以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本明細書に開示する発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本明細書に開示する発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、図1を用いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として酸化物半導体膜を有するトランジスタを示す。
図1(A)(B)に本実施の形態における半導体装置の例を示す。図1(A)は、トランジスタ440の模式図、図2(B)はトランジスタ440の等価回路図である。
図1(A)に示すように、トランジスタ440を含む半導体装置は、順に積層される導電層491、トンネル絶縁膜492、電荷蓄積層493、酸化物絶縁膜436、チャネル形成領域を含む酸化物半導体膜403、ゲート絶縁膜402、及びゲート電極層401と、酸化物半導体膜403に電気的に接するソース電極層405a及びドレイン電極層405bとを有する。
トランジスタ440は、設けられる面に対して、酸化物半導体膜403よりゲート電極層401の方が上に設けられるトップゲート型構造(図1(A)において導電層491を下側)でもよく、酸化物半導体膜403よりゲート電極層401の方が下に設けられるボトムゲート型構造(図1(A)においてゲート電極層401を下側)でもよい。
ゲート電極層401は、酸化物半導体膜403のチャネル形成領域と重なり、導電層491及び電荷蓄積層493は、該チャネル形成領域の少なくとも一部重なる構成とする。
上記構成を満たせば、ゲート電極層401と重なるチャネル形成領域と、導電層491及び電荷蓄積層493との大小関係(チャネル長方向の幅、及びチャネル幅方向の幅)は特に限定されない。
図2(A)乃至(C)にトランジスタ440の具体例を示す。
図2(A)に示すトランジスタ440aを含む半導体装置、及び図2(B)に示すトランジスタ440bを含む半導体装置は、絶縁表面を有する基板400上に、順に積層して、導電層491、トンネル絶縁膜492、電荷蓄積層493、酸化物絶縁膜436、酸化物半導体膜403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、ゲート絶縁膜402、ゲート電極層401、及び絶縁膜407を有する。
トランジスタ440aは、トップゲート型構造のトランジスタであり、チャネル長方向において、チャネル形成領域の幅(チャネル長)より、導電層491、電荷蓄積層493、及びゲート電極層401の幅が大きい例である。導電層491、電荷蓄積層493、及びゲート電極層401の幅はほぼ同じである。
トランジスタ440aのように、導電層491と電荷蓄積層493とが同形状である場合、電荷蓄積層493を形成する際に用いるレジストマスクを、導電層491をマスクとして基板400側からの光照射(所謂、裏面露光)を行うことにより作製することができるため、フォトマスク数を削減することができる。
トランジスタ440bは、トップゲート型構造のトランジスタであり、チャネル長方向において、電荷蓄積層493の幅はチャネル形成領域の幅とほぼ同じであり、電荷蓄積層493及びチャネル形成領域の幅より、導電層491及びゲート電極層401の幅が大きい例である。
図2(C)に示すトランジスタ440cを含む半導体装置は、絶縁表面を有する基板400上に、順に積層して、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、酸化物半導体膜403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、酸化物絶縁膜436、電荷蓄積層493、トンネル絶縁膜492、導電層491、及び絶縁膜407を有する。
トランジスタ440cは、ボトムゲート型構造のトランジスタであり、チャネル長方向において、チャネル形成領域の幅より、導電層491、電荷蓄積層493、及びゲート電極層401の幅が大きい例である。導電層491、及び電荷蓄積層493の幅はほぼ同じであり、ゲート電極層401の幅は導電層491、及び電荷蓄積層493の幅より大きい。
遮光性を有するゲート電極層401、又は遮光性を有する導電層491が、基板400側から酸化物半導体膜403へ入射する光を遮断する構成であると、光によるトランジスタの電気的特性の変動を防止することができる。
トランジスタ440a、440b、440cにおいては、ゲート電極層401と、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bとは一部重なる構造を示すが、これに限定されず、ゲート電極層401と、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bとが重ならない構造であってもよい。また酸化物半導体膜403においてソース電極層405a、又はドレイン電極層405bと接する領域に、ソース領域又はドレイン領域として機能する低抵抗領域を設けてもよい。低抵抗領域は、酸化物半導体膜403の導電率を変化させる不純物元素(例えばリン、ホウ素、アルミニウム、窒素、アルゴン、チタンなど)を酸化物半導体膜403に選択的に導入することで形成することができる。
また、該導電層491は外部の電場を遮蔽する、すなわち外部の電場がトランジスタ440に作用しないようにする機能(特に静電気に対する静電遮蔽機能)も有する。導電層491の遮蔽機能により、静電気などの外部の電場の影響によりトランジスタ440の電気的な特性が変動することを防止することができる。
電荷蓄積層493に蓄えられた電荷によって、トランジスタ440のしきい値電圧を精密に制御する。電荷蓄積層493に蓄えられる電荷は、導電層491に電位を供給(電圧を印加)し、導電層491とゲート電極層401、ソース電極層405a、又はドレイン電極層405bとの間にバイアスをかける(電位差を生じさせる)ことで、トンネル絶縁膜492を介して、導電層491から供給(注入)される。
電荷蓄積層493は周囲を酸化物絶縁物(例えば、トンネル絶縁膜492及び酸化物絶縁膜436)で覆われており、他の電極層や配線と電気的に接続がない状態(所謂浮遊(フローティング)状態)である。電荷蓄積層493は、蓄えられた電荷を長時間保持することができるため、一度必要な電荷量を供給した後は、導電層491への電力供給を停止することができる。その後、電荷蓄積層493が蓄積する電荷量を変更したい場合は、再度導電層491へ電力供給を行えばよい。
このように、トランジスタ440の電気的特性を制御するための電荷蓄積層493は、常に連続した電力供給を必要とする電極層とは異なり、ごく短い電荷供給時に電荷を供給する導電層491に電力供給を行うのみである。よって、半導体装置において大きな消費電力の増加は招かない。
また、電荷蓄積層493は浮遊状態であり、周囲に囲まれた酸化物絶縁物によって電気的に絶縁されるため、保持期間においては電位の変動が少なく、安定した電位を酸化物半導体膜403に供給することができる。トンネル絶縁膜492を介する電荷の供給頻度も少ないため、トンネル絶縁膜492の劣化に起因する電荷蓄積層493の電荷保持能力の低下も抑制することができる。
さらに、電荷蓄積層493の電荷を制御することのできる導電層491を、トンネル絶縁膜492を介して配置しているので、電荷蓄積層493の電位は、必要に応じて変更することができる。
従って、半導体装置において、トランジスタ440への所望の電気特性の付与、保持、変更を、消費電力の増加は抑えながら正確に行うことが可能となる。
トランジスタ440の電気特性を、それぞれ個々に決定することができるため、半導体装置の回路設計やデバイス構造において自由度が広がる。
さらに、作製時における形状不良等に起因する、電気的特性ばらつきも、トランジスタ440完成後に解消することができるため、歩留まり及び生産性が向上する。
使用中において、経時劣化によるトランジスタ440の電気特性の不良、又は半導体装置としての電気的な不具合、あるいは意図的な電気特性の変更要求があった場合、半導体装置のメンテナンスに応じることができる。
半導体装置の回路設計によって、上記トランジスタ440と、電荷蓄積層を含まないトランジスタとを混在させて有する半導体装置とすることも可能である。上記トランジスタ440と、酸化物半導体以外の半導体材料を半導体膜として用いたトランジスタと混在させてもよく、例えば、半導体素子が設けられたシリコンウエハ等の半導体基板上に、酸化物半導体膜を用いたトランジスタ440を積層した構造の半導体装置とすることもできる。
以下、トランジスタ440を有する半導体装置に用いることのできる材料や作製方法を例示する。
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することもでき、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板400として用いてもよい。
また、基板400として、可撓性基板を用いて半導体装置を作製してもよい。可撓性を有する半導体装置を作製するには、可撓性基板上にトランジスタ440を直接作製してもよいし、他の作製基板にトランジスタ440を作製し、その後可撓性基板に剥離、転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に剥離、転置するために、作製基板と酸化物半導体膜を含むトランジスタ440との間に剥離層を設けるとよい。
導電層491、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、及びゲート電極層401としては、例えば、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン、ネオジム、及びスカンジウムのいずれかから選択される一以上の元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、導電層491、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、及びゲート電極層401としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイドなどのシリサイド膜を用いてもよい。
また、導電層491、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、及びゲート電極層401としては、導電性の金属酸化物膜で形成しても良い。導電性の金属酸化物膜としては酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化スズ、及び酸化インジウム酸化亜鉛のいずれかから選択される一以上の元素を含む金属酸化物膜、又はこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませた金属酸化物膜を用いることができる。
導電層491、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、及びゲート電極層401は、上記導電膜の単層構造でも積層構造でもよく、例えば、アルミニウム、銅などの金属膜の下側又は上側の一方または双方にチタン、モリブデン、タングステンどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成などを用いることができる。
導電層491、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、及びゲート電極層401は、スパッタリング法、CVD法(プラズマCVD法など)、蒸着法等を用いて形成することができる。
トンネル絶縁膜492としては、例えば、スパッタリング法、CVD法(プラズマCVD法など)等を用いて形成する、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化ガリウム亜鉛膜、酸化亜鉛膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、又は酸化窒化アルミニウム膜などの酸化物絶縁膜を用いることができる。
トンネル絶縁膜492は、膜厚が薄い方が好ましく、例えば、1nm〜20nm、より好ましくは3nm〜6nmの厚さに形成することが好ましい。
酸化物絶縁膜436及びゲート絶縁膜402の材料としては、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化ガリウム亜鉛膜、酸化亜鉛膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜を用いて形成することができる。
また、酸化物絶縁膜436及びゲート絶縁膜402の材料として酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSiOxNy(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAlxOy(x>0、y>0))、酸化ランタンなどのhigh−k材料を用いることもできる。さらに、酸化物絶縁膜436及びゲート絶縁膜402は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
酸化物絶縁膜436及びゲート絶縁膜402は、スパッタリング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法(プラズマCVD法等)、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いて形成することができる。また、酸化物絶縁膜436及びゲート絶縁膜402は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタ装置、所謂CPスパッタ装置を用いて成膜してもよい。また、有機金属気相成長(MOCVD:Metal Organic Vapor Deposition)法を用いてもよい。例えば、MOCVD法を用いて成膜した酸化ガリウム膜を、酸化物絶縁膜436及びゲート絶縁膜402として用いることができる。
酸化物絶縁膜436及びゲート絶縁膜402は、酸化物半導体膜403と接する部分において酸素を多く含むことが好ましい。酸化物絶縁膜436及びゲート絶縁膜402は、膜中(バルク中)に少なくとも化学量論的組成比を超える量の酸素が存在することが好ましく、酸素を多く含む絶縁膜を酸化物絶縁膜436及びゲート絶縁膜402として用いると、酸化物半導体膜403に酸素を供給することができ、特性を良好にすることができる。酸化物絶縁膜436及びゲート絶縁膜402は、作製するトランジスタのサイズや酸化物絶縁膜436及びゲート絶縁膜402の段差被覆性を考慮して形成することが好ましい。
電荷蓄積層493としては、半導体材料又は導電性材料の層又は粒子で形成することができる。半導体材料としては、シリコン、シリコンゲルマニウム等がある。シリコンを用いる場合、非晶質シリコンや多結晶シリコンを用いることができる。リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜、ニッケルシリサイドなどのシリサイド膜を用いてもよい。
導電性材料としては、例えば、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン、ネオジム、スカンジウム、若しくは上述した元素を成分とする金属窒化物(窒化チタン、窒化モリブデン、窒化タングステン)のいずれかから選択される一以上を含む導電性材料を用いることができる。また、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化スズ、及び酸化インジウム酸化亜鉛のいずれかから選択される一以上を含む導電性の金属酸化物材料、又はこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませた導電性の金属酸化物材料を用いることができる。
また、電荷蓄積層493として、電荷を保持するトラップを有する窒化物絶縁膜を用いることができる。例えば、窒化シリコン膜、窒化ゲルマニウム膜、窒化アルミニウム膜などを用いることができる。なお、上記窒化物絶縁膜は酸素を含んでもよい。
電荷蓄積層493は、スパッタリング法、CVD法(プラズマCVD法など)、蒸着法等を用いて形成することができる。
酸化物半導体膜403に用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)を含むことが好ましい。特にInと亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。また、該酸化物を用いたトランジスタの電気的特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてジルコニウム(Zr)を有することが好ましい。
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
また、酸化物半導体として、InMO3(ZnO)m(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素又は複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、In2SnO5(ZnO)n(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)、あるいはIn:Ga:Zn=3:1:2(=1/2:1/6:1/3)の原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
しかし、インジウムを含む酸化物半導体は、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成のrだけ近傍であるとは、a、b、cが、(a−A)2+(b−B)2+(c−C)2≦r2を満たすことをいう。rとしては、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
酸化物半導体膜403は、単結晶、多結晶(ポリクリスタルともいう。)または非晶質などの状態をとる。
好ましくは、酸化物半導体膜403は、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜とする。
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、非晶質相に結晶部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線方向または表面の法線方向に平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気的特性の変動を低減することが可能である。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
なお、酸化物半導体膜を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。
酸化物半導体膜403の膜厚は、1nm以上30nm以下(好ましくは5nm以上10nm以下)とし、スパッタリング法、MBE法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD法等を適宜用いることができる。また、酸化物半導体膜403は、CPスパッタ装置を用いて成膜してもよい。
酸化物半導体膜403は、複数の酸化物半導体膜が積層された構造でもよい。例えば、酸化物半導体膜403を、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の積層として、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜に、異なる組成の金属酸化物を用いてもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜に三元系金属の酸化物を用い、第2の酸化物半導体膜に二元系金属の酸化物を用いてもよい。また、例えば、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜を、どちらも三元系金属の酸化物としてもよい。
また、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の構成元素を同一とし、両者の組成比を異ならせてもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=1:1:1とし、第2の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=3:1:2としてもよい。また、第1の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=1:3:2とし、第2の酸化物半導体膜の原子数比をIn:Ga:Zn=2:1:3としてもよい。
また、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜に、結晶性の異なる酸化物半導体を適用してもよい。すなわち、単結晶酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、非晶質酸化物半導体、またはCAAC−OSを適宜組み合わせた構成としてもよい。また、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜の少なくともどちらか一方に非晶質酸化物半導体を適用すると、酸化物半導体膜403の内部応力や外部からの応力を緩和し、トランジスタの特性ばらつきが低減され、また、トランジスタの信頼性をさらに高めることが可能となる。
一方で、非晶質酸化物半導体は水素などのドナーとなる不純物を吸収しやすく、また、酸素欠損が生じやすいためn型化されやすい。このため、チャネル側の酸化物半導体膜は、CAAC−OSなどの結晶性を有する酸化物半導体を適用することが好ましい。
また、酸化物半導体膜403を3層以上の積層構造とし、複数層の結晶性を有する酸化物半導体膜で非晶質酸化物半導体膜を挟む構造としてもよい。また、結晶性を有する酸化物半導体膜と非晶質酸化物半導体膜を交互に積層する構造としてもよい。
また、酸化物半導体膜403を複数層の積層構造とする場合の上記構成は、それぞれを適宜組み合わせて用いることができる。
酸化物半導体膜403の形成面に平坦化処理を施し、平坦性を向上させておくと、酸化物半導体膜403の形状不良が生じにくく好ましい。平坦化処理としては、特に限定されないが、研磨処理(例えば、化学的機械研磨法(Chemical Mechanical Polishing:CMP))、ドライエッチング処理、プラズマ処理を用いることができる。トランジスタ440a、440b、440cは酸化物半導体膜403の形成領域の凹凸を研磨処理によって平坦化した例である。
また、酸化物半導体膜403に、過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。加熱処理の温度は、300℃以上700℃以下、または基板の歪み点未満とする。加熱処理は減圧下又は窒素雰囲気下などで行うことができる。例えば、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体膜403に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行う。
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。高温のガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
例えば、加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を入れ、数分間加熱した後、基板を不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。
なお、加熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
また、加熱処理で酸化物半導体膜403を加熱した後、同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の一酸化二窒素ガス、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)を導入してもよい。酸素ガスまたは一酸化二窒素ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する酸素ガスまたは一酸化二窒素ガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち、酸素ガスまたは一酸化二窒素ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素ガス又は一酸化二窒素ガスの作用により、脱水化または脱水素化処理による不純物の排除工程によって同時に減少してしまった酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給することによって、酸化物半導体膜403を高純度化することができる。
なお、脱水化又は脱水素化のための加熱処理を行うタイミングは、膜状であっても、エッチングにより加工した後でもよい。また、脱水化又は脱水素化のための加熱処理は、複数回行ってもよく、他の加熱処理と兼ねてもよい。
また、脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体膜403に、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して膜中に酸素を供給してもよい。
脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体膜403に、酸素を導入して膜中に酸素を供給することによって、酸化物半導体膜403を高純度化、及び電気的にI型(真性)化することができる。高純度化し、電気的にI型(真性)化した酸化物半導体膜403を有するトランジスタは、電気特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、プラズマ処理などを用いることができる。
酸化物半導体膜403への酸素の導入は、脱水化又は脱水素化処理を行った後が好ましいが、特に限定されない。また、上記脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体膜403への酸素の導入は複数回行ってもよい。
絶縁膜407は、酸化物半導体膜403からの酸素放出、及び水素、水分などの不純物侵入が防止できる緻密な膜が好ましい。
絶縁膜407としては、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜、酸化ガリウム亜鉛膜、酸化亜鉛膜などの無機絶縁膜を用いることができ、単層でも積層でもよい。絶縁膜407は、プラズマCVD法又はスパッタリング法、又は成膜ガスを用いたCVD法を用いることができる。
以上のように、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタ440の電気的特性を精密に制御することができる。
所望の電気的特性を有する該トランジスタ440を用いて、様々な高機能デバイスに適用できる半導体装置を提供することができる。
該トランジスタ440を有する半導体装置において、安定した電気的特性を付与し、高信頼性化を達成することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本明細書に示すトランジスタを使用した半導体装置の例を、図3を用いて説明する。
図3に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ710を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ750を有するものである。トランジスタ750は、実施の形態1で示すトランジスタ440(440a乃至440c)と同様な構造を有する例である。
ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なるバンドギャップを持つ材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコンなど)とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。シリコンなどの材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
半導体装置に用いることのできる基板は、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI(Silicon on Insulator)基板などを用いることができ、トランジスタのチャネル形成領域は、これらの基板中、又は基板上に形成することができる。図3に示す半導体装置は、基板中にチャネル形成領域を形成して下部のトランジスタを作製する例である。
図3に示す半導体装置においては、基板700に単結晶シリコン基板を用いて、該単結晶シリコン基板にトランジスタ710を形成しており、第1の半導体材料として単結晶シリコンを用いている。トランジスタ710はnチャネル型トランジスタ又はpチャネル型トランジスタの一導電型を有するトランジスタを例として示しており、下部の素子構成には、半導体素子が複数電気的に接続された様々な回路(例えば、NMOS回路、PMOS回路、CMOS(相補型金属酸化物半導体:Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路など)を設けることができる。
トランジスタ710及び基板700の導電型に応じて、基板700におけるトランジスタ710の形成領域に一導電型を付与する不純物元素を添加し、nウェル又はpウェルを形成してもよい。例えば、基板700としてp型の導電型を有する単結晶シリコン基板を用い、トランジスタ710としてpチャネル型トランジスタを形成する場合、トランジスタ710の形成領域に、n型を付与する不純物元素を添加し、nウェルを形成する。この場合トランジスタ710のチャネル形成領域703はnウェルに形成される。n型を付与する不純物元素としては、リン(P)やヒ素(As)等を用いることができる。
同様に、p型を付与する不純物元素を添加することによりpウェルを形成してもよい。p型を付与する不純物元素としては、ボロン(B)やアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)等を用いることができる。
トランジスタ710は、チャネル形成領域703、ソース領域又はドレイン領域として機能する一導電型を有する不純物領域704a、704b、ゲート絶縁膜702、ゲート電極層701を有している。
ゲート電極層701の側面に側壁絶縁層を設けてもよい。この場合、ゲート電極層701及び側壁絶縁層をマスクとして用いて、ソース領域又はドレイン領域として機能する一導電型を有する不純物領域704a、704bと、不純物濃度が異なるLDD(LightlyDoped Drain)領域として機能する異なる一導電型を有する不純物領域とを、自己整合的に形成することができる。
基板700において、トランジスタ710は素子分離領域706により他の半導体素子(図示せず)と分離されており、トランジスタ710上に絶縁膜730、及び絶縁膜731が積層されている。絶縁膜730に形成された開口に一導電型を有する不純物領域704a、704bにそれぞれ電気的に接続する配線層711、配線層712が形成され、絶縁膜731の開口に配線層711、又は配線層712にそれぞれ電気的に接続する配線層713、配線層714が形成されている。
絶縁膜731、配線層713、714上には、絶縁膜732、及び絶縁膜733が積層されている。半導体装置において下部と上部の間(本実施の形態では、絶縁膜731と絶縁膜733の間)に、上部のトランジスタ750の電気的特性の劣化や変動を招く水素等の不純物が、下部から上部へ侵入しないように、バリア膜として機能する絶縁膜732を設ける構成とすると好ましい。絶縁膜732には、例えば、上記不純物等の遮断機能の高い、緻密な無機絶縁膜(例えば、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜など)を用いるとよい。
絶縁膜732及び絶縁膜733に形成された開口に、配線層714に電気的に接続する配線層715が形成されている。配線層715は、絶縁膜732及び絶縁膜733中に、該上面だけ露出して埋め込まれるように設けられている。
しかし本実施の形態の半導体装置はこれに限定されず、基板上に島状のチャネル形成領域を含む半導体膜を形成して、下部のトランジスタを作製してもよい。この場合、SOI基板を用いてもよいし、基板上に成膜法による半導体膜を成膜し、島状に加工してもよい。また、他の作製基板に設けられた半導体膜を、基板上に転置させて、基板上に半導体膜を形成してもよい。
また、トランジスタ710としてシリサイド(サリサイド)を有するトランジスタを用いてもよい。シリサイド(サリサイド)を有する構造であると、ソース領域及びドレイン領域がより低抵抗化でき、半導体装置の高速化が可能である。また、低電圧で動作できるため、半導体装置の消費電力を低減することが可能である。
次に、図3の半導体装置における下部のトランジスタ710上に設けられる上部の素子構成を説明する。
トランジスタ750はトランジスタ440(440a乃至440c)と同様に作製することができる。トランジスタ750の作製方法を簡略に説明する。
次に、図3の半導体装置における下部のトランジスタ上に設けられる上部の素子構成を説明する。
絶縁膜733及び配線層716上に、絶縁膜734、導電層751、及び配線層716を形成する。配線層716は配線層715と電気的に接続する。なお、形成順序における前後は、絶縁膜734と、導電層751及び配線層716とは、特に限定されない。本実施の形態の半導体装置において、配線層が絶縁膜中に埋め込まれている構成においては、他も同様である。
また、本実施の形態において、積層する絶縁膜及び配線層は、上面にCMP法による平坦化処理が施されており、平坦化された絶縁膜及び配線層上に上層の絶縁膜及び配線層形成する例である。
絶縁膜734、導電層751、及び配線層716上にトンネル絶縁膜752を形成し、該トンネル絶縁膜752上に導電層751と重なる電荷蓄積層753を形成する。
電荷蓄積層753上に酸化物絶縁膜754を形成し、平坦化処理された酸化物絶縁膜754上に酸化物半導体膜755を形成する。酸化物半導体膜755上に、電荷蓄積層753と重なるゲート絶縁膜756、ゲート電極層757を形成する。本実施の形態では、ゲート絶縁膜756はゲート電極層757をマスクとしてエッチングされた島状の形状である例を示す。
酸化物絶縁膜754、酸化物半導体膜755、ゲート絶縁膜756、ゲート電極層757を覆う絶縁膜758を形成し、絶縁膜758上に絶縁膜735を積層する。
絶縁膜758及び絶縁膜735に酸化物半導体膜755に達する開口を形成し、該開口にソース電極層又はドレイン電極層として機能する配線層760、761を形成する。
また、トンネル絶縁膜752、酸化物絶縁膜754、絶縁膜758、及び絶縁膜735に配線層714酸に達する開口を形成し、該開口に配線層717を形成する。
絶縁膜735、配線層760、配線層761、及び配線層717上に絶縁膜736を形成し、絶縁膜736に形成された開口に、配線層760、配線層761、配線層717それぞれに電気的に接続する配線層762、配線層763、配線層718を形成する。
以上の工程で、トランジスタ710上にトランジスタ750が設けられた、半導体素子の積層構造を有する半導体装置を作製することができる。半導体素子を積層することによって、半導体装置の高集積化が可能となり、本実施の形態で示すように異なる半導体材料を含む半導体素子を組み合わせることにより、様々な機能を有する高機能デバイスを作製することが可能となる。
本実施の形態における半導体装置においては、電荷蓄積層753に蓄えられた電荷によって、トランジスタ750のしきい値電圧を精密に制御することができる。電荷蓄積層753に蓄えられる電荷は、導電層751に電位を供給する(電圧を印加する)ことで、トンネル絶縁膜752を介して、導電層751から供給される。
電荷蓄積層753は周囲を酸化物絶縁物(例えば、トンネル絶縁膜752及び酸化物絶縁膜754)で覆われており、他の電極層や配線と電気的に接続がない状態(所謂浮遊(フローティング)状態)である。電荷蓄積層753は、蓄えられた電荷を長時間保持することができるため、一度必要な電荷量を供給した後は、導電層751への電力供給を停止することができる。その後、電荷蓄積層753が蓄積する電荷量を変更したい場合は、再度導電層751へ電力供給を行えばよい。
このように、トランジスタ750の電気的特性を制御するための電荷蓄積層753は、常に連続した電力供給を必要とする電極層とは異なり、ごく短い電荷供給時に電荷を供給する導電層751に電力供給を行うのみである。よって、半導体装置において大きな消費電力の増加は招かない。
また、電荷蓄積層753は浮遊状態であり、周囲に囲まれた酸化物絶縁物によって電気的に絶縁されるため、保持期間においては電位の変動が少なく、安定した電位を酸化物半導体膜755に供給することができる。トンネル絶縁膜752を介する電荷の供給頻度も少ないため、トンネル絶縁膜752の劣化に起因する電荷蓄積層753の電荷保持能力の低下も抑制することができる。
さらに、電荷蓄積層753の電荷を制御することのできる導電層751を、トンネル絶縁膜752を介して配置しているので、電荷蓄積層753の電位は、必要に応じて変更することができる。
従って、半導体装置において、トランジスタ750への所望の電気特性の付与、保持、変更を、消費電力の増加は抑えながら正確に行うことが可能となる。
トランジスタ750の電気特性を、それぞれ個々に決定することができるため、半導体装置の回路設計やデバイス構造において自由度が広がる。
さらに、作製時における形状不良等に起因する、電気的特性ばらつきも、トランジスタ750完成後に解消することができるため、歩留まり及び生産性が向上する。
使用中において、経時劣化によるトランジスタ750の電気特性の不良、又は半導体装置としての電気的な不具合、あるいは意図的な電気特性の変更要求があった場合、半導体装置のメンテナンスに応じることができる。
また、本実施の形態に示す半導体装置では、異なる半導体材料を用いた半導体素子を積層することにより、微細化及び高集積化を実現し、かつ安定で高い電気的特性を付与された半導体装置、及び該半導体装置の作製方法を提供することができる。
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態3)
実施の形態1に示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部又は全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
図4(A)において、基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シール材4005が設けられ、基板4006によって封止されている。図4(A)においては、基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、ICチップ、又は別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004又は画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a、4018bから供給されている。
図4(B)、及び図4(C)において、基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、基板4001とシール材4005と基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。図4(B)、及び(C)においては、基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、ICチップ、又は別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。図4(B)、及び図4(C)においては、別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004又は画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
また図4(B)、及び図4(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装してもよいし、信号線駆動回路の一部又は走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装してもよい。
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。図4(A)は、COG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、図4(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図4(C)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTABテープもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、又は表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
また基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、実施の形態1又は実施の形態2に示したに示したトランジスタを適用することができる。
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流又は電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
また、半導体装置の一形態について、図5を用いて説明する。図5は、図4(B)のM−Nにおける断面図に相当する。
図5で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して、電気的に接続されている。
接続端子電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電膜から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、4011のソース電極層及びドレイン電極層と同じ導電膜で形成されている。
また基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、図5では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。図6(A)では、トランジスタ4010、4011上には絶縁膜4024が設けられ、図6(B)では、さらに、絶縁膜4021が設けられている。
トランジスタ4010、4011としては、実施の形態1又は実施の形態2に示したトランジスタ440(440a乃至440c)、750を適用することができる。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ440aと同様な構造を有するトランジスタを適用する例を示す。トランジスタ4010、4011は、トップゲート構造のトランジスタである。
本実施の形態では、酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用いたトランジスタ4010、4011を有する半導体装置において、順に積層された、導電層、トンネル絶縁膜、酸化物絶縁物によって周囲を囲まれている電荷蓄積層、酸化物絶縁膜、酸化物半導体膜、ゲート絶縁膜、及びゲート電極層と、酸化物半導体膜に電気的に接するソース電極層及びドレイン電極層とを有する。
電荷蓄積層に蓄えられた電荷によって、トランジスタ4010、4011のしきい値電圧を精密に制御する。電荷蓄積層に蓄えられる電荷は、導電層に電位を供給する(電圧を印加する)ことで、トンネル絶縁膜を介して、導電層から供給される。
電荷蓄積層は周囲を酸化物絶縁物(本実施の形態では、トンネル絶縁膜及び酸化物絶縁膜)で覆われており、他の電極層や配線と電気的に接続がない状態(所謂浮遊(フローティング)状態)である。電荷蓄積層は、蓄えられた電荷を長時間保持することができるため、一度必要な電荷量を供給した後は、導電層への電力供給を停止することができる。その後、電荷蓄積層が蓄積する電荷量を変更したい場合は、再度導電層へ電力供給を行えばよい。
このように、トランジスタ4010、4011の電気的特性を制御するための電荷蓄積層は、常に連続した電力供給を必要とする電極層とは異なり、ごく短い電荷供給時に電荷を供給する導電層に電力供給を行うのみである。よって、半導体装置において大きな消費電力の増加は招かない。
また、電荷蓄積層は浮遊状態であり、周囲に囲まれた絶縁膜によって電気的に絶縁されるため、保持期間においては電位の変動が少なく、安定した電位を酸化物半導体膜に供給することができる。トンネル絶縁膜を介する電荷の供給頻度も少ないため、トンネル絶縁膜の劣化に起因する電荷蓄積層の電荷保持能力の低下も抑制することができる。
さらに、電荷蓄積層の電荷を制御することのできる導電層を、トンネル絶縁膜を介して配置しているので、電荷蓄積層の電位は、必要に応じて変更することができる。
従って、本実施の形態の半導体装置においては、トランジスタ4010、4011への所望の電気特性の付与、保持、変更を、消費電力の増加は抑えながら正確に行うことが可能となる。
トランジスタ4010、4011の電気特性を、それぞれ個々に決定することができるため、半導体装置の回路設計やデバイス構造において自由度が広がる。
さらに、作製時における形状不良等に起因する、電気的特性ばらつきも、トランジスタ4010、4011完成後に解消することができるため、歩留まり及び生産性が向上する。
使用中において、経時劣化によるトランジスタ4010、4011の電気特性の不良、又は半導体装置としての電気的な不具合、あるいは意図的な電気特性の変更要求があった場合、半導体装置のメンテナンスに応じることができる。
半導体装置の回路設計によって、上記トランジスタ4010、4011と、電荷蓄積層を含まないトランジスタとを混在させて有する半導体装置とすることも可能である。上記トランジスタと、酸化物半導体以外の半導体材料を半導体膜として用いたトランジスタと混在させてもよい。
従って、本実施の形態の図5で示す、トランジスタ4010、4011を含む半導体装置は、高機能及び高信頼性の半導体装置とすることができる。
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
図5(A)に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。図5(A)において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜4032、4033が設けられている。第2の電極層4031は基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031とは液晶層4008を介して積層する構成となっている。
またスペーサ4035は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていてもよい。
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料(液晶組成物)は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
また、液晶層4008に、配向膜を用いないブルー相を発現する液晶組成物を用いてもよい。この場合、液晶層4008と、第1の電極層4030及び第2の電極層4031とは接する構造となる。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は、液晶及びカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて発現させることができる。また、ブルー相が発現する温度範囲を広げるために、ブルー相を発現する液晶組成物に重合性モノマー及び重合開始剤などを添加し、高分子安定化させる処理を行って液晶層を形成することもできる。ブルー相を発現する液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。静電気の影響により酸化物半導体膜を用いるトランジスタの電気的な特性が著しく変動して設計範囲を逸脱する恐れがある。よって酸化物半導体膜を用いるトランジスタを有する液晶表示装置にブルー相を発現する液晶組成物を用いることはより効果的である。
また、液晶材料の固有抵抗は、1×109Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。保持容量の大きさは、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。
本明細書に開示する酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低く制御することができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
また、本明細書に開示する酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバートランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路として、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。また、VA型の液晶表示装置にも適用することができる。VA型の液晶表示装置とは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種である。VA型の液晶表示装置は、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。本実施の形態では、発光素子として有機EL素子を用いる例を示す。
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透光性であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
図5(B)に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す。
図5(B)に示す発光装置においては、表示素子である発光素子4513は、画素部4002に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光素子4513の構成は、第1の電極層4030、電界発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、示した構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができる。
隔壁4510は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
電界発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでもよい。
発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031及び隔壁4510上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、DLC膜等を形成することができる。
また、発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、発光素子4513を覆う有機化合物を含む層を蒸着法により形成してもよい。
また、基板4001、基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂又は熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)又はEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用いればよい。
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能である。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)も呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒又は溶質に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。なお、第1の粒子又は第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
このように、電気泳動表示装置は、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、いわゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、この電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子および第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレクトロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料、又はこれらの複合材料を用いればよい。
また、電子ペーパーとして、ツイストボール表示方式を用いる表示装置も適用することができる。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を、表示素子に用いる電極層である第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差を生じさせて球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
なお、基板4001、基板4006としては、ガラス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルム又はアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、透光性が必要でなければ、アルミニウムやステンレスなどの金属基板(金属フィルム)を用いてもよい。また複合材料を用いてもよく、例えば、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシート等を用いることもできる。
絶縁膜4024としては、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、又は酸化窒化アルミニウム膜などの酸化物絶縁膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などの窒化物絶縁膜の単層、又は積層を用いることができる。
また、平坦化絶縁膜として機能する絶縁膜4021は、アクリル、ポリイミド、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜を形成してもよい。
絶縁膜4021の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法)、スクリーン印刷、オフセット印刷等、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
表示装置は光源又は表示素子からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁膜、導電膜などの薄膜はすべて可視光の波長領域の光に対して透光性とする。
表示素子に電圧を印加する第1の電極層及び第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、グラフェンなどの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、コバルト、ニッケル、チタン、白金、アルミニウム、銅、銀等の金属、又はその合金、若しくはその金属窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
以上のように実施の形態1又は実施の形態2で示したトランジスタを適用することで、様々な機能を有する半導体装置を提供することができる。
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、テレビ、モニタ等の表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型のパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画又は動画を再生する画像再生装置、ポータブルCDプレーヤ、ラジオ、テープレコーダ、ヘッドホンステレオ、ステレオ、コードレス電話子機、トランシーバ、携帯無線機、携帯電話、自動車電話、携帯型ゲーム機、電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子書籍、電子翻訳機、音声入力機器、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電気シェーバ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、エアコンディショナーなどの空調設備、食器洗い器、食器乾燥器、衣類乾燥器、布団乾燥器、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、煙感知器、放射線測定器、透析装置等の医療機器、などが挙げられる。さらに、誘導灯、信号機、ベルトコンベア、エレベータ、エスカレータ、産業用ロボット、電力貯蔵システム等の産業機器も挙げられる。また、石油を用いたエンジンや、非水系二次電池からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電気機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車(EV)、内燃機関と電動機を併せ持ったハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、これらのタイヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、ゴルフ用カート、小型又は大型船舶、潜水艦、ヘリコプター、航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機、惑星探査機、宇宙船が挙げられる。
上記実施の形態で説明した半導体装置を具備する電子機器の例について説明する。例えば、電子機器のCPU、メモリ等の回路部には実施の形態1で示すトランジスタ、実施の形態2で示す半導体装置が適用でき、表示部には実施の形態3で示す表示装置が適用することができる。
図6(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体3001、筐体3002、表示部3003、キーボード3004などによって構成されている。実施の形態1乃至3のいずれかで示した半導体装置を適用することにより、高性能及び高信頼性のノート型のパーソナルコンピュータとすることができる。
図6(B)は、携帯音楽プレーヤであり、本体3021には表示部3023と、耳に装着するための固定部3022と、スピーカ、操作ボタン3024、外部メモリスロット3025等が設けられている。実施の形態1乃至3のいずれかで示した半導体装置を適用することにより、高性能及び高信頼性な携帯音楽プレイヤー(PDA)とすることができる。
さらに、図6(B)に示す携帯音楽プレーヤにアンテナやマイク機能や無線機能を持たせ、携帯電話と連携させれば、乗用車などを運転しながらワイヤレスによるハンズフリーでの会話も可能である。
図6(C)は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍は、筐体2701および筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701および筐体2703は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み込まれている。表示部2705および表示部2707は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図6(C)では表示部2705)に文章を表示し、左側の表示部(図6(C)では表示部2707)に画像を表示することができる。実施の形態1乃至3のいずれかで示した半導体装置を適用することにより、高性能及び高信頼性な電子書籍とすることができる。表示部2705として半透過型、又は反射型の液晶表示装置を用いる場合、比較的明るい状況下での使用も予想されるため、太陽電池を設け、太陽電池による発電、及びバッテリーでの充電を行えるようにしてもよい。なおバッテリーとしては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
また、図6(C)では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2701において、電源2721、操作キー2723、スピーカ2725などを備えている。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
また、電子書籍は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
図6(D)は、携帯電話であり、筐体2801には、表示パネル2802、スピーカ2803、マイクロフォン2804、ポインティングデバイス2806、カメラ用レンズ2807、外部接続端子2808などを備えている。また、アンテナは筐体2801内部に内蔵されている。実施の形態1乃至3のいずれかで示した半導体装置を適用することにより、高性能及び高信頼性な携帯電話とすることができる。
また、表示パネル2802はタッチパネルを備えており、図6(D)には映像表示されている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、太陽電池セル2810で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
表示パネル2802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル2802と同一面上にカメラ用レンズ2807を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカ2803及びマイクロフォン2804は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。
外部接続端子2808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット2811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
図6(E)は、デジタルビデオカメラであり、本体3051、表示部(A)3057、接眼部3053、操作スイッチ3054、表示部(B)3055、バッテリー3056などによって構成されている。実施の形態1乃至3のいずれかで示した半導体装置を適用することにより、高性能及び高信頼性なデジタルビデオカメラとすることができる。
図6(F)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置は、筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。実施の形態1乃至3のいずれかで示した半導体装置を適用することにより、高性能及び高信頼性なテレビジョン装置とすることができる。
テレビジョン装置の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。