JP4376826B2 - Co−Cr合金ペレット及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、歯科医療の分野において鋳造用に使用されるCo−Cr合金ペレット及びその製造方法に関する。
Co−Cr合金(コバルトクロム合金)は強度に優れる材料であることから、歯科医療の分野において、床、バー、クラスプ、維持装置などの鋳造用材料として使用されている。一般的に、歯科鋳造用のCo−Cr合金は、金属原料を溶融させた後に鋳造法等によって製造され、一粒が5g〜10g程度の鋳造用ペレットの形態で市場に供給されている。なお、Co−Cr合金の従来技術としては、例えば、特許文献1、2に開示されているCo−Cr合金が公知である。
特開平7−48220号公報 特開2002−206127号公報
Co−Cr合金は強度に優れる材料であるが、さらにN(窒素)を添加することによって、延性などの機械的特性が著しく向上することが知られている。Co−Cr合金に対して窒素を添加するための方法としては、溶融状態のCo−Cr合金に窒素ガスを吹き込む方法(窒素ガスのバブリング)、高圧窒素雰囲気下においてCo−Cr合金を溶融させる方法、溶融状態のCo−Cr合金に窒化物(実用的には窒化クロム)を添加する方法、等の方法が用いられている。しかし、窒素ガスのバブリングの場合には、Co−Cr合金の組成変動が大きくなるという問題がある。高圧窒素雰囲気下でCo−Cr合金を溶融させる方法の場合には、高圧窒素雰囲気を作り出すために、Co−Cr合金の製造設備が大掛かりで且つ高価になるという問題がある。Co−Cr合金の溶融時に窒化物を添加する方法の場合には、窒化物が浮上してしまうので、Co−Cr合金の安定した窒化が困難であるという問題がある。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、従来よりも簡単で且つ安定した窒化が可能になる、歯科鋳造用のCo−Cr合金ペレットの製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段は、以下の(1)〜(7)の発明である。
(1)歯科鋳造用のCo−Cr合金ペレットの製造方法であって、
原料粉末をペレット状に成形して得られた成形体を焼結して焼結密度が60%以上92%以下の焼結体を得る焼結工程と、
前記焼結体を窒素が存在する雰囲気下で窒化させる窒化工程と、を有することを特徴とする、Co−Cr合金ペレットの製造方法。
(2)上記(1)に記載のCo−Cr合金ペレットの製造方法であって、
焼結工程における焼結温度が900℃以上1350℃以下であることを特徴とする、Co−Cr合金ペレットの製造方法。
(3)上記(1)または(2)に記載のCo−Cr合金ペレットの製造方法であって、
窒化工程における窒化温度が700℃以上1100℃以下であることを特徴とする、Co−Cr合金ペレットの製造方法。
(4)上記(1)から(3)のうちいずれかに記載のCo−Cr合金ペレットの製造方法であって、
原料粉末のC(炭素)の含有量が、{原料粉末のO(酸素)の含有量×0.75+0.10}%以上、{原料粉末のO(酸素)の含有量×0.75+0.60}%以下(%はすべて重量基準)に調整されていることを特徴とする、Co−Cr合金ペレットの製造方法。
(5)上記(1)から(4)のうちいずれかに記載のCo−Cr合金ペレットの製造方法であって、
原料粉末のC(炭素)の含有量を、当該原料粉末に炭素粉末を添加することによって調整することを特徴とする、Co−Cr合金ペレットの製造方法。
(6)上記(1)から(5)のうちいずれかに記載のCo−Cr合金ペレットの製造方法によって製造された、Co−Cr合金ペレット。
(7)上記(6)に記載のCo−Cr合金ペレットであって、
組成が、C:0.10%以上0.60%以下、Si:0.50%以上1.50%以下、Mn:0.05%以上0.50%以下、Ni:0.20%以下、Cr:26.00%以上35.00%以下、Mo:4.00%以上7.00%以下、B :0.10%以下、N:0.30%以上1.60%以下、O:0.20%以下、Fe:3.00%以下(%はすべて重量基準)、であることを特徴とする、Co−Cr合金ペレット。
本発明によれば、溶融鋳造法を用いるよりも簡単な工程で歯科鋳造用Co−Cr合金ペレットを製造することができる。また、Co−Cr合金ペレットの安定した窒化が可能になる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、歯科鋳造用のCo−Cr合金ペレットの製造方法であって、原料粉末をペレット状に成形して得られた成形体を焼結して焼結密度が60%以上92%以下の焼結体を得る焼結工程と、前記焼結体を窒素が存在する雰囲気下で窒化させる窒化工程と、を有することを特徴とする、Co−Cr合金ペレットの製造方法である。
本発明では、原料を溶融させて鋳型に流し込んでCo−Cr合金ペレットを鋳造するのはなく、原料粉末をペレット状に成形した後に、この成形体を焼結させて、Co−Cr合金ペレットを製造する。本発明に係るCo−Cr合金ペレットの製造方法の場合、鋳造工程が不要であるので、従来の方法と比較すると、Co−Cr合金ペレットをより少ない工程で製造することができる。また、原料を溶融させる必要がなく、鋳造品ペレットの鋳バリ等の研削工程も不要であるので、高熱の発生や粉塵の発生などによって製造の際の作業環境が悪化することを防止することができる。
〔Co−Cr合金ペレット〕
本発明において、焼結・窒化後のCo−Cr合金ペレットの組成は、以下の表1に示す範囲であることが好ましい。
Figure 0004376826
C(炭素)の含有量が表1の通りであるのが好ましいのは、歯科医療用Co−Cr合金の硬さはHv300〜450程度が期待されており、この硬さを確保するためには、この範囲の炭素量が適当だからである。ただし、焼結工程において、炭素は酸素と化合して一酸化炭素となるので(下記(II)式を参照)、原料粉末を成形して焼結した後の炭素の含有量が0.10%以上0.60%以下となるようにするためには、これよりも多くの炭素が原料粉末に含まれている必要がある。
Si(珪素)の含有量が表1の通りであるのが好ましいのは、Co−Cr合金はCrを多く含むために粉末の酸素量が高くなる傾向があるが、原料粉末中の酸素量が高いと焼結後の炭素量が安定しないため、原料粉末中の酸素量を下げる必要があり、これにはSi(珪素)が0.5%以上含まれることが有効だからである。反対に、Siの含有量が1.5%を超えると、Co−Cr合金の靭性が低下するので好ましくない。
Mn(マンガン)の含有量が表1の通りであるのが好ましいのは、原料粉末中のマンガンの量が多くなると酸素量が高くなる傾向があるとともに、原料粉末が球状化してペレットの成形性を低下させるからである。また、マンガンは、Co−Cr合金の靭性を向上させる効果があるので、0.05%以上含有されるのが好ましいからである。
Ni(ニッケル)の含有量が表1の通りであるのが好ましいのは、Niはアレルギーの原因の1つとされているので、より少ない方が好ましいからである。Niの含有量が0.20%以下の場合は、生体への影響がほとんどない。
Cr(クロム)の含有量が表1の通りであるのが好ましいのは、Crの含有量がこの範囲よりも少ないと耐食性や強度が低下し、Crの含有量がこの範囲よりも多いと脆化相を発生させるからである。
Mo(モリブデン)の含有量が表1の通りであるのが好ましいのは、Moは固溶強化、耐食性改善に必要であり、4%よりも少ない場合はこれを十分に満足させることができず、7%を超えると脆化しやすくなるからである。
B(硼素)の含有量が表1の通りであるのが好ましいのは、Bは粒界強化元素であり合金の強度を向上させる効果があるが、この範囲よりも多すぎると合金が脆くなるからである。
N(窒素)の含有量が表1の通りであるのが好ましいのは、歯科鋳造用の材料としては0.2%以上の含有量で十分な効果があるが、それ以上の窒素(0.3%以上)を含有させることによって、Co−Cr合金の窒素量を安定化させることができるからである。逆に、窒素量が1.60%よりも多くなると、Co−Cr合金ペレットを溶融させて鋳造するときに窒素ガスの発生量が多くなり、鋳造に要する時間が長くなるからである。ただし、本発明では、窒化工程で焼結体を窒化させるので、必ずしも原料粉末の段階で窒素が含まれている必要はない。
O(酸素)の含有量が表1の通りであるのが好ましいのは、Oの含有量が0.20%よりも多くなると、Co−Cr合金ペレットを溶融させたときにスラグの発生量が多くなり、鋳造欠陥に繋がるおそれがあるからである。ただし、本発明では、下記の(II)式の反応によって酸素を除去することができるので、原料粉末の段階で酸素の含有量は必ずしも0.20%以下である必要はない。
Fe(鉄)の含有量が表1の通りであるのが好ましいのは、Feの含有量が3.00%よりも多くなるとCo−Cr合金の耐食性が低下するからである。
〔原料粉末〕
本発明において、Co−Cr合金ペレットを製造するための原料粉末は、得ようとするCo−Cr合金ペレットの組成に合わせて、その組成が調整されているものを使用するのが好ましい。
本発明に用いられるCo−Cr合金ペレットの原料粉末は、複数種類の金属粉末を混合して調製したものであってもよいし、複数種類の金属を溶融させて合金を製作した後に、この合金を粉末状に加工して得られた金属粉末であってもよい。
原料粉末の粒径は特に制限するものではない。原料粉末の粒径は、ペレットの成形性や、得ようとする焼結体の焼結密度などに応じて適宜に設定することができる。原料粉末の粒径は、例えば、10μm〜500μmの範囲となるように設定することができる。
本発明に用いられるCo−Cr合金ペレットの原料粉末としては、水噴霧法やガス噴霧法によって製造された粉末を使用することができる。ただし、ガス噴霧法による原料粉末は高コストであり、得られる粉末粒子が球形状であるのでプレス成形が若干困難であるという問題がある。したがって、本発明に用いられるCo−Cr合金ペレットの原料粉末としては、水噴霧法によって得られる原料粉末が好ましい。
水噴霧法によって得られる原料粉末は、酸素が多く含まれるので溶融時にスラグ発生の原因になるという問題がある。しかし、本発明では、後述するように、原料粉末に炭素粉末を添加することによってこのような問題を解決することができる。
〔ペレット成形工程〕
本発明に係るCo−Cr合金ペレットの製造方法では、上述のようにして準備された原料粉末をペレット状に成形する。ペレットの形状は、特に制限するものではなく、例えば、球形状、円柱状、棒状、立方体状などに成形することができる。ペレットの大きさは、特に制限するものではなく、例えば、一粒が約5g〜10g程度となるように成形することができる。
原料粉末をペレット状に成形するためには、公知のペレット成形機、プレス機、押出成形機などを使用することができる。なお、原料粉末をペレット状に成形する際には、原料粉末に対して、成形機との摩擦を低減させるための潤滑剤などを添加しておくのが好ましい。また、原料粉末をペレット状に成形する際には、ペレットの成形性や保形性を高めるために、樹脂バインダなどを添加しておくことも一つの手段である。潤滑剤や樹脂バインダは焼結炉を汚染するので、焼結工程の前に、これらを取り除く脱脂工程を実施するのが好ましい。
〔焼結工程〕
本発明では、原料粉末をペレット状に成形して得られた成形体を焼結して焼結密度が60%以上92%以下の焼結体を作製する。ここでいう「焼結密度」とは、焼結体の「緻密さ」の指標のことであり、例えば、以下の(I)式により算出することができる。
(焼結体のかさ密度[g/cm])/(焼結体組成の合金の真密度[g/cm])×100(%)・・・(I)
上記(I)式において、焼結体のかさ密度とは、例えば焼結体の外形寸法を用いて算出される体積を利用して求められる密度のことである(焼結体の内部の空隙も、焼結体の一部であると仮定したときの密度である)。金属の真密度とは、内部に空隙が含まれていないとしたときの理論密度のことである。つまり、焼結密度が高いということは、その焼結体の内部の空隙が少なく、その焼結体がより緻密に成形されている、ということである。
本発明において、焼結体(Co−Cr合金ペレット)の焼結密度を60%以上92%以下の範囲に設定するのは、以下のような理由に基づいている。
Co−Cr合金ペレットの焼結密度が60%よりも小さい場合には、Co−Cr合金ペレットを溶融させるときの高周波入力効率が低下してしまう。この場合、Co−Cr合金ペレットの溶融が十分でなくなり、鋳造品の内部に空隙(ボイド)などの欠陥が生ずるおそれがある、という問題がある。
他方、Co−Cr合金ペレットの焼結密度が92%よりも大きい場合には、ペレットの内部に微細な閉気孔が多数存在することとなる。この場合、ペレットを溶融させたときに、これらの閉気孔に閉じこめられているガスを十分に除去することができなくなり、鋳造品の内部に空隙(ボイド)などの欠陥が生ずるおそれがある。また、Co−Cr合金ペレットの溶融加熱時には、そのCo−Cr合金ペレットに含まれている余剰の窒素成分が窒素ガスとなって放出されるが、焼結密度が92%よりも大きい場合には、溶融前の窒素ガスの放出が十分でなくなり(ペレットの表面に通じている気孔が少ないためである)、この窒素ガスが溶融時のバブリングの発生を引き起こしたり、鋳造品の欠陥を引き起こしてしまう、という問題がある。
また、Co−Cr合金ペレットの焼結密度が92%よりも大きい場合には、当該ペレットの表面に通じている気孔が少なくなるために、後述する窒化工程において、Co−Cr合金ペレットを十分に窒化することができなくなる(これについては〔窒化工程〕のところで詳しく説明する)。
ところで、Co−Cr合金は、その組成としてクロムが多く含まれているために、粉末にはO(酸素)が含まれてしまう。また、前述したように、水噴霧により得られる原料粉末を使用する場合には、その原料粉末には多くのO(酸素)が含まれてしまう。このような酸素は、Co−Cr合金ペレットを溶解させたときにスラグ発生の原因となるために、できる限り取り除いておくことが好ましい。本発明では、焼結工程において以下の(II)式の反応を生じさせることによって、Co−Cr合金に含まれる酸素を除去することができる。
C(炭素)+O(酸素) → COガス↑・・・(II)
上記(II)式の反応を生じさせて酸素を除去するとともに、Co−Cr合金ペレットの炭素の含有量を表1の範囲に調整するためには、原料粉末のC(炭素)の含有量は、以下の(III)式で示される範囲に調整されていることが好ましい。
{原料粉末のO(酸素)の含有量×0.75+0.10}%以上、
{原料粉末のO(酸素)の含有量×0.75+0.60}%以下(%はすべて重量基準) ・・・(III)
上記(III)式において、「0.75」という数字は、CとOの原子量の比の値である。原料粉末(Co−Cr合金)のC(炭素)の含有量が上記(III)式の範囲に調整されていることによって、原料粉末に含まれるO(酸素)は殆ど除去される。また、酸素の除去のために原料粉末中の炭素が消費された場合であっても、焼結・窒化後のCo−Cr合金ペレットのC(炭素)の含有量は、0.10%以上0.60%以下の範囲に維持される。
原料粉末のC(炭素)の含有量を上記(III)式の範囲に調整するためには、原料粉末に対して炭素を添加すればよい。この炭素は、カーボンブラックなどの炭素粉の形態で添加することが好ましいが、C(炭素)を含む他の化合物や炭化物の形態で添加してもよい。原料粉末に対して炭素粉の形態で炭素を添加することによって、原料粉末のC(炭素)の含有量をより簡単で正確に調整することができる。

原料粉末中の酸素を除去して0.20%以下とするためには、焼結工程における焼結温度は、900℃以上1350℃以下であることが好ましく、1050℃以上1350℃以下であることがより好ましい。この範囲の温度で成形体を加熱して焼結することによって、上記(II)式の反応をより確実に進行させることができるからである。また、この範囲の加熱温度で焼結することによって、焼結体としての必要強度をより確実に確保することができるからである。焼結雰囲気は、反応が安定する雰囲気であればよく、実用的には真空圧、Ar(アルゴン)、Nの微圧(5-20Torr)、アンモニア(分解ガス)などを使用することができる。
〔窒化工程〕
本発明に係るCo−Cr合金ペレットの製造方法では、原料粉末をペレット状に成形して得られた成形体を焼結して焼結体を作製し、この焼結体を窒素が存在する雰囲気下で窒化させる。焼結体を窒化させるためには、焼結体の冷却過程で雰囲気中に窒素ガスを導入してもよいし、あるいは、焼結体を冷却後に再度加熱して窒化させてもよい。アンモニア雰囲気下で焼結させた場合には、焼結体を冷却する過程において同時に窒化を進行させることが可能である。
焼結体を窒化させることにより、この焼結体には窒化クロムなどの形態で窒素が含有されることとなる。この窒化クロムは、1250℃以上では分解するため、窒化温度は1250℃以下である必要がある。反対に、窒化温度が低すぎる場合には、窒化速度が遅くなるので、窒化に要する時間が長くなってしまう。したがって、窒化工程における窒化温度は、700℃以上1100℃以下であることが好ましい。窒化温度がこの範囲であると、焼結体を速やかにかつ安定的に窒化させることが可能になる。
本発明に係るCo−Cr合金ペレットの製造方法では、焼結体の焼結密度が60%以上92%以下に設定されており、焼結体の内部には、焼結体の表面に通じる気孔や空隙が多数形成されている。したがって、焼結体を窒素が存在する雰囲気下で窒化させることによって、焼結体の表面部だけではなく、焼結体の内部まで窒化させることが可能である。
また、本発明に係る方法の場合、焼結体を窒化させるだけでよいので、従来の方法のように、原料粉末を溶融させて窒素ガスを吹き込む必要がない。この場合、原料粉末を溶融させるための高熱を作り出す必要がないので、Co−Cr合金ペレットを製造する際における作業環境が良好になる。
また、本発明に係る方法の場合、Co−Cr合金ペレットを溶融鋳造法によって製造するのとは異なり、原料粉末をペレット状に成形して焼結するだけである。したがって、鋳造品ペレットの鋳バリ等を研削によって取り除く工程が不要であり、研削粉からなる粉塵によって作業環境が悪化することを防止することができる。
本発明に係るCo−Cr合金の製造方法によれば、Co−Cr合金ペレットに十分な量の窒素を含有させることが可能であり、Co−Cr合金からなる鋳造品の機械的特性、特に、延性を著しく向上させることができる。例えば、床、バー、クラスプ、維持装置など歯科医療用部品の機械的特性を著しく向上させることが可能である。
以下、本発明のさらに具体的な実施例について説明する。
まず、水噴霧法によって得られたCo−Cr合金の原料粉末を準備した。この原料粉末は、100メッシュの篩いを通過させて粒径を調整したものであり、その組成は下記の表2に示す通りである。
原料粉末のO(酸素)の含有量は、0.70%である。したがって、上記(II)式の反応を生じさせて酸素を除去するために、理論的には、0.70×0.75=0.525%の炭素を添加する必要がある。また、焼結体の炭素の含有量を0.10%以上0.60%以下の範囲に維持するためには、原料粉末に対して炭素を添加することによって、原料粉末の炭素の含有量が0.625%以上1.125%以下となるようにする調整する必要がある。
Figure 0004376826
準備した原料粉末に対して炭素粉と非金属含有系潤滑剤を添加した後に、この原料粉末をプレス機によって直径16mm、高さ5mmの円柱状に成形した。潤滑剤の添加量は、原料粉末全体に対して1%とした。プレス成形圧力は500MPaとした。得られた成形体を窒素ガス雰囲気下で500℃の温度で1時間脱脂した後に、この成形体を1180℃の温度で1時間加熱して焼結を行った。焼結雰囲気は、真空とアンモニアガスでそれぞれ行った。このようにして得られた焼結体の組成を分析した。分析結果を下記の表3に示す。
Figure 0004376826
表3に示す結果からわかるように、原料粉末に対して炭素を添加することによって、焼結体の酸素の含有量を0.2%以下に低減できることが判明した。また、原料粉末からなる成形体をアンモニアガス雰囲気下で焼結させた後にそのまま冷却することによって、焼結体に0.30%以上の窒素を含有させることができることが判明した。また、原料粉末の炭素の量を調整することによって、焼結体に含まれる炭素の量を制御できることが判明した。
つぎに、実施例1で得られた焼結体(表3のNO.3の焼結体)を窒素が存在する雰囲気下で加熱して窒化処理を行った。結果を以下の表4に示す。
Figure 0004376826
焼結体は、窒素が存在する雰囲気下で加熱することによって容易に窒化が可能であることが判明した。また、表4に示す結果からわかるように、窒化温度が700℃を下回る場合は窒素含有量が十分ではなく、1100℃を上回る場合は窒素含有量がほとんど増加しないことが判明した。このことから、窒化工程における窒化温度は、700℃以上1100℃以下であることが好ましいことが判明した。
また、表4に示す結果からわかるように、窒化後のCo−Cr合金ペレットを溶融・鋳造した後の鋳造品の窒素含有量は、Co−Cr合金ペレットの窒素含有量が0.40%以上である場合には、ほぼ0.30%程度で一定であることが判明した。これは、Co−Cr合金ペレットの加熱・溶融時に余剰の窒素が放出されるとともに、Co−Cr合金の溶融温度で窒素の溶解度によってほぼ一定になることが原因であると考えられる。
つぎに、実施例1の表3のNO.1〜NO.6で得られた焼結体について、窒素が存在する雰囲気中で900℃で1時間加熱することによって窒化処理を行った。窒化処理を行ったCo−Cr合金ペレットを高周波で溶融した後に、加圧鋳造機で平行部が直径3mm、長さ15mmの引張試験片と硬さ測定用の小板とを作製した。そして、得られた引張試験片と小板とを用いて、引張試験及び硬さ試験を行った。引張試験方法は、JIS-Z-2241に従った。これらの結果を、表5のNO.17〜NO.22に示す。
Figure 0004376826
また、比較例として、Co−Cr合金の原料を溶融して得られた鋳造品ペレット(M1、M2)と、Co−Cr合金の原料の溶融時に窒化物を添加することにより得られた鋳造品ペレット(MN1、MN2)についても、同様に試験を行った。試験結果を以下の表6に示す。
Figure 0004376826
表5と表6の結果を比較すればわかるように、焼結体を窒化させてなるCo−Cr合金ペレットを溶融して得られた鋳造品(表5)は、鋳造品ペレットを溶融して得られた鋳造品(表6)よりも安定的に窒素が含まれており、物理的強度、特に伸び(延性)が優れていることが判明した。
実施例4では、まず、水噴霧法によって得られたCo−Cr合金の原料粉末を準備した。この原料粉末は、100メッシュの篩いを通過させて粒径を調整したものであり、その組成は上記の表2に示した通りである。この原料粉末に対して、以下の表7に示す組成を有し、かつ、粒径が30μm以下であり平均粒径が8.5μmの微粉状の原料粉末を混合した。さらに、この混合後の粉末に対して、炭素粉(上述の(II)式の反応が生じた後の残留炭素量が0.15%となるようにその量を調整した炭素粉)と潤滑剤を添加し、100MPaから600MPaの圧力で直径16mm高さ5mmの円柱状に成形して成形体を得た。この成形体を、真空状態で1250℃の加熱温度で1時間焼結させて焼結体を得た。これにより、焼結密度の異なる複数種類の焼結体を得た。これらの焼結体の冷却過程(900℃)で窒素を導入して1時間窒化させた。これにより、焼結密度、及び、C、O、Nの含有量が異なる複数種類の焼結体(Co−Cr合金ペレット)を得た(P1〜P8)。焼結体の焼結密度と、焼結体の組成分析の結果を以下の表8に示す。
Figure 0004376826
Figure 0004376826
P1〜P8の焼結体(Co−Cr合金ペレット)を高周波で溶融して、実施例3と同様に引張試験片と硬さ測定用の小板とを加圧鋳造機により鋳造した。得られた鋳造品の組成分析の結果を表8に示す。Co−Cr合金ペレットの溶融時の所見(目視による観察結果)、Co−Cr合金ペレットが溶融するまでの時間、鋳造品の引張試験の結果、鋳造品の硬さ試験の結果、及び、鋳造品を顕微鏡で観察したときのミクロ組織の所見を、表9に示す。
Figure 0004376826
表9に示す結果より、焼結密度が60%を下回ると、Co−Cr合金ペレットの溶融に時間がかかることや、溶融後の金属の上に未溶融の焼結体が浮いて溶け残る等の現象があることが判明した。また、焼結密度が92%を上回ると、気孔や介在物の浮上が制限され、鋳造品のボイド(空隙)やインクルージョン(固まり等の残存)などの欠陥が生じやすくなることが判明した。
また、表9に示す結果より、原料粉末に粒径が30μm以下の微粉末を混合することによって、焼結体の焼結密度が高くなることが判明した。しかし、この場合、焼結体の内部に存在する気孔や介在物が浮上しづらく鋳造品にこれらが残留するので、鋳造品のミクロ組織においてインクルージョンやボイドなどの欠陥が生じやすいことが判明した。また、焼結体の焼結密度が高すぎると窒化が十分でなくなるので、Co−Cr合金ペレットの窒素含有量が低くなることが判明した。以上より、鋳造品の物理的強度(特に伸び)を高めるためには、焼結体の焼結密度が60%以上92%以下であることが好ましいことが判明した。

Claims (7)

  1. 歯科鋳造用のCo−Cr合金ペレットの製造方法であって、
    原料粉末をペレット状に成形して得られた成形体を焼結して焼結密度が60%以上92%以下の焼結体を得る焼結工程と、
    前記焼結体を窒素が存在する雰囲気下で窒化させる窒化工程と、を有することを特徴とする、Co−Cr合金ペレットの製造方法。
  2. 請求項1に記載のCo−Cr合金ペレットの製造方法であって、
    焼結工程における焼結温度が900℃以上1350℃以下であることを特徴とする、Co−Cr合金ペレットの製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載のCo−Cr合金ペレットの製造方法であって、
    窒化工程における窒化温度が700℃以上1100℃以下であることを特徴とする、Co−Cr合金ペレットの製造方法。
  4. 請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載のCo−Cr合金ペレットの製造方法であって、
    原料粉末のC(炭素)の含有量が、{原料粉末のO(酸素)の含有量×0.75+0.10}%以上、{原料粉末のO(酸素)の含有量×0.75+0.60}%以下(%はすべて重量基準)に調整されていることを特徴とする、Co−Cr合金ペレットの製造方法。
  5. 請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載のCo−Cr合金ペレットの製造方法であって、
    原料粉末のC(炭素)の含有量を、当該原料粉末に炭素粉末を添加することによって調整することを特徴とする、Co−Cr合金ペレットの製造方法。
  6. 請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載のCo−Cr合金ペレットの製造方法によって製造された、Co−Cr合金ペレット。
  7. 請求項6に記載のCo−Cr合金ペレットであって、
    組成が、C:0.10%以上0.60%以下、Si:0.50%以上1.50%以下、Mn:0.05%以上0.50%以下、Ni:0.20%以下、Cr:26.00%以上35.00%以下、Mo:4.00%以上7.00%以下、B :0.10%以下、N:0.30%以上1.60%以下、O:0.20%以下、Fe:3.00%以下(%はすべて重量基準)、であることを特徴とする、Co−Cr合金ペレット。
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