JP2018003135A - 焼結タングステン基合金及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】延性が高く且つ高精度な焼結タングステン基合金及びその製造方法を提供する。【解決手段】Wを90.0質量%以上含有し、残部がCu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上、Ni及び不可避不純物からなり、炭素含有量が12質量ppm以下、引張伸びが9%以上であり、好ましくは、断面組織での空孔の面積率が1%未満である。この焼結体は、粒径の粗いW粉末を用い、このW粉末とNi粉末などの副原料からなる原料粉末に、有機バインダーを添加せず、少量の固形潤滑剤のみを添加した上で、造粒することなく機械的に混合し、この混合粉体を比較的高い成形圧で所定の成形密度の成形体に成形し、この成形体を脱脂した後、焼結することにより得られる。【選択図】図1
Description
本発明は、延性が高く且つ高精度な焼結タングステン基合金(粉末焼結体)とその製造方法に関するものである。
焼結タングステン基合金の部品は、硬さがHv250以上あることから切削が容易ではなく、このため粉末焼結体をできるだけ高精度に製造することが求められる。焼結タングステン基合金の一般的な製造法では、粒径2〜4μm程度のW粉末と副原料(Ni粉末などの結合相形成成分)からなる原料粉末に有機バインダーを添加して混練した後、MIMで成型するか、流動性や成形性を確保するためスプレードライヤーなどで造粒した上でプレス成形する。このプレス成形では、成形密度が高すぎると脱脂しにくくなるので、成形圧を2t/cm2以下とし、成形密度を10g/cm3以下とするのが通常である。
特許文献1には、Wを98質量%以上含有し、密度が18.6g/cm3以上の高密度材料(焼結タングステン基合金)の製造方法として、平均粒径4μmのW粉末が98質量%、残部が平均粒径2〜5μmのNi粉末、Fe粉末及びCu粉末からなる原料粉末に有機バインダーを添加して混合した後、スプレードライヤーで造粒し、その造粒粉を1t/cm2の圧力でプレス成形し、この成形体を脱脂処理した上で焼結することが示されている。
焼結タングステン基合金は、W含有量が多いほど焼結時の液相が少ないため、延性がでにくいという問題がある。このため従来の製造法では、焼結後に延性を改善するための熱処理を施す場合もある。
また、従来、焼結タングステン基合金を製造するには、焼結組織の均一性を確保するために、粒径が細かいW粉末(2〜4μm程度)を用いる必要があると考えられている。しかし、このような粒径が細かいW粉末は、成形する際の流動性が悪く、しかも圧縮性が低くなることにより成形性も悪くなるため、そのままでは原料粉末として用いることができない。そこで、特許文献1に示されるように、W粉末を主体とする原料粉末に有機バインダーを添加して混合・造粒し、原料粉末の流動性と成形性を確保した上で成形を行っており、このバインダー成分は成形後の脱脂処理により分解除去するようにしている。ここで、原料粉末の成形圧(成形密度)を高くすると、脱脂処理中にバインダー成分が分解したガスの放散が生じにくくなるため、バインダー成分の除去が不十分となり、未分解のバインダー成分が残留してしまう。このため、従来の製造方法では、成形圧(成形密度)を高くできず、その結果、焼結時の収縮量が大きくなり、高精密な焼結体が得られないという問題があった。
また、従来、焼結タングステン基合金を製造するには、焼結組織の均一性を確保するために、粒径が細かいW粉末(2〜4μm程度)を用いる必要があると考えられている。しかし、このような粒径が細かいW粉末は、成形する際の流動性が悪く、しかも圧縮性が低くなることにより成形性も悪くなるため、そのままでは原料粉末として用いることができない。そこで、特許文献1に示されるように、W粉末を主体とする原料粉末に有機バインダーを添加して混合・造粒し、原料粉末の流動性と成形性を確保した上で成形を行っており、このバインダー成分は成形後の脱脂処理により分解除去するようにしている。ここで、原料粉末の成形圧(成形密度)を高くすると、脱脂処理中にバインダー成分が分解したガスの放散が生じにくくなるため、バインダー成分の除去が不十分となり、未分解のバインダー成分が残留してしまう。このため、従来の製造方法では、成形圧(成形密度)を高くできず、その結果、焼結時の収縮量が大きくなり、高精密な焼結体が得られないという問題があった。
また、焼結タングステン基合金が適用されるような部品のなかには、一部又は全体の厚さ(肉厚)が0.5mm未満であるような薄物もあるが、従来の粉末成形焼結法では、原料粉末に有機バインダーを添加して混合・造粒するため、平均粒径が数十から100μm近くまで大きくなり、このため0.5mm未満の厚さを有するような薄物の成形は困難である。また、上述したように成形密度が小さいため、ハンドリング可能な薄物の成形体を作ること自体も難しい。また、MIMの場合は、薄物の成形は可能であるが、収縮率が大きく、平面度などの精度もでにくいため、実際上の適用は難しい。したがって、従来の製造方法では、高精度な薄物の焼結体を得ることは難しかった。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、延性が高く且つ高精度であって、薄肉化も可能な焼結タングステン基合金とその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、焼結タングステン基合金について、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、以下のような知見を得た。
(i) 焼結タングステン基合金は、ヘビーアロイメカニズム(The Heavy Alloy Mechanism)と呼ばれる液相焼結により緻密化される。この液相焼結中は、W粉末がWとNi,Feなどの添加成分で構成される液相の中に固溶し、再析出を繰り返すことによりW粒成長をして緻密化する。W粒は高純度のWとなり、炭素などの不純物は液相中に残るが、焼結後、その不純物はW粒の周辺に偏析する傾向にあり、これらの不純物のなかの炭素の残留量が延性に大きな影響を与えること、すなわち炭素の残留量が多いとW粒子間或いはW粒子と旧液相部である合金部との界面の接着が不十分となり、焼結体の延性が低下することが判った。さらに、炭素の残留量が多いと液相焼結時の濡れ性が悪くなって空孔を生じやすくなり、高密度化が阻害されることが判った。したがって、延性が高い焼結タングステン基合金を得るには、焼結後の炭素の残留量を十分に低減させる必要があることが判った。また、高W含有量の高密度焼結タングステン基合金は、焼結時の液相が少ないために特に延性がでにくいため、炭素の残留量を低減させて延性改善を図ることが特に有効であることが判った。
(i) 焼結タングステン基合金は、ヘビーアロイメカニズム(The Heavy Alloy Mechanism)と呼ばれる液相焼結により緻密化される。この液相焼結中は、W粉末がWとNi,Feなどの添加成分で構成される液相の中に固溶し、再析出を繰り返すことによりW粒成長をして緻密化する。W粒は高純度のWとなり、炭素などの不純物は液相中に残るが、焼結後、その不純物はW粒の周辺に偏析する傾向にあり、これらの不純物のなかの炭素の残留量が延性に大きな影響を与えること、すなわち炭素の残留量が多いとW粒子間或いはW粒子と旧液相部である合金部との界面の接着が不十分となり、焼結体の延性が低下することが判った。さらに、炭素の残留量が多いと液相焼結時の濡れ性が悪くなって空孔を生じやすくなり、高密度化が阻害されることが判った。したがって、延性が高い焼結タングステン基合金を得るには、焼結後の炭素の残留量を十分に低減させる必要があることが判った。また、高W含有量の高密度焼結タングステン基合金は、焼結時の液相が少ないために特に延性がでにくいため、炭素の残留量を低減させて延性改善を図ることが特に有効であることが判った。
(ii) 焼結体に残留している炭素の多くは、脱脂処理で分解除去できずに残留したバインダー成分に由来していることが判った。従来法では原料粉末の成形圧(成形密度)を低めに抑え、脱脂処理でバインダー成分が適切に分解除去されるようにしているが、上述したように焼結時の収縮量が大きくなり、高精密な焼結体が得られない。さらに、原料粉末の成形圧(成形密度)を低めに抑えたとしても、脱脂処理で分解しきれないバインダー成分(炭素)が残留し、焼結体の延性を低下させ、さらには高密度化も阻害していることが判った。
(iii) そこで、有機バインダーを用いない粉末成形焼結法について検討した結果、従来技術では細かい粒径(2〜4μm程度)のW粉末を用いるのが半ば常識化しているのに対して、敢えて粗い粒径(7μm以上)のW粉末を用い、このW粉末とNi粉末などの副原料からなる原料粉末に少量の固形潤滑剤のみを添加した(有機バインダーは添加しない)上で、造粒することなく機械的に混合し、この混合粉体を従来法に較べて高い成形密度を有する成形体に成形し、この成形体を脱脂、焼結することにより、延性が高く且つ高精度な焼結タングステン基合金が得られることが判った。しかも、このような製造法によれば、一部又は全体の厚さ(肉厚)が0.5mm未満であるような薄物の焼結体についても容易に製造できることが判った。
本発明は、以上のような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]Wを90.0質量%以上含有し、残部がCu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上、Ni及び不可避不純物からなり、炭素含有量が12質量ppm以下、引張伸びが9%以上であることを特徴とする焼結タングステン基合金。
[2]上記[1]の焼結タングステン基合金において、Niを0.2〜9.5質量%、Cu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上を合計で0.2〜9.5質量%含有することを特徴とする焼結タングステン基合金。
[3]上記[1]の焼結タングステン基合金において、Wを96.0質量%以上含有し、残部がCu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上、Ni及び不可避不純物からなり、密度が18.4g/cm3以上であることを特徴とする焼結タングステン基合金。
[1]Wを90.0質量%以上含有し、残部がCu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上、Ni及び不可避不純物からなり、炭素含有量が12質量ppm以下、引張伸びが9%以上であることを特徴とする焼結タングステン基合金。
[2]上記[1]の焼結タングステン基合金において、Niを0.2〜9.5質量%、Cu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上を合計で0.2〜9.5質量%含有することを特徴とする焼結タングステン基合金。
[3]上記[1]の焼結タングステン基合金において、Wを96.0質量%以上含有し、残部がCu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上、Ni及び不可避不純物からなり、密度が18.4g/cm3以上であることを特徴とする焼結タングステン基合金。
[4]上記[3]の焼結タングステン基合金において、Niを0.2〜3.5質量%、Cu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上を合計で0.2〜3.5質量%含有することを特徴とする焼結タングステン基合金。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの焼結タングステン基合金において、断面組織での空孔の面積率が1%未満であることを特徴とする焼結タングステン基合金。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの焼結タングステン基合金において、炭素含有量が5質量ppm未満、引張伸びが15%以上であることを特徴とする焼結タングステン基合金。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかの焼結タングステン基合金において、少なくとも一部の部位が0.15mm以上0.50mm未満の肉厚を有することを特徴とする焼結タングステン基合金。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの焼結タングステン基合金において、断面組織での空孔の面積率が1%未満であることを特徴とする焼結タングステン基合金。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの焼結タングステン基合金において、炭素含有量が5質量ppm未満、引張伸びが15%以上であることを特徴とする焼結タングステン基合金。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかの焼結タングステン基合金において、少なくとも一部の部位が0.15mm以上0.50mm未満の肉厚を有することを特徴とする焼結タングステン基合金。
[8]FSSS平均粒径が7.0μm以上のW粉末の割合が90.0質量%以上で、残部がCu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上とNi粉末である原料粉末に、原料粉末と固形潤滑剤の合計量中での割合で0.1〜0.5質量%の固形潤滑剤を添加して(但し、有機バインダーは添加しない)機械的に混合した後、成形密度が13g/cm3以上となる成形圧で成形し、この成形体を還元性ガス雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中で脱脂処理した後、還元性ガス雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中で焼結することを特徴とする焼結タングステン基合金の製造方法。
[9]上記[8]の製造方法において、Cu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上とNi粉末のFSSS平均粒径が20μm以下であり、原料粉末中のNi粉末の割合が0.2〜9.5質量%、Cu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上の合計の割合が0.2〜9.5質量%であることを特徴とする焼結タングステン基合金の製造方法。
[10]上記[8]の製造方法において、原料粉末は、FSSS平均粒径が7.0μm以上のW粉末の割合が96.0質量%以上で、残部がCu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上とNi粉末であることを特徴とする焼結タングステン基合金の製造方法。
[10]上記[8]の製造方法において、原料粉末は、FSSS平均粒径が7.0μm以上のW粉末の割合が96.0質量%以上で、残部がCu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上とNi粉末であることを特徴とする焼結タングステン基合金の製造方法。
[11]上記[10]の製造方法において、Cu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上とNi粉末のFSSS平均粒径が20μm以下であり、原料粉末中のNi粉末の割合が0.2〜3.5質量%、Cu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上の合計の割合が0.2〜3.5質量%であることを特徴とする焼結タングステン基合金の製造方法。
[12]上記[8]〜[11]のいずれかの製造方法において、焼結時の線収縮率が11%以下であることを特徴とする焼結タングステン基合金の製造方法。
[13]上記[8]〜[12]のいずれかの製造方法において、成形体を600〜1000℃で脱脂処理した後、1450〜1550℃で焼結することを特徴とする焼結タングステン基合金の製造方法。
[14]上記[8]〜[13]のいずれかの製造方法において、少なくとも一部の部位が0.15mm以上0.50mm未満の肉厚を有する焼結体を得ることを特徴とする焼結タングステン基合金の製造方法。
[12]上記[8]〜[11]のいずれかの製造方法において、焼結時の線収縮率が11%以下であることを特徴とする焼結タングステン基合金の製造方法。
[13]上記[8]〜[12]のいずれかの製造方法において、成形体を600〜1000℃で脱脂処理した後、1450〜1550℃で焼結することを特徴とする焼結タングステン基合金の製造方法。
[14]上記[8]〜[13]のいずれかの製造方法において、少なくとも一部の部位が0.15mm以上0.50mm未満の肉厚を有する焼結体を得ることを特徴とする焼結タングステン基合金の製造方法。
本発明の焼結タングステン基合金は、延性が高く且つ高精度であるという優れた品質性能を有する。また、特に高W含有量とした場合には、高密度でありながら、延性が高く且つ高精度であるという優れた品質性能を有する。
また、本発明の製造方法によれば、そのような優れた品質性能を有する焼結タングステン基合金を安定して製造することができるとともに、薄物の焼結タングステン基合金も容易に製造することができる。さらに、従来法のような混練、造粒工程が不要であり、しかも脱脂時間も短くて済むため、製造コストを低減できる利点がある。
また、本発明の製造方法によれば、そのような優れた品質性能を有する焼結タングステン基合金を安定して製造することができるとともに、薄物の焼結タングステン基合金も容易に製造することができる。さらに、従来法のような混練、造粒工程が不要であり、しかも脱脂時間も短くて済むため、製造コストを低減できる利点がある。
本発明の焼結タングステン基合金(以下、単に「焼結体」という場合がある)は、Wを90.0質量%以上含有し、残部がCu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上、Ni及び不可避不純物からなり、炭素含有量を12質量ppm以下、引張伸びを9%以上とする。
Wが90.0質量%未満では、錘等に必要とされる密度を確保できない。また、特に高密度の焼結タングステン基合金とする場合、好ましいW含有量は96.0質量%以上であり、より好ましいW含有量は96.5質量%以上であり、特に好ましいW含有量は97.0質量%以上である。Wが96.0質量%未満では、錘等として必要な18.4g/cm3以上の高密度が得られない。
Wが90.0質量%未満では、錘等に必要とされる密度を確保できない。また、特に高密度の焼結タングステン基合金とする場合、好ましいW含有量は96.0質量%以上であり、より好ましいW含有量は96.5質量%以上であり、特に好ましいW含有量は97.0質量%以上である。Wが96.0質量%未満では、錘等として必要な18.4g/cm3以上の高密度が得られない。
Ni、Cu、Fe、Moは、Wと合金化してより低温で液相となって結合相を生成させる成分であるが、本発明ではNiを含有し、さらにCu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上を含有する組成とする。ここで、Niは液相生成のための主要成分であり、Cu,Fe,Moは焼結温度を低くするために液相化温度を調整(低減)する成分である。
これら結合相生成成分の含有量は特に限定しないが、Niを0.2〜9.5質量%、Cu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上を合計で0.2〜9.5質量%含有することが好ましい。Ni含有量が0.2質量%未満では、Niを添加することによる上述の効果が十分に得られず、一方、9.5質量%を超えると、所望の密度とするのに必要なW量が確保できなくなる。また、Cu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上についても、その含有量が0.2質量%未満では、それらの1種以上を添加することによる上述の効果が十分に得られず、一方、9.5質量%を超えると、所望の密度とするのに必要なW量が確保できなくなる。ただし、延性を考慮すると、質量比でNi/(Fe+Cu+Mo)を7/1〜3/7とすることが好ましい。
また、特に高密度の焼結タングステン基合金とするために、Wを96.0質量%以上含有する場合には、Niを0.2〜3.5質量%、Cu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上を合計で0.2〜3.5質量%含有することが好ましく、また、Wを96.5質量%以上含有する場合には、Niを0.2〜3.0質量%、Cu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上を合計で0.2〜3.0質量%含有することが好ましく、また、Wを97.0質量%以上含有する場合には、Niを0.2〜2.5質量%、Cu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上を合計で0.2〜2.5質量%含有することが好ましい。これらの理由も上記と同様である。
不可避不純物である炭素は、W粒の周辺に偏析して焼結体の延性を低下させるため、焼結体の炭素含有量を12質量ppm以下とする。すなわち、炭素含有量が12質量ppmを超えると焼結体の延性が低下する。また、延性をより高めるには、炭素量は8質量ppm以下が好ましく、5質量ppm未満が特に好ましい。例えば、Wが96.0〜97.0質量%の場合、炭素量を5質量ppm未満とすると、引張伸びを15%以上とすることができる。
有機バインダーを使用する従来法では脱脂に長時間を要するが、有機バインダーは分解しにくい性質であることから完全に除去することは難しい。このため従来法で製造される焼結体では、有機バインダーの一部が脱脂処理で分解除去されることなく不純物(炭素)として比較的高い濃度で焼結体に残留していたものである。本発明の焼結体は、そのような有機バインダー由来の不純物(炭素)が残留しないようにするため、有機バインダーを使用せず、その代わりに一般の鉄系粉末冶金の製造に使用されている固体潤滑剤を少量使用するだけで製造される。固体潤滑剤は脱脂処理で分解しやすく(脱脂時間も短時間で済む)、しかも少量添加であるため、炭素の残留を最小限に抑えることができる。したがって、本発明の焼結体に微量に含まれる炭素は、主に原料粉末と固体潤滑剤に由来するものである。例えば、W粉末には数ppm程度の炭素が含まれ、また、副原料として使用されることがあるカーボニルNiやカーボニル鉄には、数百ppm程度の炭素が含まれている。
以上のように本発明では、粉末成形焼結法において有機バインダーを使用せず、その代わりに少量の固体潤滑剤を使用し、且つ成形体に対して所定の脱脂処理を行うことにより、焼結体の炭素量を12質量ppm以下(好ましくは8質量ppm以下、さらに好ましくは5質量ppm未満)とすることができる。
以上のように本発明では、粉末成形焼結法において有機バインダーを使用せず、その代わりに少量の固体潤滑剤を使用し、且つ成形体に対して所定の脱脂処理を行うことにより、焼結体の炭素量を12質量ppm以下(好ましくは8質量ppm以下、さらに好ましくは5質量ppm未満)とすることができる。
本発明の焼結体は、引張伸びが9%以上の延性を有する。引張伸びが低いと延性不足でサイジングで割れが生じやすくなる。引張伸びが9%以上であれば、様々な形状の部品のサイジングが可能となる。また、この観点からより好ましい引張伸びは15%以上である。
本発明の焼結タングステン基合金は、密度を高めるために、焼結体の断面組織での空孔の面積率が1%未満であることが好ましい。この空孔の面積率は、次のようにして求める。すなわち、焼結体の任意の断面組織を撮像した10個の400倍SEM画像をImage-Proによる画像解析により二値化処理して、視野に含まれる空孔の面積率を求め、10個のSEM画像の平均値を空孔の面積率とする。
本発明の焼結タングステン基合金は、密度を高めるために、焼結体の断面組織での空孔の面積率が1%未満であることが好ましい。この空孔の面積率は、次のようにして求める。すなわち、焼結体の任意の断面組織を撮像した10個の400倍SEM画像をImage-Proによる画像解析により二値化処理して、視野に含まれる空孔の面積率を求め、10個のSEM画像の平均値を空孔の面積率とする。
図1は、後述する実施例において製造された発明例(実施例No.3)と比較例(実施例No.10)の焼結体の断面SEM画像(左側、右上側のSEM画像)と、同じ比較例(実施例No.10)の引張破面のSEM画像(右下側のSEM画像)である。なお、この引張破面のSEM画像は、空孔形成部分以外の部分の引張破面を撮像したものである。
比較例(実施例No.10)の焼結体は、炭素含有量が高いため顕著な空孔を生じており、延性も劣っている。また、引張破面で伸びの悪い比較例の試料では、合金部(旧液相部)にディンプル(微小凹み)が観察されず、W粒子表面にCが観察されており、このCの残留が延性の低下に大きく影響しているものと考えられる。
比較例(実施例No.10)の焼結体は、炭素含有量が高いため顕著な空孔を生じており、延性も劣っている。また、引張破面で伸びの悪い比較例の試料では、合金部(旧液相部)にディンプル(微小凹み)が観察されず、W粒子表面にCが観察されており、このCの残留が延性の低下に大きく影響しているものと考えられる。
また、本発明の焼結タングステン基合金を錘などのような特に高密度が要求される用途に適用する場合には、上述したようにW含有量を96.0質量%以上(より好ましくは96.5質量%以上、特に好ましくは97.0質量%以上)とし、密度(焼結体密度)を18.4g/cm3以上とすることが好ましい。密度(焼結体密度)が18.4g/cm3未満では、特に自動巻き時計の回転重錘などのような重錘には適さない。また、高密度焼結タングステン基合金として、特に好ましい密度(焼結体密度)は18.6g/cm3以上である。
次に、本発明の焼結タングステン基合金の製造方法について説明する。
この製造方法は、(i)粒径の粗いW粉末を用いる、(ii)このW粉末とNi粉末などの副原料からなる原料粉末に、有機バインダーを添加せず、少量の固形潤滑剤のみを添加した上で、造粒することなく機械的に混合する、(iii)この混合粉体を比較的高い成形圧で所定の成形密度の成形体に成形し、この成形体を脱脂した後、焼結する、ことを特徴とする。ここで、上記(ii)、(iii)の基本は、バインダー造粒法(有機バインダーを添加して混合造粒する方法)を経ない粉末成形焼結法を行うということである。
この製造方法は、(i)粒径の粗いW粉末を用いる、(ii)このW粉末とNi粉末などの副原料からなる原料粉末に、有機バインダーを添加せず、少量の固形潤滑剤のみを添加した上で、造粒することなく機械的に混合する、(iii)この混合粉体を比較的高い成形圧で所定の成形密度の成形体に成形し、この成形体を脱脂した後、焼結する、ことを特徴とする。ここで、上記(ii)、(iii)の基本は、バインダー造粒法(有機バインダーを添加して混合造粒する方法)を経ない粉末成形焼結法を行うということである。
本発明の製造方法では、FSSS平均粒径(フィッシャー法による平均粒径)が7.0μm以上のW粉末の割合が90.0質量%以上で、残部がCu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上とNi粉末である原料粉末に、原料粉末と固形潤滑剤の合計量中での割合で0.1〜0.5質量%の固形潤滑剤を添加して(但し、有機バインダーは添加しない)機械的に混合した後、成形密度が13g/cm3以上となる成形圧で成形し、この成形体を還元性ガス雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中で脱脂処理した後、還元性ガス雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中で焼結し、焼結体を得る。
原料粉末は、W粉末の割合が90.0質量%以上で、残部がCu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上とNi粉末からなり、また、原料粉末中のNi粉末の割合は0.2〜9.5質量%、Cu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上の合計の割合は0.2〜9.5質量%であることが好ましい。これらの理由はさきに述べた通りである。
また、高密度の焼結体を得るという観点からは、W粉末の割合は96.0質量%以上が好ましく、96.5質量%以上がより好ましく、97.0質量%以上が特に好ましい。また、W粉末の割合を96.0質量%以上とする場合には、Ni粉末の割合を0.2〜3.5質量%、Cu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上の合計の割合を0.2〜3.5質量%とすることが好ましい。また、W粉末の割合を96.5質量%以上とする場合には、Ni粉末の割合を0.2〜3.0質量%、Cu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上の合計の割合を0.2〜3.0質量%とすることが好ましい。また、W粉末の割合を97.0質量%以上とする場合には、Ni粉末の割合を0.2〜2.5質量%、Cu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上の合計の割合を0.2〜2.5質量%とすることが好ましい。これらの理由も上記と同様である。
W粉末のFSSS平均粒径は7.0μm以上とする。W粉末のFSSS平均粒径が7.0μm未満では、バインダー造粒法を経ない粉末成形焼結法において、金型に粉末を充填する際の流動性を確保できず、連続した成形ができない。
表1は、FSSS平均粒径が異なるW粉末の流動性を示している。この流動性の測定は、JIS Z2502(2012)金属粉−流動測定法に準拠したが、漏斗径はφ5mmを使用し、かつ棚釣りを起こしやすい粉末であることから、バイブレーターにより若干の上下振動を与えながら測定した。
表1は、FSSS平均粒径が異なるW粉末の流動性を示している。この流動性の測定は、JIS Z2502(2012)金属粉−流動測定法に準拠したが、漏斗径はφ5mmを使用し、かつ棚釣りを起こしやすい粉末であることから、バイブレーターにより若干の上下振動を与えながら測定した。
表1によれば、W粉末のFSSS平均粒径が7.0μm以上であれば、流動度6sec/50g以下であり、バインダー造粒法を経ない粉末成形焼結法でも、必要な流動性及び成形性を確保することできる。また、この流動性及び成形性の観点から、より好ましいW粉末のFSSS平均粒径は8.0μm以上であり、さらに好ましくは8.5μm以上である。なお、W粉末の粒径が大きすぎると焼結密度を高めにくくなるので、W粉末のFSSS平均粒径は20μm程度を上限とすることが好ましい。
また、Cu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上とNi粉末のFSSS平均粒径は20μm以下が好ましく、10μm以下が特に好ましい。これら副原料のFSSS平均粒径が20μmを超えると焼結組織が不均一になりやすい。また、これら副原料のFSSS平均粒径の下限は特にないが、通常、1μm程度が下限となる。これら副原料の粒径については、従来法で使用されるものと基本的に変わらない。
原料粉末に固形潤滑剤を添加して機械的に混合(例えば、Vブレンダーによる混合)した後、この混合粉末を金型を用いて所定の成形圧で成形し、成形密度が13g/cm3以上の成形体とする。
固形潤滑剤としては、鉄系粉末冶金に一般的に使用されるものを用いることができる。例えば、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸、エチレンビスステアリン酸アミド、ケノルーブ、アクラワックスなどが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
固形潤滑剤も添加量が多すぎると、脱脂処理後に未分解の炭素が残留しやすいので、固形潤滑剤の添加量は、原料粉末と固形潤滑剤の合計量中での割合で0.1〜0.5質量%とする。この添加量であれば、必要な型潤滑性が得られる一方で、高い成形密度でも脱脂処理時に分解ガスが容易に成形体外に排出され、炭素の残留が抑えられる。
固形潤滑剤としては、鉄系粉末冶金に一般的に使用されるものを用いることができる。例えば、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸、エチレンビスステアリン酸アミド、ケノルーブ、アクラワックスなどが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
固形潤滑剤も添加量が多すぎると、脱脂処理後に未分解の炭素が残留しやすいので、固形潤滑剤の添加量は、原料粉末と固形潤滑剤の合計量中での割合で0.1〜0.5質量%とする。この添加量であれば、必要な型潤滑性が得られる一方で、高い成形密度でも脱脂処理時に分解ガスが容易に成形体外に排出され、炭素の残留が抑えられる。
また、本発明では有機バインダーを使用しないため、成形体の成形密度が13g/cm3未満では成形体の強度が小さく、ハンドリングができない。また、焼結時の収縮率が大きくなり、高精密の焼結体が得られない。なお、金型の強度や寿命の面から17g/cm3程度が成形密度の実質的な上限となる。
成形体の成形密度を13g/cm3以上とするためには、成形圧を4.0t/cm2以上とすることが好ましい。図2は、高密度焼結タングステン基合金を製造するために、粗い粒径(FSSS平均粒径7.0μm以上)のW粉末を主体とする原料粉末に少量の固形潤滑剤のみを添加した(有機バインダーは添加しない)上で、造粒することなく機械的に混合し、この混合粉体を成形した際において、その成形圧と成形体の成形密度との関係を調べた結果を示している。この試験では、FSSS平均粒径が10〜12μmのW粉末と副原料(Ni,Fe)からなる原料粉末に0.3〜0.5質量%(外掛け量)の固形潤滑剤(ステアリング酸亜鉛)を添加した。図2によれば、成形圧を4.0t/cm2以上とすれば、概ね成形体の成形密度を13g/cm3以上にできることが判る。
成形体の成形密度を13g/cm3以上とするためには、成形圧を4.0t/cm2以上とすることが好ましい。図2は、高密度焼結タングステン基合金を製造するために、粗い粒径(FSSS平均粒径7.0μm以上)のW粉末を主体とする原料粉末に少量の固形潤滑剤のみを添加した(有機バインダーは添加しない)上で、造粒することなく機械的に混合し、この混合粉体を成形した際において、その成形圧と成形体の成形密度との関係を調べた結果を示している。この試験では、FSSS平均粒径が10〜12μmのW粉末と副原料(Ni,Fe)からなる原料粉末に0.3〜0.5質量%(外掛け量)の固形潤滑剤(ステアリング酸亜鉛)を添加した。図2によれば、成形圧を4.0t/cm2以上とすれば、概ね成形体の成形密度を13g/cm3以上にできることが判る。
成形体の脱脂処理は、還元性ガス雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中で行われるが、特に水素雰囲気又は水素−窒素雰囲気中において600〜1000℃で行うことが好ましい。また、成形体の焼結は、還元性ガス雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中で行われるが、特に水素雰囲気中において1450〜1550℃で行うことが好ましい。
本発明の製造方法では、有機バインダーを使用せず、その代わりに脱脂で分解しやすい固体潤滑剤を使用し、しかも少量添加であるため、脱脂処理後の炭素の残留を最小限に抑えることができる。また、脱脂時間についても、有機バインダーを使用する従来法(プレス成形法)では5〜6時間を要するのに対して、本発明法ではごく短時間(30分〜1時間程度)で済む利点がある。
本発明の製造方法では、有機バインダーを使用せず、その代わりに脱脂で分解しやすい固体潤滑剤を使用し、しかも少量添加であるため、脱脂処理後の炭素の残留を最小限に抑えることができる。また、脱脂時間についても、有機バインダーを使用する従来法(プレス成形法)では5〜6時間を要するのに対して、本発明法ではごく短時間(30分〜1時間程度)で済む利点がある。
本発明の製造方法では、成形体の成形密度が13g/cm3以上であるため、焼結時の線収縮率を小さくすることができ、高精度の焼結体を製造できるが、特に焼結時の線収縮率が11%以下であることが好ましい。成形焼結時の線収縮率が11%以下であれば、例えば、自動巻き時計の回転重錘のようなリング状の製品でも大きな歪みが生じることなく製造が可能となる。高精度の点においては、線収縮率は小さいほど好ましいことから、なるべく成形密度は高いほうが好ましいが、それに比例して成形圧を高くする必要があり、形状によっては高い成形圧が金型の寿命に影響を与える可能性もある。一般的には、成形圧を7t/cm3以上とし、線収縮率を9%以下とすることがより好ましい。
得られた焼結体には、形状によって精度向上のため冷間矯正(サイジング)を施してもよい。なお、本発明で得られる焼結体は延性が高いため、延性改善のための熱処理を行う必要はない。
従来法は、W粉末と副原料に有機バインダーを添加して混練し、MIM(混合工程設備が必要で且つ脱脂時間が長くコスト高である)で製造するか、流動性や成形性を確保するためスプレードライヤーなどで造粒した後、プレス成形する。そして、有機バインダーを使用しているため、脱脂時間を十分にとる必要がある。これに対して本発明の製造方法では、従来法のような混練、造粒工程が不要であり、しかも脱脂時間も短くて済むため、製造コストが低減できる利点がある。
従来法は、W粉末と副原料に有機バインダーを添加して混練し、MIM(混合工程設備が必要で且つ脱脂時間が長くコスト高である)で製造するか、流動性や成形性を確保するためスプレードライヤーなどで造粒した後、プレス成形する。そして、有機バインダーを使用しているため、脱脂時間を十分にとる必要がある。これに対して本発明の製造方法では、従来法のような混練、造粒工程が不要であり、しかも脱脂時間も短くて済むため、製造コストが低減できる利点がある。
また、本発明の製造方法は、上述した(i)〜(iii)の特徴を有する粉末成形焼結法であり、原料粉末を造粒しないため薄肉化が可能であるとともに、薄物であってもハンドリング可能な成形体に成形でき、しかも液相焼結時の収縮率も小さくできるので、少なくとも一部の部位の肉厚(厚み)が0.50mm未満であるような焼結体も容易に製造することができる。ここで、0.50mm未満の肉厚とは、図5、図6に示すように焼結体全体の肉厚(厚み)が0.50mm未満である場合の他に、例えば、図3及び図4に示すように焼結体の一部の部位の肉厚(厚み)が0.50mm未満である場合を含む。本発明では、肉厚(厚み)0.15mm程度までは製造が可能である。
高精度で高い延性を有する本発明の焼結タングステン基合金は種々の用途に適用でき、特に高密度のものは、例えば、自動巻き時計の回転重錘、放射線遮蔽材、携帯電話の振動呼び出し振動モータの振動子、その他精密機器の錘、ゲーム機の振動発生装置用錘、ゴルフなどのレジャー用錘などのような用途に好適である。
本発明例と比較例の製造条件(使用した原料粉末の粒径及び配合量、固形潤滑剤の種類及び添加量、粉末成形焼結条件)を表2〜表5に示す。
原料粉末(W粉末+Ni粉末などの結合相形成成分)に固形潤滑剤を添加してVブレンダーで機械的に混合した後、成形して所定の成形密度の成形体を得た。この成形体を水素雰囲気中で脱脂処理(600℃×30分間保持した後、1000℃×30分間保持)した後、水素雰囲気中で焼結(1500℃×2時間保持)して焼結体を得た。
原料粉末(W粉末+Ni粉末などの結合相形成成分)に固形潤滑剤を添加してVブレンダーで機械的に混合した後、成形して所定の成形密度の成形体を得た。この成形体を水素雰囲気中で脱脂処理(600℃×30分間保持した後、1000℃×30分間保持)した後、水素雰囲気中で焼結(1500℃×2時間保持)して焼結体を得た。
成形体の成形密度、焼結時の線収縮率、焼結体の密度、焼結体の断面SEM画像での空孔の面積率、焼結体の炭素含有量、焼結体の引張伸びを、次のように算出又は測定した。それらの結果を表2〜表5に示す。
成形体の成形密度と焼結体の密度はアルキメデス法で測定した。焼結時の線収縮率は、成形密度と焼結密度の比を線収縮率に換算して求めた。焼結体の断面SEM画像での空孔の面積率は、さきに述べた方法で測定した。焼結体の炭素量は、燃焼−赤外吸収法で測定した。焼結体の引張伸びは、JIS Z2550(2000)機械構造部品用焼結材料に記載の圧粉体作製用押型を使用して試料を作製し、引張速度0.5mm/minにて標点間距離の変化を求めた。
成形体の成形密度と焼結体の密度はアルキメデス法で測定した。焼結時の線収縮率は、成形密度と焼結密度の比を線収縮率に換算して求めた。焼結体の断面SEM画像での空孔の面積率は、さきに述べた方法で測定した。焼結体の炭素量は、燃焼−赤外吸収法で測定した。焼結体の引張伸びは、JIS Z2550(2000)機械構造部品用焼結材料に記載の圧粉体作製用押型を使用して試料を作製し、引張速度0.5mm/minにて標点間距離の変化を求めた。
表2〜表5の実施例のうちのNo.20(本発明例)と同じ製造条件でリング状でその一部に貫通穴のある電子部品錘となる焼結体を製造した。したがって、この焼結体の組成・物性・性状はNo.20(本発明例)と同等である。図3、図4は、この焼結体の一部の部位を撮像したSEM画像である。画像に写っている貫通穴は成形体として形成されたものであり、その孔が形成された部位の肉厚は0.175mmである。したがって、本発明法により、一部の部位が0.175mmの肉厚を有する焼結体が得られたことになる。
表2〜表5の実施例のうちのNo.24(本発明例)と同じ製造条件で円盤状の電子部品錘となる焼結体を製造した。したがって、この焼結体の組成・物性・性状はNo.24(本発明例)と同等である。図5は、その焼結体を撮像したSEM画像であり、直径1.8mmφ、厚さ0.3mmの円盤状の焼結体である。したがって、本発明法により、全体の厚さが0.3mmの焼結体が得られたことになる。
表2〜表5の実施例のうちのNo.23(本発明例)と同じ製造条件で円盤状の電子部品錘となる焼結体を製造した。したがって、この焼結体の組成・物性・性状はNo.23(本発明例)と同等である。図6は、その焼結体を撮像したSEM画像であり、直径1.8mmφ、厚さ0.4mmの円盤状の焼結体である。したがって、本発明法により、全体の厚さが0.4mmの焼結体が得られたことになる。
Claims (14)
- Wを90.0質量%以上含有し、残部がCu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上、Ni及び不可避不純物からなり、炭素含有量が12質量ppm以下、引張伸びが9%以上であることを特徴とする焼結タングステン基合金。
- Niを0.2〜9.5質量%、Cu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上を合計で0.2〜9.5質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の焼結タングステン基合金。
- Wを96.0質量%以上含有し、残部がCu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上、Ni及び不可避不純物からなり、密度が18.4g/cm3以上であることを特徴とする請求項1に記載の焼結タングステン基合金。
- Niを0.2〜3.5質量%、Cu、Fe及びMoの中から選ばれる1種以上を合計で0.2〜3.5質量%含有することを特徴とする請求項3に記載の焼結タングステン基合金。
- 断面組織での空孔の面積率が1%未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の焼結タングステン基合金。
- 炭素含有量が5質量ppm未満、引張伸びが15%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の焼結タングステン基合金。
- 少なくとも一部の部位が0.15mm以上0.50mm未満の肉厚を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の焼結タングステン基合金。
- FSSS平均粒径が7.0μm以上のW粉末の割合が90.0質量%以上で、残部がCu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上とNi粉末である原料粉末に、原料粉末と固形潤滑剤の合計量中での割合で0.1〜0.5質量%の固形潤滑剤を添加して(但し、有機バインダーは添加しない)機械的に混合した後、成形密度が13g/cm3以上となる成形圧で成形し、この成形体を還元性ガス雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中で脱脂処理した後、還元性ガス雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中で焼結することを特徴とする焼結タングステン基合金の製造方法。
- Cu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上とNi粉末のFSSS平均粒径が20μm以下であり、原料粉末中のNi粉末の割合が0.2〜9.5質量%、Cu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上の合計の割合が0.2〜9.5質量%であることを特徴とする請求項8に記載の焼結タングステン基合金の製造方法。
- 原料粉末は、FSSS平均粒径が7.0μm以上のW粉末の割合が96.0質量%以上で、残部がCu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上とNi粉末であることを特徴とする請求項8に記載の焼結タングステン基合金の製造方法。
- Cu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上とNi粉末のFSSS平均粒径が20μm以下であり、原料粉末中のNi粉末の割合が0.2〜3.5質量%、Cu粉末、Fe粉末及びMo粉末の中から選ばれる1種以上の合計の割合が0.2〜3.5質量%であることを特徴とする請求項10に記載の焼結タングステン基合金の製造方法。
- 焼結時の線収縮率が11%以下であることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の焼結タングステン基合金の製造方法。
- 成形体を600〜1000℃で脱脂処理した後、1450〜1550℃で焼結することを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の焼結タングステン基合金の製造方法。
- 少なくとも一部の部位が0.15mm以上0.50mm未満の肉厚を有する焼結体を得ることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の焼結タングステン基合金の製造方法。
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