JPWO2020217331A1 - 焼結体の製造システム及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献2では、上記の成形工程において、圧粉成形体の全体の平均相対密度を93%以上とすることが推奨されている。
現行品を焼結体に置き換えることを検討中の顧客が存在する場合には、焼結体の製造業者としては、顧客の現行品に倣った焼結体をなるべく早期に製造し、製造した焼結体を供試品として顧客に提示することが好ましい。
また、顧客に供試品として提示する焼結体を製造する場合の設備はコンパクト化(小型化)が望まれている。本開示は、かかる従来の問題点に鑑み、焼結体の製造設備をコンパクト化できるようにすることを目的とする。
本開示によれば、焼結体の納期を短縮することができる。
本開示によれば、焼結体の製造設備をコンパクト化することができる。
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態の製造システムは、金属粉末を含む原料粉末を一軸加圧することにより、全体又は一部の相対密度が93%以上の圧粉成形体を作製する成形装置と、前記圧粉成形体を機械加工することにより、加工成形体を作製する多関節ロボットを有するロボット加工装置と、前記加工成形体を高周波誘導加熱によって焼結することより、焼結体を作製する誘導加熱焼結炉と、を備える。
本実施形態の製造システムによれば、5軸マシニングセンタに比べて設置スペースが小さいロボット加工装置と、ベルト式連続焼結炉に比べて設置スペースが小さい誘導加熱焼結炉を備えるので、焼結体の製造設備をコンパクト化することができる。
本実施形態の製造システムによれば、取得部が、形状の基準となる対象品の3Dデータを取得するので、後述の通り、取得した3Dデータに基づく焼結体の検査及び加工プログラムの作成などを実行できるようになる。
本実施形態の製造システムによれば、検査装置が上記の検査を実行するので、対象品と遜色のない高精度の焼結体を製造することができる。
また、圧粉成形体に対して任意の角度で工具を接触させることができ、複雑な加工を迅速に実行できる。
本実施形態の製造システムによれば、3Dスキャナが対象品の3Dデータを非接触で取得するので、対象品の3Dデータが現存しない場合でも、対象品の3Dデータを迅速に取得することができる。
本実施形態の製造システムによれば、コンピュータ装置が上記の加工プログラムを作成するので、対象品と実質的に同じ形状に圧粉成形体を加工するように、ロボット加工装置を制御することができる。
本実施形態の製造システムによれば、検査装置が上記の検査を実行するので、対象品と遜色のない高精度の焼結体を製造することができる。
本実施形態の製造システムによれば、成形装置が、金属粉末を含む原料粉末を一軸加圧することにより上記の相対密度の圧粉成形体を作製するので、高精度な圧粉成形体が迅速に得られる。従って、焼結体の納期を短縮することができる。
この場合、誘導加熱焼結炉は、ベルト式連続焼結炉に比べて焼結体を短時間で作製できるので、焼結体の納期を短縮することができる。また、誘導加熱焼結炉は、ベルト式連続焼結炉に比べて設置スペースが小さいので、焼結体の製造設備をコンパクト化することができる。
従って、顧客の居所から遠い工場で焼結体を製造する場合に比べて、より短時間で焼結体を顧客に納品できるようになる。
本実施形態の製造システムによれば、3Dスキャナが対象品の3Dデータを非接触で取得するので、顧客又は第三者が対象品の3Dデータを保存していない場合でも、対象品の3Dデータを迅速に取得することができる。
圧粉成形体の相対密度を96%以上にすれば、相対密度がそれ未満の場合に比べて、焼結体の強度が高くなり、かつ、ロボット加工装置で加工する場合に圧粉成形体が壊れ難くなるからである。
従って、本実施形態の製造方法は、上述の(1)〜(14)のいずれかに記載の製造システムと同様の作用効果を奏する。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
図1は、焼結体Sの製造方法の概要を示す説明図である。
図1に示すように、顧客は、例えば自社製品(完成品)に組み込まれる、現行の部品である現行品Cを製造業者に提供する。製造業者は、現行品Cに倣って焼結体Sを製造し、製造した焼結体Sを供試品として顧客に提供する。
なお、図1に示す製造方法に使用される全部又は一部の装置の組み合わせを、焼結体Sの「製造システム」という。
ステップ1は、焼結体Sの形状の基準となる対象品(本実施形態では顧客の現行品C)の3次元CAD(Computer Aided Design)データを取得するステップである。以下、3次元CADデータを「3Dデータ」ともいう。
ステップ1では、例えば現行品Cの現物を3Dスキャナ1で読み取ることにより、3Dデータを取得する。この場合、3Dスキャナが3Dデータの取得部となる。
ステップ2は、ステップ1で取得した3Dデータから成形体加工プログラム(以下、「加工プログラム」ともいう。)を作成するステップである。
加工プログラムは、ステップ3で用いる成形体加工装置32の動作を制御するためのコンピュータプログラムである。加工プログラムの作成は、例えばCAD/CAM(Computer Aided Manufacturing)ソフトを格納したコンピュータ装置2により実行される。
ステップ3は、製造設備3により焼結体Sを製造するステップである。
ステップ3に用いる製造設備3には、成形体加工装置(以下、「加工装置」ともいう。)32が焼結前の圧粉成形体Mを加工する工程P2が含まれる。加工装置32は、ステップ2で作成された加工プログラムに従って、圧粉成形体Mに所定の加工を行う。
ステップ4は、ステップ3で製造された合格品の焼結体Sの3Dデータに基づいて、加工プログラムを修正するステップである。
加工プログラムの修正は、例えばCAD/CAT(Computer Aided Testing)ソフトを格納したコンピュータ装置4により実行される。加工プログラムの修正結果は、ステップ3の加工装置32にフィードバックされる。加工プログラムの修正結果は、加工プログラムの作成(ステップ2)を行うコンピュータ装置2にフィードバックしてもよい。
ステップ5は、ステップ4の修正プログラムにより製造された1又は複数の焼結体Sを供試品に決定し、供試品に決定した焼結体Sを顧客に提供するステップである。
供試品である焼結体Sを提供された顧客は、例えば自社の試験設備により、現行品Cと焼結体Sの性能比較が可能となる。供試品として提供された焼結体Sの性能が現行品Cの性能と同等以上ならば、顧客は、現行品Cを焼結体Sに置き換える可能性がある。
従って、現行品Cが鋳造体又は鍛造体である場合には、顧客は、現行品Cを焼結体Sに置き換えることにより、製造コストの抑制と調達期間の短縮を見込める。
焼結体Sは、自動車分野の製品に限らない。例えば、本実施形態の製造方法によれば、航空機のタービンブレード、医療分野で利用される人工骨及び人工関節、或いは、原子力分野で利用される放射線遮蔽部品などの焼結体Sを製造でき、応用範囲が広い。
図2は、ステップ1及びステップ2に使用される装置の一例を示す説明図である。
図2に示すように、ステップ1に使用される装置は、非接触式の3次元形状測定機(以下、「3Dスキャナ」という。)1よりなる。非接触式の3Dスキャナ1は、対象物に接触せずに表面の凹凸(表面の任意点までの距離)を感知し、感知結果を3次元CADデータに変換してコンピュータ装置2に取り込む装置である。
3Dスキャナ1は、立体図形を構成する点群データを、所定のファイル形式の3次元CADデータに変換し、変換した3次元CADデータを自機に接続されたコンピュータ装置2に送信する。
パターン光タイプは、対象物にパターン光を照射しつつスキャンし、縞模様のパターンのラインを識別することで、自機から対象物までの距離を計測する。
図2に例示する3Dスキャナ1は、据え置きタイプであるが、3Dスキャナ1は、ユーザが手に持って測定できるハンディタイプのスキャナであってもよい。
現行品Cの3次元CADデータの取得先は、顧客以外の第三者でもよい。第三者としては、例えば、顧客から製造を委託された現行品Cの製造業者、或いは、完成品を解体して現行品Cの3Dデータの読み込みを専門的に行う業者などが考えられる。
図2に示すように、ステップ2に使用される装置は、コンピュータ装置2よりなる。コンピュータ装置2は、例えばデスクトップ型のパソコン(PC)よりなる。コンピュータ装置2のタイプは特に限定されない。コンピュータ装置2のタイプは、例えばノート型であってもよいしタブレット型であってもよい。
コンピュータ装置2は、CPUがコンピュータプログラムを揮発性メモリに読み出して実行することにより、所定の制御装置として機能する。
CAD/CAMソフトとしては、例えば、「MasterCam」又は「Robotmater」(いずれも登録商標)などのソフトウェアを採用し得る。これらのソフトウェアは、成形体加工装置32の種別(例えば、多関節ロボット又は5軸マシニングセンタなど)に応じた加工プログラムを生成可能である。また、これらのソフトウェアは、特開2009−226562号公報に記載の加工プログラムを生成可能であってもよい。
コンピュータ装置2は、現行品Cの3次元CADデータと、ユーザが操作入力した設定情報とに基づいて、例えばNC(Numerical Control)プログラムよりなる成形体加工プログラムを作成する。コンピュータ装置2は、CAD/CAMソフトにより作成した加工プログラムを、ステップ3に用いられる成形体加工装置32に送信する。
従って、コンピュータ装置2が作成する加工プログラムは、所定形状の圧粉成形体Mに対する切削加工を加工装置32に行わせるプログラムよりなる。被加工物である圧粉成形体Mの3次元CADデータは、コンピュータ装置2に予め登録されている。
成形体加工装置32が、工具の交換が可能な多関節ロボット201,202(図5参照)を含む場合には、加工プログラムは、作業の種別ごとに異なる工具の使用を多関節ロボット201,202に指令するコードを含むことが好ましい。
例えば、圧粉成形体Mの表面に比較的細かい切削が必要な場合には、使用工具をエンドミルとすればよい。圧粉成形体Mに溝部や窓部などを切削する場合には、使用工具をサイドカッターとすればよい。
穴あけに使用するドリルは、先端部に円弧状の切れ刃を有する先丸ドリル(例えば、特開2016−113657号公報参照)、或いは、ローソク型ドリル(例えば、特開2016−113658号公報参照)であることが好ましい。これらのドリルを採用すれば、圧粉成形体Mの穴出口にコバ欠けが発生するのを抑制することができる。
圧粉成形体Mを切削加工する場合の使用工具の好ましい回転数は、例えば500〜50000rpmである。より好ましくは、1000〜15000rpmである。
圧粉成形体Mを切削加工する場合の使用工具の好ましい送り速度は、例えば20〜6000mm/minである。より好ましくは、200〜2000mm/minである。
圧粉成形体Mの切り込み深さ及び切り込み位置は、ステップ2においてユーザが操作入力した圧粉成形体Mの3次元CADデータと、ステップ1において取得された現行品Cの3次元CADデータとに基づいて算出される。
図3は、ステップ3に使用される製造設備3の一例を示す全体構成図である。
図3に示すように、本実施形態の製造設備3は、工程P1から工程P5をそれぞれ個別に実行する装置31〜35が順番に設置された設備である。製造設備3は、焼結体Sの製造業者の工場内に設置されている。
ロボットアーム37は、コンベア36から各装置32〜35へのワークの搬入と、各装置31〜35からコンベア36へのワークの搬出とを、1個単位で実行する。
P1)成形工程:金型を用いて原料粉末を一軸加圧することで、全体又は一部の相対密度が93%以上の圧粉成形体Mを作製する。
P2)加工工程:圧粉成形体Mを機械加工して加工成形体Pを作製する。
P3)焼結工程:加工成形体Pを焼結して焼結体Sを得る。
P4)仕上げ工程:焼結体Sの実寸法を設計寸法に近づける仕上げ加工を行う。
P5)検査工程:焼結体Sの寸法精度及び/又は欠陥の有無などの検査を行う。
以下、工程P1〜P5の好ましい具体例を説明する。
(原料粉末の例1)
成形工程P1の原材料となる金属粉末は、焼結体Sを構成する主たる材料である。金属粉末としては、例えば、鉄又は鉄を主成分とする鉄合金の粉末が挙げられる。金属粉末には、代表的には、純鉄粉や鉄合金粉を用いることが挙げられる。
「鉄を主成分とする鉄合金」とは、構成成分として、鉄元素を50質量%超、好ましくは80質量%以上、更に90質量%以上含有することを意味する。鉄合金としては、Cu,Ni,Sn,Cr,Mo,Mn及びCから選択される少なくとも1種の合金化元素を含有するものが挙げられる。
Cの含有量は、0.2質量%以上2.0質量%以下、更に0.4質量%以上1.0質量以下とすることが挙げられる。また、金属粉末に鉄粉を用い、これに上記の合金化元素の粉末(合金化粉末)を添加してもよい。
原料粉末における金属粉末(合金化粉末を含む。)の含有量は、例えば、90質量%以上、更に95質量%以上とすることが挙げられる。金属粉末には、例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、カルボニル法、還元法などにより作製したものを利用できる。
焼結工程P3が高周波誘導加熱により行われる場合、Fe粉末又はFe合金粉末と、C粉末とを含む原料粉末とすることが好ましい。この原料粉末は、Fe粉末又はFe合金粉末を主体とする。以下、Fe粉末とFe合金粉末を纏めてFe系粉末ということがある。
Fe粉末は、純鉄粉である。Fe合金粉末は、鉄を主成分とし、例えばNi、及びMoの中から選択される1種以上の添加元素を含有するFe合金粒子を複数有する。Fe合金は、不可避的不純物を含むことを許容する。
具体的なFe合金としては、Fe−Ni−Mo系合金が挙げられる。Fe系粉末は、例えば、水アトマイズ粉、ガスアトマイズ粉、カルボニル粉、還元粉を使用できる。原料粉末におけるFe系粉末の含有量は、原料粉末を100質量%とするとき、例えば、90質量%以上が挙げられ、更に95質量%以上が挙げられる。Fe合金におけるFeの含有量は、Fe合金を100質量%とするとき、90質量%以上、更に95質量%以上が挙げられる。Fe合金における添加元素の含有量は、合計で0質量%超10.0質量%以下、更に0.1質量%以上5.0質量%以下が挙げられる。
「平均粒径」は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定した体積粒度分布における累積体積が50%となる粒径(D50)のことである。この点は、後述のC粉末及びCu粉末の平均粒径でも同様である。
C粉末は、昇温時にFe−Cの液相となり、焼結体S中の空孔の角を丸くして焼結体Sの強度(圧環強度)を向上させる。原料粉末におけるC粉末の含有量は、原料粉末を100質量%とするとき、0.2質量%以上1.2質量%以下が挙げられる。
C粉末の含有量を0.2質量%以上とすることで、Fe−Cの液相が十分出現して、空孔の角部を効果的に丸くし易くて強度を向上し易い。C粉末の含有量を1.2質量%以下とすることで、Fe−Cの液相が過度に生成されることを抑制し易く、寸法精度の高い焼結体Sを製造し易い。
C粉末の平均粒径は、例えば、1μm以上30μm以下が挙げられ、更に10μm以上25μm以下が挙げられる。Fe−Cの液相を生成させるという観点ではC粉末の平均粒径は大きい方が好ましいが、大きすぎると液相の出現する時間が長くなることで空孔が大きくなりすぎて欠陥となる。なお、原料粉末が純鉄粉を含むがCを含まない場合、焼結体Sの強度は、ベルト式連続焼結炉を用いて製造された焼結体Sよりも低くなる。
原料粉末は、更にCu粉末を含むことが好ましい。Cu粉末は、後述の焼結工程の昇温時にFe−Cの液相化に寄与する。その上、CuはFe中に固溶して強度を高める働きがあり、Cu粉末を含むことで高強度な焼結体Sを製造できる。
原料粉末におけるCu粉末の含有量は、原料粉末を100質量%とするとき、0.1質量%以上3.0質量%以下である。Cu粉末の含有量を0.1質量%以上とすることで、昇温(焼結)時にCuがFe中に拡散してCのFe中への拡散を抑制し易く、Fe−Cの液相を生成させ易い。
Cu粉末の含有量は、更に1.5質量%以上2.5質量%以下が挙げられる。Cu粉末の平均粒径は、C粉末と同様、Fe粉末の平均粒径よりも小さくすることが好ましい。そうすれば、Cu粒子をFe粒子間に均一に分散させ易いため、合金化を進行し易い。Cu粉末の平均粒径は、例えば、1μm以上30μm以下が挙げられ、更に10μm以上25μm以下が挙げられる。
金型を用いたプレス成形では、金型への金属粉末の焼き付きを防止するために、金属粉末と内部潤滑剤とを混合した原料粉末を用いることが一般的である。しかし、本実施形態では、原料粉末に内部潤滑剤を含ませないか、含ませても原料粉末全体の0.2質量%以下とすることが好ましい。原料粉末における金属粉末の割合が低下することを抑制し、相対密度が93%以上の圧粉成形体Mを得るためである。
ただし、相対密度が93%以上の圧粉成形体を作製できる範囲で、微量の内部潤滑剤を原料粉末に含ませることは許容される。内部潤滑剤として、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸を利用することができる。
後の加工工程P2において、圧粉成形体Mに割れや欠けが生じることを抑制するため、原料粉末に有機バインダーを添加しても構わない。
有機バインダーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、パラフィン、各種ワックスなどが挙げられる。有機バインダーは、必要に応じて添加すればよく、添加しなくてもよい。有機バインダーを添加する場合、成形工程P1で相対密度が93%以上の圧粉成形体Mを作製できる程度の添加量とする必要がある。
成形工程P1では、金型を用いて原料粉末を一軸加圧することで、圧粉成形体Mを作製する。一軸加圧を行う金型は、ダイと、その上下の開口部に嵌め込まれる一対のパンチと、を備える金型である。ダイのキャビティに充填された原料粉末を上パンチと下パンチとで圧縮することにより、圧粉成形体Mが作製される。
パンチ面に凸部や凹部を備えるパンチを利用してもよい。この場合、単純形状の圧粉成形体Mに、凸部や凹部に対応した凹みや出っ張りが形成される。このような凹みや出っ張りを有する圧粉成形体も、単純形状の圧粉成形体Mに含まれる。
一軸加圧において、金型への金属粉末の焼き付きを防止するために、金型の内周面(ダイの内周面やパンチの押圧面)に外部潤滑剤を塗布することが好ましい。
外部潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸などを利用することができる。その他、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどの脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドを外部潤滑剤として利用することもできる。
一軸加圧によって得られる圧粉成形体Mの全体の平均相対密度は、93%以上であることが好ましい。平均相対密度は、好ましくは94%以上又は95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは99.8%以上である。
平均相対密度が93%以上の高密度になる部分は、圧粉成形体Mの全体であってもよいし一部であってもよい。もっとも、後述の加工工程P2において、多関節ロボット202(図5参照)で圧粉成形体Mを掴む場合は、全体の平均相対密度が93%以上とすることが好ましい。全体が高密度であれば、どこを掴んでも欠けが生じ難いからである。
焼結体Sの全体の平均相対密度は、焼結前の圧粉成形体Mの全体の平均相対密度にほぼ等しい。焼結体Sの平均相対密度は、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上であり、当該平均相対密度が高くなるほど焼結体Sの強度が高くなる。
より具体的には、まず各断面において複数の観察視野の画像、例えば各断面において500μm×600μm=300000μm2の面積を有する観察視野の画像を10個以上取得する。各観察視野の画像は、断面における極力均等に分散した位置から取得することが好ましい。
そして、各観察視野から求めた相対密度を平均し、圧粉成形体の全体の平均相対密度を算出する。ここで、上記一端側近傍(他端側近傍)とは、例えば圧粉成形体Mの表面から3mm以内の位置とすることが挙げられる。
加工工程P2では、一軸加圧によって作製された圧粉成形体Mに対して、焼結を行うことなく機械加工を行う。
機械加工は、代表的には切削加工である。この場合、切削工具を用いて所定形状の圧粉成形体Mが加工される。切削加工としては、例えば、転削加工、旋削加工などが挙げられ、転削加工には、穴あけ加工が含まれる。切削工具には、穴あけ加工の場合、ドリルやリーマ、転削加工の場合、フライスやエンドミル、旋削加工の場合、バイトや刃先交換型切削チップなどを用いることが挙げられる。その他、ホブ、ブローチ、ピニオンカッタなどを用いて切削加工を行なっても構わない。
このため、例えば鋳造体や仮焼成体などを切削する場合に比べて、切削工具の摩擦が非常に少なくなり、工具の寿命を大幅に短縮できる。また、機械加工によって生じる加工屑は、圧粉成形体Mを構成する個々の金属粒子から分離された金属粉末で構成される。粉末状の加工屑は、溶解することなく再利用することができる。
焼結工程P3では、圧粉成形体Mを機械加工して得られた加工成形体Pを焼結させる。加工成形体Pを焼結することにより、金属粉末の粒子同士が接触して結合された焼結体Sが得られる。焼結工程P3では、金属粉末の組成に応じた所定の条件を適用できる。
金属粉末が鉄粉又は鉄合金粉の場合、焼結温度は、例えば、1100℃以上1400℃以下、更に1200℃以上1300℃以下とすることが挙げられる。焼結時間は、例えば、15分以上150分以下、更に20分以上60分以下とすることが挙げられる。
このため、焼結後の実寸法と設計寸法との差に基づいて、加工工程P2の加工度合いを調整することで、焼結体Sの実寸法を設計寸法に近づけることができる。その結果、次の仕上げ工程P4の手間と時間を少なくできる。機械加工を多関節ロボット201,202やマシニングセンタで行う場合、加工度合いの調整は容易に行なえる。
仕上げ工程P4では、焼結体Sの表面を研磨するなどして、焼結体Sの表面粗さを小さくするとともに、焼結体Sの寸法を設計寸法(現行品Cの寸法)に合わせる。
研磨仕上げは、図示しない研磨装置により実行される。研磨装置には、ステップ1で取得した現行品Cの3次元CADデータが入力される。研磨装置は、焼結体Sの設計寸法を入力データから算出し、算出した設計寸法となるように焼結体Sの各部を研磨する。例えば、焼結体Sがギアよりなる場合には、ギアの歯面の研磨などが行われる。
検査工程P5では、焼結体Sが設計寸法(現行品Cの寸法)に適合するか、及び、ひび割れなどの欠陥がないかの少なくとも1つを検査する。
これらの検査は、非接触式の3Dスキャナ(例えば、レーザ光タイプ又はパターン光タイプの3Dスキャナ)や、非接触式の非破壊検査装置で行われることが好ましい。これらの検査装置を使用すれば、焼結体Sを自動的にかつ1個ずつ検査することができる。
図4は、成形工程P1に使用される成形装置31の一例を示す概略構成図である。
図4に示すように、成形工程P1に使用される成形装置31は、例えば、油圧サーボ方式で駆動される一軸加圧のプレス成形装置よりなる。
ベースプレート101の上方には、油圧シリンダ機構105によって上下方向位置が制御されるパンチセット106が設けられ、上部プレート104の下方には、油圧シリンダ機構107によって上下方向位置が制御されるパンチセット108が設けられている。
従って、上部シリンダ109が伸張すると、上部プレート104が原料粉末116の準備位置まで下降する。その後、上下の油圧シリンダ機構105,107を駆動することによりパンチセット106とパンチセット108が接合し、原料粉末116が加圧される。
従って、プレス成形装置31は、ベースプレート101の外側にはみ出る部材が存在しないスリムな構造であり、かつピットなしで設置できる。このため、プレス成形装置31は、設置面積及び設置コストが少ないという利点がある。
上側のパンチセット108は、上パンチ115を備える。上パンチ115は、コアロッド112の通過孔を有する円筒状である。
プレスに際しては、外パンチ113と下パンチ114を一緒に上昇させつつ、上パンチ115を下降させる。この際、外パンチ113と内パンチ114が同時に同じ位置で上死点に達するように上昇速度を制御する。
上記の成形方法は、外歯ギアやスプロケットのように、外周縁に摺動箇所が連続する焼結体Sの製造に適している。例えば、外歯ギアの場合、圧粉成形体Mの外周側を高密度領域M1とすることにより、高剛性で耐摩耗性に優れる外歯が得られる。
上記の成形方法は、内歯ギアのように、内周縁に摺動箇所が連続する焼結体Sの製造に適している。例えば、内歯ギアの場合、圧粉成形体Mの内周側を高密度領域M1とすることにより、高剛性で耐摩耗性に優れる内歯が得られる。
なお、外パンチ113と内パンチ114を同じ深さ位置にセットして原料粉末116をプレス成形すれば、プレス成形装置31を用いて、全体の平均相対密度が93%以上である圧粉成形体Mを成形することもできる。
図5は、加工工程P2に使用される加工装置32の一例を示す概略構成図である。
図5に示すように、加工工程P2に使用される加工装置32は、例えば、多関節ロボット201,202を用いて圧粉成形体Mを加工するロボット加工装置よりなる。
かかるロボット加工装置32は、例えば5軸マシニングセンタに比べて設置スペースが小さいので、焼結体Sの製造設備3のコンパクト化に寄与する。
2つの多関節ロボット201,202のうち、一方の第1ロボット201は、ドリルなどの工具204を保持するロボットである。他方の第2ロボット202は、圧粉成形体Mを保持するロボットである。
第2ロボット202は、アーム先端部に圧粉成形体Mの把持部206を有する。第2ロボット202は、コンベア36に搬送中の圧粉成形体Mを把持部206で掴むことができる。第2ロボット202は、加工成形体Pをコンベア36に戻すこともできる。
第1通信部207は、イーサネット(登録商標)などの所定の通信規格に則って外部装置と通信する通信インタフェースよりなる。第2通信部208は、第1及び第2アーム201,202と通信可能に接続された通信インタフェースよりなる。
第1通信部207は、ステップ2のコンピュータ装置2から加工プログラムを受信すると、受信したプログラムを制御部209に提供する。制御部209は、受信した加工プログラムから動作コード(例えばGコード又はMコードなど)を抽出する。
これにより、多関節ロボット201,202は、制御装置203からの指令に応じて圧粉成形体Mに所定の加工を行う。
もっとも、圧粉成形体Mについては、加工時には同じ位置に保持するなど、高い自由度の位置及び姿勢の調整が不要である場合には、自由度が6未満の第2ロボット202を採用してもよい。
また、少なくとも第1ロボット201が6自由度であるため、圧粉成形体Mに対して任意の角度で工具204を接触させることができ、複雑な加工を迅速に実行できる。
図6は、焼結工程P3に使用される焼結装置33の一例を示す概略構成図である。
図6に示すように、焼結工程P3に使用される焼結装置33は、例えば、加工済みの圧粉成形体M(加工成形体P)を高周波誘導方式により加熱する誘導加熱焼結炉よりなる。
高周波誘導方式による加熱は、対象物を高速で昇温できるため、加工成形体Pを短時間で所定温度にまで高められる。このため、焼結体Sを短時間で製造し易い。
加熱容器302の外周面には誘導コイル305が巻き付けられ、加熱容器302の内部と冷却容器303の内部は、上下方向で連通している。昇降台304は、加熱容器302の内部及び冷却容器303の内部いずれかの高さに加工成形体Pを昇降可能である。
加工成形体Pは、ロボットアーム37により昇降台304に載せられる。加工成形体Pを加熱する場合は、昇降台304は、加工成形体Pを加熱容器302の内部に位置決めする。焼結後の加工成形体P(焼結体S)を冷却する場合は、昇降台304は、焼結後の加工成形体Pを冷却容器303の内部に位置決めする。
誘導加熱焼結炉33は、昇温速度が速いので、例えばベルト式連続焼結炉に比べて、狭小な設置スペースで足りるという利点もある。誘導加熱焼結炉33の場合、例えば比較的小型のチャンバ301(例えば1.5m×1.5m)を採用できる。
焼結工程P3では、昇温過程、焼結過程、冷却過程を順に経る。以下、誘導加熱焼結炉33を用いる場合に好ましい温度経過について説明する。
昇温過程では、以下の条件(I)から条件(III)の全てを満たすように加工成形体Pの温度を制御する。A1点は、738℃程度であり、A3点は、910℃程度である。
(I)Fe−C系状態図のA1点以上加工成形体Pの焼結温度未満の温度域で、温度を保持することなく昇温する。
(II)Fe−C系状態図のA1点からA3点までの温度域での昇温速度を、12℃/秒以上とする。
(III)Fe−C系状態図のA3点から加工成形体Pの焼結温度までの昇温速度を、4℃/秒以上とする。
すなわち、条件(i)から条件(iii)を満たせば、条件(I)から条件(III)を満たすように温度制御していることになる。
(ii)Fe−C系状態図のA1点からA3点までに対応する雰囲気温度域での昇温速度を、12℃/秒以上とする。
(iii)Fe−C系状態図のA3点から加工成形体Pの焼結温度までに対応する雰囲気温度域での昇温速度を、4℃/秒以上とする。
加熱容器302内の雰囲気は、誘導加熱された加工成形体Pの熱で温められるため、雰囲気温度は、誘導加熱された加工成形体P自体の温度に比較して少し低い温度となることが多い。例えば、A1点に対応する雰囲気温度とは、加工成形体Pの温度がA1点となったときの雰囲気の温度であり、A1点以下の温度となることが多い。A3点に対応する雰囲気温度や加工成形体Pの焼結温度に対応する雰囲気温度も同様である。
条件(I)の温度域ではCがFe中へ拡散し易いが、この温度域で温度を保持せず、昇温速度を条件(II)及び(III)のような高速とすることで、CのFe中への拡散が抑制される。
Cリッチ相がFeの表面に残存すると、焼結温度においてFe−Cの液相になる。Fe−C系状態図から明らかなように、Cが約0.2質量%以上であれば、1153℃以上でFe−C系材料は液相になる。このため、加工成形体Pを1153℃以上の焼結温度とすれば、Cリッチ相が液相になる。
出力や周波数の設定は、条件(II)の温度域から条件(III)の温度域に亘って一定としてもよいし、条件(II)の温度域から条件(III)の温度域に移行する際に変えてもよい。
ただし、出力や周波数を一定とすれば、条件(III)の昇温速度は、条件(II)の昇温速度よりも遅くなる。出力や周波数の設定を条件(II)の温度域から条件(III)の温度域に移行する際に変えれば、条件(III)の昇温速度を更に速められ、延いては条件(II)の昇温速度と同等程度とすることもできる。
条件(III)の昇温速度は、上記条件(II)と同様、速いほど好ましく、例えば、5℃/秒以上が好ましく、更に10℃/秒以上が好ましい。条件(III)の昇温速度の上限は、例えば、50℃/秒以下が挙げられ、更に15℃/秒以下が好ましい。
(IV)加工成形体Pが410℃以上Fe−C系状態図のA1点未満となる温度域で、温度を保持せず、この温度域での昇温速度を12℃/秒以上とする。
(V)加工成形体Pが410℃以上Fe−C系状態図のA1点未満となる温度域の温度を、30秒以上90秒以下保持する。
すなわち、条件(iv)及び条件(v)のいずれか一方を満たせば、条件(IV)及び条件(V)のいずれか一方を満たすように温度制御している。
(iv)400℃以上700℃未満の雰囲気温度を保持せず、この雰囲気温度域での昇温速度を12℃/秒以上とする。
(v)400℃以上700℃未満の雰囲気温度を30秒以上90秒以下保持する。
この場合、誘導加熱焼結炉33の電源の出力や周波数の設定を昇温開始時から焼結時まで常時一定とし、昇温開始時の雰囲気温度から焼結時の雰囲気温度までの雰囲気温度を保持しないことが挙げられる。焼結時の雰囲気温度未満の雰囲気温度を保持しないため、短時間で焼結体Sを製造できる。条件(IV)、条件(iv)の雰囲気温度での昇温速度は、更に15℃/秒以上が好ましく、特に20℃/秒以上が好ましい。
また、条件(V)、条件(v)を満たしても、高強度な焼結体Sが得られる。条件(V)の温度域は、更に735℃以下が好ましく、特に700℃以下が好ましい。条件(v)の雰囲気温度は、更に600℃以下が好ましく、特に500℃以下が好ましい。
条件(V)、条件(v)の雰囲気温度を保持する保持時間は、更に45秒以上75秒以下が好ましい。条件(V)の温度、条件(v)の雰囲気温度を保持した後の昇温速度は、条件(II)、条件(ii)及び条件(III)、条件(iii)の昇温速度とする。
加工成形体Pの焼結時の雰囲気温度(焼結温度)での保持時間は、その雰囲気温度(焼結温度)や成形体サイズにもよるが、例えば、30秒以上90秒以下が好ましい。
保持時間を30秒以上とすれば、加工成形体Pを十分に加熱できて、高強度な焼結体Sを製造し易い。保持時間を90秒以下とすれば、保持時間が短いため、短時間で焼結体Sを製造できる。保持時間は、更に90秒未満が好ましく、特に60秒以下が好ましい。なお、サイズの大きな加工成形体Pなどの場合、保持時間を90秒以上とすることが効果的な場合もある。
焼結温度は、例えば、1250℃以下が好ましい。この場合、温度が高すぎず液相の過度な生成を抑制でき、寸法精度の高い焼結体Sを製造し易い。焼結温度は、更に1153℃以上1200℃以下が好ましく、特に1155℃以上1185℃以下が好ましい。
同様に、加工成形体Pの焼結温度が1250℃以下を満たせば、加工成形体Pの焼結時の雰囲気温度は、1250℃未満を満たす。焼結時の雰囲気温度は、更に1135℃以上1185℃以下が好ましく、特に1135℃以上1185℃未満が好ましい。
焼結工程P3の冷却過程における降温速度は、速くすることが好ましい。降温速度を速めることで、ベイナイト組織を形成し易く、更にはマルテンサイト組織を形成し易いため、焼結体Sの強度を高め易い。
降温速度は、1℃/秒以上が好ましい。それにより、素速く冷却できる。降温速度は、更に2℃/秒以上が好ましく、特に5℃/秒以上が好ましい。降温速度は、例えば、200℃/秒以下が挙げられ、更に100℃/秒以下が挙げられ、特に50℃/秒以下が挙げられる。
冷却方法は、冷却ガスを焼結体Sに吹き付けることが挙げられる。冷却ガスの種類は、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスが挙げられる。急速降温により後工程の熱処理工程を省略できる。
図7は、検査工程P5に使用される検査装置35の一例を示す概略構成図である。
図7に示すように、検査工程P5に使用される検査装置35は、第1及び第2センサ装置501,502と、各センサ装置501,502と通信可能に接続されたコンピュータ装置503とを備える。
コンピュータ装置503は、例えばデスクトップ型のパソコン(PC)よりなる。コンピュータ装置503のタイプは特に限定されない。コンピュータ装置503のタイプは、例えばノート型であってもよいしタブレット型であってもよい。
コンピュータ装置503は、CPUがコンピュータプログラムを揮発性メモリに読み出して実行することにより、所定の制御装置として機能する。
第1センサ装置501は、仕上げ工程P4を経た焼結体Sを1つずつスキャンして3次元CADデータを生成し、生成したデータをコンピュータ装置503に送信する。
コンピュータ装置503は、現行品Cの3次元CADデータを記憶している。このデータは、例えばステップ2のコンピュータ装置2から受信したデータ、或いは、USBメモリなどの記録媒体を介してコンピュータ装置503に記憶させたデータである。
また、コンピュータ装置503は、合格と判定された焼結体Sの3次元CADデータを、ステップ4に使用されるコンピュータ装置4に送信する。
判定処理は、例えば、画像データを格子状に分割した部分画像に、機械学習によって得られた分類モデルに含まれる傷などの対象事象に含まれるか否かによって行うことができる(特開2018−81629号公報参照)。
本実施形態の製造設備3によれば、単純形状でかつ高密度の圧粉成形体Mを一軸加圧により作製し、圧粉成形体Mを加工自由度の高いロボット加工装置32で加工することにより加工成形体Pを作製し、加工成形体Pを焼結して焼結体Sを作製する。
従って、製作に数ヶ月を要する複雑な形状の金型を使用しなくても、高精度の焼結体Sを作製できる。従って、焼結体Sの納期を短縮することができる。
本実施形態の製造システムによれば、5軸マシニングセンタに比べて設置スペースが小さいロボット加工装置32と、ベルト式連続焼結炉に比べて設置スペースが小さい誘導加熱焼結炉33を採用するので、製造設備3をコンパクト化できるという利点もある。
図8は、ステップ4に使用される装置の一例を示す説明図である。
図8に示すように、ステップ4に使用される装置は、コンピュータ装置4よりなる。コンピュータ装置2は、例えばデスクトップ型のパソコン(PC)よりなる。コンピュータ装置2のタイプは特に限定されない。コンピュータ装置2のタイプは、例えばノート型であってもよいしタブレット型であってもよい。
コンピュータ装置4は、CPUがコンピュータプログラムを揮発性メモリに読み出して実行することにより、所定の制御装置として機能する。
コンピュータ装置4は、現行品Cの3次元CADデータを記憶している。このデータは、例えばステップ2のコンピュータ装置2から受信したデータ、検査工程P5のコンピュータ装置503から受信したデータ、或いは、USBメモリなどの記録媒体を介してコンピュータ装置4に記憶させたデータである。
コンピュータ装置4は、削り過ぎ又は削り不足の箇所を検出した場合には、加工プログラムの修正プログラム(例えばNCプログラム)を生成する。修正プログラムには、例えば、削り過ぎの箇所の切り込み深さを深くする動作コード、或いは、削り不足の箇所の切り込み深さを深くする動作コードが含まれる。
なお、コンピュータ装置4は、ステップ2のコンピュータ装置2(図2参照)に修正プログラムを送信してもよい。この場合、ステップ2のコンピュータ装置2は、受信した修正プログラムを加工装置32に転送すればよい。
ステップ3の成形工程P1に用いる成形装置31は、全体の平均相対密度が93%未満である圧粉成形体Mを成形するプレス成形装置であってもよい。
ステップ3の加工工程P2に用いる加工装置32は、第1ロボット201のみを備えるロボット加工装置であってもよい。この場合、第1ロボット201は、固定台にセットされた圧粉成形体Mに所定の加工を行う。
ステップ3の加工工程P2に用いる加工装置32は、多関節ロボット201,202の代わりに、5軸マシニングセンタを採用する加工装置であってもよい。
ステップ3の検査工程P5は、検査装置35を用いて全自動で行う場合に限定されるものではなく、全部又は一部又の検査作業を人間が行うことにしてもよい。
図9は、移動可能な製造システムの一例を示す概略構成図である。
図9に示すように、第2の変形例に係る製造システムは、道路を通行可能な移動装置601と、移動装置601の収納庫602に収納される所定の収納要素とを備える。所定の収納要素とは、焼結体Sの製造に必要となる構成要素のことである。
図9に示す製造システムでは、所定の収納要素には、ステップ1に使用される3Dスキャナ1、ステップ2に使用されるコンピュータ装置2、ステップ3の加工工程P2に使用されるロボット加工装置32、及び、ステップ3の焼結工程P3に使用される誘導加熱焼結炉33が含まれる。
手順1:移動装置601を顧客の居所の近隣地点まで乗り付けて、収納庫602に搭載された所定の収納要素を当該近隣地点まで運搬する。
手順2:顧客から現行品Cを貸与して貰う。
手順3:ステップ1〜3を実行して現行品Cに倣った焼結体Sを現地で製造する。
手順4:製造した焼結体S(供試品)を顧客に提供する。
第2の変形例において、コンピュータ装置2を所定の収納要素から除外してもよい。この場合、車外のコンピュータ装置2が、現行品Cの3Dデータから成形体加工プログラムを生成し、生成したプログラムを車内のロボット加工装置32に送信すればよい。
第2の変形例において、ステップ3の仕上げ工程P4に用いる装置(研磨装置など)を、所定の収納要素に含めてもよい。この場合、焼結体Sの仕上げについても現地で行うことができる。
第2の変形例において、ステップ4に用いる装置(コンピュータ装置4)を、所定の収納要素に含めてもよい。この場合、ステップ4の加工プログラムの修正についても現地で行うことができる。
上述の実施形態(変形例を含む。)は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、上述の実施形態(変形例を含む。)において、焼結品Sの形状の基準となる対象品は、現存する現行品Cに限定されるものではなく、未だ製品化されていない企画中の品物であってもよい。
2 コンピュータ装置(取得部)
3 製造設備(製造ライン)
4 コンピュータ装置
31 成形装置(成形装置)
32 加工装置(成形体加工装置、ロボット加工装置)
33 焼結装置(誘導加熱焼結炉)
35 検査装置
36 コンベア
37 ロボットアーム
101 ベースプレート
102 支柱
103 天井フレーム
104 上部プレート
105 油圧シリンダ機構(下側)
106 パンチセット(下側)
107 油圧シリンダ機構(上側)
108 パンチセット(上側)
109 上部シリンダ
110 リンク機構
111 ダイ
112 コアロッド
113 外パンチ
114 内パンチ
114 下パンチ
115 上パンチ
116 原料粉末
201 多関節ロボット(第1ロボット)
201 多関節ロボット(第2ロボット)
203 制御装置
204 工具
205 把持部
206 把持部
207 第1通信部
208 第2通信部
209 制御部
210 記憶部
301 チャンバ
302 加熱容器
303 冷却容器
304 昇降台
305 誘導コイル
501 第1センサ装置(3Dスキャナ)
502 第2センサ装置(デジタルカメラ)
503 コンピュータ装置
601 移動装置
602 収納庫
C 現行品(対象品)
M 圧粉成型体
P 加工成形体
S 焼結体
Claims (15)
- 金属粉末を含む原料粉末を一軸加圧することにより、全体又は一部の相対密度が93%以上の圧粉成形体を作製する成形装置と、
前記圧粉成形体を機械加工することにより、加工成形体を作製する多関節ロボットを有するロボット加工装置と、
前記加工成形体を高周波誘導加熱によって焼結することより、焼結体を作製する誘導加熱焼結炉と、を備える焼結体の製造システム。 - 形状の基準となる対象品の3Dデータを取得する取得部を、更に備える請求項1に記載の焼結体の製造システム。
- 前記対象品の3Dデータに基づいて、前記焼結体の寸法精度及び欠陥の有無のうちの少なくとも1つの検査を実行する検査装置を、更に備える請求項2に記載の焼結体の製造システム。
- 前記対象品の3Dデータに基づいて、前記ロボット加工装置の動作を制御するための加工プログラムを作成するコンピュータ装置を、更に備え、
前記ロボット加工装置は、前記加工プログラムに基づいて前記加工成形体を作製する請求項2又は請求項3に記載の焼結体の製造システム。 - 前記ロボット加工装置は、複数の前記多関節ロボットを有し、
複数の前記多関節ロボットには、前記圧粉成形体を加工する工具を保持する第1ロボットと、前記圧粉成形体を保持する第2ロボットが含まれる請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の焼結体の製造システム。 - 形状の基準となる対象品の3Dデータに倣って圧粉成形体を機械加工することにより、加工成形体を作製する加工装置と、
前記加工成形体を焼結することにより、焼結体を作製する焼結装置と、を備える焼結体の製造システム。 - 前記対象品の3Dデータを非接触で取得する3Dスキャナを、更に備える請求項6に記載の焼結体の製造システム。
- 前記加工装置は、多関節ロボットを有するロボット加工装置であり、
前記対象品の3Dデータに基づいて、前記ロボット加工装置の動作を制御するための加工プログラムを作成するコンピュータ装置を、更に備える請求項6又は請求項7に記載の焼結体の製造システム。 - 前記対象品の3Dデータに基づいて、前記焼結体の寸法精度及び欠陥の有無のうちの少なくとも1つの検査を実行する検査装置を、更に備える請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の焼結体の製造システム。
- 金属粉末を含む原料粉末を一軸加圧することにより、全体又は一部の相対密度が93%以上の前記圧粉成形体を作製する成形装置を、更に備える請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の焼結体の製造システム。
- 前記焼結装置は、前記加工成形体を高周波誘導加熱によって焼結する誘導加熱焼結炉である請求項6から請求項10のいずれか1項に記載の焼結体の製造システム。
- 道路を通行可能な移動装置を更に備え、
前記加工装置は、多関節ロボットを有するロボット加工装置であり、
前記焼結装置は、前記加工成形体を高周波誘導加熱によって焼結する誘導加熱焼結炉であり、
前記移動装置に搭載される装置には、前記ロボット加工装置及び前記誘導加熱焼結炉が含まれる請求項6に記載の焼結体の製造システム。 - 前記移動装置に搭載される装置には、前記対象品の3Dデータを非接触で取得する3Dスキャナが含まれる請求項12に記載の焼結体の製造システム。
- 前記圧粉成形体は、全体又は一部の相対密度が96%以上である請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の焼結体の製造システム。
- 請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の製造システムを用いて、前記焼結体を製造する焼結体の製造方法。
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