JP4742161B2 - 単孔中空ポリマー微粒子の製造方法 - Google Patents

単孔中空ポリマー微粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、分級操作が必要なく、外径及び内径が極めて均一な単孔中空ポリマー微粒子の製造方法に関する。更に、本発明は、該単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を用いて製造される単孔中空ポリマー微粒子に関する。
単孔を有する中空ポリマー微粒子の製造方法として、親水性のモノマー、架橋性モノマー及び油溶性溶剤を重合開始剤と共に均一溶解してモノマー溶液を調製し、該モノマー溶液を水相中で乳化分散させた後、重合することにより得られたポリマー微粒子を、加熱して油溶性溶剤を揮発させる方法がある。この製造方法は、生成するポリマーと油溶性溶剤との相分離効果を利用して、微粒子中に単孔を形成する方法である。
しかし、この方法で得られる単孔を有する中空ポリマー微粒子は、粒子径分布が乳化分散の機械的な操作方法に依存しており、外径(粒子径)、内径(単孔の径)及び外径と内径との比を一定の範囲に制御することは困難であるという問題があった。
外径を揃える目的で、篩いやメッシュ等で分級操作を実施しても、充分に均一な外径分布の中空ポリマー微粒子を得ることは困難である。また、仮に外径を揃えたとしても内径を揃えることはできない。
また、得られた中空ポリマー微粒子を、比重差等を活用した流体力学的方法により分級する方法も知られている。しかし、外径が大きく内径も大きい(中空度の高い)微粒子と、外径が小さく内径も小さい(中空度の低い)微粒子とは同様の移動性を有してしまうことから、この方法ではこれらを分級することはできなかった。
これに対して、モノマー成分を種粒子に吸収させたうえで重合させる中空ポリマー微粒子の製造方法が検討されている。この方法によれば、比較的外径が均一な中空ポリマー微粒子が製造できると考えられる。
例えば、特許文献1には、架橋性モノマー、親水性モノマー及びその他のモノマーを含む重合性モノマー成分を、この重合性モノマー成分によるコポリマーとは異なる組成の異種ポリマー微粒子の存在下において水性分散媒体中で分散させて当該異種ポリマー微粒子に重合性モノマー成分を吸収させ、次いで重合性モノマー成分を重合させる工程を有する、単一の内孔を有するポリマー粒子の製造方法が記載されている。上記特許文献1において、上記異種ポリマーの例として、ポリスチレン、又は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルエステル、メタクリルエステル及びブタジエンから選択される少なくとも1種とスチレンとのコポリマーが挙げられている。また、上記架橋性モノマーの例として、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられている。上記親水性モノマーの例としてアクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピリジン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられている。その他のモノマーの例として、スチレン等が挙げられている。しかしながら、特許文献1に記載された方法では、外径及び内径が充分に均一な中空ポリマー微粒子を得ることは難しかった。特許文献1の実施例においても、概ね単孔の中空ポリマー微粒子は得られているものの、その外径、内径ともに均一でなく、また、単孔構造の微粒子だけではなく複数の孔を有する微粒子が混じっていた。
特許文献2には、イオン性モノマー(A−a)、重合時にモノマーからポリマーへの変化にともない、溶解度パラメーターが変化しないか、または増加する非イオン性モノマー(A−b)及び上記非イオン性モノマー(A−b)以外の非イオン性モノマー(A−c)を含むモノマーを重合して得られる重合体微粒子(A)の存在下に、イオン性モノマー(B−a)、重合時にモノマーからポリマーへの変化にともない、溶解度パラメーターが減少する非イオン性モノマー(B−b)及び非イオン性モノマー(B−b)以外の非イオン性モノマー(B−c)を含むモノマー成分(B)を水性媒体中で水溶性重合開始剤を用いて一定条件を満たす重合温度で乳化重合して平均内孔径が微粒子の平均粒子径の0.25〜0.8倍である単一の内孔を有する中空ポリマー微粒子の製造方法が記載されている。また、特許文献2に記載された製造方法において、上記重合体微粒子(A)とモノマー成分(B)の組み合わせのうち、非イオン性モノマー(A−b)成分を重合することにより得られたポリマーの溶解度パラメーター〔δ(A−b),p〕と非イオン性モノマー(B−b)成分のモノマーの溶解度パラメーター〔δ(B−b),m〕との差の絶対値が1.0以下であることが特徴であるとされている。しかしながら、特許文献2に記載された方法では、外径及び内径が充分に均一な中空ポリマー微粒子を得ることはできなかった。また、特許文献2に記載された製造方法では、水溶性重合開始剤を用いることから、モノマー油滴内の重合開始剤の含有量が少ないため、重合率が低下するだけでなく、水相中での乳化重合が併発して、内孔のない微粒子も混入してしまう問題もあった。
特許文献3には、親水性モノマー、架橋性モノマー、他のモノマー、油性物質を含む均一混合液Aを、Aに対して不混和性の液体Bにミクロ多孔体膜を通して圧入することにより油滴を得た後に、重合させることにより油性物質を内核とした粒子を得る製造方法が示されている。しかしながら、ミクロ多孔体膜を通す方法は、従来の乳化装置を用いる方法に比べれば外径の分布が均一になるものの、結局は、分級等の操作を行う必要があるという問題があった。
特公平04−068324号公報 特開平04−279637号公報 特開2002−105104号公報
本発明は、分級操作が必要なく、外径及び内径が極めて均一な単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を提供することを目的とする。更に、本発明は、該単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を用いて製造される単孔中空ポリマー微粒子を提供することを目的とする。
本発明は、非架橋ポリマーを含有する種粒子を、水を含有する分散媒中に分散させた種粒子分散液と、ラジカル重合性モノマーと、油溶性溶剤と、油溶性重合開始剤とを混合し、前記種粒子に前記ラジカル重合性モノマー、前記油溶性溶剤及び前記油溶性重合開始剤を吸収させて膨潤粒子液滴の分散液を調製する工程と、前記膨潤粒子液滴中の上記ラジカル重合性モノマーを重合させる工程とを有する単孔中空ポリマー微粒子の製造方法であって、前記ラジカル重合性モノマーを重合して得られるポリマーのSP値(SPp)と前記油溶性溶剤のSP値(SPs)との関係が下記式(1)を満たす単孔中空ポリマー微粒子の製造方法である。
2.1≦SPp−SPs≦7.0 (1)
以下に本発明を詳述する。
本発明者は、ラジカル重合性モノマー成分を種粒子に吸収させたうえでラジカル重合させるポリマー微粒子の製造方法において、上記ラジカル重合性モノマーを重合して得られるポリマーのSP値と、造孔剤として用いる油溶性溶剤のSP値との差が一定範囲となるようにした場合、外径及び内径が極めて均一な単孔中空ポリマー微粒子を容易に製造できることを見出し、本発明を完成した。
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法は、非架橋ポリマーを含有する種粒子を、水を含有する分散媒中に分散させた種粒子分散液と、ラジカル重合性モノマーと、油溶性溶剤と、油溶性重合開始剤とを混合し、前記種粒子に前記ラジカル重合性モノマー、前記油溶性溶剤及び前記油溶性重合開始剤を吸収させて膨潤粒子液滴の分散液を調製する工程を有する。なお、本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法は、非架橋ポリマーを含有する種粒子を、水を含有する分散媒中に分散させた種粒子分散液を調製する工程を有してもよい。
上記種粒子は、非架橋ポリマーを含有する。
上記非架橋ポリマーを構成する非架橋性モノマーは特に限定されず、例えば、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸等が挙げられる。
上記非架橋性モノマーを重合して上記種粒子を構成する際に、少量の架橋性モノマーを併用してもよい。少量の架橋性モノマーを併用することにより、得られる種粒子の強度が向上する。
上記架橋性モノマーは特に限定されず、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
上記架橋性モノマーを配合する場合、上記非架橋性モノマーと上記架橋性モノマーとの合計に占める上記架橋性モノマーの配合量の好ましい上限は5重量%である。上記架橋性モノマーの配合量が5重量%を超えると、得られる種粒子へのラジカル重合性モノマー等の吸収性が低下し、膨潤粒子液滴が形成されないことがある。上記架橋性モノマーの配合量のより好ましい上限は1重量%である。
上記種粒子の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量の好ましい上限は50万である。上記種粒子の重量平均分子量が50万を超えると、得られる種粒子へのラジカル重合性モノマー等の吸収性が低下し、膨潤粒子液滴が形成されないことがある。上記種粒子の重量平均分子量のより好ましい上限は10万である。上記種粒子の重量平均分子量の下限は特に限定されないが、1000未満であると、実質的に粒子を形成できないことがある。
上記種粒子の形状は特に限定されないが、球状であることが好ましい。上記種粒子の形状が球状でない場合には、ラジカル重合性モノマー等を吸収する際に等方的な膨潤がなされず、得られる単孔中空ポリマー微粒子が真球状とならないことがある。
上記種粒子の体積平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は目的とする単孔中空ポリマー微粒子の平均外径の1/10、好ましい上限は目的とする単孔中空ポリマー微粒子の平均外径の1/1.05である。上記種粒子の体積平均粒子径が目的とする単孔中空ポリマー微粒子の平均外径の1/10未満であると、所望の単孔中空ポリマー微粒子の外径を得るために、吸収性能の限界を超えた多くのラジカル重合性モノマー等を吸収する必要があり、吸収残りが発生したり、得られる単孔中空ポリマー微粒子の外径が均一にならなかったりすることがある。上記種粒子の体積平均粒子径が目的とする単孔中空ポリマー微粒子の平均外径の1/1.05を超えると、ごく微量のラジカル重合性モノマー等しか吸収する余地がなく、高い中空度を有する単孔中空ポリマー微粒子が得られないことがある。上記種粒子の体積平均粒子径は、目的とする単孔中空ポリマー微粒子の平均外径の1/8以上であることがより好ましく、1/1.5以下であることがより好ましい。
上記種粒子は、粒子径のCv値の好ましい上限が30%である。上記種粒子の粒子径のCv値が30%を超えると、膨潤した種粒子の粒子径が均一にならず、得られる単孔中空ポリマー微粒子の粒子径も均一にならないことがある。上記種粒子の粒子径のCv値のより好ましい上限は、20%である。
なお、上記種粒子の粒子径のCv値は、粒子径測定装置により測定される体積平均粒子径mと標準偏差σから、下記式(2)により算出することができる。
Cv=σ/m×100(%) (2)
なお、上記単孔中空ポリマー微粒子の平均外径は、走査型電子顕微鏡により、1視野に約100個の粒子が観察できる倍率で観察し、任意に選択した50個の粒子についてノギスを用いて最長径を測定し、最長径の数平均値を求めることにより算出することができる。
上記種粒子を調製する方法は特に限定されず、ソープフリー乳化重合、乳化重合、分散重合等の方法が挙げられる。
上記分散媒は、水を含有する分散媒であれば特に限定されず、水、又は、水にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤を添加した混合分散媒等が挙げられる。
上記分散媒は、必要に応じて、分散剤を含有してもよい。
上記分散剤は特に限定されず、例えば、アルキル硫酸スルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
上記種粒子分散液における上記種粒子の配合量は特に限定されず、好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は50重量%である。上記種粒子の配合量が0.1重量%未満であると、単孔中空ポリマー微粒子の生産効率が低くなることがある。上記種粒子の配合量が50重量%を超えると、種粒子が凝集してしまうことがある。上記種粒子の配合量のより好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は30重量%である。
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法において、上記種粒子分散液と、ラジカル重合性モノマーと、油溶性溶剤と、油溶性重合開始剤とを混合し、上記種粒子にラジカル重合性モノマー、油溶性溶剤及び油溶性重合開始剤を吸収させて膨潤粒子液滴の分散液を調製する。
本発明において、上記ラジカル重合性モノマーを重合して得られるポリマーのSP値(SPp)と、上記油溶性溶剤のSP値(SPs)との関係が上記式(1)を満たすように選択することが重要である。SPp−SPsの値が2.1未満であると、生成するポリマーと油溶性溶剤とが相分離しにくいため、単孔中空ポリマー微粒子のみではなく、中実微粒子や多孔性微粒子も同時に形成されてしまう。SPp−SPsの値が7.0を超えると、生成するポリマーと油溶性溶剤との相溶性が低いため、均一な膨潤粒子液滴が形成されず、その結果単孔中空ポリマー微粒子を形成することができない。SPp−SPsの値は、2.4以上であることが好ましい。
本明細書においてSP値とは、沖津俊直、「接着」、高分子刊行会、40巻8号(1996)p342−350に記載された、下記表1に記載した沖津による各種原子団のΔF、Δv値を用い、下記式(3)により算出した溶解性パラメータδを意味する。また、混合溶剤、共重合体の場合は、下記式(4)により算出した溶解性パラメータδを意味する。
δ=ΣΔF/ΣΔv (3)
δmix=φδ+φδ+・・・φδ (4)
式中、ΔFは、下記表1におけるΔFを表し、Δvは、下記表1におけるモル容積Δvを表す。φは、容積分率又はモル分率を表し、φ+φ+・・・φ=1である。
Figure 0004742161
例えば、溶剤としてのヘプタンのSP値は以下のように求める。
ヘプタンは、原子団として、−CHを2個、−CH−を5個有する。各々の原子団について表1よりΔF、Δv値を求める。
ΣΔF=205×2+132×5=1070
ΣΔv=31.8×2+16.5×5=146.1
従って、上記式(3)よりヘプタンのδhepは、以下のように求められる。
δhep=ΣΔF/ΣΔv=1070/146.1=7.32
例えば、ヘプタン50重量%、トルエン50重量%の混合溶剤のSP値は以下のようにして求める。上述のようにヘプタンのSP値は7.32である。また、上述と同様の方法により、トルエン単独のSP値は9.02である。ヘプタンの分子量は100、トルエンの分子量は92であることから、混合溶剤のモル分率は、ヘプタン:トルエン=50/100:50/92=0.48:0.52となる。よってφhep=0.48、φtol=0.52となる。上記式(4)より、混合溶剤のSP値δmixは、以下のように求められる。
δmix=φhep×δhep+φtol×δtol
=0.48×7.32+0.52×9.02
=8.20
例えば、ポリマーとしてのポリスチレンのSP値は以下のように求める。
ポリスチレンは、原子団として、−CH−を1個、>CH−(Poly)を1個、−C(Poly)を1個有する。各々の原子団について表1よりΔF、Δv値を求める。
ΣΔF=132×1+28.6×1+731×1=891.6
ΣΔv=16.5×1+1.9×1+79.0×1=97.4
従って、上記式(3)よりポリスチレンのδPStは、以下のように求められる。
δPSt=891.6/97.4=9.15
例えば、ポリスチレン30重量%、ポリメタクリル酸メチル70重量%の共重合体のSP値は以下のようにして求める。上述のようにポリスチレン単独のSP値は9.15である。また、上述と同様の方法により、ポリメタクリル酸メチル単独のSP値は9.54である。スチレンの分子量は104、メタクリル酸メチルの分子量は100であることから、共重合体のモル分率は、ポリスチレン:ポリメタクリル酸メチル=30/104:70/100=0.29:0.71となる。上記式(4)より、共重合体のSP値δmixは、以下のように求められる。
δmix=φPSt×δPSt+φPMMA×δPMMA
=0.29×9.15+0.71×9.54
=9.43
上記ラジカル重合性モノマーは特に限定されず、例えば、ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物等のビニル基を有する化合物が挙げられる。上記ビニル基を有する化合物として、例えば、スチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリロニトリル等の共役モノマーや、酢酸ビニル、塩化ビニル等の非共役モノマー等が挙げられる。
これらのラジカル重合性モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、重合して得られるポリマーが熱可塑性であり、かつ、ガスバリア性であるように上記ラジカル重合性モノマーを選択する場合には、上記油溶性溶剤として後述するような脂肪族炭化水素等の揮発性の油溶性溶剤を内包することにより、熱膨張性の単孔中空ポリマー微粒子を製造することができる。このような熱膨張性の単孔中空ポリマー微粒子は、シェルの軟化点温度以上に加熱して上記油溶性溶剤を気化させると、熱膨張し、より高中空度の微粒子となる。
なお、熱可塑性であり、かつ、ガスバリア性であるポリマーを形成するためには、上記ラジカル重合性モノマーとして、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマーや、塩化ビニリデン等を含有することが好ましい。熱可塑性であり、かつ、ガスバリア性であるポリマーを形成するために上記ニトリル系モノマーを用いる場合には、上記ラジカル重合性モノマー全体に占める上記ニトリル系モノマーの配合量が30重量%以上であることが好ましい。
用いるラジカル重合性モノマーの種類及び配合比から、重合して得られるポリマーのSP値(SPp)を上述のようにして計算することができる。
上記油溶性溶剤は、本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法において造孔剤の役割を果たす。上記油溶性溶剤は、上記式(1)を満たすSP値(SPs)を有する油溶性溶剤であれば特に限定されない。
本明細書において油溶性溶剤とは、logPow(オクタノール/水分配係数)が0以上である溶剤を意味する。溶剤のlogPowは、以下のように求められる。
n−オクタノールと水とを充分に混合した混合液を24時間放置した後、混合液に溶剤を加えてさらに混合する。その後、オクタノール相中に含まれる溶剤濃度(Co)と水相中に含まれる溶剤濃度(Cw)とをガスクロマトグラフィーにより測定し、得られたCo及びCwを用いて、下記式(5)からlogPowを算出できる。
logPow=log(Co/Cw) (5)
Co:オクタノール相中の溶剤濃度
Cw:水相中の溶剤濃度
上記油溶性溶剤として、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素や、プロパン、シクロプロパン、ブタン、シクロブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、ノルマルヘプタン、シクロヘプタン、ノルマルオクタン、シクロオクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素又は環状炭化水素や、メチルイソブチルケトン等のケトン類や、酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの油溶性溶剤を用いた場合には、後述するように単孔中空ポリマー微粒子のシェルを形成した後、上記油溶性溶剤を揮発させることによって空洞を有する単孔中空ポリマー微粒子を製造してもよく、上記油溶性溶剤を揮発させずに上記油溶性溶剤を内包する単孔中空ポリマー微粒子を製造してもよい。
また、上述のように上記ラジカル重合性モノマーを選択することにより、これらの油溶性溶剤を用いて、熱膨張性の単孔中空ポリマー微粒子を製造することもできる。熱膨張性の単孔中空ポリマー微粒子を製造する場合には、上記油溶性溶剤として、上記に挙げた脂肪族炭化水素又は環状炭化水素のうち、ガス化温度がシェルの軟化点温度以下である揮発性の油溶性溶剤を用いることが好ましい。
これらの油溶性溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記油溶性溶剤の配合量は、目的とする単孔中空ポリマー微粒子の外径及び内径により適宜調整すればよいが、上記ラジカル重合性モノマー100重量部に対する好ましい下限は10重量部、好ましい上限は1000重量部である。上記油溶性溶剤の配合量が10重量部未満であると、ほとんど内孔が形成されないことがある。上記油溶性溶剤の配合量が1000重量部を超えると、得られる単孔中空ポリマー微粒子の強度が著しく低下することがある。上記油溶性溶剤の配合量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は600重量部である。
上記油溶性重合開始剤は特に限定されず、例えば、ラジカル重合を開始させるための油溶性重合開始剤が挙げられる。
本明細書において油溶性重合開始剤とは、logPow(オクタノール/水分配係数)が0以上である重合開始剤を意味する。重合開始剤のlogPowは、以下のように求められる。
n−オクタノールと水とを充分に混合した混合液を24時間放置した後、混合液に重合開始剤を加えてさらに混合する。その後、オクタノール相中に含まれる重合開始剤濃度(Co)と水相中に含まれる重合開始剤濃度(Cw)とをガスクロマトグラフィーにより測定し、得られたCo及びCwを用いて、下記式(6)からlogPowを算出できる。
logPow=log(Co/Cw) (6)
Co:オクタノール相中の重合開始剤濃度
Cw:水相中の重合開始剤濃度
上記油溶性重合開始剤として、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジオクチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシラウレート、ラウロイルパーオキサイド、ジオクタノイルパーオキサイド等の過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物等が挙げられる。これらの油溶性重合開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記油溶性重合開始剤の配合量は特に限定されず、上記ラジカル重合性モノマー100重量部に対する好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は20重量部である。上記油溶性重合開始剤の配合量が0.01重量部未満であると、単孔中空ポリマー微粒子が形成されないことがある。上記油溶性重合開始剤の配合量が20重量部を超えて配合してもほとんど反応には寄与せず、ブリードアウト等の原因となることがある。上記油溶性重合開始剤の配合量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は10重量部である。
上記種粒子分散液と、上記ラジカル重合性モノマーと、油溶性溶剤と、油溶性重合開始剤とを混合する際には、上記ラジカル重合性モノマー、油溶性溶剤及び油溶性重合開始剤を直接上記種粒子分散液に加えて混合してもよいが、いったん水を含有する分散媒に添加して乳化液を調製し、該乳化液を上記種粒子分散液に加えて混合する方法が好ましい。いったん乳化液としてから加えることにより、上記ラジカル重合性モノマー等をより均一に上記種粒子に吸収させることができる。
上記ラジカル重合性モノマー、油溶性溶剤、油溶性重合開始剤は、これらの混合物の乳化液を調製して上記種粒子分散液に加えて混合してもよいし、各々の乳化液を別個に調製して上記種粒子分散液に加えて混合してもよい。上記ラジカル重合性モノマー、油溶性溶剤、油溶性重合開始剤の各々の乳化液を別個に調製した場合、各々の乳化液と上記種粒子分散液とを混合する順序は特に限定されない。
なお、本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法において、上記ラジカル重合性モノマー、油溶性溶剤及び油溶性重合開始剤を分散させた乳化液に上記種粒子分散液を加えて混合してもよい。
上記ラジカル重合性モノマー等の乳化液の分散媒は特に限定されず、上記種粒子分散液に用いた分散媒と同じ分散媒であってもよく、異なる分散媒であってもよい。
上記ラジカル重合性モノマー等の乳化液の分散媒は、乳化剤を含有することが好ましい。上記乳化剤は特に限定されず、例えば、アルキル硫酸スルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
上記ラジカル重合性モノマー等の乳化液を上記種粒子分散液に加える際には、上記乳化液の全量を一括で加えてもよいし、分割して加えてもよい。分割して加える場合には、滴下することにより添加してもよい。
上記種粒子に対する上記ラジカル重合性モノマー、油溶性溶剤及び油溶性重合開始剤の油性成分の添加量は特に限定されないが、上記種粒子100重量部に対する好ましい下限は15重量部、好ましい上限は100,000重量部である。上記ラジカル重合性モノマー等の添加量が15重量部未満であると、ごく微量のラジカル重合性モノマー等しか吸収する余地がなく、高い中空度を有する単孔中空ポリマー微粒子が得られないことがある。上記ラジカル重合性モノマー等の添加量が100,000重量部を超えると、上記種粒子に吸収し切れない上記油性成分が発生し、中実微粒子等の混入の原因となることがある。上記油性成分の添加量のより好ましい下限は230重量部、より好ましい上限は50,000重量部である。
上記種粒子分散液と、上記ラジカル重合性モノマーと、油溶性溶剤と、油溶性重合開始剤とを混合すると、上記種粒子に上記ラジカル重合性モノマー、油溶性溶剤及び油溶性重合開始剤が吸収されて、均一な膨潤粒子液滴が形成される。
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法において、得られた膨潤粒子液滴中の上記ラジカル重合性モノマーを重合させる工程を行う。上記ラジカル重合性モノマーを重合させることにより、コアが上記油溶性溶剤、シェルが上記ラジカル重合性モノマーを重合することにより得られたポリマーにより形成されている、コアシェル粒子分散液が得られる。
重合は、上記油溶性重合開始剤の種類等に従って、光を照射したり、加熱したりすることにより開始することができる。
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法では、得られたコアシェル粒子を、純水を用いて繰り返して洗浄し、上記油溶性溶剤を揮発させることにより空洞を有する単孔中空ポリマー微粒子を製造してもよく、上記油溶性溶剤を揮発させずに上記油溶性溶剤を内包する単孔中空ポリマー微粒子を製造してもよい。
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法によれば、外径及び内径が極めて均一である単孔中空ポリマー微粒子を製造することができる。外径及び内径が充分に均一であることから、篩、風力分級、比重差分級等による特別な分級操作が必要ない。歩留まりが高く、工程も短いので、単孔中空ポリマー微粒子を安く、早く供給することができる。
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を用いて製造される単孔中空ポリマー微粒子もまた、本発明の1つである。
本発明の単孔中空ポリマー微粒子は、空洞を有していてもよく、上記油溶性溶剤を内包していてもよい。
本発明の単孔中空ポリマー微粒子は、空洞を有する場合、外径及び内径が極めて均一であることから、ごく少量の添加で比表面積を向上させることができ、光拡散性、軽量性、断熱性、クッション性、紫外線や可視光や赤外線等の選択吸収や反射、透過性を制御することができる。
本発明の単孔中空ポリマー微粒子は、シェルが熱可塑性であり、かつ、ガスバリア性であり、更に、上記油溶性溶剤として上記脂肪族炭化水素等の揮発性の油溶性溶剤を内包する場合、熱膨張性の単孔中空ポリマー微粒子として用いることができる。このような熱膨張性の単孔中空ポリマー微粒子は、シェルの軟化点温度以上に加熱して上記油溶性溶剤を気化させると、熱膨張し、より高中空度の微粒子となる。本発明の単孔中空ポリマー微粒子は外径及び内径が極めて均一であることから、熱膨張後の微粒子も外径及び内径が極めて均一となり、光拡散性、軽量性、断熱性、クッション性、紫外線や可視光や赤外線等の選択吸収や反射、透過性等の付与を目的として種々の用途に適用する場合、これらの性能の制御が容易となる。
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の平均外径(平均粒子径)は特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は100μmである。平均外径が0.1μm未満であると、充分な大きさの単孔が得られなかったり、内包する油溶性溶剤の量が少なくなったりすることがある。平均外径が100μmを超えると、種粒子への油溶性溶剤の吸収が遅くなるため、生産性が低下することがある。本発明の単孔中空ポリマー微粒子の平均外径のより好ましい下限は0.5μm、より好ましい上限は20μmである。
本発明の単孔中空ポリマー微粒子は、外径(粒子径)のCv値の好ましい上限が10%である。外径のCv値が10%を超えると、例えば、本発明の単孔中空ポリマー微粒子が熱膨張性である場合、熱膨張後の微粒子の外径の均一性も低下することがある。外径のCv値のより好ましい上限は7%である。
なお、本発明の単孔中空ポリマー微粒子の外径のCv値は、上記種粒子の粒子径のCv値と同様に算出することができる。
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の平均内径は特に限定されないが、好ましい下限は平均外径の5%、好ましい上限は平均外径の99.9%である。平均内径が平均外径の5%未満であると、充分な大きさの単孔が得られなかったり、内包する油溶性溶剤の量が少なくなったりすることがある。平均内径が平均外径の99.9%を超えると、シェルが薄くなるため、内包する油溶性溶剤が漏出することがある。本発明の単孔中空ポリマー微粒子の平均内径のより好ましい下限は平均外径の10%、より好ましい上限は平均外径の99%である。
本発明の単孔中空ポリマー微粒子は、内径のCv値の好ましい上限が10%である。内径のCv値が10%を超えると、例えば、本発明の単孔中空ポリマー微粒子が熱膨張性である場合、熱膨張後の微粒子の内径の均一性も低下することがある。内径のCv値のより好ましい上限は7%である。
なお、本発明の単孔中空ポリマー微粒子の内径のCv値は、上記種粒子の粒子径のCv値と同様に算出することができる。
本発明によれば、分級操作が必要なく、外径及び内径が極めて均一な単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を提供することができる。更に、本発明によれば、該単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を用いて製造される単孔中空ポリマー微粒子を提供することができる。
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されない。
(実施例1)
スチレン100重量部、過硫酸カリウム3重量部、n−オクチルメルカプタン25重量部、水2500重量部を混合し、攪拌しながら70℃で24時間反応させて、体積平均粒子径0.5μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
ラジカル重合性モノマーとしてアクリロニトリル50重量部とトリメチロールプロパントリメタクリレート50重量部(このラジカル重合性モノマーを重合して得られるポリマーのSP値は12.46である)、油溶性溶剤としてヘプタン(SP値は7.32)100重量部、及び、油溶性重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド4重量部を均一に溶解した混合液に、乳化剤としてラウリル硫酸トリエタノールアミン2重量部と水とを加えて混合し、乳化液を調製した。
得られた種粒子分散液に、ポリスチレン粒子重量の200倍の油性成分となるように乳化液を加え、24時間撹拌して、ラジカル重合性モノマー、油溶性溶剤及び油溶性重合開始剤を吸収した種粒子の膨潤粒子液滴の分散液を得た。なお、油性成分は、ラジカル重合性モノマー、油溶性溶剤及び油溶性重合開始剤を構成成分とする。
得られた膨潤粒子液滴の分散液を撹拌しながら85℃で、10時間反応させることにより、コアがヘプタン、シェルがポリアクリロニトリル/トリメチロールプロパントリメタクリレート共重合体により形成されている、コアシェル粒子分散液を得た。
得られたコアシェル粒子を、純水を用いて繰り返して洗浄し、真空乾燥してヘプタンを揮発させて、ポリマー微粒子を得た。
(実施例2)
ラジカル重合性モノマーをメチルメタクリレート70重量部とトリメチロールプロパントリメタクリレート30重量部(このラジカル重合性モノマーを重合して得られるポリマーのSP値は9.64である)とし、油溶性溶剤をイソオクタン(SP値は7.30)100重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。
(実施例3)
ラジカル重合性モノマーをアクリロニトリル25重量部とトリメチロールプロパントリメタクリレート50重量部とエチレングリコールジメタクリレート25重量部(このラジカル重合性モノマーを重合して得られるポリマーのSP値は11.95である)とし、油溶性溶剤をネオペンタン(SP値は5.20)100重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。
(実施例4)
ラジカル重合性モノマーをアクリロニトリル35重量部とジビニルベンゼン65重量部(このラジカル重合性モノマーを重合して得られるポリマーのSP値は11.25である)とし、油溶性溶剤をトルエン(SP値は9.02)100重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。
(実施例5)
過硫酸カリウムの配合量を5重量部とした以外は実施例1と同様にして、体積平均粒子径0.2μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
得られた種粒子分散液を用い、乳化液の添加量をポリスチレン粒子重量の20倍の油性成分となるように添加した以外は、実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。
(実施例6)
過硫酸カリウムの配合量を0.5重量部とした以外は実施例1と同様にして、体積平均粒子径2.0μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
得られた種粒子分散液を用い、乳化液の添加量をポリスチレン粒子重量の125倍の油性成分となるように添加した以外は、実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。
(実施例7)
過硫酸カリウム3重量部の代わりに、過硫酸カリウム0.5重量部、塩化ナトリウム0.1重量部を配合した以外は実施例1と同様にして、体積平均粒子径5.0μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
得られた種粒子分散液を用い、乳化液の添加量をポリスチレン粒子重量の125倍の油性成分となるように添加した以外は、実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。
(比較例1)
油溶性溶剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。
(比較例2)
ラジカル重合性モノマーをスチレン33重量部とジビニルベンゼン67重量部(このラジカル重合性モノマーを重合して得られるポリマーのSP値は9.20である)とし、油溶性溶剤をトルエン(SP値は9.02)100重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。
(比較例3)
ラジカル重合性モノマーをアクリロニトリル30重量部とジビニルベンゼン70重量部(このラジカル重合性モノマーを重合して得られるポリマーのSP値は11.05である)とし、油溶性溶剤をトルエン(SP値は9.02)100重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。
(比較例4)
ラジカル重合性モノマーをアクリロニトリル100重量部(このラジカル重合性モノマーを重合して得られるポリマーのSP値は12.79である)とし、油溶性溶剤をネオペンタン(SP値は5.20)100重量部とした以外は、実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。
(比較例5)
重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド4重量部に代えて過硫酸カリウム4重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。
(比較例6)
ラジカル重合性モノマーとしてアクリロニトリル50重量部とトリメチロールプロパントリメタクリレート50重量部、油溶性溶剤としてヘプタン100重量部、油溶性重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド4重量部を均一に溶解し、多孔質膜を通して乳化剤と水とを含む連続層に分散させ、乳化液を調製した。
得られた乳化液を撹拌しながら85℃で、10時間反応させることにより、コアがヘプタン、シェルがポリアクリロニトリル/トリメチロールプロパントリメタクリレート共重合体により形成されている、コアシェル粒子分散液を得た。
得られたコアシェル粒子を、純水を用いて繰り返して洗浄し、真空乾燥してヘプタンを揮発させて、ポリマー微粒子を得た。
(評価)
実施例1〜7、比較例1〜6で得られたポリマー微粒子について、以下の方法により評価を行った。結果を表2に示した。
(1)外径の測定
得られたポリマー微粒子を、走査型電子顕微鏡により、1視野に約100個が観察できる倍率で観察し、任意に選択した50個の微粒子についてノギスを用いて最長径を測定し、この値の数平均値と変動係数を求め、これらを平均外径、外径Cv値とした。
(2)内径の測定及び単孔性の評価
得られたポリマー微粒子を、エポキシ樹脂に包埋した後、樹脂を硬化させ、マイクロトームで断面切片を切り出した。得られた切片を走査型電子顕微鏡により、1視野に約100個の断面が観察できる倍率で観察した。
単孔性について、任意に選択した50個の微粒子の断面を観察して、単一の孔が存在する粒子の数が49個以上であった場合を「◎」、45〜48個であった場合を「○」、40〜44個であった場合を「△」、39個以下であった場合を「×」と評価した。
また、任意に選択した50個の微粒子の断面について、ノギスを用いて単一の孔の最長径を計測し、この値の数平均値と変動係数を求め、これらを平均内径、内径Cv値とした。なお、単孔性の評価が「◎」又は「○」であり、かつ、単孔の孔が存在する粒子について、平均内径、内径Cv値を算出した。
Figure 0004742161
(実施例8)
スチレン100重量部、過硫酸カリウム3重量部、n−オクチルメルカプタン25重量部、水2500重量部を混合し、攪拌しながら70℃で24時間反応させて、体積平均粒子径0.5μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
ラジカル重合性モノマーとしてアクリロニトリル60重量部とメタクリロニトリル40重量部とトリメチロールプロパントリメタクリレート0.5重量部(このラジカル重合性モノマーを重合して得られるポリマーのSP値は12.53である)、油溶性溶剤としてイソペンタン(SP値は6.99)25重量部、及び、油溶性重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド1重量部を均一に溶解した混合液に、乳化剤としてラウリル硫酸トリエタノールアミン2重量部と水とを加えて混合し、乳化液を調製した。
得られた種粒子分散液に、ポリスチレン粒子重量の200倍の油性成分となるように乳化液を加え、24時間撹拌して、ラジカル重合性モノマー、油溶性溶剤及び油溶性重合開始剤を吸収した種粒子の膨潤粒子液滴の分散液を得た。なお、油性成分は、ラジカル重合性モノマー、油溶性溶剤及び油溶性重合開始剤を構成成分とする。
得られた膨潤粒子液滴の分散液を撹拌しながら85℃、10時間反応させることにより、コアがイソペンタン、シェルがポリアクリロニトリル/ポリメタクリロニトリル/トリメチロールプロパントリメタクリレート共重合体により形成されている、コアシェル粒子分散液を得た。
得られたコアシェル粒子を、純水を用いて繰り返して洗浄し、真空乾燥して、ポリマー微粒子を得た。
(実施例9)
ラジカル重合性モノマーをアクリロニトリル50重量部とメチルメタクリレート50重量部とトリメチロールプロパントリメタクリレート0.5重量部(このラジカル重合性モノマーを重合して得られるポリマーのSP値は11.66である)とし、油溶性溶剤をイソペンタン(SP値は6.99)25重量部とした以外は、実施例8と同様にしてポリマー微粒子を得た。
(実施例10)
過硫酸カリウムの配合量を0.5重量部とした以外は実施例8と同様にして、体積平均粒子径2.0μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
得られた種粒子分散液を用い、乳化液の添加量をポリスチレン粒子重量の125倍の油性成分となるように添加した以外は、実施例8と同様にしてポリマー微粒子を得た。
(実施例11)
過硫酸カリウム3重量部の代わりに、過硫酸カリウム0.5重量部、塩化ナトリウム0.1重量部を配合した以外は実施例8と同様にして、体積平均粒子径5.0μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
得られた種粒子分散液を用い、乳化液の添加量をポリスチレン粒子重量の125倍の油性成分となるように添加した以外は、実施例8と同様にしてポリマー微粒子を得た。
(比較例7)
油溶性溶剤を用いなかった以外は、実施例8と同様にしてポリマー微粒子を得た。
(比較例8)
重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド1重量部に代えて過硫酸カリウム1重量部を用いた以外は、実施例8と同様にしてポリマー微粒子を得た。
(比較例9)
ラジカル重合性モノマーとしてアクリロニトリル60重量部とメタクリロニトリル40重量部とトリメチロールプロパントリメタクリレート0.4重量部、油溶性溶剤としてイソペンタン100重量部、油溶性重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド1重量部を均一に溶解し、多孔質膜を通して乳化剤と水とを含む連続層に分散させ、乳化液を調製した。
得られた乳化液を撹拌しながら85℃、10時間反応させることにより、コアがイソペンタン、シェルがポリアクリロニトリル/ポリメタクリロニトリル/トリメチロールプロパントリメタクリレート共重合体により形成されている、コアシェル粒子分散液を得た。
得られたコアシェル粒子を、純水を用いて繰り返して洗浄し、真空乾燥して、ポリマー微粒子を得た。
(評価)
実施例8〜11、比較例7〜9で得られたポリマー微粒子について、以下の方法により評価を行った。結果を表3に示した。
(1)外径の測定
得られたポリマー微粒子を、走査型電子顕微鏡により、1視野に約100個が観察できる倍率で観察し、任意に選択した50個の微粒子についてノギスを用いて最長径を測定し、この値の数平均値と変動係数を求め、これらを平均外径、外径Cv値とした。
(2)内径の測定及び単孔性の評価
得られたポリマー微粒子を、エポキシ樹脂に包埋した後、樹脂を硬化させ、マイクロトームで断面切片を切り出した。得られた切片を走査型電子顕微鏡により、1視野に約100個の断面が観察できる倍率で観察した。
単孔性について、任意に選択した50個の微粒子の断面を観察して、単一の孔が存在する粒子の数が49個以上であった場合を「◎」、45〜48個であった場合を「○」、40〜44個であった場合を「△」、39個以下であった場合を「×」と評価した。
また、任意に選択した50個の微粒子の断面について、ノギスを用いて単一の孔の最長径を計測し、この値の数平均値と変動係数を求め、これらを平均内径、内径Cv値とした。なお、平均内径、内径Cv値は、単一の孔が存在する粒子について算出した。
(3)熱膨張性(発泡性)評価
得られたポリマー微粒子を約0.1g計量し、10mLのメスシリンダーに入れた。その後、150℃に加熱したオーブンに5分間投入し、メスシリンダー内で膨張した熱膨張性のポリマー微粒子の容積を測定した。容積が5mL以上である場合を「◎」、2mL以上5mL未満である場合を「○」、0.5mL以上2mL未満である場合を「△」、0.5mL未満である場合を「×」とした。
Figure 0004742161
本発明によれば、分級操作が必要なく、外径及び内径が極めて均一な単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を提供することができる。更に、本発明によれば、該単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を用いて製造される単孔中空ポリマー微粒子を提供することができる。

Claims (8)

  1. 非架橋ポリマーを含有する種粒子を、水を含有する分散媒中に分散させた種粒子分散液と、ラジカル重合性モノマーと、油溶性溶剤と、油溶性重合開始剤とを混合し、前記種粒子に前記ラジカル重合性モノマー、前記油溶性溶剤及び前記油溶性重合開始剤を吸収させて膨潤粒子液滴の分散液を調製する工程と、
    前記膨潤粒子液滴中の上記ラジカル重合性モノマーを重合させる工程とを有する単孔中空ポリマー微粒子の製造方法であって、
    前記ラジカル重合性モノマーを重合して得られるポリマーのSP値(SPp)と前記油溶性溶剤のSP値(SPs)との関係が下記式(1)を満たすことを特徴とする単孔中空ポリマー微粒子の製造方法。
    2.1≦SPp−SPs≦7.0 (1)
  2. ラジカル重合性モノマー、油溶性溶剤及び油溶性重合開始剤を、水を含有する分散媒中に分散させた乳化液と、種粒子分散液とを混合することを特徴とする請求項1記載の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法。
  3. 種粒子は、粒子径のCv値が30%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法。
  4. ラジカル重合性モノマーは、ニトリル系モノマーを含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法。
  5. 請求項1、2、3又は4記載の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を用いて製造されることを特徴とする単孔中空ポリマー微粒子。
  6. 平均外径が0.1〜100μmであり、かつ、外径のCv値が10%以下であることを特徴とする請求項5記載の単孔中空ポリマー微粒子。
  7. 内径のCv値が10%以下であることを特徴とする請求項5又は6記載の単孔中空ポリマー微粒子。
  8. 熱膨張性であることを特徴とする請求項5、6又は7記載の単孔中空ポリマー微粒子。
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