取り付けているが、導材1,2を介しての杭材4の吊下ろしに支障がなければ、導材1に作業員を配置してリング状固定部材を取り付けてもよい。
6.工程f/杭材を建て込む工程(図3F)
上記工程でリング状固定部材の下固定部材を所定のマーキング位置に取り付けたら、そのまま杭材4を吊り降ろして、杭材引き抜き前と同レベルまでの建て込みを行う。このとき、堆積土砂等が建込みの障害となる場合は、削孔装置90によるブローを主とした削孔を行って、所定深度まで建込みをする。
7.工程g/建て込んだ杭材から削孔装置を引抜く工程(図3G)
上記工程で所定深度まで杭材4を建て込んだら、この杭材から削孔装置90を引抜く。
8.工程h/ビット厚分の最終の杭頭押さえを行う工程(図3H)
次に、削孔装置90の下端にあるハンマービット95を、図3Hに示すように杭材4の頭部に押し当て、打撃にてビット厚分の最終の杭頭押さえ(杭頭打撃)を行う。
6.工程i/補強材、覆工板等を取り付ける工程(図3I)
上記工程を経て杭材4の打設が完了したら、根固めモルタルを打設するとともに、杭頭処理を行う。以後は、隣り合う杭材4,4’を、斜材及び水平材からなる補強材で連結し、該連結部位に上固定部材(図3E参照)を取り付けて、該補強材を杭材に確りと固定する。
続いて、リング状固定部材による補強材の固定態様の一例を図4に示す。
図4に示すように、気中にて先付した下固定部材9と、ダイバーが水中にて後付けした上固定部材8のそれぞれに対して、水平材41をボルトで固定する。これにより、水平材41は、杭材4と一体となったリング状固定部材7に対して確りと固定される。さらに、リング状固定部材7に対して固定された水平材41に対し、斜材42,42をボルトで固定する。これにより、斜材42,42も杭材に対して確りと固定される。
よって、隣り合う杭材間に架設された補強材(水平材41,斜材42)は、リング状固定部材を介して杭材と一体化するので、隣り合う杭材を確りと補強する。
なお、図4に示す補強材の取り付け態様は一例であって、リング状固定部材による補強材の固定の仕方をこれに限定する趣旨ではない。例えば、図4に示す例では、リング状固定部材7に対して水平材41を直接的に固定し、水平材42を間接的にリング状固定部材7に対して固定しているが、水平材41と斜材42のそれぞれをリング状固定部材に対してボルト等で直接的に固定する態様も採用可能である。
(この桟橋構築方法で達成される格別の効果)
上述したような桟橋構築方法により、リング状固定部材取付位置をダイバーが水中で定める手間が省けるとともに、リング状固定部材取り付けのための水中作業量が大幅に減るので、その分ダイバーの負担や水中作業量が減り、作業効率の改善を図ることができる。また、工期の短縮や施工コストの低減を図ることができる。
また、上下方向で離隔した導材1,2を介して杭材を吊り降ろし、該杭材の直進性を維持しながら地盤に打設するようになっている。これにより、杭材の打設時においてその貫入抵抗の増大が可及的に回避され、また、打設される杭材の鉛直精度を簡単かつ確実に確保することができる。
(他の実施形態)
上述した実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、特許請求の範囲に記載の本発明には様々な実施形態が含まれる。例えば、以下に述べるような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
上述した実施形態では、仮打設した杭材をいったん引抜いて吊り上げる途中で、杭材表面にマーキングを施し、続いて、吊り降ろす途中で、リング状固定部材を杭材に取り付けるようにしていたが、マーキングやリング状固定部材取り付けのタイミングは必ずしもこれに限定されない。すなわち、マーキングやリング状固定部材取り付けは、杭材の吊り上げ・吊り下げ、いずれのタイミングで行ってもよい。その際、導材1および導材2の両方に作業員を配置して、一方に配置した作業員がマーキングを実施し、他方に配置した作業員がリング状固定部材を取り付けるようにしてもよい。
また上述した実施形態では、杭材にマーキングを施した上で、当該マーキング位置にリング状固定部材を取り付けているが、マーキング工程を省いてリング状固定部材を直接に杭材に取り付けるようにしてもよい。
また上述した実施形態では、リング状固定部材の一部(下固定部材)を気中にて杭材に先行取付しているが、水中での補強材の取り付け作業の妨げにならなければ、上固定部材及び下固定部材の双方を気中で杭材に取り付けるようにしてもよい。
また上述した実施形態では、リング状固定部材を杭材に取り付ける前に、該杭材を仮打設して固定部材の取付位置を決定しているが、杭材の打設深度が予め定まっている場合(例えば硬質地盤への打設などの場合)には、図5A〜5Fの工程に示すように、仮打設を省略して気中にてリング状固定部材を杭材に取り付けてから、該杭材を地盤に打設することも可能である。これにより、杭材を打設してからいったん引く抜く必要が無くなるので、桟橋の構築作業を効率的に進めることができる。
また上述した実施形態では、導材に作業員を配置して、杭材を吊り降ろす過程でリング状固定部材を杭材に取り付けているが、該固定部材の取り付けタイミングはこれに限定されるものではない。例えば、図示するように桟橋構築完了部分に固定した足場に作業員を配置して、その場において取り付けるようにしてもよい。または、現場に横置きされた杭材(作業場の杭材)に対して、固定部材を取り付けるようにしてもよい。或いは、杭材を現場に搬入する前の機材センターや杭材製造現場などにて、杭材に固定部材を取り付けて、その状態で杭材を現場に搬入するようにしてもよい。リング状固定部材の取付予定位置に対するマーキングについても同様である。
また本発明でいう「桟橋」とは、上部構造と下部構造からなる構造物を広く含む趣旨であり、例えば、作業構台、人工地盤、橋梁などの構造物も含まれる。したがって、これらの構造物の構築方法は本発明の技術的範囲に含まれることに留意されたい。
1 第1の導材(桟橋パネル/杭材ガイド手段)
1’ 既設の桟橋パネル(使用済みの第1の導材)
2 第2の導材
3 連結部材
3’ 連結部材
4 杭材
4’ 既打設の杭材
6 連結部材
7 リング状固定部材(補強材を固定するための部材)
8 上固定部材(上部材)
9 下固定部材(下部材)
13 連結部材
14 メインフレーム
15 横桁
16 杭ガイド
17 連結部材
19 挿通孔
21 定規本体
23 位置決め部材
31 連結金具
41 水平材
42 斜材
51 反力ポール
71 桟橋パネル
73 支持杭
81 補強材(下部構造を補強するための部材)
83 固定部材(補強材を固定するための部材)
90 削孔装置
91 回転駆動装置
92 排土キャップ
93 ドリルロッド
94 ダウンザホールハンマ
95 ハンマービット
96 飛散防止カバー

Claims (4)

  1. 支持杭をなす杭材を打設して、隣り合う杭材を補強材で連結する桟橋構築方法において、前記補強材の固定に用いる固定部材の取り付け予定位置を、杭材にマーキングして、該杭材を地中に設置する、ことを特徴とする桟橋構築方法。
  2. 支持杭をなす杭材を打設して、隣り合う杭材を補強材で連結する桟橋構築方法において、前記補強材の固定に用いる固定部材の少なくとも一部を、杭材の吊り上げ途中または吊り下げ途中で、該杭材に取り付ける、ことを特徴とする桟橋構築方法。
  3. 支持杭をなす杭材を打設して、隣り合う杭材を補強材で連結する桟橋構築方法において、前記補強材の固定に用いる固定部材の取り付け予定位置を、杭材の吊り上げ途中または吊り下げ途中で、該杭材にマーキングする、ことを特徴とする桟橋構築方法。
  4. 上下方向で離隔した複数の導材を介して杭材を吊り降ろし、該杭材の直進性を維持しながら地盤に打設する、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の桟橋構築方法。
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