以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、以下に説明する実施の形態において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
また、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
また、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
また、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「A上のB」の表現であれば、AとBとの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
また、本明細書において「酸化窒化物」とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い物質であり、また、「窒化酸化物」とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い物質を意味する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、図1を用いて半導体装置の構成の一例を説明すると共に、半導体装置の作製方法の一例を、図2および図3を用いて説明する。
<半導体装置の構成例>
半導体装置の一例として、本実施の形態では、ボトムゲート・トップコンタクト型構造のトランジスタ150を、図1を用いて説明する。なお、図1は、トランジスタ150と電気的に接続された、画素電極として機能する配線114を備えており、表示装置の作製に用いることができる。
図1(A)はトランジスタ150を含む構造の平面図であり、図1(B)は図1(A)の一点鎖線A1−A2部分の断面図である。
なお、本実施の形態では、半導体層として酸化物半導体材料を用いたトランジスタの構造を記載する。勿論、半導体層は酸化物半導体材料も用いたものに限らず、他の半導体材料(例えば、シリコン系半導体材料)を用いたものでもよい。
また、図1(A)では、トランジスタ150の各構成要素の位置を理解しやすくするため、一部の構成要素(例えば、基板100や隔壁112など)を記載していない。
半導体層として酸化物半導体材料を用いたトランジスタ150は図1に示すように、基板100上のゲート電極102と、ゲート電極102上のゲート絶縁層104と、ゲート絶縁層104上の半導体層106と、半導体層106上のソース電極108およびドレイン電極109と、半導体層106ならびにソース電極108およびドレイン電極109を覆う第1の絶縁膜110および第2の絶縁膜111により構成されている。また、トランジスタ150上には、第2の絶縁膜111上の隔壁112と、第1の絶縁膜110、第2の絶縁膜111および隔壁112に設けられた開口部を介してドレイン電極109と電気的に接続された配線114が設けられている。なお、配線114は画素電極として機能できる。
半導体層106としては、シリコン系半導体膜、化合物半導体膜、酸化物半導体膜など、様々な半導体膜を用いることができるが、本実施の形態では、半導体層106として酸化物半導体膜を用いた場合についての説明を行う。
本実施の形態では、図1に示すように、ゲート絶縁層104は第1のゲート絶縁膜104a、第2のゲート絶縁膜104bおよび第3のゲート絶縁膜104cの3層構造となっている。これは、本実施の形態において半導体層106として酸化物半導体膜を用いることに起因する。
まず、ゲート絶縁層104の絶縁耐圧を確保するため、絶縁耐圧の優れた膜(第1のゲート絶縁膜104aに相当する)を設ける必要がある。
絶縁耐圧の優れた膜としては、例えばシリコン窒化膜やシリコン窒化酸化膜などがある。
しかし、これらの膜は、成膜ガス種としてシランガス(SiH4)およびアンモニアガス(NH3)を用いたCVD法(例えば、プラズマCVD法など)で成膜されることが一般的であり、膜中に水素原子が多量に含まれている。
半導体層106として酸化物半導体膜を用いた場合、酸化物半導体膜は、膜中に酸素欠損が生じると酸素欠損の一部がドナーとして機能し、トランジスタの特性に悪影響(例えば、トランジスタがノーマリーオン化するなど)を及ぼす恐れがある。そのため、ゲート絶縁層に上述のような水素原子が多量に含まれた膜を用いると、トランジスタ150の作製工程にて行われる加熱処理等により、水素原子が多量に含まれた膜から脱離した水素原子が酸化物半導体膜の酸素と結合して水となり酸化物半導体膜から脱離し、酸化物半導体膜中の酸素欠損を増加させる恐れがある。
そこで、第1のゲート絶縁膜104a上に、水素ブロッキング性に優れた絶縁膜(第2のゲート絶縁膜104bに相当する)を設け、更に第2のゲート絶縁膜104b上に、半導体層106との界面準位を低減させる絶縁膜(第3のゲート絶縁膜104cに相当する)を設けた構成としている。
上記のゲート絶縁層104における3層構造は、半導体層106を酸化物半導体膜とした際に用いることのできるゲート絶縁層の一例であり、ゲート絶縁層104をどのような構造にするかについては、半導体層106の材質やトランジスタ150に必要な特性等を鑑みて使用者が適宜選択すればよい。
例えば、第3のゲート絶縁膜104cのみで絶縁破壊耐性が十分に確保されている場合は、第1のゲート絶縁膜104aや第2のゲート絶縁膜104bは必ずしも設ける必要はない。
また、半導体層106としてシリコン系半導体材料を用いる場合は、半導体層106に酸素を供給することを主目的とした第3のゲート絶縁膜104cや、半導体層106への水素の侵入抑制を主目的とした第2のゲート絶縁膜104bを設けない構造としてもよい。
また、本実施の形態では、図1に示すように、ソース電極108およびドレイン電極109は、第1の導電膜108a、第2の導電膜108bおよび第3の導電膜108cという同一の導電膜を用いた3層構造となっているが、3層構造以外の積層構造や単層構造としても問題よい。また、ソース電極108とドレイン電極109で異なる導電膜を用いてもよい。
ソース電極108およびドレイン電極109をどのような構造にするかは、必要とされる配線抵抗値、半導体層とのコンタクト抵抗、信頼性など、様々な要因を鑑みて実施者が適宜選択すればよい。
また、本実施の形態では、図1に示すように、半導体層106ならびにソース電極108およびドレイン電極109を覆う第1の絶縁膜110は、第1の領域110aおよび第2の領域110bの2層構造となっており、また、第1の絶縁膜110上に第2の絶縁膜111が形成されている。これは、本実施の形態において半導体層106として酸化物半導体膜を用いたことに起因する。
上述のとおり、酸化物半導体膜は膜中に酸素欠陥が生じると、酸素欠損に起因したキャリアの生成が生じ得るため、半導体層106に接して、加熱処理により酸素を放出する膜(以下、酸素放出膜とも記載する)を形成することが好ましい。
しかし、酸化物半導体膜上に酸素供給膜を強いエネルギーで形成すると、酸化物半導体膜がダメージを受ける(例えば、酸化物半導体膜の結晶状態が乱れて欠陥が発生するなど)ことがある。
また、半導体層106に接する第1の絶縁膜110がダメージを受けることがある。
そのため、図1(B)に示すように、半導体層106上に、まず、半導体層106に加わるダメージおよび半導体層106に接する第1の絶縁膜110のダメージを緩和する役割を担う第1の領域110aを、弱いエネルギー(少なくとも、第2の領域110bの形成時より弱いエネルギー)で半導体層106上に形成した後に、半導体層106に酸素を供給する機能を担う第2の領域110b(酸素供給膜とも表現できる)を、第1の領域110aの形成時よりも強いエネルギーで第1の領域110a上に形成する。
そして、上層からの不純物の侵入(例えば、隔壁112からの水分の侵入など)防止を目的として、第1の絶縁膜110の上に第2の絶縁膜111を形成している。
上記の構造は、半導体層106を酸化物半導体膜とした際に用いることのできる絶縁膜の一例であり、第1の絶縁膜110および第2の絶縁膜111をどのような構造にするかについては、半導体層106の材質、第2の絶縁膜111より上層の構造、トランジスタ150に必要な信頼性等を鑑みて使用者が適宜選択すればよい。
<半導体装置の作製方法>
以下の文章ならびに図2および図3を用いて、図1に記載の半導体装置の作製方法の一例について説明を行う。
まず、基板100上にゲート電極102および、第1のゲート絶縁膜104a、第2のゲート絶縁膜104bおよび第3のゲート絶縁膜104cを有するゲート絶縁層104を形成する(図2(A)参照)。
基板100は、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板などの基板を用いることができる。また、絶縁表面を有していれば、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板などを適用することも可能である。
なお、基板100は、予め基板100の歪み点より低い温度で加熱処理を行い、基板100をシュリンク(熱収縮とも言われる)させておくことが望ましい。これにより、半導体装置の作製工程において行われる加熱処理により、基板100に生じるシュリンクの量を抑えることができる。そのため、例えば、露光工程などでのパターンずれ等を抑制することができる。また、当該加熱処理により、基板100表面に付着した水分や有機物などを取り除くことができる。
ゲート電極102は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法などの物理気相成長法(PVD:Physical Vapor Deposition)を用いて、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料の単層構造あるいはこれらの材料を用いた積層構造の導電膜を形成し、フォトリソグラフィ法、印刷法、インクジェット法などを用いて導電膜上にマスクを形成し、当該マスクを用いて導電膜の一部を選択的に除去することで形成できる。
ゲート電極102の膜厚に特段の限定は無いが、薄くするほどゲート電極102の抵抗が高くなりトランジスタ150の電気特性に影響を及ぼす可能性があり、また、厚くするほどゲート電極102の形成に要する時間が増加するため、50nm以上500nm以下の膜厚とすることが好ましい。
第1のゲート絶縁膜104aは、上述のようにゲート絶縁層104の絶縁破壊耐性を高めることに重点を置いた膜であり、プラズマCVD法などの化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)を用いて、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化窒化ハフニウム膜、酸化ハフニウムシリケート膜、酸化窒化ハフニウムシリケート膜などの酸化膜や酸化窒化膜などを、単層でまたは積層して形成することができる。例えば、成膜ガス種としてシランガス(SiH4)およびアンモニアガス(NH3)を含むガスを用いてCVD法により形成したシリコン窒化膜、シリコン窒化酸化膜などを用いればよい。なお、第1のゲート絶縁膜104aは、基板100の有する不純物が半導体層106に侵入することを防止する役割も担っている。
膜の絶縁破壊耐性は膜の欠陥状態に依存するため、第1のゲート絶縁膜104aは膜中欠陥が低減されていることが望ましい。具体的には、電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)法を用いて膜中の欠陥状態測定を行った場合において、第1のゲート絶縁膜104a中の金属と酸素の結合欠陥に起因したシグナル(具体的には、g=1.93近傍のシグナル)が、1×1017[spins/cm3]以下であることが望ましい。
なお、第1のゲート絶縁膜104aの膜中欠陥を低減するためには、基板温度を高めた状態で第1のゲート絶縁膜104aを形成することが好ましい。具体的には、基板温度を250℃以上、好ましくは350℃以上、より好ましくは450℃以上として、第1のゲート絶縁膜104aを形成する。
第1のゲート絶縁膜104aの膜厚に特段の限定は無いが、薄くするほどゲート絶縁層104の絶縁破壊耐性が低下しトランジスタ150の電気特性に悪影響が生じる可能性があり、また、厚くするほど第1のゲート絶縁膜104aの形成に要する時間が増加するため、100nm以上500nm以下の膜厚とすることが望ましい。
第2のゲート絶縁膜104bは、第1のゲート絶縁膜104aと同様の方法および材料を用いて形成することができるが、上述のように第1のゲート絶縁膜104aから脱離した水素の半導体層106への侵入抑制を目的とした膜であり、第1のゲート絶縁膜104aより高い密度が求められる。
第2のゲート絶縁膜104bの膜密度を第1のゲート絶縁膜104aの膜密度より高くする方法としては、例えば、成膜ガス種としてシランガス(SiH4)およびアンモニアガス(NH3)を含むガスを用い、かつ第1のゲート絶縁膜104aの成膜時よりもアンモニアガス(NH3)の添加量(ガス流量ともいえる)を少なくしてCVD法により形成したシリコン窒化膜、シリコン窒化酸化膜などを用いればよい。また、成膜ガス種としてシランガス(SiH4)を含みアンモニアガス(NH3)を含まないガスを用い、CVD法により形成したシリコン窒化膜、シリコン窒化酸化膜などを用いてもよい。
第1のゲート絶縁膜104aと第2のゲート絶縁膜104bの膜密度が異なることを調べるためには、例えばSTEM(Scanning Transmission Electron Microscope)観察を行い膜の色を確認すればよい。膜密度の高い第2のゲート絶縁膜104bは、膜密度の低い第1のゲート絶縁膜104aと比較して濃い色であるため、両者の積層状態を確認できる。
また、ウェットエッチング処理(例えば、希フッ酸処理など)を行い、エッチングレートの違いを確認する方法もある。膜密度の高い第2のゲート絶縁膜104bは、膜密度の低い第1のゲート絶縁膜104aと比較してエッチングレートが遅いため、両者の積層状態を確認できる。
第2のゲート絶縁膜104bは、当該膜からの水素放出量も少ないことが好ましい。具体的には、膜を加熱してTDS測定を行った場合において、当該膜からの水素分子の放出量のピークが5.0×1021[分子/cm3]以下、好ましくは4.0×1021[分子/cm3]以下、より好ましくは1.0×1021[分子/cm3]以下である膜を用いる。
第2のゲート絶縁膜104bからの水素分子の放出量を正確に測定する方法としては、シリコン基板等の不純物の少ない基板上に、第2のゲート絶縁膜104bに用いた膜を成膜したサンプルを準備し、当該サンプルに対してTDS測定を行い、脱離する水素分子(H2)を測定すればよい。ただし、半導体層106として酸化物半導体材料を用いない場合は、上述の水素分子の放出量範囲を必ずしも満たす必要はない。
なお、第2のゲート絶縁膜104bについても第1のゲート絶縁膜104aと同様に、膜中欠陥を低減するために基板温度を高めた状態で形成することが望ましい。基板温度については、第1のゲート絶縁膜104aに記載したに準ずる。
第2のゲート絶縁膜104bの膜厚に特段の限定は無いが、薄すぎると半導体層106への水素の侵入抑制効果が少なくなり、トランジスタ150の電気特性に悪影響が生じる可能性があり、また、厚くするほど第2のゲート絶縁膜104bの形成に要する時間が増加するため、10nm以上150nm以下の膜厚とすることが好ましい。
第3のゲート絶縁膜104cは、半導体層106との界面準位を低減することを目的とした膜であり、第1のゲート絶縁膜104aと同様の方法および材料を用いて形成することができる。本実施の形態では、半導体層106として酸化物半導体材料を用いるため、例えば、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜を、CVD法により成膜して用いればよい。
また、第3のゲート絶縁膜104cは半導体層106と直接接しており、当該膜からの水素分子放出量が少ないことが望ましい。具体的には、膜を加熱してTDS測定を行った場合において、当該膜からの水素分子の放出量のピークが5.0×1021[分子/cm3]以下、好ましくは4.0×1021[分子/cm3]以下、より好ましくは1.0×1021[分子/cm3]以下である膜を用いる。
第3のゲート絶縁膜104cからの水素分子の放出量を正確に測定する方法は、第2のゲート絶縁膜104bにて記載した方法を用いればよい。ただし、半導体層106として酸化物半導体材料を用いない場合は、上述の水素分子の放出量範囲を必ずしも満たす必要はない。
また、半導体層106として酸化物半導体材料を用いる場合、酸化物半導体に窒素が結合すると、窒素の一部がドナーとなり、キャリアである電子を生じてしまう恐れがある。そのため、第3のゲート絶縁膜104cには窒素も極力含まれていないことが好ましく、第3のゲート絶縁膜104cを加熱してTDS測定を行った場合において、当該膜からのアンモニア分子の放出量のピークが5.0×1021[分子/cm3]以下、好ましくは1.0×1021[分子/cm3]以下、より好ましくは8.0×1021[分子/cm3]以下である膜を用いる。ただし、半導体層106として酸化物半導体材料を用いない場合は、上述のアンモニア分子の放出量範囲を必ずしも満たす必要はない。
なお、第3のゲート絶縁膜104cについても第1のゲート絶縁膜104aと同様に、膜中欠陥を低減するために基板温度を高めた状態で形成することが好ましい。基板温度については、第1のゲート絶縁膜104aに記載したに準ずる。
第3のゲート絶縁膜104cの膜厚に特段の限定は無いが、薄くするほど第3のゲート絶縁膜104cから脱離する酸素量が低下するため、半導体層106の酸素欠損を十分に補填できない可能性があり、また、厚くするほど第3のゲート絶縁膜104cの形成に要する時間が増加するため、10nm以上150nm以下の膜厚とすることが望ましい。
また、第1のゲート絶縁膜104a乃至第3のゲート絶縁膜104cを備えるゲート絶縁層104は、厚くするほどゲート電極102から半導体層106に印加される電界が弱くなり、トランジスタ150の電気特性が低下する(例えば、移動度が低下するなど)ため、120nm以上800nm以下の膜厚とすることが好ましい。
半導体層106成膜後の加熱処理によりゲート絶縁層104から脱離する酸素は、半導体層106中の酸素欠損を補うだけでなく、ゲート絶縁層104と半導体層106との界面準位密度を低減する効果もある。このため、半導体層106とゲート絶縁層104との界面にキャリアが捕獲されることを抑制することができ、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
なお、ゲート絶縁層104の形成後に、ゲート絶縁層104表面平坦性を高めるための処理(以下、膜の表面平坦性を高める処理のことを平坦化処理と記載する)を行ってもよい。当該処理としては、例えば、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理やドライエッチング法などを用いればよい。
なお、本実施の形態に記載のゲート絶縁層104は、上述のように第1のゲート絶縁膜104a乃至第3のゲート絶縁膜104cの3層構造となっているが、必ずしも3層構造である必要はない。
例えば、ゲート電極102に含まれる金属成分がゲート絶縁層104を通して半導体層106に侵入することを抑制するため、ゲート電極102と第1のゲート絶縁膜104aの間に、ゲート電極102からの金属成分の侵入を抑制するための膜(第4のゲート絶縁膜とも表現できる)を設けた構造としてもよい。
次に、ゲート絶縁層104上に半導体層106を形成し、ゲート絶縁層104および半導体層106上に、第1の導電膜108a、第2の導電膜108bおよび第3の導電膜108cを形成する(図2(B)参照)。
半導体層106は、例えば、PVD法やCVD法などを用いて半導体膜を成膜し、当該膜上にフォトリソグラフィ法などによりレジストマスクを形成した後に、ドライエッチング法やウェットエッチング法などを用いて半導体膜を選択的に除去することにより形成すればよい。半導体膜としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウム砒素等の材料を用いて成膜した膜を使用すればよい。また、半導体膜を形成する材料として、上記材料以外に酸化物半導体材料を用いてもよい。本実施の形態では、半導体層106として酸化物半導体材料を用いている。
酸化物半導体材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、In−Zn系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、In−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、In−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
また、酸化物半導体材料として、InMO3(ZnO)m(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、MnおよびCoから選ばれた一の金属元素又は複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体材料として、In2SnO5(ZnO)n(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
以下では、酸化物半導体膜の構造について説明する。
なお、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
酸化物半導体膜は、単結晶酸化物半導体膜と非単結晶酸化物半導体膜とに大別される。非単結晶酸化物半導体膜とは、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、多結晶酸化物半導体膜、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜などをいう。
非晶質酸化物半導体膜は、膜中における原子配列が不規則であり、結晶成分を有さない酸化物半導体膜である。微小領域においても結晶部を有さず、膜全体が完全な非晶質構造の酸化物半導体膜が典型である。
微結晶酸化物半導体膜は、例えば、1nm以上10nm未満の大きさの微結晶(ナノ結晶ともいう。)を含む。したがって、微結晶酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも原子配列の規則性が高い。そのため、微結晶酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低いという特徴がある。
CAAC−OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つであり、ほとんどの結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。したがって、CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体内に収まる大きさの場合も含まれる。CAAC−OS膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低いという特徴がある。以下、CAAC−OS膜について詳細な説明を行う。
CAAC−OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって観察すると、結晶部同士の明確な境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
CAAC−OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
一方、CAAC−OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面TEM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC−OS膜の結晶部は配向性を有していることがわかる。
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
一方、CAAC−OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。InGaZnO4の単結晶酸化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC−OS膜の場合は、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
以上のことから、CAAC−OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向を向いていることがわかる。したがって、前述の断面TEM観察で確認された層状に配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
なお、結晶部は、CAAC−OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。したがって、例えば、CAAC−OS膜の形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
また、CAAC−OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の結晶部が、CAAC−OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CAAC−OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部分的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、CAAC−OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
CAAC−OS膜は、例えば、多結晶である酸化物半導体スパッタリング用ターゲットを用い、スパッタリング法によって成膜する。当該スパッタリング用ターゲットにイオンが衝突すると、スパッタリング用ターゲットに含まれる結晶領域がa−b面を境界として劈開し、a−b面に平行な面を有する平板状またはペレット状のスパッタリング粒子としてスパッタリング用ターゲットから剥離することがある。この場合、当該平板状(またはペレット状。)のスパッタリング粒子が、結晶状態を維持したまま基板に到達することで、CAAC−OS膜を成膜することができる。
また、半導体層106をCAAC−OS膜として成膜するために、以下の条件を適用することが望ましい。
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制できる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素および窒素など。)を低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度(水素、水、二酸化炭素および窒素など。)を低減すればよい。具体的には、露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下である成膜ガスを用いる。
また、成膜時の基板加熱温度を高めることで、基板付着後にスパッタリング粒子のマイグレーションが起こる。具体的には、基板加熱温度を100℃以上740℃以下、好ましくは200℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の基板加熱温度を高めることで、平板状のスパッタリング粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレーションが起こり、スパッタリング粒子の平らな面が基板に付着する。
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100体積%とする。成膜ガス中の酸素割合を高めることで、CAAC−OS膜中に余分な原子(例えば、希ガス原子など。)が含まれないため、CAAC―OS膜が形成されやすくなる。
スパッタリング用ターゲットの一例として、In−Ga−Zn−O化合物ターゲットについて以下に示す。
InOX粉末、GaOY粉末およびZnOZ粉末を所定のmol数比で混合し、加圧処理後、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn−Ga−Zn−O化合物ターゲットとする。なお、X、YおよびZは任意の正数である。ここで、所定のmol数比は、例えば、InOX粉末、GaOY粉末およびZnOZ粉末が、2:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3または3:1:2である。なお、粉末の種類、およびその混合するmol数比は、作製するスパッタリング用ターゲットによって適宜変更すればよい。
なお、酸化物半導体膜中の酸素欠損をできるだけ少なくするには、成膜雰囲気中のガス種に占める酸素ガスの割合が高い状態で成膜することが好ましく、装置内に酸素を導入することが可能で、かつ、ガス流量の調整ができるスパッタリング装置を用いることが好ましいといえる。そして、スパッタリング装置の成膜チャンバー内への導入ガスは、全体の90%以上を酸素ガスとして、酸素ガスに加えて他のガスを用いる場合は、当該ガスは希ガスを用いることが望ましい。また、より好ましくは成膜チャンバー内への導入ガスを酸素ガスのみとし、成膜雰囲気中のガス種に占める酸素ガスの割合を極力100%に近づけることが望ましい。
また、酸化物半導体膜に水素が多量に含まれると、酸化物半導体と結合することによって、水素の一部がドナーとなり、キャリアである電子を生じてしまう。これにより、トランジスタのしきい値電圧がマイナス方向にシフトしてしまう。そのため、酸化物半導体膜620において、水素濃度は、5×1018atoms/cm3未満、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、更に好ましくは1×1016atoms/cm3以下とする。なお、上述の酸化物半導体膜620中の水素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定されるものである。
このため、半導体層106として酸化物半導体膜を成膜する際は、成膜に用いるガスとして、水、水素、水酸基又は水素化物などの不純物が含まれないことが好ましく、純度が6N以上好ましくは7N以上(即ち、ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)のガスを用いる。また、成膜室内の水分(水、水蒸気、水素、水酸基または水酸化物を含む)を除去するために、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段は、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(H2O)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる水素、水分などの不純物の濃度を低減できる。
加えて、半導体層106に接する膜にも水素が極力含まれていないことが望ましい。具体的には半導体層と接する膜を加熱してTDS測定を行った場合において、当該膜からの水素分子の放出量のピークが5.0×1021[分子/cm3]以下、好ましくは4.0×1021[分子/cm3]以下、より好ましくは1.0×1021[分子/cm3]以下である膜を用いる。
また、半導体層106に接する膜には窒素も極力含まれていないことが好ましい。これは、水素の場合と同様に、酸化物半導体と結合することによって、窒素の一部がドナーとなり、キャリアである電子を生じてしまうためである。そのため、半導体層と接する膜を加熱してTDS測定を行った場合において、当該膜からのアンモニア分子の放出量のピークが5.0×1021[分子/cm3]以下、好ましくは1.0×1021[分子/cm3]以下、より好ましくは8.0×1021[分子/cm3]以下である膜を用いる。
また、半導体層106として酸化物半導体膜を成膜する際は、酸化物半導体膜中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度が、1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは2×1016atoms/cm3以下とする。これは、上述の水素や窒素と同様に、アルカリ金属およびアルカリ土類金属が、酸化物半導体と結合するとキャリアが生成されることがあり、トランジスタのオフ電流の上昇の原因となるためである。
なお、酸化物半導体膜は、複数の酸化物半導体膜が積層された構造でもよい。
例えば、酸化物半導体膜を、第1の酸化物半導体膜、第2の酸化物半導体膜および第3の酸化物半導体膜の積層として、各々を異なる組成としてもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜および第3の酸化物半導体膜に三元系金属の酸化物を用い、第2の酸化物半導体膜に二元系金属の酸化物を用いる、または、第1の酸化物半導体膜および第3の酸化物半導体膜に二元系金属の酸化物を用い、第2の酸化物半導体膜に三元系金属の酸化物を用いる。
また、第1の酸化物半導体膜、第2の酸化物半導体膜および第3の酸化物半導体膜の構成元素を同一とし、組成を異ならせてもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜および第3の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=1:1:1とし、第2の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=3:1:2としてもよい。また、第1の酸化物半導体膜および第3の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2とし、第2の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=3:1:2としてもよい。
この時、第2の酸化物半導体膜はInとGaの含有率をIn>Gaとするとよい。また第1の酸化物半導体膜および第3の酸化物半導体膜のInとGaの含有率をIn≦Gaとするとよい。
酸化物半導体では主として重金属のs軌道がキャリア伝導に寄与しており、Inの含有率を多くすることによりs軌道のオーバーラップが多くなる傾向があるため、In>Gaの組成となる酸化物はIn≦Gaの組成となる酸化物と比較して高い移動度を備える。また、GaはInと比較して酸素欠損の形成エネルギーが大きく酸素欠損が生じにくいため、In≦Gaの組成となる酸化物はIn>Gaの組成となる酸化物と比較して安定した特性を備える。
なお、酸化物半導体膜に接して酸化物半導体膜とは異なる膜を形成する際に、酸化物半導体膜に接して形成される膜から酸化物半導体膜中に不純物が拡散する恐れがある。例えば、酸化物半導体膜に接する膜中に含まれるシリコンやカーボンなどが酸化物半導体膜中に拡散すると、トランジスタの電気特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
しかしながら、上述のように酸化物半導体膜を積層構造とし、高い移動度を備える酸化物半導体膜(つまり、In>Gaの組成となる酸化物半導体膜、本実施の形態では第2の酸化物半導体膜に相当する)に接して、当該酸化物半導体膜よりも酸素欠損が少なく安定した特性を備える酸化物半導体膜(つまり、In≦Gaの組成となる酸化物半導体膜、本実施の形態では第1の酸化物半導体膜および第3の酸化物半導体膜に相当する)を形成し、酸化物半導体膜に接する膜から高い移動度を備える酸化物半導体膜を離すことにより、不純物拡散に起因したトランジスタの電気特性(例えば、移動度の低下など)の悪影響を抑制することができる。したがって、トランジスタの移動度および信頼性を高めることが可能となる。
第1の導電膜108a乃至第3の導電膜108cの材料としては、トランジスタ150の作製工程にて行われる加熱処理に耐えられる材料を用いればよい。例えばPVD法を用いて、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素を含む金属膜、又は上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜など)の単層膜または積層膜を形成すればよい。
本実施の形態のように、後の工程にて形成するソース電極108およびドレイン電極109を積層構造とする場合、電極の低抵抗および耐熱性を両立するため、例えば、アルミニウム、銅などの抵抗率の低い金属膜の下側および上側の一方又は両方にチタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金属膜又はそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成とすればよい。
また、第1の導電膜108a乃至第3の導電膜108cとして、導電性の金属酸化物を用いて導電膜を成膜してもよい。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In2O3−SnO2、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛(In2O3−ZnO)又はこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
次に、第1の導電膜108a乃至第3の導電膜108c、および半導体層106に対して選択的に除去処理を行い、半導体層106と電気的に接続されたソース電極108およびドレイン電極109を形成すると共に、底面から側面への立ち上がり部が湾曲形状を備えた凹部130を半導体層106形成する(図2(C)参照)。
なお、後の工程にて形成する第1の絶縁膜110や第2の絶縁膜111に鬆が発生することを抑制する観点から、上述の湾曲状態の曲率半径を5nm以上トランジスタ150のソース電極108とドレイン電極109間の距離以下、好ましくは10nm以上トランジスタ150のソース電極108とドレイン電極109間の距離以下、更に好ましくは20nm以上トランジスタ150のソース電極108とドレイン電極109間の距離以下とする。
ソース電極108およびドレイン電極109は、第1の導電膜108a乃至第3の導電膜108cを成膜し、フォトリソグラフィ法、印刷法、インクジェット法などを用いて導電膜上にマスクを形成し、当該マスクを用いて導電膜の一部を選択的に除去することで形成することができる。なお、当該除去処理は、公知のドライエッチング処理やウェットエッチング処理を行えばよい。
半導体層106への凹部130の形成については、ソース電極108およびドレイン電極109の形成に用いたマスクを用い、ソース電極108およびドレイン電極109形成後にさらに半導体層106に対して公知のドライエッチング処理やウェットエッチング処理を行えばよい。
上述の凹部について拡大した図面を、図11に示す。
図11(A)のように、凹部130の側面は、ソース電極108またはドレイン電極109の側面との間に段差がない構造を有している。当該部分(図11(A)の領域1100など)に段差があると、ソース電極108およびドレイン電極109上に絶縁膜を形成した際に、当該段差部近傍から絶縁膜の表面に向かって鬆が発生しやすく、当該鬆が外部からの不純物の侵入経路となり得る。
なお、半導体層106の表面に対してソース電極108側面およびドレイン電極109側面のなす角度θ1を30°以上80°以下、より好ましくは30°以上60°以下の角度とする。これにより、ソース電極108およびドレイン電極109上に第1の絶縁膜110および第2の絶縁膜111を形成した際において、ソース電極108の側面およびドレイン電極109の側面に対する絶縁膜の被覆性低下を抑制できるため、絶縁膜中に更に鬆が入りにくくなる。
また、本実施の形態のように、ソース電極108およびドレイン電極109が導電膜の積層構造である場合、導電膜の第1の層(例えば、第1の導電膜108a)の側面と導電膜の第2の層(例えば、第2の導電膜108b)の側面との間に段差がない構造とすることが望ましい。当該段差のない部位とは、例えば、図11(A)の領域1102や領域1103に相当する。
なお、図11(A)では、半導体層106表面に対して第1の導電膜108a乃至第3の導電膜108cの側面は、全て同じ角度として記載されているが、図11(B)のように、半導体層106表面に対して第1の導電膜108aの側面のなす角度θ2、半導体層106表面に対して第2の導電膜108bの側面のなす角度θ3、半導体層106表面に対して第3の導電膜108cの側面のなす角度θ4が、それぞれ異なる角度であってもよい。
上述の場合、第1の角度θ2、第2の角度θ3および第3の角度θ4は、30°以上80°以下、より好ましくは30°以上60°以下とすることにより、ソース電極108およびドレイン電極109上に絶縁膜を形成した際において、ソース電極108の側面およびドレイン電極109の側面に対する絶縁膜の被覆性低下を抑制できるため、絶縁膜中に更に鬆が入りにくくなる。
なお、図11(C)の領域1104のように一部が段差を有している構造であってもよい。また、図11(C)の領域1105のように、導電膜の側面が平らな状態でなくともよい。少なくとも図11(A)のように、凹部130の側面とソース電極108またはドレイン電極109の側面との間に段差がない構造であれば、鬆の発生抑制効果がある。
また、ソース電極108およびドレイン電極109と凹部130は、異なる除去処理(例えば、ソース電極108およびドレイン電極109の形成時と凹部130の形成時において、ドライエッチング処理に用いるガス種や印加電力を変えるなど)により形成してもよいが、同一の除去処理で行うことが望ましい。特に、半導体層106の膜厚が薄い(具体的には100nm以下)場合、ソース電極108およびドレイン電極109の形成と凹部130の形成を異なる除去処理で行うことが難しく、基板面内で処理状態にバラツキが生じる場合(例えば、基板の中央部では凹部130が形成しているが、基板の端部近傍では凹部130が形成されていない場合など)があるため、同一の除去処理で行うことが好ましい。
半導体層106の除去処理における処理速度(エッチングレートとも言われる)は、半導体層106の膜厚の1/10以上1/3以下とすることが望ましい。例えば、半導体層106の膜厚が30nmであった場合、半導体層106のエッチングレートが3nm以上10nmとなる条件(例えば、ドライエッチング処理であれば、使用ガス、印加電力、処理室の圧力など)を選択して除去処理を行えばよい。
除去処理としてどのような条件を使用するかは、公知技術の中から実施者が適宜選択すればよい。
上述のように、半導体層106の膜厚の1/10以上1/3以下の条件で除去処理を行うことにより、半導体層106の除去処理時に生じる生成物が、除去された半導体層の側面部において上から順に(ソース電極108およびドレイン電極109に近い方から順に、とも表現できる)付着していく。当該生成物が付着した箇所は付着していない箇所と比較して除去処理が行われにくくなるため、当該生成物の影響で半導体層の側面部は湾曲を有する形状に加工される。
次に、半導体層106、ソース電極108およびドレイン電極109上に、第1の領域110aおよび第2の領域110bを備える第1の絶縁膜110と、第2の絶縁膜111を形成する。これにより、トランジスタ150が形成される(図3(A)参照)。
第1の絶縁膜110は、第1の領域110aおよび第2の領域110bを少なくとも備えた構造となっている。
第1の領域110aは、PVD法やCVD法を用いて、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜などの酸化膜や酸化窒化膜などを形成して用いればよい。第1の領域110aは上述のとおり、第1の絶縁膜110の成膜による半導体層106へのダメージを軽減するための層としての役割を担っているため、例えば、プラズマCVD法で成膜する場合は、低電力条件で成膜することが望ましい。
第1の領域110a形成に起因して生じる、半導体層106および第1の領域110aのダメージを確認する方法としては、ESR測定を行えばよい。第1の領域110a形成後における半導体層106表面のESR測定において、半導体層106中の金属と酸素の結合欠陥に起因したシグナル(具体的には、g=1.93近傍のシグナル)が、1×1017[spins/cm3]以下であることが望ましい。
また、第1の領域110a形成後における第1の領域110aのESR測定において、第1の領域110a中のシリコンと酸素の結合欠陥に起因したシグナル(具体的には、g=2.001近傍のシグナル)が、5×1016[spins/cm3]以下、好ましくは3×1017[spins/cm3]以下とする。
なお、上述範囲以下にシグナルが収まっている場合は、低電力条件で成膜しなくてもよい。
また、第1の領域110a中は半導体層106と直接接しているため、第3のゲート絶縁膜104cと同様に、水素分子の放出量およびアンモニア分子の放出量が少ないことが好ましい。水素分子およびアンモニア分子の放出量についての具体的な内容については、第3のゲート絶縁膜104cの説明内容を参酌することができる。ただし、半導体層106として酸化物半導体材料を用いない場合は、上述の水素分子、アンモニア分子の放出量範囲を必ずしも満たす必要はない。
第2の領域110bは、第1の領域110aにて記載した方法および材料を用いることができる。好ましくは、第1の領域110aと同一の方法および材料を用いて形成する。これにより、第1の領域110aと第2の領域110bを、同一の装置および同一の処理部屋を用いて一括して形成できるため、第1の絶縁膜110をパーティクル混入などの無い高品質な層とできる。また、トランジスタ150の製造時間を短縮することができる。
なお、図3(A)において、第1の領域110aと第2の領域110bが点線により分けられているが、これは、第1の領域110aと第2の領域110bが同一の材料を用いて形成されたことにより、明確な境界が形成されていないことを表している。
第2の領域110bは、<半導体装置の構成例>にて記載したとおり、半導体層106に酸素を供給する役割を担っているため、加熱処理により酸素を放出する膜とすることが望ましく、具体的には、TDS測定にて、酸素分子の放出量が1.0×1018[分子/cm3]以上、好ましくは3.0×1019[分子/cm3]以上、さらに好ましくは1.0×1020[分子/cm3]以上とする。
特に、第2の領域110b中(バルク中)に少なくとも化学量論比を超える量の酸素が存在し、加熱処理により酸素を放出すること膜であることが好ましい。このような膜を第2の領域110bとして用い、第2の領域110bに対して加熱処理を行うことにより、半導体層106に酸素を供給し、半導体層106に生じる欠陥(例えば、酸素欠陥など)を修復することができ、半導体層106を用いたトランジスタ150の電気特性を良好にすることができる。例えば、トランジスタ150のノーマリーオン化を抑制することができる。
第2の領域110b中への酸素の導入は、酸素雰囲気下による熱処理や、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、酸素を含む雰囲気下で行うプラズマ処理などを用いることができる。ただし、半導体層106として酸化物半導体材料を用いない場合は、上述の酸素分子の放出量範囲を必ずしも満たす必要はない。
また、トランジスタ150の電気特性におけるヒステリシス性を低減するため、第2の領域110b中のシリコンと酸素の結合欠陥に起因したシグナル(具体的には、g=2.001近傍のシグナル)が、1×1018[spins/cm3]以下、好ましくは5×1017[spins/cm3]以下とする。
半導体層106上には既に第1の領域110aが形成されているため、第2の領域110bは、第1の領域110aよりも高い印加電力を用いて形成することができる。どの程度の印加電力で成膜を行うかについては、必要とされる膜質や与えられた成膜時間など鑑み、実施者が適宜選択すればよい。
なお、本実施の形態に記載の第1の絶縁膜110は、上述のように第1の領域110aおよび第2の領域110bの2層構造となっているが、必ずしも2層構造である必要はない。
例えば、第2の領域110bの上に、更に第1の領域と同様の方法および材料を用いて作製した第3の領域を設ける構造としてもよい。
第2の領域110bは上述のように、半導体層106に対して酸素供給膜として機能するため、第2の領域110bに接して高い印加電力で第2の絶縁膜111を形成すると、第2の領域110b中に含まれる過剰酸素が脱離し、酸素供給能力が低下する恐れがある。
そのため、第2の領域110b上に、更に第1の領域110aと同様の方法および材料を用いて作製した第3の領域を設けることにより、第2の絶縁膜111を形成することによる第2の領域110bの酸素供給能力の低下を抑制できる。
また、第1の領域110aおよび第2の領域110bを含む第1の絶縁膜をn層(nは自然数)設け、その上に第2の絶縁膜111を設ける構造としてもよい。以下に、第1の絶縁膜をn層設ける効果について簡単に記載する。
第1の領域110aは、上述のとおり低電力条件で形成されており、第2の領域110bと比較して低密度な膜となっているため、ソース電極108、ドレイン電極109および凹部130を作製することにより形成された凹凸に対する被覆性が高い。
そのため、ソース電極108、ドレイン電極109および凹部130を作製することにより形成された凹凸上に、まず第1の領域110aを形成して、凹凸の角度を緩やかにする(凹凸の角部を丸くする、とも表現できる)。
そして、第1の領域110a上に、第1の領域110aより緻密な膜である第2の領域を形成することにより、第2の領域110bは第1の領域110aの効果(凹凸への被覆性が高いことによる、凹凸部分の平坦化)により、凹凸に起因した鬆が入りにくくなる。
上述の構造を備えた第1の絶縁膜110は、1層でも鬆の抑制効果があるが、更に積層させてn層(nは自然数)の構造とすることにより、より鬆が発生しにくくなる。
以上が、第1の絶縁膜をn層設けることについての効果である。
また、第1の絶縁膜110をn層設けた上に、上述の第3の領域を設けた構造としてもよい。
第2の絶縁膜111は、<半導体装置の構成例>にて記載したとおり、上層からの不純物の侵入(例えば、隔壁112からの水分の侵入など)防止を目的として、第1の絶縁膜110の上に形成しており、特に水分の侵入を防止する特性(以下、水分ブロック性とも記載する)が高いことが望ましい。
第2の絶縁膜111は、PVD法やCVD法を用いて、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜などの窒化膜や窒化酸化膜などを形成して用いればよい。
第2の絶縁膜111の水分ブロック性を確認する方法としては、シリコン基板等の不純物の少ない基板上に、第2の領域110bに用いた膜および第2の絶縁膜111として用いる膜を積層したサンプルを準備し、当該サンプルに対してTDS測定を行い、脱離する水分子(H2O)を測定すればよい。
具体的は、TDS測定にて、水分子の放出量が1.0×1021[分子/cm3]以下、好ましくは5.0×1020[分子/cm3]以下、さらに好ましくは1.0×1020[分子/cm3]以下である膜を第2の絶縁膜111として用いる。
また、第2の絶縁膜111は、酸素供給膜として機能する第2の領域から脱離した酸素が半導体層106に効率的に供給されことを助けるため、酸素分子の侵入をブロックする特性(以下、酸素ブロック性とも記載する)を有することが望ましい。
第2の絶縁膜111の酸素ブロック性を確認する方法としては、シリコン基板等の不純物の少ない基板上に、第2の領域110bに用いた膜および第2の絶縁膜111として用いる膜を積層したサンプルを準備し、当該サンプルに対してTDS測定を行い、脱離す酸素分子(O2)を測定すればよい。
具体的は、TDS測定にて、酸素分子の放出量が1.0×1019[分子/cm3]以下、好ましくは5.0×1018[分子/cm3]以下、さらに好ましくは1.0×1018[分子/cm3]以下である膜を第2の絶縁膜111として用いる。ただし、半導体層106として酸化物半導体材料を用いない場合は、上述の酸素分子の放出量範囲を必ずしも満たす必要はない。
なお、第2の絶縁膜111としてCVD法により窒化膜や窒化酸化膜を形成する場合は、膜中に多量の水素が含まれてしまい、トランジスタ150の電気特性に悪影響を及ぼし得る。そのため、第2のゲート絶縁膜104bにて記載したように、シランガス(SiH4)を含みアンモニアガス(NH3)を極力含まない(または含まない)ガスを用いて形成し、膜を加熱してTDS測定を行った場合において、当該膜からの水素分子の放出量のピークが5.0×1021[分子/cm3]以下、好ましくは4.0×1021[分子/cm3]以下、より好ましくは1.0×1021[分子/cm3]以下である膜を用いる。
また、半導体層106が酸化物半導体の場合、酸化物半導体にアンモニアが侵入すると、窒素の一部がドナーとなり、キャリアである電子が生じてしまう場合がある。そのため、第2の絶縁膜111を加熱してTDS測定を行った場合において、当該膜からのアンモニア分子の放出量のピークが5.0×1021[分子/cm3]以下、好ましくは1.0×1021[分子/cm3]以下、より好ましくは8.0×1021[分子/cm3]以下である膜を用いる。
ただし、半導体層106として酸化物半導体材料を用いない場合は、上述の水素分子、アンモニア分子の放出量範囲を必ずしも満たす必要はない。
次に、第2の絶縁膜111上に隔壁112および配線114を形成する(図3(B)参照)。
隔壁112は、例えば、スピンコート法、印刷法、ディスペンス法またはインクジェット法などを用いて絶縁性を有する材料を塗布し、塗布した材料に応じた硬化処理(例えば、加熱処理や光照射処理など)を行うことで形成することができる。または、絶縁性を有する層を形成した後に、当該層上にフォトリソグラフィ法やインクジェット法などを用いて、加工したいパターン形状に応じたレジストマスクを形成し、ドライエッチング法やウェットエッチング法などを用いて、当該層を選択的に除去することにより形成すればよい。
なお、絶縁性を有する材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂、無機材料および有機ポリシロキサンなどの有機無機混合材料を用いることができる。
隔壁112は、第2の絶縁膜111の形成段階において基板表面に形成されている凹凸を平坦化できる厚さがあればよいが、厚すぎるとトランジスタ150の生産性が低下するため、500nm以上5000nm以下、好ましくは500nm以上3000nm以下とする。
配線114は、ゲート電極102と同様の方法および材料を用いて形成すればよい。
以上の工程を経ることにより、図1に記載の構造が完成する。
トランジスタを上述した構造とすることにより、電気特性の変動要因となりうる不純物が、トランジスタの備える半導体層に侵入することを抑制できるため、トランジスタの電気特性を良好にできる。また、経過時間変化による劣化の少ない、安定した電気特性を備えるトランジスタとすることができる。
なお、本実施の形態では、トランジスタ150としてボトムゲート・トップコンタクト型(BGTC型)の構造について記載したが、例えば、図4(A)のようにトップゲート・トップコンタクト型(TGTC型)構造のトランジスタ170を形成してもよい。
TGTC型構造のトランジスタを形成する場合、基板100上に形成する下地膜172としては、PVD法やCVD法を用いて、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、などの酸化膜や酸化窒化膜を形成すればよく、好ましくは、第1の領域110aと同様の方法および材料を用いて、加熱処理により半導体層106に対して酸素供給が可能な膜を形成することが望ましい。
また、半導体層106上にゲート電極102が存在するため、ゲート絶縁層174は、トランジスタ150にて用いたゲート絶縁層104と積層順が逆になっている。
また、図4(B)のように、半導体層106を挟んでゲート電極102と対向する位置にバックゲート電極182を備える、デュアルゲート(ダブルゲートともいわれる)・トップコンタクト型のトランジスタ180を形成してもよい。
バックゲート電極182を有する構造とすることにより、仮にトランジスタ180がノーマリーオン状態(ここでは、電源による電位の印加が無い時にトランジスタがオン状態であることを示している)であったとしても、バックゲート電極182に適宜電圧印加を行うことにより、トランジスタ180のしきい値をシフトさせてノーマリーオフ状態(ここでは、電源による電位の印加が無い時にトランジスタがオフ状態であることを示している)に保つことができる。
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態にて記載したトランジスタを用いた表示装置の一例について、図5乃至図8を用いて説明する。なお、図6(A)、図6(B)および図7は、図5(B)における一点鎖線M−N部の断面構成を示す図である。
図5(A)は表示装置の平面図の一例であり、第1の基板901上に設けられた画素部902を囲む状態にシール材905が設けられ、第2の基板906によって封止されている。図5(A)においては、第1の基板901上のシール材905によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体または多結晶半導体で形成された信号線駆動回路903、および走査線駆動回路904が実装されている。また、信号線駆動回路903、走査線駆動回路904、または画素部902に与えられる各種信号および電位は、FPC(Flexible printed circuit)918a、FPC918bを経由して供給されている。
図5(B)は表示装置の平面図の一例であり、第1の基板901上に設けられた画素部902および走査線駆動回路904を囲む状態にシール材905が設けられ、第2の基板906によって封止されている。図5(B)においては、第1の基板901上のシール材905によって囲まれている領域とは異なる領域に、単結晶半導体または多結晶半導体で形成された信号線駆動回路903が実装されている。また、信号線駆動回路903、走査線駆動回路904、または画素部902に与えられる各種信号および電位は、FPC918aを経由して供給されている。
図5(C)は表示装置の平面図の一例であり、第1の基板901上に設けられた画素部902および走査線駆動回路904を囲む状態にシール材905が設けられ、第2の基板906によって封止されている。図5(C)においては、FPC918aと重なる位置に、単結晶半導体または多結晶半導体で形成された信号線駆動回路903が設けられている。このため、FPC918aの一部(信号線駆動回路903取り付け部)は配線が露出しており、当該箇所に信号線駆動回路903を設置することにより、FPC918aと信号線駆動回路903が電気的に接続される。また、信号線駆動回路903、走査線駆動回路904、または画素部902に与えられる各種信号および電位は、FPC918aを経由して供給されている。
また、図5(B)および図5(C)においては、単結晶半導体または多結晶半導体で形成された信号線駆動回路903を形成し、第1の基板901やFPC918aに実装している例を示しているが、この構成に限定されない。例えば、単結晶半導体または多結晶半導体で形成された走査線駆動回路904を形成して第1の基板901やFPC918aに実装してもよいし、信号線駆動回路903の一部または走査線駆動回路904の一部のみを別途形成して実装しても良い。
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などの公知技術を用いることができる。図5(A)は、COG方法により信号線駆動回路903、走査線駆動回路904を実装する例であり、図5(B)は、COG方法により信号線駆動回路903を実装する例であり、図5(C)は、TAB方法により信号線駆動回路903を実装する例である。
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む。)を指す。また、コネクター、例えばFPC、TCPが取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
また第1の基板上に設けられた画素部および走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、上記実施の形態で示したトランジスタを適用することができる。
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)素子、有機EL素子等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
図6(A)に示す表示装置は、接続端子電極915および接続端子電極916を有しており、接続端子電極915および接続端子電極916はFPC918aが有する端子と異方性導電剤919を介して電気的に接続されている。
接続端子電極915は、第1の電極930と同じ導電膜から形成され、接続端子電極916は、トランジスタ910、トランジスタ911の一対の電極と同じ導電膜で形成されている。なお、第1の電極930は実施の形態1に記載した配線114と同様の方法および材料を用いて形成すればよい。
図6(B)に示す表示装置は、接続端子電極915a、915bおよび接続端子電極916を有しており、接続端子電極915a、915bおよび接続端子電極916はFPC918aが有する端子と異方性導電剤919を介して、電気的に接続されている。
接続端子電極915aは、第1の電極930と同じ導電膜から形成され、接続端子電極915bは、第2の電極941と同じ導電膜から形成され、接続端子電極916は、トランジスタ910、911の一対の電極と同じ導電膜で形成されている。
図7に示す表示装置は、接続端子電極955、接続端子電極938および接続端子電極916を有しており、接続端子電極955および接続端子電極916はFPC918aが有する端子と異方性導電剤919を介して、電気的に接続されている。
接続端子電極955は第2の電極951と同じ導電膜から形成され、接続端子電極938は第1の電極930と同じ導電膜から形成され、接続端子電極916はトランジスタ910、911の一対の電極と同じ導電膜で形成されている。
また、図6および図7に示した表示装置において、第1の基板901上に設けられた画素部902および走査線駆動回路904は、トランジスタを複数有しており、図6および図7では、画素部902に含まれるトランジスタ910と、走査線駆動回路904に含まれるトランジスタ911とを例示している。
図6(A)および図6(B)では、トランジスタ910およびトランジスタ911上には実施の形態1に示す第1の絶縁膜110および第2の絶縁膜111に相当する絶縁膜924が設けられ、絶縁膜924の上に更に平坦化膜921が設けられている。絶縁膜924は、隔壁112と同様の方法および材料を用いて形成することができる。なお、絶縁膜923は下地膜として機能する絶縁膜であり、第1のゲート絶縁膜104aと同様の方法および材料を用いて形成することができる。
本実施の形態のトランジスタ910、トランジスタ911には、上記実施の形態で示したトランジスタ150を適用することができる。
また、図7では、絶縁膜924上において、駆動回路用のトランジスタ911の酸化物半導体膜のチャネル形成領域と重なる位置に導電膜917が設けられている例を示している。本実施の形態では、導電膜917を第1の電極930と同様の方法および材料を用いて形成すればよい。導電膜917はトランジスタ911のバックゲートとして機能するため、トランジスタ911のしきい値をコントロールでき、トランジスタ911がノーマリーオン状態となることを抑制できる。また、BTストレス試験前後におけるトランジスタ911のしきい値電圧の変動量をさらに低減することができる。
なお、導電膜917の電位は、トランジスタ911のゲート電極と同じでもよいし、また、GND、0V、或いはフローティング状態であってもよい。
また、導電膜917は外部の電場を遮蔽する機能も有する。すなわち外部の電場が内部(トランジスタを含む回路部)に作用しないようにする機能(例えば、静電気に対する静電遮蔽機能やX線に対する遮蔽機能など)も有する。導電膜917の遮蔽機能により、静電気などの外部の電場の影響によりトランジスタの電気的な特性が変動することを防止することができる。導電膜917は、上記実施の形態で示した、いずれのトランジスタにも適用可能である。
画素部902に設けられたトランジスタ910は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
表示素子に電圧を印加する第1の電極930、第2の電極931および第2の電極941(画素電極、共通電極、対向電極などともいう)においては、取り出す光の方向、電極が設けられる場所、および電極のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
第1の電極930、第2の電極931および第2の電極941は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
また、第1の電極930、第2の電極931および第2の電極941は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、またはその合金、若しくはその金属窒化物から一つ、または複数種を用いて形成することができる。
また、第1の電極930、第2の電極931および第2の電極941として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンまたはその誘導体、若しくはこれらの2種以上の共重合体などがあげられる。
図6に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。図6(A)は、縦電界方式を採用する例である。
図6(A)において、表示素子である液晶素子913は、第1の電極930、第2の電極931、および液晶層908を含む。なお、液晶層908を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜932、絶縁膜933が設けられている。また、第2の電極931は第2の基板906側に設けられ、第1の電極930と第2の電極931により液晶層908が挟まれた構成となっている。
またスペーサ935は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、第1の電極930と第2の電極931との間隔(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていても良い。
図6(B)は、横電界方式の一例として、FFS(Fringe Field Switching)モードを採用する例である。
図6(B)において、表示素子である液晶素子943は、平坦化膜921上に形成される第1の電極930、第2の電極941、および液晶層908を含む。第2の電極941は共通電極として機能する。第1の電極930および第2の電極941の間には絶縁膜944が設けられている。絶縁膜944は窒化シリコン膜を用いて形成する。なお、液晶層908を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜932、絶縁膜933が設けられている。
また、図6(A)と同様に、第1の電極930と第2の電極931との間隔(セルギャップ)を制御するためのスペーサ935が設けられている。
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するためにカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1msec以下と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。
第1の基板901および第2の基板906はシール材905によって固定されている。シール材905は、熱硬化樹脂、光硬化樹脂などの有機樹脂を用いることができる。
なお、図6(A)に示す液晶表示装置においては、シール材905は、ゲート絶縁膜922と接し、平坦化膜921がシール材905の内側に設けられている。ゲート絶縁膜922は、実施の形態1に記載したように、窒化シリコン膜および酸化窒化シリコン膜を積層して形成する。なお、絶縁膜924を選択的にエッチングする際に、ゲート絶縁膜922の上層の酸化窒化シリコン膜をエッチングして、窒化シリコン膜を露出させることが好ましい。この結果、シール材905とゲート絶縁膜922に形成される窒化シリコン膜が接する構造となり、外部からの水がシール材905の内部に侵入することを抑制することが可能である。
また、図6(B)に示す液晶表示装置において、シール材905は絶縁膜924と接している。平坦化膜921がシール材905の内側に設けられていると共に、シール材905と絶縁膜924の表面の窒化シリコン膜が接するため、外部からの水がシール材905の内部に侵入することを抑制することが可能である。
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。高純度の酸化物半導体膜を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分であるため、画素における開口率を高めることができる。
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光膜)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板および位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す。)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、またはRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、本発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
図8に、図6(A)に示す表示装置において、基板906に設けられた第2の電極931と電気的に接続するための共通接続部(パッド部)を、基板901上に形成する例を示す。
なお、ここでは面積サイズが大きく異なるため、画素部におけるコンタクトホールと、共通接続部の開口部と使い分けて呼ぶこととする。また、図5および図8では、画素部902と共通接続部とで同じ縮尺で図示しておらず、例えば共通接続部の一点鎖線I−Jの長さが500μm程度であるのに対して、画素部902のトランジスタのサイズは50μm未満であり、実際には10倍以上面積サイズが大きいが、分かりやすくするため、図5および図8では、画素部902と共通接続部の縮尺をそれぞれ変えて図示している。
共通接続部は、基板901と基板906とを接着するためのシール材と重なる位置に配置され、シール材に含まれる導電性粒子を介して第2の電極931と電気的に接続される。または、シール材と重ならない箇所(但し、画素部を除く)に共通接続部を設け、共通接続部に重なるように導電性粒子を含むペーストをシール材とは別途設けて第2の電極931と電気的に接続してもよい。
図8(A)は、共通接続部の断面図であり、図8(B)に示す上面図のI−Jに相当する。なお、共通接続部の構成要素はトランジスタの構成要素と同じ材料を用いて構成されているため、構造の理解を容易にする目的で、共通接続部の断面図の横にトランジスタを記載している。また、図8(C)においても同様に、共通接続部の断面図の横にトランジスタの断面図を記載している。
共通電位線975は、ゲート絶縁膜922上に設けられ、図6に示すトランジスタ910のソース電極971またはドレイン電極973と同じ材料および同じ工程で作製される。
また、共通電位線975は、絶縁膜924および平坦化膜921で覆われ、絶縁膜924および平坦化膜921は、共通電位線975と重なる位置に複数の開口部を有している。この開口部は、トランジスタ910のソース電極971またはドレイン電極973の一方と、第1の電極930とを接続するコンタクトホールと同じ工程で作製される。
また、共通電位線975および共通電極977が開口部において接続する。共通電極977は、平坦化膜921上に設けられ、接続端子電極915や、画素部の第1の電極930と同じ材料および同じ工程で作製される。
このように、画素部902のスイッチング素子の作製工程と共通させて共通接続部を作製することができる。
共通電極977は、シール材に含まれる導電性粒子と接触する電極であり、基板906の第2の電極931と電気的に接続が行われる。
また、図8(C)に示すように、共通電位線985を、トランジスタ910のゲート電極と同じ材料、同じ工程で作製してもよい。
図8(C)に示す共通接続部において、共通電位線985は、ゲート絶縁膜922、絶縁膜924、および平坦化膜921の下層に設けられ、ゲート絶縁膜922、絶縁膜924、および平坦化膜921は、共通電位線985と重なる位置に複数の開口部を有する。該開口部は、トランジスタ910のソース電極971またはドレイン電極973の一方と第1の電極930とを接続するコンタクトホールと同じ工程で絶縁膜924および平坦化膜921をエッチングした後、さらにゲート絶縁膜922を選択的にエッチングすることで形成される。
また、共通電位線985および共通電極987が開口部において接続する。共通電極987は、平坦化膜921上に設けられ、接続端子電極915や、画素部の第1の電極930と同じ材料および同じ工程で作製される。
なお、図6(B)に示すFFSモードの液晶表示装置においては、共通電極977、987はそれぞれ、第2の電極941と接続する。
上述では表示装置として液晶表示装置について説明を記載したが、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用することができる。以下において、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を含む表示装置についての説明を記載する。
エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透明であればよい。そして、基板上にトランジスタおよび発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側および基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
図7に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す。表示素子である発光素子963は、画素部902に設けられたトランジスタ910と電気的に接続している。なお発光素子963の構成は、第1の電極930、発光層961、第2の電極931の積層構造であるが、当該構成に限定されるものではない。発光素子963から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子963の構成は適宜変えることができる。
平坦化膜921と第1の電極930の間に、窒化シリコン膜950を有する。窒化シリコン膜950は、平坦化膜921および絶縁膜924の側面と接する。窒化シリコン膜950上に、第1の電極930の端部を覆う隔壁960を有する。隔壁960は、有機絶縁材料、または無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極930上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが望ましい。
発光層961は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。
発光素子963に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極931および隔壁960上に保護層を形成してもよい。保護層としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、DLC膜等を形成することができる。また、第1の基板901、第2の基板906、およびシール材936によって封止された空間には充填材964が設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
シール材936は熱硬化樹脂、光硬化樹脂などの有機樹脂や、低融点ガラスを含むフリットガラスなどを用いることができる。フリットガラスは、水や酸素などの不純物に対してバリア性が高いため望ましい。また、シール材936としてフリットガラスを用いる場合、図7に示すように、窒化シリコン膜950上にフリットガラスを設けることで、窒化シリコン膜950およびフリットガラスの密着性を高めると共に、外部からシール材936内部への水の侵入を妨げることができる。
第1の基板901、第2の基板906およびシール材936に囲まれた空間には、充填材964が充填されている。充填材964としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用いればよい。
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、または円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板または円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能である。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)も呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが望ましい。
以上のように上記実施の形態で示したトランジスタを適用することで、表示機能を有する信頼性のよい半導体装置を提供することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、テレビ、モニタ等の表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型の情報端末、ワードプロセッサ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画または動画を再生する画像再生装置、ポータブルCDプレーヤ、ラジオ、テープレコーダ、ヘッドホンステレオ、ステレオ、コードレス電話子機、トランシーバ、携帯無線機、携帯電話、自動車電話、携帯型ゲーム機、電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子書籍、電子翻訳機、音声入力機器、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電気シェーバ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、エアコンディショナーなどの空調設備、食器洗い器、食器乾燥器、衣類乾燥器、布団乾燥器、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、煙感知器、放射線測定器、透析装置等の医療機器、などが挙げられる。さらに、誘導灯、信号機、ベルトコンベア、エレベータ、エスカレータ、産業用ロボット、電力貯蔵システム等の産業機器も挙げられる。また、石油を用いたエンジンや、非水系二次電池からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電気機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車(EV)、内燃機関と電動機を併せ持ったハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、これらのタイヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、ゴルフ用カート、小型または大型船舶、潜水艦、ヘリコプター、航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船が挙げられる。これらの電子機器の具体例を図8に示す。
図9(A)は、携帯型の情報端末であり、筐体2101、筐体2102、第1の表示部2103a、第2の表示部2103bなどによって構成されている。筐体2101と筐体2102の内部には、電子部品の一つとして複数のトランジスタが組み込まれている。当該トランジスタとして、上述した実施の形態にて記載したトランジスタを適用することにより、携帯型の情報端末を、電気特性が良好であり、経過時間変化による劣化の少ない信頼性の高いものにすることができる。
なお、第1の表示部2103aおよび第2の表示部2103bの少なくとも一方は、タッチ入力機能を有するパネルとなっており、例えば図9(A)の左図のように、第1の表示部2103aに表示される選択ボタン2104により「タッチ入力」を行うか、「キーボード入力」を行うかを選択できる。選択ボタンは様々な大きさで表示できるため、幅広い世代の人が使いやすさを実感できる。ここで、例えば「キーボード入力」を選択した場合、図9(A)の右図のように第1の表示部2103aにはキーボード2105が表示される。これにより、従来の情報端末と同様に、キー入力による素早い文字入力などが可能となる。
また、図9(A)に示す携帯型の情報端末は、図9(A)の右図のように、第1の表示部2103aを備える筐体2101と、第2の表示部2103bを備える筐体2102を分離することができる。このため、必要に応じて筐体2101のみ、または筐体2102のみを取り外して、より軽量な携帯型の情報端末として用いることができる。
図9(A)に示す携帯型の情報端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報を操作又は編集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。
また、図9(A)に示す携帯型の情報端末は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
さらに、図9(A)に示す筐体2101や筐体2102にアンテナやマイク機能や無線機能を持たせ、携帯電話として用いてもよい。
図9(B)は、電子書籍2120の一例を示している。例えば、電子書籍2120は、筐体2121および筐体2123の2つの筐体で構成されている。筐体2121および筐体2123は、軸部2122により一体とされており、該軸部2122を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
筐体2121には表示部2125が組み込まれ、筐体2123には表示部2127が組み込まれている。表示部2125および表示部2127は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図9(B)では表示部2125)に文章を表示し、左側の表示部(図9(B)では表示部2127)に画像を表示することができる。
筐体2121と筐体2123の内部には、電子部品の一つとして複数のトランジスタが組み込まれている。当該トランジスタとして、上述実施の形態にて記載したトランジスタを適用することにより、電子書籍2120を、電気特性が良好であり、経過時間変化による劣化の少ない信頼性の高いものにすることができる。
また、図9(B)では、筐体2121に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2121において、電源2126、操作キー2128、スピーカー2129などを備えている。操作キー2128により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍2120は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
また、電子書籍2120は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
図9(C)は、スマートフォンであり、筐体2130と、ボタン2131と、マイクロフォン2132と、タッチパネルを備えた表示部2133と、スピーカー2134と、カメラ用レンズ2135と、を具備し、携帯型電話機としての機能を有する。
筐体2130の内部には、電子部品の一つとして複数のトランジスタが組み込まれている。当該トランジスタとして、上述実施の形態にて記載したトランジスタを適用することにより、スマートフォンを、電気特性が良好であり、経過時間変化による劣化の少ない信頼性の高いものにすることができる。
表示部2133は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示部2133と同一面上にカメラ用レンズ2135を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー2134およびマイクロフォン2132は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。
また、外部接続端子2136はACアダプタおよびUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電および情報端末などとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット(図示せず)に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存および移動に対応できる。
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
図9(D)は、デジタルビデオカメラであり、筐体2141、表示部2142、操作スイッチ2143、バッテリー2144などによって構成されている。
筐体2141の内部には、電子部品の一つとして複数のトランジスタが組み込まれている。当該トランジスタとして、上述実施の形態にて記載したトランジスタを適用することにより、デジタルビデオカメラを、電気特性が良好であり、経過時間変化による劣化の少ない信頼性の高いものにすることができる。
図9(E)は、テレビジョン装置2150の一例を示している。テレビジョン装置2150は、筐体2151に表示部2153が組み込まれている。表示部2153により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド2155により筐体2151を支持した構成を示している。
筐体2151の内部には、電子部品の一つとして複数のトランジスタが組み込まれている。当該トランジスタとして、上述実施の形態にて記載したトランジスタを適用することにより、テレビジョン装置2150を、電気特性が良好であり、経過時間変化による劣化の少ない信頼性の高いものにすることができる。
テレビジョン装置2150の操作は、筐体2151が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
なお、テレビジョン装置2150は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
本実施例では、実施の形態1にて記載した方法を用いて作製した半導体装置について、STEMにより断面を観察した結果について説明する。
以下に、断面を観察したサンプル(以下、単にサンプルと記載する。)についての作製方法を記載する。
まず、基板として無アルカリガラスを用いた。
次に、基板上にゲート電極を形成した。ゲート電極はスパッタリング装置を用いて100nmのタングステン膜を形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてタングステン膜上にレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いてタングステン膜の一部を選択的に除去して形成した。
次に、ゲート電極上にゲート絶縁層を形成した。ゲート絶縁層はPECVD装置を用い、絶縁破壊耐性に優れた第1のゲート絶縁膜として300nmの窒化シリコン膜を、水素ブロッキング性の高い第2のゲート絶縁膜として50nmの窒化シリコン膜を、界面準位低減効果のある第3のゲート電極として50nmの酸化窒化シリコンを積層させて形成した。また、ゲート電極と第1のゲート絶縁膜の間には、ゲート電極に含まれる金属成分の拡散防止効果のある膜(第4のゲート絶縁膜と記載する)として、50nmの窒化シリコン膜を形成した。
第1のゲート絶縁膜である窒化シリコン膜は、成膜室内にモノシランガス(SiH4)を200[sccm]、窒素ガス(N2)を2000[sccm]、アンモニアガス(NH3)を2000[sccm]の流量で導入しながら圧力を100[Pa]に保ち、基板を350[℃]で300[sec]加熱した後に、2000[W]の印加電力で成膜を行った。
第2のゲート絶縁膜である窒化シリコン膜は、成膜室内にモノシランガス(SiH4)を200[sccm]、窒素ガス(N2)を5000[sccm]の流量で導入しながら圧力を100[Pa]に保ち、基板を350[℃]で300[sec]加熱した後に、2000[W]の印加電力で成膜を行った。
第3のゲート絶縁膜である酸化窒化シリコン膜は、成膜室内にモノシランガス(SiH4)を20[sccm]、亜酸化窒素ガス(N2O)を3000[sccm]の流量で導入しながら圧力を40[Pa]に保ち、基板を350[℃]で300[sec]加熱した後に、100[W]の印加電力で成膜を行った。
第4のゲート絶縁膜である窒化シリコン膜は、成膜室内にモノシランガス(SiH4)を200[sccm]、窒素ガス(N2)を2000[sccm]、アンモニアガス(NH3)を100[sccm]の流量で導入しながら圧力を100[Pa]に保ち、基板を350[℃]で300[sec]加熱した後に、2000[W]の印加電力で成膜を行った。
次に、ゲート絶縁層上に半導体層を形成した。半導体層はスパッタリング装置を用いて35nmのIGZO膜を形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてIGZO膜上にレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いてIGZO膜の一部を選択的に除去して形成した。
なお、IGZO膜については、組成がIn:Ga:Zn=1:1:1であるターゲットを用い、成膜室内を50%酸素雰囲気、0.6[Pa]に保ち、基板を170[℃]に加熱した状態で、5[kW]の印加電力で成膜を行った。
次に、半導体層上にソース電極およびドレイン電極を形成すると共に、ゲート電極上の半導体層に凹部を形成した。
ソース電極およびドレイン電極は、スパッタリング装置を用いて50nmのチタン膜、400nmのアルミニウム膜および100nmのチタン膜を順に積層させた後、フォトリソグラフィ法を用いてチタン膜上にレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いて上述のチタン膜、アルミニウム膜およびチタン膜を備える積層膜の一部を選択的に除去して形成した。
また、上述の除去処理において、下層のチタン膜(50nmのチタン膜)を除去した後さらにIGZO膜に対して除去処理を行うことで、IGZO膜に凹部を形成した。
上述の除去処理は、ドライエッチング装置を用い、塩素ガス(Cl2)を150[sccm]、三塩化ホウ素(BCl3)を750[sccm]の流量で導入しながら圧力を2.0[Pa]に保ち、上部電極のバイアスパワーを0W、下部電極のバイアスパワーを1500Wに設定してICP(Inductively Coupled Plasma)処理を行った。
なお、上述の除去処理によるIGZO膜のエッチングレートは10[nm/min]であり、IGZO膜の膜厚(35nm)の2/7であった。
次に、半導体層上に第1の絶縁膜を形成した。第1の絶縁膜はPECVD装置を用い、半導体層へのダメージを抑制する第1の領域として50nmの酸化窒化シリコン膜を、半導体層に酸素を供給する第2の領域として400nmの酸化窒化シリコン膜を積層させて形成した。
第1の領域である酸化窒化シリコン膜は、成膜室内にモノシランガス(SiH4)を30[sccm]、亜酸化窒素ガス(N2O)を4000[sccm]の流量で導入しながら圧力を40[Pa]に保ち、基板を220[℃]に加熱した状態で、150[W]の印加電力で成膜を行った。
第2の領域である酸化窒化シリコン膜は、成膜室内にモノシランガス(SiH4)を160[sccm]、亜酸化窒素ガス(N2O)を4000[sccm]の流量で導入しながら圧力を200[Pa]に保ち、基板を220[℃]に加熱した状態で、1500[W]の印加電力で成膜を行った。
なお、上述実施の形態では、第1の絶縁膜上に更に第2の絶縁膜、隔壁および配線を形成する説明を記載したが、本実施例では、半導体層に形成した凹部の側面を湾曲状態とし、また、半導体層凹部の側面とチタン膜の側面との間に段差がない構造とすることにより、第1の絶縁膜への鬆の発生を抑制できるか否かを確認することが目的であるため、第2の絶縁膜、隔壁および配線は形成していない。
そして最後に、完成した上述基板を、窒素雰囲気とした250[℃]のオーブン内で1時間焼成処理した。
以上の工程を経て形成されたサンプルの断面形状を、図12(A)に示す。
なお、図12(A)では、第3のゲート絶縁膜より下層の構造が表示されていないが、上述の作製方法により形成された構造となっている。
また、図12(A)では、半導体層であるIGZO膜とチタン膜の境界が分かりやすくするため、境界部分に白破線を記載している。
図12(A)より、IGZO膜の凹部側面において湾曲形状が確認される。また、IGZO膜の側面とチタン膜の側面との間には、段差がない構造となっている事が確認される。そして、IGZO膜の凹部側面が湾曲状態を成していることにより、上層に形成されている絶縁膜にはIGZO膜の段差に起因した鬆が発生していないことが確認される。
また、図12(A)の比較サンプルとして、上述した作製方法の除去処理においてIGZO膜のエッチングレートを30[nm/min]と非常に早くし、半導体層凹部の側面に湾曲形状が形成されにくい条件で作製したサンプルの断面写真を図12(B)に示す。
図12(B)より、半導体層凹部の側面近傍から鬆の発生が確認される。
以上の比較結果より、半導体層凹部の側面が湾曲形状を有していることにより、半導体層、ソース電極およびドレイン電極上に形成する絶縁膜に鬆が入りにくいことが分かる。