JP2016065311A - スパッタリングターゲットおよびスパッタリングターゲットセット - Google Patents

スパッタリングターゲットおよびスパッタリングターゲットセット Download PDF

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Abstract

【課題】使用時に破損しにくく、内側からターゲット材を冷却しやすい円筒型のスパッタリングターゲット、スパッタリングターゲットセットを提供する。
【解決手段】円筒形状を呈しセラミックス焼結体からなるターゲット材2と、ターゲット材2を保持するバッキングチューブ3と、を有し、ターゲット材2は、円筒形状の軸方向に設けられた貫通孔2aを有し、バッキングチューブ3は、貫通孔2aに挿入され、バッキングチューブ3の形成材料の融点は、セラミックス焼結体の融点よりも高く、ターゲット材2とバッキングチューブ3とは、直接接合しているスパッタリングターゲット1。
【選択図】図1

Description

本発明は、スパッタリングターゲットおよびスパッタリングターゲットセットに関するものである。
従来、無機薄膜の形成方法として、スパッタ法が知られている。スパッタ法を実施するスパッタ装置においては、スパッタリングターゲットとして、平板型のもの(平板型ターゲット)を用いるものと、円筒型のもの(円筒型ターゲット)を用いるものがある。
これらのうち、円筒型ターゲットを用いるスパッタ装置は、円筒型ターゲットの内側からターゲット材を冷却しつつ、円筒型ターゲットを回転させながらスパッタリングを行う構成となっている。そのため、円筒型ターゲットを用いるスパッタ装置では、ターゲット材の使用効率が70%以上となっている。この使用効率は、平板型ターゲットを用いるスパッタ装置において、ターゲット材の使用効率が20%〜30%であることと比べると非常に高く、省資源化や経済的負担の軽減の観点から有用である。
円筒型ターゲットとしては、銅を形成材料とする円筒型のバッキングチューブの周囲に、ターゲット材を保持したものが知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。
また、円筒型のターゲット材を作製した後、貫通孔に円筒型のバッキングチューブを挿入し、両者をインジウム系の半田を用いて接続した構成のものが知られている(例えば、特許文献5参照)。
特開平05−230644号公報 特開平05−230645号公報 特開平07−26372号公報 特開平07−26374号公報 特開2013−147368号公報
しかしながら、上記方法には次のような問題がある。すなわち、特許文献1〜4では、バッキングチューブの形成材料として銅を使用しているが、一方で、ターゲット材の形成時に銅の融点(1080℃)近傍の焼結温度(1000℃〜1130℃)を採用しているため、得られる円筒型ターゲットが変形し、使用不能となるおそれがある。
また、ターゲット材とバッキングチューブとの熱膨張差を緩和し剥離を抑制するため、バッキングチューブの表面に、導電性の金属粉末を用いたアンダーコート層を設けることがある。しかし、このような層を設けることにより、スパッタリングターゲットのコスト上昇につながりやすい。また、スパッタ装置の運転中におけるターゲット材の冷却効率が低下しやすい。
特許文献5に記載の円筒型ターゲットでは、インジウム系の半田を用いた接続(ボンディング)に労力およびコストが必要となる。また、バッキングチューブとターゲット材との間に半田層が介在するため、ターゲット材の冷却効率が低下する。さらに、インジウム系の半田は融点が低いため、スパッタ装置の運転条件によってはスパッタ時に半田層が溶融し、バッキングチューブからターゲット材がはがれるおそれがある。そして、インジウムとターゲット材との熱膨張率の違いから、加熱時にターゲット材に亀裂が生じるおそれがある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、使用時に破損しにくく、内側からターゲット材を冷却しやすい円筒型のスパッタリングターゲットを提供することを目的とする。また、上述のようなスパッタリングターゲットを有するスパッタリングターゲットセットを提供することをあわせて目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、円筒形状を呈しセラミックス焼結体からなるターゲット材と、前記ターゲット材を保持するバッキングチューブと、を有し、前記ターゲット材は、前記円筒形状の軸方向に設けられた貫通孔を有し、前記バッキングチューブは、前記貫通孔に挿入され、前記バッキングチューブの形成材料の融点は、前記セラミックス焼結体の融点よりも高く、前記ターゲット材と前記バッキングチューブとは、直接接合しているスパッタリングターゲットを提供する。
本発明の一態様においては、前記ターゲット材を構成する前記セラミックス焼結体の相対密度は、99%以上100%以下である構成としてもよい。
本発明の一態様においては、前記バッキングチューブと前記ターゲット材との接合率は、99.5%以上100%以下である構成としてもよい。
本発明の一態様においては、前記バッキングチューブの形成材料の線膨張係数は、1×10−5/℃未満である構成としてもよい。
本発明の一態様においては、前記ターゲット材は、前記軸方向に0.5m以上延在して形成され、且つ一体焼結体である構成としてもよい。
本発明の一態様においては、前記バッキングチューブの形成材料は、Ti,Nb,Ta,Cr,V,Hf,Zr,Mo,Wを含む金属材料である構成としてもよい。
本発明の一態様においては、前記セラミックス焼結体を構成するセラミックスは、導電体の形成材料である構成としてもよい。
本発明の一態様においては、前記セラミックスは、酸化亜鉛を含む構成としてもよい。
本発明の一態様においては、前記セラミックスは、酸化インジウムを含む構成としてもよい。
本発明の一態様においては、前記セラミックスは、酸化スズを含む構成としてもよい。
本発明の一態様においては、前記セラミックス焼結体を構成するセラミックスは、半導体の形成材料である構成としてもよい。
本発明の一態様においては、前記セラミックスは、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛の混合物である構成としてもよい。
本発明の一態様は、上記のスパッタリングターゲットを複数本有するスパッタリングターゲットセットを提供する。
本発明によれば、使用時に破損しにくく、内側からターゲット材を冷却しやすい円筒型のスパッタリングターゲットを提供することができる。また、このようなスパッタリングターゲットを有するスパッタリングターゲットセットを提供することができる。
スパッタリングターゲットを示す説明図である。 スパッタリングターゲットの製造方法を示す工程図である。 スパッタリングターゲットの製造方法を示す工程図である。 スパッタリングターゲットの製造方法を示す工程図である。 スパッタリングターゲットの製造方法を示す工程図である。 スパッタリングターゲットの製造方法を示す工程図である。
以下、図1〜図6を参照しながら、本発明の実施形態に係るスパッタリングターゲットについて説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜変えている。
図1は、スパッタリングターゲット1を示す説明図であり、図1(a)は概略斜視図、図1(b)は、図1(a)の線分Ib−Ibにおける矢視断面図である。
図に示すように、スパッタリングターゲット1は、円筒形状を呈するターゲット材2と、ターゲット材2を保持するバッキングチューブ3と、を有している。
ここで、本明細書において「円筒」とは、円柱の軸方向に貫通孔を有する中空状の立体を指す。貫通孔を有さず中実の立体は「円柱」と称する。また、円柱の「軸」とは、円柱の底面の中心を通り、円柱の側面と平行な直線のことを指す。
以下、順に説明する。
(ターゲット材)
ターゲット材2は、軸方向に設けられた貫通孔2aを有している。このようなターゲット材2は、一体焼結体であると好ましい。また、ターゲット材2の長さLは、軸方向に0.5m以上延在して形成されていると好ましい。詳しくは、ターゲット材2は、スパッタ法にて薄膜を成膜する対象物の幅に応じて長尺に形成されていることが好ましい。例えば、マザーガラスに対して成膜する場合、成膜対象物であるマザーガラスの世代に応じて長尺のターゲット材2とすると好ましく、8.5世代のマザーガラス(2200mm×2500mm)が成膜対象物である場合には、長さLが3m程度に形成されていると好ましい。
ターゲット材2は、セラミックス粉末の焼結体(セラミックス焼結体)を形成材料としている。セラミックス焼結体の形成材料であるセラミックスとしては、スパッタ装置で成膜する薄膜の種類に応じ、種々のものを採用することができるが、例えば、導電性を有するもの(導電体の形成材料であるもの)や、半導体の形成材料であるものが挙げられる。
導電体の形成材料であるセラミックスとしては、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズを挙げることができる。また、これらの導電体の形成材料であるセラミックスを、2種以上含むこととしてもよい。また、これらの導電体の形成材料であるセラミックスに、他の金属原子がドープされていてもよい。その他、導電体の形成材料であるセラミックスとしては、通常知られた構成のものを適用することができる。
例えば、ターゲット材2が、形成材料として酸化スズと酸化インジウムとを含む場合、このターゲット材2を用いてスパッタ法で成膜すると、酸化スズと酸化インジウムとの複合酸化物である酸化インジウムスズ(tin-doped indium oxide、ITO)の薄膜が得られる。
また、ターゲット材2が、形成材料として酸化亜鉛と酸化インジウムとを含む場合、このターゲット材2を用いてスパッタ法で成膜すると、酸化亜鉛と酸化インジウムとの複合酸化物であるIZO(登録商標)の薄膜が得られる。
また、導電体の形成材料であるセラミックスとしては、酸化亜鉛を主成分とし、酸化ガリウム、酸化アルミニウムあるいは酸化チタンとの複合酸化物であるTZO(チタンドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TAZO(チタンアルミニウムドープ酸化亜鉛)などを挙げることができる。ターゲット材2が、酸化ガリウム、酸化亜鉛の混合物である場合、このターゲット材2を用いてスパッタ法で成膜すると、酸化ガリウムおよび酸化亜鉛の複合酸化物であるGZOの薄膜が得られる。
ターゲット材2が、酸化アルミニウム、酸化亜鉛の混合物である場合、このターゲット材2を用いてスパッタ法で成膜すると、酸化アルミニウムおよび酸化亜鉛の複合酸化物であるAZOの薄膜が得られる。また、ターゲット材2が、酸化チタン、酸化亜鉛の混合物である場合、このターゲット材2を用いてスパッタ法で成膜すると、酸化チタンおよび酸化亜鉛の複合酸化物であるTZOの薄膜が得られる。
半導体の形成材料であるセラミックスとしては、酸化インジウム、酸化ガリウムおよび酸化亜鉛の複合酸化物であるIGZOを挙げることができる。ターゲット材2が、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛の混合物である場合、このターゲット材2を用いてスパッタ法で成膜すると、酸化インジウム、酸化ガリウムおよび酸化亜鉛の複合酸化物であるIGZOの薄膜が得られる。
また、半導体の形成材料であるセラミックスとしては、酸化錫と酸化亜鉛の複合酸化物(ZTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛および酸化錫の複合酸化物、酸化ガリウム、酸化亜鉛および酸化錫の複合酸化物、酸化インジウムと酸化ガリウムの複合酸化物、酸化インジウムと酸化亜鉛の複合酸化物、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化錫及び酸化亜鉛の複合酸化物などを挙げることができる。ターゲット材2が、上記酸化物の各組合わせからなる混合物である場合、このターゲット材2を用いてスパッタ法で成膜すると、上記各複合酸化物の薄膜が得られる。
その他、半導体であるセラミックスとしては、通常知られた構成のものを適用することができる。
ターゲット材2は、ターゲット材2を構成するセラミックス焼結体の相対密度が、99%以上100%以下であると好ましい。スパッタリングターゲット1が有するターゲット材2が、このような相対密度を有する場合、スパッタ装置にて成膜に用いた際、異常放電が発生しにくく、安定に成膜することができる。
ここで、セラミックス焼結体の「相対密度」とは、セラミックス焼結体の理論密度に対する、実際に得られたセラミックス焼結体の密度の割合を指し、下記式により求めることができる。なお、下記式ではセラミックス焼結体のことを単に焼結体と称する。
相対密度(%)=100×[(焼結体の密度)/(焼結体の理論密度)]
セラミックス焼結体の密度は、測長法により測定することができる。
本明細書において「測長法」とは、セラミックス焼結体を加工して所定形状の試験片を作製した後、当該試験片の寸法を測定して求めた試験片の体積と、別途測定した試験片の質量と、から密度を算出する方法のことを指す。試験片の形状は、正確に採寸し体積を算出可能な形状であれば種々の形状を採用することができ、例えば、円柱、立方体、直方体などの形状を例示することができる。
セラミックス焼結体の理論密度として、セラミックス焼結体がセラミックス単体で構成されている場合は、文献値を採用することができる。例えば、酸化インジウムの単体密度は7.18g/cm、酸化スズの単体密度は6.95g/cm、酸化ガリウムの単体密度は5.88g/cm、酸化亜鉛の単体密度は5.61g/cmである。
また、セラミックス焼結体が複数のセラミックスの混合物で構成されている場合は、焼結体の原料である各セラミックスの単体密度に各セラミックスの混合質量比をかけ、それらの和の値(質量平均値)を採用することができる。
ただし、セラミックス焼結体に含まれる金属原子の割合と同じ金属原子の割合の単相結晶の情報がJCPDS(Joint Committee of Powder Diffraction Standards)カードに記載されている場合は、JCPDSカードに記載された該当する結晶の理論密度を上記式中の理論密度として用いることができる。
具体例として、セラミックス焼結体がIGZO膜を形成する目的に用いられるものである場合を想定する。この場合、セラミックス焼結体は、酸化インジウム粉末と酸化ガリウム粉末と酸化亜鉛粉末との混合物を形成材料とする。例えば、セラミックス焼結体において、インジウムとガリウムと亜鉛との原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1となるように混合した場合、JCPDSカードにはInGaZnO4(In:Ga:Zn=1:1:1)の単相結晶の情報が記載されている。そのため、JCPDSカード(No.381104)に記載のInGaZnO4の単相結晶の理論密度(6.379g/cm)を上記式中の理論密度とすることができる。
また、セラミックス焼結体において、インジウムとガリウムと亜鉛との原子数比がIn:Ga:Zn=2:2:1となるように混合した場合、JCPDSカード(No.381097)に記載のIn2Ga2ZnO7(In:Ga:Zn=2:2:1)の単相結晶の理論密度(6.495g/cm)を上記式中の理論密度とすることができる。
なお、上述のような、IGZO膜を形成する目的に用いられるセラミックス焼結体においては、下記条件を満たすような組成とする。
条件:金属原子比In:Ga:Zn=x:y:zにおいて、0.2≦x/(x+y)≦0.8であり、かつ0.1≦z/(x+y+z)≦0.5である関係を満たす。
このようなセラミックス焼結体を用いると、下記式(1)で表される組成となるIGZO膜を成膜可能なスパッタリングターゲットとなる。
InGaZn …(1)
(ただし、式中のx,y,z,aは、0.2≦x/(x+y)≦0.8、0.1≦z/(x+y+z)≦0.5、a=1.5x+1.5y+z、を満たす。)
このような比率となるようにセラミックス焼結体を調整すると、得られるIGZO膜が良好なトランジスタ特性を有するものとなる。
なお、セラミックス焼結体における金属原子の割合と、JCPDSカードに記載されている単相結晶の金属原子の割合とが一致しない場合、そのズレが5%以内であれば、JCPDSカードに記載されている単相結晶の理論密度を上記式中の理論密度とすることができる。
(バッキングチューブ)
バッキングチューブ3は、ターゲット材2の貫通孔2aに挿入されている。本実施形態のスパッタリングターゲット1においては、バッキングチューブ3は、円筒形状を呈し、軸方向に設けられた貫通孔3aを有している。バッキングチューブ3の厚みは、例えば4mmである。
バッキングチューブ3は、ターゲット材2の形成材料であるセラミックス焼結体の融点よりも高い融点を有する金属材料を形成材料としている。
バッキングチューブ3の形成材料としては、Ti(融点:1660℃)、Nb(融点:2470℃)、Ta(融点:2990℃)、Cr(融点:1860℃)、V(融点:1890℃)、Hf(融点:2230℃)、Zr(融点:1850℃)、Mo(融点:2620℃)、W(融点:3400℃)を含む金属材料を例示することができる。例示した各金属の融点は、「理化学辞典」(岩波書店、第5版)による。
また、バッキングチューブ3の形成材料である金属材料としては、上記金属を含む合金であってもよい。
バッキングチューブ3の形成材料は、線膨張係数が1×10−5/℃未満であると好ましい。
上述したバッキングチューブ3の形成材料の線膨張係数は、それぞれTi(8.9×10−6/℃)、Nb(7.2×10−6/℃)、Ta(6.5×10−6/℃)、Cr(6.5×10−6/℃)、V(8.3×10−6/℃)、Hf(6.0×10−6/℃)、Zr(5.9×10−6/℃)、Mo(5.1×10−6/℃)、W(4.5×10−6/℃)である。
なお、上記線膨張係数は「改訂4版金属データブック」(日本金属学会編、丸善株式会社)による。
これらの熱膨張係数は、上述のターゲット材2を構成するセラミックス焼結体の熱膨張係数とほぼ同等(10−6/℃オーダー)である。セラミックス焼結体の熱膨張係数を例示すると、例えば、IGZO(5.0×10−6/℃〜8.0×10−6/℃)、ITO(7.0×10−6/℃〜8.5×10−6/℃)、酸化亜鉛系焼結体(6.0×10−6/℃〜8.0×10−6/℃)、酸化スズ系焼結体(8.0×10−6/℃〜9.5×10−6/℃)である。
(スパッタリングターゲット)
スパッタリングターゲット1においては、ターゲット材2の貫通孔2aの内壁と、バッキングチューブの外壁とが、直接接合している。
「直接接合している」とは、貫通孔2a内において、ターゲット材2やバッキングチューブ3とは異なる形成材料からなり、ターゲット材2とバッキングチューブ3とを接合させる機能を有する層(例えば半田層)を介さず、貫通孔2aの内壁2xとバッキングチューブ3の外壁3xとが互いに接して接合している状態を指す。
そのため、スパッタリングターゲット1においては、スパッタ装置における使用時に、貫通孔3a側からターゲット材2を冷却しやすい。
ターゲット材2とバッキングチューブ3とが直接接合しているか否かについては、ターゲット材2とバッキングチューブ3との間に介在物が有るか無いかを、拡大視野における観察や、化学分析により確認することで容易に判断可能である。
ターゲット材2とバッキングチューブ3とが直接接合しているということに関連し、バッキングチューブ3の形成材料の線膨張係数は、ターゲット材2を構成するセラミックス焼結体の線膨張係数以下であると好ましい。線膨張係数がこのような関係であると、後述する製造時に、バッキングチューブ3がターゲット材2に焼き嵌め状態となり、接合強度が強くなる。
ターゲット材2の内壁2xと、バッキングチューブ3の外壁3xとは、少なくとも一部「拡散接合」している。または、ターゲット材2の内壁2xと、バッキングチューブ3の外壁3xとは、互いの表面の「アンカー効果」により接合している。
ここでの「拡散接合」とは、焼結時にターゲット材2の形成材料の一部がバッキングチューブ3へ拡散し、バッキングチューブ3の形成材料の一部がターゲット材2へ拡散することで(相互拡散することで)、互いに化学的に接合していること、を指す。
また、ここでの「アンカー効果」とは、内壁2xおよび外壁3xのそれぞれの表面に有する微細な凹凸に対し、相互に入り込むことで互いに物理的に接合していること、を指す。
これら2つの効果は、バッキングチューブ3の形成材料によって、寄与の割合が異なる。拡散接合の寄与が大きい形成材料としては、融点が2000℃未満のものが挙げられ、例えば、Ti、Ti合金、Cr、Cr合金、V、V合金を挙げることができる。
また、拡散接合の寄与が小さい形成材料としては、融点が2000℃以上のものが挙げられ、例えば、Mo、Mo合金、Ta、Ta合金、Nb、Nb合金、W、W合金を挙げることができる。
本実施形態のスパッタリングターゲット1においては、ターゲット材2とバッキングチューブ3との接合率は、99.5%以上100%以下であることが好ましい。接合率がこのような値であると、使用時におけるターゲット材2の冷却効率の低下や、亀裂の発生を抑制することができる。
なお、本明細書において、「接合率」(%)とは、「ターゲット材2とバッキングチューブ3との対向部分の全面積に対する、ターゲット材2とバッキングチューブ3とが接合している部分の面積の割合」を指す。図1においては、内壁2xおよび外壁3xの対向部分の全面積に対する、内壁2xおよび外壁3xで接合している部分の面積の割合のことを指す。
「接合している部分」では、拡散接合であってもよく、アンカー効果による接合であってもよい。接合していない部分では、内壁2xおよび外壁3xの境界部分に亀裂や隙間が生じていることから、例えば超音波探傷装置を用いて「接合していない部分」を検出し、面積を測定することができる。
[スパッタリングターゲットの製造方法]
図2〜図6は、上述のスパッタリングターゲット1の製造方法を示す工程図である。
図2〜図5は、ターゲット材2の原料であるセラミックス粉末をカプセル容器に充填し、熱間等方加圧(Hot Isostatic Pressing、HIP)処理を行ってセラミックス焼結体を得る工程を示す模式図である。以下、この工程で行う処理のことを「カプセルHIP」と称することがある。
カプセルHIP処理においては、カプセル容器10、離型剤11、仕切り12を用いる。さらに、ターゲット材2の原料であるセラミックス粉末2A、加工によりバッキングチューブ3となる中芯3Aを用いる。
(セラミックス粉末)
セラミックス粉末2Aとしては、製造するスパッタリングターゲット1が有するターゲット材2に応じて、対応するセラミックスの粉末を用いる。ターゲット材2が単一のセラミックスの焼結体である場合には、セラミックス粉末2Aも単一の粉末を用いる。また、ターゲット材2が例えばITOの原料である場合のように、複数のセラミックスの焼結体である場合には、セラミックス粉末2Aも対応するセラミックス粉末の混合物を用いる。
セラミックス粉末2Aが混合物である場合、予め混合した上でカプセル容器10に充填するとよい。混合の方法としては、通常知られたものを採用することができ、乾式であってもよく湿式であってもよい。
セラミックス粉末2Aの平均粒子径は、一般的に取扱いの容易な0.6μm以上、好ましくは1μm以上5μm以下である。ここで「平均粒子径」とは、レーザー回折・散乱法により測定した粒度分布における積算体積分率50%粒径を指す。
また、セラミックス粉末2Aは、カプセル容器10に充填したとき、充填率が50%以上となるような粉体特性を有しているとよい。これにより、カプセルHIP処理の差異に、カプセル容器10に加わる外圧によりカプセル容器10が破損するおそれが無くなる。
ここで「充填率」(%)とは、カプセルHIP処理後の焼結体が理論密度に到達したと想定した場合の、焼結体の理論密度に対する、セラミックス粉末2Aのタップ密度の割合を指す。充填率は、下記式により求めることができる。理論密度は、上述したものを採用することができる。
充填率(%)=100×(セラミックス粉末2Aのタップ密度/焼結体の理論密度)
「タップ密度」とは、JISK5101−12−2「顔料試験方法−第12部:見掛け密度又は見掛け比容−第2節:タンプ法」に基づいて測定される見掛け密度のことを指す。
セラミックス粉末2Aは、1000℃程度の仮焼後に機械解砕したり、スプレードライ法により造粒したりすることにより、上記充填率を実現可能なタップ密度となるように予備加工してもよい。
なお、上述のような、IGZO膜を形成する目的に用いられるスパッタリングターゲットを製造する場合、下記条件を満たすような組成でセラミックス粉末2Aを混合する。
混合条件:金属原子比In:Ga:Zn=x:y:zにおいて、0.2≦x/(x+y)≦0.8であり、かつ0.1≦z/(x+y+z)≦0.5である関係を満たす。
セラミックス焼結体においては、なかでも、0.2≦x/(x+y)≦0.5であり、かつ0.1≦z/(x+y+z)0.5である関係が好ましい。
特に、質量比(酸化インジウム粉末:酸化ガリウム粉末:酸化亜鉛粉末)にて、ほぼ44.2:29.9:25.9(モル比でIn:Ga:Zn=1:1:1)となるように均一に混合を行うのが好ましい。これにより、上述した特性的に好ましいInGaZnOを得るためのIGZO焼結体とすることができる。
また、質量比(酸化インジウム粉末:酸化ガリウム粉末:酸化亜鉛粉末)にて、ほぼ50.8:34.3:14.9(モル比でIn:Ga:Zn=2:2:1)となるように均一に混合を行うのが好ましい。これにより、上述した特性的に好ましいInGaZnOを得るためのIGZO焼結体とすることができる。
酸化インジウム粉末:酸化ガリウム粉末:酸化亜鉛粉末を質量比でほぼ50.8:34.3:14.9(モル比でIn:Ga:Zn=2:2:1)で混合する場合には、セラミックス粉末のタップ密度は、3.25g/cm以上であり、カプセル容器に多くのセラミックス粉末を充填でき、かつカプセルHIP処理後のカプセル容器が対称に収縮するため加工し易くなることから、好ましくは3.8g/cm以上6.4g/cm以下である。
酸化インジウム粉末:酸化ガリウム粉末:酸化亜鉛粉末を質量比でほぼ44.2:29.9:25.9(モル比でIn:Ga:Zn=1:1:1)で混合する場合には、セラミックス粉末のタップ密度は、3.18g/cm以上であり、好ましくは3.8g/cm以上6.3g/cm以下である。
混合方法は、均一に混合できる方法であれば特に限定されず、スーパーミキサー、インテンシブミキサー、ヘンシェルミキサー、自動乳鉢等により乾式混合、あるいは湿式混合(ボールミル等)を行う。湿式混合は、例えば、硬質ZrOボールなどを用いた湿式ボールミルや振動ミル、遊星ボールミルにより行えばよく、湿式ボールミルや振動ミルやビーズミルを用いた場合の混合時間は、12時間〜78時間程度が好ましい。液分離、乾燥については、それぞれ公知の方法を採用すればよい。
混合を十分に行い組成が均一となると、製造したターゲット中に各成分が偏析することなく、得られるターゲットの抵抗分布が均一となる。すなわちターゲットの部位により、高抵抗領域と低抵抗領域が存在することなく、スパッタ成膜時に高抵抗領域での帯電等によるアーキングなどの異常放電の原因が生じにくいため好ましい。
(セラミックス粉末の種類)
セラミックス焼結体の原料である被焼結材料(セラミックス粉末)の種類としては、例えば、透明導電性材料、透明半導体材料などを挙げることができる。なかでも透明導電性材料、透明半導体材料が好ましい。
透明半導体材料としては、例えば、酸化インジウム−酸化ガリウム−酸化亜鉛(IGZO)系膜を形成するためのターゲット材の原料であれば、IGZO系の焼結体(以下、IGZO系焼結体という)の原料となる金属酸化物粉末(以下、IGZO系粉末という)を挙げることができる。
また、透明半導体材料としては、酸化錫−酸化亜鉛(ZTO)系膜、酸化インジウム−酸化亜鉛−酸化錫系膜、酸化ガリウム−酸化亜鉛−酸化錫系膜、酸化インジウム−酸化ガリウム系膜、酸化インジウム−酸化亜鉛系膜、酸化インジウム−酸化ガリウム−酸化錫−酸化亜鉛系膜などを形成するためのターゲット材の原料であれば、それぞれ対応する焼結体の原料となる金属酸化物粉末を挙げることができる。
透明導電性材料としては、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO)系膜を形成するためのターゲット材の原料であれば、ITO系の焼結体(以下、ITO系焼結体という)の原料となる金属酸化物粉末(以下、ITO系粉末という)を挙げることができる。
また、透明導電性材料としては、チタンドープ酸化亜鉛(TZO)膜、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)膜、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)膜などの酸化亜鉛(ZnO)系膜を形成するためのターゲット材の原料であれば、ZnO系の焼結体(以下、ZnO系焼結体という)の原料となる金属酸化物粉末(酸化亜鉛系透明導電性材料、以下、ZnO系粉末という)を挙げることができる。
IZO系粉末として、例えば、酸化インジウム粉末と、酸化亜鉛粉末とからなる混合粉末などの金属酸化物粉末を挙げることができる。
ITO系粉末としては、例えば、酸化インジウム粉末と、ドーパントである酸化錫粉末とからなる混合粉末などの金属酸化物粉末を挙げることができる。
ITO系粉末を構成する各粉末の混合割合は、得られるITO系焼結体の錫の含有量が後述する範囲内となるように混合すればよい。
ZnO系粉末としては、例えば、酸化亜鉛粉末;酸化亜鉛粉末と、ドーパントである低原子価酸化チタン粉末とからなる混合粉末(a);酸化亜鉛粉末と、ドーパントである低原子価酸化チタン粉末と、酸化ガリウムもしくは酸化アルミニウムとからなる混合粉末(b);酸化亜鉛粉末と、ドーパントである酸化ガリウム粉末または酸化アルミニウム粉末とからなる混合粉末(c)などの金属酸化物粉末が挙げられる。
ZnO系粉末が混合粉末(a)である場合、混合粉末(a)におけるチタン原子数の割合は、全金属原子数に対して0.2%以上10%以下であり、好ましくは0.5%以上9%以下であり、より好ましくは0.8以上8%以下である。
チタン原子数の割合が上記範囲内であると、後述するカプセルHIP処理により、亜鉛を揮発することなく、チタン原子数の割合がこの範囲内である組成のZnO系焼結体を製造することができる。チタン原子数の割合は、化学的耐久性が要求される用途や透過率が要求される用途によって、チタンの含有量を増減させることができる。特にチタン原子数の割合が、全金属原子数に対して、0.5%超5%以下であれば、このZnO系焼結体を用いて、耐湿性、耐熱性など化学的耐久性、導電性などに優れた膜を形成することができる。
ZnO系粉末が混合粉末(b)である場合、混合粉末(b)におけるチタン原子数の割合は、全金属原子数に対して0.2%以上10%以下であり、好ましくは0.5%以上9%以下であり、より好ましくは0.8%以上8%以下である。混合粉末(b)におけるガリウムまたはアルミニウムの原子数の割合は、全金属原子数に対して0.1%以上6%以下であり、好ましくは0.5%以上6%以下であり、より好ましくは0.3%以上3.0%以下である。
チタン原子数の割合が上記範囲内であると、カプセルHIP処理により、亜鉛を揮発することなく、チタン原子数の割合がこの範囲内である組成のZnO系焼結体を製造することができる。チタン原子数の割合は、化学的耐久性が要求される用途や透過率が要求される用途によって、チタンの含有量を増減させることができる。
特にチタン原子数の割合が、全金属原子数に対して0.5%超5%以下であれば、このZnO系焼結体を用いて、耐湿性、耐熱性など化学的耐久性、導電性などに優れた膜を形成することができる。
さらに、ガリウムまたはアルミニウムの原子数の割合が全金属原子数に対して0.1%以上6%以下であれば、後述するカプセルHIP処理により、亜鉛を揮発させることなく、ガリウムまたはアルミニウムの原子数の割合が上記範囲内である組成のZnO系焼結体を製造することができる。このような焼結体を用いると、導電性、透明性などに優れた膜を形成可能なターゲット材とすることができる。
ZnO系粉末が混合粉末(c)である場合、混合粉末(c)におけるガリウムまたはアルミニウムの原子数の割合は、全金属原子数に対して1.0%以上7.0%以下であり、好ましくは1.5%以上6.0%以下であり、より好ましくは2.0%以上5.0%以下である。
低原子価酸化チタン粉末としては、TiO(II)、Ti(III)という整数の原子価を有するものばかりでなく、Ti、Ti、Ti11、Ti、Ti15等も含む、一般式:TiO2−X(X=0.1〜1)で表され、なかでも、TiO(II)またはTi(III)TiOが好ましい。これは、Tiの結晶構造は三方晶であり、これと混合する酸化亜鉛の結晶構造は通常六方晶のウルツ鉱であるため、結晶構造の対称性が一致し、固相焼結する際に置換固溶しやすいからである。
この低原子価酸化チタンの構造は、X線回折装置(X-Ray Diffraction、XRD)、X線光電子分光装置(X-ray Photoelectron Spectroscopy、XPS)などの機器分析の結果によって確認することができる。
(中芯)
中芯3Aは、上述のバッキングチューブ3と同じ形成材料で形成された円柱状の部材である。中芯3Aは、後に機械加工されて貫通孔が形成されることで、バッキングチューブ3となる。
(カプセル容器)
カプセル容器10は、円柱状の空間を有する中空有底の金属容器であり、内部空間を有する本体10Aと、脱気用の排気管を有する蓋10Bとを含む。
カプセル容器10の形成材料としては、セラミックス粉末2Aを充分に封止でき、カプセルHIP処理の焼結温度において、外圧により充分に変形するが破裂するおそれがない材料であればよい。カプセル容器10の形成材料としては、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、ステンレス、タンタル、ニオブ、銅、ニッケル等が用いられ、カプセルHIP処理の焼結温度によって使い分けをすることができる。
カプセルHIP処理の焼結温度が低温領域(1000℃以下)では、銅、ニッケル、アルミニウムを使用することができる。焼結温度が1000℃を超えて1350℃以下の領域では、鉄、ステンレスが用いられる。焼結温度が1350℃を超えるような高温領域ではタンタル、ニオブが用いられる。
なお、カプセル容器10の形成材料としては、カプセルHIP処理の焼結温度にもよるが、アルミニウム、鉄、ステンレスがコスト的に安価で好ましい。
カプセル容器10の厚みは、1.5mm以上6mm以下が好ましく、1.5mm以上4mm以下がより好ましい。この範囲内であれば、カプセル容器10が容易に軟化し、変形することができ、焼結反応が進むに従い、焼結体に追随して収縮することができる。
(離型剤)
離型剤11は、後述するカプセルHIP処理の焼結温度領域において、カプセル容器10の材料およびセラミックス粉末2Aとの反応性が低い材料である。ここで、ある材料がカプセル容器10の材料と反応性が低いとは、その材料とカプセル容器10の材料との反応性が、カプセル容器10の材料とセラミックス粉末2Aとの反応性に比べて相対的に低いことを意味する。また、ある材料がセラミックス粉末2Aと反応性が低いとは、その材料とセラミックス粉末2Aとの反応性が、カプセル容器10の材料とセラミックス粉末2Aとの反応性に比べて相対的に低いことを意味する。
離型剤11は、例えば、金属と金属化合物のいずれか一方または両方である。ただし、窒化硼素、金属炭化物および金属硼化物を除く。
金属化合物としては、金属窒化物(窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ガリウム、窒化ジルコニウム、窒化タンタル、窒化ニオブ、窒化ハフニウム、窒化バナジウム、窒化クロム等)、金属酸化物(アルミナ、二酸化ケイ素、酸化クロム(III)、ジルコニア等やそれら二種以上の金属酸化物からなる複合酸化物)などが挙げられる。
金属としては、融点2000℃以上の高融点金属(タンタル、ニオブ、タングステン、モリブデン、ハフニウム、レニウム、イリジウム等やそれら二種以上の金属からなる合金)などが挙げられる。
離型剤11は、中でも、金属または金属化合物が好ましく、金属酸化物または融点2000℃以上の高融点金属であるのがより好ましい。金属酸化物の場合、アルミナまたはアルミナと二酸化ケイ素を含む複合酸化物であればさらに好ましい。アルミナと二酸化ケイ素を含む複合酸化物の組成は、二酸化ケイ素が54質量%以下であればよい。
セラミックス粉末2Aの焼結処理温度が、900℃以上1400℃以下であるため、離型剤11がアルミナやアルミナと二酸化ケイ素を含む複合酸化物、融点2000℃以上の高融点金属を用いると焼結処理の際、離型剤11自身が焼結により高密度化することが無く、一定の容積を保持し続ける。このため、カプセル容器10とセラミックス粉末2Aの間で生じる熱応力を緩和することが出来る。
金属炭化物は焼結時に還元作用をセラミックス粉末2Aに及ぼし、セラミックス粉末2Aと反応する、または還元された金属がガス化してカプセルHIP処理が進行しない等の不具合が生じるおそれがある。金属硼化物はセラミックス粉末2Aと反応するおそれがある。また、窒化硼素を離型剤11として用いると、得られる焼結体と反応し亀裂や硼素が拡散(コンタミ)が生じてしまうおそれがある。
本実施形態の離型剤11の形態としては、例えば、粉末、ボール、シート、ブランケット、金属メッキ、塗膜(コーティング膜)、成形体、耐火断熱レンガなどが挙げられ、なかでも、取扱いが容易であるため粉末、シート、ブランケット、コーティング膜が好ましい。
コーティング膜は、金属水酸化物、金属酸化物や金属窒化物粉末を溶媒に分散させたものや、金属酸化物前駆体(金属塩、金属アルコキシド、金属錯体等)が溶媒に溶解した、無機塗料を、カプセル容器10の内側に塗布し、溶媒を乾燥除去することにより形成することが出来る。
粉末の形態の場合、中空粒子、多孔質粒子でも好適に用いることが出来る。
金属酸化物、金属窒化物は粉末、シート、ブランケット、コーティング膜の形態をとりうる。金属の場合、粉末、シートの形態をとりうる。これらの形態の内、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、離型剤11がバインダー成分を含有していてもよい。後述するカプセルHIP処理時の脱気処理において、バインダー成分を除去する処理を兼ねることができる。
カプセルHIP処理を行う前の離型剤11の平均粒子径は、特に限定されないが、離型剤11をより焼結しにくくするために、比表面積が小さい粒子が好ましい。
例えば、離型剤11は、平均粒子径が大きい方が好ましい。離型剤11の平均粒子径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上100μm以下である。
また離型剤11の平均粒子径が10μm未満である場合は、造粒処理をして凝集粒子とし、比表面積を小さくしてもよい。
離型剤11がこのような比表面積であると、カプセルHIP処理において、低密度の状態を維持しやすい。そのため、離型剤11はカプセルHIP処理中に一部焼結したとしても塑性変形可能であり、カプセルHIP処理中またはカプセルHIP処理後の熱応力を塑性変形により吸収することができる。このため、得られるターゲット材2に亀裂が生じにくくなる。
(仕切り)
仕切り12は、カプセル容器10への充填時にセラミックス粉末2Aと離型剤11とが混合しないように充填空間を分離するためのものであり、かつ、空間10bの容積を制御するためのものである。仕切り12は、シート状を呈しており、セラミックス粉末2Aが離型剤11に所定の厚みで覆われた状態となるように配置する。
仕切り12は、セラミックス粉末2Aと離型剤11との充填が終了した後、カプセル容器10から除去される。そのため、仕切り12の形成材料としては、紙、樹脂、金属など種々のものを採用することができる。
これらを用い、以下のようにしてスパッタリングターゲット1を製造する。
(カプセルHIP処理)
図2〜5を用いてカプセルHIP処理について説明する。図2(a)はカプセル容器10を示す概略斜視図であり、図2(b)は、図2(a)の線分IIb−IIbにおける矢視断面図である。以下、図3〜5においても(a)は概略斜視図、(b)は図2(b)と同じ視野における断面図を示す。
まず、図2(a)(b)に示すように、円柱状の空間を有する中空有底のカプセル容器10の本体10Aの内部空間に中芯3Aを挿入したものを用意する。その後、本体10Aの底部に離型剤11を押し詰めて充填する。
次いで、図3(a)(b)に示すように、本体10Aの内部空間に円筒形の仕切り12を挿入する。これにより、仕切り12と中芯3Aとの間には空間10aが形成され、仕切り12とカプセル容器10との間には空間10bが形成される。
その後、空間10bには、離型剤11を押し詰めて充填する。離型剤11は、上端側の高さ位置が、空間10bの上端よりも低い位置となるように充填する。
また、空間10aには、ターゲット材2の原料であるセラミックス粉末2Aを充填する。充填時には、セラミックス粉末2Aの体積変化が無くなるまで振動を付与する。セラミックス粉末2Aは、上端側の高さ位置が空間10bに充填した離型剤11と同程度となるまで充填する。
次いで、図4(a)(b)に示すように、すでに充填してあるセラミックス粉末2Aと離型剤11とを覆うように、離型剤11を押し詰めて充填する。これにより、セラミックス粉末2Aは、中芯3Aと離型剤11とにより周囲を囲まれた状態で本体10A内に充填されることとなる。離型剤11の充填後、仕切り12を除去する。
離型剤11の充填後、本体10Aに蓋10Bを溶接し、カプセル容器10を封止する。
なお、離型剤11は、図2において本体10Aの底部に充填したときの厚み(高さ)、図3において空間10bに充填したときの本体10Aの内壁からの厚み、図4においてセラミックス粉末2Aと離型剤11とを覆うように充填したときの厚みが、すべて同じになるように充填するとよい。具体的には、離型剤11は、カプセルHIP処理後に1mm以上、好ましくは2mm以上8mm以下、より好ましくは3mm以上7mm以下の厚みを有するような量を充填するとよい。
このような量の離型剤11が充填されていると、離型剤11が、カプセルHIP処理中の体積変化や、カプセルHIP処理後の体積変化を十分に緩衝し、ターゲット材2に亀裂を生じさせにくい。
次いで、図5(a)(b)に示すように、カプセル容器10を加熱しながら、蓋10Bの排気管を介してカプセル容器10内を減圧する。これにより、セラミックス粉末2Aに付着しているガスや吸着している水分を除去する。
減圧時のカプセル容器10の加熱温度は100℃以上600℃以下であることが好ましい。
減圧は、カプセル容器10内の圧力が1.33×10−2Pa以下となるまで行う。カプセル容器10内の圧力が1.33×10−2Pa以下となると、セラミックス粉末2Aに付着しているガスや、吸着している水分の除去が充分に行われるため好ましい。
次いで、カプセル容器10を不図示のHIP装置に配置し、HIP処理を行う(カプセルHIP処理)。カプセルHIP処理は、高温高圧下のガスを圧力媒体として、カプセル容器10の外部から圧力を加えて、カプセル容器10内のセラミックス粉末2Aの加圧焼結を行うものである。
カプセルHIP処理の条件は、焼結体の相対密度を99%以上100%以下とする条件が好ましい。例えば、下記のように設定すればよい。
圧力媒体としてのガスは、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いるのが好ましい。
カプセル容器10への加圧圧力は、50MPa以上が好ましい。
カプセルHIP処理における焼結時間は、1時間以上であるのが好ましい。
カプセルHIP処理における焼結温度は、カプセル容器10の形成材料およびセラミックス粉末2Aの種類に応じて異なるが、例えば900℃以上1400℃以下が好ましい。焼結温度が上記範囲内であれば、カプセル容器10の材料が軟化、変形するため、カプセルHIP処理に際して、カプセル容器10を介してカプセル容器10内部のセラミックス粉末2Aに好適に圧力を加えることができる。
カプセルHIP処理後の冷却条件は、HIP装置内の温度が200℃になるまでは、200℃/時間以下のレートで冷却することが好ましく、150℃/時間がより好ましく、100℃/時間がさらに好ましい。HIP装置内の温度が200℃以下となれば、HIP装置内から圧力媒体であるガスを排出し、大気圧に戻す。
以上のようにして、カプセルHIP処理を行う。カプセルHIP処理後は、カプセル容器10からセラミックス焼結体であるターゲット材2と、中芯3Aとが一体となった焼結体1Aを取り出す。その際、離型剤11を充填した効果により、焼結体1Aとカプセル容器10との接合が抑制され、容易に取り出すことができる。
(加工)
次いで、図6(a)に示すように、焼結体1Aの中芯3AをBTA(Boring & Trepanning Association)加工して貫通孔3aを設け、バッキングチューブ3とする。
これにより、本実施形態のスパッタリングターゲット1を製造することができる。
なお、図6(b)に示すように、バッキングチューブ3の一端側にフランジ20、他端側にキャップ30を設けることとしてもよい。フランジ20およびキャップ30は、それぞれバッキングチューブ3の貫通孔3aと連通する貫通孔を有している。フランジ20およびキャップ30は、スパッタリングターゲット1が用いられるスパッタ装置に応じて大きさが定まるものである。
以上のような構成のスパッタリングターゲット1によれば、使用時に破損しにくく、内側からターゲット材を冷却しやすい円筒型のスパッタリングターゲットを提供することができる。また、このようなスパッタリングターゲットを有するスパッタリングターゲットセットを提供することができる。
スパッタリングターゲット1は、ターゲット材2とバッキングチューブ3とが直接接合しているため、機械的強度が高く、且つ冷却効率に優れている。そのため、スパッタ装置において使用時に、高いスパッタ電力を加えつつ成膜することが可能となる。
このようなスパッタリングターゲット1は、DCスパッタ法、ACスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、エレクトロンビーム蒸着法、イオンプレーティング法等、種々の方式を原理とするスパッタ装置に用いることができる。なかでもRFスパッタ法やDCスパッタ法を原理とするスパッタ装置に適している。さらには、DCスパッタ法を原理とするスパッタ装置に特に適している。
なお、販売時には、上述のスパッタリングターゲットを複数本有するスパッタリングターゲットセットとしてもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下に示す実施例および比較例において、粉末のタップ密度はJISK5101−12−2「顔料試験方法−第12部:見掛け密度又は見掛け比容−第2節:タンプ法」に基づいて測定した。すなわち、上記規格で定められたサイズのメスシリンダーに、振動を付与しながら粉末を充填した。このとき、メスシリンダーに充填された粉末の見掛けの体積変化がなくなるまで振動を付与した。充填した質量と体積とから、タップ密度を求めた。
(実施例1)
(原料調整)
タップ密度が1.62g/cmである酸化インジウム粉末(In、稀産金属(株)製、平均粒子径:0.56μm)と、タップ密度が1.39g/cmである酸化ガリウム粉末(Ga、ヤマナカヒューテック(株)製、平均粒子径:1.5μm)と、タップ密度が1.02g/cmである酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、平均粒子径:1.5μm)とを、インジウム元素とガリウム元素と亜鉛元素との原子数比が1:1:1となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm、60分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。
得られた混合粉末を電気炉((株)キタハマ製作所製)を用いて、大気雰囲気において昇温速度10℃/分で室温から1400℃まで昇温した後、1400℃で12時間仮焼を行い、乳鉢にて軽く手粉砕し、仮焼後の混合粉末を得た。得られた混合粉末は、本明細書における「セラミックス粉末2A」に該当する。
仮焼後の混合粉末(セラミックス粉末)は、タップ密度が4.32g/cmであった。
(原料の充填)
ステンレス(SUS304)製のカプセル容器(直径:181mm、高さ1000mm、厚み:2.5mmの円筒状の容器)に、純チタン製の中芯(直径:133mm、高さ1000mm)を挿入したものを用意し、カプセル容器内に、高さが4mmとなるまで離型剤(酸化アルミニウム粉末(Al:住友化学(株)製、純度99.9%、平均粒子径45μm))を押し詰めて入れた。
次いで、カプセル容器内に、紙製の円筒(直径:173mm、高さ:992mm)を立てて、カプセル容器の内壁と紙製の円筒の外壁との間(空間の幅:4mm)に離型剤を押し詰めて充填した。
次に、紙製の円筒と中芯の間の空間に、得られたセラミックス粉末の体積変化がなくなるまで振動を付与しながら充填した。
セラミックス粉末のタップ密度と、理論密度(6.379g/cm)から求められる充填率は、67.7%であった。また、中芯の部分はHIP焼結時に収縮しない(変形しない)ため、中芯が占める空間においては充填率100%とみなすと、セラミックス粉末及び中芯による充填率は86.9%であった。
充填したセラミックス粉末の上に、高さが4mmとなるように、離型剤を押し詰めて入れて、紙製の円筒を除去した。
次いで、カプセル容器の上蓋に排気管を溶接し、その後上蓋とカプセル容器とを溶接した。カプセル容器の溶接部の健全性を確認するため、Heリーク検査を行った。この時の漏れ量を1×10−6Torr・L/秒以下とした(ただし、1Torr=133.32Pa)。
次いで、550℃に加熱しながら7時間かけてカプセル容器内を減圧し、カプセル容器内が1.33×10−2Pa以下になったことを確認して排気管を閉じ、カプセル容器を封止した。
次いで、封止したカプセル容器をHIP装置((株)神戸製鋼所製)内に設置し、カプセルHIP処理を行った。カプセルHIP処理における焼結過程は、圧力118MPaのアルゴン(Ar)ガス(純度99.9%)を圧力媒体とし、1100℃で4時間の条件で行った。カプセルHIP処理における冷却過程では、HIP装置内の温度が200℃になるまでは100℃/時間の冷却速度で冷却し、その後は自然冷却させて、実施例1のスパッタリングターゲットを作製した。
(実施例2)
中芯の材質をモリブデンに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の円筒型スパッタリングターゲットを作製した。
(実施例3)
中芯の材質をタンタルに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の円筒型スパッタリングターゲットを作製した。
(実施例4)
中芯の材質をニオブに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の円筒型スパッタリングターゲットを作製した。
(実施例5)
中芯の材質をクロムに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の円筒型スパッタリングターゲットを作製した。
(実施例6)
中芯の材質をバナジウムに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例6の円筒型スパッタリングターゲットを作製した。
(実施例7)
中芯の材質をタングステンに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の円筒型スパッタリングターゲットを作製した。
(実施例8)
実施例1で用いた仮焼後の混合粉末の替わりに仮焼き前の混合粉末を用いたこと、用いた中芯有カプセル容器の直径が187mmであったこと、中芯の材料をモリブデンに変更したこと、用いた紙製の円筒の直径が179mmであったこと以外は実施例1と同様にして、中芯有カプセル容器内に混合粉末と離型剤とを充填した。仮焼き前の混合粉末は、タップ密度が1.55g/cmであった。
次いで、外側の紙製の円筒と中芯の間に、得られた混合粉末の体積変化がなくなるまで振動を付与しながら充填した。
セラミックス粉末のタップ密度と、理論密度(6.379g/cm)から求められる充填率は、24.2%であった。また、中芯の部分はHIP焼結時に収縮しない(変形しない)ため、中芯が占める空間においては充填率100%とみなすと、セラミックス粉末及び中芯による充填率は66.0%であった。
混合粉末の充填後は、実施例1と同様にしてカプセルHIP処理を行い、実施例8のスパッタリングターゲットを作製した。
(比較例1)
中芯の材質を銅に変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のスパッタリングターゲットを作製した。
実施例1〜8および比較例1の結果を表1に示す。
Figure 2016065311
実施例1〜8においては、カプセルHIP処理後、カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状(カプセル外側)であった離型剤が固形状となっていた。固形状の離型剤はカプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。中芯とセラミックス焼結体(IGZO焼結体)はいずれも直接接合され、中芯と一体となっていた。
外側の剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちIGZO焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが2.9mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤(Al)の密度を測長法で求めたところ、3.05g/cmであった。Alの理論密度は3.95g/cmであることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は77%であった。離型剤として用いたAlは十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。なお、相対密度は下記の式で求めた。
相対密度=(焼結体の密度/焼結体の理論密度)×100
一方、得られたIGZO焼結体の相対密度は100%であり、電子顕微鏡でIGZO焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
得られたIGZO焼結体を研削加工により焼結体の外表面を円筒形状になるように外周研削および表面研磨を行い厚み10mmとし、BTA加工にて中心部の穴あけ加工を施すことによって純チタンからなる中芯に125mmの貫通孔を形成し、外径133mm、内径125mmのパイプに加工し、バッキングチューブを作製した。
その後、バッキングチューブの両端にフランジ及びキャップをTIG(Tungsten Inert Gas)溶接し、マグネトロンスパッタリング装置に装着して成膜を行った。結果、実施例1〜8のスパッタリングターゲットは、機械的強度が高くかつ冷却効率に極めて優れており、高いスパッタ電力をかけても、熱ショックにより破損に対し強固であった。そのため、従来のスパッタリングターゲットを用いた場合よりも高速に成膜でき、部留まりが高く生産効率が大幅に向上した。
一方、比較例1では、カプセルHIP処理中に中芯である銅が変形し、カプセルも大きく斜めに変形した。
カプセルHIP処理後、大きく変形したカプセル容器を取り外したところ、バッキングチューブとして使う銅が変形し、得られた焼結体には多数の亀裂が存在していたため、スパッタリングターゲットに加工することができなかった。
(実施例9:TAZO)
酸化亜鉛粉末(ZnO:ハクスイテック(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ1.5μm)を、大気中1200℃で10時間仮焼した。昇温は、10℃/分の昇温速度で室温から1200℃まで行った。仮焼後、ハンマーミルを用いて粗粉砕して、仮焼後の酸化亜鉛粉末を得た。
得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末のタップ密度は、3.91g/cmであった。同様に、仮焼前の酸化亜鉛粉末のタップ密度は、1.02g/cmであった。
得られた仮焼後の酸化亜鉛粉末、一酸化チタン粉末(TiO(II):フルウチ化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ1μm以下)、および酸化アルミニウム粉末(Al:住友化学(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ0.5μm)を、亜鉛とチタンとアルミニウムとの原子数比がZn:Ti:Al=98.2:1.0:0.8となるように秤量し、スーパーミキサーにて3000rpm,60分、乾式混合を行い、混合粉末を得た。得られた混合粉末は本明細書における「セラミックス粉末2A」に該当する。この混合粉末(セラミックス粉末)のタップ密度は3.91g/cmであった。
(原料の充填)
実施例9の原料調整で得られたセラミックス粉末を用い、中芯の材質をモリブデンとした以外は、実施例1と同様にして、実施例9の円筒型スパッタリングターゲットを作製した。
セラミックス粉末を充填したカプセル容器において、セラミックス粉末のタップ密度と、理論密度(5.6g/cm3)から求められる充填率は、69.8%であった。また、中芯の部分はHIP焼結時に収縮しない(変形しない)ため、中芯が占める空間においては充填率100%とみなすと、セラミックス粉末及び中芯による充填率は87.5%であった。
(実施例10:IZO)
(原料調整)
原料に、タップ密度が1.62g/cmである酸化インジウム粉末(In、稀産金属(株)製、平均粒子径:0.56μm)と、タップ密度が1.02g/cmである酸化亜鉛粉末(ZnO、ハクスイテック(株)製、平均粒子径:1.5μm)とを使用し、インジウム元素と亜鉛元素との原子数比が9:1となるように秤量した以外は、実施例1と同様の方法で、仮焼後の混合粉末を得た。得られた混合粉末は、本明細書における「セラミックス粉末2A」に該当する。
仮焼後の混合粉末(セラミックス粉末)は、タップ密度が4.28g/cmであった。
(原料の充填)
実施例10の原料調整で得られたセラミックス粉末を用い、中芯の材質をニオブとした以外は、実施例1と同様にして、実施例10の円筒型スパッタリングターゲットを作製した。
セラミックス粉末を充填したカプセル容器において、セラミックス粉末のタップ密度と、理論密度(7.02g/cm)から求められる充填率は、61.0%であった。また、中芯の部分はHIP焼結時に収縮しない(変形しない)ため、中芯が占める空間においては充填率100%とみなすと、セラミックス粉末及び中芯による充填率は83.3%であった。
(実施例11:ITO)
(原料調整)
原料にタップ密度が1.62g/cmである酸化インジウム粉末(In、稀産金属(株)製、平均粒子径:0.56μm)と、タップ密度が1.73g/cmである酸化錫粉末(SnO、和光純薬(株)製、粒子径:3.5〜5.0μm)とを使用し、インジウム元素と錫元素との原子数比が9:1となるように秤量した以外は、実施例1と同様の方法で、仮焼後の混合粉末を得た。得られた混合粉末は、本明細書における「セラミックス粉末2A」に該当する。
仮焼後の混合粉末(セラミックス粉末)は、タップ密度が4.15g/cmであった。
(原料の充填)
実施例11の原料調整で得られたセラミックス粉末を用い、中芯の材質をニオブとした以外は、実施例1と同様にして、実施例11の円筒型スパッタリングターゲットを作製した。
セラミックス粉末を充填したカプセル容器において、セラミックス粉末のタップ密度と、理論密度(7.16g/cm)から求められる充填率は、58.0%であった。また、中芯の部分はHIP焼結時に収縮しない(変形しない)ため、中芯が占める空間においては充填率100%とみなすと、セラミックス粉末及び中芯による充填率は81.8%であった。
実施例9〜11の結果を表2に示す。
Figure 2016065311
実施例9〜11においては、カプセルHIP処理後、カプセル容器を取り外すと、カプセルHIP処理前は粉末状(カプセル外側)であった離型剤が固形状となっていた。固形状の離型剤はカプセル容器および焼結体のいずれからも簡単に剥離することが出来た。中芯とセラミックス焼結体はいずれも直接接合され、中芯と一体となっていた。
外側の剥離した固形状の離型剤を測長したところ、焼結後の離型剤の厚み、すなわちセラミックス焼結体とカプセル容器との間の焼結後の厚みが2.9mmであることがわかった。
さらに、剥離した固形状の離型剤(Al)の密度を測長法で求めたところ、3.05g/cmであった。Alの理論密度は3.95g/cmであることから、カプセルHIP処理後の離型剤の相対密度は77%であった。離型剤として用いたAlは十分に焼結が進行せず、低密度のままであった。なお、相対密度は下記の式で求めた。
相対密度=(焼結体の密度/焼結体の理論密度)×100
一方、実施例9〜11で得られたセラミックス焼結体の相対密度は100%であり、電子顕微鏡でセラミックス焼結体を観察したところ、空孔もほとんど存在せず均一で緻密な焼結体であった。
実施例9〜11で得られた円筒型スパッタリングターゲットは、機械的強度が高くかつ、優れた冷却効率が予想されることから、高スパッタ電力下での耐熱衝撃性や成膜処理の高速化、部留まり向上による生産効率の向上が期待できる。
(実施例12:AZO)
(原料調整)
原料粉末に、酸化亜鉛粉末(ZnO:ハクスイテック(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ1.5μm)と酸化アルミニウム粉末(Al23:住友化学(株)製、純度99.99%、1次粒子サイズ0.5μm)を使用し、亜鉛とアルミニウムとの原子数比がZn:Al=96.8:3.2とする以外は、実施例9と同様の方法により、混合粉末(セラミックス粉末)を得ることができる。得られる混合粉末は本明細書における「セラミックス粉末2A」に該当する。
(原料の充填)
得られるセラミックス粉末から実施例1の方法により、実施例12の円筒型スパッタリングターゲットを作製することが出来る。
(実施例13:GZO)
(原料調整)
原料粉末に、酸化亜鉛粉末(ZnO:ハクスイテック(株)製、純度99.9%、1次粒子サイズ1.5μm)と酸化ガリウム粉末(Ga23:ヤマナカヒューテック(株)製、純度99.99%、1次粒子サイズ1.5μm)を使用し、亜鉛とガリウムとの原子数比がZn:Ga=95.8:4.2とする以外は、実施例9と同様の方法により、混合粉末(セラミックス粉末)を得ることができる。得られる混合粉末は本明細書における「セラミックス粉末2A」に該当する。
(原料の充填)
得られるセラミックス粉末から実施例1の方法により、実施例13の円筒型スパッタリングターゲットを作製することが出来る。
実施例12、13の方法で得られるセラミックス焼結体は、中芯と直接接合し、一体化することが期待されることから、円筒型スパッタリングターゲットとして好適に用いることが出来る。
以上より、本発明が有用であることが確認できた。
1…スパッタリングターゲット、2…ターゲット材、2a…貫通孔、3…バッキングチューブ、20…フランジ、30…キャップ

Claims (13)

  1. 円筒形状を呈しセラミックス焼結体からなるターゲット材と、
    前記ターゲット材を保持するバッキングチューブと、を有し、
    前記ターゲット材は、前記円筒形状の軸方向に設けられた貫通孔を有し、
    前記バッキングチューブは、前記貫通孔に挿入され、
    前記バッキングチューブの形成材料の融点は、前記セラミックス焼結体の融点よりも高く、
    前記ターゲット材と前記バッキングチューブとは、直接接合しているスパッタリングターゲット。
  2. 前記ターゲット材を構成する前記セラミックス焼結体の相対密度は、99%以上100%以下である請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
  3. 前記バッキングチューブと前記ターゲット材との接合率は、99.5%以上100%以下である請求項1または2に記載のスパッタリングターゲット。
  4. 前記バッキングチューブの形成材料の線膨張係数は、1×10−5/℃未満である請求項1から3のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット。
  5. 前記ターゲット材は、前記軸方向に0.5m以上延在して形成され、且つ一体焼結体である請求項1から4のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット。
  6. 前記バッキングチューブの形成材料は、Ti,Nb,Ta,Cr,V,Hf,Zr,Mo,Wを含む金属材料である請求項1から5のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット。
  7. 前記セラミックス焼結体を構成するセラミックスは、導電体の形成材料である請求項1から6のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット。
  8. 前記セラミックスは、酸化亜鉛を含む請求項7に記載のスパッタリングターゲット。
  9. 前記セラミックスは、酸化インジウムを含む請求項7に記載のスパッタリングターゲット。
  10. 前記セラミックスは、酸化スズを含む請求項7に記載のスパッタリングターゲット。
  11. 前記セラミックス焼結体を構成するセラミックスは、半導体の形成材料である請求項1から6のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット。
  12. 前記セラミックスは、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛の混合物である請求項11に記載のスパッタリングターゲット。
  13. 請求項1から12のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲットを複数本有するスパッタリングターゲットセット。
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