JP6308033B2 - 中空粒子およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、内部に単一の空隙が形成された中空粒子およびその製造方法に関する。
断熱性や軽量性、光散乱性などを付与するための機能部材として、内部に空隙が形成された中空粒子が開発されている。
中空粒子は、例えば、乳化重合法によって重合体粒子を形成させる過程において、酸性の重合体粒子に塩基性化合物を添加して中和することによって当該重合体粒子を膨潤させるアルカリ膨潤法、特にアルカリ膨潤させた後、さらに酸処理を施す塩基−酸膨潤法を利用して空隙を形成する工程を行うことによって、得ることができる(例えば、特許文献1,2参照。)。
しかしながら、これらの方法においては、用いられる重合体粒子が親水性モノマーを用いて作製されたものであるために、得られる中空粒子は吸湿性の高いものとなり、湿度環境によって水分量の変動が生じてしまう、という問題がある。
また例えば、中空粒子は、水系媒体中において重合を行って重合体粒子を形成する際に、形成された重合体粒子の内部において相分離および重合収縮を生じさせることによって空隙を形成する方法によっても、得ることができる(例えば、特許文献3〜7参照)。
しかしながら、特許文献3〜5に開示された方法によって得られる中空粒子は、内部に複数の区画された空隙を有する多孔質のものとなってしまう。すなわち、特許文献3〜5に開示された方法によっては、意図的に内部に単一の空隙を有する単一中空粒子を形成させることは困難であった。
一方、特許文献6,7に開示された方法によれば、単一中空粒子を多く含む粉体を得ることができる。
しかしながら、特許文献6に開示された方法においては、用いられる重合体粒子が親水性モノマーを用いて作製されたものであるために、得られる中空粒子は吸湿性の高いものとなり、湿度環境の変化によって水分量の変動が生じてしまう、という問題がある。
また特許文献7に開示された方法においては、油溶性の溶媒を用いるために当該溶媒を除去する工程が必要となり、製造工程が煩雑となってしまう、という問題がある。
特開2002−241448号公報 特開2008−38036号公報 特開2000−191818号公報 特開平1−134号公報 特開2008−266504号公報 特開昭62−127336号公報 特開2010−185064号公報
本発明は、以上の事情に基づいてなされたものであって、その目的は、吸湿性が低く、粒径の均一性が高い、単一中空粒子を多く含む粉体を、容易に得ることができる中空粒子の製造方法およびこれによって得られた中空粒子を提供することにある。
本発明の中空粒子の製造方法は、内部に単一の空隙を有する中空粒子を形成する方法であって、
単官能疎水性モノマー(A)を重合することによって得られた数平均分子量(Mn)が10,000〜200,000である重合体によるシード粒子が水系媒体に分散されてなる分散液に、
疎水性架橋モノマー(B)および当該疎水性架橋モノマー(B)との共重合性を有する単官能疎水性モノマー(C)からなり、当該単官能疎水性モノマー(C)の含有割合が50〜90質量%であるモノマー混合物と、油溶性重合開始剤とを有する重合用油相液を、
前記シード粒子1質量部に対して前記モノマー混合物が3〜50質量部となるよう添加し、
前記疎水性架橋モノマー(B)および単官能疎水性モノマー(C)を、前記シード粒子の存在下に重合させることによって、内部に単一の空隙を有する中空粒子を含む粉体を得る工程を有することを特徴とする。
本発明の中空粒子の製造方法においては、前記シード粒子を構成する重合体は、有機溶剤中において油溶性重合開始剤を用いて重合されることが好ましい。
本発明の中空粒子の製造方法においては、前記粉体を構成する粒子のCv値が15%以下であることが好ましい。
本発明の中空粒子は、上記の中空粒子の製造方法を用いて得られることを特徴とする。
本発明の中空粒子の製造方法によれば、シード粒子に対して添加するモノマー混合物における単官能疎水性モノマー(C)の含有割合が高いことによって、吸湿性が低く、粒径の均一性が高い、単一中空粒子を多く含む粉体を、容易に得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の中空粒子の製造方法は、内部に単一の空隙を有する単一中空粒子を形成する方法であって、単官能疎水性モノマー(A)が重合されて得られる重合体(以下、「シード重合体」ともいう。)によるシード粒子が水系媒体に分散されてなる分散液に、疎水性架橋モノマー(B)、当該疎水性架橋モノマー(B)との共重合性を有する単官能疎水性モノマー(C)および油溶性重合開始剤からなる重合用油相液を添加し、疎水性架橋モノマー(B)および単官能疎水性モノマー(C)を、前記シード粒子の存在下に重合させることによって、単一中空粒子を含む粉体を得る方法である。
本発明の中空粒子の製造方法によって得られる粉体は、単一中空粒子を90個数%以上含有するものであり、この粉体には、単一中空粒子ではない多孔質の中空粒子や空隙を有さない中実粒子が10個数%未満の割合で含まれていてもよい。以下、本発明の中空粒子の製造方法によって得られる粉体を構成する粒子を総称して「粉体粒子」ともいう。
本発明において、中空粒子とは、単一中空粒子および多孔質の中空粒子のいずれをも含めた呼称であって、外殻と当該外殻に囲繞された空隙とよりなる粒子であり、具体的には、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粉体粒子の最大面積となる断面を観察したときに、気体または液体を内包することができる空隙を有することが認められる粒子をいい、単一中空粒子とは、当該最大面積となる断面の観察において気体または液体を内包することができる空隙が1つ認められる粒子をいう。なお、中実粒子とは、当該当該最大面積となる断面の観察において気体または液体を内包することができる空隙が認められない粒子をいう。
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた空隙の観察は、以下の手順で行われる。まず、粉体粒子を光硬化型樹脂に包埋後、ウルトラミクロトームにより設定厚100nmの超薄切片を作製する。次いで、その切片を用いて透過型電子顕微鏡「2000FX」(日本電子社製)にて写真撮影を行い、得られた写真において、直径が予め後述の通りに測定した体積基準のメジアン径と略一致する粒子断面を選択してこれを観察することにより、粉体粒子における空隙の有無およびその数を確認することができる。
本発明の中空粒子の製造方法の一例を具体的に示すと、
(1)単官能疎水性モノマー(A)を重合することによってシード重合体によるシード粒子を作製するシード粒子作製工程、
(2)水系媒体にシード粒子が分散されてなる分散液中において、疎水性架橋モノマー(B)および単官能疎水性モノマー(C)を、油溶性重合開始剤を用いて重合させて粉体粒子を形成する粉体造粒工程、
(3)水系媒体から粉体粒子を濾別し、当該粉体粒子から分散安定剤などを除去する洗浄工程、
(4)洗浄処理された粉体粒子を乾燥する乾燥工程
から構成される。
(1)シード粒子作製工程
〔単官能疎水性モノマー(A)〕
単官能疎水性モノマー(A)は、重合性官能基を1つのみ有し、水と相分離する性質を有するモノマー、すなわち、その構造中に極性を示す官能基を有していない、或いは、極性を示す官能基を有していても重合体となったときには極性が発現されないモノマーである。
疎水性モノマーとしては、代表的には、その構造中にエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、炭素数が5以上である炭化水素基からなるラジカル重合性単量体などが挙げられる。
単官能疎水性モノマー(A)としては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、スチレンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。これらの中では、スチレンを用いることが好ましい。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
この工程においては、単官能疎水性モノマー(A)を重合させるための重合開始剤として、油溶性重合開始剤を用いることが好ましい。
油溶性重合開始剤を用いることによって、粒径の均一性が高い粉体粒子を得ることができる。
なお、この工程において水溶性重合開始剤を用いた場合には、粒径の均一性が低くなるおそれがあり、また、得られる粉体粒子が吸湿性の高いものとなるおそれもある。
〔油溶性重合開始剤〕
油溶性重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物や、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの過酸化物などの、単官能疎水性モノマー(A)に溶解することができるラジカル重合開始剤が挙げられる。
これらの油溶性重合開始剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
この工程における油溶性重合開始剤の使用量は、単官能疎水性モノマー(A)に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%である。
〔連鎖移動剤〕
この工程においては、シード重合体の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
〔反応媒体〕
この工程において、単官能疎水性モノマー(A)の重合は、水、または当該単官能疎水性モノマー(A)を溶解させるがシード重合体を溶解させない有機溶剤(以下、「有機溶剤(X)」という。)、またはこれらの混合溶媒からなる反応媒体中において行われる。
有機溶剤(X)としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの多価アルコール;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ヘキサンなどの炭化水素類などが挙げられる。
有機溶剤(X)としては、単官能疎水性モノマー(A)の溶解性に優れ、かつ、水と混合して用いる場合には水と任意の割合で配合できるという理由から、エタノールなどの低級アルコールを使用することが好ましい。
〔分散安定剤〕
反応媒体には、分散安定剤が添加されていてもよい。
分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルイミド、ポリエチレンオキシド、ポリ(ハイドロオキシステアリン酸−g−メタクリル酸メチル−co−メタクリル酸)共重合体などの高分子分散安定剤や、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。
この工程において得られるシード粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径(D50)で例えば0.5〜9.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.6〜7μmである。この平均粒径は、シード粒子を構成するシード重合体の分子量を高くするほど、大きくすることができる。
なお、体積基準のメジアン径は、「LA−750」(堀場製作所社製)を用いて測定したものである。
シード粒子を構成するシード重合体の数平均分子量(Mn)は、10,000〜200,000であり、特に20,000〜50,000であることが好ましい。
シード粒子を構成するシード重合体の数平均分子量(Mn)が10,000以上であることによって、粉体造粒工程において添加される重合用油相液を十分に吸収することができて、得られる粉体における中空粒子の割合を高くすることができる。なお、シード重合体の数平均分子量(Mn)が過度に小さい場合には、得られる粉体における中実粒子の割合が高くなってしまう。一方、シード粒子を構成するシード重合体の数平均分子量(Mn)が200,000以下であることによって、粒径の均一性が高い粉体を得ることができる。
シード重合体の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるものである。
具体的には、装置「HLC−8220」(東ソー社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流し、測定試料(シード重合体)を室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出される。検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いた。
以上のシード粒子作製工程においては、シード粒子は反応媒体に分散された状態で得られる。このシード粒子は、反応媒体から分離した状態で粉体造粒工程に供してもよく、また、反応媒体に分散された状態で粉体造粒工程に供してもよい。
(2)粉体造粒工程
この工程においては、水系媒体にシード粒子が分散されてなる分散液中に、疎水性架橋モノマー(B)および当該疎水性架橋モノマー(B)に対する共重合性を有する単官能疎水性モノマー(C)からなるモノマー混合物に油溶性重合開始剤が添加された重合用油相液を添加し、当該疎水性架橋モノマー(B)および単官能疎水性モノマー(C)を、シード粒子の存在下に重合させることが行われる。
モノマー混合物における単官能疎水性モノマー(C)の含有割合は、50〜90質量%であり、好ましくは50〜70質量%である。
モノマー混合物における単官能疎水性モノマー(C)の含有割合が50質量%以上であることによって、得られる粉体における単一中空粒子の割合を高くすることができる。なお、モノマー混合物における単官能疎水性モノマー(C)の含有割合が低い場合は、得られる粉体における単一中空粒子の割合が低くなり、多孔質の中空粒子の割合が高くなるものと推測される。一方、モノマー混合物における単官能疎水性モノマー(C)の含有割合が90質量%以下であることによって、得られる粉体における空隙を有さない中実粒子の割合を低くすることができて、単一中空粒子の割合を高くすることができる。
モノマー混合物には、疎水性架橋モノマー(B)および単官能疎水性モノマー(C)以外のモノマーが、当該疎水性架橋モノマー(B)および単官能疎水性モノマー(C)の重合を阻害しない程度の量、含有されていてもよい。
重合用油相液の添加量は、シード粒子1質量部に対してモノマー混合物が3〜50質量部、好ましくは3〜20質量部、より好ましくは3〜10質量部となる量とされる。
シード粒子1質量部に対するモノマー混合物の添加量が3質量部以上であることによって、モノマー混合物の重合反応において空隙の形成に要するだけの重合収縮が得られて、得られる粉体における中空粒子の割合を確実に高くすることができる。一方、シード粒子1質量部に対するモノマー混合物の添加量が50質量部以下であることによって、粒径の均一性が高い粉体粒子を得ることができる。なお、添加されたモノマー混合物の量が過度に多い場合は、添加されたモノマー同士間の重合が多く生じることによって得られる粉体における空隙を有さない中実粒子の割合が高くなってしまったり、重合場が一様になり難いために凝集塊が形成されてしまったりする。
〔疎水性架橋モノマー(B)〕
疎水性架橋モノマー(B)は、重合性官能基を2つ以上有し、水と相分離する性質を有し、さらに、単官能疎水性モノマー(A)を重合して形成されたシード重合体の近傍で重合反応を行ったときに当該シード重合体との間に架橋構造を形成しながら重合体を形成することができるモノマーである。
疎水性架橋モノマー(B)としては、具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼンなどが挙げられる。これらの中では、ジビニルベンゼンを用いることが好ましい。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔単官能疎水性モノマー(C)〕
単官能疎水性モノマー(C)は、疎水性架橋モノマー(B)に対する共重合性を有する疎水性モノマーである。
単官能疎水性モノマー(C)としては、具体的には、上記の単官能疎水性モノマー(A)として用いることのできるモノマーとして例示したものを例示することができ、それらの中では、スチレンを用いることが好ましい。それらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔油溶性重合開始剤〕
油溶性重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物や、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの過酸化物などの、モノマー混合物に溶解することができるラジカル重合開始剤が挙げられる。
これらの油溶性重合開始剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
この工程における油溶性重合開始剤の使用量は、モノマー混合物に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%である。
〔水系媒体〕
この工程において用いる水系媒体とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる水系媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトンなどを用いることができる。
〔分散安定剤〕
水系媒体には、疎水性架橋モノマー(B)および単官能疎水性モノマー(C)によって膨潤されたシード粒子の分散性を向上させる目的で、分散安定剤が添加されていてもよい。
分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルイミド、ポリエチレンオキシド、ポリ(ハイドロオキシステアリン酸−g−メタクリル酸メチル−co−メタクリル酸)共重合体などの高分子分散安定剤や、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。これらの中でも、ポリビニルアルコールなどの高分子分散安定剤を用いることが好ましい。
この工程において、中空粒子が形成される過程としては、以下のように進行するものと推測される。
まず、シード粒子が分散された水系媒体中に重合用油相液を添加すると、当該重合用油相液がシード粒子中に吸収されて取り込まれる。次いで、取り込まれた重合用油相液における疎水性架橋モノマー(B)および単官能疎水性モノマー(C)の重合が油溶性重合開始剤により開始されると、重合の進行に伴って、疎水性架橋モノマー(B)の重合時の重合収縮と、シード粒子を構成するシード重合体と疎水性架橋モノマー(B)および単官能疎水性モノマー(C)の重合によって得られる重合体の組成が異なることによって生じる相分離と、が組み合わされることによって、空隙が形成されるものと考えられる。
(3)洗浄工程
この工程においては、室温程度まで冷却された粉体粒子の分散液から粉体粒子を固液分離する固液分離処理を行い、固液分離して形成された、ウェット状態にある粉体粒子を凝集させた集合物より分散安定剤などの付着物を除去する洗浄処理が行われる。固液分離処理の代表的なものとしてはろ過処理が挙げられるが、ろ過処理の具体的な方法としては、例えば遠心分離法やヌッチェなどの使用による減圧ろ過法、フィルタープレスなどを使用するろ過法などを用いることができる。
(4)乾燥工程
この工程においては、洗浄処理された粉体粒子の乾燥処理が行われる。この工程において使用することのできる乾燥機としては、例えば、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などの公知の乾燥処理機や、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などが挙げられる。乾燥処理された粉体粒子の含水量は5質量%以下とされることが好ましく、2質量%以下とされることがより好ましい。
また、乾燥処理された粉体粒子同士が弱い粒子間引力で凝集して凝集体を形成している場合は、当該凝集体を解砕処理することが好ましい。解砕処理装置の具体例としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサーなどの機械式解砕処理装置が挙げられる。
本発明の中空粒子の製造方法によれば、シード粒子に対して添加するモノマー混合物における単官能疎水性モノマー(C)の含有割合が高いことによって、吸湿性が低く、粒径の均一性が高い粒子からなる粉体を得ることができ、しかも、当該粒子における単一中空粒子の割合が高い粉体を、容易に得ることができる。
本発明の中空粒子は、以上のような形成方法を用いて得られるものである。
〔中空粒子の平均粒径〕
本発明の中空粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径(D50)で例えば0.05〜15μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜8μmである。中空粒子の粒径は使用するシード粒子の粒径の最大でも3倍程度になると考えられるので、中空粒子の平均粒径は、シード粒子を構成するシード重合体の分子量を調整することによって制御することができる。
中空粒子の体積基準のメジアン径は「LA−750」(堀場製作所社製)を用いて測定することができる。例えば具体的には、中空粒子0.2gを、界面活性剤水溶液(中空粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)20mlに添加し、超音波分散を3分間行った分散液を試料にして測定することができる。
〔中空粒子の粒度分布〕
本発明の中空粒子を含む粉体粒子は、体積基準の粒度分布における変動係数(Cv値)が15%以下であること好ましく、より好ましくは10%以下である。
粉体粒子の体積基準の粒度分布における変動係数(Cv値)は、粉体粒子の粒度分布における分散度を体積基準で表したものであって、下記式(Cv)によって定義される。
式(Cv):Cv値(%)=
{(個数粒度分布における標準偏差)/(個数粒度分布におけるメジアン径)}×100
このCv値の値が小さい程、粒度分布がシャープであることを示し、粉体粒子の大きさが揃っていることを意味する。
本発明の中空粒子を含む粉体粒子の粒度分布は、シード粒子の作製に油溶性重合開始剤を用いること、および/または、用いるシード粒子の数平均分子量(Mn)が適度に低く、かつ、シード粒子に対して添加するモノマー混合物の量が適度に少ないこと、によって上記の範囲に調整することができる。
〔外殻の厚み〕
本発明の中空粒子の外殻の厚みは、例えば0.05〜2μmとすることができる。
本発明の中空粒子は、例えば液晶表示装置のスペーサー粒子、白色粒子、塗料用、紙塗工用の隠蔽性付与部材、低比重であるという特性を活かした塗装紙用コート剤、内部の空隙の屈折率差を利用した光散乱粒子、空隙に各種の物質を内包させることができるマイクロカプセルとして用いることができる。
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明の実施形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔シード粒子の作製例1〕
・単官能疎水性モノマー(A):スチレン 80質量部
・反応媒体:脱イオン水 1500質量部
・過硫酸カリウム 4質量部
・n−オクチルメルカプタン 10質量部
からなる混合溶液を調製し、撹拌装置と水冷還流管と窒素導入管とをセットしたセパラブルフラスコに入れ、窒素ガス流入下100rpmで撹拌しながら、70℃で12時間反応させることによってシード粒子を形成し、このシード粒子の分散液を遠心分離して、重合媒体からシード粒子を固液分離し、水によって洗浄した。これをシード粒子〔1〕とする。シード粒子〔1〕の数平均分子量は28,000であった。
〔シード粒子の作製例2〕
・単官能疎水性モノマー(A):スチレン 50質量部
・反応媒体:エタノール 500質量部
・アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 1質量部
・ポリビニルピロリドン 8質量部
・n−オクチルメルカプタン 1質量部
からなる混合溶液を調製し、撹拌装置と水冷還流管と窒素導入管とをセットしたセパラブルフラスコに入れ、窒素ガス流入下100rpmで撹拌しながら、70℃で12時間反応させることによってシード粒子を形成し、このシード粒子の分散液を遠心分離して、重合媒体からシード粒子を固液分離し、水によって洗浄した。これをシード粒子〔2〕とする。シード粒子〔2〕の数平均分子量は20,000であった。
〔シード粒子の作製例3〕
シード粒子の作製例2において、n−オクチルメルカプタンの量を0.1質量部に変更したこと以外は同様にして、シード粒子〔3〕を得た。
〔シード粒子の作製例4〕
シード粒子の作製例2において、n−オクチルメルカプタンの量を10質量部に変更したこと以外は同様にして、シード粒子〔4〕を得た。
〔シード粒子の作製例5〕
シード粒子の作製例2において、n−オクチルメルカプタンの量を0.03質量部に変更したこと以外は同様にして、シード粒子〔5〕を得た。
〔シード粒子の作製例6〕
シード粒子の作製例2において、スチレンの代わりにメチルメタクリレートを用いたこと以外は同様にして、シード粒子〔6〕を得た。
以下、表1に、シード粒子〔1〕〜〔6〕の数平均分子量(Mn)を示す。
Figure 0006308033
〔実施例1:中空粒子の形成例1〕
・シード粒子〔1〕 1質量部
・脱イオン水 100質量部
・疎水性架橋モノマー(B):ジビニルベンゼン(DVB) 5質量部
・単官能疎水性モノマー(C):スチレン(St) 40質量部
・アゾビスイソブチロニトリル 1.5質量部
・ラウリル硫酸ナトリウム 0.3質量部
・ポリビニルアルコール 0.2質量部
からなるシード粒子〔1〕の分散液を調製し、この分散液を撹拌装置と水冷還流管と窒素導入管とをセットしたセパラブルフラスコに入れ、窒素ガス流入下100rpmで撹拌しながら、30℃で2時間保持させた後、70℃まで昇温し、10時間反応させた。上記反応より得られた重合物を遠心分離後、乾燥させて、白色の粒子からなる粉体〔1〕を得た。得られた粉体〔1〕を構成する粉体粒子の体積基準のメジアン径(D50)は5.8μm、CV値は15%であった。この粉体〔1〕を構成する粉体粒子の断面を上述の通りに透過型電子顕微鏡で観察したところ、外殻を有し、その内部に単一の空隙を有する中空粒子が観察された。外殻の厚みは0.8μmであった。
〔実施例2〜6、比較例1〜7:中空粒子の形成例2〜13〕
実施例1:中空粒子の形成例1において、表2の処方に従ったこと以外は同様にして、粉体〔2〕〜〔13〕を得た。
比較例4においては、ジビニルベンゼンおよびスチレンの重合中に著しい凝集塊が発生した。
Figure 0006308033
粉体〔1〕〜〔13〕について、以下の評価を行った。ただし、比較例4に係る粉体〔10〕については評価を行わなかった。
(1)平均粒径およびCv値
各粉体〔1〕〜〔13〕について、粒子の体積基準のメジアン径およびCv値を上述の通りに測定した。
結果を表3に示す。本発明において、Cv値が15%以下である場合が合格と判断される。
(2)吸湿性
高温高湿環境(温度30℃、湿度85%RH)下において、各粉体〔1〕〜〔13〕を24時間放置した後、当該粒子が吸湿した水分量を下記の通りに測定し、その水分量から吸湿率を算出した。
水分量は、カールフィッシャー電量滴定法によって測定した。具体的には、自動熱気化水分測定システム「AQS−724」(平沼産業社製)を用い、24時間放置した後の粒子0.5gを、ガラス製20mlのサンプル管に精密に秤量して入れ、次いで、フッ素樹脂コートされたシリコーンゴムパッキングを用いて密栓する。密栓した環境中に存在する水分を補正するため、空のサンプルを同時に2本測定する。測定は、加熱温度=110℃/キャリアガス(窒素)流量=150ml/分の条件で1分間測定する。試薬として「ハイドラナールアクアライトRS」(リーデル・デ・ヘーエン社製)および「アクアライトC」(関東化学社製)を用いた。
粒子の吸湿率は下記式(1)に従って算出される。
式(1):粒子の吸湿率(%)=検出された水分量(g)/秤量した粒子の質量(g)×100
結果を表3に示す。本発明においては、吸湿率が1.2質量%未満である場合が合格と判断される。
(3)単一中空粒子の含有割合
各粉体〔1〕〜〔13〕について、これを構成する粒子の断面を上述の通りに透過型電子顕微鏡で観察し、得られた写真において、直径が体積基準のメジアン径(D50)と略一致する粒子断面のうち、任意に選択した50個について、単一中空粒子、多孔質の中空粒子、中実粒子のうち最も含有割合が高いものを調べた。そして、単一中空粒子の含有割合が最も高い場合には、その含有割合(個数%)を算出すると共に、単一中空粒子の平均のシェル厚を測定した。
結果を表3に示す。本発明においては、単一中空粒子の含有割合が90個数%以上である場合が合格と判断される。
Figure 0006308033
表3の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜6に係る粉体〔1〕〜〔6〕は、Cv値が小さく、単一中空粒子を90個数%以上含み、かつ、吸湿率が高いことが確認された。
一方、シード重合体の合成に用いる重合開始剤が水溶性のものであり、かつ、単官能疎水性モノマー(C)の使用割合がやや低い、比較例1に係る粉体〔7〕は、その多くが多孔質の中空粒子となり、さらに、Cv値が大きくなった。
モノマー混合物の添加量が少ない、比較例2に係る粉体〔8〕は、その多くが中実粒子となった。
単官能疎水性モノマー(C)の使用割合が低い、比較例3に係る粉体〔9〕は、その多くが多孔質の中空粒子となった。
モノマー混合物の添加量が多い、比較例4に係る粉体〔10〕は、造粒中に凝集塊が発生した。
シード重合体の数平均分子量(Mn)が小さい、比較例5に係る粉体〔11〕は、その多くが中実粒子となった。
シード重合体の数平均分子量(Mn)が大きい、比較例6に係る粉体〔12〕は、Cv値が大きくなった。
親水性モノマーを用いた比較例7に係る粉体〔13〕は、粉体粒子の吸湿性が低く、また、その多くが多孔質の中空粒子となった。

Claims (4)

  1. 内部に単一の空隙を有する中空粒子を形成する方法であって、
    単官能疎水性モノマー(A)を重合することによって得られた数平均分子量(Mn)が10,000〜200,000である重合体によるシード粒子が水系媒体に分散されてなる分散液に、
    疎水性架橋モノマー(B)および当該疎水性架橋モノマー(B)との共重合性を有する単官能疎水性モノマー(C)からなり、当該単官能疎水性モノマー(C)の含有割合が50〜90質量%であるモノマー混合物と、油溶性重合開始剤とを有する重合用油相液を、
    前記シード粒子1質量部に対して前記モノマー混合物が3〜50質量部となるよう添加し、
    前記疎水性架橋モノマー(B)および単官能疎水性モノマー(C)を、前記シード粒子の存在下に重合させることによって、内部に単一の空隙を有する中空粒子を含む粉体を得る工程を有することを特徴とする中空粒子の製造方法。
  2. 前記シード粒子を構成する重合体は、有機溶剤中において油溶性重合開始剤を用いて重合されることを特徴とする請求項1に記載の中空粒子の製造方法。
  3. 前記粉体を構成する粒子のCv値が15%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の中空粒子の製造方法。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の中空粒子の製造方法を用いて得られることを特徴とする中空粒子。

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