JP6306929B2 - 焼結体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、透明導電性材料、透明半導体材料などの焼結体を製造する方法に関する。
従来、電子・電気部品用材料に使用される半導体などの成膜法としては、例えば、スパッタリング法が挙げられる。スパッタリング法は、膜厚および成分を容易に制御することができるため、広範に用いられている。
このようなスパッタリング法に用いられるスパッタリングターゲットは、一般に、薄膜を形成しようとする材料からなるターゲット材と、導電性および熱伝導性に優れた材質からなるバッキングプレートとを、ボンディング材を介して接合することによって得られる。
近年、太陽電池用透明導電性材料、液晶、タッチパネルなどに使用される透明導電性材料(ITO)および透明半導体材料(IGZO)用途向けに、スパッタリングによる大型基板への成膜の需要が増加している。これに伴い、スパッタリングターゲットも大型化させる必要があるものの、割れの防止または品質保持の観点から、材料によっては、スパッタリングターゲットの大型化が困難な場合がある。
スパッタリングターゲットの大型化への要望に対応するため、複数のターゲット材小片をパッキングプレート上に並べて接合することによって、大型のスパッタリングターゲットを製造している。ところで、このターゲット材小片(分割ターゲット材)を用いると、それらの隣接部位に起因するチッピング、パーティクルおよびアーキングが発生しやすくなり、歩留まり低下の原因となる。したがって、可能な限り分割数を少なくすることが好ましく、分割ターゲット材を用いず、所望サイズの1枚のターゲットが理想的である。
しかし、このようなターゲットの原料となる均一かつ高密度を有する大型焼結体を製造するには限界がある。常圧焼結法では、温度ムラが生じたり、焼結体に反りが発生したりするため、被焼結材料を均一に加熱して大型焼結体を得るのは困難である。一方、加圧焼結法(例えば、量産可能なホットプレス法)では、大きな鋳型(ダイス、パンチなど)を用意できれば、原理的に大型焼結体を製造することが可能である。しかし、装置上、負荷可能な圧力は決まっており、一軸加圧のため、大型焼結体を得ようと試みるほど、被焼結材料に負荷される圧力は小さくなる。また、同じ圧力を負荷することも困難になる。そのため、大型サイズ(例えば、平面部が直径300mm以上の円形、または少なくとも一辺が300mm以上の多角形等であって、厚みが3mm以上の平板、以下同じ)にすると、均一かつ高密度を有する焼結体を製造することが困難となる。
ところで、セラミックスまたは金属を高温で焼結させる方法の1つに熱間静水圧焼結(以下「HIP」と記載する場合がある)法がある。HIP法には、ある程度高密度化させた被焼結材料自体に高温・高圧のガス中で均等な圧力を加えて、被焼結材料を加圧焼結させるカプセルフリーHIP法と、被焼結材料を充填して気密封止させたカプセル容器自体に高温・高圧のガス中で均等な圧力を加えて、被焼結材料を加圧焼結するカプセルHIP法とがある。これらの方法では、型の中に材料を入れて上下から一軸に圧力を加えて焼結させるホットプレス法などと比較して被焼結材料の形状に制約がなく、高い圧力下で等方的に負荷をかけることができる。
被焼結材料が粉体である場合、カプセルHIP法が採用される。被焼結材料が金属材料である場合、カプセル容器および被焼結材料のいずれも金属のため、両者の熱膨張係数の差は小さい。さらに金属同士のため、被焼結材料とカプセル容器を構成する材質とが反応して接着しても、カプセルHIP処理における焼結後の冷却時に焼結体に残留応力が発生し、亀裂が生じるおそれもない。
しかし、被焼結材料がセラミックス粉(酸化物、炭化物、窒化物、硼化物など)の場合、カプセル容器を構成する金属とセラミックスとは、熱膨張係数の差が大きい。そのため、焼結体に熱応力が発生し、カプセルHIP処理における焼結後の冷却時に焼結体に亀裂が発生するという問題がある。小型焼結体であれば、熱応力の絶対量は大きくない。そのため、焼結体の機械的強度が熱応力に堪えることができれば、亀裂は発生しにくく問題とならない。一方、大型焼結体の場合、熱応力の絶対量が大きくなるので、焼結体の機械的強度にも堪えることができず、亀裂が必然的に発生する。
特許文献1には、上記熱膨張率係数の差により、焼結体に亀裂が生じるのを防止するために、金属製カプセル容器の壁厚を0.3mm〜1.0mmに設定することが記載されている。
しかしながら、このカプセル容器の肉厚は、実用的な肉厚(通常は1.5mm〜4mm)と較べて極めて薄いため、下記(a)ないし(c)などの多くの問題があり、現実的には特許文献1に記載の金属製カプセル容器(以下、薄肉厚カプセル容器という)の実用化は極めて困難である。
(a)金属製カプセル容器を作製する際に、金属の板を加工、研削して作製し、溶接する必要があるところ、薄肉厚カプセル容器では肉厚が薄すぎて現実的に溶接ができない。
(b)薄肉厚カプセル容器では肉厚が薄すぎて容器自体の強度が十分ではなく、大型焼結体を製造するために薄肉厚カプセル容器を大型化してより多くの被焼結材料を容器内に充填した時に、被焼結材料の重量に容器自体が堪えらず容器が破損するおそれがあり、HIP装置に設置するための容器の運搬ができないおそれがある。
(c)カプセルHIP処理の際に薄肉金属カプセル容器は圧縮され、その際、容器に穴、亀裂が入り、被焼結材料に額面通りの圧力を負荷できず、低密度な焼結体になってしまうだけでなく、被焼結材料が容器の外部に出ることにより、HIP装置内が汚染され、装置が故障してしまうおそれがある。
このように、カプセルHIP法において、均一かつ高密度を有し亀裂を有さない大型焼結体が得られることは、未だ報告されていない。
一方、特許文献2〜4には、カプセルHIP法において、カプセル容器と被焼結材料との間に離型剤を介在させることが記載されている。離型剤を介在させる目的は、カプセル容器と被焼結材料との固着または反応を防止し、焼結体をカプセルHIP処理後のカプセル容器から除去するのを容易にするためである。したがって、離型剤は、カプセル容器を構成する材料と固着または反応しないものであれば、特に限定されず、離型剤の厚みについても、存在していればよく、0.1mm程度である。
特開2003−267790 特開平6−80476号公報 特開平5−179307号公報 特開平1−305868号公報
本発明の課題は、均一かつ高密度を有し亀裂を有さない焼結体、特に大型焼結体であっても亀裂を発生させずに製造することができる方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)被焼結材料をカプセル容器に入れ、カプセル熱間等方加圧焼結処理を行う焼結体の製造方法であって、被焼結材料とカプセル容器との間に、離型剤として、被焼結材料に対して非反応性であり、焼結後の相対密度が85%以下であり、焼結後の厚さが1mm以上となる量の金属および/または金属化合物を介在させて、カプセル熱間等方加圧焼結処理を行うことを特徴とする、焼結体の製造方法。
(2)前記離型剤は、金属または金属化合物であり、焼結後の厚さが2mm以上であることを特徴とする、前記(1)に記載の焼結体の製造方法。
(3)前記離型剤が、金属酸化物である、前記(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)前記離型剤がアルミナまたはアルミナと二酸化ケイ素を含む複合酸化物である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)前記離型剤がアルミナ粉末またはアルミナと二酸化ケイ素を含む複合酸化物粉末からなるコーティング膜である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
(6)前記離型剤が、金属粉末である、前記(1)または(2)に記載の製造方法。
(7)被焼結材料をカプセル容器に入れ、カプセル熱間等方加圧焼結処理を行う焼結体の製造方法であって、被焼結材料とカプセル容器との間に、離型剤として、被焼結材料に対して非反応性であり、金属および/または金属化合物からなるシートまたはブランケットと、金属箔とを重ね合わせて、焼結後の厚さが1mm以上となる量で介在させて、カプセル熱間等方加圧焼結処理を行うことを特徴とする、焼結体の製造方法。
(8)被焼結材料をカプセル容器に入れ、カプセル熱間等方加圧焼結処理を行う焼結体の製造方法であって、被焼結材料とカプセル容器との間に、離型剤として、被焼結材料に対して非反応性で、相対密度が100%である金属シートを1枚または複数枚重ね合わせて、焼結後の厚さが1mm以上となる量で介在させて、カプセル熱間等方加圧焼結処理を行うことを特徴とする、焼結体の製造方法。
(9)前記カプセル容器が金属製である、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)前記被焼結材料が透明導電性材料である、前記(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11)前記透明導電性材料が酸化亜鉛系透明導電性材料である、前記(10)に記載の製造方法。
(12)前記被焼結材料が透明半導体材料である、前記(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(13)前記透明半導体材料が、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)および酸素(O)からなる焼結体を得るための材料である、前記(12)に記載の製造方法。
(14)前記カプセル熱間等方加圧焼結処理における焼結温度が900〜1400℃であり、300mmφあるいは300mm角以上の大型焼結体の亀裂の発生を抑制できる、前記(1)〜(13)のいずれかに記載の製造方法。
(15)前記カプセル熱間等方加圧焼結処理により得られた焼結体が98%以上の相対密度を有する、前記(1)〜(14)のいずれかに記載の製造方法。
(16)前記カプセル熱間等方加圧焼結処理が、不活性ガス雰囲気下で行われる、前記(1)〜(15)のいずれかに記載の製造方法。
(17)前記不活性ガスがArまたはN2である、前記(16)に記載の製造方法。
(18)前記カプセル熱間等方加圧焼結処理が、50MPa以上の圧力条件下で行われる、前記(1)〜(17)のいずれかに記載の製造方法。
本発明に係る焼結体の製造方法によれば、均一かつ高密度を有し亀裂を有さない焼結体、特に大型焼結体(例えば、平面部が直径300mm以上の円形、または少なくとも一辺が300mm以上の多角形等であって、厚みが3mm以上、とりわけ1mを超えるような円柱体や角柱体など)であっても亀裂を発生させずに製造することができる。
本発明に係る焼結体の製造方法で用いられるカプセル容器に、離型剤および被焼結材料を充填した一実施態様を示す模式図である。 図1において、I−I'線で切断した際の断面図である。
[本発明の一実施形態に係る焼結体の製造方法]
本発明の一実施形態に係る製造方法は、被焼結材料がカプセル容器の内表面と接触しないように、被焼結材料とカプセル容器との間に所定の離型剤を所定の厚みで介在させてカプセル熱間等方加圧焼結(カプセルHIP)処理を行う工程を含む。
〔離型剤〕
離型剤としては、後述するカプセルHIP処理における焼結温度領域にて、それ自身焼結せずに、ガスの発生がなく、カプセル容器の材料および被焼結材料と反応しない材料で、窒化硼素、金属炭化物および金属硼化物を除く金属および/または金属化合物である。
金属化合物としては、例えば、金属窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ガリウム、窒化ジルコニウム、窒化タンタル、窒化ニオブ、窒化ハフニウム、窒化バナジウム、窒化クロム等)、金属酸化物(例えば、アルミナ、二酸化ケイ素、酸化クロム(III)、ジルコニア等やそれら二種以上の金属酸化物からなる複合酸化物)などが挙げられる。
金属としては、融点2000℃以上の高融点金属(例えば、タンタル、ニオブ、タングステン、モリブデン、ハフニウム、レニウム、イリジウム等やそれら二種以上の金属からなる合金)などが挙げられる。
中でも、金属または金属化合物が好ましく、金属酸化物または融点2000℃以上の高融点金属であるのがより好ましく、金属酸化物の場合、アルミナまたはアルミナと二酸化ケイ素を含む複合酸化物であればさらに好ましい。アルミナと二酸化ケイ素を含む複合酸化物の組成は、二酸化ケイ素が54重量%以下であればよい。
被焼結材料の焼結処理温度が、900〜1400℃であるため、離型剤がアルミナやアルミナと二酸化ケイ素を含む複合酸化物、融点2000℃以上の高融点金属を用いると焼結処理の際、離型剤自身が焼結による高密度化することが無く、一定の容積を保持し続けるので、カプセル容器と被焼結材料の間で生じる熱応力を緩和することが出来る。
金属炭化物は焼結時に還元作用を被焼結材料に及ぼし、被焼結材料と反応したり、還元された金属がガス化してカプセルHIP処理が進行しない等の問題があり離型剤として使用できない。金属硼化物は被焼結材料と反応するので、離型剤として使用することができない。また、窒化硼素を離型剤として用いると、得られる焼結体と反応し亀裂や硼素が拡散(コンタミ)が生じてしまうおそれがある。
本実施形態の離型剤の形態としては、例えば、粉末、ボール、シート、ブランケット、金属メッキ、コーティング膜(無機塗料、セメント)、成形体、耐火断熱レンガなどが挙げられ、なかでも、粉末、シート、ブランケット、コーティング膜がハンドリングの観点から好ましい。
コーティング膜は、金属水酸化物、金属酸化物や金属窒化物粉末を溶媒に分散させたものや、金属酸化物前駆体(金属塩、金属アルコキシド、金属錯体等)が溶媒に溶解した、無機塗料を、カプセル容器の内側に塗布し、溶媒を乾燥除去することにより形成することが出来る。あるいは、セメント形状のものをカプセル容器の内側に塗布し、溶媒を乾燥除去することにより形成することが出来る。
粉末の形態の場合、中空粒子、多孔質粒子でも好適に用いることが出来る。
金属酸化物、金属窒化物は粉末、シート、ブランケット、コーティング膜の形態をとりうる。金属の場合、粉末、シートの形態をとりうる。これらの形態の内、二種以上を組合わせて用いても良い。
また、離型剤がバインダー成分を含有していてもよい。カプセルHIP処理時の脱気処理にて脱バインダー処理を兼ねることができる。
カプセルHIP処理を行う前の離型剤の1次粒子サイズは、特に限定されないが、離型剤をより難焼結性とするために比表面積が小さい粒子、つまり1次粒子サイズは大きい方が好ましく、具体的には、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上、100μm以下である。1次粒子サイズが小さい場合は、造粒処理をして、1次粒子サイズを大きくしてもよい。また、これにより、離型剤は、被焼結体が高密度(相対密度:98%以上)となる後述するカプセルHIP処理において、低密度の状態を維持でき、塑性変形能により熱応力を塑性変形能により吸収することができる。
なお、1次粒子サイズとは、レーザー回折・散乱法により測定した粒度分布における積算体積分率50%粒径である。以下同じ。
ここで、相対密度とは、焼結体の理論密度に対する、実際に得られた焼結体の密度の割合であり、下記式から求められる。
相対密度=100×[(焼結体の密度)/(焼結体の理論密度)]
なお、焼結体の密度は、実施例に記載の評価方法によって測定することができる。
上記式中の焼結体の理論密度とは、原則、焼結体の原料である各金属酸化物の単体密度(タップ密度の上限)に各金属酸化物粉末の混合重量比をかけ、和をとった値である。具体的には、被焼結材料として、酸化インジウム粉末と酸化錫粉末とからなる後述するITO系粉末を用いる場合、1%SnO2のITO系粉末(酸化インジウム粉末と酸化錫粉末とを重量比で酸化インジウム粉末:酸化錫粉末=99:1となるように混合させたITO系粉末)からなる焼結体の理論密度は、7.18g/cm3、3%SnO2のITO系粉末からなる焼結体の理論密度では7.17g/cm3、5%SnO2のITO系粉末からなる焼結体の理論密度では7.17g/cm3である。
ただし、被焼結材料として後述するIGZO系粉末を用いる場合、IGZO系粉末の金属原子の割合と同じ金属原子の割合の単相結晶の情報がJCPDS(Joint Committee of Powder Diffraction Standards)カードに記載されている場合は、JCPDSカードに記載のその結晶の理論密度を上記式中の焼結体の理論密度として例外的に用いる。具体例として、酸化インジウム粉末と酸化ガリウム粉末と酸化亜鉛粉末とを、インジウムとガリウムと亜鉛との原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1となるように混合させた場合、JCPDSカードにはInGaZnO4(In:Ga:Zn=1:1:1)の単相結晶の情報が記載されているため、JCPDSカードに記載のInGaZnO4の理論密度(6.38g/cm3)を上記式中の焼結体の理論密度とする。他の具体例として、後述するIGZO系粉末として、酸化インジウム粉末と酸化ガリウム粉末と酸化亜鉛粉末とを、インジウムとガリウムと亜鉛との原子数比がIn:Ga:Zn=2:2:1となるように混合させた場合は、JCPDSカードに記載のIn2Ga2ZnO7(In:Ga:Zn=2:2:1)の単相結晶の理論密度(6.50g/cm3)を上記式中の焼結体の理論密度とする。なお、IGZO系粉末の金属原子の割合と、JCPDSカードに記載されている単相結晶の金属原子の割合とが一致しない場合、そのズレが5%以内であれば、JCPDSカードに記載されている単相結晶の理論密度を上記式中の焼結体の理論密度とする。
なお、各金属酸化物の単体密度は下記のとおりである。
酸化インジウムの単体密度は7.18g/cm3、酸化錫の単体密度は6.95g/cm3、酸化ガリウムの単体密度は5.88g/cm3、酸化亜鉛の単体密度は5.61g/cm3である。
〔カプセル容器〕
カプセル容器としては、被焼結材料を充分真空封止ができて、カプセルHIP処理における焼結温度にて充分変形するが破裂するおそれがない材料であればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス、ニオブ、タンタル、ガラス、ニッケル、白金、銅等が用いられ、金属製であるのが好ましい。具体的には、鉄は炭素鋼が好ましく、炭素の含有量が約0.3%以下の軟鋼が好ましい。銅は無酸素銅が好適に用いられる。ステンレスはsus304が好適に用いられる。
特に、カプセル容器の材料は、カプセルHIP処理において、焼結温度が1300℃以上である場合には、タンタル、ニオブ、白金;焼結温度が900℃〜1300℃である場合には、鉄、ステンレス;焼結温度が900℃以下である場合には、ニッケル、銅等であるのが好ましい。
カプセル容器の壁厚は、特に限定されず、1.5mm〜4mmが好ましい。この範囲内であれば、カプセル容器が容易に軟化し、変形することができ、焼結反応が進むに従い、焼結体に追随して収縮することができる。
カプセル容器の形状は、特に限定されず、例えば、カプセルHIP処理の際に等方的に加圧しやすい形状であればよく、例えば、円柱、直方体などが挙げられる。
カプセル容器の寸法は、特に限定されないが、カプセルHIP処理後に、例えば、平面部が直径300mm以上の円形、または少なくとも一辺が300mm以上の多角形等であって、厚みが3mm以上、とりわけ1mを超えるような円柱体や角柱体などの大型焼結体とすることができる寸法であってもよい。
<被焼結材料>
(粉末の種類)
被焼結材料を構成する粉末の種類としては、例えば、透明導電性材料、透明半導体材料など挙げられ、なかでも透明導電性材料、透明半導体材料が好ましい。
透明半導体材料としては、例えば、酸化インジウム−酸化ガリウム−酸化亜鉛(IGZO)系膜を形成するのに用いることができる焼結体(以下、IGZO系焼結体という)の原料となる金属酸化物粉末(以下、IGZO系粉末という);酸化錫−酸化亜鉛(ZTO)系膜、酸化インジウム−酸化亜鉛−酸化錫系膜、酸化ガリウム−酸化亜鉛−酸化錫系膜、酸化インジウム−酸化ガリウム系膜、酸化インジウム−酸化亜鉛系膜などを形成するのに用いることができる焼結体の原料となる金属酸化物粉末などが挙げられる。
透明導電性材料としては、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO)系膜を形成するのに用いることができる焼結体(以下、ITO系焼結体という)の原料となる金属酸化物粉末(以下、ITO系粉末という);チタンドープ酸化亜鉛(TZO)膜、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)膜、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)膜などの酸化亜鉛(ZnO)系膜を形成するのに用いることができる焼結体(以下、ZnO系焼結体という)の原料となる金属酸化物粉末(酸化亜鉛系透明導電性材料、以下、ZnO系粉末という);タンタルドープ酸化錫膜、ニオブドープ酸化錫膜、アンチモンドープ酸化錫膜などを形成するのに用いることができる焼結体の原料となる金属酸化物粉末などが挙げられる。
IGZO系粉末としては、例えば、酸化インジウム粉末と酸化ガリウム粉末と酸化亜鉛粉末とからなる混合粉末などの金属酸化物粉末が挙げられ、なかでも、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)および酸素(O)からなる焼結体を得るための材料であるのが好ましい。
IGZO系粉末を構成する各粉末の混合割合は、後述するIGZO系焼結体の原子数比となるように混合すればよい。
ITO系粉末としては、例えば、酸化インジウム粉末と、ドーパントである酸化錫粉末とからなる混合粉末などの金属酸化物粉末が挙げられる。
ITO系粉末を構成する各粉末の混合割合は、得られるITO系焼結体の錫の含有量が後述する範囲内となるように混合すればよい。
ZnO系粉末としては、例えば、酸化亜鉛粉末;酸化亜鉛粉末と、ドーパントである低原子価酸化チタン粉末とからなる混合粉末(a);酸化亜鉛粉末と、ドーパントである低原子価酸化チタン粉末と、酸化ガリウムもしくは酸化アルミニウムとからなる混合粉末(b);酸化亜鉛粉末と、ドーパントである酸化ガリウム粉末または酸化アルミニウム粉末とからなる混合粉末(c)などの金属酸化物粉末が挙げられる。
ZnO系粉末が混合粉末(a)である場合、混合粉末(a)におけるチタン原子数の割合は、全金属原子数に対して0.2%以上10%以下であり、好ましくは0.5〜9%であり、より好ましくは0.8〜8%である。チタン原子数の割合が上記範囲内であると、後述するカプセルHIP処理により、亜鉛を揮発することなく、チタン原子数の割合がこの範囲内である組成のZnO系焼結体を製造することができる。チタン原子数の割合は、化学的耐久性が要求される用途や透過率が要求される用途によって、チタンの含有量を増減させることができる。特にチタン原子数の割合が、全金属原子数に対して、2%超10%以下であれば、このZnO系焼結体を用いて、耐湿性、耐熱性など化学的耐久性、導電性などに優れた膜を形成することができる。
ZnO系粉末が混合粉末(b)である場合、混合粉末(b)におけるチタン原子数の割合は、全金属原子数に対して0.2%以上10%以下であり、好ましくは0.5〜9%であり、より好ましくは0.8〜8%であり、混合粉末(b)におけるガリウムまたはアルミニウムの原子数の割合は、全金属原子数に対して0.1%以上6%であり、好ましくは0.5〜6%であり、より好ましくは0.3〜3.0%である。チタン原子数の割合が上記範囲内であると、カプセルHIP処理により、亜鉛を揮発することなく、チタン原子数の割合がこの範囲内である組成のZnO系焼結体を製造することができる。チタン原子数の割合は、化学的耐久性が要求される用途や透過率が要求される用途によって、チタンの含有量を増減させることができる。特にチタン原子数の割合が、全金属原子数に対して、2%超10%以下であれば、このZnO系焼結体を用いて、耐湿性、耐熱性など化学的耐久性、導電性などに優れた膜を形成することができる。さらに、ガリウムまたはアルミニウムの原子数の割合が上記範囲内であれば、後述するカプセルHIP処理により、亜鉛を揮発することなく、ガリウムまたはアルミニウムの原子数の割合がこの範囲内である組成のZnO系焼結体を製造することができるため、このZnO系焼結体を用いて、導電性、透明性などに優れた膜を形成することができる。
ZnO系粉末が混合粉末(c)である場合、混合粉末(c)におけるガリウムまたはアルミニウムの原子数の割合は、全金属原子数に対して1.0〜7%であり、好ましくは1.5〜6.0%であり、より好ましくは2.0〜5.0%である。
低原子価酸化チタン粉末としては、TiO(II)、Ti23(III)という整数の原子価を有するものばかりでなく、Ti35、Ti47、Ti611、Ti59、Ti815等も含む、一般式:TiO2-X(X=0.1〜1)で表され、なかでも、TiO(II)またはTi23(III)TiOが好ましい。これは、Ti23の結晶構造は三方晶であり、これと混合するタップ密度が2.8g/cm3以上となった酸化亜鉛の結晶構造は通常六方晶のウルツ鉱であるため、結晶構造の対称性が一致し、固相焼結する際に置換固溶しやすいからである。
この低原子価酸化チタンの構造は、X線回折装置(X−Ray Diffraction、XRD)、X線光電子分光装置(X−ray Photoelectron Spectroscopy、XPS)などの機器分析の結果によって確認することができる。
被焼結材料をカプセル容器に充填する前や、上述した金属酸化物粉末のうち後述する充填率が50%未満の金属酸化物粉末(以下、原料金属酸化物粉末という場合がある)を、被焼結材料(充填率が50%以上の金属酸化物粉末)とする前に、被焼結材料や金属酸化物粉末を混合するのが好ましい。
混合方法は、特に制限されるものではないが、例えば、被焼結材料や金属酸化物粉末と水系溶媒とを混合し、得られたスラリーを充分に湿式混合により混合した後、固液分離・乾燥・造粒し、得られた造粒物を成形すればよい。
湿式混合は、例えば、硬質ZrO2ボール等を用いた湿式ボールミルや振動ミルにより行なえばよく、湿式ボールミルや振動ミルを用いた場合の混合時間は、12〜78時間程度が好ましい。なお、被焼結材料や金属酸化物粉末をそのまま乾式混合してもよいが、湿式混合の方がより好ましい。
固液分離・乾燥・造粒については、それぞれ公知の方法を採用すればよい。
(粉末の物性)
被焼結材料は、充填率が50%以上である金属酸化物粉末である必要がある。これにより、カプセルHIP処理の際に、カプセル容器に掛かる外圧によりカプセル容器自体が破壊する程に圧縮されるおそれがなくなる。
ここで、充填率とは、カプセルHIP処理後に焼結体が理論密度に到達したとし、得られた焼結体の理論密度に対する、被焼結材料のタップ密度の割合であり、原則、下記式で表される。
充填率=100×{(被焼結材料のタップ密度/焼結体の理論密度)}
上記式中の焼結体の理論密度は、相対密度の式中の焼結体の理論密度と同様にして求めることができる。
ただし、被焼結材料を後述するように加圧成形した成型体をカプセル容器に充填する場合の被焼結材料の充填率(以下、「被焼結材料の充填率(加圧成形)」という)は、理論的にカプセルHIP処理後に焼結体が理論密度に到達したとし、その理論密度に対する、カプセル容器に充填した被焼結材料の充填密度の割合をいう。被焼結材料の充填密度とは、成型体をカプセル容器に充填した際、カプセル容器の内容積から容器内に充填した離型剤の体積を差し引いた体積を元に単位体積辺りに変換した成型体の質量である。なお、後述するように、成型体が有機バインダーを含む場合、被焼結材料の充填密度を求める際の成型体の質量とは、測定した重量から有機バインダーの重量を差し引いた値である。
上記式中のタップ密度とは、JIS K5101に基づき、一定容積の容器に粉末を自然落下により充填した後、さらに該容器に一定の振動(タッピング)による衝撃を加え、被焼結材料(粉末)の体積変化がなくなったときの単位体積当たりの被焼結材料(粉末)の質量と定義する。なお、一定容積の容器に被焼結材料(粉末)を自然落下により充填し、その内容積を体積としたときの単位体積当たりの被焼結材料(粉末)の質量をかさ密度といい、一般的にタップ密度は、かさ密度の1.1〜1.3倍程度の値となる。
例えば、市販の酸化インジウム粉末(添川理化学(株)製の「高純度(4N) 酸化インジウム(III)」)の仮焼前のタップ密度は1.95g/cm3、市販の酸化ガリウム粉末(ヤマナカヒューテック(株)製の「酸化ガリウム」)の仮焼前のタップ密度は1.39g/cm3、市販の酸化亜鉛粉末(ハクスイテック(株)製の「酸化亜鉛1種BF」)の仮焼前のタップ密度は0.96g/cm3である。
なお、上述したIGZO系粉末、ITO系粉末、ZnO系粉末などが、市販の酸化インジウム粉末などから構成される場合、それぞれの充填率は通常50%未満となる。
(充填率が50%以上の金属酸化物粉末とする方法)
原料金属酸化物粉末(充填率が50%未満の金属酸化物粉末)を、被焼結材料(充填率が50%以上の金属酸化物粉末)とする方法として、例えば、原料金属酸化物粉末を仮焼する方法;原料金属酸化物粉末をスプレードライ等により造粒する方法;原料金属酸化物粉末を冷間等方圧加圧法(CIP)、一軸プレスなどにより加圧成形する方法などが挙げられる。
〔原料金属酸化物粉末の仮焼〕
原料金属酸化物粉末の仮焼では、金属酸化物粉末の充填率を50%以上とすることができれば、IGZO系粉末、ITO系粉末、ZnO系粉末などとしてそれぞれで例示した混合粉末を仮焼してもよいし、その混合粉末を構成する、例えば、酸化インジウム粉末、酸化ガリウム粉末、酸化亜鉛粉末、低原子価酸化チタン粉末などをそれぞれ単独で仮焼してもよい。
また、上記混合粉末を構成する、例えば、酸化インジウム粉末、酸化ガリウム粉末、酸化亜鉛粉末、低原子価酸化チタン粉末などをそれぞれ単独で仮焼した場合、金属酸化物粉末の充填率を50%以上とすることができれば、仮焼した粉末同士を混合して混合粉末としてもよいし、仮焼した粉末と仮焼してない粉末とを混合して混合粉末としてもよい。
なお、仮焼後の混合粉末は、ジョージクラッシャー、ロールクラッシャー、スタンプミル、ハンマーミル、乳鉢等の公知の方法にて解砕を行い、粉末とすることができる。仮焼に用いる装置としては特に制限されないが、縦型電気炉、管状炉、マッフル炉、チューブ炉、炉床昇降式電気炉、ボックス型電気炉等が挙げられる。
酸化インジウム粉末、酸化ガリウム粉末および酸化錫粉末から選ばれる1つの原料金属酸化物粉末を単独で仮焼する際の仮焼条件は、下記のとおりである。
仮焼温度は1200〜1600℃であり、好ましくは1400〜1600℃である。仮焼時間は8時間以上24時間以内であり、好ましくは10時間以上15時間以下である。仮焼時間が8時間未満であると、タップ密度が向上しないおそれがある。24時間を超えても、タップ密度は向上せず、製造コストの観点から好ましくない。雰囲気は、酸化性雰囲気中で仮焼するのが好ましい。
なお、酸化雰囲気としては、例えば、大気よりも酸素濃度が高い雰囲気、酸素加圧雰囲気などが挙げられる。特に酸化インジウム、酸化錫は熱分解して揮散しやすく、揮散を抑制する為、酸化雰囲気がより好ましい。
原料金属酸化物粉末である酸化亜鉛粉末を単独で仮焼する際の仮焼条件は、下記のとおりである。
仮焼温度は900〜1400℃であり、好ましくは1000〜1300℃である。仮焼時間は8時間以上24時間以内であり、好ましくは10時間以上15時間以下である。仮焼時間が8時間未満であると、タップ密度が向上しないおそれがある。24時間を超えても、タップ密度は向上せず、製造コストの観点から好ましくない。
仮焼温度及び仮焼時間が上記範囲内であれば、酸化亜鉛が熱分解を起こして揮散するのを抑制し、粒成長を十分に進行させることができ、タップ密度が2.8g/cm3以上、通常3.3〜5.6g/cm3である酸化亜鉛粉末とすることができる。特に仮焼温度は上記範囲内であれば高いほど好ましく、粒子間で固相焼結が進行し、粒成長が生じ、粒子サイズが大きくなることにより、粒子を充填した際に、単位体積当たりの粒子間の隙間が減少し、タップ密度の向上に繋がる。
また、仮焼する際の雰囲気は、特に限定されず、大気雰囲気、酸化雰囲気などの酸化性雰囲気;不活性雰囲気、還元性雰囲気などの非酸化性雰囲気のいずれであってもよいが、大気雰囲気中で仮焼するのが好ましい。
不活性雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、真空、二酸化炭素などが挙げられる。
還元性雰囲気としては、例えば、水素、一酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄などが挙げられる。
IGZO系粉末として例示した混合粉末であって、原料金属酸化物粉末である酸化インジウム粉末、酸化ガリウム粉末および酸化亜鉛粉末を同時に仮焼する際の仮焼条件は、下記のとおりである。
酸化性雰囲気中で、仮焼温度が1200〜1600℃、好ましくは1400〜1600℃である。仮焼時間は12時間以上24時間以内であり、好ましくは15時間以上20時間以下である。
仮焼温度が上記範囲内であれば、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛が分解されて金属インジウム、金属ガリウム、金属亜鉛が析出したり、インジウム、ガリウム、亜鉛が揮発することなく、粒成長を十分に進行させることができ、所望する充填率のIGZO系粉末が得られる。
IGZO系粉末として例示した混合粉末のうち、原料金属酸化物粉末である酸化ガリウム粉末および酸化亜鉛粉末を同時に仮焼する場合の仮焼条件は、下記のとおりである。
酸化性雰囲気中で、仮焼温度が1400〜1600℃、である。仮焼時間は12時間以上24時間以内であり、好ましくは15時間以上20時間以下である。
仮焼温度が上記範囲内であれば、酸化ガリウム、酸化亜鉛が分解されて金属ガリウム、金属亜鉛が析出したり、ガリウム、亜鉛が揮発することなく、粒成長を十分に進行させることができ、所望する充填率のIGZO系粉末が得られる。
ITO系粉末として例示した混合粉末であって、原料金属酸化物粉末である酸化インジウム粉末および酸化錫粉末を仮焼する際の仮焼条件は、下記のとおりである。
酸化性雰囲気中で、仮焼温度が1200〜1650℃、好ましくは1300〜1600℃である。
仮焼時間は12時間以上24時間以内であり、好ましくは15時間以上20時間以下である。
仮焼温度が上記範囲内であれば、酸化インジウム、酸化錫が分解されて金属錫、金属インジウムが析出したり、錫、インジウムが揮発することなく、粒成長を十分に進行させることができ、所望する充填率のITO系粉末が得られる。
ZnO系粉末として例示した、酸化亜鉛粉末と、ドーパントである低原子価酸化チタン粉末とからなる混合粉末(a);酸化亜鉛粉末と、ドーパントである低原子価酸化チタン粉末と、酸化ガリウムもしくは酸化アルミニウムとからなる混合粉末(b);および酸化亜鉛粉末と、ドーパントである酸化ガリウム粉末または酸化アルミニウム粉末とからなる混合粉末(c)から選ばれる1つであって、原料金属酸化物粉末である混合粉末を仮焼する際の仮焼条件は、下記のとおりである。
非酸化性雰囲気中で、仮焼温度が900〜1300℃、好ましくは920〜1200℃である。
仮焼時間は12時間以上24時間以内であり、好ましくは15時間以上20時間以下である。
仮焼温度が上記範囲内であれば、酸化チタンにより酸化亜鉛が還元されて金属亜鉛が析出したり、亜鉛が揮発することなく、粒成長を十分に進行させることができる。
このような仮焼により、原料金属酸化物粉末は、充填率が50%以上の金属酸化物粉末(被焼結材料)となる。すなわち、被焼結材料のタップ密度は、その被焼結材料からなる焼結体の理論密度の値の50%以上となる。
<原料金属酸化物粉末のスプレードライによる造粒>
スプレードライ法は、通常、成型体を作製する際の一軸プレス機や冷間等方圧加圧法(CIP)などにより成型する際のゴム管への充填性を上げるために粉末の流動性を向上させる場合や、成型後の成型体のハンドリング性を向上させるために用いられるが、本発明者は、スプレードライにより金属酸化物粉末の充填率を50%以上とする目的にも有効であり、例えば、上述した市販の酸化亜鉛粉末を、タップ密度が2.8g/cm3以上の造粒粉末にすることができる(酸化亜鉛粉末の充填率を50%以上にできる)ことを初めて見出した。これにより、造粒粉末の粒度分布を揃えることができ、流動性を高めることができる。さらに、スプレードライの際の熱履歴は高くても300℃程度であるから、スプレードライによる処理前後で、酸化亜鉛粉末などの被焼結材料の焼結性能が低下することはほとんどない。
原料金属酸化物粉末のスプレードライによる造粒では、金属酸化物粉末の充填率を50%以上とすることができれば、IGZO系粉末、ITO系粉末、ZnO系粉末などとしてそれぞれで例示した混合粉末をスプレードライによって造粒してもよいし、その混合粉末を構成する、例えば、酸化インジウム粉末、酸化ガリウム粉末、酸化亜鉛粉末、低原子価酸化チタン粉末などをそれぞれ単独でスプレードライによって造粒してもよい。なお、造粒粉末が後述する有機バインダーを含有しない場合は、その造粒粉末自体が被焼結材料であり、造粒粉末が後述する有機バインダーを含有する場合は、その造粒粉末から有機バインダーを除去したものが被焼結材料である。
原料金属酸化物粉末をスプレードライによって造粒するには、例えば、原料金属酸化物粉末と、有機バインダーと、有機バインダーを溶解可能な溶媒と、スラリー状にする溶媒とを、硬質ZrO2ボールなどを用いた湿式ボールミルや振動ミルにより混合するなどして、原料金属酸化物粉末と有機バインダーとを少なくとも含有するスラリーとし、このスラリーをスプレードライにより、乾燥、造粒すればよい。
原料金属酸化物粉末としてZnO系粉末を用い、このZnO系粉末を造粒する際に用いる有機バインダーとしては、ポリエチレンカーボネート樹脂、ポリプロピレンカーボネート樹脂などのアルキレン基およびカーボネート基からなるアルキレンカーボネート構造を有するポリアルキレンカーボネート樹脂;ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリα-メチルスチレン、エチルセルロース、ポリ乳酸メチル、(ポリ)ビニルブチラール、(ポリ)ビニルアセテート、(ポリ)ビニルアルコール、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、(ポリ)ビニルピロリドン、ポリアミド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレートおよび種々のアクリルポリマーとそれらのコポリマーやターポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロースとその誘導体である樹脂などなどの公知のバインダーなどが挙げられる。
原料金属酸化物粉末としてIGZO系粉末またはITO系粉末を用い、このIGZO系粉末またはITO系粉末を造粒する際に用いる有機バインダーとしては、ZnO系粉末を造粒する際に用いる有機バインダーとして例示した公知のバインダーと同様のものが挙げられる。
スラリー状にする溶媒としては、特に限定されず、例えば、水;メタノールなどのアルコール系溶媒;アセトン等のケトン系溶媒が原料金属酸化物粉末の粒度分布の均一性、溶媒の揮散が容易であることから好ましい。
有機バインダーを溶解可能な溶媒としては、例えば、エタノール等のアルコール類;塩化メチルなどのハロゲン化炭化水素類;酢酸メチルなどのエステル類;プロピオントリルなどの窒素化合物;ジメチルスルホキシドなどの硫黄化合物;アセトンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ベンゼンなどの炭化水素類などが挙げられる。
有機バインダーの添加量は、原料金属酸化物粉末100重量部に対して、好ましくは、0.5重量部〜10重量部であり、より好ましくは1重量部〜5重量部である。
例えば、IGZO系粉末、ITO系粉末、ZnO系粉末をスプレードライによって造粒する場合、スプレードライの熱乾燥条件は、得られる造粒粉末の充填率が50%以上となる条件であれば、特に限定されず、例えば、乾燥は常圧で行い、供給する熱風の温度は通常、150〜300℃、好ましくは200〜270℃であり、乾燥機出口の温度は通常、70〜200℃、好ましくは85〜140℃である。
原料金属酸化物粉末をスプレードライによって造粒した後、後述するカプセルHIP処理を行う前に有機バインダーを脱脂する。
この脱バインダー処理は、例えば、造粒粉末をカプセル容器に充填した後、カプセル容器の後述する真空脱気処理をする前に行ってもよいし、造粒粉末をカプセル容器に充填した後にカプセル容器の後述する真空脱気処理と同時に行ってもよいが、焼結体を製造するにあたり、脱脂するためだけの工程を必要としないため、後者が好ましい。
造粒粉末をカプセル容器に充填した後、カプセル容器の後述する真空脱気処理をする前に行う場合は、以下の条件で脱脂すればよい。
ZnO系粉末を造粒した後の脱脂は、有機バインダーとして、ポリアルキレンカーボネート樹脂を用いる場合は、酸化性雰囲気下にて350℃以下の加熱により行うのが好ましく、有機バインダーとして公知のバインダーを用いる場合は、不活性雰囲気下にて少なくとも450℃以上、500〜700℃程度の加熱により行うのが好ましい。
IGZO系粉末、ITO系粉末を造粒した後の脱脂は、例えば、雰囲気は問わず(大気雰囲気下、不活性雰囲気下等)にて少なくとも400℃以上、500〜700℃程度の加熱をすればよい。
このようなスプレードライによる造粒により、原料金属酸化物粉末は、充填率が50%以上の金属酸化物粉末(被焼結材料)となる。すなわち、被焼結材料のタップ密度は、その被焼結材料からなる焼結体の理論密度の値の50%以上となる。
なお,有機バインダーを含有する造粒粉末(以下、有機バインダー含有造粒粉末という場合がある)の脱バインダー処理をカプセル容器の真空脱気処理と同時に行う場合、この造粒粉末のタップ密度は式:(<有機バインダー含有造粒粉末のタップ密度の値からタップ密度差算出値を差し引いた値>/理論密度)×100から算出される値が50%以上であればよい。これは、有機バインダー含有造粒粉末のタップ密度は、有機バインダーを含むため、被焼結材料のタップ密度の値よりも高い値となり、有機バインダー含有造粒粉末のタップ密度と被焼結材料のタップ密度との差は、通常、タップ密度差算出値と同等か、それよりも低い値となる。そのため、上記式から算出される値が50%以上であれば、充填率が50%以上となる。なお、上記式中にタップ密度差算出値とは、式:(有機バインダー含有造粒粉末のタップ密度)×(有機バインダーの添加割合(原料金属酸化物粉末の総重量に対する有機バインダーの添加量))から算出される値である。
<原料金属酸化物粉末の加圧成形>
原料金属酸化物粉末の加圧成形は、例えば、CIPによって原料金属酸化物粉末を圧縮する方法;一軸プレスによって原料金属酸化物粉末を圧縮する方法;CIPと一軸プレスとを併用して原料金属酸化物粉末を圧縮する方法などにより、原料金属酸化物粉末を成型体とし、かつ上述した被焼結材料の充填率(加圧成形)が50%以上となるようにする。
原料金属酸化物粉末を加圧成形するに際して、有機バインダーを用いてもよい。有機バインダーはハンドリング性を向上させるために用いられ、特に、300mm角、300mmφ以上の大型焼結体を作製する場合に必要となる。
有機バインダーを用いる場合は、原料金属酸化物粉末と有機バインダーを混合した後、加圧成形して成型体を得、この成型体をカプセルHIP処理する前に、脱バインダー処理(脱脂)を行う。この脱バインダー処理は、例えば、成型体をカプセル容器に充填した後、後述するカプセル容器の真空脱気処理をする前に行ってもよいし、成型体をカプセル容器器に充填した後にカプセル容器の真空脱気処理と同時に行ってもよいが、焼結体を製造するにあたり、脱脂するためだけの工程を必要としないため、後者が好ましい。なお、有機バインダーを用いた場合であっても、原料金属酸化物粉末と有機バインダーとを混合すること、脱バインダー処理を行うことを除き、有機バインダーを用いない場合と同様にして、焼結体を製造することができる。
有機バインダーとしては、<原料金属酸化物粉末のスプレードライによる造粒>においてZnO系粉末を造粒する際に用いる有機バインダーとして例示した公知のバインダーと同様のものが挙げられる。
原料金属酸化物粉末と有機バインダーを混合する方法は、特に制限されるものではないが、例えば、原料金属酸化物粉末と、有機バインダーと、有機バインダーを溶解可能な溶媒と、スラリー状にする溶媒とを混合し、得られたスラリーを充分に湿式混合により混合し、その後の公知の乾燥処理を行う方法などが挙げられる。
原料金属酸化物粉末と有機バインダーを混合した粉末を加圧成形するには、有機バインダーを用いないで成型体を作製する場合と同様にして行えばよい。
有機バインダーを溶解可能な溶媒、スラリー状にする溶媒としては、<原料金属酸化物粉末のスプレードライによる造粒>において有機バインダーを溶解可能な溶媒、スラリー状にする溶媒として例示したものと同様のものが挙げられる。
有機バインダーの添加量は、混合粉末100重量部に対して、好ましくは、0.5重量部〜10重量部であり、より好ましくは1重量部〜5重量部である。
有機バインダーを用い、成型体をカプセル容器に充填した後、後述するカプセル容器の真空脱気処理をする前に脱バインダー処理を行う場合は、例えば、雰囲気は問わず(大気雰囲気下、不活性雰囲気下等)にて少なくとも400℃以上、500〜700℃程度の加熱をすればよい。
有機バインダーを用いた成型体をカプセル容器に充填した後、後述するカプセル容器の真空脱気処理と脱バインダー処理を同時に行う場合は、成型体をカプセル容器に充填した後、カプセル容器に排気管を有する上蓋を溶接し、吸着水分を除去する目的で450〜700℃程度に加熱すると同時に、カプセル容器内の真空度が1.33×10-2Pa以下になるまで真空脱気を行えばよい。これにより、加熱脱気プロセスと脱バインダー処理を同時に行うことができ、脱脂するためだけの工程を必要としないため製造プロセスを増やさずにコストアップにならずに脱バインダー処理をすることができ、大型焼結体(300mm角、300mmφ以上)を特にプロセスを増やさずに作製することができる。
原料金属酸化物粉末であるZnO系粉末を冷間静水圧プレス(CIP)により加圧成形する際の圧縮条件は、下記のとおりである。
加圧の圧力は、少なくとも50MPa以上300MPa未満であり、より好ましくは100MPa以上することが好ましく、例えば、ZnO系粉末からなる成型体の密度を2.8g/cm3以上にするには、好ましくは100〜250MPa、より好ましくは150〜200MPaである。50MPa未満であると、安定なプレス成型体ができないおそれがある。300MPa以上であると、成型体がもろくわれやすくなるおそれがある。
原料金属酸化物粉末であるIGZO系粉末、ITO系粉末を冷間静水圧プレス(CIP)により加圧成形する際の圧縮条件は、下記のとおりである。
加圧の圧力は、少なくとも50MPa以上300MPa未満であり、より好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは100〜250MPa、特に好ましくは150〜200MPaである。50MPa未満であると、安定なプレス成型体ができないおそれがある。300MPa以上であると、成型体がもろくわれやすくなるおそれがある。
原料金属酸化物粉末であるZnO系粉末を一軸プレスにより加圧成形する際の圧縮条件は、下記のとおりである。
プレス圧力は、少なくとも30MPa以上100MPa未満であり、より好ましくは40MPa以上することが好ましく、例えば、成型体の密度を2.8g/cm3以上にするには、好ましくは40〜90MPa、より好ましくは50〜80MPaである。30MPa未満であると、安定なプレス成型体ができないおそれがある。100MPa以上であると、成型体がもろくわれやすくなるおそれがある。
原料金属酸化物粉末であるIGZO系粉末、ITO系粉末を一軸プレスにより加圧成形する際の圧縮条件場合は、下記のとおりである。
プレス圧力は、少なくとも30MPa以上100MPa未満であり、より好ましくは40MPa以上にすることが好ましく、さらに好ましくは40〜90MPa、特に好ましくは50〜80MPaである。30MPa未満であると、安定なプレス成型体ができないおそれがある。100MPa以上であると、成型体がもろくわれやすくなるおそれがある。
原料金属酸化物粉末を加圧成形する際、一軸プレスと冷間静水圧プレス(CIP)を併用してもよい。
成型体の形状は、特に限定されず、カプセルHIP処理前のカプセル容器内の形状に合わせて適宜選択すれば良いが、例えば、具体的にはカプセル容器はカプセルHIP処理時に、均等に圧力が加わり、対称に収縮させるために円柱形状や矩形状(立方体、直方体)が好ましい。成型体のサイズは、例えば、カプセル容器内のサイズに対応したサイズであるのが好ましい。特に、カプセルHIP処理前のカプセル容器に被焼結材料(成型体)および離型剤を入れる際に、図1,2に示すように、被焼結材料(成型体)を被覆する離型剤の厚みが一定となるような形状・サイズの成型体であるのが特に好ましい。
成型体の密度は、焼結体の理論密度の値の1/2以上である。これにより、熱間等方加圧焼結(HIP)によるカプセル容器の収縮率を50%以下にすることができる。
例えば、ZnO系粉末からなる成型体の場合、成型体の密度は、好ましくは2.8g/cm3以上であり、より好ましくは3.3〜5.6g/cm3である。成型体の密度が2.8g/cm3以上であれば、熱間等方加圧焼結(HIP)によるカプセル容器の収縮率を50%以下にすることができる。なお、ZnO系粉末からなる焼結体の理論密度は、上述したZnO系粉末の混合割合から明らかなように、焼結体は酸化亜鉛を主成分とするため、酸化亜鉛の単体密度と同程度であり、具体的には5.55〜5.60g/cm3である。
なお、成型体の密度の測定方法は、直接成型体の測長を行い、この測定値から算出した体積と、測定した成型体の重量とから求めることができる。例えば、成型体の形状が円柱形状である場合は、成型体の直径と高さを直接測長することにより、円柱形状の成型体の体積を求め、重量を測定して、重量と体積から密度を計算することができる。なお、成型体が有機バインダーを含有し、この成型体の脱バインダー処理をカプセル容器の真空脱気処理と同時に行う場合、成型体の密度は、測定した重量から有機バインダーの重量を差し引いた値を成型体の重量とし、この成型体の重量と、上記測定値から算出した体積とから求めることができる。また、成型体が有機バインダーを含有し、この成型体の脱バインダー処理をカプセル容器の真空脱気処理をする前に行う場合、脱バインダー処理後の成型体の密度は、上述した成型体の密度の好ましい範囲内であるのが好ましく、上述した成型体の密度と同様に求めることができる。
ここで、上述したように被焼結材料の充填率とは、理論的にカプセルHIP処理後に焼結体が理論密度に到達したとし、得られた焼結体の理論密度に対する、カプセル容器に充填した被焼結材料の充填密度の割合をいう。
なお、被焼結材料の充填密度とは、成型体をカプセル容器に充填した際、カプセル容器の内容積から容器内に充填した離型剤の体積を差し引いた体積を元に単位体積あたりに変換した成型体の質量である。なお、成型体が有機バインダーを含有し、この成型体の脱バインダー処理をカプセル容器の真空脱気処理と同時に行う場合、混合粉末の充填密度を求める際の成型体の質量とは、測定した重量から有機バインダーの重量を差し引いた値である。また、成型体が有機バインダーを含有し、この成型体の脱バインダー処理をカプセル容器の真空脱気処理をする前に行う場合、混合粉末の充填密度を求める際の成型体の質量とは、脱バインダー処理後に測定した成型体の重量である。
〔被焼結材料の充填方法〕
カプセル容器内には、被焼結材料が離型剤に所定の厚みで覆われた状態となるように被焼結材料を充填する。
被焼結材料を充填する方法としては、特に限定されず、例えば、被焼結材料(粉状)および離型剤をカプセル容器に入れる際に被焼結材料と離型剤とを仕切る仕切りを用いて充填する方法;CIPなど加圧成形により被焼結体材料をあらかじめ圧縮成形した後、被焼結材料(成型体)および離型剤をカプセル容器に入れる方法;カプセル容器の内側に無機塗料、セメントを塗布し、溶媒を乾燥除去してコーティング膜を形成した後、被焼結材料を充填する方法などが挙げられる。
仕切りの形状は、被焼結材料が離型剤に後述する所定の厚みで覆われた状態となるようにカプセル容器内の形状に応じて適宜選択すればよい。
仕切りの材質としては、例えば、紙、金属箔などが挙げられる。
成型体および離型剤をカプセル容器に充填するとは、加圧成形より成型体を作製し、この成型体を、所定の厚みにとなるように離型剤が敷き詰められたカプセル容器内に成型体が崩れないように移し(具体的には慎重にヘラ形状のものを利用する)、カプセル容器内の成型体が図1、2に示すように所定の厚みで被覆されるように離型剤を一杯に詰めることをいう。
本発明では、被焼結材料とカプセル容器との間に離型剤を、後述するカプセルHIP処理後に1mm以上、好ましくは2〜8mm、より好ましくは3〜7mmの厚みを有するように介在させる。これにより、後述するような緩衝効果を十分発揮できると推測され、亀裂を有さない焼結体とすることができる。さらに、亀裂が発生しなくても焼結体に内在する応力(残留応力)を減らすことは、ターゲットとして使用時の不具合(例えば、スパッタ使用時に、スパッタ衝撃がきっかけとなり、亀裂が発生する等)の低減にも寄与する。
なお、カプセルHIP処理により離型剤が多少は焼結し、収縮することを想定して、離型剤をカプセル容器に充填する時にはその分だけ厚めに、すなわち1mmよりさらに厚くなるように充填しておくのが好ましい。
亀裂を有さない焼結体とすることができるのは、後述するように、熱応力の発生を防ぐことができるからであると推測される。
後述するカプセルHIP処理における焼結条件で焼結した後の冷却段階において、カプセル容器、離型剤、焼結体は、それぞれ材料が異なり熱膨張率が異なるため、熱応力が冷却に伴い発生する。
具体的には、カプセルHIP処理における焼結過程では、カプセル容器は外部から高温、高圧のガスが掛けられ圧縮されている状態であるが、カプセルHIP処理における焼結過程が終了後、冷却過程にはいると、カプセル容器に掛かる温度と圧力は低下し始める。圧力の低下に伴い、カプセル容器は圧縮させられている状態(弾性変形している状態)から膨らむ方向に変形し始めると同時に、温度の低下に伴い材料固有の熱膨張率に従ってカプセル容器を収縮させようとする。膨らむ方向に変形し始める作用が材料固有の熱膨張率に従ってカプセル容器を収縮させようとする作用に勝り、カプセル容器は膨らむ方向にある。一方、焼結体は、温度が低下するに伴い、材料固有の熱膨張率に従い、焼結体は収縮し始める。
このようにカプセルHIP処理が冷却過程に入ると、カプセル容器は膨らむ方向に、焼結体は収縮する方向に、それぞれが逆の変位をし、カプセル容器および焼結体は単に収縮する傾向にある焼結過程における挙動とは異なる挙動を示すと考えられ、カプセル容器とも焼結体とも反応しない(密着しない)離型剤をカプセル容器と焼結体の間に挟むことにより、熱応力の発生を防ぐことができると推測される。さらに、焼結体は離型剤と離れ、独立して自然に冷却するに伴い熱膨張率に従い収縮すると考えられ、残留応力を溜め込むこともない。
これは、カプセルHIP処理における焼結過程後の冷却過程の際であるが、カプセルHIP処理における焼結過程中にもカプセル容器と焼結体中にも応力が発生する。焼結が進行するに伴い、被焼結体は収縮していく。収縮に伴い、焼結体には引っ張り応力が発生する。
〔カプセルHIP処理〕
カプセルHIP処理は、被焼結材料を充填したカプセル容器内の真空脱気処理をし、カプセル容器に接続された排気管を閉じ、カプセル容器を封止し、この封止したカプセル容器に行う。被焼結材料は、カプセル容器内に真空封止にて閉じこめられている閉鎖空間内に充填されてカプセルHIP処理がされるので、得られる焼結体と仕込んだ被焼結材料とで組成ずれが生じにくく、均一に高密度の焼結体が得られる。
(真空脱気処理)
カプセル容器内の真空脱気処理は、まず、被焼結材料を充填したカプセル容器を加熱しながら、カプセル容器内の圧力を1.33×10-2Pa以下に真空引きを行う。その後、カプセル容器に接続された排気管を閉じ、カプセル容器を封止する。この真空脱気処理により、被焼結材料に付着しているガス、吸着水分を充分に除去することができる。
真空引きする際のカプセル容器の加熱温度は100℃以上600℃以下であることが好ましい。なお、成型体、造粒粉末が有機バインダーを含み、有機バインダーの脱脂を真空脱気処理と同時に行う場合には、真空引きする際のカプセル容器の加熱温度は、上述したように、450〜700℃程度とする。
カプセルHIP処理は、カプセル容器をHIP装置に配置して行う。
カプセルHIP処理は高温高圧下のガスを圧力媒体としてカプセル容器内部の被焼結材料の焼結を行うものである。
カプセルHIP処理における焼結過程の条件は、焼結過程において、焼結温度900℃〜1400℃、圧力50MPa以上の条件で1時間以上行うことが好ましい。これにより、相対密度が98%以上である焼結体とすることができる。
カプセルHIP処理条件で温度が900℃未満、圧力50MPa未満では相対密度が90%未満と低くなる。
圧力媒体としてのガスとしては、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いるのが好ましく、なかでも、ArまたはN2であるのが好ましい。
また、相対密度が98%以上である焼結体であれば、例えば、該焼結体を用いてスパッタリングにて成膜する際、異常放電が発生しにくく安定に成膜することができる。
カプセルHIP処理における冷却過程の条件は、HIP装置内の温度が200℃になるまでは、好ましくは200℃/時間以下で、より好ましくは150℃/時間で、さらに好ましくは100℃/時間の冷却速度で冷却する。圧力はボイルシャルルの法則に従い、温度が下がるに従い圧力も下がる。HIP装置内の温度が200℃以下に低下すれば、HIP装置内から脱ガスを行い、大気圧に戻す。
上述したカプセルHIP処理においては、焼結体は高密度になるが、離型剤は低密度(相対密度:85%以下、好ましくは50%〜85%、さらに好ましくは60%〜80%)のままである。これにより、緩衝効果を発揮して応力を吸収緩和する。すなわち、離型剤は被焼結体が高密度(相対密度:98%以上)となるカプセルHIP処理における焼結条件では、十分焼結しない材料であるため、離型剤はカプセルHIP処理時に低密度の状態であり、塑性変形能により熱応力を塑性変形能により吸収することができる。さらに、カプセルHIP処理中に発生する応力を緩和できるので、焼結体に内在する応力を極小化することができる。特に、大型焼結体になると応力は積分値で効いてくるので、スパッタリング使用時等の衝撃等をきっかけにしての亀裂の発生を抑制することができる。また、バッキングプレートにボンディングの際にも、ボンディングの冷却時にバッキングプレートから焼結体は引っ張り応力を受けるが、予め焼結体中の残留応力を極小化できていれば、割れが生じにくくすることができる。上記効果は、離型剤の相対密度が、85%以下であれば有効であり、例えば難焼結性のセラミック粉(アルミナ等)を成形、焼結させ相対密度を十分に高めた物(チューブ状)でも離型剤として用いることが出来る。この様なセラミック成形体は焼結処理中に焼結が起こらず、高密度化しないため、離型剤の相対密度が上記範囲内(85%以下)であれば、十分に効果を発揮することが出来る。
[他の実施形態に係る製造方法]
本発明の他の実施形態に係る製造方法は、離型剤として、被焼結材料に対して非反応性であり、金属および/または金属化合物からなるシートまたはブランケットと、金属箔とを重ね合わせて用いる他は、上述した本発明の一実施形態に係る製造方法と同様にして行なうことができる。
金属および/または金属化合物からなるシート、ブランケットは、それ自体に隙間が多いため、カプセルHIP処理中に被焼結材料が離型剤中を通過し、カプセル容器との接触、反応により、焼結体にクラックが生じてしまうことがある。そのため、被焼結材料とカプセル容器の間に金属箔をさらに介在させて、被焼結材料とカプセル容器を完全に分離させることで、被焼結材料とカプセル容器との接触、反応を遮断し、亀裂を有さない焼結体とすることができる。
本実施形態の金属としては、本発明の一実施形態における離型剤として例示した金属と同じものが挙げられる。本実施形態の金属化合物としては、本発明の一実施形態における離型剤として例示した金属化合物と同じものが挙げられる。
本実施形態のシートおよびブランケットの相対密度は、3〜30%、好ましくは4〜20%である。
本実施形態のシートの厚さは、金属箔と重ね合わせたカプセルHIP処理後の厚さが後述する範囲となれば特に限定されず、5〜20mmであるのが好ましい。本実施形態のブランケットの厚さは、金属箔と重ね合わせたカプセルHIP処理後の厚さが後述する範囲となれば特に限定されず、5〜20mmであるのが好ましい。
本実施形態のシートおよびブランケットのいずれも市販品を用いることができる。具体的には、シートとして、イソウール1260エースペーパー(イソライト工業(株)製)、イソウール1500エースペーパー(イソライト工業(株)製)、SCペーパー1260I(新日本サーマルセラミックス(株)製)、SCペーパー1260(新日本サーマルセラミックス(株)製)などが挙げられる。
ブランケットとして、SCブランケット1260(新日本サーマルセラミックス(株)製)、SCブランケット1400(新日本サーマルセラミックス(株)製)、SCブランケット1600MLS(新日本サーマルセラミックス(株)製)、イソウール1260ブランケット(イソライト工業(株)製)、イソウール1260エースブランケット(イソライト工業(株)製)、イソウール1400ブランケット(イソライト工業(株)製)、イソウール1500エースブランケット(イソライト工業(株)製)、イソウール1600ブランケット(イソライト工業(株)製)などが挙げられる。
金属箔の材質としては、例えば、ステンレス、鉄、ニッケル、チタン、コバルト、白金、クロム、バナジウム、ロジウム、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、タングステン、モリブデン、ハフニウム、レニウム、イリジウムやこれら二種以上の金属の合金等が挙げられる。
金属箔の厚さは、通常、0.1mm以上0.5mm未満である。
金属および/または金属化合物からなるシートまたはブランケットと、金属箔とを重ね合わせた厚さは、カプセルHIP処理後の厚さが1mm以上、好ましくは2〜8mm、より好ましくは3〜7mmとすることができる厚さである。
なお、カプセルHIP処理により、金属および/または金属化合物からなるシートまたはブランケットが多少は焼結し、収縮することを想定して、離型剤をカプセル容器に充填する時にはその分だけ厚めに、すなわち1mmよりさらに厚くなるように充填しておくのが好ましい。
被焼結材料をカプセル容器内に充填する方法としては、部材間の反応性を考慮し、カプセル容器の内側を金属および/または金属化合物からなるシートまたはブランケットで覆い、次いで金属箔を金属および/または金属化合物からなるシートまたはブランケットに密接させた後、被焼結材料を充填する方法が好ましい。
金属箔は、それ自身がすでに100%の相対密度のものであり、カプセルHIP処理中で相対密度の変化は殆ど無いため、相対密度が低いことによる塑性変形能による応力緩和効果を期待することは出来ないが、金属箔自身が持っている展延性により、塑性変形による応力を吸収、緩和することが出来るため、被焼結材料に発生する亀裂等の発生を抑制することが出来る。
[さらに他の実施形態に係る製造方法]
本発明のさらに他の実施形態に係る製造方法は、離型剤として、被焼結材料に対して非反応性である金属シートを、1枚または複数枚重ね合わせて用いる他は、上述した一実施形態に係る製造方法と同様にして行なうことができる。
金属シートの材質としては、本発明の一実施形態における離型剤として例示した金属と同じものが挙げられる。
金属シートの厚さは、通常0.5〜2mmであり、ハンドリングの観点から、好ましくは0.6〜1.8mm、より好ましくは0.8〜1.5mmである。
金属シートとしては、市販のものを用いることができる。
金属シートを、1枚または複数枚重ね合わせた厚みは、1mm以上、好ましくは2〜8mm、より好ましくは3〜7mmである。
被焼結材料をカプセル容器内に充填する方法としては、特に限定されず、例えば、金属シートをカプセル容器の内表面に密接させ、必要であれば、さらにこの金属シートに金属シートを密接させて複数枚重ね合わせた後、被焼結材料(粉状)を充填する方法などが挙げられる。
金属シートは、それ自身がすでに100%の相対密度のものであり、焼結処理中で相対密度の変化は殆ど無いため、相対密度が低いことによる塑性変形能による応力緩和効果を期待することは出来ないが、金属シート自身が持っている展延性により、塑性変形による応力を吸収、緩和することが出来るため、被焼結材料に発生する亀裂等の発生を抑制することが出来る。
〔焼結体〕
上記の条件を満足した時のみ、例えば、300mmφ以上の円形、または少なくとも一辺が300mm以上の多角形等であって、厚みが3mm以上、とりわけ1mを超えるような円柱体や角柱体などのセラミックス系大型焼結体を亀裂の発生もなく、カプセルHIP焼結法にて作製することができる。
<IGZO系焼結体>
IGZO系焼結体は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)及び酸素(0)を構成元素とする。
IGZO系焼結体は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)及び酸素(0)からなり、式InxGayZnza[式中、x/(x+y)が0.2〜0.8、z/(x+y+z)が0.1〜0.5、a=(3/2)x+(3/2)y+z]で表され、例えば、x:y:z=1:1:1の場合は、InGaZnO4と、x:y:z=2:2:1の場合は、In2Ga2Zn07と表すことができる。
インジウムとガリウムの合計に対するインジウムの原子数比x/(x+y)が0.8を超えると、スパッタ成膜して得られる膜のキャリア濃度が高過ぎてしまい、その膜を活性層とする薄膜トランジスタ特性の重要な指標であるon/off比が悪くなってしまう。一方、このインジウム比が0.2未満になると、スパッタ成膜して得られる膜のキャリア濃度が低くなり過ぎてしまうと共に、膜の移動度も低下してしまって、素子特性上、好ましくない。
また、IGZO系焼結体は、インジウムとガリウムと亜鉛の合計に対する亜鉛の原子数比z/(x+y+z)が0.5を超えると、スパッタ成膜して得られる膜の安定性、耐湿性等が劣化してしまう。一方、この亜鉛比が0.1未満になると、スパッタ成膜して得られる膜の非晶質性が弱くなり、結晶化し易くなってしまう。結晶化膜は膜特性の面内ばらつきが大きく、素子特性のばらつきを大きくしてしまう。更に、Zn比の減少とは、InとGaの合計比の増加であり、これら2種類の金属は比較的高価であるため、IGZO系焼結体のコストアップとなってしまう。
<ITO系焼結体>
ITO系焼結体は、錫の含有量が、インジウム1モルに対して0〜0.3モルの範囲とする。錫が含有される場合には、インジウム1モルに対して0.001〜0.3モルの範囲で含有されるのが望ましい。錫の含有量が上記範囲内であれば、ITO系焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットのキャリア電子の密度並びに移動度を適切にコントロールして導電性を良好な範囲に保つことができる。また、錫の含有量が上記範囲を越えると、ITO系焼結体を加工して得られるスパッタリングターゲットのキャリア電子の移動度を低下させると共に導電性を劣化させる方向に働くので好ましくない。
なお、ITOスパッタリングターゲットは一般にCu製のバッキングプレートにボンディングされて使用されるため、例えばタッチパネル用のITO膜を形成するときには、一般にSnの含有量がインジウム1モルに対して0.015モル程度であるITOスパッタリングターゲットをCu製のバッキングプレートにボンディングしてスパッタリングが行われている。
<ZnO系焼結体>
ZnO系焼結体は、ZnO系粉末として混合粉末(a)、(b)を用いた場合、カプセルHIP処理により得られるため、上述したZnO系粉末におけるチタン原子数の割合と同様に、チタンが原子数比でTi/(Zn+Ti)=0.002以上0.1以下となる。
チタンの原子数比が上記範囲内であれば、ZnO系焼結体の強度、ZnO系膜の耐薬品性など化学的耐久性、比抵抗、導電性、透明性などの点で好ましい。
好ましくは、チタンの含有量は、原子数比でTi/(Zn+Ti)=0.005〜0.09となる量であり、より好ましくは、原子数比でTi/(Zn+Ti)=0.008〜0.08となる量である。
特にTi/(Zn+Ti)=0.002以上0.02以下では、ZnO系膜の化学的耐久性はTi/(Zn+Ti)=0.02超0.1以下の場合よりも低下する傾向にあるが、少なくとも現在使用されているAZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)膜やGZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)膜よりはるかに化学的耐久性は優れ、チタンの含有量が少なくなることにより、形成された膜の屈折率が小さくなり、特に可視域から近紫外域の透過率が高くなる傾向にある。膜の近紫外域〜可視域の透過性が向上すると、このZnO系膜を例えば、CIS/CIGS太陽電池における透明電極などの太陽電池の部材に用いた場合、太陽電池の変換効率を高くすることができる。さらに、形成された膜の低抵抗化は、チタンだけでは十分に達成しにくいため、アルミニウムおよびガリウムの少なくとも1つを含むことが好ましい。
一方、チタンが原子数比でTi/(Zn+Ti)=0.02超0.1以下では、この酸化亜鉛系焼結体を用いて形成された膜の化学的耐久性に極めて優れ、チタンのみでも低抵抗化することは可能であるが、さらなる低抵抗化するために、ガリウムおよびアルミニウムの少なくとも1つを含むことは好ましい。
ZnO系膜はいずれもAZO膜,GZO膜より化学的耐久性、近赤外高透過性に優れているが、上述したようにチタンの含有量により近紫外域領域〜可視域領域の高透過性重視、すなわち太陽電池の変換効率向上重視か、極めて高い化学的耐久性重視か、自由に特性を調整することができる。
(ターゲット)
このようにして得られた焼結体は、スパッタリング法、イオンプレーティング法、PLD法またはEB蒸着法による成膜に用いられるターゲットに加工されて用いられてもよい。このターゲットは高密度であり、かつ、大型であるため、分割ターゲットでなく、一枚もののターゲットであるため、例えば、スパッタリングにて成膜する際、分割ターゲット材間の隣接部位が起因となるチッピング、パーティクルおよびアーキングの発生を防止し、異常放電が発生しにくく、安定に成膜することができる。
なお、このような成膜の際に用いる固形材料のことを「タブレット」と称する場合もあるが、本発明においてはこれらを含め「ターゲット」と称することとする。
ターゲットは、上述した焼結体を所定の形状および所定の寸法に加工してなる。
加工方法は、特に制限されず、適宜公知の方法を採用すればよい。例えば、焼結体に平面研削等を施した後、所定の寸法に切断してから、支持台に貼着することにより、1枚ものの分割なしターゲットを得ることができる。
また、スパッタリングなどに使用されるターゲットの一枚の厚みは、通常、3〜20mm程度であるため、この厚みよりも厚い焼結体を製造した場合にはマルチワイヤーソー、バンドーソー、マルチブレードソー、ダイアソー等によって所望する厚みに加工すればよい。例えば、厚さ105mm(削り代5mm)の焼結体を製造した場合には、マルチワイヤーソーにより厚さ20mmで切断して、1枚の焼結体から5枚のターゲットをとればよい。
(成膜方法)
このようにして得られたターゲットを用いて、スパッタリング法、イオンプレーティング法、PLD法またはEB蒸着法により透明導電膜、透明半導体膜を成膜することができる。その際の具体的手法や条件などについては、上述したターゲットを用いること以外、特に制限はなく、公知のスパッタリング法、イオンプレーティング法、PLD法またはEB蒸着法の手法や条件を適宜採用すればよい。
(IGZO系膜)
IGZO系膜は、In、Ga及びZnの酸化物からなり、高移動度及び可視光透過性を有しており、液晶表示装置、薄膜エレクトロルミネッセンス表示装置、電気泳動方式表示装置、粉末移動方式表示装置等のスイッチング素子、駆動回路素子等の用途に使用されている。
また、IGZO系膜は、IGZO系焼結体を加工したスパッタリングターゲットを用いて成膜されてもよく、スパッタリングにより得られたIGZO系膜は、アモルファスシリコン膜よりも移動度が大きいという利点がある。
IGZO系焼結体を加工したスパッタリングターゲットは、InGaO3(ZnO)m(mは1〜20の整数)で表される化合物が主成分である。
なお、上述したIGZO系焼結体を加工してなるスパッタリングターゲットにより形成された透明半導体膜中の金属原子の混合割合は、使用したスパッタリングターゲット中の金属原子の混合割合(すなわち、IGZO系粉末中の金属原子の混合割合)と同一となる。
(ITO系膜)
ITO系膜は、酸化インジウム(In23)および酸化スズ(SnO2)の少なくとも一方を含み、可視光透過性が高く導電性も高いため、透明導電膜として液晶表示装置やタッチパネル、フラットパネルディスプレイの透明電極、ガラスの結露防止用発熱膜、赤外線反射膜などに広く用いられている。透明導電膜用のITO膜は、通常インジウム1モルに対して0.09モル程度のSnを含有するが、タッチパネル用のITO膜としては、比較的高抵抗であることが要求されることから、Snの含有量がインジウム1モルに対して0.015モル前後のITO膜が使用されている。
また、ITO系膜は、一般にITO系焼結体を加工したスパッタリングターゲットをスパッタリングすることにより形成される。
なお、上述したITO系焼結体を加工してなるスパッタリングターゲットにより形成された透明導電膜中の錫の含有量は、使用したスパッタリングターゲット中の錫の含有量(すなわち、ITO系粉末中の錫の含有量)と同一の含有量となる。
(ZnO系膜)
ZnO系焼結体を加工したターゲットを用いて形成されたZnO系膜は、例えば、液晶ディスプレイ・プラズマディスプレイ・無機EL(エレクトロルミネセンス)ディスプレイ・有機ELディスプレイ・電子ペーパーなどの透明電極、太陽電池の光電変換素子の窓電極、透明タッチパネル等の入力装置の電極、電磁シールドの電磁遮蔽膜、透明かつフレキシブルな集積回路等の用途に好適に用いられ、さらに、透明電波吸収体、紫外線吸収体、さらには透明半導体デバイスとして、他の金属膜や金属酸化膜と組み合わせて活用することもできる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1:TZO系焼結体の製造)
<仮焼後の酸化亜鉛粉末の製造>
酸化亜鉛粉末(ZnO:ハクスイテック(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ1.5μm)を、大気中1200℃で10時間仮焼した。昇温は、10℃/分の昇温速度で室温から1200℃まで行った。仮焼後、ハンマーミルを用いて粗粉砕して、仮焼後の酸化亜鉛粉末を得た。
得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末のタップ密度を測定すると、3.91g/cm3であった。同様に、仮焼前の酸化亜鉛粉末のタップ密度を測定すると、1.02g/cm3であった。タップ密度は、JIS K 5101に準拠して測定した。すなわち、所定サイズのメスシリンダーに、粉末の体積変化がなくなるまで振動を付与しながら充填し、充填した質量と体積とからタップ密度を求めた。以下、タップ密度の測定は、この方法で行った。
<TZO系焼結体の製造>
得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末、一酸化チタン粉末(TiO(II):フルウチ化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ1μm以下)、および酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ0.5μm)を、亜鉛とチタンとアルミニウムとの原子数比がZn:Ti:Al=98.2:1.0:0.8となるように合計で54kg秤量し、自動乳鉢で乾式混合(5時間)を行って混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(外径:620mm、内径:610mm、容器内部の高さ:70mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ45μm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の円筒(直径:590mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の円筒の外壁との間(幅は10mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の円筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度は3.91g/cm3であり、下記の式で求めた焼結体の理論密度は5.6g/cm3であることから、充填率は69.8%である。
焼結体の理論密度=(酸化亜鉛の単体密度×混合質量比)+(一酸化チタンの単体密度×混合質量比)+(酸化アルミニウムの単体密度×混合質量比)
充填率=(タップ密度/焼結体の理論密度)×100
充填した混合粉末の上に、高さが10mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の円筒を除去した。混合粉末は、図1、2に示すように、金属製カプセル容器内で10mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
次いで、金属製カプセル容器に排気管を上蓋に溶接し、その後上蓋と金属製カプセル容器とを溶接した。金属製カプセル容器の溶接部の健全性を確認するため、Heリーク検査を行った。この時の漏れ量を1×10-6Torr・L/秒以下とした。次に、550℃に加熱しながら7時間かけて金属製カプセル容器内を減圧し、金属製カプセル容器内が1.33×10-2Pa以下になったことを確認して排気管を閉じ、金属製カプセル容器を封止した。封止した金属製カプセル容器をHIP装置((株)神戸製鋼所製)内に設置し、カプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理における焼結過程は、圧力100MPaのアルゴン(Ar)ガス(純度99.9%)を圧力媒体とし、1100℃で4時間の条件で行った。カプセルHIP処理における冷却過程では、HIP装置内の温度が200℃になるまでは100℃/時間の冷却速度で冷却し、その後は自然冷却させた。
カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない直径520mmおよび厚さ44mmの円柱状のTZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちTZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが7.1mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いたAl23のカプセルHIP処理後の密度)を測長法で求めたところ、3.05g/cm3であった。Al23の理論密度は3.95g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は77%であった。離型剤として用いたAl23は十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。なお、相対密度は下記の式で求められる。
相対密度=(焼結体の密度/焼結体の理論密度)×100
一方、得られたTZO系焼結体の相対密度は99.3%であり、電子顕微鏡でTZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたTZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、直径500mmおよび厚さ15mmの板状に加工した。TZO系焼結体を、ICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、ZnとTiとAlとの原子数比はZn:Ti:Al=98.2:1.0:0.8であった。このTZO系焼結体のZnとTiとAlとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるZn:Ti:Al=98.2:1.0:0.8と同じであり、亜鉛は揮散していないことがわかる。
TZO系焼結体の結晶構造を、X線回折装置(理学電機(株)製、RINT2000)を用いて調べると、酸化亜鉛(ZnO)およびチタン酸亜鉛(Zn2TiO4)の結晶相の混合物であり、酸化チタンは全く存在していなかった。
<スパッタリングによる成膜>
得られたTZO系焼結体を、銅板をバッキングプレートとして用い、インジウム半田でボンディングして、スパッタリングターゲットを得た。
得られたスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明導電膜を形成した。すなわち、スパッタリング装置(アルバック(株)製)内に、上記ターゲットと透明基材(石英ガラス基板)とをそれぞれ設置し、Arガス(純度99.9995%以上、Ar純ガス=5N)を12sccmで導入して、圧力0.5Pa、ターゲット面の単位面積当たりの投入電力3.98W/cm2、基板温度200℃の条件下でスパッタリングを行った。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたTZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する円柱状の大型TZO系焼結体(直径:520mm、厚さ:44mm)を得ることができる。さらに、この大型TZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく安定に成膜できることがわかる。
(実施例2:TZO系焼結体の製造)
<酸化亜鉛系焼結体の製造>
実施例1で得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末、一酸化チタン粉末(TiO(II):フルウチ化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ1μm)、および酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ0.5μm)を、亜鉛とチタンとアルミニウムとの原子数比がZn:Ti:Al=98.2:1.0:0.8となるように合計で69kg秤量し、自動乳鉢で乾式混合(5時間)を行って混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦600mm×横600×高さ70mm、壁厚:5mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ45μm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の角筒(縦:580mm、横:580mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の角筒の外壁との間(幅は10mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の角筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度は3.91g/cm3であり、混合粉末からなる焼結体の理論密度は5.6g/cm3であることから、充填率は69.8%である。
充填した混合粉末の上に、高さが10mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の角筒を除去した。混合粉末は、金属製カプセル容器内で10mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
実施例1と同様にして、カプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない縦520mm、横520mmおよび厚さ44mmの直方体のTZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちTZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが7.1mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いたAl23のカプセルHIP処理後の密度)は測長法で求めたところ、3.1g/cm3であった。焼結体の理論密度は3.95g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は78%であった。離型剤として用いたAl23は十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。
一方、得られたTZO系焼結体の相対密度は99.3%であり、電子顕微鏡でTZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたTZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、500mm×500mm×15mmの板状に加工した。TZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、ZnとTiとAlとの原子数比はZn:Ti:Al=98.2:1.0:0.8であった。このTZO系焼結体のZnとTiとAlとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるZn:Ti:Al=98.2:1.0:0.8と同じであり、亜鉛は揮散していないことがわかる。
TZO系焼結体の結晶構造を、実施例1と同様にX線回折装置を用いて調べると、酸化亜鉛(ZnO)およびチタン酸亜鉛(Zn2TiO4)の結晶相の混合物であり、酸化チタンは全く存在していなかった。
<スパッタリングによる成膜>
得られたTZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例1と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明導電膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたTZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する直方体の大型TZO系焼結体(縦:520mm、横:520mm、厚さ:44mm)を得ることができる。さらに、この大型TZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく安定に成膜できることがわかる。
(比較例1)
実施例1で得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末、一酸化チタン粉末(TiO(II):フルウチ化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ1μm以下)、および酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ0.5μm)を、亜鉛とチタンとアルミニウムとの原子数比がZn:Ti:Al=98.2:1.0:0.8となるように合計で75kg秤量し、自動乳鉢で乾式混合(5時間)を行って混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(外径:600mm、内径:590mm、容器内部の高さ:70mm)に、この混合粉末を充填し(充填率:69.8%)、離型剤を用いないこと以外は実施例1と同様にして、カプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外し、直径520mmおよび厚さ62mmの円柱状のTZO系焼結体(相対密度:99.3%)を得た。しかし、得られた焼結体には、多数の亀裂が存在しており、この焼結体を用いてスパッタリングすることはできなかった。
(実施例3:IGZO系焼結体の製造)
<仮焼後のIGZO粉末の製造>
酸化インジウム粉末(In23:(株)高純度化学研究所製、純度99.99%、1次粒子サイズ4μm)を、大気中1450℃で12時間仮焼した。昇温は、10℃/分の昇温速度で室温から1450℃まで行った。仮焼後、ハンマーミルを用いて粗粉砕して、仮焼後の酸化インジウム粉末を得た。得られた仮焼後の酸化インジウム粉末のタップ密度を測定すると、2.20g/cm3であった。同様に、仮焼前の酸化インジウム粉末のタップ密度を測定すると、1.95g/cm3であった。
酸化ガリウム粉末(Ga23:住友化学(株)製、純度99.99%、1次粒子サイズ0.5μm)を、大気中1550℃で20時間仮焼した。昇温は、10℃/分の昇温速度で室温から1550℃まで行った。仮焼後、ハンマーミルを用いて粗粉砕して、仮焼後の酸化ガリウム粉末を得た。得られた仮焼後の酸化ガリウム粉末のタップ密度を測定すると、4.03g/cm3であった。同様に、仮焼前の酸化ガリウム粉末のタップ密度を測定すると、1.39g/cm3であった。
さらに、実施例1で用いた酸化亜鉛粉末を、大気中1400℃で10時間仮焼した。昇温は、10℃/分の昇温速度で室温から1400℃まで行った。仮焼後、ハンマーミルを用いて粗粉砕して、仮焼後の酸化亜鉛粉末を得た。得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末のタップ密度を測定すると、4.14g/cm3であった。同様に、仮焼前の酸化亜鉛粉末のタップ密度を測定すると、1.02g/cm3であった。
<IGZO系焼結体の製造>
得られた仮焼後の酸化インジウム粉末、仮焼後の酸化ガリウム粉末および仮焼後の酸化亜鉛粉末を、インジウムとガリウムと亜鉛との原子数比がIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0となるように合計で70kg秤量し、自動乳鉢で乾式混合(5時間)を行って混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ45μm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の角筒(縦:640mm、横:640mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の角筒の外壁との間(幅は10mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の角筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると3.28g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は51.4%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、高さが10mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の角筒を除去した。混合粉末は、金属製カプセル容器内で10mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない縦520mm、横520mmおよび厚さ40mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちIGZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが7.1mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いたAl23のカプセルHIP処理後の密度)は測長法で求めたところ、3.32g/cm3であった。焼結体の理論密度は3.95g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は84%であった。離型剤として用いたAl23は十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、500mm×500mm×15mmの板状に加工した。IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、ターゲット面の単位面積当たりの投入電力1.7W/cm2、基板温度を室温にした以外は、実施例1と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する直方体の大型IGZO系焼結体(縦:520mm、横:520mm、厚さ:40mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく、安定に成膜できることがわかる。
(実施例4:IGZO系焼結体の製造)
<IGZO系焼結体の製造>
実施例3で得られた仮焼後の酸化インジウム粉末、仮焼後の酸化ガリウム粉末および仮焼後の酸化亜鉛粉末を、インジウムとガリウムと亜鉛との原子数比がIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0となるように合計で53kg秤量し、自動乳鉢で乾式混合(5時間)を行って混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(外径:670mm、内径:660mm、容器内部の高さ:70mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ45μm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の円筒(直径:640mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の円筒の外壁との間(幅は10mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の円筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると3.28g/cm3であり、混合粉末からなる焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は51.4%である。
充填した混合粉末の上に、高さが10mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の円筒を除去した。混合粉末は、金属製カプセル容器内で10mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
実施例3と同様にして、カプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない直径510mmおよび厚さ40mmの円柱状のIGZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちIGZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが7.1mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いたAl23のカプセルHIP処理後の密度)は測長法で求めたところ、3.32g/cm3であった。焼結体の理論密度は3.95g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は84%であった。離型剤として用いたAl23は十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、直径500mmおよび厚さ15mmの板状に加工した。IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例3と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する円柱状の大型IGZO系焼結体(直径:510mm、厚さ:40mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく安定に成膜できることがわかる。
(比較例2)
実施例3で得られた仮焼後の酸化インジウム粉末、仮焼後の酸化ガリウム粉末および仮焼後の酸化亜鉛粉末を、インジウムとガリウムと亜鉛との原子数比がIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0となるように合計で53kg秤量し、自動乳鉢で乾式混合(5時間)を行って混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(外径:650mm、内径:640mm、容器内部の高さ:50mm)に、この混合粉末を充填し(充填率:51.4%)、離型剤を用いないこと以外は実施例3と同様にして、カプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外し、直径512mmおよび厚さ40mmの円柱状のIGZO系焼結体(相対密度:100%)を得た。しかし、得られた焼結体には、多数の亀裂が存在しており、この焼結体を用いてスパッタリングすることはできなかった。
(実施例5:AZO系焼結体の製造)
<AZO系焼結体の製造>
実施例1で得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末と酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.99%、1次粒子サイズ0.5μm)とを、亜鉛とアルミニウムとの原子数比がZn:Al=96.8:3.2となるように合計で52kg秤量し、自動乳鉢で乾式混合(5時間)を行って混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(外径:610mm、内径:600mm、容器内部の高さ:70mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ45μm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の円筒(直径:580mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の円筒の外壁との間(幅は10mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の円筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度は3.90g/cm3であり、下記の式で求めた混合粉末からなる焼結体の理論密度は5.6g/cm3であることから、充填率は69.6%である。
焼結体の理論密度=(酸化亜鉛の単体密度×混合質量比)+(酸化アルミニウムの単
体密度×混合質量比)
充填した混合粉末の上に、高さが10mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の円筒を除去した。混合粉末は、金属製カプセル容器内で10mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
実施例1と同様にして、カプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない直径510mmおよび厚さ44mmの円柱状のAZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちAZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが7.1mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いたAl23のカプセルHIP処理後の密度)は測長法で求めたところ、3.06g/cm3であった。焼結体の理論密度は3.95g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は77%であった。離型剤として用いたAl23は十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。
一方、得られたAZO系焼結体の相対密度は99.3%であり、電子顕微鏡でAZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたAZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、直径500mmおよび厚さ15mmの板状に加工した。AZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、ZnとAlとの原子数比はZn:Al=96.8:3.2であった。このAZO系焼結体のZnとAlとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるZn:Al=96.8:3.2と同じであり、亜鉛は揮散していないことがわかる。
AZO系焼結体の結晶構造を、実施例1と同様にX線回折装置を用いて調べると、酸化亜鉛(ZnO)およびアルミン酸亜鉛(ZnAl24)の結晶相の混合物であり、酸化アルミニウムは全く存在していなかった。
<スパッタリングによる成膜>
得られたAZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例1と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明導電膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたAZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する円柱状の大型AZO系焼結体(直径:510mm、厚さ:44mm)を得ることができる。さらに、この大型AZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく安定に成膜できることがわかる。
(実施例6:GZO系焼結体の製造)
<GZO系焼結体の製造>
実施例1で得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末と実施例3で用いた酸化ガリウム粉末とを、亜鉛とガリウムとの原子数比がZn:Ga=95.8:4.2となるように合計で52kg秤量し、自動乳鉢で乾式混合(5時間)を行って混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(外径:610mm、内径:600mm、容器内部の高さ:70mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ45μm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の円筒(直径:580mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の円筒の外壁との間(幅は10mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の円筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度は3.90g/cm3であり、下記の式で求めた混合粉末からなる焼結体の理論密度は5.6g/cm3であることから、充填率は69.6%である。
焼結体の理論密度=(酸化亜鉛の単体密度×混合質量比)+(酸化ガリウムの単体密度×混合質量比)
充填した混合粉末の上に、高さが10mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の円筒を除去した。混合粉末は、金属製カプセル容器内で10mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
実施例1と同様にして、カプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない直径510mmおよび厚さ44mmの円柱状のGZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちGZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが7.1mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いたAl23のカプセルHIP処理後の密度)は測長法で求めたところ、3.06g/cm3であった。焼結体の理論密度は3.95g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は77%であった。離型剤として用いたAl23は十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。
一方、得られたGZO系焼結体の相対密度は99.3%であり、電子顕微鏡でGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、直径500mmおよび厚さ15mmの板状に加工した。GZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、ZnとGaとの原子数比はZn:Ga=95.8:4.2であった。このGZO系焼結体のZnとGaとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるZn:Ga=95.8:4.2と同じであり、亜鉛は揮散していないことがわかる。
GZO系焼結体の結晶構造を、実施例1と同様にX線回折装置を用いて調べると、酸化亜鉛(ZnO)およびガリウム酸亜鉛(ZnGa24)の結晶相の混合物であり、酸化ガリウムは全く存在していなかった。
<スパッタリングによる成膜>
得られたGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例1と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明導電膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する円柱状の大型GZO系焼結体(直径:510mm、厚さ:44mm)を得ることができる。さらに、この大型GZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく安定に成膜できることがわかる。
(実施例7:TZO系焼結体の製造)
<仮焼後の酸化亜鉛粉末の製造>
酸化亜鉛粉末(ZnO:ハクスイテック(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ1.5μm)を、大気中1200℃で10時間仮焼した。昇温は、10℃/分の昇温速度で室温から1200℃まで行った。仮焼後、ハンマーミルを用いて粗粉砕して、仮焼後の酸化亜鉛粉末を得た。
得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末のタップ密度を測定すると、3.91g/cm3であった。同様に、仮焼前の酸化亜鉛粉末のタップ密度を測定すると、1.02g/cm3であった。
<TZO系焼結体の製造>
得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末、一酸化チタン粉末(TiO(II):フルウチ化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ1μm以下)、および酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ0.5μm)を、亜鉛とチタンとアルミニウムとの原子数比がZn:Ti:Al=98.2:1.0:0.8となるように合計で68kg秤量し、自動乳鉢で乾式混合(5時間)を行って混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(外径:620mm、内径:610mm、容器内部の高さ:70mm)に、高さが4.5mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ45μm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の円筒(直径:601mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の円筒の外壁との間(幅は4.5mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の円筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ61mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度は3.91g/cm3であり、下記の式で求めた混合粉末からなる焼結体の理論密度は5.6g/cm3であることから、充填率は69.8%である。
焼結体の理論密度=(酸化亜鉛の単体密度×混合質量比)+(一酸化チタンの単体密度×混合質量比)+(酸化アルミニウムの単体密度×混合質量比)
充填率=(タップ密度/焼結体の理論密度)×100
充填した混合粉末の上に、高さが4.5mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の円筒を除去した。混合粉末は、図1、2に示すように、金属製カプセル容器内で4.5mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
次いで、金属製カプセル容器に排気管を上蓋に溶接し、その後上蓋と金属製カプセル容器とを溶接した。金属製カプセル容器の溶接部の健全性を確認するため、Heリーク検査を行った。この時の漏れ量を1×10-6Torr・L/秒以下とした。次に、550℃に加熱しながら7時間かけて金属製カプセル容器内を減圧し、金属製カプセル容器内が1.33×10-2Pa以下になったことを確認して排気管を閉じ、金属製カプセル容器を封止した。封止した金属製カプセル容器をHIP装置((株)神戸製鋼所製)内に設置し、カプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理における焼結過程は、圧力100MPaのアルゴン(Ar)ガス(純度99.9%)を圧力媒体とし、1100℃で4時間の条件で行った。カプセルHIP処理における冷却過程では、HIP装置内の温度が200℃になるまでは100℃/時間の冷却速度で冷却し、その後は自然冷却させた。
カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない直径533mmおよび厚さ54mmの円柱状のTZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちTZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが3.2mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いたAl23のカプセルHIP処理後の密度)を測長法で求めたところ、3.05g/cm3であった。Al23の理論密度は3.95g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は77%であった。離型剤として用いたAl23は十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。なお、相対密度は下記の式で求められる。
相対密度=(焼結体の密度/焼結体の理論密度)×100
一方、得られたTZO系焼結体の相対密度は99.3%であり、電子顕微鏡でTZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたTZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、直径500mmおよび厚さ15mmの板状に加工した。TZO系焼結体を、ICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、ZnとTiとAlとの原子数比はZn:Ti:Al=98.2:1.0:0.8であった。このTZO系焼結体のZnとTiとAlとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるZn:Ti:Al=98.2:1.0:0.8と同じであり、亜鉛は揮散していないことがわかる。
TZO系焼結体の結晶構造を、X線回折装置(理学電機(株)製、RINT2000)を用いて調べると、酸化亜鉛(ZnO)およびチタン酸亜鉛(Zn2TiO4)の結晶相の混合物であり、酸化チタンは全く存在していなかった。
<スパッタリングによる成膜>
得られたTZO系焼結体を、銅板をバッキングプレートとして用い、インジウム半田でボンディングして、スパッタリングターゲットを得た。
得られたスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明導電膜を形成した。すなわち、スパッタリング装置(アルバック(株)製)内に、上記ターゲットと透明基材(石英ガラス基板)とをそれぞれ設置し、Arガス(純度99.9995%以上、Ar純ガス=5N)を12sccmで導入して、圧力0.5Pa、ターゲット面の単位面積当たりの投入電力3.98W/cm2、基板温度200℃の条件下でスパッタリングを行った。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたTZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する円柱状の大型TZO系焼結体(直径:533mm、厚さ:54mm)を得ることができる。さらに、この大型TZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく安定に成膜できることがわかる。
(比較例3)
<仮焼後の酸化亜鉛粉末の製造>
酸化亜鉛粉末(ZnO:ハクスイテック(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ1.5μm)を、大気中1200℃で10時間仮焼した。昇温は、10℃/分の昇温速度で室温から1200℃まで行った。仮焼後、ハンマーミルを用いて粗粉砕して、仮焼後の酸化亜鉛粉末を得た。
得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末のタップ密度を測定すると、3.91g/cm3であった。同様に、仮焼前の酸化亜鉛粉末のタップ密度を測定すると、1.02g/cm3であった。
<TZO系焼結体の製造>
得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末、一酸化チタン粉末(TiO(II):フルウチ化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ1μm以下)、および酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ0.5μm)を、亜鉛とチタンとアルミニウムとの原子数比がZn:Ti:Al=98.2:1.0:0.8となるように合計で75kg秤量し、自動乳鉢で乾式混合(5時間)を行って混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(外径:620mm、内径:610mm、容器内部の高さ:70mm)に、高さが1.3mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ45μm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の円筒(直径:606mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の円筒の外壁との間(幅は2.0mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の円筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら高さ66.7mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度は3.91g/cm3であり、下記の式で求めた混合粉末からなる焼結体の理論密度は5.6g/cm3であることから、充填率は69.8%である。
焼結体の理論密度=(酸化亜鉛の単体密度×混合質量比)+(一酸化チタンの単体密度×混合質量比)+(酸化アルミニウムの単体密度×混合質量比)
充填率=(タップ密度/焼結体の理論密度)×100
充填した混合粉末の上に、高さが2.0mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の円筒を除去した。混合粉末は、図1、2に示すように、金属製カプセル容器内で2.0mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
次いで、金属製カプセル容器に排気管を上蓋に溶接し、その後上蓋と金属製カプセル容器とを溶接した。金属製カプセル容器の溶接部の健全性を確認するため、Heリーク検査を行った。この時の漏れ量を1×10-6Torr・L/秒以下とした。次に、550℃に加熱しながら7時間かけて金属製カプセル容器内を減圧し、金属製カプセル容器内が1.33×10-2Pa以下になったことを確認して排気管を閉じ、金属製カプセル容器を封止した。封止した金属製カプセル容器をHIP装置((株)神戸製鋼所製)内に設置し、カプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理における焼結過程は、圧力100MPaのアルゴン(Ar)ガス(純度99.9%)を圧力媒体とし、1100℃で4時間の条件で行った。カプセルHIP処理における冷却過程では、HIP装置内の温度が200℃になるまでは100℃/時間の冷却速度で冷却し、その後は自然冷却させた。
カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。
直径538mmおよび厚さ59mmの円柱状のTZO系焼結体を得たが、得られた焼結体には、焼結体全体でなく、底面に亀裂が存在しており、この焼結体を用いてスパッタリングすることはできなかった。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、カプセル容器内の底面部の焼結後の離型剤の厚み、すなわちTZO系焼結体の底面とカプセル容器内の底面との間の焼結後の厚みが0.9mmであることがわかった。また、カプセル容器内の側面部および上面部の焼結後の離型剤の厚みを同様に測定したところ、ともに1.4mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いたAl23のカプセルHIP処理後の密度)を測長法で求めたところ、3.05g/cm3であった。Al23の理論密度は3.95g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は77%であった。離型剤として用いたAl23は十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。なお、相対密度は下記の式で求められる。
相対密度=(焼結体の密度/焼結体の理論密度)×100
一方、得られたTZO系焼結体の相対密度は99.3%であり、電子顕微鏡でTZO系焼結体における亀裂部以外の部位を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
(比較例4)
<仮焼後の酸化亜鉛粉末の製造>
酸化亜鉛粉末(ZnO:ハクスイテック(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ1.5μm)を、大気中1200℃で10時間仮焼した。昇温は、10℃/分の昇温速度で室温から1200℃まで行った。仮焼後、ハンマーミルを用いて粗粉砕して、仮焼後の酸化亜鉛粉末を得た。
得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末のタップ密度を測定すると、3.91g/cm3であった。同様に、仮焼前の酸化亜鉛粉末のタップ密度を測定すると、1.02g/cm3であった。
<TZO系焼結体の製造>
得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末、一酸化チタン粉末(TiO(II):フルウチ化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ1μm以下)、および酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ0.5μm)を、亜鉛とチタンとアルミニウムとの原子数比がZn:Ti:Al=98.2:1.0:0.8となるように合計で54kg秤量し、自動乳鉢で乾式混合(5時間)を行って混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(外径:620mm、内径:610mm、容器内部の高さ:70mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、六方晶窒化硼素粉末(hBN:昭和電工(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ35〜45μm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の円筒(直径:590mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の円筒の外壁との間(幅は10.0mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の円筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度は3.91g/cm3であり、下記の式で求めた混合粉末からなる焼結体の理論密度は5.6g/cm3であることから、充填率は69.8%である。
焼結体の理論密度=(酸化亜鉛の単体密度×混合質量比)+(一酸化チタンの単体密度×混合質量比)+(酸化アルミニウムの単体密度×混合質量比)
充填率=(タップ密度/焼結体の理論密度)×100
充填した混合粉末の上に、高さが10.0mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の円筒を除去した。混合粉末は、図1、2に示すように、金属製カプセル容器内で10.0mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
次いで、金属製カプセル容器に排気管を上蓋に溶接し、その後上蓋と金属製カプセル容器とを溶接した。金属製カプセル容器の溶接部の健全性を確認するため、Heリーク検査を行った。この時の漏れ量を1×10-6Torr・L/秒以下とした。次に、550℃に加熱しながら7時間かけて金属製カプセル容器内を減圧し、金属製カプセル容器内が1.33×10-2Pa以下になったことを確認して排気管を閉じ、金属製カプセル容器を封止した。封止した金属製カプセル容器をHIP装置((株)神戸製鋼所製)内に設置し、カプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理における焼結過程は、圧力100MPaのアルゴン(Ar)ガス(純度99.9%)を圧力媒体とし、1100℃で4時間の条件で行った。カプセルHIP処理における冷却過程では、HIP装置内の温度が200℃になるまでは100℃/時間の冷却速度で冷却し、その後は自然冷却させた。
カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、円柱状の離型剤被覆焼結体を得、この離型剤被覆焼結体を測長した。
固形状の離型剤の一部は金属製カプセル容器からは自然と剥離したが、焼結体とは反応していた為、離型剤をサンドブラストにより除去し、直径523mmおよび厚さ44mmの円柱状のTZO系焼結体を得たが、得られた焼結体には、亀裂が一部存在しており、焼結体の色目から硼素が焼結体全体に拡散していた。この焼結体を用いてスパッタリングすることはできなかった。
円柱状の離型剤被覆焼結体の直径と、円柱状のTZO系焼結体の直径とから、焼結後の離型剤の厚み、すなわちTZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが8.5mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いた hBNのカプセルHIP処理後の密度)を測長法で求めたところ、1.43g/cm3であった。hBNの理論密度は2.27g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は63%であった。離型剤として用いたhBNは十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。なお、相対密度は下記の式で求められる。
相対密度=(焼結体の密度/焼結体の理論密度)×100
一方、得られたTZO系焼結体の相対密度は99.3%であり、電子顕微鏡でTZO系焼結体における亀裂部以外の部位を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
(比較例5)
酸化亜鉛粉末(ZnO:ハクスイテック(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ1.5μm)を、大気中1200℃で10時間仮焼した。昇温は、10℃/分の昇温速度で室温から1200℃まで行った。仮焼後、ハンマーミルを用いて粗粉砕して、仮焼後の酸化亜鉛粉末を得た。
得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末のタップ密度を測定すると、3.91g/cm3であった。同様に、仮焼前の酸化亜鉛粉末のタップ密度を測定すると、1.02g/cm3であった。
<TZO系焼結体の製造>
得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末、一酸化チタン粉末(TiO(II):フルウチ化学(株)製、純度99.9%、平均1次粒子サイズ1μm以下)、および酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.9%、平均1次粒子サイズ0.5μm)を、亜鉛とチタンとアルミニウムとの原子数比がZn:Ti:Al=98.2:1.0:0.8となるように合計で54kg秤量し、自動乳鉢で乾式混合(5時間)を行って混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(外径:620mm、内径:610mm、容器内部の高さ:70mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.9%、平均1次粒子サイズ0.5μm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の円筒(直径:590mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の円筒の外壁との間(幅は10.0mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の円筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度は3.91g/cm3であり、下記の式で求めた混合粉末からなる焼結体の理論密度は5.6g/cm3であることから、充填率は69.8%である。
焼結体の理論密度=(酸化亜鉛の単体密度×混合質量比)+(一酸化チタンの単体密度×混合質量比)+(酸化アルミニウムの単体密度×混合質量比)
充填率=(タップ密度/焼結体の理論密度)×100
充填した混合粉末の上に、高さが10.0mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の円筒を除去した。混合粉末は、図1、2に示すように、金属製カプセル容器内で10.0mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
次いで、金属製カプセル容器に排気管を上蓋に溶接し、その後上蓋と金属製カプセル容器とを溶接した。金属製カプセル容器の溶接部の健全性を確認するため、Heリーク検査を行った。この時の漏れ量を1×10-6Torr・L/秒以下とした。次に、550℃に加熱しながら7時間かけて金属製カプセル容器内を減圧し、金属製カプセル容器内が1.33×10-2Pa以下になったことを確認して排気管を閉じ、金属製カプセル容器を封止した。封止した金属製カプセル容器をHIP装置((株)神戸製鋼所製)内に設置し、カプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理における焼結過程は、圧力100MPaのアルゴン(Ar)ガス(純度99.9%)を圧力媒体とし、1100℃で4時間の条件で行った。カプセルHIP処理における冷却過程では、HIP装置内の温度が200℃になるまでは100℃/時間の冷却速度で冷却し、その後は自然冷却させた。
カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、円柱状の離型剤被覆焼結体を得、この離型剤被覆焼結体を測長した。固形状の離型剤の一部は金属製カプセル容器からは自然と剥離したが、焼結体とは反応していた為、離型剤をサンドブラストにより除去し、直径523mmおよび厚さ44mmの円柱状のTZO系焼結体を得たが、得られた焼結体には、亀裂が一部存在していた。この焼結体を用いてスパッタリングすることはできなかった。
円柱状の離型剤被覆焼結体の直径と、円柱状のTZO系焼結体の直径から、焼結後の離型剤の厚み、すなわちTZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが6.6mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いたAl23のカプセルHIP処理後の密度)を測長法で求めたところ、3.48g/cm3であった。Al23の理論密度は3.95g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は88%であった。離型剤として用いたAl23はある程度焼結が進行した。なお、相対密度は下記の式で求められる。
相対密度=(焼結体の密度/焼結体の理論密度)×100
一方、得られたTZO系焼結体の相対密度は99.3%であり、電子顕微鏡でTZO系焼結体における亀裂部以外の部位を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
(実施例8:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、セラミックス中空体粉末(Al23・SiO2複合酸化物(ムライト 組成 Al23:SiO2=46wt%:54wt%):丸越工業(株)製、粒子サイズ3〜6mm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の角筒(縦:640mm、横:640mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の角筒の外壁との間(幅は10mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の角筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、高さが10mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の角筒を除去した。混合粉末は、金属製カプセル容器内で10mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない縦550mm、横550mmおよび厚さ43mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちIGZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが2.5mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いたセラミックス中空体粉末のカプセルHIP処理後の密度)は測長法で求めたところ、2.2g/cm3であった。焼結体の理論密度は3.0g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は73%であった。離型剤として用いたセラミックス中空体粉末は十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、500mm×500mm×15mmの板状に加工した。IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例3と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する直方体の大型IGZO系焼結体(縦:550mm、横:550mm、厚さ:43mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく、安定に成膜できることがわかる。
(実施例9:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、アルミナボール(Al23:ニッカトー(株)製、ボールサイズ2mm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の角筒(縦:640mm、横:640mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の角筒の外壁との間(幅は10mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の角筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、高さが10mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の角筒を除去した。混合粉末は、金属製カプセル容器内で10mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない縦550mm、横550mmおよび厚さ43mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちIGZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが8.8mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いたアルミナボールのカプセルHIP処理後の密度)は測長法で求めたところ、2.8g/cm3であった。焼結体の理論密度は3.6g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は78%であった。離型剤として用いたアルミナボール粉末は十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、500mm×500mm×15mmの板状に加工した。IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、基板温度を室温にした以外は、実施例1と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する直方体の大型IGZO系焼結体(縦:550mm、横:550mm、厚さ:43mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく、安定に成膜できることがわかる。
(実施例10:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)の内側の全面及び上蓋に、厚さが5mmとなるまで離型剤をコーティングした。離型剤としては、無機塗料サーモプレグH(Al23:81wt%、SiO2:13.9wt%、ZrO2:5.1wt%:新日本サーマルセラミックス(株)製)を用いた。なお、離型剤の塗膜は、離型剤をコーティング後、ノギスによりカプセルの壁を含めてコーティング膜を測長し、壁厚部分を差し引くことにより求めた。
次に、全面に無機塗料をコーティングした金属製カプセル容器内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ60mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
混合粉末は、金属製カプセル容器内で5mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、カプセル容器内で離型剤は厚さ4mmを保持していた。なお、離型剤の厚さは、ノギスによりカプセルの壁を含めてコーティング膜を測長し、壁厚部分を差し引くことにより求めた。
金属製カプセル容器を取り外すと、この粉末状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体から簡単にいずれからも剥離することが出来た。亀裂が存在しない縦558mm、横558mmおよび厚さ51.5mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
粉末状になった離型剤の密度は測定できなかったが、粉末状であることから低密度(相対密度85%以下)であることは明らかであった。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、500mm×500mm×15mmの板状に加工した。IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例3と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する直方体の大型IGZO系焼結体(縦:558mm、横:558mm、厚さ:51.5mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく、安定に成膜できることがわかる。
(実施例11:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、多孔質アルミナボール(Al23:92%、SiO2:8wt%、フジミインコーポレテッド(株)製、ボールサイズ4mm〜5.5mm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の角筒(縦:640mm、横:640mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の角筒の外壁との間(幅は10mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の角筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、高さが10mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の角筒を除去した。混合粉末は、金属製カプセル容器内で10mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない縦550mm、横550mmおよび厚さ43mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちIGZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが6.5mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いた多孔質アルミナボールのカプセルHIP処理後の密度)は測長法で求めたところ、2.8g/cm3であった。焼結体の理論密度は3.8g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は74%であった。離型剤として用いた多孔質アルミナボールは十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、500mm×500mm×15mmの板状に加工した。IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例3と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する直方体の大型IGZO系焼結体(縦:550mm、横:550mm、厚さ:43mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく、安定に成膜できることがわかる。
(実施例12:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)内の側面および底面に厚さが4mmとなるまで離型剤を入れた。離型剤としては、モリブデンシート((株)高純度化学研究所製、厚さ1mm、相対密度100%)を複数枚重ね合わせて用いた。
次に、モリブデンシートをカプセル容器内部に入れた状態で、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ62mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、厚さが4mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れた。混合粉末は、金属製カプセル容器内で4mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、モリブデンシートは金属製カプセル容器および焼結体から簡単にいずれからも剥離することが出来た。剥離したモリブデンシートの厚みを測長したところ、カプセルHIP処理前のモリブデンシートの厚みと同じであったので、カプセルHIP処理後の離型剤の厚さは4mmであることがわかった。亀裂が存在しない縦560mm、横560mmおよび厚さ53mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、500mm×500mm×15mmの板状に加工した。IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例3と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する直方体の大型IGZO系焼結体(縦:560mm、横:560mm、厚さ:53mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく、安定に成膜できることがわかる。
(実施例13:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)内の側面および底面に厚さが4mmとなるまで離型剤を入れた。離型剤としては、タングステンシート((株)高純度化学研究所製、厚さ1mm、相対密度100%)を複数枚重ね合わせて用いた。
次に、タングステンシートをカプセル容器内部に入れた状態で、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ62mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、厚さが4mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れた。混合粉末は、金属製カプセル容器内で4mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、タングステンシートは金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。剥離したタングステンシートの厚みを測長したところ、カプセルHIP処理前のモリブデンシートの厚みと同じであったので、カプセルHIP処理後の離型剤の厚さは4mmであることがわかった。亀裂が存在しない縦560mm、横560mmおよび厚さ53mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、500mm×500mm×15mmの板状に加工した。IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例3と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する直方体の大型IGZO系焼結体(縦:560mm、横:560mm、厚さ:53mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく、安定に成膜できることがわかる。
(実施例14:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)内の側面および底面に厚さが4mmとなるまで離型剤を入れた。離型剤としては、タンタルシート((株)ニラコ製、厚さ1mm、相対密度100%)を複数枚重ね合わせて用いた。
次に、タンタルシートをカプセル容器内部に入れた状態で、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ62mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、厚さが4mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れた。混合粉末は、金属製カプセル容器内で4mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、タンタルシートは金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。剥離したタンタルシートの厚みを測長したところ、カプセルHIP処理前のタンタルシートの厚みと同じであったので、カプセルHIP処理後の離型剤の厚さは4mmであることがわかった。亀裂が存在しない縦560mm、横560mmおよび厚さ53mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、500mm×500mm×15mmの板状に加工した。IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例3と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する直方体の大型IGZO系焼結体(縦:560mm、横:560mm、厚さ:53mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく、安定に成膜できることがわかる。
(実施例15:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、窒化チタン粉末((株)高純度化学研究所製、粒子サイズ53μm以下)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の角筒(縦:640mm、横:640mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の角筒の外壁との間(幅は10mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の角筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、高さが10mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の角筒を除去した。混合粉末は、金属製カプセル容器内で10mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない縦550mm、横550mmおよび厚さ43mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちIGZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが6.9mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いた窒化チタン粉末のカプセルHIP処理後の密度)は測長法で求めたところ、3.2g/cm3であった。焼結体の理論密度は5.2g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は62%であった。離型剤として用いた窒化チタン粉末は十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、500mm×500mm×15mmの板状に加工した。IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例3と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する直方体の大型IGZO系焼結体(縦:550mm、横:550mm、厚さ:43mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく、安定に成膜できることがわかる。
(実施例16:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、酸化クロム(III)粉末(Cr23、(株)高純度化学研究所製、1次粒子サイズ20μm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の角筒(縦:640mm、横:640mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の角筒の外壁との間(幅は10mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の角筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、高さが10mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の角筒を除去した。混合粉末は、金属製カプセル容器内で10mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない縦550mm、横550mmおよび厚さ43mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちIGZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが7.3mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いた酸化クロム粉末のカプセルHIP処理後の密度)は測長法で求めたところ、2.2g/cm3であった。焼結体の理論密度は3.4g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は65%であった。離型剤として用いた酸化クロム(III)粉末は十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、500mm×500mm×15mmの板状に加工した。IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例3と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する直方体の大型IGZO系焼結体(縦:550mm、横:550mm、厚さ:43mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく、安定に成膜できることがわかる。
(実施例17:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、酸化ジルコニウム粉末((株)高純度化学研究所製、粒子サイズ75μm以下)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の角筒(縦:640mm、横:640mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の角筒の外壁との間(幅は10mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の角筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、高さが10mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の角筒を除去した。混合粉末は、金属製カプセル容器内で10mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない縦550mm、横550mmおよび厚さ43mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちIGZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが7.1mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いた酸化ジルコニウム粉末のカプセルHIP処理後の密度)は測長法で求めたところ、3.6g/cm3であった。焼結体の理論密度は5.5g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は65%であった。離型剤として用いた酸化ジルコニウム粉末は十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、500mm×500mm×15mmの板状に加工した。IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例3と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する直方体の大型IGZO系焼結体(縦:550mm、横:550mm、厚さ:43mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく、安定に成膜できることがわかる。
(実施例18:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、ジルコニアボール(ZrO2:HfO2=94.7wt%:5.3wt%、ニッカトー(株)製、ボールサイズ2mm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の角筒(縦:640mm、横:640mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の角筒の外壁との間(幅は10mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の角筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、高さが10mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の角筒を除去した。混合粉末は、金属製カプセル容器内で10mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない縦550mm、横550mmおよび厚さ43mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちIGZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが9.3mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いたジルコニアボールのカプセルHIP処理後の密度)は測長法で求めたところ、3.8g/cm3であった。焼結体の理論密度は6.0g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は63%であった。離型剤として用いたジルコニアボールは十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、500mm×500mm×15mmの板状に加工した。IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例3と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する直方体の大型IGZO系焼結体(縦:550mm、横:550mm、厚さ:43mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく、安定に成膜できることがわかる。
(実施例19:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)に、高さが4mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、タンタル粉末((株)高純度化学研究所製、粒子サイズ45μm以下)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の角筒(縦:652mm、横:652mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の角筒の外壁との間(幅は4mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の角筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ62mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、高さが4mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の角筒を除去した。混合粉末は、金属製カプセル容器内で4mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない縦560mm、横560mmおよび厚さ53mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちIGZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが3.8mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いたタンタル粉末のカプセルHIP処理後の密度)は測長法で求めたところ、13.2g/cm3であった。焼結体の理論密度は16.7g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は79%であった。離型剤として用いたタンタル粉末は十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、500mm×500mm×15mmの板状に加工した。IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例3と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する直方体の大型IGZO系焼結体(縦:560mm、横:560mm、厚さ:53mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく、安定に成膜できることがわかる。
(実施例20:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)に、高さが4mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、ニオブ粉末((株)高純度化学研究所製、粒子サイズ45μm以下)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の角筒(縦:652mm、横:652mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の角筒の外壁との間(幅は4mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の角筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ62mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、高さが4mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の角筒を除去した。混合粉末は、金属製カプセル容器内で4mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない縦560mm、横560mmおよび厚さ53mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちIGZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが3.8mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いたニオブ粉末のカプセルHIP処理後の密度)は測長法で求めたところ、7.1g/cm3であった。焼結体の理論密度は8.6g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は83%であった。離型剤として用いたニオブ粉末は十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、500mm×500mm×15mmの板状に加工した。IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例3と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する直方体の大型IGZO系焼結体(縦:560mm、横:560mm、厚さ:53mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく、安定に成膜できることがわかる。
(実施例21:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)に、高さが4mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、モリブデン粉末((株)高純度化学研究所製、粒子サイズ150μm以下)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の角筒(縦:652mm、横:652mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の角筒の外壁との間(幅は4mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の角筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ62mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、高さが4mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の角筒を除去した。混合粉末は、金属製カプセル容器内で4mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状であった離型剤が固形状となっており、この固形状の離型剤は金属製カプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。亀裂が存在しない縦560mm、横560mmおよび厚さ53mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちIGZO系焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが3.8mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤の密度(離型剤として用いたモリブデン粉末のカプセルHIP処理後の密度)は測長法で求めたところ、6.6g/cm3であった。焼結体の理論密度は8.2g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は80%であった。離型剤として用いたモリブデン粉末は十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、500mm×500mm×15mmの板状に加工した。IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例3と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する直方体の大型IGZO系焼結体(縦:560mm、横:560mm、厚さ:53mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく、安定に成膜できることがわかる。
(実施例22:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(外径:405mm、内径:395mm、容器内部の高さ:70mm)内の底面に、離型剤(a)を設置した。離型剤(a)としては、アルミナ板(Al23:98wt%、アズワン(株)製、直径395mm、厚さ5mm)を用いた。その後、金属製カプセル容器内に、離型剤(b)を嵌入した。離型剤(b)としては、セラミックチューブ(ニッカトー(株)製、KMチューブ Al23:63wt%、SiO2:37wt%、外径:395mm 内径:380mm、高さ:60mm、肉厚:7.5mm)を用いた。
次に、離型剤(b)の中空部内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ60mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、高さが5mmとなるように、離型剤(a)を入れた。混合粉末は、金属製カプセル容器内で上下面は5mmの厚さの離型剤(a)、側面は7.5mmの厚さの離型剤(b)で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前はセラミックチューブ、板であった離型剤(a),(b)が固形状となっており、この固形状の離型剤(a),(b)は金属製カプセル容器および焼結体から簡単にいずれからも剥離することが出来た。亀裂が存在しない直径326mmおよび厚さ51mmの円柱状のIGZO系焼結体を得た。
剥離した固形状の離型剤を測長したところ、金属製カプセル容器内の側面部の焼結後の離型剤(b)の厚み、すなわちIGZO系焼結体とカプセル容器内の側面との間の焼結後の厚みが7.1mmであることがわかった。剥離した固形状の離型剤を測長したところ、金属製カプセル容器内の上面部または下面部の焼結後の離型剤(a)の厚み、すなわちIGZO系焼結体とカプセル容器内の上面また下面との間の焼結後の厚みが4.8mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤(b)の密度(離型剤として用いたセラミックチューブのカプセルHIP処理後の密度)は測長法で求めたところ、2.8g/cm3であった。焼結体の理論密度は3.4g/cm3であることから、カプセルHIP処理後の離型剤(b)の相対密度は82%であった。離型剤(b)として用いたセラミックチューブは十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。上下面で用いた離型剤(a)(アルミナ板)のカプセルHIP処理後の相対密度は79.4%であり、十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO系焼結体を切断し、表面研削、外周研削および表面研磨に供して、直径300mmおよび厚さ15mmの板状に加工した。
一方、得られたIGZO系焼結体の相対密度は、100%であり、電子顕微鏡でIGZO系焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
IGZO系焼結体を、実施例1と同様にICP(高周波誘導結合プラズマ)分析装置(SEIKO(株)製「SPS5000」)にて分析すると、InとGaとZnとの原子数比はIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0であった。このIGZO系焼結体のInとGaとZnとの原子数比は、仕込み時の原子数比であるIn:Ga:Zn=1.0:1.0:1.0と同じであり、インジウムおよび亜鉛は揮散していないことがわかる。
<スパッタリングによる成膜>
得られたIGZO系焼結体を用いた以外は、実施例1と同様にしてスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを用い、実施例3と同様にして、スパッタリング法により、基板上に約500nmの膜厚を有するように透明半導体膜を形成した。約50分間のスパッタリングにおいて、異常放電が発生した回数は3回以内で、スパッタレートは10nm/分であり、この異常放電の発生に起因してスパッタリング装置の運転が一度も停止したことはなく、成膜安定性は良好であった。異常放電の回数は、マイクロアークモニターにより検出した。
このように、本発明の製造方法によれば、被焼結材料の金属原子数比(仕込み時の金属原子数比)と得られたIGZO系焼結体の金属原子数比とが同じであり、高密度を有する円柱状の大型IGZO系焼結体(直径:326mm,厚さ:51mm)を得ることができる。さらに、この大型IGZO系焼結体を加工して得られるターゲットを用いてスパッタリングを行っても、スパッタリング装置の運転が停止することなく、安定に成膜できることがわかる。
(比較例6)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、酸化チタン粉末(ルチル型:(株)高純度化学研究所製、1次粒子サイズ2μm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の角筒(縦:640mm、横:640mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の角筒の外壁との間(幅は10mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の角筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、高さが10mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れた。混合粉末は、金属製カプセル容器内で10mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外し、縦550mm、横550mmおよび厚さ43mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。しかし、得られた焼結体には、酸化チタン粉末がカプセル及びIGZO系焼結体と反応したため、多数の亀裂が存在しており、この焼結体を用いてスパッタリングすることはできなかった。
(比較例7:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)内に、厚さが0.2mmとなるまで離型剤を入れた。離型剤としては、モリブデン箔((株)高純度化学研究所製、厚さ0.2mm)を用いた。
次に、モリブデン箔をカプセル容器内部に入れた状態で、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ69.6mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、厚さが0.2mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れた。混合粉末は、金属製カプセル容器内で0.2mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外した、縦565mm、横565mmおよび厚さ59.8mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
しかし、得られた焼結体には、離型剤の厚みが薄いため、多数の亀裂が存在しており、この焼結体を用いてスパッタリングすることはできなかった。
(比較例8:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)内に、厚さが2mmとなるまで離型剤を入れた。離型剤としては、ステンレス箔(新日鉄住金マテリアルズ(株)製、厚さ0.2mm)を複数枚重ね合わせて用いた。
次に、ステンレス箔をカプセル容器内部に入れた状態で、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ66.0mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、厚さが2.0mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れた。混合粉末は、金属製カプセル容器内で2.0mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外した、縦562mm、横562mmおよび厚さ56.6mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
しかし、得られた焼結体には、ステンレス箔がカプセル及びIGZO系焼結体と反応したため、多数の亀裂が存在しており、この焼結体を用いてスパッタリングすることはできなかった。
(比較例9)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、ニッケル粉末((株)高純度化学研究所製、粒子サイズ150μm以下)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の角筒(縦:640mm、横:640mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の角筒の外壁との間(幅は10mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の角筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、高さが10mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れた。混合粉末は、金属製カプセル容器内で10mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外し、縦550mm、横550mmおよび厚さ43mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
しかし、得られた焼結体には、ニッケル粉末がカプセル容器及びIGZO系焼結体と反応したため、多数の亀裂が存在しており、この焼結体を用いてスパッタリングすることはできなかった。
(比較例10:IGZO系焼結体の製造)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)内に、厚さが2mmとなるまで離型剤を入れた。離型剤としては、ニッケル箔((株)高純度化学研究所製、厚さ0.2mm)を複数枚重ね合わせて用いた。
次に、ニッケル箔をカプセル容器内部に入れた状態で、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ66.0mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、厚さが2mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れた。混合粉末は、金属製カプセル容器内で2mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理後、金属製カプセル容器を取り外した、縦563mm、横563mmおよび厚さ56.7mmの直方体のIGZO系焼結体を得た。
しかし、得られた焼結体には、ニッケル箔がカプセル容器及びIGZO系焼結体と反応したため、多数の亀裂が存在しており、この焼結体を用いてスパッタリングすることはできなかった。
(比較例11)
タップ密度が1.95g/cm3である酸化インジウム粉末(In23、添川理化学(株)製、1次粒子サイズ:1μm)と、タップ密度が1.57g/cm3である酸化ガリウム粉末(Ga23、ヤマナカヒューテック(株)製、1次粒子サイズ:0.6μm)と、タップ密度が0.74g/cm3である酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、1次粒子サイズ:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、10分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)いすず製作所製の「KRB-24HH」)を用いて、真空置換した酸素雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で24時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。
次に、ステンレス(SUS304)製の金属製カプセル容器(内寸:縦660mm×横660mm×高さ70mm、壁厚:5mm)に、高さが10mmとなるまで離型剤を押し詰めて入れた。離型剤としては、炭化チタン粉末((株)高純度化学研究所製、粒径:2〜5μm)を用いた。その後、金属製カプセル容器に、紙製の角筒(縦:640mm、横:640mm)を立てて、金属製カプセル容器の内壁と紙製の角筒の外壁との間(幅は10mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の角筒内に、得られた混合粉末を体積変化がなくなるまで振動を付与しながら、高さ50mmとなるまで充填した。混合粉末のタップ密度を測定すると4.03g/cm3であり、焼結体の理論密度は6.38g/cm3であることから、充填率は63.2%である。
なお、焼結体の理論密度は、組成比In:Ga:Zn=1:1:1であるInGaZnO4(JCPDSカード番号:381104)という単一結晶の情報がJCPDSカードに記載されているため、JCPDSカードに記載されたその単一結晶の理論密度(6.38g/cm3)を採用した。
充填した混合粉末の上に、高さが10mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れた。混合粉末は、金属製カプセル容器内で10mmの厚さの離型剤で被覆された状態にある。
焼結温度を1200℃にした以外は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行った。
炭化チタンの還元作用により、IGZO焼結体の一部が還元され、カプセルHIP処理時にガスが発生し、カプセルが膨張し、うまくカプセルHIP処理をすることができなかった。
1 カプセル容器
2 離型剤
3 被焼結材料

Claims (16)

  1. 被焼結材料をカプセル容器に入れ、カプセル熱間等方加圧焼結処理を行う焼結体の製造方法であって、
    被焼結材料とカプセル容器との間に、離型剤として、被焼結材料に対して非反応性であり、焼結後の相対密度が85%以下であり、焼結後の厚さが1mm以上となる量の金属および/または金属化合物を介在させて、カプセル熱間等方加圧焼結処理を行うことを特徴とする、焼結体の製造方法。
  2. 前記離型剤は、金属または金属化合物であり、焼結後の厚さが2mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の焼結体の製造方法。
  3. 前記離型剤が、金属酸化物である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記離型剤がアルミナまたはアルミナと二酸化ケイ素を含む複合酸化物である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記離型剤がアルミナ粉末またはアルミナと二酸化ケイ素を含む複合酸化物粉末からなるコーティング膜である、請求項1〜4のいずれかに記載の焼結体の製造方法。
  6. 前記離型剤が、金属粉末である、請求項1または2に記載の製造方法。
  7. 前記カプセル容器が金属製である、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
  8. 前記被焼結材料が透明導電性材料である、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
  9. 前記透明導電性材料が酸化亜鉛系透明導電性材料である、請求項に記載の製造方法。
  10. 前記被焼結材料が透明半導体材料である、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
  11. 前記透明半導体材料が、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)および酸素(O)からなる焼結体を得るための材料である、請求項10に記載の製造方法。
  12. 前記カプセル熱間等方加圧焼結処理における焼結温度が900〜1400℃であり、300mmφあるいは300mm角以上の大型焼結体の亀裂の発生を抑制できる、請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 前記カプセル熱間等方加圧焼結処理により得られた焼結体が98%以上の相対密度を有する、請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
  14. 前記カプセル熱間等方加圧焼結処理が、不活性ガス雰囲気下で行われる、請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法。
  15. 前記不活性ガスがArまたはN2である、請求項14に記載の製造方法。
  16. 前記カプセル熱間等方加圧焼結処理が、50MPa以上の圧力条件下で行われる、請求項1〜15のいずれかに記載の製造方法。
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