JP6307882B2 - 主軸装置 - Google Patents

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本発明は、工作機械に使用される主軸装置に関する。
例えば、特許文献1には、主軸の前側(工具側)に配置された前側転がり軸受と前側ハウジングとの間に中間ハウジングを介装し、減衰性を付加した1箇所の静圧軸受で中間ハウジングの径方向を支持して加工中の主軸のびびり振動を抑制する主軸装置が開示されている。
特開平6−8005号公報
本発明は、びびり振動をより確実に抑制することができる主軸装置を提供することを目的とする。
(請求項1)本発明に係る主軸装置は、ハウジングと、回転工具を保持する主軸と、前記ハウジングに対して前記主軸を回転可能に支持する支持装置と、制御装置と、を備え、前記支持装置は、前記主軸の外周面に設けられる複数の転がり軸受と、前記複数の転がり軸受の外輪を支持する1つの外輪支持体と、前記ハウジングと前記外輪支持体との径方向間に設けられ、且つ前記ハウジングに対して前記外輪支持体を前記主軸の軸線方向において前記複数の転がり軸受と同位置で支持し、前記複数の転がり軸受が有する減衰係数よりも大きな減衰係数をそれぞれ有する複数の粘弾性軸受と、を備える。前記複数の前記粘弾性軸受は、流体供給経路を介して前記制御装置が指示した所定流量の流体が供給される油圧ポケットと、前記流体供給経路に設けられる所定の径の絞りと、前記軸線方向における前記油圧ポケットの少なくとも一側において前記ハウジングと前記外輪支持体の外周面との間の隙間によって形成され前記油圧ポケットに供給された前記流体が流れる流路と、前記軸線方向において前記流路を中心として前記油圧ポケット側と反対側に形成され前記流路から流れる前記流体を流すドレン通路と、をそれぞれ備える静圧流体軸受である
このように、複数の転がり軸受の外輪を支持する外輪支持体を、大きな減衰係数を有する複数の静圧流体軸受(粘弾性軸受によって複数の転がり軸受と軸線方向における同位置で支持するので、従来技術に示すように、外輪支持体を、1個の粘弾性軸受及び1個の転がり軸受によって支持する場合と比較し安定して外輪支持体を支持でき、回転工具のびびり振動を効果的に抑制することができる。また、主軸の振動を抑制する際には、流体静圧軸受に供給する油量等を調整することにより、最も各回転工具に適した減衰係数に容易に合わせ込むことができ効率的である。
(請求項)また、前記静圧流体軸受に供給された前記流体が排出されるドレンは、前記ハウジングの重力方向下方に配置されてもよい。これにより、流体は重力によって効率よく排出される。
(請求項)また、前記外輪支持体は、前記ハウジングに対して回転不能に固定されてもよい。このため、支持体は前方側軸受の外輪と供回りすることが確実に防止されるので、支持体と静圧流体軸受との間に相対回転は発生しない。これにより、静圧流体軸受に供給される油が外輪支持体と静圧流体軸受との間でせん断されて熱を発生させ各部に熱変位を生じさせて、回転工具のびびり振動を助長することもない。
(請求項)また、前記主軸の前記回転工具側の端部には、前記回転工具が加工する工作物と前記静圧流体軸受との間を遮蔽する遮蔽部材が設けられてもよい。これにより、工作物の切削くず等が、支持体軸受に入り込むことを防止できる。
(請求項)また、前記複数の転がり軸受は、前記回転工具側に位置する転がり軸受であってもよい。これにより、回転工具のびびり振動を回転工具の近傍で効果的に抑制することができる。
本発明の実施形態における主軸装置の軸方向断面図である。 図1の静圧軸受部の拡大図である。 径方向荷重P1、P2により発生するモーメントM1を説明する図である。 仮想集中荷重P3により発生するモーメントM2を説明する図である。 荷重Fa、Fbと、仮想集中荷重P3の発生位置CLとの位置関係を説明する図である。 仮想集中荷重P3により発生するモーメントM2と、荷重Fa、Fbにより発生するモーメントM3との関係を説明する図である。 荷重Fa、Fbと、仮想集中荷重範囲Dとの関係を説明する図である。 振動抑制効果−減衰係数グラフである。 振動抑制効果−バネ定数グラフである。 振動抑制効果−外輪支持体質量グラフである。
(主軸装置の全体構成)
以下、本発明の主軸装置を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。主軸装置の構成について、図1を参照して説明する。図1に示すように、主軸装置は、ハウジング10と、主軸20と、モータ30と、支持装置40と、キャップ70(本発明の遮断部材に相当する)と、を備える。
ハウジング10は、中空筒状に形成され、その中に主軸20を挿通する。主軸20は、先端側(図1の左側)に、ホルダ22に保持された状態の回転工具21を保持する。モータ30は、ハウジング10の筒内に配置されており、ハウジング10に固定されたステータ31および主軸20に固定されたロータ32を備える。
支持装置40は、ハウジング10に対して、主軸20を回転可能に支持する。支持装置40は、転がり軸受41〜45と、外輪支持体50と、静圧軸受60とを備えている。
転がり軸受41〜45は、ハウジング10に対して主軸20を回転可能に支持する。転がり軸受41〜45の内周面は、主軸20の外周面に係合される。転がり軸受41〜44は、例えば玉軸受を適用し、モータ30より回転工具21側(前側)に配置される。玉軸受はどのようなものでもよく、例えば、主軸20の軸線方向に与圧を付与するアンギュラ玉軸受であってもよい。なお、以降の説明においても、軸線方向とのみいった場合には、主軸20の軸線方向のことをいうものとする。
一方、転がり軸受45は、例えば、ころ軸受を適用し、モータ30より回転工具21の反対側(後側)に配置される。つまり、転がり軸受41〜軸受44および軸受45は、モータ30を軸線方向中央に挟むように配置される。なお、主軸装置の説明においては、以降も回転工具21が保持される図1の左側を前側と称し、図1の右側を後側と称す。
本実施形態においては、転がり軸受41〜44のうち、最も回転工具21側に配置される主軸20の軸線方向に整列した2列の転がり軸受41、42を前方側軸受41,42と定義する。転がり軸受41、42は、本発明に係る転がり軸受に相当する。
図2に示すように、前方側軸受41,42は、外輪支持体50、および静圧軸受60を介してハウジング10の内周面10aに支持されている。外輪支持体50は、例えば鉄等の金属材料によって円筒状に形成され、円筒の内周面50aで前方側軸受41,42の各外輪を支持している。前方側軸受41,42の各外輪は外輪支持体50の内周面50aに圧入されている。ただし、この態様に限らず、前方側軸受41,42の各外輪は外輪支持体50の内周面50aに挿入されるだけでもよい。また、外輪支持体50と前方側軸受41,42の各外輪とが一体的に形成されていてもよい。
静圧軸受60は、第一静圧軸受61および第二静圧軸受62(本発明の複数の粘弾性軸受(静圧流体軸受に相当する)を有する。第一静圧軸受61および第二静圧軸受62は、ハウジング10と外輪支持体50との径方向間において主軸20の軸線方向の異なる2箇所にそれぞれ設けられ、ハウジング10に対して外輪支持体50を支持する。
第一静圧軸受61は、主軸20の軸線方向において回転工具21側に設けられ、第二静圧軸受62は第一静圧軸受61の後側に配置される。第一および第二静圧軸受61、62は、例えば油などの流体が、後述する各油圧ポケット61a、62aに所定の流量だけ供給されることにより、所定の減衰係数Cおよび所定のバネ定数kで、ハウジング10に対し、外輪支持体50を主軸20の径方向で支持する軸受として機能する。
第一および第二静圧軸受61、62で設定される所定の減衰係数Cは、転がり軸受41、42がそれぞれ有する減衰係数よりも大きくなるよう設定されている。また、第一および第二静圧軸受61、62で設定される所定のバネ定数kは、転がり軸受41、42がそれぞれ有するバネ定数より小さくなるよう設定されている。
なお、本実施形態においては、第一静圧軸受61および第二静圧軸受62は同様の構成からなるものとする。よって、第一および第二静圧軸受61、62の有する各減衰係数Cおよび各バネ定数kはそれぞれ同じであるものとする。
第一および第二静圧軸受61、62は、所定の減衰係数Cおよび所定のバネ定数kの付加によって生じる減衰効果およびバネ効果により、外輪支持体50、前方側軸受41,42、および前方側軸受41,42が支持する主軸20(回転工具21)の振動を抑制する
キャップ70(本発明の遮蔽部材に相当する)は、円筒状の部材であり、主軸20の回転工具21側端部に円筒内周面が挿入されている。円筒内周面と主軸20の外周面との間には、2本のOリング71、72が軸線方向に整列して介装され、円筒内周面と主軸20の外周面との間がシールされている。ただし、これに限らず、Oリングは、Oリング71が1本だけ設けられていてもよい。また、円筒内周面と主軸20の外周面との間のシールは、Oリングではなく、オイルシールまたはエアシールによってもよい。また、キャップ70のハウジング10側の端面の外周部は、ハウジング10のキャップ70側の端面の外周部に当接されている。
また、図1に示すように、キャップ70のハウジング10側の端面には、ピン73およびピン74が1本ずつ突設されている。キャップ70を主軸20に装着した状態において、ピン73は、外輪支持体50に設けられた嵌合孔50bと嵌合し、ピン74はハウジング10に設けられた嵌合孔10bと嵌合する。これにより、ピン73、ピン74およびキャップ70を介してハウジング10に対する外輪支持体50の相対回転を規制する。なお、ピン73およびピン74は、それぞれ1本ずつに限らず何本ずつ設けてもよい。また、ハウジング10に対する外輪支持体50の相対回転を規制する方法は、上記態様には限らず、どのような方法によってもよい。
(静圧軸受60の詳細構成)
支持装置40を構成する静圧軸受60の構成について詳細に説明する。前述したように静圧軸受60は、第一および第二静圧軸受61、62を有しており、両者は同一の構成によって形成されている。そこで、構成の説明については、代表として第一静圧軸受61のみについて説明する。図1、図2に示すように、第一静圧軸受61は、油圧ポケット61aと、第一ドレン通路63と、第二ドレン通路61bと、対向面61cと、対向面61dと、流体供給経路61eと、絞り61fと、を有する。
油圧ポケット61aは、外輪支持体50の外周面と対向するハウジング10の内周面10aの全周に亘って凹状に刻設され形成されている。第一ドレン通路63は、油圧ポケット61aと壁64を隔てて軸線方向の後側に形成されている。なお、第一ドレン通路63は、第二静圧軸受62が有する第一ドレン通路と共用である。第一ドレン通路63は、ハウジング10の内周面10aの全周に亘って凹状に形成されている。壁64の内周面であり、外輪支持体50の外周面と対向する対向面61cは、外輪支持体50の外周面と若干の隙間を有して対向している。当該隙間によって、油圧ポケット61aに供給された油が油圧ポケット61aから第一ドレン通路63に向かって流れる流路が形成される。
第二ドレン通路61bは、油圧ポケット61aと壁65を隔てて軸線方向の前側に形成されている。第二ドレン通路61bは、ハウジング10の内周面10aの全周に亘って凹状に形成されている。壁65の内周面であり、外輪支持体50の外周面と対向する対向面61dは、外輪支持体50の外周面と若干の隙間を有して対向している。当該隙間によって、油圧ポケット61aに供給された油が油圧ポケット61aから第二ドレン通路61bに向かって流れる流路が形成される。
流体供給経路61eは、流路66を介して油圧ポケット61aと図略の油圧ポンプとを接続している。油圧ポンプは、作動することによって、図略のリザーバから油を吸入し図略の制御装置が指示する流量の油を油圧ポケット61aに供給する。また、流体供給経路61eには、所定の径の絞り61fが設けられている。ここでいう所定の径とは、第一静圧軸受61が有する減衰係数が、所定の減衰係数Cとなるように設定される径である。
油圧ポケット61a、第一ドレン通路63および第二ドレン通路61bは、図1に示すように、それぞれが有する接続通路46がドレン回収通路47に接続されている。本実施形態において、接続通路46およびドレン回収通路47は、主軸20の重力方向の真下に位置している。ドレン回収通路47は、図略のリザーバに接続されている。
前述のとおり、第二静圧軸受62は、第一静圧軸受61と同様の構成を有している。つまり、第一静圧軸受61が有する、油圧ポケット61a、第一ドレン通路63(共用)、第二ドレン通路61b、対向面61c、対向面61d、流体供給経路61eおよび絞り61fが、第二静圧軸受62が有する油圧ポケット62a、第一ドレン通路63、第二ドレン通路62b、対向面62c、対向面62d、流体供給経路62e、および絞り62fにそれぞれ対応する。そして、第一静圧軸受61の前側および第二静圧軸受62の後側では、ゴム製のOリングによって、外輪支持体50の外周面と、ハウジング10の内周面10aとの間がシールされている。
(静圧軸受60の配置位置について)
ここで、静圧軸受60の軸線方向における配置位置について詳細に説明する。本実施形態における静圧軸受60は、前方側軸受41,42との間の力のバランス関係に基づいて配置位置が設定される。具体的には、(1)静圧軸受60(第一および第二静圧軸受61、62)が外輪支持体50を支持する位置と、(2)前方側軸受41,42が外輪支持体50に及ぼす力の作用する位置と、の関係が下記で説明する所定の状態となるよう設定される。
((1)静圧軸受60が外輪支持体50を支持する位置について)
油圧ポンプが作動し、第一および第二静圧軸受61、62の各油圧ポケット61a、62aに所定流量の油が供給されると、各油圧ポケット61a、62a内から油が対向面62c、対向面62dおよび対向面61c、対向面61dと外輪支持体50との間の各流路を通過して第一ドレン通路63、および各第二ドレン通路61b、62bに流れていく。
このような状態において、第一および第二静圧軸受61、62は、外輪支持体50をそれぞれ所定の減衰係数Cおよびバネ定数kを付加した状態で支持する。この場合、第一および第二静圧軸受61、62が、外輪支持体50を支持する位置(範囲)は、それぞれ図2に示すAおよびBの範囲となる。つまり、第一および第二静圧軸受61、62は外輪支持体50を所定の範囲AおよびBの幅で支持している。
((2)前方側軸受41,42が外輪支持体50に及ぼす力の作用する位置について)
外輪支持体50が前方側軸受41,42を支持する際、各前方側軸受41,42は、それぞれ図2、図3Aに示すように各転がり軸受41、42の軸線方向における各中心において、径方向荷重P1、P2を外輪支持体50に対して付与する。
このとき、径方向荷重P1、P2による外輪支持体50の端部Tを中心としたモーメントM1(図3A参照)と、単一の仮想集中荷重P3による外輪支持体50の端部Tを中心としたモーメントM2(図3B参照)とが同一となるように、単一の仮想集中荷重P3の発生位置CLを定義する。上記M1、M2をそれぞれ式で表すと下記式(1)および(2)となる。また、M1とM2との関係を式で表すと下記式(3)となる。なお、各式において、外輪支持体50の端部Tから径方向荷重P1、P2および単一の仮想集中荷重P3までの距離はそれぞれL1、L2、L3とする。
[数1]
M1=P1×L1+P2×L2・・・(1)
[数2]
M2=P3×L3・・・(2)
[数3]
M1=M2・・・(3)
本実施形態においては、上記のような状態において、第一静圧軸受61が外輪支持体50を支持する範囲Aおよび、および第二静圧軸受62が外輪支持体50を支持する範囲Bが、すべて軸線方向における各転がり軸受41、42の幅の中に含まれるよう、2箇所で配置されている。このため、第一および第二静圧軸受61、62が外輪支持体50へ付与する力は、すべて各転がり軸受41、42によって支持される。これにより、各転がり軸受41、42と第一および第二静圧軸受61、62とは、安定した状態で配置されているといえる。
また、図4Aに示すように、本実施形態においては、第一および第二静圧軸受61、62が、それぞれ外輪支持体50を支持する各範囲A、Bが、単一の仮想集中荷重P3の発生位置CLの前後(両側)にそれぞれ配置される。なお、図4Aにおいては、各範囲A、Bで外輪支持体50を支持する荷重をそれぞれ荷重Fa、Fbとして記載する。また、荷重Fa、Fbの軸線方向位置は、図2に示す流体供給経路61eおよび62eの軸中心と一致するものとする。そして、荷重Fa、Fbが、単一の仮想集中荷重P3の発生位置CLの前後(両側)にそれぞれ配置されるよう、第一および第二静圧軸受61、62の位置が設定される(図2、図4A参照)。
これにより、図4Bに示すように、単一の仮想集中荷重P3による外輪支持体50の端部Tを中心としたモーメントM2と、荷重Fa、Fbによる外輪支持体50の端部Tを中心としたモーメントM3(図3A参照)との間の差を所定の閾値(Th)より小さくすることができる。これにより、端部Tを中心として発生する外輪支持体50の回転モーメントの大きさを抑制することができる。なお、所定の閾値(Th)は、外輪支持体50に回転モーメントを発生させるのに十分な大きさの差であり、任意に設定すればよい。よって、各転がり軸受41、42と第一および第二静圧軸受61、62とは、さらに安定した状態で配置されたといえる。
なお、モーメントM2の数式、モーメントM3の数式およびモーメントM2とモーメントM3との関係数式は、それぞれ、前述した下記式(2)、および式(4)、式(5)となる。なお、各数式において、外輪支持体50の端部Tから荷重Fa、Fbまでの距離はそれぞれL4、L5とする。
[数2]
M2=P3×L3・・・(2)
[数4]
M3=Fa×L4+Fb×L5・・・(4)
[数5]
|M2−M3|≦Th・・・(5)
しかし、この態様に限らず、第一および第二静圧軸受61、62が外輪支持体50を支持する範囲Aおよび範囲Bの各位置が、単一の仮想集中荷重P3の発生位置CLの前と後にそれぞれ配置されてさえいれば、第一および第二静圧軸受61、62をどのように配置してもよい。つまり、範囲Aおよび範囲Bの各一部のみが軸線方向における各転がり軸受41、42の幅の中に交差するよう配置されてもよい
また、例えば、各転がり軸受41、42が、大きさの異なる軸受で設定され、径方向荷重P1、P2が異なった値となる場合には、単一の仮想集中荷重P3の発生位置CLは軸線方向において変動する。しかし、その場合にも、第一および第二静圧軸受61、62が外輪支持体50を支持する範囲Aおよび範囲Bが、単一の仮想集中荷重P3が発生する軸線方向の発生位置CLの前後に配置されるよう第一および第二静圧軸受61、62の位置を設定すればよい。
さらに、主軸20の回転数の上昇に伴い、各転がり軸受41、42の回転速度(回転数)が上昇したときには、単一の仮想集中荷重P3の発生位置CLは変動する場合がある。このとき、変動する単一の仮想集中荷重P3の発生位置CLの範囲を仮想集中荷重範囲Dと定義する(図2,図5参照)。このような場合にも、第一および第二静圧軸受61、62が外輪支持体50を支持する径方向荷重P1の範囲Aおよび、径方向荷重P2の範囲Bが、仮想集中荷重範囲Dの前後(両外側)となるよう配置されることが好ましい。このような条件を満足させるよう、第一および第二静圧軸受61、62を配置することにより、所定の流量の油が供給された第一および第二静圧軸受61、62の作用によって支持される外輪支持体50に発生する回転モーメントを抑制できる。
(作用効果)
上記のように構成された主軸装置では、主軸20が回転しても、ハウジング10との相対回転が規制されている外輪支持体50自体は回転しない。これにより、主軸20が高速回転しても、静圧軸受60(第一および第二静圧軸受61、62)の各油圧ポケット61a、62a内の油および、対向面61c、61dおよび対向面62c、62dと外輪支持体50の外周面との間の油にせん断が発生せず、よってせん断熱を発生させることがない。このため、油のせん断により発生した熱によって主軸装置の各部が変位し、当該変位によって主軸20の回転バランスを変動させて、主軸20および回転工具21のびびり振動を増大させることもない。
上記のように、本実施形態においては、油のせん断熱の発生を防止することによって主軸20および回転工具21の振動を抑制するという効果を有している。しかし、これに加え、さらに、第一および第二静圧軸受61、62が、それぞれ外輪支持体50を支持する範囲Aおよび範囲Bが、単一の仮想集中荷重P3の発生位置CLの前後(両側)に配置されている。これにより、外輪支持体50には、静圧軸受60(第一および第二静圧軸受61,62、粘弾性軸受)の支持によって回転モーメントが発生されることはなく、安定して主軸20(回転工具21)のびびり振動を抑制することができる。
また、粘弾性軸受を第一および第二静圧軸受61、62とした。これにより、主軸20のびびり振動を抑制する際には、第一および第二静圧軸受61、62(静圧軸受60)に供給する油量等を調整することにより、最も各回転工具に適した減衰係数に容易に合わせ込むことができ効率的である。
なお、周知の事項であるが、上記のように第一および第二静圧軸受61,62によって、主軸20(回転工具21)のびびり振動を抑制する場合、回転工具21および主軸20等に応じてもっとも効率よく振動を抑制することが可能な減衰係数Cおよびバネ定数kの範囲がある(図6、図7中、効果大の範囲参照)。
よって、第一および第二静圧軸受61、62には、これらの振動抑制効果が高い減衰係数Cおよびバネ定数kの範囲が得られるのに適した流量の油が供給されることが好ましい。ただし、振動抑制効果が高い減衰係数Cの範囲のみが得られるよう、第一および第二静圧軸受61、62に所定の流量の油が供給されるだけでもよい。これらによって、静圧軸受60による振動抑制効果はより大きなものとなる。
また、本実施形態において、単一の仮想集中荷重P3の発生位置は、主軸20の回転速度に応じて変化する。主軸20の回転速度に応じて変化する単一の仮想集中荷重P3の範囲を仮想集中荷重範囲Dと定義した場合に、第一および第二静圧軸受61,62(2個の粘弾性軸受)は、それぞれが外輪支持体50を支持する範囲である範囲AおよびBが、仮想集中荷重範囲Dに対して軸線方向の両外側に配置されるよう設定されている。
このため、主軸20の回転速度が変化した場合にも、第一および第二静圧軸受61,62による支持の力が、外輪支持体50に回転モーメントを発生させることがない。これにより、静圧軸受60(第一および第二静圧軸受61,62、粘弾性軸受)は、安定して主軸20(回転工具21)のびびり振動を抑制することができる。
また、上記実施形態によれば、接続通路46およびドレン回収通路47(ドレン)を重力方向下方に設けたので、流体は重力によって効率よく排出される。また、上記実施形態によれば、主軸20の回転工具21側端部には回転工具21が加工する工作物と静圧軸受60(第一および第二静圧軸受61、62、粘弾性軸受)との間を遮蔽するキャップ70を備えている。これにより、工作物の切粉等が、静圧軸受60に入り込むことを防止できる。
また、上記実施形態によれば、転がり軸受41、42は、回転工具21側に位置する転がり軸受である。これにより、回転工具のびびり振動を回転工具21の近傍で効果的に抑制することができる。
なお、上記実施形態によれば、第一および第二静圧軸受61、62が、それぞれ外輪支持体50を支持する範囲Aおよび範囲Bが、単一の仮想集中荷重P3の発生位置CLの前後(両側)に配置されるよう第一および第二静圧軸受61、62の位置を設定した。
しかし、この態様に限らず、外輪支持体50に回転モーメントを発生させない位置であれば、第一および第二静圧軸受61、62がそれぞれ外輪支持体50を支持する範囲Aおよび範囲Bが、ともに単一の仮想集中荷重P3の発生位置CLの前側のみに配置されてもよい。また、外輪支持体50を支持する範囲Aおよび範囲Bが、単一の仮想集中荷重P3の発生位置CLの後ろ側のみに配置されてもよい。これらによっても、従来技術のように、静圧軸受が径方向で外輪支持体50を一箇所だけで支持する場合と比べて、安定して主軸20を支持できるので、主軸20のびびり振動を安定して抑制できる。
また、上記実施形態では、静圧軸受60が支持する転がり軸受を転がり軸受41、42の2箇所とした。しかし、この態様に限らず静圧軸受60が支持する転がり軸受は3箇所を超えて設けてもよい
また、上記実施形態では、接続通路46およびドレン回収通路47(ドレン)を主軸20の重力方向の真下に設けた。しかし、この態様に限らず、接続通路46およびドレン回収通路47は主軸20の真下の近傍に設けてもよい。このとき、近傍とは、主軸20の軸線方向の真下を中心として主軸20の軸線周りに±45度までの範囲とする。
また、上記実施形態では、キャップ70によって、外輪支持体50をハウジング10に対して回転不能に固定した。しかし、この態様に限らず、外輪支持体50をハウジング10に対して回転不能に固定しなくてもよい。これによっても、静圧軸受60の油にせん断熱を発生させない効果は相応に得られる。
また、上記実施形態では、静圧軸受60の減衰係数Cおよびバネ定数kの範囲を最適な状態に設定して振動抑制効果を高めることが好ましいと説明した。しかし、これだけではなく、図8に示すように、外輪支持体50の質量を振動抑制効果がもっとも高くなるよう効果大の範囲に調整してもよい。これによっても、静圧軸受60による振動抑制効果は、大きなものとなる。
10:ハウジング、 20:主軸、 21:回転工具、 22:ホルダ、 41〜45:転がり軸受、 46:接続通路、 47:ドレン回収通路、 40:支持装置、 50:外輪支持体、 60:粘弾性軸受(静圧流体軸受)、 61:第一静圧軸受、 62:第二静圧軸受、 70:遮蔽部材(キャップ)。

Claims (5)

  1. ハウジングと、
    回転工具を保持する主軸と、
    前記ハウジングに対して前記主軸を回転可能に支持する支持装置と、
    制御装置と、
    を備え、
    前記支持装置は、
    前記主軸の外周面の軸線方向における異なる位置に設けられる複数の転がり軸受と、
    前記複数の転がり軸受の外輪を支持する1つの外輪支持体と、
    前記ハウジングと前記外輪支持体との径方向間に設けられ、且つ前記ハウジングに対して前記外輪支持体を前記主軸の軸線方向において前記複数の転がり軸受と同位置で支持し、前記複数の転がり軸受が有する減衰係数よりも大きな減衰係数をそれぞれ有する複数の粘弾性軸受と、を備え、
    前記複数の前記粘弾性軸受は、
    流体供給経路を介して前記制御装置が指示した所定流量の流体が供給される油圧ポケットと、
    前記流体供給経路に設けられる所定の径の絞りと、
    前記軸線方向における前記油圧ポケットの少なくとも一側において前記ハウジングと前記外輪支持体の外周面との間の隙間によって形成され前記油圧ポケットに供給された前記流体が流れる流路と、
    前記軸線方向において前記流路を中心として前記油圧ポケット側と反対側に形成され前記流路から流れる前記流体を流すドレン通路と、をそれぞれ備える静圧流体軸受である、主軸装置。
  2. 前記静圧流体軸受に供給された前記流体が排出されるドレンは、前記ハウジングの重力方向下方に配置されている、請求項に記載の主軸装置。
  3. 前記外輪支持体は、前記ハウジングに対して回転不能に固定される、請求項1又は2に記載の主軸装置。
  4. 前記主軸の前記回転工具側の端部には、前記回転工具が加工する工作物と前記静圧流体軸受との間を遮蔽する遮蔽部材が設けられている、請求項1〜のいずれか1項に記載の主軸装置。
  5. 前記複数の転がり軸受は、前記回転工具側に位置する転がり軸受である、請求項1〜のいずれか1項に記載の主軸装置。
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